説明

ナトリウムイオン伝導性セラミックセパレーターを有する固体ナトリウム系二次電池

本発明は、固体ナトリウム系二次電池(再充電可能電池)(10)を提供する。二次電池(10)は、陰イオン液を含む非水負極電解質溶液(25)中に配置される固体ナトリウム金属負極(20)から成る。更に、電池(10)は、正極電解質溶液(40)中に配置される正極(35)から成る。ナトリウムイオン伝導性電解質膜(45)は、正極電解質溶液(40)から負極電解質溶液(25)を分離する。電池は室温で作動してもよい。更に、負極電解質溶液(25)はイオン性の液体を含む場合、イオン性の液体は、電池が(10)再充電の際、負極(20)上での樹状突起形成を防止し、ナトリウムイオンは負極(20)上で還元される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、「ナトリウムイオン伝導性セラミックセパレーターを有する低温作動再充電可能電池」という発明の名称を有する2009年11月5日出願の米国仮特許出願第61/258563号を優先権主張する出願である。この仮特許出願は本発明に参照として引用される。
【0002】
本発明は電池に関する。詳しくは、本発明は、ナトリウムイオン伝導性電解質膜およびナトリウム金属負極を有し、ナトリウム金属負極の融点より低い温度で作動するナトリウム系二次電池(又は再充電可能電池)を提供する。
【背景技術】
【0003】
電池は電気エネルギーを貯え放電するために使用されることは知られている。電気エネルギーを生み出すために、代表的には、電池は化学的エネルギーを電気エネルギーに変換する。単電池は1つ以上のガルバニ電池を含み、それぞれの電池は2つの半電池から成っていて、外部回路と通じる以外は電気的に絶縁されている。充電中は、電池の正極において電気化学的還元が起り、一方電池の負極においては電気化学的酸化が起る。電池中の正極および負極は物理的に互いに接触しないが、1つ以上のイオン伝導体および電気化学的絶縁性電解質によって化学的に接続されており、これらの物質は固体、液体およびそれらの混合物のいずれであってもよい。外部回路または負荷を負極と接続している端子および正極に接続している端子に接続した際、電池は、外部回路を通じて電子を流し、イオンは電解質を通じて移動する。
【0004】
電池は種々の種類に分類することが出来る。例えば、電池が完全に一度だけしか放電できないものは、一次電池として分類される。これに対して、一度以上放電および充電を行うことが出来る電池を二次電池として分類される。複数回充放電できる電池の性能は、充電および放電のそれぞれのサイクルのファラデー効率による。
【0005】
ナトリウム系再充電可能電池は種々の物質および構成から成るが、高いファラデー効率が要求される多くのナトリウム電池は、固体一次電解質セパレーターを使用する。固体セラミック一次電解質膜を使用する主たる利点は、その電池のファラデー効率を100%に近づけることが出来る点である。実際に、他の電池構成のほとんどにおいて、電池中の負極電解質および正極電解質溶液が時間と共に混ざり、ファラデー効率が低下し、電池容量の損失を引起す。
【0006】
高いファラデー効率が要求されるナトリウム電池で使用される一次電解質セパレーターは、しばしば、イオン伝導性ポリマー、イオン伝導性液体またはゲルが充填されている多孔質材料または高密度セラミックから成る。
【0007】
これに関して、全てとは言えないにしてもほとんどが、現在入手し得る再充電可能ナトリウム電池は、溶融ナトリウム金属負極、ナトリウムβ−アルミナセラミック電解質セパレーター及び溶融正極から成り、溶融硫黄および炭素複合体を含んでもよく(ナトリウム/硫黄電池と呼ばれる)、また、溶融NiCl、NaCl、FeCl及び/又はNaAlClを含んでもよい(ZEBRA電池と呼ばれる)。これらの市販の高温ナトリウム系再充電可能電池は比較的高い比エネルギー密度および適度な電力密度を有するため、そのような再充電可能電池は、一般的に、固定蓄電や無停電電源などの高い比エネルギー密度でありながら高い電力密度に直面しないようなある種の限られた分野で使用される。
【0008】
従来のナトリウム系再充電可能電池には、重大な欠点がある。その1つとしては、ナトリウムβアルミナセラミック電解質セパレーターは、代表的には溶融ナトリウムによって、約270℃を超える温度においてより伝導性が良く良好に濡れるため、及び/又は、溶融正極が、代表的には溶融状態を残すために比較的高温(例えば約170℃又は180℃を超える温度)を必要とするため、多くの従来のナトリウム系再充電可能電池は、約270℃を超える温度(例えば300℃を超える温度)で作動し、重大な温度熱管理問題や熱シール問題が発生する。例えば、あるナトリウム系再充電可能電池は、電池から熱を放散させ、また、負極および正極を比較的高い作動温度に維持する困難性を有する。他の問題点としては、そのような比較的高温に耐え、操作可能な電池の構成要素を必要とすることである。従って、そのような構成部材は比較的高価である。更に、他の問題点としては、従来のナトリウム系電池は作動温度が比較的高いため、大きな加熱エネルギーを必要とするため、そのような電池は作動において高価であり、エネルギー不足である。
【0009】
ナトリウムの融点より低い温度で作動できるナトリウム系電池が有利であることは明らかであり、新たな技術挑戦に直面する。例えば、溶融ナトリウムを使用する電池は、しばしば、セラミック電解質セパレーターに直接接触する液体金属負極を有し、これにより、第二の電解質の必要性を除く。これに対し、負極が固体ナトリウム金属から成る場合、負極および第一の電解質の間に配置される第二の液体電解質が必要となる。そのようなナトリウム系二次電池が充電される際、ナトリウムイオンは負極上で還元され、ナトリウム樹状突起を、代表的には負極とセラミック電解質セパレーターとの間に形成する。この場合、そのような樹状突起はセパレーターに浸入し、セパレーター欠陥の原因となる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
それ故、低温で作動するナトリウム系二次電池が提案されてはいるものの、上述の内容を含むそのような電池への挑戦が存在する。従って、従来のナトリウム系二次電池を他のナトリウム系二次電池に代替し、増やすことが、この技術分野においての改良となる。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明、比較的低温で作動するナトリウム系二次電池を提供する。より詳しくは、本発明、ナトリウム金属の融点より低い温度で作動する二次電池を提供する。記載される固体ナトリウム系二次電池は好適な構成部材から成り、これに実施が限定される訳ではないが、電池は、非水負極電解質溶液(または負極電解質)中に配置される負極から成る負極室、正極電解質溶液(または正極電解質)中に配置される正極を含む正極室、および正極電解質溶液から負極電解質溶液を物理的に分離するナトリウムイオン伝導性電解質膜から成る。
【0012】
