説明

ナノ量の液体を吸引、操作、混合、及び分注する装置

ナノ量の流体を吸引、混合、操作、及び分注する分注器装置及びピペットチップであって、前記分注器装置及びピペットチップは、液体の分注を助けるためにチップの外側表面に沿って案内されたガス流れを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の参照)
本願は、2004年3月19日に出願された、仮特許出願番号:60/554,761の継続出願である。
【0002】
本発明は、少量の液体を吸引、混合、操作、及び分注する装置と、ナノ量の液体を供給するために吸引/分注装置に使用されるピペットチップと、に関するものである。
【背景技術】
【0003】
現在利用できる全ての分注器は、実際は本質的に受動的であるピペットチップを通して液体を吸引し供給する。したがって、ピペットチップは、液体を動かすための推進力が分注器本体内の機構によって供給されるが、主として流体貯留部として機能する。これは、ピペットチップに、液体移動通路におけるデッドスペースを作り、それは、流体を吸引及び供給することの正確さ及び精度を低下させ、確実に移動できる最小量を大きくする。主として、このデッドスペースによって引き起こされる問題のために、正確にナノ量を移動できる携帯用分注器は、誰も開発していない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
したがって、手動で行う分析の分野における分注器の産業において、空間及び資源が制限されているナノリットルの分注、を行うための分配手段を提供することが必要とされている。これらの分野は、生産ハイスループットスクリーニングに先立った迅速な分析の開発及び形態と(最も自動化された創薬スクリーン手動分析から作られている)、見つけ出された薬の二次評価、化学合成、診断テスト、及びゲノミクスやプロテオミクスのような分野における基礎研究調査、を含んでいる。正確なナノ量を供給できる携帯用分注器の有用性は、時間のかかる希釈工程の必要性を取り除き、高価な試薬の消費を減少させ、これらの分析における正確性を増す。更に、それは、完全に自動化されたロボットシステム又はワークステーションプラットホームのための、ナノリットルの分注を行う手段を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
(発明の概要)
本発明は、分注装置用ピペットチップを提供する。ピペットチップは、前方部と、分注器接合部と、上面と、下面と、を有する細長体と、接合部に位置する複数の貯留部と、細長体を介して、前記複数の貯留部を結合している、流体チャンネルと、分注装置内にチップを置くための分注器接合部上の位置決め手段と、チップからの少量の液体の除去を促進するために、細長体の外側一面にガス流れを案内するための手段と、を備えており、貯留部は、上面又は上面と下面とに沿って、貯留部を覆う複数のフレキシブル膜を有している。
【0006】
好ましい実施形態では、ピペットチップは、使い捨て可能であり、更に、接合部に位置するリリーフ弁、流体分析チャンバー、及び/又は、1つ以上のつぶすことのできる貯留部を備えている。
【0007】
本発明の別の特徴において、分注装置は、ピペットチップ受け端部と、複数のガスチャンネルと、複数のガスチャンネルにガスを供給する手段と、を有するハウジングと、複数のバルブと、ガスを供給する手段から、バルブの各々に、ガスを供給するための、少なくとも1つ以上の供給チャンネルと、バルブを制御する手段と、チップからの少量の液体の除去を促進するために、ピペットチップの外側一面にガス流れを案内するための、ピペットチップ受け端部の上の少なくとも1つのノズルと、を備えており、バルブの各々は、ガスチャンネルの少なくとも1つに結合されており、少なくとも1つのガスチャンネル内のガス圧力を制御するものである。
【0008】
本発明のこの特徴の一実施形態では、ガスを受け取る開口が、ガスカートリッジチャンバーである。本発明のこの特徴の別の実施形態では、装置が、自動化装置用分注器マニホールド、又は、携帯用分注器である。
【0009】
装置が携帯用分注器である場合、それは、一端にピペットチップ受けアダプターと、他端に表示盤及び調整手段と、を有するハウジングと、流体を吸引及び分注する手段であって、受けアダプターに取り付けられて、吸引及び分注を規制するための調整手段に結合されたときに、ピペットチップと接合可能である、手段と、調整手段と吸引及び分注する手段とに結合した電源と、チップからの少量の液体の除去を促進するためにピペットチップの外側一面にガス流れを供給して、案内する手段と、を備えており、表示盤が、調整手段に結合している。
【0010】
