ニッケル・チタン合金材料及び純チタン材料の異種金属接合体並びにその接合方法
【課題】本発明は、接合部が接合前の純チタン材料の引張強度以上の引張強度を有するとともに接合部の強度のばらつきが小さく、接合後の熱影響部が小さいニッケル・チタン合金材料及び純チタン材料の異種金属接合体並びにその接合方法を提供することを目的とするものである。
【解決手段】ニッケル・チタン合金材料からなる丸棒体1及び純チタン材料からなる丸棒体2の接合面の少なくとも一方を回転運動させて摩擦圧接させながら、回転運動の減速開始後、接合面での回転運動の最外周における周速度が0.5m/秒以上の間に所定のアプセット力を加えて圧縮して接合一体化する。接合部には、アプセット力による圧縮力及び減速する回転運動の回転力により形成された反応層の組織が形成され、接合前の純チタン材料の引張強度以上の引張強度を有する。
【解決手段】ニッケル・チタン合金材料からなる丸棒体1及び純チタン材料からなる丸棒体2の接合面の少なくとも一方を回転運動させて摩擦圧接させながら、回転運動の減速開始後、接合面での回転運動の最外周における周速度が0.5m/秒以上の間に所定のアプセット力を加えて圧縮して接合一体化する。接合部には、アプセット力による圧縮力及び減速する回転運動の回転力により形成された反応層の組織が形成され、接合前の純チタン材料の引張強度以上の引張強度を有する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ニッケル・チタン合金材料及び純チタン材料の異種金属接合体並びにその接合方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、形状記憶効果または超弾性効果を発現する組成であるニッケル・チタン合金材料は、その機能性を利用するために多種多様な工業製品の材料に使用されている。ところが、それらの製品開発においては、ニッケル・チタン合金材料が難加工性を有することが大きな障害となっている。そのため、ニッケル・チタン合金材料と純チタン材料の異種金属接合体は、純チタン材料が良好な加工性の他、生体適合性や耐食性などの機能性を有することから、機能材料としての利用価値が高い。
【0003】
なお、ニッケル・チタン合金材料と純チタン材料の異種金属接合体は、ニッケル・チタン合金材料の引張強度が純チタン材料の引張強度よりも高いことから、接合部が接合前の純チタン材料の引張強度以上の引張強度を有することが望まれる。
【0004】
ところで、ニッケル・チタン合金材料に異種金属材料を接合する方法は、通常の溶接方法での接合が難しいことから、カシメなどの機械的な接合方法や、ニッケル・チタン合金材料にメッキをしてからろう付けする方法を用いるのが一般的である。
【0005】
しかしながら、従来の一般的な方法で接合されたニッケル・チタン合金材料と純チタン材料の異種金属接合体は、接合部が接合前の純チタン材料の引張強度と比べてかなり低い引張強度を有するという問題があった。また、ろう付けする方法で接合されたニッケル・チタン合金材料と純チタン材料の異種金属接合体は、接合後の熱影響部が大きいという問題もあった。
【0006】
そこで、特許文献1の「超弾性合金のろう付け方法」で、超弾性合金にスパッタリング等でチタン被膜を付けた後でチタン合金ろう材でろう付けする技術が提案された。この技術は、超弾性合金に密着強度が高いチタン被膜を付けることで、従来の一般的な方法で接合されたものと比べて接合部の強度が高い異種金属接合体を得ることができる。しかしながら、この技術は、ろう付けする方法で接合されるために、接合後の熱影響部が大きいという問題が解決できなかった。
【0007】
また、特許文献2及び特許文献3では、ニッケル・チタン合金材料及びニッケル基合金材料を接合する技術が提案され、特許文献4では、ニッケル・チタン合金材料及び異種金属材料を接合する技術が提案された。
【0008】
これらの技術では、溶湯に対して加圧力が伝達された状態で凝固した金属組織、すなわち溶湯鍛造組織が接合面界面の全体にわたって約20μm以下の厚さで形成されることで、従来の一般的な方法で接合されたものと比べて接合部の強度が高い異種金属接合体を得ることができる。また、高温で加圧するとともに接合面近傍に放熱部を設けることで、接合後の熱影響部が小さい異種金属接合体を得ることができる。
【0009】
しかしながら、これらの技術は、接合面の状態や接触の状態の調整で要求される精密さが不足するようになる、または、接合面積が大きくなると、溶湯鍛造組織が接合面界面の全体にわたって約20μm以下の厚さで形成されることが難しくなるために、接合部の強度が低下しやすいとともにばらつきやすいという問題があった。そのために、これらの技術によるニッケル・チタン合金材料及び純チタン材料の異種金属接合体は、特許文献4の実施例で接合部が20kg/mm2以上30kg/mm2の引張強度を有すると報告されているように、接合部が接合前の純チタン材料の引張強度以上の引張強度を有することができなかった。
【特許文献1】特許第1968308号公報
【特許文献2】特許第2516447号公報
【特許文献3】特許第2563843号公報
【特許文献4】特許第2737817号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、上述したような従来技術の課題に鑑み、接合部が接合前の純チタン材料の引張強度以上の引張強度を有するとともに接合部の強度のばらつきが小さく、接合後の熱影響部が小さいニッケル・チタン合金材料及び純チタン材料の異種金属接合体並びにその接合方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係る異種金属接合体は、ニッケル・チタン合金材料及び純チタン材料の異種金属接合体において、前記ニッケル・チタン合金材料及び前記純チタン材料の接合部は、摩擦圧接された状態でアプセット力による圧縮力及び減速する回転運動の回転力により形成された反応層の組織からなり、接合前の純チタン材料の引張強度以上の引張強度を有することを特徴とする。さらに、前記ニッケル・チタン合金材料は、形状記憶効果または超弾性効果を発現する組成であることを特徴とする。さらに、前記純チタン材料は、JIS H4650に規定される1種又は2種に相当する組成であることを特徴とする。さらに、前記純チタン材料の部分は、前記接合部とは別に前記ニッケル・チタン合金材料とは異なる金属材料が接合されており、両接合間の厚さが前記純チタン材料の部分の外径サイズ以下であることを特徴とする。さらに、前記接合部は、接合後の加工で成形されていることを特徴とする。
【0012】
本発明に係る異種金属接合体の接合方法は、ニッケル・チタン合金材料及び純チタン材料の接合面の少なくとも一方を回転運動させて摩擦圧接させながら、回転運動の減速開始後、接合面での回転運動の最外周における周速度が0.5m/秒以上の間に所定のアプセット力を加えて圧縮して接合することを特徴とする。さらに、摩擦圧接の条件を、接合面での回転運動の最外周における周速度が2m/秒以上、摩擦圧力が100MPa以下、摩擦時間が0.5秒以上とすることを特徴とする。
【0013】
本発明に係る別の異種金属接合体の接合方法は、ニッケル・チタン合金材料及び純チタン材料の接合面の少なくとも一方を回転運動させて摩擦圧接させながら、回転運動の減速開始後、接合面での回転運動の最外周における周速度が1m/秒以上の間に、接合面での接合断面積に接合前の純チタン材料の降伏強度を乗じた値の力より小さく設定されたアプセット力を加えて圧縮して接合することを特徴とする。さらに、摩擦圧接の条件を、接合面での回転運動の最外周における周速度が4m/秒以上、摩擦圧力が100MPa以下、摩擦時間が0.5秒以上とすることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る異種金属接合体は、接合部が接合前の純チタン材料の引張強度以上の引張強度を有するとともに接合部の強度のばらつきが小さく、接合後の熱影響部が小さく形成されている。
