説明

ニガナ及び/又はニガナの発酵処理物を含有する医薬品組成物

【課題】 生理活性を有するニガナ及び/又はニガナの発酵処理物の有効利用を図り、生体に安全で副作用の少ない、活性酸素生成阻害活性、ロイコトリエン類生成阻害活性、ヒスタミン遊離抑制活性、IL−1β遊離阻害活性、IL−6遊離阻害活性を有する医薬組成物や機能性食品を提供すること。
【解決手段】 ニガナ及び/又はニガナの発酵処理物を含有し、乳酸菌、乳酸菌と酵母、乳酸菌と枯草菌、又は乳酸菌と酵母と枯草菌による発酵処理物であることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、沖縄に生育するニガナ植物由来の活性酸素生成阻害活性、ロイコトリエン類生成阻害活性、ヒスタミン遊離抑制活性、IL−1β遊離阻害活性、IL−6遊離阻害活性を有する医薬組成物や機能性食品に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、花粉症、アトピー性皮膚炎、気管支喘息、アレルギー性鼻炎、食物アレルギー、蕁麻疹等の炎症性又はアレルギー性疾患が、深刻な社会問題となっている。これらの疾患では、かゆみを伴う症状が現れることから、患者の肉体的又は精神的な消耗を招き、症状によっては日常生活に支障を来すほど、重篤となるケースも見られる。
【0003】
アレルギー反応とは、細菌やウイルス、或いは異物の侵入に対する生体防御反応の過剰発現を伴う生体に不利益な免疫反応であり、発症の機構から4つの型(I型〜IV型)に分類される。I型アレルギー反応は、主として免疫グロブリンE(IgE)抗体が関与する反応である。I型アレルギー反応は、即時型反応で肥満細胞や好塩基球表面のFc受容体と結合しているIgE抗体に、抗原が再度体内に侵入すると、細胞表面のIgE抗体と反応し抗体間に架橋が形成され、これが引き金となり、肥満細胞や好塩基球の脱顆粒が起こり、顆粒中に含まれたヒスタミン、セロトニン、SRS−A、ECF−A、セロトニン、プロスタグラジン等の化学伝達物質が放出されて組織障害を起こすものである。I型アレルギー反応によって、発症する疾患には、アナフィラキシーショック、気管支喘息、アレルギー性鼻炎、蕁麻疹、アトピー性皮膚炎などがある。
【0004】
また、II型アレルギー反応は、細胞膜そのもの、または細胞膜に付着した抗原に対してIgG又はIgM抗体が結合し、さらに補体の作用により細胞に穴を開けて細胞を溶かすものである。II型アレルギー反応によって、発症する疾患には、溶血性貧血、突発性血小板減少症、重症筋無力症、グットパスチャー症候群、臓器移植拒絶反応などがある。III型アレルギー反応は、抗原とIgG抗体が結合した免疫複合体が食細胞に処理されきれずに組織に沈着し、そこへ補体やマクロファージ、好中球などが集まり炎症を起こし組織障害が生じるものである。III型アレルギー反応によって、発症する疾患には、急性糸球体腎炎、関節リウマチ、ウイルス性肝炎、全身性エリテマトーデス、クリオグロブリン血症などがある。IV型アレルギー反応は、遅延型反応で抗原に感作されたT細胞がリホカイン等を放出し、リンパ球、マクロファージなどによる組織障害を起こすものである。IV型アレルギー反応によって、発症する疾患には、接触性皮膚炎、結核、悪性腫瘍、臓器移植後の拒絶反応などがある。これらのアレルギー反応のうち、免疫グロブリンE(IgE)抗体が関与するI型アレルギーは、発生頻度が最も多いアレルギーである。
【0005】
他方、植物及び/又はその抽出物には、様々な生理活性成分が含まれていることが知られており、生体に対する安全性が高いことから医薬品への応用がなされている。アレルギー反応による疾患の予防又は治療にも利用されており、具体的には、シソ種子のアルコール抽出物中のアピゲニン、クリソエリオール、ルテオリンおよびロスマリン酸から選ばれる1種または2種以上を有効成分とするヒスタミン遊離抑制剤(例えば、特許文献1参照)や、ツリフネソウ(Impatiens textori Miq.)の花弁の抽出エキスを含有することを特徴とする抗アレルギー組成物(例えば、特許文献2参照)や、カテキン類及び/又はその配糖体、フラボン類及び/又はその配糖体、フラボノール類及び/又はその配糖体、フラバノン類及び/又はその配糖体、イソフラボン類及び/又はその配糖体、クマリン類及び/又はその配糖体、アガリクス属等に属するきのこ、ビチス属、プランタゴ属、リナム属、シナピス属、カーサマス属、ペリラ属、ゴシピウム属、リシナス属、オエノセラ属、ローズマリー属、カメリア属、バンザクロ属、ユーカリ属、ベリス属、グナファリウム属、アルクトスタフィロス属、セントーレ属、ユーフラシア属、リスラム属等に属する植物の抽出物、赤ワイン乾燥粉末の群より1種又は2種以上からなるIgE産生抑制剤を配合することを特徴とする化粧料(例えば、特許文献3参照)等を挙げることができる。
【0006】