好ましい一実施形態では、吸引及び分注する手段は、ガス供給カートリッジと、一端がガス供給カートリッジに結合し、他端がピペットチップと接合している、複数のガスチャンネルと、各々が、前記ガス供給カートリッジから少なくとも1つのガスチャンネルへのガス圧力を制御する、複数のバルブと、を備えている。
【0011】
本発明の別の特徴では、ナノ量の液体を分注及び吸引する方法が、ガスカートリッジチャンバー内にガスカートリッジを結合させることと、分注装置のピペットチップ受け端部に、ピペットチップを取り付けることと、バルブを制御する手段を、所望のナノ量に調整することと、バルブを制御する手段を、所望のナノ量を吸引したり分注したりするよう、作動させることと、を備えている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
他の定義がない限りは、ここに使用される全ての用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。ここでの開示において言及された全ての特許、特許出願、及び刊行物は、それらの全てが参照することによって組み込まれている。ここで用語が複数の定義を有する場合には、このセクションにおける定義を優先させる。
【0013】
ここで使用される「位置決め手段」という用語は、一般に、吸引及び分注する手段を備えた貯留部のフレキシブル膜を位置決めするために、分注器においてピペットチップの方向性を提供する、本発明の要素を意味する。例えば、位置決め手段は、分注器に対するチップの方向付けを助ける、フィン、羽根、テーパー、又はピンのような、ガイドである。別の例では、分注器チップの分注器接合部端部が、チップを分注器に一方向に挿入できるような、非対称となるように、構成される。
【0014】
ここで使用される「ガス流れを案内する手段」という用語は、一般に、分注されている量の流体の除去を助けるために、ピペットチップの外側表面の一面にガス流れを案内する、本発明の要素を意味する。例えば、ガス流れを案内する手段は、分注器のピペット接合部において環状配列された複数のノズルであり、チップの外側表面に沿った層状のガスシース流れを案内する。
【0015】
ここで使用される「ガスを供給する手段」という用語は、一般に、貯留部の作動のための、及び、ガス流れを案内する手段にガスを供給するための、ガス圧力を供給する、本発明の要素を意味する。例えば、ガスを供給する手段は、COガスカートリッジのようなガスカートリッジ、又は、圧力ラインによって装置に接合されているリモートガス圧力源である。
【0016】
ここで使用される「供給及び案内する手段」という用語は、一般に、上述したような、ガスを供給する手段と、ガスを案内する手段と、の組み合わせを意味する。
【0017】
ここで使用される「制御する手段」という用語は、一般に、制御モジュールとも称される、装置の電子機器を意味する。それは、特に、電源、実行される機能の視覚読み出し、電子的ボリューム調整、所望の機能を実行する手段を提供するための電子弁起動、及び所望の機能を実行するためのコマンドを提供するプログラム、を与える。
【0018】
ここで使用される「調整手段」という用語は、一般に、吸引され、分注され、操作され、又は混合される液体の量を調整するために、ユーザーによって制御できる、本発明の要素を意味する。例えば、調整手段は、ツイストノブや、上矢印ボタン及び下矢印ボタンを備えたキーパッドとして、設けられる。
【0019】
ここで使用される「吸引及び分注する手段」という用語は、一般に、貯留部のフレキシブル膜を作動させるのに利用する多くの方法を意味する。例えば、ガス、油や水のような流体によって、又は、ピストンのような機械的手段、貯留部の外側に互いに対向して配置された電磁板などによって、貯留部のフレキシブル膜に圧力を作用させることができる。
【0020】
ここで使用される「作動させる」、「作動」、「作動させること」という用語は、一般に、貯留部のフレキシブル膜に力を加えたり作用したりすることを意味する。より具体的には、これは、膜の圧縮及びそれに続く解放、又はその逆の作用である。圧縮及び解放の作用は、例えば、大気圧、空気圧、水圧、又はピストンのような機械的手段、を含む種々の手段によって、実行できる。
【0021】
本発明は、ピペットチップ及び分注装置を対象としている。分注装置は、ナノ量の流体を、吸引し、混合し、操作し、及び分注するためのピペットチップを使用するものであり、液体の分注を助けるためにチップの外側表面に沿って案内されたガス流れを利用している。
【0022】
(ピペットチップ)
本発明は、分注装置用ピペットチップを提供する。ピペットチップは、前方部と、分注器接合部と、上面と、下面と、を有する細長体と、接合部に位置する複数の貯留部と、細長体を介して、複数の貯留部を結合している、流体チャンネルと、分注装置内にチップを置くための分注器接合部上の位置決め手段と、チップからの少量の液体の除去を促進するために、細長体の外側一面にガス流れを案内するための手段と、を備えており、貯留部は、上面又は上面と下面とに沿って、貯留部を覆う複数のフレキシブル膜を有している。
