説明

ナトリウム利尿ペプチドに関連したポリペプチド、並びにこれらの同定および使用法

本発明は、関心対象の所望のポリペプチドに対する抗体と結合するポリペプチドの同定および使用に関する。ナトリウム利尿ペプチドおよびこれらの前駆体、特にBNPを一例として使用し、本発明は、生体試料中、最も好ましくは血液由来試料中に産生される、BNPに対する抗体に結合する多くのナトリウム利尿ペプチド断片を記載する。このような断片の産生は、なかでも組織内へのナトリウム利尿ペプチドの放出を誘発する事象の開始と試料を入手または解析する時間との間の経過時間;試料獲得と試料を解析した時間との間の経過時間;問題の組織試料のタイプ;貯蔵条件;存在するタンパク質分解酵素の量などの関数でありうる持続的なプロセスであることから、正確な予後または診断の結果を提供するために、1つまたは複数のナトリウム利尿ペプチドのためのアッセイ法をデザインするとき、およびこのようなアッセイ法を行うときの両方においてこのような断片を使用してもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
技術分野
本発明は、生物学的に活性なペプチドに由来するポリペプチド、生物学的ペプチドが産生されるときに産生されるペプチド、および上述したペプチドの前駆体の同定および使用に関する。なお、本出願は、2003年4月17日に出願された一部継続出願USSN 10/419,059であり、その全体が全ての目的のために参照として組み入れられる。また、本出願は、2003年4月28日に出願された仮出願60/466,358(その全体が全ての目的のために参照として組み入れられる)の非仮出願であり、その利益を主張する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
本発明の背景に関する以下の議論は、単に本発明を理解する上で読み手を助けるために提供するものであり、本発明の先行技術を記述または構成するものと認めるものではない。
【0003】
ナトリウム利尿ペプチドは、レニン-アンジオテンシン系の活性に対抗するように体内で作用する一群の天然に存在する物質である。3つの主要ナトリウム利尿ペプチドがある:心房において合成される心房性ナトリウム利尿ペプチド(ANP);心室において合成される脳型ナトリウム利尿ペプチド(BNP);および脳において合成されるC型ナトリウム利尿ペプチド(CNP)。
【0004】
成熟A型ナトリウム利尿ペプチド(ANP)(心房性ナトリウム利尿ペプチドとも称する)は、心房膨満、アンジオテンシンII刺激、エンドセリン、および交感神経刺激(β-アドレナリン受容体を媒介)に応答して心房筋細胞によって合成され、貯蔵され、および放出される28アミノ酸のペプチドである。成熟ANPは、前駆体分子(プロ-ANP)として合成され、タンパク分解性の切断によって活性型に変換される。心房ナトリウム利尿ペプチド(ANP99-126)自体に加えて、そのN-末端プロホルモン・セグメントからの直鎖ペプチド断片もまた、生物活性を有することが報告されている。
【0005】
成熟B型ナトリウム利尿ペプチド(BNP)(脳型ナトリウム利尿ペプチドとも呼ばれる)は、32アミノ酸であり、ナトリウム利尿系に関与して血圧および体液平衡を調節する4kDaのペプチドである(Bonow、R. O., Circulation 93:1946-1950, 1996)。BNPの前駆体は、本明細書において「プロ-BNP」と称される108アミノ酸分子として合成され、タンパク質加水分解で「NTプロBNP」と称される76アミノ酸のN末端ペプチド(アミノ酸1〜76)、およびBNPまたはBNP 32と称される32アミノ酸の成熟ホルモン(アミノ酸77〜108)にプロセシングされる。これらの種−NTプロ-BNP、BNP-32、およびプレ-プロ-BNPのそれぞれは、ヒト血漿中で循環できることが示唆されている(Tateyama et al., Biochem. Biophys. Res. Commun. 185:760-7, 1992;Hunt et al., Biochem. Biophys. Res. Commun.214:1175-83, 1995)。
【0006】
成熟C型ナトリウム利尿ペプチド(CNP)は、22アミノ酸ペプチドであり、ヒト脳において一次活性ナトリウム利尿ペプチド(primary active natriuretic peptide)であり;CNPは、また、一酸化窒素(NO)と同様に作用する血管内皮由来拡張因子であると考えられる(Davidson et al., Circulation 93:1155-9, 1996)。CNPは、A型ナトリウム利尿ペプチド(ANP)およびB型ナトリウム利尿ペプチド(BNP)に構造的に関連するが、ANPおよびBNPは、心筋において主に合成されるものの、CNPは、前駆体(プロ-CNP)として血管内皮において合成される(Prickett et al., Biochem. Biophys. Res. Commun. 286:513-7, 2001)。CNPは、動脈および静脈の両方に対して血管拡張効果を有すると考えられ、血管平滑筋細胞の細胞内cGMP濃度を増大することによって静脈に対して主に作用することが報告された。
【0007】
ANPおよびBNPは、心房および心室の伸張に応答してそれぞれ放出され、血管緊張低下、副腎皮質におけるアルドステロン分泌の阻害、および腎臓の中のレニン分泌の阻害を引き起こすと考えられる。ANPおよびBNPはいずれも、ナトリウム利尿および血管内体積の減少を引き起こし、効果は、拮抗作用抗利尿ホルモン(ADH)によって増幅される。CNPの生理的な効果は、ANPおよびBNPのものとは異なり;CNPは、降圧効果を有するが、有意な利尿またはナトリウム利尿作用はない。ナトリウム利尿ペプチドの血液濃度の増大は、一定の疾病状態において見いだされており、脳卒中、鬱血性心不全(CHF)、心臓虚血、全身性の高血圧、および急性心筋梗塞症を含むこれらの疾患の病態生理における役割を示唆する。例えば、WO 02/089657;WO 02/083913;およびWO 03/016910を参照されたい(それぞれ、全ての表、図、および請求の範囲を含むその全体が本明細書に組み入れられる)。
【0008】
また、ナトリウム利尿ペプチドは、単独で、集団で、および/またはさらなるタンパク質と共に、種々の心血管症状の疾患マーカーおよび予後の指標として役立ち得る。例えば、BNPは、心室において合成され、左心室圧、呼吸困難の量、および神経ホルモンの調整状態と相関しており、このペプチドが心不全のための最初の潜在的マーカーとなる。血漿BNP濃度の測定は、明らかに心不全を発症する可能性があって、高リスクの心血管事象を有するであろうLV収縮期の機能障害の病因および程度を問わず、種々の心臓異常をもつ患者を同定するための非常に効率的かつ費用効果的な集団スクリーニング技術として進化している。CHF患者の診断および管理の助けとなると考えられる単純な血液検査の発見は、疾患に関係する驚異的な費用に対して有利な影響を有するであろう。
【0009】
循環からのナトリウム利尿ペプチドの除去は、主に循環におけるクリアランス受容体に対する結合および酵素分解による影響を受ける。例えば、Cho et al., Heart Dis. 1: 305-28, 1999; Smith et al., J. Endocrinol. 167:239-46, 2000を参照されたい。さらに、ヒト・プロ-BNPは、血清中でプロセシングされ、その結果、循環プレ-プロ-BNPは無処理の108アミノ酸形態である可能性は低い。Hunt et al., Peptides 18: 1475-81, 1997。しかし、ナトリウム利尿ペプチドの安定性についてのいくつかの混乱が、特に血液(例えば、血清、血漿、全血)由来の試料において報告された。例えば、Norman et al. (Biochem. Biophys. Res. Commun. 28: 175: 22-30, 1991)は、中性エンドペプチダーゼが、残基2と3の間、残基4と5の間、および残基17と18の間でヒトBNPを切断することができることを報告し、Smith et al. (J. Endocrinol. 167: 239-46, 2000)は、ヒトBNPが、精製された中性エンドペプチダーゼによって有意に分解されないことを報告している。同様に、Shimizu et al. (Clin. Chem. Acta 305: 181-6, 2001), Gobinet-Georges et al. (Clin. Chem. Lab. Med. 38: 519-23, 2000)およびMurdoch et al. (Heart 78: 594-7, 1997)は、BNPが、一定の血液由来試料中、または血液を一定の条件下で収集したときには安定であることを報告する。Shimizu et al. (Clin. Chem. Acta 316: 129-35, 2002)による最近の報告では、全血中の94%のBNPが、2つのアミノ末端残基が除去された消化された形態であったこと;および血漿中のBNPが、多くの未同定の形態に分解されたことを示す。
【発明の開示】
【0010】
発明の概要
本発明は、BNP79〜108、BNP77〜106、BNP39〜86、BNP53〜85、BNP66〜98、BNP30〜106、BNP11〜107、BNP9〜106、BNP69〜100、BNP76〜107、BNP69〜108、BNP80〜108、BNP81〜108、BNP83〜108、BNP30〜103、BNP3〜108、およびBNP79〜106からなる群より選択される精製されたBNP断片を提供する。任意に、断片の1つまたは複数のメチオニン残基は、酸化されている。
【0011】
種々の態様において、本発明は、プレ-プロ-BNP、BNP1〜108、BNP1〜76、およびBNP77〜108以外の任意の精製された、および好ましくは実質的に精製されたBNPポリペプチドに関する。好ましい態様において、本発明は、BNP79〜108、BNP77〜106、BNP39〜86、BNP53〜85、BNP66〜98、BNP30〜106、BNP11〜107、BNP9〜106、BNP69〜100、BNP76〜107、BNP69〜108、BNP80〜108、BNP81〜108、BNP83〜108、BNP30〜103、BNP3〜108、およびBNP79〜106からなる群より選択される1つまたは複数の実質的に精製されたBNPポリペプチドに関する。任意に、BNP80〜108、BNP30〜106、BNP86〜108、BNP77〜107、BNP77〜106、BNP77〜103、BNP1〜13、およびBNP62〜76は、これらの個々に精製された形態において除外される。
【0012】
また、本発明は、1つまたは複数の精製された、および好ましくは実質的に精製された、成熟したANP、BNP、およびCNP、これらの前駆体分子、並びに前駆体分子を成熟ANP、BNP、およびCNPペプチドに切断することによって作製された断片以外のナトリウム利尿ペプチド断片にも関する。
【0013】
本発明は、BNPをアッセイする方法をさらに提供する。本方法は、被験者試料から1つまたは複数のBNPポリペプチドを捕獲する工程;および、BNP79〜108、BNP77〜106、BNP39〜86、BNP53〜85、BNP66〜98、BNP30〜106、BNP11〜107、BNP9〜106、BNP69〜100、BNP76〜107、BNP69〜108、BNP80〜108、BNP81〜108、BNP83〜108、BNP30〜103、BNP3〜108、およびBNP79〜106からなる群より選択される少なくとも1つの捕獲されたBNPポリペプチドの存在または量を特異的に測定する工程を必要とする。好ましいBNPポリペプチドは、BNP77〜106、BNP39〜86、BNP53〜85、BNP66〜98、BNP30〜106、BNP11〜107、BNP9〜106、BNP69〜100、およびBNP76〜107を含む。任意に、1つまたは複数のBNPポリペプチドは、臨床試料に由来し、本方法は、少なくとも1つの捕獲されたBNPポリペプチドの存在または量を臨床パラメーターと相関させることをさらに含む。任意に、本方法は、BNP1〜76、BNP77〜108、BNP1〜108、およびプレ-プロBNPからなる群より選択される少なくとも1つのBNPポリペプチドを特異的に測定する工程、並びに測定値を臨床パラメーターと相関させる工程をさらに含む。任意に、特異的に測定する工程は、質量分析によって行われる。任意に、捕獲する工程は、支持体の表面に付着された抗体を含むSELDIプローブを提供する工程;抗体を試料と接触させることによって、抗体が試料からのBNPポリペプチドを捕獲する工程を含み;特異的に測定する工程は、SELDIによって少なくとも1つの捕獲されたBNPポリペプチドの存在または量を特異的に測定する工程を含む。任意に、捕獲する工程は、群より選択される複数のBNPポリペプチドを捕獲し、特異的に測定する工程では、群より選択される複数のBNPポリペプチドを特異的に測定する。
【0014】
本発明は、試験試料の病態を分類する方法をさらに提供する。本方法は、BNPに関連した病態によって特徴づけられる第1のクラスの複数の試料の各々から選択される1つもしくは複数のBNPポリペプチドの存在または量を特異的に測定する方法を必要とする。第2のクラスの複数の試料からの該1つもしくは複数のBNPポリペプチドの存在または量は、特異的に測定され、第2のクラスは、BNPに関連した病態が存在しないことによって特徴づけられる。分類モデルは、試験試料を第1のクラスまたは第2のクラスに分類する測定値に基づく。少なくとも1つのBNPポリペプチドは、BNP79〜108、BNP77〜106、BNP39〜86、BNP53〜85、BNP66〜98、BNP30〜106、BNP11〜107、BNP9〜106、BNP69〜100、BNP76〜107、BNP69〜108、BNP80〜108、BNP81〜108、BNP83〜108、BNP30〜103、BNP3〜108、およびBNP79〜106からなる群より選択される。
【0015】
本発明は、少なくとも1つのその他のBNPポリペプチドを含む試料中のプレ-プロ-BNP、BNP1〜76、BNP77〜108、またはBNP1〜108を特異的に測定するための方法をさらに含む。本方法は、BNP1〜76、BNP77〜108、BNP1〜108、およびプレ-プロ-BNPからなる第1の群より選択される少なくとも1つのBNPポリペプチドと、BNP79〜108、BNP77〜106、BNP39〜86、BNP53〜85、BNP66〜98、BNP30〜106、BNP11〜107、BNP9〜106、BNP69〜100、BNP76〜107、BNP69〜108、BNP80〜108、BNP81〜108、BNP83〜108、BNP30〜103、BNP3〜108、およびBNP79〜106からなる第2の群より選択される少なくとも1つのBNPポリペプチドとを含むBNPポリペプチドを試料から捕獲する工程;並びに(b)第1の群から捕獲されたBNPポリペプチドを特異的に測定する工程を必要とする。任意に、特異的に測定する工程では、第1の群からの少なくとも1つの捕獲されたBNPポリペプチドの量および第2の群から選択される少なくとも1つの捕獲されたBNPポリペプチドの量を特異的に測定し、本方法は、それぞれの特異的に測定されたBNPポリペプチドの量の相対比を決定する工程をさらに含む。
【0016】
本発明は、BNP断片と相互作用するポリペプチドを発見するための方法をさらに提供する。本方法は、BNP79〜108、BNP77〜106、BNP39〜86、BNP53〜85、BNP66〜98、BNP30〜106、BNP11〜107、BNP9〜106、BNP69〜100、BNP76〜107、BNP69〜108、BNP80〜108、BNP81〜108、BNP83〜108、BNP30〜103、BNP3〜108、およびBNP79〜106からなる群より選択されるBNP断片を生物特異的捕獲試薬で捕獲する工程を必要とする。生物特異的捕獲試薬またはBNP断片に結合していない分子は、除去される。捕獲されたBNP断片に結合した分子は、測定される。任意に、分子は、親和性質量分析によって測定される。
【0017】
本発明は、少なくとも1つの特異的な測定値と臨床パラメーターとの間の相関を決定する方法を提供する。本方法は、被験者を表す複数のデータオブジェクトを含む学習セットを提供する工程であって、それぞれのデータオブジェクトが、BNP79〜108、BNP77〜106、BNP39〜86、BNP53〜85、BNP66〜98、BNP30〜106、BNP11〜107、BNP9〜106、BNP69〜100、BNP76〜107、BNP69〜108、BNP80〜108、BNP81〜108、BNP83〜108、BNP30〜103、BNP3〜108、およびBNP79〜10からなる群より選択されるBNPポリペプチドの特異的な測定値を表すデータを含む、工程;並びに(b)少なくとも1つの特異的な測定と臨床パラメーターとの間の相関を決定する工程を必要とする。任意に、学習セットを提供する工程は:試料からのBNPポリペプチドを抗体で捕獲する工程、および群より選択されるBNP断片を含むBNPポリペプチドの1つまたは複数を特異的に測定する工程を含む。
【0018】
本発明は、臨床パラメーターに従ってデータオブジェクトを分類する方法を提供する。本方法は、被験者を表す複数のデータオブジェクトを含む学習セットを提供する工程であって、それぞれの被験者は、複数の異なる臨床パラメーターの少なくとも1つに分類されており、それぞれのデータオブジェクトは、被験者試料からの複数のBNPポリペプチドの特異的な測定値を表すデータを含み、少なくとも1つのBNPポリペプチドは、BNP79〜108、BNP77〜106、BNP39〜86、BNP53〜85、BNP66〜98、BNP30〜106、BNP11〜107、BNP9〜106、BNP69〜100、BNP76〜107、BNP69〜108、BNP80〜108、BNP81〜108、BNP83〜108、BNP30〜103、BNP3〜108、およびBNP79〜106からなる群より選択されるBNP断片である、工程;並びに学習セットで学習アルゴリズムを訓練することにより、臨床パラメーターに従ってデータオブジェクトを分類する分類モデルを作製する工程を必要とする。
【0019】
任意に、臨床パラメーターは、疾患の有無;疾患のリスク、疾患段階;疾患治療に対する応答;および疾患のクラスから選択される。任意に、学習セットは、BNPポリペプチドのポリペプチドインタラクター(interactor)の特異的な測定値を表すデータをさらに含む。任意に、学習アルゴリズムは、教師無しである。任意に、学習アルゴリズムは、教師付きであり、それぞれのデータオブジェクトは、被験者の臨床パラメーターを表すデータをさらに含む。任意に、臨床パラメーターに従って被験者を分類するために、臨床パラメーターが未知の被験者からの被験者データに対して分類モデル。任意に、臨床パラメーターは、急性冠動脈症候群の有無である。任意に、教師付き学習アルゴリズムは、直線回帰プロセス、二分決定木(binary decision tree)、人工神経回路網、判別分析、ロジスティック分類子、再帰分割法、およびサポートベクター分類子から選択される。任意に、教師付き学習アルゴリズムは、再帰分割法である。
【0020】
本発明は、BNP免疫アッセイ法のための免疫アッセイキャリブレーターを認定(qualify)するための方法をさらに提供する。本方法は、指定された濃度の1つまたは複数のBNPポリペプチドを含む免疫アッセイキャリブレーターをBNP免疫アッセイに提供する工程を必要とする。キャリブレーターからのポリペプチドは、BNPポリペプチドに対する抗体によって捕獲される。BNP79〜108、BNP77〜106、BNP39〜86、BNP53〜85、BNP66〜98、BNP30〜106、BNP11〜107、BNP9〜106、BNP69〜100、BNP76〜107、BNP69〜108、BNP80〜108、BNP81〜108、BNP83〜108、BNP30〜103、BNP3〜108、およびBNP79〜106からなる群より選択される少なくとも1つのポリペプチドの量が特異的に測定され、これにより測定された量は、免疫アッセイキャリブレーターの品質の指標を提供する。任意に、本方法は、BNP1〜76、BNP77〜108、BNP1〜108、およびプレ-プロBNPからなる群より選択される少なくとも1つのBNPポリペプチドを特異的に測定する工程をさらに含む。任意に、本方法は、抗体によって捕獲された総ポリペプチドの関数として、BNP1〜76、BNP77〜108、BNP1〜108、およびプレ-プロBNPから選択される少なくとも1つのBNPポリペプチドの量を決定する工程をさらに含む。任意に、量は、親和性質量分析によって測定される。
【0021】
本発明は、BNPポリペプチドと特異的に結合する免疫グロブリン試薬を認定するための方法をさらに提供する。本方法は、質量分析によって免疫グロブリン試薬を解析する工程;および試薬中の無処理の免疫グロブリンおよび免疫グロブリン断片の相対量を決定する工程を必要とする。
【0022】
本発明は、BNP免疫アッセイのために抗体試薬中のBNPポリペプチドに対する修飾型抗体を測定する方法をさらに提供する。任意に、本方法は、試薬中の無修飾型抗体を測定する工程および無修飾抗体の測定値を修飾型抗体の測定値と比較する工程をさらに含む。任意に、本方法は、免疫アッセイ較正試料中のBNP79〜108、BNP77〜106、BNP39〜86、BNP53〜85、BNP66〜98、BNP30〜106、BNP11〜107、BNP9〜106、BNP69〜100、BNP76〜107、BNP69〜108、BNP80〜108、BNP81〜108、BNP83〜108、BNP30〜103、BNP3〜108、およびBNP79〜106からなる群より選択される少なくとも1つのBNP断片の量を特異的に測定する工程をさらに含む。
【0023】
本発明は、NP79-108、BNP77〜106、BNP39〜86、BNP53〜85、BNP66〜98、BNP30〜106、BNP11〜107、BNP9〜106、BNP69〜100、BNP76〜107、BNP69〜108、BNP80〜108、BNP81〜108、BNP83〜108、BNP30〜103、BNP3〜108、およびBNP79〜106からなる群より選択されるBNP断片の少なくとも1つに特異的に結合するが全てに結合しない抗体をさらに提供する。任意に、本抗体は、群より選択されるBNP断片の一つおよび一つのみと特異的に結合する。一部の抗体は、上記の断片の少なくとも1つを上記の断片の少なくとももう一方から区別する。
【0024】
一つの態様において、アッセイ法は、本明細書で定義されたような、複数のナトリウム利尿ペプチド(例えば、BNP)断片を検出するために処方される抗体または抗体カクテルを使用して行われてもよい。この複数の断片の存在または量は、単に成熟したナトリウム利尿ペプチド(またはナトリウム利尿ペプチド前駆体)自体を測定するよりも正確な予後または診断の結果を提供するであろう。例えば、成熟したナトリウム利尿ペプチドだけを検出するが、分解断片を検出することができない抗体は、異常に低いアッセイ結果を提供するであろう(例えば、BNPが存在するが、分解されていたときは、BNPが存在しないか、または低いBNP濃度であることを示す)。
