説明

ニトリル混合物からニッケル(O)錯体とリン含有配位子とを分離する方法

不飽和モノニトリルのジニトリルへのヒドロシアノ化の際に得られる反応排液から炭化水素で抽出し、炭化水素とニトリル含有溶液とを相分離させて二相とすることにより、リン配位子を有するニッケル(O)錯体を抽出除去する方法であって、少なくとも一種の極性添加物を該ヒドロシアノ化排液(供給液)及び/又は該抽出段階に供給することを特徴とする方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、不飽和モノニトリルのジニトリルへのヒドロシアノ化の際に得られる反応排液から炭化水素での抽出により、炭化水素とニトリル含有溶液を二相に相分離させ、リン配位子を有するニッケル(O)錯体を抽出除去する方法であって、
該ヒドロシアノ化排液(供給液)及び/又は該抽出段に少なくとも一種の極性添加物(極性添加剤)を供給することを特徴とする方法に関する。
【背景技術】
【0002】
不飽和モノニトリルのヒドロシアノ化には、リン配位子を持つニッケル錯体が好適な触媒となる。例えば、ナイロン製造の重要な中間体であるアジポニトリルは、1,3−ブタジエンの二重ヒドロシアノ化で製造されている。最初のヒドロシアノ化では、リン配位子で安定化したニッケル(O)の存在下で、1,3−ブタジエンをシアン化水素とを反応させて3−ペンテンニトリルを得る。二番目のヒドロシアノ化では、3−ペンテンニトリルとシアン化水素とを反応させてアジポニトリルを得るが、この際には、同様にニッケル触媒を用いるが、適当ならルイス酸を、また場合によっては促進剤をも添加する。ニッケル(0)またはNi(0)は、0酸化状態のニッケルを意味する。
【0003】
ヒドロシアノ化の経済性を上げるため、通常このニッケル触媒を分離してリサイクルしている(触媒回転)。錯体と遊離の配位子との混合物である第二のヒドロシアノ化触媒系は、高い熱ストレスに曝すことができないため、高沸点のアジポニトリルを、蒸留により触媒系から分離することができない。したがって、分離は、通常炭化水素類を抽出剤として用いる抽出により行われる。触媒系は、理想的にはすべてが、実際には部分的に、軽い炭化水素相に含まれ、一方、重い相は、より極性が高く、粗製アジポニトリル、未変換ペンテンニトリルの大部分、およびルイス酸を含んでいる。通常、相分離の後に、この抽出剤を減圧下で蒸留により触媒系から分離し、ペンテンニトリルを加えて希釈する。抽出剤の沸騰圧力は、ペンテンニトリルよりかなり大きい。
【0004】
US−A3,773,809およびUS−A5,932,772は、この触媒錯体とその配位子をパラフィンおよびシクロパラフィンで、例えばシクロヘキサン、ヘプタンとオクタン、またはアルキル芳香族で抽出することを開示している。
【0005】
US−A4,339,395は、単座配位子をもつ触媒系とトリアリールボラン促進剤を用い、抽出時の非明澄相形成を防止するために少量のアンモニアを添加する系での、ヒドロシアノ化反応排水の抽出処理プロセスを開示している。
【0006】
WO2004/062765には、モノニトリルとジニトリルおよび抽出剤のアルカンまたはシクロアルカンの混合物で、ルイス塩基、例えば有機アミンまたはアンモニアで処理されたものから、二亜リン酸ニッケル触媒を抽出的に除去することが述べられている。
【0007】
US−A5,847,191は、ヒドロシアノ化反応排水の処理プロセスを開示しているが、ここで使用するキレート配位子は、C9−C40−アルキル基を有している。
【0008】
US−A4,990,645は、抽出前に、反応により生じるNi(CN)2の固体をデカンターで除くことで、ニッケル錯体と遊離の配位子の抽出効率を上げることができることを示している。この目的ために、触媒およびNi(CN)2の溶解度を落とすために、ペンテンニトリルの一部を前もって蒸発除去させている。
【0009】
炭化水素含有相と粗製アジポニトリル含有相の相分離を行うためには、従来、3−ペンテンニトリルをある程度変換させる必要があった。したがって、US−A3,773,809は、シクロヘキサンを抽出剤に用いて相分離を行うには、3−ペンテントリルの最小変換率が60%であり、3−ペンテンニトリルとアジポニトリルの比が0.65より小さくなることが必要であるとしている。3−ペンテンニトリルの変換が低く、この比率とならない場合は、前もって3−ペンテンニトリルを蒸発除去させるか、アジポニトリルを添加して、比率を0.65未満とする必要がある。この3−ペンテンニトリルの最小変換率の問題点は、アジポニトリルの3−ペンテンニトリルに対する選択性が低いこと、シアン化水素が、3−ペンテンニトリルの高変換率と関係している。また、3−ペンテンニトリルの最小変換率60%は、触媒系の寿命を縮めることにつながる。
【0010】
工業規模での連続抽出法が強く求められている。大量の供給液中のニッケル(O)錯体とリン配位子を、小さな残留量にまで低下させる必要がある。起こりうる問題点としては、相界面での非明澄相の形成と固体の生成であり、固体が生成すると、この固体が抽出装置に付着し、例えば、塔内部に付着して塔の断面を狭くすることとなる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
したがって、本発明の目的は、上記の短所を克服すること、即ち上記の既存プロセスの短所を克服する、不飽和モノニトリルのジニトリルへのヒドロシアノ化の際に得られる反応排液からリン配位子を有するNi(0)錯体及び/又は遊離のリン配位子を抽出除去する方法を提供することである。
【0012】
特に、本発明の方法は、非明澄相の形成や固体の付着を抑制し、及び/又は相分離を速め、適当なら長期間停止することなく連続抽出ができることが必要である。
【課題を解決するための手段】
【0013】
したがって、冒頭に述べた方法が見出された。好ましい本発明の実施様態が、従属請求項に見出される。
【0014】
特に好ましい実施様態においては、本発明の方法が、アジポニトリルの製造において用いられる。したがって、本発明の方法は、好ましくは、3−ペンテンニトリルをモノニトリルとし、アジポニトリルをジニトリルとするものである。同様に、ヒドロシアノ化の反応排水は、好ましくは、少なくとも一種のリン配位子を有するニッケル(O)錯体の存在下で、適当なら少なくとも一種のルイス酸(例えば、促進剤として)の存在下で3−ペンテンニトリルをシアン化水素と反応させて得られるものである。
【0015】
本方法の原理
本発明の方法は、不飽和モノニトリルをヒドロシアノ化によりジニトリルに変換する際に得られる反応排液から、リン配位子を持つNi(0)錯体及び/又は遊離のリン配位子を抽出除去するのに適している。以下に、これらの錯体について述べる。
【0016】
適当なら、一部または全部未変換のペンテンニトリルが除去された反応排水を、極性の添加物を加えた後に、炭化水素により抽出する。この間に、炭化水素と反応排水とが相分離を起こり、二相に分離する。一般に、第一の相には、反応排水と較べてNi(0)錯体または配位子が濃縮されており、第二の相には、反応排水に較べジニトリルが濃縮されている。通常、第一の相が軽相、即ち上相であり、第二の相が重相、即ち下相である。
【0017】
相の比率にもよるが、この抽出において、上相中のニッケル(O)錯体または配位子の質量の下相中のニッケル(O)錯体または配位子の質量との比率で定義される抽出係数が、各理論抽出段階に対して、好ましくは0.1〜50、より好ましくは0.6〜30となる。
【0018】
相分離後では、上相が、好ましくは抽出に用いた炭化水素の50〜99重量%を、より好ましくは60〜97重量%、特に80〜95重量%を含んでいる。
【0019】
場合によっては抽出用供給液中に(具体的には、最初に述べた第二のヒドロシアノ化の排水)中に存在するルイス酸は、好ましくは大部分が、より好ましくは完全に下相に存在する。ここで、「完全に」とは、上相中のルイス酸の残留濃度が、好ましくは1重量%未満、より好ましくは0.5重量%未満、特に500質量ppm未満であることを意味する。
【0020】
炭化水素
炭化水素が抽出剤として用いられる。この炭化水素の沸点は、絶対圧力が105Paの時、好ましくは低くとも30℃、より好ましくは低くとも60℃、特に低くとも90℃、好ましくは最高140℃、より好ましくは最高135℃、特に最高130℃である。
【0021】
炭化水素(本発明においては、単一の炭化水素であってもこれら炭化水素の混合物であってもよい)は、沸点が60℃〜135℃の範囲にあるものであり、より好ましくは、アジポニトリルとNi(0)含有触媒を含む混合物からアジポニトリルを除去するのに、特に抽出により除去するのに使用される。必要なら、炭化水素H(例えば、ペンテンニトリル)よりも高沸点である適当な溶媒を添加した後、本方法で除去して得られる混合物から炭化水素を蒸留的に除いて、この触媒を得ることが好ましい。その場合、上記の範囲の沸点をもつ炭化水素を使用すると、気化した炭化水素を河川水で凝縮させることが可能となるため、特に経済的に実施可能となり、また技術的に単純に除去が可能となる。
【0022】
