説明

ドラムユニット及びこれを搭載した画像形成装置

【課題】感光体ドラムの長寿命化を達成できるドラムユニット及びこれを搭載した画像形成装置を提供する。
【解決手段】基材(60)上に有機系の感光剤による感光層 (67)が形成されており、その回転駆動によって感光層に帯電を経てトナー像が形成される感光体ドラム(18)と、この感光層に接触して帯電させる帯電器(20)と、感光体ドラムの回転軸線方向でみた通紙幅の外側領域であって帯電幅の内側領域における基材の外径をこの通紙幅の内側領域に比して小さくして形成された周方向溝(62)と、この周方向溝を有機系の感光剤で埋め、通紙幅の外側領域であって帯電幅の内側領域における感光層の外径をこの通紙幅の内側領域と略同等にして形成された端部感光層(68)とを具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接触帯電式の帯電器で帯電される感光体ドラムを有したドラムユニット及びこれを搭載した画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の画像形成装置では電子写真方式が用いられており、帯電器が感光体ドラムを予め帯電し、露光器が感光体ドラムの感光層に光を照射すると、この感光体ドラムの感光層には静電潜像が形成される。また、現像器はトナーを担持しており、このトナーが静電潜像に付着して感光体ドラムの感光層にはトナー像が現像される。そして、この可視化されたトナー像が用紙に転写及び定着される。
【0003】
ここで、上記感光体ドラムでは、円筒形状の基材に感光層を浸漬(ディッピング)した技術が知られており(例えば、特許文献1参照)、液状の有機感光剤を基材上に塗布して感光層が形成されている。
一方、この有機感光剤による感光層が接触帯電式の帯電器に直接に接触すると、帯電器の端部近傍の感光層では放電によって劣化し易くなる。そのため、この感光層のうち両端の膜厚を中央の膜厚よりも厚くした構造が開示されている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平4−451号公報
【特許文献2】特開平8−137115号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献2の技術では、感光体ドラムの寿命が短くなるとの問題が依然として残されている。感光層のうち両端の膜厚を中央の膜厚よりも単に厚くすると、帯電器が接触する領域内で感光体ドラムの膜厚が急激に変化し、感光体ドラム表面に段差が生じる事となる。段差が生じた部分では、帯電器と感光体ドラムの接触が不完全になり異常放電が発生する為、却って感光体ドラム表面の感光層の劣化を助長してしまう。
【0006】
ここで、仮に、当該特許文献2の技術に上記特許文献1の技術を組み合わせてみても、感光層の両端では放電による劣化が促進される。なぜならば、特許文献1に記載の溝は、液状の有機感光剤を引掛けて早く安定させるものであり、画像形成に供される感光層のさらに外側(感光層端部付近)にそれぞれ配置されている。つまり、この組み合わせ構成でも、感光層の両端よりも外側は溝に埋まるものの、帯電器が接触する領域内で感光体ドラムの膜厚が急激に変化し、感光体ドラム表面に段差が生じたままだからである。
【0007】
そこで、本発明の目的は、上記課題を解消し、感光体ドラムの長寿命化を達成できるドラムユニット及びこれを搭載した画像形成装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するための第1の発明は、基材上に有機系の感光剤による感光層が形成されており、その回転駆動によって感光層に帯電を経てトナー像が形成される感光体ドラムと、この感光層に接触して帯電させる帯電器と、感光体ドラムの回転軸線方向でみた通紙幅の外側領域であって帯電幅の内側領域における基材の外径をこの通紙幅の内側領域に比して小さくして形成された周方向溝と、この周方向溝を有機系の感光剤で埋め、通紙幅の外側領域であって帯電幅の内側領域における感光層の外径をこの通紙幅の内側領域と略同等にして形成された端部感光層とを具備する。
