説明

ナノ粒子の、室温におけるバルク固体からの迅速な生成

複数のナノ粒子を提供する。本ナノ粒子は、金属酸化物または半導体酸化物の表面領域と、金属または半導体のコア領域とを有してもよく、および/または、均一にドープされていてもよい。本ナノ粒子は、バルク材料を摩砕して粉末とし、その後、この粉末を溶液中でエッチングして所望のナノ粒子サイズとすることによって形成することができる。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、一般的に物質の組成を意図し、より詳細には、ナノ粒子およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
所定材料のバルク固形物を、たとえばC. Lam、Y. F. Zhang、Y. H. Tang、C. S. Lee、I. Bello、S. T. Leeの「Large-scale synthesis of ultrafine Si nanoparticles by ball milling」(Journal of Crystal Growth 220(2000) 466-470)に記載されたボールミリングなどの摩砕方法によって十分に摩砕することにより、原理的には、任意の材料のナノ粒子を生成することが可能である。しかし単純そうに見えても、摩砕では、粉砕されてサブミクロンの塊材からなる粉末とした後に粒子の凝集が生じるため均一な粒子サイズを得ることが不可能である。100 nm以下のナノ粒子を得るには、多くて数日にもわたる摩砕が必要とされる場合もあり、ボールミリング法のような摩砕法は大規模な製造には不適当である。ナノ粒子を、数日といった長時間にわたってボールミリングを行うことによって製造すると、ナノ粒子は、異物の混入を生じることが多く、こうしたナノ粒子の試料では、望ましくない異物不純物が検出されることになる。したがって、多くの工業的なナノ粒子の合成法では、化学物質からの反応によるナノ粒子の形成または大型粒子の熱分解による物理的分解を含む高温プロセスを用いることとなる。しかし、こうした方法は、処理温度が高いために、複雑で費用がかさみ、制御が困難であることが多く、環境に対して有害で危険な化学物質を使用することも多い。
【0003】
ナノ粒子の取り扱いをより容易とし、ナノ粒子を空間的に組織化するための比較的新しい相関的な方法が提案されており、この方法では、ナノ粒子を、シェルに封入する。ナノ粒子を封入するシェルは、各種有機材料、たとえばポリビニルアルコール(PVA)、PMMA、PPVから構成されている。また、半導体のシェルも提案されている。
【0004】
たとえば、米国特許第6,225,198号および米国特許第5,505,928号(参照により、本明細書に組み入れられる)には、有機界面活性剤を使用するナノ粒子を形成する方法が開示されている。米国特許第6,225、198号の特許に記載されている方法は、有機溶剤中に、II族およびVI属の元素の前駆物質である有機化合物を供給する工程を含む。この前駆物質溶液に、高温の有機界面活性剤混合物を加える。高温の有機界面活性剤混合物を加えると、II-VI族半導体のナノ粒子の沈殿が生じ、界面活性剤がナノ粒子を被覆して、ナノ粒子のサイズを制御する。しかし、この方法は、高温(200℃を上回る)での処理と有毒な反応物質および界面活性剤とを使用するため不利である。得られたナノ粒子は、有機界面活性剤の層で被覆されており、界面活性剤の一部は、半導体ナノ粒子内に取り込まれている。有機界面活性剤は、ナノ粒子の光学および電子特性に、負の影響を及ぼす。
【0005】
別の先行技術の方法では、米国特許第6,207,229号(参照により、本明細書に組み入れられる)に記載されているように、II-VI族の半導体ナノ粒子を、別のII-VI族の半導体材料を含むシェルに封入した。しかし、この場合も、シェルはナノ粒子の光学的および電気的特性に障害を与え、放射線の量子効率およびナノ粒子の生産収量の低減をきたす。
【0006】
また、サイズが均一なナノ粒子を形成することが困難であった。一部の研究者は、透過型電子顕微鏡法(TEM)による測定、およびナノ粒子の吸収スペクトルにおける励起子ピーク位置からのナノ粒子のサイズの推定結果に基づいて、溶液中で、サイズが均一なナノ粒子を形成したと主張している。しかし、本発明者らは、これら双方の方法を用いても、溶液中のナノ粒子のサイズを正確に測定することはできないと判断している。
【0007】
TEMを用いると、溶液から基体に沈殿したいくつかのナノ粒子を実際に観察することが可能である。しかし、各テストで観察されるナノ粒子が極めて少ないので、ナノ粒子のサイズは、異なったナノ粒子を観察するたびに同じ溶液由来のナノ粒子と大きく異なっている。したがって、単一回のTEMでの測定で、少量のナノ粒子が均一なサイズを示しても、そのことと、溶液全体のナノ粒子が均一なサイズを有していることとは相関しない。
【0008】
ナノ粒子のサイズを推定するにあたって吸収スペクトルでの励起子ピーク位置を使用することは、各種の理由で問題がある。励起子ピーク位置は、溶液中の個々のナノ粒子が凝集して大きなクラスターを形成しているのかどうかを示さない。したがって、吸収スペクトルの励起子ピークの位置から推測した個々のナノ粒子のサイズでは、個々のナノ粒子が凝集してクラスターを形成しているかどうかを考慮していない。
【発明の開示】
【0009】
発明の簡単な概要
本発明の好ましい態様では、金属酸化物または半導体酸化物の表面領域と、金属または半導体のコア領域を有する複数のナノ粒子を提供する。
【0010】
本発明の別の好ましい態様は、約2 nm〜約100 nmの平均粒子サイズを有する複数の均一にドープした粒子を提供し、サイズの標準偏差は、光子相関分光(PCS)法で測定した平均ナノ粒子サイズの60%未満である。
【0011】
本発明の別の好ましい態様は、バルク材料を用意し、バルク材料を摩砕して第1のサイズの粒子を含む粉末とし、第1のサイズの粒子を有する粉末を溶液に加え、この溶液にエッチング液を加えて第1サイズの粒子をエッチングすることにより、第1のサイズよりも小型の第2のサイズを有するナノ粒子とする工程を含む、ナノ粒子の製造方法を提供する。
【0012】
本発明の別の好ましい態様では、半導体または金属のナノ粒子を酸化液に加え、この酸化液中で半導体または金属のナノ粒子を酸化して各半導体または金属のナノ粒子上に半導体酸化物または金属酸化物の表面領域を形成する工程を含む、ナノ粒子の製造方法を提供する。
【0013】
好ましい態様の詳細な説明
本発明者らは、ナノ粒子はバルク材料を摩砕して粉末とし、次いでこの粉末を溶液中でエッチングして所望のナノ粒子サイズを得るという工程を含む単純な室温でのプロセスで形成されうることを認識した。すなわち、このプロセスでは、バルク固体からナノ粒子を100℃未満の温度、たとえば50℃未満の温度、好ましくは室温で生成する。
【0014】
このプロセスは、単純、均一、かつ迅速であるため、ボールミリング単独または熱分解などの現存の他の任意の方法と比較して、任意の材料のナノ粒子を、大量に、極めて狭いサイズ分布で製造することができる。この方法を用いて、たとえば、シリコン、シリカ、アルミナ、およびアルミニウムのナノ粒子などの金属、半導体、および金属酸化物または半導体酸化物のナノ粒子を合成することができる。
【0015】
ナノ粒子という用語は、平均サイズが約2〜約100 nmの粒子、好ましくは平均サイズが約2〜約50 nmの粒子を包含する。最も好ましくは、ナノ粒子は、平均サイズが約2〜約10 nmの量子ドットを含む。好ましくは、サイズ分布の第1標準偏差が、平均粒子サイズの60%以下、好ましくは40%以下、最も好ましくは10〜25%である。
【0016】
第1の好ましい態様のナノ粒子の製造方法は、バルク材料、たとえばバルク材料の塊材を用意する工程を含む。この方法はさらにバルク材料を摩砕して、第1の平均サイズの粒子、たとえばナノ粒子および/またはミクロ粒子を有する粉末とする工程を含む。第1の平均サイズの粒子を有する粉末を溶液に加え、さらにエッチング液もこの溶液に加えて第1のサイズの粒子をエッチングすることにより、第1のサイズより小さい所望の第2のサイズのナノ粒子とする。
【0017】