好適な炭化水素は、例えばUS3,773,809、3欄、50〜62行に記載されてる。好ましいは、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、シクロヘプタン、ノルマルヘキサン、n−ヘプタン、ヘプタン異性体類、n−オクタン、イソオクタン、2,2,4−トリメチルペンタンなどのオクタン異性体類、シス−及びトランス−デカリンまたはこれらの混合物から選ばれる炭化水素であり、
特に好ましいのは、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、n−ヘプタン、ヘプタン異性体類、n−オクタン、2,2,4−トリメチルペンタンなどのオクタン異性体類、またはこれらのから選ばれる炭化水素である。シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、n−ヘプタン、またはn−オクタンの使用が特に好ましい。
【0023】
n−ヘプタンあるいはn−オクタンが極めて好ましい。これらの炭化水素を使用すると、望ましくない非明澄相の形成が特に少なくなる。「非明澄相」とは、上相と下相の間の相分離が不完全な領域を指し、通常液/液混合物であって内部に固体が分散したものである。大きな非明澄相が形成すると、抽出を妨害し、場合によっては抽出装置が非明澄相で満たされて分離槽として作用しなくなることもあり、望ましくない。
【0024】
用いる炭化水素は、好ましくは無水状態である。なお、無水状態とは、含水率が100質量ppm未満、好ましくは50質量ppm未満で、特に好ましくは10質量ppm未満であることを意味する。この炭化水素を、当業界の熟練者には公知の適当な方法により、例えば吸着または共沸蒸留により乾燥させてもよい。この乾燥を、本発明の方法に先立つ工程で実施してもよい。
【0025】
極性添加物
不飽和モノニトリルのジニトリルへのヒドロシアノ化の際に得られる反応排液からリン配位子を有するNi(0)錯体及び/又は遊離のリン配位子を、炭化水素を用いて抽出的に除去するにあたり、ヒドロシアノ化排液に添加して非明澄相及び/又は固体分の形成を抑制し、相分離の速度を増加させるために、炭化水素と反応排水の二相への相分離を、少なくとも一種の極性添加物を添加して行うことで、最初に述べた目的が達成される。
【0026】
極性添加物は、ジニトリル相の極性を増加させて相分離を加速し、非明澄相と固体の形成を低下させる有機化合物を意味するものとする。
【0027】
好適な極性添加物としては、特に、炭素原子数が2〜10の直鎖又は分岐鎖の飽和脂肪族ニトリル類や、炭素原子数が7〜12の芳香族ニトリル類があげられる。
【0028】
これらの例としては、アセトニトリル、プロピオニトリル、ブチロニトリル、2−メチルブタンニトリル、ペンタンニトリル、ヘキサンニトリル、ヘプタンニトリルおよびオクタンニトリル、シクロヘキサンニトリル、ベンゾニトリル、また2−メチルベンゾニトリルや2−エチルベンゾニトリルなどのアルキルベンゾニトリル、またはこれらの化合物の混合物があげられる。
【0029】
炭素原子数が2〜6の飽和脂肪族ニトリルまたはこれらの化合物の混合物が好ましい。アセトニトリルが特に好ましい。
【0030】
またスルホランや、アルキルウレア類、ピロリドン類も好適である。これらの例としては、ジメチルウレア、テトラエチルウレア、テトラメチルウレア、ピロリドン、N−メチルピロリドン、N−エチルピロリドン、N−ヘキシルピロリドン、またはこれらの化合物の混合物があげられる。
【0031】
極性添加物の存在下での抽出の構成
この反応排水からのニッケル(O)錯体または配位子の抽出を、当業界の熟練者には公知のいかなる装置を用いて行ってもよいが、向流型抽出塔、ミキサーセトラー装置、あるいはミキサーセトラー装置と塔の組み合わせが好ましい。金属薄板状充填物が分散材として詰まった向流型抽出塔の使用が特に好ましい。特に好ましい実施様態においては、隔壁型攪拌抽出塔(例えば、回転ディスク接触装置(RDC)や、クーニ塔、シェイベル塔、QVF塔)中で、向流で、抽出を行う。
【0032】
分散の方向に関しては、本方法のある好ましい実施様態においては、炭化水素を連続相として使用し、ヒドロシアノ化反応排水を分散相として使用する。こうすることで、一般には、相分離時間が短縮し、非明澄相の形成が減少する。しかしながら、逆方向の分散も可能であり、即ち反応排水を連続相とし、炭化水素を分散相とすることも可能である。特に、前もって固体の除去したり(下記を参照)、抽出または相分離を高温で行ったり、または適当な炭化水素を使用して、非明澄相の形成を減少または完全に防止することができる場合は、後者の分散が可能である。通常、抽出装置の分離性能により好適な分散方向が選ばれる。
【0033】
抽出剤、極性添加物および供給液を、抽出装置に個別に送ってもよいし、共に送ってもよい。
【0034】
抽出の際の、炭化水素の供給質量と被抽出混合物の質量との比率は、好ましくは0.1〜10、より好ましくは0.4〜3、特に0.75〜1.5である。
【0035】
極性添加物の質量は、供給液の質量に対して、1〜50重量%であり、好ましくは2〜45重量%、より好ましくは3〜40重量%である。
【0036】
抽出の際の絶対圧力は、好ましくは10kPa〜1MPa、より好ましくは50kPa〜0.5MPa、特に好ましくは75kPa〜0.25MPa(絶対圧力)である。
【0037】
抽出は、好ましくは−15〜120℃、特に20〜100℃、より好ましくは30〜80℃の温度で行われる。抽出温度が比較的に高い場合に非明澄相の形成が少ないことが明らかとなった。
【0038】
特に好ましい実施様態においては、抽出が温度分布をもって実施される。特に、この場合、操作は、少なくとも30℃、好ましくは30〜95℃、より好ましくは少なくとも40℃の抽出温度で行われる。
【0039】
温度分布は、リン配位子を有するNi(0)錯体及び/又は遊離のリン配位子の含量が、他の領域より高い抽出領域において、温度が他の領域より低くなるようにすることが好ましい。このようにすると、熱的に不安定なNi(0)錯体に加わる熱ストレスが低下し、その分解が減少する。
【0040】
極性添加物の存在下での相分離の構成
装置構成にもよるが、相分離を、空間的にも時間的にも、抽出の最終部と見なしてよい。相分離のためには、広い圧力や濃度、温度範囲が通常選択され、簡単な予備試験で、特定の反応混合物組成に適したパラメータを設定することができる。
【0041】
相分離の温度Tは、通常低くとも0℃、好ましくは低くとも10℃、より好ましくは低く20℃である。また、通常、最高80℃、好ましくは最高70℃、より好ましくは最高60℃である。例えば、相分離は、10〜80℃で、好ましくは20〜70℃で行われる。比較的高温で相分離をおこなうと非明澄相の形成が少ないことが判明した。
【0042】
相分離の圧力は、一般的には、少なくとも1kPa、好ましくは少なくとも10kPa、より好ましくは20kPaである。一般に、絶対圧で、最大2MPa、好ましくは最大1MPa、より好ましくは最大0.5MPaである。
【0043】
当業界の熟練者に公知の相分離装置を二つ以上用いて相分離を行ってもよい。好ましい実施様態においては、抽出装置、例えば一種以上のミキサーセトラーの組合せで、あるいは清澄ゾーンを有する抽出塔を用いて相分離を行うことができる。
【0044】
重いアジポニトリル相の噴流相部分のすべてを、炭化水素相中で保持できることが有利であろう。この場合、簡単なセトラーを用いる通常の比重分離では不十分である。所望の分離度により、液液合体を促進する内部構造物(例えば、薄板製、織物製充填物、または金属板充填物)を備えた重力分離器やサイクロン分離器を使用したり、または、重相がすべて保持されるような極端な場合には、機械力式遠心分離機(例えば、プレート分離器)を用いることもできる。
【0045】
分散の段階で、このような相分離装置において非明澄相の形成が避けられない場合には、この非明澄相を、セトラーから選択的に除くこともできる。ある場合には、分散物とともに一定の制御された連続相の層を形成することも好ましい。
【0046】
相分離により、二つの液相が生成し、一方の相の、この層の全重量あたりのリン配位子を有するニッケル(O)錯体及び/又は遊離のリン配位子の含有量が、他の一種以上の相よりも高い。
【0047】
Ni(0)錯体とリン配位子の含有量の高い相を、必要なら触媒の再生と抽出剤の除去の後、ヒドロシアノ化段階に循環させてもよい。
【0048】
主にジニトリル、未変換のモノニトリル、および極性添加物を含むこの相を、蒸留で分離することもできる。
【0049】
極性添加物が、中に存在する化合物中で沸点が最も低い場合には、これを第一のカラムの塔頂液として得るとともに、モノニトリルとジニトリルを塔底液として得ることができる。第二のカラムにおいて第一カラムの塔底液が分離されて、例えばモノニトリルが塔頂から、ジニトリルが塔底から得られる。しかしながら、単一の塔で分離することも可能であり、この場合、極性添加物が塔頂から、モノニトリルが中間の抜き出し口より、ジニトリルが塔底より得られる。
【0050】
モノニトリルの沸点が最も低い場合には、これが登頂より得られ、極性添加物が中間抜き出し口より、または、二段蒸留の場合なら、ジニトリルとともに塔底より得られる。