【0009】
第1の発明によれば、感光体ドラムの回転駆動によって感光体ドラムの表面、つまり、感光層にはトナー像が形成される。
接触帯電式の帯電器は、この感光体ドラムの感光層に接触して帯電しており、コロナ放電式の帯電器による場合に比してオゾンや窒素酸化物が生じないため、画像品質の向上を図ることができる。
【0010】
ここで、帯電器からの電圧が感光層に直接に接触して印加されると、この感光層のうち通紙幅の外側領域であって帯電幅の内側領域は、磨耗の進行が早い。当該領域は帯電器の端部近傍に対峙するので放電範囲が広く、当該領域では、帯電器から感光層への流れ込み電流が通紙幅の内側領域に比して増え、帯電時の放電量(放電エネルギー)による感光体ドラムの表面劣化が促進するからである。
【0011】
しかしながら、本発明によれば、感光体ドラムのうち、上述した通紙幅の外側領域であって帯電幅の内側領域に対して周方向溝を設け、感光層の膜厚を厚く形成させる分だけ基材の外径を予め小さくしておき、この周方向溝を有機系の感光剤で埋めている。このように、当該領域の感光層を通紙幅の内側領域の感光層よりも厚くすれば見かけの静電容量が大きくなり、帯電器から感光体ドラムに放電する電流も少なくなり、放電エネルギーの発生による感光体ドラムの表面劣化の進行を遅らせることができる。
【0012】
さらに、当該領域の感光層の外径は、通紙幅の内側領域における感光層の外径と略同等に形成され、これら連なる感光層が段差の生じない略面一になるので、帯電器から感光体ドラムへの放電が安定し、通紙幅の外側領域であって帯電幅の内側領域の膜厚を単に厚くした場合に比して、当該領域の感光層の磨耗を確実に抑制できる。
これらの結果、感光体ドラムの長寿命化を達成できる。
【0013】
第2の発明は、第1の発明の構成において、感光体ドラムでは、感光層に帯電を経て形成された潜像が外添剤を含むトナーで現像されてトナー像を形成しており、端部感光層には、周方向溝を有機系の感光剤で埋めた内側耐久層が形成されていることを特徴とする。
第2の発明によれば、第1の発明の作用に加えてさらに、現像バイアス電圧が印加されても、上述した通紙幅の外側領域であって現像幅の内側領域のトナー自体は感光層に付着しない。一方、外添剤自体はトナーから脱離してこの部分に取り残されて研磨性能が高くなり、現像幅の内側領域を通紙幅の内側領域よりも多く研磨し、この部分の感光体ドラムの磨耗量が感光体ドラムの寿命を特に短くする。
【0014】
しかし、上述した通紙幅の外側領域であって現像幅の内側領域の感光層は、周方向溝を有機系の感光剤で埋めた内側耐久層の厚さ分だけ、通紙幅の内側領域の感光層よりも厚くなるため、上述した放電エネルギーの発生による感光体ドラムの表面劣化を遅延させる他、外添剤の研磨による感光層の磨耗進行の遅延も図ることができる。
【0015】
第3の発明は、第1や第2の発明の構成において、周方向溝を有した基材の外径と通紙幅の内側領域における基材の外径との差が10×10−6m以上であることを特徴とする。
第3の発明によれば、第1や第2の発明の作用に加えてさらに、通紙幅の外側領域であって帯電幅の内側領域における基材の外径が、通紙幅の内側領域における基材の外径よりも10×10−6m以上小さく、周方向溝の深さで云えば、通紙幅の内側領域よりも5.0×10−6m以上の深さになる。つまり、周方向溝を有機系の感光剤で埋める感光層が、塗布上のばらつき程度の大きさ以上に明確に形成されており、放電及び外添剤に基づくこの感光層の磨耗をより一層確実に抑制できる。
【0016】
第4の発明は、第1や第2の発明の構成において、端部感光層の膜厚は、通紙幅の内側領域における感光層の膜厚よりも5.0×10−6m以上厚いことを特徴とする。