バルク材料は、摩砕に適した任意の形状とすることができ、ナノ粒子を形成しうる任意の所望の材料を含んでもよい。たとえば、バルク材料は、半導体バルク材料、たとえばIV族(Si、Ge、SiC、SiGe)、II-VI族(CdS、ZnS、CdSe、ZnSe、ZnTe、CdTe)、IV-VI族(PbS、PbSe、PbTe)、またはIII-V族(GaAs、GaP、GaN、InP、InAs)の半導体材料とすることができる。3元および4元の半導体ナノ粒子、たとえばCdZnS、CdZnSe、CdZnTe、CdZnTeSe、CdZnSSe、GaAlAs、GaAlP、GaAlN、GaInN、GaAAsP、およびGaAlInNも、使用が可能である。
【0018】
バルク材料は、好ましくは、基体上に形成した、均一にドープした半導体バルク材料、たとえば均一にドープした単結晶、多結晶、または非晶質半導体ウェーハ、ブール、または層を含む。最も好ましくは、バルク材料は、適切なIII族またはV族のドーパント、たとえばB、P、Asおよび/またはSbで均一にドープしたシリコンウェーハの少なくとも一部を含む。
【0019】
あるいは、バルク材料は、セラミック結晶などのセラミックバルク材料を含む。たとえば、セラミック材料は、シリカ、アルミナ、チタニア、ジルコニア、イットリア安定化ジルコニア、イットリア、セリア、スピネル(たとえば、MgO*Al2O3)、および五酸化タンタル、ならびに、より複雑な構造を持つ他の適当なセラミック、たとえば放射線放射蛍光体(たとえば、YAG:Ce (Y3Al5O12:Ce)、および各種のハロリン酸塩、リン酸塩、ケイ酸塩、アルミン酸塩、ホウ酸塩、およびタングステン酸塩蛍光体)、およびシンチレータ(たとえば、LSO、BGO、YSO等)を含みうる。必要に応じて、他の材料、たとえば石英またはガラスを使用することもできる。
【0020】
あるいは、バルク材料は、桿状、棒状などの任意の適切な形状を有する金属、たとえば純金属または金属合金を含む。任意の適当な金属、たとえば、Al、Fe、Cu、Ni、Au、Ag、Pt、Pd、Ti、V、Ta、W、Mn、Zn、Mo、Ru、Pb、Zr等が使用可能である。金属は、好ましくは任意の適当な合金組成を有する金属合金(すなわちドープした金属)、たとえば、鋼、インコネル、パーメンジュールなどの任意の適当な合金を含むものとすることができる。
【0021】
バルク材料は、任意の適当な摩砕方法で縮小し、粉末とすることができる。たとえば、バルク材料は、ミリング、たとえばボールミリングによって摩砕し、粉末とすることができる。しかし、第1の態様の第1の好ましい側面では、摩砕工程は、バルク材料の塊材を研磨フィルム上に配置し、塊材と研磨フィルムを互いに相対的に移動させて、バルク材料を摩砕して粉末化する工程を含む。
【0022】
たとえば、図6Aに示すように、バルク材料1の固形片または塊材を、球状または尖鋭な研磨用チップ5を有する固定した研磨フィルム3上で移動させる。機械的に取り除かれる粒子のサイズは、チップの寸法に応じたサイズとなる。ボールミリングのプロセスとは異なり、このプロセスでは、より均一なサイズの粒子、たとえばミクロ粒子またはナノ粒子が得られる。粒子は、摩砕プロセスの間、液体、たとえば水またはグリセロールに懸濁させておくことが好ましい。その後、粒子のサイズを、下記において詳細に説明するように、化学的エッチング、ならびに任意で遠心処理、多孔質媒体を通しての濾過、超音波処理、および表面キャッピングと組み合わせることによって調整する。
【0023】
エッチング液は、粉末を溶液に加える前または後に溶液に加える。たとえば、溶液は、HCl、HF、NaOH、またはKOH水溶液を含んでもよく、この場合、溶質がエッチング液、水が溶媒である。あるいは、エッチング液自体に、粉末を第2の溶液に加える前または後に第2の溶液に加える第1の溶液を含めてもよい。
【0024】
このように、第1の好ましい態様の方法を用いて、サイズが2〜100 nmの範囲でありサイズ分布が平均サイズの10〜25%であるナノ粒子またはナノ結晶を製造することができる。各種の材料からなるナノ粒子の好ましい製造例を、簡単に後述する。
【0025】
Al、Si、シリカ、およびアルミナの多結晶の塊材を取り出し、サイズ0.1〜1ミクロンのダイヤモンドおよび炭化ケイ素を固定した研磨フィルムで摩砕した。研磨フィルムを回転するか、および/または、塊材を研磨フィルム上で移動させた。摩砕プロセスの間、研磨フィルムに水を注ぎ、研磨された「一次」ナノ粒子を、容器に集めた。
【0026】
次に、適当な化学エッチング剤、たとえばKOH、HF、NaOH、HCl、ならびに他の酸および塩基(すなわち、個々の特定の材料に対して適当なエッチング液を選択する)を使用して、一次ナノ粒子を溶液中でエッチングした。任意で、標準的な陰イオンまたは陽イオン界面活性剤で、表面キャッピングを施した。
【0027】
すなわち、摩砕した、平均サイズが大きくサイズ分布も不均一なナノ粒子粉末をまず溶液に加え、その後、エッチング液を溶液に加えて、溶液を、マグネチックスターラなどで撹拌する。エッチング液がナノ粒子をエッチングすることにより、ナノ粒子のサイズが所望のサイズまで減少する。このように、エッチングによって、ナノ粒子が所望のサイズに「調節」される。例として挙げるPbSおよびCdSナノ粒子の場合のエッチング工程の一般的な反応化学は、以下のとおりである。
【0028】
PbS +H2O +2HCl → PbCl2 + H2S +H2O (1)
【0029】
CdS + H2O +2HCl → CdCl2 +H2S + H2O (2)
【0030】
PbSナノ粒子のサイズの調整について記載したモデルを図6Bに示す。まず、サイズの大きなPbSナノ粒子を水溶液に加える。次に、HClを溶液に加える(図6Bの四角61)。HClがPbSナノ粒子と反応し、PbCl2とH2Sが形成される(図6Bの四角63)。エッチングされ、サイズが減少して均一になったPbSナノ粒子は、水中にとどまる。PbCl2は水に溶けたままであり、揮発性のH2Sガスは、溶液から離脱する(図6Bの四角65)。
【0031】
その後、溶液中の過剰な不動態化元素、たとえば硫黄が、エッチングしたナノ粒子の表面を再度不動態化する。エッチング媒質の適切な種類と量を選択することによって、大型のナノ粒子を、自動的に、均一かつ小サイズとなるまでエッチングすることができる。溶液の酸濃度が所望量を超過している場合には、ナノ粒子は完全に溶解してしまう。
【0032】
エッチング液を水に加えて希釈して第1の溶液を形成し、その後、この第1の溶液の少量を第2の溶液に加えることが好ましい。たとえば、PbSナノ粒子のサイズの調節は、希釈したHCl+H2O溶液(容積比1:50、1 mlのHClを50 mlのH2Oに溶解)をナノ粒子を含む水に加えることによって実施する。このHCl+H2O溶液は、ナノ粒子を含む水に、少量、たとえば、2 mlの量を加えて、ナノ粒子のサイズを調節する。
【0033】
サイズ分布を狭くするためには、1回または複数の精製または粒子分離の工程を行うことが好ましい。そうした粒子分離工程は、エッチング工程後の溶液を含む容器の遠心分離(すなわち、形成したナノ粒子を含む溶液の遠心分離)を含む。試料に蒸留水を加え、超音波振動装置中でナノ粒子を撹拌し溶液に戻す。遠心および洗浄のプロセスは、必要に応じて複数回繰り返す。
【0034】
その後、遠心および洗浄の工程の後に、上記の溶液を、メッシュまたはフィルターを通して濾過する。メッシュまたはフィルターは、ランダムに配向したセルロース積層体、誘電材料の球のカラム、ポリマー、ナノ多孔媒体(たとえばアルミナまたは黒鉛)から製造することができる。
【0035】
特定サイズのナノ粒子を製造する別の方法は、溶液を、数時間にわたって貯蔵することいよってデカントする方法である。最初の一群の重いまたは大型のナノ粒子またはナノクラスターは、容器の底部に沈殿する。溶液の上部に残存するより小型の第2の群のナノ粒子を、第1群のナノ粒子から分離し、溶液の上部から新たな容器に移す。この処理を数回繰り返し、異なるサイズのナノ粒子を分離することができる。各連続する工程の間、もとの反応物質溶液を、ナノ粒子を溶解しない液媒体、たとえば水で希釈する。このデカント工程は、遠心分離および濾過工程のかわりに用いても、また、それらの工程と併用してもよい。
【0036】
