説明

ナノ粒子増感ナノ構造太陽電池

本発明は、概して光起電装置若しくは太陽電池の分野に関する。より詳細には、本発明は、異なるサイズ及び組成のナノ粒子を含む光活性ナノ粒子に接続された金属酸化物ナノ構造体を用いて作製された光起電装置に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して光起電装置若しくは太陽電池の分野に関する。より詳細には、本発明は、異なるサイズを有し異なる組成からなるナノ粒子が含まれる光活性ナノ粒子に接続されたナノ構造体を用いて作製された光起電装置に関する。
【背景技術】
【0002】
原油の価格が上昇することにより、費用効率が高い再生可能なエネルギーを開発することの重要性が高まってきている。世界中で、太陽エネルギーを捕捉する費用効果の高い太陽電池を開発することに大きな努力が払われている。現在の太陽エネルギー技術は、結晶性シリコン及び薄膜技術として広く分類される。太陽電池の90%以上がシリコン、具体的には単結晶シリコン、多結晶シリコン若しくはアモルファスシリコンからなる。
【0003】
歴史的には、結晶性シリコン(c-Si)は、光の吸収体としては比較的不十分で、かなりの薄さ(数百μm)のマテリアルが必要となるにもかかわらず、多くの太陽電池において光吸収半導体として使用されてきた。結晶性シリコンは良好な効率(12〜20%、理論的な最大値の1/2〜2/3)を有する安定な太陽電池を生み出すことができ、そして、マイクロエレクトロニック産業の知識ベースから開発されたプロセス技術を用いるため、都合がいい。
【0004】
当該産業において、2つのタイプの結晶性シリコンが用いられている。一つは、高純度の単結晶ボール(boule)からウェハを(およそ150mmの直径、350μmの薄さで)スライスすることにより作製される単結晶であり、もう一つは、シリコンの鋳造ブロックを最初棒状に切断しその後ウェハ状に切断することにより形成される多結晶シリコンである。結晶性シリコン太陽電池の製造における主なトレンドは、多結晶技術に向かっている。
【0005】
単結晶及び多結晶Siともに、半導体p-n接合は、ボロンドープされた(p型の)Siウェハ上にリン(n型ドーパント)を拡散させることにより形成される。スクリーン印刷電極は太陽電池の前部と後部に取り付けられ、フロントコンタクトパターンは、Siマテリアルの光照射が最大となるよう設計され、太陽電池における電気的な(抵抗の)ロスを最小とする。
【0006】
シリコン太陽電池は非常に高価である。製造方法は、成熟しており、コストを大きく削減することはできない。図1に示すように、シリコンは太陽スペクトルの可視領域において主に吸収を示し、それらの変換効率が制限されるため、シリコンは太陽電池において使用することが理想的な材料ではない。
【0007】
第2世代の太陽電池技術は、薄膜フィルムに基づくものである。2つの主な薄膜フィルム技術としては、アモルファスシリコンやCIGSがある。
【0008】
アモルファスシリコンは、1980年代において「単に」薄膜フィルムPVマテリアルとしか見られていなかった。1980年代後半から1990年代初頭においては、その低い効率及び不安定性のため、多くの研究者により見放された。しかしながら、アモルファスシリコン技術は、これらの問題(すなわちマルチジャンクション構造)に対して非常に洗練された解決策を開発する方向に上手く進展している。現在、市販のマルチジャンクションa-Siモジュールは、7%〜9%の効率範囲にある。ユナイテッドソーラーシステム社及びカネカは、25MWの製造装置を作製し、またいくつかの会社が日本やドイツにおいて製造プラントを建設する計画を発表している。BPソーラー及びユナイテッドソーラーシステム社は、近い将来10MWの装置を作製することを計画している。
【0009】
a-Si技術に対する主要な障害は、低効率(約11%で安定)、光励起効率の低下(マルチジャンクション等のより複雑なセルデザインが必要となる)、およびプロセスコスト(製造方法は、真空ベースでありかなり遅い)である。これらの問題の全ては、コスト効率の高いa-Siモジュールを作製するという可能性とって重大である。
【0010】
銅インジウムガリウムジセレナイド(CIGS)吸収体からなる薄膜フィルム太陽電池は、10〜12%という高い変換効率を達成するということが期待されている。CIGS太陽電池の記録的に高い変換効率(19.2%NREL)は、カドミウムテルライド(CdTe)若しくはアモルファスシリコン(a-Si)等の他の薄膜フィルム技術により達成されたものと比較して断然高い。
【0011】
これらの新記録のスモールエリアデバイスは、資本集約的で極めて高価な真空蒸着技術を用いて製造される。大きな領域の基板上に均一な組成のCIGSフィルムを形成することは非常に興味深い。これらの制限により、歩留まりにおいて影響を受け、歩留まりは一般的に極めて低くなる。これらの制限のため、蒸着技術の遂行は、薄膜フィルム太陽電池及びモジュールのラージスケールで低コストな市販品に関しては成功しておらず、今日の結晶性シリコン太陽電池モジュールに対して競争力がない。
【0012】
高価な真空装置を使用する物理的気相成長技術の制限を克服するため、いくつかの会社が、CIGS太陽電池の製造のための高い歩留まりの真空プロセス(具体的にはデイスター、グローバルソーラー)及び非真空プロセス(具体的にはISET、ナノソーラー)を開発している。インク技術を用いることにより、非常に高い活性の材料を比較的低い資本設備コストで使用することができる。複合の効果としては、薄膜フィルム太陽電池の製造プロセスが低コストとなるということである。CIGSは、柔軟な基板上に形成することができ、太陽電池の重量を減少させることができる。CIGS太陽電池のコストは、より低い効率においてさえも競争力の高い結晶性シリコンより低いことが期待される。CIGS太陽電池の2つの主な問題は、(1)より高い効率に対してはっきりとした経路が無いこと、及び(2)プロセス温度が高いことにより、プロセスを始動させるためにハイスピードロールを使用することが困難で、そのため十分に低いコストの構造を達成することができないことである。
【0013】
これらは、現在利用可能な技術についてかなりの問題である。今日90%以上のマーケットを占めている結晶性シリコン太陽電池は、非常に高価である。c-シリコン太陽電池による太陽エネルギーは、化石燃料の、kwh当たり10セント未満と比べて高く、kwh当たり約25セントかかる。さらに、太陽パネルを導入する際の資本コストは、極めて高く、その普及率を制限している。結晶性の太陽電池技術は成熟しており、近い将来において性能若しくはコスト競争力が改善されない可能性がある。アモルファスシリコンの薄膜技術は、低コストの太陽電池へと導くことができる大量生産に適している。さらに、アモルファスシリコン及びマイクロ結晶性シリコン太陽電池は、可視領域においてしか吸収を示さない。