【0051】
有価製品であるジニトリル生成物をプロセスから抜き出し、モノニトリルをヒドロシアノ化に循環させ、極性添加物を抽出に循環させることもできる。
【0052】
また、モノニトリルと極性添加物とを混合物として抜き出し、ヒドロシアノ化に循環することもできる。
極性添加物の量は、一般的には、供給液の量に対して1〜50重量%、好ましくは2〜45重量%である。
【0053】
必要に応じて実施するアンモニア処理またはアミン処理
本発明の方法のある好ましい実施様態においては、ヒドロシアノ化の反応排水を、抽出前または抽出中に、アンモニア、または第一級、第二級または第三級の芳香族または脂肪族アミンで処理する。芳香族にはアルキル芳香族が含まれ、脂肪族には環状脂肪族が含まれる。
【0054】
このアンモニアまたはアミン処理により、ジニトリル(通常、下相)が濃縮された第二相中のニッケル(O)錯体または配位子の含量を低下させること、即ち二相間のNi(0)錯体または配位子の分布を第一相(上相)側にシフトさせることができることが明らかとなった。このアンモニアまたはアミン処理は、上相に濃縮された触媒を改善させる。このため、触媒サイクルでの触媒の損失が低下し、ヒドロシアノ化の経済性が増加することとなる。
【0055】
したがって、この実施様態においては、抽出に先立って反応排水をアンモニアまたはアミンで処理するか、この処理を抽出中に行う。抽出中の処理は、あまり好ましくない。
【0056】
使用するアミンは、モノアミン、ジアミン、トリアミン、多価アミン(ポリアミン)などである。モノアミン類は、炭素原子数が1〜30のアルキル基、アリール基またはアリールアルキル基を有し、好適なモノアミンとしては、例えば、一級アミン、例えばモノアルキルアミン、第二級または第三級アミン、例えばジアルキルアミンがあげられる。好適な第一級モノアミンとしては、例えば、ブチルアミンや、シクロヘキシルアミン、2−メチルシクロヘキシルアミン、3−メチルシクロヘキシルアミン、4−メチルシクロヘキシルアミン、ベンジルアミン、テトラヒドロフルフリルアミン、フルフリルアミンがあげられる。有用な第二級モノアミンとしては、例えば、ジエチルアミンや、ジブチルアミン、ジ−n−プロピルアミン、N−メチルベンジルアミンがあげられる。好適な第三級アミンとしては、例えば、C1-10アルキル基を有するトリアルキルアミン、例えばトリメチルアミン、トリエチルアミン、またはトリブチルアミンがあげられる。
【0057】
好適なジアミンは、例えば、式R1−NH−R2−NH−R3で表されるものであり、式中、R1、R2、およびR3は、各々独立して、水素または、炭素原子が1〜20のアルキル基、アリール基またはアリールアルキル基である。このアルキル基は線状であってもよく、特にR2は環状であってもよい。好適なジアミンとしては、例えば、エチレンジアミンや、プロピレンジアミン類(1,2−ジアミノプロパンや1,3−ジアミノプロパン)、N−メチル−エチレンジアミン、ピペラジン、テトラメチレンジアミン(1,4−ジアミノブタン)、N,N’−ジメチルエチレンジアミン、N−エチルエチレンジアミン、1,5−ジアミノペンタン、1,3−ジアミノ−2,2−ジエチルプロパン、1,3−ビス(メチルアミノ)プロパン、ヘキサメチレンジアミン(1,6−ジアミノヘキサン)、1,5−ジアミノ−2−メチルペンタン、3−(プロピルアミノ)プロピルアミン、N,N’−ビス(3−アミノプロピル)ピペラジン、N,N’−ビス(3−アミノプロピル)ピペラジン、イソホロンジアミン(IPDA)があげられる。
【0058】
好適なトリアミンや、テトラミン、多価アミン類としては、例えば、トリス(2−アミノエチル)アミンや、トリス(2−アミノプロピル)アミン、ジエチレントリアミン(DETA)、トリエチレンテトラミン(TETA)、テトラエチレンペンタミン(TEPA)、イソプロピレントリアミン、ジプロピレントリアミン、N,N’−ビス(3−アミノプロピルエチレンジアミン)があげられる。アミノ基を2個以上有するアミノベンジルアミン類やアミノヒドラジド類も好適である。
【0059】
もちろん、アンモニアと一種以上のアミンの混合物、または複数のアミンの混合物を使用することもできる。
【0060】
アンモニアまたは脂肪族アミン類の使用が、特に、トリメチルアミン、トリエチルアミンまたはトリブチルアミンなどの炭素原子数が1〜10のアルキル基を有するトリアルキルアミン、およびエチレンジアミンや、ヘキサメチレンジアミン、1,5−ジアミノ−2−メチルペンタンなどのジアミンの使用が好ましい。
【0061】
アンモニア単独が特に好ましい。言い換えれば、アンモニア以外のアミンを使用しないことが特に好ましい。無水のアンモニアが極めて好ましい。この場合、無水とは、含水率が1重量%未満、好ましくは1000質量ppm未満、特に好ましくは100質量ppm未満をいう。
【0062】
アミンとアンモニアのモル比は、広い範囲で変更可能であるが、一般的には、10000:1〜1:10000である。
【0063】
アンモニアまたはアミンの使用量は、特にニッケル(O)触媒及び/又は配位子の種類や量により、またもし使用の場合は、ヒドロシアノ化の促進剤として使用されるルイス酸の種類や量により変動する。通常、アンモニアまたはアミンのルイス酸に対するモル比は、少なくとも1:1である。このモル比の上限は、通常それほど重要ではないが、例えば、100:1である。しかしながら、Ni(0)錯体またはその配位子が分解するほどアンモニアまたはアミンが過剰であってはならない。アンモニアまたはアミンのルイス酸に対するモル比は、好ましくは1:1〜10:1、より好ましくは1.5:1〜5:1、特に約2.0:1である。アンモニアとアミンの混合物を使用する場合、このモル比は、アンモニアとアミンの合計に適用される。
【0064】
アンモニアまたはアミンでの処理の温度は、通常重要ではないが、例えば、10〜140℃であり、好ましくは20〜100℃、特に20〜90℃である。圧力も一般的には重要ではない。
【0065】
アンモニアまたはアミンを、ガス状の反応排水に添加してもよいし、液体状態(加圧下)に添加または溶媒に溶解してもよい。好適な溶媒としては、例えば、亜硝酸エステル類、特にヒドロシアノ化の際に存在するものや、本発明の方法で抽出剤として用いられる脂肪族、環状脂肪族または芳香族炭化水素、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、n−ヘプタン、またはn−オクタンがあげられる。
【0066】
アンモニアまたはアミンの添加は、通常の装置、例えばガス導入装置や液体ミキサーで行われる。多くの場合、沈殿により固体が発生し、これが反応排水中に残留する。即ち、懸濁液が抽出にまわされるか、これが以下のように処理される。
【0067】
必要に応じて実施する固体の除去
ある好ましい実施様態においては、反応排水中に存在する固体の少なくとも一部を、抽出に先立って除去する。多くの場合、これにより本発明の方法による抽出の効率がさらに上昇する。固体含量が高いと抽出中の質量移動が妨げられると考えられ、抽出装置を大きくする必要があり、この結果、装置が高価となる。抽出前に固体を除去することにより、望ましくない非明澄相の形成が大幅に減少することが明らかとなった。
【0068】
水力直径が5μm、特に1μm、より好ましくは100nmを超える固体粒子が除去できるに固体除去を行うことが好ましい。
【0069】
固体の除去のために、濾過やクロスフロー濾過、遠心分離、沈降、分級、または好ましくはデカンテーションなどの通常のプロセスを使用することができ、またこのために、フィルターや遠心器、デカンターなどの通常の装置を使用することができる。
【0070】
固体除去の際の温度や圧力は、通常重要ではない。例えば、上記の温度や圧力範囲で実施可能である。
【0071】
この固体除去は、必要に応じて実施される反応排水のアンモニアまたはアミンでの処理の前でも、同時でも、あるいは後のいずれで行ってもよい。アンモニアまたはアミン処理と同時にあるいは処理後にこの除去を行うことが好ましく、処理後に行うことがより好ましい。
【0072】
アミンまたはアンモニア処理中あるいは処理後に固体を除去する際には、この固体は、通常、アンモニアまたはアミンと使用するルイス酸または促進剤との反応物で反応排水に難溶性の化合物である。例えばZnCl2を使用する場合、アンモニア処理により、実質的に難溶性であるZnCl2−2NH3が生成する。
【0073】
アンモニアまたはアミン処理の前に固体を除去したり、アンモニアまたはアミンでの処理を全く行わない場合は、この固体は、通常、+2酸化状態のニッケル化合物、例えばシアン化ニッケル(II)や類似のシアン化物含有ニッケル(II)化合物である。
【0074】
ニッケル(O)錯体と配位子
リン配位子を有するNi(0)錯体及び/又は遊離のリン配位子は、好ましくは均一に溶解したニッケル(O)錯体である。
【0075】
本発明の抽出により分離するニッケル(O)錯体のリン配位子と遊離のリン配位子は、好ましくは、一座または二座のホスフィン、ホスファイト、ホスフィナイト、およびホスホナイトから選ばれる。
【0076】
これらのリン配位子は、好ましくは、式Iで表される。

