説明

ナビゲーション信号送信装置、受信機、ナビゲーション信号の生成方法およびナビゲーション信号生成プログラム

【課題】受信機側での高感度受信に与える干渉を抑制することが可能なナビゲーション信号送信装置を提供する。
【解決手段】屋内送信機200は、屋内送信機の位置情報を含むメッセージを生成するメッセージ生成部202と、メッセージを拡散処理するために、この屋内送信機に予め割り当てられている拡散コードを生成するコード生成器204とを含む。屋内送信機200は、さらに、基準クロックに対して、所定の周波数オフセットΔfを生じさせるようなクロック周波数の変換を行うクロック調整部208と、クロック調整部208からの調整後のクロックに基づいて、搬送波を生成するキャリア生成器210とを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、地上に設置され、ナビゲーション信号を送信するナビゲーション信号送信装置、およびこのナビゲーション信号送信装置で使用されるナビゲーション信号の生成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
衛星測位システムは、複数の衛星によって放送される衛星測位信号の受動的測定により、受信機の位置情報を獲得するものである。衛星測位システムの中では、特に、米国が運用するGPS(Global Positioning System)は既に広く一般的に使用されており、その衛星測位信号の搬送波周波数は、1.57542GHzであることは知られている。
【0003】
衛星測位信号は、ある周波数基準となるクロックを基準として生成され、搬送波(キャリア)とそれを変調するための擬似乱数符号(PRN code:Pseudo Random Noise Code,以下「拡散コード」と称する)で構成され、また、航法メッセージと称されるデータが重畳されることもある。
【0004】
GPSを例に取ると、現在放送されていて、一般的に使用されている衛星測位信号(以下「L1C/A信号」と称する)の拡散コードの周波数(以下「拡散周波数」と称する)は1.023Mcps(cps:チップ パー セカンド)でありその繰り返し周期は1msであり、航法メッセージのビットレートは50bps(bps:ビット パー セカンド)である。このような信号の構成については、たとえば、非特許文献1に開示がある。
【0005】
また、今後2013年頃から、GPSにより送信される予定の信号(以下「L1C信号」と称する)の拡散コードは、1.023Mcpsの拡散コード及び1.023MHzの矩形波(合わせてBOC変調と呼ばれる。ここで、BOC: Binary Offset Carrier)、6.138MHzの矩形波(BOC変調と合わせることでMBOC変調と呼ばれる。ここで、MBOC:Multiplex Binary Offset Carrier)、それより極めて長い矩形波(セカンダリーコードと呼ばれる)の重ね合わせである。また、それは100sps(sps:シンボル パー セカンド)の符号化された航法メッセージが重畳されているチャンネルと、航法メッセージが重畳されていないチャンネルの2つから構成される。
【0006】
図16は、拡散コードの相関特性を示す図である。図16(a)に示すように、衛星測位信号の強度が十分に強い条件下(この条件については後述する)において、入力された信号の拡散コード位相と、受信機内部で生成した拡散コード(以下「コードレプリカ」と称する)のコード位相(以下「コード位相」)が一致すると、相関が得られ、広い周波数帯域上に広く拡散していた信号エネルギーを集結する。図16では、このようにコード位相が一致する点を、位相差τ=0と表示している。このように信号エネルギーが集結するという特性を利用して、受信機では、信号の受信をすることができる。
【0007】
受信機での衛星測位信号の受信処理は、大きく、2つのフェーズに分けることができる。
【0008】
第1のフェーズは、入力された信号の拡散コード位相とコードレプリカ位相が合う場所(すなわちコード位相の位相差τ=0となる場所)を探すフェーズであり、第2のフェーズは入力された信号の搬送波位相と受信機内部で生成した搬送波(以下「搬送波レプリカ」と称する)の位相(以下「搬送波位相」)、及び、コード位相を同時に合わせ続けるフェーズである。前者を信号捕捉と呼び、後者を信号追尾と呼ぶ。
【0009】
第1のフェーズと第2のフェーズにおいて、2つのコード位相が合っているかどうかは、共通的に、下の基本的な式1で計算されるのが一般的である。
【0010】
【数1】

【0011】
通常のカーナビ用の受信機では式2のΔtが1ms〜5ms程度であり、後述する高感度受信方式等の受信機ではΔtが100ms〜1s程度に長い。ここで、Ip,Qpは、一般的な衛星測位信号受信機(以下、単に「受信機」ともいう)内部で使われている名称と同一で、直交する2つの搬送波レプリカと受信信号とのそれぞれの相関である。
【0012】
受信方式の違いでの注目点は、Δt[ms]毎にこの積算結果を2乗している点である。ここで、Δt[ms]とあるのは、Δtは1msの倍数であって、通常のカーナビ用の受信機では1msから5ms程度のこともあるが20msを越えて長いことは一般にはない。また、総積算期間tnの長さは、Δt[ms]と同じ長さから40ms程度で比較的短い。一方、後述する高感度受信方式等の受信機ではΔt[ms]は100ms〜1s程度という長さである。また、総積算期間tnの長さも長くなって、Δt[ms]と同じ長さから2s程度である。Δtが長く設定されるのは、受信電力が低いときに使用されるからである。つまり、このような場合は、信号対雑音比(以下「S/N比」と称する)を改善するために、例えば1sというような長い時間に設定される訳である。
【0013】
なお、衛星測位信号のS/Nは、真数で1より極めて小さい。後に述べる「強い信号」の場合は、−20dB(100分の1)程度である。また、「弱い信号」の場合は、−50dB(10万分の1)程度である。
【0014】
衛星測位信号の地表面かつ屋外での受信電力は、−130dBm程度(以降これを「強い衛星測位信号」あるいは「強い信号」と称する)となるように、どの衛星測位システムでもほぼ同じ値で保障されており、受信機はそれを前提として設計されているのが一般的である。
【0015】
しかしながら、近年は、屋根や壁を通過した衛星測位信号を屋内でも受信することで屋内の位置決めに利用されるようになってきており、既に携帯電話などには組み込まれている。屋根や壁を通過した屋内における衛星測位信号の受信電力は−150dBm程度であり、あるいは、更に低くて−160dBm程度(以降これを「弱い衛星測位信号」あるいは「弱い信号」と称する)である。このような「弱い衛星測位信号」を受信する技術は、「高感度受信技術」と呼ばれている。
【0016】
なお、最近では、−170dBm程度の受信技術の研究もなされているものの、これは、あくまでチャンピオンデータ的であって、すでに学問的に限界と見なされており、通常的に使用されるのにも適さないので、ここでは除外して説明する。
【0017】
ここで、より詳しい説明を行うために、信号の捕捉や追尾に関わるより詳しい基本式を記述すると、Pは、以下の式3のようになる。
【0018】
【数2】

【0019】
ここで、Dsは衛星測位信号に含まれる航法メッセージ、Csは衛星測位信号に含まれる拡散コード、sin(ωst+φs)は衛星測位信号の搬送波でありωsはその角周波数でφsは位相である。また、Crは受信機内部で生成したコードレプリカ、sin(ωrt+φr)やcos(ωrt+φr)は受信機内部で生成した搬送波レプリカ、ωrはその角周波数でφrは位相である。なお、式の展開の途中において、高調波成分を削除していることに注意されたい。
(高感度受信技術について)
「高感度受信技術」とは、Δtを、例えば、100msから1s程度に長くするものであって、それによってS/Nを改善し、信号捕捉と信号追尾を行うものである。2乗処理を行うとS/Nが劣化してしまうからである。
【0020】