製造、貯蔵、および/または輸送の後、ナノ粒子を流体、たとえば溶液、懸濁液、または混合物に懸濁することができる。適当な溶液としては、水、ならびに有機溶剤、たとえばアセトン、メタノール、トルエン、アルコール、およびポリマー、たとえばポリビニルアルコールを挙げることが出来る。また、ナノ粒子は、固体基体上または固体マトリックス中に配置または堆積することもできる。適当な固体マトリクスとしては、ガラス、セラミクス、布、皮革、プラスチック、ゴム、半導体、または金属を挙げることができる。流体または固体は、特定の用途に適した製品を含む。
【0037】
均一にドープされたナノ粒子(すなわち、ナノ結晶)の製造が可能であることから、第1の好ましい態様の方法が有利である。ドーパント(金属の場合には、ドーパントは「合金元素」と称される)の取り込みは、ナノ粒子を従来技術の高温化学合成で製造した場合には、表面原子とバルク原子の数がほぼ同じであるため、極めて困難かつ信頼性が低い。第1の好ましい態様の方法では、ドーパントは、バルク材料中のホスト格子にすでに組み込まれ、化学的に結合している。したがって、ドーパントは、ほぼすべてのナノ粒子中に均一に分布し、存在している。これは、もともとのバルク材料が、高温、かつ平衡成長条件下で、極めて高品質かつ超純粋な形態で成長または製造されたものであるという事実のためである。摩砕工程の間にバルクがナノ粒子に迅速に断片化されるので、最終的に得られる粒子は確実に高品質を有するものとなる。このため、高品質のナノ粒子を、迅速かつ大規模に製造することが可能となる。さらに、ナノ粒子の当初のサイズ分布も、ボールミル法単独で製造したナノ粒子に比べて、有意に狭い。第1の好ましい態様の方法は、汎用性があり、任意の材料のナノ粒子を形成する際に使用することができる。
【0038】
第1の好ましい態様の方法で製造したナノ粒子は、平均サイズが約2 nm〜約100 nmであり、サイズの標準偏差が光子相関分光(PCS)法で測定した平均ナノ粒子サイズの60%未満のナノ粒子を含む。PCS法は、懸濁液中のナノ粒子のサイズを測定する際に使用されてきた。ナノ粒子のサイズは、二次電子顕微鏡(Secondary electron Microscopy、SEM)、透過型電子顕微鏡法(TEM)、または原子間力顕微鏡法(AFM)を使用することによっても測定できる。好ましくは、平均ナノ粒子サイズは約2 nm〜約10 nmであり、サイズの標準偏差は光子相関分光(PCS)法で測定した平均ナノ粒子サイズの約10〜約25%である。
【0039】
最も好ましくは、ナノ粒子は均一にドープされたナノ粒子である。第1の態様の1つの好ましい側面では、「均一にドープされたナノ粒子」という用語は、各均一にドープされたナノ粒子が、その体積全体で、5%未満、好ましくは1%未満変動するドーパント濃度を有することを意味する。第1の態様の別の好ましい側面では、「均一にドープされたナノ粒子」という用語は、ナノ粒子が、ナノ粒子間で、5%未満の変動、好ましくは1%未満変動する平均ドーパント濃度を有することを意味する。言い換えると、複数のナノ粒子(たとえば、同じバッチのナノ粒子からの製造物から複数のランダムにサンプリングしたナノ粒子)内の各ナノ粒子はその複数のナノ粒子の中の他のナノ粒子の5%以内、好ましくは1%以内である平均ドーパント濃度を有する。「ドーパント」という用語は、半導体ナノ粒子中のドーパントイオン、たとえばB、P、As、またはSiナノ粒子中のSb、金属酸化物セラミック蛍光体およびシンチレータナノ粒子中のドーパントイオン、たとえばYAGナノ粒子中のCe3+イオン、金属合金中の合金元素、たとえばFeナノ粒子中のCを包含する。
【0040】
第1の態様の1つの好ましい側面では、ナノ粒子は、少なくとも30日間にわたって、好ましくは少なくとも90日間にわたって、実質的凝集および容器表面への実質的沈殿を生じることなく水に懸濁可能である。このことは、ナノ粒子の少なくとも70%、好ましくは95%、最も好ましくは99%以上が、凝集および、容器の底部および壁部への沈殿を生じることなく水に懸濁することを意味する。なお、ナノ粒子は、少なくとも30日間にわたって、好ましくは少なくとも90日間にわたって、実質的凝集および容器表面への実質的沈殿を生じることなく水以外の液体にも懸濁可能であることに注意されたい。ナノ粒子は、下記においてより詳細に説明するように、ナノテクノロジー、半導体、電子工学、バイオテクノロジー、コーティング、農業、および光電子工学をはじめとする各種の技術分野で使用することができる。
【0041】
本発明の第2の好ましい態様では、半導体または金属のナノ粒子の表面を改質して、半導体酸化物または金属酸化物の表面領域を形成する。たとえば、ナノ粒子を酸化液に懸濁することにより、シリコンナノ粒子の表面を、二酸化ケイ素表面に改質したり、またはアルミニウムナノ粒子の表面を酸化アルミニウム表面に改質したりすることができる。
【0042】
第2の好ましい態様によるナノ粒子の製造方法は、半導体または金属のナノ粒子を酸化液に加え、その後、その酸化液中で、半導体または金属のナノ粒子を酸化して、各半導体または金属のナノ粒子上に、半導体酸化物または金属酸化物の表面領域をそれぞれ形成する工程を含む。もちろん、ナノ粒子の表面は、酸化液の代わりに窒化液を使用することにより、窒化物、たとえば半導体窒化物(たとえば窒化ケイ素)または金属窒化物(たとえば窒化アルミニウム)に改質することもできる。
【0043】
バルク金属または半導体材料は、半導体または金属のナノ粒子を酸化液(または窒化液)に加える前に、まず、上述したように摩砕して、半導体または金属のナノ粒子としておくことが好ましい。
【0044】
任意の適当な酸化液を使用することができる。たとえば、シリコンナノ粒子の場合には、NaOHまたはKOHの希薄水溶液を使用して、ナノ粒子を酸化することができる。
【0045】
第2の態様の1つの好ましい側面では、同じ溶液を使用して、ナノ粒子をエッチングし、酸化する。たとえば、HFとNaOHとを適量含有するpHが7未満の酸性水溶液を使用した場合、摩砕した半導体または金属のナノ粒子を溶液に加えると、HFが、反応性フッ素イオンがなくなるまで、ナノ粒子を所望のサイズにエッチングする。その後、溶液中のNaOHが、ナノ粒子表面を酸化する。
【0046】
第2の態様の別の好ましい側面では、ナノ粒子のエッチングと酸化(窒化)に別々の溶液を使用する。たとえば、摩砕したナノ粒子を、まずエッチング液、たとえばHFを含有するpHが7未満の第1溶液に加えて、ナノ粒子を所望のサイズまでエッチングする。次に、ナノ粒子を、第1溶液から取り出し、第2の酸化液、たとえばpH約7未満のNaOHまたはKOHを含有する溶液に加え、ナノ粒子を酸化する。あるいは、エッチング工程終了後に、酸化剤、たとえばNaOHまたはKOHを第1溶液に加えることによって、第1の溶液を第2の溶液に転化する。ナノ粒子を窒化することが望まれる場合には、窒化液、たとえばアンモニア水溶液をかわりに用いればよい。
【0047】
第2の好ましい態様のナノ粒子は、金属酸化物または半導体酸化物の表面領域と、金属または半導体のコア領域を備えている。ナノ粒子は、表面領域とコア領域との間に位置する移行領域も含む。移行領域での酸素の金属または半導体に対する比は、表面領域に隣接する部分で最大であり、コア領域に向かって徐々に低減している。コア領域は、酸素原子をまったく含まないか、または痕跡量、たとえば1原子%未満の酸素原子を含むことが好ましい。
【0048】
したがって、半導体ナノ粒子は、Si、Ge、SiGe、II-VI、IV-VI、またはIII-V族半導体のコア領域と、SiO2、GeO2、II-VI、IV-VI、またはIII-V族酸化物の表面領域を含む。たとえば、Siナノ粒子は、Siのコア領域とSiO2の表面領域と、シリコンに富んだSiO2-xの移行領域を備えており、ここで、xは、表面領域に隣接した部分の2から、コア領域に隣接した部分の約0までの範囲をとる。ナノ粒子のSiのコア領域は、適当なIII族またはV族のドーパントで均一にドープされていることが好ましい。
【0049】
金属ナノ粒子は、金属のコア領域と、金属酸化物の表面領域とを含む。たとえば、Alナノ粒子は、Alのコア領域と、Al2O3の表面領域と、アルミニウムに富んだAlOxの移行領域とを含み、ここでxは、表面領域に隣接した部分での3/2から、コア領域に隣接した部分での約0までの範囲にある。
