説明

ナノ粒子修飾ポリイソシアネート

【課題】 粘度の安定性と貯蔵中の凝集に対する安定性を有する、分散によって組み込まれたナノスケールの無機粒子を含むポリイソシアネートを提供する。
【解決手段】 ナノ粒子修飾ポリイソシアネートを、1) A)ポリイソシアネートを、B)アルコキシシラン:Q-Z-SiXaY3-a (I) (式中、Qはイソシアネート反応性基であり、Xは加水分解性基であり、Yは同一または異なるアルキル基であり、ZはC1-C12アルキレン基であり、aは1〜3の整数である)と反応させ、続いて、2) 分散によってC) 分散液中での動的光散乱によって測定した平均粒径が200nm未満である無機粒子を組み込むことにより製造する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、革新的なナノ粒子修飾ポリイソシアネート、並びに被覆組成物および接着剤におけるその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
高分子塗膜中のナノ粒子は、引掻耐性、紫外線防護、伝導性などの特性において目的とする改善をもたらすことがある。塗膜に要求される透明な外観やその特性を決定するのは、ナノ粒子の表面修飾と分散の制御である。(Nanoparticle composites for coating applications. Cayton, Roger H. 編者:Laudon, Matthew; Romanowicz, Bart. NSTI Nanotech 2004, Boston, MA, United States, Mar. 7-11, (2004), 3 312-315)。
【0003】
塗料処方物や接着剤処方物へのナノ粒子の導入に関しては、過去にさまざまな取り組みが行われてきた。粒子を樹脂成分や硬化成分に直接混合することも、すぐに塗布できる被覆組成物に直接混合することも可能である。水性系の場合には、水相に粒子を分散させることが考えられる。さらに、バインダー成分のうちの1つにおいてその場で粒子を調製すること、および樹脂または硬化成分のいずれかへの表面適合の記載も存在する。
【0004】
実際的な観点からは、ナノ粒子を安定なマスターバッチの形で成分のうちの1つに分散させて、塗料や接着剤などを処方する段階において長期にわたる保存安定性と扱いやすさとを確保することは有利である。最終用途においても、透明性、引掻耐性、伝導性などの有利な特性を得るために、ナノ粒子は同様に充分かつ微細に分散している必要がある。
【0005】
この技術分野では、典型的には、ナノ粒子を樹脂成分に、水相に、および/または硬化の直前に硬化剤と樹脂との完成した混合物に分散させる。これには、一般に、ナノ粒子の表面を被覆組成物または接着剤の特定のマトリックスに適合させることが必要になる。単に修飾されたナノ粒子を混合することの不利な点は、完成処方物、すなわち処方物のすべての構成要素に安定性が依存することである。この場合、1つのパラメーターを変更することによって、分離を引き起こすことがある(Pilotek, Steffen; Tabellion, Frank (2005), European Coatings Journal, 4, 170ff)。
【0006】
"Polymers for Advanced Technologies (2005), 16(4), 328-331"では、火炎熱分解によって生成したポリ(テトラメチレングリコール)と二酸化ケイ素との混合物(ナノシリカ)を4,4-ジフェニルメタンジイソシアネートと反応させ、生成物を1,4-ブタンジオールで鎖延長させている。ポリウレタン鎖はウレタン結合によってシリカ表面に共有結合している。これらの取り組みに基づくポリウレタンフィルムは、引張り強さや破断伸びなどの機械的特性における改善を示した。
【0007】
この種のヒュームドシリカは、焼結された一次粒子の凝集体から実質的に成るため、湿式化学的に調製された一次粒子として分散形態にあるシリカと比較すると、粒度分布が広く、平均粒径が大きい。ヒュームドシリカの場合、これらの重大な相違によって、それから得られる被膜や接着結合においてさえ、不均一性や混濁などの事例に至ることが多い。さらに、ポリウレタンネットワークへの粒子の共有結合は、自動車のクリアコートなどの特定の用途について重要な意味を持ち得る。これは、著しい架橋によってガラス転移温度が上昇し、弾性リフローが防止されるからである。リフローは、湿潤引掻耐性のために重要である(Meier-Westhues, U. et al. (1999), Polyurethane clearcoats with optimized resistance to scratching and chemicals, Praxis-Forum, Meeting of the "Automobilkreis Spezial", Bad Nauheim)。
【0008】
WO 2001/005883は、分散した非凝集シリカナノ粒子を有する密なまたは多孔質のポリウレタンエラストマーおよびその調製方法を記載しており、この粒子は、ポリオール相に、低分子量架橋剤または連鎖延長剤に導入することができ、また、不活性溶媒分散液によってイソシアネート相に導入することができる。膜の混濁やゲル化については、何も言及されていない。
【0009】
JP-A 2005-162858およびJP-A 2005-171017は、ポリシロキサン、連鎖延長剤、ポリイソシアネートおよび高分子量ポリオールまたはポリアミンから構成された親水性ポリウレタン樹脂を記載している。このような樹脂には有機シリカゾルが分散によって組み込まれ、次いで溶媒が分離される。このシリカ修飾樹脂に関して有利であるとして記載されている特徴としては、高い吸水性およびそれに関連して防曇性、高い透明性および特に可撓性が挙げられる。しかし、粒子修飾ポリイソシアネートは開示されていない。
【0010】
EP-A 372957の第1工程では、イソシアネート、ポリオールおよびアミンからプレポリマーが調製され、過剰のNCO基はブロックされる。OH、(ブロックト)NCO、およびNH2基を含むプレポリマーは、次いで、シリカゾルを含むさらなる処方原料と混合され、プライマーとして塗布されて硬化される。このようなシリカ修飾ポリイソシアネートのゲル化安定性および混濁安定性は記載されていない。
【0011】
JP-A 2005-320522は、プラスチックフィルムのための透明ハードコート塗膜の製造を記載している。NCOおよび二重結合を含有するポリマー、有機溶媒中のシリカゾル、触媒およびアクリレート成分を混合してPETフィルムに塗布し、熱的におよび紫外線を用いて硬化する。
【0012】