図17は、従来の衛星測位信号受信機300の構成を説明するための機能ブロック図である。
【0021】
なお、このような衛星測位信号受信機300の構成については、たとえば、非特許文献2に詳細な開示があるので、以下では、その概略について説明する。
【0022】
図17を参照して、衛星測位信号受信機300は、アンテナ302と、アンテナ302からの信号の増幅処理、ダウンコンバート処理およびA/D変換等の受信処理を行いデジタル中間周波数信号(デジタルIF信号,IF:Intermediate Frequency)に変換するための受信部304と、受信機内での搬送波レプリカ信号を生成するためのキャリアレプリカ生成器306と、キャリアレプリカ生成器306からの位相が互いに90度異なる搬送波レプリカ信号であるsinωrt信号とcosωrt信号とを、それぞれ受信部304の出力に積算する乗算器308.1および308.2とを含む。なお、図17においては、簡単のため、搬送波レプリカ信号の位相については省略して記載している。
【0023】
さらに、衛星測位信号受信機300は、コードレプリカ信号を生成するコードレプリカ生成器310と、乗算器308.1および308.2からの信号をそれぞれ受けて、コードレプリカ生成器310の出力をそれぞれ乗算する乗算器312.1および312.2とを含む。
【0024】
衛星測位信号受信機300は、さらに、乗算器312.1の出力を所定期間積算するためのハードウェア(H/W)積算器314.1と、乗算器312.2の出力を所定期間積算するためのH/W積算器314.2と、H/W積算器314.1および314.2の出力を受けて、S/Nの向上のための積算(2乗する前の積算と2乗後の積算)をソフトウェア的に行い、信号補足および信号追尾のために、キャリアレプリカ生成器304およびコードレプリカ生成器310を制御するベースバンド信号演算部320とを含む。たとえば、ベースバンド信号演算部320は、コードレプリカ生成器310の生成するコードをソフトウェア的に変更することが可能であるものとする。なお、ベースバンド信号演算部320は、受信した衛星測位信号に基づいて、航法メッセージの抽出を行い、さらに、測位演算を行なう。
【0025】
ここで、図17に示したような衛星測位信号受信機300の構成により、上述した「高感度受信技術」を実行するとすれば、2乗をする前の積算期間Δtが長いのでその間のデータの正負の反転を避けるために、レプリカの生成には正確な衛星と受信機との間のドップラー効果による周波数偏移の把握が必要であり、その把握は外部の情報に依存することになる。たとえば、衛星測位信号受信機300を搭載した携帯電話機によりGPSシステムを利用する場合は、受信機側では、このドップラー効果についての情報は、携帯電話機の通信ネットワークを介して受信することになる。ここで、もしも、正確なドップラー効果による偏移が知り得ないと、2乗をする前の積算中に受信信号搬送波とレプリカ信号搬送波の位相差(式4中でωs−ωr)が0〜2πの間で変動し、2乗する前の積算は正負の両方を積算することになって、積算そのものが用をなさないこととなってしまう。図17における着目点PBにおいて、そのような反転が発生し、その後の積算処理で積算されないことになる。
【0026】
さらに、2乗をする前の積算期間Δtが長いので、例えば、GPSのL1C/A信号の場合は、航法メッセージのビット(式4中でDs)の反転は1秒間で50回あり得るが、この影響を除去するためには、正確なビットの反転位置を知る必要があり、そのために、外部に依存した時刻オフセットの把握が必要である。衛星測位信号受信機300を搭載した携帯電話機によりGPSシステムを利用する場合は、受信機側では、この時刻オフセットについての情報も、携帯電話機の通信ネットワークを介して受信することになる。
【0027】
さらに、航法メッセージのビット(式4中でDs)の正負(あるいは、”0”または”1”)は、基本的には、受信機内部で試行錯誤的に判断される。そうしないと、2乗をする前の積算中にDsは反転しうるので、2乗をする前の積算は正負の両方を積算することになって、それぞれが相殺して積算処理そのものが用をなさないことになるからである。
【0028】
このような高感度受信技術については、たとえば、非特許文献3や非特許文献4に開示がある。
(屋内測位技術,ナビゲーション信号)
さて、その他、衛星測位信号を高感度受信技術で受信すること以外による屋内測位技術には、4つの擬似的な衛星を屋内に配置して測位信号、あるいはその他の目的が有りながらもレンジング可能な無線信号で、例えば、WiFi信号等を送信し衛星測位システムと同じ測位方式で位置を決定するシュードライト技術がある。
【0029】
また、その他の技術としては、屋外に衛星測位信号の受信アンテナ設置し受信信号をケーブルで引き回して屋内において放射するリピータ技術がある。
【0030】
また、その他の技術としては、1つだけの擬似的な衛星を屋内に配置してビーコンのように測位信号を送信し(あるいはその他の目的が有りながらもビーコン目的で使用可能な無線信号で、例えばRFタグ信号等)ビーコン発信位置をもって受信機の位置とするビーコン技術等がある。
【0031】
以下では、上述の擬似的衛星を前提とした測位信号のように、屋内等で衛星測位信号の受信が困難な場所に設置された送信機から、当該送信機が設置される場所の情報を送信することにより、受信機側では、当該送信機の位置をもって受信機の位置とするような測位システムにおいて、送信機から送信される当該送信機の位置を表す信号を、「ナビゲーション信号」と呼ぶことにする。
【0032】
なお、このような「ナビゲーション信号」を送信する屋内送信機において、それは前述のようなビーコン型で、屋内送信機からも、衛星測位信号と同等の信号フォーマットであって、i)拡散コードについては、衛星とは異なる拡散コードが予め屋内送信機に割り当てられており、ii)衛星測位信号のフレーム構造において「航法メッセージ」が含まれる部分には、屋内送信機の位置情報(たとえば、緯度・経度・高度や、送信機の設置させる住所や、送信機の設置されるビルの名称・階数など)が含まれているような屋内送信機について、たとえば、特許文献1(特開2007−278756号)に開示されている。
【特許文献1】特開2007−278756号公報明細書
【非特許文献1】http://www.navcen.uscg.gov/gps/geninfo/IS-GPS-200D.pdf(米国政府資料), NAVSTAR GLOBAL POSITIONING SYSTEM, INTERFACE SPECIFICATION,IS-GPS-200,Revision D,IRN-200D-001,7 March 2006, Navstar GPS Space Segment/Navigation User Interfaces
【非特許文献2】Elliott D. Kaplan編集,”Understanding GPS - Principles and Applications”, Artech House Publishers発行,1996. ISBN 0-89006-793-7
【非特許文献3】G. MacGougan, G. Lachapelle, R. Klukas, K. Siu,L. Garin, J. Shewfelt, G. Cox著,” Degraded GPS Signal Measurements With A Stand-Alone High Sensitivity Receiver”,Presented at ION National Technical Meeting, San Diego, 28-30 January 2002.
【非特許文献4】G. MacGougan, G. Lachapelle, R. Klukas, K. Siu, L. Garin , J. Shewfelt, G. Cox著," Performance analysis of a stand-alone high-sensitivity receiver",GPS Solutions (2002) 6,pp.179-195.