ところで、ニガナはキク科ニガナ属に属する多年草で、葉や茎に苦味のある白い乳液を含み、山地や野原にごく普通に植生し、沖縄でもよく見られる。ニガナは血液中に存在するペプチドのアンジオテイシンIが酵素の作用によりアンジオテイシンIIへ変換されるのを抑制する機能(ACE活性阻害機能)を有する成分を含有し、これにより血圧上昇抑制効果を奏することが知られている。このようなニガナが有する機能を利用したものとして、例えば、アブラナ花、イタリアンパスレー葉、ウド葉、カキドウシ葉、カラハナソウ葉、クサボケ花、クズ葉花、シシウド花実、シュプレット葉、スイバ葉、デイル葉、ニガナ全草、ニリン草全草、ヒメジオン花、ペパーミント葉、マスタード葉、ワレモコウ葉、矢車草花葉、ヤマフジ花から成る群より選択した少なくとも1種を凍結乾燥後粉砕し、その粉砕物を水抽出して得られた抽出物を含み、且つアンジオテイシン変換酵素の存在下において、アンジオテイシン1からアンジオテイシン2への変換抑制機能(ACE活性阻害機能)を有する食品添加剤(例えば、特許文献4参照)等が知られている。
【0007】
また、本発明者らは、以前にニガナを乳酸菌、乳酸菌と酵母、乳酸菌と枯草菌、又は乳酸菌と酵母と枯草菌を用いて発酵させることを特徴とする発酵処理物の製造方法(例えば、特許文献5参照)や、ニガナ(Crepidiastrum lanceolatum Nakai)及び/又は前記発酵方法を利用したニガナ発酵処理物を有効成分とすることを特徴とするリポキシゲナーゼ阻害剤(例えば、特許文献6参照)を提案している。
【0008】
このリポキシゲナーゼ阻害剤は、5−ヒドロペルオキシ−6,8,10,14−エイコサテトラエン酸(5−HPETE)等のアラキドン酸代謝物の生成を抑えることで、アラキドン酸代謝物に起因する疾患、例えば、アレルギー性疾患、炎症、喘息等の予防・治療剤に利用することができるものである。
【0009】
しかし、これまでニガナやニガナ発酵処理物にリポキシゲナーゼ阻害活性が有することは知られていたものの、活性酸素生成阻害活性、ロイコトリエン類生成阻害活性、ヒスタミン遊離抑制活性、IL−1β遊離阻害活性、IL−6遊離阻害活性を有することについては、全く知られていなかった。
【0010】
【特許文献1】特開2000−86510号公報
【特許文献2】特開2001−278796号公報
【特許文献3】特開2003−2811号公報
【特許文献4】特開平06−225723号公報
【特許文献5】特開2004−73050号公報
【特許文献6】特開2005−089385号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の課題は、生理活性を有するニガナ及び/又はニガナの発酵処理物の有効利用を図り、生体に安全で副作用の少ない、活性酸素生成阻害活性、ロイコトリエン類生成阻害活性、ヒスタミン遊離抑制活性、IL−1β遊離阻害活性、IL−6遊離阻害活性を有する医薬組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、沖縄に生育するニガナ植物の有効活用を目的とし、ニガナ植物の生理活性について鋭意研究した結果、ニガナの抽出物に活性酸素生成阻害活性、ロイコトリエン類生成阻害活性、ヒスタミン遊離抑制活性、IL−1β遊離阻害活性、IL−6遊離阻害活性を有することを見い出し、さらに、ニガナの発酵処理物は、活性酸素生成阻害活性、ロイコトリエン類生成阻害活性がニガナに比べ増加することを見い出し、本発明を完成するに至った。
【0013】
すなわち本発明は、(1)活性酸素生成阻害活性、ロイコトリエン類生成阻害活性、ヒスタミン遊離抑制活性、IL−1β遊離阻害活性、IL−6遊離阻害活性のうち少なくともいずれか1種以上の活性を有する、ニガナ(Crepidiastrum lanceolatum Nakai)及び/又はその発酵処理物の抽出物を含有する、活性酸素生成阻害剤、ロイコトリエン類生成阻害剤、ヒスタミン遊離抑制剤、IL−1β遊離阻害剤、若しくはIL−6遊離阻害剤、又は前記2以上の活性を備えた複合活性剤や、(2)ニガナの葉を粒径0.1〜3.0mmまで粉砕処理後、粉砕処理物1重量部に対し、2〜10重量部の水を添加し、さらに、微生物群を添加することにより発酵処理し、発酵処理物を溶媒で抽出した抽出物を含有することを特徴とする前記(1)記載の活性酸素生成阻害剤、ロイコトリエン類生成阻害剤、ヒスタミン遊離抑制剤、IL−1β遊離阻害剤、若しくはIL−6遊離阻害剤、又は前記2以上の活性を備えた複合活性剤や、(3)ニガナの発酵処理物が、乳酸菌、乳酸菌と酵母、乳酸菌と枯草菌、又は乳酸菌と酵母と枯草菌により発酵させて得られることを特徴とする前記(1)又は(2)に記載の活性酸素生成阻害剤、ロイコトリエン類生成阻害剤、ヒスタミン遊離抑制剤、IL−1β遊離阻害剤、若しくはIL−6遊離阻害剤、又は前記2以上の活性を備えた複合活性剤や、(4)ニガナの重量に対し、1〜10重量%の微生物群を添加することを特徴とする前記(1)〜(3)のいずれかに記載の活性酸素生成阻害剤、ロイコトリエン類生成阻害剤、ヒスタミン遊離抑制剤、IL−1β遊離阻害剤、若しくはIL−6遊離阻害剤、又は前記2以上の活性を備えた複合活性剤や、(5)抽出溶媒として、メタノール、エタノール、酢酸エチル又はこれらの混合溶媒の少なくとも1種以上を用いて得られるニガナ及び/又はその発酵処理物の抽出物を含有することを特徴とする前記(1)〜(4)のいずれかに記載の活性酸素生成阻害剤、ロイコトリエン類生成阻害剤、ヒスタミン遊離抑制剤、IL−1β遊離阻害剤、若しくはIL−6遊離阻害剤、又は前記2以上の活性を備えた複合活性剤に関する。
【0014】