【0050】
第1の態様と同様、好ましいナノ粒子は、平均サイズが2〜100 nm、サイズ分布が10〜25%である。ナノ粒子は、好ましくは、平均サイズが約2 nm〜約100 nm、標準偏差が光子相関分光(PCS)法で測定した平均ナノ粒子サイズの60%未満である。
【0051】
以下の第1〜26の好ましい利用態様では、第1のおよび/または第2の製造態様の方法によって製造されたナノ粒子を含有する好ましい製品を提供する。なお、これらの製品は、上述の第1および第2の態様のナノ粒子を含有することが好ましいものの、従来技術の方法をはじめとする任意の他の方法によって製造された金属または絶縁体(たとえばセラミック)のナノ粒子も含有することができることに注意されたい。最初の4つの好ましい態様では、ナノ粒子は流体に加えられている。
【0052】
第1の好ましい態様では、研磨用のスラリーにナノ粒子を配合する。ナノ粒子は、研磨用スラリー液に分散させる。ナノ粒子は、小径であるがゆえに極めて高い表面硬さを備えているため、スラリー液中で研磨媒体として作用する。必要に応じて、ナノ粒子だけでなく、別の研磨媒体をスラリーに加えることもできる。研磨用スラリーは、任意の工業製品、たとえば金属またはセラミックを研磨する際に使用できる。スラリーは、半導体ウェーハおよび素子の研磨に使用される化学的機械的研磨装置での使用に適合していることが好ましい。この場合、スラリーはナノ粒子だけでなく、半導体ウェーハおよび素子の一部を化学的に除去する化学物質も含有していることが好ましい。
【0053】
第2の好ましい態様では、ナノ粒子を塗料に配合する。ナノ粒子は、塗料の液体基剤に分散させる。ナノ粒子は均一なサイズ分布を有しているので、塗料には実質的に均一な色が付与される。第2の態様の好ましい側面では、液体塗料基剤は、それが表面、たとえば壁、天井、または床への塗布後に蒸発するように選択する。この場合、液体基剤の蒸発後に、ナノ粒子の層が表面に残存し、ナノ粒子によって表面に色が付与される。ナノ粒子は小径であるため、表面に強力に付着する。ナノ粒子は、ブラシ、ペイントナイフ、スクラバーといった物理的手段では、ほぼ除去不能であり、これは、ナノ粒子のサイズが、ブラシ、ペイントナイフ、スクラバーなどの表面に存在する溝より小さいことによる。そのため、ナノ粒子を表面から除去するには、化学的な方法、たとえば酸によるエッチングが必要となる。したがって、ナノ粒子含有塗料は、保護塗料、たとえば(通常の塗料の層の下地として塗布される)防錆プライマー塗料、または(通常の塗料の層の上側に適用される)トップコート塗料として機能させるうえで特に適している。このように、ナノ粒子含有塗料は、従来の塗料、プライマー、およびトップコートよりもはるかに良好に表面に付着するので、屋外構造物、たとえば橋、フェンス、建造物などを塗装するのに特に適している。
【0054】
第3の好ましい態様では、ナノ粒子をインキに配合する。ナノ粒子は、液体インキに分散させる。上述したように、ナノ粒子は、液体に、実質的に均一な色を付与することができる。したがって、ナノ粒子をインキに配合することにより、インキが乾燥し、液体基剤が蒸発すると、ナノ粒子の層によって像が形成される。この像は、像の印刷面に強力に付着することになる。本インキは、コンピュータのプリンター(すなわち、インクジェットプリンター等)用のインキ、印刷機用インキ、ペン用インキ、入れ墨用インキを含みうる。
【0055】
第4の好ましい態様では、ナノ粒子を、クリーニング組成物に配合する。ナノ粒子は、クリーニング液に分散させる。ナノ粒子は表面硬度が高いので、クリーニング液に有意な洗浄(scrubbing)能力を与える。クリーニング液は、任意の工業的クリーニング液、たとえば表面クリーニング/洗浄液またはパイプクリーニング液を含みうる。
【0056】
最初の4つの好ましい態様は、ナノ粒子を流体に加えるものであった。以下の好ましい態様では、ナノ粒子を固体材料表面に適用する。
【0057】
第5の好ましい態様では、ナノ粒子は、デバイスの少なくとも一部に位置する硬質または耐摩耗性の被膜を含む。デバイスは、硬質または耐摩耗性の被膜が望ましい任意のデバイス、たとえば、デバイスは工具(たとえばネジまわしまたはノコギリの歯)、ドリルのビット、タービンの羽根、歯車、または切削工具とすることができる。ナノ粒子は表面硬度が高く、基体に極めて強力に付着するので、ナノ粒子の層はデバイスに理想的な硬度または耐摩耗性の被膜を与える。被膜は、ナノ粒子を含有する流体を加えた後、蒸発または他の方法で流体を除去し、ナノ粒子の層をデバイスの表面上に残すことによって形成することができる。
【0058】
第6の好ましい態様では、ナノ粒子は、製品の少なくとも一表面に位置する、水分遮断層を含む。水分遮断層は、複数の互いに接触する小径のナノ粒子を含んでいるので、水または水分が層を透過する穴がないか、あっても少ない。各ナノ粒子のサイズは、水分の液滴のサイズよりもはるかに小さい。しがたって、ナノ粒子の連続層は水分の透過に対して抵抗性となる。ナノ粒子を含む製品は、服飾品(すなわち、布または皮革製のコート、ズボン等)または履き物製品(皮革、布、ゴム、または合成皮革製)とすることができる。あるいは、製品は、建造物、たとえば橋梁、建物、テント、彫刻などを含んでもよい。たとえば、ナノ粒子の層は、通常の水分遮断性塗料より構造に対する接着性が高いので、ナノ粒子の水分遮断剤を用いた場合には、(現在各種橋梁で行われているように)水分遮断剤を数年ごとに塗布する必要性が低減するか、塗布しなおさなくてもすむようになる。水分遮断層は、ナノ粒子を含有する流体を加え、その後、蒸発または他の方法で流体を除去して、ナノ粒子を製品の表面に残すことによって沈着させることができる。ナノ粒子の層は製品の外表面に形成することが好ましい。必要に応じて、ナノ粒子材料は、日光にあたると日光を吸収して熱を発するもの(すなわち、CdTeナノ粒子)を選択することができる。また、材料は、人体から発せられる熱を捕捉するものを選択することもできる。
【0059】
第7の好ましい態様では、ナノ粒子を、超低気孔率の複合材料として提供する。こうした材料は、気孔率が10容積%未満であることが好ましく、5容積%未満であることが最も好ましい。この複合材料は、固体マトリクス材料と、マトリクスに取り込まれたナノ粒子とを含んでいる。複合材料は、マトリクス材料の粉末と、ナノ粒子の粉末とを混合し、混合粉末を圧縮して複合材料を形成することができる。ナノ粒子のサイズが小さいので、ナノ粒子はマトリクス材料中の孔を占有し、超低気孔率の複合材料が形成される。マトリクス材料は、セラミック、ガラス、金属、プラスチック、または半導体材料を含むものとすることができる。超低気孔率材料は、シーラント、たとえばタイヤのシーラントとして使用することができる。複合材料はまた、工業および医用用途の充填材として使用することもできる。
【0060】
第8の好ましい態様では、ナノ粒子をフィルターとして提供する。ナノ粒子粉末を圧縮してフィルターを形成することができる。また、ナノ粒子を固体マトリクス材料に加えることによってフィルターを形成することもできる。ナノ粒子のサイズが小さいので、圧縮ナノ粒子またはマトリクス中のナノ粒子は、気孔率が低く、そのため、ナノ粒子フィルターは、細かい「メッシュ」を有することとなり、極めて小型の粒子の濾過に用いることができる。フィルターの気孔率は、上述の態様の超低気孔率材料の気孔率よりも高い。このフィルターは、好ましくは、極めて小さな固体粒子を含む液体の濾過に使用する。粒子を含む液体を本フィルターを通して注ぐと、所定サイズ以上の粒子が捕捉される。
【0061】
第9の好ましい態様では、ナノ粒子を、複合高強度構造材料として提供する。ナノ粒子は表面硬度が高く気孔率が低いので、ナノ粒子は、固体マトリクスおよびマトリクス中にナノ粒子が分散された複合構造材料に含有させることができる。マトリクス材料は、セラミック、ガラス、金属、またはプラスチックを含むものとすることができる。この構造材料は、建造物で支持柱および壁として、ならびに橋梁で路面および支持柱として使用することができる。この構造材料は、また、機械類および自動車、たとえば乗用車およびトラックを形成する際にも使用することができる。
【0062】