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0033】
しかしながら、従来の屋内送信機においては、受信機側で高感度受信を行う際に、屋内送信機からのナビゲーション信号が、受信機側の測位処理に与える影響について考慮がなされていない。
【0034】
このため、受信機側での高感度受信にナビゲーション信号が干渉を与える可能性があった。
【0035】
本願発明は、このような課題を解決するためになされたものであって、その目的は、受信機側での高感度受信に与える干渉を抑制することが可能なナビゲーション信号送信装置およびナビゲーション信号の生成方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0036】
この発明の1つの局面に従うと、衛星からのスペクトラム拡散された衛星測位信号を受信して測位を行うことが可能な受信機にナビゲーション信号を送信する、地上に設置されるナビゲーション信号送信装置であって、ナビゲーション信号に含まれる位置情報のメッセージを生成するメッセージ生成手段と、ナビゲーション信号送信装置に予め割り当てられた、測位衛星信号と同一系列の第1の拡散コードに基づいて、メッセージにスペクトラム拡散処理を行うスペクトラム拡散手段と、スペクトラム拡散された信号をナビゲーション信号として送信する送信手段と、受信機において、衛星測位信号に対する逆拡散処理の積算処理において、ナビゲーション信号と衛星測位信号との相互相関が抑制されるようにナビゲーション信号を変調するための干渉抑制手段とを備える。
【0037】
好ましくは、送信手段は、ナビゲーション信号を送信するための第1の搬送波を生成するキャリア生成手段を含み、干渉抑制手段は、搬送波の周波数を衛星測位信号の第2の搬送波の周波数に対して所定のオフセット周波数だけオフセットさせる手段を含む。
【0038】
好ましくは、第2の搬送波の周波数は、1.57542GHzであり、オフセット周波数は、15kHz以下である。
【0039】
好ましくは、スペクトラム拡散手段は、第1の拡散コードに加えて、第2の拡散コードを多重化させてメッセージスペクトラム拡散させるコード多重化手段を含み、第2の拡散コードのチップ幅は、第1の拡散コードの繰り返し周期の倍数である。
【0040】
好ましくは、第2の拡散コードは、受信機の逆拡散処理の積算処理の2乗する前の積算時間Δtの周期の倍数の期間内で、“0”と“1”の数が等しい。
【0041】
好ましくは、第2の拡散コードは、第1の拡散コードの繰り返し周期の倍数を1つの単位とし、単位毎に0と1を交互に繰り返す信号である。
【0042】
この発明の他の局面に従うと、受信機であって、オフセット周波数だけずれた信号を受信するためにキャリアレプリカ生成器を制御する機能を有する。
また、この発明の他の局面に従うと、受信機であって、第2の拡散コードを重畳するナビゲーション信号送信装置からのナビゲーション信号を受信するために、逆拡散処理の積算処理において、第2の拡散コードのパターンに応じて、積算結果を逆転させる機能を有する。
【0043】
この発明のさらに他の局面に従うと、衛星からのスペクトラム拡散された衛星測位信号を受信して測位を行うことが可能な受信機にナビゲーション信号を送信する、地上に設置されるナビゲーション信号送信装置におけるナビゲーション信号生成方法であって、ナビゲーション信号に含まれる位置情報のメッセージを生成するステップと、ナビゲーション信号送信装置に予め割り当てられた、測位衛星信号と同一系列の第1の拡散コードに基づいて、メッセージにスペクトラム拡散処理を行うステップと、受信機において、衛星測位信号に対する逆拡散処理の積算処理において、ナビゲーション信号と衛星測位信号との相互相関が抑制されるようにナビゲーション信号を変調するステップとを備える。
【0044】
この発明のさらに他の局面に従うと、ソフトウェア送信機に、衛星からのスペクトラム拡散された衛星測位信号を受信して測位を行うことが可能な受信機にナビゲーション信号を送信する、地上に設置されるナビゲーション信号送信装置としてナビゲーション信号を生成させるためのプログラムであって、ソフトウェア無線機のプロセッサに、ナビゲーション信号に含まれる位置情報のメッセージを生成するステップと、ナビゲーション信号送信装置に予め割り当てられた、測位衛星信号と同一系列の第1の拡散コードに基づいて、メッセージにスペクトラム拡散処理を行うステップと、受信機において、衛星測位信号に対する逆拡散処理の積算処理において、ナビゲーション信号と衛星測位信号との相互相関が抑制されるようにナビゲーション信号を変調するステップとを実行させる。
【発明の効果】
【0045】
本発明では、衛星測位信号の受信処理において、ナビゲーション信号と当該衛星測位信号との相互相関を抑制できるので、両信号が混在する環境下でも両者の干渉を抑制できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0046】
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施の形態について説明する。以下の説明では、同一の部品には同一の符号を付してある。それらの名称および機能も同じである。したがって、それらについての詳細な説明は繰り返さない。
<第1の実施の形態>
図1は、位置情報提供システム10の構成を表わす図である。
【0047】
図1を参照して、本発明の第1の実施の形態に係る位置情報提供システム10について説明する。位置情報提供システム10は、地上の上空約2万メートルの高度を飛行し、測位のための信号(以下、「衛星測位信号」と表わす。)を発信するGPS(Global Positioning Satellite)衛星110−1〜110−4と、位置情報を提供する装置として機能する位置情報受信装置100−1〜100−4とを備える。位置情報受信装置100−1〜100−4を総称するときは、位置情報受信装置100と表わす。位置情報受信装置100は、たとえば、携帯電話、カーナビゲーションシステムその他の移動体測位装置のように、従来の測位装置を有する端末である。
【0048】
ここで、衛星測位信号は、いわゆるスペクトラム拡散された信号であり、たとえば、いわゆるGPS信号であって、上述したL1C/A信号であるものとする。しかしながら、その信号はGPS信号に限られず、L1C信号でもよい。なお、以下では説明を簡単にするために、測位のシステムをGPSを一例として説明するが、本発明は、他の衛星測位システム(Galileo,GLONASS等)にも適用可能である。
【0049】
衛星測位信号がL1C/A信号であるとすると、既存の測位信号受信回路(たとえばGPS信号受信回路)が流用できるため、位置情報受信装置100は、新たな回路を追加することなく、測位信号を受信することができる。
【0050】
衛星測位信号が、L1C信号であれば、利用者は、新しいGPSの信号を受信、処理可能な受信機を用いて当該測位信号を受信できる。
【0051】
GPS衛星110−1には、衛星測位信号を発信する送信機120−1が搭載されている。GPS衛星110−2〜110−4にも、同様の送信機120−2〜120−4がそれぞれ搭載されている。位置情報受信装置100−1と同様の機能を有する位置情報受信装置100−2,100−3,100−4は、ビル130その他の電波が届きにくい場所でも使用可能である。
【0052】
各送信機120−1〜120−4(以下、総称して「送信機120」と称す)から測位信号として発信されるスペクトラム拡散信号は、擬似雑音符号(PRN(Pseudo Random Noise)コード)によって航法メッセージを変調することにより生成される。航法メッセージは、時刻データ、軌道情報、アルマナック、電離層補正データ等を含む。各送信機120は、さらに、それぞれ、当該送信機120自身、あるいは送信機120が搭載されるGPS衛星を識別するためのデータ(PRN−ID(Identification))を有している。
【0053】
