説明

ナノピンセットおよびその製造方法

【課題】汚れにくいナノピンセットの提供。
【解決手段】ナノピンセット1は、開閉自在な一対のアーム3と、アーム3の各々に形成された試料把持部3aと、各アーム3の少なくとも試料把持部3aを含む領域に形成された撥水性膜とを備えることを特徴とする。撥水性膜には、例えば、導電性を有する撥水性膜や化学吸着単分子膜が用いられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ミクロンオーダーの試料をハンドリングするナノピンセット、およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ミクロンオーダーの試料をハンドリングするナノピンセットが提案されている(例えば、特許文献1参照)。そのナノピンセットでは、一対のアームとそれらを駆動するアクチュエータとが半導体微細加工技術により形成されており、アームをアクチュエータで開閉動作させることで試料の把持・開放を行っている。
【0003】
【特許文献1】特開2006−26825号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、液中の生物試料などをハンドリングする場合には、ナノピンセットの把持部を液中に浸して試料を把持するので、ナノピンセットに液が付着する。液が蒸発したときに、付着した液中の不純物や、その液に付着した異物などが汚れとしてピンセット表面に残るという問題があった。また、空気中の水分がピンセット表面に付着し、それに異物が付着することでピンセットが汚れる場合もある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1の発明によるナノピンセットは、開閉自在な一対のアームと、アームの少なくとも一方を駆動してアーム開閉動作を行わせる駆動部と、アームの各々に形成された試料把持部と、各アームの少なくとも試料把持部を含む領域に形成された撥水性膜とを備えることを特徴とする。
請求項2の発明は、請求項1に記載のナノピンセットにおいて、撥水性膜が導電性を有するようにしたものである。
請求項3の発明は、請求項1に記載のナノピンセットにおいて、撥水性膜を化学吸着単分子膜としたものである。
請求項4の発明は、請求項1〜3のいずれか一項に記載のナノピンセットにおいて、試料把持部の一部に非撥水性領域を形成したものである。
請求項5の発明によるナノピンセットは、開閉自在な少なくとも一対のアームと、アームの少なくとも一方を駆動してアーム開閉動作を行わせる駆動部と、アームの各々に形成された試料把持部と、各アームの少なくとも試料把持部を含む領域に形成された撥水性膜とを備えることを特徴とする。
請求項6の発明は、請求項1〜5のいずれか一項に記載のナノピンセットにおいて、アームをシリコン(Si)により形成し、撥水性膜を化学吸着単分子膜としたものである。
請求項7の発明は、請求項6に記載のナノピンセットにおいて、アームの表面に酸化物から成る被膜を形成し、その被膜表面に化学吸着単分子膜からなる撥水性膜を形成したものである。
請求項8の発明は、請求項6または7に記載のナノピンセットの製造方法であって、化学吸着単分子膜が未形成のナノピンセットを、半導体微細加工技術により基板上に複数形成する加工工程と、加工工程が行われた後の基板を、化学吸着単分子膜を形成するための原料蒸気に曝す暴露工程と、暴露工程後に、基板に形成された複数のナノピンセットを分離する分離工程とを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、異物の付着によるナノピンセットの汚れを低減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、図を参照して本発明を実施するための最良の形態について説明する。図1は本発明によるナノピンセットの一実施の形態を示す図であり、ナノピンセット1の概略構成を示す斜視図である。図1に示すナノピンセット1は、半導体微細加工技術を利用して基板上に形成される。ナノピンセット1に設けられた一対のアーム3は、駆動部6によって矢印Rで示すように図示左右方向に開閉する。ミクロンオーダーの試料は、アーム3の先端に形成されたグリップ部3aによって把持される。アーム3の少なくともグリップ部3aには撥水加工が施され、汚れの付着を防止するようにしている。
【0008】
