説明

ナノフィラーを有する、ポリウレタンでコートされたベルト及びロールカバー

本発明は、抄紙機用プロセスベルト、ロールカバー及び布地応用例に使用するベルトの特性を向上させるナノ粒子を有するウレタンをベースとしたコーティングに関する。例えば、本発明は、斯かるベルト及びロールカバー上のウレタンに係る、屈曲疲労、亀裂の伝播、溝の閉口及び摩耗の各特性に対する抵抗性を向上させる。本発明は、ウレタンでコートされたベルト及びロールカバーの水及び油の透過性に対する抵抗性も向上させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、製紙技術に関する。特に、本発明は、種々の部材のうち抄紙機の製造に関連したプロセスベルト及びロールカバーに関する。
【背景技術】
【0002】
製紙工程中、セルロース製の繊維ウェブは、繊維スラリー、つまりセルロース繊維の水性懸濁液を抄紙機の形成部において移動する形成布上に堆積されることで、形成される。このスラリーから、形成布を介して大量の水が排出され、形成布の表面上にセルロース製の繊維ウェブが残存することとなる。
【0003】
新規に形成されたセルロース製の繊維ウェブは、形成部からプレス部へと進み、ここには、一連のプレスニップが含まれる。セルロース製の繊維ウェブは、プレス布で支持され、又はしばしば2つの斯かるプレス布間に支持されたプレスニップを通過する。プレスニップにおいて、セルロース製の繊維ウェブには、水を絞り出し、セルロース製の繊維ウェブを紙シートへとかえるようにウェブにおいてセルロース繊維を互いに結合させる、圧縮力がかけられる。この水は、プレス布又は各種布に受容され、理想的には、紙シートには戻らない。
【0004】
紙シートは、最終的に乾燥部へと進み、ここには、蒸気で内的に加熱された少なくとも一連の回転可能な乾燥ドラム又はシリンダーが含まれる。新規に形成された紙シートは、この一連のドラムの周囲に乾燥布で連続して配置されたセルペンタイン路(serpentine path)に向けられ、ドラムの表面に近接して紙シートを保持する。加熱されたドラムは、蒸発を介して、紙シートの水分含量を所望のレベルにまで低減する。
【0005】
当然のことながら、形成布、プレス布及び乾燥布は、抄紙機上においては全てエンドレスループの形態をとり、コンベアの様式の機能を担う。抄紙機の制御方向に沿って走る布のヤーンは、機械方向(MD)のヤーンと称され、MDのヤーンを横切るヤーンは、機械を横切る方向(CD)のヤーンと称される。また、当然のことながら、製紙工程は、かなりの速度で進行する連続工程である。つまり、繊維スラリーは、形成部において形成布上に連続して堆積される一方、新規に製造された紙シートは、乾燥部を脱出した後に、ロール上に連続して巻き取られる。
【0006】
従来のプレス部には、隣り合う円筒形のプレスロールのペアで形成された一連のニップが含まれる。近年、長尺プレスニップを使用することで、隣り合うロールのペアで形成されたニップを使用するよりも、有利であることが見出されている。ウェブがニップにおいて長い時間圧力にさらされ得ると、より多くの水が除去可能となり、従って、乾燥部において蒸発を介して除去されるべき水の量が少なくなる。
【0007】
シュー型の長尺ニッププレスにおいて、ニップは、円筒形のプレスロールと、弓形の圧力シューとの間で、形成される。弓形の圧力シューは、上述の円筒形のプレスロールの曲率半径に近似の曲率半径を有する円筒形の凹面を有する。ロールとシューとが物理的に近接すると、2つのプレスロール間に形成されるニップよりも、機械方向に5〜10倍長いニップが形成される。これにより、2つのロールプレスで使用される1平方インチ当たりの圧縮力と同等の圧力を保持しつつ、長尺ニップにおいて繊維ウェブのいわゆるデュウェル時間(dwell time)が増加する。この新規の長尺ニップ技術の結果、抄紙機上の従来のニップに比較して、長尺ニップにおける繊維ウェブの脱水性が劇的に向上する。
【0008】
シュー型の長尺ニッププレスには、特別なベルトが典型的に必要である。このベルトは、繊維ウェブを支持し運搬し脱水するプレス布を、製紙する圧力シューに対して直接摺動接触してもたらされる加速された摩耗から防御するように、設計される。斯かるベルトは、例えば、油状の潤滑フィルム上で、製紙するシューに対して摺動する平滑な不透過性の表面で製造される。このベルトは、プレス布とほぼ同程度の速度でニップを通過し、これにより、製紙する部材に対して最小限度の潤滑性をプレス布に及ぼすこととなる。
【0009】
本発明は、長尺ニッププレスに有用であることに加え、紙ウェブが圧力荷重により長い時間さらされる場合に有利な、平滑な紙表面に使用されるカレンダリング(calendering)などの他の製紙及び紙加工に使用されるプロセスベルトにも関する。さらに、製紙工程において紙ウェブを移動させるのに使用される他のプレスベルトは、環境ストレス、摩耗、圧縮力及び熱にさらされる。いかなる場合であっても、これらの種々のベルトは、例えば、エンドレスループの形態をとる織成基礎布を合成ポリマー樹脂に含浸して、製造され得る。好ましくは、この樹脂は、基礎布を織成するヤーンが長尺ニッププレスの弓形圧力シュー部材で直接接触することから防御され得るように、ベルトの内部表面上に所定の厚みのコーティングを形成する。
【0010】
これは、典型的には、コーティングであって、潤滑化されたシューに対して容易に摺動し、ベルトの構造を種々の潤滑油が透過してプレス布又は各種布及び繊維ウェブを汚染するのを阻止する、平滑で不透過性の表面を通常有する。
【0011】
さらに、反対の表面又は外部表面もまた、コートされる。この表面は、平滑であってもよく、紙ウェブ又はプレス布からプレスされた水を受容するように溝や目くら孔などのボイドを有してもよい。
【0012】
例えば、プロセスベルト(溝を有しても有さなくてもよい)に適用されるウレタンコーティングなどの斯かるコーティングは、ベルトの紙側からシュー側への水の透過を阻止するバリア材料として機能してもよく、このウレタンコーティングは、熱せられた(50〜60℃)油圧オイルと常に接触するものである。
【0013】
実際には、長尺ニッププレスの動作中、ベルトには、かなりの機械的及び熱的ストレスがかけられる。ベルトはエンドレスループの形態をとるので、コーティングは、長尺プレスニップを介してコーティングの亀裂などを究極的にもたらす繰り返しのストレスにさらされる。
