説明

ニパウイルスの検出方法及びヘニパウイルスに対する免疫保護を提供する方法

本発明は、ニパウイルス感染をモニターするための動物モデル、試料中のニパウイルスRNAの定量的検出及び迅速な特徴決定の方法、個体での免疫防御を提供するのに用い得る組成物、及びニパウイルス及びヘンドラウイルスを中和しかつ予防(prophylaxis)、治療及び/又は予防(prevention)に用い得るモノクローナル抗体を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、試料中のニパウイルスの検出方法並びにニパウイルス及びヘンドラウイルス感染に対する免疫保護を提供するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ニパウイルス(NiV)は1998年にマレーシアに出現し、ブタ及びヒトの両方に重大な罹患率及び死亡率をもたらした(Chua, 2000, Science. 288:1432〜5)。この人畜共通性感染症は、おそらくプテロイドコウモリ(Pteroid bats) (オオコウモリ)を天然の宿主とし、これらの尿又は部分的に食べた果実の残渣を介してニパウイルスをブタ個体群に伝えたと考えられる(Chuaら, 2002, Microbes Infect. 4:145〜51; Chua, K.B. 2003, J. Clin. Microbiol. 26:265〜275)。感染した動物と直接接触した畜豚農家及び屠殺場の作業者は、最も標的にされる個体群であった。密接な接触を介するブタからヒトへの伝染は、汚染の最も一般的な経路であり、ブタがウイルスを増殖する宿主の役割を果たしたようである(Parasharら, 2000, J Infect Dis. 181:1755〜9; Mohd Norら 2000, Rev Sci Tech Off Int Epiz. 19(1):160〜5)。感染したブタは、主に、5%未満の死亡率で呼吸疾患に罹患したが、265人のヒト患者のうち105人の死亡が記録され、彼らは重篤な急性熱性脳炎症候群(acute febrile encephalitic syndrome)を発症し、生存者の四分の一には神経性の副作用が残った(Gohら, 2000, New Engl J Med. 342:1229〜35; Chongら, 2002, Can J Neurol Sci. 29:83〜7; Leeら, 1999, Ann Neurol. 46:428〜32)。
【0003】
ニパウイルスは、パラミクソウイルス(Paramyxoviridae)科のパラミクソウイルス(Paramyxovirinae)亜科の一員である。その生物学的特性及びゲノム機構により、このウイルスと近縁のヘンドラウイルスとは、ヘニパウイルスとよばれる新しい属に分類される(Wangら, 2000, J Virology. 74:9972〜9979)。ニパウイルスは、接着タンパク質(G)及び融合タンパク質(F)を含む脂質二重層のエンベロープに封入された複製複合体のウイルスタンパク質(核タンパク質(N)、リンタンパク質(P)及びポリメラーゼ(L))に関係する約18,000ヌクレオチドの一本鎖RNAを有する(Chua, 2000, Science. 288:1432〜5; Wangら, 2001, Microbes and Infection 3, 279〜287; Chanら, 2001, J Gen Virol. 82:2151〜5)。
【0004】
プテロプス種(Pteropus sp.)の旧世界フルーツコウモリ(old world fruit bats)の広い分布は、インド洋の西側の島々からの東南から、東南アジア及び北東オーストラリアを横切って太平洋の南西の島々まで広がる。ヘニパウイルスの出現の原因となる可能性がある因子についてはほとんど知られていない(Morse, S.S.1995. Emerg Infect Dis. 1(1):7〜15; Fieldら, 2001, Microbes Infect. 3:307〜314)。ニパウイルスの存在は、フルーツコウモリで抗NiV抗体が見出されていることから、2002年にカンボジアで既に示され(Olsonら, 2002, Emerg Infect Dis. 8:987〜988)、バングラデシュでは2001年、2003年、及び最近では2004年におそらく示されている(ProMed 2002 Nipah-like virus - Bangladesh (2001, 2004): Archive numbers 20020830.5187〜20040423.1127) (ICDDR,B 2003, Health and Science Bulletin, ISSN 1729-343X, vol.1:1〜6)。ヒトにおけるニパウイルス感染を予防又は治療する効果的なプログラムが開発されるのであれば、防御応答を誘導するのに重要なウイルス抗原を規定しかつ可能性のある免疫予防のための治療を開発することが必要になる。
【0005】
ヘニパウイルスの循環の正確なサーベイランスのための特異的な血清学的及びウイルス学的診断の開発を優先する(Danielsら, 2001, Microbes Infect. 3:289〜95)。人畜共通性のサイクル又は急性脳炎患者におけるウイルスの迅速な診断は、医学、獣医学及び環境のレベルにおいて適切な方法の採択を助けるであろう。TaqMan (商標)技術に基づくリアルタイムポリメラーゼ連鎖反応法が、感染性疾患及び細胞培養におけるウイルス負荷を試験することについて、最近、開発されている(Heidら, 1996, Genome Res. 10:986〜94; Kleinら, 2003, J Virol Methods. 107(2):169〜75)。
