説明

ナトリウム二次電池用の炭素材料の製造方法

【課題】ナトリウムイオンをドープかつ脱ドープすることができる負極活物質としての炭素材料を製造するためには、一般的にはフェノール樹脂など高分子を炭化する製造法が用いられるが、用途に応じて種々の炭素材料の製造方法の開発が期待されている。
高分子化合物は一般的にはモノマーと呼ばれる低分子を重合させることにより得られ、この重合工程により得られた高分子化合物を不活性化ガス雰囲気で焼成することにより炭素材料を製造している。中間体として高分子化合物を経由せず、低分子から直接炭素材料を製造する製造方法の開発が期待される。
【解決手段】有機化合物を800〜2500℃の温度で加熱するナトリウム二次電池用の炭素材料の製造方法。
<有機化合物>
分子中に酸素原子を有する芳香族化合物の誘導体1と、分子中にカルボキシル基を有し、芳香族化合物の誘導体1とは異なる芳香族化合物の誘導体2との混合物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ナトリウム二次電池用の炭素材料の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ナトリウム二次電池は水系電解液の電池と比較して高い電圧が発生できるため、エネルギー密度が高く高容量電池として好適である。しかも、ナトリウムは資源量が豊富でしかも安価な材料であることから、ナトリウム二次電池を構成する活物質を実用化することにより、大型電源を大量に供給できることが期待されている。
【0003】
ナトリウム二次電池は、通常、ナトリウムイオンをドープかつ脱ドープすることができる正極活物質を含む正極と、ナトリウムイオンをドープかつ脱ドープすることができる負極活物質を含む負極と、電解質とを備える。
【0004】
ナトリウムイオンをドープかつ脱ドープすることができる負極活物質として、黒鉛とは異なる炭素材料の利用が提案されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−251283号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ナトリウムイオンをドープかつ脱ドープすることができる負極活物質としての炭素材料を製造するためには、一般的にはフェノール樹脂など高分子を炭化する製造法が用いられるが、用途に応じて種々の炭素材料の製造方法の開発が期待されている。
【0007】
高分子化合物は一般的にはモノマーと呼ばれる低分子を重合させることにより得られ、この重合工程により得られた高分子化合物を不活性化ガス雰囲気で焼成することにより炭素材料を製造している。中間体として高分子化合物を経由せず製造工程を簡略化することの可能であることから、低分子から直接炭素材料を製造する製造方法の開発が期待される。
【0008】
また、フェノール樹脂などの熱硬化性の高分子化合物の場合、重合して硬化させてしまうと、その後の炭化処理のときに取扱いに制限が生じ、最終的に100μm以下の粒状形態に成型するための粉砕工程等が必要となる。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記の課題を解決すべく鋭意検討を重ね、本発明に至った。すなわち、本発明は、次の[1]〜[8]を提供するものである。
[1] 有機化合物1および有機化合物2からなる群より選ばれる1つ以上の有機化合物を800〜2500℃の温度で加熱するナトリウム二次電池用の炭素材料の製造方法。
<有機化合物1>
式(1)、式(2)または式(3)で表され、各式中に酸素原子を2個以上有する有機化合物。

(式(1)中、R1〜R16は水素原子、水酸基、アルコキシ基、アシル基、ハロゲノ基、置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよい芳香族炭化水素基、置換されていてもよい芳香族ヘテロ環基を表し、
5とR6は一体となって−O−を表してよく、
15とR16は一体となって−CO−O−または−SO2−O−を表してよい。)


(式(2)中、R17〜R30は、水素原子、水酸基、アルコキシ基、アシル基、ハロゲノ基、置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよい芳香族炭化水素基、置換されていてもよい芳香族ヘテロ環基を表し、
21とR22は一体となって−O−を表してよい。)

(式(3)中、R31〜R41は水素原子、水酸基、アルコキシ基、アシル基、ハロゲノ基、置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよい芳香族炭化水素基、置換されていてもよい芳香族ヘテロ環基を表し、
40とR41は一体となって−CO−O−または−SO2−O−を表してよい。
【0010】
φ1は置換されていてもよいアリル基、置換されていてもよいシクロペンタジエン基、置換されていてもよい芳香族ヘテロ環基を表す。)
<有機化合物2>
分子中に酸素原子を有する芳香族誘導体1と、分子中にカルボキシル基を有し、芳香族誘導体1とは異なる芳香族誘導体2との混合物。
[2] 有機化合物1として式(1)中のR5とR6が一体となって−O−であり、および/または、R15とR16が一体となって−CO−O−もしくは−SO2−O−である[1]に記載の製造方法。
[3] R1〜R5のいずれかの1つは水酸基、アルコキシ基またはアシル基であって、R6〜R10のいずれかの1つは水酸基、アルコキシ基またはアシル基である[1]または[2]に記載の製造方法。
[4] R17〜R21いずれかの1つは水酸基、アルコキシ基またはアシル基であって、R22〜R25のいずれかの1つは水酸基、アルコキシ基またはアシル基である[1]〜[3]のいずれかに記載の製造方法。
[5] 有機化合物2において、酸素原子をもつ芳香族誘導体がフェノール、レゾルシノールまたはクレゾールであり、カルボキシル基を有する芳香族誘導体が無水フタル酸である[1]〜[4]のいずれかに記載の製法。
[6] [1]〜[5]のいずれかに記載の製造方法で製造されたナトリウム二次電池用の炭素材料および結着剤を有する第1電極と、第2電極と、電解質とを有するナトリウム二次電池。
[7] 第2電極が、以下の式(A)で表されるナトリウム含有遷移金属化合物を有する[6]に記載のナトリウム二次電池。
【0011】
NaxMO2 ・・・式(A)
(ここで、MはFe、Ni、Co、Mn、Cr、V、Ti、B、Al、MgおよびSiからなる群より選ばれる1種以上の元素であり、xは0を超え1.2以下である。)
[8] 前記結着剤が非フッ素系の樹脂を有する[6]または[7]に記載のナトリウム二次電池。
