説明

ドライヤ装置

【課題】パージ空気量を著しく増加しなくても高除湿空気を安定して得ることができる膜式ドライヤを具備するドライヤ装置を提供する。
【解決手段】水蒸気含有の吸湿空気を除湿する複数本の中空糸膜が束ねられて成る中空糸膜集束体をケース内に収容する膜式ドライヤ10を具備するドライヤ装置であって、膜式ドライヤ10から吐出する除湿空気の一部をパージ空気として、パージ空気供給口に供給するパージ配管30に、パージ空気供給口に供給される除湿空気量を調整する制御バルブ32と、制御バルブ32を通過した除湿空気を加熱する加熱ヒータ34と、中空糸膜14が破損されるパージ空気量が供給されることを制限するソニックノズル36とが設けられ、且つ除湿空気の温度及び湿度から算出した算出露点と予め設定された設定露点とを比較し、算出露点が設定露点と等しくなるように制御バルブ32と加熱ヒータ34とを制御する制御部38が設けられているが設けられていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はドライヤ装置に関し、更に詳細には水蒸気含有の吸湿空気を除湿する複数本の中空糸膜が束ねられて成る中空糸膜集束体をケース内に収容する膜式ドライヤを具備するドライヤ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
水蒸気含有の吸湿空気を除湿する複数本の中空糸膜が束ねられて成る中空糸膜集束体を用いた膜式ドライヤを具備するドライヤ装置としては、例えば下記特許文献1には、図8に示すドライヤ装置が提案されている。
図8に示すドライヤ装置の膜式ドライヤ100では、水蒸気含有の吸湿空気を除湿する複数本の中空糸膜102,102・・が束ねられた中空糸膜収束体が筒状のケース104内に収容されている。
かかるケース104には、中空糸膜収束体が収容された収容室104aと、中空糸膜収束体の各中空糸膜の一端側が開口され、吸湿空気が供給される吸湿空気供給口106が設けられた吸湿空気室104bと、中空糸膜収束体の各中空糸膜102の他端側が開口され、吸湿空気供給口106から供給された吸湿空気が中空糸膜102内を流れて除湿された除湿空気を吐出する除湿空気吐出口108が設けられた除湿空気室104cとが形成されている。この収容室104aと吸湿空気室104b及び除湿空気室104cとは、隔壁110,110で隔されている。この隔壁110,110内には、中空糸膜収束体の各中空糸膜の流路が形成されている。
更に、ケース104には、除湿空気の一部を中空糸膜102の外周面に沿って流すパージ空気として収容室104a内に供給するパージ空気供給口112と、収容室104a内を流れるパージ空気をケース104外に排出するパージ空気排出口114とが設けられている。
また、パージ空気を除湿空気室104cからパージ空気供給口112に供給するパージ配管118が、除湿空気室104cの除湿空気吐出口108に形成された供給孔116とパージ空気供給口112との間に設けられている。
【特許文献1】特開2006−212559号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
図8に示すドライヤ装置の膜式ドライヤ100では、中空糸膜102内を流れる吸湿空気と中空糸膜102外を流れるパージ空気との水蒸気分圧差に基づいて、中空糸膜内の吸湿空気中の水蒸気が中空糸膜外にパージされる。
従って、中空糸膜102外を流れるパージ空気と中空糸膜102内を流れる吸湿空気との水蒸気分圧差が高いほど、膜式ドライヤ100から吐出される除湿空気の除湿程度が高くなる。このため、図8に示す膜式ドライヤ100では、パージ空気として、中空糸膜収束体から吐出された除湿空気の一部を収容室104aに供給している。
また、図8に示す膜式ドライヤ100を具備するドライヤ装置は、駆動部分が存在しないために潤滑油等の油を使用せず、油ミスト等を嫌うクリーンルーム内で使用される除湿空気供給装置として使用されつつある。
ところで、クリーンルーム内での作業が多い半導体装置等の分野では、近年、従来よりも高度に除湿された高除湿空気の供給が要請されている。