【0014】
ベルトのウレタンコーティングに屈曲疲労や亀裂は、現在のウレタン材料の欠点の一つである。この問題は、柔軟な架橋ウレタンや、より少ない量の架橋ウレタンを使用することにより、和らげられ、或いは起こらなくなる可能性がある。しかしながら、より柔軟な架橋ウレタン(ショアC(shore C)に類似の受容可能な硬度)、又はより少ない量の架橋ウレタンは、摩耗耐性が低かったり、溝を有するベルトにおいて溝が閉口する可能性があり、ベルトの脱水特性が低減する可能性がある。屈曲疲労ヒステリシス(hysterisis)や摩耗もまた、抄紙機に使用されるロールカバーに関連する問題である。
【0015】
従って、水及び油の浸透を遅延させるのに加え、プロセスベルトやロールカバーや、溝の閉口に抵抗性を有する溝を有するベルトにおいて、ウレタンコーティングの剥離と同様に、屈曲疲労、亀裂の伝播及び摩耗特性に対して、向上させることが所望されている。
【0016】
例えば、溝を有するベルトにおけるコーティングの溝の閉口に対する抵抗性には、低いひずみ状態(strain regime)、つまり、10%未満のひずみにおいて高い動係数(dynamic modulus)の樹脂を典型的に必要とする。これに関連して、鋳造(cast)ポリウレタン弾性体は、いわゆる「硬位相(hard pphase)」及び「軟位相(soft phase)」の位相からなる全てセグメント化された共重合体である。加えて、これらの鋳造ポリウレタン弾性体は、1ステップの工程又は2ステップの工程で製造されてもよい。1ステップの工程において、マクログリコール(macroglycol)、イソシアネート及び硬化剤(また、いわゆる「鎖延長剤(chain extender)」とも称される。)を一度に全て混合する。2ステップの工程において、マクログリコール及びイソシアネートを前もって反応させて、プレポリマーを形成する。このプレポリマーを、続いて、硬化剤と反応させる。後者の手法は、大型の鋳造可能部品の製造に最も一般的な方法である。
【0017】
鋳造ポリウレタン部品には、基板や鋳型に、反応性液体ポリウレタンを注入又はポンプ注入して製造される種々の形態や部品が含まれる。ポリウレタン加工のこのような広範な分類には、シュー型のプレス、シュー型カレンダー及びシート移送ベルトなどのプロセスベルトを製造するのに従来から教示されている、シングル・パス・スパイラル(single pass spiral (SPS))及びマルチプル・シン・パス(multiple thin pass(MTP))のコーティング工程が含まれる。
【0018】
(ポリウレタン樹脂の)動係数を増加させるには、硬位相の容量画分を増加させる必要がある。硬位相の容量画分の増加は、イソシアネート又はNCO基の重量百分率を増加させるか、NCOの種類を変更するか、硬化剤の組成比を変更するかにより、達成され得る。
【0019】
しかしながら、この方法でこの係数を増加させると、この動係数とともに、ガラス転移温度の幅と位置が増加する。従って、抄紙機用プロセスベルトなどの高いひずみ率の適用例において、硬セグメントの百分率を変更すると、屈曲−亀裂のリスクが増大する。
【0020】
ガラス転移を変更させることなく動係数を増加させるか、亀裂におけるエネルギーを浪費する上述のポリウレタン改変物は、ポリウレタンでコートされたプロセスベルトの摩耗抵抗は、いずれの場合であっても、増加する可能性がある。
【0021】
従来、バリア特性及びコーティングの他の特性を向上させるようにナノ粒子を使用することが、提案されている。
【0022】
特許文献1は、プレスベルトにナノ粒子を使用することについて、参照している。しかしながら、摩耗の目的で、ナノ粒子を外部層の表面にのみ装着されている。この文献では、摩耗耐性を有する外部表面におけるナノ粒子が、外部層に疎水特性を付与するように、フッ化炭素鎖を有してもよい旨、述べている。
【0023】
特許文献2は、合成樹脂と、種々の粒子径(3カラム66行〜4カラム19行)を有する摩耗フィラー粉末(3カラム37〜65行)とでコートされた繊維強化プラスチックロールである。
【0024】
特許文献3は、製紙に使用するコートされたトランスファーベルトである。このコーティングは、一種のポリマーであって、カオリン粘度微粒子フィラーを有してもよい。このフィラーは、表面粗さを提供し、適用圧力の増加に伴って減少する。
【0025】
特許文献4は、コートされたベルトの洗浄性を向上させる方法である。このポリマーコーティングは、特許文献3に開示と類似の微粒子フィラーを有してもよい。
【0026】
特許文献5は、ポリマーコーティング中にクレイフィラーを使用する、プレスベルト、プレスロールカバー又は長尺ニップシュー型ベルトである。これは、特許文献3に教示のベルトの代替物である。
【0027】
特許文献6は、織成されたポリウレタンでコートされたベルトである。このコーティングは、摩擦係数を増加させるため、クルミの殻(walnut shell)を含有する。
【0028】
特許文献7は、弾性ロールを用いた超カレンダー加工(supercalendering)装置である。このコアの金属ロールは、繊維材料に含浸されたエポキシ樹脂を付加された無機(石英)フィラーを用いた繊維材料の第1コーティングと、第1コーティング上に形成されたエポキシ樹脂を付加された無機フィラーの第2コーティングとを有する。
【0029】
特許文献8は、酸化クロムと、二酸化チタンとともに、酸化アルミニウムと、酸化ジルコニウムとの混合物を有する組成物でコーティングしたセラミックロールである。
【0030】
特許文献9は、自動車用エアバックに用いる軽量の布地である。種々のフィラーのうち、摩擦値を低減するのに、バーミキュライト及びマイカを使用する。
【0031】
特許文献10は、光沢面を保持しつつ、高い摩耗抵抗を与える砂粒子(grit particle)を有する紙シート又は積層物である。
【0032】
特許文献11は、良好な紙放出性を有する紙ウェブトランスファーベルトを提供する。閉鎖された気泡(closed bubble)、マイクロカプセル又は微粒子フィラーを、ポリマー樹脂コーティングに混合する。
【特許文献1】米国特許第6,616,814号明細書