JP-A 2004-256753も同様に、シラノール基を含む非修飾コロイド状シリカの使用を記載しており、このシリカを二重結合含有イソシアネート(2-メタクリロイルオキシエチルイソシアネート)と反応させる。シリカ粒子のSi-OH基は、NCO基との反応の結果としてウレタン結合を形成する。この塗料は、アクリレート基の重合によって実際に架橋する。これらの生成物の不利な特性は、88.2%という低い透明度およびシラノール含有ナノ粒子表面に起因する高度かつ無制御な架橋度であるが、このナノ粒子表面は、例えばリフロー特性については有利であると考えることができ、従って、自動車塗料の場合の引掻耐性にとって有利であると考えることができる。
【0013】
DE-A 198 11 790は、ナノ粒子を含有する透明な膜形成バインダーを記載しており、このバインダーには、ヒュームドシリカと有機修飾焼成シリカがノズルジェット分散によってOH官能性バインダーに組み込まれている。ノズルジェット分散には高剪断エネルギーが必要であり、また、完全なナノ粒子分散を保証するものではない。この方法では、ヒュームドシリカの焼結凝集体を確実に一次粒子の形態で分散させることは不可能であるため、膜の混濁に至ることがある。
【0014】
EP-A 1054046は、水性二成分PU処方物の一方または両方のバインダー成分にマイクロスケール無機充填剤を加えており、この特定された充填剤は、好ましくは炭酸カルシウム、TiO2、砂、粘土鉱物、マイカおよびドロマイトを含む。
【0015】
上述の方法の不利な特性としては、バインダー成分の中でそのような均一な分散を達成するには使用される粒子および粒子の凝集物が大きすぎるので、塗布厚みが大きくても混濁のない膜を生成することができないことが挙げられる。同様に不利なのは、粒子の非常に多くが非修飾の形で使用されるため、他のバインダー成分によってはすぐに塗布できる処方物に相分離や不均一性が生じ得ることである。比較的高い架橋密度の結果として、粒子のポリウレタンマトリックスへの共有結合は、湿潤引掻耐性を比較的低くしたり、リフロー特性を改善の余地のあるものにしたり、また、粘度の上昇を招いたりし、処方物が貯蔵された場合にはゲル化を生じることがよくある。
【0016】
DE-A 195 40 623には表面修飾シリカ粒子の使用が記載されており、この粒子はマトリックス材料に組み込まれている。マトリックス材料として明記されているのは数々の高分子材料であるが、被覆技術において典型的に使用されるエポキシドやポリイソシアネートなどの硬化剤はいずれも明記されていない。
【0017】
US 6022919は、シラン官能化無機粒子と混合され、イソシアネートで硬化される特定のポリアクリレート樹脂を開示している。その架橋フィルムは、耐候性に加えて、光や化学薬品に起因する影響への耐性に関して注目に値する。その一方で、このようなゾルを、粘度の上昇やゲル化なしにポリイソシアネート成分にどの程度まで組み込むことができるのかは明らかでない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
そこで、本発明の目的は、分散によって組み込まれたナノスケールの無機粒子を含むポリイソシアネートを提供することであり、その意図は、このようにして修飾されたポリイソシアネートが粘度の安定性と貯蔵中の凝集に対する安定性を特徴とすることである。さらなる目的は、これらのポリイソシアネートが、ポリオール架橋またはポリアミン架橋により、有利な特性を有する混濁のない塗膜を与えることである。
【課題を解決するための手段】
【0019】
驚くべきことに、オリゴマーイソシアネートのイソシアネート基をアルコキシシランと部分的に反応させることによって、このように修飾されたさまざまなイソシアネート中の透明でゲル化安定な無機ナノ粒子の分散体が得られることが見出された。
【0020】
従って、本発明は、ナノ粒子修飾ポリイソシアネートの調製方法を提供し、該方法においては、
A) ポリイソシアネートを
B) 式(I)のアルコキシシランと反応させ:
Q-Z-SiXaY3-a (I)
(式中、
Qはイソシアネート反応性基であり、
Xは加水分解性基であり、
Yは同一または異なるアルキル基であり、
ZはC1-C12アルキレン基であり、
aは1〜3の整数である)
および、それに続いて
C) 分散液中での動的光散乱によって測定した平均粒径(数平均値)が200nm未満である表面修飾されていてもよい無機粒子を、分散によって組み込む。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
実施例において使用される場合を含めて、本明細書および特許請求の範囲においてここで使用される場合、別途明示しない限り、すべての数字は、その前に「約」という用語が明確に記載されていない場合でも、この語を付されたものと解釈される。また、本明細書に記載されるあらゆる数値範囲は、その中に包含されるあらゆる狭範囲を含むことが意図される。
【0022】
A)において、原則的には、自体が当業者に既知である、1分子あたり2つ以上のNCO基を有するすべてのNCO官能性化合物を使用することが可能である。これらの化合物は、好ましくはNCO官能価が2.3〜4.5であり、NCO基含有量が11.0wt%〜24.0wt%であり、モノマージイソシアネート含有量が、好ましくは1wt%未満、より好ましくは0.5wt%未満である。
【0023】
この種のポリイソシアネートは、単純な脂肪族、脂環式、脂肪族芳香族および/または芳香族のジイソシアネートの修飾(変性)によって得ることができ、ウレトジオン、イソシアヌレート、アロファネート、ビウレット、イミノオキサジアジンジオンおよび/またはオキサジアジントリオン構造を含んでいてもよい。さらに、このようなポリイソシアネートは、NCO含有プレポリマーとして使用することができる。この種のポリイソシアネートは、例えば、Laas et al. (1994), J. prakt. Chem. 336, 185-200やBock (1999), Polyurethane fuer Lacke und Beschichtungen, Vincentz Verlag, Hanover, pp. 21-27に記載されている。
【0024】