【0014】
次世代の太陽電池は、重さが軽く費用が低いとともに高い効率が実際に達成されることが必要とされる。可能性として考えられる2つの候補は、(1)ポリマー性太陽電池と(2)ナノ粒子太陽電池が挙げられる。ポリマー性太陽電池は、中程度の温度(<150度)におけるロールプロセスを促進するため、ポリマー太陽電池は非常に低コストにすることができる。しかしながら、ポリマーは2つの主な欠点、すなわち(1)電荷輸送が遅いため効率が低いこと、(2)特にUVに対して安定性が低いこと、に悩まされる。その上、ポリマー性太陽電池は、次世代の太陽電池となるため、必要とされるパフォーマンスを達成することができない。次世代の太陽電池の最も有望な技術は、量子ドットナノ粒子に基づくものである。
【0015】
いくつかの研究グループは、量子ドットに基づいた太陽電池について実験を行ってきた。最も共通して使用される量子ドットは、II-VI、II-IV、及びIII-V族等の化合物半導体からなるものである。これらの感光性量子ドットの具体例は、CdSe、CdTe、PbSe、PbS、ZnSeである。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
当該技術分野に記載された感光性ナノ粒子からなる太陽電池は、非常に低い効率を示す(<5%)。ナノ粒子は、太陽光に曝されるときに電子ホール電荷対を発生させる点で非常に効率的である。これらの低い効率の主な理由は、電荷再結合にある。太陽電池において高い効率を達成するためには、電荷が発生するとすぐにこれらを分離することである。再結合される電荷は光電流を全く発生せず、太陽電池効率に貢献しない。ナノ粒子における電荷再結合は、主に2つの理由、すなわち、(1)電荷再結合を容易にするナノ粒子の表面状態、及び(2)電荷移送が遅いことによる。一般的に電荷再結合は電荷輸送速度に比して速い。これは、電荷は電子伝導層及びホール伝導層をゆっくり移動するからである。
【0017】
ナノ粒子についてのこれらの問題を解決するために当該先行技術において様々な方法が報告されている。表面状態を排除するため、表面処理技術が試みられている(Furisら、MRS議事録、ボリューム784、2004参照)。そのような技術は、フォトルミネセンスにおいて改善が見られるが、太陽エネルギー変換効率は改善されなかった。これは、それらはホール伝導層及び電子伝導層の電荷輸送特性に影響を与えないからである。
【0018】
当該技術分野において、急速に電子を輸送するため、TiO層を用いることができることが知られている。色素増感太陽電池はまさにこのためTiOを用いる。透明性のTiOナノチューブが文献に報告されている(Morら、アドバンスファンクションマテリアル、2005、15、1291−1296(2005))。これらのTiOナノチューブは、色素増感太陽電池を作製するために用いられている。
【課題を解決するための手段】
【0019】
光起電装置は、少なくとも一方が太陽光に対して透明な第1及び第2の電極を備える。上記第1電極に、電子伝導性ナノ構造体を含む第1層が電気的に接続される。感光性ナノ粒子を含む光活性層は、上記電子伝導性ナノ構造体に近接して配置される。ホール伝導層は、上記光活性層及び上記第2電極に接続される。上記ホール伝導層と上記第1電極との間にブロッキング層が含まれていても良い。
【0020】
上記電子伝導性ナノ構造体は、ナノチューブ、ナノロッド、若しくはナノワイヤーである。好ましいナノチューブは、TiOから構成される。好ましいナノワイヤーは、ZnOから構成される。
【0021】
感光性ナノ粒子は、量子ドット、ナノロッド、ナノバイポッド、ナノトリポッド、ナノマルチポッド、若しくはナノワイヤーであってもよい。あるケースでは、上記感光性ナノ粒子は、上記ナノ構造体に共有結合される。好ましい感光性ナノ粒子には、CdSe、ZnSe、PbSe、InP、PbS、ZnS、Si、Ge、SiGe、CdTe、CdHgTe又はII-VI、II-IV、若しくはIII-V材料が含まれる。ある実施の形態では、太陽スペクトルの異なる部分からの光を吸収する第1及び第2ナノ粒子を光起電装置に用いる。上記第1及び第2ナノ粒子は、組成、サイズ、若しくはサイズ及び組成の組み合わせにおいて異なる。
【0022】
他の実施の形態では、第1層のナノ粒子と比較して太陽スペクトルの異なる部分からの光を吸収するナノ粒子を含む第2の光活性層を用いる。上記第1及び第2光活性層におけるナノ粒子は、組成、サイズ若しくはサイズ及び組成の組み合わせにおいて異なる。
【0023】
ある実施の形態では、上記ホール伝導層は、p型半導体ポリマー等のホール伝導ポリマーである。p型半導体ポリマーの具体例には、P3HT、P3OT、MEH-PPV、若しくはPEDOTが含まれる。他の実施の形態では、上記ホール伝導層はp型半導体である。p型半導体には、pドープSi、pドープGe若しくはpドープSiGeが含まれる。Siの場合、p型半導体は、pドープアモルファスシリコン、pドープマイクロ結晶シリコン、若しくはp型ナノ結晶性シリコンである。ある形態では、上記ホール伝導層は、2以上のp型半導体層からなる。上記p型半導体層は、pドープシリコン層、pドープゲルマニウム層、及び/又はpドープSiGe層である。
【0024】
光起電装置は、電子伝導性ナノ構造体含有第1層が第1電極と電気的に接続されるように上記第1電極上に第1層を形成することにより作製することができる。その後、感光性ナノ粒子含有光活性層を電子伝導性ナノ構造体層上に形成する。その後上記光活性層上にホール伝導層を形成する。その後、上記ホール伝導層上に第2電極を形成する。第1及び第2電極の少なくとも1つは、太陽光に対して透明である。上記ナノ構造体層若しくはホール伝導層が形成される前に、ブロッキング層を形成しても良い。光活性層に異なるナノ粒子をランダムに分散させるために、異なるナノ粒子を用いて上記光活性層を作製いても良い。他の実施の形態では、光活性層は、異なるナノ粒子からなる少なくとも2つの層からなる。このケースでは、上記ナノ構造体上に第1ナノ粒子層を形成し、上記第1ナノ粒子の層上に第2ナノ粒子層を形成することが含まれる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
ここに開示される光起電装置のある実施の形態は、2つの電極、電子伝導性ナノ構造体を含む第1層、上記電子伝導性ナノ構造体に近接する、感光性ナノ粒子を含む光活性層、上記光活性層に接続されるホール伝導層からなる。上記第1層は、上記第1電極に電気的に接続される。上記ホール伝導層は、上記光活性層及び上記第2電極に接続される。第1及び第2電極の少なくとも一方が太陽光に対して透明である。