また本発明は、(6)活性酸素生成阻害活性、ロイコトリエン類生成阻害活性、ヒスタミン遊離抑制活性、IL−1β遊離阻害活性、IL−6遊離阻害活性のうち少なくともいずれか1種以上の活性を有する、ニガナ(Crepidiastrum lanceolatum Nakai)及び/又はその発酵処理物の抽出物を含有することを特徴とし、これらの諸活性による炎症・アレルギー性疾患の改善のために用いられる旨の表示を付した機能性食品や、(7)ニガナの葉を粒径0.1〜3.0mmまで粉砕処理後、粉砕処理物1重量部に対し、2〜10重量部の水を添加し、さらに、微生物群を添加することにより発酵処理し、発酵処理物を溶媒で抽出した抽出物を含有することを特徴とする前記(6)記載の機能性食品や、(8)ニガナの発酵処理物が、乳酸菌、乳酸菌と酵母、乳酸菌と枯草菌、又は乳酸菌と酵母と枯草菌により発酵させて得られることを特徴とする前記(6)又は(7)に記載の機能性食品や、(9)ニガナの重量に対し、1〜10重量%の微生物群を添加することを特徴とする前記(6)〜(8)のいずれかに記載の機能性食品や、(10)抽出溶媒として、メタノール、エタノール、酢酸エチル又はこれらの混合溶媒の少なくとも1種以上を用いて得られるニガナ及び/又はその発酵処理物の抽出物を含有することを特徴とする前記(6)〜(9)のいずれかに記載の機能性食品に関する。
【発明の効果】
【0015】
本発明によると、ニガナ及び/又はニガナの発酵処理物を含有することで、活性酸素生成阻害活性、ロイコトリエン類生成阻害活性、ヒスタミン遊離抑制活性、IL−1β遊離阻害活性、IL−6遊離阻害活性を有し、副作用が少なく安全なアレルギー性疾患、炎症性疾患等の予防・治療薬や、アレルギー性疾患、炎症性疾患等の予防・治療用の機能性食品を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明は、活性酸素生成阻害活性、ロイコトリエン類生成阻害活性、ヒスタミン遊離抑制活性、IL−1β遊離阻害活性、IL−6遊離阻害活性のうち少なくともいずれか1種以上の活性を有する、ニガナ及び/又はその発酵処理物の抽出物を含有する、活性酸素生成阻害剤、ロイコトリエン類生成阻害剤、ヒスタミン遊離抑制剤、IL−1β遊離阻害剤、若しくはIL−6遊離阻害剤、又は前記2以上の活性を備えた複合活性剤であれば特に制限されるものではなく、具体的には、ニガナ及び/又はその発酵処理物を含有する活性酸素生成阻害剤、ニガナ及び/又はその発酵処理物を含有するロイコトリエン類生成阻害剤、ニガナ及び/又はその発酵処理物を含有するヒスタミン遊離抑制剤、ニガナ及び/又はその発酵処理物を含有するIL−1β遊離阻害剤、ニガナ及び/又はその発酵処理物を含有するIL−6遊離阻害剤、ニガナ及び/又はその発酵処理物を含有する活性酸素生成阻害・ロイコトリエン類生成阻害の複合活性剤、ニガナ及び/又はその発酵処理物を含有する活性酸素生成阻害・ロイコトリエン類生成阻害・ヒスタミン遊離抑制の複合活性剤、ニガナ及び/又はその発酵処理物を含有する活性酸素生成阻害・ロイコトリエン類生成阻害・ヒスタミン遊離抑制・IL−1β遊離阻害・IL−6遊離阻害の複合活性剤等の複合活性剤(これらを総称して「医薬組成物」ということがある。)を例示することができる。また、本発明の機能性食品としては、活性酸素生成阻害活性、ロイコトリエン類生成阻害活性、ヒスタミン遊離抑制活性、IL−1β遊離阻害活性、IL−6遊離阻害活性のうち少なくともいずれか1種以上の活性を有する、ニガナ及び/又はその発酵処理物を含有することを特徴とし、これらの諸活性による炎症・アレルギー性疾患の改善のために用いられる旨の表示を付した食品であれば特に制限されるものではない。
【0017】
本発明において用いられるニガナ植物は、キク科(Asteraceae)に属する植物であり、使用部位は、根等の地下部や、茎、葉、花等の地上部であってよく、また、これら2種以上の混合物や、全草であってもよい。これらのうちで、特に葉が好ましい。かかるニガナの発酵処理物の処理としては、発酵処理前に、ニガナを粉砕処理することが、発酵菌との接地面積を十分に確保でき、発酵を効果的に進行させることができることから、好ましい。具体的には、粒径3mm以下、好ましくは0.5mm〜1.0mmの粒径まで粉砕する処理が好ましい。
【0018】
さらに、上記発酵処理は、ニガナの粉砕処理物に、発酵の進行を促進するため、乾物1重量部に対し、2〜10重量部、特に5重量部程度の水分を添加することが好ましい。かかる粉砕処理物に微生物を添加する。微生物は培養後、培地へ添加する前に予め混合し、乾燥体である場合の植物の重量に対して、1〜10重量%添加することが好ましい。発酵は、温度20〜50℃、好ましくは40℃であり、発酵時間はpHや、菌数等の条件による発酵の進行状況等により適宜選択することができ、例えば、pH4〜5、菌数10以上であれば、約72時間とすることができる。発酵処理時、必要に応じてエアレーションや脱酸素処理を行うことができるが、脱酸素処理後に静置培養において発酵させることができる。発酵形式は、液体培養でなく固体培養が好ましい。
【0019】
上記発酵処理に使用する微生物としては、乳酸菌、酵母、枯草菌を使用することができ、これらを単独又は2種以上を適宜組み合わせることもできるが、乳酸菌、乳酸菌と酵母、乳酸菌と枯草菌、又は乳酸菌と酵母と枯草菌との組み合わせが特に好ましい。
【0020】