位置情報受信装置100は、各擬似雑音符号を発生するためのデータおよびコード発生器を有している。位置情報受信装置100は、測位信号を受信すると、各衛星ごとに割り当てられた擬似雑音符号の符号パターンを用いて、復調処理を実行し、受信された信号がどの衛星から発信されたものであるかを特定することができる。また、L1C/A信号にはないが、例えば新しいL1C信号では、データの中にPRN−IDが含まれており、受信レベルが低い場合に生じやすい誤った符号パターンでの信号の捕捉・追尾を防ぐこともできる。
【0054】
GPS衛星に搭載される送信機の構成の概略は、以下のとおりである。送信機120は、それぞれ、原子時計と、データを格納する記憶装置と、発振回路と、測位信号を生成するための処理回路と、処理回路によって生成された信号をスペクトラム拡散符号化するための符号化回路と、送信アンテナ等を有する。記憶装置は、エフェメリス、各衛星のアルマナック、電離層補正データ等を有する航法メッセージと、PRN−IDとを格納している。
【0055】
処理回路は、原子時計からの時刻情報と、記憶装置に格納されている各データとを用いて送信用のメッセージを生成する。
【0056】
ここで、各送信機120毎に、スペクトラム拡散符号化するための擬似雑音符号の符号パターンが予め規定されている。各符号パターンは、送信機ごと(すなわちGPS衛星ごと)に異なる。符号化回路は、そのような擬似雑音符号を用いて、上記メッセージをスペクトラム拡散する。送信機120は、符号化された信号を高周波数に変換して、送信アンテナを介して、宇宙空間に発信する。
【0057】
上述のように、送信機120は、他の送信機との間で有害な干渉を及ぼさないスペクトラム拡散信号を発信する。ここで、「有害な干渉をおこさない」ことは、干渉が生じない程度に制限された出力レベルによって担保され得る。具体的には、疑似雑音符号の自己相関の大きさを1(=0dB)とすれば、異なる疑似雑音符号間の相互相関の大きさはそれより24dB低い値(=−24dB)となることで、実現できる。あるいは、スペクトラムを分離する態様によっても実現できる。この信号は、たとえばL1帯と称される搬送波によって送信されている。各送信機120は、たとえば、同一の周波数を有する衛星測位信号を拡散スペクトル通信方式にしたがって発信する。したがって、各衛星から送信された測位信号が位置情報受信装置100−1に受信される場合にも、各々の測位信号は、互いに混信を受けることなく受信されることになる。地上の屋内送信機からの測位信号についても、衛星から送信された信号と同様に、複数の屋内送信機からの信号は、互いに混信を受けることなく受信されることができる。
【0058】
ビル130については、ビル130の1階の天井には、屋内送信機200−1が取り付けられている。位置情報受信装置100−4は、屋内送信機200−1から発信される測位信号を受信する。同様に、ビル130の2階および3階の各フロアの天井にも、それぞれ屋内送信機200−2,200−3が取り付けられている。ここで、各屋内送信機200−1,200−2,200−3の時刻(以下、「地上時刻」という。)と、GPS衛星110,111,112,113の時刻(「衛星時刻」という。)とは、互いに独立したものでよく、必ずしも同期している必要はない。各衛星時刻は、それぞれ同期していることが好ましい。
【0059】
ここで、屋内送信機200−1,200−2,200−3は、総称して、屋内送信機200と呼ぶことにする。
【0060】
さて、屋内送信機200については、以下の説明では、特許文献1(特開2007−278756号)に開示されている屋内送信機と同様に、屋内送信機からも、衛星測位信号と同等の信号フォーマットであって、i)拡散コードについては、衛星測位信号に対する拡散コードと同一系列であって、衛星測位信号に対する拡散コードとは異なり、かつ、これらと直交する拡散コードが予め屋内送信機に割り当てられており、ii)衛星測位信号のフレーム構造において「航法メッセージ」が含まれる部分には、屋内送信機の位置情報(たとえば、緯度・経度・高度や、送信機の設置させる住所や、送信機の設置されるビルの名称・階数、位置に関係する識別子IDなど)が含まれているものとする。
【0061】
したがって、位置情報受信装置100は、高周波信号の受信のための受信ハードウェア部分は、衛星測位信号を受信する受信機のものと共通のものを用いて、ソフトウェア部分(ベースバンド信号演算部の行う処理)を変更することで、衛星測位信号と屋内送信機からの測位信号とを切り替えて受信し、屋外でも屋内でも測位を行なうことが可能である。
【0062】
なお、以下では、屋内送信機200−1,200−2,200−3のように、屋内等で衛星測位信号の受信が困難な場所に設置され、「ナビゲーション信号」を送信する送信機を「ナビゲーション信号送信装置」と呼ぶ。
【0063】
図2は、位置情報受信装置100の構成を説明するための機能ブロック図である。
図2を参照して、位置情報受信装置100は、アンテナ102と、アンテナ102からの信号の増幅処理、ダウンコンバート処理およびA/D変換等の受信処理を行いデジタル中間周波数信号(デジタルIF信号,IF:Intermediate Frequency)に変換するための受信部104と、受信機内での搬送波レプリカ信号を生成するためのキャリアレプリカ生成器106と、キャリアレプリカ生成器106からの位相が互いに90度異なる搬送波レプリカ信号であるsinωrt信号とcosωrt信号とを、それぞれ受信部104の出力に積算する乗算器108.1および108.2とを含む。なお、図2においては、簡単のため、搬送波レプリカ信号の位相については省略して記載している。
【0064】
さらに、位置情報受信装置100は、コードレプリカ信号を生成するコードレプリカ生成器110と、乗算器108.1および108.2からの信号をそれぞれ受けて、コードレプリカ生成器310の出力をそれぞれ乗算する乗算器112.1および112.2とを含む。
【0065】
ここで、位置情報受信装置100においては、コードレプリカ生成器110とコードレプリカ信号と受信信号との乗算のための乗算器112.1および112.2は、複数系統設けられ、コードレプリカ信号と受信信号との相関を検出する処理は、複数のコードについて、しかも、各コードについて生じうる位相差のそれぞれにつき並行して実行する構成となっている。このため、衛星測位信号と屋内送信機200からのナビゲーション信号が混在するような環境では、両者を並行して、補足処理を行うことになるため、たとえば、ナビゲーション信号の受信が確認されると、補足・追跡の対象を衛星測位信号からナビゲーション信号に切り替え、または、その逆を行なうことにより、屋内と屋外とで、シームレスに位置情報の獲得を可能とすることができる。
【0066】
位置情報受信装置100は、さらに、乗算器112.1の出力を所定期間積算するためのハードウェア(H/W)積算器114.1と、乗算器112.2の出力を所定期間積算するためのH/W積算器114.2とを含む。これらのH/W積算器114.1とH/W積算器114.2とも、乗算器112.1および112.2に対応して複数系統設けられている。ここで、1組のi)乗算器112.1および112.2、ii)コードレプリカ生成器110、iii)H/W積算器114.1およびH/W積算器114.2を「コリレータ」と呼び、これらが複数系統設けられて並行に動作するものを「並列コリレータ」と呼ぶ。
【0067】
位置情報受信装置100は、さらに、H/W積算器114.1および114.2の出力を受けて、S/Nの向上のための積算をソフトウェア的に行い、信号補足および信号追尾のために、キャリアレプリカ生成器104およびコードレプリカ生成器110を制御するベースバンド信号演算部120とを含む。たとえば、ベースバンド信号演算部320は、コードレプリカ生成器310の生成するコードをソフトウェア的に変更することが可能である。ここで、メモリ130中には、各衛星と屋内送信機に対してそれぞれ重ならないように割り当てられた拡散コードの符号パターンが、PRN−IDと対応付けて格納されている。ベースバンド信号演算部320は、このメモリ130中のデータに基づいて、衛星測位信号とナビゲーション信号に対する補足・追跡処理を並行して実施することが可能である。
【0068】