【0006】
元来、パラミクソウイルスはヒト及び動物の両方に感染できる。しばしば、ウイルスは第一の種において優先的に感染し、第二の種においてほとんど増殖しない。よって、第二の種においてほとんど増殖しないウイルスを、「ジェンナー」タイプのワクチンを創り出すのに用いることができる。同じ方法で、近代のバイオテクノロジーを用いて、ヒト病原菌であるウイルスの抗原を、防御応答を誘導するために同等の動物ウイルスから発現させることができる(Schmidtら, 2002. J Virol. 76:1089〜1099; Yunusら, 1999. Arch Virol. 144:1977〜1990)。パラミクソウイルスがヒトへの感染の障壁となる種と交差すると、それらがより有毒になる場合がある。ヘンドラウイルス及びニパウイルスの天然の宿主は、おそらくフルーツコウモリである(Chua, K.B.ら, 2002. Microbes Infect. 4:145〜51; Field, H.ら, 2001. Microbes Infect. 3:307〜314; Yobら, 2001. Emerg Infect Dis. 7:439〜441)が、1994及び1998年にはオーストラリアでウマがヘンドラウイルスに感染し、1998年にはマレーシアでニパウイルスがブタに感染した。どちらの場合にも、ウイルスは第二の動物種で増殖し、このことがヒトへの感染を導いた。ブタにおいて(100万以上が死亡)及びヒトにおいて(40%の致死率)ニパにより引き起こされた疾患の重篤度は、経済的及び社会的に大きな結果をもたらした。リバビリンがいくらかの患者に試されたが、ほとんど重要な結果が得られなかった(Chong, H.T.ら, 2001. Ann Neurol. 49:810〜813; Snell, N.J. 2001. Expert Opin Pharmacother. 2:1317〜13124)。この流行病と闘うためのニパに特異的な抗ウイルス剤は入手可能でなく、その製造は、将来、流行病が起こったときに効果的な方法をとることができるか未だ優先事項である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記に鑑み、ヘニパウイルス感染に関連する病態生理をモニターするいくつかの手段(例えば動物モデル及びウイルス負荷の定量のための量的方法)を提供する必要性がある。試料中のニパ様(Nipah-like)又はヘンドラ様(Hendra-like)ウイルスを量的に検出するための、単純で信頼性があり特異的で感度が高いアッセイを提供する必要性もある。さらに、ニパウイルス及びヘンドラウイルス感染によりもたらされる固有の危険性を考えて、治療又は防御免疫をそのような保護を必要とする者に提供する必要性が未だにある。よって、ヒト疾患を再現しかつ抗ウイルス及びワクチン試験に基づいて分析できる動物モデルの同定が必要である。さらに、ヘニパウイルス感染を予防又は治療する革新的なアプローチが必要である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
よって、本発明は、急性ヒトニパ感染の病理及び病因を再現するハムスターモデルを提供する。
本発明の別の目的により、試料中のニパウイルスRNAの定量的検出及び迅速な特徴付けの方法も提供される。
本発明の別の目的は、ニパウイルス糖タンパク質及び医薬的に許容される担体を含む免疫原性組成物、及びワクチンである該免疫原性組成物である。
【0009】
本発明の別の目的は、ニパウイルス糖タンパク質又は該糖タンパク質をコードするポリヌクレオチドを個体に、該個体で免疫応答を誘導するに充分な量で投与することを含む、ニパウイルス感染に対して個体を保護する方法である。
本発明の別の目的は、ニパウイルスの接着(attachment)及び/又は融合(fusion)糖タンパク質に指向された抗体又はヘニパウイルス属で交差反応性の抗体を含む、ニパウイルス感染に対して個体を保護又は治癒するための免疫反応性組成物である。
【0010】
本発明のより完全な正しい認識及びそれに伴う利点の多くは、添付の図面と関連させて考慮したときに以下の詳細な説明を参照することにより、よりよく理解されるように容易に得られる。添付の図面において:
図1:2つの経路を介してニパウイルスに感染させた7〜14週齢のハムスターの生存グラフ。腹腔内及び鼻腔内の経路による、ハムスターの50%を死亡させるウイルスの致死用量(LD50)は、各動物についてそれぞれ270 pfu及び47,000である。
図2:急性ニパ感染における血管及び実質性の疾患。A:周囲炎症(surrounding inflammation)を有する巣状の経壁フィブリノイド壊死を示す肝臓の大血管。B:隣接炎症(adjacent inflammation)を有する心筋壊死。C:肺動脈中の多発性内皮多核シンシチウム(Multiple endothelial multinucleated syncytium)。D:ウイルスRNAが、同じ肺での内皮シンシチウム及び血管平滑筋において示された。E:大脳血管における壊死及び核崩壊。F:髄膜血管の内皮及び平滑筋に局在化するウイルス抗原。
【0011】
図3:急性ニパ感染における大脳病理。A:感染したニューロン付近の穏やかな炎症を特徴とする小血管の血管炎。B:実質性虚血(parenchymal ischemi)、梗塞及び浮腫の病巣(Focal)領域。C:好酸性の封入体を伴うニューロン。D:核、細胞質及び血管炎の血管の近くの突起(processes)中のニューロンへのウイルス抗原の免疫局在化(immunolocalization)。E:上衣ライニング(ependymal lining)及びニューロンに局在化するウイルス抗原。F:細胞質中のウイルスRNAを証明するニューロン。