【0026】
ここで使用するように、「ナノ構造体」若しくは「電子伝導性ナノ構造体」なる用語は、ナノチューブ、ナノロッド、若しくはナノワイヤーを意味する。電子伝導ナノ構造体は、実際は結晶性である。当該ナノ構造体は、概してバンドギャップが例えば3.2eV(TiO)であるワイドバンドギャップ半導体材料からなる。当該ナノ構造体は、それらのバンドギャップが、太陽電池において使用される光活性ナノ粒子の最も高いバンドギャップより高くなるよう(具体的には>2.0eV)選択する。
【0027】
電子伝導性ナノ構造体は、例えば酸化チタン、酸化亜鉛、酸化錫、酸化インジウム錫(ITO)及び酸化インジウム亜鉛から構成されていても良い。ナノ構造体は、またカーボンナノチューブ等の他の伝導性マテリアルから構成されていても良い。ナノ構造体は、薄い導電性金属若しくは金属酸化物(例えばフッ素ドープ酸化錫)フィルムにより被覆された金属薄膜、ガラス基板、若しくはプラスティック上に直接成長させることができる。TiOナノ構造体については、具体的には、Morらの”色素増感型太陽電池における高いオーダーのTiOナノチューブアレイの使用”(ナノレター、Vol.6,No.2,pp 215-218(2005))、Morらのナノレター、Vol.5,No.1,pp 191-195(2005)、Bargheseらのジャーナルオブナノサイエンスアンドナノテクノロジー、No.1,Vol.5,pp 1158-1165(2005)、Pauloseらのナノテクノロジー、17,pp 1-3(2006)参照のこと。ZnOナノワイヤーについては、BaxterとAydelらの太陽エネルギー材料及び太陽電池,90,607-622(2006)、GreeneらのAngew.Chem.Int.Ed.42,3031-3034(2003)、Lawらのネイチャーマテリアル4, 455-459(2005)参照のこと。
【0028】
電子伝導性ナノ構造体は、当該技術分野において知られた方法により調製することができる。例えばTiOナノチューブは、チタン金属フィルム若しくはフッ素ドープ酸化錫上に積層されたチタン金属フィルムを陽極酸化することにより作製される。伝導性ナノ構造体は、基板上に載置されたシード粒子により促進されるコロイド成長を用いることにより調製することができる。伝導性ナノ構造体は、化学気相成長(CVD)、有機金属化学気相成長(MOCVD)等の真空成長プロセス、分子ビームエピタキシー(MEB)等のエピタキシャル成長法等により形成することができる。
【0029】
ナノチューブのケースでは、当該ナノチューブの外径は、約20ナノメートルから100ナノメートル、あるケースでは20ナノメートルから50ナノメートル、別のケースでは50ナノメートルから100ナノメートルの範囲で変動する。ナノチューブの内径は、約10〜80ナノメートル、あるケースでは、20〜80ナノメートル、別のケースでは、60〜80ナノメートルである。ナノチューブの壁の厚さは、10〜25ナノメートル、15〜25ナノメートル、若しくは20〜25ナノメートルであってもよい。あるケースでは、ナノチューブの長さは、100〜800ナノメートル、400〜800ナノメートル、若しくは200〜400ナノメートルである。
【0030】
ナノワイヤーの場合、その直径は約100ナノメートルから約200ナノメートルであり、50〜100μmであってもよい。ナノロッドが、約2〜200ナノメートルの直径を有してもよいが、通常直径は5〜100若しくは20〜50ナノメートルである。それらの長さは、20〜100ナノメートルであっても良いが、通常直径は50〜500ナノメートル若しくは20〜50ナノメートルである。
【0031】
ここで使用するように、「ナノ構造体」若しくは「感光性ナノ構造体」なる用語は、太陽光に曝されたとき電子ホール対を発生させる感光性材料を意味する。感光性ナノ粒子は、一般的に量子ドット、ナノロッド、ナノバイポッド、ナノトリポッド、ナノマルチポッド若しくはナノワイヤー等のナノ結晶である。
【0032】
感光性ナノ粒子は、II-VI、II-IV、及びIII-V材料を含む化合物半導体から構成されていても良い。感光性ナノ粒子の具体例には、CdSe、ZnSe、PbSe、InP、PbS、ZnS、CdTe、Si、Ge、SiGe、CdTe、CdHgTe又はII-VI、II-IV、若しくはIII-V材料が含まれる。感光性ナノ粒子は、コアタイプであってもよいし、若しくはコア-シェルタイプであってもよい。コアシェルナノ粒子においては、上記コア及びシェルは、異なる材料から構成される。コア及びシェルの両方が、化合物半導体から構成されていても良い。
【0033】
量子ドットは、好ましいナノ粒子である。当該技術分野において知られているように、同じ組成を有するが異なる直径を有する量子ドットは、異なる波長において光を吸収及び放出する。図1は、同じ組成からなるが異なる直径を有する3つの量子ドットを示す。小さい量子ドットは、スペクトルの青色領域において吸収及び放出を示し、一方大きい量子ドットは、可視領域の緑色及び赤色領域において吸収及び放出を示す。別の態様では、図2に示すように、量子ドットは、同じサイズであるが異なる材料から構成される。例えば、UV吸収量子ドットは、亜鉛セレナイドから構成されていても良く、一方可視及びIR量子ドットは、カドミウムセレナイド又は鉛セレナイドから構成されていても良い。異なるサイズ及び/又は組成を有するナノ粒子をランダムに若しくは整列させて用いて、(1)UV及び可視、(2)可視及びIR若しくは(3)UV、可視及びIRにおいて吸収を示すブロードバンド太陽電池を作製する。
【0034】
光活性ナノ粒子は、リンカーX-R-Yと反応させて修飾することができる。ここで、X、Yは、カルボン酸基、ホスホン酸基、スルホン酸基、アミン含有基等の反応部位であり、a及びbは、独立的に0又は1であり、a及びbの少なくとも1つが1であり、Rは例えば-CH、-NH-、若しくは-O-等の炭素、窒素、若しくは酸素含有の官能基であり、nは0〜10、若しくは0〜5である。ある反応部位は、上記ナノ粒子と反応し、別の部位は、ナノ構造体と反応する。例えば、ナノ粒子の2つの層をナノ構造体上に配置する場合、ベース等のナノ粒子は、金属酸化物ナノ構造と結合する酸性官能基を有するリンカーが含まれる。第2層のナノ粒子は、アミン基若しくはハイドロイル基等のベーシックユニットを含み、上記第1ナノ粒子リンカーの酸性官能基とアミン若しくはエステル結合を形成する。当該リンカーは、ナノ粒子を不動態化し、安定性、光吸収、及びフォトルミネセンスを増加させる。それらは、共通の有機溶媒におけるナノ粒子の溶解若しくは懸濁を改善する。
