説明

ナノ粒子が充填されたステレオリソグラフィー樹脂

【課題】ステレオリソグラフィーにより三次元物品を形成する方法を提供する。
【解決手段】1)表面に放射線硬化性液体組成物の薄層をコーティングする工程であって、組成物が、放射線硬化性組成物中に懸濁されたシリカタイプのナノ粒子を有してなる少なくとも一種類の充填剤を含むものである工程、2)薄層を化学線に画像様に露光して、画像状断面を形成する工程であって、化学線が、露光区域の薄層を実質的に硬化させるのに十分な強度のものである工程、3)先に露光された画像状断面上に組成物の薄層をコーティングする工程、4)工程(3)からの薄層を化学線に画像様に露光して、追加の画像状断面を形成する工程であって、化学線が、露光区域の薄層を実質的に硬化させ、先に露光された画像状断面に付着させるのに十分なものである工程、および5)三次元物品を構築するために十分な回数だけ工程(3)および(4)を繰り返す工程、を有してなる方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ステレオリソグラフィーによる三次元物品の製造に特に適した選択された液体の放射線硬化性組成物、並びに硬化物品の製造方法および硬化された三次元形状物品自体に関する。特に、本発明は、硬化三次元形状物品をそれから形成できる、シリカタイプのナノ粒子充填剤を含有する液体の放射線硬化性樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ステレオリソグラフィーによる複雑な形状の三次元物品の製造が、比較的長く知られている。この技法において、所望の形状の物品は、繰り返し交互に行われる二つの工程(a)および(b)を用いて液体の放射線硬化性組成物から構築される。工程(a)において、一方の境界が組成物の表面である液体の放射線硬化性組成物の層は、形成すべき形状を持つ物品の所望の断面積に対応する表面領域内で、この層の高さだけ、適切な放射線、一般には、好ましくはコンピュータ制御されたレーザ源より発せられた放射線を用いて硬化せしめられる。工程(b)において、硬化した層が、液体の放射線硬化性組成物の新たな層により覆われ、所望の三次元形状のいわゆるグリーン・モデルが仕上がるまで、一連の工程(a)および(b)が繰り返される。このグリーン・モデルは、一般に、まだ完全には硬化されておらず、したがって、通常は、ポストキュアすなわちあと硬化を行わなければならない。
【0003】
グリーン強度とも称されるグリーン・モデルの機械的強度(弾性係数、破壊強度)は、グリーン・モデルの重要な性質であり、使用されるステレオリソグラフィー樹脂組成物の性質により実質的に決まる。ステレオリソグラフィー樹脂組成物の他の重要な性質は、硬化の過程で用いられる放射線の高い選択性および最小カール要因を含み、これにより、グリーン・モデルの高い形状定義が可能になる。さらに、例えば、このプリキュアされた材料の層は、液体のステレオリソグラフィー樹脂組成物により容易に湿潤されるべきであり、もちろん、グリーン・モデルだけでなく最終的に硬化せしめられた形状の物品も、最適な機械的性質を有するべきである。
【0004】
ステレオリソグラフィーのユーザにとって最近優先度が高くなってきた別の要件は、ステレオリソグラフィーにより製造される硬化物品の高温性能である。これは通常、熱変形温度(HDT)またはガラス転移温度(Tg)により測定される。HDT値は、66psi(約0.46MPa)の荷重を加えてASTM法D648により決定される。ある用途、例えば、風洞試験に関しては、高剛性の材料が必要とされる。剛性は、曲げ弾性率または引張弾性率により測定される。
【0005】
所望の釣り合いのとれた性質を達成するために、異なるタイプの樹脂系が提案されてきた。例えば、放射線硬化性樹脂系が提案されてきた。これらの樹脂系は、一般に、ラジカルを発生させるためのフリーラジカル光開始剤と共に一種類以上の(メタ)アクリレート化合物(または他のフリーラジカル重合性有機化合物)からなる。特許文献1には、そのようなラジカル硬化性樹脂系の一つが記載されている。
【0006】
この目的に適した別のタイプの樹脂組成物は、(i)エポキシ樹脂または他のタイプのカチオン重合性化合物、(ii)カチオン重合開始剤、(iii)アクリレート樹脂または他のタイプのフリーラジカル重合性化合物、および(iv)フリーラジカル重合開始剤を有してなるデュアルタイプの樹脂系である。そのようなデュアルタイプの樹脂系の例が特許文献2に記載されている。
【0007】
本出願に有用な第3のタイプの樹脂組成物は、(v)ポリエーテル−ポリオールなどの反応性ヒドロキシル化合物を含む。そのようなハイブリッド系の例が特許文献3に記載されている。
【0008】
これら三つのタイプの組成物全てに充填剤を加えることもよく知られている。そのような充填剤は、反応性または非反応性、無機または有機である粉末状、繊維状または薄片状の材料を含んだ。有機充填剤材料の例としては、高分子化合物、熱可塑性プラスチック、コア・シェル、アラミド、ケブラー、ナイロン、架橋ポリスチレン、架橋ポリ(メチルメタクリレート)、ポリスチレンまたはポリプロピレン、架橋ポリエチレン粉末、架橋フェノール樹脂粉末、架橋尿素樹脂粉末、架橋メラミン樹脂粉末、架橋ポリエステル樹脂粉末、および架橋エポキシ樹脂粉末が挙げられる。無機充填剤の例としては、ガラスすなわちシリカビーズ、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、タルク、マイカ、ガラスすなわちシリカ気泡、ケイ酸ジルコニウム、酸化鉄、ガラス繊維、アスベスト、珪藻土、ドロマイト、金属粉、酸化チタン、パルプ粉末、カオリン、改質カオリン、水和カオリン金属充填剤、セラミックおよび複合体が挙げられる。有機および/または無機充填剤の混合物を用いても差し支えない。
【0009】
これとは別に、特許文献4には、ステレオリソグラフィー樹脂のための充填剤として金属タイプのナノ粒子の使用が教示されている。具体的には、この欧州特許では、ナノ金属粒子(例えば、チタン・ナノ粒子)を加えて、高い導電性を達成し、工具部品の形成の場合には、強力な物理的および/または機械的性質を達成している。この欧州特許では、これらのナノ金属粒子を使用できる特定のステレオリソグラフィー樹脂配合物を教示も示唆もしていない。
【0010】
さらに、ハンス・ケミー(Hanse Chemie)社は、製品の資料に、シリカ・ナノ粒子が充填された純粋な放射線硬化(メタ)アクリレート樹脂が製造されることを記載している。この資料は、そのようなナノ粒子の充填された(メタ)アクリレートが、ステレオリソグラフィー法により三次元物体を製造するのに有用であろうことを示唆も他に指摘もしていない。