第4の発明によれば、第1や第2の発明の作用に加えてさらに、端部感光層の膜厚が、通紙幅の内側領域における感光層の膜厚よりも5.0×10−6m以上厚く、これが周方向溝を有機系の感光剤で埋めた内側耐久層の厚さに該当する。このように、内側耐久層が、塗布上のばらつき程度以上の大きさで意図的に形成されていることから、放電及び外添剤に基づくこの感光層の磨耗をより一層確実に抑制できる。
【0017】
第5の発明は、第1から第4のいずれかの発明の構成において、感光層は、単一層で構成されていることを特徴とする。
第5の発明によれば、第1から第4の発明の作用に加えてさらに、単一の感光層は、電荷発生層や電荷輸送層を積層させた場合に比して膜厚変動の影響を受け難く、感光体ドラムの長寿命化に寄与する。一方、特に削られ易いため、感光層の磨耗が当該感光体ドラムに大きな影響を及ぼす懸念があるものの、上記周方向溝及び端部感光層を形成すれば、この感光体ドラムの特性を長期間に亘って維持可能になり、特に顕著な効果を奏する。
【0018】
第6の発明は、第1から第5のいずれかのドラムユニットを搭載し、トナー像を転写材に転写する画像形成装置であることを特徴とする。
第6の発明によれば、第1から第5の発明の作用に加えてさらに、上述したドラムユニットを搭載すれば、良好な画像形成が長期間に亘って行われるため、画像形成装置の信頼性向上に寄与する。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、感光層の膜厚を厚く形成させる分だけ基材の外径を小さくしており、放電による劣化の進行を遅延させるドラムユニット及びこれを搭載した画像形成装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本実施例のプリンタの概略構成図である。
【図2】図1のドラムユニット周辺の断面図である。
【図3】図2の感光体ドラム、帯電ローラ、現像ローラの幅の説明図である。
【図4】図2の感光体ドラムの外観斜視図である。
【図5】図4のV−V線からみた矢視断面図である。
【図6】比較例の感光体ドラムの部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の好適な実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1には、画像形成装置の一例であるカラー印刷可能なプリンタ1の構造が概略的に示されている。同図に示された断面はプリンタ1の左側面からみたものである。このため、プリンタ1の前面は同図中の右側に、背面は左側にそれぞれ位置する。
【0022】
同図に示されるように、プリンタ1の装置本体2の上方には排紙トレイ36が設けられ、この排紙トレイ36の近傍には、使用者の各種操作に供される複数の操作キーや、各種情報を表示する画面を配置したフロントカバー5が設けられている。
また、この装置本体2の下方には給紙カセット4が配置され、その収容部40には、枚葉の用紙が積層された状態で収納されている。同図でみて収容部40の右上方には給紙ローラ46が設けられる。
【0023】
そして、用紙は、同図において給紙カセット4の右上方に向けて送出され、この送出された用紙は、装置本体2の内部でプリンタ1の前面に沿って上方に向けて搬送される。
また、給紙カセット4は、プリンタ1の前面側、つまり、図1において右方向に向けて引き出し可能に構成されており、この引き出した状態にて、収容部40に新たな用紙を補充したり、用紙を別の種類の用紙に入れ替え可能となる。
【0024】
装置本体2の内部には、給紙カセット4からの用紙搬送方向でみて下流側に搬送ローラ10、レジストローラ14、画像形成部16及び2次転写部30が順番に配置されている。
画像形成部16には4個のドラムユニット17が並設され、各ドラムユニット17には感光体ドラム18がそれぞれ設けられている(図1,2)。この感光体ドラム18は回転自在に設置され、図示しない駆動モータによって図1,2の時計回りにそれぞれ駆動する。
【0025】
本実施例の感光体ドラム18は、例えばφ30mmの直径で形成され、円筒形状の基材に有機系の感光層を有した単層OPCドラムである(OPC:Organic Photoconductor)。