【0035】
機能化されたナノ粒子は、ナノ構造体上において、水酸基等の適切な反応性官能基と反応し、分子セルフアセンブリプロセスにより、濃縮され連続的なナノ粒子の単一層が積層される。電荷結合を容易にすることができる表面状態の影響を最小にするため、X-R-Yの組成を調整することにより、(1)ナノ構造体とナノ粒子との間、若しくは(2)ナノ粒子と他のナノ粒子等との間における距離を調整することができる。これらの表面間の距離は、典型的には10オングストローム未満、好ましくは5オングストローム未満である。この距離は、電子若しくはホールが電極から電子ホール結合層に当該ギャップを通過することができるように維持される。電子が容易に移動することにより、電荷再結合の減少に寄与し、結果的に効果的な電荷分離を行い、これにより太陽エネルギー変換を効率的にすることができる。
【0036】
ここで使用されているように、用語「ホール伝導層」は、ホールを伝導することができる電解質である。ホール伝導層は、(1)p型アモルファス若しくはマイクロ結晶シリコン若しくはゲルマニウム等のpドープ半導体材料を含む無機分子、(2)金属サロシアニン、アリルアミン等の有機分子及び(3)ポリエチレンチオキシチオフェン(PEDOT)、P3HT、P3OT、及びMEH-PPV等の導電性ポリマーであっても良い。
【0037】
上述のナノ構造体、ナノ粒子、ホール伝導層、第1及び第2の電極(少なくとも1つは太陽光に対して透明である)を組み込んだ太陽電池を図6に示す。この太陽電池は、図5A〜5Fにおいて説明したように、実施例1のプロトコルにしたがって作製される。
【0038】
電子伝導ナノ構造体を含む第1層は連続層でないことが好ましいことは理解されよう。というより、あるケースでは、当該層は離間されたナノ構造体から構成される。ナノ構造体間に感光性ナノ粒子を導入してもよい。この実施の形態では、ナノ構造体間の距離は、ナノ粒子のサイズ、ナノ構造体に適用されるナノ粒子層の数を考慮に入れる。
【0039】
上記ナノ構造体にナノ粒子を析出させる場合、光活性層は均一である必要はない。これは、三次元構造のナノ構造体層のすべて若しくは一部と一致し、連続的であっても非連続的であってもよいからである。
【0040】
同様に、ホール伝導層は、下部の太陽電池層の形状、並びに電気的に接続される電極の表面と適合する構造を有する。ホール伝導層は、ある形態では、感光性ナノ粒子及び第2電極と接続される。
【0041】
好ましい実施の形態では、ホール伝導層と第1電極との間にブロッキング層が配置される。この層は、たとえばTiOナノチューブをチタン薄膜上に形成するときナノ構造体の形成の間連続的に作製される。
【0042】
ある実施の形態では、太陽電池は、異なる波長において太陽光を吸収することができるブロードバンド太陽電池である。感光性ナノ粒子は、特定の波長の光が照射されるとき電子ホール対を発生する。感光性ナノバンドギャップは、粒子サイズ若しくはナノ粒子の組成を変更することにより調整することができる。ナノ粒子サイズの範囲及びナノ粒子を作製するために使用されるナノ材料の範囲を組み合わせることにより、全太陽スペクトルの一部にわたるブロードバンド吸収を達成することができる。このため、ある形態では、異なるサイズ及び/又は組成を有する感光性ナノ粒子の混合物を第1層のナノ構造体上に積層し、図11-13に説明したようなブロードバンド太陽電池を作製してもよい。
【0043】
別の形態では、異なるサイズ及び/又は組成のナノ粒子は、各層が太陽スペクトルの異なる部分に対して反応するような複数の層を別々に形成してもよい。そのような太陽電池の具体例を図14-17に示す。ある実施の形態では、ナノ構造体に近接する層が第2層を形成する材料より長い波長の光を吸収するようにナノ粒子を積層することが好ましい。第3の層が存在する場合は、第2層は第3層より長い波長を吸収することが好ましい。
【実施例1】
【0044】
ナノ粒子増感太陽電池を図6に示す。図6に示す太陽電池を作製するため必要なキーステップを図5A-5Fに示す。当該技術分野において知られた方法に従って、まず適切な透明基板(510)をフッ素ドープ酸化錫層(520)でコートし、続いてマグネトロンスパッタリング若しくは他の薄膜フィルム積層プロセスにより300nm〜2μmの厚さのチタン薄膜フィルム層(530)を積層する。当該技術分野において知られた方法に従ってTiフィルム(530)を陽極酸化し熱処理し透明TiOナノチューブ(540)を得る。絶縁層と同様に作用し、太陽電池においてカソード/アノード短絡を防止するバリアー層(550)を得ることができるように陽極酸化条件を最適化する。TiOナノチューブ表面は、水酸基(-OH)(560)を含む。CdSe、ZnSe、PbSe、InP、PbS、III-V材料等のルミネセンス材料からなるナノ粒子であって、適切な官能基(-COOH、-NH、-PO、-SOH)を有するナノ粒子は、TiOナノチューブと反応し、ナノ粒子(570)増感TiOナノチューブが得られる。図5Dに示すように、ナノ粒子は、分子セルフアセンブリプロセスにより単一層を形成することによってナノチューブを修飾する。ルーズに結合したナノ粒子を溶媒洗浄を用いて除去する。TiOナノチューブへのナノ粒子の析出は、ナノ粒子の官能基(-COOH、-NH、-PO、-SOH)をTiO上の-OH基を反応させることにより制御されるので、ナノ粒子の厚さは、数層の単一層に自動的に制限される。その後ホール伝導層(580)を積層する。ホール伝導層は、導電性ポリマー(具体的にはPEDOT)等のポリマー材料であってもよい。最後に電極(透明若しくは半透明)(590)を積層しセルを完成させる。透明電極(590)を積層する場合、太陽光(100)が図6に示すように透明基板(510)に降り注がれるように太陽電池を方向付ける。太陽光が図6に示すように太陽電池に降り注がれるとき、ナノ粒子により電子ホール対が発生する。これらのナノ粒子は、様々なサイズ、形状、及び組成を有し、太陽スペクトルの全体をカバーする。ルミネセンスナノ粒子が電子伝導性TiOナノチューブに直接取り付けられるので、電荷が容易に分離され、電荷再結合が最小化される。図6に示す太陽電池は、高い効率を有することが期待され、他の薄膜フィルム及びシリコンベーステクノロジーに比して低コストで作製することができる。
【実施例2】
【0045】
