説明

ナトリウム/モリブデン粉末圧縮体およびその同じものを製造するための方法

1態様に従う金属物品を製造するための方法は、以下の:ナトリウム/モリブデン複合金属粉末の供給物を提供し;そのナトリウム/モリブデン複合金属粉末を十分な圧力の下で圧縮して予備成形された物品を形成し;その予備成形された物品を密閉された容器に入れ;その密閉された容器の温度をモリブデンの焼結温度より低い温度まで上げ;そして、その密閉された容器に、物品の密度を理論密度の少なくとも約90%まで増大させるのに十分な時間の間等方圧をかける;ことを含んでいてよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は概して金属粉末組成物に、より具体的にはナトリウム/モリブデン粉末圧縮体(powder compacts)およびナトリウム/モリブデン粉末圧縮体を作るための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
モリブデンコーティングは当技術で周知であり、多種多様な適用において様々なプロセスにより適用される可能性がある。モリブデンコーティングに関する1つの適用は、光電池の製造にある。より具体的には、あるタイプの高効率多結晶性薄膜光電池はCuInGaSeを含む吸収層を含む。そのような光電池は一般に、吸収層を構成する元素にちなんで“CIGS”光電池と呼ばれる。一般的な構造において、CuInGaSe吸収層はその上に堆積したモリブデンフィルムを有するソーダ石灰ガラス支持体上で形成する、または“成長させる”。興味深いことに、モリブデンフィルムを通って拡散するソーダ石灰ガラス支持体からの少量のナトリウムは電池の効率を増大させるのに役立つことが分かっている。例えば、K. Ramanathan et al, Photovolt. Res. Appl. 11 (2003), 225; John H. Scofield et al., Proc. of the 24th IEEE Photovoltaic Specialists Conference, IEEE, New York, 1995, 164-167を参照。そのような効率の増大は、CIGS電池がソーダ石灰ガラス支持体上に堆積している構造において自動的に実現されるが、他のタイプの支持体が用いられる場合に効率の増大を実現するのはかなり難しいことが証明されている。
【0003】
例えば、電池をより軽く作ることができる、および様々な形状に容易に形作ることができるように柔軟な支持体上にCIGS電池を形成することにかなりの関心がある。そのような電池は作られて使用されているが、含まれている柔軟な支持体はナトリウムを含まない。従って、そのような支持体上に製造されたCIGS電池の性能はモリブデン層にナトリウムをドープすることにより向上する可能性がある。例えば、Jae Ho Yun et al., Thin Solid Films, 515, 2007, 5876-5879を参照。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】K. Ramanathan et al, Photovolt. Res. Appl. 11 (2003), 225
【非特許文献2】John H. Scofield et al., Proc. of the 24th IEEE Photovoltaic Specialists Conference, IEEE, New York, 1995, 164-167
【特許文献3】Jae Ho Yun et al., Thin Solid Films, 515, 2007, 5876-5879
【発明の概要】
【0005】
1態様に従う金属物品を製造するための方法は、以下のことを含んでいてよい:ナトリウム/モリブデン複合金属粉末の供給物を提供し;そのナトリウム/モリブデン複合金属粉末を十分な圧力の下で圧縮して予備成形された物品を形成し;その予備成形された物品を密閉された容器に入れ;その密閉された容器の温度をモリブデンの焼結温度より低い温度まで上げ;そして、その密閉された容器に、物品の密度を理論密度の少なくとも約90%まで増大させるのに十分な時間の間、等方圧(isostatic pressure)をかける。このプロセスに従って製造された金属物品も開示する。
【0006】
金属物品を製造するための別の方法は、以下のことを含んでいてよい:ナトリウム/モリブデン複合金属粉末の供給物を提供し;そのナトリウム/モリブデン複合金属粉末を十分な圧力の下で圧縮して予備成形された物品を形成し;その予備成形された物品を密閉された容器に入れ;その密閉された容器の温度をモリブデン酸ナトリウムの融点より低い温度まで上げ;そして、その密閉された容器に、物品の密度を理論密度の少なくとも約97%まで増大させるのに十分な時間の間、等方圧をかける。
【0007】
本発明の説明的であり現在好まれている態様を付随する図面において示し、ここで:
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】図1は、ナトリウム/モリブデン複合金属粉末を製造するために利用してよい基本的なプロセスの工程の1態様の図式的表現である;
【図2】図2は、その複合金属粉末混合物を加工するための方法を描写するプロセス流れ図である;
【図3】図3は、ナトリウム/モリブデン金属層を有する光電池の立面図での拡大された断面図である。
【図4】図4は、ナトリウム/モリブデン複合金属粉末混合物の走査型電子顕微鏡画像である;
【図5a】図5aは、図4の画像中のナトリウムの分散を示す、エネルギー分散X線分光分析により生成されたスペクトル図表である;
【図5b】図5bは、図4の画像中のモリブデンの分散を示す、エネルギー分散X線分光分析により生成されたスペクトル図表である;
【図6】図6は、パルス燃焼噴霧乾燥装置の1態様の図式的表現である;および
【図7】図7は、本明細書で提供される教示に従って製造された典型的な複合金属粉末のふるい分け画分の分布(screen fraction distributions)を示すプロットである;
【図8a】図8aは、容器および予備成形された金属物品の分解透視図である;
【図8b】図8bは、予備成形された金属物品を含む密閉された容器の透視図である;
【図9】図9は、実行1のプロセスに従って製造された金属物品の絵で表した表現であり、その中に含まれる複数の不均質性(inhomogeneiaties)を示す;および
【図10】図10は、実行2のプロセスに従って製造された金属物品の絵で表した表現である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
ナトリウム/モリブデン複合金属粉末12を製造するためのプロセスまたは方法10を図1において図説し、簡潔に記述すると、それはモリブデン金属粉末14の供給および例えばモリブデン酸ナトリウム(NaMoO)の粉末のようなナトリウム化合物16の供給を含んでいてよい。モリブデン金属粉末14およびモリブデン酸ナトリウム粉末16を液体18、例えば水と組み合わせてスラリー20を形成する。次いでそのスラリー20を、ナトリウム/モリブデン複合金属粉末12を製造するために、例えばパルス燃焼噴霧乾燥機22により噴霧乾燥することができる。
【0010】
ここで、主に図2を参照し、そのナトリウム/モリブデン複合金属粉末12はその回収されたままの、または“未処理の(green)”形で様々なプロセスおよび適用のための供給原料24として用いられてよく、その多くが本明細書において示され、記述されており、その他のものは、本明細書で提供される教示に馴染んだ後当業者に明らかになるであろう。あるいは、その“未処理の”複合金属粉末12は、例えば焼結26により、分類28により、またはそれらの組み合わせにより、供給原料24として用いられる前にさらに加工されてよい。ナトリウム/モリブデン複合金属粉末供給原料24は(例えば“未処理の”形または加工された形のどちらかで)、ナトリウム/モリブデンフィルム32を支持体34の上に堆積させるために熱溶射堆積プロセス30において用いられてよく、図3において最も良く分かる。そのようなナトリウム/モリブデンフィルム32は多種多様な適用において都合よく用いられてよい。例えば、下記でさらに詳細に記述されるように、そのナトリウム/モリブデンフィルム32は光電池36の一部を構成していてよく、光電池36の効率を向上させるために用いられてよい。交互の堆積プロセスにおいて、複合金属粉末12は印刷プロセス38における供給原料24として用いられてもよく、それは支持体34上にナトリウム/モリブデンフィルムまたはコーティング32’を形成するために用いられてもよい。
【0011】
さらにもっと別の態様において、複合金属粉末供給原料24は、ここでもその“未処理の”形または加工された形のどちらかで、金属製品42、例えばスパッタ標的44を製造するために工程40において圧密化されて(consolidated)よい。金属製品42は圧密化40から直接“そのまま”用いられてよい。あるいは、その圧密化された製品はさらに例えば焼結46により加工されてよく、その場合、その金属製品42は焼結された金属製品を構成するであろう。金属製品42がスパッタ標的44を(すなわち、焼結された形または焼結されていない形のどちらかで)構成する場合、そのスパッタ標的44は、支持体34上にナトリウム/モリブデンフィルム32’’を堆積させるためにスパッタ堆積装置(示していない)において用いることができる。図3参照。
【0012】
ここで、主に図4、5a、5bを参照し、そのナトリウム/モリブデン複合金属粉末12は複数の一般に球状の形をした粒子を含み、それはそれ自体がより小さい粒子の凝集体である。従って、本明細書においてその複合金属粉末12はあるいは“BB”で形成された“サッカーボール”として特徴付けることができる。さらに、図5aおよび5bにより明示されるように、ナトリウムはモリブデンの内部で高度に分散している。すなわち、本発明のナトリウム/モリブデン複合粉末は単なるナトリウム金属粉末とモリブデン金属粉末の組み合わせではなく、むしろ融合または凝集体化して一緒になったナトリウムおよびモリブデンサブ粒子(sub−particles)の実質的に均質な分散物または複合混合物を含む。そのナトリウム/モリブデン金属粉末複合物は高密度でもあり、好都合な流動特性を有している。本明細書においてさらに詳細に論じられるように、本明細書で提供される教示に従って製造された典型的なナトリウム/モリブデン複合金属粉末12は、約2g/cc〜約3g/ccの範囲のScott密度を有していてよい。本明細書で示され、記述される様々な実施例の組成物に関して、Hall流動性は約35s/50g未満から30s/50gほどの低さまでに及ぶ。
