説明

ナイセリアNspAタンパク質をリフォールディングする方法

【課題】 ブレブには、それらが、関係ない外膜タンパク質、または有害な外膜タンパク質を発現するかもしれないという不都合な点がある。そのため、有効な免疫応答を誘発するために好適な、リフォールディングされた立体構造の精製防御性外膜タンパク質を含んでなるナイセリア菌疾患に対するサブユニットワクチンを提供する必要性が依然として存在している。
【解決手段】 本発明は、リフォールディングされた単離NspAタンパク質、およびそれを製造する方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、NspAタンパク質、すなわちナイセリア・メニンジティディス(Neisseria meningitidis)菌の外膜タンパク質を、リフォールディングする方法、そのようにリフォールディングされたタンパク質、それらを含んでなる医薬組成物、ならびにナイセリア菌感染、とりわけ、限定されるものではないが、ナイセリア・メニンジティディス(Neisseria meningitidis)および/またはナイセリア・ゴノレア(Neisseria gonorrhoeae)などの細菌感染の治療、予防および診断におけるそれらの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
ナイセリア細菌株は多くのヒト病理の病原因子であり、それらに対して有効なワクチンを開発する必要性がある。特に、Neisseria gonorrhoeaeおよびNeisseria meningitidisが病変を引き起こすが、これらの病変はワクチン接種により治療することができる。
【0003】
Neisseria gonorrhoeaeは、世界で最もよく報告されており、年間6200万件が発症すると見積もられている性感染症の1つである淋病の病原体である(Gerbaseら 1998 Lancet 351; (Suppl 3) 2-4)。淋病の臨床症状としては、尿生殖路、咽喉または直腸の粘膜の炎症、および新生児の眼感染が挙げられる。女性の場合、上行性淋菌感染により、不妊症、子宮外妊娠、慢性骨盤内炎症性疾患および卵管卵巣膿瘍の形成を招く可能性がある。敗血症、関節炎、心内膜炎および髄膜炎は、随伴性淋病の合併症として生じる。
【0004】
抗生物質に対する耐性を有する多数の淋菌株が罹患率の増加および淋病に伴う合併症の一因になっている。抗生物質による淋病の治療に代わる魅力的な手段はワクチン接種によるその予防であるが、N. gonorrhoeae感染に向けたワクチンは現在存在していない。
【0005】
Neisseria meningitidis(髄膜炎菌)はヒト上気道からよく単離されるグラム陰性細菌である。この菌は菌血症および髄膜炎などの侵襲性の細菌性疾患を起こすことがある。症例のほとんどが乳幼児におけるものである。髄膜炎菌疾患の発生率は地理的、季節的および年次的な差異が見られる(Schwartz, B., Moore, P.S., Broome, C.V.; Clin. Microbiol. Rev. 2 (Supplement), S18-S24, 1989)。温帯の国々で最も多い疾患は血清型B株が原因として起こるものであり、その発生率は1〜10/100,000/年・総人口で変動し、より高い値に達することもある(Kaczmarski, E.B. (1997), Commun. Dis. Rep. Rev. 7: R55-9, 1995; Scholten, R.J.P.M., Bijlmer, H.A., Poolman, J.T.ら Clin. Infect. Dis. 16: 237-246, 1993; Cruz, C., Pavez, G., Aguilar, E.,ら Epidemiol. Infect. 105: 119-126, 1990)。
【0006】
血清型Aの髄膜炎菌が優位を占める流行は、主に中央アフリカで発生し、時に1000/100,000/年のレベルにまで達する(Schwartz, B., Moore, P.S., Broome, C.V. Clin. Microbiol. Rev. 2 (Supplement), S18-S24, 1989)。髄膜炎菌疾患全体からみて、ほとんど全ての症例が血清型A、B、C、W-135およびYの髄膜炎菌が原因となって引き起こされるものであり、四価のA、C、W-135、Y型多糖ワクチンが利用可能である(Armand, J., Arminjon, F., Mynard, M.C., Lafaix, C., J. Biol. Stand. 10: 335-339, 1982)。
【0007】
Neisseria meningitidis感染の頻度は、過去数十年間に大幅に増加している。これは多剤抗生物質耐性株の出現と免疫系の弱まった人の数の増加によると考えられる。標準的な抗生物質のいくつかまたは全てに対して耐性であるNeisseria meningitidis株が単離されることはもはや珍しいことではない。この現象によって、新たな抗微生物薬、ワクチン、薬物スクリーニング方法、およびこの生物についての診断学的検査のまだ満たされていない医学的必要性と需要が生じてきた。
【0008】
Martin DらのJournal of Biotechnology 83 (2000) 27-31は、現在、幼児の防御的な血清型共通免疫(protective group-common immunity)を刺激し得る有効なワクチンがないことを報告している。担体タンパク質とのコンジュゲーションにより現行の多糖ワクチンを改善するための取り組み、またはタンパク質ワクチンの基礎となり得る他の髄膜炎菌表面抗原を見つけるための取り組みがなされている。しかしながら、主要な外膜タンパク質の株間の可変性のために、それらの防御の有効性は、ごく限られた数の抗原的に関連のある株に限定されている。ナイセリア菌表面タンパク質A(本明細書ではNspAと呼ぶ)は、それが髄膜炎菌疾患に対する血清型共通ワクチンの開発のための潜在的ワクチン候補であることを示す特徴を有する。
【0009】
細胞で発現される組換えNspAは、このような新規抗微生物薬、ワクチン、薬物スクリーニング方法、および診断学的検査に用いるために作製されることが考えられる。しかしながら、タンパク質の発現の重大な制限の1つが多くの組換えタンパク質がそれらの生物活性のある立体構造へとフォールディングされる能力がないことである。脱フォールディングされたタンパク質種の凝集およびミスフォールディングによって、低収量の組換えタンパク質しか得られないことが多い。実際、タンパク質がその天然の活性な構造を有するようなタンパク質のリフォールディングが、分子生物学における最大の目標の1つである。
【0010】
生物活性のあるリフォールディングされた組換えタンパク質を得ることに関連した問題を鑑みて、非生存ベクター、例えば、細菌外膜小胞、すなわち「ブレブ」の使用が考えられてきた。OMブレブはグラム陰性細菌の二層膜の外膜から得られるものであり、数多くのグラム陰性細菌において実証されている(Zhou, Lら 1998. FEMS Microbiol. Lett. 163: 223-228)。しかしながら、ブレブには、それらが、関係ない外膜タンパク質(例えば、非防御性抗原または免疫優性であるが可変性のタンパク質)、または有害な外膜タンパク質(例えば、LPSなどの毒性分子または自己免疫応答の可能性ある誘導因子)を発現するかもしれないという不都合な点がある。そのため、有効な免疫応答を誘発するために好適な、リフォールディングされた立体構造の精製防御性外膜タンパク質を含んでなるナイセリア菌疾患に対するサブユニットワクチンを提供する必要性が依然として存在している。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】Gerbaseら, 1998 Lancet 351; (Suppl 3) 2-4
【非特許文献2】Schwartz, B., Moore, P.S., Broome, C.V.; Clin. Microbiol. Rev. 2 (Supplement), S18-S24, 1989
【非特許文献3】Kaczmarski, E.B. (1997), Commun. Dis. Rep. Rev. 7: R55-9, 1995
【非特許文献4】Scholten, R.J.P.M., Bijlmer, H.A., Poolman, J.T.ら Clin. Infect. Dis. 16: 237-246, 1993
【非特許文献5】Cruz, C., Pavez, G., Aguilar, E.,ら Epidemiol. Infect. 105: 119-126, 1990
【非特許文献6】Armand, J., Arminjon, F., Mynard, M.C., Lafaix, C., J. Biol. Stand. 10: 335-339, 1982
【非特許文献7】Martin Dら, Journal of Biotechnology 83 (2000) 27-31
【非特許文献8】Zhou, Lら 1998. FEMS Microbiol. Lett. 163: 223-228
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、NspAタンパク質をリフォールディングするための改善された方法を提供する。今や、本発明者らによって、部分精製された封入体からの活性タンパク質の回収を、さらなる精製を行う必要なく最大100%までの量に増加させることが可能であることが示された。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、リフォールディングされたNspAタンパク質、ならびに微生物性疾患の予防および治療をはじめとするそのようなタンパク質の使用方法、とりわけ、例えばサブユニットワクチンにおける該使用方法に関する。さらなる態様において、本発明は、微生物感染に関連する疾患およびこのような感染に関連する病的状態を検出するための診断アッセイに関する。
【0014】
発明の記載
本発明の1つの態様によれば、リフォールディングされた単離NspAタンパク質(本明細書においては「NspA」とも呼ぶ)が提供される。
【0015】
本発明の別の態様によれば、NspAタンパク質をリフォールディングする方法であって、NspAを3-ジメチルドデシルアンモニオプロパンスルホン酸(以下、SB-12と呼ぶ)を含んでなるアルカリ性リフォールディングバッファーと接触させることを含む方法が提供される。
【0016】
好ましくは、リフォールディングバッファーがエタノールアミンおよびSB-12を含んでなる。
【0017】
好ましくは、リフォールディングバッファーがpH 11である。
【0018】
好ましくは、SB-12が0.2〜1%または0.3〜0.8% SB-12である。
【0019】
好ましくは、SB-12が0.2% SB-12である。
【0020】
もう1つの好ましい実施形態では、SB-12が0.5% SB-12である。
【0021】
さらに好ましい実施形態では、SB-12が1% SB-12である。
【0022】
好ましくは、SB-12は精製されている。
【0023】
好ましくは、SB-12が、それをAl2O3カラムに通すことにより精製されている。
【0024】
好ましくは、エタノールアミンが約20mMのエタノールアミンである(最も好ましくは、約pH 11)。
【0025】
本発明のもう1つの態様によれば、以下の工程:
宿主細胞内でNspAを発現させる工程、
その宿主細胞を破壊してNspAを含む封入体を得る工程、
その封入体を洗浄する工程、
NspAおよび/またはその封入体を可溶化する工程、
その可溶化されたNspAをリフォールディングバッファーと接触させる工程、および
NspAからリフォールディングバッファーを除去する工程、
のうちの任意の1以上(好ましくは、全て)の工程を含む方法が提供される。
【0026】
本発明のもう1つの態様によれば、本発明の方法に使用するための、エタノールアミンおよびSB-12(例えば、上述の濃度のもの)を含んでなるリフォールディングバッファーが提供される。
【0027】
本発明のもう1つの態様によれば、本発明の方法により得られたか、または得ることが可能な、リフォールディングされた単離NspAタンパク質が提供される。
【0028】
本発明のもう1つの態様によれば、少なくとも1つの本発明のリフォールディングされた単離NspAタンパク質および製薬上許容される担体を含んでなる医薬組成物が提供される。
【0029】
好ましくは、その組成物中に存在するNspAタンパク質の少なくとも30%、50%、70%、または90%がリフォールディングされている。
【0030】
1つの実施形態では、医薬組成物がワクチン形態である。
【0031】
好ましくは、該組成物が少なくとも1種の他のナイセリア菌抗原を含んでなる。
【0032】
好ましくは、該組成物が少なくとも1種の他のナイセリア菌付着因子、または少なくとも1種の他のナイセリア菌外膜タンパク質、または少なくとも1種のナイセリア菌自己輸送体、または少なくとも1種のナイセリア菌毒素、または少なくとも1種のナイセリア菌鉄(Fe)獲得タンパク質をさらに含んでなる。最も好ましくは、リフォールディングされた単離NspAに加えて、少なくとも1種のナイセリア菌自己輸送体と少なくとも1種のナイセリア菌毒素とが存在するか、または少なくとも1種のナイセリア菌自己輸送体と少なくとも1種のナイセリア菌鉄獲得タンパク質とが存在するか、または少なくとも1種のナイセリア菌毒素と少なくとも1種のナイセリア鉄獲得タンパク質とが存在するか、または少なくとも1種のナイセリア菌自己輸送体と少なくとも1種のナイセリア菌鉄獲得タンパク質と少なくとも1種のナイセリア菌毒素とが存在するか、あるいはそれらの免疫原性断片が存在する。
【0033】
より好ましくは、本発明の医薬組成物は以下の分類のうち少なくとも1つから選択される少なくとも1種のさらなる抗原(またはその断片)を含んでなる:
FhaB、Hsf、NadA、PilC、Hap、MafA、MafB、Omp26、NMB0315、NMB0995およびNMB1119からなる群から選択される少なくとも1種のナイセリア菌付着因子、
Hsf、Hap、IgAプロテアーゼ、AspAおよびNadAからなる群から選択される少なくとも1種のナイセリア菌自己輸送体、
FrpA、FrpC、FrpA/C、VapD、NM-ADPRT、ならびにLPS免疫型 L2およびLPS免疫型 L3のいずれか一方またはその両方からなる群から選択される少なくとも1種のナイセリア菌毒素、
TbpA 高、TbpA 低、TbpB 高、TbpB 低、LbpA、LbpB、P2086、HpuA、HpuB、Lipo28、Sibp、FbpA、BfrA、BfrB、Bcp、NMB0964およびNMB0293からなる群から選択される少なくとも1種のナイセリア菌鉄獲得タンパク質、ならびに
PldA、TspA、FhaC、NspA、TbpA(高)、TbpA(低)、LbpA、HpuB、TdfH、PorB、HimD、HisD、GNA1870、OstA、HlpA、MltA、NMB 1124、NMB 1162、NMB 1220、NMB 1313、NMB 1953、HtrA、TspB、PilQおよびOMP85からなる群から選択される少なくとも1種のナイセリア菌膜結合タンパク質、好ましくは、外膜タンパク質。
【0034】
最も好ましくは、本発明の医薬組成物は以下の分類のうち少なくとも1つから選択される少なくとも1種のさらなる抗原(またはその断片)を含んでなる:
FhaB、HsfおよびNadAからなる群から選択される少なくとも1種のナイセリア菌付着因子、
HsfおよびHapからなる群から選択される少なくとも1種のナイセリア菌自己輸送体、
FrpA、FrpC、ならびにLPS免疫型 L2およびLPS免疫型 L3のいずれか一方またはその両方からなる群から選択される少なくとも1種のナイセリア菌毒素、
TbpA、TbpB、LbpAおよびLbpBからなる群から選択される少なくとも1種のナイセリア菌鉄獲得タンパク質、ならびに
PldA、TspA、TspB、PilQおよびOMP85からなる群から選択される少なくとも1種のナイセリア菌外膜タンパク質(またはその断片)。
【0035】
好ましくは、本発明の医薬組成物がNeisseria meningitidis由来のさらなる抗原を含んでなる。
【0036】
好ましくは、本発明の医薬組成物がNeisseria gonorrhoeae由来の抗原をさらに含んでなる。
【0037】
好ましくは、本発明の医薬組成物は少なくとも部分的にサブユニット調製物である。それは本発明のさらなるナイセリア菌抗原(好ましくは、発現がアップレギュレートされたもの)を含んでなるブレブ調製物と混合したサブユニット調製物であってもよいが、本発明の医薬組成物が全体として、本発明のさらなるナイセリア菌抗原がリフォールディング形態で存在しているか、またはさらなるナイセリア菌抗原の表面露出可溶性断片として存在しているサブユニット調製物であることもまた好ましい。
【0038】
好ましくは、本発明の医薬組成物が細菌莢膜多糖またはオリゴ糖をさらに含んでなる。
【0039】
好ましくは、該莢膜多糖またはオリゴ糖は、Neisseria meningitidis血清型A、C、Y、および/またはW-135、インフルエンザ菌(Haemophilus influenzae)b型、肺炎連鎖球菌(Streptococcus pneumoniae)、A群連鎖球菌(Group A Streptococci)、B群連鎖球菌(Group B Streptococci)、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)および表皮ブドウ球菌(Staphylococcus epidermidis)からなる群から選択される細菌由来であり、また、最も好ましくは、それがT-ヘルパーエピトープの供給源とコンジュゲートされている。
【0040】
本発明のもう1つの態様によれば、本発明のNspAタンパク質に対して免疫特異的な抗体が提供される。
【0041】
本発明のもう1つの態様によれば、ナイセリア菌感染を診断する方法であって、そのような感染の疑いがあるヒトをはじめとする動物由来の生体サンプル中に存在する本発明のNspAタンパク質、または該タンパク質に対して免疫特異的である抗体を、本発明のNspAタンパク質または抗体を利用して動物由来の生体サンプル中にNspAまたはNspAに対する抗体が存在するか否かを検出することにより同定することを含む方法が提供される。
【0042】
好ましくは、その方法がNeisseria meningitidis、最も好ましくは、Neisseria meningitidis血清型Bの診断に関するものである。
【0043】
もう1つの好ましい実施形態では、その方法がNeisseria gonorrhoeaeの診断に関するものである。