【0012】
図4:A及びB:血管炎に関係する肺の実質の炎症及び血栓症の血管。C:腎糸球体の周辺での血栓、炎症及びシンシチウム形成を特徴とする腎炎。D:ウイルス抗原が、糸球体の細管において検出された。E:腎臓の乳頭突起を覆う上皮で見出されたウイルス抗原。F:脾臓の白脾髄のリンパ系細胞において示されたウイルス抗原。
【0013】
図5:TaqMan (商標)リアルタイムRT-PCRによるニパウイルスRNAの検出。増幅プロットは、ニパウイルスストックから抽出したニパウイルスRNAの10倍ずつの希釈を用いて得た。試験は、未希釈から1/106まで二重に行なった。
図6:ニパウイルスRNAの10倍の連続希釈を用いて得られた標準曲線。図5で得られた結果から算出されたCt値は、感染性ウイルスの最初の出発量(pfu/ml)のlogに対してプロットする。閾値は0.289601である。
【0014】
図7:ニパウイルスRNA転写産物の標準曲線。これは、ニパRNA転写産物の最初の量のlogに対してプロットした閾値サイクルCtを示す。異なるRNA転写産物を用いて3つの増幅プロットを行った。
図8:ベロ細胞のニパウイルス感染及びシンシチウム形成。0.01のMOIで感染させた細胞を、感染後第1日(a)及び第2日(b)に処理し、ウイルス抗原の存在を免疫蛍光により試験した。細胞変性効果は、多数の核を含む細胞シンシチウムの形成により視覚化された。核は、ヨウ化プロピジウムにより染色した。
【0015】
図9:感染後1、2、3及び4日でのプラークアッセイ及びリアルタイムRT-PCRアッセイにより感染細胞上清において検出された感染ニパウイルスの数及びニパウイルスRNAの変化。
図10:NiVのG又はF糖タンパク質のいずれかを発現するワクシニアウイルス(VV)組換え体を感染させたHeLa細胞のFACScan分析。HeLa細胞を、VV-NiV.G若しくはF又はコントロールVVを用いて0.1 pfu/細胞のmoiで16時間感染させ、糖タンパク質の発現を、G又はF糖タンパク質のいずれかに対するポリクローナル単一特異的抗血清を用いて細胞の表面で測定した。
【0016】
図11:ニパウイルスG及びF糖タンパク質の共発現(co-expression)による融合の誘導。Hela細胞は、G又はF糖タンパク質のいずれかを発現するVV-NiV組換え体で感染させたか、又は図10のように両方で二重に感染させた。細胞を、次いで、免疫蛍光によりウイルスの発現について、また融合の誘導について試験した。
図12:ニパウイルスG及び/又はF糖タンパク質を発現するVV組換え体でのワクチン接種による、ニパウイルスの致死攻撃からのハムスターの保護。ハムスターに、1ヶ月間隔で2回、VV.NiV G若しくはFのいずれか又は両方でワクチン接種し、最後の免疫化から3ヵ月後にニパウイルスで攻撃した(7〜8匹の動物/群)。動物は、毎日調べた。
【0017】
図13:VV組換え体でのワクチン接種の後及びニパウイルスでの攻撃後の抗体応答。ハムスターは、免疫化の後及びニパウイルスでの攻撃後に採血した。抗体レベルを、(A) 中和及び(B) ELISAにより測定した。
図14:致死ニパウイルス感染に対する、ハムスターの受動防御(Passive protection)。抗体は、G又はFのいずれかを発現するVV組換え体に対してハムスターで産生され、個々の糖タンパク質又はそれぞれの当量混合物のいずれかに対するプールされた血清を、ニパウイルスでの攻撃の2時間前にi.p.で接種した(0.2ml/動物)。抗血清の2回目の接種(0.2 ml)は、24時間後に行なった。動物を、ニパウイルスで攻撃し、43日間観察した。
【0018】
図15:受動的に投与されたポリクローナル単一特異性抗ニパウイルス血清の存在下で、ニパウイルスで攻撃されたハムスターの免疫応答。図14からのハムスターは時々採血され、血清をELISAにより抗ニパウイルス抗体について調べた。
【0019】
特に定義しないかぎりは、本明細書において用いられる全ての技術及び科学用語は、分子生物学の当業者により一般的に理解されるのと同じ意味を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
本発明は、ゴールデンハムスターを鼻腔内又は腹腔内経路のいずれかによりニパウイルスに感染させることができ、感染したヒトにおけるニパウイルスに特徴的な脳炎症候群により死亡することを初めて証明する。さらに、剖検で観察される病変は、ヒト組織試料で観察されるものに類似の病理を示す。特に、該病変は、シンシチウムを形成する血管内皮細胞に対するウイルス親和性を示し、ヒト感染において観察されるのと同様の様式で血管炎、血栓、虚血、梗塞及び血管周囲炎に導く(Wongら, Am. J. Pathol. 2002. 161:2153〜2167)。中枢神経系のニューロンが、ニパウイルスの標的細胞であることも証明されている。ウイルス抗原及びRNAは、血管組織及びニューロン、肺、腎臓及び脾臓を含む血管外組織の両方に局在化した。最後に、ウイルスは感染動物の尿から単離され、このことは、観血的な手法を行うことなくウイルス複製の存在を追跡する適切な方法を提供する。
【0021】
よって、本発明のある実施形態において、ヘニパウイルス感染モデルのゴールデンハムスターが提供され、該ハムスターはニパウイルス及びヘンドラウイルスのような少なくとも1種のヘニパウイルスに感染している。このゴールデンハムスターモデルは、感染したヒトにおいて観察される症状の過半数(すなわち50%より多い)を再現する。このモデルは、例えば診断、ウイルス産生、ウイルス表現型識別並びに治療及び予防の評価のためのヒト及びヒト以外の霊長類の代替として有利に用いることができる。