【0015】
すなわち、本発明の異種金属接合体においては、アプセット力による圧縮力及び減速する回転運動の回転力により形成された反応層の組織からなることで、反応層において生成された化合物が接合面全体にわたって薄く形成されるとともに化合物が接合部全体に分布するようになるために、接合部が接合前の純チタン材料の引張強度以上の引張強度を有するとともに接合部の強度のばらつきが小さくなる。そして、接合部が接合前の純チタン材料の引張強度以上の引張強度をもつことから、接合部を接合後に切削加工や研削加工による除去加工のほか、塑性加工による変形加工で成形することができる。
【0016】
このような強度特性が得られることからも明らかなように、本発明の異種金属接合体の接合部は、回転運動が完全に停止した状態でアプセット力による単純圧縮力を加える一般的な摩擦圧接方法や、加圧による単純圧縮力を加える他の圧接方法で得られる反応層の組織とは異なる反応層の組織からなる。
【0017】
また、接合面以外の部分での発熱を伴うとともに加圧力により加熱領域をほとんど変形させないろう付けにより接合された接合体と比べて、本発明の異種金属接合体は、摩擦発熱により接合面を直接に加熱するとともにアプセット力により加熱領域を大きく変形させる摩擦圧接により接合された接合体であるために、熱影響部が小さい。
【0018】
さらに、本発明の異種金属接合体においては、純チタン材料には、接合部とは別の部分にニッケル・チタン合金材料とは異なる金属材料が接合一体化されており、純チタン材料が通常の溶接方法によりチタン合金、アルミニウム、銅、炭素鋼、タンタルなどの異種金属材料と強固に接合できるために、純チタン材料を中間部分としたニッケル・チタン合金材料の異種金属接合体を得ることができる。この場合、両接合間の厚さが純チタン材料の外径サイズ以下であることで、中間部分である純チタン材料の変形を純チタン材料よりも高強度の材料で拘束する条件下で接合一体化して接合部の強度を高めることができる。
【0019】
本発明の異種金属接合体の接合方法は、接合面の状態や接触の状態の調整で要求される精密さを満たすことが簡単であり、かつ、不良率が小さい。このような利点から、本発明によれば、ニッケル・チタン合金材料と異種金属材料を接合した製品のデザインや機能、信頼性を向上させることができる。
【0020】
また、本発明の異種金属接合体の接合方法においては、回転運動の減速開始後、接合面での回転運動の最外周における周速度が0.5m/秒以上の間にアプセット力を加えることで、接合前の純チタン材料の引張強度以上の引張強度を有する接合部を形成することができる。そして、接合面の温度分布が著しく不均一とならないように、接合面での回転運動の最外周における周速度、摩擦圧力、摩擦時間に関する摩擦圧接の条件を設定することで、強度のばらつきが小さくすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明に係る実施形態について詳しく説明する。なお、以下に説明する実施形態は、本発明を実施するにあたって好ましい具体例であるから、技術的に種々の限定がなされているが、本発明は、以下の説明において特に本発明を限定する旨明記されていない限り、これらの形態に限定されるものではない。
【0022】
図1は、本発明に係る異種金属接合体に関する斜視図である。この例では、ニッケル・チタン合金材料からなる丸棒体1及び純チタン材料からなるとともに丸棒体1と同径の丸棒体2を接合一体化して形成されている。接合部は、後述するように、摩擦圧接された状態でアプセット力による圧縮力及び減速する回転運動の回転力により形成され、接合前の純チタン材料の引張強度以上の引張強度を有する反応層の組織からなる。
【0023】
摩擦圧接により生じる反応層は、ニッケル・チタン合金材料の組成とは異なる化合物が生成された層及び原子の拡散が生じた層からなる。こうした接合部の反応層は、接合面全体にわたって薄く形成される。
【0024】
また、冷間加工後に再結晶焼鈍された純チタン材料の組織は等軸α組織を有するが、摩擦圧接による熱及び力の影響を受けて等軸α組織が変化した熱影響部が薄く形成される。従来のろう付けの際には、純チタン材料のα−β変態点(880℃)以上の加熱により結晶粒径の粗大化が生じるが、純チタン材料に生じる熱影響部にはこうした結晶粒径の粗大化は生じておらず、摩擦圧接による熱の影響が小さくなっている。
【0025】
このように、接合部における反応層及び熱影響部が薄く形成されて純チタン材料の受ける影響が小さくなり、反応層に生成された化合物が接合面全体にわたって薄く形成されるとともに接合部全体に分布するようになるため、接合部において引張強度が低下せず純チタン材料の引張強度以上になる。
【0026】
ニッケル・チタン合金材料としては、様々な組成の公知の合金材料を用いることができ、形状記憶効果または超弾性効果を発現する組成のものが好ましい。純チタン材料についても公知の材料を用いることができ、特に、JIS H4650に規定される1種又は2種に相当する組成にものが好ましい。
【0027】
図2は、ニッケル・チタン合金材料とは異なる金属材料をさらに接合一体化した異種金属接合体に関する斜視図である。この例では、ニッケル・チタン合金材料からなる丸棒体3が純チタン材料からなる丸棒体4の一方の端部に接合一体化され、丸棒体4の他方の端部には、ニッケル・チタン合金材料とは異なる金属材料からなる丸棒体5が接合一体化されている。丸棒体3〜5は同径に形成されている。丸棒体5は、例えば、チタン合金、アルミニウム、銅、炭素鋼、タンタルといった金属材料からなり、通常の溶接方法により純チタン材料と強固に接合一体化できるものがよい。
【0028】
純チタン材料の端部に接合されるニッケル・チタン合金材料とは異なる金属材料の一例は、純チタン材料よりも高強度なβ型チタン合金材料であるTi−22V−4Alが挙げられる。ニッケル・チタン合金材料とTi−22V−4Alの接合は、通常の溶接方法や本発明による方法によって強固な接合部を得ることが難しい。しかしながら、純チタン材料とTi−22V−4Alの接合は、例えば通常の摩擦圧接方法で強固な接合部を得ることが容易である。
【0029】
このように異種金属材料を接合一体化することで、純チタン材料を中間部分としてニッケル・チタン合金材料に様々な金属材料を一体化することができる。
【0030】
図2に示すように、丸棒体同士の組合せの場合には、中間部分の純チタン材料の接合間の厚さHがその外径サイズである外径D以下であることで、中間部分である純チタン材料の変形を純チタン材料よりも高強度の材料で拘束する条件下で接合一体化して接合部の強度を高めることができる。
【0031】
また、図3は、図2の場合と同様の3つの金属材料を用いて板状体同士を組み合せて接合一体化した異種金属接合体に関する斜視図である。ニッケル・チタン合金材料からなる板状体6が純チタン材料からなる板状体7の一方の端部に接合一体化され、板状体7の他方の端部には、ニッケル・チタン合金材料とは異なる金属材料からなる板状体8が接合一体化されている。
【0032】
この場合には、中間部分の純チタン材料の接合間の長さHがその外径サイズである板厚h以下であることで、中間部分である純チタン材料の変形を純チタン材料よりも高強度の材料で拘束する条件下で接合一体化して接合部の強度を高めることができる。なお、中間部分の純チタン材料の板厚hは、その板幅W以下に設定するとよい。
【0033】
図1及び図2では同径の丸棒体同士を接合一体化しているが、板状体及び板状体、管状体及び管状体といった組合せでもよい。その場合、例えば、異径同士の丸棒体を組み合せてもよく、接合部分の形状が互いに一致しなくてもよい。さらに、異形同士の組合せも可能で、例えば、棒状体と板状体、管状体と板状体といった組み合せが挙げられ、様々な形状同士を組み合せて接合一体化することができる。