第10の好ましい態様では、ナノ粒子を環境センサーとしてとして提供する。環境センサーは、線源、たとえばランプまたはレーザと、ナノ粒子を含むマトリクス材料とを備えている。マトリクス材料は、液体、気体、または固体材料を含むものとすることができる。センサーを、ナノ粒子の発光特性に影響を及ぼす外部の媒質に曝露させる。たとえば、センサーは、大気に曝露させる汚染物質センサーを含む。大気中の汚染物質の量は、ナノ粒子のミクロ環境に影響を及ぼし、次いで放射線発光特性に影響を及ぼす。ナノ粒子に、線源から、放射線、たとえば可視光または紫外線または赤外線を照射する。ナノ粒子によって発せられた、および/または吸収された放射線を、検出装置で検出する。その後、コンピュータによって、標準アルゴリズムを使用して、大気中に存在する汚染物質の量を、検出した放射線に基づいて判定する。センサーは、大気中の汚染物質の量以外に、ガス成分および組成を検知する際にも使用することができる。
【0063】
ナノ粒子は、照明の用途に使用することもできる。第11〜13の態様では、ナノ粒子の照明用途への利用について記載する。
【0064】
第11の好ましい態様では、ナノ粒子を、固体発光素子、たとえば、レーザーまたは発光ダイオード中の発光媒質として使用する。こうした用途では、電流または電圧を、電流源または電圧源からナノ粒子に印加する。電流または電圧が加わると、ナノ粒子はナノ粒子の物質およびサイズに応じて紫外線または赤外線を放出する。
【0065】
第12の好ましい態様では、ナノ粒子を使用して、有機発光ダイオード中の有機発光材料の支持部材を製造する。有機発光ダイオードでは、2つの電極の間に有機発光材料を含有し、この有機発光材料は、2電極間に電流または電圧が印加されると発光する。有機発光材料は、ポリマー材料または、小型の色素分子とすることができる。これらの有機材料は、いずれも構造特性および耐衝撃性が不良であり、そのために有機発光ダイオードの頑強さを低下させる。しかし、これらの有機発光材料は、ナノ粒子のマトリクスに取り込むことができ、これにより所望の構造特性および耐衝撃性を付与することができる。ナノ粒子のサイズは、色素またはポリマー分子と同じかまたはより小さいため、ナノ粒子が、ダイオードの発光特性に障害を与えることはない。
【0066】
第13の好ましい態様では、ナノ粒子を、蛍光灯で、蛍光体のかわりに使用する。これまでの蛍光灯では、ランプのシェルの内面に蛍光体が塗布されている。蛍光体は、ランプのシェルに配置された水銀ガスなどの線源から発せられた紫外線を吸収して可視光を発する。ある種のセラミックナノ粒子は、線源によって発せられた紫外線を吸収して可視光を発することができるので、これらのナノ粒子を、ランプのシェルの少なくとも一面に配置することができる。ランプのシェルに塗布されたナノ粒子の層は、色の異なる光を発するナノ粒子を含むことが好ましく、これによりナノ粒子から発せられた光が混ざって、観察する人間からは白色光に見える。たとえば、サイズの異なるナノ粒子、および/または材質の異なるナノ粒子を混合することによって、色の異なる光を発することが可能となる。
【0067】
ナノ粒子は、磁気データ記憶の用途にも使用することができる。第14および15の好ましい態様では、ナノ粒子の磁気データ記憶の用途への使用について記載する。
【0068】
第14の好ましい態様では、ナノ粒子を、磁気データ記憶デバイスに使用する。このデバイスは、磁界源、たとえば磁石と、ナノ粒子を含むデータ記憶媒体と、光検出器とを含む。光源を使用してナノ粒子を照射する。磁界源は、局在化した磁界源を、データ記憶媒体の一部に選択的に印加する。磁界の印加により、磁界に曝露されたナノ粒子の光または放射線の放出特性が変化したり、または光または放射線の放出が完全に停止する。光検出器は、磁界源による磁界の印加に応答してナノ粒子が発する放射線を検出する。
【0069】
第15の好ましい態様では、磁性材料を含む磁気記憶媒体にナノ粒子を使用する。磁性材料は、材料中のスピンの方向の配列のしかたによってデータを貯蔵することのできる任意の磁性材料とすることができる。こうした磁性材料としては、たとえば、コバルト合金(たとえばCoPt、CoCr、CoPtCr、CoPtCrB、CoCrTa)、および鉄合金(たとえばFePtおよびFePd)を挙げることができる。第15の態様の1つの好ましい側面では、ナノ粒子11を、図1に示したように、基体15上に形成した磁性材料層13の全体にランダムに混合する。基体15は、ガラス、石英、プラスチック、半導体、またはセラミックとすることができる。ランダムに分散したナノ粒子は、磁性材料の磁区内に位置している。磁区は、磁壁(domain wall)によって隔てられている。磁壁のいくつかを、図1の領域「A」の拡大図中に、線17で示す。分散したナノ粒子は、磁区内で、遮断層19を形成している。遮断層は、磁性材料中で磁壁を形成している。このように、ナノ粒子を加えることは、磁性材料中の磁区を、複数の「サブ磁区」に再分割する効果があり、各サブ磁区は、1ビットのデータ(図1のスピン矢印で示す)を記憶することができる。したがって、ナノ粒子を加えると、磁性材料の磁区のサイズが低減することにより、磁性材料のデータ記憶密度が増加する。
【0070】
第15の態様の第2の好ましい側面では、磁気記憶媒体は、磁性材料の原子をドーピングしたナノ粒子を含有する基体を備えている。各ナノ粒子は、1ビットのデータを記憶するのに適している。したがって、磁性材料の小型のナノ粒子が、ナノ粒子に封入されている。この場合、1ビットのデータ記憶のサイズは、ナノ粒子のサイズにすぎない。磁性ナノ粒子のナノ粒子へのドーピングは、任意の公知のドーピング法、たとえば固相、液相、または気相での拡散、イオン注入または共沈殿を使用することによって行うことができる。あるいは、磁性ナノ粒子のナノ粒子への封入は、磁性ナノ粒子と接触しているナノ粒子のプラズマアーク放電処理によって行うこともできる。同様の方法が、磁性粒子の炭素およびバッキーチューブ(buckytube)のシェルへの封入について以前に開示されている。(米国特許第5,549,973号,米国特許第5,456,986号、および米国特許第5,547,748号を参照のこと。これらの特許は、参照により本明細書に組み入れられる。)
【0071】
第16の好ましい態様では、図2に示すように、ナノ粒子を光学データ記憶媒体に使用する。ナノ粒子21のクラスターを、基体25上に、基体25の第1領域27がナノ粒子21を含み、基体25の第2領域29はナノ粒子21を含まないよう、所定のパターンで配置する。溶液中のナノ粒子21は、インキジェットプリンターまたは他のミクロディスペンサーから、基体上の領域27に、選択的に分配することができる。溶剤の蒸発後には、ナノ粒子のクラスターが領域27に残存する。基体25は、ガラス、石英、プラスチック、半導体、またはセラミックの基体とすることができる。基体25は、CDと似た円盤状とするのが好ましい。記憶媒体からのデータは、媒体をレーザーなどの線源によって走査することによって、CDと同様に読み出す。ナノ粒子21は、光または放射線を、露出した基体領域29とは異なるかたちで反射および/または放射する。したがって、基体をレーザーで走査すると、領域27からは、領域29とは異なった量および/または波長の放射線が光検出器によって検出される。すなわち、領域27が、"1"のデータ値と対応し、領域29が、"0"のデータ値と対応しているか、またはその逆(すなわち、ナノ粒子21の各クラスターがデータ1ビットである)。したがって、ナノ粒子21は、通常のCDの突起または相変化光ディスクの第1相の物質に似たかたちで機能する。領域27は、CDと同様にトラックまたはセクター状に配置して、データ読み出しの便宜を図ることができる。
【0072】