【発明の効果】
【0012】
本発明の製造方法を用いれば、高分子化合物を製造する工程を経ることなく、ナトリウム二次電池用の炭素材料を得ることができる。また、特定の低分子有機物を利用することで原料の取扱いが容易となり炭素材料の製造方法の自由度が大きくなり、本発明は工業的に極めて有用である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明を詳細に説明する。まず、ナトリウム二次電池負極材料の製造方法としてのナトリウム二次電池用の炭素材料の製造方法について説明する。
【0014】
本発明のナトリウム二次電池用の炭素材料の製造方法は、有機化合物1および有機化合物2からなる群より選ばれる1つ以上の有機化合物を800〜2500℃の温度で加熱する。
【0015】
有機化合物1は、式(1)、式(2)または式(3)で表され、各式中に酸素原子を2個以上有する。
【0016】
式(1)は、次の通りである。

【0017】
ここで、式(1)中、R1〜R16は水素原子、水酸基、アルコキシ基、アシル基、ハロゲノ基、置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよい芳香族炭化水素基、置換されていてもよい芳香族ヘテロ環基を表し、R5とR6は一体となって−O−を表してよく、 R15とR16は一体となって−CO−O−または−SO2−O−を表してよい。
【0018】
また、有機化合物1として式(1)中のR5とR6が一体となって−O−であり、および/または、R15とR16が一体となって−CO−O−もしくは−SO2−O−であることが好ましい。
【0019】
さらに、R1〜R5のいずれかの1つは水酸基、アルコキシ基またはアシル基であって、R6〜R10のいずれかの1つは水酸基、アルコキシ基またはアシル基であることが好ましい。
【0020】
式(2)は、次の通りである。


【0021】
ここで、式(2)中、R17〜R30は、水素原子、水酸基、アルコキシ基、アシル基、ハロゲノ基、置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよい芳香族炭化水素基、置換されていてもよい芳香族ヘテロ環基を表し、R21とR22は一体となって−O−を表してよい。
【0022】
また、R17〜R21いずれかの1つは水酸基、アルコキシ基またはアシル基であって、R22〜R25のいずれかの1つは水酸基、アルコキシ基またはアシル基であることが好ましい。
【0023】
式(3)は、次の通りである。


【0024】
ここで、式(3)中、R31〜R41は水素原子、水酸基、アルコキシ基、アシル基、ハロゲノ基、置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよい芳香族炭化水素基、置換されていてもよい芳香族ヘテロ環基を表し、R40とR41は一体となって−CO−O−または−SO2−O−を表してよい。φ1は置換されていてもよいアリル基、置換されていてもよいシクロペンタジエン基、置換されていてもよい芳香族ヘテロ環基を表す。
【0025】
有機化合物1の具体例としては、m−クレゾールパープル、フェノールレッド、フェノールフタレイン、o−クレゾールフタレイン、フェノールフタリン、フルオレセイン、フルオレセインエオシンおよびチモールブルーである。
【0026】
有機化合物2は、分子中に酸素原子を有する芳香族誘導体1と、分子中にカルボキシル基を有し、芳香族誘導体1とは異なる芳香族誘導体2との混合物である。
【0027】
ここで、有機化合物2において、酸素原子をもつ芳香族誘導体がフェノール、レゾルシノールまたはクレゾールであり、カルボキシル基を有する芳香族誘導体が無水フタル酸であることが好ましい。
【0028】
加熱温度は、上述の通り、800〜2500℃であるが、好ましくは1000〜2100℃、特に好ましくは1200〜2000℃である。加熱時間は、1分間〜24時間が好ましい。
【0029】
雰囲気は不活性ガス(例えば、窒素、アルゴン等)雰囲気が好ましく、不活性ガス雰囲気下で加熱処理する場合、有機物原料が入った密閉容器を不活性ガス雰囲気にして密閉し加熱処理してもよいし、有機物原料が入った容器に不活性ガスを通気させながら加熱処理してもよい。
【0030】
加熱処理は、環状炉、ロータリーキルン、ローラーハースキルン、プッシャーキルン、多段炉、流動炉、高温焼成炉等の焼成炉を用いて行うことが好ましい。
【0031】
また、加熱処理を行う前に有機物原料を酸化性ガス雰囲気下で加熱する不融化工程や不活性ガス雰囲気で加熱する予備加熱工程を含んでいてもよい。
【0032】
不融化工程を具体的に説明すると、空気、H2O、CO2またはO2等の酸化性ガス雰囲気下にて、通常400℃以下で処理する工程である。
【0033】
前記不融化工程は、有機化合物1、2の一部または全部を架橋して分子量が増大させる、及び/又は、有機化合物1、2の一部または全部を炭化させる工程である。
【0034】
不融化工程における処理は、環状炉、ロータリーキルン、ローラーハースキルン、プッシャーキルン、多段炉、流動炉、高温焼成炉等の焼成炉を用いて行うことが好ましい。
【0035】
次に、予備加熱工程を具体的に説明すると、N2またはAr等の不活性ガス雰囲気で、有機物原料を、通常400℃以下で加熱処理する工程である。
【0036】
予備加熱工程も、有機化合物1、2の一部または全部を架橋して分子量が増大させる、及び/又は、有機化合物1、2の一部または全部を炭化させる工程である。
【0037】
不融化工程における処理も、ロータリーキルン、ローラーハースキルン、プッシャーキルン、多段炉、流動炉、高温焼成炉等の焼成炉を用いて行うことが好ましい。
【0038】
また、本発明の製造方法では、有機化合物1、2を粒状に成型する工程を有しても良い。かかる粒状に成型する工程には、塊状の有機化合物1、2を粉砕する工程や、溶媒に溶解した有機化合物1、2もしくは有機化合物1、2そのものをスプレードライなどで噴霧乾燥して微粒を得る工程など、多種多様な工程を利用することができる。
【0039】
有機化合物1、2を粉砕する工程には、ジェットミル等の衝撃摩擦粉砕機;遠心力粉砕機;チューブミル、コンパウンドミル、円錐形ボールミル、ロッドミル等のボールミル;振動ミル;コロイドミル;摩擦円盤ミル;等の微粉砕用の粉砕機が好適に用いられる。ジェットミルおよびボールミルがより好ましく、ボールミルを用いる場合、金属粉の混入を避けるために、粉砕メディアや粉砕容器は、アルミナ、メノウ等の非金属製であることがさらに好ましい。
【0040】