【0034】
異種金属接合体の接合部が非円形の断面形状とする場合には、断面形状が円形の材料同士を接合一体化した後、切削加工や研削加工による除去加工のほか、塑性加工による変形加工で成形することができることを利用して、接合部を円形の断面形状から縦と横の比が大きい非円形の断面形状とすることができる。縦と横の比が大きい非円形の断面形状の摩擦圧接は、回転させて接合する際に接合面が外気にさらされる領域が大きいため、良好な接合が難しい。こうした場合には接合後に加工して成形することが望ましい。
【0035】
図4は、本発明に係る異種金属接合体を製造する摩擦圧接装置に関する概略構成図である。基台10に立設固定された支持台11には、直線状のスライドガイド12が設けられている。スライドガイド12に並列配置されたネジ棒13が基台10に回転可能に軸支されており、支持台11に取付固定された駆動モータ14によりネジ棒13が回転駆動されるようになっている。ネジ棒13にはキャリッジ15が螺着されており、ネジ棒13が回転することでキャリッジ15が上下動する。
【0036】
キャリッジ15には取付枠体16が固定されており、取付枠体16に回転モータ17が取り付けられている。回転モータ17の駆動軸に回転側固定具18が取り付けられており、基台10には、回転側固定具18に対向して固定側固定具19が配置されて固定されている。
【0037】
回転側固定具18には、回転側金属材料W1が取付固定されており、固定側固定具19には、固定側金属材料W2が取付固定されている。そして、駆動モータ14を回転駆動してキャリッジ15を下方に移動させて、回転側金属材料W1の接合面を固定側金属材料W2の接合面と密着させる。なお、金属材料の接合面は、接触の状態が著しく不均一となることを避けるために、予め旋盤加工等により平滑化しておくことが好ましい。
【0038】
駆動モータ14をさらに回転駆動させると、金属材料W1及びW2の接合面に加わる推力を制御することができる。接合面を圧接させた状態で回転モータ17を回転制御して回転側金属材料W1を回転させることで、両金属材料の接合面を摩擦圧接させることができる。
【0039】
摩擦圧接装置としては、上述した装置以外にも、接合一体化しようとする材料の相対運動と停止を制御して摩擦圧接を制御できるものであればよく、例えば、互いに反対方向に回転させて相対運動させる装置であってもよい。
【0040】
図5は、摩擦圧接動作を行う場合における接合面に加えられる圧力(P;実線で表示)及び寄り代(M;点線で表示)の時間的推移を示すグラフである。この例では、時刻t1において回転モータ17の回転が減速開始する。減速開始するまでの間は、駆動モータ14の接合面に対する推力による一定の摩擦圧力P1と回転モータ17の一定の回転数により摩擦寄り代が増加していき、時刻t1において摩擦寄り代M1を得る。
【0041】
時刻t1から回転モータ17の減速が開始された後、後述するように接合面での回転運動の最外周における周速度が0.5m/秒以上の間に駆動モータ14の推力を高めて一定のアプセット圧力(P2)を加え、回転モータ17が停止されて接合部が完全に冷却されるまでの間、アプセット圧力(P2)が継続して加えられてアプセット寄り代(M2)を得る。
【0042】
図6は、同径の丸棒体に形成された金属材料W1及びW2を接合した状態に関する模式図であり、図7は、異径の丸棒体に形成された金属材料W1及びW2を接合した状態に関する模式図である。この場合、接合面の接合断面積Sは、摩擦圧接時の接合面において接合面に加えられる力の方向に対して直交する平面での断面積であり、図6及び図7において金属材料Wの外径が一致すれば、同じ接合断面積となる。摩擦圧接後の実際の接合面は、周速度の影響により滑らかな曲面状となる。
【0043】
また、接合面での回転運動の最外周における周速度は、接合面の回転による軌跡を連続して描画した場合における最外周での周速度である。図6ではどちらか一方の金属材料を回転運動させた場合、いずれの場合でも接合面での回転運動の最外周における周速度は一致する。図7では、外径の小さい丸棒体を回転運動させた場合、外径の小さい金属材料の最外周における周速度と接合面での回転運動の最外周における周速度は一致するが、外径の大きい丸棒体を回転させた場合、外径の大きい金属材料の最外周における周速度と接合面での回転運動の最外周における周速度は一致しない。なお、双方の金属材料を互いに反対方向に回転させて相対運動を得る場合、接合面での回転運動の最外周における周速度は、回転する各々の金属材料の接合面での最外周における周速度を足し合わせたものになる。
【0044】
摩擦圧接の制御は、減速開始後に加えられるアプセット力を、接合断面積に接合前の純チタン材料の降伏強度を乗じた値の力以上に設定するかまたはそれよりも小さく設定するかに応じて制御方法を変更するとよい。なお、加えられるアプセット力は、純チタン材料が摩擦圧接部以外の部分で変形しない範囲内でなるべく大きな力とすることが好ましい。
【0045】
なお、摩擦圧接で生じるバリは、形状的に応力集中が発生しやすく、変形で分離した反応層が接合面外に排出されずに残留して欠陥が生じやすいことから、切削や研削により除去することが好ましい。
【実施例】
【0046】
(実施例1)
超弾性の効果を発現する組成であるニッケル・チタン合金材料の丸棒体(直径2.1mm、長さ55mm)と、JIS H4650に規定される2種に相当する組成である純チタン材料の丸棒体(直径4mm、長さ59mm)を用いた。丸棒体の接合面は、予め旋盤加工により平滑化して互いに密着するように加工した。なお、接合前のニッケル・チタン合金材料は、センタレス研磨した材料で焼鈍されたものであった。また、接合前の純チタン材料は、センタレス研磨した材料で降伏強度が240MPa程度で引張強度が450MPa程度のものであった。
【0047】
上述した摩擦圧接装置(日東制機株式会社製)に丸棒体をセットし、摩擦圧接の条件を、接合面での回転運動の最外周における周速度が2.18m/秒、摩擦圧力が58MPa、摩擦時間が1秒とし、アプセット圧力を361MPaに設定して、アプセット力を、接合断面積に接合前の純チタン材料の降伏強度を乗じた値の力以上とした。
【0048】
そして、アプセットタイミングをそれぞれ0.00秒、0.06秒、0.12秒、0.18秒、0.24秒、0.27秒に設定して摩擦圧接試験を行った。ここで、アプセットタイミングとは、回転運動の減速開始後からアプセット力を加えるまでの時間をいう。図8は、実施例1における回転運動の減速過程を示すグラフである。縦軸に接合面での回転運動の最外周における周速度をとり、横軸にアプセットタイミングをとっている。
【0049】
摩擦圧接して接合一体化した金属接合体は、バリを切削で除去した後に、引張試験機(インストロン社製)を用い、接合部が中央に配置されるように金属接合体の両端部を把持し、把持した間の間隔を40mm、クロスヘッドスピードを0.01mm/秒に設定して、引張試験を行った。それぞれのアプセットタイミングにおける金属接合体に関する全アプセット量と引張強度の測定結果を図9に示す。なお、全アプセット量とは、摩擦寄り代の量とアプセット寄り代の量を足し合わせた量をいう。
【0050】
図9の測定結果から明らかなように、実施例1では、接合面での回転運動の最外周における周速度が0.5m/秒以上において、接合部が接合前の純チタン材料の引張強度以上の引張強度を有するとともに、接合部の強度のばらつきが小さいことを確認した。
【0051】
さらに、接合部の断面組織を観察した結果、ニッケル・チタン合金材料の組成とは異なる化合物が生成された層及び原子の拡散が生じた層が観察された。こうした接合部の反応層は、接合面全体にわたって50μm以下の厚さで薄く形成されていた。そして、化合物が生成された層は接合面全体にわたって20μm以下の厚さで薄く形成されていた。