【0044】
本発明のもう1つの態様によれば、動物での免疫応答の惹起に使用するための医薬の製造における本発明のNspAタンパク質を含んでなる組成物の使用が提供される。
【0045】
1つの実施形態では、そのワクチンの使用は、ナイセリア菌感染の治療または予防のための医薬の製造におけるものである。
【0046】
1つの好ましい実施形態では、その使用がNeisseria meningitidis感染、最も好ましくは、Neisseria meningitidis血清型B感染の治療または予防のための医薬の製造におけるものである。
【0047】
もう1つの好ましい実施形態では、その使用がNeisseria gonorrhoeae感染の治療または予防のための医薬の製造におけるものである。
【0048】
本発明のさらにもう1つの態様によれば、ナイセリア菌疾患を有するヒトを治療するのに有用な、本発明のNspAタンパク質に対する少なくとも1種の抗体および好適な医薬担体を含んでなる医薬組成物が提供される。
【0049】
本発明のさらなる態様によれば、ナイセリア菌疾患の治療または予防のための医薬の製造における本発明の抗体の使用が提供される。
【0050】
1つの好ましい実施形態によれば、Neisseria meningitidis感染、最も好ましくは、Neisseria meningitidis血清型B感染が予防または治療される。
【0051】
もう1つの好ましい実施形態によれば、Neisseria gonorrhoeae感染が予防または治療される。
【発明を実施するための形態】
【0052】
詳細な説明
以下、添付の図面を参照し、限定されない実施例によって本発明の種々の好ましい特徴および実施形態を説明する。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】本発明の方法によりリフォールディングしたNspAと変性NspAとを比較したSDS-PAGEゲルを示す。さらに詳細には、図1はクーマシーブルー染色した14%PAGEにおけるリフォールディングされ精製されたNspAの熱変性性を示す。n=準非変性条件で泳動したリフォールディングされ精製されたNspA、およびd=変性条件で泳動したリフォールディングされ精製されたNspA。分子量マーカーを右側に示している。
【図2】実施例に使用したH44/76 NspAのヌクレオチド配列およびアミノ酸配列を示す。
【図3】リーダー配列を含むNspAのヌクレオチドおよびアミノ酸を示す。
【0054】
概して、本明細書において記述する技術は当技術分野では周知のものであるが、特に、Sambrookら, Molecular Cloning, A Laboratory Manual (1989)およびAusubelら, Short Protocols in Molecular Biology (1999) 第4版, John Wiley & Sons, Inc(ならびに完全版Current Protocols in Molecular Biology)を参照してもよい。
【0055】
本明細書において「含んでなる(comprising、compriseおよびcomprises)」とは、あらゆる場合において、所望により、用語「からなる(consisting of、consist ofおよびconsists of)」との置き換えがそれぞれ可能であることが本発明者らにより意図されている。
【0056】
方法
本発明は、NspAタンパク質の正確なフォールディング/リフォールディングを促進する方法であって、アルカリ性リフォールディングバッファーにおける界面活性剤SB-12の使用を伴う方法を提供する。
【0057】
通常、本発明の方法は、組換えにより作製された、脱フォールディング形態またはミスフォールディング形態で得られるNspAのリフォールディングを助けるために使用される。すなわち、組換えにより作製されたタンパク質をリフォールディングバッファーと接触させることによって、ミスフォールディングにより不活性であるか、かつ/またはそのタンパク質が発現された宿主細胞からの(例えば、細菌封入体からの)抽出の結果として脱フォールディングされている組換えタンパク質を、脱フォールディングし、リフォールディングし、および/または再活性化することができる。このようなプロセスは「再生(reconditioning)」とも呼ばれる。
【0058】
本発明の方法は、NspAのフォールディングされた立体構造を維持するために、例えば、貯蔵の際の保存性を高めるために、用いてもよい。貯蔵条件下では、正確なフォールディングが破壊される結果として、多くのタンパク質がその活性を失う。本発明のリフォールディングバッファーが存在すると、タンパク質が脱フォールディング形態になる傾向が減少するか、または逆転するため、その保存性が著しく高まる。
【0059】
本発明の方法は、貯蔵、変性条件への暴露またはその他によりミスフォールディング形態となったNspAの正確なフォールディングを促進するために使用してもよい。よって、本発明はNspAを再生するために使用し得る。例えば、本発明に従って、再生を必要としているNspAをリフォールディングバッファーと接触させればよい。
【0060】
本発明はまた、NspAタンパク質の構造を改変する方法も提供する。構造変化としては、フォールディング、脱フォールディングおよびリフォールディングが挙げられる。それらの改変によって、分子の収量、比活性および/または質を向上させる効果を有することが好ましい。この改変は、通常、合成後に不正確にフォールディングされた分子を再可溶化し、再生し、および/または再活性化することにより達成し得る。
【0061】
よって、「再生(reconditioning)」および「再活性化」とは、in vitro手法を含む。in vitro手法の特定の例としては、尿素または塩化グアニジウムなどの強力な変性剤を用いて細胞抽出物(例えば、封入体)から可溶化したタンパク質のプロセシングが挙げられる。
【0062】
「リフォールディングする」、「再活性化する」および「再生する」とは、互いに排他的であることを意図するものではない。例えば、尿素を用いて恐らく変性された不活性タンパク質は、脱フォールディング構造をとっていることがある。そこで、この不活性タンパク質を、本発明のリフォールディングバッファーを用いてリフォールディングして、それによりそのタンパク質を再活性化し得る。ある状況において、リフォールディングされた/再活性化されたタンパク質の比活性が、不活性化/変性する前のタンパク質に比べて高まる場合がある:これは「再生」と呼ばれる。
【0063】
上記分子は、通常、フォールディングを必要とする脱フォールディングされた(unfolded)タンパク質か、またはミスフォールディングされた(misfolded)タンパク質である。しかしながら、上記分子は、フォールディングされた状態に維持されるべきフォールディングされているタンパク質であってもよい。
【0064】
本発明は少なくとも2つの状況を想定している。第1の状況は、フォールディングされるべきタンパク質が脱フォールディング状態か、またはミスフォールディング状態、あるいはその両方の状態にある状況である。この場合においては、本発明の方法によりその正確なフォールディングが促進される。第2の状況は、タンパク質が実質的にすでにその正確にフォールディングされた状態にあり、すなわち、その全てまたは大部分が正確にまたはほぼ正確にフォールディングされている状況である。この場合においては、本発明の方法は、フォールディングされた状態を好むようにフォールディング/脱フォールディングの平衡に影響を及ぼすことによりタンパク質のフォールディングされた状態の維持にはたらく。これはすでに実質的に正確にフォールディングしているタンパク質の活性の喪失を防止する。これらおよびその他の偶然の態様は、タンパク質のフォールディングの「促進」への言及により範囲に含まれる。
【0065】
本明細書において、タンパク質は、その少なくとも一部がその正確なまたは所望の二次または三次構造をまだ獲得していない場合には脱フォールディング状態にある。タンパク質は、それが少なくとも一部が不正確なまたは望まない二次または三次構造を獲得している場合には、ミスフォールディング状態にある。タンパク質構造を評価するための技術、例えば円偏光二色性などが、当技術分野では公知である。
【0066】
本発明のリフォールディングバッファーは、本明細書において「SB-12」と記載する3-ジメチルドデシルアンモニオプロパンスルホン酸(N-ドデシル-N,N-ジメチル3-アンモニオ-1-プロパンスルホネートとも呼ばれる)を含む。SB-12はFluka AGなどの商業的供給源から入手可能である。SB-12は非常に好ましくはあるものの、SB12のその他の塩の使用、ならびにSB-12の誘導体またはSB-12関連分子もまた使用してよい。いずれの理論にも拘束されるものではないが、本発明者らはSB-12の希釈ステップ(または一般にSB-12の存在)によってタンパク質に、タンパク質の天然のin vivo環境とよく似た、タンパク質にとっての疎水性環境がもたらされると考えている。
【0067】
SB-12は界面活性剤であり、SB-12の濃度は一般的にミセル形成に必要な濃度であるということから少なくとも約0.2%(w/v)であるはずである。よって、SB-12の濃度は約0.2%〜約5.0%、約0.3%〜約4.0%、約0.4%〜約3.0%、または約0.5%〜約2.0%であってよい。好ましくは、その濃度が約0.2%、0.3%、0.4%、0.5%、0.6%、0.7%、0.8%、0.9%または1.0%である。特に好ましい実施形態では、0.5% SB-12が使用される。「約」とは、好ましくは、記載した数値+/-10%を意味するが、最も好ましくは、記載した数そのものであることである。
【0068】
好ましい実施形態では、SB-12が精製される。本発明者らは、非精製SB-12と比べると、精製されたSB-12を用いることによりフォールディングが改善されることが分かった。SB-12の濃縮液を、例えば、メタノール/クロロホルム(1:1)中で用いるAl2O3クロマトグラフィーカラムに通すことによりSB-12を使用前に精製することが好都合であるが、SB-12の精製にはいずれの好適な方法を用いてもよい。
【0069】
本発明者らは、リフォールディング効率を最大にするためには変性したタンパク質の希釈をアルカリ性環境において行う必要があることを見出した。好ましくは、リフォールディングバッファーのpHは約11.0である。好ましくは、アルカリ性環境がエタノールアミンを使用することにより得られる。この好ましい実施形態では、リフォールディングバッファーがSB-12およびエタノールアミンを含んでなる。便宜には、20mMのエタノールアミンが使用されるが、50mMのような他の濃度が有用である場合もある。
【0070】
本発明者らは、リフォールディングバッファー中に1:20希釈したNspAが好ましいが、1:10のような他の比を用いてもよいことを見出した。リフォールディングバッファーでの5倍希釈もまた用いてもよい。
【0071】
本発明の方法によりプロセシングしようとするNspAは、通常、組換えNspAを発現する宿主細胞の細胞抽出物から得られる。宿主細胞としては、大腸菌(E. coli)などの原核生物、酵母および昆虫細胞(バキュロウイルス系は非常に高いレベルのタンパク質発現が可能である)が挙げられる。宿主細胞におけるNspAの発現は、収量を最大にする高いレベルにあることが好ましい。組換えNspAの発現のさらなる詳細は後述する。
【0072】
本発明者らは、本発明が、成熟NspAタンパク質、すなわち、リーダーまたは分泌配列、プレ−またはプロ−あるいはプレプロ−タンパク質配列を含まないタンパク質、また、タンパク質一般のリフォールディングに用いると最も効果的であることを見出した。通常、NspAに関して、これはシグナルペプチド(アミノ酸1〜19)をもたないタンパク質を発現させることを意味する。従来の精製技術においては、ヘキサ-ヒスチジンペプチド(pQEベクター(Qiagen, Inc.)として提供されており、また、Gentzら, Proc. Natl. Acad. Sci., USA 86: 821-824 (1989)に記述されている)やHAペプチドタグ(Wilsonら, Cell 37: 767 (1984))などの精製を容易にするマーカー配列を利用することが一般的である。本発明者らは、このようなマーカー配列が存在しない場合に本発明の方法が最も効果的であることを見出した。
【0073】
NspAの大部分が不溶性であるため、細胞抽出物(例えば、封入体)の通常不溶性の成分を可溶化してNspAの抽出を最大にする技術が一般に使用されると思われる。NspAタンパク質を封入体から調製し、抽出し、続いてそれらを可溶化するいずれの従来の技術も使用し得る。このような技術は、例えば、JA Wiley & Sons発行の"Current Protocols in Protein Science"に記載されている。このような技術としては、一般に以下のものが挙げられる。
【0074】
細胞溶解−例えば、フレンチプレスまたは超音波処理により、封入体を放出することを目的とする。一般に、溶解前に細胞をTEバッファーなどの冷バッファーに入れる。超音波処理はBranson製ソニファイアーを使用して行ってもよい。超音波処理は界面活性剤、例えば、BrijまたはTritonの存在下で行ってもよい。次いで、細胞溶解物中の封入体を低速遠心分離によりペレット化する。それらの細胞を溶解前にリゾチームで前処理してもよい。前処理の目的は洗浄工程中のペプチドグリカンおよび外膜タンパク質混入物の除去を手助けすることである。溶解した細胞を遠心分離により清澄化し、その上清は廃棄する。
【0075】
封入体の洗浄−細胞溶解物から回収された封入体から細胞壁および他の外膜成分混入物を除去することを目的とする。一般に、ペレットを、例えば、TEバッファーなどのバッファーおよび/またはTritonなどの界面活性剤を含む洗浄バッファーに再懸濁する。次いで、その懸濁液を再懸濁し、上清を廃棄する。この工程を上清が清澄化するまで繰り返す。必要であれば、洗浄したペレットを冷凍保存することができる。
【0076】
洗浄したペレット中の組換えタンパク質の量は以下の基準を用いて推定し得る:(1)1%の発現レベルが1g湿潤細胞当たり約1mg組換えタンパク質に相当する。(2)洗浄したペレット中の高度に凝集した組換えタンパク質の回収はそれらの細胞中にもともと含まれているものの約75%である。(3)全洗浄ペレットタンパク質の約60%は組換えにより生成されたものである。組換えタンパク質の全量は、全タンパク質濃度の測定によるか、または洗浄したペレットをSDS-PAGEによって分析してタンパク質成分の割合を決定することにより直接決定することができる。
【0077】
タンパク質の可溶化−次いで、洗浄したペレットから抽出タンパク質を抽出し、タンパク質−タンパク質相互作用を断つ変性剤を用いてデフォールディングし、タンパク質を脱フォールディングして、それが脱フォールディング状態の単量体で構成されるようにする。変性剤としては、グアニジン:HCl(例えば、6Mグアニジン:HCl)および/または尿素(例えば、8M尿素)が挙げられる。残存する不溶性物質は、一般に、超遠心分離(例えば、100,000g×1時間)により除去することができる。その抽出物は、ペレット化した後に冷凍保存してもよい。
【0078】
可溶化された細胞抽出物を、所望により、本発明の方法に従ってリフォールディングバッファーと接触させる前に、例えば、種々のアフィニティークロマトグラフィー技術により部分精製してもよい。
【0079】
次いで、可溶化された細胞抽出物を本発明に従ってリフォールディングバッファーで希釈する。必ずしもそうする必要はないが、通常、室温で一晩攪拌しておく。
【0080】
このように、本発明のリフォールディング/再生方法における出発物質は、通常、変性タンパク質を含む、尿素/塩化グアニジウムなどの薬剤の溶液である。あるいは、またはさらに、可溶性タンパク質サンプルを、特に、リフォールディングの前に好適な変性剤を添加して変性させてもよい。
【0081】
本発明の方法はまた、分子シャペロンを利用して行ってもよい。シャペロニンなどのシャペロンは、タンパク質のフォールディングにおける構造の化学修飾は触媒しないが、その正確な構造的整列を容易にすることによりタンパク質の正確なフォールディングを促進するという点で、非酵素的手段によりタンパク質のフォールディングを促進するタンパク質である。分子シャペロンは当技術分野では周知であり、その数種類のファミリーが同定されている。本発明では、例えば、以下の非網羅的な群から選択される分子シャペロンを含む分子的シャペロン分子を使用してよい。
【0082】
p90カルネキシン、HSPファミリー、HSP70ファミリー、DNA K、DNAJ、HSP60ファミリー(GroEL)、ER関連シャペロン、HSP90、Hsc70、sHsps; SecA; SecB、トリガー因子、ゼブラフィッシュ hsp 47、70および90、HSP 47、GRP 94、Cpn 10、BiP、GRP 78、C1p、FtsH、Ig不変鎖、ミトコンドリアhsp70、EBP、ミトコンドリアm-AAA、酵母 Ydj1、Hsp104、ApoE、Syc、Hip、TriCファミリー、CCT、PapDならびにカルモジュリン(参考文献としてはWO99/05163を参照)。
【0083】
本発明の方法ではまた、フォルダーゼを使用してもよい。一般論として、フォルダーゼは、フォールディングタンパク質内の結合の再配列または異性化を触媒するその酵素活性を通じてタンパク質のフォールディングの促進に関与する酵素である。よって、それらは、不安定なまたは非天然の構造状態にあるタンパク質と結合し、結合の再配列についての酵素的触媒作用なしに正確なフォールディングを促進する分子シャペロンとは区別されるる。フォルダーゼの多くの種類が知られており、それらは動物、植物および細菌に共通している。これらのものとしては、ペプチジルプロリルイソメラーゼおよびチオール/ジスルフィドオキシドレダクターゼが挙げられる。本発明では、共有結合の再配列を通じてタンパク質のフォールディングを促進することができるフォルダーゼのいずれかを使用してもよい。
【0084】
リフォールディング/再生方法の最後に、リフォールディングされたNspAを好適なストレージバッファーに対する透析および/または好適なストレージバッファーへの脱塩カラムの使用により脱塩してもよい。好適なバッファーとしては、25mMリン酸ナトリウム、150mM NaClおよび0.1%PEG 6000(pH 7.4)が挙げられる。
【0085】
ベクター、宿主細胞、発現系
本発明では、少なくともNspAタンパク質をコードするポリヌクレオチドを含んでなるベクター、本発明のベクターを用いて遺伝子操作される宿主細胞、および組換え技術によるNspAタンパク質の生産を使用してもよい。DNA構築物から誘導されるRNAを用いて無細胞翻訳系を使用してもこのようなタンパク質を生産することができる。