詳しくは、この基材は肉厚1〜2mmのアルミニウム製の素管60で構成され(図4,5)、液状の有機感光剤を素管60上に塗布して感光層67,68が形成されている。そして、本実施例の感光層67,68は、電荷発生層及び電荷輸送層が一体の単一層である。
【0026】
また、この感光体ドラム18と給紙カセット4との間には露光部15が備えられており(図1)、この露光部15からは、レーザ光が各感光体ドラム18に向けてそれぞれ照射される。そして、これら図1,2に示されるように、各感光体ドラム18の周囲の適宜位置には、帯電器20、現像器24、中間転写ローラ13やクリーニング部50がそれぞれ設けられている。
【0027】
この帯電器20は、図2にも示される如くドラムユニット17の下部に位置し、感光体ドラム18に接する帯電ローラ21、及び帯電ローラ21の表面を研磨摺擦にて清掃するブラシを備えた摺擦ローラ22を有し、感光体ドラム18の感光層67,68を帯電させる。なお、帯電ローラ21は、例えばエピクロルヒドリンゴム製であり、例えばφ12mmの直径で形成されている。
【0028】
また、現像器24はドラムユニット17の左方に配置され、感光体ドラム18に対峙する現像ローラ25を有する。この現像ローラ25は図示しない駆動モータによって同図の反時計回りに駆動する。
なお、この図2の参照符号26はギャップ規制コロである。当該ギャップ規制コロ26は、現像ローラ25の両端に設けられており(図3)、感光体ドラム18に連れ回って現像ローラ25と感光体ドラム18とのギャップを設定する。
【0029】
画像形成部16はゴム製の中間転写ベルト(転写材)12を有し、当該中間転写ベルト12は各感光体ドラム18の上方に配置され、この中間転写ベルト12と排紙トレイ36との間には4個のトナーコンテナ23が配設されている(図1)。これら各トナーコンテナ23は、プリンタ1の背面側から前面側に向けて、マゼンタ用、シアン用、イエロー用、そして、ブラック用の順に配設され、このブラック用のトナーコンテナの容量が最も大きく構成される。
【0030】
2次転写部30には2次転写ローラ31が備えられ、この2次転写ローラ31は中間転写ベルト12に対して斜め下方から圧接可能に構成されている。これら中間転写ベルト12と2次転写ローラ31とは、トナー像を用紙に転写するためのニップ部を形成する。
また、用紙搬送方向でみて2次転写部30の下流側には、定着部32、排出分岐部34及び排紙トレイ36が順番に配置されている。
【0031】
本実施例では、2次転写部30と手差しトレイ3との間に両面印刷搬送路38が形成されている。この両面印刷搬送路38は、排出分岐部34から装置本体2の前面側で分岐して下方に向けて延び、レジストローラ14の上流側に連結している。
ここで、本実施例のトナーには、微量の外添剤(酸化チタン、シリカ、アルミナなど)が添加されている。上記のクリーニング部50は、図2に示されるように、感光体ドラム18の回転方向でみて中間転写ローラ13との転写位置の下流側にて、この感光体ドラム18に向けて開口したハウジング51を備えており、このハウジング51の適宜位置に、クリーニングブレード52やトナー回収部80を有している。
【0032】
具体的には、クリーニングブレード52は、ハウジング51の下端に固定される亜鉛鋼板の本体や、この本体に溶着されたポリウレタンゴム製のブレード部からなり、このブレード部のエッジが感光体ドラム18の回転軸線に沿って延びている。そして、当該エッジが感光体ドラム18の回転軸線よりも低い位置にてカウンタ方向で接し、感光体ドラム18の感光層67,68に付着した外添剤を含む残留トナーや放電生成物などを掻き取っている。
【0033】
このクリーニングブレード52によって感光体ドラム18の感光層67,68から掻き取られた残留トナー等は、トナー回収部80から回収される。