ベースバンド信号演算部320は、受信した衛星測位信号に基づいて、航法メッセージの抽出を行い、さらに、測位演算を行なう。さらに、ベースバンド信号演算部320は、ナビゲーション信号が受信される状態となり、補足・追跡対象がナビゲーション信号なると、このナビゲーション信号から位置情報を取得する。
(屋内測位技術の問題点)
さて、以下では、上述したような衛星測位信号と屋内送信機200からのナビゲーション信号とが混在する場合に生じる問題について説明する。
【0069】
まず、拡散コードの相関特性について、改めて詳述する。
図16に示すように、拡散コードの相関特性としては、拡散コード位相τが一致したときには大きな相関が出るが、拡散コード位相τが一致しない時はその相関値は極めて小さい。しかし、それでも相関値はゼロにはならない。「強い信号」の場合、拡散コード位相が一致したとき(拡散コード位相τ=0の時)の相関値を1とすると、拡散コード位相が一致しないときの相関の相対的値は、GPSのL1C/A信号の場合で、−24dB程度である。一方、図16(b)に示すように、「弱い信号」の場合、位相が一致しても、強い信号の相関が一致した場合に比べて、−30dB程度である。このため、「強い信号」と「弱い信号」が混在する場合は、これらの干渉が問題となる。
【0070】
図3は、受信装置100または受信機300において、強い信号を受信している場合のコリレータからの自己相関出力の積算結果の時間変化を示す図である。
【0071】
図3においては、総積算時間tnを2msとし、補足の判定(ロック判定)のスレッショルド値を超えるたびに、積算値がリセットされる状況を示している。
【0072】
図4は、受信装置100または受信機300において、弱い信号を受信している場合のコリレータからの自己相関出力の積算結果の時間変化を示す図である。
【0073】
図4においては、受信電力が弱いことに応じて、高感度受信のモードに設定がなされ、総積算時間tnは200msであるものとする。図16に示されるとおり、「弱い信号の自己相関出力」と「強い信号と弱い信号との相互相関出力」とは、ほぼ、同レベルとなる。したがって、上述したとおり、衛星からの「強い信号」と「弱い信号」が共存すると、干渉が起きることになる。
【0074】
ここで、高感度受信技術に対して、その他の屋内測位技術が与える問題点を、以下、より詳しく説明する。
【0075】
図5は、屋内において衛星測位信号を受信する場合に、想定される受信状況を説明するための図である。
【0076】
まず、衛星測位信号の受信に関して言えば、簡単に分けて、図5に示すように、4つのケースが考えられる。
【0077】
第1のケースは、「屋外環境」であって、例えば、屋外において、衛星測位信号としては、−130dBm程度の信号(強い信号)だけが頭上にあり、受信機300は、それらを受信できるケースである。
【0078】
第2のケースは、「準屋内環境」であって、例えば、屋内の窓際において、−130dBm程度の衛星測位信号(強い信号)と−160dBm程度の衛星測位信号(弱い信号)が混在しているケースである。
【0079】
第3のケースは、「屋内環境」であって、窓のない屋内であって、弱い信号だけが存在しているケースである。
【0080】
なお、第4のケースとしては、「深屋内環境」であって、建物の極めて奥まった場所であって、信号は無いものと考えられるケースである。ただし、この場合は、以下に説明するような衛星測位信号とナビゲーション信号との干渉の問題は生じないので、これ以上は、このケースについては考えない。
【0081】
図6は、衛星測位信号と屋内送信機200からのナビゲーション信号とが混在している状態を示す概念図である。
【0082】
すなわち、図6の状況は、図5の状況に加えて、屋内送信機200が屋内に設けられることにより、屋内には、ナビゲーション信号が送信されている状態である。
【0083】
したがって、この場合、衛星測位信号と屋内送信機200からのナビゲーション信号との双方に対応して測位を行うことが可能な位置情報受信装置100と、衛星測位信号のみに対応して測位を行うことが可能な受信機300とが、同一の環境下に置かれる場合がありうることになる。
【0084】
この場合、位置情報受信装置100と受信機300とは、いずれも高感度受信が可能なものであるとする。
【0085】
ここで、上述した第1のケースの屋外環境において、−130dBm程度のナビゲーション信号が加わったとしても、信号レベルは同等であり、拡散コードの識別が可能であって、干渉の問題は発生しない。以下の式はその概念を意味するものであり、受信信号SReceivedに含まれるのは強い信号であり、その相関Rは何ものにも影響を受けない。
【0086】
【数3】

【0087】
第2のケースの準屋内環境においては、仮にナビゲーション信号が無いとしても、弱い衛星測位信号に対する強い衛星測位信号からの干渉により、弱い衛星測位信号が受信できない。
【0088】
一方で、衛星測位信号により測位を行なうためには、たとえば、4つの衛星からの信号を受信することが必要である。このときは、たとえば、1つの衛星からの信号は強い信号であるものの、3つの衛星からの信号は弱い信号であるというような状態が生じうる。そのため、既存の受信機300では、まず強い衛星測位信号を受信した後に、その弱い衛星測位信号への影響を何らかの方法で除去した後に、弱い衛星測位信号を受信するという方法をとっているものもある。
【0089】
このような干渉回避については、たとえば、文献:Guenter Heinrichs, Norbert Lemke他著,"GALILEO/GPS RECEIVER ARCHITECTURE FOR HIGH SENSITIVITY ACQUISITION"(http://forschung.unibw-muenchen.de/papers/cihnayxemg1kasixjiighsvfivjpnb.pdf)に開示がある。
【0090】
下の式はその概念を意味するものであり、受信信号SReceivedに含まれるのは強い信号と弱い信号が混合されたものであり、その相関Rはそれら両者の影響を受ける。仮に、SWeakの相関を処理したい場合でも、式中の第2項のSWeakとSReplicaの相互相関が、第1項のSStrongとSReplicaの相互相関に影響を受ける。
【0091】
【数4】

【0092】
しかしながら、第2のケースの準屋内環境において、既存の受信機300にとって未知のナビゲーション信号もSStrongとして加わるとすれば、既存の受信機300は前述の影響除去方法を取りようが無く、ナビゲーション信号が既存の受信機300に与える影響は甚大である。
【0093】
また、第3のケースの屋内環境において、既存の受信機300にとって未知のナビゲーション信号がSStrongとして、受信機での弱い衛星測位信号の受信を妨害するのは明らかであり、同様にその影響は甚大である。すなわち、上式で述べたことと同じ問題が発生し、干渉源となる。
【0094】
一方、新しく設計した位置情報受信装置100は、そもそも、衛星測位信号と屋内送信機200からのナビゲーション信号との双方に対応して測位を行うことが可能なのであるから、第2のケースでも第3のケースでも、干渉は問題とはならない。
【0095】
下の式は、このような位置情報受信装置100によるナビゲーション信号の放送の目的を意味するものであり、新しいSStrongティルダ(Sの上部に〜がつく) を考案して、式中の第1項のSStrongティルダとSReplicaの相互相関を小さくさせるもので、これにより式中の第2項のSWeakとSReplicaの相互相関へ影響を与えないようにするものである。
【0096】
【数5】

【0097】
以下に説明するとおり、屋内送信機200では、このような干渉の問題を回避することが可能な信号を送信する構成となっている。
【0098】
図7は、第1の実施の形態の屋内送信機200の構成を説明するための機能ブロック図である。
【0099】
図7を参照して、屋内送信機200は、上述した屋内送信機の位置情報を含むメッセージを生成するメッセージ生成部202と、基準クロックを生成するクロック生成部203と、基準クロックに基づいて、この屋内送信機に予め割り当てられている拡散コードを生成するコード生成器204と、メッセージと拡散コードとを乗算する乗算器206とを含む。