【特許文献1】米国特許第5418112号明細書
【特許文献2】米国特許第5434196号明細書
【特許文献3】米国特許第5972563号明細書
【特許文献4】欧州特許第1029651号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
以前の全ての試行にもかかわらず、高温耐性および高剛性の両方を併せ持つ硬化物品を製造できるラジカル、デュアルおよび/またはハイブリッドの液体ステレオリソグラフィー組成物が必要とされている。本発明はその要望に対する解決策を提示する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
したがって、本発明のある態様は、ステレオリソグラフィーにより三次元物品を形成する方法において、
1) 表面に液体の放射線硬化性組成物の薄層をコーティングする工程であって、組成物が、放射線硬化性組成物中に懸濁されたシリカタイプのナノ粒子を有してなる少なくとも一種類の充填剤を含むものである工程、
2) 薄層を化学線に画像様に露光して、画像状断面を形成する工程であって、化学線が、露光区域の薄層を実質的に硬化させるのに十分な強度のものである工程、
3) 先に露光された画像状断面上に組成物の薄層をコーティングする工程、
4) 工程(3)からの薄層を化学線に画像様に露光して、追加の画像状断面を形成する工程であって、化学線が、露光区域の薄層を実質的に硬化させ、先に露光された画像状断面に付着させるのに十分なものである工程、および
5) 三次元物品を形成するために十分な回数だけ工程(3)および(4)を繰り返す工程、
を有してなる方法に関する。
【0013】
このステレオリソグラフィー法が、
(a) 少なくとも一種類のフリーラジカル重合性有機物質、
(b) 少なくとも一種類のフリーラジカル重合開始剤、
(c) 放射線硬化性組成物中に懸濁されたシリカタイプのナノ粒子を有してなる少なくとも一種類の充填剤、
(d) 随意的な、少なくとも一種類のカチオン重合性有機物質、
(e) 随意的な、少なくとも一種類のカチオン重合開始剤、
(f) 随意的な、少なくとも一種類のヒドロキシル官能性化合物、および
(g) 随意的な、少なくとも一種類のマイクロ粒子充填剤、
を有してなる放射線硬化性組成物を使用することが好ましい。
【0014】
本発明の別の態様は、上述した放射線硬化性組成物を用いて上述した方法により製造された三次元物品に関する。
【0015】
本発明のさらに別の態様は、ステレオリソグラフィーによる三次元物品の製造のために有用な液体の放射線硬化性組成物であって、
(a) 少なくとも一種類のフリーラジカル重合性有機物質、
(b) 少なくとも一種類のフリーラジカル重合開始剤、
(c) 放射線硬化性組成物中に懸濁されたシリカタイプのナノ粒子を有してなる少なくとも一種類の充填剤、
(d) 少なくとも一種類のカチオン重合性有機物質、
(e) 少なくとも一種類のカチオン重合開始剤、
(f) 随意的な、少なくとも一種類のヒドロキシル官能性化合物、および
(g) 随意的な、少なくとも一種類のマイクロ粒子充填剤、
を有してなる放射線硬化性組成物に関する。
【0016】
本発明のステレオリソグラフィー法に用いられるシリカタイプのナノ粒子が充填されたステレオリソグラフィー樹脂組成物には、従来技術の方法により製造された他のタイプの充填ステレオリソグラフィー樹脂よりも優れた利点がいくつかある。それらの樹脂は、粒子のサイズが小さいために光学的に透明であり、したがって、光を散乱せず、よって、解像度は未充填樹脂の場合と同じである。ナノ粒子は沈殿せず、組成物は均一なままであり、ステレオリソグラフィー装置に追加の撹拌装置を加える必要がない。ナノ粒子が充填された樹脂組成物の粘度は、未充填樹脂のものと同じ範囲にあり、リコーティング工程を通常のように実施できる。
【0017】
本出願の明細書および特許請求の範囲に用いている「(メタ)アクリレート」という用語は、アクリレートおよびメタクリレートの両方を称する。
【0018】
本出願の明細書および特許請求の範囲に用いている「液体」という用語は、一般に、約5℃から約30℃までの温度である「室温で液体」と同等とみなされるべきである。
【0019】
本出願の明細書および特許請求の範囲に用いている「マイクロ粒子」という用語は、光散乱法により測定して、約1から約100マイクロメートルの範囲の平均粒径を持つ充填剤粒子を称する。
【0020】
本出願の明細書および特許請求の範囲に用いている「ナノ粒子」という用語は、小角中性子散乱法などの光散乱法により測定して、約10から約999nm、より好ましくは、約10から約50nmの範囲の平均粒径を持つ充填剤粒子を称する。
【0021】
本出願の明細書および特許請求の範囲に用いている「シリカタイプのナノ粒子」という用語は、小角中性子散乱法などの光散乱法により測定して、約10から約999nm、より好ましくは、約10から約50nmの範囲の平均粒径を持つシリカ含有粒子を称する。
【0022】
本発明の新規のステレオリソグラフィー法およびそれにより形成される固体の硬化した三次元製品では、その方法のための出発材料として選択された液体の放射線硬化性組成物を使用する。この出発材料は、広義で、少なくとも一種類のフリーラジカル重合性有機物質、少なくとも一種類のフリーラジカル光開始剤、および組成物中に懸濁されたシリカタイプのナノ粒子を含む充填剤との混合物を含有する。出発材料はさらに、必要に応じて、少なくとも一種類の重合性有機物質、少なくとも一種類のカチオン重合光開始剤、少なくとも一種類のヒドロキシル官能性化合物、および少なくとも一種類のマイクロ粒子充填剤を含有してもよい。
【0023】
本発明の新規の放射線硬化性組成物は、広義で、少なくとも一種類のフリーラジカル重合性有機物質、少なくとも一種類のフリーラジカル光開始剤、組成物中に懸濁されたシリカタイプのナノ粒子を含む充填剤、および少なくとも一種類の光カチオン重合開始剤の混合物を含有する。これらの組成物はさらに、必要に応じて、少なくとも一種類のヒドロキシル官能性化合物および少なくとも一種類のマイクロ粒子充填剤を含有してもよい。
【0024】
(A) フリーラジカル重合性有機物質
フリーラジカル硬化性成分は、少なくとも一種類の固体または液体のポリ(メタ)アクリレート、例えば、一、二、三、四または五官能性のモノマーまたはオリゴマーである脂肪族、脂環式または芳香族アクリレートまたはメタクリレートおよびそれらの混合物を有してなることが好ましい。この化合物は約100から約500の分子量を有することが好ましい。
【0025】