【特許文献2】米国特許第5,387,172号明細書
【特許文献3】米国特許第5,298,124号明細書
【特許文献4】米国特許第6,036,819号明細書
【特許文献5】米国特許第6,136,151号明細書
【特許文献6】米国特許第4,002,791号明細書
【特許文献7】米国特許第4,466,164号明細書
【特許文献8】米国特許第6,200,248号明細書
【特許文献9】米国特許第6,200,915号明細書
【特許文献10】米国特許第6,290,815号明細書
【特許文献11】米国特許第6,331,231号明細書
【非特許文献1】Measuring Rubber Deterioration - Cut Growth Using Ross Flexing Apparatus(ASTM D−1052)
【非特許文献2】G.J.Lake著、”Fatigue and Fracture of Elastomers”、Rubber Chemistry and Technology、1995年、68巻、3号、p.435
【非特許文献3】A.G. Thomas著、”The Development of Fracture Mechanics for Elastomers”、Rubber Chemistry and Technology、1994年、67巻、3号、p.G50
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0033】
本発明は、ウレタンでコートされたプロセスベルト及びロールカバーに係る上述の特性のいくつか又は全てを向上させた、上述の特許文献に開示のものに対する代替物である。
【0034】
従って、本発明は、ナノ粒子を取り込んだプロセスベルト及びロールカバーであって、屈曲疲労、亀裂の伝播、溝の閉口に対する耐性、及びプロセスベルト及びロールカバーにおけるウレタンコーティングの摩耗特性を特に向上させるものである。本発明は、また、水及び油並びにこれらを組み合わせたものなどの流動体の拡散及び透過を遅らせる方法にも関する。
【課題を解決するための手段】
【0035】
上述の向上性は、コーティング材料に、約0.01重量%〜約10重量%のナノ粒子を取り込むことで、発揮される。このコーティングは、鋳造可能(castable)なもの、伸張可能なもの、又は水性コーティングなどの溶媒をベースとしたものであってもよい。
【0036】
本発明は、溝を有するベルトやロールカバーにおいて溝の閉口に対する耐性を損なうことなく疲労・亀裂耐性を向上させるように、鋳造可能又は押出可能なウレタン(extrudable urethane)にナノ粒子を取り込むことについても、述べる。これらの向上性は、溝を有さないベルトにも効果的である。
【0037】
本発明は、硬化剤及びプレポリマーを混合する前に、これらの一方又は両方に、ナノ粒子を前もって分散させることについて、提供する。或いは、このナノ粒子は、プレポリマーを構成する物質に、前もってブレンドされてもよく、或いは、可塑剤に前もって分散されてもよい。いずれにしても、コーティング自体には、分散されたナノ粒子が含有されており、摩耗目的のコーティングの表面上のみでなく全体を通じて所望の特性をもたらす。
【発明を実施するための最良の形態】
【0038】
本発明について、図面に関する参照文とともにより詳細に述べる。
【0039】
本発明について、添付の図面に関する参照文において、例示を目的として、述べる。
【0040】
本発明において、「備える(comprise)」、「備える(comprising)」、「含有する(containing)」及び「有する(having)」並びにこれらに類する用語は、米国特許法において見出される用語に帰する意味を有するものとし、且つ「含む(include)」及び「含む(including)」並びにこれらに類する用語を意味することも可能である。「本質的に・・・のみからなる(consisting essentially of)」若しくは「本質的に・・・のみからなる(consists essentially of)」又はこれらに類する語句は、米国特許法に帰する意味を有し、この用語は、制約がない(open−ended)ものであり、列挙されたものの基本的又は新規の特性が、列挙されたもの以上のものの存在により改変されない限り、列挙されたもの以上のものの存在を可能とするものであり、先行技術の具体例を排除するものである。
【0041】
本発明は、亀裂、特に曲げ亀裂に対する向上された耐性を有するベルト製品用のポリウレタン弾性体系を提供することを目的とする。曲げ亀裂は、曲げストレス及びひずみにより駆動される疲労亀裂成長(FCG)の一形態である。弾性体の曲げ亀裂は、弾性体をより柔軟(例えば、低い動係数)に製造することで減弱されるが、ベルト適用例において最も重要なことは、向上された曲げ亀裂は、上述の係数を低下させることなく達成されることである。さもなければ、溝を有するベルトの適用例において溝を開口した状態に保ち得ない。同様に、シューカレンダー適用例において望ましくは、摩耗耐性を保持するように幾らか最小限の硬度(係数)を保持することである。本発明は、係数(硬度)を犠牲にすることなく弾性体のベルト製品の曲げ亀裂耐性を増加させる方法を提供する。
【0042】
疲労亀裂成長に対する耐性を増加させつつ、上述の材料の動係数を増加させ得ることが好ましい。この動係数が増加すると、上述の材料のガラス転移温度を増加させることなく増加させることが好ましい。曲げ亀裂に対する種々の弾性体の相対的な耐性は、弾性体の高ひずみ又は低ひずみの疲労亀裂成長(FCG)を測定することで、評価されてもよい。
【0043】
高ひずみ状態におけるFCG特性は、ロス・フレックス・テスト(Ross Flex test)装置(例えば、ASTM D−1052;及び非特許文献1参照)で、測定されてもよく、ここで、サンプルの厚みは、ひずみと、可変な亀裂率(rate of cracking)とを異なるレベルで生じさせるように、変更されてもよい。低ひずみ状態におけるFCG特性は、破壊力学の概念を用いたり、及び種々の技術論文に開示の裂けエネルギー(tearing energy)又はひずみに対する亀裂成長率をプロットすることで、測定されてもよい。非特許文献2及び3を参照のこと。後者の試験方法において、平坦な張力試験片を使用してもよく、疲労亀裂成長データが発生すると同時に動係数データを捕捉可能である。多くの弾性体は、非線形の粘弾性挙動を有し、このことは、動係数が、動的ひずみ又は動的ストレスの程度に応じていくらかシフトすることを意味する。