【0086】
本発明の組換えタンパク質は、当業者には周知の方法により、発現系を含む遺伝子操作された宿主細胞から調製し得る。
【0087】
本発明のタンパク質の組換え生産に向けて、宿主細胞を、本発明の発現系もしくはその一部またはポリヌクレオチドを組み込むように遺伝子操作することができる。宿主細胞へのポリヌクレオチドの導入は、Davis,ら, BASIC METHODS IN MOLECULAR BIOLOGY, (1986)およびSambrook,ら, MOLECULAR CLONING: A LABORATORY MANUAL, 第二版, Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, N.Y. (1989)などの多くの標準的な実験室マニュアルに記載される方法、例えば、リン酸カルシウムトランスフェクション、DEAE-デキストラン媒介トランスフェクション、トランスベクション(transvection)、マイクロインジェクション、カチオン性脂質媒介トランスフェクション、エレクトロポレーション、形質導入、スクレープ・ローディング(scrape loading)、弾丸導入(ballistic introduction)および感染によって行うことができる。
【0088】
好適な宿主の代表的な例としては、細菌細胞、例えば、連鎖球菌、ブドウ球菌、腸球菌、大腸菌、ストレプトミセス、シアノバクテリア、枯草菌(Bacillus subtilis)、Moraxella catarrhalis、インフルエンザ菌およびNeisseria meningitidisの細胞; 真菌細胞、例えば、酵母、Kluveromyces属、サッカロミセス(Saccharomyces)属、担子菌、Candida albicansおよびアスペルギルス(Aspergillus)属の細胞; 昆虫細胞、例えば、ショウジョウバエS2およびスポドプテラ(Spodoptera) Sf9細胞; 動物細胞、例えば、CHO、COS、HeLa、C127、3T3、BHK、293、CV-1およびBowes黒色腫細胞; および植物細胞、例えば、裸子植物または被子植物細胞が挙げられる。
【0089】
本発明のタンパク質の生産には多くの種類の発現系が使用できる。このようなベクターとしては、とりわけ、染色体、エピソームおよびウイルス由来のベクター、例えば、細菌プラスミド由来、バクテリオファージ由来、トランスポゾン由来、酵母エピソーム由来、挿入エレメント由来、酵母染色体エレメント由来のベクター、バキュロウイルス、SV40のようなパポバウイルス、ワクシニアウイルス、アデノウイルス、鶏痘ウイルス、仮性狂犬病ウイルス、ピコルナウイルス、レトロウイルスおよびアルファウイルスなどのウイルス由来のベクター、ならびにこれらの組合せに由来するベクター、例えば、コスミドやファージミドのようなプラスミドとバクテリオファージの遺伝的エレメントに由来するものが挙げられる。発現系構築物は、発現を引き起こすだけでなく発現を調節する制御領域を含んでいてもよい。一般に、この関連で、ポリヌクレオチドを維持し、増殖させ、もしくは発現するのに好適で、および/または宿主においてタンパク質を発現するのに好適な系またはベクターを発現に使用してもよい。例えば、Sambrookら, MOLECULAR CLONING, A LABORATORY MANUAL, (前掲)に記載されているような、種々の周知で日常的に使用される技術のいずれかにより好適なDNA配列を発現系に挿入することができる。
【0090】
真核生物の組換え発現系において、翻訳されたタンパク質を小胞体内腔に、細胞周辺腔に、または細胞外環境に分泌させるためには、発現されるタンパク質に好適な分泌シグナルを組み込むとよい。これらのシグナルはそのタンパク質に対して内因性であってもよいし、またはそれらが異種シグナルであってもよい。
【0091】
本発明のタンパク質は、本発明の方法により組換え細胞培養物から回収し、精製することができる。
【0092】
NspAタンパク質
本発明は、リフォールディングされた単離NspAタンパク質を提供する。本明細書において「タンパク質」とは、「ポリペプチド」を包含する。「単離」とは、NspAタンパク質が、それが通常関連している他のタンパク質を含んでいないことを意味する。NspAタンパク質は組換えタンパク質であってもよい。「組換え」とは、タンパク質が分子生物学の適用により得られたものであることを意味する。しかしながら、その方法は、リフォールディング、または脱フォールディングとリフォールディングによる精製を必要とする天然または合成タンパク質にも適用できる。好ましくは、本発明のリフォールディングされた単離NspAは、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、または99%を超える純度であるように精製されている。最も好ましくは、本発明のNspAが、他のナイセリア菌タンパク質および/またはそれが作製された宿主細胞の他のタンパク質を40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、または99%を超えて含まないという点において生物学的に純粋である。
【0093】
本明細書においてタンパク質が特に記載される場合、それが天然の全長タンパク質への言及であることが好ましいが、それがその抗原性断片(とりわけ、サブユニットワクチンとの関連において)も包含することもある。これらは、タンパク質のアミノ酸配列由来の、連続した、少なくとも10個のアミノ酸、好ましくは、20個のアミノ酸、より好ましくは、30個のアミノ酸、より好ましくは、40個のアミノ酸、または、最も好ましくは、50個のアミノ酸を含むまたは含んでなる断片である。さらに、抗原性断片は、ナイセリア菌タンパク質に対して産生された抗体または哺乳類宿主のナイセリア菌感染により産生された抗体と免疫学的に反応する断片を意味する。抗原性断片はまた、有効量にて投与したときに、ナイセリア菌感染に対する防御免疫応答を誘導する断片も含み、より好ましくは、その断片がN. meningitidis感染および/またはN. gonorrhoeae感染に対して防御的であり、最も好ましくは、その断片がN. meningitidis血清型B感染に対して防御的である。
【0094】
本発明はまた、ある残基が類似特性を有する別の残基によって置換されることによる保存的アミノ酸置換により参照タンパク質と異なるタンパク質である本明細書に記載のタンパク質の変異体も含む。このような典型的な置換はAla、Val、LeuおよびIle間; SerおよびThr間; 酸性残基AspおよびGlu間; AsnおよびGln間;および塩基性残基LysおよびArg間; または芳香族残基PheおよびTyrである。複数個、5〜10個、1〜5個、1〜3個、1〜2個または1個のアミノ酸がいずれかの組合せで置換、欠失、または付加されている変異体が特に好ましい。
【0095】
これまで調べられたあらゆるNeisseria meningitidis株の外膜で高度に保存されたNspAタンパク質が見つかったことが報告されている(Martin Dら Journal of Biotechnology 83 (2000) 27-31)。Martin Dらは、NspAタンパク質が無処理の髄膜炎菌株の表面に暴露されていることも示している。NspAタンパク質はNeisseria gonorrhoeaeでも同定されている(Planteら Infect. Immun. 67 (1999) 2855-2861)。髄膜炎菌nspA遺伝子は、染色体DNAからPCRにより直接増幅してもよい(Martin Dら & Planteら 1999 前掲)。NspAはWO96/29412にも記載されている。
【0096】
本発明により作製されるNspA、その断片または変異体は、好ましくは、野生型NspAタンパク質の免疫活性(例えば、単離されたナイセリア菌ブレブで認められるような活性)を発揮する産物である。好ましくは、それが以下のうち少なくとも1つを示す:
野生型NspAを認識する抗体の産生を誘導する能力(本発明のNspAタンパク質が担体に結合される場合、必要に応じて);
実験感染から防御することができる抗体の産生を誘導する能力;および
動物に投与した場合にNeisseria meningitidis感染および/またはNeisseria gonorrhoeae感染などのナイセリア菌感染から防御することができる免疫学的応答の生起を誘導する能力。
【0097】
本発明のNspAタンパク質は、ナイセリア菌、とりわけ、Neisseria meningitidesによって引き起こされる疾患を予防、治療および診断するための予防的、治療的および診断的組成物において有用であるが、例えば、Neisseria gonorrhoeaeまたはNeisseria lactamicaに関しても同様に適用されうる。
【0098】
本発明のNspAタンパク質に関しては、標準的な免疫学的技術を利用して、それを免疫原として、またワクチンとして、使用してもよい。特に、モノクローナルまたはポリクローナル抗NspA抗体を産生させるか、またはナイセリア菌疾患に対する防御免疫応答の生起を誘導するために、任意の好適な宿主に製薬上有効な量のNspAタンパク質を注入してもよい。投与の前に、NspAタンパク質を好適なビヒクル中に製剤化してもよく、こうして、本発明者らは製薬上有効な量の、本発明の1種以上のタンパク質を含んでなる医薬組成物を提供する。本明細書において「製薬上有効な量」とは、感染を治療または予防するのに十分な力価の抗体をもたらすNspAタンパク質(または本発明の他のタンパク質)の量を指す。本発明の医薬組成物はまた、疾患の治療または予防に有用な他の抗原も含んでいてもよい。
【0099】
本発明のNspAタンパク質はまた、感染についての診断学的検査の基礎となり得る。例えば、本発明は、ナイセリア菌抗原を含有するか、または含有する疑いがある生体サンプルにおいてナイセリア菌抗原を検出する方法であって、
本発明のタンパク質を用いて抗NspA抗体を作製すること、
患者から生体サンプルを単離すること、
抗NspA抗体またはそのフラグメントをその生体サンプルとともにインキュベートすること、および
結合した抗体または結合したフラグメントを検出すること、
を含む方法を提供する。
【0100】
本発明はまた、NspAタンパク質に対して特異的な抗体を、該抗体を含有するかまたは含有する疑いがある生体サンプルにおいて検出する方法であって、
患者から生体サンプルを単離すること、
本発明のNspAタンパク質をその生体サンプルとともにインキュベートすること、および
結合した抗原を検出すること、
を含む方法も提供する。
【0101】
この診断学的検査は、ELISAおよびラジオイムノアッセイをはじめとするいくつかの形で行い得る。
【0102】
そのような適用についてのさらなる詳細は後述する。
【0103】
抗体
本発明のタンパク質を免疫原として用い、このようなタンパク質に対して免疫特異的な抗体を産生させることができる。
【0104】
本発明のある好ましい実施形態では、本発明のNspAタンパク質に対する抗体が提供される。
【0105】
本発明のタンパク質に対して産生される抗体は、本発明のタンパク質、またはそのいずれかまたは両方についてのエピトープを有する断片、そのいずれかまたは両方についての類似体を、日常的に使用するプロトコールを用いて、動物、好ましくは、非ヒトに投与することにより得ることができる。モノクローナル抗体の調製では、連続継代細胞系培養により産生される抗体を提供する当技術分野で公知のいずれの技術も利用することができる。例としては、Kohler, G.およびMilstein, C., Nature 256: 495-497 (1975); Kozborら, Immunology Today 4: 72 (1983); Coleら, MONOCLONAL ANTIBODIES AND CANCER THERAPY, Alan R. Liss, Inc. (1985)の77-96頁に記載のものなどの種々の技術が挙げられる。
【0106】
一本鎖抗体の産生についての技術(米国特許第4,946,778号)を本発明のタンパク質に対する一本鎖抗体の産生に適合させることができる。また、トランスジェニックマウス、または他の生物または哺乳類などの動物も、本発明のタンパク質に対して免疫特異的なヒト化抗体の発現に使用し得る。
【0107】
あるいは、ファージディスプレイ技術を利用して、本発明のタンパク質に対して結合活性を有する抗体遺伝子を、抗NspAを生成することについてスクリーニングされたヒト由来のリンパ球のPCR増幅したv-遺伝子のレパートリーから選択してもよいし、またはナイーブ・ライブラリー(McCafferty,ら, (1990), Nature 348, 552-554; Marks,ら, (1992) Biotechnology 10, 779-783)から選択してもよい。これらの抗体の親和性も、例えば、チェーンシャッフリング法(chain shuffling)(Clacksonら, (1991) Nature 352: 628)により改善することができる。
【0108】
上記の抗体を、本発明のNspAタンパク質を発現するクローンを単離または同定し、そのタンパク質またはポリヌクレオチドを、例えば、アフィニティークロマトグラフィーにより精製するために使用してもよい。
【0109】
こうして、とりわけ、本発明のNspAタンパク質に対する抗体は、感染、特に、細菌感染を治療するために使用し得る。
【0110】
好ましくは、抗体またはその変異体を、個体における免疫原性を低下させるように改変する。例えば、その個体がヒトである場合、その抗体は、最も好ましくは、例えば、Jonesら (1986), Nature 321, 522-525またはTempestら, (1991) Biotechnology 9, 266-273に記載されているようにして、ハイブリドーマ由来の抗体の相補性決定領域がヒトモノクローナル抗体に移植されている、「ヒト化された」抗体であってよい。
【0111】
本発明のタンパク質をレシピエントに投与することにより、レシピエントが特定のワクチンによるチャレンジに応答して産生される免疫グロブリンの供給源としての役割を果たすようにすることができる。こうして試験した被験体から提供されるであろう血漿からは、従来の血漿分画法によって過免疫グロブリンが得られるであろう。ナイセリア菌感染に対する抵抗性を与えたり治療したりするために、過免疫グロブリンは別の被験体に投与されうる。本発明の過免疫グロブリンは、乳児、免疫力低下個体、または治療が必要であってその個体にワクチン接種に応答して抗体を生成させるだけの時間がない場合のナイセリア菌疾患の治療または予防のために特に有用である。
【0112】
本発明のさらなる態様は、本発明の医薬組成物と反応するモノクローナル抗体(またはそのフラグメント;好ましくは、ヒト抗体またはヒト化抗体)を含んでなる医薬組成物であり、これを使用して、グラム陰性細菌、好ましくは、ナイセリア菌、より好ましくは、Neisseria meningitidisまたはNeisseria gonorrhoeae、最も好ましくは、Neisseria meningitidis血清型Bによる感染を治療または予防することができる。
【0113】
このような医薬組成物は、本発明の2種以上の抗原に対して特異性を有する、任意のクラスの免疫グロブリン全体、例えば、IgG、IgM、IgA、IgDまたはIgE、キメラ抗体またはハイブリッド抗体であり得るモノクローナル抗体を含んでなる。それらはまた、ハイブリッドフラグメントを含むフラグメント、例えば、F(ab')2、Fab’、Fab、Fvなどであってもよい。
【0114】
モノクローナル抗体を作製する方法は当技術分野では周知であり、それらの方法としては、脾細胞の骨髄腫細胞との融合(KohlerおよびMilstein 1975 Nature 256; 495; Antibodies - a laboratory manual HarlowおよびLane 1988)が挙げられる。あるいは、モノクローナルFvフラグメントを好適なファージディスプレイライブラリーをスクリーニングすることにより得てもよい(Vaughan TJら 1998 Nature Biotechnology 16; 535)。公知の方法によりモノクローナル抗体をヒト化または一部ヒト化してもよい。
【0115】
アンタゴニストおよびアゴニスト−アッセイおよび分子
本発明のリフォールディングされたタンパク質はまた、例えば、無細胞調製物、化学ライブラリー、および天然物混合物中の小分子基質およびリガンドの結合の評価にも使用し得る。これらの基質およびリガンドは天然の基質およびリガンドであってもよいし、または構造類似物または機能類似物であってもよい。例えば、Coliganら, Current Protocols in Immunology 1(2): 5章 (1991)を参照。
【0116】
スクリーニング法により、候補化合物のそのタンパク質との結合を簡単に測定してもよい。また、そのスクリーニング法は標識競合物との競合を伴うものでもよい。そのスクリーニング方法は、候補化合物を本発明のタンパク質を含有する溶液と混合して混合物を形成する工程、混合物におけるNspAタンパク質の活性を測定する工程、および混合物のNspAタンパク質活性を標準と比較する工程を単に含んでもよい。
【0117】
本発明のタンパク質と結合するおよび/または本発明のタンパク質と相互作用するポリヌクレオチド、タンパク質および抗体を利用して、細胞におけるmRNAおよび/またはタンパク質の産生に対する添加された化合物の効果を検出するためのスクリーニング方法も構成し得る。例えば、当技術分野で公知の標準的な方法によりモノクローナルおよびポリクローナル抗体を用いたタンパク質の分泌レベルまたは細胞内レベルを測定するためのELISAアッセイを構成してもよい。このアッセイを利用して、適切に操作した細胞または組織からのタンパク質の産生を阻害または増強し得る薬剤(各々、アンタゴニストまたはアゴニストとも呼ばれる)を見出すこともできる。
【0118】
本発明はまた、化合物をスクリーニングして、NspAタンパク質の作用を増強する(アゴニスト)または阻害する(アンタゴニスト)もの、特に、静菌性および/または殺菌性の化合物を同定する方法も提供する。このスクリーニング方法でハイスループット技術を用いてもよい。例えば、アゴニストまたはアンタゴニストをスクリーニングするために、NspAタンパク質とこのようなタンパク質の標識基質またはリガンドを含む合成反応混合物を、NspAアゴニストまたはアンタゴニストであるかもしれない候補分子の不在下または存在下でインキュベートする。NspAタンパク質をアゴナイズまたはアンタゴナイズする候補分子の能力は、標識リガンドの結合の減少またはこのような基質由来産物の産生の減少に反映される。不当に結合する分子、すなわち、NspAタンパク質の作用を誘導することなく結合する分子は、優れたアンタゴニストである可能性が最も高い。この点で有用であるかもしれないリポーター系としては、限定されるものではないが、生成物に変換される発色標識基質、NspAタンパク質活性の変化に反応するリポーター遺伝子、および当技術分野で公知の結合アッセイが挙げられる。