適切な一官能性脂肪族(メタ)アクリレート化合物の例としては、ヒドロキシメチルアクリレートが挙げられる。脂環式(メタ)アクリレート化合物の例としては、環状トリメチロールプロパンホルマールアクリレートが挙げられる。二官能性脂肪族二官能性(メタ)アクリレート化合物の例としては、ヘキサンジオールジアクリレートおよびビスフェノールAジグリシジルジアクリレートが挙げられる。
【0026】
分子中に二つより多く不飽和結合を持つ適切な脂肪族ポリ(メタ)アクリレートの例としては、ヘキサン−2,4,6−トリオール、グリセロールまたは1,1,1−トリメチロールプロパン、エトキシル化またはプロポキシル化グリセロールまたは1,1,1−トリメチロールプロパンのトリアクリレートおよびトリメタクリレート、並びにトリエポキシド化合物、例えば、前記トリオールのトリグリシジルエステルを(メタ)アクリル酸と反応させることにより得られるヒドロキシ含有トリ(メタ)アクリレートが挙げられる。例えば、ペンタエリトリトールテトラアクリレート、ビストリメチロールプロパンテトラアクリレート、ペンタエリトリトールモノヒドロキシトリアクリレートまたはメタクリレート、またはジペンタエリトリトールモノヒドロキシペンタアクリレートまたはメタクリレートを使用することも可能である。
【0027】
さらに、例えば、多官能性ウレタンアクリレートまたはウレタンメタクリレートを使用することも可能である。これらのウレタン(メタ)アクリレートは、当業者に知られており、例えば、ヒドロキシ末端のポリウレタンをアクリル酸またはメタクリル酸と反応させることにより、またはイソシアネート末端プレポリマーをヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートと反応させて、ウレタン(メタ)アクリレートを得ることにより、公知の様式で調製できる。
【0028】
これらのフリーラジカル重合性化合物が、放射線硬化性組成物の約5重量%から約70重量%を構成することが好ましく、約10重量%から約60重量%がより好ましい。
【0029】
好ましいフリーラジカル重合性化合物としては、ヒドロキシメチルメタクリレートおよび環状トリメチロールプロパンホルマールアクリレートなどの一官能性(メタ)アクリレート化合物、ヘキサンジオールジアクリレートなどの二官能性(メタ)アクリレート化合物、トリメチロールプロパントリアクリレートなどの三官能性(メタ)アクリレート化合物、および脂肪族ウレタンジアクリレートなどのウレタン(メタ)アクリレート化合物が挙げられる。そのような(メタ)アクリレート化合物の組合せを使用することも好ましい。
【0030】
(B) フリーラジカル重合開始剤
本発明による組成物において、適切な照射が行われたときにフリーラジカルを形成するどのようなタイプの光開始剤を用いても差し支えない。公知の光開始剤の典型的な化合物としては、ベンゾインなどのベンゾイン類;ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、およびベンゾインフェニルエーテルなどのベンゾインエーテル類;ベンゾインアセテート;アセトフェノン、2,2−ジメトキシアセトフェノン、4−(フェニルチオ)アセトフェノン、および1,1−ジクロロアセトフェノンなどのアセトフェノン類;ベンジル;ベンジルジメチルケタール、およびベンジルジエチルケタールなどのベンジルケタール類;2−メチルアントラキノン、2−エチルアントラキノン、2−tert−ブチルアントラキノン、1−クロロアントラキノン、および2−アミルアントラキノンなどのアントラキノン類;トリフェニルホスフィン;例えば、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド(Lucirin(登録商標)TPO)などのベンゾイルホスフィンオキシド類;ベンゾフェノン、および4,4’−ビス(N,N’−ジメチルアミノ)ベンゾフェノンなどのベンゾフェノン類;チオキサントン類およびキサントン類;アクリジン誘導体;フェナゼン誘導体;キノキサリン誘導体または1−フェニル−1,2−プロパンジオン−2−O−ベンゾイルオキシム;1−アミノフェニルケトン類または1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、フェニル(1−ヒドロキシイソプロピル)ケトンおよび4−イソプロピルフェニル(1−ヒドロキシイソプロピル)ケトンなどの1−ヒドロキシフェニルケトン類;またはトリアジン化合物、例えば、4’−メチルチオフェニル−1−ジ(トリクロロメチル)−3,5S−トリアジン、S−トリアジン−2−(スチルベン)−4,6−ビス−トリクロロメチル、およびパラメトキシスチリルトリアジンが挙げられる。これらの全ては公知の化合物である。
【0031】
特に適したフリーラジカル光開始剤は、2,2−ジアルコキシベンゾフェノンなどのアセトフェノン類;および1−ヒドロキシフェニルケトン類、例えば、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−ヒドロキシ−1−{4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル}−2−メチル−1−プロパン、または2−ヒドロキシイソプロピルフェニルケトン「2−ヒドロキシ−2,2−ジメチルアセトフェノンとも称される」が挙げられ、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンが特に適している。これらの光開始剤は通常、例えば、325nmで動作するHe/Cdレーザ、例えば、351nm、または351および364nm、または333、351および364nmで動作するアルゴン・イオン・レーザ、もしくは照射線源として355nmでの出力を持つ周波数三逓倍YAG固体レーザと組み合わせて用いられる。他の特に適した部類のフリーラジカル光開始剤は、ベンジルケタール類およびベンゾイルホスフィンオキシド類を含む。具体的には、アルファ−ヒドロキシフェニルケトン、ベンジルジメチルケタール、または2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシドが光開始剤として用いられる。
【0032】
他の部類の適したフリーラジカル光開始剤はイオン染料・対イオン化合物を含み、これは、化学線を吸収し、フリーラジカルを生成でき、これらのフリーラジカルがアクリレートの重合を開始できる。それゆえ、イオン染料・対イオン化合物を有してなる本発明による組成物は、400から700ナノメートルの調節可能な波長範囲の可視光を用いて、可変様式で硬化できる。イオン染料・対イオン化合物およびそれらの作用形態は、例えば、欧州特許出願公開第223587号、並びに米国特許第4751102号、同第4772530号および同第4772541号の各明細書から知られている。
【0033】