P(X11)(X22)(X33) (I)
【0077】
本発明においては、化合物Iは、単一の化合物、または上記の式で表される異なる化合物の混合物である。
【0078】
本発明によれば、X1、X2、X3は、それぞれ独立して、酸素または単結合である。X1とX2とX3のすべての基が単結合である時、化合物Iは、式P(R123)で表されるホスフィンである。なお、R1とR2、R3の定義は、この明細書に記載の通りである。
【0079】
1とX2とX3のうち二つの基が単結合であり、一つの基が酸素である時、化合物Iは、
式P(OR1)(R2)(R3)またはP(R1)(OR2)(R3)またはP(R1)(R2)(OR3)で表されるホスフィナイトである。なお、R1とR2、R3の定義は、この明細書に記載の通りである。
【0080】
1とX2とX3のうち、一つの基が単結合であり、二つの基が酸素である時、化合物Iは、
式P(OR1)(OR2)(R3)またはP(R1)(OR2)(OR3)またはP(OR1)(R2)(OR3)で表されるホスホナイトである。なお、R1とR2、R3の定義は、この明細書に記載の通りである。
【0081】
ある好ましい実施様態においては、すべてのX1基、X2基、X3基が酸素であり、その場合、この化合物Iは、好ましくは、式P(OR1)(OR2)(OR3)で表されるホスファイトである。
【0082】
なお、R1とR2、R3の定義は、この明細書に記載の通りである。
【0083】
本発明において、R1とR2とR3は、それぞれ独立して、同一または相互に異なる有機基である。R1とR2とR3は、それぞれ独立して、メチル、エチル、n−プロピル、i−プロピル、n−ブチル、i−ブチル、s−ブチル、t−ブチルなどの好ましくは炭素原子数が1〜10のアルキル基、フェニル、o−トリル、m−トリル、p−トリル、1−ナフチル、2−ナフチルなどのアリール基、あるいは、1,1’−ビフェノールや1,1’−ビナフトールなどの、好ましくは炭素原子が1〜20であるハイドロカルビル基である。R1基、R2基、およびR3基は、相互に直接結合していてもよい、つまり、中心の燐原子経由でなく直接結合していてもよい。ただし、R1基とR2基とR3基は、直接相互に結合していないことが好ましい。
【0084】
ある好ましい実施様態においては、R1基、R2基、およびR3基は、フェニル、o−トリル、m−トリル、およびp−トリルからなる群から選ばれる基である。特に好ましい実施様態においては、R1基、R2基、およびR3基のうち、最高二つがフェニル基である。
【0085】
他の好ましい実施様態においては、R1基、R2基、およびR3基のうち、最高二つがo−トリル基である。
【0086】
使用可能な特に好ましい化合物類Iは、式Iaで表されるものである。