【0119】
NspAアゴニストについてのアッセイのもう1つの例が、競合的阻害アッセイに好適な条件下で、NspAおよび可能性あるアゴニストと、NspA結合分子、組換えNspA結合分子、天然の基質もしくはリガンド、または基質類似物もしくはリガンド類似物とを組み合わせる競合的アッセイである。結合分子と結合したか、または生成物に変換されたNspA分子の数を正確に決定して、可能性あるアンタゴニストの有効性を評価することができるように、NspAを、例えば、放射活性または発色化合物により標識することができる。
【0120】
可能性あるアンタゴニストとしては、とりわけ、ポリヌクレオチドおよび/または本発明のタンパク質と結合することによってその活性または発現を阻害するか、または失わせる小有機分子、ペプチド、タンパク質および抗体が挙げられる。また、可能性あるアンタゴニストが、小有機分子、ペプチド、結合性分子上の同じ位置に結合する近縁なタンパク質または抗体などのタンパク質、例えば結合性分子であってもよい。
【0121】
可能性あるアンタゴニストとしては、正常な生物活性が阻害されるように、そのタンパク質の結合部位と結合し、その結合部位を占有することによって細胞の結合分子との結合を妨げる小分子が挙げられる。小分子の例としては、限定されるものではないが、小有機分子、ペプチドまたはペプチド様分子が挙げられる。他の可能性あるアンタゴニストとしては、アンチセンス分子が挙げられる(これらの分子の説明については、Okano, J. Neurochem. 56: 560 (1991); OLIGODEOXYNUCLEOTIDES AS ANTISENSE INHIBITORS OF GENE EXPRESSION, CRC Press, Boca Raton, FL (1988)を参照)。好ましい可能性あるアンタゴニストとしては、NspA関連化合物およびNspAの変異体が挙げられる。
【0122】
本発明はまた、感染の続発症の原因である病原体と真核生物宿主、好ましくは、哺乳類宿主との間の最初の物理的相互作用を妨げるための本発明のタンパク質、アゴニストまたはアンタゴニストの使用も提供する。特に、本発明の分子を、細菌、特に、グラム陽性菌および/またはグラム陰性細菌の、真核生物、好ましくは、哺乳類の体内留置型(in-dwelling)装置上の細胞外基質タンパク質への付着、または傷口の細胞外基質タンパク質への付着を防止するために;真核生物、好ましくは、哺乳類の細胞外基質タンパク質と細菌NspAタンパク質間の、組織損傷を媒介する細菌付着を阻止するために;および/または体内留置型装置の埋め込みまたは他の外科技術による以外で引き起こされる感染の病態の通常の進行を阻止するために、使用し得る。
【0123】
本発明のさらにもう1つの態様によれば、NspAアゴニストおよびアンタゴニスト、好ましくは、静菌性または殺菌性アゴニストおよびアンタゴニストが提供される。
【0124】
例えば、疾患を予防、抑制および/または治療するために、本発明のアンタゴニストおよびアゴニストを使用してもよい。
【0125】
ワクチン
本発明のもう1つの態様は、ある個体、特に、哺乳類、好ましくは、ヒトにおいて免疫学的応答を誘導する方法であって、その個体に、抗体を産生し、および/またはT細胞免疫応答を起こして、該個体を感染、特に、細菌感染、最も特に、Neisseria meningitidis感染から防御する(または感染を治療する)のに十分な、本発明のNspAタンパク質、またはその断片もしくは変異体を接種することを含む方法に関する。また、このような免疫学的応答によって細菌複製を遅らせる方法もまた提供される。
【0126】
本発明のさらなる態様は、体内で免疫学的応答を誘導することが可能である個体、好ましくは、ヒトに導入したときに、このような個体において本発明のNspAタンパク質に対する免疫学的応答を誘導する、本発明の組換えNspAを含んでなる免疫学的組成物に関する。免疫学的応答を治療的または予防的に利用してもよく、また、それが抗体免疫および/または細胞性免疫、例えば、CTLまたはCD4+T細胞から生じる細胞性免疫となって現れてもよい。
【0127】
NspAタンパク質、その変異体または断片を、それだけで抗体を産生できてもそうでなくてもよいが抗原性および/または免疫原性、好ましくは、防御特性を有する融合または改変タンパク質を産生することができ、所望により、NspAを安定化させることができ、またはその精製を容易にする補助タンパク質または化学的部分と、融合させてもよい。補助タンパク質は、そのタンパク質を投与される生物の免疫系の全身刺激をもたらすという意味でアジュバントとして機能し得る。
【0128】
また、本発明によって、組成物、特に、ワクチン組成物、および本発明のタンパク質とSato, Y.ら Science 273: 352 (1996)に記載されるような免疫賦活DNA配列を含む方法も提供される。
【0129】
よって、本発明はまた、本発明の免疫原性タンパク質またはその断片もしくは変異体を、好適な担体、例えば、製薬上許容される担体とともに含んでなるワクチン製剤も含む。タンパク質は胃で分解され得るため、各々を、例えば、皮下、筋肉、静脈または皮内投与をはじめとする非経口経路で投与することが好ましい。非経口投与に好適な製剤としては、抗酸化剤、バッファー、静菌性化合物およびその製剤を個体の体液、好ましくは、血液と等張にする溶質を含んでいてもよい水性および非水性滅菌注射液;ならびに沈殿防止剤または増粘剤を含んでいてもよい水性および非水性滅菌懸濁液が挙げられる。製剤は単回投与型容器または多容量型容器、例えば、密閉アンプルおよびバイアルで提供してもよいし、使用する直前に滅菌液体担体を添加することのみ必要な凍結乾燥状態で保存してもよい。また、製剤を粘膜投与、例えば、経鼻投与してもよい。
【0130】
また、本発明のワクチン製剤に、製剤の免疫原性を増強するアジュバント系を含めてもよい。通常、リン酸アルミニウムまたは水酸化アルミニウムが使用される。アジュバント系がTH1型応答を優勢に高めることが好ましい。
【0131】
免疫応答は、体液性または細胞媒介性免疫応答(従来から、各々、抗体および細胞エフェクター防御機構により特徴付けられている)という2つの極端なカテゴリーに大別される。これらの応答のカテゴリーは、TH1型応答(細胞媒介性応答)およびTH2型免疫応答(体液性応答)と呼ばれている。
【0132】
極端なTH1型免疫応答は、抗原特異的な、ハプロタイプ拘束性細胞傷害性Tリンパ球、およびナチュラルキラー細胞応答の産生により特徴付けられ得る。TH1型応答は、マウスではIgG2aサブタイプの抗体の産生により特徴付けられることが多いが、ヒトにおいては、これらはIgG1タイプの抗体に対応する。TH2型免疫応答は、マウスではIgG1、IgA、およびIgMを含む、多様な免疫グロブリンアイソタイプの産生により特徴付けられる。
【0133】
これらの2タイプの免疫応答の発達を支える原動力はサイトカインであると考えることができる。高レベルのTH1型サイトカインは所与の抗原に対して細胞媒介性免疫応答の誘導に有利に働きかける傾向があり、一方、高レベルのTH2型サイトカインはその抗原に対して体液性免疫応答の誘導に有利に働きかける傾向にある。
【0134】
TH1およびTH2型免疫応答の区別は絶対的なものではない。実際には、TH1優勢またはTH2優勢といわれている免疫応答を個体は保持する。しかしながら、多くの場合、マウスCD4+ve T細胞クローンについてMosmannおよびCoffmanにより記載されていること(Mosmann, T.R.およびCoffman, R.L. (1989) TH1 and TH2 cells: different patterns of lymphokine secretion lead to different functional properties. Annual Review of Immunology, 7, 145-173頁)から見て、サイトカインのファミリーを考慮することが都合がよい。従来、TH1型応答はTリンパ球によるINF-γおよびIL-2サイトカインの産生と関係がある。TH1型免疫応答の誘導と直接関係することの多いIL-12などの他のサイトカインはT細胞によって生成されない。これに対して、TH2型応答はIL-4、IL-5、IL-6およびIL-13の分泌と関係がある。
【0135】
特定のワクチンアジュバントが、TH1またはTH2型サイトカイン応答のいずれかの刺激に特に適していることが分かっている。従来から、ワクチン接種または感染後の免疫応答のTH1:TH2バランスについての最良の指標としては、抗原での再刺激後のin vitroでのTリンパ球によるTH1またはTH2サイトカインの産生の直接測定および/または抗原特異的な抗体応答のIgG1:IgG2a比の測定が挙げられる。
【0136】
従って、TH1型アジュバントは、単離T細胞集団がin vitroにて抗原による再刺激を受けたときに高レベルのTH1型サイトカインを産生するように単離T細胞集団を選択的に刺激し、TH1型アイソタイプと関係があるCD8+細胞傷害性Tリンパ球と抗原特異的な免疫グロブリン応答の両方の生起を促進するものである。
【0137】
TH1細胞応答を選択的に刺激することが可能なアジュバントは、国際特許出願番号WO 94/00153およびWO 95/17209に記載されている。
【0138】
3 デ-O-アシル化モノホスホリルリピドA(3D-MPL)はこのような1アジュバントであり、好ましいものである。このことはGB 2220211(Ribi)から分かる。化学的には、4、5または6のアシル化鎖を有する3 デ-O-アシル化モノホスホリルリピドAの混合物であり、Ribi Immunochem, Montanaより製造されている。3 デ-O-アシル化モノホスホリルリピドAの好ましい形態は、欧州特許0 689 454 B1(SmithKline Beecham Biologicals SA)に開示されている。あるいは、他の非毒性LPS誘導体を使用してもよい。
【0139】
3D-MPLの粒子が0.22ミクロンのメンブランで滅菌濾過するのに十分に小さいことが好ましい(欧州特許第0 689 454号)。3D-MPLは1回投与当たり10μg〜100μg、好ましくは、25〜50μgの範囲で存在し、その際、抗原は通常、1回投与当たり2〜50μgの範囲で存在する。
【0140】
もう1つの好ましいアジュバントは、QS21、バラ科キラヤ(Quillaja Saponaria Molina)の樹皮に由来する非毒性のHplc精製画分を含有する。所望により、これを3 デ-O-アシル化モノホスホリルリピドA(3D-MPL)、または非毒性LPS誘導体とともに、所望により、担体を一緒に加えて、混合してもよい。
【0141】
QS21の製造方法は、米国特許第5,057,540号に開示されている。
【0142】
QS21を含む非反応原性アジュバント製剤は、これまでに記述されている(WO 96/33739)。QS21とコレステロールを含むこのような製剤は、抗原とともに製剤された場合に首尾よくTH1を刺激するアジュバントであることが分かっている。
【0143】
TH1細胞応答の選択的刺激剤であるさらなるアジュバントとしては、免疫調節オリゴヌクレオチド、例えば、WO 96/02555に開示されている非メチル化CpG配列が挙げられる。
【0144】
以上に記述したものなどの異なるTH1刺激アジュバントの組合せもまた、TH1細胞応答の選択的刺激剤であるアジュバントを提供すると考えられる。例えば、QS21は3D-MPLとともに製剤することができる。QS21:3D-MPLの比は、通常、1:10〜10:1、好ましくは、1:5〜5:1、多くの場合、実質的に1:1のオーダーである。最適な相乗効果を得るために好ましい範囲は、2.5:1〜1:1 3D-MPL:QS21である。
【0145】
本発明のワクチン組成物中には担体も存在することが好ましい。担体は水中油型エマルション、またはリン酸アルミニウムもしくは水酸化アルミニウムなどのアルミニウム塩であってもよい。
【0146】
好ましい水中油型エマルションは、スクアレン、アルファトコフェロールおよびTween 80などの代謝性油を含んでなる。特に好ましい態様では、本発明のワクチン組成物中の抗原をこのようなエマルションにおいてQS21および3D-MPLと組み合わされる。さらに、水中油型エマルションがspan 85および/またはレシチンおよび/またはトリカプリリンを含んでいてもよい。
【0147】
一般に、ヒト投与では、QS21および3D-MPLは、ワクチン中、1回投与当たり1μg〜200μg、例えば、10〜100μg、好ましくは、10μg〜50μgの範囲で存在する。通常、水中油は2〜10%スクアレン、2〜10%アルファトコフェロールおよび0.3〜3%tween 80を含んでなる。好ましくは、スクアレン:アルファトコフェロールの比がより安定したエマルションを与える1以下である。Span 85もまた、1%のレベルで存在し得る。本発明のワクチンが安定剤をさらに含むことが有利である場合もいくつかある。
【0148】
水中非毒性油型エマルションは、好ましくは、水性担体中に非毒性油、例えば、スクアランまたはスクアレン、乳化剤、例えば、Tween 80を含む。水性担体は、例えば、リン酸緩衝生理食塩水であってもよい。
【0149】
水中油型エマルション中にQS21、3D-MPLおよびトコフェロールを含む特に有力なアジュバント製剤はWO 95/17210に記載されている。
【0150】
本発明はまた、本発明のワクチン製剤を、他の抗原、特に、癌、自己免疫疾患および関連の病的状態の治療に有用な抗原と組み合わせて含んでなる多価ワクチン組成物も提供する。このような多価ワクチン組成物としては、以上で記述したようなTH-1誘導アジュバントが挙げられる。
【0151】
サブユニット組成物
本発明の組成物は、サブユニット組成物の形態であることが好ましい。サブユニット組成物は、抗原性組成物を構成する成分を混合する前の、その成分が単離され、少なくとも50%、好ましくは、少なくとも60%、70%、80%、90%純度に精製されている組成物である。
【0152】
サブユニット組成物は、水溶性タンパク質の水溶液を含んでもよい。それらの組成物は、抗原の疎水性部分を可溶化するために、界面活性剤、好ましくは、非イオン性、両性イオン性またはイオン性界面活性剤を含んでもよい。それらの組成物は、リポソーム構造が形成され、脂質膜に広がる構造により抗原の提示を可能にするように、脂質を含んでもよい。組成物についてのさらなる詳細は後述する。
【0153】
本発明のサブユニット組成物はまた、可溶性であるか、またはブレブの外膜(OMV)に提示される少なくとも1種のさらなる抗原をも含んでもよい(その結果、混合サブユニット/ブレブ組成物が作製される)。
【0154】
ナイセリア菌感染は、いくつかの異なる段階を経て進行する。例えば、髄膜炎菌のライフサイクルは、鼻咽頭定着、粘膜付着、血流への侵入、血液中での増殖、毒素性ショックの誘導、血液脳関門の通過ならびに脳脊髄液および/または髄膜での増殖を伴う。細菌の表面にある異なる分子が感染サイクルの異なる段階に関わっている。ナイセリア菌感染の異なるプロセスに関わる特定の抗原の組合せの有効量に対する免疫応答を目標とすれば、驚くほど高い効果を有するナイセリア菌ワクチンが実現できる。
【0155】
特に、異なる種類由来の特定のナイセリア菌抗原と本発明のNspAタンパク質とを組み合わせることによって感染の複数の段階から防御する免疫応答を誘導することができる。細菌の2つ以上の機能が最適な方法で免疫応答の標的にされる場合、このように抗原を組み合わせることで、ナイセリア菌感染に対するワクチンの効果の相乗的改善が驚くべきことにもたらされうる。含めることができるさらなる抗原の一部のものは宿主細胞への接着に関わり、一部のものは鉄獲得に関わり、一部のものは自己輸送体であり、また、一部のものは毒素である。NspAが付着因子である場合、それを、鉄獲得タンパク質、自己輸送体もしくは毒素、または鉄獲得タンパク質と自己輸送体、または鉄獲得タンパク質と毒素、または自己輸送体と毒素、または鉄獲得タンパク質と自己輸送体と毒素と混合することが好ましい。
【0156】
ワクチンの効果は種々のアッセイによって評価することができる。動物モデルでの防御アッセイは当技術分野では周知である。さらに、血清殺菌アッセイ(SBA)は、髄膜炎菌ワクチンの効果を推定するのに最も一般に認められている免疫学的マーカーである(Perkinsら J Infect Dis. 1998, 177: 683-691)。
【0157】
抗原組合せのいくつかは、動物モデルアッセイにおける防御の向上をもたらし得、および/または相乗作用によってより高いSBA力価をもたらし得る。いかなる理論にも拘束されるものではないが、このような抗原の相乗的組合せは、抗原組合せに対する免疫応答の様々な特徴によって可能になる。抗原自身は、通常、ナイセリア菌細胞で表面に露出しており、保存される傾向があるが、その抗原単独に対して誘導される抗体によって起こる最適な殺菌応答に十分な量では表面細胞に提示されない傾向にある。本発明の抗原を組み合わせることによって、ナイセリア菌細胞と臨界閾値を越えて相互作用する殺菌抗体の有利な組合せを実現した製剤を得ることができる。この臨界レベルにおいて、十分な品質の十分な抗体が細菌の表面と結合して、補体による効率的な死滅を可能にし、その結果として、かなり高い殺菌効果が認められる。血清殺菌アッセイ(SBA)がワクチン候補の効果を厳密に反映しているため、抗原組合せによる優れたSBA力価の達成は抗原組合せを含有するワクチンの防御効果を十分に示している。
【0158】
本発明のさらなる利点は、免疫原性組成物において、タンパク質の異なるファミリー由来の本発明の抗原を組み合わせることによって、より広範囲の株に対する防御を可能にすることである。
【0159】
本発明はまた、本発明のNspAと1種以上(例えば、2種、3種、4種、5種、6種、7種、8種、9種または10種)の異なるナイセリア菌タンパク質との組合せにも関する。このような追加タンパク質は、FhaB、Hsf、NadA、Hap、FrpA、FrpB、FrpC、LPS免疫型 L2、LPS免疫型 L3、TbpA、TbpB、LbpA、LbpB、TspA、TspB、PilQ、omp85およびPldAからなる群から選択され得る。
【0160】