【0100】
屋内送信機200は、さらに、クロック生成部203からの基準クロックに対して、以下に説明するような所定の周波数オフセットΔfを生じさせるようなクロック周波数の変換を行うクロック調整部208と、クロック調整部208からの調整後のクロックに基づいて、搬送波を生成するキャリア生成器210と、乗算器206の出力に対して、キャリア生成器210の出力を乗算する乗算器212とを含む。
【0101】
屋内送信機200は、さらに、乗算器212の出力をD/A変換し、アップコンバートして、増幅する等の処理を行うRF処理部214と、RF処理部214の出力を送信するための送信アンテナ220と、屋内送信機200の各部へ電力を供給するための電源216とを含む。
【0102】
なお、「ソフトウェア無線機」の技術を適用すれば、少なくとも、屋内送信機200のメッセージ生成部202、コード生成器204、乗算器206、クロック調整部208、キャリア生成器210、乗算器212の機能は、メモリ(図示せず)に記憶されたプログラムと、このプログラムに応じて動作するプロセッサとにより実現することが可能である。
【0103】
図7に説明するとおり、屋内送信機200では、搬送波周波数をΔfだけオフセットさせている。
【0104】
以下では、この周波数オフセット量Δfについて説明する。
図8は、地上での緯度60度でのGPのL1C/A信号のドップラー周波数を示す図である。図8においては、各衛星からの信号を区別して示している。地上の受信機に対して、衛星は相対的に運動しているので、図8に示すようなドップラー周波数が現れることになる。
【0105】
さて、屋内送信機200は、地上の屋内等に設置されて固定されているので、これらの屋内送信機200の設置されている場所では、衛星からの衛星測位信号には、上述のようなドップラー周波数だけ搬送周波数にずれが生じていることになる。したがって、屋内送信機200において、搬送波に周波数オフセット量Δfをかける場合には、このような衛星測位信号のドップラー周波数の影響を考慮する必要があることになる。
【0106】
図9は、GPSのL1C/A信号のドップラー周波数の範囲と屋内送信機200における周波数オフセットとを対比して示す図である。
【0107】
図9に示すように、Δfの大きさは、式5に示すように、ドップラーの最大ΔfDoppler-maxより大きな値である。ΔfDoppler-maxの値は、緯度60度においてはほぼ±5kHzである。緯度0度、つまり赤道上が最も小さく±4kHz程度であるが、いずれにしてもその程度、すなわち数kHzである。しかも、Δfの大きさは、このΔfDoppler-maxに、受信装置100等の2乗する前の積算期間Δtの間で位相が0〜2πまで1波長分ずれるだけのオフセット量であるf0を加算した値である。2乗する前の積算期間Δtは、最短1msであり、最長1s程度である。その間に、0〜2πまで変化する周波数f0の値としては、理論的には、1kHz〜1Hzである。しかしながら、この技術で、どのような型の受信機にも対応しようとすれば、f0の値としては1kHz以上が設定されることが望ましい。
【0108】
【数6】

【0109】
かつ、Δfの大きさは、従来の受信機300の一般的な設計上の周波数引き込み範囲であるΔfFrequency-Pull In Range-maxよりは小さい。ΔfFrequency-Pull In Range-maxの値は通常は15kHz以下である。
【0110】
【数7】

【0111】
即ち、図9に示すように、搬送波周波数のオフセットΔfは、既存の衛星測位システムのドップラー周波数の範囲の外になるように設定される。かつ、従来の受信機300および位置情報受信装置100が、補足動作において容易に引き込める値に設定される。
【0112】
なお、同時に、拡散周波数である1.023McpsをΔf/1540だけオフセットさせても良いし、させなくても良い。
【0113】
再び、式3を以下に示す。
【0114】
【数8】

【0115】
上述した第1の実施形態の屋内送信機200は、既存の受信機300にとって干渉の原因となりうる未知のナビゲーション信号の周波数ωsが、既存の受信機300が想定している周波数ωrに比べて、0より大きくずれている。すなわち、ωs−ωr>2π0となっている。受信機の中では、GPSのL1C/A信号を想定すると、2乗する前の積算期間Δtの長さが、いかに短くてもそれは、拡散コード(C/Aコード)の周期である1msより短くなることはない。仮に、2乗する前の積算期間Δtが1msであって、ωs−ωrが丁度1kHzの倍数(即ちnkHz:nは自然数)だけずれていれば、式3や式4の中のcosやsinの中身が丁度2πの倍数(即ち2nπ)だけ変化して、正と負に変化し、1ms間のHW積算器による積算(2乗する前の積算期間Δt=1msに相当)で電力積算がなされなくなる。そうなると、干渉を与えることはない。
【0116】
仮に、ωs−ωrが1.5kHz、2.5kHz、…のように0.5kHzの端数が有るとき(即ち、nkHz+0.5kHz, nは自然数)、式3や式4の中のcosやsinの中身が丁度(2nπ+1)だけ変化して、正負の相殺により、HW積算器による積算(2乗する前の積算期間Δt=1msに相当)は1/(2n+1)となる。これは、1ms間で、干渉への影響が1/(2n+1)に軽減されていることを示している。仮に、n=1の時は1/3であり、これは4.8dBの干渉の軽減になっている。ただし、仮に2乗する前の積算期間Δtが偶数ms間であるとすれば、すなわちHW積算器による積算を偶数回行うとすれば、この場合でもやはり正負が完全に相殺されて、理論的には電力積算がなされなくなる。そうなると、干渉を与えることはない。
【0117】
ここで、4.8dBの干渉軽減はその数字だけを見る限りは、高感度受信技術にとって、一見、必ずしも十分ではないように思われる。しかしながら、特に、高感度受信技術に対応する場合は2乗する前の積算期間Δtが長く取られていることに注意すると、実際には、実質的に十分な軽減効果があることが分かる。例えば、2乗する前の積算期間Δt=101msの時は、その間の積算結果は正負の相殺により、1/((2n+1) ×Δt)となる。2乗する前の積算期間Δt=101msであり、n=1であると、1/303であり、それは24.8dBの干渉への影響軽減に相当する。このことから、第1の実施の形態の屋内送信機200は、本来の目的である高感度受信技術への干渉回避の効果として、極めて良い性格を持つことが分かる。
【0118】
図10は、搬送波周波数にオフセット周波数を与えた時の相関処理の様子を示す図である。
【0119】
図10に示す通りであり、仮に2乗する前の積算期間Δt=1msのように最短(HW積算器の出力そのものを使用する場合)であっても、Δf=1kHzの時には、相互相関の電力は理論的に全て除去されることになる。仮に2乗する前の積算期間Δt=1msで、Δf=1.5kHzの場合には、相互相関の電力は理論的に3分の2が除去され、3分の1が残ることになる。これは、相互相関の4.8dBの性能向上に匹敵する。また、仮に2乗する前の積算期間Δt=1sと高感度受信技術で採用されるように長くて、Δf=1.5kHzの場合、相互相関の電力は3000分の1が残ることになり、それは34.8dBの相互相関性能の向上に匹敵し、C/Aコードの場合は拡散コード単独の性能として線スペクトルの問題があったとしても、現実的に受信機内部の処理を考えると性能向上としては十分である。
【0120】
以上説明のとおり、第1の実施形態の屋内送信機200からの未知のナビゲーション信号から従来の高感度受信機300へ与える影響の軽減目的から言って合致するものである。
【0121】
なお、干渉の抑制のために、周波数をずらすこと自体は、一般的に、行われることである。
【0122】
しかしながら、測位信号は拡散コードで拡散されているので、「周波数をずらして互いの干渉を抑制する」と言うことの一般的な意味は、片方の信号のヌル点(スペクトラムが落ち込む点)に残りの信号のピークを配置するものであり、このケースで言えばすなわちΔf=1.023MHz×nだけ周波数をずらすのが一般的なのであって、第1の実施形態の屋内送信機200のように微少周波数をずらすことは、上述したような干渉の問題を認識して初めて実行されるものである。
