説明

ナノインプリント用モールドの設計方法

【課題】ナノインプリント用モールドの設計において、樹脂の収縮を補償して設計値とほぼ等しい寸法のパターンを実現できる方法を提供する。
【解決手段】等間隔に配列された複数の凹凸のパターンを有し、プレスによりそのパターンを柔軟な材料でできた膜2に転写するナノインプリント用モールドの設計において、膜2の表面に形成される凸部22のパターンが、線幅w1、高さh1、長さL1の直方体であるとき、凸部22に対応するモールド3の凹部31の線幅を、下記式(1)を用いて算出される線幅w3とする。


ここで、p(w)は一般的な空間周波数の遮断関数の形式で表現した予測関数である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体素子、光学素子等の製造に使用されるナノインプリント用モールドの設計方法に関する。
【背景技術】
【0002】
高集積LSIや微細光学素子の製造においては、微細パターンの加工を低コストで実現するための技術がますます重要になってきている。そのような技術の一つとして、ナノインプリントリソグラフィがある(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
ナノインプリントリソグラフィは、表面に予め所望の凹凸パターンが形成されたモールド(金型)を用い、このモールドのパターンを基板上に形成した樹脂膜に直接押し付けることにより、樹脂膜の表面に凹凸パターンを形成する技術をいう。
【0004】
ナノインプリントリソグラフィは、単純な方法によって凹凸パターンを形成することができ、更に近年、数十nm〜数nmの超微細なパターンを形成できることがわかってきたため、50nm以下のパターニングが必要とされる次世代リソグラフィ技術の候補として期待されている。
【0005】
図9を参照して、ナノインプリントリソグラフィにおける凹凸パターンの作製工程について簡単に説明する。図9はナノインプリントリソグラフィの主要な工程を示す断面図である。
【0006】
最初に、図9(a)に示すように、微細構造体となる、基板1の上に樹脂で形成されたレジスト膜2を所定の温度に加熱すると共に、その上方にピストンロッド(図示せず)に固定されたモールド3を配置する。次に、図9(b)に示すように、ピストンロッドを動作させてモールド3を下降させ、レジスト膜2を所定の圧力でプレスする。最後に、図9(c)に示すように、モールド3を上昇させてレジスト膜2から引き離す。このようにしてモールド3の微細な凹凸パターンが基板1上のレジスト膜2に転写される。
【0007】
上述のナノインプリントリソグラフィに用いられるモールド3の作製方法について簡単に説明する。ナノインプリント用のモールドはフォトマスクと同様の方法で作製される。具体的には、炭化ケイ素等からなる基板の表面にメタルマスク層を形成した後、その上にレジストを塗布する。このレジスト膜に電子線や紫外線を用いて微細なパターンを描画し、オルトキシレン液等を用いて現像する。次に、反応性ガスを用いてドライエッチングする。
【0008】
ドライエッチング工程において、最初、メタルマスク層がエッチングされ、次いで基板がエッチングされていく。メタルマスク層が消滅する程度にドライエッチングを継続すると、凹凸パターンが形成されたモールドが完成する。
【0009】
上述したように、ナノインプリントリソグラフィでは、樹脂材料で形成されたレジスト膜を熱または紫外線を用いて硬化させるが、硬化の際に収縮による寸法誤差(Critical Dimension Error、以降「CDエラー」という)が生じる。
【0010】
このため高い寸法精度が要求される半導体素子などへの応用においては、モールドを設計する際に、三次元的な形状変化を含めた収縮を予測し、収縮の影響を補償する必要がある。
【0011】
金型を用いて樹脂を射出成形する分野においては、冷却に伴う樹脂の収縮を考慮して金型の設計を行う方法が提案され、普及している(例えば、特許文献2参照)。
【0012】
しかし、ナノインプリントリソグラフィの分野においては、樹脂の収縮を補償してモールドの設計を行う方法について、未だ具体的な提案はなされていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開2007−50663号公報
【特許文献2】特開平9−277260号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明は上述の問題点に鑑みてなされたもので、樹脂の収縮を補償して設計値とほぼ等しい寸法のパターンを実現できるナノインプリント用モールドの設計方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上述の目的を達成するため、本発明にかかるナノインプリント用モールドの設計方法は、等間隔に配列された複数の凹凸のパターンを有し、プレスによりそのパターンを柔軟な材料でできた膜に転写するナノインプリント用モールドの設計方法であって、
前記膜の表面に形成される凸部のパターンが、線幅w1、高さh1、長さL1の直方体であるとき、前記凸部に対応する前記ナノインプリント用モールドの凹部の線幅を、下記式(1)を用いて算出される線幅w3とすることを特徴とする。
【0016】
【数1】