本発明はまた、ナイセリア菌内で異なる機能を有する、少なくとも2つの異なるカテゴリーのタンパク質から選択される複数のタンパク質を含んでなる免疫原性組成物にも関する。タンパク質のこのようなカテゴリーの例は、付着因子、自己輸送体タンパク質、毒素および鉄(Fe)獲得タンパク質である。本発明のワクチン組合せは、同種ナイセリア菌株(その抗原が由来する株)に対するワクチンの効果において、好ましくは、異種ナイセリア菌株に対するワクチンの効果においても驚くべき向上を示す。
【0161】
特に、本発明は、以下の群から選択される少なくとも1つ、2つ、3つ、4つまたは5つの異なるタンパク質群から選択される少なくとも2種、3種、4種、5種、6種、7種、8種、9種または10種の異なるナイセリア菌抗原(それらのうちの1つが本発明のNspAであり、付着因子または外膜タンパク質のいずれかに分類される)を含んでなる免疫原性組成物を提供する:
・FhaB、PilC、Hsf、Hap、MafA、MafB、Omp26、NMB 0315、NMB 0995、NMB 1119およびNadAからなる群から選択される少なくとも1種のナイセリア菌付着因子;
・Hsf、Hap、IgAプロテアーゼ、AspA、およびNadAからなる群から選択される少なくとも1種のナイセリア菌自己輸送体;
・FrpA、FrpC、FrpA/C、VapD、NM-ADPRT、ならびにLPS免疫型 L2およびLPS免疫型 L3のいずれか一方またはその両方からなる群から選択される少なくとも1種のナイセリア菌毒素;
・TbpA、TbpB、LbpA、LbpB、HpuA、HpuB、Lipo28(GNA2132)、Sibp、NMB0964、NMB0293、FbpA、Bcp、BfrA、BfrBおよびP2086(XthA)からなる群から選択される少なくとも1種のナイセリア菌鉄(Fe)獲得タンパク質;および
・PilQ、OMP85、FhaC、TbpA、LbpA、TspA、TspB、TdfH、PorB、MltA、HpuB、HimD、HisD、GNA1870、OstA、HlpA(GNA1946)、NMB 1124、NMB 1162、NMB 1220、NMB 1313、NMB 1953、HtrA、およびPldA(Omp1A)からなる群から選択される少なくとも1種のナイセリア菌膜結合タンパク質、好ましくは、外膜タンパク質、とりわけ、内在性外膜タンパク質。
【0162】
好ましくは、以下の通り:
FhaB、HsfおよびNadAからなる群から選択される少なくとも1種のナイセリア菌付着因子;
Hsf、HapおよびNadAからなる群から選択される少なくとも1種のナイセリア菌自己輸送体;
FrpA、FrpC、ならびにLPS免疫型 L2およびLPS免疫型 L3のいずれか一方またはその両方からなる群から選択される少なくとも1種のナイセリア菌毒素;
TbpA、TbpB、LbpAおよびLbpBからなる群から選択される少なくとも1種のナイセリア菌鉄(Fe)獲得タンパク質;および
TspA、TspB、PilQ、OMP85、およびPldAからなる群から選択される少なくとも1種のナイセリア菌外膜タンパク質。
【0163】
好ましくは、本発明の免疫原性組成物においては最初の4群(最も好ましくは、5群全て)の抗原が含められる。
【0164】
先に述べたように、本明細書においてタンパク質が特定して記述される場合、それが天然の全長タンパク質への言及であることが好ましいが、それがその抗原性断片(とりわけ、サブユニットワクチンとの関連において)も包含する場合もある。これらは、そのタンパク質のアミノ酸配列由来の、連続した、少なくとも10個のアミノ酸、好ましくは、20個のアミノ酸、より好ましくは、30個のアミノ酸、より好ましくは、40個のアミノ酸、または、最も好ましくは、50個のアミノ酸を含むまたは含んでなる断片である。さらに、抗原性断片は、ナイセリア菌タンパク質に対して産生された抗体または哺乳類宿主のナイセリア菌感染により産生された抗体と免疫学的に反応する断片を意味する。抗原性断片はまた、有効量にて投与したときに、ナイセリア菌感染に対する防御免疫応答を誘導する断片も含み、より好ましくは、その断片がN. meningitidis感染および/またはN. gonorrhoeae感染を防御するものであり、最も好ましくは、その断片がN. meningitidis血清型B感染を防御するものである。
【0165】
本発明には、本発明のナイセリア菌タンパク質またはその断片の組換え融合タンパク質も含まれる。これらは異なるナイセリア菌タンパク質またはその断片を組み合わせて1つのタンパク質にしたものでありうる。あるいは、本発明はまた、T細胞エピトープの供給者などの異種配列、またはインフルエンザウイルスヘマグルチニン、破傷風トキソイド、ジフテリアトキソイド、CRM197などのウイルス表面タンパク質との融合タンパク質としてのナイセリア菌タンパク質またはその断片の個々の融合タンパク質も含む。
【0166】
本発明の追加抗原
NMBの番号は、www.neisseria.orgからアクセス可能な配列の参照番号を示している。
【0167】
1. 付着因子(adhesin)
付着因子としては、FhaB(WO98/02547)、NadA(J. Exp.Med (2002) 195: 1445; NMB 1994)、NhhAとしても知られているHsf(NMB 0992)(WO99/31132)、Hap(NMB 1985)(WO99/55873)、NspA(WO96/29412)、MafA(NMB 0652)およびMafB(NMB 0643)(Annu Rev Cell Dev Biol. 16; 423-457 (2000); Nature Biotech 20; 914-921 (2002))、Omp26(NMB 0181)、NMB 0315、NMB 0995、NMB 1119およびPilC(Mol. Microbiol.1997、23; 879-892)が挙げられる。これらは宿主細胞表面へのナイセリア菌の結合に関与するタンパク質である。Hsfは付着因子の一例であると同時に、自己輸送体タンパク質でもある。そのため、本発明の免疫原性組成物は、Hsfが付着因子としてのその能力で寄与する場合にはHsfと他の自己輸送体タンパク質との組合せを含んでよい。これらの付着因子はNeisseria meningitidisもしくはNeisseria gonorrhoeaeまたは他のナイセリア菌株由来のものであってよい。本発明はまた、ナイセリア菌由来の他の付着因子も含む。
【0168】
FhaB
この抗原はWO98/02547の配列番号38(ヌクレオチド 3083〜9025)に記載されている−NMB0497も参照。本発明者らは、FhaBが、抗接着性抗体単独の誘導、特に、本発明の他の抗原を併用した誘導において特に有効であることを見出した。全長FhaBを用いてもよいが、本発明者らは、驚くべきことに、特定のC末端末端切断型が少なくとも有効であり、好ましくは、株横断的効果という観点から見るとさらに効果的であることを見出した。また、有利なことに、このような末端切断型はクローニングがかなり容易であることも証明されている。本発明のFhaB末端切断型は、通常、FhaB分子のN末端側3分の2に相当し、好ましくは、1200〜1600位に、より好ましくは、1300〜1500位に、最も好ましくは、1430〜1440位に位置している新たなC末端に相当する。特定の実施形態は、1433または1436位置のC末端を有している。従って、本発明のこのようなFhaB末端切断型およびこのような末端切断型を含んでなるワクチンが、本発明の組合せ免疫原性組成物の好ましい成分である。また、N末端を、最大10個、20個、30個、40個または50個のアミノ酸だけ末端切断したものでもよい。
【0169】
2. 自己輸送体タンパク質
自己輸送体タンパク質は、通常、シグナル配列、パッセンジャードメインおよび外膜と結合するためのアンカードメインで構成されている。自己輸送体タンパク質の例としては、Hsf(WO99/31132)(NMB 0992)、HMW、Hia(van Ulsenら Immunol. Med. Microbiol. 2001 32; 53-64)、Hap(NMB 1985)(WO99/55873; van Ulsenら Immunol. Med. Microbiol. 2001 32; 53-64)、UspA、UspA2、NadA(NMB 1994)(Comanducciら J. Exp. Med. 2002 195; 1445-1454)、AspA(Infection and Immunity 2002, 70(8); 4447-4461; NMB 1029)、Aida-1様タンパク質、SSh-2およびTshが挙げられる。NadA(J. Exp.Med (2002) 195:1445)は自己輸送体タンパク質の別の例であり、また、これは付着因子でもある。そのため、本発明の免疫原性組成物は、NadAが自己輸送体タンパク質としてのその能力で寄与する場合にはNadAと付着因子との組合せを含んでよい。これらのタンパク質はNeisseria meningitidisまたはNeisseria gonorrhoeaeもしくは他のナイセリア株由来のものであってよい。本発明はまた、ナイセリア菌由来の他の自己輸送体タンパク質も含む。
【0170】
Hsf
Hsfは、自己輸送体タンパク質に共通した構造を有している。例えば、N. meningitidis株H44/76由来のHsfは、アミノ酸1〜51で構成されているシグナル配列、表面に露出されており、可変領域(アミノ酸52〜106、121〜124、191〜210および230〜234)を含む成熟タンパク質(アミノ酸52〜479)のアミノ末端にあるヘッド領域、ネック領域(アミノ酸480〜509)、疎水性α-ヘリックス領域(アミノ酸518〜529)および4回膜貫通鎖が外膜を横切るアンカードメイン(アミノ酸539〜591)で構成される。
【0171】
本発明の免疫原性組成物に全長Hsfを用いてもよいが、種々のHsf末端切断型および欠損もまた、ワクチンの種類に応じて有利に用いることができる。
【0172】
Hsfをサブユニットワクチンに用いる場合、可溶性パッセンジャードメインの一部;例えば、アミノ酸52〜479の完全ドメイン、最も好ましくは、その保存された部分、例えば、アミノ酸134〜479の特に有利な配列を用いることが好ましい。Hsfの好ましい形態を、WO01/55182に開示されているタンパク質の可変領域を欠失するように、末端切断してもよい。好ましい変異体は、WO01/55182で定義される、1つ、2つ、3つ、4つまたは5つの可変領域の欠失を含む。上記の配列や後述する配列を、NまたはC末端のいずれか一方またはその両方において、最大1個、3個、5個、7個、10個または15個のアミノ酸だけ、延長または末端切断することができる。
【0173】
よって、Hsfの好ましい断片が、好ましくは、アミノ酸52〜473を含む、Hsfの全ヘッド領域を含むことが好ましい。Hsfのさらに好ましい断片は、以下のアミノ酸配列;52〜62、76〜93、116〜134、147〜157、157〜175、199〜211、230〜252、252〜270、284〜306、328〜338、362〜391、408〜418、430〜440および469〜479の1以上を含むヘッドの表面露出領域を含む。
【0174】
Hsfが外膜小胞調製物中に存在する場合、それは全長タンパク質として、好ましくは、アミノ酸1〜51と134〜591の融合物(成熟外膜タンパク質としてアミノ酸配列134〜C末端が生じる)で構成されている有利な変異体として発現されてもよい。Hsfの好ましい形態を、WO01/55182に開示されているタンパク質の可変領域を欠失するように、末端切断してもよい。好ましい変異体は、WO01/55182で定義される、1つ、2つ、3つ、4つまたは5つの可変領域の欠失を含む。好ましくは、第1および第2の可変領域を欠失させる。好ましい変異体は、アミノ酸配列52〜237間または54〜237間の残基が欠失し、より好ましくは、アミノ酸52〜133間または55〜133間の残基が欠失している。成熟タンパク質は、シグナルペプチドを有していない。
【0175】
Hap
Neisseria meningitidis由来のHap様タンパク質のコンピューター解析では、少なくとも3つの構造ドメインが示される。株H44/76由来のHap様配列を対照として検討すると、アミノ酸1〜42を含んでなるドメイン1が、自己輸送体ファミリーの特徴であるsec依存性シグナルペプチドをコードし、アミノ酸43〜950を含んでなるドメイン2が、表面に露出され、免疫系に接近可能と思われるパッセンジャードメインをコードし、残基951〜C末端(1457)を含んでなるドメイン3が、バレル様構造に組み立てられる可能性が高いβ鎖をコードし、外膜に固定されると予想される。ドメイン2は、表面に露出され、十分に保存されている(調べた全ての株において80%を上回る)可能性が高く、大腸菌においてはサブユニット抗原として産生され得ることから、このドメインは興味深いワクチン候補となる。ドメイン2および3は、表面に露出され、十分に保存される可能性が高い(Pizzaら (2000), Science 287: 1816-1820)ことから、これらのドメインは興味深いワクチン候補となる。ドメイン2はパッセンジャードメインとしても知られている。
【0176】
本発明の免疫原性組成物は、全長Hapタンパク質を含んでなってもよく、好ましくは、これはOMV調製物に組み入れられる。本発明の免疫原性組成物はまた、株H44/76においてはアミノ酸残基43〜950からなるHapのパッセンジャードメインも含んでなってもよい。Hapのこの断片を本発明のサブユニット組成物に用いることが特に有利である。Hapのパッセンジャードメインに関する上記の配列を、NまたはC末端のいずれか一方またはその両方において、最大1個、3個、5個、7個、10個、15個、20個、25個または30個のアミノ酸だけ、延長または末端切断することができる。
【0177】
3. 鉄獲得タンパク質
鉄獲得タンパク質としては、TbpA(NMB 0461)(WO92/03467、US5912336、WO93/06861およびEP586266)、TbpB(NMB 0460)(WO93/06861およびEP586266)、LbpA(NMB 1540)(Med Microbiol (1999) 32: 1117)、LbpB(NMB 1541)(WO/99/09176)、HpuA(U73112.2)(Mol Microbiol. 1997, 23; 737-749)、HpuB(NC_003116.1)(Mol Microbiol. 1997, 23; 737-749)、XthAとしても知られるP2086(NMB 0399)(13th International Pathogenic Neisseria Conference 2002)、FbpA(NMB 0634)、FbpB、BfrA(NMB 1207)、BfrB(NMB 1206)、GNA2132としても知られるLipo28(NMB 2132)、Sibp(NMB 1882)、HmbR、HemH、Bcp(NMB 0750)、鉄(III)ABC輸送体−パーミアーゼタンパク質(Tettelinら Science 287; 1809-1815 2000)、鉄(III)ABC輸送体−細胞周辺質(Tettelinら Science 287; 1809-1815 2000)、TonB依存性受容体(NMB 0964およびNMB 0293)(Tettelinら Science 287; 1809-1815 2000)およびトランスフェリン結合タンパク質関連タンパク質(Tettelinら Science 287; 1809-1815 2000)が挙げられる。これらのタンパク質はNeisseria meningitidis、Neisseria gonorrhoeaeまたは他のナイセリア菌株由来のものであってよい。本発明はまた、ナイセリア菌由来の他の鉄獲得タンパク質も含む。
【0178】
TbpA
TbpAはTbpBと相互作用してナイセリア菌の外膜上にタンパク質複合体を形成し、その複合体がトランスフェリンと結合する。構造上、TbpAは、TonBボックスおよびプラグドメイン、短い細胞内ループとより長い細胞外ループとにより連結された多数回膜貫通型β鎖とともに細胞内N末端ドメインを含む。
【0179】
それぞれ高分子量と低分子量のTbpBの2種類のファミリーは、区別されている。高分子量および低分子量形態のTbpBは、TbpAの異なるファミリーと関係しており、それらは相同性に基づいて区別できる。それらは高分子量または低分子量形態のTbpBと関連しているため、同程度の分子量であるにもかかわらず、高分子量および低分子量ファミリーとしても知られている(Rokbiら FEMS Microbiol. Lett. 100; 51, 1993)。TbpA(高)およびTbpA(低)とは、これらの2形態のTbpAの言及に用いられるが、TbpBについても同様である。本発明の免疫原性組成物は、N. meningitidisの血清型A、B、C、YおよびW-135由来のTbpAおよびTbpB、ならびにN. gonorrhoeaeをはじめとする他の細菌由来の鉄獲得タンパク質を含んでなってよい。トランスフェリン結合タンパク質TbpAおよびTbpBはまた、各々、Tbp1およびTbp2とも呼ばれている(Cornelissenら Infection and Immunity 65; 822, 1997)。
【0180】
TbpAはいくつかの別個の領域を含む。例えば、N. meningitidis株H44/76由来のTbpA場合では、アミノ末端の186個のアミノ酸が内部球状ドメインを形成し、22個のβ鎖が膜を横切り、βバレル構造を形成している。これらは短い細胞内ループとより大きな細胞外ループとにより連結されている。細胞外ループ2、3および5は配列の可変性が最も大きく、ループ5は表面に露出されている。ループ5および4はリガンド結合に関与する。
【0181】
TbpAの好ましい断片は、TbpAの細胞外ループを含む。N. meningitidis株H44/76由来のTbpAの配列を用いると、これらのループは、ループ1についてはアミノ酸200〜202、ループ2についてはアミノ酸226〜303、ループ3についてはアミノ酸348〜395、ループ4についてはアミノ酸438〜471、ループ5についてはアミノ酸512〜576、ループ6についてはアミノ酸609〜625、ループ7についてはアミノ酸661〜671、ループ8についてはアミノ酸707〜723、ループ9についてはアミノ酸769〜790、ループ10についてはアミノ酸814〜844およびループ11についてはアミノ酸872〜903に対応する。その対応配列は、配列アラインメント後、他のTbpタンパク質において好ましい断片も構成する。最も好ましい断片は、Tbpのループ2、ループ3、ループ4またはループ5を構成するアミノ酸配列を含む。
【0182】
本発明の免疫原性組成物がTbpAを含んでなる場合、TbpA(高)とTbpA(低)の両方を含むことが好ましい。
【0183】
