説明

ナフタレン化合物を重合して得られる重合体

【課題】 (メタ)アクリロイルオキシアルコキシナフタレン化合物を含む単量体を重合して得られる耐熱性に優れ、屈折率の高い重合体を提供すること。
【解決手段】 次の構造式(1)で示されるナフタレン化合物成分を含む単量体成分を重合して得られたものであることを特徴とする重合体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ナフタレン化合物の重合体に関する。さらに詳しくは、(メタ)アクリロイルオキシアルコキシナフタレン化合物を含む単量体を重合して得られる耐熱性に優れ、屈折率の高い重合体に関する。
【背景技術】
【0002】
芳香族骨格を有するアクリレート化合物の重合体は、脂環式アクリレート化合物の重合体に比べ、耐熱性に優れ、屈折率が高いなどの優れた物性を示すことが知られており、主に光学製品製造用材料、反射防止膜、プラスチックレンズなどの用途に使用されている。芳香族骨格を有するアクリレート化合物として、例えば、フェニル基を有するフェノキシエチルアクリレート化合物について、いくつかの提案がされている(特許文献1、特許文献2)。さらに、ベンゼン骨格を有する化合物を重合させて得られた重合体に比較しさらに高い耐熱性、および屈折率が1.5を超える高屈折率が期待されるナフタレン骨格を有するアクリレート化合物の重合体についても、いくつかの提案がされている(特許文献3、特許文献4参照)。しかしながら、更に高い屈折率の重合体が希求されている。プラスチックレンズにあっては、原料重合体の屈折率が高いほど薄肉化が図られ、このレンズを組み込んだ製品の軽量化、小型化が可能となる。
【特許文献1】特表2002−511012
【特許文献2】特表2002−511598
【特許文献3】特開2001−276587
【特許文献4】特開平07−077637
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明はかかる状況にあって、光学材料、反射防止膜、光学機器のプラスチックレンズなどの用途に使用される、耐熱性に優れ、屈折率が1.53を超える高屈折率の重合体を提供することを目的として鋭意検討した結果、本発明を完成するに至った。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記課題を解決するために、本発明では、次の構造式(1)で示されるナフタレン化合物成分を含む単量体成分を重合して得られたものであることを特徴とする重合体を提供する。
【0005】
【化1】