特に好ましいフリーラジカル光開始剤は、Irgacure I−184として市販されている1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンおよび2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド(Lucirin(登録商標)TPO)である。
【0034】
フリーラジカル光開始剤は、放射線硬化性組成物全体の約0.1重量%から約7重量%、最も好ましくは、約0.5重量%から約5重量%である。
【0035】
(C) シリカ・ナノ粒子充填剤
どのようなシリカタイプ(すなわち二酸化ケイ素タイプ)のナノ粒子を本発明に用いても差し支えない。好ましいシリカタイプのナノ粒子は、独国ゲースサシュト(Geesthacht)所在のハンス・ケミー社から市販されている。好ましいハンス・ケミー社のシリカタイプのナノ粒子製品が、エポキシ樹脂または(メタ)アクリレート樹脂中に予め懸濁される。最も好ましいハンス・ケミー社の製品は、Nanopox XP22/0314(40重量%のナノ・シリカを含有する3,4−エポキシシクロヘキシル−3’,4’−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート)、Nanocryl XP21/0768(50重量%のナノ・シリカを含有するヘキサンジオールジアクリレート)、Nanocryl XP21/0687(50重量%のナノ・シリカを含有する脂肪族ウレタンジアクリレート)、Nanocryl XP21/0765(50重量%のナノ・シリカを含有する環状トリメチロールプロパンホルマールアクリレート)、Nanocryl XP21/0746(50重量%のナノ・シリカを含有するヒドロキシメチルメタクリレート)、Nanocryl XP21/1045(50重量%のナノ・シリカを含有するトリメチロールプロパントリアクリレート)およびNanocryl XP21/0930(50重量%のナノ・シリカを含有するポリエステルテトラアクリレート)である。これらの製品中に懸濁された二酸化ケイ素・ナノ粒子は、約10から約50nmの非常に狭い粒径分布を持ち、凝集せず、表面修飾されている。
【0036】
これらの樹脂組成物中のナノ粒子の量は、好ましくは、樹脂組成物全体の約15重量%から約60重量%、より好ましくは、約20重量%から約50重量%に及ぶ。
【0037】
これらのシリカ・ナノ粒子はどのような適切な方法により製造してもよい。そのような方法の例が、「Reinforcing Nanoparticles in Reactive Resins」と題するT.Adebahr, C.Roscher and J.AdamによるEuropean Coating Journal (April 2001) の論文に論じられている。
【0038】
これらのナノ粒子は、他の成分と混合する前に、エポキシ樹脂または(メタ)アクリレート樹脂または別の成分のいずれかの中に最初に懸濁させて差し支えない(上述したハンス・ケミー社の製品の資料に示されているように)。
【0039】
(D) カチオン重合性有機物質
カチオン重合性化合物は、手っ取り早く、脂肪族、脂環式または芳香族のポリグリシジル化合物または脂環式ポリエポキシドまたはエポキシクレゾールノボラックまたはエポキシフェノールノボラック化合物であってよく、分子中に平均で1つより多くのエポキシド基(オキシラン環)を有する。そのような樹脂は、脂肪族、芳香族、脂環式、芳香脂肪族または複素環構造を持っていてもよく、それらの樹脂は、エポキシド基または側基を含有するもしくはこれらの基が脂環式複素環の環系の一部を形成する。これらのタイプのエポキシ樹脂は、一般に知られており、市販されている。
【0040】
そのような適切なエポキシ樹脂の例が米国特許第6100007号に開示されている。
【0041】
エポキシ樹脂の硬化剤と共に、上述したものなどのエポキシ樹脂の液体の予め反応した付加物を使用することも考えられる。
【0042】
もちろん、新規の組成物に液体または固体のエポキシ樹脂の液体混合物を使用することも可能である。
【0043】
ここに用いてもよいエポキシ樹脂化合物以外の他のカチオン重合性有機物質の例としては、トリメチレンオキシド、3,3−ジメチルオキセタン、3,3−ジクロロメチルオキセタン、3−エチル−3−フェノキシメチルオキセタン、およびビス(3−エチル−3−メチルオキシ)ブタンなどのオキセタン化合物;テトラヒドロフランおよび2,3−ジメチル−テトラヒドロフランなどのオキソラン化合物;トリオキサン、1,3−ジオキサランおよび1,3,6−トリオキサンシクロオクタンなどの環状アセタール化合物;β−プロピオラクトンおよびε−カプロラクトンなどの環状ラクトン化合物;エチレンスルフィド、1,2−プロピレンスルフィドおよびチオエピクロロヒドリンなどのチイラン化合物;並びに1,3−プロピレンスルフィドおよび3,3−ジメチルチオタンなどのチオタン化合物が挙げられる。
【0044】
そのような他のカチオン重合性化合物の例が米国特許第6100007号にも開示されている。
【0045】
本発明のカチオン重合性化合物は、使用する場合には、放射線硬化性組成物の約10重量%から約40重量%を構成することが好ましい。
【0046】
(E) カチオン重合開始剤
本発明によるある組成物において、化学線に露光した際に、エポキシ材料の反応開始させるカチオンを形成する、どのようなタイプの光カチオン重合開始剤を必要に応じて用いても差し支えない。エポキシ樹脂のための適切な光カチオン重合開始剤が、数多く知られており、技術的に実証されている。それらには、例えば、求核性の弱い陰イオンを持つオニウム塩が含まれる。例としては、欧州特許出願公開第153904号明細書に記載されているものなどのハロニウム塩、ヨードシル塩またはスルホニウム塩;例えば、欧州特許出願公開第35969号、同第44274号、同第54509号、および同第164314号の各明細書に記載されているものなどのスルホキソニウム塩;または米国特許第3708296号および同第5002856号の各明細書に記載されているものなどのジアゾニウム塩が挙げられる。他の光カチオン重合開始剤としては、例えば、欧州特許出願公開第94914号および同第94915号の各明細書に記載されているものなどのメタロセン塩が挙げられる。他の好ましい光カチオン重合開始剤が、米国特許第5972563号(スタインマン(Steinmann)等)、同第6100007号(パン(Pang)等)、および同第6136497号(メリサリス(Melisaris)等)の各明細書に記載されている。
【0047】