二次電池が少なくとも一部充電されている場合、負極はナトリウム金属から成る。本明細書を通じて、参照しやすいように、負極はナトリウム負極またはナトリウム金属負極として参照される。未充電または完全に放電された状態では、負極はナトリウム金属を含まないことが当業者には理解できるであろう。本発明の開示は、二次電池が放電状態において、初期充電中に負極上にメッキされるナトリウム金属として得られるナトリウムイオン源とともに作られる装置および方法を含む。
【0013】
一般に、ナトリウム負極は、電池が作動中に、固体として残存している所定量のナトリウム金属から成る。これに関し、ナトリウム負極は、これに限定されるわけではないが、純粋なナトリウムのサンプル、純粋でないナトリウムのサンプル及び/又はナトリウムアロイの種々の好ましいナトリウム形態から成る。実際に、これに限定されるものではない実施において、負極は、実質的に純粋なナトリウムのサンプルから成る。
【0014】
非水負極電解質溶液(または第二電解質)は、ナトリウムイオンを輸送でき、負極の材料およびナトリウム伝導性電解質膜と化学的に相溶性があり、電池が所望の機能を有する様な好ましい種々の電解質から成る。これに実施が限定されるわけではないが、適当な負極電解質溶液の例として、有機電解質およびイオン性液体から成る。しかしながら、あるイオン性液体はナトリウムイオン伝導性膜よりも高いイオン伝導性を有するという理由、および/または、あるイオン性液体は界面活性剤として機能するという理由により、そのようなイオン性液体は、ある種の有機電解質よりも負極上での樹状突起形成の阻害が良好である。従って、これに実施が限定されるわけではないが、負極電解質溶液が陰イオン液から成る。
【0015】
イオン性液体は好ましい特性を有しながら、ある実施態様においては、イオン性液体は一般に1つ以上のより大きな非対称有機陽イオン及び1つ以上の無機陰イオンから成る。更に、これに実施が限定されるわけではないが、イオン性液体は、芳香族で、1つの非対称鎖を有する及び/又は他の適当な化学的性質を有するカチオン及び/又はアニオンから成る。他の実施態様において、カチオンをアニオンと比較した場合イオン性液体は非対称ではない。カチオンは大きくアニオンは小さく又はその反対である。例えば、ある実施態様において、イオン性液体が、3置換基すべてが同じトリエチルスルホニウムである。さらに、長鎖炭化水素の鎖がイオン性液体の粘度を増加させる傾向にありので、イオン性液体のイオン伝導性を減少させる。これに実施が限定されるわけではないが、イオン性液体のカチオンは短い官能基から成る。従って、これに実施が限定されるわけではないが、イオン性液体は、比較的低粘度で高イオン伝導性を有する。
【0016】
正極室中の正極は、電池が所望の機能を有するような適当な材料から成る。実際に、これに実施が限定されるわけではないが、正極はワイヤー、フェルト、メッシュ、プレート、チューブ又は他の好適な正極構成形態から成る。更に、正極材料の好ましい例としては、これに限定されるわけではないが、ニッケル、オキシ水酸化ニッケル(NiOOH)(例えば、電池が少なくとも一部充電されている場合)、水酸化ニッケル(Ni(OH))(例えば、電池が少なくとも一部放電されている場合)、電池の作動範囲において溶融しない硫黄複合体および/または他の好適な正極材料が挙げられる。
【0017】
正極室中の正極電解質溶液は、電解質膜におよび電解質膜からナトリウムイオンを伝導でき、電池が所望の機能を有するような適当な材料から成る。正極電解質材料の好ましい例としては、これに限定される訳ではないが、水酸化ナトリウム、水、グリセロール、ホウ砂、四ホウ酸ナトリウム十水和物、メタホウ酸ナトリウム十水和物、メタホウ酸ナトリウム四水和物、ホウ酸、水素化ホウ素ナトリウム、ホウ酸ナトリウム、リン酸ナトリウム、リン酸水素ナトリウム、グリセロールナトリウム、炭酸ナトリウム、エチレン、プロピレン、1つ以上のイオン性液体およびこれらの適当な組合せが挙げられる。実際に、これに実施が限定されるわけではないが、正極電解質溶液は水酸化ナトリウム水溶液から成る。更に、他の例としてこれに限定されるわけではないが、正極電解質は、過剰の水に溶解した四ホウ酸ナトリウム十水和物50±10重量%水溶液から成る。
【0018】
ナトリウムイオン伝導性電解質膜(または第一電解質)は、ナトリウムイオンを選択的に移送し、電池の作動温度において安定であり、非水負極電解質系および正極電解質溶液と接触しても安定であり、電池の作動温度において十分なイオン伝導性を有し、電池が所望の機能を有するような膜から成る(ここではセパレーターの好適な一種として参照される)。実際に、これに実施が限定されるわけではないが、電解質膜は、実質的に防水性のNaSICON型膜から成る。従って、ある実施態様において、防水性の電解質膜は、正極電解質溶液がもしナトリウム負極と接触すると激しく反応するような水溶液から成ることを可能にする。
【0019】
電解質膜がNaSICON型膜から成る場合、膜は、これに限定されるわけではないが、複合NaSICON膜などのNaSICON型膜の種々の好適なものから成る。これに関し、これに限定されるわけではないが、膜は、緻密NaSICON層および多孔性NaSICON層、または、NiO/NaSICONサーメット層などのサーメット層を有する緻密NaSICON層などを含む公知または新規の複合NaSICON膜から成る。
【0020】
本発明の電池は、負極が固体として残存するような適当な作動温度で作動する。実際に、ある実施態様において、電池は、約100℃、約98℃、約80℃、約60℃、約40℃、約30℃、約20℃及び約10℃から選択される温度よりも低い温度で作動する(例えば、放電および/または再充電される)。実際に、これに実施が限定されるわけではないが、電池は、約25℃+10℃で作動する。
【0021】
これらの本発明の要旨および利点は、以下の記載および請求の範囲から、又は後述の実施例を実施することにより、より明らかになるであろう。
【0022】
本発明の上述または他の要旨および利点を得るため、また容易に理解するために、上述の簡単な記載の更に詳しい本発明の説明を、添付の図面に基づいた具体的な実施態様を参照して説明する。図面はスケールを表してはおらず、本発明の代表的な実施態様を示したに過ぎず、本発明の要旨をこれらに限定するものではないということを理解すべきである。本発明は、添付の図面を用いて更なる具体的な記載および説明を行う。図面の内容は以下の図面の簡単な説明にて行う。
【発明の効果】
【0023】
本発明の電池は、ナトリウム金属の融点より低い温度で作動するため、電池の作動中、電池は、加熱および/または電池からの熱の放散に伴うエネルギーをほとんど必要とせず、使用または取扱いにおいて危険性が少ない。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】図1は、固体ナトリウム系二次電池の代表的な実施態様の概略図であり、電池は放電中である。
【図2】図2は、固体ナトリウム系二次電池の代表的な実施態様の概略図であり、電池は第二電解質の非水イオン性液体から成り、電池は再充電中である。
【図3】図3は、固体ナトリウム系二次電池の概略図であり、電池は再充電中である。
【図4】図4は、適当な正極電解質溶液の種々の代表的な実施態様を使用した90℃における膜伝導性を示すグラフである。
【図5】図5は、固体ナトリウム系の代表的な実施態様の電流応答を示す実験結果を図示したコンピューター処理グラフである。