【0013】
本発明の重要な利点は、それがそうでなければ一般に用いられる方法によっては達成するのが困難または不可能であるモリブデンおよびナトリウムの組み合わせを提供することである。従って、本発明は、インゴット冶金プロセスを用いて達成するのが困難または不可能である、ナトリウム/モリブデン粉末内部の、およびその粉末から製造された金属物品内部のナトリウムの有意により高い濃度を得るための手段を提供する。さらに、たとえそのナトリウム/モリブデン複合金属粉末が粉末状の材料を含んでいるとしても、それはナトリウムおよびモリブデン粒子の単なる混合物ではない。代わりに、そのナトリウムおよびモリブデンサブ粒子は実際にはその粉末状の金属製品の個々の粒子がナトリウムおよびモリブデンの両方を含むように融合して一緒になっている。従って、本発明に従うナトリウム/モリブデン複合粉末を含む粉末状供給原料24は、(例えば比重の差により)分離してナトリウム粒子およびモリブデン粒子にはならないであろう。さらに、そのナトリウム/モリブデン複合金属粉末から製造されたコーティングまたはフィルムは、CIGS光電池の効率を増大させるための有意により高い量のナトリウムを有するであろう。そのような堆積プロセスは、そのそれぞれが異なる堆積速度を有するであろう別々のモリブデンおよびナトリウム粒子の共堆積または別々のモリブデンおよびナトリウムを含むスパッタ標的の共堆積に頼らないため、そのフィルムの化学組成はそのナトリウム/モリブデン金属粉末の組成に類似している可能性がある。
【0014】
ナトリウムがモリブデン全体に渡って高度に、かつ均一に分散している複合金属粉末を提供する能力と関係する利点の他に、本明細書で開示される複合金属粉末は高い密度および流動性によっても特徴付けられ、それによりその複合金属粉末を当技術において現在既知である、または将来開発される可能性のある多種多様な粉末冶金プロセスにおいて都合よく用いることが可能になる。例えば、そのナトリウムモリブデン複合金属粉末は、ナトリウム/モリブデンフィルムまたはコーティングを様々な支持体上に堆積させるために多種多様な熱溶射堆積装置および関係するプロセスにおいて容易に用いることができる。その粉末は多種多様な圧密化プロセス、例えば冷および熱間等方圧プレスプロセスならびにプレスおよび焼結プロセス、熱間軸プレス(hot axial pressing)プロセス、ならびに押し出しにおいても容易に用いることができる。その高い流動性は本明細書で開示される粉末が容易に型穴を満たすことを可能にし、一方でその高い密度は後の焼結の間に起こる可能性がある縮みを最小限にする。焼結は、不活性雰囲気中で、または水素中で加熱してその圧縮体の酸素含有量をさらに低減させることにより成し遂げることができる。
【0015】
別の態様において、そのナトリウム/モリブデン複合金属粉末はスパッタ標的を形成するために用いることができ、次いでそれを後のナトリウム/モリブデンフィルムおよびコーティングを形成するためのスパッタ堆積プロセスにおいて用いることができる。1態様において、そのようなナトリウム/モリブデンフィルムは光電池のエネルギー変換効率を増大させるために用いることができる。
【0016】
本発明のナトリウム/モリブデン複合金属粉末12、それらを製造するための方法、およびどのようにそれらを用いて支持体上のナトリウム/モリブデンコーティングまたはフィルムを製造することができるかを簡潔に記述したが、その複合粉末の様々な態様、ならびにその複合粉末を製造する、および用いるための方法を、ここで詳細に記述する。
【0017】
ここで、戻って主に図1を参照し、ナトリウム/モリブデン複合粉末12を製造するための方法10は、モリブデン金属粉末14の供給およびナトリウム化合物16の供給を含んでいてよい。モリブデン金属粉末14は約0.1μm〜約15μmの範囲の粒径を有するモリブデン金属粉末を含んでいてよいが、他の大きさを有するモリブデン金属粉末14を同様に用いてもよい。本発明における使用に適したモリブデン金属粉末は、Climax Molybdenum, a Freeport−McMoRan Companyから、およびClimax Molybdenum Company, a Freeport−McMoRan Company, Ft. Madison Operations、アイオワ州フォートマディソン(米国)から商業的に入手可能である。あるいは、他の源からのモリブデン金属粉末を用いてもよい。
【0018】
ナトリウム化合物16はモリブデン酸ナトリウムをそれの無水形(すなわちNaMoO)で、またはその二水和物(すなわちNaMoO・2HO)としてのどちらかで含んでいてよいが、ナトリウム元素、NaOおよびNa(OH)(それらに限定されない)を含む他のナトリウムを含む物質を用いてもよい。モリブデン酸ナトリウムは通常粉末の形で入手可能であり、広い範囲の大きさのいずれを含んでいてもよい。モリブデン酸ナトリウムは水中で可溶性であるため、モリブデン酸ナトリウム粉末16の粒径は水が液体18として用いられる態様では特に重要ではない。本発明における使用に適したモリブデン酸ナトリウム粉末はアイオワ州フォートマディソン(米国)のClimax Molybdenum Company, a Freeport−McMoRan Company, Ft. Madison Operationsから商業的に入手可能である。あるいは、他の源からモリブデン酸ナトリウムを得てもよい。
【0019】
モリブデン金属粉末14およびモリブデン酸ナトリウム16は液体18と混合されてスラリー20を形成してよい。一般的に言って、液体18は脱イオン水を含んでいてよいが、他の液体、例えばアルコール類、揮発性の液体、有機性の液体、およびそれらの様々な混合物も用いられてよく、それは本明細書で提供される教示に馴染んだ後当業者に明らかになるであろう。従って、本発明は本明細書で記述される特定の液体18に限定されるものと考えられるべきではない。液体18に加えてさらに結合剤48も用いられてよいが、結合剤48の添加は必須ではない。本発明における使用に適した結合剤48にはポリビニルアルコール(PVA)、Carbowax、およびそれらの混合物が含まれるが、それらに限定されない。結合剤48は、モリブデン金属粉末14およびモリブデン酸ナトリウム16を添加する前に、液体18と混合することができる。あるいは、結合剤48はスラリー20に、すなわちモリブデン金属14およびモリブデン酸ナトリウム16を液体18と組み合わせた後に添加することができるであろう。
【0020】
スラリー20は約15重量%から約25重量%までの液体(例えば、液体18単独、または結合剤48と組み合わせた液体18のどちらか)を含んでいてよく、残りはモリブデン金属粉末14およびナトリウム化合物16を含む。ナトリウム化合物16(例えばモリブデン酸ナトリウム)は、望ましい量の“保持された”ナトリウムを有する複合金属粉末12および/または最終的な製品をもたらすのに適した量で添加することができる。保持されたナトリウムの量は広い範囲の要因に応じて変動するので、本発明はいずれかの特定の量のナトリウム化合物16の提供に限定されるものと考えられるべきではない。スラリー20において提供されるであろうナトリウム化合物16の量に影響を及ぼす可能性のある要因には、製造されるであろう個々の製品、例えばナトリウム/モリブデン複合金属粉末12が焼結しているかどうか、および望ましい量の保持されたナトリウムが粉末供給原料(例えば24)中に、または堆積したフィルムもしくはコーティング(例えば32、32’、32’’)中に存在するかどうかに応じて採用される可能性のある個々の“下流の”プロセスが含まれるが、それらに限定されない。しかし、例として、モリブデン金属14およびモリブデン酸ナトリウム16の混合物は約1重量%から約15重量%までのモリブデン酸ナトリウム18を含んでいてよい。従って、全体として、スラリー20は約0重量%(すなわち結合剤無し)から約2重量%までの結合剤48を含んでいてよい。スラリー20の残りは、モリブデン金属粉末14(例えば約58重量%から約84重量%までの範囲の量で)およびモリブデン酸ナトリウム16(例えば約1重量%から約15重量%までの範囲の量で)を含んでいてよい。
【0021】
次いでスラリー20を、本明細書で提供される教示に馴染んだ後当業者に明らかになるであろうように、複合金属粉末製品12を製造するために、当技術で現在既知である、または将来開発される可能性のある広い範囲のプロセスのいずれかにより噴霧乾燥してよい。従って、本発明はいずれかの特定の乾燥プロセスに限定されるものと考えられるべきではない。しかし、例として、一態様において、スラリー20をパルス燃焼噴霧乾燥機22で噴霧乾燥する。より具体的には、パルス燃焼噴霧乾燥機22は“金属粉末および同じものを製造するための方法”と題されたLarink,Jr.の米国特許第7,470,307号で示され記述されているタイプのものであってよく、それをそれが開示する全てに関して本明細書に明確に援用する。
【0022】
ここで図1および6を参照すると、スラリー20をパルス燃焼噴霧乾燥機22の中に供給してよく、そこでスラリー20は、音速または音速付近でパルス化されている(pulsed)高温ガス(単数または複数)50の流れに衝突する(impinges)。高温ガス50の音速パルスはスラリー20と接触し、実質的にすべての水を排除し(drive−off)、複合金属粉末製品12を形成する。高温ガス50の脈動流(pulsating stream)の温度は約300℃〜約800℃の範囲、例えば約465℃〜約537℃、より好ましくは約500℃であってよい。一般的に言えば、高温ガス50の脈動流の温度はスラリー構成要素の融点未満であるが、ナトリウム元素の融点未満ではない。しかし、スラリー20は通常はかなりの量の熱がスラリー20に移るのに十分に長い間高温ガス50と接触せず、それはナトリウム金属の融点が低いため重要である。例えば、典型的な態様において、スラリー20は一般に高温ガス50の脈動流との接触の間に約93℃〜約121℃の範囲の温度まで加熱されると推定される。