しかしながら、図8に示す膜式ドライヤ100を具備するドライヤ装置では、パージ空気量を著しく増加して、中空糸膜収束体に供給される空気量に対するパージ空気量の比率(以下、単にパージ率と称する)を増加しなければ、要請されている高除湿空気を得ることができなかった。この様に、膜式ドライヤ100を具備するドライヤ装置において、パージ率を著しく増加することは、ドライヤ装置のエネルギー効率を著しく悪化させる。
そこで、本発明は、パージ率を著しく増加しなければ高除湿空気を得ることができなかった従来の膜式ドライヤを具備するドライヤ装置の課題を解決し、パージ率を著しく増加しなくても高除湿空気を安定して得ることができる膜式ドライヤを具備するドライヤ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明者等は、前記課題を解決すべく検討したところ、膜式ドライヤにおいて、加熱したパージ空気をケースの収容室内に供給することによって、除湿空気吐出口から吐出される除湿空気の露点を低下できること、及びパージ空気が通過するパージ配管の途中に調整バルブを設けることによって、除湿する空気中の湿度が季節変動等で変動しても、調整バルブの開度を調整することにより、除湿空気吐出口から吐出される除湿空気の露点を安定化できることを見出した。
しかしながら、膜式ドライヤに用いられる中空糸膜は、通常、樹脂製であるため、パージ空気量が急激に増加すると、中空糸膜が破損される事態が懸念されること、及び除湿空気の露点を直接測定することは面倒であり、測定に時間が掛かることが判明した。
これらの点について、本発明者等は更に検討を重ね、調整バルブの開度が大きくなっても、中空糸膜が挿入されているケース内に所定以上のパージ空気量が供給されないようにソニックノズルを設けることによって、パージ空気量の急激な増加によって中空糸膜が破損される懸念を解消できること、及び除湿空気の露点は、除湿空気の温度及び湿度から算出できることを見出し、本発明に到達した。
【0005】
すなわち、本発明は、水蒸気含有の吸湿空気を除湿する複数本の中空糸膜が束ねられて成る中空糸膜集束体をケース内に収容する膜式ドライヤを具備するドライヤ装置であって、前記ケースには、前記中空糸膜集束体を収容する収容室と、前記中空糸膜収束体の各中空糸膜の一端側が開口され、前記吸湿空気が供給される吸湿空気供給口が設けられた吸湿空気室と、前記中空糸膜収束体の各中空糸膜の他端側が開口され、前記吸湿空気供給口から供給された吸湿空気が前記中空糸膜内を流れて除湿された除湿空気を吐出する除湿空気吐出口が設けられた除湿空気室と、前記除湿空気の一部を中空糸膜の外周面に沿って流すパージ空気として前記収容室内に供給するパージ空気供給口と、前記収容室内を流れるパージ空気をケース外に排出するパージ空気排出口と、前記パージ空気を除湿空気室からパージ空気供給口に供給するパージ配管とを具備し、前記パージ配管には、前記パージ空気供給口に供給される除湿空気量を調整するパージ空気調整手段と、前記パージ空気調整手段を通過する除湿空気を加熱する加熱手段と、前記中空糸膜集束体を構成する中空糸膜が破損されるパージ空気量が前記ケース内に供給されることを制限するパージ空気制限手段とが設けられ、且つ前記除湿空気室から吐出された除湿空気の温度及び湿度から算出した算出露点と予め設定された設定露点とを比較し、前記算出露点が設定露点と等しくなるように前記パージ空気調整手段と加熱手段とを制御する制御手段が設けられていることを特徴とするドライヤ装置にある。
かかる本発明に係るドライヤ装置おいて、パージ空気制限手段として、途中に絞り部と拡大部とが形成されたノズルを具備し、前記絞り部における流速が音速に固定されたとき、前記絞り部の下流側の状態に依存せず一定流量が発生するソニックノズルを好適に用いることができる。
また、中空糸膜として、内側を流れる空気の一部が膜壁を透過して外周側に流出する自己パージタイプの中空糸膜を用いることによって、除湿空気吐出口から除湿程度が更に向上された除湿空気を吐出させることができる。
更に、除湿空気室と中空糸膜集束体が収容された収容室とを隔する隔壁に、前記除湿空気室の除湿空気の一部をパージ空気として前記収容室内に流す内部パージ路を形成することが好ましい。この内部パージ路は、一端が除湿空気室に開口されている中空糸の他端を収容室内で開口して形成することによって容易に形成できる。
【発明の効果】