図2はナノピンセット1の詳細を示す平面図である。台座7上に形成された駆動部6は静電アクチュエータを構成しており、左側のアーム3を駆動するための固定電極60aおよび可動電極61aと、右側のアーム3を駆動するための固定電極60bおよび可動電極61bとを有している。図示上下方向に延在する固定電極60a,60bと可動電極61a,61bとの各対向面は櫛歯形状となっている。可動電極61a,61bは、それぞれ支持部62によって台座7に弾性的に固定されている。
【0009】
固定電極60aの電極端子80と可動電極61aの電極端子81との間に電圧を印加すると、静電力によって可動電極61aが図示右方向に移動する。一方、固定電極60bの電極端子82と可動電極61bの電極端子83との間に電圧を印加すると、静電力によって可動電極61bが図示左方向に移動する。
【0010】
アーム3は支持部63を介して台座7に弾性的に固定されている。アーム3には支持部63を介して電極端子84が接続されており、電極端子84を利用してアーム3に電気的な操作を加えたり、電気的な測定を行うことができる。左側のアーム3は、アーム3の下部に設けられた連結部材8によって左側の可動電極61aに連結されている。
【0011】
同様に、右側のアーム3は、連結部材8によって右側の可動電極61bに連結されている。そのため、可動電極61a,61bの左右方向への移動に伴って、一対のアーム3アーム3も左右に移動する。図2において、台座7のアーム3が配設されている領域には溝状の貫通孔7aが形成されており、駆動部6が配設されている領域には矩形状の貫通孔7bが形成されている。アーム3および駆動部6はこれら貫通孔7a,7b上に架け渡されるように支持されている。
【0012】
図3はナノピンセット1の断面形状を説明する図である。A−A’断面およびB−B’断面に示すように、台座7のアーム3の下方には貫通孔7aが形成されている。駆動部6は絶縁層102を介して台座7上に形成されている。同様に、連結部材8上に形成されたアーム3および駆動部6(可動電極61a,61b)も絶縁層102を介して台座7上に形成されている。E−E’断面は図1,2の電極端子80〜84の部分を断面したものであり、電極端子80〜84も絶縁層102を介して台座7上に形成されている。このように、ナノピンセット1は絶縁層を挟んだ上下2つのシリコン層からなる3層構造の基板、例えばSOI(silicon on insulator)基板に形成される。そして、アーム3,駆動部6および電極端子80〜84は同一シリコン層を用いて形成される。
【0013】
図4はグリップ部3aの形状の一例を示したものである。ここでは、先端部分の厚さを階段状に薄くして、図4に示すようなグリップ部3aを形成する。ナノピンセット1に設けられたアーム3でミクロンオーダーの試料を把持する場合、それらの作業は顕微鏡視野内で行われる。そのため、アーム3が台座7に隠れて見えなくなるような不都合を避けるために、図2に示すようにアーム3はグリップ部3aが形成された先端部分が台座7から図示上方に突出するように構成されている。
【0014】
また、試料が把持される部分であるグリップ部3aは試料に比べて長く設定され、幅および厚さは試料と同程度となるように設定されている。各グリップ部3aの寸法の一例を記すと、長さLは100μm、厚さtは1〜25μm、幅wは1〜30μmである。通常、試料は平坦なステージ上に載置され、その試料をアーム3により把持するので、アーム3の下面側は平面状とされる。
【0015】
図5は図2の左側のアーム3に対して設けられた固定電極60aおよび可動電極61aの一部を拡大して示したものである。電極60a,61aは静電アクチュエータを構成しており、電極端子80,81に電圧を印加して固定電極60aと可動電極61aとの間に電位差を与えると、電極60a,61a間に静電気力が働く。その結果、支持部62によって台座7に弾性的に固定された可動電極61aが図示右方向に移動する。なお、発生する静電気力は、電極60a,61a同士のギャップ間隔や電極の対向する部分の表面積や、電圧の大きさにより変化する。
【0016】
アーム3は連結部材8を介して可動電極61aに連結されているので、可動電極61aが静電気力により図示右側に移動すると、その動きに同期してアーム3も右側に移動する。図2に示した右側のアーム3、固定電極60b、可動電極61bに関しても左右反転している以外は全く同様の構造となっている。そのため、電極端子82,83に電圧を印加して電極60b、61b間に電位差を与えると、右側のアーム3が図示左方向に移動する。その結果、左右のアーム3が閉じて、グリップ部3aの間に試料が把持される。
【0017】