このようなポリイソシアネートの調製に適したジイソシアネートは、例えばホスゲン法や、熱ウレタン開裂のようなホスゲンを用いない方法によって得られ、分子量の範囲が140〜400g/molであり、脂肪族的、脂環式的、脂肪族芳香族的および/または芳香族的に結合されたイソシアネート基を含むあらゆる所望のジイソシアネート、例えば、1,4-ジイソシアナトブタン、1,6-ジイソシアナトへキサン(HDI)、2-メチル-1,5-ジイソシアナトペンタン、1,5-ジイソシアナト-2,2-ジメチルペンタン、2,2,4-および2,4,4-トリメチル-1,6-ジイソシアナトへキサン、1,10-ジイソシアナトデカン、1,3-および1,4-ジイソシアナトシクロへキサン、1,3-および1,4-ビス(イソシアナトメチル)シクロへキサン、1-イソシアナト-3,3,5-トリメチル-5-イソシアナトメチルシクロへキサン(イソホロンジイソシアネート、IPDI)、4,4'-ジイソシアナトジシクロへキシルメタン、1-イソシアナト-1-メチル-4(3)-イソシアナトメチルシクロへキサン、ビス(イソシアナトメチル)ノルボルナン、1,3-および1,4-ビス(1-イソシアナト-1-メチルエチル)ベンゼン(TMXDI)、2,4-および2,6-ジイソシアナトトルエン(TDI)、2,4'-および4,4'-ジイソシアナトジフェニルメタン(MDI)、1,5-ジイソシアナトナフタレンまたはこのようなジイソシアネートのあらゆる所望の混合物である。
【0025】
A)において、IPDI、MDI、TDI、HDIまたはそれらの混合物に基づく上記の種類のポリイソシアネートを使用するのが好ましい。
【0026】
式(I)において、基Xは、好ましくはアルコキシ基またはヒドロキシル基であり、メトキシ、エトキシ、プロポキシまたはブトキシが特に好ましい。
【0027】
式(I)におけるYは、好ましくは直鎖状または分岐状のC1-C4アルキル基であり、好ましくはメチルまたはエチルである。
【0028】
式(I)におけるZは、好ましくは直鎖状または分岐状のC1-C4アルキレン基である。
【0029】
式(I)において、aは好ましくは1または2を表す。
【0030】
式(I)において、基Qは、好ましくはウレタン、尿素またはチオ尿素の形成を伴ってイソシアネートと反応する基である。このような基は、好ましくはOH、SHまたは第1級もしくは第2級アミノ基である。
【0031】
好ましいアミノ基は、式-NHR1のものであり、R1は水素、C1-C12アルキル基またはC6-C20アリール基または式R2OOC-CH2-CH(COOR3)-のアスパラギン酸エステル基であり、R2、R3は好ましくは、炭素数が1〜22、好ましくは1〜4の、分岐していてもよい同一または異なるアルキル基である。最も好ましくは、R2、R3はそれぞれメチルまたはエチル基である。
【0032】
この種のアルコキシシラン官能性アスパラギン酸エステルは、US 5364955に記載されているように、アミノ官能性アルコキシシランをマレイン酸エステルまたはフマル酸エステルに付加することによって、通常の方法で得ることができる。
【0033】
式(I)の化合物として、またはアルコキシシリル官能性アスパラギン酸エステルの調製に使用することのできる種類のアミノ官能性アルコキシシランの例として、2-アミノエチルジメチルメトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-アミノプロピルメチルジメトキシシランおよびアミノプロピルメチルジエトキシシランが挙げられる。
【0034】
B)における式(I)の第2級アミノ基を有するアミノアルコキシシランとしては、N-メチル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-メチル-3-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、ビス(γ-トリメトキシシリルプロピル)アミン、N-ブチル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-ブチル-3-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-エチル-3-アミノイソブチルトリメトキシシラン、N-エチル-3-アミノイソブチルトリエトキシシランまたはN-エチル-3-アミノイソブチルメチルジメトキシシラン、N-エチル-3-アミノイソブチルメチルジエトキシシランであってもよく、また、類似のC2-C4アルコキシシランであってもよい。
【0035】
アスパラギン酸エステルの調製に適したマレイン酸エステルまたはフマル酸エステルは、マレイン酸ジメチル、マレイン酸ジエチル、マレイン酸ジ-n-ブチルおよび対応するフマル酸エステルである。マレイン酸ジメチルおよびマレイン酸ジエチルが特に好ましい。
【0036】
アスパラギン酸エステルの調製に好ましいアミノシランは、3-アミノプロピルトリメトキシシランまたは3-アミノプロピルトリエトキシシランである。
【0037】
アミノアルキルアルコキシシランとのマレイン酸エステルおよび/またはフマル酸エステルの反応は、0〜100℃の温度範囲で起こり、その割合は一般に、出発化合物が1:1のモル比で使用されるように選択される。反応は、バルクで行われてもよいし、あるいは例えばジオキサンなどの溶媒の存在下に行われてもよい。しかし、溶媒の使用はあまり好ましくない。当然のことながら、さまざまな3-アミノアルキルアルコキシシランの混合物とフマル酸エステルおよび/またはマレイン酸エステルの混合物とを使用することも可能である。
【0038】
ポリイソシアネートを修飾するのに好ましいアルコキシシランは、上記の種類の第2級アミノシランであり、上記の種類のアスパラギン酸エステル、およびジ-および/またはモノアルコキシシランが特に好ましい。
【0039】
上記のアルコキシシランは、修飾のために、個々にまたは混合物として使用することができる。
【0040】
修飾において、修飾のためのイソシアネートの遊離NCO基の、式(I)のアルコキシシランのNCO反応性基Qに対する割合は、好ましくは1:0.01〜1:0.75、特に好ましくは1:0.05〜1:0.4である。
【0041】
原則的には、NCO基のより多くの部分を上記のアルコキシシランで修飾することももちろん可能であるが、架橋に利用できる遊離NCO基の数が依然として満足な架橋のために充分であることを確実にするように注意しなくてはならない。
【0042】
アミノシランとポリイソシアネートとの間の反応は、0〜100℃、好ましくは0〜50℃、特に好ましくは15〜40℃で行われる。適切な場合、冷却によって発熱反応を制御してもよい。
【0043】
シランでの修飾に続いて、こうして修飾されたポリイソシアネートの遊離NCO基をさらになお修飾することができる。これには、例えば、自体当業者に既知のブロック剤で遊離NCO基を部分的にまたは完全にブロックすることを含む(イソシアネート基のブロッキングについて、DE-A 10226927、EP-A 0 576 952、EP-A 0 566 953、EP-A 0 159 117、US-A 4 482 721、WO 97/12924またはEP-A 0 744 423参照)。例としては、ブタノンオキシム、e-カプロラクタム、メチルエチルケトオキシム、マロン酸エステル、第2級アミンが挙げられ、トリアゾールおよびピラゾール誘導体も挙げられる。
【0044】