【0022】
本発明は、また、細胞培養及び生体試料中のニパウイルスRNAを迅速に定量する、汎用性のある(versatile)、信頼できる感度の高い試験を始めて提供する。RNA抽出工程の間のウイルス感染性の不活性化は、このウイルスのサーベイランス及び診断に関与するいずれの実験室に、地方病性の領域におけるニパウイルスの循環をモニターすることを可能にする。この方法は、組織標本におけるウイルスRNA分子を定量するのにも興味を起こさせるだろう。ニパウイルスはヒトにおいて存続して、遅発の脳炎を発症させ得ること、又は初期の疾患の数ヶ月後に再発して脳炎を再びおこすことが記載されている(Tanら, 2002, Ann Neurol. 51:703〜8)。これらの後期段階で脳脊髄液から生ウイルスは単離できなかったが、ニパウイルスの存在は、脳でのウイルス抗原の証明により明らかにされた。
【0023】
ニパウイルス及びヘンドラウイルスを含むパラミクソウイルスは、ウイルス表面に2つの糖タンパク質、G及びFを有する。G糖タンパク質は、細胞の受容体への接着の原因であるが、F糖タンパク質は、ウイルスと細胞膜との融合を誘導する。G及びFは、協力して融合を成し遂げる。本発明者らは、ニパウイルスタンパク質を発現するワクシニアについてこのことを確認し、共感染(co-infection)、すなわちG+Fのみが融合を誘導することを示している。もし抗体が感染をブロックするならば、この抗体はおそらくGのその受容体への接着又はウイルスエンベロープを細胞膜と融合させるFの機能をブロックするはずである。VV組換え体のいずれかで免疫したハムスターからの血清は、高い抗体レベルを誘導したが、比較的低い中和抗体を誘導した。他のパラミクソウイルスにおいて、接着タンパク質に対する応答はしばしば優位を占めるが、本発明者らは、ニパウイルスF及びニパウイルスGに対する抗体の応答が同じオーダーであることを見出し、マウスでの研究を確認した(Taminら, 2002.Virology. 296:190〜200)。
【0024】
本発明が包含する基本の科学的方法は知られている。例えば、Sambrook et al., Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Third Edition, Cold Spring Harbor Laboratory, New York (1999)及びそこに引用される種々の文献を参照されたい。
【0025】
「単離」とは、物質、例えばポリヌクレオチドがその本来の環境から分離される(separated out)ことをいう。
「組換え体」とは、ポリヌクレオチドを切断し特定のポリヌクレオチド断片とつなぎ合わせることによりインビトロで作製された、遺伝的に加工されたポリヌクレオチド又はポリペプチドのことをいう。
【0026】
「ポリヌクレオチド」とは、一般に、ポリリボヌクレオチド及びポリデオキシリボヌクレオチドのことであり、これらは非修飾RNA若しくはDNA又は修飾RNA若しくはDNAであり得る。
「ポリペプチド」とは、ペプチド結合を介して結合している2又はそれより多いアミノ酸を含むペプチド又はタンパク質を意味すると理解される。
【0027】
本明細書において用いられるように、「阻害する」又は「阻害」は、対象の患者におけるニパウイルス及び/又はヘンドラウイルスのようなヘニパウイルスの感染性のいずれの測定可能で再現性のある減少を含む。
【0028】
「発現ベクター」の用語は、本発明のペプチドをコードしかつ選択された宿主細胞中でのその発現に必要な配列を提供するポリヌクレオチドのことをいう。発現ベクターは、一般に、転写プロモータ及びターミネータを含むか、又は内在性プロモータに隣接しての組込みを提供する。発現ベクターは、複製起点及び1又はそれより多い選択マーカー(selectable markers)をさらに含むプラスミドであり得る。さらに、発現ベクターは、宿主に感染するように設計されたウイルス組換え体、又は宿主のゲノムの好ましい部位に組み込まれるように設計された組み込み型ベクターであり得る。ウイルス組換え体の例は、アデノ随伴ウイルス(AAV)、アデノウイルス、ヘルペスウイルス、ポックスウイルス、レトロウイルス、ワクシニアウイルス及び当該技術で知られる他のRNA又はDNAウイルス発現ベクターである。好ましい実施形態において、発現ベクターはウイルスベクターであり、特に好ましい実施形態においては、ウイルスベクターは組換えワクシニアウイルスである。
【0029】
本発明におけるアッセイの方法は、PCRを逆転写とともに適用する逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)を用いることができる。具体的には、標準的な方法を用いて試料組織からRNAを抽出し、これを逆転写してcDNA分子を作製する。次いで、このcDNAをその後のポリメラーゼ連鎖反応の鋳型として用いる。
【0030】
プライマと鋳型とが一旦アニールすると、DNAポリメラーゼを用いてプライマから伸長が起こり、鋳型のコピーが合成される。次いで、DNA鎖を変性させ、プライマの少なくとも1つに結合していれば蛍光、放射性核種又はその他の検出可能部分(detectable moiety)あるいは増幅したポリヌクレオチド分子を視覚化する他の手法、例えばエチジウムブロミド染色又は分光光度法を用いた視覚化を可能にするのに充分なDNAが得られるまで、この過程を多数回繰り返す。
【0031】