【0052】
また、純チタン材料の組織は、結晶粒径が50μm程度の等軸α組織であったが、摩擦圧接による熱及び力の影響を受けて変化した熱影響部は500μm以下の厚さで薄く形成されていた。熱影響部では、ろう付けの際に観察される純チタン材料のα−β変態点(880℃)以上の加熱による結晶粒径の粗大化は観察されなかった。こうした観察結果から摩擦圧接による熱の影響が小さかったことがわかる。
【0053】
また、回転運動の減速開始後、接合面での回転運動の最外周における周速度が0.5m/秒より小さくなった時間にアプセット力を加えた比較例は、接合部が接合前の純チタン材料の引張強度以上の引張強度を有しておらず、接合部の強度のばらつきが大きいことが確認された。
【0054】
(実施例2)
超弾性の効果を発現する組成であるニッケル・チタン合金材料の丸棒体(直径4mm、長さ63mm)と、JIS H4650に規定される2種に相当する組成である純チタン材料の丸棒体(直径4mm、長さ63mm)を用いて、ニッケル・チタン合金材料と純チタン材料の摩擦圧接試験を行った。丸棒体の接合面は、予め旋盤加工により平滑化して互いに密着するように加工した。なお、接合前のニッケル・チタン合金材料は、センタレス研磨した材料で焼鈍されたものであった。また、接合前の純チタン材料は、センタレス研磨した材料で降伏強度が240MPa程度で引張強度が450MPa程度のものであった。
【0055】
実施例1と同様の摩擦圧接装置を用い、摩擦圧接の条件を、接合面での回転運動の最外周における周速度が4.16m/秒、摩擦圧力が46MPa、摩擦時間が1秒とし、アプセット圧力を239MPaに設定して、アプセット力を、接合断面積に接合前の純チタン材料の降伏強度を乗じた値の力より小さくした。
【0056】
そして、アプセットタイミングを0.00秒、0.06秒、0.12秒、0.18秒、0.24秒、0.27秒に設定して摩擦圧接試験を行った。図10は、実施例2における回転運動の減速過程を示すグラフである。縦軸に接合面での回転運動の最外周における周速度をとり、横軸にアプセットタイミングをとっている。
【0057】
摩擦圧接して接合一体化した金属接合体は、実施例1と同様に引張試験を行った。それぞれのアプセットタイミングにおける金属接合体に関する全アプセット量と引張強度の測定結果を図11に示す。
【0058】
図11の測定結果から明らかなように、実施例2では、接合面での回転運動の最外周における周速度が1m/秒以上において、接合部が接合前の純チタン材料の引張強度以上の引張強度を有するとともに、接合部の強度のばらつきが小さいことを確認した。
【0059】
さらに、接合部の断面組織を観察した結果、実施例1と同様に、ニッケル・チタン合金材料の組成とは異なる化合物が生成された層及び原子の拡散が生じた層からなる反応層が観察された。反応層は、接合面全体にわたって50μm以下の厚さで薄く形成され、化合物が生成された層は接合面全体にわたって20μm以下の厚さで薄く形成されていた。
【0060】
また、実施例1と同様に、純チタン材料に熱影響部が生じており、熱影響部は500μm以下の厚さで薄く形成されていた。熱影響部では、ろう付けの際に観察される純チタン材料のα−β変態点(880℃)以上の加熱による結晶粒径の粗大化は観察されず、摩擦圧接による熱の影響が小さかったことがわかる。
【0061】
また、回転運動の減速開始後、接合面での回転運動の最外周における周速度が1m/秒より小さくなった時間にアプセット力を加えた比較例は、接合部が接合前の純チタン材料の引張強度以上の引張強度を有しておらず、接合部の強度のばらつきが大きいことが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0062】
本発明の異種金属接合体は、家電製品、住宅機器、輸送機器、眼鏡、医療器具などの多種多様な用途で用いることができ、その産業上の利用可能性は非常に大きい。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】2つの丸棒体同士を接合一体化した異種金属接合体に関する斜視図である。
【図2】3つの丸棒体同士を接合一体化した異種金属接合体に関する斜視図である。
【図3】3つの板状体を接合一体化した異種金属接合体に関する斜視図である。
【図4】摩擦圧接装置に関する概略構成図である。
【図5】摩擦圧接動作の時間的推移を示すグラフである。
【図6】同径の丸棒同士の摩擦圧接時における接合面に関する模式図である。
【図7】異径の丸棒同士の摩擦圧接時における接合面に関する模式図である。
【図8】実施例1における回転運動の減速過程を示すグラフである。
【図9】実施例1における測定結果を示す一覧表である。
【図10】実施例2における回転運動の減速過程を示すグラフである。
【図11】実施例2における測定結果を示す一覧表である。
【符号の説明】
【0064】
W1 回転側金属材料
W2 固定側金属材料
1 ニッケル・チタン合金材料からなる丸棒体
2 純チタン材料からなる丸棒体
3 ニッケル・チタン合金材料からなる丸棒体
4 純チタン材料からなる丸棒体
5 異なる金属材料からなる丸棒体
6 ニッケル・チタン合金材料からなる板状体
7 純チタン材料からなる板状体
8 異なる金属材料からなる板状体
10 基台
11 支持台
12 スライドガイド
13 ネジ棒
14 駆動モータ
15 キャリッジ
16 取付枠体
17 回転モータ
18 回転側固定具
19 固定側固定具
【技術分野】
【0001】
本発明は、ニッケル・チタン合金材料及び純チタン材料の異種金属接合体並びにその接合方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、形状記憶効果または超弾性効果を発現する組成であるニッケル・チタン合金材料は、その機能性を利用するために多種多様な工業製品の材料に使用されている。ところが、それらの製品開発においては、ニッケル・チタン合金材料が難加工性を有することが大きな障害となっている。そのため、ニッケル・チタン合金材料と純チタン材料の異種金属接合体は、純チタン材料が良好な加工性の他、生体適合性や耐食性などの機能性を有することから、機能材料としての利用価値が高い。
【0003】
なお、ニッケル・チタン合金材料と純チタン材料の異種金属接合体は、ニッケル・チタン合金材料の引張強度が純チタン材料の引張強度よりも高いことから、接合部が接合前の純チタン材料の引張強度以上の引張強度を有することが望まれる。
【0004】
ところで、ニッケル・チタン合金材料に異種金属材料を接合する方法は、通常の溶接方法での接合が難しいことから、カシメなどの機械的な接合方法や、ニッケル・チタン合金材料にメッキをしてからろう付けする方法を用いるのが一般的である。
【0005】
しかしながら、従来の一般的な方法で接合されたニッケル・チタン合金材料と純チタン材料の異種金属接合体は、接合部が接合前の純チタン材料の引張強度と比べてかなり低い引張強度を有するという問題があった。また、ろう付けする方法で接合されたニッケル・チタン合金材料と純チタン材料の異種金属接合体は、接合後の熱影響部が大きいという問題もあった。
【0006】
そこで、特許文献1の「超弾性合金のろう付け方法」で、超弾性合金にスパッタリング等でチタン被膜を付けた後でチタン合金ろう材でろう付けする技術が提案された。この技術は、超弾性合金に密着強度が高いチタン被膜を付けることで、従来の一般的な方法で接合されたものと比べて接合部の強度が高い異種金属接合体を得ることができる。しかしながら、この技術は、ろう付けする方法で接合されるために、接合後の熱影響部が大きいという問題が解決できなかった。
【0007】
また、特許文献2及び特許文献3では、ニッケル・チタン合金材料及びニッケル基合金材料を接合する技術が提案され、特許文献4では、ニッケル・チタン合金材料及び異種金属材料を接合する技術が提案された。