詳しくは、トナー回収部80は、ハウジング51の底面近傍にスクリュー88を有する。このスクリュー88は、図2でみてクリーニングブレード52の右側に設置されており、感光体ドラム18の回転軸線方向に沿って延び、その先端が図示しない駆動モータに連結されている。そして、この駆動モータが駆動すると、ハウジング51内の残留トナー等は、スクリュー88を経由して回収容器に集められる。
【0034】
ところで、本実施例のドラムユニット17では、各回転軸線を並べてみると、現像ローラ25、帯電ローラ21、並びに感光体ドラム18などの各幅は同じではない。
詳しくは、これら各構成の幅の関係を説明した図3に示される如く、この図3に破線で示された感光体ドラム18の基材幅は、図3に実線で示された帯電幅よりも広く設定される。なお、上述した転写ベルト12の幅は、感光体ドラム18の基材幅と帯電幅の間、或いはこの帯電幅と同等に設定される。
【0035】
また、この帯電幅は、図3に2点鎖線で示された現像幅よりも広く或いは同等に設定される。仮に帯電幅が現像幅よりも狭いと、この帯電幅の外側領域にトナーが付着し続けるからである。
さらに、この現像幅は、図3に1点鎖線で示された通紙幅よりも常に広く設定される。用紙の左右両端にもトナー像を形成可能にするためである。
【0036】
すなわち、感光体ドラム18の感光層67は、この感光体ドラム18の回転軸線方向でみた通紙幅の内側領域に該当する(中央感光層)。これに対し、感光体ドラム18の感光層68は、この感光体ドラム18の回転軸線方向でみた通紙幅の外側領域に該当し(端部感光層)、転写ベルト12の転写面でも用紙に接触しないため、画像を形成させない範囲になる。
【0037】
つまり、この後者の感光層68は、図3に1点鎖線で示された通紙幅の外側領域であって、図3に実線で示された帯電幅の内側領域、換言すれば、この図3の斜線で示された非画像領域76に相当し、帯電ローラ21のエッジ近傍に対峙するので、帯電ローラ21から感光層68への流れ込み電流が感光層67に比して増えてしまう。
【0038】
さらに、本実施例の如く外添剤を含むトナーは、現像バイアス電圧の印加によって、非画像領域76のうち図3に2点鎖線で示された現像幅の内側領域にも向かう。
このトナー自体は感光体ドラム18の感光層68に付着せず、現像器24に戻る。この非画像領域76は帯電幅の内側領域に該当するからである。
【0039】
一方、外添剤自体はトナーから脱離して非画像領域76の内寄り部分に取り残され、その後、この外添剤のみが感光体ドラム18の感光層68から転写ベルト12の転写面に転写されると、次回に接触する感光体ドラム18の非画像領域76の内寄り部分が外添剤で研磨されることになる。そして、この非画像領域76の内寄り部分は、マゼンタ用、シアン用、イエロー用、及びブラック用の総ての感光体ドラム18に形成されてしまう。
【0040】
そこで、感光体ドラム18の素管60の外径を部分的に小さくし、非画像領域76に相当する感光層68の膜厚を感光層67の膜厚よりも厚くしている。
具体的には、図3,4に示す非画像領域76,76のうち、一方の非画像領域76について説明すると、図4のV−V線からみた図5に示されるように、当該非画像領域76に対応した素管60の外径が、通紙幅の内側領域に対応した素管60の外径よりも例えば10μm(10×10−6m)以上小さく形成されており、この非画像領域76に対応した素管60にはくびれ溝(周方向溝)62が設けられている。
【0041】
このくびれ溝62は、その深さが5.0μm(5.0×10−6m)以上であり、感光体ドラム18の全周に亘って形成された底部63と、感光体ドラム18の回転軸線方向で底部63にそれぞれ連なる拡開斜面部64とを有する。そして、液状の有機感光剤を素管60に塗布すると、まず、くびれ溝62を有機感光剤で埋めた内側耐久層70が形成され、その膜厚は5.0μm以上になって通紙幅の内側領域に対応した素管60と略面一になる。なお、拡開斜面部64が素管60の外径に向けて広がっているので、有機感光剤を素管60に塗布しても内側耐久層70には空気が入り難い。
【0042】