【0044】
本発明は、疲労亀裂成長に対する耐性を向上させる方法について提供し、この方法は、ポリウレタンにナノ粒子を添加することを有する。コーティング若しくは鋳造又はこれらに類する方法用のポリウレタン樹脂系を調製する多くの方法が存在し、当業者は、無機粒子をポリウレタンに統合し得る異なる方法を認識するであろう。
【0045】
本発明のコーティングには、種々の異なる種類のウレタンを基礎とした材料を使用してもよく、これには、製紙工業及び布地工業の種々の工程においてベルト及びロールカバーに典型的に使用し得る種々の材料が含まれる。斯かるウレタンは、鋳造可能なウレタンであっても、押出可能なウレタンであってもよい。本発明における使用には、ウレタンは、水系のもの、研磨可能なガム又は発泡体であってもよい。使用するウレタンの種類は、適用例による。
【0046】
本発明によると、ウレタンを基礎としたコーティングに添加されるナノ粒子の量は、各系用に、実験的に同定されるが、一般的には、混合物の総重量に対して、約0.01%〜約10%、約0.1%〜約5%、好ましくは約1%〜約5%である。しかしながら、これらの率よりも多く(例えば、10%を上限として)を、添加してもよい。
【0047】
本発明のベルトコーティングに使用され得るナノ粒子(粒子径が例えば1〜100nm)には、限定されないが、クレイ、カーボンブラック、シリカ、シリコンカーバイド、又はアルミナなどの金属酸化物が含まれる。ナノ粒子は、種々の径で存在してもよく、個々のナノ粒子は、単一の径でなくてもよいが、全体として、平均径分布が100nmを越えないものである。本発明のナノ粒子は、「プレートレット(platelets)」の形態であってもよく、ひとつのプレートレットの平均幅は、約1nm以上であってもよいが、約100〜500nmの長さ、好ましくは200〜300nmの長さである。ナノ粒子の好適な寸法範囲は、30nm以下である。上述の金属酸化物は、種々の形態の、酸化アルミニウム、酸化チタン、酸化鉄、酸化亜鉛、酸化インジウム、酸化錫、酸化アンチモン、酸化セリウム、酸化イットリウム、酸化ジルコニウム、酸化銅、酸化ニッケル及び/又は酸化タンタル、並びにこれらの組み合わせを含んでもよい。例えば、一実施例において、コートされていないアルミナ、エポキシシラン、又はコートされたオクトシルシランを1重量%まで添加される。
【0048】
本発明において使用されるクレイは、限定されないが、Cloisite(登録商標)30B、サポナイト、ヘクトライト(hectorite)、マイカ、バーミキュライト(vermiculite)、ベントナイト、ノントロナイト、ベイデライト(beidellite)、ボルコンスコイト(volkonskoite)、マナディイト(manadiite)及びケニヤイト(henyaite)並びにこれらを組み合わせたものなどのモンモリロナイトを含んでもよい。本発明に使用されるクレイは、天然物又は化学合成クレイを含んでもよい。
【0049】
クレイなどのアルミノシリケート関連の天然ミネラルの特定の場合、クレイは、個々のクレイプレートレットがナノサイズであるような個々の層に剥離され得るシート状の層状構造を有する。個々のプレートレットは、約1nmの厚みであってもよく、アスペクト比は、100〜1000であってもよい。プレートレットが分離したシリカ物層のナノ複合体となるように完全に剥離されている場合、このクレイは、「剥脱」と称される。幾つかのシリカ物層が互いに対面するように積層され樹脂がシート間のスペースに幾らか侵入している場合、このクレイは、「挿入(intercalate)」されていると言える。
【0050】
ナノ粒子は、組成の許容度を広げ、且つ曲げ疲労亀裂耐性を向上させるように、例えばウレタンに取り込まれてもよい。実験データは、斯かる向上の効果に関する2つの機構を示している;つまり、ナノ粒子における障害の非局在化、並びに/又はナノメートル単位でのひび割れ及び亀裂成長の抑制を、示している。
【0051】
ウレタンのコーティングは、ウレタンのプレポリマーに硬化剤を混合することで、生じる。プレポリマーと硬化剤との硬化反応は、プレポリマーの鎖延長、プレポリマーの分岐、及び架橋ネットワークの形成を生じる。本発明の目的において、用語「プレポリマー」は、過剰量の有機ジイソシアネートモノマーがマクログリコール又はマクログリコールの混合物と反応された際に形成される反応生成物を意味する。
【0052】
ポリウレタンは、ポリアルキルメチレンエーテルグリコールとアルコールとがウレタン架橋を形成するようにイソシアネートに結合するので、ジオールの鎖延長剤を使用した際に形成される。本発明では、ポリエーテルグルコール、イソシアネート及びジオールからポリウレタンを調製するのに有用な種々のイソシアネートを使用し得る。これらには、限定されないが、2,4−トルエンジイソシアネート、2,6−トルエンジイソシアネート(TDI)、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(H12MDI)、3,3’−ジメチル−4,4’−ジフェニルジイソシアネート(TODI)、1,4−ベンゼンジイソシアネート、トランス−シクロヘキサン−1,4−ジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート(NDI)、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、4,6−キシレンジイソシアネート及びイソホロンジイソシアネート(IPDI)並びにこれらを組み合わせたものを含む。本発明はまた、脂肪族、環状脂肪族、及びアルキレンジイソシアネート及びアリルジイソシアネートなどの芳香族ポリイソシアネートを提供する。MDI及びTDIは、本発明に使用するのに好ましい。
【0053】
本発明の上述のウレタンナノ複合体物の調製に有用なマクログリコールは、少なくとも250の数平均分子量(MW)を有してもよく、例えば、ポリエーテル、ポリエステルマクログリコール及びこれらに類似のものが挙げられる。マクログリコールの数平均分子量は、例えば、約250〜約10,000程度であってもよい。