【0006】
【化2】

【0007】
【化3】

【発明の効果】
【0008】
本発明は、次のような効果を奏し、その産業上の利用価値は極めて大である。
1.本発明に係る重合体は、優れた紫外線吸収性、耐熱性、耐薬品性、疎水性を発揮する。
2.本発明に係る重合体は高い屈折率を有しているので、光学材料、反射防止膜、プラスチックレンズの用途に好適である。
3.本発明に係る重合体からは、表面硬度が高く傷がつき難く、表面光沢に優れた製品が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明を詳細に説明する。本発明に係る重合体は、上記構造式(1)で示されるナフタレン化合物成分を25重量%以上含み、この成分と共重合可能な他のラジカル重合性単量体成分を75重量%以下含を含む単量体成分を重合して得られた重合体である。上記構造式(1)で示されるナフタレン化合物において、置換基Xは、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、またはハロゲン原子のいずれかを表す。Yは、上記式(2)で示される置換基を表す。Yは、Yと同一、または構造が上記式(3)で示される置換基のいずれかを表す。上記式(2)で示される置換基において、nは1以上10以下の整数を表し、Rは水素原子またはメチル基を表し、Rは水素原子、アルキル基、アリール基、アルコキシメチル基、アリールオキシメチル基、またはアリルオキシメチル基のいずれかを表す。上記式(3)で示される置換基において、Rはアルキル基、ヒドロキシアルキル基、アルコキシアルキル基、アリールオキシアルキル基、またはハロゲン化アルキル基のいずれかを表す。
【0010】
上記一般式(1)に示されるナフタレン化合物のうち、置換基YとYの双方が、上記式(2)で示される置換基を有する化合物の具体例としては、次のような化合物が挙げられる。すなわち、1,4−ジ(2−アクリロイルオキシエトキシ)ナフタレン、2−メチル−1,4−ジ(2−アクリロイルオキシエトキシ)ナフタレン、2−クロル−1,4−ジ(2−アクリロイルオキシエトキシ)ナフタレン、2−メトキシ−1,4−ジ(2−アクリロイルオキシエトキシ)ナフタレン、2−メチルチオ−1,4−ジ(2−アクリロイルオキシエトキシ)ナフタレン、1,4−ジ(2−メタクリロイルオキシエトキシ)ナフタレン、2−メチル−1,4−ジ(2−メタクリロイルオキシエトキシ)ナフタレン、2−クロル−1,4−ジ(2−メタクリロイルオキシエトキシ)ナフタレン、2−メトキシ−1,4−ジ(2−メタクリロイルオキシエトキシ)ナフタレン、2−メチルチオ−1,4−ジ(2−メタクリロイルオキシエトキシ)ナフタレン、1,4−ジ(2−アクリロイルオキシプロポキシ)ナフタレン、2−メチル−1,4−ジ(2−アクリロイルオキシプロポキシ)ナフタレン、2−クロル−1,4−ジ(2−アクリロイルオキシプロポキシ)ナフタレンなどが挙げられる。
【0011】
さらに、2−メトキシ−1,4−ジ(2−アクリロイルオキシプロポキシ)ナフタレン、2−メチルチオ−1,4−ジ(2−アクリロイルオキシプロポキシ)ナフタレン、1,4−ジ(2−メタクリロイルオキシプロポキシ)ナフタレン、2−メチル−1,4−ジ(2−メタクリロイルオキシプロポキシ)ナフタレン、2−クロル−1,4−ジ(2−メタクリロイルオキシプロポキシ)ナフタレン、2−メトキシ−1,4−ジ(2−メタクリロイルオキシプロポキシ)ナフタレン、2−メチルチオ−1,4−ジ(2−メタクリロイルオキシプロポキシ)ナフタレン、1,4−ジ(2−アクリロイルオキシブトキシ)ナフタレン、2−メチル−1,4−ジ(2−アクリロイルオキシブトキシ)ナフタレン、2−クロル−1,4−ジ(2−アクリロイルオキシブトキシ)ナフタレン、2−メトキシ−1,4−ジ(2−アクリロイルオキシブトキシ)ナフタレン、2−メチルチオ−1,4−ジ(2−アクリロイルオキシブトキシ)ナフタレン、1,4−ジ(2−メタクリロイルオキシブトキシ)ナフタレン、2−メチル−1,4−ジ(2−メタクリロイルオキシブトキシ)ナフタレン、2−クロル−1,4−ジ(2−メタクリロイルオキシブトキシ)ナフタレン、2−メトキシ−1,4−ジ(2−メタクリロイルオキシブトキシ)ナフタレン、2−メチルチオ−1,4−ジ(2−メタクリロイルオキシブトキシ)ナフタレンなどが挙げられる。
【0012】
上記一般式(1)に示されるナフタレン化合物のうち、置換基Yが上記式(3)で示される化合物の具体例としては、次のようなものが挙げられる。すなわち、4−メトキシ−1−(2−アクリロイルオキシエトキシ)ナフタレン、2−メチル−4−メトキシ−1−(2−アクリロイルオキシエトキシ)ナフタレン、2−クロル−4−メトキシ−1−(2−アクリロイルオキシエトキシ)ナフタレン、2,4−ジメトキシ−4−メトキシ−1−(2−アクリロイルオキシエトキシ)ナフタレン、2−メチルチオ−4−メトキシ−1−(2−アクリロイルオキシエトキシ)ナフタレン、4−メトキシ−1−(2−メタクリロイルオキシエトキシ)ナフタレン、2−メチル−4−メトキシ−1−(2−メタクリロイルオキシエトキシ)ナフタレン、2−クロル−4−メトキシ−1−(2−メタクリロイルオキシエトキシ)ナフタレン、2,4−ジメトキシ−4−メトキシ−1−(2−メタクリロイルオキシエトキシ)ナフタレン、2−メチルチオ−4−メトキシ−1−(2−メタクリロイルオキシエトキシ)ナフタレン、4−メトキシ−1−(2−アクリロイルオキシプロポキシ)ナフタレン、2−メチル−4−メトキシ−1−(2−アクリロイルオキシプロポキシ)ナフタレン、2−クロル−4−メトキシ−1−(2−アクリロイルオキシプロポキシ)ナフタレン、2,4−ジメトキシ−4−メトキシ−1−(2−アクリロイルオキシプロポキシ)ナフタレン、2−メチルチオ−4−メトキシ−1−(2−アクリロイルオキシプロポキシ)ナフタレン、4−メトキシ−1−(2−メタクリロイルオキシプロポキシ)ナフタレン、2−メチル−4−メトキシ−1−(2−メタクリロイルオキシプロポキシ)ナフタレン、2−クロル−4−メトキシ−1−(2−メタクリロイルオキシプロポキシ)ナフタレン、2,4−ジメトキシ−4−メトキシ−1−(2−メタクリロイルオキシプロポキシ)ナフタレン、2−メチルチオ−4−メトキシ−1−(2−メタクリロイルオキシプロポキシ)ナフタレンなどが挙げられる。
【0013】