上述の光学データ記憶媒体は、第17の好ましい態様の光学系と組み合わせて使用することができる。図3に示すように、光学系30は、少なくとも1本のミクロカンチレバー35と、少なくとも1本のミクロカンチレバーの先端に位置する発光性ナノ粒子31とを備えている。ミクロカンチレバー35は、原子間力顕微鏡(AFM)のミクロカンチレバーまたはAFMの一部ではない類似したミクロカンチレバーとすることができる。たとえば、ミクロカンチレバー35は、導電性のものとすることも、また、電流または電圧をナノ粒子に印加して光または放射線を生じさせる導電性のリードまたはワイヤを含むものとすることもできる。ミクロカンチレバーの基部33は、電圧源または電流源に接続する。ミクロカンチレバー35は、上記の態様のナノ粒子21を含む基体25を走査することができる。カンチレバー上の発光ナノ粒子31が、基体25を照射し、発光および/または反射された光を光検出器で検出し、コンピュータで解析してデータを読み出す。もちろん、光学系30は、上記の態様の媒体ではなく、通常のCDまたは相変化光学ディスクからデータを読み出すために使用することもできる。また、1本以上のミクロカンチレバー35をAFMに組み込んで、材料の表面を調べることもできる。この場合、AFMは、ナノ粒子31から発せられた光または放射線と、分析対象表面との相互作用を調べる目的で使用することができる。
【0073】
第18〜21の好ましい態様では、ナノ粒子を、光電子部品に使用する。
【0074】
第18の好ましい態様では、光学スイッチに発光ナノ粒子を使用する。このスイッチでは、発光ナノ粒子を基体上に配列し、光(または放射線)を発光させるための電圧または電流を印加する電圧源または電流源に接続する。ナノ粒子に隣接して、磁界源、たとえば磁石を配置する。磁石をオンにすると、磁石はナノ粒子から発せられた放射線を打ち消す。
【0075】
第19の好ましい態様では、ナノ粒子を、エレクトロルミネセンス素子、たとえば、米国特許第5,537、000号(参照により本明細書に組み入れられる)に例示されたエレクトロルミネセンス素子に使用する。図4に示すように、エレクトロルミネセンス素子40は、基体45、孔注入層46、孔輸送層47、電子輸送層41、および電子注入層48を含む。層46と48の間に、電圧を印加する。電圧によって、層46に孔が生じ、層48に電子が生じる。孔と電子は、層47および41を通って移動し、再結合して光を発する。再結合は、印加電圧に応じて、層41で生じて赤色光を発することも、層47で生じて緑色光を発することもある。電子輸送層41は、ナノ粒子、たとえばII-VI族のナノ粒子の層を含むものとすることができる。孔注入層46は、導電性電極、たとえば酸化インジウム錫を含むものとすることができる。孔輸送層47は、有機ポリマー材料、たとえばポリp(パラフェニレン)を含むものとすることができる。電子注入層48は、金属または高度ドープした半導体電極、たとえばMg、Ca、Sr、またはBa電極とする。
【0076】
本発明の第20の好ましい態様では、ナノ粒子を、光検出器50、たとえば米国特許第6,239,449号(参照により本明細書に組み入れられる)に記載された光検出器に使用する。図5に示すように、光検出器は、基体55上に形成する。高度にドープした第1接触層52を基体上に形成する。第1遮断層53を、この接触層52上に形成する。1つまたは複数のナノ粒子の層51を、遮断層53上に形成する。第2遮断層54を、ナノ粒子層51上に形成する。高度にドープした第2接触層56を、第2遮断層54上に形成する。電極57および58を、接触層52、56に接触するよう形成する。遮断層53、54は、ドープして電荷担体を付与し、導電性を付与する。遮断層53、54は、ナノ粒子51よりバンドギャップが高い。入射光または放射線は、ナノ粒子中の電荷担体(すなわち、電子または孔)を、遮断層53、54のバンドギャップのエネルギーより高い状態まで励起させる。その結果、入射光または放射線に応答して、電極間に印加された外部電圧の助力で、電流が、光検出器50を通ってエミッタ電極からコレクタ電極へと流れる。
【0077】
第21の好ましい態様では、ナノ粒子を、透過格子に使用する。ナノ粒子を、透過性の基体上に、格子状に配置する。ナノ粒子はサイズが極めて小さいので、格子は、格子を透過させる光または放射線の波長より短周期となるように形成することができる。こうした格子は、波長板(waveplate)、偏光子、位相変調器に使用することができる。格子の形成は、サブミクロンの光学的、X線、または電子ビームリソグラフィーを使用することによって、または、個々のナノ粒子をAFMまたは走査型トンネル電子顕微鏡を使用して基体に配置することによって、ナノ粒子を基体上にパターニングすることによって行うことができる。
【0078】
第22の好ましい態様では、ナノ粒子を、光学フィルターに使用する。光学フィルターは、ガラス、プラスチック、またはセラミックの透過性マトリクスと、その内部に分散したナノ粒子とを含むものとすることができる。ナノ粒子は、ナノ粒子の材質およびサイズにもとづくカットオフ波長より波長の長い放射線を吸収するので、フィルターは、ナノ粒子の材質およびサイズに基づいて、特定範囲の光または紫外線の波長をフィルタリングするよう設計することができる。また、ナノ粒子は、特定の固体材料、たとえばステンドグラスまたは着色ガラスに色をつけるために使用することもできる。
【0079】
第23の好ましい態様では、ナノ粒子を電子素子、たとえばトランジスタ、レジスタ、ダイオードをはじめとする各種のナノ素子に使用することができる。たとえば、ナノ粒子は、米国特許第6,057,556号(参照により本明細書に組み入れられる)に記載された単一電子トランジスタに使用することができる。ナノ粒子は、ソース電極とドレイン電極との間で、基体上に配置する。ナノ粒子は、単一電子トランジスタのチャネルを含む。複数のナノスケールのゲート電極をナノ粒子上またはナノ粒子に隣接して与える。この素子は、ソース電極とドレイン電極の間の、ナノ粒子間のポテンシャル障壁を通しての、制御された相関する単一原子トンネル効果の原理で作用する。この素子を用いると、論理上の「1」と「0」を電子の有無で識別する単一電子ゲート回路を構築することができる。
【0080】
ナノ素子アレイの例としては、セルオートマトンと称されるチップアーキテクチャ(chip architecture)を挙げることができる。このアーキテクチャでは、ICのプロセッサ部分が、複数のセルから構成されている。各セルは、相対的に少数の素子を備えており、これらの素子は、それぞれの最も近接して隣接するセルのみと接続している。このアーキテクチャのアプローチでは、電子チップの最速処理能力の上限を最終的に決めることになる長いセル間接続が不要となる。各セルは、約5個のナノ粒子または量子ドットから構成することができる。
【0081】
第24の好ましい態様では、ナノ粒子をコードまたはタグに使用する。たとえば、ナノ粒子は、AFM、STM、またはリソグラフィーで、ミニチュア・バーコードとして形成することができる。このバーコードは、小型アイテム、たとえば集積回路上に形成することができ、ミニチュア・バーコード・リーダーで読み取ることができる。もちろん、コードは、バー以外の記号とすることもできる。別の例では、ナノ粒子を、タグとして(すなわち、ナノ粒子が特定の形状をとらないかたちで)使用することもできる。少量のナノ粒子であれば人間の目には見えないので、ナノ粒子のコードまたはタグは、通貨、クレディットカード、身分証明書、または貴重品のような認証の必要なアイテムに付与することができる。アイテムを認証する際には、ナノ粒子がアイテム上またはアイテム中に存在することを、顕微鏡または光学的検出装置で検出する。また、特定波長の光を発する特定サイズのナノ粒子を使用して、各種物体を区別することもできる。各種波長を組合せて発光する、各種サイズのナノ粒子の組み合わせを使用して、アイテムのより正確な識別のための光学的コードを発するようにすることもできる。
【0082】
第25の好ましい態様では、ナノ粒子をセンサーのプローブに使用する。センサーのプローブは、たとえば、米国特許第6,207,392号、米国特許第6,114,038号、および米国特許第5,990,479号(参照により本明細書に組み入れられる)に記載されているように、結合剤を使用してナノ粒子をアフィニティ分子に結合することによって形成することができる。アフィニティ分子は、所定の生体物質または他の物質と選択的に結合することができる。エネルギーの印加に応答して、ナノ粒子は、光または放射線を発し、この光または放射線を検出装置で検出する。その結果アフィニティ分子に結合した所定の物質の存在、位置、および/または特性を判定することが可能となる。結合剤は、重合可能な物質、たとえばN-(3-アミノプロピル)3-メルカプト-ベンズアミドとすることができる。アフィニティ分子、たとえば抗体は、検出対象である所定の生体物質、たとえば特定の抗原などと選択的に結合することができる。