なお、SOI(silicon on insulator)基板を用いてナノピンセット1を形成する製造方法に
ついては周知であるので(例えば、上述した特許文献1参照)、ここでは説明を省略する
。ナノピンセット1の形成に用いる基板としては、SOI基板の他に、ガラス基板上に単
結晶シリコン層を有する基板や、アモルファスシリコン基板やポリシリコン基板上にSOI層を有する基板なども用いることができる。いずれの場合も、シリコン層にアーム3等が形成される。
【0018】
《化学吸着単分子膜の形成》
次に、ナノピンセット1に撥水性の膜を形成する方法について説明する。上述したように、ナノピンセット1のアーム3や駆動部6もシリコンによって形成されている。そのため、化学吸着単分子膜(撥水性膜)を形成するために、シリコン表面に熱酸化によりSiO層を形成する。その後、フッ化炭素基と炭化水素基とアルコキシシリル基とを主成分とする物質を用いて、SiO層上に化学吸着単分子膜を形成する。
【0019】
上述したナノピンセット1は、図9(a)に示すようにSOI基板W上に多数形成され、ダイシングにより一つ一つのナノピンセット1に分割される。そのため、ナノピンセット1への化学吸着単分子膜の形成は、分割を行う前のSOI基板W全体で行われる。図9(b)に示すように、チャンバ400にはフッ化炭素基と炭化水素基とアルコキシシリル基とを主成分とする物質Lを収容する容器401が接続されている。そして、熱酸化によるSiO層が形成された基板Wをチャンバ400内に搬入する。
【0020】
図9(b)に示す例では、複数の基板Wがセットされた基板カセット402をチャンバ内に収容するようにしている。基板Wをチャンバ内に搬入したならば、バルブVを開いて物質Lの蒸気をチャンバ400内に導入する。SiO膜がその蒸気に曝されるとSiO膜上に化学吸着単分子膜が形成される。その後、SOI基板Wをダイシング加工して、それぞれのナノピンセット1に分割する。
【0021】
上述したフッ化炭素基と炭化水素基とアルコキシシリル基とを主成分とする物質としては、CF(CF(CHSi(OA),[CF(CF(CHSi(OA),あるいは[CF(CF(CHSiOA(nは整数、Aはメチル基、エチル基、プロピル基等の短鎖アルキル基)があげられる。具体的には、CFCHO(CH15Si(OCH、CF(CHSi(CH(CH15Si(OCHなどがある。
【0022】
これらの物質を用いた場合には、SiO層をそれら物質の蒸気に曝すだけで、SiO層上に膜厚さ数nm程度の化学吸着単分子膜が形成されるので、非常に簡単な処理で撥水性領域を形成することができる。化学吸着単分子膜を形成する領域としては、アーム3の部分だけでも良いし、ナノピンセット1の全体でも良い。また、駆動部6を含めてナノピンセット1はナノマイクロオーダーで形成されるが、化学吸着単分子膜は数nm程度なので、ナノピンセット1の駆動機能に影響を与えることはない。
【0023】
図6は化学吸着単分子膜の形成過程を示したものであり、206はシリコン材表面に形成されたSiO層を示す。図6(a)に示すように、SiO層206には、大気中の水蒸気と反応してできたOH基が形成されている。符号300で示したものがアルコキシラン系のフッ化炭素化合物の分子である。この分子はSi(OCH基を有しており、そのOCHとSiO膜206表面のOH基とが反応してCHOHが生成されるとともに、この分子のSiとSiO膜206の表面に並んだOとが共有結合して、単分子膜207が形成されることになる(図6(c)参照)。この化学吸着単分子膜207は優れた撥水性を有している。
【0024】
なお、アルコキシラン系のフッ化炭素化合物の例を示したが、他に、クロロシラン系のフッ化炭素化合物でも同様に可能である。例えば、CF(CF(R)SiXCl3−p(ただし、nは0または整数、好ましくは1〜22の整数、Rはアルキル基、フェニル基、ビニル基、エチニル基、シリコン若しくは酸素原子を含む置換基、mは0または1、Xはアルキル基、アルコキシル基、含フッ素アルキル基または含フッ素アルコキシ基の置換基、pは0,1または2)があげられる。具体的には、CFCHO(CH15SiCl、CF(CHSi(CH(CH15SiClなどがある。撥水性を有する化学吸着単分子膜の形成に用いられる物質としては、これら以外にも種々のものが知られている(例えば、特開2005−206790号公報)。
【0025】
(ナノピンセットの特徴)