【0054】
大きい数平均分子量(MW)を有する好適なマクログリコールは、一般式HO(RO)Hを有するポリアルキレンエーテルマクログリコールであって、ここで、Rは、アルキレン残基であり、nは、このポリエーテルマクログリコールが少なくとも約250の数平均分子量を有するのに十分大きな整数である。斯かるポリアルキレンエーテルマクログリコールは、公知のものであって、アルキレンオキサイドなどの環状エーテルと、グリコール、ジヒドロキシエーテル及びこれらに類するものとの重合反応により、公知の方法を使用して、調製されてもよい。
【0055】
他の好適な大きい数平均分子量を有するマクログリコールは、ポリエステルマクログリコールである。ポリエステルマクログリコールは、二塩基酸(通常、アジピン酸であるが、セバシン酸、フタル酸などが存在していてもよい)と、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、ジエチレングリコール、テトラメチレンエーテルグリコール、及びこれらに類するエチレングリコールなどのジオールとを反応して、調製されてもよい。他の有用なポリエステルマクログリコールは、開始剤存在下でε−カプロラクトンを付加重合して、得てもよい。
【0056】
他の有用なマクログリコールには、Bayer(Leverkusen、ドイツ)から販売されているポリカーボネートが挙げられ、2つの水酸基を有し、その骨格は、ブタジエンやイソプレンなどのモノマーの重合又は共重合で、得られる。本発明に有用な特に好適なマクログリコールは、ジヒドロキシポリエステル、ポリテトラメチレンエーテルグリコール(PTMEG)及びポリカーボネートを有してもよい。
【0057】
「硬化剤」は、化合物、又は硬化剤のブレンドなどの化合物の混合物で長鎖の分子をともに架橋するものであり、これにより、重合反応が完了する。硬化剤は、本発明においては、「鎖延長剤」であってもよい。ポリウレタン系において、硬化剤は、混合物に存在するイソシアネート基と反応する水酸基(又はアミノ基)を端部に有する化合物からなる。ジオール系の硬化剤又は鎖延長剤の例としては、エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール、2,2,4−トリメチル−1,5−ペンタンジオール、2−メチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール、1,4−ビス(ヒドロキシエトキシ)ベンゼン、ビス(ヒドロキシエチレン)テレフタレート及びヒドロキノンビス(2−ヒドロキシエチル)エーテル(HQEE)並びにこれらの組み合わせが挙げられる。ジアミン系の硬化剤又は鎖延長剤の例としては、限定されないが、1,2−エチレンジアミン、1,6−ヘキサンジアミン、1,2−プロパンジアミン、4,4’−メチレン−ビス(3−クロロアニリン)(3,3’−ジクロロ−4,4’−ジアミノジフェニルメタンとしても知られている)(MOCA、又はMboca)、ジメチルチオトルエンジアミン(DMTDA)、4,4’−ジアミノジフェニルメタン(DDM)、1,3−ジアミノベンゼン、1,4−ジアミノベンゼン、3,3’−ジメトキシ−4,4’−ジアミノジフェニル、3,3’−ジメチル−4,4’−ジアミノジフェニル、4,4’−ジアミノジフェニル及び3,3’−ジクロロ−4,4’−ジアミノジフェニル並びにこれらの組み合わせが挙げられる。
【0058】
本発明に有用な硬化剤としては、限定されないが、4,4’−メチレン−ビス(2−クロロアニリン)(MBCA)、4,4’−メチレン−ビス(3−クロロ−2,6−ジエチルアニリン)(MCDEA)、ジエチルトルエンジアミン(DETDA)、t−ブチルトルエンジアミン(TBTDA)、ジメチルチオ−トルエンジアミン、トリメチレングリコール−ジ−p−アミノ−ベンゾエート、メチレンジアニリン(MDA)、メチレンジアニリン−塩化ナトリウム複合体(Caytur(登録商標)21及び31(Uniroyal Chemical Company製))が挙げられる。好適実施例において、ジオール及びアミン系の硬化剤のブレンドを使用する。
【0059】
ポリウレタン又はポリウレタン尿素を調製するのに触媒は必須ではないが、製造の観点から、利点がある。広く使用されている触媒は、三級アミンや有機錫化合物があり、プレポリマーの製造に1ショット工程で行う場合、及びプレポリマーからポリウレタン又はポリウレタン尿素を製造する場合に用いられる。
【0060】
ポリエーテルグリコール、プレポリマー又はポリウレタンに、公知の方法を用いて、添加剤を導入してもよい。有用な添加剤には、ポリ水酸基の機能を有する分岐剤、つや消し剤(二酸化チタン、亜鉛サルファイド又は酸化亜鉛など)、着色剤(染料など)、安定剤(ヒンダードフェノール、アミンなどの抗酸化剤など)、紫外線安定剤、熱安定化剤、フィラー、難燃剤、顔料、抗菌剤、帯電防止剤、光学的輝度調節剤(optical brightner)、延長剤、加工補助剤(processing aid)、粘度追加剤(viscosity booster)、可塑剤、及びその他の機能性添加剤が挙げられる。
【0061】
硬化剤及びプレポリマーを混合する前に、ナノ粒子を、硬化剤、プレポリマー、又は硬化剤とプレポリマーとを混和したものに、前もって分散させてもよい。或いは、ナノ粒子は、プレポリマーを構成する物質に前もってブレンドされてもよい。幾つかの適用例において、可塑剤などの添加剤にナノ粒子を分散するのが、有利である場合がある。
【0062】
ここで、図面を参照すると、図1には、側方断面図として、抄紙機上で、紙製品に処理される繊維ウェブを脱水する、シュー型の長尺ニッププレス(LNP)を示す。ニッププレス10は、平滑円筒プレスロール12と弓形圧力シュー14とで規定される。弓形圧力シュー14は、平滑円筒プレスロール12の曲率半径と略同一の曲率半径を有する。平滑円筒プレスロール12と弓形圧力シュー14との距離は、ニッププレス10の荷重を制御するように、弓形圧力シュー14に機能的に結合された水圧手段で、調節されてもよい。平滑円筒プレスロール12は、機械を横切る方向の一定のレベルのニップ圧力特性を得るように、弓形圧力シュー14に適合された制御クラウンロール(controlled crown roll)であってもよい。
【0063】