より好ましい市販の光カチオン重合開始剤は、UVI−6974、UVI−6976、UVI−6990(ユニオン・カーバイド社(Union Carbide Corp.)により製造されている)、CD−1010、CD−1011、CD−1012(サートマー社(Sartomer Corp.)により製造されている)、Adekaoptomer SP−150、SP−151、SP−170、SP−171(旭電化工業により製造されている)、Irgacure 261(チバ・スペシャルティ・ケミカルス社(Ciba Specialty Chemicals Corp.))、CI−2481、CI−2624、CI−2639、CI−2064(日本曹達)、DTS−102、DTS−103、NAT−103、NDS−103、TPS−103、MDS−103、MPI−103、BBI−103(ミドリ化学)である。最も好ましいのは、UVI−6974、CD−1010、UVI−6976、Adekaoptomer SP−170、SP−171、CD−1012、およびMPI−103である。上述した光カチオン重合開始剤は、個別にまたは二つ以上の組合せで用いても差し支えない。
【0048】
最も好ましい光カチオン重合開始剤は、UVI−6974(ユニオン・カーバイド社からの)などのトリアリールスルホニウムヘキサフルオロアンチモネートである。
【0049】
光カチオン重合開始剤は、使用する場合、放射線硬化性組成物全体の約0.1重量%から約8重量%、より好ましくは、約0.5重量%から約5重量%を構成するであろう。
【0050】
(F) 随意的なヒドロキシル官能性化合物
これらの随意的なヒドロキシル官能性化合物は、少なくとも1、好ましくは、少なくとも2のヒドロキシル官能性を持つ任意の有機材料であってよい。この材料は、液体もしくは残りの成分中に可溶性または分散性である固体であってよい。材料は、硬化反応を阻害するどのような基も、もしくは熱的または光分解的に不安定であるどのような基も実質的に含まない。
【0051】
ヒドロキシル官能性化合物は、脂肪族ヒドロキシル官能性化合物または芳香族ヒドロキシル官能性化合物のいずれかであることが好ましい。
【0052】
本発明に有用であろう脂肪族ヒドロキシル官能性化合物としては、一つ以上の反応性ヒドロキシル基を含有する任意の脂肪族タイプの化合物が挙げられる。これらの脂肪族ヒドロキシル官能性化合物が、多官能性アルコール、ポリエーテルアルコールおよびポリエステルなどの多官能性化合物(好ましくは、2〜5のヒドロキシル官能基を持つ)であることが好ましい。
【0053】
有機材料が二つ以上の第1または第2脂肪族ヒドロキシル基を含むことが好ましい。ヒドロキシル基は、分子の中程にあっても末端にあってもよい。モノマー、オリゴマーまたはポリマーを用いても差し支えない。ヒドロキシル当量、すなわち、ヒドロキシル基の数で割られた数平均分子量が約31から5000の範囲にあることが好ましい。
【0054】
1のヒドロキシル官能性を持つ適切な有機材料の代表例としては、アルカノール、ポリオキシアルキレングリコールのモノアルキルエーテル、アルキレングリコールのモノアルキルエーテルなどが挙げられる。
【0055】
有用なモノマーポリヒドロキシ有機材料の代表例としては、1,2,4−ブタントリオール、1,2,6−ヘキサントリオール、1,2,3−ヘプタントリオール、2,6−ジメチル−1,2,6−ヘキサントリオール、1,2,3−ヘキサントリオール、1,2,3−ブタントリオール、3−メチル−1,3,5−ペンタントリオール、3,7,11,15−テトラメチル−1,2,3−ヘキサデカントリオール、2,2,4,4−テトラメチル−1,3−シクロブタンジオール、1,3−シクロペンタンジオール、トランス−1,2−シクロオクタンジオール、1,16−ヘキサデカンジオール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、および1,9−ノナンジオールなどのアルキレングリコールおよびポリオールが挙げられる。
【0056】
有用なオリゴマーおよびポリマーヒドロキシ含有材料の代表例としては、約200から約10,000の分子量を持つポリオキシエチレンおよびポリオキシプロピレングリコールおよびトリオール;様々な分子量のポリテトラメチレングリコール;酢酸ビニルコポリマーの加水分解または部分加水分解により形成された側鎖ヒドロキシル基を持つコポリマー、側鎖ヒドロキシル基を持つポリビニルアセタール樹脂;ヒドロキシ末端ポリエステルおよびヒドロキシル末端ポリラクトン;ポリブタジエンなどのヒドロキシル官能化されたポリアルカジエン;ヒドロキシル末端ポリエーテルが挙げられる。他のヒドロキシル含有モノマーとしては、1,4−シクロヘキサンジメタノール並びに脂肪族および脂環式モノヒドロキシアルカノールが挙げられる。
【0057】
他のヒドロキシ含有オリゴマーおよびポリマーとしては、ヒドロキシルおよびヒドロキシル/エポキシ官能化ポリブタジエン、ポリカプロラクトンジオールおよびトリオール、エチレン/ブチレンポリオール、およびそれらの組合せが挙げられる。ポリエーテルポリオールの例としては、様々な分子量のポリプロピレングリコール、グリセロールプロポキシレート−B−エトキシレートトリオール、並びに、例えば、250、650、1000、2000、および2900などの様々な分子量で得られる線状または枝分れポリテトラヒドロフランポリエーテルポリオールが挙げられる。
【0058】
好ましいヒドロキシル官能性化合物は、例えば、単純な多官能性アルコール、ポリエーテルアルコール、および/またはポリエステルである。多官能性アルコールの適切な例としては、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、ペンタエリトリトール、ジ−ペンタエリトリトール、グリセロール、1,4−ヘキサンジオールおよび1,4−ヘキサンジメタノールなどが挙げられる。
【0059】
適切なヒドロキシル官能性ポリエーテルアルコールの例としては、アルコキシル化トリメチロールプロパン、特に、エトキシル化またはプロポキシル化化合物、ポリエチレングリコール−200または−600などが挙げられる。
【0060】
適切なポリエステルとしては、必要に応じて少量の官能性の高い酸またはアルコールと共に、二酸およびジオールから得られるヒドロキシル官能性ポリエステルが挙げられる。適切なジオールは上述したものである。適切な二酸は、例えば、アジピン酸、ダイマー酸、ヘキサヒドロフタル酸、1,4−シクロヘキサン二カルボン酸などである。他の適したエステル化合物としては、カプロラクトンを持つトリメチロールプロパントリエステルであるTone(登録商標)301およびTone(登録商標)310(ユニオン・カーバイド・ケミカル・アンド・プラスチックス社(Union Carbide Chemical and Plastics Co.)またはUCCPC)などのカプロラクトンベースのオリゴ−およびポリエステルが挙げられる。エステルベースのポリオールは、約50より大きいヒドロキシル価、特に、約100より大きいヒドロキシル価を持つことが好ましい。酸価は約10より低い、特に約5より低いことが好ましい。最も好ましい脂肪族ヒドロキシ官能性化合物はトリメチロールプロパンであり、これは市販されている。