さらに、4−エトキシ−1−(2−アクリロイルオキシエトキシ)ナフタレン、2−メチル−4−エトキシ−1−(2−アクリロイルオキシエトキシ)ナフタレン、2−クロル−4−エトキシ−1−(2−アクリロイルオキシエトキシ)ナフタレン、2−メトキシ−4−エトキシ−1−(2−アクリロイルオキシエトキシ)ナフタレン、2−メチルチオ−4−エトキシ−1−(2−アクリロイルオキシエトキシ)ナフタレン、4−エトキシ−1−(2−メタクリロイルオキシエトキシ)ナフタレン、2−メチル−4−エトキシ−1−(2−メタクリロイルオキシエトキシ)ナフタレン、2−クロル−4−エトキシ−(2−メタクリロイルオキシエトキシ)ナフタレン、2−メトキシ−4−エトキシ−1−(2−メタクリロイルオキシエトキシ)ナフタレン、2−メチルチオ−4−エトキシ−1−(2−メタクリロイルオキシエトキシ)ナフタレン、4−エトキシ−1−(2−アクリロイルオキシプロポキシ)ナフタレン、2−メチル−4−エトキシ−1−(2−アクリロイルオキシプロポキシ)ナフタレン、2−クロル−4−エトキシ−1−(2−アクリロイルオキシプロポキシ)ナフタレン、2−メトキシ−4−エトキシ−1−(2−アクリロイルオキシプロポキシ)ナフタレン、2−メチルチオ−4−エトキシ−1−(2−アクリロイルオキシプロポキシ)ナフタレン、4−エトキシ−1−(2−メタクリロイルオキシプロポキシ)ナフタレン、2−メチル−4−エトキシ−1−(2−メタクリロイルオキシプロポキシ)ナフタレン、2−クロル−4−エトキシ−(2−メタクリロイルオキシプロポキシ)ナフタレン、2−メトキシ−4−エトキシ−1−(2−メタクリロイルオキシプロポキシ)ナフタレン、2−メチルチオ−4−エトキシ−1−(2−メタクリロイルオキシプロポキシ)ナフタレンなどが挙げられる。
【0014】
また、4−(2−ヒドロキシエトキシ)−1−(2−アクリロイルオキシエトキシ)ナフタレン、2−メチル−4−(ヒドロキシメトキシ)−1−(2−アクリロイルオキシエトキシ)ナフタレン、2−クロル−4−(2−ヒドロキシエトキシ)−1−(2−アクリロイルオキシエトキシ)ナフタレン、2−メトキシ−4−(ヒドロキシメトキシ)−1−(2−アクリロイルオキシエトキシ)ナフタレン、2−メチルチオ−4−(2−ヒドロキシエトキシ)−1−(2−アクリロイルオキシエトキシ)ナフタレン、2−メトキシ−4−(ヒドロキシメトキシ)−1−(2−アクリロイルオキシエトキシ)ナフタレン、4−(2−ヒドロキシエトキシ)−1−(2−メタクリロイルオキシエトキシ)ナフタレン、2−メチル−4−(ヒドロキシメトキシ)−1−(2−メタクリロイルオキシエトキシ)ナフタレン、2−クロル−4−(2−ヒドロキシエトキシ)−1−(2−メタクリロイルオキシエトキシ)ナフタレン、2−メトキシ−4−(ヒドロキシメトキシ)−1−(2−メタクリロイルオキシエトキシ)ナフタレン、2−メチルチオ−4−(2−ヒドロキシエトキシ)−1−(2−メタクリロイルオキシエトキシ)ナフタレン、2−メトキシ−4−(ヒドロキシメトキシ)−1−(2−メタクリロイルオキシエトキシ)ナフタレン、4−(2−メトキシエトキシ)−1−(2−アクリロイルオキシエトキシ)ナフタレン、2−メチル−4−(メトキシメトキシ)−1−(2−アクリロイルオキシエトキシ)ナフタレン、2−クロル−4−(2−メトキシエトキシ)−1−(2−アクリロイルオキシエトキシ)ナフタレン、2−メトキシ−4−(メトキシメトキシ)−1−(2−アクリロイルオキシエトキシ)ナフタレン、2−メチルチオ−4−(2−メトキシエトキシ)−1−(2−アクリロイルオキシエトキシ)ナフタレン、2−メトキシ−4−(メトキシメトキシ)−1−(2−アクリロイルオキシエトキシ)ナフタレン、4−(2−メトキシエトキシ)−1−(2−メタクリロイルオキシエトキシ)ナフタレン、2−メチル−4−(メトキシメトキシ)−1−(2−メタクリロイルオキシエトキシ)ナフタレン、2−クロル−4−(2−メトキシエトキシ)−1−(2−メタクリロイルオキシエトキシ)ナフタレン、2−メトキシ−4−(メトキシメトキシ)−1−(2−メタクリロイルオキシエトキシ)ナフタレン、2−メチルチオ−4−(2−メトキシエトキシ)−1−(2−メタクリロイルオキシエトキシ)ナフタレン、2−メトキシ−4−(メトキシメトキシ)−1−(2−メタクリロイルオキシエトキシ)ナフタレン、4−(2−クロロエトキシ)−1−(2−アクリロイルオキシエトキシ)ナフタレン、2−メチル−4−(クロロメトキシ)−1−(2−アクリロイルオキシエトキシ)ナフタレン、2−クロル−4−(2−クロロエトキシ)−1−(2−アクリロイルオキシエトキシ)ナフタレン、2−メトキシ−4−(クロロメトキシ)−1−(2−アクリロイルオキシエトキシ)ナフタレン、2−メチルチオ−4−(2−クロロエトキシ)−1−(2−アクリロイルオキシエトキシ)ナフタレン、2−メトキシ−4−(クロロメトキシ)−1−(2−アクリロイルオキシエトキシ)ナフタレン、4−(2−クロロエトキシ)−1−(2−メタクリロイルオキシエトキシ)ナフタレン、2−メチル−4−(クロロメトキシ)−1−(2−メタクリロイルオキシエトキシ)ナフタレン、2−クロル−4−(2−クロロエトキシ)−1−(2−メタクリロイルオキシエトキシ)ナフタレン、2−メトキシ−4−(クロロメトキシ)−1−(2−メタクリロイルオキシエトキシ)ナフタレン、2−メチルチオ−4−(2−クロロエトキシ)−1−(2−メタクリロイルオキシエトキシ)ナフタレン、2−メトキシ−4−(クロロメトキシ)−1−(2−メタクリロイルオキシエトキシ)ナフタレンなどが挙げられる。
【0015】
さらにまた、4−(2−フェノキシエトキシ)−1−(2−アクリロイルオキシエトキシ)ナフタレン、2−メチル−4−(2−フェノキシエトキシ)−1−(2−アクリロイルオキシエトキシ)ナフタレン、2−クロル−4−(2−フェノキシエトキシ)−1−(2−アクリロイルオキシエトキシ)ナフタレン、2−メトキシ−4−(2−フェノキシエトキシ)−1−(2−アクリロイルオキシエトキシ)ナフタレン、2−メチルチオ−4−(2−フェノキシエトキシ)−1−(2−アクリロイルオキシエトキシ)ナフタレン、4−(2−フェノキシエトキシ)−1−(2−メタクリロイルオキシエトキシ)ナフタレン、2−メチル−4−(2−フェノキシエトキシ)−1−(2−メタクリロイルオキシエトキシ)ナフタレン、2−クロル−4−(2−フェノキシエトキシ)−(2−メタクリロイルオキシエトキシ)ナフタレン、2−メトキシ−4−(2−フェノキシエトキシ)−1−(2−メタクリロイルオキシエトキシ)ナフタレン、2−メチルチオ−4−(2−フェノキシエトキシ)−1−(2−メタクリロイルオキシエトキシ)ナフタレン、4−(2−フェノキシエトキシ)−1−(2−アクリロイルオキシプロポキシ)ナフタレン、2−メチル−4−(2−フェノキシエトキシ)−1−(2−アクリロイルオキシプロポキシ)ナフタレン、2−クロル−4−(2−フェノキシエトキシ)−1−(2−アクリロイルオキシプロポキシ)ナフタレン、2−メトキシ−4−(2−フェノキシエトキシ)−1−(2−アクリロイルオキシプロポキシ)ナフタレン、2−メチルチオ−4−(2−フェノキシエトキシ)−1−(2−アクリロイルオキシプロポキシ)ナフタレン、4−(2−フェノキシエトキシ)−1−(2−メタクリロイルオキシプロポキシ)ナフタレン、2−メチル−4−(2−フェノキシエトキシ)−1−(2−メタクリロイルオキシプロポキシ)ナフタレン、2−クロル−4−(2−フェノキシエトキシ)−(2−メタクリロイルオキシプロポキシ)ナフタレン、2−メトキシ−4−(2−フェノキシエトキシ)−1−(2−メタクリロイルオキシプロポキシ)ナフタレン、2−メチルチオ−4−(2−フェノキシエトキシ)−1−(2−メタクリロイルオキシプロポキシ)ナフタレン等が挙げられる。
【0016】
上記構造式(1)で示される代表的な化合物としては、以下の構造式(4)〜(7)として示したものが挙げられる。
【0017】
【化4】