上記発酵処理に使用される乳酸菌としては、ストレプトコッカス属(Storeptococcus)、ラクトバシルス属(Lactobacillus)、ロイコノストック属(Leuconostoc)、ペディオコッカス属(Pediococcus)、ビフィドバクテリウム属(Bifidobacterium)又はテトラジェノコッカス属(Tetragenococcus)のいずれかに属する菌が好ましく、特にラクトバシルス属が好ましい。上記ストレプトコッカス属に属する菌としては、ストレプトコッカス・サーモフィルス(S. thermophilus)であることが好ましく、ストレプトコッカス・サーモフィルスIFO13957菌株を具体的に例示することができる。また、ラクトバシルス属に属する菌としては、ラクトバシルス・プランタリム(L. plantrum)、ラクトバシルス・デルブリッキ(L. delbruckii)、ラクトバシルス・ペントサス(L. pentosus)又はラクトバシルス・カセイ(L. casei)のいずれかに属する菌であることが好ましく、これらの菌のうち、特にラクトバシルス・プランタリムが好ましい。かかるラクトバシルス・プランタリムとしてIFO14712菌株やIFO14713菌株を、ラクトバシルス・デルブリッキとしてIFO13953菌株を、ラクトバシルス・ペントサスとしてIFO12011菌株を、ラクトバシルス・カセイとしてIFO15883菌株を、それぞれ具体的に例示することができる。また、テトラジェノコッカス属に属する菌としては、テトラジェノ・ハロフィルス(T. halophilus)であることが好ましく、テトラジェノ・ハロフィルスIFO12172菌株を具体的に例示することができる。これら乳酸菌は、ニガナ植物の乾物1gあたり、通常10〜10個、特に10〜10個用いることが好ましい。
【0021】
上記発酵処理に用いられる酵母は、カンジダ属(Candida)又はサッカロマイセス属(Saccharomyces)に属する菌が好ましい。かかるカンジダ属に属する菌として、カンジダ・ビルサチルス(Candida versatilis)であることが好ましく、カンジダ・ビルサチルスとしてIFO10038菌株を具体的に例示することができる。サッカロマイセス属に属する菌として、サッカロマイセス・セレビシアエ(S. cerevisiae)であることが好ましく、サッカロマイセス・セレビシアエとしてIFO0555菌株を具体的に例示することができる。これら酵母菌は、ニガナ植物の乾物1gあたり、通常10〜10個、特に10〜10個用いることが好ましい。
【0022】
さらに、上記発酵処理において用いられる枯草菌としては、バシルス・ズブチルス(B. subtilis)IFO3013菌株を具体的に例示することができる。これら枯草菌は、ニガナ植物の乾物1gあたり、通常10〜10個、特に10〜10個用いることが好ましい。
【0023】
上記発酵処理において、好ましく用いられる微生物群としては、乳酸菌、酵母及び枯草菌を含む微生物群が好ましく、これら微生物群の中でも、ラクトバシルス・プランタリム、ストレプトコッカス・サーモフィルス、バシルス・ズブチルスの混合菌であることが好ましく、これらはニガナ植物の乾物に対し、菌数として同数を使用することが好ましい。このような菌数の組合せにおいて菌を使用することにより、発酵時間の短縮を図り、ひいては雑菌の繁殖を抑制することができる。
【0024】
なお、発酵終了後、乾燥機により水分値が10重量%以下となるように乾燥することが好ましく、乾燥方法としては、加熱乾燥や凍結乾燥によることができ、加熱乾燥の場合は、品温が100℃以下で行われることが、生理活性成分の失活を防止することができるため好ましい。乾燥後、必要に応じて加熱等公知の方法により滅菌処理を行ない、本発明の医薬組成物(ニガナ及び/又はその発酵処理物を含有する活性酸素生成阻害剤、ロイコトリエン類生成阻害剤、ヒスタミン遊離抑制剤、IL−1β遊離阻害剤、IL−6遊離阻害剤、活性酸素生成阻害・ロイコトリエン類生成阻害の複合活性剤、活性酸素生成阻害・ロイコトリエン類生成阻害・ヒスタミン遊離抑制の複合活性剤、活性酸素生成阻害・ロイコトリエン類生成阻害・ヒスタミン遊離抑制・IL−1β遊離阻害・IL−6遊離阻害の複合活性剤)に好適に使用することができるニガナの発酵処理物が得られる。
【0025】
本発明のニガナ及び/又はその発酵処理物は、抽出溶媒を用いて得られるニガナ及び/又はその発酵処理物の抽出物とすることもでき、前記抽出溶媒としては、水、メチルアルコール、エチルアルコール等の低級1価アルコールや、グリセリン、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール等の液状多価アルコールや、ヘキサン等の非極性溶媒や、酢酸エチル等の極性溶媒の一種又は二種以上を用いることができる。この中でも、メタノール、エタノール、酢酸エチルが好ましい。
【0026】
本発明の医薬組成物には必要に応じて溶剤、分散剤、乳化剤、緩衝剤、安定剤、賦形剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、希釈剤、pH緩衝剤、溶解補助剤、等張剤等を加えて、錠剤、顆粒剤、散剤、粉末剤、カプセル剤等の固形剤、通常液剤、懸濁剤、乳剤等の液剤の製剤とすることができる。またこれら製剤は、経口又は非経口に投与することができる。すなわち通常用いられる投与形態、例えば粉末、顆粒、カプセル剤、シロップ剤、懸濁液等の剤型で経口的に投与することができ、あるいは、例えば溶液、乳剤、懸濁液等の剤型にしたものを注射の型で非経口投与することができるほか、スプレー剤の型で鼻孔内投与することもできる。また、投与量は、疾病の種類、患者の体重、投与形態等により適宜選定することができる。かかる製剤の投与量は、その製剤形態、投与方法、使用目的及びこれに適用される患者の年齢、体重、症状によって適宜設定され、一定ではないが、一般には製剤中に含有される有効成分の量が成人1日当り10μg〜200mg/kgである。尚、投与量は、種々の条件によって変動するので、上記投与量より少ない量で十分な場合もあるし、あるいは範囲を超えて必要な場合もある。