(o−トリル−O−)w(m−トリル−O−)x(p−トリル−O−)y(フェニル−O−)zP(Ia)

式中、w、x、y、zは、それぞれ自然数であり、w+x+y+z=3であり、wとzは<2である。
【0087】
このような化合物Iの例としては、(p−トリル−O−)(フェニル−O−)2P、(m−トリル−O−)(フェニル−O−)2P、(o−トリル−O−)(フェニル−O−)2P、(p−to!yl−O−)2(フェニル−O−)P、(m−トリル−O−)2(フェニル−O−)P、(o−トリル−O−)2(フェニル−O−)P、(m−トリル−O−)(p−トリル−O−)(フェニル−O−)P、(o−トリル−O−)(p−tolyI−O−)(フェニル−O−)P、(o−トリル−O−)(m−tolyl−O−)(フェニル−O−)P、(p−トリル−O−)3P、(m−トリル−O−)(p−totyl−O−)2P、(o−トリル−O−)(p−トリル−O−)2P、(m−トリル−0−)2(p−トリル−0−)P、(o−トリル−O−)2(p−トリル−O−)P、(o−トリル−O−)(m−トリル−O−)(p−トリル−O−)P、(m−トリル−O−)3P、(o−トリル−O−)(m−トリル−O−)2P、(o−トリル−O−)2(m−トリル−O−)P、またはこれらの化合物の混合物があげられる。
【0088】
例えば、m−クレゾールとp−クレゾールを含む混合物、特に原油の蒸留により得られるモル比が2:1の混合物、を三塩化リンなどの三ハロゲン化リンと反応させると
(m−トリル−O−)3P、(m−トリル−O−)2(p−トリル−O−)P、(m−トリル−O−)(p−トリル−O−)2P、および(p−トリル−O−)3Pを含む混合物が得られる。
【0089】
同様に好ましい他の実施様態においては、このリン配位子が、DE−A19953058に詳細に記載の、式Ibで表されるホスファイトである。

P(O−R1x(O−R2y(O−R3z(O−R4p (Ib)

式中、
1:燐原子とともに芳香族環に結合する酸素原子に対してo−位にC1−C18−アルキル置換基を有する、または燐原子とともに芳香族環に結合する酸素原子に対してo−位に芳香族置換基を有する、または燐原子とともに芳香族環に結合する酸素原子に対してo−位に縮合芳香族環を有する芳香族基、

2:燐原子とともに芳香族環に結合する酸素原子に対してm−位にC1−C18−アルキル置換基を有する、または燐原子とともに芳香族環に結合する酸素原子に対してm−位に芳香族置換基を有する、または燐原子とともに芳香族環に結合する酸素原子に対してm−位に縮合芳香族環を有する芳香族基、なお、この芳香族基は、燐原子とともに芳香族環に結合する酸素原子に対してo−位に水素原子を有している、

3:燐原子とともに芳香族環に結合する酸素原子に対してp−位にC1−C18−アルキル置換基を有する、または燐原子とともに芳香族環に結合する酸素原子に対してp−位に芳香族の置換基を有する芳香族基、なお、この芳香族基は、燐原子とともに芳香族環に結合する酸素原子に対してo−位に水素原子を有している、

4:R1とR2とR3に定義したもの以外で、燐原子とともに芳香族環に結合する酸素原子に対して、o−、m−、およびp位に置換地を有する芳香族基、なお、この芳香族基は、燐原子とともに芳香族環に結合する酸素原子に対してo−位に水素原子を有している、

X:1、または2、

y、z、p:それぞれ独立して0、1、または2、ただし、X+y+z+p=3。
【0090】
式Ibで表される好ましいホスファイトは、DE−A19953058に記載されている。R1基は、好ましくは、o−トリル、o−エチルフェニル、o−n−プロピルフェニル、o−イソプロピル−フェニル、o−n−ブチルフェニル、o−sec−ブチルフェニル、o−tert−ブチルフェニル、(o−フェニル)フェニル、または1−ナフチル基である。
【0091】
好ましいR2基は、m−トリル、m−エチルフェニル、m−n−プロピルフェニル、m−イソプロピルフェニル、m−n−ブチルフェニル、m−sec−ブチルフェニル、m−tert−ブチルフェニル、(m−フェニル)フェニル、または2−ナフチル基である。
【0092】
有利なR3基は、p−トリル、p−エチルフェニル、p−n−プロピルフェニル、p−イソプロピル−フェニル、p−n−ブチルフェニル、p−sec−ブチルフェニル、p−tert−ブチルフェニル、または(p−フェニル)フェニル基である。
4基は、フェニル基である。pは好ましくはゼロである。化合物Ibのx、y、z、およびpについては、次のような可能性がある。
【0093】
【表1】

【0094】
式Ibの好ましいホスファイトは、pがゼロで、R1とR2とR3とが、それぞれ独立してo−イソプロピルフェニル、m−トリル、およびp−トリルから選ばれ、R4がフェニル基であるものである。
【0095】
式Ibで表される特に好ましいホスファイトは、R1がo−イソプロピルフェニル基で、R2がm−トリル基で、R3がp−トリル基で、上記示数が表中に示されるものであるもの;R1がo−トリル基で、R2がm−トリル基で、R3がp−トリル基で、上記示数が表中に示されるものであるもの;R1が1−ナフチル基で、R2がm−トリル基で、R3がp−トリル基で、上記示数が表中に示されるものであるもの;R1がo−トリル基で、R2が2−ナフチル基で、R3がp−トリル基で、上記示数が表中に示されるものであるもの;最後にR1がo−イソプロピルフェニル基で、R2が2−ナフチル基で、R3がp−トリル基で、上記示数が表中に示されるものであるもの;およびこれらのホスファイトの混合物である。
【0096】
式Ibのホスファイトは、次の反応により得られる。
a)三ハロゲン化リンを、R1OH、R2OH、R3OH、およびR4OHからなる群から選ばれるアルコール、またはこれらの混合物と反応させて、ジハロリンモノエステルを得る、

b)上記のジハロリンモノエステルを、R1OH、R2OH、R3OH、およびR4OHからなる群から選ばれるアルコール、またはこれらの混合物と反応させて、モノハロリンジエステルを得る、また、