ここで、p(w)は一般的な空間周波数の遮断関数の形式で表現した予測関数である。
【0017】
上述のナノインプリント用モールドの設計方法において、前記予測関数p(w)は下記式(2)で与えられることが好ましい。
【0018】
【数2】

ここで、αは線収縮係数、w0はカットオフ長、kは補正係数、nは補正次数である。
【0019】
線幅w1に対して長さL1が2倍未満であるとき前記補正係数kは1.0、線幅w1に対して長さL1が2倍以上20倍未満であるとき前記補正係数kは1.0〜1.6、線幅w1に対して長さL1が20倍以上であるとき前記補正係数kは1.6であることが好ましい。また前記補正次数nは2であることが好ましい。
【0020】
また本発明にかかるナノインプリント用モールドの設計方法は、等間隔に配列された複数の凹凸のパターンを有し、プレスによりそのパターンを柔軟な材料でできた膜に転写するナノインプリント用モールドの設計方法であって、
前記膜の表面に形成される凸部のパターンが、線幅w1、高さh1、長さL1の直方体であるとき、前記凸部に対応する前記ナノインプリント用モールドの凹部の高さを、下記式(3)を用いて算出される高さh3とすることを特徴とする。
【0021】
【数3】

ここで、q(h)は一般的な空間周波数の遮断関数の形式で表現した予測関数である。
【0022】
上述のナノインプリント用モールドの設計方法において、前記予測関数q(h)は下記式(4)で与えられることが好ましい。
【0023】
【数4】

ここで、αは線収縮係数、w0はカットオフ長、kは補正係数、nは補正次数である。
【0024】
また前記補正係数kは1.65、前記補正次数nは2であることが好ましい。
【発明の効果】
【0025】
本発明のナノインプリント用モールドの設計方法を採用すれば、樹脂の収縮を補償して設計値とほぼ等しい寸法の凹凸パターンを実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】ナノインプリント用モールドを用いて製造される微細構造体の外観を示す斜視図である。
【図2】本発明にかかるナノインプリント用モールドの設計方法を説明する断面図である。
【図3】式(2)と式(5)を用いて算出した、モールドの線幅に対する収縮後の線幅の予測値を示すグラフである。
【図4】式(1)と式(2)を用いて補正を施したモールドの線幅を示すグラフである。
【図5】線幅に対する収縮率のシミュレーション結果と実測値とを比較して示すグラフである。
【図6】残膜厚と線幅方向のレジストの収縮量との関係を示すグラフである。
【図7】式(4)と式(6)を用いて算出した、モールドの高さに対する収縮後の高さの予測値、および式(3)と式(4)を用いて補正を施したモールドの高さを示すグラフである。
【図8】残膜厚と高さ方向のレジストの収縮量との関係を示すグラフである。
【図9】ナノインプリントリソグラフィの主要な工程を示す断面図である
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の実施の形態にかかるナノインプリント用モールド(以降、「モールド」と略す)の設計方法について、図面を参照して説明する。
【0028】
(実施の形態1)
図1に、モールドを用いて製造される微細構造体の概観を示す。本発明では、一般に「Line & Space」パターンと呼ばれる凸部と凹部が所定の間隔で繰り返し配置された微細構造体を製造することを前提としている。図中、図9に示した部材と同一の機能を有する部材には同一の符号を付している。
【0029】
図1に示すように、微細構造体20は、後述のモールド3を用いてレジスト膜2をプレス加工したもので、残膜層21の上に線幅w、高さh、長さLの直方体形状の凸部22が所定の間隔で繰り返し形成されている。
【0030】
レジスト膜2に使用する樹脂材料は硬化方式によって異なる。熱硬化方式を採用した場合には、例えば、アクリル樹脂の一種であるポリメタクリルメチル酸(PMMA)が用いられる。一方、光硬化方式を採用した場合、例えば、光硬化樹脂の一種である「PAK−01」(東洋合成社商品名)が用いられる。
【0031】
<モールドの線幅方向における設計方法>
以下、本発明にかかるモールドの設計方法のうち、モールドの線幅方向における設計方法について、図2を参照して具体的に説明する。
【0032】
図2(a)〜(c)は図1の矢印Aで示す領域の断面を示したもので、微細構造体20の製造工程において、基板1上に形成されたレジスト膜2をモールド3でプレスしている状態を示す。図2(a)は、プレスされたレジスト膜2が硬化する前の状態を示す。図中、線幅w1および高さh1は凸部22の設計値、言い換えれば、凸部22に対応する形でモールド3に形成された凹部31の線幅と高さ(深さ)を示す。
【0033】
硬化の際にレジスト膜2に収縮が生じない場合には、線幅w1および高さh1の断面形状の凸部22が形成されるが、実際には、図2(b)に示すように、硬化の際にレジスト膜2が収縮して線幅がw2、高さがh2となる。
【0034】
そこで、図2(c)に示すように、モールド3の線幅w3を、収縮後のレジスト膜2の線幅w2が設計値w1と等しくなるように大きめに設計すれば、収縮の影響を補償して、設計値w1にほぼ等しい線幅の微細構造体20を製造できる。
【0035】
なお、残膜層21の厚みtも若干収縮するが、後述するように、厚みtの収縮は凸部22の線幅w2および高さh2に影響を及ぼさないため、ここでは、厚みtが変化しないものとして説明する。
【0036】
発明者らは、レジスト材料を含む樹脂の硬化に伴う収縮の補償について、シミュレーションの結果に基づき、一般的な空間周波数の遮断関数の形式で表現される予測関数p(w)を導出した。そしてこの予測関数p(w)を用いてモールド3の線幅方向の補正を行うと、設計値w1にほぼ等しい線幅の凹凸パターンが得られることが分かった。
【0037】
具体的には、モールド3の線幅の補正値として、予測関数p(w)を含む下記式(1)で決まる線幅w3を用いれば、設計値w1にほぼ等しい線幅の「Line & Space」パターンを実現できる。
【0038】
【数1】