ナノ粒子を組み込む前にNCO基をブロックすることには、それに基づくナノ粒子修飾ポリイソシアネートが、依然として遊離NCO基を保有している類似の生成物に比べて、その後に架橋に利用できるNCO基の量に関して安定性が高くなる傾向を示すという利点がある。
【0045】
本発明の方法においては、原則的には、自体当業者に既知のNCO不活性溶媒を、いつでも加えることができる。これらは例えば、酢酸ブチル、酢酸1-メトキシ-2-プロピル、酢酸エチル、トルエン、キシレン、ソルベントナフサなどのケトン非含有溶媒およびそれらの混合物である。
【0046】
ポリイソシアネートの修飾中またはその後に、所望により表面修飾されたナノ粒子が組み込まれる。これは、単に粒子を攪拌しながら加えることによって行うことができる。しかし、同様に考えられるのは、例えば超音波、ジェット分散またはローター/ステーター原理に基づいて作動する高速攪拌器によってもたらされる種類の高い分散エネルギーの使用である。単に機械的に攪拌することによって組み込むのが好ましい。
【0047】
粒子は、原則的には、粉末の形態で使用することも、適切な溶媒、好ましくはイソシアネートに不活性な溶媒中の懸濁液や分散液の形で使用することも可能である。有機溶媒中の分散液の形で粒子を使用することが好ましい。
【0048】
オルガノゾルに適した溶媒は、メタノール、エタノール、イソプロパノール、アセトン、2-ブタノン、メチルイソブチルケトンであり、また、ポリウレタン化学において一般的な溶媒、例えば酢酸ブチル、酢酸エチル、酢酸1-メトキシ-2-プロピル、トルエン、2-ブタノン、キシレン、1,4-ジオキサン、ジアセトンアルコール、N-メチルピロリドン、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、メチルエチルケトンまたはそのような溶媒のあらゆる所望の混合物である。
【0049】
これに関連して好ましい溶媒は、ポリウレタン化学において一般的な溶媒、例えば、酢酸ブチル、酢酸エチル、酢酸1-メトキシ-2-プロピル、トルエン、2-ブタノン、キシレン、1,4-ジオキサン、ジアセトンアルコール、N-メチルピロリドン、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、メチルエチルケトンまたはそのような溶媒のあらゆる所望の混合物である。
【0050】
特に好ましい溶媒は、アルコールおよびケトン非含有溶媒、例えば、酢酸ブチル、酢酸1-メトキシ-2-プロピル、酢酸エチル、トルエン、キシレン、ソルベントナフサおよびこれらの混合物である。
【0051】
引き続いて架橋に利用できるNCO基の量に関連して、ポリイソシアネートの修飾中に、粒子分散液のための溶媒として、およびプロセス溶媒として、ケトンやアルコールを避けることが有利であることがわかっている。何故なら、その場合、それから調製されたナノ粒子修飾ポリイソシアネートの貯蔵中にNCO基の比較的高度な分解が観察されるからである。
【0052】
さらなる工程でポリイソシアネートをブロックする場合には、ケトンやアルコールも溶媒として使用することができる。
【0053】
本発明の1つの好適な態様において、C)に使用される粒子は、元素周期表の第II主族から第IV主族の元素および/または第I遷移族から第VIII遷移族の元素(ランタニドを含む)の無機酸化物、混合酸化物、水酸化物、硫酸塩、炭酸塩、炭化物、ホウ化物および窒化物である。成分C)の特に好ましい粒子は、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化セリウム、酸化ジルコニウム、酸化ニオブおよび酸化チタンである。酸化ケイ素ナノ粒子が最も格別に好ましい。
【0054】
C)に使用される粒子は、分散液中で動的光散乱によって数平均値として測定した平均粒径が、好ましくは5〜100nmであり、特に好ましくは5〜50nmである。
【0055】
C)に使用される全粒子の好ましくは少なくとも75%、特に好ましくは少なくとも90%、格別に特に好ましくは少なくとも95%が、上記の大きさを有する。
【0056】
C)に使用される粒子を表面修飾する場合、粒子を、例えば修飾ポリイソシアネートへの組み込みの前に、シラン化反応させる。この方法は、文献において既知であり、例えばDE-A 19846660やWO 03/44099に記載されている。
【0057】
例えばWO 2006/008120またはFoerster, S & Antonietti, M., Advanced Materials, 10, No. 3, (1998) 195に記載のように、表面を修飾する際に、界面活性剤またはブロック共重合体によって表面を吸着的/結合的に修飾することも可能である。
【0058】
好ましい表面修飾は、アルコキシシランおよび/またはクロロシランでのシラン化である。
【0059】
C)に適した種類の市販の粒子分散液の例は、Organosilicasol(商標)(Nissan Chemical America Corporation、米国)、Nanobyk(登録商標)3650(BYK Chemie、ヴェーゼル、ドイツ)、Hanse XP21/1264またはHanse XP21/1184(Hanse Chemie、ハンブルク、ドイツ)、HIGHLINK(登録商標)NanOG(Clariant GmbH、シュルツバッハ、ドイツ)である。適切なオルガノゾルは、固形分が10wt%〜60wt%、好ましくは15wt%〜50wt%である。
【0060】
修飾ポリイソシアネートと粒子とで構成される系全体に対するC)に使われる粒子の量(固形分として計算)は、典型的には1wt%〜70wt%、好ましくは5wt%〜60wt%、特に好ましくは25wt%〜55wt%である。
【0061】
本発明によるナノ粒子含有PICの固形分は、20wt%〜100wt%であり、好ましくは40wt%〜90wt%、より好ましくは40wt%〜70wt%である。
【0062】
本発明はさらに、本発明に従って得られるナノ粒子修飾ポリイソシアネート、およびそれを含んだポリウレタン系を提供する。
【0063】
本発明のポリイソシアネートのNCO基がブロックされているか否かによって、この種のポリウレタン系は一成分PU系または二成分PU系として処方することができる。
【0064】
本発明のナノ粒子修飾ポリイソシアネートと同様に、本発明のポリウレタン系は、架橋のためのポリヒドロキシ化合物および/またはポリアミン化合物を含んでいる。さらに、本発明のポリイソシアネートとは異なったさらなるポリイソシアネートが存在してもよく、また助剤や添加剤が存在してもよい。
【0065】
好適なポリヒドロキシル化合物の例は、被覆技術において自体典型的な、三官能性および/または四官能性のアルコールおよび/またはポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオールおよび/またはポリアクリレートポリオールである。