【0025】
代わりの態様において、複数のナトリウム利尿ペプチド(例えば、BNP)断片間を区別する個々の抗体を、異なる断片の存在または量を別々に検出するために個々に使用してもよい。この個々の検出結果は、単一のアッセイで複数の断片を検出するよりも正確な予後または診断の結果を提供するであろう。例えば、試料中に元来存在するナトリウム利尿ペプチドの量のより正確な測定を提供するために、異なる重みづけ要因を種々の断片測定に適用してもよい。さらに、上記のように、このような断片の生成は、なかでも、組織へのナトリウム利尿ペプチドの放出を誘発する事象の開始と、試料を入手または解析した時間との間の経過時間の関数であるので、種々の断片の相対量を使用して事象の開始から延べ時間を推定するために用いてもよい。
【0026】
関連した局面において、本発明の精製されたナトリウム利尿ペプチド断片は、1つまたは一群の断片を認識する抗体を作製するための方法に使用してもよい。種々の態様において、多くのナトリウム利尿ペプチド断片に共通する配列を含むポリペプチドを選択し、この共通配列を認識する抗体を作製するために使用してもよく;このような抗体は、配列が共通で、立体的に結合が可能であるように発現された各々の断片を認識すると考えられる。別の態様において、特異的な断片または断片のセットに特異的であり、かつ特定の断片または断片のセットだけを認識する抗体を作製するために使用される配列を含む断片を選択してもよい。このような抗体は、抗体によって認識されない断片と選択された断片を「区別する」と言われる。従って、本発明はまた、1つまたは複数の予め選択されたナトリウム利尿ペプチド断片に結合するように選択された抗体、並びにこれらの作製および選択のための方法に関する。
【0027】
種々の態様において、本発明は、BNP77〜108、BNP1〜76、BNP1〜108、プレ-プロBNPからなる群、および/またはBNP79〜108、BNP77〜106、BNP39〜86、BNP53〜85、BNP66〜98、BNP30〜106、BNP11〜107、BNP9〜106、BNP69〜100、BNP76〜107、BNP69〜108、BNP80〜108、BNP81〜108、BNP83〜108、BNP30〜103、BNP3〜108、およびBNP79〜106からなる群より選択される複数のBNPポリペプチドと結合するように選択された抗体に関する。また、本発明は、このような抗体の選択のための方法に関する。好ましくは、このような抗体は、BNP77〜108から産生される複数のBNPペプチドと結合するように、より好ましくはBNP77〜108、BNP77〜106、BNP79〜106、BNP76〜107、BNP79〜108、BNP80〜108、BNP81〜108、およびBNP83〜108の複数に、並びに最も好ましくはBNP77〜108、BNP77〜106、BNP79〜106、BNP76〜107、BNP79〜108、BNP80〜108、BNP81〜108、BNP83〜108のそれぞれに結合するように選択される。その他の好ましい態様において、抗体は、また、メチオニン酸化状態を問わずBNPポリペプチドと結合するように選択される。
【0028】
種々の態様において、本発明は、BNP77〜108、BNP1〜76、BNP1〜108、プレ-プロBNPからなる群、および/またはBNP79〜108、BNP77〜106、BNP39〜86、BNP53〜85、BNP66〜98、BNP30〜106、BNP11〜107、BNP9〜106、BNP69〜100、BNP76〜107、BNP69〜108、BNP80〜108、BNP81〜108、BNP83〜108、BNP30〜103、BNP3〜108、およびBNP79〜106からなる群より選択される複数のBNPポリペプチドと特異的に結合するように選択された抗体に関する。また、本発明は、このような抗体の選択のための方法に関する。好ましくは、このような抗体は、BNP77〜108から産生される複数のBNPペプチドと特異的に結合するように、より好ましくはBNP77〜108、BNP77〜106、BNP79〜106、BNP76〜107、BNP79〜108、BNP80〜108、BNP81〜108、BNP83〜108の複数に、および最も好ましくはBNP77〜108、BNP77〜106、BNP79〜106、BNP76〜107、BNP79〜108、BNP80〜108、BNP81〜108、BNP83〜108のそれぞれに結合するように選択される。その他の好ましい態様において、抗体は、また、メチオニン酸化状態を問わず特異的にBNPポリペプチドと結合するように選択される。
【0029】
種々の別の態様において、本発明は、BNP77〜108、BNP1〜76、BNP1〜108、プレ-プロBNP、BNP79〜108、BNP77〜106、BNP39〜86、BNP53〜85、BNP66〜98、BNP30〜106、BNP11〜107、BNP9〜106、BNP69〜100、BNP76〜107、BNP69〜108、BNP80〜108、BNP81〜108、BNP83〜108、BNP30〜103、BNP3〜108、およびBNP79〜106の群から選択される1つまたは複数のBNPポリペプチドを含む第1の群と、BNP77〜108、BNP1〜76、BNP1〜108、プレ-プロBNP、BNP79〜108、BNP77〜106、BNP39〜86、BNP53〜85、BNP66〜98、BNP30〜106、BNP11〜107、BNP9〜106、BNP69〜100、BNP76〜107、BNP69〜108、BNP80〜108、BNP81〜108、BNP83〜108、BNP30〜103、BNP3〜108、およびBNP79〜106からなる群より選択される1つまたは複数の異なるBNPポリペプチドを含む第2の群との間を区別するように選択された抗体に関する。また、本発明は、このような抗体の選択のための方法に関する。好ましくは、第1および/または第2の群のメンバーは、BNP77〜108から作製されるBNPペプチドを含み、最も好ましくは、第1および/または第2の群のメンバーは、BNP77〜108、BNP77〜106、BNP79〜106、BNP76〜107、BNP79〜108、BNP80〜108、BNP81〜108、BNP83〜108を含む。その他の好ましい態様において、抗体は、また、メチオニン酸化状態に基づいてBNPポリペプチドを区別するように選択される。
【0030】
種々の態様において、抗体は、1つまたは複数のナトリウム利尿ペプチド断片に対する特定の親和性に基づいてではなく、代わりに免疫アッセイ法などの結合アッセイ法で得ることができるシグナルに基づいて選択される。種々の結合アッセイ形式が当技術分野において公知であり、1つまたは複数の標的分子に対する抗体の特定の親和性よりも重要である適切なアッセイ法を開発するためには、抗体が使用されることが多い。例えば、競合結合アッセイ法では、固体の表面に結合された受容体(例えば、抗体)を含んでもよい。また、試験試料中の関心対象の分析物は、受容体にも結合する標識分子との結合に関して競合する。受容体に結合した標識分子の量(およびそれ故、アッセイシグナル)は、試験試料中の関心対象の分析物の量に反比例する。この場合、固相に付着された単一の抗体が使用される。または、サンドイッチ免疫アッセイ法では、典型的には固体の表面に結合された第1の抗体と、典型的には検出可能な標識に結合された第2抗体が、試験試料中の関心対象の分析物に対してそれぞれ結合する。受容体に結合した標識分子の量(およびそれ故、アッセイシグナル)は、試験試料中の関心対象の分析物の量に正比例する。
【0031】
さらにもう一つの変形例において、試料は、ナトリウム利尿ペプチド(例えば、BNP)断片の生成を阻害する1つまたは複数の化合物と混合してもよい。このような態様において、アッセイ法によって正確に検出されないであろうナトリウム利尿ペプチド断片の分解を防止するために、1つまたは複数のタンパク分解の阻害剤および/またはキレート剤を生体試料に添加してもよい。
【0032】
本発明は、BNPポリペプチドをアッセイする方法をさらに提供する。本方法は、被験者の試料から1つまたは複数のBNPポリペプチドを捕獲する工程;および捕獲したものの中から少なくとも1つの捕獲されたBNPポリペプチドの存在または量を特異的に測定する工程を必要とする。任意には、少なくとも、3、4、5、または10種のBNPポリペプチドが捕獲され、特異的に測定される。
【0033】
本発明は、試験試料を分類する方法をさらに提供する。本方法は、BNPに関連した病態によって特徴づけられる第1のクラスの各々の複数の試料から、1つもしくは複数のBNPポリペプチドの存在または量を特異的に測定する工程を必要とする。該1つもしくは複数のBNPポリペプチドの存在または量は、BNPに関連した病態が存在しないことによって特徴づけられる第2のクラスの複数の試料から特異的に測定される。分類モデルは、第1のクラスまたは第2のクラスに試験試料を分類する測定に基づいて開発される。BNPポリペプチドの少なくとも1つは、BNP1〜76、BNP77〜108、BNP1〜108、プレプロ-BNP以外である。
【0034】
本発明は、BNPポリペプチドと相互作用するポリペプチドを発見するための方法をさらに提供する。本方法は、試料からBNPポリペプチドを生物特異的捕獲試薬で捕獲する工程;生物特異的捕獲試薬またはBNPポリペプチドに結合していない分子を除去する工程;および、捕獲されたBNPポリペプチドに結合した分子を測定する工程を必要とする。
【0035】
本発明は、BNPポリペプチドと臨床パラメーターの特異的な測定値を相関させる方法をさらに提供する。本発明は、被験者を表す複数のデータオブジェクトを含む学習セットを提供する工程であって、それぞれのデータオブジェクトは、被験者試料からのBNPポリペプチドの特異的な測定値を表すデータおよび被験者の臨床パラメーターを含む、工程を必要とする。相関は、BNPポリペプチドの特異的な測定値と臨床パラメーターとの間で決定される。BNPポリペプチドの少なくとも1つは、BNP1〜76、BNP77〜108、BNP1〜108、プレプロ-BNP以外である。
【0036】
本発明は、被験者試料において、BNP1〜76、BNP77〜108、BNP1〜108、およびプレ-プロ-BNPからなる群より選択されるBNPポリペプチドを特異的に測定し;並びに被験者の臨床パラメーターと測定値を相関させる方法をさらに提供する。任意には、本方法は、BNP79〜108、BNP77〜106、BNP39〜86、BNP53〜85、BNP66〜98、BNP30〜106、BNP11〜107、BNP9〜106、BNP69〜100、BNP76〜107、BNP69〜108、BNP80〜108、BNP81〜108、BNP83〜108、BNP30〜103、BNP3〜108、およびBNP79〜106からなる群より選択される少なくとも1つのBNP断片を特異的に測定する工程、並びに臨床パラメーターと測定値を相関させる工程をさらに含む。任意には、本方法は、少なくとも1つのBNPポリペプチドの生体分子のインタラクターもしくはBNPポリペプチドに対する抗体、またはBNP79〜108、BNP77〜106、BNP39〜86、BNP53〜85、BNP66〜98、BNP30〜106、BNP11〜107、BNP9〜106、BNP69〜100、BNP76〜107、BNP69〜108、BNP80〜108、BNP81〜108、BNP83〜108、BNP30〜103、BNP3〜108、およびBNP79〜106からなる群より選択されるBNP断片を特異的に測定する工程;並びに臨床パラメーターと測定値を相関させる工程をさらに含む。
【0037】
本発明は、BNP免疫アッセイ法のための免疫アッセイキャリブレーターを認定するための方法をさらに提供する。本方法は、指定された濃度の1つまたは複数のBNPポリペプチドを含む免疫アッセイキャリブレーターをBNP免疫アッセイに提供する工程;キャリブレーターからのポリペプチドをBNPポリペプチドに対する抗体で捕獲する工程;および(c)少なくとも1つのBNPポリペプチドの量を特異的に測定する工程を含み、これにより測定された量は、免疫アッセイキャリブレーターの品質の指標を提供する。
【0038】
本発明は、生体試料において見いだすことができる、BNPとの生体分子のインタラクターまたは単離された抗BNP抗体の生体分子のインタラクターをさらに提供する。これらの生体分子のインタラクターは、生体試料からの分析物を抗BNP抗体で質量分析プローブに捕獲して、特異的に検出し、捕獲表面から質量分析をレーザー脱離/イオン化によって区別するという親和性質量分析によって発見された。インタラクターは、分子量によって特徴づけることができる。
【0039】
種々の態様において、本発明は、BNP77〜108、BNP1〜76、BNP1〜108、プレ-プロBNP、BNP79〜108、BNP77〜106、BNP39〜86、BNP53〜85、BNP66〜98、BNP30〜106、BNP11〜107、BNP9〜106、BNP69〜100、BNP76〜107、BNP69〜108、BNP80〜108、BNP81〜108、BNP83〜108、BNP30〜103、BNP3〜108、およびBNP79〜106からなる群より選択される複数のBNPポリペプチドの存在または量に関する単一のシグナルを提供するように構成された免疫アッセイ法に関する。好ましくは、このような免疫アッセイ法は、BNP77〜108から作製される複数のBNPペプチドの存在または量に、より好ましくは、複数のBNP77〜108、BNP77〜106、BNP79〜106、BNP76〜107、BNP79〜108、BNP80〜108、BNP81〜108、BNP83〜108に、最も好ましくはBNP77〜108、BNP77〜106、BNP79〜106、BNP76〜107、BNP79〜108、BNP80〜108、BNP81〜108、BNP83〜108の各々に関する単一のシグナルを提供するように構成される。その他の好ましい態様において、免疫アッセイ法は、また、メチオニン酸化状態を問わずBNPポリペプチドの存在または量に関する単一のシグナルを提供するように構成される。
【0040】
好ましい態様において、免疫アッセイ法は、複数のナトリウム利尿ペプチド断片、最も好ましくは複数の前述のBNPポリペプチドの同数の分子から、5倍以内、最も好ましくは2倍以内のシグナルを提供する。
【0041】
種々のもう一つの態様において、本発明は、BNP77〜108、BNP1〜76、BNP1〜108、プレ-プロBNP、BNP79〜108、BNP77〜106、BNP39〜86、BNP53〜85、BNP66〜98、BNP30〜106、BNP11〜107、BNP9〜106、BNP69〜100、BNP76〜107、BNP69〜108、BNP80〜108、BNP81〜108、BNP83〜108、BNP30〜103、BNP3〜108、およびBNP79〜106、からなる群より選択される1つまたは複数のBNPポリペプチドを含む第1の群と、BNP77〜108、BNP1〜76、BNP1〜108、プレ-プロBNP、BNP79〜108、BNP77〜106、BNP39〜86、BNP53〜85、BNP66〜98、BNP30〜106、BNP11〜107、BNP9〜106、BNP69〜100、BNP76〜107、BNP69〜108、BNP80〜108、BNP81〜108、BNP83〜108、BNP30〜103、BNP3〜108、およびBNP79〜106からなる群より選択される1つまたは複数の異なるBNPポリペプチドを含む第2の群との間を区別するシグナルを提供するように構成された免疫アッセイ法に関する。好ましくは、第1および/または第2の群のメンバーは、BNP77〜108から作製されるBNPペプチドを含み、最も好ましくは、第1および/または第2の群のメンバーは、BNP77〜108、BNP77〜106、BNP79〜106、BNP76〜107、BNP79〜108、BNP80〜108、BNP81〜108、BNP83〜108を含む。その他の好ましい態様において、免疫アッセイ法は、また、メチオニン酸化状態によってBNPポリペプチドを区別するように構成される。
【0042】
さらにもう一つの局面において、本発明は、既知量の1つまたは複数の精製された、好ましくは実質的に精製された、成熟ANP、BNP、およびCNP以外のナトリウム利尿ペプチド断片、これらの前駆体分子、並びに前駆体分子を成熟ANP、BNP、およびCNPペプチドに切断することによって作製された断片を含む標準液に関する。このような標準液は、本明細書に記載されている種々のアッセイ法において陽性および/または陰性対照試料としての使用が見いだされるであろう。種々の態様において、本発明は、任意の精製された、好ましくは実質的に精製された、プレ-プロBNP、BNP1〜108、BNP1〜76、およびBNP77〜108以外のBNPポリペプチドに関する。好ましい態様において、本発明は、1つまたは複数の精製された、好ましくは実質的に精製された、BNP79〜108、BNP77〜106、BNP39〜86、BNP53〜85、BNP66〜98、BNP30〜106、BNP11〜107、BNP9〜106、BNP69〜100、BNP76〜107、BNP69〜108、BNP80〜108、BNP81〜108、BNP83〜108、BNP30〜103、BNP3〜108、およびBNP79〜106からなる群より選択される、既知量の関連ポリペプチドを含む1つまたは複数の標準液に関する。
【0043】
ある局面において、実質的に試験試料と同等の組成物を使用してこのような標準液または校正物質を配合することも有利であり得;例えば、溶液は、関心対象のナトリウム利尿ペプチド断片のための溶媒として、血液、血清、血漿、その他を含んでいてもよい。このような場合、添加したナトリウム利尿ペプチド断片の分解を防止するために、1つもしくは複数のプロテアーゼ阻害剤またはキレート剤を含めることも有利であろう。
【0044】
もう一つの局面において、本発明の1つもしくは複数の抗体、抗体複合体、および/または標準液は、ナトリウム利尿ペプチド断片の存在または量を決定するためのキットとして提供してもよい。これらのキットは、好ましくは、試験試料について本明細書に記載されているように、少なくとも1つのアッセイ法を行うための装置および試薬を含む。このようなキットは、好ましくは1つまたは複数のこのような判定、および/または食品医薬品局(FDA)承認の標識を行うために十分な試薬を含む。
【0045】
さらにもう一つの局面において、本発明は、患者に使用される治療処方計画を決定するための方法に関する。本方法は、好ましくは成熟ANP、BNP、およびCNP、これらの前駆体分子、並びに前駆体分子を成熟ANP、BNP、およびCNPペプチドに切断することによって産生された断片以外の1つもしくは複数のナトリウム利尿ペプチド断片の存在または量を決定する工程、およびこの存在または量を疾患または予後の状態と関連づける工程を含む。本明細書において論議したとおり、脳卒中、鬱血性心不全(CHF)、心臓虚血、全身性の高血圧、および/または急性心筋梗塞症を含む種々の心血管および脳血管の疾患の診断並びに識別が、ANP、BNP、および/またはCNPレベルに関連するであろう。一旦診断がなされると、治療処方計画は、その診断と見合ったように選択される。
【0046】
さらにもう一つの局面において、本発明は、生体試料、好ましくは血液、血清、または血漿試料中に存在する公知のポリペプチドに関連する新規ポリペプチドを同定する方法に関する。これらの方法において、1つまたは複数の公知のポリペプチド(例えば、BNP)に対して親和性を有する抗体を、抗体に対して結合親和性を共有するように構造が十分に関連しているが、以前に試料中に存在することが予測されていないさらなるポリペプチドの結合についてのアフィニティープローブとして使用する。次いで、ポリペプチドの配列が本明細書に記載されている方法によって得られる。一旦得られたら、配列を本明細書に記載されているその他の局面に;例えば、再び本明細書に記載されている方法に従って、公知のポリペプチドと以前に知られていないポリペプチドとを区別することができる抗体を選択するために;以前に知られていないポリペプチドが診断または予後のマーカーとして有用であるかを決定するために;および/または標準液もしくは単離ペプチドを提供するために使用してもよい。
【0047】
一つの局面において、SELDIなどの質量分析方法によってタグ付き免疫アッセイ法のための抗体試薬中の抗体を認定する方法が記載される。さらなる局面において、本方法は、試料の総タンパク質量の関数として抗体の量を決定することによって、抗体を認定するために使用される。詳細な局面において、本方法は、試薬中の抗体の量が、SELDIによって定まる試料由来の抗体の量が反映された同一量を含む抗体試薬を調製する工程を更に含む。
【0048】
もう一つの局面において、SELDIよってタグ付き免疫アッセイ法のためにキャリブレーター中のペプチドを識別する方法が記載される。さらなる局面において、本方法は、試料中の総タンパク質量の関数として、1つまたは複数の特定のペプチドの量を決定することによってペプチドを識別するために使用される。詳細な局面において、試薬中の抗体の量が、SELDIによって定まる試料由来の抗体の量が反映された量を含む、抗体試薬を調製する工程をさらに含む。
【0049】
さらなる局面において、本方法は、SELDI免疫アッセイ法を使用してタグ付き免疫アッセイ法のための抗体試薬中の抗体を認定する工程を含む。詳細な局面において、タグ付き免疫アッセイ法は、BNP免疫アッセイ法である。さらに詳細な局面において、SELDIは、SEACである。さらに詳細な局面において、SELDIは、SENDである。
【0050】
もう一つの側面において、プローブの表面に付着された抗体試薬を含むSELDIプローブを提供することよってタグ付き免疫アッセイ法において抗体試薬によって捕獲されるポリペプチドを識別する工程、試料と抗体試薬を接触させることによって、抗体試薬により試料からポリペプチドを捕獲する工程、およびSELDIによって捕獲されたポリペプチドを検出する工程を含む方法が記載される。詳細な局面において、タグ付き免疫アッセイ法は、BNP免疫アッセイである。さらに詳細な局面において、SELDIは、SEACである。さらに詳細な局面において、SELDIは、SENDである。
【0051】
定義
ヒトBNPは、108アミノ酸の前駆体分子のタンパク質分解によって生じ、以下ではBNP1〜108という。成熟BNP、または「BNPナトリウム利尿ペプチド」は、この前駆体のアミノ酸77〜108を示す32アミノ酸の分子であり、以下BNP77〜108という。残りの残基1〜76は、以下にはBNP1〜76という。
【0052】
108アミノ酸のBNP前駆体プロ-BNP(BNP1〜108)の配列は、以下の通りであり、成熟BNP(BNP77〜108)に下線を引いてある:

【0053】
BNP1〜108は、以下の配列を有するより大きな前駆体プレ-プロ-BNPとして合成される(「プレ」配列を太字で示した):

【0054】
126アミノ酸のANP前駆体プロ-ANP(ANP1〜126)の配列は、以下の通りであり、成熟ANP(ANP99〜126)に下線を引いてある:

【0055】
ANP1〜126は、以下の配列を有するより大きな前駆体プレ-プロ-ANPとして合成される(「プレ」配列を太字で示した):

【0056】
126アミノ酸CNP前駆体プロ-CNP(CNP1〜126)の配列は、以下の通りであり、成熟CNP型CNP-53(CNP74〜126)をイタリックにし、CNP22(CNP105〜126)に下線を引いてある:

【0057】
「BNPポリペプチド」という用語は、任意のBNP1〜76、BNP77〜108、BNP1〜108、プレ-プロBNP、並びに、BNP79〜108、BNP77〜106、BNP39〜86、BNP53〜85、BNP66〜98、BNP30〜106、BNP11〜107、BNP9〜106、BNP69〜100、BNP76〜107、BNP69〜108、BNP80〜108、BNP81〜108、BNP83〜108、BNP30〜103、BNP3〜108、およびBNP79〜106を含むこれらの断片をいう。
【0058】
本明細書に使用される「断片」という用語は、断片が由来するポリペプチドの少なくとも6つの隣接するアミノ酸を含むポリペプチドをいう。従って、BNP1〜108(プロ-BNP)の断片は、BNP1〜108の少なくとも6つの隣接するアミノ酸を含むポリペプチドをいい;成熟BNPの断片は、BNP77〜108の少なくとも6つの隣接するアミノ酸を含むポリペプチドをいい;プロ-BNPを成熟BNPに切断することによって作製されるポリペプチドの断片は、BNP1〜76の少なくとも6つの隣接するアミノ酸を含むポリペプチドをいう。「BNP」断片は、BNP77〜108、BNP1〜76、BNP1〜108、およびプレ-プロ-BNPの任意の断片を意味する。同様に、ANP1〜126(プロ-ANP)の断片は、ANP1〜126の少なくとも6つの隣接するアミノ酸を含むポリペプチドをいい;成熟ANPの断片は、ANP99〜126の少なくとも6つの隣接するアミノ酸を含むポリペプチドをいい;プロ-ANPを成熟ANPに切断することによって作製されるポリペプチドの断片は、BNP1〜98の少なくとも6つの隣接するアミノ酸を含むポリペプチドをいい;およびCNP1〜126(プロ-CNP)の断片は、CNP1〜126の少なくとも6つの隣接するアミノ酸を含むポリペプチドをいい;成熟CNPの断片は、CNP74〜126またはCNP105〜126の少なくとも6つの隣接するアミノ酸を含むポリペプチドをいい;プロ-CNPを成熟CNPに切断することによって作製されるポリペプチドの断片は、CNP1〜73またはCNP 1〜104の少なくとも6つの隣接するアミノ酸を含むポリペプチドをいう。好ましい態様において、断片は、断片が由来するポリペプチドの少なくとも10個の隣接するアミノ酸;断片が由来するポリペプチドの少なくとも15個の隣接するアミノ酸;または断片が由来するポリペプチドの少なくとも20の隣接するアミノ酸を含むポリペプチドをいう。
【0059】
本明細書に使用される「ナトリウム利尿ペプチド断片」という用語は、上記のとおり、成熟ANP、BNP、もしくはCNP、生合成の前駆体プレ-プロ-ANP、プレ-プロ-BNP、プレ-プロ-CNP、プロ-ANP、プロ-BNP、もしくはプロ-CNP、またはペプチドのプレ形態からの成熟ANP、BNP、もしくはCNPの除去後に残っているポリペプチドからなる群より選択される任意のナトリウム利尿ペプチドの断片をいう。
【0060】
文脈から他に明らかでない限り、ナトリウム利尿ポリペプチドについての言及には、例えば、リン酸化(リン酸基につき80Dを付加する)、グリコシル化、脂質化、メチル化(メチル基につき14Dを付加する)、システイニル化(システイニル基につき199Dを付加する)、スルホン化、グルタチオン化(グルタチオン基につき305Dを付加する)、およびアセチル化(アセチル基につき42Dを付加する)を含む翻訳後修飾を有するポリペプチドの修飾形態を含む。BNPポリペプチドを含むナトリウム利尿ペプチド断片は、1つまたは複数の酸化可能なメチオニン(その酸化は、メチオニンのスルホキシドまたはメチオニンスルホンに対するものである)を含むことができる。1つまたは複数のメチオニンの酸化状態の変化は、このような断片を検出するためのアッセイ法の能力を変更するであろう。従って、上で論議した実質的に精製されたナトリウム利尿ペプチド断片の還元型に加えて、本発明は、また、1つまたは複数の精製された、好ましくは実質的に精製された成熟ANP、BNP、およびCNP、これらの前駆体分子、並びに前駆体分子を成熟ANP、BNP、およびCNPペプチドに切断することによって作製される断片以外のナトリウム利尿ペプチド断片であって、1つまたは複数のメチオニンが酸化されている断片に関する。BNP77〜108、BNP1〜76、BNP1〜108、プレ-プロBNPからなる群、並びにBNP79〜108、BNP77〜106、BNP39〜86、BNP53〜85、BNP66〜98、BNP30〜106、BNP11〜107、BNP9〜106、BNP69〜100、BNP76〜107、BNP69〜108、BNP80〜108、BNP81〜108、BNP83〜108、BNP30〜103、BNP3〜108、およびBNP79〜106からなる群より選択される1つまたは複数の実質的に精製されたBNPポリペプチドであって、1つまたは複数のメチオニンが酸化されたものが好ましい。これらのペプチドの1つもしくは複数におけるナトリウム利尿ペプチド断片の有無は、後述するように、免疫アッセイ法、質量分析、高速液体クロマトグラフィーおよびガスクロマトグラフィーによって測定してもよい。
【0061】
最も好ましくは、断片は、生体試料(例えば、血液、血清、または血漿試料、および最も好ましくはヒトの血液、血清、または血漿)中に「天然に存在する」。これは、断片がヒトまたは動物から得られる、補充されていない生体試料から得られるであろうことを意味する。「補充されていない」とは、一旦試料が得られたならば、断片またはその前駆体が外因的に加えられていない試料をいう。血液、血清、または血漿に天然に存在する断片の例を以下に記載してある。その他の好ましい断片は、プロ-ANP、プロ-BNP、プロ-CNP、および/またはこれらの断片でこのような試料を補って、試料中の内因性因子(例えば、プロテアーゼ)がさらなる断片を生じさせた結果として断片が存在する場合、血液、血清または血漿から「作製された」と言われる。また、ヒトの血液、血清、または血漿から作製される断片の例を以下に記載してある。断片が天然に存在するか、またはこのような試料から作製された場合は、断片は、血液、血清、または血漿中に「存在する」。
【0062】
本明細書に使用される、ポリペプチドに関して「精製された」という用語は、絶対的純度を必要としない。それよりも、これは、関心対象のポリペプチドが、その他のタンパク質と比較した存在量(質量に基づいて)が生体試料中のものよりも多い分離した環境にあることを表す。「分離した環境」は、単一の溶液、単一のゲル、単一の沈殿、その他などの単一の培地を意味する。生成されたポリペプチドは、例えば、研究室での合成、クロマトグラフィー、調製用の電気泳動法、遠心分離、沈澱、親和性精製、その他を含む多くの方法によって得てもよい。関心対象の1つまたは複数の「精製された」ポリペプチドは、好ましくは分離した環境のタンパク質含有量の少なくとも10%である。1つまたは複数の「実質的に精製された」ポリペプチドは、分離した環境のタンパク質含有量の少なくとも50%、より好ましくは分離した環境のタンパク含有量の少なくとも75%、最も好ましくは分離した環境のタンパク質含有量の少なくとも95%である。タンパク質含有量は、タンパク質標準としてウシ血清アルブミンを使用して、Hartree, Anal Biochem 48: 422-427 (1972)によって記載されたLowry et al., J. Biol. Chem. 193: 265, 1951の方法を改変したものを利用して決定される。
【0063】
本明細書に使用される「抗体」という用語は、抗原またはエピトープに特異的に結合することができる、免疫グロブリン遺伝子、もしくはこれらの断片に由来するか、その後にモデル化されるか、または実質的にコードされるペプチドまたはポリペプチドをいう。例えば、Fundamental Immunology, 3rd Edition, W.E. Paul, ed., Raven Press, N.Y. (1993); Wilson (1994) J. Immunol. Methods 175:267-273; Yarmush (1992) J. Biochem. Biophys. Methods 25:85-97を参照されたい。天然の免疫グロブリンは、免疫グロブリン遺伝子によってコードされる。これらは、κおよびλ軽鎖定常域遺伝子、α、γ、δ、ε、およびμ重鎖定常域遺伝子、並びに無数の免疫グロブリン可変領域遺伝子を含む。抗体という用語は、以下のものを含む、抗原結合性部分、すなわち抗原を結合する能力を保持する「抗原結合部位」(例えば、断片、部分列、相補性決定領域(CDR))を含む:(i)Fab断片、VL、VH、CL、およびCH1ドメインからなる一価断片;(ii)F(ab')2断片、ヒンジ領域でジスルフィド架橋によって連結された2つのFab断片を含む二価断片;(iii)VHおよびCH1ドメインからなるFd断片;(iv)抗体の単一アームのVLおよびVHドメインからなるFv断片、(v)VHドメインからなるdAb断片(Ward et al., (1989) Nature 341:544-546);scFvタンパク質(軽鎖可変領域と重鎖可変領域とがリンカーによって結合されている融合タンパク質である);並びに(vii)単離された相補性決定領域(CDR)。抗体の「Fc」部分とは、1つまたは複数の重鎖定常領域ドメイン、CH1、CH2、およびCH3を含むが、重鎖可変領域を含まない免疫グロブリン重鎖の部分をいう。分子生物学的な技術を使用して、単鎖抗体、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、キメラ抗体、ヒト化抗体、および免疫化によって、ハイブリドーマから、または組換えで(例えば、ファージディスプレイ方法によって)産生される抗体も、「抗体」という用語の言及に含まれる。
【0064】
抗体が結合しうる共通のエピトープを有する複数の断片に結合する個々の抗体(例えば、ファージディスプレイまたはモノクローナル抗体技術によって得られる)が得られるであろう。択一的に、個々の抗体をプールして所望のスペクトルの結合親和性を提供してもよい。「抗体」という用語は、存在するそれぞれの抗体分子が同一である(特に「個々の抗体」という)組成物か、または存在する抗体分子が異なっているであろう組成物(例えば、プールされた組成物またはポリクローナル組成物)の両方をいうものであってもよい。好ましい抗体は、「オムニクローナル(Omniclonal)」抗体である。抗体が混合物であるオムニクローナル抗体は、ファージディスプレイ・ライブラリーから選択される異なる抗体分子の混合物であって、それぞれの抗体は、109 M-1〜1010 M-1の最小限の親和性を有する標的抗原と特異的に結合する抗体分子の混合物である。
【0065】
「エピトープ」または「抗原決定基」は、Bおよび/またはT細胞が反応する抗原上の部位をいう。エピトープは、タンパク質の3次元の折りたたみによって並置される隣接するアミノ酸または非隣接アミノ酸の両方から形成することができる。隣接するアミノ酸から形成されるエピトープは、典型的には変性溶媒に対する曝露でも保持されるが、3次元折りたたみによって形成されるエピトープは、典型的には変性溶媒での処理により失われる。エピトープは、典型的には独特の空間高次構造内に少なくとも3つ、より通常には少なくとも5、または8〜10アミノ酸を含む。エピトープの空間高次構造を決定する方法は、例えばX線結晶学および2次元核磁気共鳴を含む。例えば、 Epitope Mapping Protocols in METHODS IN MOLECULAR BIOLOGY, Vol. 66, Glenn E. Morris, ed (1996)を参照されたい。
【0066】
「特異的に結合する」という用語は、抗体がその企図される標的のみと結合することを必ずしも必要としない。むしろ、非標的分子に対するその親和性と比較したときに、その企図される標的に対するその親和性が約2倍よりも大きい場合に、抗体は特異的に結合する。好ましくは、抗体の親和性は、非標的分子に対するその親和性よりも標的分子に対して少なくとも約5倍、好ましくは10倍、より好ましくは25倍、より好ましくは50倍、および最も好ましくは100倍以上大きい。好ましい態様において、抗体またはその他の結合剤と抗原との間の特異的な結合は、少なくとも106M-1の結合親和性を意味する。好ましい抗体は、少なくとも約107M-1、好ましくは108M-1〜109M-1または1010M-1の親和性で結合する。化合物分析物に対して「特異的に結合する」リガンドまたは受容体は、無関係な不均一な化合物の試料中の分析物の存在または量を決定するために使用することができる。従って、リガンドまたは受容体は、優先して特定の分析物と結合し、試料に存在するその他の化合物に対して有意な量で結合しない。例えば、抗体は、免疫アッセイ条件下で抗体を生じさせたエピトープを有する抗原分析物に対して特異的に結合する。
【0067】
免疫アッセイ法は、免疫アッセイ法により、同じアッセイ条件下で第2のポリペプチド群の同数の分子から得たシグナルよりも少なくとも10倍の第1のポリペプチド群の結合に関連したシグナルを提供する場合、第1のポリペプチド群と第2のポリペプチド群の間を「区別する」と言われる。より好ましくは、シグナルは、少なくとも20倍大きく、さらにより好ましくは少なくとも50倍大きく、および最も好ましくは少なくとも100倍大きい。
【0068】
抗体は、第1のポリペプチド群のメンバーに対するその親和性が、第2の群のメンバーに対するその親和性と比較したときに約2倍大きい場合、第1のポリペプチド群と第2のポリペプチド群の間を「区別する」と言われる。好ましくは、抗体の親和性は、第2の群のメンバーに対するその親和性よりも第1のポリペプチド群のメンバーに対して少なくとも約5倍、好ましくは10倍、より好ましくは25倍、より好ましくは50倍、および最も好ましくは100倍以上大きい。
【0069】
分子は、その存在および/または量が試料において構造的に関連するその他の分子を除外して検出されるときに、「特異的に測定される」。BNP79〜108、BNP77〜106、BNP39〜86、BNP53〜85、BNP66〜98、BNP30〜106、BNP11〜107、BNP9〜106、BNP69〜100、BNP76〜107、BNP69〜108、BNP80〜108、BNP81〜108、BNP83〜108、BNP30〜103、BNP3〜108、およびBNP79〜106からなる群より選択される1つのBNPポリペプチドは、測定により、群の中のその他の任意のBNPポリペプチドの測定と識別可能で、かつBNPポリペプチドBNP1〜76、BNP77〜108、BNP1〜108、およびプレ-プロBNPのときに特異的に測定される。BNP77〜106断片は、その存在および/または量が検出または定量化され、BNP77〜108などのその他のBNP断片の存在および/または量がBNP77〜106の特異的な測定を構成するシグナルに寄与しないときに、特異的に測定される。
【0070】
免疫アッセイからのシグナルは、抗体がシグナルを生じるために必要な複合体の形成に関与する場合、「抗体に対する結合に依存する」と言われる。例えば、固相抗体および第2の抗体複合体を使用して構築されたサンドイッチ免疫アッセイ法では、そのそれぞれが、分析物に結合してサンドイッチを形成しなければならず、固相抗体および第2抗体はそれぞれ、シグナルを生じるために必要な複合体の形成に関与する。単一の抗体が使用され、分析物が結合に関して分析物抱合体と競合するという競合免疫アッセイ法では、単一の抗体がシグナルを生じるために必要な複合体の形成に関与する。多数のさらなる免疫アッセイ法の構築が提供されるであろう。
【0071】
本明細書に使用される「複数」という用語は、ナトリウム利尿ペプチド断片およびBNPポリペプチドに関して、アミノ酸配列が異なる2つ以上の分子種をいう。
【0072】
「インタラクター」は、別の分子と特異的に結合する分子である。
【0073】
「免疫アッセイ法」は、分析物の特異性がナトリウム利尿ペプチド断片などの抗体およびリガンド間の特異的な結合によって与えられる試料中の分析物を検出する方法をいう。これは、抗体とリガンドとの間の特異的な結合を介して抗体分析物を検出する工程を含む。免疫アッセイ形式の詳細および特異的な免疫反応性を決定するために使用することができる条件については、Harlow and Lane (1988) ANTIBODIES, A LABORATORY MANUAL, Cold Spring Harbor Publications, New Yorkを参照されたい。「タグ付き免疫アッセイ法」は、分析物が直接検出されないが、タグまたは標識の検出を介して検出される免疫アッセイ法である。一般に、分析物には、それ自体にタグが付けられるか、または免疫アッセイ法では、それ自体にタグが付けられたタグ付き抗体と分析物の結合を含む。抗原および抗体を検出するために標識された試薬を使用する免疫アッセイ技術は、感度が高い。放射性同位元素または酵素で標識されたリガンドを使用する抗体のための固相アッセイ法(放射免疫アッセイ法;RIAおよび酵素結合免疫吸着アッセイ法;ELISA)は、多数を比較的短時間に行うことができるので、広く使用されている。RIAおよびELISAは、抗体(または抗原)に対して直接結合するアッセイ法であり、両方とも同じ原理で作用するが、特異的な結合を検出する手段が異なる。両方法に関して、アッセイ法を標準化するために、公知の抗原もしくは抗体、または両方の純粋な調製が必要である。抗原のためのRIAでは、その抗原に対する純粋な抗体が、通常125Iで放射性標識されており;ELISAでは、酵素が抗体に化学的に連結されている。非標識の成分は、この場合抗原であり、一定量の任意のタンパク質を吸着するプラスチック・マルチウェル・プレートのウェルなどの固体支持体に付着されている。標識抗体は、非特異的吸着がブロックされる条件下で無標識抗原と結合することができ、任意の結合していない抗体およびその他のタンパク質は、洗い流される。RIAにおける抗体結合は、被覆ウェルによって保持される放射能の量によって直接測定されるが、ELISAにおいては、結合は、無色の基質を有色の反応生成物に変換する反応によって検出される。標識された抗免疫グロブリン抗体は、また、無標識抗原を被覆したプレートに対する無標識抗体の結合を検出するために、RIAまたはELISAによって使用することができる。または、免疫アッセイは、SELDI MS免疫アッセイであってもよい。質量分析法に基づいた免疫アッセイ法では、質量に基づいて種々の捕獲されたポリペプチドの自動的な識別が提供される。
【0074】
「捕獲」または「サンドイッチELISA」(またはより一般には「抗原捕獲アッセイ法」と称される)として公知のELISAの改変は、サイトカインなどの分泌産物を検出するために使用することができる。抗原は、プラスチックプレートに直接付着されているのではなくむしろ、抗原特異的抗体がプレートに結合されている。これらは、抗原に高い親和性で結合し、したがって、初期混合物の非常に低濃度で存在する抗原にさえもプレートの表面上にこれを濃縮することができる。次いで、固定された第1の抗体に対する異なるエピトープを認識する別の標識抗体を使用して、結合した抗原を検出する。
【0075】
RIAおよびELISAは、両方とも純粋な標識抗原または抗体の結合に依存するので、未知組成の試料中の抗原または抗体の量を直接測定することができない。「競合阻害アッセイ法」では、未知試料中の特定の抗原の存在および量は、典型的にはプラスチック・ウェルに付着された抗体に対する結合について標識された参照抗原とこれが競合する能力によって決定される。検量線は、最初に公知の無標識標準標品の量を変化させて添加することによって構築され;次いで、本アッセイ法により、未知試料中の抗原の量を標準と比較して測定することができる。また、競合的結合アッセイ法は、適切な抗原をプレートに付着して、試験試料が標識された特異的抗体の結合を阻害する能力を測定することによって未知組成の試料中の抗体を測定するために使用することができる。
【0076】
抗体などの分子は、分子の量、その結合特異性、および/またはその品質、例えばその分解の状態に関して、「認定する(qualify)」ことができる。例えば、免疫アッセイキャリブレーター、例えばBNP免疫アッセイキャリブレーターにおいて、ペプチドを認定する方法は、質量分析によって、特にSELDIによって行うことができる。SELDIでは、これらを質量に従って識別することができ、および質量スペクトル・ピーク下の領域に基づいて定量化することができるので、これらのペプチドをより正確に識別することができる。質量分析では、質量によって分子を定量化するので、同じエピトープを含むが質量が異なるポリペプチドが検出され、区別され、および測定されるであろう。
【0077】
「検出可能な部分」または「標識」または「タグ」は、分光学的、光化学的、生化学的、免疫化学的、または化学的手段によって検出可能な組成物をいう。例えば、有用な標識は、32P、35S、蛍光色素、高電子密度試薬、酵素(例えば、ELISAにおいて共通して使用されるもの)、ビオチン-ストレプトアビジン、ジゴキシゲニン、抗血清もしくはモノクローナル抗体が利用できるハプテンおよびタンパク質、または標的に対する配列相補性を有する核酸分子を含む。検出可能な部分は、放射性、色素生産性、または蛍光性のシグナルなどの測定可能なシグナルを生じ、これらは、試料中の結合した検出可能な部分の量を定量化するために使用することができる。検出可能な部分は、共有結合で、またはイオン結合、ファンデルワールス結合、もしくは水素結合で、例えば放射性ヌクレオチドもしくはストレプトアビジンによって認識されるビオチン化されたヌクレオチドを、プライマーに組み入れるか、または付着させることができる。検出可能な部分は、直接的または間接的に検出することができる。間接的な検出は、検出可能な部分に第2の直接的または間接的に検出可能な部分を結合することを含むことができる。例えば、検出可能な部分は、ストレプトアビジンの結合パートナーであるビオチン、またはヌクレオチド配列が特異的にハイブリダイズすることができる相補配列の結合パートナーであるヌクレオチド配列などの、結合パートナーのリガンドであることができる。結合パートナーは、それ自身が直接検出可能であることができ、例えば、抗体をそれ自体蛍光分子で標識することができる。また、結合パートナーは、間接的に検出可能であることができ、例えば相補ヌクレオチド配列を有する核酸は、その他の標識された核酸分子とのハイブリダイゼーションを介して次々に検出可能である分枝したDNA分子の一部であることができる。(例えば、P. D. Fahrlander and A. Klausner, Bio/Technology 6:1165 (1988)を参照されたい)。シグナルの定量化は、例えばシンチレーション計数、濃度測定、またはフローサイトメトリーによって達成される。
【0078】
本明細書に記載されているアッセイ法を行うための装置は、好ましくは、複数の分離した、独立して位置参照可能な(addressable)部位、または「診断ゾーン」を含み、そのそれぞれが関心対象の特定のペプチドまたはペプチドのセットに関連する。例えば、各々の複数の分離したゾーンは、異なるペプチドが結合するための受容体(例えば、抗体)を含んでいてもよい。または、1つまたは複数のゾーンは、それぞれ複数のペプチドが結合するための受容体(例えば、抗体)を含んでいてもよい。試料の装置との反応に続いて、シグナルが診断ゾーンから生じ、次いで、これを関心対象のペプチドの存在または量に相関させてもよい。一部の例では、「診断ゾーン」は、「位置参照可能な部位」とも称される。
【0079】
本明細書に使用される「分離した」という用語は、隣接しない表面の領域をいう。すなわち、2つの領域は、完全にどちらの領域の一部でもない辺縁が、各々の2つの領域を囲む場合に互いに分離されている。本明細書に使用される「独立して位置参照可能な」という用語は、特異的なシグナルが得られるであろう表面の分離した領域をいう。また、抗体ゾーンは、互いに独立していることができるが、表面上で互いに接触していることもできる。例えば、単一抗原の異なるエピトープを認識する抗体は、それぞれ複数の位置参照可能な部位を含むバイオチップの表面に付着することができ、各々の部位が付着した抗体を有する。
【0080】
「試料」という用語は、1つもしくは複数の分子の有無が試験される生体分子の分量をいう。
【0081】
本明細書に使用される「試験試料」という用語は、関心対象の1つもしくは複数の分析物の存在または量が未知であり、アッセイ法、好ましくは免疫アッセイ法で決定される試料ををいう。好ましくは、試験試料は、患者などの被験者の診断、予後、または評価の目的で得られた体液である。ある態様において、このような試料は、持続的な症状の結果または症状に対する治療処方計画の効果を決定するために得られてもよい。好ましい試験試料は、血液、血清、血漿、脳脊髄液、尿、および唾液を含む。一部の試験試料は、分画または精製手順、例えば全血の血清または血漿成分への分離後に、より容易に解析される。好ましい試料は、細菌、ウイルス、並びにイヌおよびネコなどの動物から得てもよい。特に好ましい試料は、ヒトから得られる。対照的に、「標準試料」は、関心対象の1つもしくは複数の分析物の存在または量が、1つまたは複数の分析物をアッセイする前に既知である試料をいう。患者から得られた一部の試験試料は、「試験試料」と称される。
【0082】
本明細書に使用される「疾患試料」という用語は、所与の疾患に罹患していることが決定された被験者から得られた組織試料をいう。臨床診断のための方法は、当業者に周知である。例えば、Kelley's Textbook of Internal Medicine, 4th Ed., Lippincott Williams & Wilkins, Philadelphia, PA, 2000; The Merck Manual of Diagnosis and Therapy, 17th Ed., Merck Research Laboratories, Whitehouse Station, N.J., 1999.を参照されたい。「疾患」は、医療分野において、脳卒中、心筋梗塞、およびその他の有害な健康事象などの疾患に関連した有害な結果として一般に受け入れられる事象を含む。
【0083】
BNPの病態的レベルとは、病気に罹患していない個体集団の平均レベルと比較して、患者におけるBNPポリペプチドの統計学的に有意な変化(p≦0.05)、通常は増加をいう。BNPに関連した病態は、少なくとも1つのBNPポリペプチドまたはこれらの混合物の病態レベルによるか、またはさもなければ関係する疾患を意味する。このような疾患は、心臓血管疾患、例えば、脳卒中、鬱血性心不全(CHF)、心臓虚血、全身性の高血圧、急性心筋梗塞症、および急性冠動脈症候群を含む。
【0084】
関心対象の1つもしくは複数のナトリウム利尿ペプチド断片の存在または量は、疾患、または疾患に関連した将来の有害結果の可能性の有無に関連しているであろう。しかし、アッセイ法から得られたシグナルは、1つもしくは複数のナトリウム利尿ペプチド断片の存在または量に関連する必要はなく;むしろ、シグナルは、疾患、または疾患に関連した将来の有害な結果の可能性の有無に直接関連していてもよい。例えば、シグナルxのレベルは、y pg/mLの断片が試料中に存在することを示していてもよい。次いで、表は、y pg/mLのその断片が鬱血性心不全を示すことを示してもよい。断片がどのくらい存在するかを決定せずに、単にシグナルxのレベルを鬱血性心不全と直接関連づけることも同程度に有効であろう。このようなシグナルは、好ましくは本発明の抗体を使用する免疫アッセイから得られるが、その他の方法も周知である。
【0085】
本明細書に使用される「予測されていないポリペプチド」という用語は、ポリペプチドが、解析される生体試料の特定のタイプにおいて、天然に存在することが以前に証明されていなかったことをいう。ポリペプチドは、好ましくは血液、血清、または血漿試料、および最も好ましくはヒトの血、血清、または血漿試料にあることが予測されていない。
【0086】
本明細書に使用される「アミノ酸配列を決定する」という用語は、特定のポリペプチドのアミノ酸配列が得られる方法をいう。このような方法は、直接のシーケンシング(例えば、エドマン分解によって);質量分析による同定(これには、予測された、または既知のポリペプチド配列に対して観察されたm/zを比較すること(例えば、Cagney and Emili, Nature Biotechnol. 20: 163-170 (2002)を参照されたい)を含みうる);ペプチドマッピングなどを含んでもよい。
【0087】
本明細書に使用される「質量分析」または「MS」という用語は、これらの質量-電荷比、または「m/z」に基づいてイオンをふるい分け、検出し、および測定する方法をいう。一般に、関心対象の1つまたは複数の分子を電離して、その後にイオンを質量分光写真計測器に導入し、そこで磁場および電場の組み合わせによって、イオンが質量(「m」)および電荷(「z」)に依存的に間隔内の経路を追従する。例えば、「Mass Spectrometry From Surfaces」と題する米国特許第6,204,500号, 「Methods and Apparatus for Tandem Mass Spectrometry」と題する米国特許第6,107,623号、「DNA Diagnostics Based On Mass Spectrometry」と題する米国特許第6,268,144号、「Surface-Enhanced Photolabile Attachment And Release For Desorption And Detection Of Analytes」と題する米国特許第6,124,137号、Wright et al., 「Proteinchip surface enhanced laser desorption/ionization (SELDI) mass spectrometry:a novel protein biochip technology for detection of prostate cancer biomarkers in complex protein mixtures」, Prostate Cancer and Prostatic Diseases 2: 264-76 (1999);および Merchant and Weinberger, 「Recent advancements in surface-enhanced laser desorption/ionization-time of flight-mass spectrometry」, Electrophoresis 21:1164-67 (2000)を参照されたい(それぞれ、全ての表、図、および特許請求の範囲を含むその全体が参照として本明細書に組み入れられる)。
【0088】
例えば、「四極子」または「四極子イオントラップ」計測器では、振動する高周波場のイオンが、電極間に印加されたDC電位、RFシグナルの振幅、およびm/zに比例した力を受ける。電圧および振幅は、特定のm/zを有するイオンだけが四極子の長さを進むが、その他の全てのイオンは偏るように選択することができる。従って、四極子計測器は、計測器に注入されるイオンの「マスフィルター」として、および「質量検出器」としての両方として作用することができる。
【0089】