ナノ粒子増感太陽電池の別の態様を図7に示す。当該太陽電池を作製するため必要なキーステップは、以下に示すもの以外、図5A-5Fに示すものと同様である。当該技術分野において知られた方法に従って、チタン金属薄膜(710)を陽極酸化し透明TiOナノチューブ(730)を得る。絶縁層と同様に作用し、太陽電池においてカソード/アノード短絡を防止するバリアー層(720)を得ることができるように陽極酸化条件を最適化する。TiOナノチューブ(730)表面は、水酸基(-OH)を含む。CdSe、ZnSe、PbSe、InP、PbS、III-V材料等のルミネセンス材料からなるナノ粒子であって、適切な官能基(-COOH、-NH、-HPO、-SOH)を有するナノ粒子が、TiOナノチューブと反応し、ナノ粒子(750)増感TiOナノチューブが得られる。その後ホール伝導層(760)を積層する。ホール伝導層は、導電性ポリマー(具体的にはPEDOT)等のポリマー材料であってもよい。最後に透明性伝導性酸化物層(770)を積層しセルを完成させる。太陽光(780)が透明の伝導性酸化物層(770)に降り注がれるように太陽電池を方向付ける。図7に示す太陽電池は、高い効率を有することが期待され、他の薄膜フィルム及びシリコンベーステクノロジーに比して低コストで作製することができる。
【実施例3】
【0046】
ナノ粒子増感太陽電池の他の態様を図8に示す。当該技術分野において知られた方法に従って、まず適切な透明基板(810)をフッ素ドープ酸化錫層(820)で被覆し、続いてマグネトロンスパッタリング若しくは他の薄膜フィルム積層プロセスにより300nm〜2μmの厚さのチタン薄膜フィルム層を積層する。当該技術分野において知られた方法に従ってTiフィルムを陽極酸化し熱処理し透明TiOナノロッド(840)を得る。絶縁層と同様に作用し、太陽電池においてカソード/アノード短絡を防止するバリアー層(850)を得ることができるように陽極酸化条件を最適化する。TiOナノロッド表面は、水酸基(-OH)を含む。CdSe、ZnSe、PbSe、InP、PbS、III-V材料等のルミネセンス材料からなるナノ粒子であって、適切な官能基(-COOH、-NH、-PO、-SOH)を有するナノ粒子は、TiOナノロッドと反応し、ナノ粒子(870)増感TiOナノロッドが得られる。ナノ粒子は、分子セルフアセンブリプロセスにより単一層を形成することによってナノロッドを修飾する。ルーズに結合したナノ粒子を溶媒洗浄を用いて除去する。TiOナノロッドへのナノ粒子の析出は、TiO上の-OH基をナノ粒子の官能基(-COOH、-NH、-PO、-SOH)と反応させることにより制御されるので、ナノ粒子の厚さは、数層の単一層に自動的に制限される。その後ホール伝導層(880)を積層する。ホール伝導層は、導電性ポリマー(具体的にはPEDOT)等のポリマー材料であってもよい。最後に電極(透明若しくは半透明)(890)を積層しセルを完成させる。透明の電極(890)を積層する場合、太陽光(100)が透明の基板(810)に降り注がれるように太陽電池を方向付ける。太陽光が図8に示すように太陽電池に降り注がれるとき、ナノ粒子により電子ホール対が発生する。ナノ粒子が電子伝導性TiOナノロッドに直接取り付けられるので、電荷が容易に分離され、電荷再結合が最小化される。
【実施例4】
【0047】
ナノ粒子増感太陽電池の他の態様を図9に示す。当該技術分野において知られた方法に従って、まずチタン金属薄膜(910)を陽極酸化し透明TiOナノロッド(930)を得る。絶縁層と同様に作用し、太陽電池においてカソード/アノード短絡を防止するバリアー層(920)を得ることができるように陽極酸化条件を最適化する。TiOナノロッド(930)表面は、水酸基(-OH)を含む。CdSe、ZnSe、PbSe、InP、PbS、III-V材料等のルミネセンス材料からなるナノ粒子であって、適切な官能基(-COOH、-NH、-PO、-SOH)を有するナノ粒子が、TiOナノロッドと反応し、ナノ粒子(950)増感TiOナノロッドが得られる。ナノ粒子は、分子セルフアセンブリプロセスにより単一層を形成することによってナノロッドを修飾する。ルーズに結合したナノ粒子を溶媒洗浄を用いて除去する。TiOナノロッドへのナノ粒子の析出は、ナノ粒子の官能基(-COOH、-NH、-PO、-SOH)をTiO上の-OH基と反応させることにより制御されるので、ナノ粒子の厚さは、数層の単一層に自動的に制限される。その後ホール伝導層(960)を積層する。ホール伝導層は、導電性ポリマー(具体的にはPEDOT)等のポリマー材料であってもよい。最後にITO等の透明電極層(970)を積層しセルを完成させる。太陽光(980)が透明の導電層(970)に降り注がれるように太陽電池を方向付ける。太陽光が図9に示すように太陽電池に降り注がれるとき、ルミネセンスナノ粒子により電子ホール対が発生する。ナノ粒子が電子伝導性TiOナノロッドに直接取り付けられるので、電荷が容易に分離され、電荷再結合が最小化される。
【実施例5】
【0048】
図6の別の態様の太陽電池において、下記の点を除き、実施例1の方法に従う。TiOナノチューブを形成した後、Si、Ge若しくはSiGeからなり適切な官能基を有するナノ粒子をTiOナノチューブと反応させ、ナノ粒子(570)増感TiOナノチューブを得る。図6に示すように、Si、Ge若しくはSiGeナノ粒子(570)は、分子セルフアセンブリプロセスにより単一層を形成することによってナノチューブを修飾する。
【0049】
その後ホール伝導層(580)を積層する。ホール伝導層は、p型Si若しくはGeであってもよい。Siナノ粒子を使用する場合、pドープSiを使用することが望ましい。このシリコン層は、アモルファスシリコン若しくは多結晶シリコンであってもよい。ホール伝導層は、Si若しくはGeの薄膜フィルムを作製する当該技術分野において知られた方法に従って析出することができる。このホール伝導層によりナノ粒子を均一に被覆することが望ましい。これは、原子層成長法若しくは化学気相成長法によりSi若しくはGe薄膜フィルムを積層することにより達成することができる。Si及びGe薄膜フィルムは、光吸収を増加させるため、それぞれの層の上面に積層してもよい。この場合、Si及びGeフィルムはホール伝導層として作用するだけでなく、光吸収層としても作用する。ホール伝導層は、有機半導体若しくは伝導性ポリマー材料であってもよい。
【0050】
この実施形態の他の変形例は、図6、7、8及び9に示すように構造を変更したものであり、ホール伝導層のためにSi、Ge若しくはSiGeナノ粒子及び/又はpドープSi及び/又はGeを用いる。
【実施例6】
【0051】
フッ素ドープ酸化錫上に形成されたTiOナノチューブに、複数のサイズのシリコンナノ粒子が取り付けられたブロードバンド太陽電池のある実施の形態を図10に示す。実施例1のプロトコルを実行する場合、当該技術分野において知られた方法により、適切な透明基板(1010)を形成する。しかしながら、Si(1050)、Ge(1060)、SiGe(1070)からなり適切な官能基を有する様々なサイズのナノ粒子をTiOナノチューブ(1040)と反応させて、ナノ粒子増感TiOナノチューブのブロードバンド混合物が得られる。図10に示すように、様々なサイズ及び/又は組成のナノ粒子(1050、1060及び1070)は、分子セルフアセンブリプロセスにより単一層を形成することによってナノチューブを修飾する。