【0066】
架橋のために、さらに、ウレタンまたは尿素基中に存在する活性水素原子に基づいてそれぞれポリイソシアネートと架橋できるポリウレタンまたはポリ尿素を使用することも可能である。
【0067】
同様に、そのアミノ基がブロックされていることのあるポリアミン、例えばポリケチミン、ポリアルジミンまたはオキサゾランの使用も可能である。
【0068】
ポリアクリレートポリオールおよびポリエステルポリオールが、本発明のポリイソシアネートを架橋するのに好ましく使用される。
【0069】
使用される助剤および添加剤は、酢酸ブチル、酢酸エチル、酢酸1-メトキシ-2-プロピル、トルエン、2-ブタノン、キシレン、1,4-ジオキサン、ジアセトンアルコール、N-メチルピロリドン、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシドなどの溶媒またはそのような溶媒のあらゆる所望の混合物であってよい。好ましい溶媒は、酢酸ブチル、酢酸エチルおよびジアセトンアルコールである。
【0070】
さらに、無機顔料または有機顔料のための助剤および添加剤として、光安定剤、塗料添加剤(例えば、分散剤、流れ調節剤、増粘剤、消泡剤およびその他の助剤)、接着剤、防かび剤、殺菌剤、安定剤または阻害剤および触媒を存在させることができる。
【0071】
本発明のポリウレタン系の基材への塗布は、被覆技術において典型的な塗布方法、例えば、噴霧、流し塗り、浸漬、スピンコーティングまたはナイフコーティングによって行われる。
【0072】
本発明のナノ粒子修飾ポリイソシアネート、およびそれに基づくポリウレタン系は、ポリウレタン接着剤、ポリウレタン塗料およびポリウレタン塗膜の製造に適している。
【実施例】
【0073】
別途記載しない限り、パーセントは重量パーセントであると理解されたい。
【0074】
ヒドロキシル価(OH価)は、DIN 53240-2に従って測定した。
【0075】
粘度は、Haake(ドイツ)製 RotoVisco 1 回転式粘度計を用いて、DIN EN ISO 3219に従って測定した。
【0076】
酸価は、DIN EN ISO 2114に従って測定した。
【0077】
色数(APHA)は、DIN EN 1557に従って測定した。
【0078】
NCO含有量は、DIN EN ISO 11909に従って測定した。
【0079】
Desmodur(登録商標)N3300:ヘキサメチレンジイソシアネート三量体;NCO含有量:21.8 +/- 0.3wt%、23℃での粘度:約3000mPa・s、Bayer MaterialScience AG(レーバークーゼン、DE)
【0080】
Desmodur(登録商標)Z4470BA:IPDIイソシアヌレート、酢酸ブチル中70%、23℃での粘度:600mPa・s、平均NCO含有量:11.9%、およびNCO官能価:3.2、Bayer MaterialScience AG(レーバークーゼン、DE)
【0081】
Desmodur(登録商標)IL 1351:TDIイソシアヌレート、酢酸ブチル中51wt%、NCO含有量:8wt%、当量:525;23℃での粘度:1600mPa・s、Bayer MaterialScience AG(レーバークーゼン、DE)
【0082】
Desmodur(登録商標)VPLS 2253:HDIに基づく3,5-ジメチルピラゾールでブロックされたポリイソシアネート(三量体);MPA/SN 100(8:17)中75%、23℃での粘度:約3600mPa・s、ブロックトNCOの含有量:10.5%、当量:400、Bayer MaterialScience AG(レーバークーゼン、DE)
【0083】
Desmodur(登録商標)PL 340:IPDIに基づく3,5-ジメチルピラゾールでブロックされたポリイソシアネート、BA/SN中60%、ブロックトNCOの含有量:7.3%、23℃での粘度: 600 mPa・s、当量:575、Bayer MaterialScience AG(レーバークーゼン、DE)
【0084】
Desmophen(登録商標)670BA:ヒドロキシル含有量3.5%のヒドロキシル含有ポリエステル、低い分岐度、粘度:2800mPa・s(23℃)、当量:485、Bayer MaterialScience AG(レーバークーゼン、DE)
【0085】
Organosilicasol(商標)MEK-ST:メチルエチルケトンに分散したコロイド状シリカ、粒径:10〜15nm、30wt%のSiO2、0.5wt%未満のH2O、5mPa・s未満の粘度、Nissan Chemical America Corporation(米国)
【0086】
Baysilone(登録商標)塗料添加剤OL17:流れ調節助剤、キシレン中10wt%、Borchers GmbH(ランゲンフェルト、DE)
BYK(登録商標)070:消泡剤、BYK-Chemie GmbH(ヴェーゼル、DE)
Tinuvin(登録商標)123:HALSアミン、Ciba Specialty Chemicals(バーゼル、CH)
Tinuvin(登録商標)384-2:紫外線吸収剤、Ciba Specialty Chemicals(バーゼル、CH)
Modaflow(登録商標):流れ調節助剤、キシレン中1wt%、Cytec Surface Specialties GmbH
【0087】
Solvent naphtha 100:芳香族含有溶媒混合物
【0088】
Dynasilan(登録商標)1505:3-アミノプロピルメチルジエトキシシラン、Degussa-Huels AG(DE)
【0089】
粒径の測定
粒径は、HPPS粒径分析装置(Malvern、ウースターシャー、UK)を用いた動的光散乱によって測定した。評価は、Dispersion Technology Software 4.10によって行った。多重散乱を防止するために、非常に希薄なナノ粒子の分散液を調製した。希薄ナノ粒子分散液の1滴(約0.1%〜10%)を、分散液と同じ溶媒を約2ml含んだキュベットに入れ、キュベットを振とうし、測定のために20〜25℃でHPPS分析装置の中に配置した。当業者には一般に知られているように、分散媒の関連するパラメーター、すなわち温度、粘度および屈折率を、事前にソフトウェアに入力した。有機溶媒の場合、使用されたキュベットはガラス製であった。得られた結果は、粒径に対する強度および/または体積のプロットであり、また、粒径についてのZ平均値であった。多分散指数が必ず0.5未満となるように注意した。
【0090】
実施例1
US-A 5 364 955の実施例5の教示に従って、等モル量の3-アミノプロピルトリメトキシシランをマレイン酸ジエチルと反応させて、N-(3-トリメトキシシリル-プロピル)アスパラギン酸ジエチルを調製した。