【0018】
【化5】

【0019】
【化6】

【0020】
【化7】

【0021】
本発明に係る上記構造式(1)で表わされる重合体製造用の原料単量体である、(メタ)アクリロイルオキシアルコキシナフタレン化合物(A){以下、単に(A)成分と記載することがある。}は、ヒドロキシアルコキシナフタレン化合物(a){以下、単に(a)成分と記載することがある。}を、溶媒(c)中で、塩基性化合物(d)の存在下、塩化アクリロイルまたは塩化メタクリロイル(b){以下、単に(b)成分と記載することがある。}と反応させることにより製造することができる。
【0022】
ヒドロキシアルコキシナフタレン化合物(a)の具体例としては、1,4−ジ(2−ヒドロキシエトキシ)ナフタレン、1,4−ジ(2−ヒドロキシプロポキシ)ナフタレン、1,4−ジ(2−ヒドロキシブトキシ)ナフタレン、4−メトキシ−1−(2−ヒドロキシエトキシ)ナフタレン、4−メトキシ1−(2−ヒドロキシプロポキシ)ナフタレン、4−メトキシ−1−(2−ヒドロキシブトキシ)ナフタレン、4−エトキシ−1−(2−ヒドロキシエトキシ)ナフタレン、4−エトキシ−1−(2−ヒドロキシプロポキシ)ナフタレン、4−エトキシ−1−(2−ヒドロキシブトキシ)ナフタレン、4−(2−フェノキシエトキシ)−1−(2−ヒドロキシエトキシ)ナフタレン、4−(2−フェノキシエトキシ)−1−(2−ヒドロキシプロポキシ)ナフタレン、4−(2−フェノキシエトキシ)−1−(2−ヒドロキシブトキシ)ナフタレンなどが挙げられる。
【0023】
上記反応で使用される溶媒(c)としては、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン系溶媒、ベンゼン、トルエン、キシレン、クロロベンゼンなどの芳香族系溶媒、ジクロロメタン、ジクロロエタン、ジクロロエチレンなどのハロゲン系溶媒、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサンなどのエーテル系溶媒、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミドなどのアミド系溶媒が挙げられる。この溶媒(c)の使用量は、(a)成分と(b)成分との合計100重量部に対して、50〜200重量部の範囲で選ぶことができる。
【0024】
反応系に存在させる塩基性化合物(d)としては、トリメチルアミン、トリエチルアミン、ピペリジン、ピリジンなどの有機アミン化合物が挙げられる。(A)成分を製造する際の塩基性化合物(d)の使用量は、ヒドロキシアルコキシナフタレン化合物(a)に対して(d)成分を2〜3モル倍の範囲で選ぶのが好ましい。(a)成分に対する(d)成分の量が2モル倍未満では、ヒドロキシアルコキシナフタレン化合物(a)を完全に反応させるのが困難で未反応物として残留し易く、3モル倍を超えると生成物の単離収率が下がり易く好ましくない。
【0025】
本発明で使用する塩化アクリロイルおよび/または塩化メタアクリロイル(b)は、ヒドロキシアルコキシナフタレン化合物(a)に対して、1〜5モル倍の範囲で選ぶのが好ましい。(a)成分1モルに対する(b)成分の量が1モル倍未満では、未反応の(a)成分が残り易く、また5モル倍を超えると、(b)成分自体が重合するため(A)成分の純度が低下し、好ましくない。好ましい(b)成分の添加量は、(a)成分1モルに対して2〜3モル倍の範囲である。
【0026】
(A)成分を製造する際の反応温度は、0℃〜80℃の範囲で選ぶのが好ましい。反応温度が0℃未満では、反応が遅く、80℃を超えると副反応が起こり易く、(A)成分の純度が低下し、これの精製分離が困難となり好ましくない。より好ましい反応温度は、20〜40℃である。
【0027】
(A)成分を製造する際には、反応の進行に伴い溶媒(c)中に塩基性化合物の塩酸塩が析出する。反応溶媒として水溶性ケトンまたは水溶性エーテルを用いた場合には、析出した塩基性化合物の塩酸塩に水を加えて溶解させ、ついでさらに水を加えることによって(A)成分を析出させることができる。析出物を濾過・乾燥し、相当する(A)成分を得ることができる。また、反応溶媒として水不溶性の溶媒を用いた場合には、反応終了後水を加えて塩基性化合物の塩酸塩を溶かして有機層と水層の2層とし、分液操作により水層を分離し、次いで有機層を濃縮し、n-ヘキサン、シクロヘキサンなどの貧溶媒を加えることによって、(A)成分を析出させることができる。
【0028】
かくして得られた(メタ)アクリロイルオキシアルコキシナフタレン化合物(A)は、(A)成分単独で、または、(A)成分と(A)成分と共重合可能な他のラジカル共重合性単量体(B){以下、(B)成分と記載することがある。}と混合して、熱ラジカル重合開始剤(e)または光ラジカル重合開始剤(f)などの存在下、(共)重合させることができる。
【0029】
ラジカル共重合性単量体(B)の具体例としては、スチレン、酢酸ビニル、アクリル酸、メタクリル酸、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、アクリルアミド、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、テトラエチレングリコールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、エポキシアクリレート、ウレタンアクリレートポリエステルアクリレート、ポリブタジエンアクリレート、ポリオールアクリレート、ポリエーテルアクリレート、シリコーン樹脂アクリレート、イミドアクリレート、フェニルアクリレート、フェニルメタクリレート、p−トリルアクリレート、p−トリルメタクリレート、m−トリルアクリレート、m−トリルメタクリレート、o−トリルアクリレート、o−トリルメタクリレート、2−フェノキシエチルアクリレート、2−フェノキシエチルメタクリレート、ビフェニル−4−イル−アクリレート、ビフェニル−4−イル−メタクリレート、4−フェノキシフェニルアクリレート、4−フェノキシフェニルメタクリレート、2−フェノキシフェニルアクリレート、2−フェノキシフェニルメタクリレート、2−(ビフェニル−4−イルオキシ)エチルアクリレート、2−(ビフェニル−4−イルオキシ)エチルメタクリレート、2−(ビフェニル−2−イルオキシ)エチルアクリレート、2−(ビフェニル−2−イルオキシ)エチルメタクリレート、1−ナフチルアクリレート、1−ナフチルメタクリレート、2−ナフチルアクリレート、2−ナフチルメタクリレート、4−メトキシ−1−ナフチルアクリレート、4−メトキシ−1−ナフチルメタクリレート、4−(2−フェノキシエトキシ)−1−ナフチルアクリレート、4−(2−フェノキシエトキシ)−1−ナフチルメタクリレート、9−アントリルアクリレート、9−アントリルメタクリレート、2−(9−アントリルオキシ)エチルアクリレート、2−(9−アントリルオキシ)エチルメタクリレート、9−アントリルメチルアクリレート、9−アントリルメチルメタクリレートなどのアクリレート類が挙げられる。
【0030】
さらに、前記構造式(1)で表わされる化合物に該当しないナフタレン化合物が挙げられる。具体的には、1,4−ジアクリロイルオキシナフタレン、1,4−ジメタクリロイルオキシナフタレン、1,6−ジアクリロイルオキシナフタレン、1、6−ジメタクリロイルオキシナフタレン、1,5−ジアクリロイルオキシナフタレン、1,5−ジメタクリロイルオキシナフタレン、2,6−ジアクリロイルオキシナフタレン、2,6−ジメタクリロイルオキシナフタレン、2,7−ジアクリロイルオキシナフタレン、2,7−ジメタクリロイルオキシナフタレン、1,2,4−トリアクリロイルオキシナフタレン、1,2,4−トリメタクリロイルオキシナフタレン、9,10−ジアクリロイルオキシアントラセン、9,10−ジメタクリロイルオキシアントラセン、1,4−ジヒドロ−9,10−ジアクリロイルオキシアントラセン、1,4−ジヒドロ−9,10−ジメタクリロイルオキシアントラセン、1,2,3,4−テトラヒドロ−9,10−ジアクリロイルオキシアントラセン、1,2,3,4−テトラヒドロ−9,10−ジメタクリロイルオキシアントラセン、4,4’−(9H−フルオレン−9,9’−ジイル)ジフェニルジアクリレートなどが挙げられる。
【0031】
ラジカル共重合性単量体(B)は、一種類でも二種類以上であってもよい。前記(A)成分と共重合させる際の(B)成分の割合は、(A)成分と(B)成分との相溶性にもよるが、(A)成分と(B)成分との合計量に対して、75重量%以下とするのが好ましい。(B)成分の割合が75重量%を超えると、重合体は耐熱性の低下、屈折率の低下などの性能低下が著しくなり好ましくない。(B)成分の割合が50重量%以下であると、重合体は耐熱性と屈折率などがバランスして好適である。なお、共重合させる(B)成分によっては、共重合体の屈折率を本発明の目的の1.53以上とすることができない場合があるので、屈折率が1.53を超えるように種類と量を選択、組合せるのが好ましい。
【0032】
本発明において熱ラジカル重合開始剤(e)とは、加熱されることによって熱分解してラジカルを発生する有機過酸化物やアゾ系化合物などをいう。有機過酸化物の具体例としては、t−ヘキシルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、t−ヘキシルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシ−3,5,5−トリメチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート類などのパーオキシエステル類、1,1−ビス(t−ヘキシルパーオキシ)−3,5,5−トリメチルシクロヘキサンなどのパーオキシケタール類、 ラウロイルパーオキサイドなどのジアシルパーオキサイド類が挙げられる。また、アゾ系化合物の具体例としては、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロ)ニトリル、1,1’−アゾビス(シクロヘキサン−1−カーボニトリル)などのアゾニトリル類が挙げられる。