【0083】
第26の好ましい態様では、ナノ粒子を、研磨または摩砕用パッド、たとえば半導体素子の研磨に用いる化学的機械的研磨用パッドに付着させる。この態様では、半導体、金属、またはセラミックナノ粒子を、研磨パッド、たとえば布、プラスチック、セラミックまたは紙パッドの研磨または摩砕面に付着させる。研磨または摩砕対象の層と同一組成のナノ粒子が好ましい。たとえば、シリコン、二酸化ケイ素、および窒化ケイ素のナノ粒子を、シリコン、二酸化ケイ素、および窒化ケイ素を研磨する際に使用する研磨パッドにそれぞれ使用することができる。これは、これらのナノ粒子は研磨対象面にとって汚染物質とはならないためである。
【0084】
次に、本発明の好ましい態様の方法に従って製造したナノ粒子の具体例を示す。これらの具体例は本発明を例示する目的でのみ示したものであり、本発明の範囲を制限するものと解釈されるべきではない。
【0085】
実施例1: 第1の好ましい態様の方法によるシリコンナノ粒子の製造
研磨プレート上に配置したサイズ0.1ミクロン(1000 nm)の固定ダイアモンド研磨フィルム(South Bay Technology、Inc.より購入)で、シリコンウェーハを、3分間、粒子分散剤として水を使用することによって摩砕した。摩砕の間、水をフィルムに注ぎ、研磨プレートを容器内に位置させることによって、プラスチック容器に集めた。
【0086】
図7は、上述の方法を使用することによって水中で得られたシリコンの粒子サイズ分布を示す。粒子のサイズのピークは、50 nmと100 nmの間にあり、サイズ分布は広い。図8は、上述のプロセスの後に、さらにHF:H2O(容積比1:50)溶液中で5分間エッチングすることによって水中で得られたシリコンの粒子サイズ分布を示す。結果からは、小型および大型の粒子が溶解し、サイズ分布が狭くなっていることが明らかである。このプロセスでは、図7の溶液に、測定量のHFを加えた。
【0087】
図9は、図8の溶液に、HF:H2O(容積比1:50)を加えて、さらに5分間エッチングすることによって得られた粒子サイズ分布を示す。図10は、図9の溶液に、HF:H2O(容積比1:50)を加えて、さらに5分間エッチングすることによって得られた粒子サイズ分布を示す。図9および10では、図8と比べて、ナノ粒子のピークサイズが低減していた。
【0088】
図11は、図9の溶液を2分間遠心分離し、液の上部50%を抽出した後の水中でのシリコンの粒子サイズ分布を示す。サイズ分布が狭くなり、ピークサイズが低減していた。
【0089】
図12は、図10の溶液に、HF:HNO3:CH3COOH(容積比3:5:3)を加えて、さらに5分間エッチングすることによって得られた粒子サイズ分布を示す。図13は、図11の溶液に、HF:H2O(容積比1:50)を加えて、さらに5分間エッチングすることによって得られた粒子サイズ分布を示す。いずれの場合も、ピーク粒子サイズおよび粒子サイズ分布が、低減していた。
【0090】
このように、適当なエッチング工程および濾過工程を選択することによって、ピークまたは平均のサイズが25〜60 nmで、サイズ分布が10〜30 nmのナノ粒子を得ることができた。粒子サイズは、追加のエッチングおよび/または精製工程を実施することによって、さらに低減することができた。
【0091】
実施例2: 第2の好ましい態様による、シリコンナノ粒子とSiO2キャップ(すなわち、シリカの表面領域を有するシリコンコア)の製造
シリコンウェーハを、ボールミリング法によって48時間にわたって摩砕し、粉末を水に懸濁した。図14は、上述の方法を使用することによって水中に懸濁されたシリコン粒子の当初のサイズ分布を示す。このサイズ分布は、第1の実施例(3分)よりも長い摩砕時間を用いたにもかかわらず、極めて広いものであった。
【0092】
図15は、図14に関して説明したプロセスの後に、さらにHF:H2O(容積比1:50)溶液中で5分間エッチングすることによって水中で得られたシリコンの粒子サイズ分布を示す。このプロセスでは、図14の溶液に測定量のHFを加えた。粒子サイズ分布は、有意に狭くなっていた。
【0093】
図16は、図15の溶液に、HF:H2O(容積比1:50)を加えて、さらに5分間エッチングすることによって得られた粒子サイズ分布を示す。図17は、図16の溶液に、HF:H2O(容積比1:50)を加えて、さらに5分間エッチングすることによって得られた粒子のサイズ分布を示す。ピーク粒子サイズおよび粒子サイズ分布は、有意に狭くなっていた。
【0094】
図18は、図7の溶液を2分間遠心分離し、液の上部50%を抽出した後の水中でのシリコンの粒子サイズ分布を示す。ピーク粒子サイズおよび粒子サイズ分布は、有意に狭くなっていた。
【0095】
図19は、図18の溶液に、HF:H2O(容積比1:50)を加えて、さらに5分間エッチングすることによって得られた粒子サイズ分布を示す。図20は、図19の溶液に、HF:H2O(容積比1:50)を加えて、さらに5分間エッチングすることによって得られた粒子サイズ分布を示す。ピーク粒子サイズおよび粒子サイズ分布は、有意に狭くなっていた。
【0096】
図21は、図20の溶液にNaOHを加えてpHを5.5から8に変えた後の粒子サイズ分布を示す。この方法でシリコン粒子を酸化して、コア/シェル型のSi/SiO2ナノ粒子を形成したところ、溶液は白っぽい外見を示すようになった。
【0097】
実施例3: 第1の好ましい態様の方法を使用したSiO2ナノ粒子の製造
サイズ0.1ミクロン(1000 nm)の固定ダイアモンド研磨フィルム(South Bay Technology、Inc.より購入)で、石英(シリカ)板を、3分間、粒子分散剤として水を使用することによって摩砕した。摩砕の間、研磨プレートを容器内に位置させることによって、水をフィルムに注ぎ、プラスチック容器に集めた。図22は、上述の方法を使用することによって水中で得られたSiO2の粒子サイズ分布を示す。
【0098】
図23は、HF:H2O(容積比1:50)溶液中で5分間エッチングした後の粒子のサイズ分布を示す。図22の溶液に、測定量のHFを加えた。図24は、図23の溶液に、HF:H2O(容積比1:50)を加えて、さらに5分間エッチングすることによって得られた粒子サイズ分布を示す。図25は、図24の溶液にHF:H2O(容積比1:50)を加えて、さらに5分間エッチングすることによって得られた粒子サイズ分布を示す。ピーク粒子サイズおよび粒子サイズ分布は、制御されたエッチングによって、有意に狭くなっていた。
【0099】
図26は、図25の溶液を2分間遠心分離し、液の上部50%を抽出した後の水中での二酸化シリコンの粒子サイズ分布を示す。ピーク粒子サイズおよび粒子サイズ分布が、さらに狭くなっていた。
【0100】
以上の本発明の説明は、本発明を例示し、説明するためのものである。これは本発明を余すことなく述べているものでも、または本発明を開示した厳密な形態に限定するものではなく、上記の教示内容に照らして、または本発明を実施することによって、各種の改良および変更を行うことが可能である。図面および説明は、本発明の原理およびその実際の適用例を説明する目的で選択したものである。本発明の範囲は、本明細書に添付する特許請求の範囲およびその等価物によって定義される。
【0101】
本明細書において言及した刊行物、特許出願、特許はいずれも、参照により、その全体が本明細書に組み入れられる。
【図面の簡単な説明】
【0102】
(図1)本発明の1つの好ましい態様の磁気データ記憶媒体についての三次元図である。
(図2)本発明の別の好ましい態様の光学データ記憶媒体についての頂面図である。
(図3)本発明の別の好ましい態様の光学カンチレバー素子についての側断面図である。
(図4) 本発明の別の好ましい態様ののエレクトロルミネセンス素子についての側断面図である。
(図5)本発明の別の好ましい態様の光検出器についての側断面図である。
(図6)図6Aおよび6Bは、本発明の好ましい態様にしたがってナノ粒子を製造する方法での各工程の模式図である。
(図7〜図26)本発明の好ましい態様にしたがって製造したシリコン、二酸化ケイ素(SiO2)、SiO2でキャッピングしたシリコンナノ粒子について、水中でのナノ粒子サイズ分布を示す試料のPCSスペクトルである。
【図1】