【0027】
本発明の医薬組成物は、活性酸素生成阻害活性、ロイコトリエン類生成阻害活性、ヒスタミン遊離抑制活性、IL−1β遊離阻害活性、IL−6遊離阻害活性を有することから、これらが関与する疾病の予防及び治療剤として利用することができる。具体的には、活性酸素生成阻害活性を有することから、活性酸素が関与する種々の病態や疾患、例えば動脈硬化、脳梗塞、脳虚血−再潅流障害、潰瘍、悪性腫瘍、糖尿病、てんかん、老化、炎症等の予防及び治療剤として利用することができ、ロイコトリエン類生成阻害活性を有することから、ロイコトリエン類の増加に起因する炎症およびその他の疾病に対する治療効果を発揮し、ヒスタミン遊離抑制活性を有することから、ヒスタミン遊離が関与する疾患、例えば花粉症、喘息、枯れ草熱、鼻炎、蕁麻疹、薬物アレルギー等の予防及び治療剤として利用することができる。さらに、IL−1β遊離阻害活性、IL−6遊離阻害活性を有することから、癌、動脈硬化、慢性リンパ節炎、慢性関節リウマチ、大腸炎、クローン病等の炎症性腸疾患等の予防及び治療剤として利用することができる。
【0028】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明の技術的範囲はこれらの例示に限定されるものではない。
【実施例1】
【0029】
[発酵ニガナの調整]
乾燥したニガナの葉30gを0.1〜3mmの粒径に粉砕し容器に入れた。ニガナを入れた容器に水150g、糖蜜0.9g、米ぬか0.9gを添加した。かかる粉砕ニガナを収納した容器に、ラクトバシルス・プランタリム(IFO14712菌株、IFO14713菌株)、ストレプトコッカス・サーモフィルス(IFO13957菌株)、バシルス・ズブチルス(IFO3013菌株)の各々の菌を培養後、菌数1:1:1の割合で混合し、ニガナの重量に対し、10重量%を添加し、容器を密閉し、静置培養により発酵を行った。発酵温度は40℃、発酵時間は72時間とした。その後、乾燥機により水分値が10重量%以下になるまで、60℃で乾燥した後、滅菌処理(130℃蒸気、5〜15秒)を行い、発酵ニガナ31gを得た。
【実施例2】
【0030】
[サンプルの調製]
(i)ニガナの0.1〜3mm粉砕乾燥葉、及び実施例1で得られた発酵ニガナ、各1gあたりメタノール10mlを添加し、静置で12時間抽出し、ろ過後残渣にメタノールを10ml添加して同様に抽出し、メタノール抽出物を得た。このメタノール抽出物をジメチルスルフォキシド(DMSO)で希釈することにより最終濃度25μg/mLのサンプルを調製した。
(ii)ニガナの0.1〜3mm粉砕乾燥葉、及び実施例1で得られた発酵ニガナ、各1gあたり酢酸エチル10mlを添加し、静置で12時間抽出し、ろ過後残渣に酢酸エチルを10ml添加して同様に抽出し、酢酸エチル抽出物を得た。この酢酸エチル抽出物をジメチルスルフォキシド(DMSO)で希釈することにより最終濃度25μg/mLのサンプルを調製した。
【実施例3】
【0031】
[ニガナ及び発酵ニガナの活性酸素生成阻害活性の評価]
ニガナの0.1〜3mm粉砕乾燥葉及び実施例2で得られた発酵ニガナの抽出物について、それぞれ活性酸素生成量を測定し、活性酸素生成阻害活性を評価した。HL−60細胞の濃度を4×10cells/mlに調製し、ジメチルスルフォキシドを終濃度(final conc.)が1.25%になるように加え、4日間37℃のCOインキュベーターで前記細胞を培養した。好中性顆粒球に分化した細胞を回収し、HBSS(Hanks’ Balanced Salt Solution)で洗浄後、再懸濁して1×10cells/mlに調製した。実施例2で調製したサンプル(終濃度;25μg/ml)あるいは1μlのジメチルスルフォキシド(コントロール)と細胞懸濁液1mlを混合し、37℃の水浴で15分インキュベートした。HBSSで洗浄後1mlに再懸濁して37℃の水浴で5分インキュベートした。終濃度が2μM(EtOH希釈)になるようにTPA(Phorbol 12-Myristate 13-Acetate)を添加し、90秒後にシトクロムC(Cytochrome C)(20mg/ml)を50μl添加(終濃度;76μM)した。37℃の水浴で15分インキュベートした後、氷中に5分間静置させ、遠心分離(6600rpm,5分)して、550nmにおける上澄みの吸光度を分光光度計(UV−2200AI:島津社製)で測定した。各々のサンプルにおいてTPA有無による吸光度の差をA550とし、下記の式により(Meth.Enzymol:, 105,358-365,1984)、スーパーオキサイドアニオンラジカル()の量を算出した。メタノール抽出物及び酢酸エチル抽出物におけるの産生量の結果をそれぞれ図1及び図2に示した。
【0032】
(nmol/ml)=47.7×A550
メタノール抽出物及び酢酸エチルのいずれにおいても、活性酸素生成阻害活性を示した。また、いずれについても発酵後に活性酸素生成阻害活性が増強した。このことから、ニガナ及び/又はその発酵処理物は、活性酸素生成阻害活性を有することが明らかとなった。