有機化合物1、2を噴霧乾燥して微粒を得る工程には、スプレードライヤーが好適に用いられる。
【0041】
また、800〜2500℃での加熱処理により得られた炭素材料をさらに粉砕する工程を有してもよい。かかる粉砕には、ジェットミル等の衝撃摩擦粉砕機;遠心力粉砕機;チューブミル、コンパウンドミル、円錐形ボールミル、ロッドミル等のボールミル;振動ミル;コロイドミル;摩擦円盤ミル;等の微粉砕用の粉砕機が好適に用いられる。ジェットミルおよびボールミルがより好ましく、ボールミルを用いる場合、金属粉の混入を避けるために、粉砕メディアや粉砕容器は、アルミナ、メノウ等の非金属製であることがさらに好ましい。
【0042】
上記粉砕工程で得られる炭素材料のメジアン径(体積基準)は、通常4〜10μmである。
【0043】
本発明の炭素材料の製造方法により製造された炭素材料は、ナトリウムイオンでドープかつ脱ドープされることができる。従って、ナトリウム二次電池の電極としての使用が可能である。
【0044】
本発明のナトリウム二次電池は、本発明の炭素材料の製造方法により製造された炭素材料をおよび結着剤を有する第1電極と、第2電極と、電解質を有し、通常、第1電極が負極、第2電極が正極である。また、通常、正極、負極を隔てるセパレータを有する。
【0045】
以下、本発明のナトリウム二次電池における構成要素について説明する。
【0046】
(1)負極
負極は、本発明の炭素材料の製造方法により製造された炭素材料を有していればよく、前記炭素材料を含む負極合剤が負極集電体に担持されてなる電極、または負極材料単独からなる電極を挙げることができる。
【0047】
前記の負極合剤は、必要に応じて、結着剤を含有してもよいし、導電材を含有してもよい。ここで、導電材は、本発明における炭素材料とは異なる。
【0048】
〈結着剤〉
前記の負極合剤に用いられる結着剤としては、フッ素系の樹脂と非フッ素系の樹脂が用いられるが、非フッ素系の樹脂がより好ましい。
【0049】
フッ素系の樹脂としては、例えば、フッ素化アルキル(炭素数1〜18)(メタ)アクリレート、パーフルオロアルキル(メタ)アクリレート[例えば、パーフルオロドデシル(メタ)アクリレート、パーフルオロn−オクチル(メタ)アクリレート、パーフルオロn−ブチル(メタ)アクリレート];
パーフルオロアルキル置換アルキル(メタ)アクリレート[例えばパーフルオロヘキシルエチル(メタ)アクリレート、および、パーフルオロオクチルエチル(メタ)アクリレート];
パーフルオロオキシアルキル(メタ)アクリレート[例えば、パーフルオロドデシルオキシエチル(メタ)アクリレート、および、パーフルオロデシルオキシエチル(メタ)アクリレート];
フッ素化アルキル(炭素数1〜18)クロトネート;
フッ素化アルキル(炭素数1〜18)マレート、および、フマレート;
フッ素化アルキル(炭素数1〜18)イタコネート、および、フッ素化アルキル置換オレフィン(炭素数2〜10程度、フッ素原子数1〜17程度)[例えばパーフロオロヘキシルエチレン、テトラフルオロエチレン、トリフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン(以下、PVdFということがある。)およびヘキサフルオロプロピレン]が挙げられる。
【0050】
次に、非フッ素系の樹脂としては、フッ素原子を含まないエチレン性二重結合を含む単量体の付加重合体が挙げられる。かかる単量体としては、例えば、(シクロ)アルキル(炭素数1〜22)(メタ)アクリレート[例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、iso−ブチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、および、オクタデシル(メタ)アクリレート];
芳香環含有(メタ)アクリレート[例えば、ベンジル(メタ)アクリレート、および、フェニルエチル(メタ)アクリレート];
アルキレングリコールまたはジアルキレングリコール(アルキレン基の炭素数2〜4)のモノ(メタ)アクリレート[例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、および、ジエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート];
(ポリ)グリセリン(重合度1〜4)モノ(メタ)アクリレート;
多官能(メタ)アクリレート[例えば、(ポリ)エチレングリコール(重合度1〜100)ジ(メタ)アクリレート、(ポリ)プロピレングリコール(重合度1〜100)ジ(メタ)アクリレート、2,2−ビス(4−ヒドロキシエチルフェニル)プロパンジ(メタ)アクリレート、および、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート]などの(メタ)アクリル酸エステル系単量体;
(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリルアミド系誘導体[例えば、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、および、ダイアセトンアクリルアミド]などの(メタ)アクリルアミド系単量体;
(メタ)アクリロニトリル、2−シアノエチル(メタ)アクリレート、および、2−シアノエチルアクリルアミド等のシアノ基含有単量体;
スチレンおよび炭素数7〜18のスチレン誘導体[例えば、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、p−ヒドロキシスチレン、および、ジビニルベンゼン]などのスチレン系単量体;
炭素数4〜12のアルカジエン[例えば、ブタジエン、イソプレン、および、クロロプレン]などのジエン系単量体;
カルボン酸(炭素数2〜12)ビニルエステル[例えば、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、および、オクタン酸ビニル];
カルボン酸(炭素数2〜12)(メタ)アリルエステル[例えば、酢酸(メタ)アリル、プロピオン酸(メタ)アリル、および、オクタン酸(メタ)アリル]などのアルケニルエステル系単量体;
グリシジル(メタ)アクリレート、(メタ)アリルグリシジルエーテル等のエポキシ基含有単量体;
モノオレフィン(炭素数2〜12)[例えば、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−オクテン、および、1−ドデセン]のモノオレフィン類;
塩素、臭素またはヨウ素原子含有単量体;
塩化ビニル、塩化ビニリデンなどのフッ素以外のハロゲン原子含有単量体;