【0006】
本発明に係るドライヤ装置によれば、パージ空気を加熱することによって、中空糸膜中に凝縮された水分の蒸発が促進されるため、パージ率を著しく増加しなくても高除湿空気を得ることができる。
更に、制御手段によって、除湿空気室から吐出された除湿空気の温度及び湿度から算出した算出露点と予め設定された設定露点とを比較し、前記算出露点が設定露点と等しくなるようにパージ空気調整手段と加熱手段とを制御する。このため、所望の露点の除湿空気を容易に得ることができる。
しかも、パージ配管には、中空糸膜集束体を構成する中空糸膜が破損されるパージ空気量が前記ケース内に供給されることを制限するパージ空気制限手段が設けられている。このため、パージ空気調整手段からのパージ空気量が急激に増加しても、中空糸膜が破損されることの懸念を解消できる。
その結果、本発明に係るドライヤ装置によれば、パージ率を著しく増加しなくても高除湿空気を安定して得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明に係るドライヤ装置の一例を図1に示す。図1に示すドライヤ装置を構成する膜式ドライヤ10には、図2に示す様に、水蒸気含有の吸湿空気を除湿する複数本の中空糸膜12,12・・束ねられた中空糸膜収束体が筒状のケース14内に収容されている。
かかるケース14には、中空糸膜収束体が収容された収容室14aと、中空糸膜収束体の各中空糸膜の一端側が開口され、吸湿空気が供給される吸湿空気供給口16が設けられた吸湿空気室14bと、中空糸膜収束体の各中空糸膜12の他端側が開口され、吸湿空気供給口16から供給された吸湿空気が中空糸膜12内を流れて除湿された除湿空気を吐出する除湿空気吐出口18が設けられた除湿空気室14cとが形成されている。この収容室14aと吸湿空気室14b及び除湿空気室14cとは、樹脂から成る隔壁20,20で隔されている。この隔壁20,20内には、中空糸膜収束体の各中空糸膜の流路が形成されている。
更に、ケース14には、除湿空気の一部を中空糸膜の外周面に沿って流すパージ空気として収容室14a内に供給するパージ空気供給口22と、収容室14a内を流れるパージ空気をケース14外に排出するパージ空気排出口24とが設けられている。
図2に示す中空糸膜12は、図2に示す拡大図の矢印の様に、中空糸膜12の内側12aを流れる空気と中空糸膜12の外側を流れるパージ空気との水蒸気分圧差に基づいて、中空糸膜12内の空気中の水蒸気が膜壁12bを通過して中空糸膜12の外側のパージ空気中に移動する。
尚、パージ空気は、除湿空気吐出口18に形成された供給孔19から除湿空気の一部が取り出されて、パージ空気供給口22に供給される。
【0008】
かかる図2に示す膜式ドライヤ10の一端部には、図1に示す様に、吸湿空気を供給する供給配管26が接続され、膜式ドライヤ10の他端部に除湿空気が吐出される除湿空気配管28が接続されている。
かかる除湿空気配管28の途中には、除湿空気の一部を膜式ドライヤ10にパージ空気として供給するパージ配管30が接続されている。このパージ配管30には、除湿空気配管28側からパージ空気量を調整する調整手段としての制御バルブ32及び加熱手段としての加熱ヒータ34が順次設けられている。
かかる制御バルブ32及び加熱ヒータ34は、制御手段としての制御部38によって制御されている。この制御部38には、除湿空気配管28に設けられた除湿空気の温度センサ42で測定された温度と湿度センサ44で測定された湿度とに基づいて除湿空気の露点を計算する演算部(図示せず)が設けられており、演算部で計算された計算露点と露点設定部46で予め設定された設定露点とが比較される。かかる計算露点と設定露点との露点差が解消するように、制御部38から制御バルブ32にパージ空気量を調整する開度調整信号が発せられると共に、加熱ヒータ34にも加熱温度を調整する加熱温度調整信号が発せられる。
また、図1に示すドライヤ装置の制御部38では、外気温を測定する温度センサ48、加熱ヒータ34で加熱されたパージ空気の温度を測定する温度センサ50及び吸湿空気の温度を測定する温度センサ52から各温度信号が送信される。かかる各温度信号を受信した制御部38では、温度センサ50で測定された温度が中空糸膜12の耐熱温度よりも低温の設定温度以下であることをチェックする。