【0123】
また、Δfとして0Hz〜10kHzの範囲で、拡散コード単独の性能としての相互相関が計算され、研究解析されることがあるが、その研究解析の結論としては、Δfが10kHz程度離れただけでは、相互相関は小さくならないとのものである。そのため、当業者の一般的な常識としては、Δfが10kHz程度離れただけでは、互いに干渉が生じるというものであることを注意しておく。
【0124】
第1の実施形態の屋内送信機200においては、受信機300の受信処理に着目し、既存の衛星測位システムのドップラー周波数範囲を超える値、例えばΔf=6kHzというような極めて小さい値のオフセット周波数でも干渉の抑制には十分である。
【0125】
しかも、オフセット周波数の設定にあたって、第1の実施形態の屋内送信機200は、地上用に設置されて使用するナビゲーション信号であることから、設置して動かないという固定観念からドップラー周波数は0Hzであるものと考えがちでさえあるが、その衛星測位信号のドップラー周波数を少しだけ超える周波数に相当するΔfを考慮した上で、従来の受信機300にも受信可能な範囲内で周波数を変更すれば良いのであり、この点を利用することで、位置情報受信装置100でも、従来の測位信号受信のためのハードウェアをそのまま流用することが可能である。したがって、第1の実施形態の屋内送信機200からの信号を受信できるように、従来の受信機を改修するには、単に従来の受信機の従来から有る衛星信号の受信処理部において、そのソフトウェアでドップラー周波数に相当する部分にΔfという固定的な値を設定するだけでよい。
【0126】
したがって、第1の実施形態の屋内送信機200によれば、Δfを1.023MHz×nという大きな値ではなく、最大でも15kHz程度の小さな値に設定すればよいことから、新規受信機を設計する場合でも、従来の受信機のアナログ部に相当するアンテナや増幅器やフィルターやその他の電気回路設計等のハードウェアをそのまま使用できることに大きな利点がある。
<第2の実施の形態>
図11は、第2の実施形態の屋内送信機200′の構成を説明するための機能ブロック図である。
【0127】
図11を参照して、屋内送信機200′は、上述した屋内送信機の位置情報を含むメッセージを生成するメッセージ生成部202と、基準クロックを生成するクロック生成部203と、基準クロックに基づいて、この屋内送信機に予め割り当てられている第1の拡散コードを生成する第1のコード生成器204.1と、後に説明するように干渉を抑制するための第2の拡散コードを生成する第2のコード生成器204.2と、第1の拡散コードと第2の拡散コードとを乗算する乗算器205と、メッセージと乗算器205の出力とを乗算する乗算器206とを含む。
【0128】
屋内送信機200は、さらに、クロック生成部203からのクロックに基づいて、搬送波を生成するキャリア生成器210と、乗算器206の出力に対して、キャリア生成器210の出力を乗算する乗算器212とを含む。
【0129】
屋内送信機200は、さらに、乗算器212の出力をD/A変換し、アップコンバートして、増幅する等の処理を行うRF処理部214と、RF処理部214の出力を送信するための送信アンテナ220と、屋内送信機200の各部へ電力を供給するための電源216とを含む。
【0130】
なお、ここでも「ソフトウェア無線機」の技術を適用すれば、少なくとも、屋内送信機200´のメッセージ生成部202、第1のコード生成器204.1、第2のコード生成器204.2、乗算器205、乗算器206、キャリア生成器210、乗算器212の機能は、メモリ(図示せず)に記憶されたプログラムと、このプログラムに応じて動作するプロセッサとにより実現することが可能である。
【0131】
第2の実施形態の屋内送信機200′からの送信信号を受信する際の受信処理を示す式は、以下の式7のようになる。
【0132】
【数9】

【0133】
既存の第1の拡散コードCs-1に対して、第2の拡散コードCs-2が追加されている。
第2の拡散コードCs-2は、その繰り返し周期において、“0”と“1”の数が等しくなっている。
【0134】
そのため、受信機側では、衛星測位信号の補足・追跡処理中において、仮に2乗する前の積算期間ΔtがCs-2の繰り返し周期の倍数であれば、屋内送信機200′からの送信信号について積算される信号電力はゼロ、即ち相互相関の値は理論的にはゼロになる。
【0135】
言い換えると、第2の拡散コードでは、i)第2の拡散コードのチップ幅が、第1の拡散コードの繰り返し周期の倍数(1倍を含む)となっており、ii)信号の補足・追尾に必要なS/Nを得るための最小の2乗する前の積算期間Δtの周期(または、その倍数の周期)内で、“0”と“1”の数が等しくなっている。
【0136】
図12は、第1の拡散コードと第2の拡散コードとの関係の例を示す図である。
図12に示すように、第2の拡散コードCs-2は、特に限定されないが、たとえば、“0”と“1”が交互に繰り返し1msごとに反転する極めて単純なものである。すなわち、第2の拡散コードCs-2は2msの周期で繰り返している。そのため、仮に2乗する前の積算期間Δtが2msの倍数であれば、積算される信号電力はゼロ、即ち相互相関の値は理論的にはゼロになる。
【0137】
図13は、第2の実施の形態の屋内送信機200′からの信号が存在する環境下で、従来の受信機300(図中「既存の未対応受信機」と記す)と、受信機300に屋内送信機200′からの信号の処理に対応する改修を行った受信機(図中「対応受信機」と記す)での積算の様子を示す模式図である。
【0138】
図13に示すように、2msの積算を行うと、積算値はゼロになってしまう。
一方、位置情報受信装置100において、第2の実施の形態の屋内送信機200′による信号を受信する際において、従来の受信機300の改修で対応する場合は、極めて軽微な改修を行うだけでよい。例えば、一般の既存受信機において、1ms毎の積算器出力を処理するときに、その正負を1ms毎に、単純に交互に反転させながら処理を行わせるだけでよい。このような反転処理は、たとえば、ソフトウェアの改修により、ベースバンド信号演算部120により実行させることが可能である。
【0139】
その他に、上述のように第2の拡散コードCs-2は、“0”と“1”が交互に繰り返す単純なものではなく、例えば、メッセージデータのビットの長さである20ms毎にパターンが繰り返すものであって、この20msの間の“0”と“1”の個数は、同数(このメッセージデータの長さと第1の拡散コードの周期の場合は10個)ずつとして2乗する前の積算期間Δt中の積算への影響をなくすと共に、且つ、その並びは仮に2乗する前の積算期間Δtが20msより短いときで例えば5msのような場合でもその相互相関が従来より小さくなるように設定することもできる。
【0140】
図14は、第2の拡散コードCs-2が存在しない場合の従来のメッセージデータと第1の拡散コードの時間変化を示す図である。
【0141】
図15は、第2の拡散コードCs-2が存在する場合のメッセージデータと第1および第2の拡散コードの時間変化を示す図である。
【0142】
図15においては、上述のとおり、メッセージデータのビットの長さである20msの間に“0”と“1”の個数は、同数となっている。
【0143】
そして、一般の既存受信機を改修する場合は、1ms毎のH/W積算器出力を処理するときに、その正負を1ms毎に、この第2の拡散コードCs-2の始まりに合わせて拡散コードCs-2に応じて反転させながら処理を行わせるだけでよい。このような反転処理も、たとえば、ソフトウェアの改修により、ベースバンド信号演算部120により実行させることが可能である。
【0144】
以上説明した第2実施形態は、屋内送信機200′として、1つまたは複数のナビゲーション信号の生成、変調、および送信時に焦点を合わせたものである。しかし、受信機側では、その信号を受信し、処理するために、送信機側とは、逆のシステムおよび方法が必要である。すなわち、そのような信号を送信するシステムを設計したならば、それに対応する適当な受信機の設計は、単に、送信動作の処理の逆を行う構成とすればよい。