TbpAはOMVワクチンとして与えられることが好ましいが、サブユニットワクチンの一部であってもよい。例えば、本発明の免疫原性組成物に導入し得る、単離された鉄獲得タンパク質は当技術分野では周知である(WO00/25811)。それらのタンパク質は、細菌宿主で発現させ、界面活性剤(例えば、2%Elugent)により抽出し、アフィニティークロマトグラフィーによるか、または当技術分野では周知の標準的なカラムクロマトグラフィー技術を利用して精製し得る(Oakhillら Biochem J. 2002 364; 613-6)。
【0184】
TbpAがOMVワクチンとして与えられる場合、その発現は、本明細書において記述するか、またはWO 01/09350に記載されている遺伝子技術によりアップレギュレートすることができるし、あるいは、好ましくは、鉄制限条件下で親株を増殖させることによりアップレギュレートしてもよい。このプロセスは可変性鉄制御タンパク質、特に、免疫優性となり得るFrpBのアップレギュレーションももたらし、それゆえ、本発明の免疫原性組成物が確実に広範囲のナイセリア菌株に存在する抗原に対する免疫応答を誘導するように、WO 01/09350に記載されているようにして、このようなタンパク質(特に、FrpB)の発現をダウンレギュレートする(好ましくは、このようなタンパク質をコードする遺伝子を欠失させる)ことが有利である。TbpA(高)とTbpA(低)の両方を免疫原性組成物に存在させることが好ましく、これは代わりのTbpA形態を発現する2つの株由来のOMVを組み合わせることによって行うことが好ましい。
【0185】
4. 毒素
毒素としては、FrpA(NMB 0585; NMB 1405)、FrpA/C(定義については以下を参照)、FrpC(NMB 1415; NMB 1405)(WO92/01460)、NM-ADPRT(NMB 1343)(13th International Pathogenic Neisseria Conference 2002 Masignaniら 135頁)、VapD(NMB 1753)、リポ多糖(LPS; リポオリゴ糖またはLOSとも呼ばれる)免疫型 L2およびLPS免疫型 L3が挙げられる。FrpAおよびFrpCはこれら2つのタンパク質間で保存されている領域を含んでおり、これらのタンパク質の好ましい断片は、この保存される断片を含む、好ましくは、FrpA/Cの配列のアミノ酸227〜1004を含んでなるポリペプチドである。これらの抗原は、Neisseria meningitidisもしくはNeisseria gonorrhoeaeまたは他のナイセリア菌株由来のものであってよい。本発明はまた、ナイセリア菌由来の他の毒素も含む。
【0186】
別の実施形態では、毒素が、毒性の調節に関与する抗原、例えば、リポ多糖の合成に機能するOstAを含んでもよい。
【0187】
FrpAおよびFrpC
Neisseria meningitidisは、鉄制限時に分泌されるFrpAおよびFrpCと呼ばれる2つのRTXタンパク質をコードする(Thompsonら, (1993) J. Bacteriol. 175: 811-818; Thompsonら, (1993) Infect. Immun.. 61: 2906-2911)。RTX(Repeat ToXin)タンパク質ファミリーは、共通して、それらのC末端付近に、コンセンサス: Leu Xaa Gly Gly Xaa Gly (Asn/Asp) Asp Xaa (LXGGXGN/DDX)を有する一連の9アミノ酸繰り返し配列を有する。大腸菌HlyAの繰り返し配列は、Ca2+が結合する部位であると考えられる。図4に示すように、株FAM20で同定された髄膜炎菌FrpAおよびFrpCタンパク質は、それらの中央部およびC末端領域において広範囲に及ぶアミノ酸類似性を共有するが、N末端においてはその類似度(あるとしても)はごく限定されている。さらに、FrpAとFrpCとの間で保存された領域は、9アミノ酸モチーフの繰り返しによる(FrpAでは13回およびFrpCでは43回)多型を示す。
【0188】
本発明の免疫原性組成物は、全長FrpAおよび/またはFrpC、もしくは、好ましくは、FrpAとFrpCとの間で保存された配列を含んでなる断片を含んでなってよい。この保存された配列は、9個のアミノ酸からなる繰り返し単位により構成されている。本発明の免疫原性組成物は、好ましくは、3個を超える繰り返し配列、10個を超える繰り返し配列、13個を超える繰り返し配列、20個を超える繰り返し配列、または23個を超える繰り返し配列を含んでなる。
【0189】
このような末端切断型は全長分子に勝る有利な特性を有しているため、このような抗原を含んでなるワクチンは、本発明の免疫原性組成物に含有させるのに好ましい。
【0190】
FrpAとFrpCの間で保存される配列はFrpA/Cと表され、FrpAまたはFrpCが本発明の免疫原性組成物の成分であるときは、FrpA/Cを使用することが有利である。FrpA配列のアミノ酸277〜1004が好ましい保存領域である。上記の配列を、NまたはC末端のいずれか一方またはその両方において、最大1個、3個、5個、7個、10個、15個、20個、25個または30個のアミノ酸だけ、延長または末端切断することができる。
【0191】
LPS
LPS(リポ多糖、LOS−リポオリゴ糖としても知られる)はナイセリア菌の外膜上の内毒素である。LPSの多糖部分が殺菌抗体を誘導することが知られている。
【0192】
LPSのオリゴ糖部分の不均一性により、異なるナイセリア菌株間で構造および抗原性の多様性が生じる(Griffissら Inf. Immun. 1987; 55: 1792-1800)。このことを利用して、髄膜炎菌株を12の免疫型に細分化している(Scholtanら J Med Microbiol 1994, 41: 236-243)。免疫型 L3、L7およびL9は免疫学的には同一で、構造的にも類似している(または同じ場合さえある)ため、L3,7,9 (または本明細書では、総称として「L3」)と表されている。髄膜炎菌LPS L3,7,9 (L3)、L2およびL5は、シアリル化によるか、またはシチジン5'-モノホスフェート-N-アセチルノイラミン酸を添加することにより改変することができる。L2、L4およびL6 LPSは免疫学的に区別できるが、これらは構造的に類似している。本明細書でL2が言及されている場合、場合により、L4またはL6を代わりに用いてもよく、これも本発明の範囲内である。LPSの構造および不均一性のさらなる説明については、M. P. Jenningsら, Microbiology 1999, 145, 3013-3021およびMol Microbiol 2002, 43: 931-43を参照。
【0193】
LPS、好ましくは、髄膜炎菌LPSを本発明のワクチンに含める場合、免疫型 L2およびL3のいずれか一方またはその両方が存在することが好ましく、また、有利である。LPSは外膜小胞中にて与えられることが好ましい(好ましくは、その小胞が低濃度の界面活性剤、より好ましくは、0〜0.5%、0.02〜0.4%、0.04〜0.3%、0.06〜0.2%、0.08〜0.15%または0.1%、最も好ましくは、デオキシコレート[DOC]で抽出される)が、サブユニットワクチンの一部であってもよい。LPSは、温水−フェノール法をはじめとする周知の方法を利用して単離し得る(WesphalおよびJann Meth. Carbo. Chem. 5; 83-91 1965)。Galanosら 1969, Eur J Biochem 9: 245-249、ならびにWuら 1987, Anal Bio Chem 160: 281-289も参照。LPSはそのまま使用してもよいし、または、破傷風トキソイド、ジフテリアトキソイド、CRM-197またはOMV外膜タンパク質などのT細胞エピトープの供給源とコンジュゲートさせて用いてもよい。単離LOSをコンジュゲートさせる技術もまた公知である(例えば、参照により本明細書に組み入れられるEP 941738を参照)。
【0194】
ブレブ製剤中にLOS(特に、本発明のLOS)が存在する場合、そのLOSを、ブレブ調製物上にも存在する1以上の外膜タンパク質(例えば、髄膜炎菌においてはPorAまたはPorB)とのLOSのコンジュゲーションを可能する方法により、in situにてコンジュゲートさせることが好ましい。
【0195】
この方法は、ブレブ製剤中のLOS抗原の安定性および/または免疫原性(T細胞による補助を与える)および/または抗原性を有利に高め得るため、髄膜炎菌外膜表面上のその天然環境においてLOSとして、その最も防御的な立体構造のT非依存性オリゴ糖免疫原に対してT細胞による補助を与える。さらに、ブレブ内でのLOSのコンジュゲーションはLOSの解毒化を起こし得る(リピドA部分が外膜に安定して埋め込まれるため、利用されて毒性を引き起こすことが少なくなる)。よって、htrB-またはmsbB-突然変異体からブレブを単離するか、または機能的にポリミキシンB[リピドAに対して高親和性を有する分子]と等価な非毒性ペプチドを組成物に添加することによる本明細書に記載の解毒化方法は、必要ない場合もある(しかし、追加的な安全確保のために併用してもよい)(機能的にポリミキシンBに等価な非毒性ペプチドのさらなる詳細、特に、ペプチドSAEP 2(2つのシステインがジスルフィド架橋を形成する配列 KTKCKFLKKC)の使用については、WO 93/14115、WO 95/03327、Velucchiら (1997) J Endotoxin Res 4: 1-12、およびEP 976402を参照)。よって、本発明者らは、ブレブを含んでなる組成物(ここで、ブレブに存在するLOSが、ブレブに同様に存在する外膜タンパク質とブレブ内でコンジュゲートされている)が、ブレブが由来する生物によって引き起こされる疾患の治療または予防のためのワクチンの基礎とすることができ、しかもそのワクチンは実質的に非毒性であり、その天然環境においてLOSに対してT依存性殺菌応答を誘導することが可能なものであることを、見出した。
【0196】
このようなブレブ調製物を問題の細菌から単離し(WO 01/09350を参照)、次いで、これらの調製物を公知のコンジュゲーション化学法に付して、LOSのオリゴ糖部分の基(例えば、NH2またはCOOH)を、ブレブ外膜タンパク質上の基(例えば、NH2またはCOOH)に連結してもよい。グルタルアルデヒド、ホルムアルデヒドまたはグルタルアルデヒド/ホルムアルデヒド混合物を用いる架橋技術を利用してもよいが、EDACまたはEDAC/NHSなどのより選択的な化学法を利用することが好ましい(J.V. Staros, R.W. WrightおよびD. M. Swingle. Enhancement by N-hydroxysuccinimide of water-soluble carbodiimide-mediated coupling reactions. Analytical chemistry 156: 220-222 (1986);ならびにBioconjugates Techniques. Greg T. Hermanson (1996) 173-176頁)。LOSと利用可能なタンパク質分子との共有結合を形成させることが可能な別のコンジュゲーション化学法または処理が、EP 941738に記載されている。
【0197】
ブレブ調製物は莢膜多糖の不在下でコンジュゲートされることが好ましい。ブレブは莢膜多糖を生産しない株(天然に、または後述するような突然変異によって)から単離してもよいし、または大部分、好ましくは、全ての混入莢膜多糖から精製してもよい。このようにすると、ブレブ内LOSコンジュゲーション反応は非常に効率的である。
【0198】
好ましくは、ブレブに存在するLOSの10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%または95%を超える割合のものが架橋/コンジュゲートされている。
【0199】
ブレブ内コンジュゲーションは、好ましくは、以下の方法工程のうちの1つ、2つ、または3つ全てを含む必要がある:コンジュゲーションpHはpH 7.0より高く、好ましくは、pH 7.5以上(最も好ましくは、pH 9より低い)であるべきである;反応中、1〜5%、好ましくは、2〜4%、最も好ましくは、約3%スクロースという条件が維持されるべきである;NaClはコンジュゲーション反応において最小限にされるべきであり、好ましくは、0.1Mより、0.05Mより、0.01Mより、0.005Mより、0.001Mより低く、最も好ましくは、全く存在しない。これらの方法の特徴全てが、ブレブがコンジュゲーション法を通じて安定性および溶解状態を保つことを確実にする。
【0200】
EDAC/NHSコンジュゲーション法はブレブ内コンジュゲーションのために好ましい方法である。EDAC/NHSは、強すぎるほどに架橋するために濾過性に悪影響を及ぼし得るホルムアルデヒドに対して好ましい。EDACはカルボン酸(例えば、LOS中のKDO)と反応して活性エステル中間体を生成する。アミン求核試薬(例えば、PorBなどの外膜タンパク質中のリジン)の存在下で、アミド結合を形成するとともに、イソ尿素を副生成物として生成する。しかしながら、EDACを介した反応の効率は、Sulfo-NHSエステル中間体の形成を通じて高められる。Sulfo-NHSエステルは、水溶液中でEDAC単独とカルボキシレートとの反応で形成された活性エステルより長く存続する。そのため、この二段階法を用いて高生成量のアミド結合形成が実現し得る。EDAC/NHSコンジュゲーションは、J.V. Staros, R.W. WrightおよびD. M. Swingle. Enhancement by N-hydroxysuccinimide of water-soluble carbodiimide-mediated coupling reactions. Analytical chemistry 156: 220-222 (1986);ならびにBioconjugates Techniques. Greg T. Hermanson (1996) 173-176頁で検討されている。0.01〜5mg EDAC/mgブレブ、より好ましくは、0.05〜1mg EDAC/mgブレブを反応に用いるのが好ましい。使用するEDACの量は、サンプル中に存在するLOSの量に応じて異なり、また、その量はブレブの抽出に使用するデオキシコレート(DOC)の%に応じたものとなる。過度にブレブ間を架橋しないように、低い%のDOC(例えば、0.1%)では多量のEDACが用いられる(1mg/mg以上)が、より高い%のDOC(例えば、0.5%)ではより少量のEDACが用いられる(0.025〜0.1mg/mg)。
【0201】
従って、本発明の好ましい方法は、ブレブ内コンジュゲート化LOS(好ましくは、髄膜炎菌のもの)を作製する方法であって、EDAC/NHSの存在下、pH 7.0〜pH 9.0間のpH(好ましくは、約pH 7.5)において、1〜5%(好ましくは、約3%)スクロース中、そして所望により、実質的にNaClを含まない(上述のような)条件においてブレブをコンジュゲートさせる工程、および反応混合物からコンジュゲートされたブレブを単離する工程を含む方法である。
【0202】
その反応を抗LOS(例えば、抗L2または抗L3)mAbを用いて反応混合物についてウェスタン分離ゲル上で行えば、反応時間の経過に伴うブレブ中のLOSの割合増加に対応したLOSの分子量の増大が示される。
【0203】
ブレブの99%収量をこのような技術を用いて回収することができる。
【0204】
EDACは、LOSのT依存性免疫原性の改善に十分な程度でLOSをOMPに架橋するが、濾過性の低さ、凝集およびブレブ間架橋などの問題が起こるほど高レベルにはそれを架橋しないという点で、EDACが優れたブレブ内架橋剤であることが見出された。生じたブレブの形態は非コンジュゲート化ブレブのものと類似している(電子顕微鏡により)。さらに、上述のプロトコールは過度に高いレベルの架橋(これは、ブレブの表面に天然に存在する防御的OMP、例えば、TbpAまたはHsfの免疫原性を低下させる可能性がある)を回避して行われた。
【0205】
ブレブが誘導される髄膜炎菌株は、莢膜多糖を生産できない突然変異株(特に、siaD-)であることが好ましい。また、髄膜炎菌疾患に対して有効な免疫原性組成物は、L2およびL3ブレブの両方を含んでなり、かつ、L2およびL3 LOSがいずれもブレブ外膜タンパク質とコンジュゲートされていることが好ましい。さらに、ブレブ内コンジュゲート化ブレブ内のLOS構造がlgtE-、または好ましくはlgtB-髄膜炎菌株由来のLOS構造と一致していることが好ましい。最も好ましくは、免疫原性組成物が、莢膜多糖を生産できず、lgtB-である突然変異体髄膜炎菌株由来のブレブ内コンジュゲート化ブレブを含んでなるか、莢膜多糖を生産できない突然変異体髄膜炎菌株由来のL2およびL3ブレブを含んでなるか、lgtB-である突然変異髄膜炎菌株由来のL2およびL3ブレブを含んでなるか、または、最も好ましくは、莢膜多糖を生産できず、lgtB-である突然変異体髄膜炎菌株由来のL2およびL3ブレブを含んでなる。
【0206】
本発明で使用することができる代表的なL3髄膜炎菌株がH44/76 menB株である。代表的なL2株はB16B6 menB株または39E髄膜炎菌C型株である。
【0207】
上述のように、本発明のブレブはコンジュゲーションの働きによりある程度は解毒されているため、これ以上解毒する必要はないが、追加的な安全確保のためにさらなる解毒化方法を用いてもよく、例えば、htrB-またはmsbB-である髄膜炎菌株由来のブレブを使用するか、または機能的にポリミキシンBと等価な非毒性ペプチド[リピドAに対して高親和性を有する分子](好ましくは、SEAP 2)をブレブ組成物に添加する(上述の通り)ことによる解毒化方法を用いてもよい。
【0208】
上記のように、実質的に非毒性であり、自己免疫の問題がなく、T依存特性を有し、その天然環境に存在し、かつ、90%を超える髄膜炎菌株に対して殺菌抗体応答を誘導することが可能である(L2+L3組成物の場合)LOSを、重要な抗原として有する髄膜炎菌ブレブおよびブレブを含んでなる免疫原性組成物が提供される。
【0209】
5. 内在性外膜タンパク質