アクリル酸、メタクリル酸などの(メタ)アクリル酸;
ブタジエン、イソプレンなどの共役二重結合含有単量体が挙げられる。
【0051】
また、付加重合体として、例えば、エチレン・酢酸ビニル共重合体、スチレン・ブタジエン共重合体またはエチレン・プロピレン共重合体などの共重合体でもよい。また、カルボン酸ビニルエステル重合体は、部分的または完全にケン化されていてもよい。結着剤はフッ素化合物とフッ素原子を含まないエチレン性二重結合を含む単量体との共重合体であってもよい。
【0052】
結着剤のその他の例示としては、デンプン、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルヒドロキシエチルセルロース、ニトロセルロースなどの多糖類およびその誘導体;フェノール樹脂;メラミン樹脂;ポリウレタン樹脂;尿素樹脂;ポリアミド樹脂;ポリイミド樹脂;ポリアミドイミド樹脂;石油ピッチ;石炭ピッチが挙げられる。
【0053】
結着剤としては、特に、非フッ素系の樹脂が好ましい。また、集電体への塗布の工程において、集電体への塗布を容易にするために、増粘剤または減粘剤を使用してもよい。
【0054】
負極集電体としては、Cu、Ni、ステンレス、Alなどを挙げることができ、ナトリウムと合金を作り難い点、薄膜に加工しやすいという点で、Cuが好ましい。
【0055】
負極集電体の形状としては、例えば、箔状、平板状、メッシュ状、ネット状、ラス状、パンチングメタル状若しくはエンボス状であるものまたはこれらを組み合わせたもの(例えば、メッシュ状平板など)等が挙げられる。負極集電体表面にエッチング処理による凹凸を形成させてもよい。
【0056】
負極集電体に負極合剤を担持させる方法としては、加圧成型する方法、または有機溶媒などを用いてペースト化し、負極集電体上に塗布、乾燥後プレスするなどして固着する方法が挙げられる。負極合剤を負極集電体へ塗布する方法としては、例えば、スリットダイ塗工法、スクリーン塗工法、バー塗工法等が挙げられる。
【0057】
前記導電材としては、例えばケッチェンブラックなどの本発明の炭素材料とは異なる炭素材料が挙げられる。
【0058】
(2)正極
正極は、正極集電体と、正極集電体の上に担持された正極合剤とから構成される。正極合剤は正極活物質及び必要に応じて導電材や結着剤を含む。
【0059】
正極活物質としては、TiS2等の硫化物、Fe34等の酸化物、Fe2(SO43等の硫酸塩、FePO4等のリン酸塩、FeF3等のフッ化物、等のようなナトリウムイオンをドープ・脱ドープすることができる材料であればよいが、特にナトリウムと遷移金属元素の化合物であるナトリウム遷移金属化合物であることが好ましい。なお、ナトリウム遷移金属化合物における遷移金属元素は、任意に1種以上選ぶことができ、具体的にはTi、V、Cr、Mn、Fe、Co、NiおよびCuなどが挙げられる。
【0060】
ナトリウム遷移金属化合物としては、例えば、以下の式(A)で表されるナトリウム含有遷移金属化合物を有することが好ましい。
【0061】
NaxMO2 ・・・式(A)
ここで、MはFe、Ni、Co、Mn、Cr、V、Ti、B、Al、MgおよびSiからなる群より選ばれる1種以上の元素であり、xは0を超え1.2以下である。その好適な具体例としては、α-NaFeO2型の構造を有するNaMnO2、NaNiO2およびNaCoO2並びにNaFe1-p-qMnpNiq2(p、qは次の関係を満たす値である。0≦p+q≦1,0≦p≦1,0≦q≦1)等の酸化物が挙げられる。
【0062】
また、その他のナトリウム遷移金属化合物としては、Nax1yで表される酸化物(M1は1種以上の遷移金属元素を示し、x、yは0.4<x<2、1.9<y<2.1を満たす値である。);
Na6Fe2Si1230およびNa2Fe5Si1230等のNab2cSi1230で表されるケイ酸塩(M2は1種以上の遷移金属元素を示し、b、cは、2≦b≦6、2≦c≦5を満たす値である。);
Na2Fe2Si618およびNa2MnFeSi618等のNad3eSi618で表されるケイ酸塩(M3は1種以上の遷移金属元素を示し、d、eは3≦d≦6、1≦e≦2を満たす値である。);
Na2FeSiO6等のNaf4gSi26で表されるケイ酸塩(M4は遷移金属元素、MgおよびAlからなる群より選ばれる1種以上の元素を示し、f、gは1≦f≦2、1≦g≦2を満たす値である。);
NaFePO4、NaMnPO4、Na3Fe2(PO43、Na3Ti2(PO43、Na2FePO4F、Na2VPO4F、Na2MnPO4F、Na2CoPO4F、Na2NiPO4F、Na32(PO423等のNahM5i(PO4jkで表されるリン酸塩及びフッ化リン酸塩(M5は1種以上の遷移金属元素、1≦h≦3、1≦i≦3、1≦j≦3、0≦k≦3);
NaFeSO4F、NaMnSO4F、NaCoSO4F等のフッ化硫酸塩;
NaFeBO4、Na3Fe2(BO43等のホウ酸塩;Na3FeF6およびNa2MnF6等のNah56で表されるフッ化物(M5は1種以上の遷移金属元素を示し、hは2≦h≦3を満たす値である。);
等が挙げられ、これらは1種あるいは2種以上を混合して使用することができる。
【0063】
この中でも、好ましくは、NaM12(M1は1種以上の遷移金属元素を示す。)で表される酸化物である。その好適な具体例としては、α-NaFeO2型の構造を有するNaMnO2、NaNiO2、NaCoO2およびNaFe1-p-qMnpNiq2(p、qは次の関係を満たす値である。0≦p+q≦1,0≦p≦1,0≦q≦1)等の酸化物が挙げられる。
【0064】
上記ナトリウム遷移金属化合物では、発明の効果を損なわない範囲で、上記遷移金属元素の一部を、上記遷移金属元素以外の金属元素で置換してもよい。置換することにより、本発明の組電池の特性が向上する場合がある。上記遷移金属元素以外の金属としてはLi、K、Ag、Mg、Ca、Sr、Ba、Al、Ga、In、Zn、Sc、Y、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Ho、Er、Tm、YbおよびLu等の金属元素が挙げられる。
【0065】
正極集電体としては、導電性が高く薄膜に加工しやすいものであればよく、Al、Ni、ステンレス、Cuなどの金属などを用いることができる。正極集電体の形状としては、例えば、箔状、平板状、メッシュ状、ネット状、ラス状、パンチングメタル状若しくはエンボス状であるものまたはこれらを組み合わせたもの(例えば、メッシュ状平板など)等が挙げられる。
【0066】