【0061】
本発明の組成物に有用であろう芳香族ヒドロキシル官能性化合物としては、一つ以上の反応性ヒドロキシル基を含有する芳香族タイプの化合物が挙げられる。これらの芳香族ヒドロキシル官能性化合物は、少なくとも二つのヒドロキシル基を持つフェノール化合物並びにエチレンオキシド、プロピレンオキシドまたはエチレンオキシドとプロピレンオキシドとの組合せと反応せしめられる少なくとも二つのヒドロキシル基を持つフェノール化合物を含むことが好ましい。
【0062】
最も好ましい芳香族官能性化合物としては、ビスフェノールA、ビスフェノールS、エトキシル化ビスフェノールA、エトキシル化ビスフェノールSが挙げられる。
【0063】
これらのヒドロキシル官能性化合物は、使用する場合、好ましくは、放射線硬化性液体組成物全部の約1重量%から約10重量%、より好ましくは、約2重量%から約5重量%で存在する。
【0064】
(G) 他の充填剤材料
重要なシリカタイプのナノ粒子以外に、本発明の組成物は、必要に応じて、ステレオリソグラフィー樹脂組成物に以前に用いられた他の従来のマイクロ充填剤材料を含有してもよい。
【0065】
そのような従来の充填剤としては、ミクロンサイズのシラン被覆シリカが挙げられる。好ましいシラン被覆シリカの一つは、Silbond 600 MST(4マイクロメートルの平均粒径を持つ)である。
【0066】
そのような追加のマイクロ充填剤は、使用する場合、樹脂組成物の約1重量%から約60重量%、より好ましくは、樹脂組成物の約5重量%から約50重量%を構成するであろう。
【0067】
(H) 他の随意的な添加剤
本発明によるステレオリソグラフィー用途の樹脂組成物は、本発明の効果が悪影響を受けない限り、適切な量で他の材料を含有してもよい。そのような材料の例としては、上述したカチオン重合性有機物質以外のラジカル重合性有機物質;感熱性重合開始剤;顔料や染料などの着色剤、消泡剤、均展剤、増粘剤、難燃剤および酸化防止剤などの樹脂の様々な添加剤が挙げられる。
【0068】
配合物の調製
新規の組成物は、例えば、個々の成分を予備混合し、次いで、これらの予備混合物を混合することにより、または光のない状態で、所望であれば、わずかに高い温度で、撹拌容器などの通常の装置を用いて成分の全てを混合することにより、公知の様式で調製できる。
【0069】
ステレオリソグラフィーによる三次元物品の製造に有用な好ましい液体の放射線硬化性組成物の一つは、
(a) 少なくとも一種類の一、二、三、四または五官能性モノマーまたはオリゴマー脂肪族、脂環式または芳香族(メタ)アクリレート、
(b) 少なくとも一種類のフリーラジカル重合開始剤、
(c) 組成物中に懸濁されたシリカ・ナノ粒子を含む少なくとも一種類の充填剤、
(d) 3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3’,4’−エポキシ−シクロヘキサンカルボキシレート、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテルおよびそれらの混合物からなる群より選択される、少なくとも一種類のカチオン重合性有機物質、
(e) 少なくとも一種類のヒドロキシル官能性化合物、および
(f) 少なくとも一種類のマイクロ粒子充填剤、
を有してなる。
【0070】
硬化三次元物品の製造方法
新規の組成物は、例えば、電子ビーム、X線、紫外線、可視光、による、化学線の照射により重合させることができ、従来のステレオリソグラフィー装置における260〜650nmの波長範囲の照射線が好ましい。HdCdレーザ、アルゴンまたは窒素レーザ、金属蒸気レーザおよびNdYAGレーザのレーザビームが特に適している。本発明は、既存のまたはステレオリソグラフィー法に使用すべく開発中の様々なタイプのレーザ、例えば、固体レーザ、アルゴン・イオン・レーザ、ヘリウム・カドミウム・レーザなどの全てに拡大適用される。当業者には、各選択された光源について、適切な光開始剤を選択し、適切な場合、増感を行うことも必要であることが分かる。重合すべき組成物中への放射線の貫通深さ、および動作速度は、光開始剤の濃度および吸収係数に正比例することが認識されている。ステレオリソグラフィーにおいて、フリーラジカルまたはカチオン粒子を最も数多く形成する光開始剤を用いることが好ましい。
【0071】
上述した方法の特定の実施の形態の一つは、三次元形状物品のステレオリソグラフィー製造方法であって、物品が、交互に繰り返される一連の工程(a)および(b)を用いて新規の組成物から形成され、工程(a)において、一方の境界が組成物の表面である組成物の層が、形成すべき三次元物品の所望の断面積に対応する表面領域内でこの層の高さだけ適切な照射線を用いて硬化され、工程(b)において、硬化されたばかりの層が、放射線硬化性液体組成物の新たな層により被覆され、この一連の工程(a)および(b)が、所望の形状を持つ製品が形成されるまで繰り返される方法である。この方法において、使用される放射線源はレーザビームであることが好ましく、コンピュータ制御されていることが特に好ましい。
【0072】
一般に、まだ適切な強度を示していないいわゆるグリーン・モデルが過程で形成される、上述した最初の放射線硬化の後に、加熱および/またはさらなる照射による形状物品の最終硬化が行われる。
【実施例】
【0073】
本発明をさらに、以下の実施例および比較例により詳細に説明する。別記しない限り、全ての部およびパーセントは重量基準であり、全ての温度は摂氏度である。
【0074】
以下の実施例1〜6および比較例1に示した成分の商標名は、以下の表1に列記した化学物質に相当する。
【表1−1】

【表1−2】

以下の実施例および比較例に示した配合物は、均一な組成物が得られるまで、35から60℃で撹拌機により成分を混合することにより調製した。これらの配合物に関する物理的データを以下のように得た。
【0075】
各配合物の粘度は、ブルックフィールドの粘度計を用いて30℃で決定した。
【0076】