【0039】
下記式(2)は、予測関数p(w)として最適の式を挙げたもので、レジスト膜の線幅の収縮率Δw/wを、一般的な空間周波数の遮断関数(フィルター特性)の形式にフィッティングさせたものである。
【0040】
【数2】

【0041】
上記式(2)において、w0はカットオフ長、αは線収縮係数、kは補正係数、nは補正次数である。これらのパラメータのうちカットオフ長w0は補正が必要な寸法の境界値を示す。通常、カットオフ長w0は設計値の高さh1の10倍になる。
【0042】
線収縮係数αは、微細構造体20を構成する材料の収縮の程度を示し、材質および硬化方式(熱硬化もしくは光硬化)によって異なる値となる。
【0043】
補正係数kは、予測関数を用いて計算した値とシミュレーションの結果を近づける(フィッティングする)ための補正を行う係数である。補正係数kは、線幅w1に対して長さL1が2倍未満であるときは1.0、線幅w1に対して長さL1が2倍以上20倍未満であるときは1.0〜1.6、線幅w1に対して長さL1が20倍以上であるときは1.6となる。「Line & Space」パターンでは、凸部22の長手方向の長さLは線幅wに比べてはるかに大きいので、特殊な場合を除いてkは1.6とする。
【0044】
補正次数nは、予測関数を用いて計算した値とシミュレーションの結果をフィッティングするための補正を行うための次数であり、通常は2.0となる。
【0045】
式(1)および(2)を用いた線幅w3の演算は、市販のパーソナルコンピュータ(以降「PC」という)を用いて行うことができる。具体的には、キーボードから線幅の設計値w1および各パラメータ(w0、α、k、n)の値を入力すると共に、PCのROM(Read Only Memory)またはハードディスクにインストールされた演算用のソフトウェアを読み出して演算を行う。
【0046】
<シミュレーション結果の説明>
次に、図3〜図5を参照して、本発明の設計方法により算出した線幅の値とシミュレーションの結果について説明する。
【0047】
図3の実線に、前述の式(2)と下記式(5)を用いて、モールドの線幅w1に対する収縮後の線幅w2の予測値を算出した結果を示す。なお、破線は参考として示したモールドの線幅w1である。
【0048】
【数5】