前記導電材としては炭素材料を用いることができ、炭素材料として黒鉛粉末、カーボンブラック、カーボンナノチューブなどの繊維状炭素材料などを挙げることができる。また、本発明のナトリウム二次電池用の炭素材料の製造方法で製造された炭素材料を用いることが好ましい。
【0067】
正極合剤に用いられる結着剤は負極合剤に用いられる結着剤と同じ結着剤が挙げられ、負極合剤に用いられる結着剤と同様に非フッ素系の樹脂であることが好ましい。
【0068】
正極集電体に正極極合剤を担持させる方法としては、負極集電体に正極合剤を担持させる方法と同様であって、加圧成型する方法、または有機溶媒などを用いてペースト化し、負極集電体上に塗布、乾燥後プレスするなどして固着する方法が挙げられる。負極合剤を負極集電体へ塗布する方法としては、例えば、スリットダイ塗工法、スクリーン塗工法、バー塗工法等が挙げられる。
【0069】
(3)電解質
次に、電解質について、説明する。電解質としては、NaClO4、NaPF6、NaAsF6、NaSbF6、NaBF4、NaCF3SO3、NaN(SO2CF32、低級脂肪族カルボン酸ナトリウム塩、NaAlCl4などが挙げられ、これらの2種以上の混合物を使用されてもいてもよい。これらの中でもフッ素を含むNaPF6、NaAsF6、NaSbF6、NaBF4、NaCF3SO3およびNaN(SO2CF32からなる群から選ばれた少なくとも1種を含むものを用いることが好ましい。また、本発明において、電解質は、有機溶媒に溶解された状態(液状)、すなわち、非水電解液として用いることが好ましい。
【0070】
非水電解液における有機溶媒としては、例えばプロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、イソプロピルメチルカーボネート、ビニレンカーボネート、4−トリフルオロメチル−1,3−ジオキソラン−2−オン、1,2−ジ(メトキシカルボニルオキシ)エタンなどのカーボネート類;1,2−ジメトキシエタン、1,3−ジメトキシプロパン、ペンタフルオロプロピルメチルエーテル、2,2,3,3−テトラフルオロプロピルジフルオロメチルエーテル、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフランなどのエーテル類;ギ酸メチル、酢酸メチル、γ−ブチロラクトンなどのエステル類;アセトニトリル、ブチロニトリルなどのニトリル類;N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミドなどのアミド類;3−メチル−2−オキサゾリドンなどのカーバメート類;スルホラン、ジメチルスルホキシド、1,3−プロパンサルトンなどの含硫黄化合物;または上記の有機溶媒にさらにフッ素置換基を導入したものを用いることができる。フッ素置換基を導入したものとしては、4−フルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オン(以下、FECまたはフルオロエチレンカーボネートということがある。)、ジフルオロエチレンカーボネート(DFEC:トランスまたはシス−4,5−ジフルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オン)等が挙げられる。これらのうちの2種以上を混合して用いてもよい。
【0071】
非水電解液における電解質の濃度は、通常、0.1〜2モル/L程度であり、好ましくは、0.3〜1.5モル/L程度である。
【0072】
前記電解液には、セパレータとの濡れ性を良くするために、トリオクチルフォスフェート、パーフルオロアルキル基を有するポリオキシエチレンエーテル類、パーフルオロオクタンスルホン酸エステル類等の界面活性剤の1種または2種以上を添加しても良い。界面活性剤の添加量は、好ましくは電解液総重量に対して3重量%以下であり、より好ましくは0.01〜1重量%である。
【0073】
また、本発明において、電解質は、高分子化合物に前記非水電解液を保持させた状態、すなわち、ゲル状電解質として用いることもできるし、固体状、すなわち、固体電解質として用いることもできる。固体電解質としては、例えばポリエチレンオキサイド系の高分子化合物、ポリオルガノシロキサン鎖もしくはポリオキシアルキレン鎖の少なくとも一種以上を含む高分子化合物などに、前記電解質を保持させた有機系固体電解質を用いることができる。また、Na2S−SiS2、Na2S−GeS2、NaTi2(PO43、NaFe2(PO43、Na2(SO43、Fe2(SO42(PO4)、Fe2(MoO43、β−アルミナ、β”−アルミナ、NASICON等の無機系固体電解質を用いてもよい。
【0074】
(4)セパレータ
セパレータとしては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン樹脂、フッ素樹脂、含窒素芳香族重合体などの材質からなる、多孔質フィルム、不織布、織布などの形態を有する材料を用いることができ、また、前記の材質を2種以上用いてセパレータとしてもよいし、前記の材料が積層されていてもよい。セパレータとしては、例えば特開2000−30686号公報、特開平10−324758号公報等に記載のセパレータを挙げることができる。セパレータの厚みは電池の体積エネルギー密度が上がり、内部抵抗が小さくなるという点で、機械的強度が保たれる限り薄いほど好ましい。セパレータの厚みは、通常5〜200μm程度、好ましくは5〜40μm程度である。
【0075】
セパレータは、好ましくは、熱可塑性樹脂を含有する多孔質フィルムを有する。ナトリウム二次電池においては、通常、正極−負極間の短絡等が原因で電池内に異常電流が流れた際に、電流を遮断して、過大電流が流れることを阻止する(シャットダウンする。)ことが重要である。したがって、セパレータには、通常の使用温度を越えた場合に、できるだけ低温でシャットダウンする(セパレータが、熱可塑性樹脂を含有する多孔質フィルムを有する場合には、多孔質フィルムの微細孔が閉塞する。)こと、およびシャットダウンした後、ある程度の高温まで電池内の温度が上昇しても、その温度により破膜することなく、シャットダウンした状態を維持すること、換言すれば、耐熱性が高いことが求められる。
【0076】
セパレータとして、耐熱樹脂を含有する耐熱多孔層と熱可塑性樹脂を含有する多孔質フィルムとが積層された積層多孔質フィルムからなるセパレータを用いることにより、熱破膜をより防ぐことが可能となる。ここで、耐熱多孔層は、多孔質フィルムの両面に積層されていてもよい。
【0077】
ナトリウム二次電池は、上述の正極、セパレータ、および負極を、積層、巻回することにより得られる電極群を、電池缶などの容器内に収納した後、上述の非水電解液を含浸させて製造することができる。