【0008】
これらの技術では、溶湯に対して加圧力が伝達された状態で凝固した金属組織、すなわち溶湯鍛造組織が接合面界面の全体にわたって約20μm以下の厚さで形成されることで、従来の一般的な方法で接合されたものと比べて接合部の強度が高い異種金属接合体を得ることができる。また、高温で加圧するとともに接合面近傍に放熱部を設けることで、接合後の熱影響部が小さい異種金属接合体を得ることができる。
【0009】
しかしながら、これらの技術は、接合面の状態や接触の状態の調整で要求される精密さが不足するようになる、または、接合面積が大きくなると、溶湯鍛造組織が接合面界面の全体にわたって約20μm以下の厚さで形成されることが難しくなるために、接合部の強度が低下しやすいとともにばらつきやすいという問題があった。そのために、これらの技術によるニッケル・チタン合金材料及び純チタン材料の異種金属接合体は、特許文献4の実施例で接合部が20kg/mm2以上30kg/mm2の引張強度を有すると報告されているように、接合部が接合前の純チタン材料の引張強度以上の引張強度を有することができなかった。
【特許文献1】特許第1968308号公報
【特許文献2】特許第2516447号公報
【特許文献3】特許第2563843号公報
【特許文献4】特許第2737817号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、上述したような従来技術の課題に鑑み、接合部が接合前の純チタン材料の引張強度以上の引張強度を有するとともに接合部の強度のばらつきが小さく、接合後の熱影響部が小さいニッケル・チタン合金材料及び純チタン材料の異種金属接合体並びにその接合方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係る異種金属接合体は、ニッケル・チタン合金材料及び純チタン材料の異種金属接合体において、前記ニッケル・チタン合金材料及び前記純チタン材料の接合部は、摩擦圧接された状態でアプセット力による圧縮力及び減速する回転運動の回転力により形成された反応層の組織からなり、接合前の純チタン材料の引張強度以上の引張強度を有することを特徴とする。さらに、前記ニッケル・チタン合金材料は、形状記憶効果または超弾性効果を発現する組成であることを特徴とする。さらに、前記純チタン材料は、JIS H4650に規定される1種又は2種に相当する組成であることを特徴とする。さらに、前記純チタン材料の部分は、前記接合部とは別に前記ニッケル・チタン合金材料とは異なる金属材料が接合されており、両接合間の厚さが前記純チタン材料の部分の外径サイズ以下であることを特徴とする。さらに、前記接合部は、接合後の加工で成形されていることを特徴とする。
【0012】
本発明に係る異種金属接合体の接合方法は、ニッケル・チタン合金材料及び純チタン材料の接合面の少なくとも一方を回転運動させて摩擦圧接させながら、回転運動の減速開始後、接合面での回転運動の最外周における周速度が0.5m/秒以上の間に所定のアプセット力を加えて圧縮して接合することを特徴とする。さらに、摩擦圧接の条件を、接合面での回転運動の最外周における周速度が2m/秒以上、摩擦圧力が100MPa以下、摩擦時間が0.5秒以上とすることを特徴とする。
【0013】
本発明に係る別の異種金属接合体の接合方法は、ニッケル・チタン合金材料及び純チタン材料の接合面の少なくとも一方を回転運動させて摩擦圧接させながら、回転運動の減速開始後、接合面での回転運動の最外周における周速度が1m/秒以上の間に、接合面での接合断面積に接合前の純チタン材料の降伏強度を乗じた値の力より小さく設定されたアプセット力を加えて圧縮して接合することを特徴とする。さらに、摩擦圧接の条件を、接合面での回転運動の最外周における周速度が4m/秒以上、摩擦圧力が100MPa以下、摩擦時間が0.5秒以上とすることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る異種金属接合体は、接合部が接合前の純チタン材料の引張強度以上の引張強度を有するとともに接合部の強度のばらつきが小さく、接合後の熱影響部が小さく形成されている。
【0015】
すなわち、本発明の異種金属接合体においては、アプセット力による圧縮力及び減速する回転運動の回転力により形成された反応層の組織からなることで、反応層において生成された化合物が接合面全体にわたって薄く形成されるとともに化合物が接合部全体に分布するようになるために、接合部が接合前の純チタン材料の引張強度以上の引張強度を有するとともに接合部の強度のばらつきが小さくなる。そして、接合部が接合前の純チタン材料の引張強度以上の引張強度をもつことから、接合部を接合後に切削加工や研削加工による除去加工のほか、塑性加工による変形加工で成形することができる。
【0016】
このような強度特性が得られることからも明らかなように、本発明の異種金属接合体の接合部は、回転運動が完全に停止した状態でアプセット力による単純圧縮力を加える一般的な摩擦圧接方法や、加圧による単純圧縮力を加える他の圧接方法で得られる反応層の組織とは異なる反応層の組織からなる。
【0017】
また、接合面以外の部分での発熱を伴うとともに加圧力により加熱領域をほとんど変形させないろう付けにより接合された接合体と比べて、本発明の異種金属接合体は、摩擦発熱により接合面を直接に加熱するとともにアプセット力により加熱領域を大きく変形させる摩擦圧接により接合された接合体であるために、熱影響部が小さい。
【0018】
さらに、本発明の異種金属接合体においては、純チタン材料には、接合部とは別の部分にニッケル・チタン合金材料とは異なる金属材料が接合一体化されており、純チタン材料が通常の溶接方法によりチタン合金、アルミニウム、銅、炭素鋼、タンタルなどの異種金属材料と強固に接合できるために、純チタン材料を中間部分としたニッケル・チタン合金材料の異種金属接合体を得ることができる。この場合、両接合間の厚さが純チタン材料の外径サイズ以下であることで、中間部分である純チタン材料の変形を純チタン材料よりも高強度の材料で拘束する条件下で接合一体化して接合部の強度を高めることができる。
【0019】
本発明の異種金属接合体の接合方法は、接合面の状態や接触の状態の調整で要求される精密さを満たすことが簡単であり、かつ、不良率が小さい。このような利点から、本発明によれば、ニッケル・チタン合金材料と異種金属材料を接合した製品のデザインや機能、信頼性を向上させることができる。
【0020】
また、本発明の異種金属接合体の接合方法においては、回転運動の減速開始後、接合面での回転運動の最外周における周速度が0.5m/秒以上の間にアプセット力を加えることで、接合前の純チタン材料の引張強度以上の引張強度を有する接合部を形成することができる。そして、接合面の温度分布が著しく不均一とならないように、接合面での回転運動の最外周における周速度、摩擦圧力、摩擦時間に関する摩擦圧接の条件を設定することで、強度のばらつきが小さくすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明に係る実施形態について詳しく説明する。なお、以下に説明する実施形態は、本発明を実施するにあたって好ましい具体例であるから、技術的に種々の限定がなされているが、本発明は、以下の説明において特に本発明を限定する旨明記されていない限り、これらの形態に限定されるものではない。
【0022】
図1は、本発明に係る異種金属接合体に関する斜視図である。この例では、ニッケル・チタン合金材料からなる丸棒体1及び純チタン材料からなるとともに丸棒体1と同径の丸棒体2を接合一体化して形成されている。接合部は、後述するように、摩擦圧接された状態でアプセット力による圧縮力及び減速する回転運動の回転力により形成され、接合前の純チタン材料の引張強度以上の引張強度を有する反応層の組織からなる。