【0091】
実施例2
攪拌器、蒸留装置、モノマー混合物および開始剤用の貯蔵容器付きの、定量ポンプおよび自動温度制御装置を備えた5Lステンレス鋼製圧力反応装置に、3155gのトリメチロールプロパンおよび1345gのε-カプロラクトンおよび2.2gのジブチル錫ジラウレート(DBTL)を充填した。反応装置の内容物を160℃まで加熱し、160℃で6時間攪拌し、次いで20℃まで冷却したところ、以下の特性を有する透明淡色樹脂を得た:
固形分: 99.5wt%
23℃での粘度: 4100mPa・s
酸価: 0.5mgKOH/g
ヒドロキシル価: 881mgKOH/g
ヒドロキシル含有量:26.7wt%
ハーゼン色数: 44APHA
外観: 透明
【0092】
実施例3
攪拌器、蒸留装置、モノマー混合物および開始剤溶液用の貯蔵容器付きの、定量ポンプおよび自動温度制御装置を備えた15Lステンレス鋼製圧力反応装置に、3375gのSolventnaphtha(登録商標)100を充填し、この初期充填物を160℃まで加熱した。次いで、重合温度を実質的に一定(±2℃)に維持しながら、同時に開始するが供給は個別に、1457gのスチレン、2945gのヒドロキシエチルメタクリレート、4524gのアクリル酸ブチル、148gのアクリル酸および128gのNisso B1000(ポリブタジエン、日本曹達、日本)からなるモノマー混合物を3時間かけて計量しながら加え、383gのジ-tert-ブチルパーオキサイドおよび540gのSolventnaphtha(登録商標)100からなる開始剤溶液を3.5時間かけて計量しながら加えた。これに続いて、160℃で1時間攪拌した。次いで、このバッチを80℃まで冷却し、実施例2からのオリゴエステル399gを計量しながら加えた。続いて80℃で30分間攪拌した後、40℃まで冷却を行って、生成物をフィルター(Supra T5500、孔径25〜72μm、Seitz-Filter-Werke GmbH(バートクロイツナハ、DE))により濾過した。これにより、以下の特性を有する透明で淡色の樹脂溶液を得た:
固形分: 70.0wt%
23℃での粘度: 3793mPa・s
酸価: 9.7mgKOH/g
ヒドロキシル価: 112mgKOH/g
ヒドロキシル含有量:3.39wt%
ハーゼン色数: 10APHA
外観: 透明
【0093】
実施例4
攪拌器付きの5Lガラスフラスコに、2L/hで窒素を導入しながら、2557gの3-メチル-1,5-ペンタンジオールを90℃で20mbarで2時間、0.6gのイッテルビウム(III)アセチルアセトネートで脱水した。続いて、エステル交換を行うために還流冷却器を取り付け、2300gのジメチルカーボネートを90℃で加え、次いで混合物を還流させながら98℃で24時間加熱した。還流冷却器を取り外し、クライゼンブリッジと冷却器を取り付けた後、温度を150℃まで上昇させ、バッチを4時間加熱し、次いで温度を180℃まで上昇させ、バッチを再び4時間加熱した。130℃まで冷却した後、温度を20mbarで2L/hの窒素下、慎重に180℃まで上昇させ、少なくとも6時間の間、60℃の一定オーバーヘッド温度で真空蒸留を行った。75℃でOH価および粘度を測定した。特性値を得るために、適切な場合、ジメチルカーボネートまたはジオールを(110〜130℃で8時間加熱しながら)加えて補正を行った。反応バッチに空気を通して室温まで冷却することによって、以下の固有値を有する無色のオリゴカーボネートジオールを得た:
Mn=650g/mol;OH価=166mgKOH/g;OH含有量:5.03%;粘度:23℃で4150mPa・s。
【0094】
実施例5
標準的な攪拌器に85gの酢酸ブチル中の192.7gのDesmodur(登録商標)N3300を最初に60℃で導入した。次いで、温度を最高60℃に維持しながら、実施例1からのアルコキシシラン70.3gを慎重に滴下した。反応終了後(赤外分光法によるNCO含有量の一定性の試験)、混合物を室温まで冷却し、76.9gの1,3-ジメチルピラゾール(DMP)を慎重に加え、赤外分光計のNCOピークが消失するまで温度を50℃に維持した。
【0095】
無色で液状のブロックトポリイソシアネートが得られ、それは以下の固有値を有していた:固形分80wt%、23℃での粘度3440mPa・s。
【0096】
実施例6
標準的な攪拌器に682g(NCO1当量)のDesmodur(登録商標)Z4470BAおよび172.7gの酢酸ブチルを最初に0℃で導入した。次いで、激しく攪拌し窒素で封入しながら、172.7gの酢酸ブチル中の72.51g(0.2mol)の3-アミノプロピルメチルジエトキシシランを3時間にわたって滴下し、NCO含有量を試験した。得られた付加物のNCO含有量は5.74wt%、固形分は49.4wt%である。これを、デプス型フィルター(T5500、Pall Corporation)で濾過した。
【0097】
実施例7
実施例6の手順と同様に、1389.6g(1当量)の非修飾ポリイソシアネートDesmodur(登録商標)Z4470BAを、37.03(0.05mol)の3-アミノプロピルメチルジエトキシシランと反応させた。得られた生成物のNCO含有量は7.71wt%であり、固形分は49.8wt%であった。
【0098】
実施例8
実施例6の手順と同様に、820.9g(1当量)の非修飾ポリイソシアネートDesmodur(登録商標)Z4470BAを、実施例1のアミノシラン181.11(0.2mol)と反応させた。得られた生成物のNCO含有量は4.96wt%であり、固形分は49.8wt%であった。
【0099】
実施例9
実施例6の手順と同様に、885.84g(1当量)の非修飾ポリイソシアネートDesmodur(登録商標)N3300を、実施例1のアミノシラン364.16(0.2mol)と反応させた。得られた生成物のNCO含有量は6.00wt%であり、固形分は49.3wt%であった。
【0100】
実施例10
実施例6の手順と同様に、378.3g(1当量)の非修飾ポリイソシアネートDesmodur(登録商標)IL1351を、実施例1のアミノシラン57.1g(0.2mol)と反応させた。得られた生成物のNCO含有量は4.64wt%であり、固形分は50.0wt%であった。
【0101】
実施例11
実施例6からの生成物の387.3gを標準的な攪拌器に充填し、30分間にわたって712.69gのOrganosilicasol(商標)MEK-STと混合した。得られた修飾ポリイソシアネートは透明でNCO含有量は2.0wt%、固形分は38.4wt%であった。SiO2ナノ粒子の画分は、分散液中に19.4wt%である、固体中に50.6wt%であった。
【0102】
実施例12〜19