【0078】
前記の電極群の形状としては、例えば、該電極群を巻回の軸と垂直方向に切断したときの断面が、円、楕円、長方形、角がとれたような長方形等となるような形状を挙げることができる。また、電池の形状としては、例えば、ペーパー型、コイン型、円筒型、角型などの形状を挙げることができる。
【0079】
以上、第1電極が負極であり、第2電極が正極である場合のナトリウム二次電池について述べたが、第1電極が正極であり、第2電極が負極であってもよい。第1電極が正極であり、第2電極が負極であるナトリウム二次電池の場合、第2電極は、ナトリウム金属またはナトリウム合金からなる電極であればよい。
【0080】
<ナトリウム二次電池の用途>
本発明のナトリウム二次電池は、エネルギー密度が高いことから、携帯電話、携帯オーディオ、ノートパソコン等の小型機器用電源である小型電池、自動車、自動二輪車、電動椅子、フォークリフト、電車、飛行機、船舶、宇宙船、潜水艦等の輸送機器用電源;耕運機等の機械用電源;キャンプ用途等の屋外電源;自動販売機用途等の屋外/屋内電源などの移動用電池である中・大型電池として好適である。
【0081】
また、本発明のナトリウム二次電池は、供給量が豊富で安価な原料を用いているため、工場、家屋用等の屋外/屋内設置電源;太陽電池用充電装置、風力発電用充電装置等の各種発電用の負荷平準化電源;冷蔵・冷凍倉庫内、極冷地等の低温環境用設置電源;砂漠等の高温環境用設置電源;宇宙ステーション用等の宇宙環境用設置電源などの定置型電池である中・大型電池として好適である。
【実施例】
【0082】
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明は、その要旨を変更しない限り以下の実施例に限定されるものではない。
【0083】
実施例1
(炭素材料の製造)
環状炉中を窒素雰囲気下とした後、窒素ガスを毎分0.1L/g(フェノールフタレインの重量)の割合で流通させながら、室温から毎分5℃の割合で昇温して1000℃に到達するまでフェノールフタレイン(和光純薬工業(株)より購入した試薬特級)を加熱し、引き続き、窒素ガスを毎分0.1L/g(フェノールフタレインの重量)の割合で流通させながら、1000℃で1時間保持した後、冷却して炭素材料を得た。次いで、ボールミル(メノウ製ボール、28rpm、5分間)で粉砕し、粉末状の炭素材料CM1を得た。
【0084】
(ナトリウム二次電池の製造およびその電池評価)
得られた炭素材料CM1を97部、ポリアクリル酸ナトリウムを3部に水を適量加えた混合物を混錬した後、オートアプリケーターにより厚さ10μmの箔状のCuを集電体として使用し、該集電体上に1cm2あたりのCM1の重量が4mgとなるように塗布し、60℃で1時間予備乾燥した。次いで、乾燥された塗布物を、ロールプレス機にて圧延したのち、直径1.5cmの円形に切断して、150℃、8時間真空乾燥して電極EA1を得た。真空乾燥後、得られた電極EA1を正極とし、負極として箔状のNa、セパレータとしてポリエチレン製の微多孔膜、電解液として濃度1モル/リットルのNaPF6/プロピレンカーボネートをそれぞれ用い、CR2032型(JIS規格)のコインセルを用いて、ナトリウム二次電池NB1を組み立てた。
【0085】
充放電評価装置を用い、前記ナトリウム二次電池を、0.005Vに達するまで電流密度18mA/gで定電流充電し、0.005Vに到達後、定電流充電との充電時間の合計が30時間となるように0.005Vにて定電位充電を行った後、電流密度18mA/gの定電流にて、1.5Vに達するまで放電された放電時の積算電気量を測定したところ、初期放電容量は255mAh/gであった。
【0086】
(ナトリウム二次電池の製造およびその電池評価)
(正極活物質AMCの製造)
ポリプロピレン製ビーカー内で、蒸留水300mlに、水酸化カリウム44.88gを添加、攪拌により溶解し、水酸化カリウムを完全に溶解させ、水酸化カリウム水溶液(沈殿剤)を調製した。また、別のポリプロピレン製ビーカー内で、蒸留水300mlに、塩化鉄(II)四水和物21.21g、塩化ニッケル(II)六水和物19.02g、塩化マンガン(II)四水和物15.83gを添加、攪拌により溶解し、鉄−ニッケル−マンガン含有水溶液を得た。前記沈殿剤を攪拌しながら、これに前記鉄−ニッケル−マンガン含有水溶液を滴下したところ、沈殿物が生成したスラリーが得られた。次いで、該スラリーについて、ろ過・蒸留水洗浄を行い、100℃で乾燥させて沈殿物を得た。沈殿物と炭酸ナトリウムとをモル比でFe:Na=0.4:1となるようにして秤量した後、メノウ乳鉢を用いて乾式混合して混合物を得た。次いで、該混合物をアルミナ製焼成容器に入れ、電気炉を用いて大気雰囲気中900℃で6時間保持して焼成を行い、室温まで冷却し、正極活物質AMCを得た。正極活物質AMCの粉末X線回折分析を行った結果、α−NaFeO2型の結晶構造に帰属されることがわかった。また、ICP−AESにより、正極活物質AMCの組成を分析したところ、Na:Fe:Ni:Mnのモル比は1:0.4:0.3:0.3であった。
【0087】
(電極EC1の製造)
電極合剤ペーストの製造には、正極活物質として前記AMC、導電材としてアセチレンブラック(HS100、電気化学工業株式会社製)、結着剤としてPVdF#7305溶液(株式会社クレハ製)、有機溶媒としてNMP(リチウムバッテリーグレード、キシダ化学株式会社製)を用いた。正極活物質AMC:導電剤:結着剤:NMP=90:6:4:100(重量比)の組成となるように秤量し、T.K.フィルミックス30−25型(プライミクス株式会社製)を用い攪拌、混合することで、電極合剤ペーストP1を得た。回転ホイールの回転条件は、5,000rpm、3分間とした。
【0088】
ドクターブレード法により厚さ20μmの箔状のAlを正極集電体として使用し、該集電体上に塗布し、60℃、1時間予備乾燥した。次いで、乾燥された塗布物を、ロールプレス機にて圧延したのち、直径1.45cmの円形に切断して、150℃、8時間真空乾燥して電極EC1を得た。
【0089】
(ナトリウム二次電池の製造)
電極EA1を負極とし、電極EC1を正極として、セパレータとしてポリエチレン製の微多孔膜、電解液として濃度1モル/リットルのNaPF6/プロピレンカーボネートをそれぞれ用い、CR2032型(IEC/JIS規格)のコインセルを用いて、ナトリウム二次電池NIB1を組み立てる。
【0090】