【図6】図6は、固体ナトリウム系二次電池の異なる実施態様で長期間測定された電位を示す実験結果を図示したコンピューター処理グラフである。
【図7】図7は、固体ナトリウム系二次電池の異なる実施態様で長期間測定された電位を示す実験結果を図示したコンピューター処理グラフである
【発明を実施するための形態】
【0025】
本明細書を通じて「ある実施態様」、「1つの実施態様」また類似の語は、その実施態様に関連する具体的な要旨、構造または性質が、本発明の少なくとも1つの実施態様に含まれていることを意味する。それ故、本明細書を通じて「ある実施態様において」、「1つの実施態様において」及び類似の語は、必ずしも全ての同じような実施態様に参照されるものでもない。更に、以下の記載は、種々の構成要素から成る幾つかの実施態様や実施例を参照するが、記載された全ての実施態様および実施例があらゆる点で考慮されるべきであり、これらの記載は例示であって、何らかの様式に限定されるものではない。
【0026】
更に、記載された本発明の要旨、構造または性質は、1つ以上の実施態様において適当な様式で組合せてもよい。以下の記載において、負極、正極、負極電解質溶液、正極電解質溶液、ナトリウムイオン伝導性電解質膜などの好適な例示における数多くの具体的詳細な記載が、本発明の実施態様を十分に理解するために与えられている。しかしながら、本発明は1つ以上の具体的な例示が無くとも実施でき、また、他の方法、構成要素、材料などを用いている実施できることは当業者ならば理解できるであろう。その他、良く知られた構造、材料または操作は、本発明の要旨を曖昧にすることを避けるために、示したり、記載したりはしていない。
【0027】
上述のように、二次電池は放電し、充電されることが出来るので、本明細書では両状態の電池配列および方法を記載する。「充電」という語はその種々の形態から再充電のニュアンスがあるが、当業者ならば、再充電が最初の、初期充電あるいはその逆にも適応でき、有効であることは理解できるであろう。それ故、本明細書の目的に関し、「再充電する」、「再充電された」及び「再充電可能な」という語は、「充電する」、「充電された」及び「充電可能な」という語に置換え可能である。
【0028】
本発明は、比較的低い温度で作動する固体ナトリウム系二次電池を提供する。詳しくは、本発明は、ナトリウム金属の融点より低い温度で作動する二次電池を供給する。ナトリウム系二次電池は、適当な構成要素からなり、図1にその代表的な実施態様を示す。固体ナトリウム系二次電池10は、非水負極電解質溶液25中に配置されるナトリウム金属負極20を含む負極室15、正極電解質溶液40中に配置される正極35から成る正極室30、正極電解質から負極電解質を分離するナトリウムイオン伝導性電解質膜45、第1の端子50及び第2の端子55から成る。記載される電池10をよりよく理解するために、電池の機能について簡単に以下に説明する。以下のこの記載は、図1に示される電池の構成要素のそれぞれについて、より詳細に説明される。
【0029】
固体ナトリウム二次電池10の作動方法について説明すると、電池は、実際に適当な方法で作動する。一例において、図1は、電池10が放電し、電子(e)が負極20(例えば、第1の端子50を介し)から流れ、ナトリウムは負極20において酸化されてナトリウムイオン(Na)を形成することを示す。図1は、これらのナトリウムイオンが負極20の界面60から、負極電解質25を介し、ナトリウムイオン伝導性電解質膜45を介し、正極電解質40移送されることを示す。
【0030】
対照的に、図2は、固体ナトリウム系二次電池10が再充電され、充電器などの外部電源(図示せず)から電子(e)は固体ナトリウム負極20(例えば、第2端子55を通じて)に流れることを示す図で、電池が放電中に起る化学反応(図1に示す)の逆である。具体的に、図2は、電池10が再充電の際の、ナトリウムイオン(Na)が、ナトリウムイオン伝導性電解質膜45及び非水負極電解質25を介して正極電解質40から負極20に移送され、ナトリウムイオンは還元され、ナトリウム金属として負極界面60上にメッキ65されることを示す。
【0031】
電池10の種々の構成要素について説明する。電池は(上述の)負極室15及び正極室30から成る。これについて、この2つの室は好適な形状を有し、電池10が所望に機能する様な好適性質を有する。実施例の方法によれば、負極室および正極室は、それぞれ、チューブ状、長方形または、他の好適な形状を有することが出来る。更に、2つの室は、互いに好適な空間的関係を有する。例えば、図2は、負極室15及び正極室30が互いに近接しているように示してあるが、他の実施態様において(図示せず)、1つの室(例えば負極室)が、少なくとも部分的に他の室(例えば正極室)の中に配置され、ナトリウムイオン伝導性電解質膜45及び他の区画壁によって2つの室の内容物が分離されている。
【0032】
ナトリウム金属負極20に関しては、電池10は、電池が所望に機能するように(例えば放電および/または充電するように)、好適なナトリウム負極20を有する。好適なナトリウム負極材料の例としては、これに限定される訳ではないが、実質的に純粋、純粋でない、あるいは他の好適なナトリウム含有負極材料とのアロイであるナトリウムサンプルが挙げられる。ある実施態様において、正極電解質40中のナトリウム塩を使って、電池は放電状態において組立てられ、そして電池は充電され、電解質膜45を介してナトリウムイオンが負極に移送され、電気化学的還元が負極において起り、その結果、二次電池が少なくとも部分的に充電された時、負極は実質的に純粋な所定量のナトリウムから又はナトリウムのみから成る。そのような実施態様は、純粋なナトリウムの融点が98℃付近であるため、電池作動時にナトリウム負極は融点未満に維持する。もちろん、ナトリウム負極が、ナトリウムアロイ又は純粋でないナトリウム金属から成る場合、負極の融点は98℃よりも高いので、電池は負極が融解しないで98℃よりも高い温度で作動してもよい。
【0033】
非水負極電解質溶液25(又は第二電解質)に関し、負極電解質は、ナトリウム金属負極20及び電解質膜45と化学的に相溶性があり(すなわち、化学的に反応しない)、負極と電解質膜との間をナトリウムイオン(Na)が伝導するために内部相として作用することが出来る好適な非水電解質から成る。これに実施が限定されるわけではないが、好適な非水負極電解質は、有機電解質およびイオン性液体を含む。
【0034】
負極電解質溶液25は有機電解質から成り、負極電解質は、化合物、ナトリウム塩および/または、アセトニトリル、アセトン、テトラヒドロフラン、メチルエチルケトン、ジメチルスルホキシド及び/又は酢酸エチル等の極性非プロトン性有機溶媒と共に使用が好適である有機電解質から成る。
【0035】
有機電解質は短所もあることにも注目すべきである。実際に、図3に示すように、負極電解質25は有機電解質70から成る場合、有機電解質は、有機電解質70を介して電場をわずかに変化させることにより、ナトリウムイオンの(Na)(例えば充電中に)界面60上での不均一な還元および樹状突起75の形成を行う。そのような樹状突起75は最終的に電解質膜45に接触し、浸入しさえしてセラミック障害を引起すため、ある実施態様において、樹状突起成長を阻害するあるイオン液体が有機電解質の代りに使用される.