このようなアッセイに用いられる生体試料は、血液、血清、尿、組織生検、リンパ節、腹水、脳脊髄液及び前立腺分泌物並びにその他の組織、それらのホモジネート及び抽出物を含む。このような生体試料は、いずれの標準的な方法を用いて得ることができる。
【0032】
ニパウイルス及びヘンドラウイルスのタンパク質(又はその部分若しくは他の変形物)をコードするポリヌクレオチド又はそのようなポリヌクレオチドに相補的なポリヌクレオチドは、本発明で提供される方法において用い得る。ポリヌクレオチドは、一本鎖(コーディング又はアンチセンス)又は二本鎖であり得、DNA (cDNA又は合成)又はRNA分子であり得る。付加的なコーディング配列又は非コーディング配列は、必要ではないが、本発明のポリヌクレオチド中に存在してもよく、ポリヌクレオチドは、必要ではないが、他の分子及び/又は支持物質に結合してもよい。
【0033】
ポリヌクレオチドは、種々の方法のいずれを用いて作製してもよい。例えば、ポリヌクレオチドは、cDNAからのポリメラーゼ連鎖反応(PCR)により合成できる。このアプローチについて、配列特異的プライマを本明細書により提供される配列に基づいて設計することができ、購入又は合成することができる。他のポリヌクレオチドは、化学合成のような当該技術で知られた方法により直接合成することができる。
【0034】
コーディング配列又は相補配列の特に好ましい部分は、試料中のニパウイルス又は他のヘニパウイルス、例えばヘンドラウイルスを検出するプライマとして設計されたものである。プライマは種々のレポーター基または検出可能な部分、例えば放射性核種及び酵素で標識されてもよく、ニパウイルスポリヌクレオチドの少なくとも15、20、25又は30連続するヌクレオチド、例えば配列番号8及び17、あるいは本明細書に適切であるとして記載されるそれらの相補鎖、例えば配列番号1に示す配列を含むものである。PCRのプライマは、ニパウイルスポリヌクレオチドの少なくとも15、20、25又は30連続するヌクレオチド、あるいは本明細書に適切であるとして記載されるそれらの相補鎖、例えば配列番号2及び3に示す配列を含むものである。好ましい実施形態において、逆転写及びその後の増幅に用いられるプライマは、ニパウイルスゲノムRNAのヌクレオキャプシド領域を特異的に標的する。
【0035】
種々のニパウイルス単離体のポリヌクレオチド及びポリペプチド配列は知られており、ニパウイルスの構成要素はヌクレオキャプシド(NC)、マトリックス、ポリメラーゼ、接着糖タンパク質及びP/V/C融合タンパク質を含む。そのようなポリヌクレオチドの例は、GenBankからアクセッション番号AJ564622、AJ564621、AF376747、AF212302、AY029768及びAY029767の下で入手可能なものを含む。さらに、配列表の配列番号8及び17に示す配列も、ニパウイルスポリヌクレオチドに相当する。
【0036】
同様に、ニパウイルスポリペプチドのアミノ酸配列は記載されており、例えばGenBankのエントリーAJ564622、AJ564621、AF376747、AF212302、AY029768及びAY029767を参照されたい。具体的なウイルス成分の限定しないさらなる例は、ポリメラーゼ−配列番号9、18、28及び30;接着タンパク質−配列番号10;融合タンパク質(F)−配列番号11及び20;マトリックスタンパク質−配列番号12、21及び27;Cタンパク質−配列番号13;Vタンパク質−配列番号14、25及び26;リンタンパク質−配列番号15、22及び24;並びにヌクレオキャプシド−配列番号16、23、31及び32;糖タンパク質−配列番号19及び29を含む。
【0037】
種々のヘンドラウイルス単離体のポリヌクレオチド及びポリペプチド配列及びヘンドラウイルスの構成要素が知られている。そのようなポリヌクレオチドの例は、GenBankからアクセッション番号AF017149及びAF 010304の下で得られるものを含む。さらに、配列表の配列番号33及び45に示す配列もヘンドラウイルスポリヌクレオチドに相当する。
【0038】
同様に、ヘンドラウイルスポリペプチドのアミノ酸配列は記載されており、例えばGenBankのエントリーAF017149及びAF 010304を参照されたい。具体的なウイルス成分の限定しないさらなる例は、ヌクレオキャプシド−配列番号34;リンタンパク質−配列番号35及び42;非構造タンパク質V−配列番号36及び43;非構造タンパク質C−配列番号37及び44;マトリックスタンパク質−配列番号38;融合タンパク質−配列番号39;糖タンパク質−配列番号40;及びポリメラーゼ−配列番号41を含む。
【0039】
ある実施形態において、本明細書に記載されるニパウイルスまたはヘンドラウイルスのアミノ酸配列と少なくとも70%、好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも90%同一であるタンパク質は、本発明において用いることができる。
【0040】