他のカテゴリーのナイセリア菌タンパク質もまた、本発明のナイセリア菌ワクチンに含有させるための候補物質であり、驚くほど有効に他の抗原と組み合わせることができる。本発明の組成物に、膜結合タンパク質、特に、内在性膜タンパク質、最も有利には、外膜タンパク質、特に、内在性外膜タンパク質を用いることができる。このようなタンパク質の一例がOmp1Aとしても知られる、ナイセリア菌ホスホリパーゼ外膜タンパク質であるPldA(NMB 0464)(WO00/15801)である。さらなる例としては、TspA(NMB 0341)(Infect. Immun. 1999, 67; 3533-3541)およびTspB(T細胞刺激性タンパク質)(WO 00/03003; NMB 1548、NMB 1628またはNMB 1747)がある。さらなる例としては、PilQ(NMB 1812)(WO99/61620)、D15としても知られるOMP85(NMB 0182)(WO00/23593)、NspA(U52066)(WO96/29412)、FhaC(NMB 0496またはNMB 1780)、PorB(NMB 2039)(Mol. Biol. Evol. 12; 363-370, 1995)、HpuB(NC_003116.1)、TdfH(NMB 1497)(Microbiology 2001, 147; 1277-1290)、OstA(NMB 0280)、GNA33およびLipo30としても知られるMltA(NMB0033)、HtrA(NMB 0532; WO 99/55872)、HimD(NMB 1302)、HisD(NMB 1581)、GNA 1870(NMB 1870)、HlpA(NMB 1946)、NMB 1124、NMB 1162、NMB 1220、NMB 1313、NMB 1953、HtrA、TbpA(NMB 0461)(WO92/03467)(鉄獲得タンパク質についての上記も参照)およびLbpA (NMB 1541)が挙げられる。
【0210】
OMP85
OMP85/D15は、シグナル配列、N末端表面露出ドメインおよび外膜に付着するための内在性膜ドメインを有する外膜タンパク質である。また、本発明の免疫原性組成物は全長OMP85を、好ましくは、OMV調製物の一部として含んでもよい。また、OMP85の断片を本発明の免疫原性組成物において用いてもよく、特に、アミノ酸残基1〜475または50〜475で構成されているOMP85のN末端表面露出ドメインを本発明の免疫原性組成物のサブユニット成分に組み入れることが好ましい。OMP85のN末端表面露出ドメインの上記配列を、NまたはC末端のいずれか一方またはその両方において、最大1個、3個、5個、7個、10個、15個、20個、25個または30個のアミノ酸だけ、延長または末端切断してもよい。シグナル配列はOMP85断片から除かれることが好ましい。
【0211】
OstA
OstAはリポ多糖の合成において機能し、毒性のレギュレーターであると考えられている。あるいは、OstAを、毒素カテゴリーを毒素だけでなく毒性のレギュレーターまで含むように拡張した毒素カテゴリーに含めてもよい。
【0212】
本発明の免疫原性組成物は、Neisseria meningitidis血清型A、B、C、Y、W-135またはNeisseria gonorrhoeae由来の抗原(タンパク質、LPSおよび多糖)を含んでよい。
【0213】
好ましくは、サブユニット組成物は、本発明のNspAと、以下のリストから選択される少なくとも1種のさらなる抗原とを含んでなる: FhaB、Hsfのパッセンジャードメイン、Hapのパッセンジャードメイン、OMP85のN末端表面露出ドメイン、FrpA、FrpC、FrpA/C、TbpB、LbpB、PldA、PilQならびにLPS免疫型 L2およびLPS免疫型 L3のいずれか一方またはその両方。
【0214】
好ましくは、サブユニット組成物(リフォールディングされたNspA、または上記のサブユニット組合せを含む)が、ナイセリア菌(好ましくは、髄膜炎菌)の外膜小胞(OMV)調製物をさらに含んでなる。好ましくは、OMV調製物が、以下のリスト: NspA、Hsf、Hap、OMP85、TbpA(高)、TbpA(低)、LbpA、TbpB、LbpB、PilQおよびPldA、から選択される少なくとも1種(より好ましくは、2種、3種、4種または5種)であって組換えにより外膜小胞中でアップレギュレートされた抗原を有しており、かつ、所望により、LPS免疫型 L2およびLPS免疫型 L3のいずれか一方またはその両方を含んでいてよい。
【0215】
好ましくは、本発明の組成物は、NspAと外膜小胞調製物を含むサブユニット組成物を含んでなり、ここでそのサブユニット組成物は、以下のリスト: FhaB、Hsfのパッセンジャードメイン、Hapのパッセンジャードメイン、OMP85のN末端表面露出ドメイン、FrpA、FrpC、FrpA/C、TbpB、LbpB、PilQから選択される少なくとも1種の抗原をさらに含み、その外膜小胞調製物は、以下のリスト: NspA、Hsf、Hap、OMP85、TbpA(高)、TbpA(低)、LbpA、TbpB、LbpB、PilQおよびPldAから選択される少なくとも1種の異なる抗原であって組換えにより外膜小胞中でアップレギュレートされている抗原を有し、かつ、その外膜小胞調製物が、所望により、LPS免疫型 L2およびLPS免疫型 L3のいずれか一方またはその両方を含んでもよいものである。
【0216】
さらなる組合せ
本発明の免疫原性組成物は、細菌莢膜多糖またはオリゴ糖をさらに含んでもよい。莢膜多糖またはオリゴ糖は、Neisseria meningitidis血清型A、C、Y、および/またはW-135、インフルエンザ菌b型、肺炎連鎖球菌、A群連鎖球菌、B群連鎖球菌、黄色ブドウ球菌および表皮ブドウ球菌のうち1種以上に由来するものであってよい。
【0217】
本発明のさらなる態様は、本発明の抗原性組成物を、ウイルスまたはグラム陽性細菌と関連する病状を含む特定の病状に対して用いることが有利である他の抗原とともに含んでなるワクチン組合せである。
【0218】
1つの好ましい組合せでは、本発明の抗原性組成物は、以下の髄膜炎菌の莢膜多糖またはオリゴ糖:A、C、YまたはW-135のうちの1種、2種、3種、または好ましくは4種全てを、そのままでもよく、またはタンパク質担体とコンジュゲートさせてもよい形態で加えて製剤化する。好ましくは、本発明の免疫原性組成物は、AとC;またはC;またはCとYとともに、製剤化される。N. meningitidis血清型B由来のタンパク質を含有するこのようなワクチンは、汎用髄膜炎菌ワクチンとして有利に用いることができる。
【0219】
さらに好ましい実施形態では、好ましくは、そのままの状態か、またはコンジュゲート化した髄膜炎菌莢膜多糖またはオリゴ糖であるA、C、YまたはW-135(上述)のうちの1種、2種、3種、または4種全てとともに製剤化される本発明の抗原性組成物が、コンジュゲート化インフルエンザ菌b型莢膜多糖(もしくはオリゴ糖)、および/または1種以上の、そのままの状態かもしくはコンジュゲート化した肺炎球菌莢膜多糖(もしくはオリゴ糖)(例えば、後述するもの)を加えて製剤化される。所望により、このワクチンは、宿主を肺炎連鎖球菌感染から防御することができる1種以上のタンパク質抗原も含んでよい。このようなワクチンは、汎用髄膜炎ワクチンとして有利に用いることができる。
【0220】
さらに好ましい実施形態では、本発明の免疫原性組成物がNeisseria meningitidis、インフルエンザ菌b型、肺炎連鎖球菌、A群連鎖球菌、B群連鎖球菌、黄色ブドウ球菌または表皮ブドウ球菌のうち1種以上のものに由来する莢膜多糖またはオリゴ糖とともに製剤化される。肺炎球菌莢膜多糖またはオリゴ糖抗原は、好ましくは、血清型1、2、3、4、5、6B、7F、8、9N、9V、10A、11A、12F、14、15B、17F、18C、19A、19F、20、22F、23Fおよび33Fから(最も好ましくは、血清型1、3、4、5、6B、7F、9V、14、18C、19Fおよび23Fから)選択される。さらに好ましい実施形態は、インフルエンザ菌のPRP莢膜多糖またはオリゴ糖を含有するものである。さらに好ましい実施形態は、黄色ブドウ球菌の5型、8型または336莢膜多糖を含有するものである。さらに好ましい実施形態は、表皮ブドウ球菌のI型、II型またはIII型莢膜多糖を含有するものである。さらに好ましい実施形態は、B群連鎖球菌のIa型、Ic型、II型またはIII型莢膜多糖を含有するものである。さらに好ましい実施形態は、A群連鎖球菌の莢膜多糖を含有し、好ましくは、少なくとも1種のMタンパク質、より好ましくは、複数種のMタンパク質をさらに含んでなるものである。
【0221】
本発明のこのような莢膜多糖またはオリゴ糖は、破傷風トキソイド、破傷風トキソイドフラグメントC、ジフテリアトキソイド、CRM197、ニューモリジン、プロテインD (US6342224)などの担体タンパク質とコンジュゲートされていてもよいし、コンジュゲートされていなくてもよい。この多糖またはオリゴ糖コンジュゲートは、いずれの公知のカップリング技術によっても作製し得る。例えば、チオエーテル結合によって多糖をカップリングすることができる。このコンジュゲーション方法は、シアン酸エステルを形成する1-シアノ-4-ジメチルアミノピリジニウムテトラフルオロボレート(CDAP)を用いた多糖の活性化によるものである。それにより活性化された多糖は、直接か、またはスペーサー基を介して、担体タンパク質のアミノ基に連結され得る。好ましくは、シアン酸エステルがヘキサンジアミンによりカップリングされて、そのアミノ誘導体化多糖は、チオエーテル結合の形成を伴うヘテロライゲーション化学を利用して、担体タンパク質にコンジュゲートされる。このようなコンジュゲートは、公開されたPCT出願WO93/15760 Uniformed Services Universityに記述されている。
【0222】
これらのコンジュゲートは、US 4365170(Jennings)およびUS 4673574(Anderson)に記載されているような直接還元的アミノ化方法によっても作製することができる。他の方法は、EP-0-161-188、EP-208375およびEP-0-477508に記述されている。さらなる方法は、アジピン酸ヒドラジド(ADH)を用いて誘導体化した臭化シアン活性化多糖のカルボジイミド縮合によるタンパク質担体へのカップリングを含む(Chu C.ら Infect. Immunity, 1983 245 256)。
【0223】
好ましい肺炎球菌タンパク質抗原は、肺炎球菌の外表面に露出されている肺炎球菌タンパク質であり(肺炎球菌のライフサイクルの少なくとも一部において宿主の免疫系によって認識され得る)、すなわち、肺炎球菌により分泌されるか、もしくは放出されるタンパク質である。最も好ましくは、そのタンパク質が肺炎連鎖球菌の毒素、付着因子、二成分シグナルトランスデューサー、もしくはリポタンパク質、またはその断片である。特に好ましいタンパク質としては、限定されるものではないが、ニューモリジン(好ましくは、化学処理または突然変異により解毒されたもの)[Mitchellら Nucleic Acids Res. 1990 Jul 11; 18(13): 4010 「肺炎連鎖球菌1型および2型由来のニューモリジン遺伝子とタンパク質の比較("Comparison of pneumolysin genes and proteins from Streptococcus pneumoniae types 1 and 2.")」、Mitchellら Biochim Biophys Acta 1989 Jan 23; 1007(1): 67-72 「大腸菌におけるニューモリジン遺伝子の発現:迅速精製と生物学的特性("Expression of the pneumolysin gene in Escherichia coli: rapid purification and biological properties.")」、WO 96/05859(A. Cyanamid)、WO 90/06951(Patonら)、WO 99/03884(NAVA)];PspAおよびその膜貫通領域欠失変異体(米国特許第5804193号 - Brilesら);PspCおよびその膜貫通領域欠失変異体(WO 97/09994 - Brilesら);PsaAおよびその膜貫通領域欠失変異体(Berry & Paton, Infect Immun 1996 Dec;64(12): 5255-62 「肺炎連鎖球菌の毒性に必須の37キロダルトンの推定付着因子PsaAの配列不均一性("Sequence heterogeneity of PsaA、a 37-kilodalton putative adhesin essential for virulence of Streptococcus pneumoniae")」);肺炎球菌コリン結合タンパク質およびその膜貫通領域欠失変異体;CbpAおよびその膜貫通領域欠失変異体(WO 97/41151; WO 99/51266);グリセルアルデヒド-3-リン酸-デヒドロゲナーゼ(Infect. Immun. 1996 64: 3544);HSP70(WO 96/40928);PcpA(Sanchez-Beatoら FEMS Microbiol Lett 1998, 164: 207-14);M様タンパク質、(EP 0837130)ならびに付着因子 18627、(EP 0834568)が挙げられる。さらなる好ましい肺炎球菌タンパク質抗原は、WO 98/18931に開示されているもの、特に、WO 98/18930およびPCT/US99/30390で選択されているものである。
【0224】
本発明の免疫原性組成物/ワクチンはまた、所望により、他のグラム陰性細菌、例えば、Moraxella catarrhalisまたはインフルエンザ菌から作られた外膜小胞調製物も含みうる。
【0225】
組成物、キットおよび投与
先に述べたように、本発明は、細胞または多細胞生物への投与のためのNspAタンパク質を含んでなる組成物を提供する。
【0226】
免疫原性組成物は、宿主に投与した場合に免疫応答を惹起することができる、少なくとも1種の抗原を含んでなる組成物である。好ましくは、このような免疫原性調製物がナイセリア菌感染、好ましくは、Neisseria meningitidis感染および/またはNeisseria gonorrhoeae感染に対する防御免疫応答を惹起することができる。
【0227】
本発明はまた、本明細書において記述するタンパク質またはそれらのアゴニストもしくはアンタゴニストを含んでなる組成物にも関する。本発明のタンパク質は、細胞、組織または生物に用いるための非滅菌または滅菌担体、例えば、個体への投与に好適な医薬担体と組み合わせて使用してもよい。このような組成物は、例えば、媒体添加剤または治療上有効な量の本発明のタンパク質および製薬上許容される担体または賦形剤を含んでなる。このような担体としては、限定されるものではないが、生理食塩水、緩衝生理食塩水、デキストロース、水、グリセロール、エタノールおよびそれらの組合せが挙げられる。製剤は投与の様式に合わせる必要がある。本発明はさらに、本発明の上記組成物の1種以上の成分を充填した1以上の容器の入った診断用および医薬用のパックおよびキットに関する。
【0228】
本発明のタンパク質および他の化合物は単独で使用してもよいし、または、治療用化合物などの他の化合物と併用してもよい。
【0229】
医薬組成物は、例えば、とりわけ局所、経口、肛門内、膣内、静脈内、腹腔内、筋肉内、皮下、経鼻または皮内経路による投与をはじめとするいずれかの効果的で便宜な方法により投与し得る。
【0230】
治療においてまたは予防法として、活性薬剤を注射可能な組成物として、例えば、好ましくは等張の、滅菌水性分散液として個体に投与し得る。
【0231】
本発明の組成物は、例えば、全身または経口経路による投与の経路に適合したものとする。全身投与に好ましい形態としては、注射が挙げられ、一般に、静脈注射による。皮下注射、筋肉注射または腹腔内注射などの他の注射経路を利用してもよい。全身投与のための別の手段としては、胆汁塩もしくはフシジン酸または他の界面活性剤などの浸透剤を利用した経粘膜投与および経皮投与が挙げられる。さらに、本発明のタンパク質または他の化合物を腸溶性またはカプセル化製剤に製剤可能ならば、経口投与もまた可能である。これらの化合物の投与はまた、軟膏剤、ペースト剤、ゲル剤、液剤、散剤などの形態での局所性投与であってもよいし、および/または局部的な投与であってもよい。
【0232】
哺乳類、特に、ヒトへの投与では、活性薬剤の1日投与量レベルは0.01mg/kg〜10mg/kg、一般に、約1mg/kgであると考えられる。各個体に最も好適な実際の投与量は、医師がいずれにしても判断し、その量は個体の年齢、体重および応答に応じて異なる。上記の投与量は典型的な平均的ケースである。当然ながら、より高いか、またはより低い用量範囲が有益である個々の事例は存在する可能性があり、そのような用量範囲は本発明の範囲内である。
【0233】
必要な用量範囲は、ペプチドの選択、投与経路、製剤の性質、被験体の病的状態の性質および担当医の判断によって決まる。しかしながら、好適な投与量は0.1〜100μg/被験体kgの範囲にある。
【0234】
ワクチン組成物は、便宜には、注射可能な形態である。免疫応答を高めるために従来のアジュバントを使用してもよい。ワクチン接種に好適な単位投与量は0.5〜5μg/抗原kgであり、このような投与量を、1〜3回、1〜3週間の間隔で投与することが好ましい。本発明の化合物は、記載した用量範囲で用いれば、好適な個体へのそれらの投与を不可能にするような有害な毒性作用は認められない。
【0235】
しかしながら、入手可能な化合物の多様性や種々の投与経路の有効性の違いを考えると、必要とされる投与量が幅広く変化することが予想される。例えば、経口投与は、静脈注射による投与よりも高い投与量を必要とすると思われる。これらの投与量レベルの変動は、当技術分野では十分に理解されているように、最適化のための標準的な実験的慣用手順により調整することができる。
【実施例】
【0236】
以下、本発明の好ましい特徴および実施形態を以下の実施例を参照してさらに説明する。
【0237】
実施例1−天然のNspA(ナイセリア菌表面タンパク質A)の調製
Quiagenゲノム調製キットを用いて、Neisseria meningitidis株H44/76のゲノムDNAを調製した。H44/76 ゲノムDNAから、プライマー対5’gctacatatggaaggcgcatccggcttttacgおよび5’gctaggatcctcagaatttgacgcgcacaccggを用いて、成熟NspAタンパク質(すなわち、19アミノ酸のシグナルペプチドを含まない)をコードするNspA遺伝子の一部をPCR増幅した。
【0238】
得られたPCR産物をpCRII-TOPO(Invitrogen)中にクローニングし、NdeIおよびBamHIで消化し、pET11a(Novagen)に連結した。得られたプラスミドpET11a-NspAをBL21-DE3細胞(Novagen)へと形質転換した。これらの細胞5リットルを、100μg/ml アンピシリンを含有するルリアブロス(Luria Broth)において37℃にて増殖させた。OD600値が0.6に達した後、1mMのイソプロピル-チオ-β-D-ガラクトピラノシド(IPTG)を2時間にわたり添加した(あるいは、0.1mM IPTGを加えてさらに4時間行った)。細胞を回収し、600mlの0.9%(w/v) NaClで洗浄した。NspAは封入体として存在した。この細胞ペレットを100ml氷冷TEバッファー(50mM Tris/HCl + 40mM EDTA pH 8.0)に再懸濁した。25グラムのスクロースと20mgリゾチームを振盪しながら30分間添加した。100mlのTEを添加し、さらに30分間振盪を続けた。次いで、100ml分量を超音波処理し(Branson製ソニファイアー)、4mlの10% Brijを添加し、超音波処理をもう1回行った。懸濁液を4000rpmにて30分遠心した。封入体を含むペレットをTEバッファーで1回洗浄し、40mlの10mM Tris/HCl pH 8.3に再懸濁し、アリコートに分けて遠心し(8000rpm エッペンドルフ遠心機)、-20℃にて冷凍した。