【0036】
非水負極電解質25は陰イオン液80(図2に示される)から成り、陰イオン液は、負極20及び電解質膜45と化学的に相溶性があり、高いイオン伝導性を有する適当な化学物質であってもよい。その際、ある実施態様において、イオン液は有機陽イオン及び無機陰イオンから成る。
【0037】
イオン液が有機陽イオンから成る場合、有機陽イオンとしては、特に制限は無いが、比較的大きいサイズを有することが適している。有機陽イオンとしては、これらに限定されないが、以下に示すような、N−メトキシ−N−メチルピロリジニウム、ブチルメチルピロリジニウム、プロピルメチルピロリジニウム、トリエチルスルホニウム、ジエチルメチルスルホニウム、エチル−ジメチル−アンモニオ(トリメチルアンモニオ)ジヒドロホウ酸塩、ピリジニウム、ピロリジニウム、4級化アンモニウム、4級化ホスホニウム、トリスルホニウム及びスルホニウム化合物が例示される。
【0038】
【化1】

【0039】
上記イオン性液体におけるカチオンでの置換基R、R、R及び/又はRは種々の性質を有することが出来る。実際に、これに実施が限定されるわけではないが、R、R、R及び/又はRの少なくとも1つの置換基は他の置換基と異なっていてもよく、その結果非対称となる。実際に、ある実施態様において、4級化置換基の4つのうち3つが同じである。他の実施態様において、しかしながら、4級化置換基の4つのうち2つが同じである。そして更に他の実施態様において、4級化置換基の4つが全て互いに異なる。
【0040】
他に、これに実施が限定されるわけではないが、イオン性液体の置換基は種々の好ましい化学置換基から成ることが出来る。実際に、ある実施態様において、R、R、R及び/又はRは、C1〜C10のアルキル、アルケニル、アルキニル、エーテル、ケトンまたは類似の基から成る。他の実施態様において、R、R、R及び/又はRは、C1〜C5のアルキル、アルケニル、アルキニル、エーテル、ケトンまたは類似の基から成る。更に具体的には、ある実施態様において、カチオンはフェニル基などの芳香族基などの官能基から成る。R、R、R及び/又はRの大きさの選択において、炭素鎖が長いほど、イオンの移動性および導電性が減少する傾向にあり、粘度が増大する傾向にある。それ故、ある実施態様において、R、R、R及びRの中の3置換基は炭素鎖が短く、残る1つの置換基の炭素鎖が長い。短い鎖とは、3またはそれより少ない炭素数と定義されてもよい。R、R、R又はRの例としては、メチル基、エチル基またはプロピル基が挙げられる。長い鎖とは、3を超える炭素数と定義されてもよい。
【0041】
他の実施態様において、2つの置換基が短く、1つの置換基が中位の長さであり、他の1つの置換基が長い。更に、他の実施態様において、所望のイオン移動性および伝導性を有するように選択され、全ての置換基が異なる。
【0042】
イオン性液体で使用される無機陰イオンに関し、イオン性液体はいかなる適当な無機陰イオンから成ることが出来る。実際に、これに限定される訳ではないが、このましい無機陰イオンの例としては、三塩化アルミニウムアニオン(AlCl)、六フッ化リンアニオン(PF)、四フッ化ホウ素アニオン(BF)、トリフルオロメチルスルホン酸アニオン(CFSO)、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドアニオン((CFSO)及び/又は他の好適なアニオンが挙げられる。ある実施態様において、Cl又は他のハロゲンイオンがアニオンとして良好に使用できる。他の好適なアニオンとしては、過塩素酸イオンである。更に、アニオンは種々の好適な性質を有することが出来る。ある実施態様において、イオン性液体中のアニオンがフッ素化されている。
【0043】
好ましいイオン性液体80としては、これに限定される訳ではないが、メタンスルホニルクロリドアルミニウムトリクロリド、エーテル置換4級アンモニウムクロリドアルミニウムトリクロリド、n−ブチルメチルピロリジニウム−ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、ベンジルジメチルプロピルアンモニウムクロリドアルミニウムトリクロリド、オクチルメチルイミダゾリウム−ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、ブチルメチルピリジニウム−ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、ブチルメチルピリジニウムテトラフルオロホウ酸塩、トリブチルメチルアンモニウムクロリドアルミニウムトリクロリド、他の好適なイオン性液体および/またはこのようなアニオンとカチオンとの組合せが例示される。
【0044】
イオン性液体80は、負極20及び電解質膜45と化学的な相溶性を有し、比較的高いイオン伝導性を有する性質を有していてもよく、ある実施態様において、電解質膜45のイオン伝導性より高くてもよい。例えば、ある実施態様において、NaSICON型の電解質膜が、正極電解質溶液から負極電解質溶液を分離し、電解質膜は負極電解質溶液よりも低いイオン伝導性を有する。実際に、ある実施態様において、イオン性液体はSTP(標準温度で標準気圧)において液体であり、STPにおいてほとんど又は全く蒸気圧が無く、STPにおいて比較的低粘度であり、及び/又は、高温において沸騰よりもむしろ分解する。従って、ある実施態様において、イオン性液体は、室温イオン性液体または室温溶融体として参照される。従って、ある実施態様において、イオン性液体中の1つ以上のカチオン及び/又はアニオンは非対称である。
【0045】
上述の化合物に加えて、ある実施態様において、イオン性液体80は、電気化学的酸化またはナトリウムイオンの還元を補助する有機または無機添加剤を任意成分として含んでいてもよい。有機または無機添加剤は、何らかの好適な方法で機能してよく、例えば、添加剤の存在により、イオン性液体中のナトリウムイオンの解離が増加する。ある場合において、イオン性液体が有機または無機添加剤から成っていてもよい。これに関し、イオン性液体への好適な添加剤の例として、これに限定される訳ではないが、本来酸性である、1つ以上の小さなハロゲン化化合物から成る、1つ以上の塩化物、フッ化物、ナトリウム系塩および/または他の好適な添加剤またはこれらの組合せの添加物が挙げられる。このような添加物の例としては、これに限定される訳ではないが、塩酸(HCl)、スルホニルクロリド(SOCl)、ジクロロメタン(CHCl)、四塩化炭素(CCl)及びトリフルオロ酢酸イオン(CFCOO)の塩が挙げられる。更に、これに実施が限定されるわけではないが、ナトリウム系塩添加剤は、イオン性液体に添加され、イオン性液体中のフリーナトリウムイオンを増加させ、それにより、ナトリウムイオン伝導性を増加させる。この例としては、これに限定される訳ではないが、NaCl、NaI、NaBr、NaClO又は類似のナトリウム塩が挙げられる。
【0046】