【0023】
摩擦圧接により生じる反応層は、ニッケル・チタン合金材料の組成とは異なる化合物が生成された層及び原子の拡散が生じた層からなる。こうした接合部の反応層は、接合面全体にわたって薄く形成される。
【0024】
また、冷間加工後に再結晶焼鈍された純チタン材料の組織は等軸α組織を有するが、摩擦圧接による熱及び力の影響を受けて等軸α組織が変化した熱影響部が薄く形成される。従来のろう付けの際には、純チタン材料のα−β変態点(880℃)以上の加熱により結晶粒径の粗大化が生じるが、純チタン材料に生じる熱影響部にはこうした結晶粒径の粗大化は生じておらず、摩擦圧接による熱の影響が小さくなっている。
【0025】
このように、接合部における反応層及び熱影響部が薄く形成されて純チタン材料の受ける影響が小さくなり、反応層に生成された化合物が接合面全体にわたって薄く形成されるとともに接合部全体に分布するようになるため、接合部において引張強度が低下せず純チタン材料の引張強度以上になる。
【0026】
ニッケル・チタン合金材料としては、様々な組成の公知の合金材料を用いることができ、形状記憶効果または超弾性効果を発現する組成のものが好ましい。純チタン材料についても公知の材料を用いることができ、特に、JIS H4650に規定される1種又は2種に相当する組成にものが好ましい。
【0027】
図2は、ニッケル・チタン合金材料とは異なる金属材料をさらに接合一体化した異種金属接合体に関する斜視図である。この例では、ニッケル・チタン合金材料からなる丸棒体3が純チタン材料からなる丸棒体4の一方の端部に接合一体化され、丸棒体4の他方の端部には、ニッケル・チタン合金材料とは異なる金属材料からなる丸棒体5が接合一体化されている。丸棒体3〜5は同径に形成されている。丸棒体5は、例えば、チタン合金、アルミニウム、銅、炭素鋼、タンタルといった金属材料からなり、通常の溶接方法により純チタン材料と強固に接合一体化できるものがよい。
【0028】
純チタン材料の端部に接合されるニッケル・チタン合金材料とは異なる金属材料の一例は、純チタン材料よりも高強度なβ型チタン合金材料であるTi−22V−4Alが挙げられる。ニッケル・チタン合金材料とTi−22V−4Alの接合は、通常の溶接方法や本発明による方法によって強固な接合部を得ることが難しい。しかしながら、純チタン材料とTi−22V−4Alの接合は、例えば通常の摩擦圧接方法で強固な接合部を得ることが容易である。
【0029】
このように異種金属材料を接合一体化することで、純チタン材料を中間部分としてニッケル・チタン合金材料に様々な金属材料を一体化することができる。
【0030】
図2に示すように、丸棒体同士の組合せの場合には、中間部分の純チタン材料の接合間の厚さHがその外径サイズである外径D以下であることで、中間部分である純チタン材料の変形を純チタン材料よりも高強度の材料で拘束する条件下で接合一体化して接合部の強度を高めることができる。
【0031】
また、図3は、図2の場合と同様の3つの金属材料を用いて板状体同士を組み合せて接合一体化した異種金属接合体に関する斜視図である。ニッケル・チタン合金材料からなる板状体6が純チタン材料からなる板状体7の一方の端部に接合一体化され、板状体7の他方の端部には、ニッケル・チタン合金材料とは異なる金属材料からなる板状体8が接合一体化されている。
【0032】
この場合には、中間部分の純チタン材料の接合間の長さHがその外径サイズである板厚h以下であることで、中間部分である純チタン材料の変形を純チタン材料よりも高強度の材料で拘束する条件下で接合一体化して接合部の強度を高めることができる。なお、中間部分の純チタン材料の板厚hは、その板幅W以下に設定するとよい。
【0033】
図1及び図2では同径の丸棒体同士を接合一体化しているが、板状体及び板状体、管状体及び管状体といった組合せでもよい。その場合、例えば、異径同士の丸棒体を組み合せてもよく、接合部分の形状が互いに一致しなくてもよい。さらに、異形同士の組合せも可能で、例えば、棒状体と板状体、管状体と板状体といった組み合せが挙げられ、様々な形状同士を組み合せて接合一体化することができる。
【0034】
異種金属接合体の接合部が非円形の断面形状とする場合には、断面形状が円形の材料同士を接合一体化した後、切削加工や研削加工による除去加工のほか、塑性加工による変形加工で成形することができることを利用して、接合部を円形の断面形状から縦と横の比が大きい非円形の断面形状とすることができる。縦と横の比が大きい非円形の断面形状の摩擦圧接は、回転させて接合する際に接合面が外気にさらされる領域が大きいため、良好な接合が難しい。こうした場合には接合後に加工して成形することが望ましい。
【0035】
図4は、本発明に係る異種金属接合体を製造する摩擦圧接装置に関する概略構成図である。基台10に立設固定された支持台11には、直線状のスライドガイド12が設けられている。スライドガイド12に並列配置されたネジ棒13が基台10に回転可能に軸支されており、支持台11に取付固定された駆動モータ14によりネジ棒13が回転駆動されるようになっている。ネジ棒13にはキャリッジ15が螺着されており、ネジ棒13が回転することでキャリッジ15が上下動する。
【0036】
キャリッジ15には取付枠体16が固定されており、取付枠体16に回転モータ17が取り付けられている。回転モータ17の駆動軸に回転側固定具18が取り付けられており、基台10には、回転側固定具18に対向して固定側固定具19が配置されて固定されている。
【0037】
回転側固定具18には、回転側金属材料W1が取付固定されており、固定側固定具19には、固定側金属材料W2が取付固定されている。そして、駆動モータ14を回転駆動してキャリッジ15を下方に移動させて、回転側金属材料W1の接合面を固定側金属材料W2の接合面と密着させる。なお、金属材料の接合面は、接触の状態が著しく不均一となることを避けるために、予め旋盤加工等により平滑化しておくことが好ましい。
【0038】
駆動モータ14をさらに回転駆動させると、金属材料W1及びW2の接合面に加わる推力を制御することができる。接合面を圧接させた状態で回転モータ17を回転制御して回転側金属材料W1を回転させることで、両金属材料の接合面を摩擦圧接させることができる。
【0039】
摩擦圧接装置としては、上述した装置以外にも、接合一体化しようとする材料の相対運動と停止を制御して摩擦圧接を制御できるものであればよく、例えば、互いに反対方向に回転させて相対運動させる装置であってもよい。
【0040】
図5は、摩擦圧接動作を行う場合における接合面に加えられる圧力(P;実線で表示)及び寄り代(M;点線で表示)の時間的推移を示すグラフである。この例では、時刻t1において回転モータ17の回転が減速開始する。減速開始するまでの間は、駆動モータ14の接合面に対する推力による一定の摩擦圧力P1と回転モータ17の一定の回転数により摩擦寄り代が増加していき、時刻t1において摩擦寄り代M1を得る。
【0041】
時刻t1から回転モータ17の減速が開始された後、後述するように接合面での回転運動の最外周における周速度が0.5m/秒以上の間に駆動モータ14の推力を高めて一定のアプセット圧力(P2)を加え、回転モータ17が停止されて接合部が完全に冷却されるまでの間、アプセット圧力(P2)が継続して加えられてアプセット寄り代(M2)を得る。
【0042】
図6は、同径の丸棒体に形成された金属材料W1及びW2を接合した状態に関する模式図であり、図7は、異径の丸棒体に形成された金属材料W1及びW2を接合した状態に関する模式図である。この場合、接合面の接合断面積Sは、摩擦圧接時の接合面において接合面に加えられる力の方向に対して直交する平面での断面積であり、図6及び図7において金属材料Wの外径が一致すれば、同じ接合断面積となる。摩擦圧接後の実際の接合面は、周速度の影響により滑らかな曲面状となる。