c)上記のモノハロリンジエステルを、R1OH、R2OH、R3OH、およびR4OHからなる群から選ばれるアルコールまたはこれらの混合物と反応させて、式Ibのホスファイトを得る。
【0097】
この反応を、3つ異なる工程によって進めてもよい。あるいは、3工程のうち二つを結合し、即ち、工程a)とb)または工程b)とc)を結合してもよい。あるいは、全工程a)、b)、c)を一挙に行ってもよい。
【0098】
1OH、R2OH、R3OH、およびR4OHからなる群から選ばれるアルコールまたはこれらの混合物の適当なパラメーターや量は、簡単な予備試験で容易に決定することができる。
【0099】
有用な三ハロゲン化リンは、原理的にはすべての三ハロゲン化リン(好ましくは、用いるハライドがCl、Br、Iであるものであり、特に好ましくはClであるもの)およびこれらの混合物が特に好ましい。同じハロゲンまたは異なるハロゲンで置換されたホスフィンの混合物を、三ハロゲン化リンとして用いることもできる。特に好ましいのは、PCl3である。ホスファイトIbの製造における反応条件や作業の詳細は、DE−A19953058に記載されている。
【0100】
これらのホスファイトIbを、異なるホスファイトIbとの混合物の形で、配位子として用いることもできる。このような混合物ハ、例えば、ホスファイトIbの製造により得られる。
【0101】
しかし、リン配位子は、多座であることが、特に2座であることが好ましい。したがって、使用する配位子は、好ましくは式IIで示される。
【0102】
【化1】

【0103】
式中、
11と、X12、X13、X21、X22、X23は、それぞれ独立して酸素または単結合であり、
11とR12は、それぞれ独立して、同一または異なる、非連結のまたは連結した有機基であり、
21、R22は、それぞれ独立して、同一または異なる、非連結のまたは連結した有機基であり、
Yは、連結基である。
【0104】
本発明においては、化合物IIは、単一の化合物、または上記の式で表される異なる化合物の混合物である。
【0105】
ある好ましい実施様態においては、X11と、X12、X13、X21、X22、X23は、それぞれ酸素であってもよい。このような場合には、この連結基Yは、ホスファイト基に結合している。
【0106】
他の好ましい実施様態においては、X11とX12がそれぞれ酸素でX13が単結合、またはX11とX13がそれぞれ酸素でX12が単結合であり、X11とX12、X13で囲まれる燐原子が、ホスホナイトの中心原子となる。このような場合には、X21とX22、X23が、それぞれ酸素、またはX21とX22がそれぞれ酸素でX23が単結合、またはX21とX23がそれぞれ酸素でX22が単結合、またはX23が酸素でX21とX22がそれぞれ単結合、またはX21が酸素でX22とX23がそれぞれ単結合、またはX21とX22、X23がそれぞれ単結合であってよく、その場合、X21とX22、X23で囲まれた燐原子が、ホスファイト、ホスホナイト、ホスフィナイトまたはホスフィンの、好ましくはホスホナイトの中心元素となる。
【0107】
他の好ましい実施様態においては、X13が酸素でX11とX12がそれぞれ単結合、またはX11が酸素でX12とX13がそれぞれ単結合であり、その場合、X121とX12、X13で囲まれた燐原子が、ホスホナイトの中心元素となる。このような場合には、X21とX22、X23がそれぞれ酸素、またはX23が酸素でX21とX22がそれぞれ単結合、またはX21が酸素でX22とX23がそれぞれ単結合、またはX21とX22、X23がそれぞれ単結合であり、その場合、X21とX22、X23で囲まれた燐原子がホスファイト、ホスフィナイトまたはホスフィン、好ましくはホスフィナイトの中心元素となる。
【0108】
他の好ましい実施様態においては、X11とX12、X13のそれぞれが単結合であり、その場合、X11とX12、X13で囲まれた燐原子がホスフィンの中心元素となる。このような場合には、X21とX22、X23のそれぞれが酸素、またはX21とX22、X23のそれぞれが単結合であり、その場合、X21とX22、X23で囲まれた燐原子が、ホスファイトまたはホスフィン、好ましくはホスフィンの中心元素となる。
【0109】
連結基Yは、C1−C4−アルキル基、フッ素、塩素あるいは臭素などのハロゲン原子、トリフルオロメチルなどのハロゲン化アルキル基、またはフェニルなどのアリール基で置換されたアリール基、または無置換のアリール基であり、好ましくは、炭素原子数が6〜20の芳香族基、特に好ましくは、ピロカテコール、ビス(フェノール)、またはビス(ナフトール)である。
【0110】
11基とR12基は、それぞれ独立して同一または異なる有機基である。好ましいR11基とR12基は、アリール基であり、好ましくは炭素原子数が6〜10の、無置換、一置換、または多置換のアリール基であり、特に好ましくはC1−C4−アルキル基、フッ素、塩素、臭素などのハロゲン原子、トリフルオロメチルなどのハロゲン化アルキル基、フェニルなどのアリール基で置換されたアリール基、または無置換のアリール基である。
【0111】
21基とR22基は、それぞれ独立して同一または異なる有機基である。好ましくは、R21基とR22基はアリール基であり、より好ましくは炭素原子数が6〜10の、無置換、一置換、または多置換のアリール基であり、特に好ましくはC1−C4−アルキル基、フッ素、塩素、臭素などのハロゲン原子、トリフルオロメチルなどのハロゲン化アルキル基、フェニルなどのアリール基で置換されたアリール基、または無置換のアリール基である。
【0112】
11基とR12基は、それぞれ、連結していてもいなくてもよい。R21基とR22基も、それぞれ、連結していてもいなくてもよい。上記のように、R11基と、R12基、R21基、R22基は、各々の連結していなくてもよく、二つが連結し二つが非連結でも、あるいは、すべて四つが連結していてもよい。
【0113】
特に好ましい実施様態においては、有用な化合物は、US5,723,641に記載の式I、II、III、IV、およびVで表されるものである。特に好ましい実施様態においては、有用な化合物は、US5,512,696に記載の式I、II、III、IV、V、VI、およびVIIで表されるもので、特にその実施例1〜実施例31で使用される化合物である。特に好ましい実施様態においては、有用な化合物類は、US5,821,378に記載の式I、II、III、IV、V、VI、VII、VIII、IX、X、XI、XII、XIII、XIV、およびXVで表されるもので、特にその実施例1〜実施例73で使用される化合物である。
【0114】
特に好ましい実施様態においては、有用な化合物は、US5,512,695に記載の式I、II、III、IV、V、およびVIで表されるもので、特にその実施例1〜実施例6で使用される化合物である。特に好ましい実施様態においては、有用な化合物は、US5,981,772に記載の式I、II、III、IV、V、VI、VII、VIII、IX、X、XI、XII、XIII、およびXIVで表されるもので、特にその実施例1〜実施例66で使用される化合物である。
【0115】
特に好ましい実施様態においては、有用な化合物は、US6,127,567に記載のものであり、特にその実施例1〜実施例29で使用されるものである。特に好ましい実施様態においては、有用な化合物は、US6,020,516に記載の式I、II、III、IV、V、VI、VII、VIII、IX、およびXで表されるものであり、特にその実施例1〜実施例33で使用されるものである。特に好ましい実施様態においては、有用な化合物は、US5,959,135に記載のものであり、その実施例1〜実施例13で使用される化合物である。
【0116】
特に好ましい実施様態においては、有用な化合物は、US5,847,191に記載の式I、II、およびIIIで表されるものである。特に好ましい実施様態においては、有用な化合物は、US5,523,453に記載のものであり、特にその式1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、および21で表される化合物である。特に好ましい実施様態においては、有用な化合物は、WO01/14392に記載のものであり、好ましくはその式V、VI、VII、VIII、IX、X、XI、XII、XIII、XIV、XV、XVI、XVII、XXI、XXII、およびXXIIIで表される化合物である。
【0117】
特に好ましい実施様態においては、有用な化合物類は、WO98/27054に記載のものである。特に好ましい実施様態においては、有用な化合物類は、WO99/13983に記載のものである。特に好ましい実施様態においては、有用な化合物類は、WO99/64155に記載のものである。
【0118】
特に好ましい実施様態においては、有用な化合物類は、ドイツ特許出願DE10038037に記載のものである。特に好ましい実施様態においては、有用な化合物類は、ドイツ特許出願DE10046025に記載のものである。特に好ましい実施様態においては、有用な化合物類は、ドイツ特許出願DE10150285に記載のものである。
【0119】
特に好ましい実施様態においては、有用な化合物類は、ドイツ特許出願DE10150286に記載のものである。特に好ましい実施様態においては、有用な化合物類は、ドイツ特許出願DE10207165に記載のものである。さらに特に好ましい本発明の実施様態においては、有用なリンキレート配位子は、US2003/0100442A1に記載のものである。
【0120】
さらに特に好ましい本発明の実施様態においては、有用なリンキレート配位子は、
ドイツ特許出願参照番号DE10350999.2(出願日:10.30.2003、これ以前の優先日をもつが、本出願の優先日の時点で未公開)に記載のものである。
【0121】
化合物I、Ia、Ib、およびIIは公知であり、その製造法も公知である。使用するリン配位子は、化合物IとIa、Ib、IIのうちの少なくとも2種の混合物であってもよい。
【0122】
本発明の方法の特に好ましい実施様態においては、ニッケル(O)錯体のリン配位子及び/又は遊離のリン配位子は、トリトリルホスファイト、2座リンキレート配位子、および式Ibで表されるホスファイト:

P(O−R1x(O−R2y(O−R3z(O−R4p (Ib)

(式中、R1とR2、R3は、それぞれ独立して、o−イソプロピルフェニル、m−トリル、およびp−トリルから選ばれ、R4はフェニル基であり、Xは、1または2であり、yとzとpは、それぞれ独立して、1または2であり、ただし、x+y+z+p=3であり)、およびこれらの混合物から選ばれる。
【0123】
ルイス酸または促進剤
本発明においては、ルイス酸は、単一のルイス酸であるか、複数の、例えば2個の、3個のまたは4個のルイス酸の混合物である。
【0124】
有用なルイス酸は、無機または有機金属化合物類であり、そのカチオンは、スカンジウム、チタン、バナジウム、クロミウム、マンガン、鉄、コバルト、銅、亜鉛、ホウ素、アルミニウム、イットリウム、ジルコニウム、ニオブ、モリブデン、カドミウム、レニウム、およびスズからなる群から選ばれる。例えば、US6,127,567や、US6,171,996、US6,380,421に記載のように、これらの例としては、ZnBr2、Znl2、ZnCl2、ZnSO4、CuCl2、CuCl、Cu(O3SCF32、CoCl2、Col2、Fel2、FeCl3、FeCl2、FeCl2(THF)2、TiCl4(THF)2、TiCU、TiCl3、ClTi(O−イソプロピル)3、MnCl2、ScCl3、AlCl3、Me3AlやEt3Al、Pr3Al、Bu3Al、Et2AlCN、EtAl(CN)2、(C817)AlCl2、(C817)2AlCl、(i−C49)2AlCl、(C65)2AlCl、(C65)AlCl2などのAlアルキル類、ReCl5、ZrCl4、NbCl5、VCl3、CrCl2、MOCl5、YCl3、CdCl2、LaCl3、Er(O3SCF33、Yb(O2CCF33、SmCl3、B(C653、およびTaCl5があげられる。例えばUS3,496,217、US3,496,218、およびUS4,774,353に記載のように、ZnCl2や、CoI2、SnCl2などの金属塩、RAlCl2、R2AlCl、RSnO3SCF3、およびR3Bなどの有機金属化合物類(式中、Rはアルキル基またはアリール基である)も有用である。
【0125】
US3,773,809によれば、使用する促進剤は、亜鉛、カドミウム、ベリリウム、アルミニウム、ガリウム、インジウム、タリウム、チタン、ジルコニウム、ハフニウム、エルビウム、ゲルマニウム、スズ、バナジウム、ニオブ、スカンジウム、クロム、モリブデン、タングステン、マンガン、レニウム、パラジウム、トリウム、鉄、およびコバルトからなる群から選ばれる、好ましくは亜鉛、カドミウム、チタン、スズ、クロム、鉄、およびコバルトからなる群から選ばれるカチオン性の金属を有し、また、この化合物のアニオン性の基は、フルオライド、クロライド、ブロマイド、アイオダイドなどのハライド、炭素原子数が2〜7の低級脂肪酸のアニオン、HPO32-、H3PO2-、CF3COO-、C715OSO2-およびSO42-からなる群から選ばれる。US3,773,809に開示されるさらに好適な促進剤としては、ボロハイドライド、オルガノボロハイドライド、式R3Bおよび式B(OR)3で表されるホウ酸エステル類(式中、Rは、水素、炭素原子数が6〜18のアリール基、炭素原子数が1〜7のアルキル基で置換されたアリール基、および炭素原子数が1〜7のシアノ置換アルキル基で置換されたアリール基からなる群から選ばれる)があげられ、トリフェニルボロンが有利である。
【0126】
また、US4,874,884に記載のように、触媒系の活性をあげるために、相乗的な活性を示すルイス酸を組み合わせて用いることもできる。好適な促進剤は、例えば、CdCl2、FeCl2、ZnCl2、B(C653および(C653SnX(式中、X=CF3SO3、CH364SO3、および(C653BCNからなる群から選ばれ、好ましい促進剤のニッケルに対する比率は、約1:16〜約50:1である。
【0127】
本発明においては、「ルイス酸」は、US3,496,217、US3,496,218、US4,774,353、US4,874,884、US6,127,567、US6,171,996、およびUS6,380,421に記載の促進剤をも含んでいる。
【0128】
上記のルイス酸の中で特に好ましいルイス酸は、金属塩、より好ましくはフッ化物、塩化物、臭化物、ヨウ化物などのハロゲン化金属、特に塩化物であり、これらの中では、塩化亜鉛、塩化鉄(II)、塩化鉄(lll)が特に好ましい。
【0129】
本発明の方法には、多くの利点がある。例えば、3−ペンテンニトリルを前もって気化させ、希釈のためにアジポニトリルを加えることにより、触媒系の抽出除去により相分離することなく、低変換率の3−ペンテンニトリルのヒドロシアノ化を行うことができる。このように可能となったこの3−ペンテンニトリル低変換でのヒドロシアノ化方法は、3−ペンテンニトリルとシアン化水素とからアジポニトリルへの選択性の向上につながる。この可能となった3−ペンテンニトリル低変換でのヒドロシアノ化方法は、また、触媒系の高安定化につながる。
【0130】
必要に応じて、反応排水をアンモニアまたはアミンで処理して反応排水から固体を除去することで、プロセスが最適化され、抽出の分離性能が改善される。
【0131】
実施例
以下に記載の百分率は、アジポニトリル(ADN)と3−ペンテンニトリル(3PN)と特定の配位子の混合物に対する質量パーセントである。シクロヘキサンは、計算に含まれていない。
【0132】
実施例1:
実施例1は、相分離の速度が、極性添加物と温度により影響を受けることを示す。
【0133】
試験に用いるヒドロシアノ化反応排水は、式Aで示されるキレートホスホナイトと式Bで示されるトリトリルホスファイトとのニッケル(O)錯体の存在下で、3−ペンテンニトリル(3−PN)をシアン化水素により連続的にヒドロシアノ化して、アジポニトリル(ADN)を製造するプロセスから出るものである。
【0134】
【化2】