続いて、この内側耐久層70を乾燥させた後、同じく液状の有機感光剤を素管60にさらに塗布すると、内側耐久層70の外側にはこの内側耐久層70に一体の感光層68が、また、通紙幅の内側領域に対応した素管60の外側には感光層67がそれぞれ形成され、感光層68の外径と感光層67の外径とが略同等になり、これら感光層67,68は段差の生じない略面一で連なる。
【0043】
再び図1に戻り、上記ドラムユニット17を搭載したプリンタ1が印刷を行う際は、給紙カセット4から給紙ローラ46により用紙が1枚ずつ分離して送出される。送出された用紙はレジストローラ14に到達する。このレジストローラ14は、用紙の斜め送りを矯正しつつ、画像形成部16で形成されるトナー画像との画像転写タイミングを計りながら、用紙を所定の給紙タイミングにて2次転写部30へと送出する。
【0044】
一方、図示しないコントローラには、印刷の元になる画像データが外部から受信可能に構成されている。この画像データは、文字や符号、図形、記号、線図、模様等の各種の画像がデータ化されたものである。そして、このデータに基づき、このコントローラでは光の照射などを制御する。
詳しくは、各感光体ドラム18に対してイレーサランプ19がそれぞれ点灯し(図2)、次いで、帯電器20が感光体ドラム18の感光層67,68をそれぞれ帯電する。続いて、露光部15が感光体ドラム18の感光層67,68にレーザ光をそれぞれ照射すると、各感光体ドラム18の感光層67,68には静電潜像が作られ、この静電潜像から各色のトナー像が形成される。
【0045】
各トナー画像は2次転写部30にて用紙に2次転写される。なお、感光体ドラム18の感光層67,68に残留したトナーはクリーニング部50で除去される。
続いて、用紙は未定着トナー画像を担持した状態で定着部32に向けて送られ、この定着部32にて加熱及び加圧され、トナー像が定着される。その後、定着部32から送出された用紙は排出ローラ35を介して排紙トレイ36に排出され、高さ方向に積層される。
【0046】
この片面印刷に対し、両面印刷を行う場合には、定着部32から排出された用紙は、排出分岐部34でその搬送方向が切り替えられる。つまり、片面に印刷された用紙は装置本体2内に引き戻され、両面印刷ユニット38に搬送される。続いて、この用紙はレジストローラ14の上流側に向けて送出され、2次転写部30に向けて再び送られる。これにより、用紙の未だ印刷がされていない方の面にトナー像が転写される。
【0047】
以上のように、本実施例によれば、感光体ドラム18の回転駆動によって感光体ドラム18の表面、つまり、感光層67,68には、その潜像をトナーで現像したトナー像が形成され、このトナー像が転写ベルト12に転写される。
帯電器20は、この感光層67,68に直接に接触して帯電しており、コロナ放電式の帯電器による場合に比してオゾンや窒素酸化物が生じないため、画像品質の向上を図ることができる。
【0048】
ここで、感光層68に対応した素管60にはくびれ溝62が設けられ、この感光層68は、くびれ溝62を有機感光剤で埋めた内側耐久層70の厚さ分だけ、通紙幅の内側領域の感光層67よりも厚くなるため、放電エネルギーの発生による感光体ドラム18の表面劣化を遅延させるし、外添剤の研磨による感光層68の磨耗進行の遅延も図ることができる。
【0049】
この点について詳述する。まず、図6(a)に示されるように、略面一の素管60に膜厚を同じにした感光層67,98を形成した場合には、帯電器20からの電圧が感光層67,98に直接に接触して印加されると、この感光層67,98のうち上述の非画像領域76に対応する感光層98は、磨耗の進行が早い。当該感光層98は帯電ローラ21のエッジ近傍に対峙するので放電範囲が広く、当該感光層98では、帯電ローラ21からの流れ込み電流が感光層67に比して増え、放電エネルギーによる感光体ドラム18の表面劣化が促進するからであり、これでは感光体ドラム18の寿命が短くなる。
【0050】