【実施例4】
【0033】
[ニガナ及び発酵ニガナのロイコトリエン類生成阻害活性の測定]
ニガナの0.1〜3mm粉砕乾燥葉及び実施例2の(ii)で得られた発酵ニガナの抽出物について、それぞれロイコトリエン(LT)類生成阻害活性を測定した。
【0034】
[試薬]
(1)10×PBSの調整
0.2MのNaHPOおよび0.2MのNaHPOを混合しpH7.0に調整後、3.0MのNaClを溶解させ、2倍量にメスアップし、120℃で20分間オートクレーブさせ、0.1MのPBS(phosphate buffer containing 0.15M NaCl)を調整した(10×PBS)。
(2)1×PBSの調整
10×PBS溶液を10倍に希釈し、120℃で20分間オートクレーブさせ、0.01MのPBSを調整した(1×PBS)。
(3)CaCl溶液の調整
終濃度1mMになるように、1.47gのCaCl・2HOを100mlの1×PBSに溶解し、120℃で20分間オートクレーブさせ、CaCl溶液を調整した。このCaCl溶液を4℃で保存した。
(4)カルシウムイオノファA23187の調整
1mgのA23187(Sigma社製)に382μlのメタノールを加え、5mMのストックソルーション(Stock Solution)とし、−20℃で保存した。このストックソルーションを1×PBSで10倍希釈し、最終濃度5μMとなるよう使用時に調製した。
(5)0.4%ジキトニン(digitonin)溶液の調整
400mgのジキトニン、400mgのトリトロンX−100、100mlのMillQ水を混合し、0.4%のジキトニン溶液を調整した。
【0035】
RBL2H3細胞(北里大学薬学部衛生化学研究室より入手)を6穴プレート(培地3ml/穴)に1.0×10cells/mlで播き、2日間培養した。培地を除去し、新しい培地1mlに対し、実施例2(ii)で調整したサンプルを終濃度25μg/mlになるように添加した。その後37℃で1時間インキュベーションさせ、培地を除去し、1mlの1×PBSで2回洗浄した。新たに1×PBSを1ml加え、CaCl溶液を10μl添加後(最終濃度1mM)、37℃で5分間インキュベーションした。続いてA23187を10μl添加(最終濃度5μM)し、37℃で5分間インキュベーションして刺激した。反応後、直ちに培養上澄みをエッペンに回収し、浮いた細胞を除去するために遠心分離(4℃、2000rpm、3分間)し、上澄みをLTC EIAキット(Cayman社製)、及びCysteinyl−LT EIAキット(Cayman社製)に供した。また、上清回収後の細胞について、0.4%のジキトニン溶液を加え、37℃で10分間振とうしてエッペンに回収し、遠心分離した(4℃、5000rpm、5分間)。その上澄みを用い、以下に示したBCA法によりタンパク質を定量した。EIAキットにより得られた結果をタンパク質量当たりの値として補正し、LTC4及びCysteinyl−LTs量を算出した。
【0036】
[BCA法によるタンパク質の定量]
回収した細胞サンプルを96穴マイクロプレートに10μlずつ3連で分注した。検量線として0.2mg/ml〜1.0mg/mlのBSAを同様に添加した。BCA Protein Assay Reagent A(Pierce社製)、及びBCAProtein Assay ReagentB(Pierce社製)を50:1の割合で混合後、195μlずつマイクロプレートにすばやく添加した。37℃で30分間インキュベートし、562nmの吸光度を測定した。検量線を作成し、サンプルのタンパク質濃度を算出した。
【0037】
ニガナ及びその発酵処理物の酢酸エチル抽出物(DMSOで希釈)におけるLTC4及びCysteinyl−LTs量を図3及び4に示す。ニガナ及びその発酵処理物の酢酸エチル抽出物に代えて1μlのDMSOを用いた場合をコントロールとした。ニガナ及びその発酵処理物の抽出物のいずれについても、LTC4及びCysteinyl−LTs量が抑制された。特に、発酵処理物の阻害活性が顕著であった。このことから、ニガナ及び/又はその発酵処理物は、ロイコトリエン類生成阻害活性を有することが明らかとなった。
【実施例5】
【0038】
[ニガナ及び発酵ニガナのヒスタミン遊離抑制の評価]
実施例2の(i)で得られたニガナ及び発酵ニガナの抽出物について、それぞれヒスタミン遊離抑制活性を測定した。
【0039】
[タイロードバッファー(Tyrode buffer;pH7.2)の調整]
137mMの塩化ナトリウム(NaCl)1.6gと、2.7mMの塩化カリウム40.3mgと、1.8mM塩化マグネシウム(MgCl)40.7mgと、5.6mMのグルコース201.8mgとを超純粋水に溶解した。溶解液を12mMの炭酸水素ナトリウム(NaHCO3)201.6mg又は0.4mMのリン酸二水素ナトリウム(NaHPO)28.7mgでpHを7.2とし、タイロードバッファー(Tyrode buffer;pH7.2)を調整した。このバッファーは常温で保存した。
【0040】