そのうえ、「タンデム型質量分析」、または「MS/MS」を使用することによってMS技術の分解能を増強することができることが多い。この技術において、関心対象の分子から生成される前駆体イオンまたはイオン群は、MS計測器内でフィルターをかけて、その後にこれらの前駆体イオンを断片化して1つまたは複数の断片イオンを得て、次いで第2のMS手順で解析してもよい。前駆体イオンの精選によって、関心対象の一定の分析物によって生成されたイオンだけが断片化チャンバーに渡され、ここで不活性ガスの原子と衝突が生じて断片イオンを生成する。前駆体および断片イオンは両方とも、所与のイオン化/断片化条件セット下で再現性のある様式で生成されるので、MS/MS技術は、極めて強力な解析ツールを提供することができる。例えば、濾過/断片化の組み合わせは、妨害物質を除去するために使用することができ、特に生体試料などの複合体試料において有用であろう。
【0090】
加えて、マトリックス支援レーザー脱離イオン化と飛行時間型のアナライザー(「MALDI-TOF」)との組み合わせ、または表面増強レーザー脱離イオン化と飛行時間型アナライザー(「SELDI-TOF」)との組み合わせなどの最近の技術の進歩により、非常に短いイオン・パルスでフェムトモル量で分析物を解析することができる。また、飛行時間型のアナライザーを直列型MSと組み合わせた質量分析計が当業者に周知である。さらに、MS/MS-MALDI-TOFおよびMS/MS-SELDI-TOFを含む、複数の質量分析工程を「MS/MS」および「MS/MS-TOF」に組み合わせることができる。タンパク質の特性付けおよび同定のための好ましい装置および方法は、米国特許出願第2002/0182649号;米国特許第6,225,047号; Issaq et al., Biochem. Biophys. Res. Commun. 292: 587-92 (2002);およびIssaq et al., Anal. Chem. 75: 149A-155A (2003)に開示されており、それぞれは、その全体が参照として本明細書に組み入れられる。
【0091】
イオンは、電子イオン化、化学イオン化、高速原子衝撃、フィールド脱着、およびマトリックス支援レーザー脱離イオン化(「MALDI」)、表面増強レーザー脱離イオン化(「SELDI」)、光子イオン化、エレクトロスプレー・イオン化、および誘導結合プラズマを含むが、これらに限定されない種々の方法を使用して生成させることができる。
【0092】
「プローブ」は、本発明の文脈において、気相式イオン分光計(例えば、質量分析計)のプローブ・インタフェースに係合するために、およびイオン化のためにイオン化エネルギーに対して分析物を提示し、かつ質量分析計などの気相式イオン分光計に導入するために適応された装置をいう。「プローブ」は、一般に分析物がイオン化エネルギーの供与源に提示される試料提示表面を含む固体の基体(柔軟または強固なもの)を含む。一般に、吸着剤表面を有するプローブを、試料中に存在するであろう生物マーカーを吸着剤に結合させるために十分な期間、試料と接触させる。インキュベーション期間の後、基体を洗浄して結合していない材料を除去する。任意の適切な洗浄溶液を使用することができ;好ましくは、水溶液が使用される。分子が結合したままである程度は、洗浄のストリンジェンシーを調整することによって操作することができる。洗浄溶液の溶出特性は、例えば、pH、イオン強度、疎水性、カオトロピズムの程度、洗浄剤強度、および温度に依存するであろう。プローブがSEACおよびSENDの両特性(本明細書に記載されているとおり)を有する限り、結合した生物マーカーを有する基体にエネルギー吸収分子が適用される。
【0093】
「表面増強レーザー脱離/イオン化」または「SELDI」は、脱離/イオン化気相式のイオン分光測定法(例えば、質量分析)をいい、本方法では、分析物が、気相式イオン分光計のプローブ・インタフェースに係合するSELDIプローブの表面に捕獲される。「SELDI MS」では、気相式イオン分光計は、質量分析計である。SELDI技術は、例えば米国特許第5,719,060号(Hutchens and Yip)および米国特許第6,225,047号(Hutchens and Yip)に記載されている。
【0094】
SELDIの一つのバージョンは、「親和性質量分析」と呼ばれている。「表面増強親和性捕獲」または「SEAC」とも呼ばれる。このバージョンは、物質と分析物との間の非共有結合性の親和性相互作用(吸着)を介して分析物を捕獲する、プローブ表面上の物質を有するプローブの使用を含む。物質は、「吸着剤」、「捕獲試薬」、「親和性試薬」、または「結合部分」とさまざまに呼ばれている。このようなプローブは、「親和性捕獲プローブ」および「吸着剤表面」を有するものと称することができる。捕獲試薬は、分析物を結合することができる任意の物質であることができる。捕獲試薬は、選択的表面の基体に対して直接付着してもよく、または基体は、例えば共有結合もしくは配位共有結合を形成する反応を介して捕獲試薬を結合することができる反応性部分を有する反応性表面を有してもよい。エポキシドおよびカルボジイミジゾールは、抗体または細胞受容体などのポリペプチド捕獲試薬を共有結合性に結合するための有用な反応性部分である。ニトリロ酢酸およびイミノ二酢酸は、キレート薬として機能して金属イオンに結合し、ヒスチジン含有ペプチドと非共有結合的に相互作用するものとして機能する有用な反応性部分である。吸着剤は、一般にクロマトグラフィーの吸着剤および生物特異的吸着剤として分類されている。
【0095】
「クロマトグラフィー吸着剤」は、典型的にはクロマトグラフィーにおいて使用される吸着材料を含む。クロマトグラフィー吸着剤は、例えば、イオン交換物質、金属キレーター(例えば、ニトリロ酢酸またはイミノ二酢酸)、固定された金属キレート、疎水的相互作用吸着剤、親水性相互作用吸着剤、染料、単純な生体分子(例えば、ヌクレオチド、アミノ酸、単糖、および脂肪酸)、および混合様式の吸着剤(例えば、疎水性引力/静電反発吸着剤)を含む。
【0096】
「生物特異的吸着剤」は、特異的に生体分子と結合する分子を含む。典型的には、これらは、生体分子、例えば核酸分子(例えば、アプタマー)、ポリペプチド、多糖体、脂質、ステロイド、またはこれらの抱合体(例えば、糖タンパク質、リポタンパク質、糖脂質、核酸(例えば、DNA)-タンパク質複合体)を含む。ある例では、生物特異的吸着剤は、多タンパク質の複合体、生体膜、またはウイルスなどの巨大分子構造であることができる。生物特異的吸着剤の例は、抗体、受容体タンパク質、および核酸である。生物特異的吸着剤は、典型的には、クロマトグラフィーの吸着剤よりも標的分析物に対して高い特異性を有する。SELDIに使用される吸着剤のさらなる例は、米国特許第6,225,047号において見出される。「生物選択的(bioselective)吸着剤」は、少なくとも10-8Mの親和性を有する分析物と結合する吸着剤をいう。
【0097】
いくつかの態様において、SEACプローブは、選択の吸着剤を提供するように修飾することができる予め活性化された表面として提供される。例えば、あるプローブでは、共有結合を介して生体分子に結合することができる反応性部分が提供される。エポキシドおよびカルボジイミジゾールは、抗体または細胞受容体などの生物特異的吸着剤に共有結合性に結合する有用な反応性部分である。
【0098】
「吸着」は、吸着剤または捕獲試薬に対する分析物の検出可能な非共有結合をいう。
【0099】
SELDIのもう一つのバージョンは、表面増強ニート脱離(Surface-Enhanced Neat Desorption:SEND)であり、これは、プローブ表面(「SENDプローブ」)に対して化学的に結合されるエネルギー吸収分子を含むプローブの使用を含む。「エネルギー吸収分子」(EAM)の語は、レーザー脱離/イオン化源からエネルギーを吸収することができ、その後に、これと接触する分析物分子の脱離およびイオン化に寄与する分子を意味する。EAMのカテゴリーには、MALDIに使用される分子を含み、往々にして「マトリックス」と称され、ケイ皮酸誘導体、シナピン酸(SPA)、シアノヒドロキシケイ皮酸(CHCA)、およびジヒドロキシ安息香酸、フェルラ酸、およびヒドロキシアセトフェノン誘導体によって例示される。ある態様において、エネルギー吸収分子は、直鎖または架橋重合体、例えばポリメタクリレートに組み入れられる。例えば、組成物は、α-シアノ-4-メタクリロイルオキシケイ皮酸およびアクリラートの共重合体であることができる。もう一つの態様において、組成物は、α-シアノ-4-メタクリロイルオキシケイ皮酸、アクリラート、および3-(トリ-エトキシ)シリルプロピルメタクリラートの共重合体である。もう一つの態様において、組成物は、α-シアノ-4-メタクリロイルオキシケイ皮酸およびオクタデシルメタクリラート(「C18 SEND」)の共重合体である。SENDは、米国特許第6,124,137号およびPCT国際公開公報第03/64594号(Kitagawa, 「Monomers And Polymers Having Energy Absorbing Moieties Of Use In Desorption/Ionization Of Analytes」, 2003年8月7日)においてさらに記載されている。
【0100】
SEAC/SENDは、捕獲試薬およびエネルギー吸収分子の両者が試料提示表面に付着されたSELDIのバージョンである。従って、SEAC/SENDプローブは、外部マトリックスを適用する必要なく、親和性捕獲による分析物の捕獲、およびイオン化/脱離を可能にする。C18 SENDバイオチップは、捕獲試薬として機能するC18部分とエネルギー吸収部分として機能するCHCA部分とを含むSEAC/SENDのバージョンである。
【0101】
SELDIのもう一つのバージョンは、表面増強感光性付着および遊離(Surface-Enhanced Photolabile Attachment and Release:SEPAR)と呼ばれ、分析物を共有結合性に結合することができ、次いで、光に対して、例えばレーザー光に対して曝露後にその部分の感光性結合を断つことによって分析物を遊離させることができる、表面に付着された部分を有するプローブの使用を含む(米国特許第5,719,060号を参照されたい)。SEPARおよびSELDIのその他の形態は、本発明に従って生物マーカーまたは生物マーカープロフィールを検出するために容易に適応される。
【0102】
もう一つの質量分析方法において、生物マーカーは、標的分子に結合するクロマトグラフィー樹脂に対して最初に捕獲させることができる。例えば、樹脂は、抗BNP抗体によって誘導体化することができる。または、この方法は、陽イオン交換樹脂に適用する前に陰イオン交換樹脂に対する試料の分画を先に行うことができる。樹脂からの溶出後に、試料をMALDI、エレクトロスプレー、または質量分析のための別のイオン化法によって解析することができる。もう一つの変形例において、陰イオン交換樹脂で分画し、直接MALDIまたはエレクトロスプレー質量分析によって検出することができる。さらにもう一つの方法において、生物マーカーを結合する抗体を含む免疫クロマトグラフィー樹脂で生物マーカーを捕獲して、結合していない材料を除去するために樹脂を洗浄し、樹脂から生物マーカーを溶出し、MALDI、SELDI、エレクトロスプレー質量分析、または別のイオン化質量分析方法によって溶出された生物マーカーを検出することができる。
【0103】
「溶出剤」または「洗浄溶液」は、吸着剤表面に対する分析物の吸着に影響を及ぼし、もしくは修飾し、および/または結合していない物質を表面から除去するために使用される薬剤、典型的には溶液をいう。溶出剤の溶出特性は、例えば、pH、イオン強度、疎水性、カオトロピズムの程度、洗浄剤強度、および温度に依存するであろう。
【0104】
「分析物」は、検出されることが望まれる任意の試料の成分をいう。本用語は、試料中の単一成分または複数の成分をいうことができる。
【0105】
親和性捕獲プローブの吸着表面に吸着される試料の「複雑さ」は、吸着される異なるタンパク質の種類の数を意味する。
【0106】
「分子結合パートナー」および「特異的な結合パートナー」は、特異的な結合を示す分子の対、典型的には生体分子の対をいう。分子結合パートナーは、受容体およびリガンド、抗体および抗原、ビオチンおよびアビジン、並びにビオチンおよびストレプトアビジンを含むが、これらに限定されない。
【0107】
「モニタリング」は、複数の時点でのパラメーターの変化を記録することをいう。任意には、パラメーターは、連続的に変化する。
【0108】
「固体支持体」は、捕獲試薬、反応性の部分、もしくはエネルギー吸収種などの化学的部分で誘導体化することができるか、またはさもなければ付着することができる固体成分をいう。例示的な固体支持体は、チップ(例えば、プローブ)、マイクロタイタープレート、およびクロマトグラフィー樹脂を含む。
【0109】
「チップ」は、化学的部分が付着することができる一般に平面の表面を有する固体支持体をいう。また、プローブ・インタフェースを係合するために適応されるチップは、「プローブ」とも呼ばれる。
【0110】
「バイオチップ」は、化学的部分が付着されているチップをいう。往々にして、バイオチップの表面は、複数の位置参照可能な部分を含み、そのそれぞれの部位には、そこに付着された化学的部分を有する。
【0111】
「タンパク質バイオチップ」は、ポリペプチドの捕獲のために適応されるバイオチップをいう。Ciphergen Biosystems, Inc.によって製造されるタンパク質バイオチップは、位置参照可能な部位で付着したクロマトグラフィーまたは生物特異的吸着剤を有する表面を含む。Ciphergen ProteinChip(登録商標)アレイは、NP20(親水性);H4およびH50(疎水性);SAX-2、Q-10およびLSAX-30(陰イオン交換);WCX-2、CM-10およびLWCX-30(陽イオン交換);IMAC-3、IMAC-30、およびIMAC 40(金属キレート);並びにPS-10、PS-20(カルボジイミジゾールと反応性の表面、エキスポキシド(expoxide))およびPG-20(カルボジイミジゾールを介して結合されたタンパク質G)を含む。これらのタンパク質バイオチップは、条片(strip)の形態でアルミニウム基体を含む。条片の表面は、二酸化ケイ素で被覆されている。NP-20バイオチップの場合、酸化ケイ素は、親水性のタンパク質を捕獲するための親水性の吸着剤として機能する。疎水性のプロテインチップアレイは、イソプロピルまたはノニルフェノキシ-ポリ(エチレングリコール)メタクリラートの官能性を有する。陰イオン交換プロテインチップアレイは、四級アンモニウム官能性を有する。陽イオン交換プロテインチップアレイは、カルボキシラート官能性を有する。固定された金属キレート・プロテインチップアレイは、キレート化によって銅、ニッケル、亜鉛、およびガリウムなどの遷移金属イオンを吸着するニトリロ酢酸官能基を有する。事前に活性化されたプロテインチップアレイは、共有結合のためのタンパク質上の基と反応することができるカルボジイミジゾールまたはエポキシド官能基を有する。
【0112】
H4、H50、SAX-2、Q-10、WCX-2、CM-10、IMAC-3、IMAC-30、PS-10、およびPS-20バイオチップは、バイオチップの表面に対して物理的に付着されたか、またはバイオチップの表面に対してシランを介して共有結合で付着されたヒドロゲル形態の官能性架橋重合体をさらに含む。H4バイオチップは、疎水性の結合のためのイソプロピル官能性を有する。H50バイオチップは、疎水性の結合のためのノニルフェノキシ-ポリ(エチレングリコール)メタクリラートを有する。SAX-2およびQ-10バイオチップは、陰イオン交換のための四級アンモニウム官能性を有する。WCX-2およびCM-10バイオチップは、陽イオン交換のためのカルボン酸塩官能性を有する。IMAC-3およびIMAC-30バイオチップは、キレート化によってCu++およびNi++などの遷移金属イオンを吸着するニトリロ酢酸官能性を有する。これらの固定された金属イオンは、配位結合によるペプチドおよびタンパク質の吸着が可能である。PS-10バイオチップは、共有結合のためのタンパク質上の基と反応することができるカルボジイミジゾール官能基を有する。PS-20バイオチップは、タンパク質との共有結合のためのエポキシド官能基を有する。PSシリーズのバイオチップは、抗体、受容体、レクチン、ヘパリン、プロテインA、ビオチン/ストレプトアビジンなどの生物特異的吸着剤のチップ表面(ここでは、これらは、試料から分析物を特異的に捕獲するように機能する)に対する結合に有用である。PG-20バイオチップは、プロテインGが付着されたPS-20チップである。LSAX-30(陰イオン交換)、LWCX-30(陽イオン交換)、およびIMAC-40(金属キレート)バイオチップは、これらの表面上に官能性ラテックスビーズを有する。このようなバイオチップは、以下においてさらに記載されている:WO 00/66265(Rich et al., 「Probes for a Gas Phase Ion Spectrometer」, 2000年11月9日);WO 00/67293 (Beecher et al.,「Sample Holder with Hydrophobic Coating for Gas Phase Mass Spectrometer」, 2000年11月9日);米国特許出願第2003 0032043 A1号(Pohl and Papanu, 「Latex Based Adsorbent Chip」, 2002年7月16日)および米国特許出願第60/350,110号(Um et al., 「Hydrophobic Surface Chip」, 2001年11月8日);米国特許出願第60/367,837号(Boschetti et al., 「Biochips With Surfaces Coated With Polysaccharide-Based Hydrogels」, 2002年5月5日)、および「Photocrosslinked Hydrogel Surface Coatings」と題する米国特許出願(Huang et al.、2003年2月21日出願)。
【0113】
このようなバイオチップは、さらに以下において記載されている:米国特許第6,579,719号(Hutchens and Yip, 「Retentate Chromatography」, 2003年6月17日);PCT国際公開公報第00/66265号(Rich et al., 「Probes for a Gas Phase Ion Spectrometer」, 2000年11月9日);米国特許第6,555,813号(Beecher et al. ,「Sample Holder with Hydrophobic Coating for Gas Phase Mass Spectrometer」, 2003年4月29日);米国特許出願第2003 0032043 A1号(Pohl and Papanu, 「Latex Based Adsorbent Chip」,2002年7月16日);並びにPCT国際公開公報第03/040700号(Um et al., 「Hydrophobic Surface Chip」, 2003年5月15日);米国仮特許出願第60/367,837号(Boschetti et al., "Biochips With Surfaces Coated With Polysaccharide-Based Hydrogels」, 2002年5月5日)および「Photocrosslinked Hydrogel Surface Coatings」と題する米国特許出願第60/448,467号(Huang et al.、2003年2月21日出願)。
【0114】
ポリペプチドの捕獲のために適応される多くのタンパク質バイオチップが、当技術分野に記載されている。これらは、例えばCiphergen Biosystems(Fremont, CA)、Packard BioScience Company(Meriden CT)、Zyomyx(Hayward, CA)、Phylos(Lexington, MA)およびProcognia(Sense Proteomic Limited)(Maidenhead, Berkshire, UK)によって製造されるタンパク質バイオチップを含む。このようなタンパク質バイオチップの例は、以下の特許または特許出願に記載されている:米国特許第6,225,047号(Hutchens and Yip, 「Use of retentate chromatography to generate difference maps」, 2001年5月1日);国際公開公報第99/51773号(Kuimelis and Wagner, 「Addressable protein arrays」, 1999年10月14日);米国特許第6,329,209号(Wagner et al., 「Arrays of protein-capture agents and methods of use thereof」, 2001年12月11日)、国際公開公報第00/56934号(Englert et al., 「Continuous porous matrix arrays」, 2000年9月28日)、米国特許公報第2003/0180957 A1号(Koopman et al., 「Target and method」, 2003年9月25日)、および米国特許公報第2003/0173513 A1号(Koopman et al., 「Probe for mass spectrometry」, 2003年9月18日)。
【0115】
バイオチップで捕獲することにより、分析物は、例えば気相式イオン分光測定法、光学的方法、電気化学的方法、原子力顕微鏡観察、および高周波方法から選択される種々の検査法によって検出することができる。気相式イオン分光測定方法は、本明細書に記載されている。質量分析法、特にSELDIの使用は、特に興味が持たれる。光学的方法は、例えば蛍光、発光、化学発光、吸光度、反射率、透過率、複屈折、または屈折率の検出(例えば、表面プラスモン共鳴、エリプソメトリー、共鳴ミラー法(resonant mirror method)、格子カプラー導波管法(grating coupler waveguide method)、もしくは干渉計)を含む。光学的方法は、顕微鏡観察(共焦点および非共焦点)、イメージング法、および非イメージング法を含む。種々の形式の免疫アッセイ法(例えば、ELISA)が、固相上に捕獲された分析物の検出のための普及した方法である。電気化学的な方法は、電解電量法(voltametry)および電流測定法(amperometry)を含む。高周波方法は、多極反響分光法(multipolar resonance spectroscopy)を含む。
【0116】
上記した本発明の概要は、限定するものではなく、本発明のその他の特徴および効果が、以下の詳細な説明から、および請求の範囲から明らかであろう。
【0117】
発明の詳細な説明
I BNPの予後および診断のマーカー並びに特異的な断片としてのナトリウム利尿ペプチド断片の一般的な使用
ナトリウム利尿ペプチドの血液のレベルの増大は、特定の疾病状態において見いだされており、脳卒中、鬱血性心不全(CHF)、心臓虚血、全身性高血圧、および急性心筋梗塞症を含む疾患の病態生理学における役割を示唆している。例えば、WO 02/089657; WO 02/083913; WO 03/016910; Hunt et al., Biochem. Biophys. Res. Comm. 214: 1175-83 (1995); Venugopal, J. Clin. Pharm. Ther. 26: 15-31, 2001;および Kalra etal., Circulation 107: 571-3, 2003を参照されたい;これらのそれぞれは、全ての表、図、および特許請求の範囲を含むその全体が本明細書に組み入れられる。ナトリウム利尿ペプチドは、単独で、集団で、および/またはさらなるタンパク質と共に、種々の心血管症状の疾患マーカーおよび予後の指標として役立ち得る。
【0118】
循環からのナトリウム利尿ペプチドの除去は、分解経路に関与することが報告されている。実際に、一定の状況下でナトリウム利尿ペプチドを切断する中性エンドペプチダーゼの阻害剤は、一定の心臓血管疾患の治療の見込みを持つことが示唆されている。例えば、Trindade and Rouleau, Heart Fail. Monit. 2: 2-7, 2001を参照されたい。しかし、臨床試料におけるナトリウム利尿ペプチドの測定は、一般に成熟BNP、ANP、および/またはCNP;これらの前駆体分子(すなわち、プロ-BNP、プロ-ANP、およびプロ-CNP);並びに成熟ナトリウム利尿ペプチドを提供するためプロフォームの切断により生じる断片の測定に集中していた。本発明は、生体試料中でのこれらの分子の分解によって生じた多くの断片を最初に記載する。以下では主にBNP断片に関して記載してあるが、本明細書に記載されている一般的な概念は、ANPおよびCNPに関連した断片にも同等にに適用される。
【0119】
ナトリウム利尿ペプチドの1つまたは複数を測定するときに、臨床試料中に存在するであろう分解断片を考慮しないと、いずれの診断法または予後判定法の精度に関しても深刻な結果をもたらすであろう。例えば、単純な場合を考えると、サンドイッチ免疫アッセイ法がBNPのために提供される場合、存在するBNPの全てが2つの断片に分解されており、そのうちの一方が固相抗体に対応するエピトープを含み、そのうちの他方が免疫アッセイ法のシグナル生成のために使用される抗体抱合体に対応するエピトープを含む。存在するBNP断片は、両方のエピトープを含まないので、免疫アッセイ法からシグナルは得られず、したがって、試料中にもともとBNPが存在しなかったという誤った仮定に至ってしまう。
【0120】
同様に、もう一つの単純なケースが考えられるであろう。競合アッセイでは、溶液中に存在するBNPが固相抗体に対する結合に関して標識されたBNPと競合し、固相は、前述の断片の両方を認識するであろうポリクローナル抗体によって構成されると考える。それぞれが抗体固相と結合し、結合に関して標識されたBNPと競合する。このような状況は、試料中に実際に存在する2倍のBNP濃度が検出されるという誤った仮定に至るであろう。本明細書に記載されているとおり、本状況は、実際にこれらの単純な状況よりも非常に複雑であろう。このような断片の産生は、とりわけ、組織内へのナトリウム利尿ペプチドの放出を誘発する事象の開始と、試料を入手または解析する時間との間の経過時間;試料獲得と試料を解析した時間との間の経過時間;問題の組織試料のタイプ;貯蔵条件;存在するタンパク質分解酵素の量などの関数でありうる持続的なプロセスであることから、測定誤差の程度に影響しうる。
【0121】
以前に公知のBNPポリペプチド、プレ-プロ-BNP、プロ-BNP(BNP1〜108)、プロ-断片(BNP 1〜76)、および成熟BNP(BNP77〜108)は、アミノ酸修飾およびエンドプロテアーゼ分解性切断のための複数の部位を含む。以下の新たな断片が観察された:BNP79〜108、BNP77〜106、BNP39〜86、BNP53〜85、BNP66〜98、BNP30〜106、BNP11〜107、BNP9〜106、BNP69〜100、BNP76〜107、BNP69〜108、BNP80〜108、BNP81〜108、BNP83〜108、BNP30〜103、BNP3〜108、およびBNP79〜106。図1は、BNP77〜108を示す。ヒト血清または血漿において同定される好ましい分解断片は、以下を含む:BNP77〜106、BNP79〜106、BNP76〜107、BNP69〜108、BNP79〜108、BNP80〜108、BNP81〜108、BNP83〜108、BNP39〜86、BNP53〜85、BNP66〜98、BNP30〜103、BNP11〜107、BNP9〜106、およびBNP3〜108。BNP80〜108、BNP30〜106、BNP86〜108、BNP77〜107、BNP77〜106、BNP77〜103、BNP1〜13、およびBNP62〜76は、本発明のある態様のこれらの個々に精製された形態において除外される。このようなアミノ酸を含む断片のメチオニン残基は、酸化されて、分解パターンがさらに複雑になる。
【0122】
あるBNP断片の質量-電荷比は、以下の通りである:M3464 Da-BNP77〜108、M3280 Da-BNP79〜108、M3170.8 Da-BNP77〜106、M5377.3 Da-BNP39〜86、M3660 Da-BNP53〜85、M3674.4 Da-BNP66〜98、M8215.5 Da-BNP30〜103、M10875.5 Da-BNP11〜107、M10877.4 Da-BNP9〜106。質量‐電荷比は、Ciphergen Biosystems, Inc.のPBS II質量分析計で作製される質量スペクトルから決定した。この計測器は、約+/-0.15パーセントの質量精度を有する。さらに、計測器は、約400〜1000m/dmの質量分解能を有し、mは質量であり、dmは0.5ピークの高さの質量スペクトル・ピーク幅である。生物マーカーの質量-電荷比は、Biomarker Wizard(商標)のソフトウェアを使用して決定した(Ciphergen Biosystems, Inc.)。Biomarker Wizardは、クラスターの最大および最小の質量-電荷比をとり、2つに分けるPBSIIによって定まる、解析した全てのスペクトルからの同じピークの質量-電荷比をクラスター形成することによって、生物マーカーに対して質量-電荷比を割り当てる。従って、提供される質量は、これらの仕様を反映する。
【0123】
メチオニン残基が酸化された形態を含む上述したBNP断片を考慮しないと、存在するBNPの量の誤った評価を生じる可能性があり、診断または予後に使用される有用な情報がなくなってしまうであろう。上記のように、このような断片の産生は、とりわけ組織内へのナトリウム利尿ペプチドの放出を誘発する事象の開始と試料を入手または解析する時間との間の経過時間;試料獲得と試料を解析した時間との間の経過時間;問題の組織試料のタイプ;貯蔵条件;存在するタンパク質分解酵素の量;その他の関数でありうる持続的なプロセスである。分解の相対的なパターンの決定は、有害事象の時間;プロテアーゼ阻害剤での治療の成功(またはこれらの欠如);試料記憶が十分だったかどうか、その他を表すであろう。そのうえ、個々の断片はまた、ナトリウム利尿ペプチドと無関係なさらなるマーカーの有無にかかわらず、マーカーのパネルにおけるマーカーとしての使用を見いだすであろう。さらなる無関係なマーカーは、WO 02/089657;WO 02/083913;およびWO 03/016910のものを含む(それぞれ、全ての表、図、および請求の範囲を含むこれらの全体が本明細書に組み入れられる)。
【0124】
本明細書に記載されている方法は、一般にポリペプチドに適用でき、本明細書に詳細に記載されているナトリウム利尿ペプチドの解析は、単に例示的なものである。同様の解析の対照であろうその他の適切なポリペプチドは、以下を含む:アンジオテンシンI、アンジオテンシンII、バソプレッシン、カルシトニン、カルシトニン遺伝子関連ペプチド、ウロジラチン(urodilatin)、ウロテンシンII、遊離心臓トロポニンI、遊離心臓トロポニンT、トロポニンTおよびトロポニンCの一方または両方を含む複合体の心臓トロポニンI、トロポニンIおよびトロポニンCの一方または両方を含む複合体の心臓トロポニンT、総心臓トロポニンI、総心臓トロポニンT、肺胞界面活性物質タンパク質D、D-二量体、アネキシンV、エノラーゼ、クレアチンキナーゼ、グリコーゲンホスホリラーゼ、心臓型脂肪酸結合タンパク質、ホスホグリセリン酸ムターゼ、S-100、S-100ao、プラスミン-α2-抗プラスミン複合体、β-トロンボグロブリン、血小板第4因子、フィブリノペプチドA、血小板由来増殖因子、プロトロンビン断片1+2、P-セレクチン、トロンビン-抗トロンビンIII複合体、フォンビルブラント因子、組織因子、血栓前駆体タンパク質、ヒト好中球エラスターゼ、誘導性一酸化窒素シンターゼ、リゾホスファチジン酸、マロンジアルデヒド修飾低密度リポタンパク質、マトリックス・メタロプロテイナーゼ-1、マトリックス・メタロプロテイナーゼ-2、マトリックス・メタロプロテイナーゼ-3、マトリックス・メタロプロテイナーゼ-9、TIMP1、TIMP2、TIMP3、C反応性タンパク質、インターロイキン-1β、インターロイキン-1受容体アンタゴニスト、インターロイキン-6、腫瘍壊死因子α、可溶性細胞内接着分子-1、脈管細胞接着分子、単球走化性タンパク質-1、カスパーゼ-3、ヒト・リポカリン(lipocalin)型プロスタグランジンDシンターゼ、肥満細胞トリプターゼ、好酸球カチオン蛋白、KL-6、プロカルシトニン、ハプトグロビン、s-CD4Oリガンド、S-FASリガンド、α2アクチン、塩基性カルポニン1、CSRP2エラスチン、LTBP4、平滑筋ミオシン、平滑筋ミオシン重鎖、トランスゲリン(transgelin)、アルドステロン、アンギオテンシンIII、ブラジキニン、エンドセリン1、エンドセリン2、エンドセリン3、レニン、APO B48、膵臓エラスターゼ1、脾臓リパーゼ、sPLA2、トリプシノーゲン活性化ペプチド、αエノラーゼ、LAMP3、ホスホリパーゼD、PLA2G5、タンパク質D、SFTPC、デフェンシンHBD1、デフェンシンHBD2、CXCL-1、CXCL-2、CXCL-3、CCL2、CCL3、CCL4、CCL8、プロカルシトニン、プロテインC、血清アミロイドA、s-グルタチオン、s-TNF P55、s-TNF P75、TAFI、TGFβ、MMP-11、脳脂肪酸結合タンパク質、CA11、CABP1、CACNA1A、CBLN1、CHN2、切断型Tau、CRHR1、DRPLA、EGF、GPM6B、GPR7、GPR8、GRIN2C、GRM7、HAPIP、HIF 1α、HIP2 KCNK4、KCNK9、KCNQ5、MAPK10、n-アセチルアスパラギン酸、NEUROD2、NRG2、PACE4、ホスホグリセリン酸ムターゼ、PKCγ、プロスタグランジンE2、PTEN、PTPRZ1、RGS9、SCA7、セクレタゴジン(secretagogin)、SLC1A3、SORL1、SREB3、STAC、STX1A、STXBP1、BDNF、シスタチンC、ニューロキニンA、サブスタンスP、インターロイキン-1、インターロイキン-11、インターロイキン-13、インターロイキン-18、インターロイキン-4、およびインターロイキン-10。