【0023】
上記のように、高温ガス50の脈動流は、当分野において周知であり容易に商業的に入手可能であるタイプのパルス燃焼システム22によりもたらすことができる。例として、1態様において、パルス燃焼システム22は米国特許第7,470,307号において示され記述されているタイプのパルス燃焼システムを含んでいてよい。ここで図6を参照すると、燃焼用空気51を入口52を通してパルス燃焼システム22の外側シェル54の中に低圧で(例えばポンプで)供給することができ、そこでそれは一方向空気弁56を通って流れる。次いで空気は同調燃焼室(tuned combustion chamber)58に入り、ここで燃料が燃料弁または燃料口60を通して添加される。次いで燃料−空気混合物を種火(pilot)62により点火して高温燃焼ガス64の脈動流を作り出し、それをさまざまな圧力、例えば、燃焼ファン圧力を約15,000Pa(約2.2psi)〜約20,000Pa(約3psi)上回る範囲に加圧することができる。高温燃焼ガス64の脈動流は噴霧器68に向かって排気管66を急降下する。望ましい温度を有する高温ガス50の脈動流を得るため、噴霧器68の真上で急冷用空気70を入口72を通して供給することができ、これを高温燃焼ガス64とブレンドすることができる。スラリー20を噴霧器68により高温ガス50の脈動流の中に導入する。次いで、噴霧されたスラリーは円錐形の出口74で分散することができ、その後、一般に用いられる丈が高い形の乾燥室(示していない)に入ることができる。さらに下流において、その複合金属粉末製品12を、標準的な収集設備、例えばサイクロンおよび/またはバグハウス(baghouses)(これらも示していない)を用いて回収することができる。
【0024】
パルス化された操作では、空気弁56の開閉を繰り返し、空気を燃焼室58の中に入れ、その燃焼のために閉めることを交互に行う。そのような繰り返しでは、空気弁56を前の燃焼エピソード(episode)の直後に次のパルスのために再開放することができる。次いで、再開放は次の空気装填物(例えば燃焼用空気51)が入ることを可能にする。次いで、燃料弁60は燃料を再び入れ、上記のように混合物が燃焼室58で自己発火する。空気弁56の開閉および室58における燃料のパルス化した方式での燃焼のこの繰り返しは、さまざまな周波数、例えば、他の周波数を用いてもよいが、約80Hzから約110Hzまでで制御可能である可能性がある。
【0025】
本明細書において記述されたパルス燃焼噴霧乾燥プロセスにより製造された“未処理の”ナトリウム/モリブデン複合金属粉末製品12を図4、5aおよび5bにおいて図説し、それはそれら自体がより小さい粒子の凝集体である複数の概して球状の形状の粒子を含む。すでに記述したように、ナトリウムはモリブデン内部で高度に分散しており、一緒に融合しているナトリウムおよびモリブデンサブ粒子の実質的に均質な分散物または複合混合物を構成している。より具体的には、図5aはエネルギー分散X線分光分析(“EDS”)によりもたらされたスペクトル図表であり、図4に示す複合金属材料12の試料の内部にナトリウムが存在していることを図説している。図5bはエネルギー分散X線分光分析によりもたらされたスペクトル図表であり、その試料の内部にモリブデンが存在していることを示している。図4ならびに5aおよび5bを比較すると分かるように、ナトリウムは複合金属粉末製品12の全体に渡って概して均一に広く分散している。
【0026】
一般的に言って、本明細書で提供される教示に従って製造される複合金属粉末製品12は広い範囲の大きさを含むと考えられ、約1μmから約100μmまでの範囲の大きさ、例えば約5μmから約45μmまで、および約45μmから約90μmまでの範囲の大きさを有する粒子を、本明細書で提供される教示に従うことにより容易に製造することができる。望まれるなら、複合金属粉末製品12を例えば工程28(図2)で分類して、より狭い大きさの範囲を有する製品12を提供してもよい。様々な代表的な複合金属粉末製品12のふるい分け分析を図7において提供し、それは3、7、9および15重量%のモリブデン酸ナトリウム18を含むスラリー組成物により製造された“未処理”の複合金属粉末製品12の粒径分布(Tylerメッシュによる)のプロットである。
【0027】
上記のように、ナトリウム/モリブデン複合金属粉末12は高密度でもあり、かつ一般に非常に流動性が高い。代表的な複合金属粉末製品12は、本明細書で述べる様々な実施例で確認されるように、約2g/cc〜約3g/ccの範囲のScott密度(すなわち見かけ密度)を有する。Hall流動性は、これも本明細書で述べる様々な実施例で確認されるように、約35s/50gから30s/50gほどの低さまでに及ぶ。しかし、1つの実施例の組成物(すなわち実施例12)は流れを有していなかった。
【0028】
すでに記述したように、パルス燃焼システム22はその中にスラリー20が供給される高温ガス50の脈動流を提供する。接触域および接触時間は非常に短く、接触の時間は多くの場合1マイクロ秒の何分の1程度である。このように、高温ガス50、音波、およびスラリー20の物理的相互作用が複合金属粉末製造物12を生成する。より具体的には、スラリー20の液体構成要素18は、高温ガス50の音速の(または音速付近の)パルス波により実質的に除去される、または吹き飛ばされる(driven away)。また、短い接触時間はスラリー構成要素が最小限に、例えば接触時間の最後に約93℃〜約121℃程度のレベルに加熱されることを確実にし、それは液体構成要素18を蒸発させるのに十分な温度である。
【0029】
特定の場合において、残留量の液体(例えば液体18および/または用いられる場合は結合剤48)が、結果として得られる“未処理の”複合金属粉末製品12の中に残存していてよい。あらゆる残存する液体18は続く焼結または加熱工程26により(例えば、部分的または完全に)排除することができる。図2参照。一般的に言って、加熱または焼結プロセス26は、液体構成要素および酸素を排除するが実質的な量のナトリウムを排除しないように、適度な温度で実施される。多少のナトリウムが加熱26の間に失われる可能性があり、それは焼結製品または供給原料製品24中の保持されたナトリウムの量を低減するであろう。複合金属粉末12の酸化を最小限にするために、加熱26を水素雰囲気中で実施することも一般に好まれるが、必須ではない。以下で提供する実施例で示すように、保持された酸素は少なく、約6%未満、一般に約2%未満である。加熱26は約500℃〜約825℃の範囲内の温度で実施することができる。あるいは、1050℃ほどの高さの温度を短時間用いてもよい。しかし、そのようなより高い温度は通常は最終製品中の保持されたナトリウムの量を低減するであろう。
【0030】
金属粉末製品の凝集体は好ましくは加熱工程26の後でさえもそれらの形状(必ずしもそうではないが、多くの場合は実質的に球状である)を保持していることにも言及することができる。加熱された形および/または未処理の形での流動性データ(Hallデータ)も、本明細書において提供される実施例に関連して記述されるように、概して非常に良好(例えば約30〜35s/50gの範囲)である。
【0031】
上記のように、一部の場合では様々な大きさの凝集した製品が乾燥プロセスの間に生じる可能性があり、複合金属粉末製品12を望ましい製品の大きさの範囲内の大きさの範囲を有する金属粉末製品へとさらに分離または分類することが望ましい可能性がある。例えば、生じる複合金属粉末材料のほとんどは広い範囲の粒径(例えば約1μmから約150μmまで)を含み、製品の実質的な量は約5μm〜約45μmの範囲(すなわち−325Tylerメッシュ)に、また、約45μm〜約90μmの範囲(すなわち−170+325Tylerメッシュ)にあるであろう。図7参照。本明細書のプロセスは、実質的な割合の製品をこの製品の大きさの範囲でもたらすことができる;しかし、残りの製品、特に望ましい製品の大きさの範囲外のより小さな製品が存在する可能性があり、それは、適切なスラリー組成物を作り出すために液体(例えば水)を再び添加しなければならないであろうが、システムを通して再循環させることができる。そのような再循環は、任意の代替の(または追加の)工程(単数または複数)である。
【0032】
複合金属粉末12は、それの回収したままの形または“未処理の”形で、様々なプロセスおよび適用のための供給原料24として用いることができ、そのいくつかは本明細書において示され記述されており、その他のものは本明細書で提供される教示に馴染んだ後当業者に明らかになるであろう。あるいは、“未処理の”複合金属粉末製品12を、例えば加熱もしくは焼結26により、分類28により、および/またはそれらの組合わせによりさらに処理した後、供給原料24として用いてもよい。
【0033】
上記のように、ナトリウム/モリブデン複合金属粉末12を様々な装置およびプロセスで用いて支持体上にナトリウム/モリブデンフィルムを堆積させることができる。1つの適用において、そのようなナトリウム/モリブデンフィルムを光電池の製作において都合よく用いることができる。例えば、CIGS光電池のエネルギー変換効率は、ナトリウムが光電池のCIGS層の中に拡散することを可能にすれば、増大させることができることが知られている。そのような効率の向上は、モリブデン背面導体(back conductor)がソーダガラス支持体上に堆積しているCIGS構造では自動的に実現される。しかし、支持体としてソーダガラスを用いていない構造ではそれらは実現されない。さらに、CIGS吸収体層中のナトリウムの量をソーダ石灰ガラスからのナトリウムの拡散により典型的に達成可能なレベルを超えて増大させることにより、さらなる効率の向上を実現することができる。そのナトリウム/モリブデン複合粉末およびその粉末により製造されるフィルム、またはその粉末により製造される金属物品から堆積したフィルムは、CIGS層中のナトリウム含有量を増大させ、効率の向上を成し遂げるための手段を提供する。