無端ベルト構造16は、ニッププレス10を介して閉鎖したループ状に延び、平滑円筒プレスロール12を弓形圧力シュー14から分離する。プレス布18、及び紙シートに加工されるセルロール製の繊維ウェブ20は、図1の矢印で示すようにニッププレス10を共に通過する。繊維ウェブ20は、プレス布18に支持され、ニッププレス10において平滑円筒プレスロール12と直接接触する。繊維ウェブ20及びプレス布18は、矢印で示すようにニッププレス10を進む。
【0064】
また、繊維ウェブ20は、2つのプレス布18間のニッププレス10を進んでもよい。斯かる状況において、平滑円筒プレスロール12は、平滑であってもよく、又は溝や目くら孔などのボイド容量手段を設けられてもよい。
【0065】
いずれの場合であっても、プレス布18に対向する無端ベルト構造16の側部は、平滑であってもよく、又はボイド容量手段を設けられてもよい。
【0066】
いずれにしても、無端ベルト構造16は、矢印で示すように、つまり図1で示す半時計回りの方向にニッププレス10を移動し、プレス布18が弓形圧力シュー14と直接摺動接触することから防御し、且つ油の潤滑膜上で摺動することから防御する。無端ベルト構造16は、従って、プレス布18及び繊維ウェブ20が汚染されないように、油に対して不透過性である必要がある。
【0067】
長尺ニップにプロセスベルト16の斜視図を図2に示す。ベルト16は、内部表面28と外部表面30とを有する。
【0068】
図3は、溝を有するベルト32の実施例に係る斜視図である。ベルト32は、内部表面34と外部表面36とを有する。外部表面36には、複数の溝38が、例えばベルト32の周囲の長手方向に設けられており、ニッププレス10において繊維ウェブ20又はプレス布18からプレスされた水を貯蔵する機能を有する。
【0069】
ベルト32の内部表面34及び外部表面36には、樹脂コーティングが適用される。内部表面34は潤滑化された弓形圧力シュー14を横切って摺動するので、このコーティングは、油及び水に対する不透過性をベルトに理想的に付与する。
【0070】
一実施例において、本発明は、コーティングが、曲げ疲労、亀裂の伝播、溝の閉口に対する耐性及びコーティングの摩耗特性を向上させる手段としてのナノ粒子を取り込むように、ウレタンコーティングを施されたプロセスベルト又はロールカバーに関する。本発明のコーティングは、他の流動体のうち水及び油の両方を、コーティング層を介して拡散及び透過を遅延させる向上手段をも提供する。上述の向上は、ウレタンを基礎としたコーティングにナノ粒子を取り込むこと(例えば10重量%を限度として)により、発揮される。
【0071】
図4を参照すると、所望の特性及び特徴を有するベルト1の例の断面図を示している。簡潔に述べると、ベース2は、種々の形態を取ることが可能であって、第1辺3及び第2辺4を有する織成形態又は不織形態であってもよい。図4に示した実施例において、ベース2の第1辺3は、ナノ粒子6を取り込んだウレタンコーティング5でコートされる。
【0072】
プロセスベルト又は長尺ニップシュー型のプロセスベルトとして、ベースは、当業者に利用可能な種々の共通に使用される構造であってもよい。ベルトは、いずれの場合であっても、無端の形態であっても、機械上で継ぎ合わせ可能な形態であってもよい。プレスロールカバーとして、十分な構造的完全性をロールカバーに付与するのに必要な、当業者公知の異なる強化構造を使用してもよい。
【実施例】
【0073】
以下、本発明をより詳細に説明するため、例を示す。
【0074】
(例)
(例1)
ポリ(プロピレングリコール)、グリセロールプロピレン及びトルエンジイソシアネートを基礎とした弾性を有するポリウレタン/クレイナノ複合体の試験サンプルを、挿入重合技術(intercalative polymerization technology)により、合成する。この複合体に約7.5重量%でクレイナノ粒子を導入すると、純粋なポリウレタンのサンプルと比較して、樹脂複合体の引張強度が2倍以上に増加し、且つ割れ目(break)における延長(elongation)が4倍以上に増加する。
【0075】
(例2)
ポリ(テトラメチレングリコール)、MDI及び1,4−ブタンジオールを基礎としたポリウレタンナノ複合体の試験サンプルを合成する。たった1%のモンモリロナイトのナノ粒子の濃度において、純粋なポリウレタンのサンプルと比較して、引張強度が2倍以上に増加し、且つポリウレタンナノ複合体の延長が3倍に増加する。
【0076】
(例3)
従来のポリウレタン系として使用した無改変のポリウレタン樹脂系のサンプルを、ポリエーテルMDIプレポリマーから製造した。硬化剤は、芳香族アミン及びジオールから選択した従来の鎖延長剤のブレンドであった。このブレンドの組成は、従来のベンチトップ型の実験室用ミキサーで混合する際十分な可使時間(ポットライフ)及び硬度を与える方式で、選択された。この硬化剤ブレンドを、プレポリマーと混合する前に、ナノ粒子と混合した。この方法は、例4においても、用いた。
【0077】
ナノアルミナ粒子(37nmの平均粒径)を、ナノ位相(Nanophase)に供給した。酸化亜鉛粒子(36nmの平均粒径)も、ナノ位相に供給した。供給者は、これらの粒子を前処理物としても、供給した。処理された「エポキシシラン」とは、粒子を(3−グリシドキシプロピル)トリメトキシシランで前処理したことを、意味する。「オクチルシラン」とは、粒子を、n−オクチルトリエトキシシランで処理したことを、意味する。Cloisite 20A、Cloisite 30B及びCloisite Na+は、Southern Clay Productsから供給されたものである。このNaクレイは、有機重合調整剤を有さないが、上述の20A及び20Bは、有機的に改変されたクレイの異なる種類である。
【0078】
最終的な複合体におけるクレイプレートレットの分散状態(例えば、挿入体(intercalated)と剥脱体(exfoliated)など)は、サンプル調製条件を種々改変して、調節された。
【0079】