【0043】
また、接合面での回転運動の最外周における周速度は、接合面の回転による軌跡を連続して描画した場合における最外周での周速度である。図6ではどちらか一方の金属材料を回転運動させた場合、いずれの場合でも接合面での回転運動の最外周における周速度は一致する。図7では、外径の小さい丸棒体を回転運動させた場合、外径の小さい金属材料の最外周における周速度と接合面での回転運動の最外周における周速度は一致するが、外径の大きい丸棒体を回転させた場合、外径の大きい金属材料の最外周における周速度と接合面での回転運動の最外周における周速度は一致しない。なお、双方の金属材料を互いに反対方向に回転させて相対運動を得る場合、接合面での回転運動の最外周における周速度は、回転する各々の金属材料の接合面での最外周における周速度を足し合わせたものになる。
【0044】
摩擦圧接の制御は、減速開始後に加えられるアプセット力を、接合断面積に接合前の純チタン材料の降伏強度を乗じた値の力以上に設定するかまたはそれよりも小さく設定するかに応じて制御方法を変更するとよい。なお、加えられるアプセット力は、純チタン材料が摩擦圧接部以外の部分で変形しない範囲内でなるべく大きな力とすることが好ましい。
【0045】
なお、摩擦圧接で生じるバリは、形状的に応力集中が発生しやすく、変形で分離した反応層が接合面外に排出されずに残留して欠陥が生じやすいことから、切削や研削により除去することが好ましい。
【実施例】
【0046】
(実施例1)
超弾性の効果を発現する組成であるニッケル・チタン合金材料の丸棒体(直径2.1mm、長さ55mm)と、JIS H4650に規定される2種に相当する組成である純チタン材料の丸棒体(直径4mm、長さ59mm)を用いた。丸棒体の接合面は、予め旋盤加工により平滑化して互いに密着するように加工した。なお、接合前のニッケル・チタン合金材料は、センタレス研磨した材料で焼鈍されたものであった。また、接合前の純チタン材料は、センタレス研磨した材料で降伏強度が240MPa程度で引張強度が450MPa程度のものであった。
【0047】
上述した摩擦圧接装置(日東制機株式会社製)に丸棒体をセットし、摩擦圧接の条件を、接合面での回転運動の最外周における周速度が2.18m/秒、摩擦圧力が58MPa、摩擦時間が1秒とし、アプセット圧力を361MPaに設定して、アプセット力を、接合断面積に接合前の純チタン材料の降伏強度を乗じた値の力以上とした。
【0048】
そして、アプセットタイミングをそれぞれ0.00秒、0.06秒、0.12秒、0.18秒、0.24秒、0.27秒に設定して摩擦圧接試験を行った。ここで、アプセットタイミングとは、回転運動の減速開始後からアプセット力を加えるまでの時間をいう。図8は、実施例1における回転運動の減速過程を示すグラフである。縦軸に接合面での回転運動の最外周における周速度をとり、横軸にアプセットタイミングをとっている。
【0049】
摩擦圧接して接合一体化した金属接合体は、バリを切削で除去した後に、引張試験機(インストロン社製)を用い、接合部が中央に配置されるように金属接合体の両端部を把持し、把持した間の間隔を40mm、クロスヘッドスピードを0.01mm/秒に設定して、引張試験を行った。それぞれのアプセットタイミングにおける金属接合体に関する全アプセット量と引張強度の測定結果を図9に示す。なお、全アプセット量とは、摩擦寄り代の量とアプセット寄り代の量を足し合わせた量をいう。
【0050】
図9の測定結果から明らかなように、実施例1では、接合面での回転運動の最外周における周速度が0.5m/秒以上において、接合部が接合前の純チタン材料の引張強度以上の引張強度を有するとともに、接合部の強度のばらつきが小さいことを確認した。
【0051】
さらに、接合部の断面組織を観察した結果、ニッケル・チタン合金材料の組成とは異なる化合物が生成された層及び原子の拡散が生じた層が観察された。こうした接合部の反応層は、接合面全体にわたって50μm以下の厚さで薄く形成されていた。そして、化合物が生成された層は接合面全体にわたって20μm以下の厚さで薄く形成されていた。
【0052】
また、純チタン材料の組織は、結晶粒径が50μm程度の等軸α組織であったが、摩擦圧接による熱及び力の影響を受けて変化した熱影響部は500μm以下の厚さで薄く形成されていた。熱影響部では、ろう付けの際に観察される純チタン材料のα−β変態点(880℃)以上の加熱による結晶粒径の粗大化は観察されなかった。こうした観察結果から摩擦圧接による熱の影響が小さかったことがわかる。
【0053】
また、回転運動の減速開始後、接合面での回転運動の最外周における周速度が0.5m/秒より小さくなった時間にアプセット力を加えた比較例は、接合部が接合前の純チタン材料の引張強度以上の引張強度を有しておらず、接合部の強度のばらつきが大きいことが確認された。
【0054】
(実施例2)
超弾性の効果を発現する組成であるニッケル・チタン合金材料の丸棒体(直径4mm、長さ63mm)と、JIS H4650に規定される2種に相当する組成である純チタン材料の丸棒体(直径4mm、長さ63mm)を用いて、ニッケル・チタン合金材料と純チタン材料の摩擦圧接試験を行った。丸棒体の接合面は、予め旋盤加工により平滑化して互いに密着するように加工した。なお、接合前のニッケル・チタン合金材料は、センタレス研磨した材料で焼鈍されたものであった。また、接合前の純チタン材料は、センタレス研磨した材料で降伏強度が240MPa程度で引張強度が450MPa程度のものであった。
【0055】
実施例1と同様の摩擦圧接装置を用い、摩擦圧接の条件を、接合面での回転運動の最外周における周速度が4.16m/秒、摩擦圧力が46MPa、摩擦時間が1秒とし、アプセット圧力を239MPaに設定して、アプセット力を、接合断面積に接合前の純チタン材料の降伏強度を乗じた値の力より小さくした。
【0056】
そして、アプセットタイミングを0.00秒、0.06秒、0.12秒、0.18秒、0.24秒、0.27秒に設定して摩擦圧接試験を行った。図10は、実施例2における回転運動の減速過程を示すグラフである。縦軸に接合面での回転運動の最外周における周速度をとり、横軸にアプセットタイミングをとっている。
【0057】
摩擦圧接して接合一体化した金属接合体は、実施例1と同様に引張試験を行った。それぞれのアプセットタイミングにおける金属接合体に関する全アプセット量と引張強度の測定結果を図11に示す。
【0058】
図11の測定結果から明らかなように、実施例2では、接合面での回転運動の最外周における周速度が1m/秒以上において、接合部が接合前の純チタン材料の引張強度以上の引張強度を有するとともに、接合部の強度のばらつきが小さいことを確認した。
【0059】
さらに、接合部の断面組織を観察した結果、実施例1と同様に、ニッケル・チタン合金材料の組成とは異なる化合物が生成された層及び原子の拡散が生じた層からなる反応層が観察された。反応層は、接合面全体にわたって50μm以下の厚さで薄く形成され、化合物が生成された層は接合面全体にわたって20μm以下の厚さで薄く形成されていた。
【0060】
また、実施例1と同様に、純チタン材料に熱影響部が生じており、熱影響部は500μm以下の厚さで薄く形成されていた。熱影響部では、ろう付けの際に観察される純チタン材料のα−β変態点(880℃)以上の加熱による結晶粒径の粗大化は観察されず、摩擦圧接による熱の影響が小さかったことがわかる。
【0061】
また、回転運動の減速開始後、接合面での回転運動の最外周における周速度が1m/秒より小さくなった時間にアプセット力を加えた比較例は、接合部が接合前の純チタン材料の引張強度以上の引張強度を有しておらず、接合部の強度のばらつきが大きいことが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0062】