【0023】
本発明のピペットチップは、1つ以上の流体チャンネル又は貯留部、もしくはその両方を含んだソリッドサポートを備えている。貯留部は、堅い壁又はフレキシブル壁を備えている。使用中ではないとき、堅い壁の貯留部は、流体を受け取るための常設の開いた容積を提供するが、一方、フレキシブル壁の貯留部は、液体で満たされていない場合は、つぶれている。流体チャンネル及び/又は貯留部は、キャビティー内に、蠕動運動を生じさせるように、連続して、押圧され、又は、シールされ、及び、解放される。蠕動運動は、非常に少量の液体を、チップ内に吸引させ、又は、チップから分注させ、又は、チップ内で移動させたり、混合させたり、分離させたりする。押圧又はシール、及び、解放は、空気圧、水圧、又は機械的手段によって生成できる。ピペットチップは、特定の内部経路の下への液体の移動を制御するためのバルブ、チップ内ではあるが液体の測定を実行する装置、チップ内で液体に行われる外部測定を可能とする窓、のような、他の特徴を組み込むこともできる。
【0024】
ピペットチップは、1つのユニットとして、又は、マルチ分注のために使用される多数連結ユニットとして、存在できる。更に、ピペットチップ内の特定のキャビティーは、多数の相互に連結された(多重化された)チップの間の流体の移動を可能とするように、構成できる。
【0025】
ピペットチップは、携帯用分注器、分注機器ヘッド、又は、他の類似装置、への使用に適している。
【0026】
ピペットチップは、最終製品を形成するために組み立てることのできる1つ以上の部品の、射出成形によって、作製できる。更に、ピペットチップは、1つの部品として作られる場合は、同じ材料で作ることができ、1つ以上の部品として作られる場合は、1つ以上の材料で作ることができる。例えば、ピペットチップの本体は、比較的堅いフレキシブルプラスティック、又は、ポリマーで、作ることができるが、貯留部膜は、同じ又は異なる材料であり、且つ、容易に変形可能な、又は、フレキシブルプラスティック又はポリマーで、作ることができる。組立を必要とする2以上の部品として作られる場合、部品は、接着剤又はポリマーの溶着によって接合できる。ピペットチップを構成するのに選ばれる材料の種類は、その使用目的に依存する。好ましくは、ピペットチップ、特に、吸引され、分注され、混合され、又は操作されている流体がチップに接触する部分は、疎水性材料で作られる。
【0027】
多数ピペットチップ構造は、1つのユニットとして作ることができ、又は、別々に作って、後で結合してもよい。例えば、ピペットチップのストリップは、二次成形でき、それは、自動化装置用マニホールドでの使用のために結合される所望の数のピペットチップを含んでいる。ストリップにおけるピペットチップの数は、自動化システムによって、一時に実施されている作動の数に依存する。例えば、マニホールドがマイクロタイタープレート内に吸引又は分注している場合、あるカラム内のウェルの数は、ストリップ内のピペットチップの数(例えば、2,4,8,12,16など)を決定する。同様に、多数のピペットチップは、接着剤又はポリマー溶着による作業によって結合できる。結合の助けとなるチップの外側表面形態は、製造及び使用を容易にするのに利用される。
【0028】
図1は、本発明の一つの好ましい形態におけるピペットチップ5の等角図である。ピペットチップの分注器接合部は、ポンプ15を含んでいる。ポンプ15は、サポート支柱20によって分離され且つ複数のフレキシブル膜30によって被覆された、複数の貯留部を備えている。ピペットチップは、約100〜250マイクロメートルの内部流体チャンネル50を有している。分注器接合部の後部の位置決め手段55は、好ましくはフィンであり、ピペットチップを分注器内に適切に設置するためのものである。ピペットチップは、チップ内部で発達するいかなる圧力差をも変換するために、分注器接合部の端部に、末端フレキシブル膜35を有している。ピペットチップ40の外側表面は、チップの外側の周囲の層流ガス流れを促進するように構成されている。リリーフ弁58は、フラップ、ソレノイドバルブ、又は、通常は閉じており作動時のみ開くその他の機構、を採用できる。
【0029】
図2は、ピペットチップ5の断面図である。流体チャンネル50は、流体接合部からポンプ15に近付きながら高さが減少するが、流体チャンネルの幅は、同じ体積を維持しながら増大する。リリーフ弁58は、通常は閉じている。リリーフ弁58は、通常は閉じており、作動時のみ開く。ポンプ15の下方の流体チャンネル52は、前方貯留部であり、ポンプの上方の流体チャンネル54は、後方貯留部である。サポート支柱20及びフレキシブル膜30も示されている。