【0125】
また、本明細書に記載されている方法は、一般にポリペプチドが関心対象の抗体と結合する能力を共有する別の、より大きな、ポリペプチドのタンパク質分解性の断片であるか否かにかかわらず、これらを同定するために適用できる。公知の実施例を考えると、ポリペプチドホルモン・カルジオジラチンは、プロ-ANPの一部と同じ配列を有する。従って、プロ-ANPに結合する抗体は、カルジオジラチンと交差反応するであろう。カルジオジラチンが、血液試料中で知られていない場合、この交差反応性は、抗体に結合するさらなるポリペプチドを同定することによって、その存在を同定するために利用することができる。
【0126】
一旦、関心対象の抗体と結合する能力を共有する予測されていないポリペプチドが同定されれば、後述するように、血清中のこれらの存在は、疾患マーカーとして使用するために特徴づけられるであろう。加えて、抗体は、種々のポリペプチドを区別するように選択されてもよい。上記のカルジオジラチン/プロ-ANPの例に戻って、プロ-ANPのためのアッセイ法により、特定の疾病状態に関連することが示された場合、カルジオジラチンは、その関係に寄与するか、または択一的に、その関係を混乱させるであろう。関心対象の抗体が予想されるプロ-ANPポリペプチドよりも結合したという知識に基づいて、さらなる特徴付けもここで行うことができる。
【0127】
II ナトリウム利尿ペプチド断片に対する抗体の選択
1つまたは複数のナトリウム利尿ペプチド断片を認識する抗体の産生および選択は、いくつかの方法で達成されるであろう。例えば、一つの方法では、関心対象の断片を精製するか、または例えば、当技術分野において周知の固相ペプチド合成法を使用して関心対象の断片を合成する。例えば、Guide to Protein Purification, Murray P. Deutcher, ed., Meth. Enzymol. Vol 182 (1990); Solid Phase Peptide Synthesis, Greg B. Fields ed., Meth. Enzymol. Vol 289 (1997)を参照されたい。関心対象の全ての断片ではなくペプチドのセットに共通する領域を使用し、その共通領域を含む断片のセットを認識する抗体を作製および/または同定してもよい。同様に、断片の1つもしくはセット間に共通しない領域を使用し、断片のセット間を区別する抗体を作製および/または同定してもよい。
【0128】
次いで、選択されたポリペプチドを、例えばマウスまたはウサギに注射して、ポリクローナルまたはモノクローナル抗体を作製してもよい。例えば、Antibodies, A Laboratory Manual, Ed Harlow and David Lane, Cold Spring Harbor Laboratory (1988), Cold Spring Harbor, N.Y.に記載されているように、多くの手順を抗体産生に利用することができる。また、抗体を模倣する結合断片またはFab断片は、種々の手順によって遺伝情報から調製することができる(Antibody Engineering: A Practical Approach (Borrebaeck, C., ed.), 1995, Oxford University Press, Oxford; J. Immunol. 149, 3914-3920(1992))。
【0129】
加えて、多数の刊行物では、選択した標的に対する結合に関してポリペプチドのライブラリを作製し、およびスクリーニングするためのファージディスプレイ技術の使用を報告している。例えば、Cwirla et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 87, 6378-82, 1990; Devlin et al., Science 249, 404-6, 1990、 Scott and Smith, Science 249, 386-88, 1990;およびLadner et al.,米国特許第5,571,698号を参照されたい。ファージディスプレイ法の基本的概念は、スクリーニングされるポリペプチドをコードするDNAとポリペプチドとの間の物理的な関連を確立することにある。この物理的な関連は、ポリペプチドをコードするファージゲノムを囲むキャプシドの一部としてポリペプチドを提示するファージ粒子によって提供される。ポリペプチドとそれらの遺伝子物質との間の物理的な関連の確立により、非常に多数の種々のポリペプチドを保有するファージの同時マススクリーニングが可能になる。標的に対して親和性を有するポリペプチドを提示するファージは、標的に結合し、これらのファージは、標的に対して親和性スクリーニングをすることによって濃縮される。これらのファージによって提示されるポリペプチドの認識は、これらのそれぞれのゲノムから決定することができる。これらの方法を用いて、次いで所望の標的に対して結合親和性を有することが同定されたポリペプチドを、従来の手段によって大量に合成することができる。例えば、米国特許第6,057,098号を参照されたい(これは、全ての表、図、および請求の範囲を含むその全体が本明細書に組み入れられる)。
【0130】
次いで、これらの方法によって作製される抗体を、関心対象の精製されたナトリウム利尿断片との親和性および特異性に関して一次スクリーニングすることによって選択し、必要であれば、抗体の親和性および特異性を、結合から排除することが望まれるナトリウム利尿断片と比較してもよい。スクリーニング法は、マイクロタイタープレートの別々のウェルにおいて精製されたナトリウム利尿断片の固定化を含むことができる。次いで、潜在的抗体または抗体群を含む溶液をそれぞれのマイクロタイターウェルに入れ、約30分〜2時間インキュベートする。関心対象の断片に対する抗体が溶液に存在する場合は、固定されたナトリウム利尿断片と結合すると考えられる。次いでマイクロタイターウェルを洗浄し、標識された二次抗体(例えば、生じた抗体がマウス抗体である場合には、アルカリホスファターゼに結合した抗マウス抗体)をウェルに添加し、約30分間インキュベートした後洗浄する。基質をウェルに添加して、固定されたナトリウム利尿断片に対する抗体が存在する場合には呈色反応が現れるであろう。
【0131】
次いで、こうして同定された抗体を、選択したアッセイ法デザインにおいて関心対象のナトリウム利尿断片に対する親和性および特異性についてさらに解析してもよい。標的タンパク質についての免疫アッセイ法の開発において、精製された標的タンパク質は、選択した抗体を使用する免疫アッセイ法の感度および特異性を判断するための標準として機能する。種々の断片に対する種々の抗体の結合親和性は、異なる可能性があるため;ある抗体対では(例えば、サンドイッチアッセイ法において)、立体配置などにより互いに妨害する可能性があり、抗体のアッセイ性能は、抗体の絶対的な親和性および特異性よりも重要な尺度となりうる。
【0132】
別の好ましい態様において、抗体または結合断片は、メチオニン残基の酸化によって変化されないか、または還元型と酸化型を識別することができるエピトープに向けられる。ポリペプチドの種々の酸化型および還元型は、上記のように抗体を作製および/または同定するためのものであることができる。
【0133】
一旦ナトリウム利尿ペプチドの種々の領域に対する抗体が得られると、存在する種々のペプチドの配列を同定するためにさらに特徴づけるために、これらの抗体を試験試料から断片を捕獲するために使用することができる。個々のペプチドを得て、当業者に公知のマイクロシークエンシング法を使用してシーケンスしてもよい。例えば、A Practical Guide to Protein and Peptide Purification for Microsequencing, Paul T. Matsudaira, ed., Academic Press, San Diego, 1989を参照されたい。質量分析技術を使用するペプチド質量フィンガープリント法およびアミノ酸分析は、こうして得られたペプチドを同定するために特によく適している。例えば、Westermeier and Naven, Proteomics in Practice: A Laboratory Manual of Proteome Analysis, Wiley-VCH Verlag-GmbH, Weinheim, 2002を参照されたい。
【0134】
抗体または結合断片を産生し、並びに種々のナトリウム利尿ペプチド断片に対する親和性および特異性に関してスクリーニングかつ選択する際に、多くのアプローチをとることができるが、これらのアプローチは、本発明の範囲を変更しない。
【0135】
III 免疫アッセイ法のための認定試薬
A. 認定抗体
免疫アッセイ法は、典型的には標的分析物に対する抗体を含む免疫アッセイ試薬を使用することを含む。このようなアッセイ法の精度は、免疫アッセイ試薬の抗体の完全性および純度に依存する。抗体試薬内に混入物が存在すると、抗体試薬内の抗体の量の正確な測定を妨害するであろう。従って、本発明は、試薬中の、抗体の改変形態、例えば分解形態を特異的に検出することによって、免疫アッセイ試薬に使用する抗BNP抗体の品質を決定するための方法を提供する。
【0136】
本方法の一つのバージョンにおいて、免疫アッセイ法、特に商業的な免疫アッセイ法において使用される抗BNP抗体を質量分析によって検査する。この分析では、抗体試薬のどの部分が完全か、およびどの部分が分解されたかを示すことができる。例えば、免疫グロブリンは、重鎖および軽鎖に分解されていてもよい。また、免疫グロブリンは、重鎖および軽鎖の断片に分解されていてもよい。質量分析では、質量差に基づいて、無処理の免疫グロブリンとその分解されたバージョンとを区別することができるので、免疫グロブリン試薬は、これにより識別することができる。抗体の例示的な質量分析解析を図3に示してある。
【0137】
本方法のもう一つのバージョンにおいて、抗体は、SELDIプローブの表面に結合されており、試料から、または免疫アッセイのためのBNP較正物質からBNPを捕獲するために使用される。この方法は、捕獲される無処理のBNPの絶対量、並びにその他の分子に対する無処理のBNPの相対量を検出することができる。免疫アッセイ法によって測定される分析物の絶対量は、分析物を測定するために使用される試薬の品質、並びに検量線を作製するために使用される試薬(すなわち、キャリブレーター)の品質に依存している。抗体が、企図された分析物に対して特異的でない場合、これはレベルの上昇を誤って与えるであろう。キャリブレーターが汚い場合、検量線は不正確になると考えられる。分析物の不正確な定量化により、医学的な決定を行うための最適なカットオフに関して誤った結論を生じる可能性があり、個体において誤って定量化することとなり最適以下の処理を生じ得る。
【0138】
一つの局面において、本発明は、免疫アッセイ法、例えばタグ付き免疫アッセイ法に使用される抗体試薬に対する品質管理を特徴づけ、かつ提供する方法を提供する。免疫アッセイ・キットに使用される抗体試薬は、混入タンパク質を含み得ることが見出されている。これらの混入物は、抗体試薬キットに提供された抗体の実際量を定量化することを企図した測定を妨害し得る。本方法は、抗体試薬の調製および使用の際の品質管理に有用である。本方法は、免疫アッセイ法、例えばタグ付き免疫アッセイ・キットに使用される抗体試薬内の抗体の量および/またはその他のタンパク質の量を測定する工程を含む。抗体は、抗体の量およびその品質、例えばその分解状態の両方に関して識別することができる。関心対象の任意の分類子に関する品質管理基準を越えていない試薬は、廃棄するか、または適合するように修正することができる。試薬を使用するための説明書では、試薬の品質および免疫アッセイ法に対するこの品質の影響を考慮することができる。例えば、一般に、試料中の関心対象の全ての標的タンパク質を捕獲するのに十分な抗体試薬を使用することが望まれ、従って、抗体試薬に含まれる抗体の量は、質量分析によって測定される量、例えば総タンパク質と比較したSELDIに基づいて決定することができる。
【0139】
免疫アッセイ法において、抗体試薬は、標的タンパク質だけでなく、標的タンパク質の分解断片にも同様に存在するエピトープを認識するであろう。例えば、抗BNP抗体は、BNP77〜108だけでなく、分解断片も同様に認識することができる。このような抗体試薬を使用する従来のタグ付き免疫アッセイ法では、標的タンパク質の種々の形態間を区別することができない。
【0140】
抗体試薬は、免疫アッセイ法において、標的ポリペプチドと標的ポリペプチドの分解型との間を区別しないであろう。これらの検出されたポリペプチドの1つもしくはいくつかだけが、この検出に基づいた診断法またはその他のアッセイ法の感度および特異性の原因となりうる限り、その他のポリペプチドの検出は、感度および特異性を損ないうる。従って、その他のどのポリペプチドが抗体試薬によって捕獲されるかを決定し、特異的なポリペプチドを検出または使用するようにアッセイ法を導くことによって、アッセイ法が改善されるであろう。一つの態様において、これには、標識抗体が指定されたアイソフォームを検出するというサンドイッチアッセイ法のようなアッセイ法を行うことを含んでもよい。または、免疫アッセイ法は、SELDI MS免疫アッセイ法であってもよい。質量分析法に基づいた免疫アッセイは、質量に基づいて種々の捕獲されたポリペプチドの識別を自動的にもたらす。
【0141】
キットは、本発明の方法を実施するための説明書(すなわち、プロトコル)を含む教材を含むことができる。教材は、典型的には書面にされ、または印刷された教材を含むが、これらに限定されない。このような説明書を格納し、かつ最終使用者にこれらを伝えることができる任意の媒体も本発明によって想定される。このような媒体は、電子記憶媒体(例えば、磁気ディスク、テープ、カートリッジ、チップ)、光学式媒体(例えば、CD-ROM)などを含むが、これらに限定されない。このような媒体は、このような教材を提供するインターネットサイトへのアドレスを含むことができる。
【0142】
B.キャリブレーター
免疫アッセイ法の較正は、免疫アッセイ法で作製される結果の品質を保証するために重要である。較正は、一般に、規定した量または濃度の標的分析物を含む免疫アッセイキャリブレーターの使用を含む。免疫アッセイ法においてキャリブレーターによって作製されるシグナルは、キャリブレーターの標的分析物の量に相関する。この較正を使用して、次に、試験試料中の標的分析物の量と試験試料で測定されるシグナルの量を相関させる。しかし、キャリブレーターによって生じるシグナルは、例えばキャリブレーター中の標的分析物が分解され、またはさもなければシグナルを損なうように修飾されている場合には、キャリブレーター中の分析物の本当の量を示さないであろう。
【0143】
さらにまた、標準的免疫アッセイ法において使用されるキャリブレーターは、全長キャリブレーター・タンパク質だけでなく、分解生成物も含んでいるであろう。これは、キャリブレーターにより、試料中の標的の量を誤って測定してしまうであろうことを意味する。実際に、BNP免疫アッセイ法に使用される較正物質の調査では、較正物質が全長BNPだけでなく、BNPの種々の分解断片(これらの分子量がBNPアミノ酸配列の同定可能な部分配列の分子量に対応したことから、同定可能である)も含んだことが証明された。
【0144】
したがって、本発明は、BNP免疫アッセイキャリブレーターの品質を決定するための方法を提供する。本方法は、BNPを捕獲する抗体でBNPに対して免疫アッセイする際に使用する免疫アッセイキャリブレーターに由来する分子を捕獲する工程と、抗体によって捕獲されたBNPポリペプチドの量を特異的に測定する工程とを含む。または、本免疫アッセイ法を、BNPの特定の断片を測定するように導くことができ、この形態に対する抗体およびこの形態を含むキャリブレーターの使用を含むことができるであろう。
【0145】
患者の徴候および症状および心電図結果などの臨床パラメーターに加えて、心臓生物マーカーおよび該生物マーカーとのタンパク質インタラクターの相対量または絶対量は、診断、予後、および患者の管理目的のために使用することができる。例えば、これらの結果により、急性冠動脈症候群、並びに急性冠動脈症候群の特定のクラス(例えば、最近の心筋梗塞に対する不安定狭心症)の有無を診断すること;治療しない患者で可能性の高い結果を決定すること(すなわち、予後を決定すること)、および患者が特定の薬物療法(例えば、スタチンに対する凝固阻害剤)過程による利益のある可能性が高いかどうかを決定することができる。
【0146】
したがって、一つの局面において、本発明は、一般に免疫アッセイキャリブレーター、および特にBNP免疫アッセイキャリブレーターの製造および使用の際の品質管理を実現するための方法を提供する。一つの態様において、本方法は、免疫アッセイキャリブレーター、例えばBNP免疫アッセイキャリブレーターの中のペプチドを、質量分析によって、特にSELDIによって識別する工程を含む。この方法により、これらを質量に従って識別することができ、および質量スペクトル・ピーク下の領域に基づいて定量化することができるので、これらのペプチドをより正確に識別することができる。本方法によれば、免疫アッセイキャリブレーター溶液は、質量分析によって、特にSELDIによって特徴づけられる。ペプチドの区別および定量化は、質量分析によって行われる。一つのバージョンにおいて、ペプチドは、疎水性の表面を有するプローブまたはキャリブレーター・ポリペプチドのエピトープを有するポリペプチドを特異的に認識する抗体によって誘導体化された反応性プローブなどのSELDI MSプローブで捕獲される。特に、キャリブレーター中のポリペプチドは、免疫アッセイ・キットに使用される抗体試薬によって誘導体化されたプローブで捕獲することができる。次いで、関心対象のピークの1つまたは複数に基づいてアッセイ法を較正してもよい。例えば、ポリペプチドは、キャリブレーター中の総タンパク質の関数として測定することができる。キャリブレーターのSELDI解析例を図4A、B、C、およびD、図5AおよびB、並びに図6A、B、およびCに示してある。
【0147】
例えば、BNPアッセイ法において、アッセイ法は、BNP77〜108に対して較正することができる。BNPアッセイ法の場合、質量スペクトルは、血漿においてキャリブレーターが多くのBNPの分解形態を含んだことを示した。これは、プロテアーゼが存在することを意味する。従って、1つまたは複数のプロテアーゼ阻害剤を添加することよって、キャリブレーター中のBNPポリペプチドを安定化することができる。
【0148】
BNPの場合、このような免疫アッセイ法は、全長BNPに向けられるが、これらは、BNPのその他の形態も検出する。しかし、これらの免疫アッセイ法の一般的な標的は、BNP77〜108である。従って、SELDI免疫アッセイを行い、BNP77〜108の量を測定することができる。必要に応じて、その他の断片を特異的に検出してもよい。または、BNP77〜108に特異的な抗体を開発して、サンドイッチ・タグ付き免疫アッセイ法においてこれを使用することができる。
【0149】
したがって、一つの態様において、本発明は、試料中のBNPポリペプチドの少なくとも1つの形態を識別するための方法を提供する。本方法は、最初に、表面がBNP、好ましくは成熟BNPのエピトープと特異的に結合する抗体によって誘導体化されたSELDIプローブを提供する工程を含む。プローブは、上記したものなどの反応性の表面を有するプローブであることができる。このようなプローブは、このエピトープを含むBNPの形態を特異的に捕獲することができる。次いで、診断試験における被験者試料などの試験のための試料を、結合した抗体と接触させる。エピトープを有するポリペプチドを結合した抗体によって捕獲し、結合していない物質を洗い流す。次いで、エネルギー吸収分子が結合した物質と結合する。これは、従来のマトリックスの適用を含んでもよい。または、プローブが、すでにエネルギー吸収分子が結合したSENDプローブである場合、外部マトリックスは、必要ではない。次いで、捕獲された分子を質量分析によって検出する。質量分析は、質量によって分析物を識別するので、同じエピトープを含むが、質量が異なるポリペプチドが検出され、区別され、かつ測定されるであろう。例えば、BNP77〜108の量は、その他の分子の形態から区別することができ、このSELDI免疫アッセイ法によって定量化することができる。実際に、被験者試料の調査により、BNPタグ付き免疫アッセイ法に使用される抗体試薬がBNP77〜108以外のその他の多くのBNP断片にも結合したことが証明された。本発明は、これらの種を区別することができる。
【0150】
IV マーカー・パネルにおけるナトリウム利尿ペプチド分解産物の使用
診断試験の原則は、特定の臨床パラメーターと方法(例えば、血液検査、尿検査、CSF、試験、痰試験、組織生検、放射線学的調査、1つまたは複数の生物マーカーの測定など)の結果を相関させることである。相関は、必然的に臨床パラメーターによって区別される2つ以上の群の間を比較することを含む。臨床パラメーターは、例えば疾患の有無、疾患のリスク、疾患段階、疾患の重篤さ、疾患のクラス、または疾患治療に対する反応でありうる。従って、診断医は、この相関を使用して臨床パラメーターに関して被験者の状態を決定する。すなわち、診断医は、被験者に対する手技の結果を使用して、臨床パラメーターに関して被験者の状態を分類または診断し、診断/分類の信頼性は、試験に使用される徴候または症状の分類力または分割力に関連する。
【0151】
本発明のものなど、最も診断有用性を有する生物マーカーは、少なくともp≦0.05、p≦10-2、p≦10-3、p≦10-4、またはp≦10-5の異なる臨床パラメーターの統計的相違を示す。これらの生物マーカーを単独または一緒に使用する診断試験では、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、および約100%の感度および特異性を示す。
【0152】
疾患の診断のための、特に鑑別診断のための、1つまたは複数のマーカーを同定するための方法および系は、以前に記載されている。疾病状態の診断のために有用なマーカーを同定するための適切な方法は、2002年12月27日に出願された、METHOD AND SYSTEM FOR DISEASE DETECTION USING MARKER COMBINATIONSと題する米国特許出願第10/331,127号(代理人整理番号071949-6802)に詳述されており、これは、全ての表、図、および請求の範囲を含むその全体が参照として本明細書に組み入れられる。また、マーカーの一変量解析を行うことができ、複数のマーカーの一変量解析からのデータを組み合わせてマーカーのパネルを形成し、異なる疾患症状を区別することができる。
【0153】
診断に有用なマーカーのパネルを開発する際に、多くの潜在的なマーカーについてのデータが、一定のマーカーの存在またはレベルを試験することによって一群の被験者から得られるであろう。被験者群は、2つのセットに分けられ、好ましくは、第1のセットおよび第2のセットは、それぞれほぼ等しい数の被験者を有する。第1のセットは、疾患を有するか、またはより一般的には、第1の症状の状態であること、もしくは第1の臨床パラメーターを示すことが確認された被験者を含む。例えば、この第1のセットの患者は、最近、疾患発病したものであってもよく、または特定のタイプの疾患を有するものであってもよい。症状の状態の確認は、MRIもしくはCTなどのより厳密な、および/または高価な試験によって行われてもよい。以下では、この第1のセットの被験者を「病気に罹患した」という。
【0154】
第2のセットの被験者は、単に第1のセット内に入らない人々であり、従って、第2の臨床パラメーターを示す。この第2のセットの被験者は、「病気に罹患していない」;すなわち健常人であってもよい。または、この第2のセットの被験者は、「病気に罹患した」被験者によって示されるこれらの症状を模倣する症状の1つの症状または型を示すように選択してもよい。さらに別の変形例において、この第2のセットは、疾患発病とは異なる時点でこれらが表れてもよい。
【0155】
これらのセットの被験者から得られるデータは、本発明の目的のための、個々にまたは群として測定されたナトリウム利尿ペプチドの1つもしくは複数の断片を含む複数のマーカーのレベルを含む。好ましくは、同一セットのマーカーについてのデータがそれぞれの患者に利用される。このマーカーのセットは、特定の疾患または症状の検出に関連することが疑われる可能性のある全ての候補マーカーを含んでいてもよい。実際の公知の関連性は必要とされない。本明細書に記載されている方法および装置の態様は、どの候補マーカーが、疾患または症状の診断に最も関連するかについて決定するために使用されてもよい。被験者の2つのセットのそれぞれのマーカーのレベルは、広範囲にわたって、例えばガウス分布として分布してもよい。しかし、分布フィットは必要とされない。
【0156】
マーカーは、患者が病気に罹患したか、または病気に罹患していないかのいずれかとして最終的に同定できないことが多い。例えば、患者が重複領域内のマーカーレベルを有すると測定された場合は、試験の結果は、患者を診断するために役立たない。疾患または症状の検出のために陽性と陰性の試験結果の間を区別するために、人為的なカットオフを使用してもよい。カットオフが選択される場合でも、診断ツールとしての一つのマーカーの有効性は影響を受けない。カットオフを変更しても、単に一つのマーカーを使用することによって生じる偽陽性の数と偽陰性の数の間を交換するだけである。このような重複を有する試験の有効性は、たいていROC(Receiver Operating Characteristic)曲線を使用して表される。ROC曲線は、当技術分野において周知である。
【0157】
診断検査が正しく状態を予測する力は、一般にアッセイ法の感度、アッセイ法の特異性、または受診者動作特性(「ROC」)曲線下の領域として測定される。感度は、陽性試験によって予測される真陽性の割合であり、一方、特異性は、陰性試験によって予測される真陰性の割合である。ROC曲線は、1特異性の関数として、試験の感度を与える。ROC曲線下の領域が大きくなるにつれ、試験の予測値も強力になる。試験の有用性のその他の有用な計測は、陽性予測値および陰性予測値である。陽性予測値は、陽性として試験する実際の陽性の割合である。陰性予測値は、陰性として試験する実際の陰性の割合である。
【0158】
ROC曲線の横軸は、偽陽性の割合と共に増加する(1-特異性)を表す。曲線の垂直軸は、真陽性の割合と共に増加する感度を表す。従って、選択された特定のカットオフに関して、(1-特異性)の値を決定してもよく、対応する感度を得てもよい。ROC曲線下の領域は、測定されたマーカー・レベルにより疾患または症状を適切に同定することができる確率の程度である。従って、ROC曲線下の領域は、試験の有効性を決定するために使用することができる。
【0159】
上で議論したように、単一のマーカーのレベルの測定では、有用性が限定されるであろう。さらなるマーカーの測定により、付加的情報をもたらすが、適切に2つの潜在的に無関係な測定レベルを組み合わせる際には問題点がある。本発明の態様に従った方法および装置では、病気に罹患した患者と病気に罹患していない患者のセットについての種々のマーカーのレベルに関してのデータは、有用なパネル応答(panel response)を提供するためのマーカーのパネルを開発するために使用されるであろう。データは、Microsoft Access、 Oracle、その他のSQLデータベースなどのデータベースで、または単にデータファイルで提供されてもよい。データベースまたはデータファイルは、例えば患者の名前または数などの識別子、存在する種々のマーカーのレベル、および患者が病気に罹患しているか、または病気に罹患していないかどうかを含んでもよい。
【0160】
次に、人為的カットオフ領域をそれぞれのマーカーについて最初に選択してもよい。カットオフ領域の位置は、任意の点で最初に選択してもよいが、本選択により、下記の最適化プロセスに影響を及ぼすであろう。この点に関して、最適の位置であると推測される近くを選択すると、オプティマイザーのより迅速な収束を促進するであろう。好ましい方法において、カットオフ領域は、最初に患者の2つのセットの重複領域のほぼ中心に置かれる。一つの態様において、カットオフ領域は、単にカットオフ点であってもよい。その他の態様において、カットオフ領域は、ゼロより大きい長さを有していてもよい。この点に関しては、カットオフ領域は、中心値と長さの大きさによって定義してもよい。実際には、カットオフ領域の限度の最初の選択は、被験者の各セットの事前に選択した百分位数に従って決定してもよい。例えば、病気に罹患した患者の予め選択された百分位数が測定された点をカットオフ範囲の右(上)端として使用してもよい。
【0161】
次いで、各患者についての各マーカー値を指標にマッピングしてもよい。指標には、カットオフ領域未満の一つの値と、カットオフ領域を超えるもう一つの値が割り当てられる。例えば、マーカーが一般に、病気に罹患していない患者についてより低い値を有し、病気に罹患した患者について高い値を有する場合、ゼロ指標は、特定のマーカーに対して低い値に割り当てられ、潜在的に陽性診断の可能性が低いことを示すと考えられる。その他の態様において、指標は、多項式に基づいて算出してもよい。多項式の係数は、病気に罹患したか、および病気に罹患していない被験者のマーカー値の分布に基づいて決定してもよい。
【0162】
種々のマーカーの相対的重要性は、重み付け因子によって示してもよい。重み付け因子は、それぞれのマーカーの係数として最初に割り当てられてもよい。カットオフ領域と同様に、重み付け因子の初期選択は、任意の許容量で選択されてもよいが、本選択により、最適化プロセスに影響を及ぼすであろう。この点に関して、最適の位置であると推測される近くを選択すると、オプティマイザーのより迅速な収束を促進するであろう。好ましい方法において、許容される重み付け係数は、0と1の間の範囲であってもよく、それぞれのマーカーに対する最初の重み付け係数は、0.5に割り当てられてもよい。好ましい態様において、それぞれのマーカーに対する最初の重み付け係数は、それ自体によってそのマーカーの有効性と関連させてもよい。例えば、ROC曲線は、一つのマーカーに対して作製されてもよく、ROC曲線下の領域をそのマーカーに対する最初の重み付け係数として使用してもよい。
【0163】
次に、パネル応答は、2つのセットのそれぞれの被験者の各々に対して算出してもよい。パネル応答は、それぞれのマーカー・レベルがマッピングされる指標と、それぞれのマーカーに対する重み付け係数との関数である。好ましい態様において、それぞれの被験者(j)についてのパネル応答(R)は:

(式中、iは、マーカー指数であり、jは被験者指数であり、wiは、マーカーiの重み付け係数であり、Iは、マーカーiのためのマーカーレベルが被験者jのためにマッピングされる際の指標値であり、およびΣは、全ての候補マーカーiにわたる和である。)と表される。
【0164】
マーカー値以外に指標値を使用することの1つの利点は、非常に高いか、または低いマーカーレベルでは、特定のマーカーについての病気に罹患したか、または病気に罹患していないことを診断する確率が変化しないことである。典型的には、一定レベルより上のマーカー値は、一般に一定の症状の状態を示す。そのレベルより上のマーカー値では、同じ確実性で症状の状態を示す。従って、非常に高いマーカー値が、その症状の状態の非常に高い確率を示すのではない可能性がある。カットオフ領域の一方の側に不変の指標を使用することにより、この懸念がなくなる。
【0165】
また、パネル応答は、マーカーレベルを含むいくつかのパラメーターと、例えば患者の人種および性を含むその他の因子との一般的な関数でありうる。パネル応答に寄与するその他の因子は、全時間にわたった特定のマーカーの値の勾配を含みうる。例えば、患者は、最初に病院に到着したときに、特定のマーカーについて測定してもよい。同じマーカーを1時間後に再び測定してもよく、変化のレベルをパネル応答に反映してもよい。さらに、さらなるマーカーは、その他のマーカーに由来してもよく、パネル応答の値に寄与してもよい。例えば、2つのマーカーの値の比率が、パネル応答を算出する際の因子であってもよい。
【0166】
被験者のそれぞれのセットのそれぞれの被験者についてパネル応答が得られたら、ここでそれぞれのセットについてのパネル応答の分布を解析してもよい。有効なパネルの選択を容易にするように目的関数を定義してもよい。目的関数は、一般にパネルの有効性を表すはずであり、例えば、病気に罹患した被験者セットと病気に罹患していない被験者セットのパネル応答の重複として表される。このように、目的関数は、パネルの有効性を最大にするように、例えば重複を最小化するように最適化してもよい。
【0167】
好ましい態様において、被験者の2つのセットのパネル応答を表すROC曲線を目的関数を定義するために使用してもよい。例えば、目的関数は、ROC曲線下の領域を反映するであろう。曲線下の領域を最大にすることによって、マーカーのパネルの有効性を最大にしてもよい。その他の態様において、ROC曲線のその他の特徴を目的関数を定義するために使用してもよい。例えば、ROC曲線の勾配が同等である位置は、有用な特徴であろう。その他の態様において、時に「ニー(knee)」と称される感度と特異性の積が最大である位置を使用してもよい。ある態様において、ニーにおける感度を最大にしてもよい。さらなる態様において、予め定められた特異性レベルでの感度を、目的関数を定義するために使用してもよい。その他の態様では、予め定められた感度レベルで使用されるであろう特異性を使用してもよい。さらに他の態様において、これらのROC曲線の関数の2つ以上の組み合わせを使用してもよい。
【0168】
パネル内のマーカーのうちの1つが、診断される疾患または症状に特異的であるかもしれない。このようなマーカーがある閾値の上下に存在するときは、パネル応答は、「陽性」試験結果を返すように設定されうる。しかし、閾値が満たされない場合でも、マーカーのレベルを目的関数の推定貢献者(possible contributor)として使用してもよい。
【0169】
最適化アルゴリズムを使用して、目的関数を最大または最小にしてもよい。最適化アルゴリズムは、当技術分野において周知であり、シンプレックス法およびその他の制約付き最適化技術を含むいくつかの共通に利用できる最小化または最大化関数を含む。いくつかの最小化関数は、極小よりも全体的な最小を探す際に他のものよりも優れている。最適化プロセスでは、それぞれのマーカーについてカットオフ領域の位置およびサイズにより、マーカーにつき少なくとも2つの自由度を提供するように変化させることができる。このような変数パラメーターは、本明細書において独立変数といわれる。好ましい態様において、それぞれのマーカーのための重み付け係数を最適化アルゴリズムの反復全体にわたって変化させることもできる。種々の態様において、これらのパラメーターの任意の順列を独立変数として使用してもよい。
【0170】
上記のパラメーターに加えて、それぞれのマーカーの意味(sense)を独立変数として使用してもよい。例えば、多くの場合、あるマーカーが高レベルであることが、一般に病気に罹患した状態または病気に罹患していない状態を表すかどうかは公知ではない可能性がある。このような場合、最適化プロセスを両側で検索することが有用であろう。実際には、これは、いくつかの方法で実施されてもよい。例えば、一つの態様において、その意味は、最適化プロセスによって正負の間が反転しうる真に別々の独立変数であってもよい。または、意味は重み付け係数を負にすることよって実施(implemented)されてもよい。
【0171】
最適化アルゴリズムには、同様に制約を与えてもよい。例えば、生じるROC曲線には、特定の値を超える曲線下の領域を与えるように制約してもよい。0.5の曲線下の領域を有するROC曲線は、完全にランダムなことを示し、一方1.0の曲線下の領域では、2つのセットの完全な分離を反映する。従って、特に目的関数が曲線下の領域を組み入れない場合は、0.75などの最小限の許容値を制約として使用してもよい。その他の制約では、特定のマーカーの重み付け係数以上の限界を含んでいてもよい。さらなる制約では、1.0などの特定の値まで、全ての重み付け係数の合計を制限してもよい。
【0172】
最適化アルゴリズムを反復することにより、一般に、制約を満たすように独立したパラメーターを変化させ、一方で目的関数を最小化または最大化する。最適化プロセスにおいて、反復数を制限してもよい。さらに、2つの連続した反復の間の目的関数の相違が予め定められた閾値以下にあり、それによって最適化アルゴリズムが極小または極大の領域に達したことを示すときに、最適化プロセスを終了させてもよい。
【0173】
従って、最適化プロセスでは、指標に対してマーカー値をマッピングするために、それぞれのマーカーおよびカットオフ領域に対して重み付け係数を含むマーカーのパネルを提供してもよい。より少ないマーカーレベルの測定だけを必要とする低コスト・パネルを開発するために、一定のマーカーをパネルから除去してもよい。この点に関しては、マーカーの有効な寄与を同定するために、パネル内のそれぞれのマーカーの効果的な寄与を決定してもよい。一つの態様において、最適化プロセスによって生じる重み付け係数を使用してそれぞれのマーカーの相対寄与を決定してもよい。最も低い係数を有するマーカーを除去してもよい。
【0174】
一定の場合において、重み付け係数がより低いことが、重要性の低さを表さない可能性がある。同様に、重み付け係数より高いことが、重要性の高さを表さない可能性がある。例えば、関連するマーカーが診断とは無関係な場合は、最適化プロセスにより高い係数を生じうる。この場合、係数をより低くすることには、何の利点もないであろう。この係数を変化させても、目的関数の値に影響を及ぼさないであろう。
【0175】
V 患者の臨床状態および治療処方計画を決定するための、BNPおよびその断片の使用
本明細書に記載されているナトリウム利尿ペプチド断片などの有用な診断または予後の指標は、臨床家が代替治療法間を選択するのを助けることができる。例えば、急性冠動脈症候群後に心臓トロポニンTまたはIが上昇した患者は、強力な抗血小板薬および抗血栓療法を含む初期の積極的なストラテジー、並びに初期の血管再生による利益を特に得ているようである。Hamm et al., N. Engl. J. Med. 340: 1623-9 (1999); Morrow et al., J. Am. Coll. Cardiol. 36: 1812-7 (2000); Cannon et al., Am. J. Cardiol. 82: 731-6 (1998)。さらに、心筋梗塞後にC反応性タンパク質が上昇した患者は、HMG-CoAレダクターゼ阻害剤療法による利益を特に得ているようである。Ridker et al., Circulation 98: 839-44 (1998)。鬱血性心不全患者の中で、予備実験では、ACE阻害剤が用量依存的な様式でBNPレベルを減少させるであろうことを示唆する。Van Veldhuisen et al., J. Am. Coll. Cardiol. 32: 1811-8 (1998)。
【0176】
この場合は、BNPの高いレベルは、心臓疾患、特に心臓組織損傷および急性心臓症候群と相関する。診断医は、被験者の心疾患状態を決定するためにBNPの測定を使用することができる。例えば、医師は、急性冠動脈症候群の有無を診断するために、患者の血液試料中のBNPの量を使用することができる。「急性冠動脈症候群の状態」という語は、とりわけ急性冠動脈症候群と非急性冠動脈症候群とを識別することを含む。
【0177】
典型的なBNP免疫アッセイ法では、抗体によって捕獲されたBNPとBNP断片との間を識別せず、また、タンパク質インタラクターを検出しない。従って、典型的な免疫アッセイ法では、関心対象の臨床パラメーター、例えば急性冠動脈症候群と全てのBNP形態を相関させる。しかし、BNP、その種々の形態、およびインタラクターの測定を特異的に識別することによって、本発明は、臨床パラメーターとこれらの分析物を特異的に相関させることができる。試料中の特定の分析物の特異的な相関は、診断の際により優れた特異性および感度をもたらす。
【0178】
以下のことは、有意義なBNPアッセイ法のために推奨される:これらは、タンパク質分解によって影響を受けないエピトープを認識する抗体を使用するべきである;翻訳後修飾されたBNPと反応させるべきである;これらが利用できるようになった場合、国際的に承認された基準を使用して製造業者間で標準化するべきである;HAMA、RF、フィブリン、およびその他の妨害がないべきである。
【0179】
したがって、一つの局面において、本発明は、断片を含むBNPポリペプチド、またはBNPの生体分子インタラクター、および抗BNP抗体から選択される少なくとも1つの生物マーカーの特異的な測定をこれらの分子と共に使用する、診断、予後、および療法診断的(theranostic)方法を提供する。本方法は、最初に任意の方法によってBNPの標的形態の特異的な測定値を提供し、次いで測定値を関心対象の臨床パラメーター、例えば急性冠動脈症候群と相関させることを含む。測定値を相関させることよって、問題の特定の臨床パラメーターに関して被験者の状態を決定することができる。この相関に基づいて、さらなる診断検査または治療手技または処方計画を含むさらなる処置が指示されるであろう。本発明の各々の生物マーカーは、個々に疾患と相関させることができる。
【0180】
BNPまたはタンパク質インタラクターのいずれの形態も、個々に、急性冠動脈症候群の状態を決定する際の補助に有用である。第1に、選択された生物マーカーは、本明細書に記載されている方法、例えばSELDIバイオチップ上での捕獲に続く質量分析による検出を使用して、被験者試料において特異的に測定される。次いで、測定値を一つの診断パラメーターをもう一つのものと、例えば急性冠動脈症候群陰性の状態から急性冠動脈症候群陽性の状態を区別する診断の量またはカットオフと比較される。診断の量は、上記の生物マーカーの測定量であって、それ以下では、被験者が特定の臨床パラメーターを有すると分類される量を表す。例えば、臨床パラメーターが正常のものと比較して、生物マーカーがアップレギュレートされる場合は、診断カットオフ以上の測定量が、臨床パラメーターの診断を提供する。または、生物マーカーが急性冠動脈症候群においてダウンレギュレートされる場合は、診断カットオフ以下の測定量が、急性冠動脈症候群の診断を提供する。当技術分野において十分に理解されているとおり、アッセイ法に使用される特定の診断カットオフを調整することによって、診断医の選択に応じて、診断アッセイ法の感度または特異性を増大することができる。
【0181】
一部の態様において、生物マーカーの量の定量を伴わない生物マーカーの単なる有無も有用であり、急性冠動脈症候群の可能性の診断と相関させることができる。従って、試験される被験者において検出されたこれらのマーカーのそれぞれの有無は、被験者が急性冠動脈症候群を有する確率がより高いことを示す。
【0182】
個々の生物マーカーは、有用な診断のマーカーであるが、生物マーカーを組み合わせることにより、単一のマーカー単独よりも特定の状態の優れた適中率をもたらすことができることが分かっている。特に、試料中の複数のマーカーを検出することにより、真陽性、および真陰性の診断の割合を増大することができ、偽陽性または偽陰性の診断の割合を低下させることができる。従って、一つの態様において、断片を含むBNPポリペプチド、またはBNPインタラクターの種々の形態の相対比を測定する。
【0183】
急性冠動脈症候群の状態を決定する方法の特定の態様において、本方法は、状態に基づいて被験者の治療を管理することをさらに含む。このような管理では、急性冠動脈症候群の状態を決定した後の医師または臨床家の措置が記載される。例えば、医師が急性冠動脈症候群の診断を行う場合、医療行為(例えば、スタチン、β遮断薬、糖タンパク質IIb/IIIa阻害剤)または侵襲性介入(例えば、血管再生)などの一定の治療法を伴うであろう。生物マーカーおよびこれらのインタラクターを特異的に補完することにより、最適な治療方針を予測することができる。または、治療することなく、非急性冠動脈症候群の診断が行われるかもしれない。診断試験が急性冠動脈症候群の状態について断定的でない結果を与える場合は、さらなる試験が要求されるであろう。
【0184】
同様に、種々のナトリウム利尿ペプチド断片のレベルに基づく「オーダーメイド(tailoring)」利尿薬および血管拡張剤療法によっても結果が改善されるであろう。例えば、Troughton et al., Lancet 355: 1126-30 (2000)を参照されたい。最後に、16人の患者の単一の予備実験では、Q波MI(Q-wave MI)の偽薬よりもむしろACE阻害剤に対するランダム化が、その後の6ヶ月の期間にわたるBNPレベルの減少と関係していたことが見いだされた。Motwani et al., Lancet 341: 1109-13 (1993)。BNPは、有益な心臓および腎臓効果を有する対抗制御的なホルモンであるので、BNP濃度の変化は、心室機能の改善および心室壁のストレスの減少を反映する可能性が高い。最近の論文では、NT プロ-BNPとBNPアッセイ法との相関を証明している(Fischer et al., Clin. Chem. 47: 591-594 (2001))。ナトリウム利尿ペプチド断片の濃度を、個々にまたはグループで考慮して、患者の結果を改善するための利尿薬および血管拡張剤療法を案内するために使用することができることも本発明のさらなる目的である。さらに、ナトリウム利尿ペプチド断片の測定値を、個々にまたはグループで考慮して、急性冠動脈症候群に罹患した患者の予後指標として使用することも、本発明の範囲内である。
【0185】
鬱血性心不全の入院患者での最近の研究では、連続BNP測定により、単一測定と比較して予後の情報の増大をもたらすであろうことを示唆している;すなわち、アッセイ法では、療法後にBNPが降下するときに、これが持続的に上昇したままであるときよりも予後の改善をもたらすことを証明することができる。Cheng et al., J. Am. Coll. Cardiol. 37: 386-91 (2001)。従って、ナトリウム利尿ペプチド断片の連続測定は、患者のマーカーの予後および/または診断的価値を増大し得、したがって、本発明の範囲内のものである。
【0186】
VI アッセイ測定ストラテジー
本方法は、1つまたは複数の断片を含むBNPポリペプチド、および/またはBNPの生体分子のインタラクター、および抗BNP抗体を固形基体上で捕獲する工程を含む。典型的には、これらは、BNPポリペプチドに特異的に結合する抗体またはその他の生物特異的捕獲試薬、特に免疫アッセイ法に使用される抗体を使用して捕獲される。またこれらの分子は、クロマトグラフィー物質などの非特異的な方法によって捕獲することができる。次いで、捕獲された分子を特異的に検出し、任意の適切な検出手段によって互いに区別される。
【0187】
本発明の生物マーカーは、任意の適切な方法によって検出することができる。このために使用することができる検出方法は、光学的方法、電気化学的な方法(電圧測定および電流測定技術)、原子力顕微鏡観察、および高周波方法、例えば多極共鳴分光学を含む。光学的方法の例示には、共焦点および非共焦点顕微鏡観察の両者に加えて、蛍光、発光、化学発光、吸光度、反射率、透過率、および複屈折、または屈折率の検出(例えば、表面プラスモン共鳴、エリプソメトリー、共鳴ミラー法、格子カプラー導波管法、または干渉計)、バイオセンサーまたは天然の受容体の使用がある。
【0188】
試験試料中のポリペプチドまたはタンパク質の検出および解析のために、多くの方法および装置が周知である。好ましい態様において、免疫アッセイ装置および方法が使用されることが多い。例えば、米国特許第6,143,576号;第6,113,855号;第6,019,944号;第5,985,579号;第5,947,124号;第5,939,272号;第5,922,615号;第5,885,527号;第5,851,776号;第5,824,799号;第5,679,526号;第5,525,524号;および第5,480,792号を参照されたい(それぞれ、全ての表、図、および請求の範囲を含むその全体が参照として本明細書に組み入れられる)。これらの装置および方法では、種々のサンドイッチ、競合的、もしくは非競合的アッセイ形式において標識された分子を利用し、関心対象の分析物の存在または量に関連するシグナルを生じさせることができる。さらに、バイオセンサーおよび光学免疫アッセイ法などの、ある方法および装置を、標識分子を必要とすることなく分析物の存在または量を決定するために使用してもよい。例えば、米国特許第5,631,171号;および第5,955,377号を参照されたい(それぞれは、全ての表、図、および請求の範囲を含むその全体が参照として本明細書に組み入れられる)。Beckman Access、Abbott AxSym、Roche ElecSys、Dade Behring Stratusシステムを含むが、これらに限定されないロボット計測手段は、本明細書に教示される免疫アッセイ法を行うことができる免疫アッセイ分析計に挙げられる。マーカーに対する抗体の特異的な免疫学的結合は、直接または間接的に検出することができる。直接的な標識は、抗体に付着した蛍光または発光タグ、金属、染料、放射性核種などを含む。間接的な標識は、アルカリホスファターゼ、西洋ワサビペルオキシダーゼなどの当技術分野に周知の種々の酵素を含む。任意の適切な免疫アッセイ法、例えば酵素結合の免疫アッセイ(ELISA)、放射免疫アッセイ(RIA)、競合結合アッセイ法、サンドイッチ免疫アッセイ法、質量分析免疫アッセイ法、およびその他のタイプの免疫アッセイ法を利用してもよい。1つまたは複数のナトリウム利尿ペプチド断片に対する抗体の特異的な免疫学的結合は、直接または間接的に検出することができる。検出可能な標識などの第2の分子に付着された抗体は、本明細書において「抗体抱合体」と称される。ナトリウム利尿ペプチドの天然の受容体が存在し、これらの受容体は、また、結合アッセイを提供する際に抗体に類似する方法で使用してもよい。
【0189】
また、1つまたは複数のポリペプチドに特異的な固定化抗体の使用も本発明によって想定される。抗体は、磁気またはクロマトグラフィー・マトリックス粒子、アッセイ場所(マイクロタイターウェルなどの)の表面、固体基板材料または膜(プラスチック、ナイロン、紙などの)の一部などの種々の固体支持体上へ固定することができる。アッセイ条片は、固体支持体上のアレイに抗体または複数の抗体を被覆して調製することができる。次いで、この条片を試験試料に浸漬し、次いで洗浄および検出工程を介して迅速にプロセスし、測定可能なシグナルを生じさせることができる。または、抗体は、SELDIなどの質量分析方法において使用することができるプローブを含むバイオチップ上へ固定することができる。
【0190】
複数のポリペプチドの解析は、別々に、または1つの試験試料と同時に行ってもよい。別々に、または連続したアッセイ法のために適した装置には、ElecSys(Roche)、AxSym(Abbott)、Access(Beckman)、ADVIA(登録商標)CENTAUR(登録商標)(Bayer)免疫アッセイ系、およびNICHOLS ADVANTAGE(登録商標)(Nichols Institute)免疫アッセイ系などの臨床検査アナライザーを含む。好ましい装置またはタンパク質チップで、単一の表面上で複数のポリペプチドを同時にアッセイする。特に有用な物理的形式は、複数の異なる分析物を検出するための複数の分離した、位置参照可能な位置を有する表面を含む。このような形式は、タンパク質マイクロアレイ、または「タンパク質チップ」(例えば、 Ng and Ilag, J. Cell Mol. Med. 6: 329-340 (2002)を参照されたい)、および特定のキャピラリー装置(例えば、米国特許第6,019,944号を参照されたい)、および本明細書で定義したようなタンパク質バイオチップを含む。これらの態様において、それぞれの分離した表面の位置は、それぞれの位置での検出について1つまたは複数の分析物(例えば、本発明の1つまたは複数のポリペプチド)を固定するための抗体を含んでいてもよい。または、表面は、表面の別々の位置に固定された1つまたは複数の別々の粒子を含んでいてもよく(例えば、微小粒子またはナノ粒子)、ここでは、微小粒子が、検出のために1つの分析物(例えば、本発明の1つまたは複数のポリペプチド)を固定するための抗体を含む。または、ポリペプチドは、PBSII質量分析計(Ciphergen)などの質量分析計を使用して解析することができる。
【0191】
複数の試料(例えば、連続した時点で)を同じ個体から試験することも多い。このような連続試料の試験は、時間とともにポリペプチドレベルの変化を同定することができる。ポリペプチドレベルの増加または減少、並びにこのようなレベルの変化がないことは、事象の開始からのおおよその時間を同定すること、回収可能な組織の存在および量、薬物療法の適切性、症状の再灌流または回復によって示される種々の療法の有効性、同様の症状を有する疾患の種々のタイプの区別、事象の重篤さの同定、重症度の同定、および将来の事象のリスクを含む患者の結果の同定を含むが、これらに限定されない疾患状態に関する有用な情報を提供する。
【0192】
鑑別診断に関連した関連情報を提供するために、上で示したポリペプチドからなり、任意に疾患の診断、予後、または区別に有用なその他のタンパク質マーカーを含むパネルを構築してもよい。このようなパネルは、本発明の1つまたは複数のポリペプチドを含む1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、もしくはそれ以上の、または個々の分析物を検出するために構築してもよい。単一の分析物または分析物のサブセットの解析を行って種々の臨床設定における臨床的な感度または特異性を最適化することができる。これらは、外来の、緊急の看護、重要な看護、集中治療、モニタリング・ユニット、入院患者、外来患者、医師局、メディカルクリニック、および健康診断の状況を含むが、これらに限定されない。さらに、単一の分析物または分析物のサブセットは、臨床的な感度および特異性を最適化するために、上述した状況の各々の診断の閾値を調整することと組み合わせて使用することができる。アッセイ法の臨床的感度は、アッセイ法が正しく予測する疾患を有する者の割合として定義され、アッセイ法の特異性は、アッセイ法が正しく予測する疾患を有しない者の割合として定義される(Tietz Textbook of Clinical Chemistry,2nd edition, Carl Burtis and Edward Ashwood eds., W.B. Saunders and Company, p. 496)。