KU812細胞(ヒト好塩基球由来培養細胞)は、(財)ヒューマンサイエンス振興財団研究資源バンクより入手した。KU812細胞は10%のFBS RPMI−1640培地で培養した。KU812細胞(5×10cell/ml)を35mmのdishに播種し、実施例2(i)で調整したサンプルを被験物質として30分間処理した。細胞をエッペンドルフチューブに回収後、PBSで2回洗浄した。上清を除き、200μlのタイロードバッファーで細胞を懸濁後、CRA−1(1mg/ml)を10μl加えて、37℃で30分間インキュベートした。冷却により反応を停止させ、遠心分離(4℃、300g、5分)し、上清100μl中のヒスタミン遊離量を蛍光測定(E;355nm、E;460nm)により定量した。ヒスタミン遊離量の測定スキーム及びヒスタミン遊離量の結果を図5に示した。
【0041】
図5に示すように、ニガナ及び/又はその発酵処理物は、いずれについても濃度依存的にヒスタミン遊離抑制を示すことが明らかとなった。
【実施例6】
【0042】
[デキストラン硫酸塩(DSS)で刺激したマウス腹腔マクロファージにおけるニガナ及び発酵ニガナの炎症性サイトカインIL−1b生成抑制の評価]
ニガナの0.1〜3mm粉砕乾燥葉、実施例1で得られたニガナ及び発酵ニガナについて、それぞれデキストラン硫酸塩(DSS)で刺激したマウスの単球由来腹腔マクロファージにおけるIL−1b産生を測定した。
【0043】
単球由来の腹腔マクロファージは論文に記載(Kwon 2002)の通りに準備した。腹腔滲出細胞を96穴プレートに1×10cell/wellとなるように10%牛胎児血清(FBS;Gibco BRL社製)、ペニシリン(100U/ml)、ストレプトマイシン(100μg/ml)を添加したダルベッコ改変イーグル培地(DMEM;Gibco BRL社製)中に蒔き、37℃、5%CO下で前記細胞をインキュベートした。24時間インキュベートした後、腹腔マクロファージを、10 mg/mlのDSSで刺激させ、種々濃度のニガナ及び発酵ニガナのDMSO溶液(4mg/ml〜100mg/ml)を被験物質として24時間処理した。その後、遠心分離(1900g,4℃,15分間)し、上澄中(希釈係数=20)のIL−1βとIL−6の濃度を、製造者の指示に従い、エライザキットを用いて測定した。
【0044】
図6に示されるように、実施例1で得られたニガナ及び発酵ニガナが、マウス腹腔マクロファージにおけるIL−1b産生に対して抑制効果を示した。
【実施例7】
【0045】
[デキストラン硫酸塩(DSS)投与によるマウス大腸粘膜におけるニガナ、発酵ニガナ及びルテオリンの炎症性サイトカインIL−1β及びIL−6生成抑制の評価]
ニガナの0.1〜3mm粉砕乾燥葉、実施例1で得られた発酵ニガナ及びニガナ中に含まれるルテオリン(LT)、ルテオリン−6−グルコシド(LT−G)について、それぞれデキストラン硫酸塩(DSS)を投与したマウスの大腸粘膜におけるIL−1b及びIL−6産生量を測定した。
【0046】
マウスの大腸炎発生の誘導は、図7に示すように行った。すなわち、飲料水及び餌(MFペレット;オリエンタル酵母社製)を自由に与えられるマウス(Group1)をコントロールマウスとした。最初の7日間は通常の飲料水を与え、後の7日間は3%(w/v)のDSSを添加した飲料水を与え、餌は自由に与えられるマウス(Group2)をDSS投与における大腸炎モデルマウスとした。最初の7日間は通常の飲料水を与え、後の7日間は3%(w/v)のDSSを添加した飲料水を与え、餌には被験物質として、ニガナ又は発酵ニガナを添加したものを最初から試験終了(14日間)まで与えられたマウス(Group3又は4)を治験マウスとした。
【0047】
上記大腸炎発生プロトコール後のグループ1〜4のマウス(各グループn=3)から、それぞれ虫垂のない大腸を取り除いた。氷冷したPBSで洗浄後、標本をフィルターペーパー上に置き、大腸の長さを測定した(図8参照)。外科用はさみで大腸を開き、内容物を取り出した。大腸粘膜剥離は標本が液体窒素で凍結状態の間にかみそりを使用し擦り取った。大腸粘膜剥離標本を外科用はさみで細かく刻み、さらにホモジナイザーを使用し、氷冷PBS中で検体破砕した。上澄みを入手するために、ホモジェネートした組織を遠心分離(1900g,4℃,15分間)した。大腸剥離粘膜から遠心分離で得た上澄み中(希釈係数=20)のIL−1βとIL−6の濃度を、製造者の指示に従い、エライザキットを用いて測定した。結果をタンパク質量当たりの値として補正した。なお、組織の上澄み液中の総タンパク質濃度は、製造者の指示に従い、γ−グロブリンを内部標準として用い、DC Protein Assayキット(Bio-Rad Laboratories社製)を使用することで決定した。結果を図9及び10に示す。
【0048】
これらの結果から、グループ3のマウス(ニガナ)やグループ4のマウス(醗酵ニガナ)における大腸の長さは、グループ2のマウス(大腸炎モデルマウス;DSS)に比べて変化が少なく、グループ1のマウス(コントロール;CT)に近かった。また、グループ3のマウス(ニガナ)や、グループ4のマウス(醗酵ニガナ)におけるIL−1β及びIL−6の産生量は、グループ2のマウス(大腸炎モデルマウス;DSS)におけるIL−1β及びIL−6の産生量よりも少なく、ニガナや醗酵ニガナがインビボでも、IL−1βやIL−6等の大腸膜粘膜における炎症性サイトカイン産生抑制効果を示すことがわかった。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本発明のニガナ及び発酵ニガナのメタノール抽出物における活性酸素生成量を測定した結果を示す図である。