【0034】
ここで図3を参照すると、光電池36は、ナトリウム/モリブデンフィルム32、32’、32’’をその上に堆積させることができる支持体34を含むことができる。支持体34は、広い範囲の支持体、例えばガラス、ステンレス鋼、柔軟なポリフィルム、または当技術において現在既知である、もしくは将来開発される可能性のある他の支持体材料であって、そのようなデバイスに適しているか適するであろう材料のいずれかを含むことができる。次いでナトリウム/モリブデンフィルム32、32’、32’’を、支持体34上に、当技術において現在既知である、または将来開発される可能性があるが、何らかの形でナトリウム/モリブデン複合金属粉末材料12を利用する広い範囲のプロセスのいずれかにより堆積させることができる。例えば、そして以下でさらに詳細に記述するように、ナトリウム/モリブデンフィルムは熱溶射堆積により、印刷により、蒸発により、またはスパッタリングにより堆積させることができる。
【0035】
一度ナトリウム/モリブデンフィルム(例えば32、32’、32’’)を支持体34の上に堆積させたら、吸収体層76をそのナトリウム/モリブデンフィルムの上に堆積させることができる。例として、その吸収体層76は銅、インジウム、ガリウムおよびセレンからなるグループから選択される1種類以上を含んでいてよい。その吸収体層76は、当技術において既知である、または将来開発される可能性のある広い範囲の方法であって、意図される適用に適しているか適するであろう方法のいずれかにより堆積させることができる。従って、本発明はいずれかの特定の堆積プロセスに限定されるものと考えられるべきではない。加えて、本発明はCIGS光電池の製作に限定されるものと考えられるべきではなく、相当量のナトリウムの添加が有益であろうあらゆるモリブデンを含む適用に適用可能である可能性がある。
【0036】
次に、接合パートナー層78を吸収体層76の上に堆積させることができる。接合パートナー層78は、硫化カドミウムおよび硫化亜鉛からなるグループから選択される1種類以上を含むことができる。最後に、透明な伝導性酸化物層80を接合パートナー層78の上に堆積させて光電池36を形成することができる。接合パートナー層78および透明な伝導性酸化物層80は、当技術において現在既知である、または将来開発される可能性のある広い範囲のプロセスおよび方法であって、これらの材料を堆積させるのに適しているか適するであろうプロセスおよび方法のいずれかにより堆積させることができる。従って、本発明はいずれかの特定の堆積プロセスに限定されるものと考えられるべきではない。加えて、CIGS光電池を製作するためのプロセスは(ナトリウム/モリブデンフィルムを支持体上に提供することを除いて)当技術で既知であり、本発明の教示に馴染んだ後の当業者なら容易に実行することができるため、CIGS光電池を構築するために利用することができる個々の製作技法については本明細書ではさらに詳細には記述しない。
【0037】
上記のように、ナトリウム/モリブデン層またはフィルム32、32’、32’’は広い範囲のプロセスのいずれかにより堆積させることができる。一般的に言って、約1重量%以上のナトリウム濃度は望ましい効率の増大を提供するのに十分であろうと信じられている。従って、結果として得られるナトリウム/モリブデンフィルム32においてナトリウムの望まれるレベルをもたらすために、供給原料材料24中に存在する保持されたナトリウムを必要に応じて調整または変動させることができる。一般的に言って、供給原料材料24中の約0.2重量%から約3.5重量%までの範囲の保持されたナトリウムのレベルは、ナトリウム/モリブデンフィルム32において望まれる程度のナトリウム濃縮(enrichment)をもたらすのに十分であろう。実施例で示すように、そのような保持されたナトリウムのレベル(例えば約0.2重量%から約3.5重量%まで)は、約3重量%から約15重量%までのモリブデン酸ナトリウムを含むスラリー20により製造される“未処理の”、および焼結した(すなわち加熱された)供給原料材料24において達成することができる。
【0038】
1態様において、ナトリウム/モリブデンフィルム32を供給原料材料24を利用して熱溶射プロセス30により堆積させることができる。熱溶射プロセス30は、望まれる厚さおよび特性を有するナトリウム/モリブデンフィルム32を支持体34上に堆積させるため、多種多様な熱溶射ガンのいずれかを用いて広い範囲のパラメーターのいずれかに従って操作することにより成し遂げることができる。しかし、熱溶射プロセスは当技術で周知であるため、そして当業者は本明細書において提供される教示に馴染んだ後そのようなプロセスを利用することができると考えられるため、利用することができる個々の熱溶射プロセス30については本明細書ではさらに詳細には記述しない。
【0039】
別の態様において、ナトリウム/モリブデンフィルム32’を供給原料材料24を利用して印刷プロセス38により支持体34の上に堆積させることができる。供給原料材料24を適したビヒクル(示していない)と混合して“インク”または“ペイント”を形成することができ、次いでそれを広い範囲の印刷プロセスのいずれかにより支持体34の上に堆積させることができる。ここでもまた、そのような印刷プロセスは当技術で周知であり、当業者は本明細書において提供される教示に馴染んだ後に容易に実行することができると考えられるため、利用することができる個々の印刷プロセス38については本明細書ではさらに詳細には記述しない。
【0040】
さらに別の態様において、ナトリウム/モリブデンフィルム32’’を供給原料材料24を利用して蒸発プロセス39により支持体34の上に堆積させることができる。例として、1態様において、蒸発プロセス39は適した蒸発装置(示していない)のるつぼ(これも示していない)中に供給原料材料24を入れることを含むであろう。供給原料材料24は、ゆるい粉末、プレスされたペレット、または他の圧密化された形、またはそれらのいずれかの組合わせの内のいずれかの形でるつぼに入れることができるであろう。供給原料材料24をそれが蒸発するまでるつぼ中で加熱し、そこで蒸発した材料が支持体34上に堆積してナトリウム/モリブデンフィルム32’’を形成するであろう。蒸発プロセス39は、当技術において現在既知である、または将来開発される可能性のある広い範囲の蒸発装置であって、供給原料材料24を蒸発させてフィルム32’’を支持体34の上に堆積させるために用いることができるであろう装置のいずれかを利用することができる。従って、本発明は、いずれかの特定のパラメーターに従って操作されるいずれかの特定の蒸発装置での使用に限定されるものと考えられるべきではない。さらに、そのような蒸発装置は当技術で周知であり、当業者は本明細書において提供される教示に馴染んだ後に容易に実行することができると考えられるため、利用することができる個々の蒸発装置については本明細書ではさらに詳細には記述しない。
【0041】
さらに別の態様において、ナトリウム/モリブデンフィルム32’’’をスパッタ堆積プロセスにより支持体34の上に堆積させることができる。供給原料材料24は加工または成形されてスパッタ標的44になり、次いでそれがフィルム32’’’を形成するためにスパッタされるであろう。当技術において現在既知である、または将来開発される可能性のある広い範囲のスパッタ堆積装置のいずれかを用いて、支持体34の上にフィルム32’’’をスパッタ堆積させることができるであろう。従って、本発明は、いずれかの特定のパラメーターに従って操作されるいずれかの特定のスパッタ堆積装置での使用に限定されるものと考えられるべきではない。さらに、そのようなスパッタ堆積装置は当技術で周知であり、当業者は本明細書において提供される教示に馴染んだ後に容易に実行することができると考えられるため、利用することができる個々のスパッタ堆積装置について本明細書ではさらに詳細には記述しない。
【0042】
上記のように、スパッタ標的44は工程40でナトリウム/モリブデン複合金属粉末12を圧密化または成形することにより製作することができる金属製品42を含むことができる。あるいは、そのスパッタ標的44は熱溶射30により形成することができるであろう。スパッタ標的44を圧密化40により製作する場合、それの“未処理の”形または処理した形のどちらかにある供給原料材料24を工程40で圧密化または成形して金属製品(例えばスパッタ標的44)を製造することができる。圧密化プロセス40は、特定の適用に適しているであろう当技術において現在既知である、または将来開発される可能性のある広い範囲の圧縮、プレスおよび成形プロセスのいずれかを含むことができる。従って、本発明はいずれかの特定の圧密化プロセスに限定されるものと考えられるべきではない。
【0043】
例として、圧密化プロセス40は当技術で周知である広い範囲の冷間等方圧プレスプロセスのいずれかまたは広い範囲の粉末圧密化プレスプロセスのいずれかを含むことができ、それは熱間プレス、熱間等方圧プレス、および押し出しを含むがそれらに限定されない。知られているように、冷間および熱間等方圧プレスプロセスは共に、複合金属粉末供給原料材料24を望まれる形状に圧密化または成形するために、一般にかなりの圧力および熱(熱間等方圧プレスの場合)の適用を含む。熱間等方圧プレスプロセスは、ナトリウム/モリブデン複合金属粉末圧縮体の未処理密度および最終製品において許容され得る保持されたナトリウムの減少に応じて900℃以上の温度で実施することができる。
【0044】
圧密化40の後、得られた金属製品42(例えばスパッタ標的44)は“そのまま”用いられてよく、またはさらに処理されてよい。例えば、金属製品42の化学組成を変化させる、および/または金属製品42の密度をさらに高めるために、金属製品42を工程46で加熱または焼結してよい。金属製品42が酸化される可能性を最小限にするために、そのような加熱プロセス46は水素雰囲気中で実施されることが望ましい可能性がある。一般的に言って、より高い温度は結果として保持されたナトリウムの量の実質的減少をもたらす可能性があるため、そのような加熱は約825℃未満の温度で実施することが好ましいであろうが、より高い温度(例えば1050℃以上の温度)を用いることもできるであろう。結果として得られる金属製品42は、必要である、または望まれる場合、使用される前に機械加工されてもよい。そのような機械加工は、最終製品42を焼結したかどうかにかかわらず行うことができるであろう。