【0030】
上述したピペットチップは、携帯用分注器や自動分注器システムのような液体取扱システムによって利用することができる。更に、ピペットチップは、液体輸送容器又は液体貯蔵容器、混合容器、又は、ポンプ及びバルブが必要とされる他の装置として、使用できる。
【0031】
図5は、本発明の他の好ましい形態におけるピペットチップの断面図である。ピペットチップの固体マトリクスは、斜線領域によって示している。図の残りの部分は、チップの内部構造を示している。示されているピペットチップは、別々の場所101,102,103,104で下部の流体チャンネルを覆っている4個のフレキシブル膜を備えている。これらのフレキシブル膜は、ピペットチップ内で蠕動運動を生じさせるために、連続的に作動する。フレキシブル膜は、それらを分離するサポートによって、又は、そのサポート無しで、連続したものでもよく、又は、図示されているように、フレキシブル膜によって覆われていない流体チャンネル105の長さによって分離されてもよい。ピペットチップは、液体輸送のための外部容器にアクセスするために、流体接合部に、細長い流体チャンネル106を有している。ピペットチップの分注器接合部は、リリーフ弁107及び/又は更なる貯留部108を含んでいる。他の貯留部109,110が示されており、貯留部109,110に制限された流体チャンネル111,112にそれぞれ付随しており、又は、流体チャンネル112の近くのフレキシブル膜102の下部の流体チャンネルに付随しており、貯留部109,110は、直径がより小さく、十分に大きな疎水性の表面を備えるか、又は、流れを制限するための手段を含んでいる。ポンピングに使用されない貯留部及びチャンネルは、使用しない時はつぶすことができ、又は、リリーフ弁に接続することができる。貯留部は、更に、分注器装置の中に組み込まれた装置又は他の外部装置から、計測が行われるのを可能とするために、のぞき窓113のような特別な仕様を備えてもよい。
【0032】
図6は、ピペットチップの配列の断面図である。図6において、各チップは、図5で示したピペットチップと同様の構成を有している。この図は、2個並んだピペットチップを示しており、それらのピペットチップは、ピペットチップ間を流体が流れるのを可能とするために、流体チャンネル120によって相互に接続されている。その配列は、複数(例えば、8又は12)のピペットチップを含んでいる。これらのチップは、また、多数のチップ配列の一部であるよりは個々に相互接続可能なチップでもよい。
【0033】
図7は、流体通路において通常はつぶされている貯留部又は流体チャンネルであって、つぶされた状態140と広げられた状態141の両方の場合の断面図及び等角図である。これらは、図6において、一列に並んで離れている貯留部のいずれかであり、使用された材料の柔軟性に依存している。
【0034】
(分注器装置)
本発明の分注器装置は、ピペットチップ受け端部と、複数のガスチャンネルと、ガスカートリッジチャンバーと、を有するハウジングと;少なくとも1つのガスチャンネルにおけるガス圧を制御する少なくとも1つのガスチャンネルに、各々が接続されている、複数のバルブと;カートリッジチャンバーから各バルブにガスを供給するための、1個以上の供給チャンネルと;バルブを制御する手段と;チップから少量の液体を除去することを促進するために、ピペットチップの外側一面にガス流れを案内するための、ピペットチップ受け端部の少なくとも1つのノズルと;を備えている。
【0035】
本発明の装置は、現在市販されている装置と同様の材料及び電気部品を使用して構成できる。
【0036】
好ましい形態の一つにおいて、分注装置は、ピペットチップを利用する携帯用分注器である。分注器において、吸引したり分注したりする手段は、ガス供給カートリッジと、複数のガスチャンネルと、複数のバルブと、を備えている。複数のガスチャンネルは、一端がガス供給カートリッジに結合され且つ他端がピペットチップと接合している。複数のバルブの各々は、ガス供給カートリッジから少なくとも1つのガスチャンネルへのガス圧を制御する。
【0037】
特に好ましい実施形態においては、携帯用分注器は、一端にピペットチップ受けアダプターと、他端に表示盤及び調整手段と、を有するハウジングと、流体を吸引及び分注する手段であって、受けアダプターに取り付けられて、吸引及び分注を規制するための調整手段に結合されたときに、ピペットチップと接合可能である、手段と、調整手段と吸引及び分注する手段とに結合した電源と、チップからの少量の液体の除去を促進するためにピペットチップの外側一面にガス流れを供給して、案内する手段と、を備えており、表示盤が、調整手段に結合している。
【0038】