【図2】本発明のニガナ及び発酵ニガナの酢酸エチル抽出物における活性酸素生成量を測定した結果を示す図である。
【図3】本発明のニガナ及び発酵ニガナの酢酸エチル抽出物におけるLTC4量を測定した結果を示す図である。
【図4】本発明のニガナ及び発酵ニガナの酢酸エチル抽出物におけるCysteinyl−LTs量を測定した結果を示す図である。
【図5】本発明のニガナ及び発酵ニガナにおけるヒスタミン遊離量を測定した結果及びヒスタミン遊離量の測定スキームを示す図である。
【図6】本発明のニガナ及び発酵ニガナにおけるDSS刺激したマウス腹腔マクロファージにおけるIL−1β産生量を測定した結果を示す図である。
【図7】本発明のニガナ及び発酵ニガナにおけるDSS投与マウスの大腸炎症発生プロトコールを示す図である。
【図8】本発明のニガナ及び発酵ニガナにおけるDSS投与マウスの大腸長変化の結果を示す図である。
【図9】本発明のニガナ及び発酵ニガナにおけるDSS投与マウスの大腸粘膜におけるIL−β産生量の結果を示す図である。
【図10】本発明のニガナ及び発酵ニガナにおけるDSS投与マウスの大腸粘膜におけるIL−6産生量の結果を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
活性酸素生成阻害活性、ロイコトリエン類生成阻害活性、ヒスタミン遊離抑制活性、IL−1β遊離阻害活性、IL−6遊離阻害活性のうち少なくともいずれか1種以上の活性を有する、ニガナ(Crepidiastrum lanceolatum Nakai)及び/又はその発酵処理物の抽出物を含有する、活性酸素生成阻害剤、ロイコトリエン類生成阻害剤、ヒスタミン遊離抑制剤、IL−1β遊離阻害剤、若しくはIL−6遊離阻害剤、又は前記2以上の活性を備えた複合活性剤。
【請求項2】
ニガナの葉を粒径0.1〜3.0mmまで粉砕処理後、粉砕処理物1重量部に対し、2〜10重量部の水を添加し、さらに、微生物群を添加することにより発酵処理し、発酵処理物を溶媒で抽出した抽出物を含有することを特徴とする請求項1記載の活性酸素生成阻害剤、ロイコトリエン類生成阻害剤、ヒスタミン遊離抑制剤、IL−1β遊離阻害剤、若しくはIL−6遊離阻害剤、又は前記2以上の活性を備えた複合活性剤。
【請求項3】
ニガナの発酵処理物が、乳酸菌、乳酸菌と酵母、乳酸菌と枯草菌、又は乳酸菌と酵母と枯草菌により発酵させて得られることを特徴とする請求項1又は2に記載の活性酸素生成阻害剤、ロイコトリエン類生成阻害剤、ヒスタミン遊離抑制剤、IL−1β遊離阻害剤、若しくはIL−6遊離阻害剤、又は前記2以上の活性を備えた複合活性剤。
【請求項4】
ニガナの重量に対し、1〜10重量%の微生物群を添加することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の活性酸素生成阻害剤、ロイコトリエン類生成阻害剤、ヒスタミン遊離抑制剤、IL−1β遊離阻害剤、若しくはIL−6遊離阻害剤、又は前記2以上の活性を備えた複合活性剤。
【請求項5】
抽出溶媒として、メタノール、エタノール、酢酸エチル又はこれらの混合溶媒の少なくとも1種以上を用いて得られるニガナ及び/又はその発酵処理物の抽出物を含有することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の活性酸素生成阻害剤、ロイコトリエン類生成阻害剤、ヒスタミン遊離抑制剤、IL−1β遊離阻害剤、若しくはIL−6遊離阻害剤、又は前記2以上の活性を備えた複合活性剤。
【請求項6】
活性酸素生成阻害活性、ロイコトリエン類生成阻害活性、ヒスタミン遊離抑制活性、IL−1β遊離阻害活性、IL−6遊離阻害活性のうち少なくともいずれか1種以上の活性を有する、ニガナ(Crepidiastrum lanceolatum Nakai)及び/又はその発酵処理物の抽出物を含有することを特徴とし、これらの諸活性による炎症・アレルギー性疾患の改善のために用いられる旨の表示を付した機能性食品。
【請求項7】
ニガナの葉を粒径0.1〜3.0mmまで粉砕処理後、粉砕処理物1重量部に対し、2〜10重量部の水を添加し、さらに、微生物群を添加することにより発酵処理し、発酵処理物を溶媒で抽出した抽出物を含有することを特徴とする請求項6記載の機能性食品。
【請求項8】
ニガナの発酵処理物が、乳酸菌、乳酸菌と酵母、乳酸菌と枯草菌、又は乳酸菌と酵母と枯草菌により発酵させて得られることを特徴とする請求項6又は7に記載の機能性食品。
【請求項9】
ニガナの重量に対し、1〜10重量%の微生物群を添加することを特徴とする請求項6〜8のいずれかに記載の機能性食品。
【請求項10】
抽出溶媒として、メタノール、エタノール、酢酸エチル又はこれらの混合溶媒の少なくとも1種以上を用いて得られるニガナ及び/又はその発酵処理物の抽出物を含有することを特徴とする請求項6〜9のいずれかに記載の機能性食品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2006−347985(P2006−347985A)
【公開日】平成18年12月28日(2006.12.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−178366(P2005−178366)
【出願日】平成17年6月17日(2005.6.17)
【出願人】(397031784)株式会社琉球バイオリソース開発 (21)
【Fターム(参考)】