【0052】
その後ホール伝導層(80)を積層する。ホール伝導層は、pドープSi若しくはGeであってもよい。Siナノ粒子を使用する場合、pドープSiを使用することが望ましい。このシリコン層は、アモルファスシリコンであってもよいし若しくは多結晶シリコンであってもよい。ホール伝導層は、Si若しくはGeの薄膜フィルムを作製する当該技術分野において知られた方法に従って析出することができる。SiおよびGe薄膜はそれぞれの層の上面に積層し光吸収を増加させてもよい。そのような場合、Si及びGeフィルムはホール伝導層として作用するだけでなく光吸収層としても作用する。ホール伝導層は、有機半導体若しくは伝導性ポリマー材料であってもよい。
【0053】
この実施の形態の他の変形例を図11に示す。このケースにおいて、透明伝導酸化物(TCO)層(1190)をホール伝導層(1180)の上に積層し、太陽光がTCOに降り注ぐように太陽電池を方向付ける。TiOナノロッド(ナノワイヤー)をフッ素ドープ酸化錫上に有する、この実施の形態の他の変形例を図12に示す。チタン薄膜上にTiOナノロッド(若しくはナノワイヤー)が形成された、この実施の形態の別の変形例を図13に示す。ナノロッドは、コロイダル成長、化学気相成長およびMBEを含む当該技術分野において知られた方法により成長させることができる。
【実施例7】
【0054】
フッ素ドープ酸化錫上に形成されたTiOナノチューブに複数のサイズのシリコンナノ粒子が積層された、ブロードバンド太陽電池の別の実施の形態を図14に示す。下記事項以外、実施例1のプロトコルを実行する。TiOナノチューブ(1440)を形成した後、Si、Ge、若しくはSiGeからなり適切な官能基を有するナノ粒子を分子セルフアセンブリプロセスによりTiOナノチューブに析出させ、マルチレイヤーナノ粒子(1450、1460及び1470)増感TiOナノチューブが得られる。図14に示すように、ナノ粒子(1450、1460及び1470)は、ナノ粒子の単一層を形成することによりナノチューブを修飾する。これらの層の各層は、分子セルフアセンブリプロセスをそれぞれ用いることにより積層することができる。それぞれの層は、Si若しくはGeからなる狭い粒径範囲のナノ粒子を有していてもよい。それぞれの層は、太陽スペクトルの狭い範囲を吸収するように設計される。複数の層(1450、1460、1470)は、太陽スペクトルの望ましい部分若しくはすべてをカバーするように積層する。層の数は2〜10の範囲で変動しうる。層の最小数は、製造コストを減少させるに望ましい。それぞれの層に使用される粒子サイズの範囲を調整することにより、好ましい数の層を有する太陽電池を設計することができる。図14に示すような具体例は、IR領域において吸収する層1(1450)、可視領域において吸収する層2(1460)、及び近紫外領域において吸収する層3(1470)の3つの層を有する。この実施の形態ではSi及びGeからなる様々なサイズのナノ粒子を組み合わせる。
【0055】
その後ホール伝導層(80)を積層する。ホール伝導層は、pドープSi若しくはGeであってもよい。Siナノ粒子を使用する場合、pドープSiを使用することが望ましい。このシリコン層は、アモルファスシリコンであってもよいし若しくは多結晶シリコンであってもよい。ホール伝導層は、Si若しくはGeの薄膜フィルムを作製する当該技術分野において知られた方法に従って析出することができる。ホール伝導層は、有機半導体であってもよいし若しくは伝導性ポリマー材料であってもよい。
【0056】
この実施の形態の他の変形例を図15、16及び17に示す。図15、17においては、透明伝導酸化物(TCO)層(1590若しくは1790)をホール伝導層(1580若しくは1780)の上に積層し、太陽光がTCOに降り注ぐように太陽電池を方向付ける。
【0057】
フッ素ドープ酸化錫上にTiOナノロッド(若しくはナノワイヤー)を有する、この実施の形態の別の変形例を図16に示す。
【0058】
チタン薄膜上にTiOナノロッド(若しくはナノワイヤー)を有する、この実施の形態の別の変形例を図15に示す。ナノロッドは、コロイダル成長、化学気相成長およびMBEを含む当該技術分野において知られた方法により成長させることができる。
【実施例8】
【0059】
他の実施の形態において、実施例1のプロトコルを下記に示すように修正する。TiOナノチューブを形成した後、II-V、II-VI、及びII-IV族からなり適切な官能基を有する感光性ナノ粒子をTiOナノチューブと反応させ、ナノ粒子(590)増感TiOナノチューブが得られる(図6)。これらのナノ粒子の具体例には、CdSe、CdTe、ZnSe、PbSe、ZnS、PbSが含まれる。図6に示すように、ナノ粒子は、分子セルフアセンブリプロセスによりナノ粒子の単一層を形成することによってナノチューブを修飾する。
【0060】
その後ホール伝導層(580)を積層する。ホール伝導層は、Si若しくはGe等のpドープ半導体層であってもよい。Si若しくはGe層は、アモルファスシリコン若しくは多結晶シリコンであってもよい。ホール伝導層は、酸化アルミニウム、酸化ニッケル等の金属酸化物層であってもよい。ホール伝導層は、これらの材料の薄膜フィルムを作製する当該技術分野において知られた方法に従って析出することができる。具体的には、Si若しくはGe薄膜フィルムは、原子層成長法若しくは化学気相成長法により成長させることができる。Si及びGe薄膜フィルムは、光吸収を増加させるため、互いの上面に成長させてもよい。この場合、Si及びGeフィルムは、ホール伝導層として作用するだけでなく光吸収層としも作用する。ホール伝導層の膜厚は、光吸収を最大とする一方、この層を介したホール輸送に対する抵抗を最小にするように調整することができる。ホール伝導層は、有機半導体若しくは伝導性ポリマー材料であってもよい。
【0061】
チタン薄膜上にTiOを形成した、この実施の形態の他の変形例を図7に示す。このケースにおいて、透明伝導酸化物(TCO)層(770)をホール伝導層(760)の上に積層し、太陽光がTCOに降り注ぐように太陽電池を方向付ける。フッ素ドープ酸化錫上にTiOナノロッド(若しくはナノワイヤー)を有する、この実施の形態の別の変形例を図8に示す。チタン薄膜上にTiOナノロッド(若しくはナノワイヤー)が形成された、この実施の形態の別の変形例を図9に示す。ナノロッドは、コロイダル成長、化学気相成長および分子ビームエピタキシー(MBE)を含む当該技術分野において知られた方法により成長させることができる。