【0033】
本発明において光ラジカル重合開始剤(f)とは、380nm以上の波長によって励起されてラジカルを発生する化合物をいう。光ラジカル重合開始剤(f)の具体例としては、アシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤が挙げられる。市販されている製品として、トリメチルベンゾイル−ジフェニル−フォスフィンオキサイド(チバ・スペシャリティ社製、商品名:DAROCUR TPO)、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド(チバ・スペシャリティ社製、商品名:IRGACURE819)、ビス(η−5−2,4−シクロペンタジエン−1−イル)
−ビス(2,6−ジフルオロ−3−(1H−ピロール−1−イル) −フェニル)チタニウム(チバ・スペシャリティ社製、商品名:IRGACURE784)などが挙げられる。さらには、ナフタセンキノン化合物である6,12−ビス(トリメチルシリルオキシ)−1,11−ナフタセンキノンが挙げられる。これらの光ラジカル重合開始剤の中で好ましのは、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイドである。
【0034】
光ラジカル重合開始剤(f)の添加量は、光ラジカル重合開始剤の種類、(A)成分の種類、場合により併用される(B)成分の種類、両成分の割合、重合温度などに依存するが、(A)成分、および場合により併用される(B)成分の合計量に対して0.1〜5.0重量%の範囲で選ぶのが好ましい。添加量が0.1重量%より少ないと重合速度が遅く、5.0重量%より多いと重合体の物性が悪化することがあるので好ましくない。光ラジカル重合開始剤(f)の特に好ましい添加量は、0.3〜1.0重量%である。
【0035】
(A)成分、および場合により併用される(B)成分は、塊状重合法、溶液重合法、懸濁重合法、乳化重合法などによって重合させることができる。重合体の用途が主として光学材料であるので、重合体に不純物が含まれ難い塊状重合法、溶液重合法が好適である。重合体を光ラジカル重合させる際には、例えば、ポリエステルフィルムなどの基材表面に、液状の重合体組成物をバーコーターを用いて塗布し、ついで塗布膜に紫外線領域または赤外線領域の光線を照射することによって重合を開始させ、硬化させることができる。基材は、鋼板、印刷製版、フィルム、紙、アルミニウム箔などの外観が平面を呈するもののほか、曲面を呈するもの、立体を呈するものであってもよい。光源としては、高圧水銀ランプ、超高圧水銀ランプ、メタルハライドランプ、キセノンランプ、フュージョン社製のHランプ、Dランプ、Vランプ、紫外線LEDランプ、青色LEDランプ、白色LEDランプなどが挙げられる。太陽光であってもよい。光ラジカル重合は、酸素不存在下で行うのが好ましい。酸素存在下で行うと、酸素によって阻害されて重合速度が遅くなり、重合開始剤の大量添加が必要となる。、酸素不存在下の重合法とは、窒素ガス、ヘリウムガスなどの不活性ガスの雰囲気下で行うことである。
【0036】
このようにして得られる重合体は、その構造から紫外線吸収性、耐熱性、耐薬品性、疎水性などに優れ、表面硬度が高く傷がつき難い。重合体は耐熱性が優れているので、耐熱性が要求される精密製品・部品の製造用材料として好適である。また、表面光沢に優れた製品が得られ、高い屈折率を有しているので、光学製品製造用材料、反射防止膜、プラスチックレンズの用途に使用できる。
【実施例】
【0037】
以下、実施例に基づいて本発明を詳細に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の記載例に限定されるものではない。なお、以下に記載例において、部および百分率は特記しない限り重量基準である。
【0038】
[製造例1]
<1,4−ジ(2−アクリロイルオキシエトキシ)ナフタレン(単量体1)の合成>
第一反応では、1,4−ジ(2−ヒドロキシエトキシ)ナフタレンを下記の方法で合成し、次いで第二反応では、1,4−ジ(2−アクリロイルオキシエトキシ)ナフタレン(単量体1)を下記の方法で合成した。
【0039】
<第一反応>
攪拌機、温度計を装備した容量が200mlの三口フラスコに、ナフタレン−1,4−ジオール5.0g(31ミリモル)をジメチルホルムアミド50mlに溶解して仕込み、次いでブロモエタノール15.6g(144ミリモル)を添加した。次いでフラスコに、炭酸カリウム12.9gを添加し、フラスコの内容物を攪拌・混合しながら90℃に昇温し、この温度で反応させた。反応終了後、反応液に純水100mlを加えて反応生成物の結晶を析出させた。析出した結晶を濾別し、得られた結晶を純水20mlによって洗浄し、引き続き減圧乾燥して白色の粉末状を呈する1,4−ジ(2−ヒドロキシエトキシ)ナフタレン3.3g(13.3ミリモル)を得た。生成物のナフタレン−1,4−ジオールに対する収率は、43モル%であった。生成物の融点(JIS K0064に準拠したゲレンキャンプ社製の融点測定装置、型式:MFB−595を使用した。)は、108〜109℃であった。
【0040】
<第二反応>
攪拌機、温度計を装備した容量が50mlの三口フラスコに、1,4−ジ(2−ヒドロキシエトキシ)ナフタレン1.5g(6ミリモル)をアセトン10g中に分散したものを仕込み、さらに塩化アクリロイル1.1g(12ミリモル)を添加した。ついで、フラスコ内容物を氷水で冷却しながら、トリエチルアミン1.2g(12ミリモル)を添加して攪拌しつつ反応させた。フラスコ内容物は反応中に弱く発熱し、均一溶液となったが、すぐにトリエチルアミンの塩酸塩が析出した。反応液を室温に戻して30分攪拌した後、水10gを添加してさらに攪拌を継続したところ、析出した塩酸塩は全て溶解した。溶液をこのまま約5分間静置したところ、粘稠なオイルが沈んだので、このオイルを分離した。ついでこのオイルにn−ヘキサンを15ml加え、5℃に設定した冷蔵庫に約60分間静置した。オイルが固化したので室温に戻して、n−ヘキサン中でリスラリー化し、吸引濾過・乾燥して白色の結晶0.9g(2.53ミリモル)得た。生成物の1,4−ジ(2−ヒドロキシエトキシ)ナフタレンに対する収率は、42モル%であった。
【0041】
得られた白色結晶について、(1)融点(上に同じ)、(2)赤外線(IR)分光光度計(日本分光社製、型式:IR−810を使用した。)によるIRスペクトル、(3)核磁気共鳴装置(NMR)(日本電子社製、型式:GSX FT NMR Spectorometerを使用した。)によるH−NMR分析、(4)Massスペクトル(島津製作所社製、質量分析計、型式:GCMS−QP5000を使用した。)などを測定した。
【0042】
測定結果は次のとおりであり、白色結晶は1,4−ジ(2−アクリロイルオキシエトキシ)ナフタレン(単量体1)であることが確認された。
(1)融点:58〜59℃
(2)赤外線(IR)吸収スペクトル(KBr,cm−1):742,770,806,973,1068,1100,1155,1198,1237,1268,1406,1452,1590,1728などの波長に吸収が認められた。
(3)H−NMR(CDCl,ppm):δ=4.31(t,4H,メチレン),4.62(t,4H,メチレン),5.84(dd,2H,ビニル基),6.17(dd,2H,ビニル基),6.46(dd,2H,ビニル基),6.68(s,2H,ナフタレン環),7.42−7.55(m,2H,ナフタレン環),8.14−8.26(m,2H,ナフタレン環
(4)マススペクトル:(EI−MS)m/z=356(M
【0043】
[製造例2]
<1,4−ジ(2−メタクリロイルオキシエトキシ)ナフタレン(単量体2)の合成>
製造例1の第一反応に次いで、第二反応では1,4−ジ(2−メタクリロイルオキシエトキシ)ナフタレン(単量体2)を下記の方法で合成した。
【0044】
<第一反応>
[製造例1]に記載した手順と同様である。
【0045】
<第二反応>
攪拌機、温度計を装備した容量が50mlの三口フラスコに、1,4−ジ(2−ヒドロキシエトキシ)ナフタレン1.5g(6ミリモル)をアセトン10g中に分散させて仕込み、さらに塩化メタクリロイル1.3g(12ミリモル)加えた。ついで、フラスコ内容物を氷水で冷却しながら、トリエチルアミン1.2g(12ミリモル)を添加して反応させた。フラスコ内容物は反応中に弱く発熱し、均一溶液となったが、すぐにトリエチルアミンの塩酸塩が析出した。反応液を室温に戻して室温で30分攪拌した後、水10gを添加してさらに攪拌を継続したところ、析出した塩酸塩は全て溶解した。溶液をこのまま約5分間静置したところ、粘稠なオイルが沈んだので、このオイルを分離した。ついでこのオイルにn−ヘキサンを15ml加え、温度を5℃に設定した冷蔵庫に約30分間静置した。オイルが固化したので室温に戻して、n−ヘキサン中でリスラリー化し、吸引濾過・乾燥して白色の結晶1.0g(2.6ミリモル)得た。生成物の1,4−ジ(2−ヒドロキシエトキシ)ナフタレンに対する収率は、43モル%であった。
【0046】