【0049】
演算において、式(1)のカットオフ長w0=500nm、線収縮係数α=0.1、補正係数k=1.6、補正次数n=2とした。図中△で示した値は、シミュレーションによりCDエラーを予測した値(線幅w2)である。なお、シミュレーションには、市販の構造解析用ソフトウェアである「MARC」(MSC Software 社製品)を用いた。
【0050】
図3より、モールド3の線幅w1に対し転写パターンの線幅w2は小さくなり、その収縮量はモールドの線幅と高さに依存することがわかる。また式(2)および式(5)を用いて算出した線幅w2は、△で示したシミュレーションによるCDエラーの予測値と一致していることがわかる。
【0051】
図4の実線に、前述の式(1)および式(2)を用いて演算した(すなわち補正を施した)モールド3の線幅w3を示す。また補正後のモールド3の線幅w3を用いて収縮後の線幅w2をシミュレーションした結果を△で示す。なお、破線は前述の式(2)および式(5)を用いて算出した、モールド3の線幅がw3のときの収縮後の線幅w2の値である。
【0052】
図4に示すように、式(2)の予測関数p(w)を用いて算出したモールド3の線幅w3を用いると、収縮後の線幅w2は設計値w1と一致する。すなわち、式(2)の予測関数を用いることにより、CDエラーを補正したモールドの線幅w3が得られる。
【0053】
ところで、図3および図4に△で示した線幅は、市販の構造解析用ソフトウェアを用いてシミュレーションを行った結果得られた値であり、レジストを用いて製造した微細構造物の実測値ではない。しかし、このソフトウェアを用いたシミュレーション結果は、実測値とよく一致している。図5に、線幅wに対する収縮率Δw/wのシミュレーション結果(図中の●)と実測値(図中の□)を示す。ここで、線収縮係数αは0.073とした。
【0054】
図5に示すように、線幅の小さい領域(すなわち凸部22のアスペクト比が小さい領域)においてシミュレーション結果と実測値はほぼ一致しており、シミュレーションに用いたソフトウェアが信頼できるものであることがわかる。
【0055】
次に、図6を用いて、線幅方向のレジストの収縮に対して残膜厚tの依存性がないことを説明する。図6のΔwは線幅方向の収縮量のシミュレーション結果を示している。前述の図3および図4は、残膜厚tが25nmのときのシミュレーション結果を示したものであるが、図6に示すように、線幅方向の収縮量Δwは残膜厚tに関係なくほぼ一定であるため、式(2)はそれ以外の残膜厚でも適用できることがわかる。
【0056】
本実施の形態では、レジスト収縮に対するモールドの線幅方向の補正方法(すなわち設計方法)について説明したが、この方法はモールドの長手方向の収縮に対しても適用できる。その場合は、式(1)および式(2)の線幅wを長さLに、カットオフ長w0をカットオフ長L0に置き換える。
この場合、長手方向のカットオフ長L0=10×hとなる。補正係数kについては、「Line & Space 」パターンでは、線幅wは長さLに比べて非常に小さいため、k=1.0とする。また補正次数n=2.0とする。
【0057】
(実施の形態2)
実施の形態1では、モールドの線幅方向の設計方法について説明したが、本実施の形態ではモールドの高さ方向の設計方法について説明する。
【0058】
<モールドの高さ方向における設計方法>
前述の図2(a)に示したように、硬化の際にレジスト膜2に収縮が生じない場合には、線幅w1および高さh1の断面形状の凸部22が形成されるが、実際には、図2(b)に示すように、硬化の際にレジスト膜2が収縮して線幅がw2、高さがh2となる。
【0059】
そこで、図2(c)に示すように、モールドの高さh3を、収縮後の高さh2が設計値h1と等しくなるように大きめに設計すれば、収縮の影響を補償して、設計値h1にほぼ等しい線幅の微細構造体20を製造できる。
【0060】
発明者らは、樹脂の硬化に伴う収縮の補償について、前述の予測関数p(w)と同様の手法により、シミュレーションに基づき、一般的な空間周波数の遮断関数の形式で表現される予測関数q(h)を導出した。この予測関数q(h)を用いてモールド3の高さ方向の補正を行うと、設計値h1にほぼ等しい高さの凸凹パターンが得られることが分かった。
【0061】
具体的には、モールド3の高さの補正値として、予測関数q(h)を含む下記式(3)で決まる高さh3を用いれば、設計値h1にほぼ等しい高さの「Line & Space」パターンを実現できる。
【0062】
【数3】

【0063】
下記式(4)は、予測関数q(h)として最適の式を挙げたものである。
【0064】
【数4】

【0065】
式(4)において、w0はカットオフ長、αは線収縮係数、kは補正係数、nは補正次数である。カットオフ長w0、線収縮係数α、補正係数k、補正次数nの定義は、実施の形態1で説明した定義と変わりがない。また式(3)および(4)を用いた高さh3の算出は、実施の形態1と同様に市販のPCを用いて行うことができる。
【0066】
<シミュレーション結果の説明>
次に、図7を参照して、本発明の設計方法により算出したモールドの高さとシミュレーションの結果を説明する。
【0067】
図7の細い実線に、前述の式(4)と下記式(6)を用いて、モールドの高さh1に対する収縮後の高さh2の予測値を算出した結果を示す。また図7の太い実線に、前述の式(3)と式(4)を用いて算出した(すなわち補正を施した)モールドの高さh3を示す。
【0068】
【数6】