上述の材料を、Planar Tension Fatigue Crack Growth Testで、試験した。化合物Aは、オクチルシランでコートした1.58容量%のアルミナを有する。化合物Bは、剥脱された1.0重量%のCloisite 20Aを有し、これは、Cloisite 20Aの0.62容量%に相当する。化合物Cは、剥脱された0.56容量%のCloisite 30Bを有する。0%の最小ひずみにて、半正矢(haversine)パルスを用いてFCG試験を行った。FCG試験は、一定の範囲のひずみ以上で行った。表1乃至3に示したデータは、動的な引張ひずみを変化させて、4〜5回繰り返して得たデータの平均値を示す。
【0080】
【表1】

【0081】
【表2】

【0082】
【表3】

【0083】
これらの結果は、驚くべきことに、ナノ改変した材料における疲労亀裂成長率が、同様の条件で混合した改変されていない材料における疲労亀裂成長率の30%未満であることを示した。さらに、動係数の損失を伴うことなく、疲労亀裂成長に対する耐性が増加した。事実、幾つかの場合、材料の動係数が増加する場合であっても、亀裂成長が緩徐となった。
【0084】
上述の各サンプルは、相対架橋密度に関する標準的な溶媒膨潤法(solvent swell method)により、全て試験され、これは、疲労亀裂成長に対する耐性の増加が化学的架橋密度における種々の下方へのシフトに貢献し得ないことを示す。従って、疲労亀裂成長に対する耐性の増加は、成長する亀裂と分散された粒子との間の相互作用によるものである。
【0085】
上述の結果が示唆するのは、改変された材料と改変されていない材料との間の差異は、ひずみが増加される場合であっても、保持されるということである。従って、この差異は、例4におけるRoss Flex試験などの高ひずみ試験においても観察されるべきものである。
【0086】
(例4)
上述の通り調製したサンプルのキャリパーを、各サンプルが妥当な時間、例えば50,000サイクルの試験セグメントの間に測定可能な率において亀裂を生じるように、設定した。引張ひずみの最大の理論値は、28〜29%であった。試験の性質は、試験の間における動係数を同定し得るものではない。しかしながら、樹脂の相対剛性又は硬度は、ASTM D−2240について、アナログ式又はDigital Shore C Durometerで、評価されてもよい。
【0087】
FCG挙動は、曲げサイクルの回数に対する亀裂長さのプロットから、又は所定のサイクル数における亀裂長さの一覧から収集されてもよい。Ross Flexデータは、4回繰り返し測定して得た値の平均値を反映する(図5参照)。
【0088】
硬度は、6回測定して得た結果の平均値を反映しており、表4に示す。
【0089】
【表4】

【0090】
硬度の若干のシフトは、重要ではなく、亀裂の率の大きなシフトを説明し得ない(Durometerの精度は、±1ユニットである)。
【0091】
図6は、クレイ改変材料に関し、サイクル数に対する平均亀裂長さ(mm)を示すグラフを示す。
【0092】
上述の事項の改変は、当業者に明らかなものであるが、そのように改変された事項は、添付した特許請求の範囲の範囲を超えるものではない。例えば、本発明の議論がプロセスベルト及びロールカバーについて参照されている場合、製紙工業及びその他の工業的適用例における他のベルトにも適用可能である。
【0093】
本願における全ての文献(以下、本願引用文献と称する。)及び本願引用文献に引用又は参照されている全ての文書を、参照して、本願に取り込む。加えて、各出願文献又は本願引用文献で引用又は言及されている全ての製造者取扱説明書又はカタログを、参照して、本願に取り込む。本願に参照して取り込んだ文献又は本願の教示は、本発明の実用に使用され得る。本願に参照して取り込んだ文献は、先行技術であることを許容するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0094】
【図1】シュー型の長尺ニッププレスの側方断面図である。
【図2】本発明の方法に従って製造したベルトの斜視図である。
【図3】溝を有するベルトの斜視図である。
【図4】本発明の教示を取り込んだ、図2のベルトの断面図である。
【図5】サイクル数当たりの亀裂の平均長さを示すグラフであって、ウレタン樹脂のコントロールと、コートされていないアルミナと、樹脂中にコートされたアルミナ材料を有するものとを比較したものである。
【図6】サイクル数当たりの亀裂の平均長さを示すグラフであって、ウレタン樹脂のコントロールと、ウレタン樹脂中にクレイで改変された材料を有するものとを比較したものである。
【符号の説明】
【0095】
1 ベルト
2 ベース
3 第1辺
4 第2辺
5 ウレタンコーティング
6 ナノ粒子
10 ニッププレス
12 平滑円筒プレスロール
14 弓形圧力シュー
16 無端ベルト構造
18 プレス布
20 繊維ウェブ
28 内部表面
30 外部表面
32 ベルト
34 内部表面
36 外部表面
38 溝

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ナノ粒子を有するウレタンを基礎としたコーティングを有する、抄紙機用プロセスベルト又は布地ベルトであって、
当該ベルトの、曲げ疲労に対する耐性、亀裂の伝播に対する耐性、溝の閉口に対する耐性、硬度、引張特性又は摩耗特性の少なくとも1つの特性が向上されていることを特徴とするベルト。
【請求項2】
前記ナノ粒子は、約1nm〜約100nmの範囲の寸法を有することを特徴とする請求項1に記載のベルト。
【請求項3】
前記ナノ粒子は、約0.01重量%〜約10重量%の量が含まれていることを特徴とする請求項1に記載のベルト。
【請求項4】
前記ナノ粒子は、約0.1重量%〜約5重量%の量が含まれていることを特徴とする請求項1に記載のベルト。
【請求項5】
前記ナノ粒子は、約1重量%〜約5重量%の量が含まれていることを特徴とする請求項1に記載のベルト。
【請求項6】
前記ウレタンは、押出可能なものであることを特徴とする請求項1に記載のベルト。
【請求項7】
前記ウレタンは、鋳造可能なものであることを特徴とする請求項1に記載のベルト。
【請求項8】
前記ウレタンは、発泡体であることを特徴とする請求項1に記載のベルト。
【請求項9】
前記ウレタンは、水をベースとしたものであることを特徴とする請求項1に記載のベルト。
【請求項10】
前記ウレタンは、研磨可能なガムであることを特徴とする請求項1に記載のベルト。
【請求項11】