別の実施形態において、用いることができるニパウイルス又はヘンドラウイルスのタンパク質は、ニパウイルス又はヘンドラウイルスのコーディング配列と少なくとも70%、好ましくは80%、より好ましくは少なくとも90%、95%及び97%の同一性を有するポリヌクレオチド配列によりコードされるものである。これらのポリヌクレオチドは、本明細書に記載されるニパウイルスのポリヌクレオチド配列のコーディングポリヌクレオチド配列に、ストリンジェントな条件下でハイブリダイズする。「ストリンジェントな条件」又は「ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件」の用語は、その条件の下で、ポリヌクレオチドがその標的配列に、他の配列よりも検出可能に大きい程度(例えばバックグラウンドの少なくとも2倍を超える)でハイブリダイズする条件を含む。ストリンジェントな条件は、pH 7.0〜8.3で塩濃度が約1.5 M Naイオンより低い、具体的には約0.01〜1.0 M Naイオン濃度(又は他の塩)であり、短いプローブ(例えば10〜50ヌクレオチド)について温度が少なくとも約30℃及び長いプローブ(例えば50ヌクレオチドを超える)について少なくとも約60℃であるものである。例えば、高ストリンジェント条件は、37℃で50%ホルムアミド、1 M NaCl、1% SDS中でのハイブリダイゼーション、及び60〜65℃での0.1×SSC中での洗浄を含む(Tijssen, Laboratory Techniques in Biochemistry and Molecular Biology--Hybridization with Nucleic Acid Probes, Part I, Chapter 2 "Overview of principles of hybridization and the strategy of nucleic acid probe assays", Elsevier, New York (1993);及びCurrent Protocols in Molecular Biology, Chapter 2, Ausubelら編, Greene Publishing and Wiley-Interscience, New York (1995)を参照されたい)。アミノ酸及びポリヌクレオチドの同一性、相同性及び/又は類似性は、ClustalWアルゴリズム、MEGALIGN (商標)、Lasergene、Wisconsinを用いて測定することができる。
【0041】
より具体的には、試料中のニパウイルスを検出する上記の方法は、
該ニパウイルスの少なくとも1つのRNA分子のDNAコピーを該RNA分子に特異的な少なくとも1つのプライマを用いて作製し;
ニパウイルスRNA分子の該DNAコピーに特異的な少なくとも1対のオリゴヌクレオチドプライマを用いて該DNAコピーを増幅し;そして
試料中のニパウイルスの存在を示唆する、ニパウイルスに対応する増幅DNAの存在を検出する
ことを含む。
【0042】
上記の方法の有利な実施形態によると、作製されかつ増幅されるDNAコピーは、ニパウイルスヌクレオキャプシドコーディング領域である。
上記の方法の別の実施形態によると、オリゴヌクレオチドプライマ対の少なくとも1つは、検出可能部分を含む。
上記の方法の別の実施形態によると、検出は、検出可能部分を視覚化することを含む。
【0043】
上記の方法の別の実施形態によると、試料はブタから得られる。
上記の方法の別の実施形態によると、試料は野生動物又は家畜から得られる。
上記の方法の別の実施形態によると、試料はヒトから得られる。
【0044】
上記の方法の別の実施形態によると、RNA分子に特異的な少なくとも1つのプライマは、配列番号16、配列番号23、配列番号31及び配列番号32からなる群より選択されるアミノ酸配列を含むポリペプチドをコードするポリヌクレオチドに相補的な少なくとも15連続するヌクレオチドを含む。
上記の方法の別の実施形態によると、RNA分子に特異的な少なくとも1つのプライマは、上記のポリヌクレオチドの少なくとも20連続するヌクレオチドを含む。
上記の方法の別の実施形態によると、RNA分子に特異的な少なくとも1つのプライマは、上記のポリヌクレオチドの少なくとも25連続するものを含む。
【0045】
同一性を有するタンパク質又は本明細書に記載のポリヌクレオチドにハイブリダイズするポリヌクレオチドによりコードされるタンパク質は、ニパウイルス又はヘンドラウイルスの野生型タンパク質活性の生物活性の少なくとも20%、好ましくは50%、より好ましくは少なくとも75%及び/又は最も好ましくは少なくとも90%を維持することが好ましい。生物活性の量は、25%、30%、35%、40%、45%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、95%並びに全ての値及びそれらの間の値を含む。さらに、上記のタンパク質は、ニパウイルス又はヘンドラウイルスの野生型活性に比べて100%又はそれより多い生物活性を有することもできる。生物活性の量は、少なくとも105%、少なくとも110%、少なくとも125%、少なくとも150%及び少なくとも200%を含む。ヘニパウイルス属の中のウイルスタンパク質の間、特にエンベロープ糖タンパク質の間のアミノ酸類似性のパーセンテージは、交差反応性及び交差防御性反応性を有する抗体を誘導できるこれらのタンパク質のそれぞれの能力を強調する。
【0046】
ニパウイルス又はヘンドラウイルスのタンパク質は、実質的な純度まで、硫酸アンモニウムのような物質を用いる選択的沈殿、カラムクロマトグラフィ、免疫精製法など当該技術で公知の標準的な方法により精製することができる。例えば、R. Scopes, Protein Purification: Principles and Practice, Springer-Verlag: New York (1982)を参照されたい。
【0047】
本発明は、免疫応答を展開する(mounting)ことによる、ニパウイルス及びヘンドラウイルス及びヘニパウイルス属のいずれのメンバーにより引き起こされる疾患の治療又は予防の方法をも含む。この治療方法において、本明細書に記載される免疫反応性組成物の投与は、「予防」又は「治療」の目的のいずれのためであってもよい。予防的に与えられる場合、免疫反応性組成物はいずれの症状の前に提供される。免疫反応性組成物の予防的な投与は、その後のいずれの感染又は疾患の重篤度を予防し、改善し及び/又は減少させる働きをする。治療的に与えられる場合、免疫反応性組成物は、感染又は疾患の症状の発症時(又はそのすぐ後)に提供される。よって、本発明は、疾患の原因となる作用因子への予期される曝露の前又は疾患の状態又は感染又は疾患の開始の後のいずれかに提供され得る。