液体配合物の感光性は、いわゆる窓ガラス技法を用いて決定した。この決定において、単層の試験検体を、異なるレーザエネルギーを用いて製造し、得られた層厚を測定した。使用した照射エネルギーの対数に対する得られた層厚のグラフのプロットにより、「検量線」を得た。この曲線の傾斜は、Dp(mmまたはミルで示される)と称する。曲線がx軸と交差するエネルギー値をEcと称する(材料のゲル化がちょうど起こっているエネルギーである;P.Jacobs, Rapid Prototyping and Manufacturing, Soc.of Manufacturing Engineers, 1992, p.270 ff.参照)。
【0077】
配合物の測定したポストキュア機械的性質は、Nd−Yagレーザを用いてステレオリソグラフィーにより製造した三次元検体について決定した。使用したステレオリソグラフィー装置は、カリフォルニア州バレンシア所在のスリーディー・システムズ(3D Systems)社から得られるViper Si2 SLA Systemであった。使用したレーザ出力は約80ミリワットであった。個々の層は約0.1ミリメートル厚であった。機械的性質の測定に用いた検体は、引張りまたは曲げバーの形状(80mm長×4mm幅×2mm厚)であった。微細な特徴形状を持つ円筒形電子コネクタを含む無他の硬化部材を製造した。
【0078】
各配合物のガラス転移温度はTMA法(熱機械分析)により決定した。
【0079】
引張弾性率(MPa)、引張強度(MPa)および破断点伸び(%)の全ては、ISO 527法にしたがって決定した。衝撃抵抗度(ノッチ付き、kJ/m2)は、ISO 179法にしたがって決定した。硬化樹脂の硬度は、ショアD試験にしたがって決定した。
【0080】
実施例1
以下の成分を混合して、均一な液体組成物を製造した。
【0081】
成分 百分率(重量)
Nanocryl XP 21/0687 50
Nanocryl XP 21/0765 20
Nanocryl XP 21/1045 24
Irgacure I-184 4
Lucirin TPO 2
100

合計充填剤濃度 47%
充填剤濃縮物−ナノ粒子 47%
充填剤濃縮物−マイクロ粒子 0%
【0082】
実施例2
以下の成分を混合して、均一な液体組成物を製造した。
【0083】
成分 百分率(重量)
UVR 6110 27
Araldite DY-T 10
Voranol CP 450 6
UVI 6974 4
Irgacure I-184 3
XP 21/0930 50
100

合計充填剤濃度 25%
充填剤濃縮物−ナノ粒子 25%
充填剤濃縮物−マイクロ粒子 0%
【0084】
実施例3
以下の成分を混合して、均一な液体組成物を製造した。
【0085】
成分 百分率(重量)
Nanopox XP 22/0314 53
Voranol CP 450 5
UVI 6974 4
Irgacure 184 2
Nanocryl XP 21/0768 36
100

合計充填剤濃度 39%
充填剤濃縮物−ナノ粒子 39%
充填剤濃縮物−マイクロ粒子 0%
粘度が500cpsの透明な溶液が得られた。
8時間以上に亘り110℃で溶液を加熱しても、粘度も透明度も変わらなかった。
【0086】
実施例4
以下の成分を混合して、均一な液体組成物を製造した。
【0087】
成分 百分率(重量)
Nanopox XP 22/0314 35.34
Voranol CP 450 3.33
Nanocryl XP 21/0768 24
UVI-6974 2.67
Irgacure I-184 1.33
Silbond 600 MST 33.33
100

合計充填剤濃度 59.3%
充填剤濃縮物−ナノ粒子 26.0%
充填剤濃縮物−マイクロ粒子 33.3%
【0088】
実施例5
以下の成分を混合して、均一な液体組成物を製造した。
【0089】
成分 百分率(重量)
Nanopox XP 22/0314 26.5
Voranol CP 450 2.5
Nanocryl XP 21/0768 18
UVI-6974 2
Irgacure I-184 1
Silbond 600 MST 50
100

合計充填剤濃度 69.5%
充填剤濃縮物−ナノ粒子 19.5%
充填剤濃縮物−マイクロ粒子 50.0%
【0090】
実施例6
以下の成分を混合して、均一な液体組成物を製造した。
【0091】
成分 百分率(重量)
Nanopox XP 22/0314 27.9
Voranol CP 450 2.63
Nanocryl XP 21/0768 18.95
UVI-6974 2.1
Irgacure I-184 1.05
Silbond 600 MST 47.37
100

合計充填剤濃度 68.0%
充填剤濃縮物−ナノ粒子 20.64%
充填剤濃縮物−マイクロ粒子 47.37%
【0092】
比較例1
以下の成分を混合して、均一な液体組成物を製造した。
【0093】
成分 百分率(重量)
UVAcure 1500 21.73
Araldite DY-T 13.5
TMP 0.9
Sartomer 399 2.83
Ebercryl 3700 2.66
UVI-6974 2.25
Irgacure I-184 1.13
Silbond 600 MST 55.0
100

合計充填剤濃度 55%
充填剤濃縮物−ナノ粒子 0%
充填剤濃縮物−マイクロ粒子 55%
【0094】
これらの7つの配合物の測定した感光性および粘度が表2に表されている。
【表2】

【0095】
実施例1から3は、ナノサイズのシリカ充填剤のみを含有する配合物である。それらは、透明であり、低から中の粘度を有している。実施例4から6は、ナノサイズとマイクロサイズのシリカの混合物を含有している。それらは、透明ではなく、ある程度の光の散乱を示している。比較例(CE−1)よりも合計の充填剤濃度が高いにもかかわらず、実施例5および6は、CE−1と同様の粘度である。実施例4から6は、撹拌せずに2週間に亘り均一のままであり、一方で、CE−1は、約1週間後に、かき混ぜるのが難しい固体の沈殿物を形成する。
【0096】
これらの7つの配合物の硬化後の測定した機械的性質が表3に示されている。
【表3】

【0097】
ナノサイズのシリカのみを含有する配合物(実施例1から3)は、3700から5500MPaの曲げ弾性率を有し、一方で、通常の未充填樹脂は、最大で3300MPaの曲げ弾性率を有する。ナノシリカとマイクロシリカの混合物を含有する個々の配合物(実施例4から6)は、8000から12000MPaの曲げ弾性率および200℃より高い軟化点を有する。
【0098】
本発明を特定の実施の形態を参照してこれまで説明してきたが、ここに開示された本発明の概念から逸脱せずに、様々な変更、改変、および改良を行うことができるのが明らかである。したがって、添付した特許請求の範囲の精神および範囲に入るそのような変更、改変および改良のすべてを包含することが意図されている。ここに列記された全ての特許出願、特許および他の公報が、そっくりそのまま引用されている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ステレオリソグラフィーにより三次元物品を形成する方法であって、該方法が、