電池10はイオン性液体を含み、イオン性液体は、有利な種々の特性を電池に付与する。これに実施が限定されるわけではないが、その有利な特性の一例として、図2に、イオン性液体80が樹状突起の成長を防止し、ナトリウムイオン(Na)が還元されるのを促進し(例えば電池10が再充電される際)、実質的に円滑に、負極20上にメッキまたは層65を形成することを示す。イオン性液体は、何らかの好適な方法によって、これらの機能を実施してもよい。実際に、1つの非拘束理論の元、イオン性液体中の大きなカチオンは、負極界面60において低い界面エネルギーにより界面活性剤として働くと信じられており、これにより、電池が再充電中に、ナトリウムイオンが更に負極上にメッキされる。更に他の1つの非拘束理論の元、イオン性液体は電解質膜より高いイオン伝導性を有すると信じられており、ナトリウムイオンが還元し、負極界面上で均一にメッキされることが生じる方法において、イオン性液体は電解質膜に対する電圧勾配が比較的低い。
【0047】
イオン性液体80によって付与される他の有利な特性は、イオン性液体のイオン伝導性が電解質膜45のイオン伝導性より高いため、イオン性液体が容易にナトリウムイオン(Na)を電解質膜45から負極20に移送できることである。この方法において、イオン性液体は、電池10が作動中に電解質膜がナトリウム金属で被覆されることを防止する。
【0048】
電池を所望に作動させるために、イオン性液体80はナトリウム伝導性の好ましいレベルを有してもよい。ある実施態様において、イオン性液体は、約2×10−4mS/cmよりも大きなナトリウム伝導性を有する。他の実施態様において、イオン性液体は、約4×10−4mS/cmよりも大きなナトリウム伝導性を有する。更に他の実施態様において、イオン性液体は、約6×10−4mS/cmよりも大きなナトリウム伝導性を有する。更に他の実施態様において、イオン性液体は、約1×10−3mS/cmよりも大きなナトリウム伝導性を有する。更に他の実施態様において、イオン性液体は、約1×10−2mS/cmよりも大きなナトリウム伝導性を有する。更に他の実施態様において、イオン性液体は、25℃〜100℃において約0.1〜100mS/cmのナトリウム伝導性を有する。この方法に限定される訳ではないが、表1は、ある好適なイオン性液体系の種々の温度におけるAC(交流)伝導度を示す。特に、表1は、これに限定されないが、N−メトキシエチル−N−メチル−ピロリジニウム及びビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(まとめて「NM−NM−P」と参照する)、プロピルメチル−ピロリジニウム及びビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(まとめて「NM−NM−P」と参照する)、プロピルメチル−ピロリジニウム及びビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(まとめて「PMP」と参照する)、ブチルメチル−ピロリジニウム及びビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(まとめて「BMP」と参照する)、及び、エチル−ジエチル−アンモニオ−(トリメチルアンモニオ)−ジヒドロホウ酸塩及びビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(まとめて「Et3S」と参照する)のAC(交流)伝導度を示す。
【0049】
【表1】

【0050】
正極35については、電池10は、電池が所望の充放電を行える好適な正極を含む。例えば、正極は、固体ナトリウム系再充電電池システムにおいて好適に使用される実際の正極材料から成る。ある実施態様において、正極はワイヤー、フェルト、プレート、チューブ、メッシュ、泡および/または他の好適な正極構成形態から成る。更に、この態様に限定されないが、正極は、ニッケル発泡体、電池の作動温度において溶融しないナトリウム複合体(これに限定されないが、ナトリウム/硫黄材料)、水酸化ニッケル(Ni(OH))(例えば、電池が少なくとも部分的に放電されている)、オキシ水酸化ニッケル(NiOOH)(例えば、電池が少なくとも部分的に充電されている)および/または他の好適な材料から選択される材料から成る。
【0051】
これに限定されないが、ある実施態様において、正極35はオキシ水酸化ニッケル(NiOOH)電極から成り、負極20はナトリウムから成り、正極電解質40(以下で説明する)は水溶液から成り、電池10が放電の場合の負極において起る反応、正極において起る反応および全体の反応を以下に示す。
【0052】
負極:Na←→Na+1e (−2.71V)
正極:NiOOH+HO←→Ni(OH)+OH (0.52V)
全体:Na+NiOOH+HO←→Ni(OH)+NaOH (3.23V)
【0053】
従って、電池10のある実施態様において、少なくとも理論的には、3.23Vの起電力がある。
【0054】
更に、正極35はオキシ水酸化ニッケル(NiOOH)電極から成り、負極20はナトリウムから成り、正極電解質40(以下に説明する)は水溶液から成る場合、電池の充放電中の反応のある例を以下に示す。
【0055】
放電:NiOOH+HO+Na+e→Ni(OH)+NaOH
充電:Ni(OH)+NaOH→NiOOH+HO+Na+e
【0056】
正極電解質溶液40について説明すると、正極電解質は、電池10が所望の機能を有する様な好適なナトリウムイオン伝導性材料から成る。更に、ある実施態様において、正極電解質は、電解質膜45(以下に示す)よりも高いナトリウムイオン伝導性を有する。これに限定されるわけではないが、図4は、適当な正極電解質の種々の代表的な実施態様に関するナトリウムイオン伝導性電解質膜(例えばNaSICON膜)の90℃における伝導性を示すグラフである。特に、それぞれの正極電解質に関し、図4は、ACインピーダンス(すなわち、それぞれの正極電解質の左側の棒グラフ)及び50mA/cmのDCインピーダンス(すなわち、それぞれの正極電解質の右側の棒グラフ)を使用している膜伝導度をそれぞれ示す。
【0057】
正極電解質40における好ましい材料の幾つかの例としては、これに限定されるわけではないが、水酸化ナトリウム、グリセロール、水、ホウ砂、四ホウ酸ナトリウム10水和物、メタホウ酸ナトリウム四水和物、ケイ酸ナトリウム、ホウ酸、水素化ホウ素ナトリウム、リン酸ナトリウム、リン酸水素ナトリウム、グリセロールナトリウム、炭酸ナトリウム、エチレン、プロピレン、陰イオン液(上述の)、他の好ましい液体、およびこれらの組合せが挙げられる。実例として、ある実施態様において、正極電解質40は、一つ以上の以下に示す溶液から成る:水酸化ナトリウム及び水;水酸化ナトリウム、ホウ砂および水;グリセロール及び水酸化ナトリウム;グリセロール、水酸化ナトリウム及び水;グリセロールおよびホウ砂;四ホウ酸ナトリウム10水和物および水;ホウ砂および水である。
【0058】