【0009】
更に、図1に示すドライヤ装置では、パージ配管30の加熱ヒータ34と膜式ドライヤ10との間に、パージ空気量の制限手段としてのソニックノズル36が設けられている。このソニックノズル36は、制御バルブ32の開度が急激に拡大されても、一時に大量のパージ空気が膜式ドライヤ10に流入しないように制限するためのものである。一時に大量のパージ空気が膜式ドライヤ10に流入すると、中空糸膜12が破損される懸念があるからである。
ソニックノズル36は、図3に示す様に、パージ空気の供給口(矢印側)と出口との途中に絞り部36bと、絞り部36bから出口方向に口径が次第に広がる拡大部36cとが形成されたノズル36aを具備する。
かかるソニックノズル36では、ノズル36aの上流側圧力と下流側圧力との比が臨界圧力以下に保持されたとき、絞り部36bにおける流速が音速に固定され、絞り部36bの下流側の状態に依存せず一定流量が発生するものである。
従って、制御バルブ32の開度が所定以上に拡大され、中空糸膜12が破損される懸念のあるパージ空気量に到達したとき、ソニックノズル36のノズル36aの上流側圧力と下流側圧力との比が臨界圧力以下に保持されるように、絞り部36bの口径等を設計することによって、中空糸膜12が破損されるパージ空気量がケース14内に供給されることを防止できる。
尚、図3に示すソニックノズル36は、ノズル入口と絞り部36bとの間に形成された局面Rの形状、ノズル入口とノズル出口までの距離L、絞り部36bの口径及び拡大部36cに引き続いて形成される円筒部36dの内径の最適化を行うことによって、発生する騒音の軽減を可能にできる。
【0010】
図1〜図3に示すドライヤ装置において、吸湿空気及びパージ空気量を一定(制御バルブ32の開度を一定)とし、加熱ヒータ34の温度を変更しパージ空気の温度を調整して除湿空気の露点を測定した結果を図4に示す。図4は、横軸をパージ空気の温度とし、縦軸に除湿空気の露点としたグラフである。図4から明らかな様に、パージ空気の温度を加熱して昇温すると、除湿空気の露点が低下して、除湿空気の除湿程度が向上されていることが判る。中空糸膜12中の凝縮された水分の蒸発が促進されるからである。
更に、図1〜図3に示す膜式ドライヤ装置では、制御バルブ32によってパージ空気量を制御でき、加熱ヒータ34によってパージ空気温度を制御できる。かかる制御バルブ32及び加熱ヒータ34を制御する制御部38の制御方法を図5に示すフローチャートで説明する。
先ず、ステップS10において、温度センサ42で測定された除湿空気温度と湿度センサ44で測定された除湿空気湿度とを読み込み、ステップS12で除湿空気の露点を算出する。算出した算出露点は、ステップS14において、予め設定されている設定露点と比較され、算出露点が設定露点よりも高い場合には、除湿空気の除湿が不充分であるとして、ステップS16で制御バルブ32の開度を拡大し、パージ空気量の増大を図る。この様に、制御バルブ32の開度を拡大し、パージ空気量の増大を図っても、ソニックノズル36がパージ配管30に設けられているため、中空糸膜12が破損されるパージ空気量がケース14内に供給されることを防止できる。
【0011】
ここで、ステップS18において、制御バルブ32の開度が100%であるか否かチェックする。制御バルブ32の開度が100%に到達していない場合には、除湿空気の除湿程度をパージ空気量の増大を図って改善できるため、ステップ10に戻る。
他方、制御バルブ32の開度が100%の場合、パージ空気量の増大では除湿空気の除湿程度の改善を図れない。このため、ステップ20に移行して、加熱ヒータ34の加熱温度を昇温し除湿程度の改善を図る。
但し、加熱ヒータ34の加熱温度を昇温した場合、パージ空気の温度が中空糸膜12の耐熱温度以上とならないように設定した設定温度と、温度センサ50で測定されたパージ空気の測定温度とが比較される。設定温度よりも測定温度が低温の場合には、ステップ10に戻る。一方、測定温度が設定温度以上の場合には、制御バルブ32の開度が100%でもあるため、中空糸膜12の除湿性能の低下等が発生しているものとして、ステップ24で警報を発すると共に、加熱ヒータ34の加熱を停止する。
【0012】