【0239】
封入体を20mM Tris/HCl + 0.1Mグリシン + 8M尿素 pH 8.0中に可溶化した。
【0240】
可溶化された変性NspAタンパク質を、0.5%精製SB-12 (3-ジメチルドデシルアンモニオプロパンスルホン酸、Fluka - DodMe2NprSO3)を含有する20mMエタノールアミン中へ希釈(1:20)することにより、リフォールディングさせた。SB-12は、界面活性剤の濃縮液をメタノール/クロロホルム(1:1)中でAl2O3カラムに通すことにより精製した。あるいは、1%(w/v)精製SB-12 (3-ジメチルドデシルアンモニオプロパンスルホン酸、Fluka)を含有する20mMエタノールアミン、pH 11中への5倍希釈を実施した。この溶液を室温にて一晩攪拌しておいた。
【0241】
リフォールディングを準非変性SDS-PAGE(すなわち、できるだけ少ない必要量のSDSを用いて、低アンペア数で4℃にて泳動する)により評価した。これにより、リフォールディングされたNspAは、変性NspA(1%SDSを加えて5分煮沸)と比べて泳動が遅い形態として示される。このことは、文献で報告されているように、天然の細胞外被に存在するときのその泳動挙動と一致している。ゲルの銀染色による判定では、100%リフォールディング効率が達成されていた。ゲルは通常は、14%アクリルアミドを含有し、ゲル中にはSDSを含まず、3×サンプルバッファー中にだけ0.03% SDSを含み(さらに、0.1M Tris pH 6.8、15.4%グリセロール、7.7% β-メルカプトエタノール、および0.008%(w/v) ブロモフェノールブルーを含む)、電気泳動前に加熱しなかった。
【0242】
フォールディングしたNspAをさらに精製するために、その混合物を、10mM DodMe2NprSO3、20mM Tris-HCl pH 8.5(バッファーA)で予め平衡化した1ml mono S カラム(Pharmacia)に添加した。添加する前に、タンパク質サンプルのpHを1M HClを用いてpH 8.5に調整した。このカラムをバッファーAで洗浄し、そしてタンパク質を、全量50mlの、バッファーA中、0〜500 mM NaClの直線勾配を用いて溶出した。
【0243】
OMPは、一般に、熱変性しうる、すなわち、フォールディングした単量体であり、SDS-PAGEゲルでは熱変性タンパク質より早く泳動するものであるが、それとは対照的に、本発明者らは、NspAがリフォールディング後にゲルでの移動がより遅くなったことを観察した。変性タンパク質は分子量約18kDaとして移動し、一方、フォールディングしたタンパク質は22kDaとして移動した。これはナイセリア菌膜から単離される天然のNspAの電気泳動移動度(Moeら 1999 I&I 67: 5664)と十分に一致していた。超遠心分析および化学的架橋試験により、リフォールディングされたNspAが、その結晶構造で確認されたように(下記参照)、界面活性剤含有溶液中では単量体である(すなわち、二量体化していない)ことを確認した。
【0244】
実施例2−リフォールディングされたNspAについての、正確にフォールディングされた構造の証明
リフォールディングされたNspAが、ナイセリア菌膜から単離される天然のNspAと同じようにゲル上で移動したという上記の確証に加え、正確なリフォールディングの2つのさらなる指標が示された。
【0245】
リフォールディングしたNspAをマウスに注入し、その結果得られた血清はELISA試験において天然の(変性していない)NspAを認識し得た。
【0246】
リフォールディングしたNspAを用いて高品位の結晶を生成し、その結晶からフォールディングされたナイセリア菌NspAの結晶構造が解明された (Vandeputte-Ruttenら 2003 JBC 278: 24825)。
【0247】
実施例3−TbpAおよびHsfと組み合わせた、NspAに対する抗体の血清殺菌活性
PorAの発現と莢膜多糖の合成がスイッチオフされたN. meningitidis株H66/76(WO 01/09350を参照)を、WO 01/09350に記載の手順を利用したTbpAおよびHsfの発現またはNspAの発現のアップレギュレーションに対するバックグラウンド株として用いた。その株から外膜小胞を調製した。TbpAは遺伝子的にアップレギュレートしてもよいし、または低鉄条件で産生株を増殖させることによりアップレギュレートしてもよい。
【0248】
外膜小胞調製物をAl(OH)3に吸着させ、0日、21日および28日にマウスに注入した。42日に、そのマウスから血を採取し、血清を調製した。TbpAおよびHsfがアップレギュレートされたOMVに対する血清を、アップレギュレートされたNspAを含有するOMVをワクチン接種したマウス由来の血清と混合し、血清殺菌アッセイを以下の通り行った。
【0249】
OMVを接種したマウスの抗血清の血清殺菌活性を、同種株H44/76または異種株Cu385のいずれかを用いて、アッセイで比較した。血清殺菌アッセイは防御とよい相関関係を示すことが証明されており、従ってこのアッセイは候補組成物が防御免疫応答の誘導においてどの程度に有効であるかのよい指標となる。
【0250】
Neisseria meningitidis血清型B野生型株(H44/76株=B:15 P1.7,16 L3,7,9 およびCU385株=B: 4 P1.19,15 L3,7,9)をMH+1%ポリバイテックス(Polyvitex)+1%ウマ血清のペトリ皿において37℃+5%CO2にて一晩培養した。それらを50μMのデスフェラール(Desferal、鉄キレート剤)を添加した液体TSB培地において、振盪しながら37℃にて3時間二次培養し、光学密度を470nmにて約0.5とした。
【0251】
プール血清または個々の血清を56℃にて40分間不活化した。血清サンプルをHBSS-BSA 0.3%で1/100希釈し、次いで、丸底マイクロプレートにおいて50μl量で2倍連続希釈した(8希釈物)。
【0252】
好適なODの細菌をHBSS-BSA 0.3%で希釈して、1ml当たり1.3 10e4 CFUとした。この希釈物37.5μlを血清希釈物に添加し、マイクロプレートを振盪しながら37℃にて15分間インキュベートした。次いで、ウサギ補体12.5μlを各ウェルに添加した。振盪下37℃でのインキュベーションの1時間後、マイクロプレートを氷上に置いて死滅を停止させた。
【0253】
傾斜法を用いて、各ウェルの20μlをMH+1%ポリバイテックス+1%ウマ血清のペトリ皿にプレーティングし、37℃+CO2にて一晩インキュベートした。CFUを計数し、死滅率を計算した。血清殺菌力価とは、≧50%死滅をもたらす血清の最終希釈倍数である。
【0254】
特に、異種株を用いた試験において、力価が1/100を上回る場合には、マウスがかなり高いレベルの殺菌抗体を産生すると考えられる。
【0255】
結果
以下の表に結果を示している。同種H44/76株を用いたアッセイでは、NspAに対する抗体を添加してもTbpAおよびHsfに対する抗体を単独で用いてもたらされる血清殺菌力価より高い力価は得られなかった。
【0256】
しかしながら、異種株を用いた血清殺菌アッセイにおいては、NspAに対する抗体の添加は有利であった。NspAに対する抗体は、CU385株に対する血清殺菌力価の強化という点で有効である。
【表1】

【0257】
NspAは有効量の(アップレギュレートされた)TbpAおよび/またはHsfと組み合わせたとき、混合ワクチンに対して生成される血清の交差殺菌特性を向上させることができる。
【0258】
上記明細書に記載した全ての出版物は、参照により本明細書に組み入れられる。本発明の記載した方法および系の種々の変形や変更は、本発明の範囲および精神から逸脱することなく、当業者ならば理解できるであろう。本発明は特定の好ましい実施形態と関連付けて記述したが、当然のことながら、特許請求する本発明はこのような特定の実施形態に不当に制限されるべきものではないと理解される。実際に、記述した本発明の実施態様の種々の変形は、分子生物学または関連分野の当業者にとっては明らかであり、添付の特許請求の範囲内であることが意図される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
リフォールディングされた単離NspAタンパク質。
【請求項2】
NspAタンパク質をリフォールディングする方法であって、NspAタンパク質を、3-ジメチルドデシルアンモニオプロパンスルホン酸(SB-12)を含んでなるアルカリ性リフォールディングバッファーと接触させることを含む、方法。
【請求項3】
リフォールディングバッファーがエタノールアミンおよびSB-12を含んでなる、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
エタノールアミンが約20mMのエタノールアミンである、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
リフォールディングバッファーがpH 11である、請求項2〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
SB-12が0.2% SB-12である、請求項2〜5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
SB-12が0.5% SB-12である、請求項2〜5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
SB-12が精製されている、請求項2〜7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
SB-12が、それをAl2O3カラムに通すことにより精製されている、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
以下の工程:
a. 所望により、宿主細胞内でNspAタンパク質を発現させる工程、
b. 所望により、その宿主細胞を破壊してNspAタンパク質を含む封入体を得る工程、
c. 所望により、該封入体を洗浄する工程、
d. 所望により、該封入体の少なくとも一部およびNspAタンパク質を可溶化する工程、
e. 可溶化されたNspAタンパク質をリフォールディングバッファーと接触させる工程、
および
f. 所望により、NspAタンパク質からリフォールディングバッファーを除去する工程、
を含む方法。
【請求項11】
請求項2〜10のいずれか一項に記載の方法に使用するための、エタノールアミンおよびSB-12を含んでなる、リフォールディングバッファー。
【請求項12】
請求項2〜10のいずれか一項に記載の方法により得られたか、または得ることが可能な、リフォールディングされた単離NspAタンパク質。
【請求項13】
請求項1または12に記載の少なくとも1つのリフォールディングされた単離NspAタンパク質および製薬上許容される担体を含んでなる、医薬組成物。
【請求項14】
前記組成物中に存在するNspAタンパク質の少なくとも30%、50%、70%または90%がリフォールディングされている、請求項13に記載の医薬組成物。
【請求項15】
ワクチン形態である、請求項13または14に記載の医薬組成物。
【請求項16】
ナイセリア・メニンジティディス(Neisseria meningitidis)由来のリフォールディングされた単離NspAタンパク質を含んでなる、請求項13〜15のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項17】
ナイセリア・ゴノレア(Neisseria gonorrhoeae)由来のリフォールディングされた単離NspAタンパク質を含んでなる、請求項13〜16のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項18】
少なくとも1種の他のナイセリア菌抗原を含んでなる、請求項13〜16のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項19】
ナイセリア・ゴノレア(Neisseria gonorrhoeae)由来の少なくとも1種の他のナイセリア菌抗原を含んでなる、請求項18に記載の医薬組成物。
【請求項20】
ナイセリア・メニンジティディス(Neisseria meningitidis)由来の少なくとも1種の他のナイセリア菌抗原を含んでなる、請求項18または19に記載の医薬組成物。
【請求項21】
以下の分類:
a. FhaB、Hsf、NadA、PilC、Hap、MafA、MafB、Omp26、NMB0315、NMB0995およびNMB1119からなる群から選択される少なくとも1種のナイセリア菌付着因子(Adhesin)、
b. Hsf、Hap、IgAプロテアーゼ、AspAおよびNadAからなる群から選択される少なくとも1種のナイセリア菌自己輸送体、
c. FrpA、FrpC、FrpA/C、VapD、NM-ADPRT、ならびにLPS免疫型 L2およびLPS免疫型 L3のいずれか一方またはその両方からなる群から選択される少なくとも1種のナイセリア菌毒素、
d. TbpA 高、TbpA 低、TbpB 高、TbpB 低、LbpA、LbpB、P2086、HpuA、HpuB、Lipo28、Sibp、FbpA、BfrA、BfrB、Bcp、NMB0964およびNMB0293からなる群から選択される少なくとも1種のナイセリア菌鉄獲得タンパク質、ならびに
e. PldA、TspA、FhaC、NspA、TbpA(高)、TbpA(低)、LbpA、HpuB、TdfH、PorB、HimD、HisD、GNA1870、OstA、HlpA、MltA、NMB 1124、NMB 1162、NMB 1220、NMB 1313、NMB 1953、HtrA、TspB、PilQおよびOMP85からなる群から選択される少なくとも1種のナイセリア菌膜結合タンパク質、好ましくは、外膜タンパク質、
のうちの1以上から選択される少なくとも1種の他のナイセリア菌抗原をさらに含んでなる、請求項18〜20のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項22】
1種以上の細菌莢膜多糖またはオリゴ糖をさらに含んでなる、請求項13〜21のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項23】
1種以上の莢膜多糖またはオリゴ糖が、ナイセリア・メニンジティディス(Neisseria meningitidis)血清型A、C、Y、および/またはW-135、インフルエンザ菌b型、肺炎連鎖球菌、A群連鎖球菌、B群連鎖球菌、黄色ブドウ球菌ならびに表皮ブドウ球菌からなる群から選択される細菌由来であり、かつ、好ましくは、T-ヘルパーエピトープの供給源とコンジュゲートされている、請求項22に記載の医薬組成物。
【請求項24】
動物での免疫応答の惹起に使用するための医薬の製造における、請求項1および12のいずれか一項に記載のNspAタンパク質(または請求項13〜23のいずれか一項に記載の医薬組成物)の使用。
【請求項25】
ナイセリア菌感染の予防治療のための医薬の製造における、請求項1および12のいずれか一項に記載のNspAタンパク質(または請求項13〜23のいずれか一項に記載の医薬組成物)の使用。
【請求項26】
それを必要とする患者に、請求項1および12のいずれか一項に記載のNspAタンパク質(または請求項13〜23のいずれか一項に記載の医薬組成物)を投与することにより、ナイセリア菌感染を予防または治療する方法。
【請求項27】
ナイセリア・メニンジティディス(Neisseria meningitidis)感染が予防または治療される、請求項25または26に記載の使用または方法。
【請求項28】
ナイセリア・ゴノレア(Neisseria gonorrhoeae)感染が予防または治療される、請求項25〜27のいずれか一項に記載の使用または方法。
【請求項29】
請求項1および12のいずれか一項に記載のNspAタンパク質に対して免疫特異的である抗体。
【請求項30】
請求項29に記載の少なくとも1種の抗体および好適な医薬担体を含んでなる、ナイセリア菌疾患を有するヒトを治療するのに有用な医薬組成物。
【請求項31】
ナイセリア菌疾患の治療または予防のための医薬の製造における、請求項29に記載の抗体の使用。
【請求項32】
ナイセリア・メニンジティディス(Neisseria meningitidis)感染が予防または治療される、請求項31に記載の使用。
【請求項33】
ナイセリア・ゴノレア(Neisseria gonorrhoeae)感染が予防または治療される、請求項31または32に記載の使用。
【請求項34】
ナイセリア菌感染を診断する方法であって、そのような感染の疑いがある動物由来の生体サンプル中のNspAタンパク質またはそれに対する抗体を、請求項1および12のいずれか一項に記載のNspAタンパク質、または請求項29に記載の抗体を利用して同定する工程を含む、方法。
【請求項35】
ナイセリア・メニンジティディス(Neisseria meningitidis)感染が診断される、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
ナイセリア・ゴノレア(Neisseria gonorrhoeae)感染が診断される、請求項34または35に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−57679(P2011−57679A)
【公開日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−226544(P2010−226544)
【出願日】平成22年10月6日(2010.10.6)
【分割の表示】特願2004−532178(P2004−532178)の分割
【原出願日】平成15年8月28日(2003.8.28)
【出願人】(305060279)グラクソスミスクライン バイオロジカルズ ソシエテ アノニム (169)
【出願人】(505071664)ユトレヒト ユニバーシティー (5)
【Fターム(参考)】