実施例11と同様に、以下に示す量の修飾ポリイソシアネートにOrganosilicasol(商標)MEK-STを加えた。得られたNCOおよび固形分を、同様に以下に列記する。実施例16および実施例17において、60℃で、120mbarのロータリーエバポレータによる濃縮によって固形分を調節した。
【0103】
【表1】

【0104】
実施例20
2Lフラスコに、500gのOrganosilicasol(商標)MEK-STおよび500gの酢酸ブチルを充填した。この分散液を、60℃で、120mbarのロータリーエバポレータにより濃縮し、残渣に再び500gの酢酸ブチルを補充した。この手順を分散液中のメチルエチルケトン画分が0.1wt%未満(GC-FIDにより測定)に減少するまで繰り返した。
【0105】
実施例8で用いたOrganosilicasol(商標)MEK-STに加えて、酢酸ブチルおよび得られた酢酸ブチル中の分散液も、4Aの分子篩上でそれぞれ乾燥させた。
【0106】
得られた酢酸ブチル中のシリカオルガノゾルの水分は、440ppmであった。固形分を30wt%に調節した。動的光散乱による数平均値は、23nmであった。
【0107】
実施例21
実施例11と同様に、実施例9からの修飾ポリイソシアネート35.2gを実施例20のオルガノシリカゾル80gと混合した。これにより、NCO含有量は2.39wt%、固形分は37.5wt%、固形分に基づくSiO2含有量は50wt%となった。
【0108】
実験11〜19および21のそれぞれにおいて、コロイド安定性で沈殿のない透明または半透明の分散液を得た。こうして修飾されたポリイソシアネートのDesmophen(登録商標)670BAでの架橋により、透明な表面コーティングを得た。
【0109】
実施例22〜24
比較の目的で、実施例11〜19と同様に、非修飾ポリイソシアネートをOrganosilicasol(商標)MEK-STと混合した。いずれの場合にも混濁の激しい混合物が得られ、そこから透明な表面コーティングを生成することはできなかった。
【0110】
【表2】

【0111】
実施例25
以下を含む塗料処方物
実施例3および4からのポリオール(重量比9:1) 52.1g
実施例6からのアミノシラン修飾ポリイソシアネート 76.7g
Baysilone(登録商標)塗料添加剤OL17 0.8g
BYK(登録商標)070 1.5g
Tinuvin(登録商標)123 0.8g
Tinuvin(登録商標)384-2 1.1g
溶媒混合物:酢酸1-メトキシプロプ-2-イル/Solvent naphtha(登録商標)100(重量比1:1) 66.8g
【0112】
最初にポリオール混合物を導入し、添加剤および光安定剤を量り入れ、成分を攪拌して充分に混合した。その後、ポリイソシアネートと溶媒混合物を加え、再び充分な攪拌を行った。加工前に、塗料を10分間脱気した。次いで、この塗料を、重力式カップ型ガン(3.0〜3.5barの圧縮空気、ノズル:1.4〜1.5mmφ、ノズル−基材距離:約20〜30cm)を用いて準備した基材に1.5クロスパス(cross-passes)で塗布した。15分間のフラッシュオフタイムの後、塗料を140℃で25分間焼成した。乾燥膜厚はいずれの場合にも約40μmであった。60℃で16時間にわたって状態調節/ねかせた後、塗膜試験を開始した。
【0113】
実施例26
以下を含む塗料処方物:
実施例3および4からのポリオール(重量比9:1)の混合物 32.9g
実施例11からのナノ粒子修飾ポリイソシアネート 141.7g
Baysilone(登録商標)塗料添加剤OL17 0.8g
BYK(登録商標)070 1.5g
Tinuvin(登録商標)123 0.8g
Tinuvin(登録商標)384-2 1.1g
溶媒混合物:1-メトキシプロプ-2-イル アセテート/Solventnaphtha(登録商標)100(重量比1:1) 21.1g
【0114】
実施例25に従って塗料の調製および加工を行った。
【0115】
実施例27
以下を含む塗料処方物:
実施例3および4からのポリオール(重量比9:1)の混合物 78.1g
Desmodur Z4470BA 57.8g
Baysilone(登録商標)塗料添加剤OL17 1.0g
Modaflow(登録商標) 1.0g
Tinuvin(登録商標)123 1.9g
Tinuvin(登録商標)384-2 2.9g
溶媒混合物:1-メトキシプロプ-2-イル アセテート/Solventnaphtha(登録商標)100(重量比1:1) 57.3g
【0116】
実施例25に従って塗料の調製および加工を行った。
【0117】
【表3】

1)評点 0(良好)から5(不良)
【0118】
ケーニッヒ振り子減衰は、DIN EN ISO 1522「振り子減衰試験」に従う。
耐薬品性は、DIN EN ISO 2812-5「塗料−液体への耐性の測定−第5部:勾配炉を用いた方法」に従う。
実験用洗車機引掻耐性(湿潤損傷)は、DIN EN ISO 20566「塗料−実験用洗車機を用いた塗膜系の引掻耐性の試験」に従う。
【0119】
耐溶媒性の測定
この試験は、硬化した被膜のさまざまな溶媒に対する耐性を確認するために採用した。この目的のために、溶媒は規定の時間の間、塗料の表面に作用するように放置される。続いて、視覚的に、および手で触れることによって、試験部位に変化が生じたか否か、また生じた場合はどのような変化が生じたかの評定を行う。一般に、被膜はガラス板上に形成されるが、それ以外の基材も可能である。溶媒のキシレン、酢酸1-メトキシプロプ-2-イル、酢酸エチルおよびアセトン(下記参照)を含んだ試験管台を、綿栓をした試験管の開口部が膜上に位置するように、塗料の表面に配置する。重要な要素は、結果的に溶媒によって塗料の表面が湿ることである。溶媒の所定の暴露時間である1分間および5分間の後、試験管台を塗料の表面から引き離す。溶媒の残渣を、吸収紙または吸収布を用いて、その直後に取り除く。次いで、指の爪で慎重に引っかいた後すぐに、試験部位の変化を点検する。以下の等級の区別を行う。
0=変化なし
1=僅かに変化 例えば、目視できる変化のみ
2=少し変化 例えば、指の爪で感知できる軟化が確認できる
3=大きく変化 例えば、指の爪で重大な軟化が確認できる
4=きわめて大きく変化 例えば、指の爪で基材まで届く
5=破壊 例えば、塗料の表面が外部への暴露なしに破壊する
【0120】
上に示した溶媒について確認された評価等級は、以下の順番で記録される。
実施例 0 0 0 0 (変化なし)
実施例 0 0 0 1 (アセトンの場合にのみ目視できる変化)
【0121】
ここで、数字の順は試験された溶媒(キシレン、酢酸メトキシプロピル、酢酸エチル、アセトン)の順を表す。
【0122】
ハンマー試験による引掻耐性の測定(乾式損傷)