上述したように、本実施の形態のナノピンセット1では、ピンセット表面に化学吸着単分子膜207が形成されているので撥水性に優れている。そのため、水分を帯びた微粒子がナノピンセット1の表面に付着し難い。物体表面に付着している微粒子の付着力はメニスカス力,静電気力,ファンデルワールス力などに起因しているが、微粒子やナノピンセット1が電荷を帯びていない場合には、大気中の水分が凝縮して形成されたメニスカス力が大きな影響を与える。
【0026】
図7はナノピンセット1の表面に付着している異物の接触面付近を拡大して示した模式図である。異物とピンセット表面との隙間には、凝縮した水分のメニスカス(水架橋)が形成される。ピンセット表面と水の接触角をθ1、異物表面と水との接触角をθ2とすると、メニスカス力(引力)Fは次式(1)で近似することができる。なお、Rは接触面における異物の曲率半径であり、γは水の表面張力である。
F=4πRγ(cosθ1+cosθ2) …(1)
【0027】
しかしながら、ナノピンセット1の表面は撥水性を有しているため、図7に示すような水架橋は安定に存在できない。すなわち、撥水面では水は丸く固まった状態になりやすいので、水を帯びた異物はナノピンセット1の表面から滑り落ちやすく、ピンセット表面に汚れが付きにくい。また、液中の生物試料を把持する場合、グリップ部3aを液中に挿入しなければならない。しかし、撥水性の化学吸着単分子膜207が形成されているため、グリップ部3aに液が付着し難く汚れの付着を防止できる。
【0028】
[変形例1]
上述した実施の形態では、ナノピンセット表面に化学吸着単分子膜207を形成することで、汚れが付き難いナノピンセットが得られるようにした。そのため、図8(a)に示すように液膜80に覆われた試料81を把持するときに、表面が撥水性であるため試料81の位置が移動しやすく把持し難い場合が生じる。そこで、変形例1のナノピンセット1では、試料を把持するグリップ部3aに化学吸着単分子膜207が形成されない非撥水領域301を設けた。
【0029】
図8(b)に示す例では、グリップ部3aの上下の面と対向面に非撥水領域301が設けられている。非撥水領域301以外の面には撥水性の化学吸着単分子膜207が形成されているため、試料81は、表面張力によって液膜80とともに非撥水領域301にトラップされることになる。そのため、小さな把持力でソフトに把持する必要のある試料、例えば生体試料などを操作する場合により適している。なお、ナノピンセット1の場合、化学吸着単分子膜207が形成されない非撥水領域301には、上述したように熱酸化によるSiO層が形成されている。SiOは親水性であるため、液膜80に覆われた試料81のトラップ効果がより一層高まる。
【0030】
[変形例2]
ナノピンセット1の場合、試料が非常に微小であるため、その質量に起因する重力よりも電荷に起因する静電力の方が支配的になる。そのため、ナノピンセット1が静電気を帯びているような場合、試料を把持しようとナノピンセット1を近づけたときに静電反発力によって試料が弾かれたように動いてしまって把持できない場合が生じる。そこで、変形例2では、絶縁性の化学吸着単分子膜207に代えて導電性の撥水性膜をアーム3に形成し、その導電性撥水性膜をアースすることでアーム3が帯電するのを防止するようにした。
【0031】
導電性撥水性膜としては、クロムの蒸着膜などが考えられる。また、アーム3全体にクロム膜を形成する代わりに、アーム3の一部、例えばグリップ部3aの把持面(図8(b)参照)だけにクロム膜を蒸着し、その他の面には撥水性に優れた化学吸着単分子膜207を形成するようにしても良い。また、図8に示す例の場合には、領域301の部分に親水性の導電膜を形成して帯電を防止するようにしても良い。
【0032】
上述した実施の形態では、静電力による櫛歯アクチュエータによりアーム8を開閉駆動する形式のナノピンセットを例に説明したが、本発明はその他の駆動方式のナノピンセットにも同様に適用することができる。例えば、試料把持用の一対のアームと、特性評価用のプローブや表面形状を検出するためのプローブなどを備えたものであっても適用できる。
【0033】
また、上述した例では、微細な櫛歯が形成された駆動部6も含めて全体的に撥水性膜を形成するようにしたので、ナノオーダーの膜厚が可能な化学吸着単分子膜207を用いたが、アーム3部分のみに撥水性膜を形成するような場合には、必ずしも膜厚がナノオーダーである必要はない。そのような場合、アーム3の間隔に比べてより薄い撥水性膜が形成可能であれば、化学吸着単分子膜207に代えてフッ素系やシリコン系等のコーティング材を用いても構わない。なお、上述した説明では、水分を例に説明したので撥水性膜と記しているが、撥水性の高い膜(化学吸着単分子膜やフッ素系の膜など)の場合には、油分に対しても同様の性質(撥油性)を有している。