得られた白色結晶について、(1)融点(上に同じ)、(2)赤外線(IR)分光光度計(上に同じ)によるIRスペクトル、(3)核磁気共鳴装置(NMR)(上に同じ)、(4)Massスペクトル(上に同じ)、などを測定した。
【0047】
測定結果は次のとおりであり、この測定結果から白色結晶は1,4−ジ(2−メタクリロイルオキシエトキシ)ナフタレン(単量体2)であることが確認された。
(1)融点:75〜76℃
(2)赤外線(IR)吸収スペクトル(KBr,cm−1):762,935,1100,1170,1240,1275,1320,1383,1450,1590,1625,1715,2950などの波長に吸収が認められた。
(3)H−NMR(CDCl,ppm):δ=1.96(s,6H,メチル基),4.34(t,4H,メチレン),4.62(t,4H,メチレン),5.59(t,2H,ビニル基),6.16(s,2H,ビニル基),6.72(s,2H,ナフタレン環),7.48−7.53(m,2H,ナフタレン環),8.15−8.25(m,2H,ナフタレン環)
(4)マススペクトル:(EI−MS)m/z=384(M
【0048】
[製造例3]
<4−(2−フェノキシエトキシ)−1−(2−アクリロイルオキシプロポキシ)ナフタレン(単量体3)の合成>
攪拌機、温度計を装備した容量が50mlの三口フラスコに、4−(2−フェノキシエトキシ)−1−(2−ヒドロキシプロポキシ)ナフタレン676mg(2ミリモル)を5mlのアセトンに溶解した溶液を仕込み、ついでフラスコに塩化アクリロイル200mg(2.2ミリモル)を添加した。次に、フラスコ内容物を水冷しながら、トリエチルアミン200mg(2ミリモル)のアセトン溶液を添加し、攪拌しつつ反応させた。フラスコ内容物は反応中に弱い発熱があり、直ちに大量の白色沈殿が生じた。反応液を10分間攪拌した後、水1.5gを添加してされに攪拌を継続したところ、白色沈殿は全て溶解した。さらに水を2.5g添加したところ、反応液が若干白濁した。この反応液を5℃に設定した冷蔵庫に約6時間静置した。反応液中に結晶が析出しているので、結晶を吸引濾過して分離し、十分に水洗し、乾燥し、白色の粉末260mg(0.66ミリモル)を得た。4−(2−フェノキシエトキシ)−1−(2−ヒドロキシプロポキシ)ナフタレンに対する収率は、33モル%であった。
【0049】
得られた白色粉末について、(1)融点(上に同じ)、(2)赤外線(IR)分光光度計(上に同じ)によるIRスペクトル、(3)核磁気共鳴装置(NMR)(上に同じ)、(4)Massスペクトル(上に同じ)、などを測定した。
【0050】
測定結果は次のとおりであり、この測定結果から白色粉末は4−(2−フェノキシエトキシ)−1−(2−アクリロイルオキシプロポキシ)ナフタレン(単量体3)であることが確認された。
(1)融点:93〜94℃
(2)赤外線(IR)吸収スペクトル(KBr,cm−1):682,744,768,800,900,930,970,1020,1070,1094,1150,1190,1230,1250,1265,1362,1380,1400,1454,1492,1590,1620,1724,2860,2926,2980などの波長に吸収が認められた。
(3)H−NMR(CDCl,ppm):δ=1.49(d、3H,メチル基),4.16(m、2H,メチレン基),4.60(s、4H,2メチレン基),5.50(m、1H,メチン基),5.83(d、1H,アクリル基),6.17(dd、1H,アクリル基),6.44(d、1H,アクリル基),6.72(dd、1H,ナフタレン環),7.27(d、1H,ナフタレン環),7.30(d、1H,ナフタレン環),7.35(d、1H,ナフタレン環),8.20(m、2H、ナフタレン環)
(4)マススペクトル:(EI−MS)m/z=392(M
【0051】
[実施例1]
<1,4−ジ(2−アクリロイルオキシエトキシ)ナフタレン(単量体1)の熱重合>
温度計、攪拌機を装備した容量が200ml三つ口フラスコに、窒素雰囲気下、製造例1で得られた1,4−ジ(2−アクリロイルオキシエトキシ)ナフタレン(単量体1)2.0g(5.6ミリモル)を仕込み、ついでフラスコにトルエン20g加え、重合開始剤のアゾビスイソブチロニトリルを20mg添加した。フラスコの内容物を攪拌しつつ内温を常温から約5分間で106℃に加熱しこの温度で保持したところ、保持開始から5分経過後に大量に白色沈殿物が生じた。さらにフラスコ内温を106℃に維持しながら5分間攪拌を継続した後、攪拌しつつ温度を約10分間で106℃から常温に冷却し、白色のスラリーを得た。このスラリーにメタノール50mlを添加して十分攪拌し、スラリーを吸引濾過し、得られた生成物を乾燥し、1.88gの白色粉末状重合体1を得た。重合体1の単量体1に対する収率は、94重量%であった。
【0052】
上で得られた重合体1を、単量体1の融点(59℃)以上に加熱したが、融解しなかった。また、この重合体1に単量体1の良溶媒であるトルエン、アセトン、ジメチルホルムアミドを加えたが、これら溶剤には全く溶解しなかった。重合体1のガラス転移点を、示差走査熱量測定装置(島津製作所社製、DSC−50)によって測定したところ110℃であった。また、重合体1の5重量%減温度を、示差熱・熱重量同時測定装置(島津製作所社製、DTA−50)によって測定したところ358℃であった。これら測定値から、重合体1は耐熱性が極めて優れていることがわかった。
【0053】
[実施例2]
<1,4−ジ(2−メタクリロイルオキシエトキシ)ナフタレン(単量体2)の熱重合>
実施例1で使用したのと同じ三つ口フラスコに、窒素雰囲気下、製造例2で得られた1,4−ジ(2−メタクリロイルオキシエトキシ)ナフタレン(単量体2)2.0g(5.2ミリモル)を仕込み、ついでフラスコにトルエン20g加え、重合開始剤のアゾビスイソブチロニトリルを20mg添加した。フラスコの内容物を攪拌しつつ内温を常温から約5分間で106℃に昇温し、この温度に維持したところ、維持開始から6分後に大量の白色沈殿物が生じた。さらにフラスコ内温を106℃に維持しながら5分間加熱し、攪拌を継続した後、攪拌しつつ温度を約10分間で106℃から常温に冷却し、白色のスラリーを得た。このスラリーにメタノール50mlを添加し、十分攪拌し、吸引ろ過、乾燥し、1.92gの白色粉末状重合体2を得た。重合体2の単量体2に対する収率は、96重量%であった。
【0054】
この重合体2を、単量体2の融点である74℃以上に加熱したが、融解しなかった。また、この重合体2に単量体2の良溶媒であるトルエン、アセトン、ジメチルホルムアミドを加えたが、全く溶解しなかった。
【0055】
[実施例3]
<4−(2−フェノキシエトキシ)−1−(2−アクリロイルオキシプロポキシ)ナフタレン(単量体3)とトリメチロールプロパントリアクリレート(他のラジカル重合性単量体)との熱共重合>
実施例1で使用したのと同じ三つ口フラスコに、窒素雰囲気下、製造例3で得られた4−(2−フェノキシエトキシ)−1−(2−アクリロイルオキシプロポキシ)ナフタレン(単量体3)1g(2.7ミリモル)、トリメチロールプロパントリアクリレート2g(6.76ミリモル)を仕込み、ついでフラスコにトルエン12g添加し、重合開始剤のアゾビスイソブチロニトリルを20mg添加した。フラスコの内容物を攪拌しつつ内温を常温から約5分間で106℃に昇温し、この温度に維持したところ、維持開始から4分後に大量の白色沈殿物が生じた。さらに攪拌下フラスコ内温を106℃に維持しながら5分間加熱を継続した後、フラスコ内温を約10分間で106℃から常温に冷却し、白色のスラリーを得た。このスラリーにメタノール30mlを添加し、十分攪拌し、吸引濾過し、生成物を乾燥し、2.88gの白色粉末状重合体3を得た。重合体3の単量体3に対する収率は、96重量%であった。
【0056】
この重合体3に、単量体3の良溶媒であるトルエン、アセトン、ジメチルホルムアミドを加えたが、全く溶解しなかった。
【0057】
[実施例4]
<1,4−ジ(2−アクリロイルオキシエトキシ)ナフタレン(単量体1)の光重合>
製造例1で得られた単量体1を100重量部、開始剤としてビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド(チバ・スペシャリティ社製、商品名:イルガキュア819)1重量部をそれぞれ秤量し、容量100mlのフラスコに入れ、温度を70℃に調節した油浴に浸漬して溶融させ、均一な光ラジカル重合性組成物とした。この光ラジカル重合性組成物を、溶融状態でバーコーターによってポリエステルフィルム(東レ社製、商品名:ルミラー、膜厚100ミクロン)表面に、膜厚80μmになるように塗布した。ついで、窒素雰囲気下、紫外線LEDランプ(395nmでの照射強度は3mw/cmである。)を照射した。30秒光照射後、単量体1が重合した平滑なフィルムが得られた。
【0058】
このフィルムを、ホットプレート上で、原料1,4−ジ(2−アクリロイルオキシエトキシ)ナフタレン(単量体1)の融点である59℃以上に加熱したが、全く融解しなかった。また、得られたフィルムのIRスペクトルを測定したところ、アクリル基に起因する1620cm−1の吸収が消失していることを確認した。さらに、このフィルムの屈折率(ERMA社製、ユニバーサルアッペ屈折計型式:ER−7MWを使用した。)を測定したところ、1.6012(n)であり、単量体1の屈折率の1.5561(n)より高くなっており、重合していることが確認された。
【0059】
[実施例5]
<1,4−ジ(2−メタクリロイルオキシエトキシ)ナフタレン(単量体2)の光重合>