損傷は、平面にスチールウールまたは研磨紙を取り付けたハンマー(重さ:柄を除いて800g)を用いて行う。ハンマーを塗布面上に直角にして慎重に配置し、傾けたりさらに物理的な力を加えたりすることなく、塗膜上を軌道に沿って導く。10回の往復ストロークを行う。損傷媒体への暴露後、試験部位を柔らかい布で拭き、次いで損傷の方向を横切るようにDIN EN ISO 2813に従って光沢を測定する。均一な部位のみを測定する。
【0123】
実施例に関する注記
本発明に従って修飾された実施例5〜10のポリイソシアネートは、Organosilicasol(商標)MEK-STとの混合後、実施例11〜19および21において、コロイド安定性で液状の沈殿のない透明または半透明の分散液を与え、そこから、例えばDesmophen(登録商標)670BAを用いて透明フィルムを作製することが可能であった。これに対して、本発明による修飾を行わなかった実施例22〜24のポリイソシアネートは、Organosilicasol(商標)MEK-STの添加後に激しく混濁する。
【0124】
実施例23および24では、完全ブロックトポリイソシアネートDesmodur(登録商標)VPLS2253およびDesmodur(登録商標)PL340がOrganosilicasol(商標)MEK-STと混合した。直後に、ポリイソシアネート−シリカ分散液は混濁した。実施例18は、HDIイソシアヌレートに基づいており、これは、本発明および実施例5によると、アミノシランと反応したNCO基を0.2当量有しており、残りの基は1,3-ジメチルピラゾールでブロックされている。本発明のこのポリイソシアネートは、対照的に、Organosilicasol(商標)MEK-STとの混合後に全く混濁を示さなかった。
【0125】
実施例25では、IPDIイソシアヌレートDesmodur(登録商標)Z4470BAをOrganosilicasol(商標)MEK-STと混合したが、混濁が生じた。対照的に、本発明に従って、Desmodur(登録商標)Z4470BAを実施例1からのアルコキシシランと、または3-アミノプロピルメチルジエトキシシランと0.05または0.2当量で反応させると、残渣のブロックを行わなくても、オルガノゾル(実施例12〜16)との混合後に透明な分散液が生成した。
【0126】
表3に、塗膜の技術試験を記載する。実施例25では、実施例6からのアルコキシシランで修飾されたポリイソシアネートを硬化成分として用い、実施例26では、11からの対応する本発明のオルガノシリカゾル修飾アルコキシシランポリイソシアネートを用い、実施例27では、同様に実施例25および26の基礎となるDesmodur(登録商標)Z4470BAを用いた。実施例26の本発明のナノ粒子修飾硬化剤は、得られた膜の特性のプロフィールを改善した。振り子減衰、酢酸エチルおよびアセトンへの耐溶媒性、木の樹脂への耐薬品性、およびFAMガソリン耐性(特級ガソリン、Fachausschuss Mineraloele [FAM; German Mineral Oils Technical Committee]による)は、ナノ粒子を含まない対照よりも良好であった。湿潤損傷に関しては、本発明の実施例26で少しの改善が明らかにみられた。ここで著しく良好だったのは、乾式損傷についての値であった(リフロー前後の高い相対残存光沢、低い光沢損失)。塗料混合物の保存安定性も同様に改善した(増粘なし)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ナノ粒子修飾ポリイソシアネートの製造方法であって、
1) A)ポリイソシアネートを式(I)のB)アルコキシシランと反応させる工程:
Q-Z-SiXaY3-a (I)
(式中、
Qはイソシアネート反応性基であり、
Xは加水分解性基であり、
Yは同一または異なるアルキル基であり、
ZはC1-C12アルキレン基であり、
aは1〜3の整数である)
および、それに続く
2) 分散によってC)無機粒子(表面修飾されていてもよく、分散液中での動的光散乱によって測定した平均粒径が200nm未満である)を組み込む工程
を含んでなる製造方法。
【請求項2】
A)において、IPDI、MDI、TDI、HDIまたはそれらの混合物に基づくポリイソシアネートを使用する請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
式(I)において、基Qはウレタン、尿素またはチオ尿素の形成を伴ってイソシアネートと反応する基であり、Xはメトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基またはブトキシ基であり、Yはメチル基またはエチル基であり、Zは直鎖状または分岐状のC1-C4アルキレン基であり、aは1または2である請求項1に記載の製造方法。
【請求項4】
式(I)のアルコキシシランが、第2級アミノ基を含むアスパラギン酸エステル若しくはジ-および/またはモノアルコキシシランである請求項1に記載の製造方法。
【請求項5】
修飾のための成分A)のポリイソシアネートの遊離NCO基の、式(I)のアルコキシシランのNCO反応性基Qに対する比が、1:0.01から1:0.75である請求項1に記載の製造方法。
【請求項6】
B)との反応後に、残留している遊離NCO基をブロック剤でブロックする請求項1に記載の製造方法。
【請求項7】
C)において、周期表の第II〜IV主族の元素および/または第I〜VIII遷移族の元素(ランタニドを含む)の無機酸化物、水酸化物、硫酸塩、炭酸塩、混合酸化物、炭化物、ホウ化物および窒化物を使用する請求項1に記載の製造方法。
【請求項8】
前記粒子の平均粒径が5〜50nmである請求項1に記載の製造方法。
【請求項9】
C)に使用される全粒子の少なくとも90%が規定の大きさを有する請求項1に記載の製造方法。
【請求項10】
前記粒子がアルコキシシランおよび/またはクロロシランでのシラン化によって表面修飾されている請求項1に記載の方法。
【請求項11】
請求項1に記載の製造方法によって得られるナノ粒子修飾ポリイソシアネート。
【請求項12】
請求項11に記載のナノ粒子修飾ポリイソシアネートを用いて得られるポリウレタン組成物。
【請求項13】
前記組成物がポリウレタン接着剤、ポリウレタン塗料またはポリウレタン塗膜である請求項12に記載のポリウレタン組成物。

【公開番号】特開2008−174722(P2008−174722A)
【公開日】平成20年7月31日(2008.7.31)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2007−296731(P2007−296731)
【出願日】平成19年11月15日(2007.11.15)
【出願人】(504037346)バイエル・マテリアルサイエンス・アクチェンゲゼルシャフト (728)
【氏名又は名称原語表記】Bayer MaterialScience AG
【Fターム(参考)】