【実施例】
【0045】
本明細書中に明記され、Climax Molybdenumおよび/またはClimax Molybdenum,Ft.Madison Operationsから入手可能なモリブデン金属およびモリブデン酸ナトリウム粉末14、16を用いて、いくつかの実施例を行った。様々な比率の粉末14および16を脱イオン水と組み合わせてスラリー20を形成した。より具体的には、様々な実施例に利用したスラリー20は約20重量%の水(すなわち液体18)を含み、残りはモリブデン金属およびモリブデン酸ナトリウム粉末であった。モリブデン金属粉末のモリブデン酸ナトリウムに対する比率は様々な実施例で異なっており、モリブデン酸ナトリウムは約3重量%から約15重量%までの範囲であった。より具体的には、実施例は3、7、9および15重量パーセントの量のモリブデン酸ナトリウムを含んでいた。
【0046】
次いで、スラリー20を、本明細書に記述した方式でパルス燃焼噴霧乾燥システム22の中に供給した。高温ガス50の脈動流の温度が約465℃〜約537℃の範囲内にあるように制御した。パルス燃焼システム22によりもたらされた高温ガス50の脈動流は、スラリー20から水を実質的に排除して複合金属粉末製品12を形成した。接触域および接触時間は非常に短く、接触域は約5.1cm程度、および接触の時間は0.2マイクロ秒程度であった。
【0047】
得られた金属粉末製品12は、実質的に中身が詰まっており(すなわち、中空でない)概して球状の形状を有するより小さい粒子の凝集体を含んでいた。9重量%のモリブデン酸ナトリウムを含むスラリー20により製造された“未処理の”ナトリウム/モリブデン複合金属粉末12のSEM写真を図4に示す。表IおよびIIのデータは、“未処理”の形の、および明記した温度において明記した時間の間水素雰囲気中で焼結または加熱した後の両方での様々な実施例に関して示している。データは、これも表IおよびIIに示しているように、ふるい分けした未処理の材料(+325メッシュのモリブデン(moly))に関しても示している。
【0048】
表I
【0049】
【表1】

【0050】
表II
【0051】
【表2】

【0052】
上記のように、ナトリウム/モリブデン複合金属粉末12を用いて様々な金属物品42、例えばスパッタ標的44を形成または製造することができる。次いで、そのスパッタ標的44を用いて、既に記述した方式で、光電池における使用に適したナトリウムを含むモリブデンフィルム(例えばフィルム32’’’)を堆積させることができる。もちろん、他の適用において同様にそのスパッタ標的44を用いてナトリウムを含むモリブデンフィルムを堆積させることができるであろう。
【0053】
一般的に言って、あらゆるそのようなスパッタ標的44は、標的中の通気孔(interconnected porosity)の存在を低減する、または排除するために、標的の寿命を最大限にするために、および標的を交換して外す操作(target change−out operations)の頻度を低減するために高い密度(例えば理論密度の少なくとも約90%)を有するのが望ましい。加えて、そのようなスパッタ標的44は少なくとも約2.5重量%のナトリウム含有量および約6重量%未満の酸素含有量を有しているべきである。また、一般にそのスパッタ標的44はナトリウム、酸素、およびモリブデンに関して実質的に化学的に均質であるのが好ましい。すなわち、ナトリウム、酸素、およびモリブデンの量は標的44全体に渡って約20%よりも大きく異なっているべきではない。また、一般にあらゆるそのような標的44は硬度に関して実質的に物理的に均質であるのが好ましい。すなわち、材料の硬度は所与の標的44にわたって約20%よりも大きく異なるべきではない。
【0054】
ここで、主に図2、8a、および8bを参照すると、金属物品42(図2)、例えばスパッタ標的44(図2、9、および10)等はある量のナトリウム/モリブデン複合金属粉末12を(すなわち供給原料材料24として)十分な圧力の下で圧縮して予備成形された金属物品82を形成することにより製造することができる。図8a参照。次いでその予備成形された金属物品82を、熱間等方圧プレスにおける使用に適した容器または型枠84(示していない)に入れることができる。次いでその型枠84を、例えば型枠84上の蓋またはキャップ86を溶接することにより密封し、密封された容器88を作成することができる。図8b参照。そのキャップ86は、下記でより詳細に記述する方式でその密封された容器88を排気して(evacuated)予備成形された金属物品82を脱気することを可能にするための流体の導管または管90を備えていてよい。
【0055】
予備成形された金属物品82を形成するために用いられる(すなわち、供給原料24としての)ナトリウム/モリブデン複合金属粉末12は、上記の方式でパルス燃焼噴霧乾燥機からのその回収されたままの、または“未処理の”形で用いられてよい。あるいは、そして上記で既に記述したように、その複合金属粉末12は、予備成形された金属物品82のための供給原料24として用いられる前に、例えば加熱26により、分類28により、および/またはそれらの組み合わせによりさらに加工されてよい。
【0056】
加えて、そして粉末12が(例えば工程26において)加熱されるかどうか、または(例えば工程28において)分類されるかどうかに関わらず、一般にはまずその“未処理の”ナトリウム/モリブデン複合金属粉末製品12を、それに低温加熱工程を施すことにより乾燥させるのが好ましいであろう。そのような未処理のナトリウム/モリブデン複合金属粉末製品12の低温乾燥は、噴霧乾燥プロセスの後に粉末12の中に残存している可能性のあるあらゆる残存する水分および/または揮発性化合物を除去するであろう。粉末12の低温乾燥は粉末12の流動性の増大という追加の利益も提供する可能性があり、それは粉末12がその後にふるい分けまたは分類されるならば有益である可能性がある。もちろん、粉末12が上記の工程26に従って加熱されるのであれば、加熱工程26と関係するより高い温度のため、そのような低温乾燥プロセスを実施する必要は無い。
【0057】
例として、1態様において、その低温乾燥プロセスは乾燥雰囲気、例えば乾燥した空気中でのナトリウム/モリブデン複合金属粉末12の、約100℃〜約200℃の範囲の温度までの、約2時間〜24時間の時間の加熱を含んでいてよい。この低温乾燥プロセスを受けたナトリウム/モリブデン複合金属粉末のロットは、50グラムあたり約35秒〜約40秒の範囲のHall流動性を示した。
【0058】
本明細書で記述される実施例の実行のいくつかにおいて、“未処理の”ナトリウム/モリブデン複合金属粉末製品12を使用し、続いてふるい分けまたは分類し、結果として様々な実施例に関して本明細書で明記されている粉末の大きさをもたらした。しかし、実行2の部品4を製作するために用いた粉末は、まずそれに上記で明記した低温乾燥プロセスを施すことにより乾燥させた(工程26と関係するより高い温度での加熱ではないが)。次いで乾燥した粉末12をふるい分けまたは分類し、結果としてその実施例に関して明記された粉末の大きさをもたらした。
【0059】
より具体的には、実行1のプロセスにおいて予備成形された金属物品82を形成するために用いられる“未処理の”粉末12を、それが約105μm(すなわち−150Tylerメッシュ)より小さい粒子を含むようにふるい分けした。実行2のプロセスに関して、様々な予備成形された金属物品82(すなわち部品番号1〜3)はまた、約105μm(すなわち−150Tylerメッシュ)より小さい粒子を含むようにふるい分けされた“未処理の”粉末12を用いて作られた。実行2のプロセスのための予備成形された金属物品82(すなわち部品番号4)を、約53μm〜約300μm(すなわち−50+270Tylerメッシュ)の範囲の大きさを有する粒子を含むようにふるい分けされた乾燥した粉末12を用いて作った。
【0060】
適切な、および/または望まれる大きさの範囲の供給原料材料24を(例えばその“未処理の”形または乾燥した形のどちらかで)提供した後、次いで供給原料24を含むそのナトリウム/モリブデン複合金属粉末12を圧縮して予備成形された物品82を形成することができる。製造される金属物品42がスパッタ標的44を構成するためのものである、本明細書で示され、記述された特定の代表的な態様において、予備成形された物品82は、図8aにおいて最も良く分かるような、概して円柱状の形状の本体を含んでいてよい。本明細書で記述された方式で完全に圧密化された後、次いで最終的な金属物品製品42(すなわち、圧密化されたばかりの予備成形された円柱)を切って複数の円盤の形状の断片または切片にすることができる。その円盤の形状の断片または切片を続いて機械加工して1個以上の円盤の形状のスパッタ標的44を形成することができる。図2、9、および10参照。あるいは、もちろん、他の形状および外形を有する、ならびに他の用途に関して意図された金属物品を本明細書で提供される教示に従って製造することができ、それは本明細書で提供される教示に馴染んだ後当業者に明らかになるであろう。従って、本発明は本明細書で記述される特定の形状、外形、および意図される用途を有する金属物品に限定されるものと考えられるべきではない。
【0061】
1態様において、その予備成形された物品82は一軸加圧プロセスにより形成することができ、ここでその供給原料材料24(図2)を円筒状の形状のダイス型(示していない)に入れ、粉末状の供給原料材料24をそれがほぼ固体の塊としてふるまうように加圧または圧縮するために軸圧力をかける。一般的に言って、約69MPa(平方インチあたり約5(ショート)トン(tsi))〜約1,103MPa(約80tsi)の範囲の圧縮圧力は、結果として得られる予備成形された物品82が分解すること無くその後の取り扱いおよび加工に持ちこたえることができるような粉末状の供給原料材料24の十分な圧縮をもたらすであろう。あるいは、そのナトリウム/モリブデン複合金属粉末12は、結果として表IIIにおいて明記した密度を有する予備成形された金属物品82の形成をもたらすように圧縮することができる:
表III
【0062】
【表3】

【0063】

代わりの態様において、予備成形された物品82を冷間等方圧プレスプロセスにより形成することができ、ここで供給原料材料24(図2)を適切な型または型枠(示していない)に入れ、粉末状の供給原料材料24を加圧または圧縮して予備成形された物品82を形成するために“冷”間等方圧をかける。一般的に言って、約138MPa(約10tsi)〜約414MPa(約30tsi)の範囲の等方圧は十分な圧縮をもたらすであろう。
【0064】
予備成形された物品82を(例えば一軸プレスにより、または冷間等方圧プレスにより)作った後、それを本明細書で記述された方式で容器84の内部に密封し、加熱し、等方圧をかけることができる。しかし、場合により、“未処理の”予備成形された物品82を、それを容器84の内部に密封する前に、その予備成形された物品82を加熱することによりさらに乾燥させてよい。そのような加熱プロセスは、予備成形された物品82の中に存在する可能性のあるあらゆる水分または揮発性化合物を排除するのに役立つであろう。一般的に言って、そのような加熱は乾燥した不活性な雰囲気(例えばアルゴン)中で、または単に乾燥した空気中で実施することができるであろう。あるいは、そのような加熱は真空中で実施することができるであろう。例として、1態様において、その予備成形された物品82を乾燥した空気中で約100℃〜約200℃の範囲の温度において(約110℃が好ましい)約8時間〜約24時間の範囲の時間の間(約16時間が好ましい)加熱することができる。あるいは、そのその予備成形された物品82を、それがそれ以上の重量の減少を示さなくなるまで加熱することができる。
【0065】
金属物品42(例えばスパッタ標的44)を製造するためのプロセスまたは方法における次の工程には、その予備成形された物品82を熱間等方圧プレスにおける使用に適した容器または型枠84(示していない)に入れることが含まれる。図8a参照。本明細書で示され、記述された態様において、その容器84は一般に中空の円筒状の形状の部材を含み、それは実質的に中身の詰まった円柱状の形状の予備成形された物品82をぴったりと受け止めるような大きさである。その後、密封された容器88を作るために、型枠84を、例えばふたまたはキャップ86をそれに溶接することにより密封することができる。図8b参照。キャップ86は密封された容器88を排気することを可能にするための流体の導管または管90を備えていてよい。
【0066】
密封された容器88を構成する様々な構成要素(例えば84、86、および90)は、意図される適用に適した広い範囲の材料のいずれを含んでいてもよい。しかし、個々の材料の選択においては、最終的な金属物品製品42(例えばスパッタ標的44)の中に不必要な混入物または不純物を導入する可能性のある材料を避けるように注意を払うべきである。本明細書で記述したナトリウム/モリブデン粉末12を供給原料24として利用する態様では、その容器の材料は軟(すなわち低炭素)鋼またはステンレス鋼を含んでいてよい。どちらの場合でも、型枠84およびキャップ86からの不純物の拡散を妨げるために、特にそれらが低炭素鋼から製作されている場合に、型枠84およびキャップ86の内側部分をバリヤ材料で裏打ちするのが有益である可能性がある。適切なバリア材料はモリブデン箔(示していない)を含んでいてよいが、他の材料を用いることもできるであろう。
【0067】
予備成形された金属物品82を容器88内部に密封した後、場合によりそれを、容器88を排気して容器88または金属物品82の内部に含まれている可能性のあるあらゆる不必要な水分または揮発性化合物を除去するため、管90を適切な真空ポンプ(示していない)に接続することにより脱気することができる。排気のプロセスの間に容器88を加熱して脱気の手順を促進することができる。脱気プロセスの間に適用することができる真空および温度の程度は特に重要ではなく、例として、1態様において、密封された容器88を約1ミリtorr〜約1,000ミリtorrの範囲の圧力(約750ミリtorrが好ましい)まで排気することができる。一般に、その温度はモリブデンの酸化温度より下(例えば約395〜400℃)であるのが好ましい。例として、1態様において、その温度は約100℃〜約400℃の範囲(約250℃が好ましい)であってよい。その真空および温度は、約1時間〜約4時間の範囲の期間(約2時間が好ましい)の間適用されてよい。一度脱気プロセスが完了したら、混入物が密封された容器88に再度入るのを防ぐため、管90を縮れさせ(crimped)、または別の状況では密封してよい。
【0068】
次いで、密封された容器88の内部に提供された予備成形された金属物品82をさらに加熱し、一方でその密封された容器88に等方圧をかけることもできる。一般的に言って、その予備成形された金属物品82の密度を理論密度の少なくとも約90%まで増大させるのに十分な時間の間、その容器88をモリブデン粉末構成要素の最適焼結温度未満である温度(例えば、約1250℃未満の温度等)まで加熱し、一方でそれに等方圧をかけるべきである。例えば、約102メガパスカル(MPa)(約7.5tsi)〜約205MPa(約15tsi)の範囲内であり、約4時間〜約8時間の範囲内の期間の間適用される等方圧は、理論密度の少なくとも約90%、およびより好ましくは理論密度の少なくとも約97%の密度レベルを達成するのに十分であろう。
【0069】
加熱し、等方圧をかけた後、最終的な圧縮された物品を密封された容器88から取り外して最終的な形へと機械加工することができる。本明細書で示され、記述された特定の態様において、モリブデン金属の機械加工に一般的に適用可能な技法および手順に従ってその圧縮された物品を機械加工することができる。しかし、圧縮された物品中に含まれるモリブデン酸ナトリウムは水を吸収すると考えられるため、機械加工の間の水に基づく着色剤および/または潤滑剤の使用は避けるべきである。
【0070】
一般的に言って、そして特に金属物品42を光電池の製作における使用のためにナトリウムを含むモリブデンフィルムを堆積させる目的でスパッタ標的44として用いる予定である場合、その密封された容器88を供給原料材料24のナトリウムを含む構成要素(例えばモリブデン酸ナトリウム)の融解温度のすぐ下の温度にさらし、一方でより高い等方圧も用いるのが好ましいであろう。例えば、実行1のプロセスに従って(すなわち、約1250℃の温度および約102MPaの圧力で)製造されるスパッタ標的44は、図9において最も良く分かるように、暗い斑点または変色した領域92の形の複数の不均質性を含むことが分かった。その不均質性92は、概してその材料の大部分の全体に渡って存在していた。その後の分析は、その不均質性92が高いレベルの酸素および炭素を含んでいたことを明らかにした。例えば、実行1のプロセスにより製造される試料物質において、その暗い斑点または不均質性は約4.1重量%の酸素(Oとして)および約507重量百万分率(ppm)の炭素を含んでいた。これは、斑点の無い領域94における約2.1重量%の酸素レベルおよび約147ppmの炭素レベルと比較される。
【0071】
驚いたことに、その暗い斑点または不均質性92は、温度を下げる、および等方圧を増大させることによりかなり低減する、または完全に排除することができる。意味深いことに、これは結果として得られる金属物品42の密度を低減すること無く行うことができる。実際、表IVおよびVIにおいて示す試験データにより明示されるように、実行2のプロセスにより製造される金属物品42の密度は、一般に実行1のプロセスにより製造される物品の密度と同等である、そして時にはわずかにそれよりも大きい。図10において最も良く分かるように、実行2のプロセスにより製造される金属物品42(例えばスパッタ標的44)は視覚的に検出可能な暗い斑点または不均質性を全く示さなかった。
【0072】
さらに、その後の分析は、実行2のプロセスにより製造される金属物品スパッタ標的44はナトリウム、酸素、およびモリブデンに関して実質的に化学的に均質であることを示している。本明細書で記述される個々の実施例の態様において、ナトリウム、酸素、およびモリブデンのレベルは材料全体に渡って約13%未満異なっている。金属物品スパッタ標的44は硬度に関しても実質的に物理的に均質であり、(Rockwell硬度“A”尺度での)硬度変動性は一般に約10%未満である。
【0073】
金属物品スパッタ標的44のナトリウム濃度は一般に2.5重量%以上であり、これは誘導結合プラズマ発光分光法(ICP)により決定され、酸素レベルは一般に約6重量%未満である(ICPにより決定される)。また、意味深いことに、(すなわち、光電池の製造のためのナトリウムを含むモリブデンフィルムを製造することを意図したスパッタ標的に関して)たとえナトリウムのレベルが少なくとも約2.5重量%であっても、鉄のレベルは約50ppm未満である。スパッタ標的44の純度は、グロー放電質量分析法(GDMS)により決定されるように、ガス(C、O、N、およびH)およびナトリウムを除いて約99.9%を超える。
【0074】
金属物品の実施例
複数の金属物品42を(例えばスパッタ標的44として)本明細書で記述されるナトリウム/モリブデン複合金属粉末12を用いて製造した。より具体的には、金属物品42を、“実行1”および“実行2”と呼ばれる2種類の異なるプロセスを用いて製造した。実行1のプロセスは、密封された容器88中に配置された予備成形された金属物品82を、約102MPa(約7.5tsi)の等方圧および約1250℃の温度に約8時間の期間の間さらすことを含んでいた。1250℃の温度は、ナトリウム/モリブデン複合金属粉末12のモリブデン粉末構成要素の最適焼結温度より下である。
【0075】
実行2のプロセスは、密封された容器88中に配置されたいくつかの予備成形された金属物品82(すなわち部品1〜4)を、約205MPa(約15tsi)の等方圧および約660℃の温度に約4時間の期間の間さらすことを含んでいた。660℃の温度は、ナトリウム/モリブデン複合金属粉末12のナトリウムを含む構成要素(例えばモリブデン酸ナトリウム)の融点より下である。