(1)表面に液体の放射線硬化性組成物の薄層をコーティングする工程であって、前記組成物が、前記放射線硬化性組成物中に懸濁されたシリカタイプのナノ粒子を有する少なくとも一種類の充填剤を含む工程、
(2)前記薄層を化学線に画像様に露光して、画像状断面を形成する工程であって、前記化学線が、露光区域の前記薄層を実質的に硬化させるのに十分な強度のものである工程、
(3)先に露光された前記画像状断面上に前記組成物の薄層をコーティングする工程、
(4)工程(3)からの前記薄層を化学線に画像様に露光して、追加の画像状断面を形成する工程であって、前記化学線が、露光区域の前記薄層を実質的に硬化させ、先に露光された前記画像状断面に付着させるのに十分なものである工程、および
(5)三次元物品を形成するために十分な回数だけ工程(3)および(4)を繰り返す工程、
を有することを特徴とする方法。
【請求項2】
前記放射線硬化性組成物が、
(a)少なくとも一種類のフリーラジカル重合性有機物質、
(b)少なくとも一種類のフリーラジカル重合開始剤、
(c)前記放射線硬化性組成物中に懸濁されたシリカタイプのナノ粒子を有する少なくとも一種類の充填剤、
(d) 随意的な、少なくとも一種類のカチオン重合性有機物質、
(e) 随意的な、少なくとも一種類のカチオン重合開始剤、
(f) 随意的な、少なくとも一種類のヒドロキシル官能性化合物、および
(g) 随意的な、少なくとも一種類のマイクロ粒子充填剤、
を含むことを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記成分(a)が、少なくとも一種類の一、二、三、四、または五官能性であるモノマーまたはオリゴマー脂肪族、脂環式または芳香族(メタ)アクリレートであることを特徴とする請求項2記載の方法。
【請求項4】
前記成分(a)が、一、二、または三官能性である芳香族(メタ)アクリレート化合物を有してなる少なくとも一種類の(メタ)アクリレートであることを特徴とする請求項2記載の方法。
【請求項5】
前記成分(a)が、一官能性脂肪族(メタ)アクリレート化合物を有してなることを特徴とする請求項2記載の方法。
【請求項6】
前記成分(a)が、二官能性脂肪族(メタ)アクリレート化合物もしくは五官能性モノマーまたはオリゴマー脂肪族、脂環式、または芳香族(メタ)アクリレート化合物を有してなることを特徴とする請求項2記載の方法。
【請求項7】
前記成分(a)が、ウレタン(メタ)アクリレートを有してなることを特徴とする請求項2記載の方法。
【請求項8】
前記成分(a)が、前記液体の放射線硬化性組成物全体の5重量%から70重量%を構成することを特徴とする請求項2記載の方法。
【請求項9】
前記成分(b)が、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンまたは2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシドもしくはそれらの混合物であることを特徴とする請求項2記載の方法。
【請求項10】
前記成分(b)が、前記液体の放射線硬化性組成物全体の0.1重量%から7重量%を構成することを特徴とする請求項2記載の方法。
【請求項11】
前記成分(c)のナノ粒子が、球状であり、10から50ナノメートルの粒径分布を持ち、凝集しておらず、表面修飾されていることを特徴とする請求項2記載の方法。
【請求項12】
前記成分(c)が、前記液体の放射線硬化性組成物全体の15重量%から60重量%を構成することを特徴とする請求項2記載の方法。
【請求項13】
前記成分(d)が、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3’,4’−エポキシシクロヘキサンカルボキシレートを有してなることを特徴とする請求項2記載の方法。
【請求項14】
前記成分(d)が、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテルを有してなることを特徴とする請求項2記載の方法。
【請求項15】
前記成分(d)が、前記液体の放射線硬化性組成物全体の10重量%から40重量%を構成することを特徴とする請求項2記載の方法。
【請求項16】
前記成分(e)が、トリアリールスルホニウムヘキサフルオロアンチモネートであることを特徴とする請求項2記載の方法。
【請求項17】
前記成分(e)が、前記液体の放射線硬化性組成物全体の0.1重量%から8重量%を構成することを特徴とする請求項2記載の方法。
【請求項18】
少なくとも一種類の(f)ヒドロキシル官能性化合物をさらに含むことを特徴とする請求項2記載の方法。
【請求項19】
前記成分(f)が、トリメチロールプロパンであることを特徴とする請求項18記載の方法。
【請求項20】
前記成分(f)が、前記液体の放射線硬化性組成物全体の1重量%から10重量%を構成することを特徴とする請求項2記載の方法。
【請求項21】
前記組成物が、
(a)少なくとも一種類の一、二、三、四または五官能性モノマーまたはオリゴマー脂肪族、脂環式または芳香族(メタ)アクリレート、
(b)少なくとも一種類のフリーラジカル重合開始剤、
(c)前記組成物中に懸濁されたシリカナノ粒子を含む少なくとも一種類の充填剤、
(d)3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3’,4’−エポキシ−シクロヘキサンカルボキシレート、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテルおよびそれらの混合物からなる群より選択される、少なくとも一種類のカチオン重合性有機物質、
(e)少なくとも一種類のカチオン重合開始剤、
(f)少なくとも一種類のヒドロキシル官能性化合物、および
(g)少なくとも一種類のマイクロ粒子充填剤、
を有してなることを特徴とする請求項2記載の方法。

【公開番号】特開2007−290391(P2007−290391A)
【公開日】平成19年11月8日(2007.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−92341(P2007−92341)
【出願日】平成19年3月30日(2007.3.30)
【分割の表示】特願2004−187526(P2004−187526)の分割
【原出願日】平成16年6月25日(2004.6.25)
【出願人】(597013711)スリーディー システムズ インコーポレーテッド (43)
【Fターム(参考)】