【0145】
また、第1の実施の形態1でのオフセット周波数の付与と、第2の実施の形態の第2の拡散コードの付加とを組み合わせて実施してもよい。この場合は、図11において、キャリア生成器210に供給されるクロックを、第1の実施の形態と同様にして、調整すればよい。
【0146】
なお、以上説明に使用した式やその説明そのものは、Pという受信電力についてのみ着目したものであったが、拡散コード位相や搬送波位相を合わせ続ける第2の信号追尾フェーズにおける追尾制御においてもやはり、“2乗する前の積算結果”は重要な意味を持つものである。
【0147】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【図面の簡単な説明】
【0148】
【図1】位置情報提供システム10の構成を表わす図である。
【図2】位置情報受信装置100の構成を説明するための機能ブロック図である。
【図3】受信装置100または受信機300において、強い信号を受信している場合のコリレータからの自己相関出力の積算結果の時間変化を示す図である。
【図4】受信装置100または受信機300において、弱い信号を受信している場合のコリレータからの自己相関出力の積算結果の時間変化を示す図である。
【図5】屋内において衛星測位信号を受信する場合に、想定される受信状況を説明するための図である。
【図6】衛星測位信号と屋内送信機200からのナビゲーション信号とが混在している状態を示す概念図である。
【図7】第1の実施の形態の屋内送信機200の構成を説明するための機能ブロック図である。
【図8】地上での緯度60度でのGPのL1C/A信号のドップラー周波数を示す図である。
【図9】GPSのL1C/A信号のドップラー周波数の範囲と屋内送信機200における周波数オフセットとを対比して示す図である。
【図10】搬送波周波数にオフセット周波数を与えた時の相関処理の様子を示す図である。
【図11】第2の実施形態の屋内送信機200′の構成を説明するための機能ブロックズである。
【図12】第1の拡散コードと第2の拡散コードとの関係の例を示す図である。
【図13】第2の実施の形態の屋内送信機200′からの信号が存在する環境下で、既存の未対応受信機と対応受信機との積算の様子を示す模式図である。
【図14】第2の拡散コードCs-2が存在しない場合の従来のメッセージデータと第1の拡散コードの時間変化を示す図である。
【図15】第2の拡散コードCs-2が存在する場合のメッセージデータと第1および第2の拡散コードの時間変化を示す図である。
【図16】拡散コードの相関特性を示す図である。
【図17】従来の衛星測位信号受信機300の構成を説明するための機能ブロック図である。
【符号の説明】
【0149】
10 位置情報提供システム、110−1〜110−4 GPS衛星、120−1〜120−4 送信機、100−1〜100−4 位置情報受信装置、130 ビル、200,200−1〜200−3 屋内送信機、202 メッセージ生成部、203 クロック生成部、204 コード生成器、204.1 第1のコード生成器、204.2 第2のコード生成器、205,206 乗算器、208 クロック調整部、210 キャリア生成器、212 乗算器、214 RF処理部、216 電源、220 送信アンテナ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
衛星からのスペクトラム拡散された衛星測位信号を受信して測位を行うことが可能な受信機にナビゲーション信号を送信する、地上に設置されるナビゲーション信号送信装置であって、
前記ナビゲーション信号に含まれる位置情報のメッセージを生成するメッセージ生成手段と、
前記ナビゲーション信号送信装置に予め割り当てられた、前記測位衛星信号と同一系列の第1の拡散コードに基づいて、前記メッセージにスペクトラム拡散処理を行うスペクトラム拡散手段と、
スペクトラム拡散された信号を前記ナビゲーション信号として送信する送信手段と、
前記受信機において、前記衛星測位信号に対する逆拡散処理の積算処理において、前記ナビゲーション信号と前記衛星測位信号との相互相関が抑制されるように前記ナビゲーション信号を変調するための干渉抑制手段とを備える、ナビゲーション信号送信装置。
【請求項2】
前記送信手段は、前記ナビゲーション信号を送信するための第1の搬送波を生成するキャリア生成手段を含み、
前記干渉抑制手段は、前記搬送波の周波数を前記衛星測位信号の第2の搬送波の周波数に対して所定のオフセット周波数だけオフセットさせる手段を含む、請求項1記載のナビゲーション信号送信装置。
【請求項3】
前記第2の搬送波の周波数は、1.57542GHzであり、
前記オフセット周波数は、15kHz以下である、請求項2記載のナビゲーション信号送信装置。
【請求項4】
前記スペクトラム拡散手段は、
前記第1の拡散コードに加えて、第2の拡散コードを多重化させて前記メッセージスペクトラム拡散させるコード多重化手段を含み、
前記第2の拡散コードのチップ幅は、前記第1の拡散コードの繰り返し周期の倍数である、請求項1または2記載のナビゲーション信号送信装置。
【請求項5】
前記第2の拡散コードは、前記受信機の逆拡散処理の積算処理の積算時間の周期の倍数の期間内で、“0”と“1”の数が等しい、請求項4記載のナビゲーション信号送信装置。
【請求項6】
前記第2の拡散コードは、前記第1の拡散コードの繰り返し周期の倍数を1つの単位とし、単位毎に0と1を交互に繰り返す信号である、請求項5記載のナビゲーション信号送信装置。
【請求項7】
前記ナビゲーション信号送信装置は、ソフトウェア無線機である、請求項1〜6のいずれかに記載のナビゲーション信号送信装置。
【請求項8】
請求項4記載のナビゲーション信号送信装置からのナビゲーション信号を受信するために、前記逆拡散処理の積算処理において、前記第2の拡散コードのパターンに応じて、積算結果を逆転させる機能を有する、受信機。
【請求項9】
衛星からのスペクトラム拡散された衛星測位信号を受信して測位を行うことが可能な受信機にナビゲーション信号を送信する、地上に設置されるナビゲーション信号送信装置におけるナビゲーション信号生成方法であって、
前記ナビゲーション信号に含まれる位置情報のメッセージを生成するステップと、
前記ナビゲーション信号送信装置に予め割り当てられた、前記測位衛星信号と同一系列の第1の拡散コードに基づいて、前記メッセージにスペクトラム拡散処理を行うステップと、
前記受信機において、前記衛星測位信号に対する逆拡散処理の積算処理において、前記ナビゲーション信号と前記衛星測位信号との相互相関が抑制されるように前記ナビゲーション信号を変調するステップとを備える、ナビゲーション信号生成方法。
【請求項10】
ソフトウェア送信機に、衛星からのスペクトラム拡散された衛星測位信号を受信して測位を行うことが可能な受信機にナビゲーション信号を送信する、地上に設置されるナビゲーション信号送信装置としてナビゲーション信号を生成させるためのプログラムであって、前記ソフトウェア無線機のプロセッサに、
前記ナビゲーション信号に含まれる位置情報のメッセージを生成するステップと、
前記ナビゲーション信号送信装置に予め割り当てられた、前記測位衛星信号と同一系列の第1の拡散コードに基づいて、前記メッセージにスペクトラム拡散処理を行うステップと、
前記受信機において、前記衛星測位信号に対する逆拡散処理の積算処理において、前記ナビゲーション信号と前記衛星測位信号との相互相関が抑制されるように前記ナビゲーション信号を変調するステップとを実行させる、ナビゲーション信号生成プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−114771(P2010−114771A)
【公開日】平成22年5月20日(2010.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−286958(P2008−286958)
【出願日】平成20年11月7日(2008.11.7)
【出願人】(507395692)ライトハウステクノロジー・アンド・コンサルティング株式会社 (6)
【Fターム(参考)】