【0076】
上記のように、実行1のプロセスにより製造された金属物品42(例えばスパッタ標的44)は、図9において最も良く分かるように、材料全体に渡って(例えば暗い斑点の形で)かなりの不均質性92を示した。対照的に、実行2のプロセスにより製造された金属物品42(例えばスパッタ標的44)は、図10において最も良く分かるように、視覚的に識別可能な不均質性を全く示さなかった。
【0077】
実行1のプロセス:
実行1のプロセスに関して用いられた予備成形された金属物品82は、本明細書で提供された教示に従って製造された“未処理の”ナトリウム/モリブデン金属粉末12から形成された。その未処理のナトリウム/モリブデン金属粉末12は、粒径が約105μm(−150Tylerメッシュ)未満であるようにふるい分けされた。次いでそのふるい分けされた粉末を約225MPa(約16.5tsi)〜約275MPa(約20tsi)の範囲の一軸圧力の下でコールドプレスして予備成形された円柱または物品82をもたらした。次いでその予備成形された円柱82を低炭素鋼の容器84に入れ、本明細書で記述した方式で密封した。
【0078】
密封された容器88内に置いた後(図8b)、その予備成形された円柱82を、それを既に記述した方式で動的真空(dynamic vacuum)(例えば約750ミリtorr)下で約400℃の温度まで加熱することにより脱気した。次いで、その脱気された密封された容器88に、約1250℃の温度において約8時間の時間の間約102MPa(すなわち、7.375tsi)の等方圧をかけた。次いで得られた圧縮された金属製品(例えば製品42)を薄く切って6枚の円盤の形状の物品にし、続いてそのそれぞれを機械加工して最終的なスパッタ標的製品44を形成した。圧縮された円柱の最上部付近から円盤番号1を得て、圧縮された円柱を下に向かって続く円盤番号2〜6を得た。代表的な機械加工された円盤(すなわちスパッタ標的44)を図9で描写する。
【0079】
図9に関して分かるように、実行1のプロセスに従って製造された円柱から作られたスパッタ標的44は複数の不均質性92を含んでおり、それは暗い領域または斑点のように見える。その不均質性92は一般にその材料の大部分の全体に渡って存在する。その後の分析は、その不均質性92が高いレベルの酸素および炭素を含んでいたことを明らかにした。加えて、その暗い斑点または不均質性92のレーザーアブレーションICP(誘導結合プラズマ発光分光法)は、タングステンおよびカリウムの、より明るい領域94中に含まれるタングステンおよびカリウムのレベルと比較してより低いレベルを示した。円盤1〜6からのデータを表IVおよびVに示す。
【0080】
より具体的には、表IVはその円盤の密度を立方センチメートルあたりのグラム(g/cc)の単位で示す。表IVにおいて示した密度は、機械加工された円盤の寸法を測定して円盤の体積を算出することにより決定された。次いで測定されたそれぞれの機械加工された円盤の質量をそれの測定された体積で割って密度に行き着いた。理論密度の百分率として表される見かけ密度も示す。表IVは、円盤の外径から約15ミリメートル(mm)の距離における、Rockwell硬度“A”尺度(HRA)で表された暗い斑点92および明るい領域94両方の硬度も示す。
【0081】
表IV
【0082】
【表4】

【0083】
表Vは、実行1のプロセスにより製造された機械加工された円盤(すなわちスパッタ標的44)の様々な化学的特性を示す。より具体的には、円盤1、3、および5の化学的特性を、円盤の異なる外側、中間および内側の位置で、具体的には円盤の外径からそれぞれ約5ミリメートル(mm)、約15mm、および約25mmの位置で決定した。それぞれの位置におけるナトリウム含有量を、原子吸光(AA)およびICP分析技法の両方により決定した。グロー放電質量分析法(GDMS)により決定された鉄、マンガン、タングステン、および銅の量を、重量百万分率(ppm)の単位で表す。
【0084】
表V
【0085】
【表5】

【0086】
実行2のプロセス:
4個(すなわち部品番号1〜4)の予備成形された金属物品82を、実行2のプロセスのために用いた。より具体的には、予備成形された金属物品の部品番号1〜3は、粒径が約105μm(−150Tylerメッシュ)未満であるようにふるい分けされた“未処理の”ナトリウム/モリブデン複合金属粉末12を用いて作られた。予備成形された金属物品の部品番号4は、乾燥したナトリウム/モリブデン複合金属粉末12を次いでふるい分けして結果として約53μm〜約300μm(−50+270Tylerメッシュ)の大きさの範囲の粒子を有する粒子の混合物をもたらしたものを用いて作られた。
【0087】
予備成形された金属物品部品1を含む密封された容器88はステンレス鋼から製作された。部品2を含む密封された容器は低炭素鋼から製作され、モリブデン箔で裏打ちされた。部品3および4を含む密封された容器は低炭素鋼から製作され、裏打ちされなかった。
【0088】
予備成形された金属物品82(すなわち、部品番号1〜4に対応する)を製作するために用いられた様々な粉末は、約225MPa(約16.5tsi)〜約275MPa(約20tsi)の範囲の一軸圧力の下でコールドプレスされ、上記で示した表IIIにおいて提供した密度を有する予備成形された円柱(例えば、予備成形された金属物品82)をもたらした。具体的には、表IIIにおいて確認される円柱2、5、9、および13を実行2のプロセスにおいて用いた。
【0089】
(例えば、明記されたように、ステンレス鋼または低炭素鋼から製作され、モリブデン箔で裏打ちされた、または裏打ちされていない)様々な容器84の中に入れる前に、予備成形された円柱82の中に含まれた可能性のある残存量の水分および/または揮発性構成要素を除去するために、その予備成形された円柱82を乾燥空気雰囲気中で約16時間の期間の間約110℃の温度に加熱した。次いで、その乾燥した円柱82をそれらのそれぞれの容器に入れ、本明細書で記述した方式で密封した。次いで、その密封された容器88を、本明細書で記述した方式で、その密封された容器を約400℃の温度に加熱して一方でそれらを動的真空(約750ミリtorr)にさらすことにより脱気した。次いで、その脱気された、密封された容器88に約205MPa(すなわち14.875tsi)の等方圧を約4時間の時間の間、約660℃の温度でかけた。
【0090】
次いで、得られた圧縮された金属の円柱(すなわち部品1〜4)を密封された容器88から取り外した。しかし、部品3をその密封された容器から分離するのは不可能であった。それらのそれぞれの容器88からうまく分離された圧縮された金属の円柱(例えば、部品1、2、および4)を、次いで薄く切って複数の円盤の形状の物品を形成した。圧縮された円柱の最上部付近から円盤番号1を得て、それに続く円盤は、円柱を下に向かって下りて増加する円盤の番号を付けた。次いでその円盤を機械加工して最終的なスパッタ標的44を形成した。部品番号2(モリブデン箔で裏打ちされた低炭素鋼の缶の中で製造されたもの)からの代表的な円盤(すなわちスパッタ標的44)を、図10で描写する。意味深いことに、実行2のプロセスに従って製造された物品42(例えばスパッタ標的円盤44)はいずれも、実行1のプロセスにより製造された物品と関係し、図9において図説されている不均質性を示さなかった。
【0091】
表VIは、異なる部品番号1、2、および4から作られた円盤の(g/ccの単位での)密度を示す。表VIで示した密度は、機械加工された円盤の寸法を測定してその円盤の体積を算出することにより決定された。次いでそれぞれの機械加工された円盤の測定された質量をその測定された体積で割って密度に行き着いた。理論密度の百分率として表される見かけ密度も示す。表VIは、円盤の外径から約13ミリメートル(mm)の距離における、Rockwell硬度“A”尺度(HRA)で表された円盤の硬度も示す。
【0092】
表VI
【0093】
【表6】

【0094】
表VIIは、実行2のプロセスにより製造された部品1、2、および4から得られた特定の円盤の様々な化学的特性を示す。より具体的には、表VIIは圧縮された円柱の最上部および中間部分から得られた円盤の化学的特性をリストしており、それらは表VIIにおいてそれぞれ(最上部に関して)円盤“T”および(中間に関して)円盤“M”として確認される。最上部“T”および中間“M”の円盤に関する化学的特性を、それぞれの円盤上の2種類の位置、外側の位置“O”および中央の位置“C”において測定した。外側の位置“O”は円盤の外径から約5mm〜約10mmの範囲の位置にあり、一方中央の位置“C”は円盤の外径から約25mm〜約35mmの範囲の位置にあった。それぞれの位置におけるナトリウムおよび酸素含有量をICP分析技法により決定し、それを重量パーセントに換算して示す。グロー放電質量分析法(GDMS)により決定された鉄、タングステン、ケイ素、クロム、コバルト、およびニッケルの量を、重量百万分率の単位で示す。
【0095】
表VII
【0096】
【表7】

【0097】
本明細書で記述されたナトリウム/モリブデン複合金属粉末を用いた金属物品の製造に関して、さらに他の変形が可能である。例えば、別の態様において、閉じたダイス型をナトリウム/モリブデン複合金属粉末の供給物で満たすことができる。次いでその粉末を、結果として得られる金属物品の密度を理論密度の少なくとも約90%まで増大させるのに十分な温度および圧力において軸方向に加圧することができる。さらにまた別の変形は、ナトリウム/モリブデン複合金属粉末の供給物を提供し、その粉末を圧縮して予備成形された金属物品を形成することを含むことができる。次いでその物品を密封された容器に入れ、モリブデン酸ナトリウムの融点より低い温度まで加熱することができる。次いでその密封された容器を、その物品の密度を理論密度の少なくとも約90%まで増大させるのに十分な縮小率(reduction ratio)で押し出すことができる。
【0098】
本明細書において本発明の好ましい態様を述べたが、適切な修正をそれに加えることができると予想され、それはなお本発明の範囲内に留まるであろう。従って、本発明は以下の特許請求の範囲に従ってのみ解釈されるものとする:
【符号の説明】
【0099】
10 プロセスまたは方法
12 ナトリウム/モリブデン複合金属粉末
14 モリブデン金属粉末
16 ナトリウム化合物
18 液体
20 スラリー
22 パルス燃焼噴霧乾燥機
24 供給原料
26 焼結
28 分類
30 熱溶射堆積プロセス
32 ナトリウム/モリブデンフィルム
32’ コーティング
32’’ ナトリウム/モリブデンフィルム
32’’’ ナトリウム/モリブデンフィルム
34 支持体
36 光電池
38 印刷プロセス
39 蒸発プロセス
40 圧密化
42 金属製品
44 スパッタ標的
46 焼結
48 結合剤
50 高温ガス
51 燃焼用空気
52 入口
54 外側シェル
56 一方向空気弁
58 同調燃焼室
60 燃料弁または燃料口
62 種火
64 高温燃焼ガス
66 排気管
68 噴霧器
70 急冷用空気
72 入口
74 円錐形の出口
76 吸収体層
78 接合パートナー層
80 透明な伝導性酸化物層
82 金属物品
84 容器または型枠
86 蓋またはキャップ
88 密封された容器
90 流体の導管または管
92 暗い斑点または変色した領域
94 斑点の無い領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の:
ナトリウム/モリブデン複合金属粉末の供給物を提供し;
そのナトリウム/モリブデン複合金属粉末を十分な圧力の下で圧縮して予備成形された物品を形成し;
その予備成形された物品を密閉された容器に入れ;
その密閉された容器の温度をモリブデンの最適焼結温度より低い温度まで上げ;そして
その密閉された容器に、物品の密度を理論密度の少なくとも約90%まで増大させるのに十分な時間の間、等方圧をかける;
ことを含む、金属物品を製造するための方法。
【請求項2】
その密閉された容器の温度を上げることが、その密閉された容器の温度を約660℃〜約1250℃の範囲の温度まで上げることを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
その密閉された容器の温度を上げることが、その密閉された容器の温度を約660℃の温度まで上げることを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
その密閉された容器に等方圧をかけることが、その密閉された容器に約102MPa〜約205MPaの範囲の等方圧をかけることを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
その密閉された容器に等方圧をかけることが、その密閉された容器に約205MPaの等方圧をかけることを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
その密閉された容器に熱間等方圧プレスプロセスを施すことが、約4時間〜約8時間の範囲の時間の間実施される、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
その密閉された容器に熱間等方圧プレスプロセスを施すことが、約4時間の時間の間実施される、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記の圧縮が、そのナトリウム/モリブデン複合金属粉末に約67MPa〜約1,103MPaの範囲の一軸圧力をかけて予備成形された物品を形成することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記の圧縮がそのナトリウム/モリブデン複合金属粉末に約138MPa〜約414MPaの範囲の冷間等方圧をかけて予備成形された物品を形成することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
さらに、前記の密封された容器に等方圧をかけることの前に、その密封された容器を排気し、一方でその密封された容器を加熱することによりその予備成形された物品を脱気することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記の脱気がその密封された容器を約750ミリtorrの圧力まで排気することを含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記の脱気がその密封された容器をモリブデンの酸化温度より下の温度まで加熱することを含む、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
前記の脱気がその密封された容器を約100℃〜約400℃の範囲の温度まで加熱することを含む、請求項10に記載の方法。
【請求項14】
前記の脱気がその密封された容器を約250℃の温度まで約2時間の時間の間加熱することを含む、請求項10に記載の方法。
【請求項15】
前記の密封された容器に等方圧をかけることが、その密封された容器にその物品の密度を理論密度の少なくとも約97%まで増大させるのに十分な時間の間等方圧をかけることを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
さらに、その予備成形された物品を密封された容器に入れる前に、その予備成形された物品を約100℃〜約200℃の範囲の温度まで加熱することによりその予備成形された物品を乾燥させることを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
前記の予備成形された物品を乾燥させることが、その予備成形された物品を約110℃の温度まで約16時間の時間の間加熱することを含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
さらに、前記の圧縮の前に、前記のナトリウム/モリブデン複合金属粉末の供給物を約100℃〜約200℃の範囲の温度まで加熱することにより前記のナトリウム/モリブデン複合金属粉末の供給物を乾燥させることを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項19】
前記のナトリウム/モリブデン複合金属粉末の供給物の前記の乾燥が、前記のナトリウム/モリブデン複合金属粉末の供給物を約110℃の温度まで約2時間〜約24時間の範囲の時間の間加熱することを含む、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
モリブデンおよびナトリウムを含む金属物品であって、前記のナトリウムが少なくとも約2.5重量%の量で存在する、前記金属物品。
【請求項21】
その金属物品がナトリウム、酸素、およびモリブデンに関して実質的に化学的に均質である、請求項20に記載の金属物品。
【請求項22】
その金属物品が硬度に関して実質的に物理的に均質である、請求項20に記載の金属物品。
【請求項23】
GDMSにより決定される、ガスおよびナトリウムを除いて約99.9%より大きい純度を有する、請求項20に記載の金属物品。
【請求項24】
前記の金属物品の酸素含有量が約6重量パーセント以下である、請求項20に記載の金属物品。
【請求項25】
その金属物品が、高いレベルの酸素および炭素を有する局在する不均質性を実質的に含まない、請求項20に記載の金属物品。
【請求項26】
前記の金属物品がスパッタ標的を含む、請求項20に記載の金属物品。
【請求項27】
前記の金属物品が約50重量ppm未満の鉄を含む、請求項20に記載の金属物品。
【請求項28】
以下の:
ナトリウム/モリブデン複合金属粉末の供給物を提供し;
そのナトリウム/モリブデン複合金属粉末を十分な圧力の下で圧縮して予備成形された物品を形成し;
その予備成形された物品を密閉された容器に入れ;
その密閉された容器の温度をモリブデン酸ナトリウムの融点より低い温度まで上げ;そして
その密閉された容器に、その物品の密度を理論密度の少なくとも約90%まで増大させるのに十分な時間の間、等方圧をかける;
ことを含む、金属物品を製造するための方法。
【請求項29】
請求項28に従って製造された金属物品。
【請求項30】
その金属物品のナトリウム含有量が約2.5重量パーセント以上である、請求項29に記載の金属物品。
【請求項31】
約50重量ppm未満の鉄含有量を有する、請求項29に記載の金属物品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5a】
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【図5b】
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【図6】
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【図7】
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【図8a】
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【図8b】
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【図9】
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【図10】
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【公表番号】特表2012−518724(P2012−518724A)
【公表日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−552013(P2011−552013)
【出願日】平成21年5月14日(2009.5.14)
【国際出願番号】PCT/US2009/043992
【国際公開番号】WO2010/098780
【国際公開日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【出願人】(506032048)クライマックス・エンジニアード・マテリアルズ・エルエルシー (10)
【Fターム(参考)】