【0048】
本明細書において用いられるように、本明細書に記載される処方の投与により利益を被るであろう対象の患者は、ウイルス感染に対する保護により利益を被り得るいずれの動物をも含む。好ましい実施形態において、対象患者は、増幅宿主であり経済的に関心が高いヒト患者、ウマ又はブタである。
【0049】
ウイルスポリペプチドは、ワクチンとして予防的に用い得る。本発明のワクチンは、有効成分として、本明細書に記載される結合又は融合ドメインポリペプチドあるいは組換えウイルスの免疫原的有効量を含む。免疫応答は、抗体の産生;ウイルスポリペプチド由来のペプチドを提示する細胞に対する細胞傷害性Tリンパ球(CTL)の活性化、又は当該技術において公知の他の機構を含み得る。免疫応答の記載についてはPaul Fundamental Immunology Second Edition published by Raven press New York (本明細書に参照として組み込まれる)を参照されたい。有用な担体は当該技術において公知であり、例えばチログロブリン、ヒト血清アルブミンのようなアルブミン、破傷風トキソイド、ポリ(D-リジン:D-グルタミン酸)のようなポリアミノ酸、インフルエンザ、B型肝炎コアタンパク質、B型肝炎組換えワクチンを含む。
【0050】
ウイルスポリペプチドをコードするDNA又はRNAは、患者に導入されて該ポリヌクレオチドがコードするポリペプチドに対する免疫応答を得ることができる。例えば、この実施形態においては、本明細書に記載されるような発現ベクターを用い、対象に接種して免疫応答を誘導する。
【0051】
免疫保護又は予防を達成するに充分な量は、「免疫原的に有効な用量」として定義される。この使用に有効な量は、組成、投与様式、患者の体重及び全身健康状態に依存する。
【0052】
接種材料に関係する限りにおいて用語「単位用量(unit dose)」は、哺乳動物のための単位の用量(unitary dosage)として適する物理的に別々の単位のことであり、各単位は、所望の免疫原性効果を得るように算出された所定量の組換え抗原又は組換え抗原をコードするポリヌクレオチドを、所要の希釈剤とともに含有する。本発明の接種材料の新規な単位用量の詳細は、組換えウイルスの独特の特性及び達成されるべき特定の免疫効果により要求されかつそれらに依存する。
【0053】
接種材料は、一般に、許容できる(許容される)希釈剤、例えば生理食塩水、リン酸緩衝生理食塩水又はその他の生理的及び/又は医薬的に許容される希釈剤などの溶液として得られ、水性医薬組成物を形成する。
【0054】
接種経路は、静脈内、筋肉内、皮下、皮内などであってよく、このことがニパウイルスに対する防御応答の惹起をもたらす。用量は、少なくとも1回投与される。その後の用量も投与できる。
【0055】
哺乳動物、好ましくはヒトに本発明の免疫原性組成物を投与する際に、投与用量は、哺乳動物の年齢、体重、身長、性別、医学的全身状態、医学的既往歴、疾患の進行、腫瘍の負担(burden)などの因子に応じて変化する。
【0056】
免疫化の後に、ワクチンの効力は、特定の溶解活性若しくは特定のサイトカイン産生又は腫瘍の退縮により評価されるように、抗体又は抗原を認識する免疫細胞の産生により、評価することができる。当業者は、上記のパラメータを評価する通常の方法を知っているであろう。
【0057】
免疫促進剤又はアジュバントは、宿主の免疫応答を改善するのに用いることができ、免疫原性組成物に含むこともできる。アジュバントは、抗原に対する免疫応答を増大させると確認されている。水酸化アルミニウム及びリン酸アルミニウムは、ヒト及び獣医学的なワクチンにおいてアジュバントとして一般に用いられる。その他の外因性のアジュバント及びその他の免疫修飾物質は、抗原に対する免疫応答を惹起することができる。これらは、膜タンパク質抗原と複合体を形成して免疫促進複合体(TSCOMS)を産生するサポニン、鉱物油を含むプルロニックポリマー(pluronic polymers)、鉱物油中の不活化マイコバクテリア、フロイントの完全アジュバント、細菌生成物、例えばムラミルジペプチド(MDP)及びリポ多糖(LPS)並びにモノホリルリピド(monophoryl lipid) A、QS 21及びポリホスファゼンを含む。
【0058】
好ましい実施形態において、ニパウイルス糖タンパク質(G及びF)は、別々に用いられ、別の好ましい実施形態においては、G及びF糖タンパク質は、本発明の免疫原性組成物中に組み合わせて用いられる。好ましい実施形態において、免疫原性組成物は、接種されると免疫応答を惹起するタンパク質を発現するニパウイルスタンパク質をもつ発現ベクター、例えばニパウイルス糖タンパク質を発現する組換えワクシニアウイルスであり、より好ましくは、ニパウイルスのG及びF糖タンパク質を発現するベクターである。
【0059】
本発明は、
少なくとも1つの単離ヘニパウイルスG及びF糖タンパク質を、個体又は哺乳動物に、該個体又は哺乳動物で免疫応答を誘導するに充分な量で投与する
ことを含む、ヘニパウイルス感染に対して個体を保護する方法にも関する。
【0060】
上記の方法の有利な実施形態によると、ヘニパウイルスはニパウイルス又はヘンドラウイルスである。
上記の方法の別の実施形態によると、上記の投与は、アジュバントの投与もさらに含む。
別の上記の方法によると、上記の投与は1又はそれより多い回数行なわれる。