本発明の一つの特徴は、一つのチップまたは複数のチップへ、一連のチャンネルを通して、個々の空気圧、水圧、又は機械的圧力を適用する分注装置、を含んでいる。圧力は、時々中断したり連続的としたりでき、個々のチャンネルのいずれか又は全てを通して、任意の順番で適用できる。更に、装置は、ピペットチップから滴を取り除いて、それらを、それらのターゲットに案内するためのガスカーテンと、ピペットチップの内外への少量の液体の動きを示す圧力の小さな変化を検知できる圧力センサーと、及び/又は、正確なターゲット(例えばマイクロタイタープレートウェル)に対する少量の液体の動きをユーザーに案内するためのポインティング装置(例えばレーザーポインター)と、を備えている。本発明は、携帯用分注器、分注機器ヘッド、薬物送達ポンプ、又は他の類似の装置において、使用できる。
【0039】
本発明の別の特徴は、正確に且つ繰り返してナノリットル量を吸引して分注する、非ピストン駆動のアクティブピペットチップである。それは、ナノリットル量を吸引するために蠕動タイプの作動運動を使用し、また、そのシステムは、これらの量を分注するのを助けるために、ピペットチップ表面の外側一面に、シースガス流れの付加を加える。
【0040】
図3は、使用中一緒に取り付けられている、分注器60、制御モジュール90、及びピペットチップ5を示している。
【0041】
図4は、分注器60の断面図であり、その分注器60は、ピペットチップ5と、バルブ63と、カートリッジ61と、ドッキングポート62と、分注器60とピペットチップ5との間の接合部と、を示している。分注器装置のマニホールドには、複数のガスチャンネルが設けられている。この形態においては、分注器は、ピペットチップ内でフレキシブル膜と相互作用する6個のチャンネルを有している。分注器のバルブは、ガスチャンネルを作動させる。ガスチャンネル70,72,74,76は、ピペットチップのフレキシブル膜30の部分にフィットしている。ガスチャンネル78は、通常は閉じているリリーフ弁58を作動させる。ガスチャンネル80は、環状に配列された複数のノズル82へガスを供給する。ノズル82は、ピペットチップ40の外側表面に沿って、環状且つ層状のガスシース流れを生成する。ガスシース流れは、分注された流体をピペットチップから解放するのをベルヌーイ効果によって助ける。これは、非接触吸引を助け、チップが受け取り中の液体に浸漬される場合に、毛細管保持される液体がないことを保証する。カートリッジは、ガスカートリッジ61を係合するドッキングポート62で結合される。ガスカートリッジ61は、制御モジュールによって作動されると、ガスチャンネル80への、1個以上のバルブ63を通して、ノズル82へガスを流すことを可能にする。
【0042】
(作動)
本発明のピペットチップ及び分注器装置を用いた、ナノ量の液体を分注及び吸引する方法は、ガスカートリッジチャンバー内にガスカートリッジを結合させることと、分注装置のピペットチップ受け端部にピペットチップを取り付けることと、バルブを制御する手段を所望のナノ量に調整することと、所望のナノ量を吸引及び分注するために、バルブを制御する手段を作動させることと、を備えている。
【0043】
使用において、オペレーターは、装置内の制御モジュールを通して1つ以上の指令をプログラムに入力する。一旦作動したプログラムは、特別な順序でピペットチップの流体チャンネルに沿って位置するフレキシブル膜と結合する、装置内のガスチャンネルを、通して、個々の圧力を供給する指令を、実行する。例えば、流体チャンネルに沿った一連のフレキシブル膜は、ピペットチップ内に蠕動ポンプ動作を生成するために、連続して、作動し停止する。
【0044】
使用中に、ナノ量の液体を分注するとき、空気又はガスのカーテンが、チップからの当該量の放出を助けるよう、ピペットチップに沿って下方に適用される。
【0045】
更に、装置は、液体を所望の場所へ送達することができるようにするために、オペレーターがチップの狙いを定めるのを助けるために、ピペットチップの下方に向けられたレーザーポインターを、備えている。そのレーザーポインターは、流体吸引のために容器内にピペットチップを案内するのに、使用することもできる。
【0046】
更に、装置は、圧力センサーを備えている。その圧力センサーは、分注及び吸引の間に装置によって加えられた圧力に応じた、ピペットチップのフレキシブル膜の圧縮によって引き起こされた、圧力の小さな変化に、反応できる。例えば、流体が分注されたときの、フレキシブル膜の圧縮によって引き起こされた圧力の小さな変化は、ある量の液体が送達されたことをオペレーターに知らせるために、既知のデータを用いて、制御モジュールによって読み取ることができる。
【0047】