【0135】
一部の未変換のペンテンニトリルを除去した後に得られるヒドロシアノ化排液の組成を表1に示す。
【0136】
【表2】

【0137】
試験方法:
アルゴン下でフランジ付ビン内で、8mlのヒドロシアノ化排液と、2mlのn−ヘプタンと表2に記載の量の極性添加物とをよく混合する。次いで、n−ヘプタン上相が、ADN下相から完全に分離し、一部非明澄相領域ができる時間を測定した。
【0138】
試験は、アセトニトリル(ACN)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ジメチレンウレア(DMEU)、およびスルホランを20〜70℃の温度で添加して実施した。試験結果を表2にまとめるとともに、図1に示した。
【0139】
表2および図1から、20〜70℃の温度で、1%のアセトニトリルでも、また10%のアセトニトリルでもその増加分だけ、相分離を加速することがわかる。この効果は、1%のDMSO、DMEUまたはスルホランではあまり顕著ではなかった。一方、相の界面が明瞭となり、このため相分離が速くなった。
【0140】
【表3】

【0141】
実施例2
実施例2は、20〜70℃の温度でアセトニトリル量を増加したときの効果を示す。
【0142】
試験には、実施例1と同じ量のヒドロシアノ化排液を用いた。しかし、3mlのヒドロシアノ化排液に対して、6mlのn−ヘプタンを使用した。操作は、実施例1と同じとした。試験結果を、表3と図2に示す。
【0143】
【表4】

【0144】
表3および図2より、アセトニトリルの量の増加と温度上昇により、相分離の速度が大きく増加することがわかる。
【0145】
実験の結果、ジメチルスルホキシド、ジメチルエチレンウレア、およびスルホランの添加量の増加と温度上昇により、同様に相分離比率が増加するが、アセトニトリルと較べると増加が小さいことがわかる。
【図面の簡単な説明】
【0146】
【図1】実施例1による試験結果を示す図である。
【図2】実施例2による試験結果を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
不飽和モノニトリルのジニトリルへのヒドロシアノ化の際に得られる反応排液から炭化水素で抽出し、炭化水素とニトリル含有溶液とを相分離させて二相とすることにより、リン配位子を有するニッケル(O)錯体を抽出除去する方法であって、該ヒドロシアノ化排液(供給液)及び/又は該抽出段階に少なくとも一種の極性添加物を供給することを特徴とする方法。
【請求項2】
使用する極性添加物が、炭素原子数が2〜10の直鎖又は分岐鎖の飽和脂肪族ニトリル、炭素原子数が5〜10の環状脂肪族ニトリル、炭素原子数が7〜12の芳香族ニトリル、またはこれらの化合物の混合物である請求項1に記載のリン配位子を有するニッケル(O)錯体を抽出除去する方法。
【請求項3】
使用する極性添加物が、スルホラン、ジアルキルウレア、またはテトラアルキルウレアである請求項1に記載のリン配位子を有するニッケル(O)錯体を抽出除去する方法。
【請求項4】
使用する極性添加物がアセトニトリルである請求項1または2に記載のリン配位子を有するニッケル(O)錯体を抽出除去する方法。
【請求項5】
前記極性添加物の量が、供給流体量の1〜50重量%である請求項1〜4のいずれか一項に記載のリン配位子を有するニッケル(O)錯体を抽出除去する方法。
【請求項6】
抽出を、−15〜120℃の温度で実施する請求項1〜5のいずれか一項に記載のリン配位子を有するニッケル(O)錯体を抽出除去する方法。
【請求項7】
相分離を、0〜80℃の温度で実施する請求項1〜6のいずれか一項に記載のリン配位子を有するニッケル(O)錯体を抽出除去する方法。
【請求項8】
抽出前または抽出中に、前記ヒドロシアノ化の反応排水をアンモニアまたは第一級、第二級または第三級の芳香族のまたは脂肪族アミンで処理する請求項1〜7のいずれか一項に記載のリン配位子を有するニッケル(O)錯体を抽出除去する方法。
【請求項9】
前記反応排水を無水アンモニアで処理する請求項1〜8のいずれか一項に記載のリン配位子を有するニッケル(O)錯体を抽出除去する方法。
【請求項10】
使用する炭化水素が、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、n−ヘプタンまたはn−オクタンである請求項1〜9のいずれか一項に記載のリン配位子を有するニッケル(O)錯体を抽出除去する方法。
【請求項11】
使用する炭化水素が、n−ヘプタンまたはメチルシクロヘキサンである請求項1〜10のいずれか一項に記載のリン配位子を有するニッケル(O)錯体を抽出除去する方法。
【請求項12】
前記反応排水中に存在する固体を、抽出前に少なくともその一部を除去する請求項1〜11のいずれか一項に記載のリン配位子を有するニッケル(O)錯体を抽出除去する方法。
【請求項13】
リン配位子を有するNi(0)錯体及び/又は遊離のリン配位子の含量が他の領域より高い抽出領域において、温度が他の領域より低い請求項1〜12のいずれか一項に記載のリン配位子を有するニッケル(O)錯体を抽出除去する方法。
【請求項14】
前記リン配位子が、一座または二座のホスフィン、ホスファイト、ホスフィナイト、およびホスホナイトから選ばれる請求項1〜13のいずれか一項に記載のリン配位子を有するニッケル(O)錯体を抽出除去する方法。
【請求項15】
前記リン配位子が、トリトリルホスファイト、2座のリンキレート配位子、および式Ib:

P(O−R1x(O−R2y(O−R3z(O−R4p (Ib)

(式中、R1、R2、およびR3は、それぞれ独立して、o−イソプロピルフェニル、m−トリル、およびp−トリルから選ばれ、R4はフェニルであり、Xが、1、または2であり、yとz、pが、それぞれ独立して0、1、または2であり、ただしx+y+z+p=3である)
で表されるホスファイト、またはこれらの混合物選ばれる請求項1〜14のいずれか一項に記載のリン配位子を有するニッケル(O)錯体を抽出除去する方法。
【請求項16】
モノニトリルが3−ペンテンニトリルであり、前記ジニトリルがアジポニトリルである請求項1〜15のいずれか一項に記載のリン配位子を有するニッケル(O)錯体を抽出除去する方法。
【請求項17】
前記反応排水が、少なくとも一種のリン配位子を有するニッケル(O)錯体の存在下で、適宜少なくとも一種のルイス酸の存在下で、3−ペンテンニトリルとシアン化水素とを反応させて得られるものである請求項1〜16のいずれか一項に記載のリン配位子を有するニッケル(O)錯体を抽出除去する方法。

【公表番号】特表2009−532419(P2009−532419A)
【公表日】平成21年9月10日(2009.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−503539(P2009−503539)
【出願日】平成19年3月28日(2007.3.28)
【国際出願番号】PCT/EP2007/052955
【国際公開番号】WO2007/115936
【国際公開日】平成19年10月18日(2007.10.18)
【出願人】(508020155)ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア (2,842)
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】D−67056 Ludwigshafen, Germany
【Fターム(参考)】