充放電評価装置を用い、前記ナトリウム二次電池を、電極EA1を負極、電極EC1を正極として4.0Vに達するまで電流密度36mA/g(負極活物質基準)で定電流充電し、4.0Vに到達後、定電流充電との充電時間の合計が12時間となるように4.0Vにて定電位充電を行う。その後、電流密度36mA/g(負極活物質基準)の定電流にて、1.5Vに達するまで放電する。
【0091】
実施例2
(炭素材料の製造)
焼成炉中をアルゴンガス雰囲気下とした後、アルゴンガスを毎分0.1L/gの割合で流通させながら、室温から毎分5℃の割合で昇温して1600℃に到達するまで実施例1で得られた炭素材料CM1を加熱し、引き続き、窒素ガスを毎分0.1L/gの割合で流通させながら、1600℃で1時間保持した後、冷却して炭素材料CM2を得た。
【0092】
(ナトリウム二次電池の製造およびその電池評価)
炭素材料CM2を用い、実施例1と同様にして、1cm2あたりの炭素材料CM2の重量が5mgとなるように直径1.5cmの円形の電極EA2を作製した。得られた電極EA2を正極とし、負極として箔状のNa、セパレータとしてポリエチレン製の微多孔膜、電解液として濃度1モル/リットルのNaPF6/プロピレンカーボネートをそれぞれ用い、CR2032型(JIS規格)のコインセルを用いて、ナトリウム二次電池NB2を組み立てた。
【0093】
充放電評価装置を用い、前記コインセルを、0.005Vに達するまで電流密度18mA/gで定電流充電し、0.005Vに到達後、定電流充電との充電時間の合計が30時間となるように0.005Vにて定電位充電を行った後、電流密度18mA/gの定電流にて、1.5Vに達するまで放電された放電時の積算電気量を測定したところ、初期放電容量は315mAh/gであった。
【0094】
(ナトリウム二次電池の製造およびその電池評価)
実施例1における電極EC1と同様にして、電極EC2を得る。
【0095】
電極EA2を負極とし、電極EC2を正極として、セパレータとしてポリエチレン製の微多孔膜、電解液として濃度1モル/リットルのNaPF6/プロピレンカーボネートをそれぞれ用い、CR2032型(IEC/JIS規格)のコインセルを用いて、ナトリウム二次電池NIB2を組み立てる。
【0096】
充放電評価装置を用い、前記NIB2を、電極EA2を負極、電極EC2を正極として4.0Vに達するまで電流密度36mA/g(負極活物質基準)で定電流充電し、4.0Vに到達後、定電流充電との充電時間の合計が15時間となるように4.0Vにて定電位充電を行う。その後、電流密度36mA/g(負極活物質基準)の定電流にて、1.5Vに達するまで放電する。
【0097】
実施例3
(炭素材料の製造)
焼成炉中をアルゴンガス雰囲気下とした後、アルゴンガスを毎分0.1L/gの割合で流通させながら、室温から毎分5℃の割合で昇温して2000℃に到達するまで実施例1で得られた炭素材料CM1を加熱し、引き続き、窒素ガスを毎分0.1L/gの割合で流通させながら、2000℃で1時間保持した後、冷却して炭素材料CM3を得た。
【0098】
(ナトリウム二次電池の製造およびその電池評価)
炭素材料CM3を用い、実施例1と同様にして、1cm2あたりの炭素材料CM3の重量が5mgとなるように直径1.5cmの円形の電極EA3を作製した。得られた電極EA3を正極とし、負極として箔状のNa、セパレータとしてポリエチレン製の微多孔膜、電解液として濃度1モル/リットルのNaPF6/プロピレンカーボネートをそれぞれ用い、CR2032型(JIS規格)のコインセルを用いて、ナトリウム二次電池NB3を組み立てた。
【0099】
充放電評価装置を用い、前記コインセルを、0.005Vに達するまで電流密度18mA/gで定電流充電し、0.005Vに到達後、定電流充電との充電時間の合計が30時間となるように0.005Vにて定電位充電を行った後、電流密度18mA/gの定電流にて、1.5Vに達するまで放電された放電時の積算電気量を測定したところ、初期放電容量は291mAh/gであった。
【0100】
実施例4
(炭素材料の製造)
環状炉中を窒素雰囲気下とした後、アルゴンガスを毎分0.1L/g(フェノールフタレインの重量)の割合で流通させながら、室温から毎分5℃の割合で昇温して1600℃に到達するまでフェノールフタレイン(和光純薬工業(株)より購入した試薬特級)を加熱し、引き続き、アルゴンガスを毎分0.1L/g(フェノールフタレインの重量)の割合で流通させながら、1600℃で1時間保持した後、冷却して炭素材料を得た。次いで、ボールミル(メノウ製ボール、28rpm、5分間)で粉砕し、粉末状の炭素材料CM4を得た。
【0101】
(ナトリウム二次電池の製造およびその電池評価)
得られた炭素材料CM4を97部、ポリアクリル酸ナトリウムを3部に水を適量加えた混合物を混錬した後、オートアプリケーターにより厚さ10μmの箔状のCuを集電体として使用し、該集電体上に1cm2あたりのCM4の重量が4mgとなるように塗布し、60℃で1時間予備乾燥した。次いで、乾燥された塗布物を、ロールプレス機にて圧延したのち、直径1.5cmの円形に切断して、150℃、8時間真空乾燥して電極EA4を得た。真空乾燥後、得られた電極EA4を正極とし、負極として箔状のNa、セパレータとしてポリエチレン製の微多孔膜、電解液として濃度1モル/リットルのNaPF6/プロピレンカーボネートをそれぞれ用い、CR2032型(JIS規格)のコインセルを用いて、ナトリウム二次電池NB4を組み立てた。
【0102】
充放電評価装置を用い、前記ナトリウム二次電池を、0.005Vに達するまで電流密度18mA/gで定電流充電し、0.005Vに到達後、定電流充電との充電時間の合計が30時間となるように0.005Vにて定電位充電を行った後、電流密度18mA/gの定電流にて、1.5Vに達するまで放電された放電時の積算電気量を測定したところ、初期放電容量は231mAh/gであった。
【0103】
実施例5
(ナトリウム二次電池の製造およびその電池評価)
実施例2で得られた電極EA2を正極とし、負極として箔状のNa、セパレータとしてポリエチレン製の微多孔膜、電解液として濃度1モル/リットルのNaPF6/混合溶媒(エチレンカーボネート:ジメチルカーボネート=50:50Vol%)をそれぞれ用い、CR2032型(JIS規格)のコインセルを用いて、ナトリウム二次電池NB5を組み立てた。
【0104】
充放電評価装置を用い、前記ナトリウム二次電池を、0.005Vに達するまで電流密度18mA/gで定電流充電し、0.005Vに到達後、定電流充電との充電時間の合計が30時間となるように0.005Vにて定電位充電を行った後、電流密度18mA/gの定電流にて、1.5Vに達するまで放電された放電時の積算電気量を測定したところ、初期放電容量は311mAh/gであった。