前記ウレタンは、鋳造可能なものであって、ウレタンプレポリマーと硬化剤を混合して製造されることを特徴とする請求項1に記載のベルト。
【請求項12】
前記硬化剤と前記のプレポリマーとを混合する前に、前記ナノ粒子は、前記硬化剤又は前記のプレポリマーの少なくとも一方と前もって分散されることを特徴とする請求項11に記載のベルト。
【請求項13】
前記ウレタンは、鋳造可能なものであって、ウレタンプレポリマー、硬化剤、可塑剤及び任意で顔料を混合して製造されることを特徴とする請求項1に記載のベルト。
【請求項14】
前記硬化剤と前記のプレポリマーと前記可塑剤とを混合する前に、前記ナノ粒子は、前記硬化剤、前記のプレポリマー又は前記可塑剤の少なくともいずれかと前もって分散されることを特徴とする請求項13に記載のベルト。
【請求項15】
前記コーティングにおけるナノ粒子は、クレイ、カーボンブラック、シリコンカーバイド、シリカ若しくは金属酸化物又はこれらの組み合わせからなることを特徴とする請求項1に記載のベルト。
【請求項16】
前記コーティングにおける前記クレイのナノ粒子は、モンモリロナイト、サポナイト、ヘクトライト、マイカ、バーミキュライト、ベントナイト、ノントロナイト、ベイデライト、ボルコンスコイト、マナディイト若しくはケニヤイト又はこれらの組み合わせからなることを特徴とする請求項15に記載のベルト。
【請求項17】
前記コーティングにおける前記金属酸化物のナノ粒子は、酸化アルミニウム、酸化治乱、酸化鉄、酸化亜鉛、酸化インジウム、酸化錫、酸化アンチモン、酸化セリウム、酸化イットリウム、酸化ジルコニウム、酸化銅、酸化ニッケル若しくは酸化タンタル又はこれらの組み合わせからなることを特徴とする請求項15に記載のベルト。
【請求項18】
前記ナノ粒子は、前記コーティングを介した水又は油の透過性に対する耐性を向上することを特徴とする請求項1に記載のベルト。
【請求項19】
当該ベルトは、製紙に用いるプロセスベルトであることを特徴とする請求項18に記載のベルト。
【請求項20】
ナノ粒子を有するウレタンを基礎としたコーティングを有する、ロールカバーであって、
当該ロールカバーの、曲げ疲労に対する耐性、亀裂の伝播に対する耐性、溝の閉口に対する耐性、硬度、引張特性又は摩耗特性の少なくとも1つの特性が向上されていることを特徴とするロールカバー。
【請求項21】
前記ナノ粒子は、約1nm〜約100nmの範囲の寸法を有することを特徴とする請求項20に記載のロールカバー。
【請求項22】
前記ナノ粒子は、約0.01重量%〜約10重量%の量が含まれていることを特徴とする請求項20に記載のロールカバー。
【請求項23】
前記ナノ粒子は、約0.1重量%〜約5重量%の量が含まれていることを特徴とする請求項20に記載のロールカバー。
【請求項24】
前記ナノ粒子は、約1重量%〜約5重量%の量が含まれていることを特徴とする請求項20に記載のロールカバー。
【請求項25】
前記ウレタンは、押出可能なものであることを特徴とする請求項20に記載のロールカバー。
【請求項26】
前記ウレタンは、鋳造可能なものであることを特徴とする請求項20に記載のロールカバー。
【請求項27】
前記ウレタンは、発泡体であることを特徴とする請求項20に記載のロールカバー。
【請求項28】
前記ウレタンは、水をベースとしたものであることを特徴とする請求項20に記載のロールカバー。
【請求項29】
前記ウレタンは、研磨可能なガムであることを特徴とする請求項20に記載のロールカバー。
【請求項30】
前記ウレタンは、鋳造可能なものであって、ウレタンプレポリマーと硬化剤を混合して製造されることを特徴とする請求項20に記載のロールカバー。
【請求項31】
前記硬化剤と前記のプレポリマーとを混合する前に、前記ナノ粒子は、前記硬化剤及び前記のプレポリマーの少なくとも一方と前もって分散されることを特徴とする請求項30に記載のロールカバー。
【請求項32】
前記ウレタンは、鋳造可能なものであって、ウレタンプレポリマー、硬化剤、可塑剤及び任意で顔料を混合して製造されることを特徴とする請求項20に記載のロールカバー。
【請求項33】
前記硬化剤と前記のプレポリマーと前記可塑剤とを混合する前に、前記ナノ粒子は、前記硬化剤、前記のプレポリマー又は前記可塑剤の少なくともいずれかと前もって分散されることを特徴とする請求項32に記載のロールカバー。
【請求項34】
前記コーティングにおけるナノ粒子は、クレイ、カーボンブラック、シリコンカーバイド、シリカ若しくは金属酸化物又はこれらの組み合わせからなることを特徴とする請求項20に記載のロールカバー。
【請求項35】
前記コーティングにおける前記クレイのナノ粒子は、モンモリロナイト、サポナイト、ヘクトライト、マイカ、バーミキュライト、ベントナイト、ノントロナイト、ベイデライト、ボルコンスコイト、マナディイト若しくはケニヤイト又はこれらの組み合わせからなることを特徴とする請求項34に記載のロールカバー。
【請求項36】
前記コーティングにおける前記金属酸化物のナノ粒子は、酸化アルミニウム、酸化治乱、酸化鉄、酸化亜鉛、酸化インジウム、酸化錫、酸化アンチモン、酸化セリウム、酸化イットリウム、酸化ジルコニウム、酸化銅、酸化ニッケル若しくは酸化タンタル又はこれらの組み合わせからなることを特徴とする請求項34に記載のロールカバー。
【請求項37】
前記ナノ粒子は、前記コーティングを介した水又は油の透過性に対する耐性を向上することを特徴とする請求項20に記載のロールカバー。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2007−530800(P2007−530800A)
【公表日】平成19年11月1日(2007.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−504014(P2007−504014)
【出願日】平成17年3月15日(2005.3.15)
【国際出願番号】PCT/US2005/008492
【国際公開番号】WO2005/090429
【国際公開日】平成17年9月29日(2005.9.29)
【出願人】(591097414)アルバニー インターナショナル コーポレイション (110)
【氏名又は名称原語表記】ALBANY INTERNATIONAL CORPORATION
【Fターム(参考)】