製造例2で得られた単量体2を100重量部、開始剤としてビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド(上に同じ)1重量部をそれぞれ秤量し、容量100mlのフラスコに入れ、温度を70℃に調節した油浴に浸漬して溶融させ、均一な光ラジカル重合性組成物とした。この光ラジカル重合性組成物を、溶融状態でバーコーターによってポリエステルフィルム(上に同じ)表面に、膜厚80μmになるように塗布した。ついで、窒素雰囲気下、紫外線LEDランプ(上に同じ)を照射した。30秒光照射後、単量体2が重合した平滑なフィルムが得られた。
【0060】
このフィルムを、ホットプレート上で単量体2の融点である73℃以上に加熱したが、全く融解しなかった。また、得られたフィルムのIRスペクトルを想定したところ、アクリル基に起因する1620cm−1の吸収が消失していることを確認した。さらに、このフィルムの屈折率を測定したところ、1.586(n)であり、単量体2の屈折率(上に同じ)の1.554(n)より高くなっており、重合していることが確認された。
【0061】
[実施例6]
<4−(2−フェノキシエトキシ)−1−(2−アクリロイルオキシプロポキシ)ナフタレン(単量体3)と1,4−ジアクリロイルオキシナフタレン(他のラジカル重合成単量体)との光重合>
製造例3で得られた単量体3を100重量部、1,4−ジアクリロイルオキシナフタレン50重量部、開始剤としてビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド(上の同じ)1.5重量部をそれぞれ秤量し、容量100mlのフラスコに入れ、温度を70℃に調節した油浴に浸漬して溶融させ、均一な光ラジカル重合性組成物とした。この光ラジカル重合性組成物を、溶融状態でバーコーターによってポリエステルフィルム(上に同じ)表面に、膜厚80μmになるように塗布した。ついで、窒素雰囲気下、紫外線LEDランプ(上に同じ)を照射した。30秒光照射後、単量体混合物が重合した平滑なフィルムが得られた。
【0062】
このフィルムを、ホットプレート上で1,4−ジアクリロイルオキシナフタレンの融点である93℃以上に加熱したが、融解しなかった。また、得られたフィルムのIRスペクトルを想定したところ、アクリル基に起因する1620cm−1の吸収が消失していることを確認した。さらに、このフィルムの屈折率(上に同じ)を測定したところ、1.610(n)であり、光照射前の単量体3と1,4−ジアクリロイルオキシナフタレンとの混合物の屈折率の1.588(n)より高くなっており、重合していることが確認された。
【0063】
[実施例7]
<4−(2−フェノキシエトキシ)−1−(2−アクリロイルオキシプロポキシ)ナフタレン(単量体3)とトリメチロールプロパントリアクリレート(他のラジカル重合成単量体)との光重合>
製造例3で得られた単量体3を100重量部、トリメチロールプロパントリアクリレート20重量部、開始剤としてビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド(上に同じ)1.2重量部をそれぞれ秤量し、容量100mlのフラスコに入れ、温度を70℃に調節した油浴に浸漬して溶融させ、均一な光ラジカル重合性組成物とした。この光ラジカル重合性組成物を、溶融状態でバーコーターによってポリエステルフィルム(上に同じ)表面に、膜厚80μmになるように塗布した。ついで、窒素雰囲気下、紫外線LEDランプ(上に同じ)を照射した。30秒光照射後、単量体混合物が重合した平滑なフィルムが得られた。
【0064】
このフィルムを、ホットプレート上で4−(2−フェノキシエトキシ)−1−(2−アクリロイルオキシプロポキシ)ナフタレンの融点である93℃以上に加熱したが、融解しなかった。また、得られたフィルムのIRスペクトルを想定したところ、アクリル基に起因する1620cm−1の吸収が消失していることを確認した。さらに、このフィルムの屈折率(上に同じ)を測定したところ、1.593(n)であり、光照射前の単量体3とトリメチロールプロパントリアクリレートとの混合物の屈折率の1.574(n)より高くなっており、重合していることが確認された。
【0065】
[実施例8]
<1,4−ジ(2−アクリロイルオキシエトキシ)ナフタレン(単量体1)と1,6−ヘキサンジオールジアクリレート(他のラジカル重合成単量体)との光重合(1)>
製造例1で得られた単量体1を75重量部、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート25重量部、開始剤としてビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド0.2重量部をそれぞれ秤量し、容量100mlのフラスコに入れ、温度を70℃に調節した油浴に浸漬して溶融させ、均一な光ラジカル重合性組成物とした。この光ラジカル重合性組成物を、溶融状態でバーコーターによってポリエステルフィルム(上に同じ)表面に、膜厚300μmになるように塗布した。ついで、窒素雰囲気下、紫外線LEDランプ(上に同じ)を照射した。600秒光照射後、単量体混合物が重合した平滑なフィルムが得られた。
【0066】
このフィルムを、ホットプレート上で1,4−ジ(2−アクリロイルオキシエトキシ)ナフタレンの融点である59℃以上に加熱したが、融解しなかった。また、得られたフィルムのIRスペクトルを想定したところ、アクリル基に起因する1620cm−1の吸収が消失していることを確認した。さらに、このフィルムの屈折率(上に同じ)を測定したところ、1.5743(n)であることが確認された。
【0067】
[実施例9]
<1,4−ジ(2−アクリロイルオキシエトキシ)ナフタレン(単量体1)と1,6−ヘキサンジオールジアクリレート(他のラジカル重合成単量体)との光重合(2)>
製造例1で得られた単量体1を50重量部、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート50重量部、開始剤としてビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド0.2重量部をそれぞれ秤量し、容量100mlのフラスコに入れ、温度を70℃に調節した油浴に浸漬して溶融させ、均一な光ラジカル重合性組成物とした。この光ラジカル重合性組成物を、溶融状態でバーコーターによってポリエステルフィルム(上に同じ)表面に、膜厚300μmになるように塗布した。ついで、窒素雰囲気下、紫外線LEDランプ(上に同じ)を照射した。600秒光照射後、単量体混合物が重合した平滑なフィルムが得られた。
【0068】
このフィルムを、ホットプレート上で1,4−ジ(2−アクリロイルオキシエトキシ)ナフタレンの融点である59℃以上に加熱したが、融解しなかった。また、得られたフィルムのIRスペクトルを想定したところ、アクリル基に起因する1620cm−1の吸収が消失していることを確認した。さらに、このフィルムの屈折率(上に同じ)を測定したところ、1.5521(n)であることが確認された。
【0069】
[実施例10]
<1,4−ジ(2−アクリロイルオキシエトキシ)ナフタレン(単量体1)と1,6−ヘキサンジオールジアクリレート(他のラジカル重合成単量体)との光重合(3)>
製造例1で得られた単量体1を25重量部、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート75重量部、開始剤としてビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド0.2重量部をそれぞれ秤量し、容量100mlのフラスコに入れ、温度を70℃に調節した油浴に浸漬して溶融させ、均一な光ラジカル重合性組成物とした。この光ラジカル重合性組成物を、溶融状態でバーコーターによってポリエステルフィルム(上に同じ)表面に、膜厚300μmになるように塗布した。ついで、窒素雰囲気下、紫外線LEDランプ(上に同じ)を照射した。600秒光照射後、単量体混合物が重合した平滑なフィルムが得られた。
【0070】
このフィルムを、ホットプレート上で1,4−ジ(2−アクリロイルオキシエトキシ)ナフタレンの融点である59℃以上に加熱したが、融解しなかった。また、得られたフィルムのIRスペクトルを想定したところ、アクリル基に起因する1620cm−1の吸収が消失していることを確認した。さらに、このフィルムの屈折率(上に同じ)を測定したところ、1.5325(n)であることが確認された。
【0071】
[比較例]
<1,6−ヘキサンジオールジアクリレート(他のラジカル重合成単量体)の光重合>
1,6−ヘキサンジオールジアクリレート100重量部、開始剤としてビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド0.2重量部をそれぞれ秤量し、容量100mlのフラスコに入れ、温度を70℃に調節した油浴に浸漬して溶融させ、均一な光ラジカル重合性組成物とした。この光ラジカル重合性組成物を、溶融状態でバーコーターによってポリエステルフィルム(上に同じ)表面に、膜厚300μmになるように塗布した。ついで、窒素雰囲気下、紫外線LEDランプ(上に同じ)を照射した。600秒光照射後、単量体混合物が重合した平滑なフィルムが得られた。
【0072】
このフィルムを、ホットプレート上で加熱したが、融解しなかった。また、得られたフィルムのIRスペクトルを想定したところ、アクリル基に起因する1620cm−1の吸収が消失していることを確認した。さらに、このフィルムの屈折率(上に同じ)を測定したところ、1.5108(n)であることが確認された。
【0073】
実施例4、8、9および10と比較例を表−1にまとめると以下の通りである。
【0074】
【表1】