ところで、ステップ14において、算出露点が設定露点以上の場合には、ステップ26に移行し、算出露点が設定露点とほぼ等しいとき、ステップ10に戻る。他方、ステップ26において、算出露点が設定露点よりも低いときには、除湿空気の除湿が過剰であるとして、ステップ28で制御バルプ32の開度を絞り、ステップ30に移行する。
ステップ30では、パージ空気の温度が中空糸膜12の耐熱温度以上とならないように設定した設定温度と、温度センサ50で測定されたパージ空気の測定温度とが比較される。測定温度が設定温度以下である場合は、ステップ10に戻る。他方、測定温度が設定温度よりも高い場合には、ステップ32で加熱ヒータ34の加熱温度を下げてからステップ10に戻る。
この様にして、図1〜図3に示すドライヤ装置では、所望の露点の除湿空気を得ることができる。
【0013】
図1〜図5に示す膜式ドライヤ10では、パージ空気の供給はパージ配管30経由のみであるため、高度に除湿した除湿空気を得るには、大量のパージ空気量が必要となる。この場合には、制御バルブ32での調整し難くなる傾向がある。
この様な場合には、図6に示す様に、除湿空気室14cと収容室14aとを隔する隔壁20に、除湿空気室14cの除湿空気の一部をパージ空気として収容室14a内に流す内部パージ路13を形成することが好ましい。この内部パージ路13を経由した除湿空気が、パージ配管30経由のパージ空気に加えられるため、パージ配管30経由のパージ空気を調整として用いることができ、制御バルブ32での調整幅を拡大できる。
図6に示す内部パージ路13は、一端が除湿空気室14cに開口されている中空糸膜12の他端を収容室14a内で開口して形成したものである。この内部パージ路13は、隔壁20に直接貫通孔を形成してもよい。
尚、図6に示す膜式ドライヤ10において、図2に示す膜式ドライヤ10の構成部材と同一部材については図1と同一番号を付して、詳細な説明を省略した。
【0014】
また、更に高度に除湿された除湿空気を得たい場合には、中空糸膜12として、内側12aを流れる空気の一部が膜壁12bを透過して外周側に流出する自己パージタイプの中空糸膜が用いられている。かかる自己パージタイプの中空糸膜としては、例えば特開平8−198964号公報に記載されているポリイミド膜や特許第1571841号公報に記載されているポリスルホン重合体膜等を上げることができる。
特に、空気透過速度が1.0×10−6cm/[cm・sec・cmHg]以上の中空糸膜を好適に用いることができる。その上限は、1.0×10−3cm/[cm・sec・cmHg]程度とすることが好ましい。
かかる自己パージタイプの中空糸膜を中空糸膜12として用いた膜式ドライヤ10を用いた図1に示すドライヤ装置では、露点が−50℃以下の除湿空気を得ることができる。
尚、空気透過速度の値は、中空糸膜収束体を構成する中空糸膜12,12・・の各々に0.687MPa(7kgf/cm)の空気圧を加え、中空糸膜12,12・・の各外周面から流出する空気量を測定して求めた。
【0015】
図1に示すドライヤ装置では、パージ配管30を経由するパージ空気は、加熱ヒータ34によって加熱されて収容室14aに供給される。このパージ空気の加熱は、前述した様に、中空糸膜12中の凝縮した水分の蒸発を促進するものである。このため、昇温されたパージ空気の温度を可及的に維持することが好ましい。
かかるパージ空気の温度を維持するには、図7(a)に示す様に、パージ空気の排出経路24aをケース14の外周面を包み込むように形成することが好ましい。排出経路24aを通過する昇温されたパージ空気によって、ケース14の外周面及び中空糸膜12を、吸湿空気供給口16から供給する吸湿空気温度以上とすることができ、中空糸膜12中の凝縮を可及的に少なくできる。
また、図7(b)に示す様に、ケース14の外周面を断熱材25によって囲むことによっても、ケース14の外周面及び中空糸膜12を、吸湿空気供給口16から供給する吸湿空気温度以上とすることができる。
尚、加熱されて昇温されたパージ空気の温度を可及的に維持する手段としては、加熱源として、他の機器の排熱を利用してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明に係るドライヤ装置の一例を説明する概略図である。