【実施例9】
【0062】
他の実施の形態では、実施例8のプロトコルを下記に示すように修正する。すなわち、Si若しくはGeホール伝導層の代わりに、ホール伝導層をpドープ半導体(Si若しくはGe等)層により構成する。
【0063】
この実施の形態の他の変形例を図11、12及び13に示す。
【実施例10】
【0064】
他の実施の形態において、実施例6に記載されたブロードバンド太陽電池を下記に示すように修正する。TiOナノチューブ(1440)を形成した後(図14参照)、II-V、II-VI、及びII-IV族からなり適切な官能基を有する様々なサイズの感光性ナノ粒子をTiOナノチューブ(1450、1460、及び1470)と反応させ、ナノ粒子(1450、1460及び1470)増感TiOナノチューブのブロードバンド混合体が得られる。これらの感光性ナノ粒子の具体例には、CdSe、ZnSe、PbSe、CdTe、PbS等が含まれる。ナノ粒子のサイズは、2〜50nm、好ましくは2〜10nmの範囲で変動しうる。適切な官能基を有する感光性ナノ粒子は、分子セルフアセンブリプロセスによりTiOナノチューブに積層し、マルチレイヤーナノ粒子増感TiOナノチューブが得られる。これらの層の各層は、分子セルフアセンブリプロセスを別々に用いることにより積層することができる。それぞれの層は、狭い粒径範囲の感光性ナノ粒子を含み、太陽スペクトルの狭い範囲を吸収するように設計する。複数の層(1450、1460及び1470)を太陽スペクトルの望ましい部分若しくは全部をカバーするように積層する。層の数は2〜10の範囲で変更しうる。層の最小数は、製造コストが減少するために望ましい。それぞれの層において使用される粒径範囲を調整することにより好ましい層の数を有する太陽電池を設計することができる。図14において、層1(1450)はIR領域において吸収し、層2(1460)は可視領域において吸収し、層3(1470)は近紫外領域において吸収する。様々なサイズのPbSe、CdSe及びZnSeのナノ粒子を組み合わせ、図14に示す多層構造を作製することができる。
【0065】
その後ホール伝導層(1480)を積層する。ホール伝導層は、Si若しくはGe等のpドープ半導体層であってもよい。この層は、アモルファスシリコンであってもよいし若しくは多結晶シリコンであってもよい。Si及びGe薄膜フィルムは、光吸収を増加させるため、互いの上面に形成させてもよい。Si及びGeフィルムは、ホール伝導層として作用するだけでなく光吸収層としても作用する。ホール伝導層の膜厚は、光吸収を最大とする一方、この層を介したホール輸送に対する抵抗を最小にするように調整することができる。ホール伝導層は、有機半導体であってもよいし若しくは伝導性ポリマー材料であってもよい。
【0066】
この実施の形態の他の変形例を図15、16及び7に示す。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】図1は、異なる色の光を吸収及び放出する異なるサイズのナノメートル量子ドットを示す(従来技術)。小さいドットは、スペクトルの青色端において吸収し、一方大きいドットは、スペクトルの赤色端において吸収する。
【図2】図2は、UV領域、可視領域、及びIR領域のそれぞれにおいて吸収/放出する、ZnSe、CdSe、及びPbSeからなる量子ドットを示す(従来技術)。
【図3】図3は、トリ-n-オクチルホスフィンオキサイド(TOPO)等の溶媒によりキャップされたナノ粒子を例示している(従来技術)。
【図4】図4は、R官能基により機能化されたナノ粒子を示す。当該R官能基は、X-R-Yと表すことができる。ここで、X、Yは、カルボン酸基(-COOH)、ホスホン酸基(-HPO)、スルホン酸基(-HSO)、アミン含有基等の反応部位であり、a及びbは、0又は1であり、a及びbの一方が1であり、Rは例えば炭素、窒素、若しくは酸素であり、nは0〜10、若しくは0〜5である。
【図5A】図5A-5Fは、ある実施の形態に係る太陽電池形成方法を示している。図5Aにおいて、透明基板上に積層されたフッ素ドープ酸化錫上に、チタン薄膜フィルムを形成する。
【図5B】図5Bにおいて、フッ素ドープ酸化錫上のTiOナノチューブが透明基板上に積層されている。
【図5C】図5Cにおいて、基板上に積層されたフッ素ドープ酸化物層上に、水酸基を備えるTiOナノチューブを形成する。
【図5D】図5Dにおいて、ナノ粒子増感剤をTiOナノチューブ上に取り付ける。
【図5E】図5Eにおいて、ITO、PEDOT等の透明ホール伝導層をナノ粒子増感剤に析出させる。
【図5F】図5Fにおいて、透明基板上に積層されたフッ素ドープ酸化錫上のナノ粒子増感TiOナノチューブ層上に電極層(ITO若しくは金属)を形成する。
【図6】図6は、ナノ粒子増感型太陽電池を示しており、これは電圧を発生させるために太陽光(100)を受光する。
【図7】図7は、基板及び電極としてチタン金属薄膜を備えるナノ粒子増感型太陽電池の他の実施の形態を示す。
【図8】図8は、フッ化物ドープ酸化錫上にTiOナノロッドを備える、ナノ粒子増感型太陽電池を示す。
【図9】図9は、チタン金属薄膜上にTiOナノロッドを備える、ナノ粒子増感型太陽電池の別の実施の形態を示す。
【図10】図10は、異なるサイズ及び/又は組成の量子ドットが、TiOナノチューブ上にランダムに分散された、図6の太陽電池のブロードバンドな態様を示している。
【図11】図11は、異なるサイズ及び/又は組成の量子ドットが、TiOナノチューブ上にランダムに分散された、図7の太陽電池のブロードバンドな態様を示している。
【図12】図12は、異なるサイズ及び/又は組成の量子ドットが、TiOナノチューブ上にランダムに分散された、図9の太陽電池のブロードバンドな態様を示している。
【図13】図13は、異なるサイズ及び/又は組成の量子ドットが、TiOナノチューブ上にランダムに分散された、図8の太陽電池のブロードバンドな態様を示している。
【図14】図14は、異なるサイズ及び/又は組成の量子ドットが、TiOナノチューブ上に配置された、図6の太陽電池のブロードバンドな態様を示している。
【図15】図15は、異なるサイズ及び/又は組成の量子ドットが、TiOナノチューブ上に配置された、図7の太陽電池のブロードバンドな態様を示している。
【図16】図16は、異なるサイズ及び/又は組成の量子ドットが、TiOナノチューブ上に配置された、図8の太陽電池のブロードバンドな態様を示している。
【図17】図17は、異なるサイズ及び/又は組成の量子ドットが、TiOナノチューブ上に配置された、図9の太陽電池のブロードバンドな態様を示している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一方が太陽光に対して透明な第1及び第2の電極と、