正極電解質40における種々の構成要素は、電池10が所望の機能を有するような適当な濃度を有することが出来る。例えば、ある実施態様において、正極電解質は、約0〜約50重量%(例えば、約4%〜約50重量%)の水酸化ナトリウム、約0〜約96重量%のグリセロール、約0〜約45重量%のホウ砂、約0〜約60%の四ホウ酸ナトリウム十水和物(例えば、約40%〜約60重量%)、および約0〜約93重量%の水から成る。これに実施が限定されるわけではないが、以下の表2に好適な正極電解質溶液を示す。
【0059】
[表2]正極電解質溶液
50%水酸化ナトリウム及び50%水(充填剤)
15%水酸化ナトリウム、28%グリセロール及び57%水(充填剤)
4%水酸化ナトリウム及び96%グリセロール(充填剤)
4%水酸化ナトリウム、16%水および80%グリセロール(充填剤)
45%ホウ砂および55%グリセロール(充填剤)
40%ホウ砂および60%水(充填剤)
7.5%水酸化ナトリウム及び92.5%水(充填剤)
35%水酸化ナトリウム及び65%水(充填剤)
15%水酸化ナトリウム及び85%水(充填剤)
15%水酸化ナトリウム28%ホウ砂および57%水(充填剤)
25%水酸化ナトリウム及び75%水(充填剤)
25%水酸化ナトリウム、28%ホウ砂および47%水(充填剤)
50%四ホウ酸ナトリウム10水和物及び50%水(充填剤)
【0060】
表2における正極電解質溶液40は、具体的な濃度を示しているが、他の実施態様において、これらの溶液の水酸化ナトリウム、ホウ砂、四ホウ酸ナトリウム10水和物および/またはグリセロールの濃度をそれぞれ±10重量%変更することが出来、水またはグリセロール等の充填剤の濃度はそれに準じて変更できる。
【0061】
上述のように、電池10は、ナトリウムイオン選択性電解質膜45(又は第一電解質)を有する。これに関し、膜は、ナトリウムイオンの選択的移動を行い、負極電解質25液体と正極電解質40液体との間の浸透バリアとなる。それ故、負極電解質および正極電解質液体は同じで有る必要は無い。更に、電解質膜(第一電解質)と負極電解質(または第二電解質)との間を区別する性質は、電解質膜がナトリウムイオンを選択的に伝導するのに対し、負極電解質はナトリウムイオンを伝導するものの、その他のカチオン、アニオンも一式伝導される。
【0062】
ナトリウムイオン伝導性電解質膜45は、ナトリウムイオンを選択的に移送でき、電池10が非水正極電解質または水性正極電解質と共に機能するような好適な材用から成る。ある実施態様において、電解質膜は、NaSICON型(ナトリウム超イオン伝導性)材料から成る。そのような実施態様において、NaSICON型材料は、上記電池10において好適に使用出来る公知の又は新規のNaSICON型材料から成っていてもよい。好適なNaSICON型組成物の例としては、これに限定される訳ではないが、NaZrSiPO12、Na1+xSiZr3−x12(xは1.6〜2.4から選択される)、YドープNaSICON(Na1+x+yZr2−ySix3−x12、Na1+xZr2−ySix3−x12−y(x=2、y=0.12)及びFeドープNaSICON(NaZr2/3Fe4/312)が挙げられる。実際に、ある実施態様において、NaSICON型膜はNaSiZrPO12から成る。他の実施態様において、NaSICON型膜は、サーメット把持NaSICON膜などの公知または新規の複合材から成る。そのような実施態様において、NaSICON膜複合材は、好適な複合材成分から成り、これに限定される訳ではないが、NiO/NaSICON又は他の好適なサーメット層および緻密NaSICON層から成る多孔質NaSICON−サーメット層から成る。更に他の実施態様において、NaSICON膜は単射晶型セラミックから成る。
【0063】
電池の電解質膜45がNaSICON型材料から成る場合、NaSICON型材料が電池10にいくつかの有利な特性を付与する。一例としては、NaSICON型材料は、ナトリウムβ−アルミナ型セラミック電解質セパレーターとは対照的に、実質的に水に対して非浸透性であるため、NaSICON型材料により、電池が、ナトリウム負極20と非相溶の水性正極電解質などの正極電解質を含むことが出来るようになる。それ故、NaSICON型膜を電解質膜として使用することにより、電池化学の幅広い範囲を有することが出来る。NaSICON型膜と関連した有利な特性の他の例としては、そのような膜は、ナトリウムイオンの選択的移送が可能であり、一方、負極電解質25及び正極電解質40が混合することを防ぐため、そのような膜は、電池が最小限の容量を有し、常温において比較的安定な有効期限を有する。
【0064】
電池10が満充電の場合、電解質膜45は、60から好適な距離X離して配置してもよく(図1に示すように)、距離Xは、例えば約100μm、約80μm、約60μm、約50μm、約30μm及び約20μmである。実際にある実施態様において、電池が満充電の場合、負極と電解質膜との間の距離Xは、約50μm+約15μmである。ある実施態様において、膜と電極との間の距離が小さい程良好である。電池10が満充電の場合、すべてのNaイオンに対応して十分な距離を有することが望ましく、それ故、ある実施態様において、距離Xは、その時点でもっとも小さくする。しかしながら、電池が満充電の場合、もちろん、これは体積変化を伴なわなければいけないが、Naの全てがカソード側に移送されているため、距離が最も大きくなる。
【0065】
端子50及び55(図1に示す)について参照すると、電池10は、外部回路と電池とを電気的に接続でき、また、これに限定される訳ではないが、1つ以上の電池と接続できる適当な端子を有する。これに関し、端子は、種々の適当な材料、形状、大きさから成ることが出来る。
【0066】
更に、上述の構成要素に加えて、電池10は、任意に他の好適な構成要素を有することが出来る。これに限定される訳ではないが、図3は、任意要素として加熱制御システム85を有する電池10の実施態様を示す。そのような実施態様において、電池は、電池の温度を適切な作動温度範囲に維持するような好適な加熱制御システムを有する。そのような加熱制御システムの例としては、これに限定される訳ではないが、加熱器、冷却機、1つ以上の温度センサー及び適切な温度制御電気回路から成る。
【0067】
上記の電池10は、種々の好適な作動温度で作動する。換言すれば、電池が放電および/または充電している際、ナトリウム負極が固体として残存するような適当な温度で作動する。実際に、ある実施態様において、電池の作動温度は約100℃未満である。他の実施態様において、電池の作動温度は約98℃未満である。他の実施態様において、電池の作動温度は約80℃未満である。他の実施態様において、電池の作動温度は約60℃未満である。他の実施態様において、電池の作動温度は約40℃未満である。他の実施態様において、電池の作動温度は約30℃未満である。他の実施態様において、電池の作動温度は約20℃未満である。例えば、ある実施態様において、電池の作動温度は約25℃+10℃.