【0069】
演算において、式(4)のカットオフ長w0=200nm、線収縮係数α=0.01、補正係数k=1.65、補正次数n=2とした。また図中○で示した値は、モールド3の高さh1を用いて収縮後の高さh2をシミュレーションした結果(すなわちCDエラーの予測値)である。シミュレーションには、実施の形態1と同様に、市販の構造解析用ソフトウェアである「MARC」(MSC Software 社製品)を用いた。なお、図7の破線は参考として示した高さの設計値h1である。
【0070】
図7から明らかなように、(破線で示した)モールドの高さh1に対し(細い実線で示した)転写パターンの高さh2は小さくなり、その収縮量はモールドの線幅と高さに依存する。また(太い実線で示した)式(3)および式(4)を用いて算出したモールド3の高さh3を用いると、収縮後の高さh2は設計値h1と一致する。すなわち、式(4)の予測関数を用いることにより、CDエラーを補正したモールドの高さh3が得られる。
【0071】
次に、図8を用いて、高さ方向のレジストの収縮に対して残膜厚tの依存性がないことを説明する。図8のΔhは高さ方向の収縮量のシミュレーション結果を示している。前述の図7は残膜厚tが25nmのときのシミュレーション結果を示したものであるが、図8に示すように、高さ方向の収縮量Δhは、残膜厚tに関係なく一定であるため、式(4)はそれ以外の残膜厚でも適用できることがわかる。
【0072】
なお、上述の各実施の形態では、レジスト膜をプレス加工して微細構造体を製造する場合について説明したが、本発明の設計方法により作製されるモールドは、レジスト以外の樹脂や粘度の低いガラス材料のような、柔軟な材料を用いて微細構造体を製造する場合にも適用できる。
【符号の説明】
【0073】
1 基板
2 レジスト膜
3 モールド
20 微細構造体
21 残膜層
22 凸部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
等間隔に配列された複数の凹凸のパターンを有し、プレスによりそのパターンを柔軟な材料でできた膜に転写するナノインプリント用モールドの設計方法であって、
前記膜の表面に形成される凸部のパターンが、線幅w1、高さh1、長さL1の直方体であるとき、前記凸部に対応する前記ナノインプリント用モールドの凹部の線幅を、下記式(1)を用いて算出される線幅w3とすることを特徴とするナノインプリント用モールドの設計方法。
【数1】

ここで、p(w)は一般的な空間周波数の遮断関数の形式で表現した予測関数である。
【請求項2】
前記予測関数p(w)は下記式(2)で与えられることを特徴とする、請求項1に記載のナノインプリント用モールドの設計方法。
【数2】

ここで、αは線収縮係数、w0はカットオフ長、kは補正係数、nは補正次数である。
【請求項3】
線幅w1に対して長さL1が2倍未満であるとき前記補正係数kは1.0、
線幅w1に対して長さL1が2倍以上20倍未満であるとき前記補正係数kは1.0〜1.6、
線幅w1に対して長さL1が20倍以上であるとき前記補正係数kは1.6
であることを特徴とする、請求項2に記載のナノインプリント用モールドの設計方法。
【請求項4】
前記補正次数nは2であることを特徴とする、請求項2に記載のナノインプリント用モールドの設計方法。
【請求項5】
等間隔に配列された複数の凹凸のパターンを有し、プレスによりそのパターンを柔軟な材料でできた膜に転写するナノインプリント用モールドの設計方法であって、
前記膜の表面に形成される凸部のパターンが、線幅w1、高さh1、長さL1の直方体であるとき、前記凸部に対応する前記ナノインプリント用モールドの凹部の高さを、下記式(3)を用いて算出される高さh3とすることを特徴とするナノインプリント用モールドの設計方法。
【数3】

ここで、q(h)は一般的な空間周波数の遮断関数の形式で表現した予測関数である。
【請求項6】
前記予測関数q(h)は下記式(4)で与えられることを特徴とする、請求項5に記載のナノインプリント用モールドの設計方法。
【数4】

ここで、αは線収縮係数、w0はカットオフ長、kは補正係数、nは補正次数である。
【請求項7】
前記補正係数kは1.65、前記補正次数nは2であることを特徴とする、請求項6に記載のナノインプリント用モールドの設計方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−183692(P2012−183692A)
【公開日】平成24年9月27日(2012.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−47435(P2011−47435)
【出願日】平成23年3月4日(2011.3.4)
【出願人】(505127721)公立大学法人大阪府立大学 (688)
【Fターム(参考)】