また、表面劣化による磨耗の進んだ当該感光層98では帯電器20からの電圧に耐えられずに感光層98を貫通するリークが生じ、電流は外方向に向けて逃げて感光層67が帯電されず、横黒筋などの異常画像を招く。
さらに、現像バイアス電圧が印加されても、上記非画像領域76のうち現像幅の内側領域のトナー自体は感光層98に付着しない。一方、外添剤自体はトナーから脱離して非画像領域76の一部分に取り残されて、この外添剤のみが感光層98から転写ベルト12の転写面に転写される。この現象は、転写面にその周方向に沿って白い帯が現れることからも分かる。そして、この白い帯で現れた箇所は研磨性能が高くなり、当該非画像領域76の一部分を通紙幅の内側領域よりも多く研磨し、この部分の感光体ドラム18の磨耗量が感光体ドラム18の寿命を特に短くする。
【0051】
しかし、本実施例によれば、図5に示されるように、非画像領域76に対してくびれ溝62を設け、感光層68の膜厚を厚く形成させる分だけ素管60の外径を予め小さくしておき、このくびれ溝62を有機感光剤で埋めている。このように、非画像領域76の感光層68を通紙幅の内側領域の感光層67よりも厚くすれば見かけの静電容量が大きくなり、帯電ローラ21から感光体ドラム18に放電する電流も少なくなるため、上記図6(a)の例に比して放電エネルギーの発生による感光体ドラム18の表面劣化の進行を遅らせることができるし、この感光層68を貫通するリークも確実に抑制できる。
【0052】
しかも、くびれ溝62を有機感光剤で埋めた内側耐久層70の厚さ分が、外添剤の研磨による感光層68の磨耗進行の遅延も図ることができる。
また、図6(b)に示される如く、略面一の素管60に膜厚に差を設けた感光層67,108を形成した場合、より具体的には、両端の感光層108の膜厚を、外側に突出した層110の厚さ分だけ、通紙幅の内側領域の感光層67よりも厚くすると、これら感光層67,108に大きな段差が生じ、帯電ローラ21に接触する感光層108と接触しない感光層67とが存在し、帯電ローラ21と感光体ドラム18の接触が不完全な部分では異常放電が発生する為、単に感光層両端の膜厚を厚くすると却って感光体ドラム18の表面劣化が助長されてしまう。
【0053】
しかしながら、本実施例によれば、図5に示される如く、非画像領域76に対応した感光層68の外径は、感光層67の外径と略同等に形成され、連なる感光層67,68が段差の生じない略面一になるので、これら感光層67,68への流れ込み電流が略同等になり、上記図6(b)のような非画像領域76の膜厚を単に厚くした場合に比して、当該非画像領域76の感光層68の磨耗を確実に抑制できる。
これらの結果、感光体ドラム18の長寿命化を達成できる。
【0054】
さらに、非画像領域76における素管60の外径が、通紙幅の内側領域における素管60の外径よりも10μm以上小さく、くびれ溝62の深さで云えば、通紙幅の内側領域よりも5.0μm以上深く素管60の肉厚未満の大きさである。つまり、くびれ溝62を有機感光剤で埋めた内側耐久層70が、有機感光剤の塗布上のばらつき程度の大きさ以上に明確に形成されており、放電及び外添剤に基づくこの感光層68の磨耗をより一層確実に抑制できる。
【0055】
また、感光層68の膜厚が感光層67の膜厚よりも5.0μm以上厚く、これがくびれ溝62を有機感光剤で埋める内側耐久層70の厚さに該当する。このように、内側耐久層70が、塗布上のばらつき程度以上の大きさで意図的に形成されていることから、放電及び外添剤に基づくこの感光層68の磨耗をより一層確実に抑制できる。
【0056】
さらに、単一の感光層67,68は、素管60上に例えばアンダーコート層、電荷発生層や電荷輸送層の順に積層させた場合に比して膜厚変動の影響を受け難く、感光体ドラム18の長寿命化に寄与する。一方、特に削られ易いため、感光層67,68の磨耗が当該感光体ドラム18に大きな影響を及ぼす懸念があるものの、上記くびれ溝62及び感光層68を形成すれば、この感光体ドラム18の特性を長期間に亘って維持可能になり、特に顕著な効果を奏する。
【0057】