【0193】
分析物の解析は、同様に種々の物理的形式で行うことができる。例えば、マイクロタイタープレートまたはオートメーションの使用を、多数の試験試料の処理を容易にするために使用することができる。または、時宜を得た様式で、例えば移動搬送または救急室の状況において、応急手当および診断を容易にするために単一の試料形式を開発することができる。
【0194】
上記論議したとおり、試料は、一旦試料が得られてからでさえも、ナトリウム利尿ペプチドまたはこれらの断片を分解し続けるであろう。従って、アッセイ法の前に1つまたは複数のプロテアーゼ阻害剤を試料に添加することが有利であろう。多数のプロテアーゼ阻害剤が当業者に公知であり、例示的な阻害剤は、例えばhttp://www.roche-applied science.com/fst/products.htm?/prod_inf/manuals/protease/prot_toc.htmにおけるThe Complete Guide for Protease Inhibition, Roche Molecular Biochemicals(1999年6月3日更新)に見いだされるであろう(これは、その全体が本明細書に組み入れられる)。種々のメタロプロテアーゼおよびカルシウム依存性プロテアーゼが、血液由来の試料中に存在することが公知であるので、EGTAおよび/またはEDTAなどのキレート剤もプロテアーゼ阻害剤として作用する。
【0195】
VII 質量分析法を使用するナトリウム利尿ペプチド断片およびインタラクターの検出
A.一般
質量分析法は、試料中のタンパク質およびタンパク質インタラクターの種々の形態を特異的に検出する手段を提供する。質量分析では、分析物が質量によって分離され、これらの質量の特徴に基づいて区別することができる。従って、タンパク質の断片を全長タンパク質から区別することができる。さらに、質量は、タンパク質の断片の特定の位置を示すこともできる。また、リン酸化などのタンパク質修飾のその他の形態も、同定可能な特異的な質量の特徴を提供する。
【0196】
親和性質量分析の使用は、標的分析物、その修飾形態、およびこれらのタンパク質または抗体と相互作用する生体分子の全てを特異的に区別し、かつ測定することができる免疫アッセイ法を提供する。親和性質量分析は、分析物を抗体、別の生物特異的捕獲試薬、またはクロマトグラフィーの吸着剤などの親和性試薬によって固体の表面上に捕獲し、質量分析によって、例えば表面からのレーザー脱離/イオン化とその後の質量分析による検出および区別を介して検出する方法である。
【0197】
好ましい態様において、本発明の生物マーカーは、質量分析法、気相式のイオンを検出するために質量分析計を使用する方法によって検出される。質量分析計の例は、飛行時間型、磁気セクター型、四極子フィルター型、イオントラップ型、イオンサイクロトロン共鳴型、静電セクター型アナライザー、およびこれらの混成がある。
【0198】
さらに好ましい方法において、質量分析計は、レーザー脱離/イオン化質量分析計である。レーザー脱離/イオン化質量分析法では、分析物を質量分析プローブの表面上に配置し、質量分析計のプローブ・インタフェースを係合し、質量分析計内にイオン化および導入するためのイオン化エネルギーに分析物を提示するように装置を適合する。レーザー脱離質量分析計は、典型的には紫外レーザーからの(しかし、赤外線レーザーからも)レーザー・エネルギーを使用して、表面から分析物を離脱させ、揮発させ、かつこれらをイオン化して、これらが質量分析計のイオン光学を利用できるようにする。
【0199】
生体特異的吸着剤は、少なくとも10-9M、10-10M、10-11M、または10-12Mの親和性で標的分析物に結合する分子を含む。生体特異的捕獲試薬は、抗体、抗体の結合断片(例えば、単鎖抗体、Fab’断片、F(ab)'2断片、およびscFvタンパク質、およびアフィボディー(affibodies)(Affibody, Teknikringen 30, floor 6, Box 700 04, Stockholm SE-10044, Sweden、米国特許第5,831,012号))、並びにBNPポリペプチドと特異的に結合する任意のその他の分子を含む。企図された使用に応じて、これらは、もう一つの生体分子を特異的に結合する受容体およびその他のタンパク質も含んでいてもよい。SELDIに基づいた免疫アッセイでは、生物マーカーのための生物特異的捕獲試薬は、予め活性化されたプロテインチップアレイなどのMSプローブの表面に付着される。次いで、生物マーカーは、この試薬を介してバイオチップの上に特異的に捕獲され、捕獲された生物マーカーが質量分析によって検出される。
【0200】
基質に結合した生物マーカーは、飛行時間型質量分析装置などの気相式のイオン分光計において検出される。生物マーカーは、レーザーなどのイオン化源によってイオン化され、生じたイオンは、イオン光学アセンブリー(ion optic assembly)によって収集され、次いで、質量アナライザーにより通過するイオンを分散させて解析する。次いで、検出器が検出されたイオンの情報を質量-電荷比に変換する。生物マーカーの検出は、典型的にはシグナル強度の検出を含む。こうして生物マーカーの量および質量を決定することができる。
【0201】
B. SELDI
1. 試料の調製
本発明の生物マーカーの検出のための好ましいプロトコルは、以下の通りである。本明細書に使用される被験生体試料は、生物の組織または液体の試料であり、全血、血漿、白血球細胞、脳脊髄液、尿、精液、膣分泌物、リンパ液、並びに呼吸器、腸、および尿生殖器路の種々の外分泌物、涙、唾液、乳汁、管洗浄液、精漿、組織生検、固定組織検体、固定細胞検体、細胞抽出物および細胞培養上清、ならびにこれらの誘導体、例えば血液または血清などの血液誘導体などのヒトおよび動物の体液を含み、好ましくは、SELDI解析の前に前分画に供される。これにより、試料を単純化して、感度を改善する。前分画の好ましい方法は、Q HyperD(BioSepra, SA)などの陰イオン交換クロマトグラフィー物質と試料を接触させることを含む。次いで、結合した物質をpH 9、pH 7、pH 5、およびpH 4の緩衝液を使用する段階的なpH溶出に供する。生物マーカーを含む種々の画分を収集する。
【0202】
次いで、試験される(好ましくは、前分画した)試料を、抗BNP抗体を含む親和性捕獲プローブ、例えば、予め活性化されたPS10またはPS20 プロテインチップアレイ(Ciphergen Biosystems, Inc.)と接触させる。BNPポリペプチド、BNP断片、および/またはBNPの生体分子インタラクター、および抗BNP抗体を保持するが、未結合分子を洗浄すると考えられる緩衝液でプローブを洗浄する。これらの分子のために適した洗浄液は、実施例のものと同じ緩衝液である。分析物は、レーザー脱離/イオン化質量分析によって検出される。
【0203】
2. SELDIデータ解析
飛行時間型の質量分析による分析物の解析により、飛行時間スペクトルを作製する。最終的に解析した飛行時間型スペクトルは、典型的には試料に対するイオン化エネルギーの単一パルスによるシグナルを示すのではなく、むしろ多くのパルスからのシグナルの合計を示した。これにより、ノイズが減少され、ダイナミックレンジが増大する。次いで、この飛行時間型のデータをデータ処理に供する。CiphergenのProtein Chip(登録商標)ソフトウェアでは、典型的にTOFからM/Zへ変換して質量スペクトルを作製すること、計測器の片寄りを除去するためのベースライン減算、および高周波ノイズを減少させるための高周波ノイズフィルタリングをデータ処理に含む。
【0204】
生物マーカーの脱離および検出によって作製されるデータは、プログラム可能なデジタルコンピュータを用いて解析することができる。コンピュータプログラムがデータを解析して、検出される生物マーカーの数、任意にシグナルの強度および検出したそれぞれの生物マーカーについて決定された分子量を示す。データ解析には、生物マーカーのシグナル強度を決定する工程および予め定められた統計的分布から逸脱するデータを除去する工程を含むことができる。例えば、観察されたピークは、いくつかの参照を基準としてそれぞれのピークの高さを算出することによって正常化することができる。参照は、スケールがゼロにセットされている計測器およびエネルギー吸収分子などの化学物質によって発生するバックグラウンド・ノイズであることができる。
【0205】
コンピュータは、生じるデータを表示用の種々の形式に変換することができる。標準スペクトルを示すこともできるが、一つの有用な形式では、ピークの高さおよび質量情報だけが、スペクトル図から保持され、よりきれいなイメージが得られ、ほとんど同一の分子量を有する生物マーカーをより容易に見ることができる。もう一つの有用な形式において、二つ以上のスペクトルを比較して、固有の生物マーカーと、試料間でアップレギュレートまたはダウンレギュレートされる生物マーカーとを都合よく強調する。任意のこれらの形式を使用すると、特定の生物マーカーが試料に存在するかどうかを容易に決定することができる。
【0206】
解析は、一般に分析物からのシグナルを表すスペクトルのピークを同定することを含む。ピークの選択は、視覚的に行うことができるが、ピークの検出を自動化することができるCiphergenのProtein Chip(登録商標)ソフトウェア・パッケージの一部のようなソフトウェアを利用することもできる。一般に、このソフトウェアは、選択された閾値以上のシグナル対ノイズ比を有するシグナルを同定すること、およびピーク・シグナルの質量中心におけるピークの質量を標識することによって機能する。一つの有用な適用において、多くのスペクトルを比較して、質量スペクトルのうちのいくらかの選択された割合で存在する同一のピークを同定する。このソフトウェアの一つのバージョンでは、定義された質量範囲内の種々のスペクトルに表れる全てのピークをクラスター化し、質量(M/Z)クラスター中央に近い全てのピークに質量(M/Z)を割り当てる。
【0207】
データを解析するために使用するソフトウェアは、シグナルが本発明に従った生物マーカーに対応するシグナルにピークを表すどうかを決定するためのシグナルの解析のためのアルゴリズムを適用するコードを含むことができる。また、ソフトウェアでは、観察された生物マーカーのピークに関するデータを分類ツリーまたはANN解析に供して、生物マーカーのピークまたは生物マーカーのピークの組み合わせが存在するかどうか(これは、調査下の特定の臨床パラメーターの状態を示す)について決定することができる。データの解析は、試料の質量分光分析から直接的または間接的に得られる種々のパラメーターに「合わせ(keyed)」てもよい。これらのパラメーターは、1つもしくは複数のピークの有無、ピークまたはピークの群の形状、1つもしくは複数のピークの高さ、1つもしくは複数のピークの高さの対数、およびピークの高さのデータのその他の算術的操作を含むが、限定されない。
【0208】
VIII 学習セットを使用する臨床パラメーターに相関したBNP形態のパターンの発見
単一の標的分析物が、疾患の有無などの臨床パラメーターに相関するとして伝統的に使用されてきたが、科学者および医師は、複数のマーカー(makers)を使用することに興味を増大させてきている。この手法は、臨床試料中の多くの異なる分子の差次的な検出ができる遺伝子アレイおよび親和性質量分析などの新たな技術の結果として可能になった。臨床パラメーターと相関し得る分子パターンの発見には、試料中のタンパク質などの複数の分子の測定値の多変量解析を含む。
【0209】
したがって、一つの局面において、本発明は、BNP、BNP断片、例えばBNP79〜108、BNP77〜106、BNP39〜86、BNP53〜85、BNP66〜98、BNP30〜106、BNP11〜107、BNP9〜106、BNP69〜100、BNP76〜107、BNP69〜108、BNP80〜108、BNP81〜108、BNP83〜108、BNP30〜103、BNP3〜108、およびBNP79〜106、またはこれらと相互作用する生体分子を含むタンパク質のパターンを発見するための方法であって、パターンが、関心対象の臨床パラメーターと相関している方法を提供する。本方法は、上述した分子の測定を含むデータの学習セットで学習アルゴリズムを訓練する工程と、臨床パラメーターによって表される分類に未知試料を分類することができる分類アルゴリズムを作製する工程とを含む。
【0210】
本方法は、最初に、データの学習セットを提供する工程を含む。学習セットは、データオブジェクトを含む。それぞれのデータオブジェクトは、臨床データが発生した被験者を表す。データオブジェクトに含まれる臨床データは、BNP、BNPの修飾型、およびBNPの生体分子インタラクター、ならびにこれらを有する抗BNP抗体の特異的な測定を含む。それぞれの被験者は、少なくとも2つの異なる臨床パラメーター・クラスのうちの1つに分類される。例えば、臨床パラメーターは、疾患の有無、疾患のリスク、疾患段階、疾患治療に対する反応、または疾患のクラスを含むことができる。
【0211】
好ましい態様において、学習セットは、例えば、それぞれの列が試料を表すデータオブジェクトである表の形態である。列には、被験者を同定する情報、測定した各々の分子の特異的な測定値を提供し、および任意に被験者と関係する臨床パラメーターを同定するデータを含む。
【0212】
次いで、分類アルゴリズムを訓練するために学習セットを使用する。分類モデルは、データに存在する客観的なパラメーターに基づいて、データ本体を分類に分けることを試みる任意の適切な統計分類(または「学習」)法を使用して形成することができる。分類法は、教師付きまたは教師無しでよい。教師付き分類および教師無し分類の例は、Jain, 「Statistical Pattern Recognition: A Review」, IEEE Transactions on Pattern Analysis and Machine Intelligence, Vol. 22, No. 1, January 2000に記載されている。
【0213】
教師付き分類法では、それぞれのデータオブジェクトには、被験者が属する臨床パラメーターの分類を示すデータを含む。分類した分類プロセスの例は、直線回帰プロセス(例えば、複数の直線回帰(MLR)、部分的最小二乗法(PLS)回帰、および主成分回帰(PCR))、二分決定木(例えば、CART(分類法および回帰ツリー)などの再帰分割法)、逆行性伝播ネットワークなどの人工神経回路網、判別分析(例えば、ベイズ分類子またはフィッシャー解析)、ロジスティック分類子、およびサポートベクター分類子(サポートベクター機械)を含む。好ましい教師付き分類法は、再帰分割法である。再帰分割法では、未知試料に由来するスペクトルを分類するために再帰分割ツリーを使用する。
【0214】
その他の態様において、作製される分類モデルは、教師無し学習法を使用して形成することができる。教師無し分類法では、トレーニングデータセットの類似性に基づいて分類を学習することを試みる。この場合、被験者が属する分類を表すデータは、その被験者を表すデータオブジェクトに含まれないか、またはこのようなデータは、解析に使用されない。教師無し学習法は、クラスター分析を含む。クラスター化技術は、マッキーン(MacQueen)のK平均アルゴリズムおよびコホネン(Kohonen)の自己編成マップアルゴリズムを含む。
【0215】
生物情報を分類する際に使用される学習アルゴリズムは、例えば、PCT国際公開公報第01/31580号(Barnhill et al., 「Methods and devices for identifying patterns in biological systems and methods of use thereof」)、米国特許出願第2002 0193950 A1号(Gavin et al., 「Method or analyzing mass spectra」)、米国特許出願第2003 0004402 A1号(Hitt et al., 「Process for discriminating between biological states based on hidden patterns from biological data」)、および米国特許出願第2003 0055615 A1号(Zhang and Zhang,「Systems and methods for processing biological expression data」)に記載されている。
【0216】
従って、訓練された、学習アルゴリズムでは、試料を分類群のうちの1つに分類する分類モデルを生じると考えられる。分類モデルには、通常学習セットに含まれる全てのマーカーのサブセットが含まれる。分類モデルは、群のうちの1つに未知試料を分類するために使用することができる。
【0217】
実施例
以下の実施例は、本発明を例示するために用いられる。これらの実施例は、いかなる意味においても本発明の範囲を限定するものではない。
【0218】
実施例1:血液サンプリング
血液は、好ましくは20ゲージの多試料針および空の管を使用して静脈穿刺によって収集し、少量のためには、指先穿刺、足の裏の表面の穿刺、耳たぶ穿刺、その他で十分であろう。全血液採取の場合、血液検体が、訓練された研究員によってEDTAを含む血液収集管に収集される。血清収集の場合、血液検体が訓練された研究員によってトロンビンを含む血液収集管に収集される。血液は、5〜10分間血餅を生じさせ、血清を遠心分離によって不溶性物質から分離する。血漿収集の場合、血液検体が訓練された研究員によってクエン酸を含む血液収集管に収集され≧12分間遠心した。試料は、使用まで4℃で維持するか、または-20℃以下で凍結する。全血は、好ましくは凍結しない。
【0219】
実施例2:生化学的解析
BNPは、標準的な免疫アッセイ技術を使用して測定される。これらの技術は、タンパク質標的を特異的に結合するための抗体の使用を含む。BNPに対する抗体をN-ヒドロキシスクシンイミドビオチン(NHSビオチン)を用いて1抗体当たり約5つのNHS-ビオチン成分の割合でビオチン化した。次いで、ビオチン化抗体を標準アビジン384ウェルマイクロタイタープレートのウェルに添加し、プレートに結合していないビオチン化抗体を除去した。これにより、マイクロタイタープレートに抗BNP固相を形成した。他の抗BNP抗体は、標準的な手法を使用してSMCCおよびSPDP(Pierce, Rockford, IL)を用いてアルカリホスファターゼに結合させた。免疫アッセイ法は、TECAN Genesis RSP 200/8ワークステーションで行った。試験試料(10μL)をピペットでマイクロタイタープレートのウェルに添加し、60分間インキュベートした。次いで、試料を除去し、ウェルを150mMのNaCl、0.1%のアジ化ナトリウム、および0.02%のTween-20を含有する20mMホウ酸緩衝液(pH7.42)で洗浄した。次いで、アルカリホスファターゼ抗体抱合体をウェルに添加して、さらに60分間インキュベートし、その後、抗体抱合体を除去してウェルを洗浄緩衝液で洗浄した。基質(AttoPhos(登録商標), Promega, Madison, WI)をウェルに添加して、蛍光産物の形成速度を試験試料中のBNPの濃度と関連づけた。
【0220】
実施例3:スパイクした試験試料におけるBNPペプチドの同定
精製したBNP(BNP1〜108またはBNP77〜108のいずれか)をヒトの血液、血清、および血漿試験試料に添加して、22℃で5分から24時間の間インキュベートした。このインキュベーションの後、試料を以下の解析に供して試料中に存在するBNP由来ペプチドを同定する。
【0221】
試験試料は、抗BNP抗体(マウス・モノクローナルまたは組換えヒト抗体)で被覆した、チップを基にしたプラットフォーム(Ciphergen Biosystems ProteinChip(登録商標))を使用して解析した。表面を調製するために、ブドウ球菌(Staphylococcus)種に由来するプロテインAもしくはプロテインGまたはヘモフィルス(Haemophilus)種に由来するプロテインDを、室温で湿ったチャンバー内で2時間インキュベーションすることによってPS2プロテインチップ(登録商標)表面上のエポキシドに固定する。残りのエポキシド部位を0.5Mのエタノールアミンのリン酸緩衝食塩水(PBS)pH 8.0溶液によって15分間ブロックし、次いで、プロテインチップ(登録商標)を0.5%のTriton X-100を含むPBS溶液で1回、およびPBS溶液で3回それぞれ15分間洗浄する。プロテインチップ(登録商標)を風乾させる。約2μLのそれぞれの所望の抗体を2〜3mg/mLで個々のアレイ位置に適用する。チップを1〜10時間の湿った環境でインキュベートする。プロテインチップ(登録商標)を0.5%のTriton X-100を含むPBS溶液で1回、およびPBS溶液で3回それぞれ15分間洗浄し、乾燥させて、使用準備が整う。
【0222】
アレイ位置には、室温の湿った環境中で10分から24時間試料に曝露する。結合していない物質を所望のストリンジェンシーレベルを提供するように選択した1つまたは複数の適切な緩衝液で洗浄することよって除去する(すなわち、非特異性のバックグランド結合などのより低い親和性で結合した物質の除去)。適切な緩衝液は、PBS;0.05%v/v Tween 20を含むPBS;0.1〜3M尿素を含むPBS;150mMのNaCl、0.1%アジ化ナトリウム、および0.02%のTween-20を含有する20 mMホウ酸塩(pH 7.42);並びに0.1Mの尿素、50mM CHAPS、150mMのKCl、pH 7〜8を含む。このリストは、限定することは企図せず、さらなる緩衝液が当業者により容易に選択され、使用されうる。
【0223】
質量分析によって抗BNP抗体に結合したポリペプチドの同一性を決定するためには、SELDI-TOF-MSが使用される。例えば、米国特許第5,719,060号;第5,894,063号;第6,020,208号;第6,027,942号;および第6,124,137号を参照されたい(それぞれ、全ての表、図、および請求の範囲を含むその全体が本明細書に組み入れられる)。表面を乾燥させた後、マトリックス溶液(例えば、シナピン酸)を適用する。その後それぞれのアレイ位置に、レーザー脱離/イオン化源で信号を送り(interrogate)、SELDI-TOFによって発生したイオンを解析する。観察されたm/zを予測される分子量と照合することによってペプチドIDを得る。さらなる分解能は、米国特許出願2002/0182649号(参照として本明細書に組み入れられる)に開示されるMS/MS方法を使用して得ることができる。
【0224】
以下のBNP断片が、スパイクした血漿試料において同定された:BNP77〜106;BNP79〜106;BNP79〜108;BNP77〜108;BNP69〜100;BNP76〜107;BNP39〜86;BNP53〜85;BNP66〜98;BNP30〜103;BNP11〜107;およびBNP9〜106。加えて、メチオニンの酸化は、所与の断片の予測される分子量からの15〜16ダルトンの増加として観察された。1または2のメチオニンの有意な酸化が、メチオニン残基を含むこれらの断片で観察された。そのうえ、観察された断片のピーク下の領域の合計によって得られる「総BNP」の測定値は、使用した抗体によって添加した全てのBNPが検出されたわけではないことを示した。これにより、BNP断片がこれらの試料中に存在するという結論が導き出される。
【0225】
実施例4:患者の試験試料中のBNPペプチドの同定
胸痛の臨床評価のために提示されている7人のヒト患者から得られた血漿、血清、または血液試料を、実施例3に記載されているものと同じ解析に供する。最初の患者のスクリーニングは、訓練された医療関係者によって行われ、臨床診断は、従来の医学的手段によって得られる。血漿試料は、臨床所見においてそれぞれの患者から得られ、「見かけのBNP」濃度は、標準として精製されたBNPを使用して免疫アッセイ法によって測定した。
【0226】
10人の患者に関する結果の概要から、以下の表が提供される。