【0105】
実施例6
(ナトリウム二次電池の製造およびその電池評価)
実施例2で得られた電極EA2を正極とし、負極として箔状のNa、セパレータとしてポリエチレン製の微多孔膜、電解液として濃度1モル/リットルのNaClO4/混合溶媒(エチレンカーボネート:ジメチルカーボネート=50:50Vol%)をそれぞれ用い、CR2032型(JIS規格)のコインセルを用いて、ナトリウム二次電池NB6を組み立てた。
【0106】
充放電評価装置を用い、前記ナトリウム二次電池を、0.005Vに達するまで電流密度18mA/gで定電流充電し、0.005Vに到達後、定電流充電との充電時間の合計が30時間となるように0.005Vにて定電位充電を行った後、電流密度18mA/gの定電流にて、1.5Vに達するまで放電された放電時の積算電気量を測定したところ、初期放電容量は317mAh/gであった。
【0107】
比較例
フェノール樹脂(スミライトレジン、PR−217)粉末をアルミナボートにのせ、環状炉内に設置し、アルゴンガス雰囲気中、1000℃で保持して、フェノール樹脂粉末を炭化した。炉内において、アルゴンガス流量はフェノール樹脂粉末1gあたり0.1L/分とし、室温から1000℃までの昇温速度を約5℃/分、1000℃での保持時間を1時間とした。炭化後、ボールミル(メノウ製ボール、28rpm、5分間)で粉砕して、粉末状の炭素材料RCM1を得た。平均粒径は50μm以下であった。
【0108】
(ナトリウム二次電池の製造およびその電池評価)
炭素材料RCM1を用い、実施例1と同様にして、直径1.5cmの円形の電極REA1を作製した。得られた電極REA1を第2電極とし、第1電極として箔状のNa、セパレータとしてポリエチレン製の微多孔膜、電解液として濃度1モル/リットルのNaClO4/プロピレンカーボネートをそれぞれ用い、CR2032型(JIS規格)のコインセルを用いて、ナトリウム二次電池RNB1を組み立てた。
【0109】
充放電評価装置を用い、前記コインセルを、0.005Vに達するまで電流密度18mA/gで定電流充電し、0.005Vに到達後、定電流充電との充電時間の合計が12時間となるように0Vにて定電位充電を行った後、電流密度18mA/gの定電流にて、1.5Vに達するまで放電された放電時の積算電気量を測定したところ、初期放電容量は245mAh/gであった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機化合物1および有機化合物2からなる群より選ばれる1つ以上の有機化合物を800〜2500℃の温度で加熱するナトリウム二次電池用の炭素材料の製造方法。
<有機化合物1>
式(1)、式(2)または式(3)で表され、各式中に酸素原子を2個以上有する有機化合物。

(式(1)中、R1〜R16は、それぞれ同一または相異なり、水素原子、水酸基、アルコキシ基、アシル基、ハロゲノ基、置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよい芳香族炭化水素基または置換されていてもよい芳香族ヘテロ環基を表し、
5とR6とは一体となって−O−を表すことができ、
15とR16とは一体となって−CO−O−または−SO2−O−を表すことができる。)


(式(2)中、R17〜R30は、それぞれ同一または相異なり、水素原子、水酸基、アルコキシ基、アシル基、ハロゲノ基、置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよい芳香族炭化水素基または置換されていてもよい芳香族ヘテロ環基を表し、
21とR22とは一体となって−O−を表すことができる。)

(式(3)中、R31〜R41は、それぞれ同一または相異なり、水素原子、水酸基、アルコキシ基、アシル基、ハロゲノ基、置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよい芳香族炭化水素基または置換されていてもよい芳香族ヘテロ環基を表し、
40とR41とは一体となって−CO−O−または−SO2−O−を表すことができる。
φ1は置換されていてもよいアリル基、置換されていてもよいシクロペンタジエン基、置換されていてもよい芳香族ヘテロ環基を表す。)
<有機化合物2>
分子中に酸素原子を有する芳香族化合物の誘導体1と、分子中にカルボキシル基を有し、芳香族化合物の誘導体1とは異なる芳香族化合物の誘導体2との混合物。
【請求項2】
有機化合物1として式(1)中のR5とR6が一体となって−O−であり、および/または、R15とR16とが一体となって−CO−O−もしくは−SO2−O−である請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
1〜R5のいずれかの1つは水酸基、アルコキシ基またはアシル基であって、R6〜R10のいずれかの1つは水酸基、アルコキシ基またはアシル基である請求項1または2に記載の製造方法。
【請求項4】
17〜R21のいずれかの1つは水酸基、アルコキシ基またはアシル基であって、R22〜R25のいずれかの1つは水酸基、アルコキシ基またはアシル基である請求項1〜3のいずれかに記載の製造方法。
【請求項5】
有機化合物2において、酸素原子をもつ芳香族化合物の誘導体がフェノール、レゾルシノールまたはクレゾールであり、カルボキシル基を有する芳香族化合物の誘導体が無水フタル酸である請求項1〜4のいずれかに記載の製造方法。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載の製造方法で製造されたナトリウム二次電池用の炭素材料および結着剤を有する第1電極と、第2電極と、電解質とを有するナトリウム二次電池。
【請求項7】
第2電極が、以下の式(A)で表されるナトリウム含有遷移金属化合物を有する請求項6に記載のナトリウム二次電池。
NaxMO2 ・・・式(A)
(ここで、MはFe、Ni、Co、Mn、Cr、V、Ti、B、Al、MgおよびSiからなる群より選ばれる1種以上の元素であり、xは0を超え1.2以下である。)
【請求項8】
前記結着剤が非フッ素系の樹脂を有する請求項6または7に記載のナトリウム二次電池。

【公開番号】特開2012−160437(P2012−160437A)
【公開日】平成24年8月23日(2012.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−1921(P2012−1921)
【出願日】平成24年1月10日(2012.1.10)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】