【0034】
以上説明した実施の形態と特許請求の範囲の要素との対応において、グリップ部3aは試料把持部を、化学吸着単分子膜207は撥水性膜をそれぞれ構成する。なお、以上の説明はあくまでも一例であり、発明を解釈する際、上記実施の形態の記載事項と特許請求の範囲の記載事項の対応関係に何ら限定も拘束もされない。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明によるナノピンセットの一実施の形態を示す斜視図である。
【図2】ナノピンセット1の詳細を示す平面図である。
【図3】ナノピンセット1の断面形状を説明する図である。
【図4】グリップ部3aの形状を示す斜視図である。
【図5】固定電極60aおよび可動電極61aの拡大図である。
【図6】化学吸着単分子膜の形成過程を示す図であり、(a)〜(c)の順に形成される。
【図7】ナノピンセット1の表面に付着している異物の接触面付近を拡大して示した模式図である。
【図8】変形例1を説明する図であり、(a)は液膜80に覆われた試料81を把持する場合を示し、(b)は非撥水領域301を示し、(c)は非撥水領域301にトラップされた液膜80に覆われた試料81を示す。
【図9】化学吸着単分子膜の形成手順を説明する図であり、(a)はナノピンセット1が多数形成されたSOI基板Wの平面図を示し、(b)は化学吸着単分子膜形成工程を示す。
【符号の説明】
【0036】
1:ナノピンセット、3:アーム、6:駆動部、7:台座、3a:グリップ部、80:液膜、81:試料、207:化学吸着単分子膜、301:非撥水領域、W:SOI基板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
開閉自在な一対のアームと、
前記アームの各々に形成された試料把持部と、
前記各アームの少なくとも前記試料把持部を含む領域に形成された撥水性膜とを備えることを特徴とするナノピンセット。
【請求項2】
請求項1に記載のナノピンセットにおいて、
前記撥水性膜が、導電性を有する撥水性膜であることを特徴とするナノピンセット。
【請求項3】
請求項1に記載のナノピンセットにおいて、
前記撥水性膜が、化学吸着単分子膜であることを特徴とするナノピンセット。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項に記載のナノピンセットにおいて、
前記試料把持部の一部に非撥水性領域を形成したことを特徴とするナノピンセット。
【請求項5】
開閉自在な少なくとも一対のアームと、
前記アームの少なくとも一方を駆動してアーム開閉動作を行わせる駆動部と、
前記アームの各々に形成された試料把持部と、
前記各アームの少なくとも前記試料把持部を含む領域に形成された撥水性膜とを備えることを特徴とするナノピンセット。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか一項に記載のナノピンセットにおいて、
前記アームをシリコン(Si)により形成し、前記撥水性膜を化学吸着単分子膜としたことを特徴とするナノピンセット。
【請求項7】
請求項6に記載のナノピンセットにおいて、
前記アームの表面に酸化物から成る被膜を形成し、その被膜表面に前記化学吸着単分子膜からなる前記撥水性膜を形成したことを特徴とするナノピンセット。
【請求項8】
請求項6または7に記載のナノピンセットの製造方法であって、
前記化学吸着単分子膜が未形成のナノピンセットを、半導体微細加工技術により基板上に複数形成する加工工程と、
前記加工工程が行われた後の基板を、前記化学吸着単分子膜を形成するための原料蒸気に曝す暴露工程と、
前記暴露工程後に、前記基板に形成された複数のナノピンセットを分離する分離工程とを有することを特徴とするナノピンセットの製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2008−110436(P2008−110436A)
【公開日】平成20年5月15日(2008.5.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−295243(P2006−295243)
【出願日】平成18年10月31日(2006.10.31)
【出願人】(390022471)アオイ電子株式会社 (85)
【Fターム(参考)】