【0227】
以下のBNP断片は、種々の試料からの血漿試料中で同定された:BNP3〜108;BNP77〜108;BNP79〜108;BNP80〜108;BNP81〜108;およびBNP83〜108。BNP配列にまだ関連されていなかったさらなるピークが以下の分子量にみられる:約2576;約2676;約2792;約3154;約3370(図7AおよびBを参照されたい)。また、さらなる未確認のポリペプチドも抗体によって捕獲された。
【0228】
加えて、四量体のBNP77〜108の分子量に対応する断片も、ある試料において観察された(m/z約12,900)。特定の機構に拘束されたくないが、チオール-ジスルフィド相互交換が、アセチルコリンエステラーゼを含むタンパク質で報告された。ジスルフィド交換反応は、遊離チオールによるジスルフィドの硫黄原子に対する求核攻撃から始まる。BNP77〜108は、通常分子内のジスルフィド結合形成に関与するシステイン残基を含むので、高濃度の成熟BNPの形成により、還元型および酸化型BNP型の相互作用によって多量体の形成を生じ得る。
【0229】
加えて、BNP断片のバリエーションは、診断依存的なことが観察された。例えば、患者21231は、高レベルの観察可能なBNP3〜108および中間の「見かけのBNP」濃度を示し、その一方で、患者9240は、非常に高い「見かけのBNP」濃度にもかかわらず、わずかなBNP3〜108を示した。従ってBNP3〜108は、単独で、または抗体によって結合される多くのさらなる断片を反映するBNP濃度と共に、鬱血性心不全から不安定な狭心症または心筋梗塞を区別するであろう。
【0230】
実施例5
抗BNP-106.3(モノクローナル)、抗BNP-.5(オムニクローン)抗体は、Biositeによって供給された。抗体は、0.1Mの炭酸水素ナトリウム、0.05%のTritonX100 pH 9で0.5mg/mlの終濃度に希釈した。3μlのアリコートをReactive Surface(RS)プロテインチップ(登録商標)アレイ(Ciphergen)のスポットあたりに添加した。4℃で16時間カップリングを進行させた。チップを1M Tris HCl pH 8、次いで、BSA(1mg/ml)を含む0.5M TrisHCl、0.1% TritonX100 pH 8によってブロックした。過剰な抗体を1% TritonX100 PBSで、続いて10% PEG、0.1% TritonX100 PBSで、最後に0.1% TritonX100 PBSで洗い流した。
【0231】
精製したBNP(Biosite)をプロテアーゼ阻害剤カクテル(Roche)存在下/非存在下において50%のヒト血清(Intergen)、または50%のヒトEDTA血漿(Biosite)に希釈した。それぞれのBNP標準の100μlの一定分量をバイオプロセッサ(Ciphergen)においてRSプロテインチップ(登録商標)アレイ上に固定された抗体と共にインキュベートした。血漿(Biosite)中のBNPキャリブレーターを1:1に希釈し、150μlのアリコートを、別々にRSプロテインチップ(登録商標)アレイ上の抗体と共にインキュベートした。患者のEDTA血漿試料を1:1に希釈し、150μlの一定分量を、別々にRSプロテインチップ(登録商標)アレイ上の抗体と共にインキュベートした。振盪しながら4℃で16時間インキュベーション後、アレイを125μlの1M尿素、0.1% CHAPS、50mM TrisHCl pH 7.5で2回洗浄した。水ですすぎ、風乾した後、スポットあたり2μlのシナピン酸またはシアノヒドロキシケイ皮酸を添加した。保持されたタンパク質をPBSII質量分析計(Ciphergen)によって検出した。(図2AおよびBを参照されたい)。
【0232】
本発明は、当業者が本発明を作製し使用することができるように十分に詳細に説明し、かつ例示してあるが、本発明の趣旨および範囲を逸脱することなく種々の変更、改変、および改良が明らかである。
【0233】
当業者であれば、本発明がその目的を実施し、記載される結果および利点、並びに本明細書に固有のものを得るのによく適合していることを容易に理解するであろう。本明細書に記載される実施例は、好ましい態様の代表的なものであり、例示的なものであって、本発明の範囲を限定することを企図するものではない。当業者であれば、本発明の変更および他の用途を見いだすであろう。これらの変更は、本発明の趣旨の範囲内に含まれており、特許請求の範囲により定義されている。
【0234】
当業者であれば、本発明の範囲および精神から逸脱することなく、本明細書に開示される本発明に対して種々の置換および変更を行うことが可能であることを容易に理解するであろう。
【0235】
本明細書において言及されるすべての特許および刊行物は、本発明の属する技術分野の技術者のレベルを示す。すべての特許および刊行物は、それぞれの個々の刊行物が特異的かつ個別に本明細書の一部として本明細書に組み込まれているように示されているのと同じ程度に、参照により本明細書に組み込まれる。
【0236】
本明細書に例証的に記載された発明は、本明細書に特別に開示されていない任意の要素、限定もなく、適切に実施されるであろう。したがって、例えば、本明細書の各々の事例において、「含む」、「本質的に〜からなる」および「〜からなる」のいずれの用語も、他の2つのいずれの用語にも置き換えることができる。使用された用語および表現は、記述の用語として用いられ、限定するものではなく、このような用語および表現の使用において、示され、記載された特徴、またはその部分のいずれの均等物をも排除することは企図されないが、種々の修正がこの主張した発明の範囲に入ることが可能であることが認識される。したがって、本発明は、好ましい態様および任意の特徴により特に記載されているが、本明細書に開示された概念の修正および変形が当業者によって使用され、このような修正および変形が添付の請求の範囲により定義される本発明の範囲内に入ると見なされることが理解されるべきである。
【0237】
他の態様は、特許請求の範囲により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0238】
【図1】B型ナトリウム利尿ペプチド(BNP)前駆体およびこれらの断片の予想アミノ酸配列を示す。断片Arg77〜His108(「77〜108」として図上に示した)は、免疫アッセイ法によって検出するために調査した1つのアイソフォームである。
【図2】BNP免疫アッセイキャリブレーター溶液中のタンパク質の質量スペクトルを示す。BNP免疫アッセイ法のために使用したキャリブレーターのSELDI解析では、キャリブレーターが全長BNP(BNP77〜108)の他に多くのポリペプチドを含むことを示す。3464のピークは、BNP77〜108に対応する。66283.6のピークは、おそらくウシ血清アルブミンに対応する。
【図3】抗BNPモノクローナルを含む抗体試薬の質量スペクトルも、抗体の他に多くのタンパク質に対応するピークを含むことを示す。
【図4】SELDI免疫アッセイ法によって捕獲されたBNPキャリブレーター溶液からのタンパク質の質量スペクトルを示す。キャリブレーターからのタンパク質をヒト血漿にスパイクした。抗BNPを、タンパク質を捕獲するために使用した。6461の77〜108のアイソフォームの他に、分子量が以下のBNPペプチド断片に対応するピークが検出される:約3170.8Daの重さで、プロBNPのアミノ酸77〜106に対応するBNPアイソフォーム;約3280Daの重さで、プロBNPのアミノ酸79〜108に対応するBNPアイソフォーム;約3671Daの重さで、プロBNPのアミノ酸53〜85(3669)または66〜98(3674.4)に対応するBNPアイソフォーム;約8215.5Daの重さで、プロBNPのアミノ酸30〜103に対応するBNPアイソフォーム;約10875.3の重さで、プロBNPの11〜107(108755.)または9〜106(10874.4)に対応するBNPアイソフォーム。
【図5】種々のレベルの濃度のBNPキャリブレーターの質量スペクトルおよび検量線を示す。スペクトルは、キャリブレーターがBNP77〜108アイソフォームと同程度のBNP79〜108アイソフォームを含むことを示す。
【図6】種々のレベルの濃度のBNPキャリブレーターの質量スペクトルおよび検量線を示す。BNP77〜108は、ほとんど見えない。標準をBNP79〜106、BNP79〜108、およびBNP69〜100またはBNP76〜107のいずれかに対応するピークに対応するタンパク質の量に対して較正するときは、検量線が右にそれ、試験測定が本来のキャリブレーターキー(calibrator key)が示したものよりも多くのBNPを含むことを意味する。
【図7】被験者試料の質量スペクトルを示す。BNP77〜109に対応するピークは、検出することが困難である。しかし、BNPの分解型は、約3152(BNP77〜106)および約3282(BNP79〜108)で存在するように見える。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
BNP79〜108、BNP77〜106、BNP39〜86、BNP53〜85、BNP66〜98、BNP30〜106、BNP11〜107、BNP9〜106、BNP69〜100、BNP76〜107、BNP69〜108、BNP80〜108、BNP81〜108、BNP83〜108、BNP30〜103、BNP3〜108、およびBNP79〜106からなる群より選択される精製されたBNP断片。
【請求項2】
断片の1つまたは複数のメチオニン残基が酸化されている、請求項1記載の精製されたBNP断片。
【請求項3】
以下の工程を含む、BNPをアッセイする方法:
被験者試料から1つまたは複数のBNPポリペプチドを捕獲する工程;並びに、
BNP79〜108、BNP77〜106、BNP39〜86、BNP53〜85、BNP66〜98、BNP30〜106、BNP11〜107、BNP9〜106、BNP69〜100、BNP76〜107、BNP69〜108、BNP80〜108、BNP81〜108、BNP83〜108、BNP30〜103、BNP3〜108、およびBNP79〜106からなる群より選択される少なくとも1つの捕獲されたBNPポリペプチドの存在または量を特異的に測定する工程。
【請求項4】
1つまたは複数の捕獲されたBNPポリペプチドがBNP77〜108を含み、方法がBNP77〜108の存在または量を特異的に測定する工程をさらに含む、請求項3記載の方法。
【請求項5】
1つまたは複数のBNPポリペプチドが臨床試料に由来し、方法が少なくとも1つの捕獲されたBNPポリペプチドの存在または量を臨床パラメーターと相関させる工程をさらに含む、請求項3記載の方法。
【請求項6】
臨床パラメーターが疾患の徴候または症状である、請求項5記載の方法。
【請求項7】
疾患の徴候または症状が心臓血管疾患である、請求項5記載の方法。
【請求項8】
疾患が脳卒中、鬱血性心不全(CHF)、心臓虚血、全身性高血圧、および急性心筋梗塞症からなる群より選択される、請求項5記載の方法。
【請求項9】
BNPポリペプチドの存在または量を、試験試料を得たヒトにおける将来の有害事象の確率に対して相関させる工程をさらに含む、請求項5記載の方法。
【請求項10】
将来の有害事象が、脳血管攣縮によって生じる血管損傷、脳卒中後の患者における遅延性の神経性欠損の発症、死、心筋梗塞、および鬱血性心不全からなる群より選択される、請求項9記載の方法。
【請求項11】
少なくとも1つのBNPの生体分子インタラクター(interactor)またはBNPポリペプチドに対する抗体を特異的に測定する工程、および測定値を臨床パラメーターと相関させる工程をさらに含む、請求項5記載の方法。
【請求項12】
BNP1〜76、BNP77〜108、BNP1〜108、およびプレ-プロBNPからなる群より選択される少なくとも1つのBNPポリペプチドの存在または量を特異的に測定する工程、および測定値を臨床パラメーターと相関させる工程をさらに含む、請求項5記載の方法。
【請求項13】
臨床パラメーターが急性冠動脈症候群である、請求項5記載の方法。
【請求項14】
相関させる工程が、BNP79〜108、BNP77〜106、BNP39〜86、BNP53〜85、BNP66〜98、BNP30〜106、BNP11〜107、BNP9〜106、BNP69〜100、BNP76〜107、BNP69〜108、BNP80〜108、BNP81〜108、BNP83〜108、BNP30〜103、BNP3〜108、およびBNP79〜106からなる群より選択される少なくとも1つのBNPポリペプチドの存在または量を相関させる、請求項5記載の方法。
【請求項15】
少なくとも1つのBNPポリペプチドが抗体によって捕獲される、請求項3記載の方法。
【請求項16】
抗体が試料からの複数のBNPポリペプチドを捕獲する、請求項15記載の方法。
【請求項17】
抗体がモノクローナル抗体または抗体のプールである、請求項15記載の方法。
【請求項18】
捕獲する工程が:
支持体の表面に付着した抗体を含むSELDIプローブを提供する工程;
抗体を試料と接触させることによって、抗体が試料からのBNPポリペプチドを捕獲する工程を含み;かつ
特異的に測定する工程が、SELDIによって少なくとも1つの捕獲されたBNPポリペプチドの存在または量を特異的に測定する工程を含む、請求項3記載の方法。
【請求項19】
SELDIがクロマトグラフィー表面を有するSELDIバイオチップを使用して行われる、請求項18記載の方法。
【請求項20】
1つまたは複数のBNPポリペプチドが生物特異的捕獲試薬によって捕獲される、請求項3記載の方法。
【請求項21】
1つまたは複数のBNPポリペプチドがクロマトグラフィー吸着剤によって捕獲される、請求項3記載の方法。
【請求項22】
1つまたは複数の捕獲されたBNPポリペプチドの少なくとも1つのポリペプチドインタラクターを捕獲し、かつ測定する工程をさらに含む、請求項3記載の方法。
【請求項23】
1つまたは複数の捕獲されたBNPポリペプチドが質量分析によって測定される、請求項3記載の方法。
【請求項24】
1つまたは複数の捕獲されたBNPポリペプチドがSELDIによって測定される、請求項23記載の方法。
【請求項25】
捕獲する工程が、群より選択される複数のBNPポリペプチドを捕獲し、かつ特異的に測定する工程が、群より選択される複数のBNPポリペプチドを特異的に測定する、請求項3記載の方法。
【請求項26】
BNPに関連した病態によって特徴づけられる第1のクラスの複数の試料の各々から選択される1つもしくは複数のBNPポリペプチドの存在または量を特異的に測定する工程;
BNPに関連した病態が存在しないことによって特徴づけられる第2のクラスの複数の試料から、該1つもしくは複数のBNPポリペプチドの存在または量を特異的に測定する工程;および
測定値に基づいて、試験試料を第1のクラスまたは第2のクラスに分類する分類モデルを開発する工程
を含む、試験試料の病態を分類する方法であって、
BNPポリペプチドの少なくとも1つが、BNP79〜108、BNP77〜106、BNP39〜86、BNP53〜85、BNP66〜98、BNP30〜106、BNP11〜107、BNP9〜106、BNP69〜100、BNP76〜107、BNP69〜108、BNP80〜108、BNP81〜108、BNP83〜108、BNP30〜103、BNP3〜108、およびBNP79〜106からなる群より選択される、方法。
【請求項27】
BNPポリペプチドの少なくとも1つがBNP77〜108である、請求項26記載の方法。
【請求項28】
1つまたは複数のBNPポリペプチドが、BNP79〜108、BNP77〜106、BNP39〜86、BNP53〜85、BNP66〜98、BNP30〜106、BNP11〜107、BNP9〜106、BNP69〜100、BNP76〜107、BNP69〜108、BNP80〜108、BNP81〜108、BNP83〜108、BNP30〜103、BNP3〜108、およびBNP79〜106からなる群より選択される複数の断片を含む、請求項26記載の方法。
【請求項29】
複数の断片がSELDIによって測定される、請求項28記載の方法。
【請求項30】
以下の工程を含む方法:
(a)BNP1〜76、BNP77〜108、BNP1〜108、およびプレプロ-BNPからなる第1の群より選択される少なくとも1つのBNPポリペプチドと、BNP79〜108、BNP77〜106、BNP39〜86、BNP53〜85、BNP66〜98、BNP30〜106、BNP11〜107、BNP9〜106、BNP69〜100、BNP76〜107、BNP69〜108、BNP80〜108、BNP81〜108、BNP83〜108、BNP30〜103、BNP3〜108、およびBNP79〜106からなる第2の群より選択される少なくとも1つのBNPポリペプチドとを含むBNPポリペプチドを、試料から捕獲する工程;並びに、
(b)第1の群もしくは第2の群またはその両方から捕獲されたBNPポリペプチドを特異的に測定する工程。
【請求項31】
捕獲されたBNPポリペプチドが第1の群からのものである、請求項30記載の方法。
【請求項32】
捕獲されたBNPポリペプチドが第2の群からのものある、請求項30記載の方法。
【請求項33】
特異的に測定する工程が、第1の群からの少なくとも1つの捕獲されたBNPポリペプチドの量および第2の群から選択される少なくとも1つの捕獲されたBNPポリペプチドの量を特異的に測定する、請求項30記載の方法。
【請求項34】
それぞれの特異的に測定されたBNPポリペプチドの量の相対比を決定する工程をさらに含む、請求項33記載の方法。
【請求項35】
BNPポリペプチドが生物特異的捕獲試薬によって捕獲される、請求項30記載の方法。
【請求項36】
BNPポリペプチドがクロマトグラフィー吸着剤によって捕獲される、請求項35記載の方法。
【請求項37】
第2の群から選択される少なくとも1つのBNPポリペプチドを特異的に測定する工程をさらに含む、請求項30記載の方法。
【請求項38】
BNPポリペプチドと相互作用するポリペプチドを捕獲し、かつ測定する工程をさらに含む、請求項30記載の方法。
【請求項39】
特異的に測定する工程が質量分析によって行われる、請求項30記載の方法。
【請求項40】
特異的に測定する工程が親和性質量分析によって行われる、請求項30記載の方法。
【請求項41】
試料が被験者試料であり、方法が、特異的に測定したBNPポリペプチドを被験者の臨床パラメーターと相関させる工程をさらに含む、請求項30記載の方法。
【請求項42】
臨床パラメーターが急性冠動脈症候群の有無である、請求項30記載の方法。
【請求項43】
BNP断片と相互作用するポリペプチドを発見するための方法であって:
(a)BNP79〜108、BNP77〜106、BNP39〜86、BNP53〜85、BNP66〜98、BNP30〜106、BNP11〜107、BNP9〜106、BNP69〜100、BNP76〜107、BNP69〜108、BNP80〜108、BNP81〜108、BNP83〜108、BNP30〜103、BNP3〜108、およびBNP79〜106からなる群より選択されるBNP断片を生物特異的捕獲試薬で捕獲する工程;
(b)生物特異的捕獲試薬またはBNP断片に結合していない分子を除去する工程;および
(c)捕獲されたBNP断片に結合した分子を測定する工程
を含む方法。
【請求項44】
分子がSELDIによって測定される、請求項43記載の方法。
【請求項45】
以下の工程を含む方法:
(a)被験者を表す複数のデータオブジェクトを含む学習セットを提供する工程であって、それぞれのデータオブジェクトが、BNP79〜108、BNP77〜106、BNP39〜86、BNP53〜85、BNP66〜98、BNP30〜106、BNP11〜107、BNP9〜106、BNP69〜100、BNP76〜107、BNP69〜108、BNP80〜108、BNP81〜108、BNP83〜108、BNP30〜103、BNP3〜108、およびBNP79〜10からなる群より選択されるBNPポリペプチドの特異的な測定値を表すデータを含む、工程;および
(b)少なくとも1つの特異的な測定値と臨床パラメーターとの間の相関を決定する工程。
【請求項46】
学習セットを提供する工程が:
i.試料からのBNPポリペプチドを抗体で捕獲する工程、および
ii.群より選択されるBNP断片を含むBNPポリペプチドの1つまたは複数を特異的に測定する工程、
を含む、請求項45記載の方法。
【請求項47】
1つまたは複数のBNPポリペプチドがSELDIによって測定される、請求項46記載の方法。
【請求項48】
以下の工程を含む方法:
(a)被験者を表す複数のデータオブジェクトを含む学習セットを提供する工程であって、それぞれの被験者は、複数の異なる臨床パラメーターの少なくとも1つに分類されており、それぞれのデータオブジェクトは、被験者試料からの複数のBNPポリペプチドの特異的な測定値を表すデータを含み、少なくとも1つのBNPポリペプチドは、BNP79〜108、BNP77〜106、BNP39〜86、BNP53〜85、BNP66〜98、BNP30〜106、BNP11〜107、BNP9〜106、BNP69〜100、BNP76〜107、BNP69〜108、BNP80〜108、BNP81〜108、BNP83〜108、BNP30〜103、BNP3〜108、およびBNP79〜106からなる群より選択されるBNP断片である工程;および、
(b)学習セットで学習アルゴリズムを訓練することにより、臨床パラメーターに従ってデータオブジェクトを分類する分類モデルを作製する工程。
【請求項49】
臨床パラメーターが、疾患の有無;疾患のリスク、疾患段階;疾患治療に対する応答;および疾患のクラスから選択される、請求項48記載の方法。
【請求項50】
学習セットがBNPポリペプチドのポリペプチドインタラクターの特異的な測定値を表すデータをさらに含む、請求項48記載の方法。
【請求項51】
学習セットを提供する工程が:
i.試料からのBNPポリペプチドを抗体で捕獲する工程、および
ii.捕獲されたBNPポリペプチドを特異的に測定する工程、
を含む、請求項48記載の方法。
【請求項52】
捕獲されたポリペプチドがSELDIによって測定される、請求項51記載の方法。
【請求項53】
学習アルゴリズムが教師無し(unsupervised)である、請求項48記載の方法。
【請求項54】
学習アルゴリズムが教師付き(supervised)であり、それぞれのデータオブジェクトが被験者の臨床パラメーターを表すデータをさらに含む、請求項48記載の方法。
【請求項55】
臨床パラメーターが未知の被験者からの被験者データに対して分類モデルを使用し、臨床パラメーターに従って被験者を分類する工程をさらに含む、請求項48記載の方法。
【請求項56】
臨床パラメーターが急性冠動脈症候群の有無である、請求項55記載の方法。
【請求項57】
教師付き学習アルゴリズムが、直線回帰プロセス、二分決定木(binary decision tree)、人工神経回路網、判別分析、ロジスティック分類子、再帰分割法、およびサポートベクター分類子から選択される、請求項54記載の方法。
【請求項58】
教師付き学習アルゴリズムが、再帰分割法である、請求項54記載の方法。
【請求項59】
BNP免疫アッセイ法のための免疫アッセイキャリブレーターを認定(qualify)するための方法であって:
(a)指定された濃度の1つまたは複数のBNPポリペプチドを含む免疫アッセイキャリブレーターをBNP免疫アッセイに提供する工程;
(b)キャリブレーターからのポリペプチドをBNPポリペプチドに対する抗体で捕獲する工程;並びに
(c)BNP79〜108、BNP77〜106、BNP39〜86、BNP53〜85、BNP66〜98、BNP30〜106、BNP11〜107、BNP9〜106、BNP69〜100、BNP76〜107、BNP69〜108、BNP80〜108、BNP81〜108、BNP83〜108、BNP30〜103、BNP3〜108、およびBNP79〜106からなる群より選択される少なくとも1つのポリペプチドの量を特異的に測定する工程を含み、これにより測定された量が、免疫アッセイキャリブレーターの品質の指標を提供する、方法。
【請求項60】
BNP1〜76、BNP77〜108、BNP1〜108、およびプレ-プロBNPからなる群より選択される少なくとも1つのBNPポリペプチドを特異的に測定する工程をさらに含む、請求項59記載の方法。
【請求項61】
抗体によって捕獲された総ポリペプチドの関数として、BNP1〜76、BNP77〜108、BNP1〜108、およびプレ-プロBNPからなる群より選択される少なくとも1つのBNPポリペプチドの量を決定する工程をさらに含む、請求項60記載の方法。
【請求項62】
抗体が、商業的な免疫アッセイ法における免疫アッセイキャリブレーターと共に使用される抗体である、請求項59記載の方法。
【請求項63】
量がSELDIによって測定される、請求項59記載の方法。
【請求項64】
BNPポリペプチドと特異的に結合する免疫グロブリン試薬を認定するための方法であって:
(a)質量分析によって免疫グロブリン試薬を解析する工程;および、
(b)試薬中の無処理の免疫グロブリンおよび免疫グロブリン断片の相対量を決定する工程
を含む方法。
【請求項65】
BNP免疫アッセイ用の抗体試薬中における、BNPポリペプチドに対する修飾型抗体を測定する工程を含む方法。
【請求項66】
試薬中の無修飾型抗体を測定する工程、および無修飾抗体の測定値を修飾型抗体の測定値と比較する工程をさらに含む、請求項65記載の方法。
【請求項67】
抗体がモノクローナル抗体またはポリクローナル抗体である、請求項65記載の方法。
【請求項68】
免疫アッセイ較正試料中の、BNP79〜108、BNP77〜106、BNP39〜86、BNP53〜85、BNP66〜98、BNP30〜106、BNP11〜107、BNP9〜106、BNP69〜100、BNP76〜107、BNP69〜108、BNP80〜108、BNP81〜108、BNP83〜108、BNP30〜103、BNP3〜108、およびBNP79〜106からなる群より選択される少なくとも1つのBNP断片の量を特異的に測定する工程を含む、請求項65記載の方法。
【請求項69】
測定がSELDIによって行われる、請求項65記載の方法。
【請求項70】
BNP79〜108、BNP77〜106、BNP39〜86、BNP53〜85、BNP66〜98、BNP30〜106、BNP11〜107、BNP9〜106、BNP69〜100、BNP76〜107、BNP69〜108、BNP80〜108、BNP81〜108、BNP83〜108、BNP30〜103、BNP3〜108、およびBNP79〜106からなる群より選択されるBNP断片の少なくとも1つに特異的に結合するが全てに結合しない抗体。
【請求項71】
群より選択されるBNP断片の一つおよび一つのみと特異的に結合する抗体。
【請求項72】
モノクローナル抗体である、請求項70記載の抗体。
【請求項73】
抗体を選択する方法であって:
BNP79〜108、BNP77〜106、BNP39〜86、BNP53〜85、BNP66〜98、BNP30〜106、BNP11〜107、BNP9〜106、BNP69〜100、BNP76〜107、BNP69〜108、BNP80〜108、BNP81〜108、BNP83〜108、BNP30〜103、BNP3〜108、およびBNP79〜106からなる群より選択される複数の断片を提供する工程、および
該複数の断片に結合する1つまたは複数の抗体を同定して該選択した抗体を提供する工程、を含む方法。
【請求項74】
選択された抗体が複数の個々の抗体をプールすることよって得られる、請求項73記載の方法。
【請求項75】
選択された抗体が複数の断片のそれぞれのメンバーに共通な領域と結合する抗体を選択することよって得られる、請求項73記載の方法。
【請求項76】
選択された抗体がモノクローナル抗体である、請求項73記載の方法。
【請求項77】
選択された抗体がファージディスプレイよって同定される、請求項73記載の方法。
【請求項78】
選択された抗体がオムニクローナル(Omniclonal)抗体である、請求項73記載の方法。
【請求項79】
選択された抗体を固相に結合する工程をさらに含む、請求項73記載の方法。
【請求項80】
検出可能な標識に対して選択された抗体を抱合する工程をさらに含む、請求項73記載の方法。
【請求項81】
複数の断片が複数のプレプロ-BNPの断片である、請求項73記載の方法。
【請求項82】
複数の断片が複数のBNP1〜108の断片を含む、請求項73記載の方法。
【請求項83】
複数の断片が複数のBNP77〜108の断片を含む、請求項73記載の方法。
【請求項84】
複数の断片がBNP79〜108、BNP77〜106、BNP39〜86、BNP53〜85、BNP66〜98、BNP30〜106、BNP11〜107、BNP9〜106、BNP69〜100、BNP76〜107、BNP69〜108、BNP80〜108、BNP81〜108、BNP83〜108、BNP30〜103、BNP3〜108、およびBNP79〜106からなる群より選択される1つまたは複数のBNP1〜108断片を含む、請求項83記載の方法。
【請求項85】
抗体が、群より選択される少なくとも1つの断片に対する特異的な結合を欠いている、請求項83記載の方法。

【図1】
image rotate

【図2A】
image rotate

【図2B】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4A】
image rotate

【図4B】
image rotate

【図4C】
image rotate

【図4D】
image rotate

【図5A】
image rotate

【図5B】
image rotate

【図6A】
image rotate

【図6B】
image rotate

【図6C】
image rotate

【図7A】
image rotate

【図7B】
image rotate


【公表番号】特表2006−527190(P2006−527190A)
【公表日】平成18年11月30日(2006.11.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−513130(P2006−513130)
【出願日】平成16年4月19日(2004.4.19)
【国際出願番号】PCT/US2004/012067
【国際公開番号】WO2004/094460
【国際公開日】平成16年11月4日(2004.11.4)
【出願人】(501497253)サイファージェン バイオシステムズ インコーポレイテッド (21)
【出願人】(500204577)バイオサイト インコーポレイテッド (14)
【Fターム(参考)】