ナノ量の液体を吸引及び分注するための操作において、チップ5は、分注器60内に挿入される。フィン55は、ポンプ15及びリリーフ弁58と、分注器のガスチャンネル70,72,74,76,78とを、合わせるように、分注器60にピペットチップ5を位置決めする。位置決め手段は、ガイドであり、例えば、フィン、羽根、テーパー、又はピンであり、それは、分注器又はチップが取り付けられる類似の装置に対して、チップを正しい位置に置くのを助ける。ガスチャンネルのいずれかが、作動すると(オンすると)、ガス圧力(すなわち、大気圧よりも大きく、好ましくは100psi以上)は、それらのチャンネルを構築し、フレキシブル膜に、ピペットチップ5内の流体チャンネル50を拡げたりブロックしたりさせる。特定の順序又は一組の順序でガスチャンネルを作動させることは、ピペットチップの前方の貯留部52に、正の圧力、又は、負の圧力を生成できる。相反する力が、通常は閉じているリリーフ弁58を開くことによって、中和できる後方の貯留部54内に生成される。前方の貯留部52内の正及び負の圧力は、段階的な又は連続的な順序での多様なモードで、液体を吸引及び分注するのに、使用できる。例えば、吸引とそれに続く繰り返しの分注、流体を混合するための多様な吸引、希釈をもたらすための希釈剤と溶質との連続した吸引、又は、ピペットチップ内に流体を保持して貯蔵するための吸引、がある。
【0048】
更に、分注器は、分注器とチップとの接合部から放出されたガスを供給する。そのガスは、ピペットチップ5の外側の表面40を流れる。その流れは、チップの前方に負の圧力を生成する。この負の圧力は、液体とチップとの間の力に対抗して、チップから液体を分離し、非接触分注を助け、チップが移動中に浸されている場合に、流体から取り出された際のピペットチップに液体が保持されるのを回避する。ガス流量及びフラックスは、乾いた容器内にサンプルを噴射させないで分注することを保証するのに十分である。この覆いは、また、初めの充填操作直後の、過剰な液体が付いたピペットチップの外側表面を「拭く」という機能も果たす。
【0049】
特に好ましい実施形態においては、ガスの供給源は、予め充填されたカートリッジ61である。カートリッジ61は、所望の用途に応じて、乾いた又は湿った、様々なガスで、満たすことができる。これらのカートリッジは、分注器内に組み込んでもよく、又は、別にしてもよい。そのカートリッジは、ガスカートリッジ61を係合するドッキングポート62に結合され、制御モジュールによって作動されると、1つ以上のバルブ63を通して、ノズル82へ続くガスチャンネル80へ、ガスを流すことを可能にする。例えば、ジメチルスルホキシド(DMSO)中の化合物のストック溶液を移送する間、アルゴンや窒素のようなDMSO飽和不活性ガスは、化学反応性、吸水率、移送中の蒸発を最小限にし、また、サンプルを不活性ガスブランケットの下に放置するのに、利用できる。病原菌の移送及び取り扱いにおいては、エチレンオキサイドのような化学滅菌ガスを使用できる。
【0050】
操作及び混合と連動した、分注及び吸引の作動において、流体チャンネル101,102,103,104の全長を覆うフレキシブル膜は、周期的な態様で連続して圧縮され解放される。1つの膜に関して、膜の圧縮領域(又は圧縮部分)は、連続して圧縮され解放される。圧縮は、下にある流体チャンネルの容量を減少させる。一方、解放は、膜を放置することによって、その容量を元の状態に戻し、その結果、流体チャンネルに、最初の形状を取らせる。圧縮は、フレキシブル膜に圧力を作用させることによって生成でき、解放は、その圧力を取り除くことによって生成できる。圧力は、空気圧、水圧、又は機械的手段によって、生成できる。膜が、適切な順序で(例えば、101が圧縮され、それから102が圧縮され、それから101が解放され、それから103が圧縮され、それから102が解放される等)、圧縮されて解放された場合(以下、「作動する」と称し、そのプロセスは「作動」と称する)は、連続した特性において、蠕動ポンピングが生成し、貯留部とそれに続く流体チャンネルとを通る流体流れを生じさせる。
【0051】
流体チャンネル又は貯留部は、140のように通常は閉じており又はつぶれており、作動したときに開く。この場合において、流体チャンネルの全体は、その中央を通ったより堅いリブを有するフレキシブル膜、又は、半フレキシブル膜からなっている。力が表面に対して平行に加えられると、それらは、表面に対して垂直に且つ互いに離れるように、ゆがむ。これは、貯留部又は流体チャンネルを開く。この方法によって作動した場合、流体チャンネル又は貯留部は、141のように開き、ピペットチップ内が流体によって満たされる真空を生成する。流体チャンネル又は貯留部を拡げるための別の方法は、内側から正の圧力を作用させることによって、それを満たすことである。圧力が解放されると、流体チャンネルは、その通常の閉じた状態に復帰する。このタイプの流体チャンネル又は貯留部は、通常は開かれている貯留部又は流体チャンネルと完全に置換できる。