上記第1電極に電気的に接続され、電子伝導性ナノ構造体を含む第1層と、
上記電子伝導性ナノ構造体に近接する、感光性ナノ粒子を含む光活性層と、
上記光活性層及び上記第2電極に接続されるホール伝導層と、を備える光起電装置。
【請求項2】
上記ホール伝導層及び上記第1電極との間にブロッキング層をさらに備えることを特徴とする請求項1記載の光起電装置。
【請求項3】
上記電子伝導性ナノ構造体は、ナノチューブ、ナノロッド、若しくはナノワイヤーであることを特徴とする請求項1記載の光起電装置。
【請求項4】
上記ナノ構造体は、ナノチューブであることを特徴とする請求項3記載の光起電装置。
【請求項5】
上記ナノチューブは、酸化チタンから構成されることを特徴とする請求項4記載の光起電装置。
【請求項6】
上記感光性ナノ粒子は、量子ドット、ナノロッド、ナノバイポッド、ナノマルチポッド、若しくはナノワイヤーであることを特徴とする請求項1記載の光起電装置。
【請求項7】
上記感光性ナノ粒子は、量子ドットであることを特徴とする請求項6記載の光起電装置。
【請求項8】
上記感光性ナノ粒子が、上記ナノ構造体に共有結合されていることを特徴とする請求項1記載の光起電装置。
【請求項9】
上記感光性ナノ粒子には、CdSe、ZnSe、PbSe、InP、PbS、ZnS、Si、Ge、SiGe、CdTe、CdHgTe又はII-VI、II-IV、若しくはIII−V材料が含まれることを特徴とする請求項1記載の光起電装置。
【請求項10】
上記光活性層は、太陽スペクトルの異なる部分の光を吸収する第1及び第2ナノ粒子を含むことを特徴とする請求項1記載の光起電装置。
【請求項11】
上記第1及び第2ナノ粒子は、組成において異なることを特徴とする請求項10記載の光起電装置。
【請求項12】
上記第1及び第2ナノ粒子は、異なるサイズを有することを特徴とする請求項10記載の光起電装置。
【請求項13】
上記第1及び第2ナノ粒子は、サイズおよび組成において異なることを特徴とする請求項10記載の光起電装置。
【請求項14】
上記第1及び第2層が太陽スペクトルの異なる部分の光を吸収する第2光活性層をさらに備えることを特徴とする請求項1記載の光起電装置。
【請求項15】
上記第1及び第2光活性層のナノ粒子が、組成において異なることを特徴とする請求項14記載の光起電装置。
【請求項16】
上記第1及び第2光活性層のナノ粒子が異なるサイズを有することを特徴とする請求項14記載の光起電装置。
【請求項17】
上記第1及び第2感光性層のナノ粒子が、サイズ及び組成において異なることを特徴とする請求項14記載の光起電装置。
【請求項18】
上記ホール伝導層は、ホール伝導ポリマーを含むことを特徴とする請求項1記載の光起電装置。
【請求項19】
上記ホール伝導ポリマーは、p型半導体ポリマーであることを特徴とする請求項18記載の光起電装置。
【請求項20】
上記p型半導体ポリマーは、P3HT、P3OT、MEH-PPV、若しくはPEDOTであることを特徴とする請求項19記載の光起電装置。
【請求項21】
上記ポリマーはPEDOTであることを特徴とする請求項20記載の光起電装置。
【請求項22】
上記ホール伝導層はp型半導体であることを特徴とする請求項1記載の光起電装置。
【請求項23】
上記p型半導体は、pドープSi、pドープGe若しくはpドープSiGeであることを特徴とする請求項22記載の光起電装置。
【請求項24】
上記p型半導体は、pドープアモルファスシリコン、pドープマイクロ結晶シリコン、若しくはp型ナノ結晶性シリコンであることを特徴とする請求項22記載の光起電装置。
【請求項25】
上記ホール伝導層は、2以上のp型半導体層からなることを特徴とする請求項1記載の光起電装置。
【請求項26】
上記p型半導体層は、pドープシリコン層、pドープゲルマニウム層、又はpドープSiGe層であることを特徴とする請求項25記載の光起電装置。
【請求項27】
電子伝導性ナノ構造体含有第1層を第1電極と電気的に接続されるように上記第1電極上に形成する工程と、
上記電子伝導性ナノ構造体上に感光性ナノ粒子含有光活性層を形成する工程と、
上記光活性層上にホール伝導層を形成する工程と、
上記ホール伝導層上に第2電極を形成する工程と、を備え、
第1及び第2電極の少なくとも1つは、太陽光に対して透明であることを特徴とする光起電装置作製方法。
【請求項28】
上記ナノ構造体若しくはホール伝導層が形成される前に、ブロッキング層を形成する工程をさらに備えていることを特徴とする請求項27記載の方法。
【請求項29】
上記光活性層の形成工程において、異なるナノ粒子をランダムに分散させた光活性層を形成するため、異なるナノ粒子を用いること特徴とする請求項27記載の方法。
【請求項30】
上記光活性層は、異なるナノ粒子からなる少なくとも2つの層からなり、
上記ナノ構造体上に第1ナノ粒子層を形成する工程と、
上記第1ナノ粒子層上に第2ナノ粒子層を形成する工程と、を備え、
上記第1及び第2ナノ粒子が異なることを特徴とする請求項27記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5A】
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【図5B】
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【図5C】
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【図5D】
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【図5E】
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【図5F】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公表番号】特表2009−532851(P2009−532851A)
【公表日】平成21年9月10日(2009.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−555499(P2008−555499)
【出願日】平成19年2月15日(2007.2.15)
【国際出願番号】PCT/US2007/062265
【国際公開番号】WO2007/098378
【国際公開日】平成19年8月30日(2007.8.30)
【出願人】(508244337)ソレクサント・コーポレイション (7)
【氏名又は名称原語表記】SOLEXANT CORPORATION
【Fターム(参考)】