【0075】
表−1から次のことが明らかである。すなわち、本発明に係る重合体(ホモポリマー)は、屈折率1.6以上と高い値を示す。また、構造式(1)に示されるナフタレン化合物成分とその他のラジカル重合性単量体との共重合体(コポリマー)もまた、屈折率が1.53以上と高い値である。
【産業上の利用可能性】
【0076】
本発明に係る重合体は、ナフタレン骨格を有するアクリレート化合物の重合体であり、耐熱性に優れているので耐熱性が要求される精密製品・部品製造用、屈折率が高いので光学製品製造用、反射防止膜、プラスチックレンズ製造用などの材料として使用される。








【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の構造式(1)で示されるナフタレン化合物成分を含む単量体成分を重合して得られたものであることを特徴とする重合体。
【化1】

【化2】

【化3】

【請求項2】
単量体成分が、式(1)に記載のナフタレン化合物成分と、この成分と共重合可能な他のラジカル重合性単量体成分との混合物よりなり、後者の単量体成分が単量体成分総量の75重量%以下である、請求項1に記載の重合体。








【公開番号】特開2009−138090(P2009−138090A)
【公開日】平成21年6月25日(2009.6.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−315542(P2007−315542)
【出願日】平成19年12月6日(2007.12.6)
【出願人】(000199795)川崎化成工業株式会社 (133)
【Fターム(参考)】