【0052】
使用中、膜が適切な順序及び組み合わせ(すなわち、圧縮の順番が101,102,103など)で作動されると、流体をピペットチップ内に吸引することができ、逆の順番で作動されると、流体を、チップから分注できる。特に、4つの全ての膜が順番に作動すると、流体は、貯留部108内に移送される。逆の順番での作動は、流体を同じ貯留部から分注させる。
【0053】
別の例として、3つの膜のみが作動し、4つ目の膜がシールされている場合は、流体を、他の貯留部109,110の1つから吸引でき、又は、他の貯留部109,110の1つへ移送できる。シールは、膜を貯留部の他の壁に接触させ、又は、ほぼ接触させるのに十分な圧力を、膜に作用させることによって達成され、流路を厳しく制限し又は妨げる。特に、最初の3つ101,102,103が順番に作動され、4つ目104がシールされていると、流体を、特定の貯留部109内に吸引できる。
【0054】
更に、最後の3つのフレキシブル膜102,103,104が逆の順番で作動され、最初の膜101がシールされていると、1つの貯留部108内に予め吸引されている流体を、別の貯留部110に移動できる。
【0055】
流体を受け取ったり供給したりする貯留部が通常開いていると、流体移動を可能にするための空気交換が、リリーフバルブ107を用いて達成できる。貯留部が140に示すように通常は閉じていると(すなわち、つぶれていると)、その後、流体は、圧力リリーフ機構を必要とすることなく、貯留部を141に示すように膨らませたり縮ませたりすることによって、空間に入ったり空間から出たりできる。
【0056】
いくつかの貯留部に結合され、流れが制限された、流体チャンネル111,112は、通常の吸引又は分注の間は、液体の通過を妨害する流体チャンネルである。この妨害は、分注器によって作動されたフレキシブル膜バルブによって、又は、圧力誘起による圧縮によって、又は、液体を主要な流体チャンネルを通すよりも、それらの流体チャンネルを通すために、より高い圧力が必要とされるように、それらの流体チャンネルを通常は閉じた状態に構成することによって、又は、液体が優先的に流れる主要なチャンネルに比して、それらの流体チャンネルを、十分に小さく作ることによって、又は、液体が主要な流体チャンネルを好むように、それらの内部表面を化学的に変更する(例えば、それらを疎水性にする)ことによって、達成できる。
【0057】
ピペットチップ内で液体を一方の貯留部から他方の貯留部へ活発に移動させることによって、混合を行うことができる。測定を可能とする貯留部内に液体を移動させることによって、ピペットチップは、測定装置として、又は、外部の測定装置のための容器として、機能できる。ピペットチップ内に液体を取り上げて、その後、チップの端部を(例えば、不活性ゲルによって)シールすることによって、チップは、貯蔵装置として機能できる。貯留されている流体のその後の解放は、例えば次のように行うことができる。すなわち、シールを解放する流体であって、貯留されている流体とは異なる貯留部に置かれている流体を、まず分注し、その後に、貯留されている流体を分注することによって行うことができ、又は、貯留されている流体とゲルとの間のエアーギャップを残し、その後、ゲルと空気をピペットチップの外へただ押すことによって、行うことができる。
【0058】
流体チャンネル又は貯留部120によって相互に連結されているピペットチップを操作するため、液体は、最初に、ピペットチップ121の1つの外部アクセス流体チャンネルを通って、チップの貯留部の1つの中に吸引できる。例えば、線形順序(すなわち、126,122,123,124)で1つのピペットチップのフレキシブル膜を連続して作動させることによって、流体は、そのチップの特定の貯留部125の中に吸引できる。その後、3つのフレキシブル膜を逆の順序で(例えば124,123,122)作動させる一方で、4番目126をシールすることによって、液体は、流体チャンネル120を通って他のピペットチップへ送り込まれる。受け側のピペットチップにおいて貯留部又はチャンネルを選択的にブロックすることによって、流体は、所望の貯留部へ案内できる。例えば、貯留部130のフレキシブル膜を作動させることによって、流体は、別の貯留部128内へ移動できる。あるいは、2つの他の貯留部127,131のフレキシブル膜をブロックすることによって、流体を、異なる貯留部129内へ送達できる。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】本発明のピペットチップの一例の等角図である。
【図2】図1のピペットチップのいくつかの詳細図を含む断面図である。
【図3】分注器、制御モジュール、及びピペットチップの、等角図である。