さらにまた、上述したドラムユニット17を搭載すれば、良好な画像形成が長期間に亘って行われるため、プリンタ1の信頼性向上に寄与する。
本発明は、上記実施例に限定されず、特許請求の範囲を逸脱しない範囲で種々の変更を行うことができる。
例えば、上記実施例では、トナー像が感光体ドラムの上方で中間転写ベルトに転写しているが、この感光体ドラムの下方でベルトに転写しても良い。
【0058】
また、上記実施例では、中間転写ベルトを採用したプリンタ1で説明されている。しかし、本発明は、感光体ドラム18のトナー像を用紙に直接に転写する場合にも適用可能であり、本発明の転写材は用紙であっても良い。
さらに、上記実施例の感光層67,68は単一層で構成されているが、本発明は電荷発生層や電荷輸送層を積層した感光体ドラムにも適用可能である。
【0059】
さらにまた、この実施例では画像形成装置としてプリンタに具現化した例を示しているものの、本発明の画像形成装置は、複合機、複写機やファクシミリ等にも当然に適用可能である。
そして、これらいずれの場合にも上記と同様に、感光体ドラムの長寿命化を達成できるとの効果を奏する。
【符号の説明】
【0060】
1 プリンタ(画像形成装置)
12 中間転写ベルト(転写材)
17 ドラムユニット
18 感光体ドラム
20 帯電器
60 素管(基材)
62 くびれ溝(周方向溝)
67 感光層
68 感光層(端部感光層)
70 内側耐久層
76 非画像領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材上に有機系の感光剤による感光層が形成されており、その回転駆動によって前記感光層に帯電を経てトナー像が形成される感光体ドラムと、
この感光層に接触して帯電させる帯電器と、
前記感光体ドラムの回転軸線方向でみた通紙幅の外側領域であって帯電幅の内側領域における前記基材の外径をこの通紙幅の内側領域に比して小さくして形成された周方向溝と、
この周方向溝を前記有機系の感光剤で埋め、前記通紙幅の外側領域であって前記帯電幅の内側領域における感光層の外径をこの通紙幅の内側領域と略同等にして形成された端部感光層と
を具備することを特徴とするドラムユニット。
【請求項2】
請求項1に記載のドラムユニットであって、
前記感光体ドラムでは、前記感光層に帯電を経て形成された潜像が外添剤を含むトナーで現像されてトナー像を形成しており、
前記端部感光層には、前記周方向溝を前記有機系の感光剤で埋めた内側耐久層が形成されていることを特徴とするドラムユニット。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のドラムユニットであって、
前記周方向溝を有した前記基材の外径と前記通紙幅の内側領域における前記基材の外径との差が10×10−6m以上であることを特徴とするドラムユニット。
【請求項4】
請求項1又は2に記載のドラムユニットであって、
前記端部感光層の膜厚は、前記通紙幅の内側領域における感光層の膜厚よりも5.0×10−6m以上厚いことを特徴とするドラムユニット。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか一項に記載のドラムユニットであって、
前記感光層は、単一層で構成されていることを特徴とするドラムユニット。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか一項に記載のドラムユニットを搭載し、前記トナー像を転写材に転写することを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−141462(P2011−141462A)
【公開日】平成23年7月21日(2011.7.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−2562(P2010−2562)
【出願日】平成22年1月8日(2010.1.8)
【出願人】(000006150)京セラミタ株式会社 (13,173)
【Fターム(参考)】