本発明の異種金属接合体は、家電製品、住宅機器、輸送機器、眼鏡、医療器具などの多種多様な用途で用いることができ、その産業上の利用可能性は非常に大きい。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】2つの丸棒体同士を接合一体化した異種金属接合体に関する斜視図である。
【図2】3つの丸棒体同士を接合一体化した異種金属接合体に関する斜視図である。
【図3】3つの板状体を接合一体化した異種金属接合体に関する斜視図である。
【図4】摩擦圧接装置に関する概略構成図である。
【図5】摩擦圧接動作の時間的推移を示すグラフである。
【図6】同径の丸棒同士の摩擦圧接時における接合面に関する模式図である。
【図7】異径の丸棒同士の摩擦圧接時における接合面に関する模式図である。
【図8】実施例1における回転運動の減速過程を示すグラフである。
【図9】実施例1における測定結果を示す一覧表である。
【図10】実施例2における回転運動の減速過程を示すグラフである。
【図11】実施例2における測定結果を示す一覧表である。
【符号の説明】
【0064】
W1 回転側金属材料
W2 固定側金属材料
1 ニッケル・チタン合金材料からなる丸棒体
2 純チタン材料からなる丸棒体
3 ニッケル・チタン合金材料からなる丸棒体
4 純チタン材料からなる丸棒体
5 異なる金属材料からなる丸棒体
6 ニッケル・チタン合金材料からなる板状体
7 純チタン材料からなる板状体
8 異なる金属材料からなる板状体
10 基台
11 支持台
12 スライドガイド
13 ネジ棒
14 駆動モータ
15 キャリッジ
16 取付枠体
17 回転モータ
18 回転側固定具
19 固定側固定具
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ニッケル・チタン合金材料及び純チタン材料を接合して一体化した異種金属接合体において、前記ニッケル・チタン合金材料及び前記純チタン材料の接合部は、摩擦圧接された状態でアプセット力による圧縮力及び減速する回転運動の回転力により形成された反応層の組織からなり、接合前の純チタン材料の引張強度以上の引張強度を有することを特徴とする異種金属接合体。
【請求項2】
前記ニッケル・チタン合金材料は、形状記憶効果または超弾性効果を発現する組成であることを特徴とする請求項1に記載の異種金属接合体。
【請求項3】
前記純チタン材料は、JIS H4650に規定される1種又は2種に相当する組成であることを特徴とする請求項1又は2に記載の異種金属接合体。
【請求項4】
前記純チタン材料には、前記接合部とは別の部分に前記ニッケル・チタン合金材料とは異なる金属材料が接合一体化されており、両接合間の厚さが前記純チタン材料の外径サイズ以下であることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の異種金属接合体。
【請求項5】
前記接合部は、接合後の加工で成形されていることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の異種金属接合体。
【請求項6】
ニッケル・チタン合金材料及び純チタン材料の接合面の少なくとも一方を回転運動させて摩擦圧接させながら、回転運動の減速開始後、接合面での回転運動の最外周における周速度が0.5m/秒以上の間に所定のアプセット力を加えて圧縮して接合することを特徴とする異種金属接合体の接合方法。
【請求項7】
摩擦圧接の条件を、接合面での回転運動の最外周における周速度が2m/秒以上、摩擦圧力が100MPa以下、摩擦時間が0.5秒以上とすることを特徴とする請求項6に記載の異種金属接合体の接合方法。
【請求項8】
ニッケル・チタン合金材料及び純チタン材料の接合面の少なくとも一方を回転運動させて摩擦圧接させながら、回転運動の減速開始後、接合面での回転運動の最外周における周速度が1m/秒以上の間に、接合面での接合断面積に接合前の純チタン材料の降伏強度を乗じた値の力より小さく設定されたアプセット力を加えて圧縮して接合することを特徴とする異種金属接合体の接合方法。
【請求項9】
摩擦圧接の条件を、接合面での回転運動の最外周における周速度が4m/秒以上、摩擦圧力が100MPa以下、摩擦時間が0.5秒以上とすることを特徴とする請求項8に記載の異種金属接合体の接合方法。
【請求項1】
ニッケル・チタン合金材料及び純チタン材料を接合して一体化した異種金属接合体において、前記ニッケル・チタン合金材料及び前記純チタン材料の接合部は、摩擦圧接された状態でアプセット力による圧縮力及び減速する回転運動の回転力により形成された反応層の組織からなり、接合前の純チタン材料の引張強度以上の引張強度を有することを特徴とする異種金属接合体。
【請求項2】
前記ニッケル・チタン合金材料は、形状記憶効果または超弾性効果を発現する組成であることを特徴とする請求項1に記載の異種金属接合体。
【請求項3】
前記純チタン材料は、JIS H4650に規定される1種又は2種に相当する組成であることを特徴とする請求項1又は2に記載の異種金属接合体。
【請求項4】
前記純チタン材料には、前記接合部とは別の部分に前記ニッケル・チタン合金材料とは異なる金属材料が接合一体化されており、両接合間の厚さが前記純チタン材料の外径サイズ以下であることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の異種金属接合体。
【請求項5】
前記接合部は、接合後の加工で成形されていることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の異種金属接合体。
【請求項6】
ニッケル・チタン合金材料及び純チタン材料の接合面の少なくとも一方を回転運動させて摩擦圧接させながら、回転運動の減速開始後、接合面での回転運動の最外周における周速度が0.5m/秒以上の間に所定のアプセット力を加えて圧縮して接合することを特徴とする異種金属接合体の接合方法。
【請求項7】
摩擦圧接の条件を、接合面での回転運動の最外周における周速度が2m/秒以上、摩擦圧力が100MPa以下、摩擦時間が0.5秒以上とすることを特徴とする請求項6に記載の異種金属接合体の接合方法。
【請求項8】
ニッケル・チタン合金材料及び純チタン材料の接合面の少なくとも一方を回転運動させて摩擦圧接させながら、回転運動の減速開始後、接合面での回転運動の最外周における周速度が1m/秒以上の間に、接合面での接合断面積に接合前の純チタン材料の降伏強度を乗じた値の力より小さく設定されたアプセット力を加えて圧縮して接合することを特徴とする異種金属接合体の接合方法。
【請求項9】
摩擦圧接の条件を、接合面での回転運動の最外周における周速度が4m/秒以上、摩擦圧力が100MPa以下、摩擦時間が0.5秒以上とすることを特徴とする請求項8に記載の異種金属接合体の接合方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2008−264872(P2008−264872A)
【公開日】平成20年11月6日(2008.11.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−83874(P2008−83874)
【出願日】平成20年3月27日(2008.3.27)
【出願人】(592029256)福井県 (122)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年11月6日(2008.11.6)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年3月27日(2008.3.27)
【出願人】(592029256)福井県 (122)
【Fターム(参考)】
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