【図2】図1に示すドライヤ装置で用いる膜式ドライヤの一例を説明する縦断面図である。
【図3】図1に示すパージ空気量の制限手段としてのソニックノズル36を説明する断面図である。
【図4】膜式ドライヤのパージ空気温度と得られた除湿空気の露点との関係を示すグラフである。
【図5】図1に示すドライヤ装置の制御手段としての制御部38による制御方法を説明するフローチャートである。
【図6】図1に示すドライヤ装置で用いる膜式ドライヤの他の例を説明する縦断面図である。
【図7】図2に示す膜式ドライヤを保温した状態を示す縦断面図である。
【図8】従来の膜式ドライヤを具備するドライヤ装置を説明する概略図である。
【符号の説明】
【0017】
10 膜式ドライヤ
12 中空糸膜
14 ケース
14a 収容室
14b 吸湿空気室
14c 除湿空気室
16 吸湿空気供給口
18 除湿空気吐出口
19 供給孔
20 隔壁
22 パージ空気供給口
24 パージ空気排出口
26 供給配管
28 除湿空気配管
30 パージ配管
32 制御バルブ
34 加熱ヒータ
36 ソニックノズル(パージ空気制限手段)
38 制御部(制御手段)
42,48,50,52 温度センサ
44 湿度センサ
46 露点設定部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水蒸気含有の吸湿空気を除湿する複数本の中空糸膜が束ねられて成る中空糸膜集束体をケース内に収容する膜式ドライヤを具備するドライヤ装置であって、
前記ケースには、前記中空糸膜集束体を収容する収容室と、前記中空糸膜収束体の各中空糸膜の一端側が開口され、前記吸湿空気が供給される吸湿空気供給口が設けられた吸湿空気室と、前記中空糸膜収束体の各中空糸膜の他端側が開口され、前記吸湿空気供給口から供給された吸湿空気が前記中空糸膜内を流れて除湿された除湿空気を吐出する除湿空気吐出口が設けられた除湿空気室と、前記除湿空気の一部を中空糸膜の外周面に沿って流すパージ空気として前記収容室内に供給するパージ空気供給口と、前記収容室内を流れるパージ空気をケース外に排出するパージ空気排出口と、前記パージ空気を除湿空気室からパージ空気供給口に供給するパージ配管とを具備し、
前記パージ配管には、前記パージ空気供給口に供給される除湿空気量を調整するパージ空気調整手段と、前記パージ空気調整手段を通過する除湿空気を加熱する加熱手段と、前記中空糸膜集束体を構成する中空糸膜が破損されるパージ空気量が前記ケース内に供給されることを制限するパージ空気制限手段とが設けられ、
且つ前記除湿空気室から吐出された除湿空気の温度及び湿度から算出した算出露点と予め設定された設定露点とを比較し、前記算出露点が設定露点と等しくなるように前記パージ空気調整手段と加熱手段とを制御する制御手段が設けられていることを特徴とするドライヤ装置。
【請求項2】
パージ空気制限手段が、途中に絞り部と拡大部とが形成されたノズルを具備し、前記絞り部における流速が音速に固定されたとき、前記絞り部の下流側の状態に依存せず一定流量が発生するソニックノズルである請求項1記載のドライヤ装置。
【請求項3】
中空糸膜が、内側を流れる空気の一部が膜壁を透過して外周側に流出する自己パージタイプの中空糸膜である請求項1又は請求項2記載のドライヤ装置。
【請求項4】
除湿空気室と中空糸膜集束体が収容された収容室とを隔する隔壁に、前記除湿空気室の除湿空気の一部をパージ空気として前記収容室内に流す内部パージ路が形成されている請求項1〜3のいずれか一項記載のドライヤ装置。
【請求項5】
内部パージ路が、一端が除湿空気室に開口されている中空糸の他端が収容室内で開口されて形成されている請求項4記載のドライヤ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−284409(P2008−284409A)
【公開日】平成20年11月27日(2008.11.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−128733(P2007−128733)
【出願日】平成19年5月15日(2007.5.15)
【出願人】(000103921)オリオン機械株式会社 (450)
【Fターム(参考)】