【0068】
ある実施態様において、電池はナトリウムの融点未満の作動温度で作動する。他の実施態様において、電池は電池中の水性電解質の沸点未満の作動温度で作動する。ナトリウム系電極がナトリウム合金の場合、電池はナトリウム合金よりも低い作動温度で作動することは、当業者には明らかであろう。更に、電池が加圧下の場合、電池の作動温度はより高く成ってもよい。ある実施態様において、電池は約120℃以下の温度で作動する。実際に、ある実施態様において、電池の作動温度は、負極またはナトリウム系電極が固体形状を有するように決定される。
【0069】
上述の本発明の電池10の利点および特性に加えて、電池は他の有利な特性をいくつか有する。一例としては、電池が充電中に、電池は負極20上の樹状突起形成を妨げるまたは防止する。従って、電池の寿命は、従来のナトリウム系再充電可能電池に対して増大する。他の例としては、上記の電池は比較的低い作動温度で作動する。その結果、電池の作動中、電池は、加熱および/または電池からの熱の放散に伴うエネルギーをほとんど必要としない。更に、本発明の電池は、従来のナトリウム系再充電可能電池と比較して低い温度で作動可能であるため、電池は使用または取扱いにおいて危険性が少ない。更に他の例としては、電池は何回も充電が可能であり、作動中に有害化学物質の放出が無く、他の従来の電池よりも必要な熱エネルギーが少ないため、本発明の電池は環境に優しいと言える。
【実施例】
【0070】
以下に示す実施態様に例は、本発明の要旨の範囲内の種々の実施態様を示したものである。これらは単に例示であって、以下の実施例が、本発明に関連して作ることができる多くの実施態様の総合、包括では無いと理解すべきである。
【0071】
実施例1:
実施例1では、固体ナトリウム系二次電池10の一実施態様が組立てられ試験された。これに関し、このシステムでは、固体ナトリウム負極20、NaSICON電解質膜45および有機負極電解質25を含む。このシステムでは、更に、ナトリウム金属負極とNaSICON膜との間にナトリウムイオン溶液を含み、これによりNaSICON界面からNa+le←→Na°反応を除外し、電気伝導ナトリウム及び電解質膜の間の直接的な接触を防ぐ。
【0072】
一端が閉管のNaSICONチューブを40μmバフ研磨機で表面を粗面化した。チューブのおおよその大きさは、14.7mmO.D.(全長)、壁の肉厚は1.4mmであった。直径約2.5cm、厚さ約1mmのNaSICONディスクの表面を研磨し、0.33μmの粗面とした。これら2つのNaSICON部材は、真空中、約450℃で一晩乾燥し、そしてアルゴン充填グローブ・ボックス中に入れた。有機電解質溶液は、1Mナトリウムトリフラートのジメトキシエタン及びベンゾフェノン溶液であった。溶液はケチルフリーラジカルの存在を示す濃紫色であり、水が存在していなかった。全ての試験はアルゴン充填グローブ・ボックス中で行われた。
【0073】
NaSICONチューブは、0.25Vの固定電圧で約24時間操作され、そして電圧を逆に負荷した。その結果、ナトリウムは、チューブの外側から内側に移送された。このプロセスにおいて測定された応答電流を図5に示す。具体的に、図5は、約7.3mAの電流から始まり、ゆっくりと増加して24時間後に約8.5mAに達したことを示す。非常に揮発性の高い有機電解質溶液は、約26時間後に補充された。試験は、チューブに、溶液/ガス/NaSICON界面領域においてクラックが生じたことが観察されたら終了した。NaSICONチューブの内部のクラック端はナトリウム金属によって修飾され、ナトリウム樹状突起がチューブに浸透し、チューブ欠損を引起した。
【0074】
この実施態様に例は、固体金属ナトリウム負極、ナトリウムイオン伝導性セラミック第一電解質膜および負極と電解質膜との間に配置される非水イオン性負極電解質溶液から成る固体ナトリウム系二次電池の実現可能性を示したものである。
【0075】
実施例2:
実施例2において、図6及び7は、これに限定される訳ではないが、固体ナトリウム系二次電池の2種の実施態様について長期間に渡り測定された電位を示す。これに関し、図6及び7において結果を得るために使用された電池は、陰イオン液に接する固体ナトリウム金属負極から成っていた。電池において使用したイオン性の液体に関しては、図6において示される結果を得るために使用した電池では、N−メトキシエチル−N−メチル−ピロリジニウム及びナトリウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドから成り、図7において示される結果を得るために使用した電池では、プロピルメチル−ピロリジニウム及びビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドから成っていた。更に、両方の電池におけるイオン性液体含有負極電解質は、NaSICON膜に接触していた。そして、両方の電池において、正極は、約50重量%水酸化ナトリウム溶液から成る正極電解質中に配置されるニッケルメッシュ電極から成っていた。
【0076】
図6及び7において示される実験結果は、上記の実施態様の電池が長期間に渡って機能することを示している。実際に、図6は電池が漏電するまで約350時間機能した結果を示している。
【0077】
本発明の具体的な実施態様を解説し、記載したが、本発明の要旨を大きく逸脱しない範囲において、数多くの変更が考えられ、本発明の範囲は、添付する特許請求の範囲にのみ限定されるものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
負極室、正極室およびナトリウムイオン伝導性電解質膜から成るナトリウム系二次電池であって、負極室は、非水イオン性負極電解質溶液中に配置される負極から成り、当該負極は、放電中に電気化学的に酸化されてナトリウムイオンを放出し、充電中に電気化学的にナトリウムイオンをナトリウム金属に還元し、正極室は正極電解質溶液中に配置される正極から成り、ナトリウムイオン伝導性電解質膜は正極電解質溶液から負極電解質溶液を分離し、二次電池が作動状態において負極は固体であることを特徴とするナトリウム系二次電池。
【請求項2】
約100℃未満の温度で作動する請求項1に記載の二次電池。
【請求項3】
約60℃未満の温度で作動する請求項1に記載の二次電池。
【請求項4】
約25℃+10℃の温度で作動する請求項1に記載の二次電池。
【請求項5】
電解質膜がNaSICON型材料から成る請求項1に記載の二次電池。
【請求項6】
負極電解質溶液が、ナトリウム金属、ナトリウムイオン及び電解質膜の存在下で化学的に安定である有機陽イオン及び無機陰イオンから成る請求項1に記載の二次電池。