【図4】図3の分注器と図1のピペットチップとの間の接合部の断面図である。
【図5】本発明の別のピペットチップの断面図である。
【図6】相互に連結された本発明のピペットチップの断面図である。
【図7】圧力を加えることによって膨らまされている、通常は閉じた状態の貯留部又はチャンネルの、断面図及び等角図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
分注装置用のピペットチップであって、
前方部と、分注器接合部と、上面と、下面と、を有する細長体と、
接合部に位置する複数の貯留部と、
前記細長体を介して、前記複数の貯留部を結合している、流体チャンネルと、
前記分注装置内に前記チップを置くための前記分注器接合部上の位置決め手段と、
前記チップからの少量の液体の除去を促進するために、前記細長体の外側一面にガス流れを案内するための手段と、を備えており、
前記貯留部は、上面又は上面と下面とに沿って貯留部を覆う複数のフレキシブル膜を有していることを特徴とするピペットチップ。
【請求項2】
接合部に位置するリリーフ弁を更に備えている、請求項1記載のピペットチップ。
【請求項3】
前記チップが使い捨て可能である、請求項1記載のピペットチップ。
【請求項4】
流体分析チャンバーを更に備えている、請求項1記載のピペットチップ。
【請求項5】
前記貯留部がつぶすことのできるものである、請求項1記載のピペットチップ。
【請求項6】
分注装置であって、
ピペットチップ受け端部と、複数のガスチャンネルと、前記複数のガスチャンネルにガスを供給する手段と、を有するハウジングと、
複数のバルブと、
ガスを供給する前記手段から、前記バルブの各々にガスを供給するための、少なくとも1つ以上の供給チャンネルと、
前記バルブを制御する手段と、
前記チップからの少量の液体の除去を促進するために、ピペットチップの外側一面にガス流れを案内するための、前記ピペットチップ受け端部上の少なくとも1つのノズルと、を備えており、
前記バルブの各々は、前記ガスチャンネルの少なくとも1つに結合されており、少なくとも1つのガスチャンネル内のガス圧力を制御するものであることを特徴とする分注装置。
【請求項7】
装置が、自動化された装置のための分注器マニホールドである、請求項6記載の分注装置。
【請求項8】
装置が、携帯用分注器である、請求項6記載の分注装置。
【請求項9】
請求項1のピペットチップ及び請求項6の分注装置を用いて、ナノ量の液体を分注及び吸引する方法であって、
前記ガスカートリッジチャンバー内にガスカートリッジを結合させることと、
請求項6の前記分注装置のピペットチップ受け端部に、請求項1の前記ピペットチップを取り付けることと、
前記バルブを制御する前記手段を、所望のナノ量に調整することと、
前記バルブを制御する前記手段を、所望のナノ量を吸引したり分注したりするよう、作動させることと、を備えていることを特徴とする方法。
【請求項10】
携帯用分注器であって、
一端にピペットチップ受けアダプターと、他端に表示盤及び調整手段と、を有するハウジングと、
流体を吸引及び分注する手段であって、前記受けアダプターに取付けられて、吸引及び分注を規制するための前記調整手段に結合されたときに、ピペットチップと接合可能である、手段と、
前記調整手段と吸引及び分注する前記手段とに結合した電源と、
前記チップからの少量の液体の除去を促進するために前記ピペットチップの外側一面にガス流れを供給して案内する手段と、を備えており、
前記表示盤が、前記調整手段に結合していることを特徴とする携帯用分注器。
【請求項11】
請求項1のピペットチップを利用した請求項9の携帯用分注器であって、
分注及び吸引する前記手段が、
ガス供給カートリッジと、
一端が前記ガス供給カートリッジに結合し、他端が請求項1の前記ピペットチップと接合している、複数のガスチャンネルと、
各々が、前記ガス供給カートリッジから少なくとも1つのガスチャンネルへのガス圧力を制御する、複数のバルブと、を備えていることを特徴とする携帯用分注器。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公表番号】特表2007−529753(P2007−529753A)
【公表日】平成19年10月25日(2007.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−504132(P2007−504132)
【出願日】平成17年3月17日(2005.3.17)
【国際出願番号】PCT/US2005/009013
【国際公開番号】WO2005/091993
【国際公開日】平成17年10月6日(2005.10.6)
【出願人】(506315354)
【氏名又は名称原語表記】Espir KAHATT
【Fターム(参考)】