【図2】

【図3】

【図4】

【図5】

【図6A】

【図6B】

【図7】

【図8】

【図9】

【図10】

【図11】

【図12】

【図13】

【図14】

【図15】

【図16】

【図17】

【図18】

【図19】

【図20】

【図21】

【図22】

【図23】

【図24】

【図25】

【図26】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属酸化物または半導体酸化物の表面領域と、金属または半導体のコア領域とを備えた複数のナノ粒子。
【請求項2】
ナノ粒子が、表面領域とコア領域との間に位置する移行領域を含み、かつ
この移行領域の酸素対金属または半導体の比が、表面領域に隣接する部分で最大であり、コア領域に向かって徐々に低減している、
請求項1記載のナノ粒子。
【請求項3】
コア領域が酸素原子を含まないかまたは痕跡量の酸素原子を含んでいる、請求項1記載のナノ粒子。
【請求項4】
Si、Ge、SiGe、II-VI族、IV-VI族、またはIII-V族半導体のコア領域と、
SiO2、GeO2、II-VI族、IV-VI族、またはIII-V族酸化物の表面領域と
を含む、請求項3記載のナノ粒子。
【請求項5】
Siのコア領域と、
SiO2の表面領域と、
シリコンに富んだSiO2-xの移行領域と
を含むナノ粒子であって、xが、表面領域に隣接した部分での2から、コア領域に隣接した部分での約0までの範囲にある、請求項4記載のナノ粒子。
【請求項6】
ナノ粒子のSiコア領域が、III族またはV族のドーパントで均一にドープされている、請求項5記載のナノ粒子。
【請求項7】
金属のコア領域と、
金属酸化物の表面領域と
を含む、請求項3記載のナノ粒子。
【請求項8】
Alのコア領域と、
Al2O3の表面領域と、
アルミニウムに富んだAlOxの移行領域と
を含むナノ粒子であって、xが、表面領域に隣接した部分での3/2から、コア領域に隣接した部分での約0までの範囲にある、請求項7記載のナノ粒子。
【請求項9】
平均ナノ粒子サイズが2〜100 nmであり、サイズ分布が10〜25%である、請求項1記載のナノ粒子。
【請求項10】
平均ナノ粒子サイズが約2 nm〜約100 nmであり、サイズの標準偏差が光子相関分光(PCS)法で測定した平均ナノ粒子サイズの60%未満である、請求項1記載のナノ粒子。
【請求項11】
少なくとも30日間にわたって、実質的凝集および容器表面への実質的沈殿を生じることなく水に懸濁可能である、請求項10記載のナノ粒子。
【請求項12】
溶液、懸濁液、または混合物中に懸濁されているか、または
固体基体上または固体マトリクス中に位置している、
請求項1記載のナノ粒子。
【請求項13】
半導体または金属のナノ粒子を酸化液に入れ、酸化液中で半導体または金属のナノ粒子を酸化させることによって製造される、請求項1記載のナノ粒子。
【請求項14】
平均ナノ粒子サイズが約2 nm 〜約100 nmであり、サイズの標準偏差が光子相関分光(PCS)法で測定した平均ナノ粒子サイズの60%未満である、複数の均一にドープされたナノ粒子。
【請求項15】
平均ナノ粒子サイズが約2 nm 〜約10 nmであり、サイズの標準偏差が光子相関分光(PCS)法で測定した平均ナノ粒子サイズの約10%〜約25%である、請求項14記載のナノ粒子。
【請求項16】
半導体ナノ粒子を含む、請求項14記載のナノ粒子。
【請求項17】
適当なIII族またはV族のドーパントで、均一にドープされたシリコンナノ粒子を含む、請求項18記載のナノ粒子。
【請求項18】
各均一にドープされたナノ粒子が、その体積全体にわたって5%未満変動するドーパント濃度を有する、請求項17記載のナノ粒子。
【請求項19】
均一にドープされたナノ粒子が、ナノ粒子間で5%未満変動する平均ドーパント濃度を有する、請求項18記載のナノ粒子。
【請求項20】
少なくとも30日間にわたって、実質的凝集および容器表面への実質的沈殿を生じることなく水に懸濁可能である、請求項14記載のナノ粒子。
【請求項21】
ドープされた金属または金属酸化物のナノ粒子を含む、請求項14記載のナノ粒子。
【請求項22】
均一に合金化された金属ナノ粒子を含む、請求項21記載のナノ粒子。
【請求項23】
均一にドープされたセラミック金属酸化物またはシリカナノ粒子を含む、請求項21記載のナノ粒子。
【請求項24】
アクチベータイオンで均一にドープされたセラミック金属酸化物の蛍光体ナノ粒子を含む、請求項23記載のナノ粒子。
【請求項25】
各均一にドープされたナノ粒子が、その体積全体にわたって5%未満変動するドーパント濃度を有する、請求項21記載のナノ粒子。
【請求項26】
均一にドープされたナノ粒子が、ナノ粒子間で5%未満変動する平均ドーパント濃度を有する、請求項21記載のナノ粒子。
【請求項27】
(a)研磨用スラリー液と、スラリー液中の請求項14記載のナノ粒子とを含む研磨用スラリー;
(b)硬質または耐摩耗性の被膜を含むデバイスであって、この被膜が、デバイスの少なくとも一部に位置する請求項14記載のナノ粒子を含むデバイス;
(c)固体マトリクスと、マトリクスに組み込まれた請求項14記載のナノ粒子とを含む、気孔率10容積%未満の超低気孔率材料;
(d)請求項14記載のナノ粒子を圧縮したものを含むフィルター;
(e)液体ベースと、請求項14記載のナノ粒子とを含む塗料;
(f)水分遮断材を含む衣服または履き物製品であって、この水分遮断材が、製品の少なくとも1表面に位置している請求項14記載のナノ粒子の層を含む製品;
(g)放射線源と、請求項14記載のナノ粒子を含むマトリクス材料とを含む環境センサー;
(h)発光性の請求項14記載のナノ粒子を含む発光デバイス;
(i)請求項14記載のナノ粒子のマトリクス中の有機発光物質と、第1電極と、第2電極とを含む有機発光ダイオード;
(j)シェルと、シェル中に位置する放射線源と、シェルの少なくとも1表面に位置している請求項14記載のナノ粒子の層とを含むランプであって、ナノ粒子が、放射線源から発せられる放射線を吸収して可視光を発するランプ;
(k)磁界源と、請求項14記載のナノ粒子を含むデータ記憶媒体と、磁界源による磁界の印加に応答してナノ粒子から発せられる放射線を検出する光検出器とを含む磁気データ記憶デバイス;
(l)磁性材料と、請求項14記載のナノ粒子とを含む磁気記憶媒体;
(m)基体の第1領域がナノ粒子を含み、基体の第2領域はナノ粒子を含まないように、基体と、基体の所定領域に位置する請求項14記載のナノ粒子とを含む光学記憶媒体;
(n)少なくとも1本のミクロカンチレバーと、この少なくとも1本のミクロカンチレバーの先端に位置する請求項14記載のナノ粒子を含む発光ナノ粒子を含む光学システム;
(o)請求項14記載のナノ粒子を含む発光ナノ粒子と、ナノ粒子に隣接して磁界を与えた場合に、ナノ粒子により放出される放射線の打ち消しに適合した磁界源とを含む光学スイッチ;
(p)液体インキと、請求項14記載のナノ粒子とを含むインキ;および
(q)請求項14記載のナノ粒子を含有するクリーニング液を含むクリーニング組成物
からなる群より選択される、請求項14記載のナノ粒子を含む製品。
【請求項28】
デバイス(b)が、工具、ドリルのビット、タービンの羽根、歯車、および切削器具の少なくとも1つを含み;
塗料(e)の液体ベースが、請求項14記載のナノ粒子によって表面が着色されるように表面への塗布後に蒸発し;
衣服または履き物(f)の水分遮断材が、日光への曝露時に熱を発するか、または身体から発せられる熱を捕捉するものであり、
ランプ(j)内のナノ粒子の層が、ナノ粒子の光の出力が組み合わさってヒトの観察者には白色光として見えるように異なる色の光を発するナノ粒子を含み;かつ
各ナノ粒子が、1ビットのデータの蓄積に適合するように、この遮断層が磁性材料中で磁壁(domain wall)を形成しているか、または媒体(l)がさらに磁性材料の原子によりドープしたナノ粒子を含む基体を含むよう磁気記憶媒体(l)のナノ粒子が磁性材料中に位置する遮断層を含む、
請求項27記載の製品。
【請求項29】
バルク材料を用意する工程;
バルク材料を摩砕して、第1のサイズの粒子を有する粉末とする工程;
第1のサイズの粒子を有する粉末を溶液に供給する工程;および
この溶液にエッチング液を加えて第1のサイズの粒子をエッチングし、第1のサイズより小型の第2のサイズを有するナノ粒子とする工程
を含むナノ粒子の製造方法。
【請求項30】
バルク材料が、半導体バルク材料を含む、請求項29記載の方法。
【請求項31】
バルク材料が、均一にドープされた半導体バルク材料を含む、請求項30記載の方法。
【請求項32】
バルク材料が、適当なIII族またはV族のドーパントで均一にドープしたシリコンウェーハの少なくとも一部を含む、請求項30記載の方法。
【請求項33】
バルク材料が、セラミックバルク材料を含む、請求項29記載の方法。
【請求項34】
セラミックバルク材料が、シリカ、アルミナ、チタニア、ジルコニア、イットリア、安定化したジルコニア、イットリア、セリア、スピネル、および五酸化タンタルからなる群より選択される、請求項33記載の方法。
【請求項35】
バルク材料が、純金属または金属合金を含む、請求項29記載の方法。
【請求項36】
100℃未満の温度で実施される、請求項29記載の方法。
【請求項37】
摩砕工程が、バルク材料の塊片を研磨フィルム上に配置し、塊片と研磨フィルムを相対的に移動させてバルク材料を粉末に摩砕する工程を含む、請求項29記載の方法。
【請求項38】
粉末を水でフラッシングして粉末を集める工程をさらに含む、請求項37記載の方法。
【請求項39】
摩砕工程が、バルク材料のボールミリング工程を含む、請求項29記載の方法。
【請求項40】
溶液が水溶液を含み、
エッチング液が、HCl、KOH、HF、またはNaOHを含む、
請求項29記載の方法。
【請求項41】
溶液が酸化液を含み、この酸化液が半導体または金属のナノ粒子の少なくとも1表面を酸化して、ナノ粒子上に半導体または金属酸化物の表面領域を形成する、請求項29記載の方法。
【請求項42】
ナノ粒子を製品に取り込む工程をさらに含む、請求項29記載の方法。
【請求項43】
半導体または金属のナノ粒子を酸化液に加える工程;および
半導体または金属のナノ粒子を酸化液中で酸化して、各半導体または金属のナノ粒子上に半導体酸化物または金属酸化物の表面領域を形成する
を含むナノ粒子の製造方法。
【請求項44】
半導体または金属のナノ粒子がシリコンナノ粒子を含む、請求項43記載の方法。
【請求項45】
半導体または金属のナノ粒子が純金属または金属合金ナノ粒子を含む、請求項43記載の方法。
【請求項46】
半導体または金属のナノ粒子を酸化液に加える前に、バルク金属または半導体材料を摩砕して、半導体または金属のナノ粒子を形成形成させる工程をさらに含む、請求項43記載の方法。
【請求項47】
半導体酸化物または金属酸化物のナノ粒子が、
半導体酸化物または金属酸化物の表面領域と、
半導体または金属のコア領域と、
表面領域とコア領域の間に位置する移行領域と
を含む方法であって、
この移行領域の酸素対金属または半導体の比が、表面領域に隣接する部分で最大でありコア領域に向かって徐々に低減している
請求項43記載の方法。
【請求項48】
半導体または金属のナノ粒子を窒化液に加える工程;および
半導体または金属のナノ粒子を窒化液中で窒化して、各半導体または金属のナノ粒子上に半導体窒化物または金属窒化物の表面領域を形成する工程
を含む窒化半導体または窒化金属のナノ粒子の製造方法。
【請求項49】
パッド材と、このパッド材表面に付着させたナノ粒子とを含む、研磨または摩砕用パッド。
【請求項50】
ナノ粒子が、シリコン、二酸化ケイ素、または窒化ケイ素のナノ粒子を含む、請求項49記載のパッド。
【請求項51】
研磨対象デバイスを、その第1表面に付着されたナノ粒子を有する研磨用パッドの第1表面に配置する工程;
化学的機械的研磨用流体を、研磨用パッドの第1表面上に加える工程;および
デバイスを化学的機械的に研磨する工程
を含む化学的機械的研磨法。
【請求項52】
研磨用流体がナノ粒子を含んでおり、かつ、パッドの第1表面上にデバイスを配置する前に、パッドに加えられる、請求項51記載の方法。

【公表番号】特表2007−515361(P2007−515361A)
【公表日】平成19年6月14日(2007.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−532307(P2006−532307)
【出願日】平成16年3月3日(2004.3.3)
【国際出願番号】PCT/US2004/006350
【国際公開番号】WO2005/013337
【国際公開日】平成17年2月10日(2005.2.10)
【出願人】(591117594)レンセラー・ポリテクニック・インスティチュート (6)
【氏名又は名称原語表記】RENSSELAER POLYTECHNIC INSTITUTE
【Fターム(参考)】