【請求項7】
負極電解質溶液が非対称の有機陽イオンから成る請求項6に記載の二次電池。
【請求項8】
負極電解質溶液が、N−メトキシエチル−N−メチルピロリジニウム、ブチルメトキシピロリジニウム、プロピルメチルピロリジニウム、トリエチルスルホニウム、ジエチルメチルスルホニウム、エチルジメチルアンモニオ−(トリエチルアンモニオ)−ジヒドロボレート、ピリジニウム、ピロリジニウム、四級アンモニウム、四級ホスホニウム、トリスルホニウム及びスルホニウムから選択されるカチオンから成る請求項1に記載の二次電池。
【請求項9】
イオン性負極電解質溶液が、三塩化アルミニウムヘキサフルオロホスフェート、テトラフルオロホウ酸塩、トリフルオロメチルスルホネート、ビス(トリフルオロメタンスルホネート)、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドから選択されるアニオンから成る請求項1に記載の二次電池。
【請求項10】
アニオンがビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドから成る請求項9に記載の二次電池。
【請求項11】
正極電解質溶液が、水、水酸化ナトリウム、ケイ酸ナトリウム、グリセロール、ホウ砂、メタホウ酸ナトリウム四水和物、メタホウ酸ナトリウム十水和物、ホウ酸、水素化ホウ素ナトリウム、ホウ酸ナトリウム、リン酸ナトリウム、リン酸水素ナトリウム、グリセロールナトリウム、炭酸ナトリウム、エチレン及びプロピレンから選択される物質の組合せから成る請求項1に記載の二次電池。
【請求項12】
二次電池が少なくとも部分的に充電されている場合、負極がナトリウム金属から成る請求項1に記載の二次電池。
【請求項13】
二次電池が満充電されている場合、負極および電解質膜が、約100μm未満の距離で分離されている請求項12に記載の二次電池。
【請求項14】
負極室と正極室とNaSICON型電解質膜とから成るナトリウム系二次電池であって、負極室は、非水イオン性負極電解質溶液中に配置される負極から成り、当該負極は、放電中に電気化学的に酸化されてナトリウムイオンを放出し、充電中に電気化学的にナトリウムイオンをナトリウム金属に還元し、少なくとも部分的に充電された状態で負極はナトリウム金属から成り、正極室は正極電解質溶液中に配置される正極から成り、NaSICON型電解質膜は正極電解質溶液から負極電解質溶液を分離し、二次電池が作動状態において負極は固体であり、二次電池の作動温度が約100℃未満であり、二次電池が満充電されている場合、負極および電解質膜が、約100μm未満の距離で分離されていることを特徴とするナトリウム系二次電池。
【請求項15】
約25℃+10℃の温度で作動する請求項14に記載の二次電池。
【請求項16】
負極電解質溶液が、N−メトキシエチル−N−メチルピロリジニウム、ブチルメトキシピロリジニウム、プロピルメチルピロリジニウム、トリエチルスルホニウム、ジエチルメチルスルホニウム、エチルジメチルアンモニオ−(トリエチルアンモニオ)−ジヒドロボレート、ピリジニウム、ピロリジニウム、四級アンモニウム、四級ホスホニウム、トリスルホニウム及びスルホニウムから選択されるカチオンから成る請求項14に記載の二次電池。
【請求項17】
負極電解質溶液が、ハロゲン化化合物及びナトリウム塩から選択される添加剤を更に有する請求項14に記載の二次電池。
【請求項18】
負極電解質溶液が、ナトリウム金属、ナトリウムイオン及び電解質膜の存在下で化学的に安定である有機陽イオン及び無機陰イオンから成る請求項14に記載の二次電池。
【請求項19】
ハロゲン化化合物が、塩酸、スルホニルクロリド、ジクロロメタン、四塩化炭素およびトリフルオロ酢酸イオンの塩から選択される請求項17に記載の二次電池。
【請求項20】
正極電解質溶液が、水、水酸化ナトリウム、ケイ酸ナトリウム、グリセロール、ホウ砂、メタホウ酸ナトリウム四水和物、メタホウ酸ナトリウム十水和物、ホウ酸、水素化ホウ素ナトリウム、ホウ酸ナトリウム、リン酸ナトリウム、リン酸水素ナトリウム、グリセロールナトリウム、炭酸ナトリウム、エチレン及びプロピレンから選択される物質の組合せから成る請求項14に記載の二次電池。
【請求項21】
電解質膜が負極電解質溶液よりも低いイオン伝導性を有する請求項14に記載の二次電池。
【請求項22】
ナトリウム系二次電池から電気を供給する方法であって、当該方法は、負極室、正極室およびナトリウムイオン伝導性電解質膜から成るナトリウム系二次電池を供給する工程と、負極の融点より低く作動温度を維持する工程と、外部回路と接続し、負極は酸化されてナトリウムイオンを放出して電気を放電する工程とから成り、負極室は、非水イオン性負極電解質溶液中に配置される負極から成り、当該負極は、放電中に電気化学的に酸化されてナトリウムイオンを放出し、充電中に電気化学的にナトリウムイオンをナトリウム金属に還元し、正極室は正極電解質溶液中に配置される正極から成り、ナトリウムイオン伝導性電解質膜は正極電解質溶液から負極電解質溶液を分離し、電解質膜が負極電解質溶液よりも低いイオン伝導性を有することを特徴とするナトリウム系二次電池から電気を供給する方法。
【請求項23】
負極電解質溶液がビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドから成る請求項22の方法。
【請求項24】
約25℃+10℃の温度で作動する請求項22に記載の方法。
【請求項25】
更に負極と正極との間に電気を通すことにより二次電池を充電し、少なくとも1部のナトリウムイオンを負極上にメッキする工程を有する請求項22に記載の方法。
【請求項26】
二次電池が充電される際、負極電解質溶液が負極上に樹状突起形成を妨げる請求項25に記載の方法。
【請求項27】
二次電池が少なくとも一部充電されている場合、負極がナトリウム金属から成る請求項22に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2013−510391(P2013−510391A)
【公表日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−537241(P2012−537241)
【出願日】平成22年11月5日(2010.11.5)
【国際出願番号】PCT/US2010/055718
【国際公開番号】WO2011/057135
【国際公開日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【出願人】(508011511)セラマテック・インク (29)
【Fターム(参考)】