上記の方法の別の実施形態によると、少なくともヘニパウイルスF及びG糖タンパク質の両方が投与される。
【0061】
本発明は、免疫応答を誘導するに充分な量の少なくとも1つの単離ヘニパウイルスG及びF糖タンパク質の、ヘニパウイルス感染に対して個体又は哺乳動物を保護するための医薬を製造するための使用にも関する。
【0062】
上記の使用の有利な実施形態によると、ヘニパウイルスはニパウイルス又はヘンドラウイルスである。
上記の使用の別の実施形態によると、上記のヘニパウイルスG及びF糖タンパク質は、アジュバントと結合している。
【0063】
本発明は、
少なくとも1つの単離ヘニパウイルスG及びF糖タンパク質を発現する発現ベクターを、個体又は哺乳動物に、該個体又は哺乳動物で免疫応答を誘導するに充分な量で投与してヘニパウイルス感染に対して該個体又は哺乳動物を予防又は保護する
ことを含む、ヘニパウイルス感染に対して予防又は保護を必要とする個体又は哺乳動物を予防又は保護する方法にも関する。
【0064】
上記の方法の有利な実施形態において、発現ベクターは、ヘニパウイルスの少なくともF及びG糖タンパク質を発現する。
上記の方法の別の実施形態によると、発現ベクターはウイルスベクターである。
【0065】
上記の方法の別の実施形態によると、ウイルスベクターは組換えポックスウイルスベクターである。
上記の方法の別の実施形態によると、該方法は、少なくとも1種のアジュバントの投与をさらに含む。
【0066】
本発明は、免疫応答を誘導するに充分な量で少なくとも1つの単離ヘニパウイルスG及びF糖タンパク質を発現する発現ベクターの、ヘニパウイルス感染に対して個体又は哺乳動物を予防又は保護するための医薬品を製造するための使用にも関する。
【0067】
上記の使用の有利な実施形態によると、発現ベクターは、ヘニパウイルスの少なくともF及びG糖タンパク質を発現する。
上記の使用の別の実施形態によると、発現ベクターはウイルスベクターである。
上記の使用の別の実施形態によると、ウイルスベクターは組換えポックスウイルスベクターである。
上記の使用の別の実施形態によると、上記の発現ベクターは少なくとも1種のアジュバントと結合している。
【0068】
インビトロでニパウイルスの感染性を中和する、ニパウイルスG及びFタンパク質に対するモノクローナル抗体(Mabs)のバンク(bank)も開発されている。さらに、ある特定の抗ニパウイルスFタンパク質はヘンドラウイルスを中和する。よって、本発明の別の実施形態は、ヘニパウイルスG及びFタンパク質に対する抗体を産生する組換えハイブリドーマ、並びにヘニパウイルスG及びFタンパク質を発現するワクチンベクター組換え体である。
【0069】
ワクシニアベクター組換え体及びハイブリドーマの限定しない例は、CNCM (Collection Nationale de Cultures de Microorganisms), 28 rue du Docteur Roux, 75724 Paris Cedex 15, Franceに、2003年9月16日に番号I-3086の下で寄託された、ニパGタンパク質を発現する組換えワクシニアウイルス;CNCMに2003年9月16日に番号I-3085の下で寄託された、ニパFタンパク質を発現する組換えワクシニアウイルス;CNCMに2004年9月9日に番号I-3293の下で寄託された、ニパウイルスに対する中和活性を有するハイブリドーマN°1.7抗ニパウイルスGタンパク質;CNCMに2004年9月9日に番号I-3296の下で寄託された、ニパウイルスに対する中和活性を有するハイブリドーマN°3.B10抗ニパウイルスGタンパク質;CNCMに2004年9月9日に番号I-3295の下で寄託された、ニパウイルス及びヘンドラウイルスに対する中和活性を有するハイブリドーマN°35抗ニパウイルスFタンパク質;及びCNCMに2004年9月9日に番号I-3294の下で寄託された、ニパウイルス及びヘンドラウイルスに対する中和活性を有するハイブリドーマN°3抗ニパウイルスFタンパク質を含む。
【実施例】
【0070】
実施例1. ヘニパウイルスのゴールデンハムスターモデル
新規なパラミクソウイルス(後にニパウイルス(NiV)と命名された)の最近の大発生は、マレーシアで数百人の患者に感染し、深刻な罹患率及び約40%の死亡率の原因となった(Chuaら 2000. Science 288:1432〜1435)。患者らは、熱及び頭痛から重篤な急性熱性脳炎症候群までの範囲の症状を発生した。急性感染から生存した症状性患者の過半数は結局深刻な後遺症なしに回復したが、少数の患者は、数ヶ月や数年後に再発脳炎を再発した(Tanら Ann Neurol. 2002.51:703〜708)。再発脳炎の臨床的特性及び病因は、急性NiV脳炎とは異なることがわかった。近い接触を介するブタからヒトへの伝染は、現在では、ブタがウイルスの増幅宿主としての役割を果たすということが確立されている(Parasharら J Infect Dis. 2000. 181:1755〜1759)。コウモリの尿からNiVが最近単離されたことから、本来の宿主はおそらくフルーツコウモリであるようである(Chuaら Microbes Infect. 2002. 4:145〜151)。よって、NiVの大発生は、コウモリから最近出現した最も深刻なウイルス人畜共通感染症の代表である(Eaton, Microbes Infect. 2001. 3:277〜278)。
【0071】
NiVに感染したヒトの組織の研究に基づいて、NiV感染の病理及び病因が理解され始めている(Wongら Am J Pathol. 2002. 61:2153〜2167)。急性NiV感染において、最初のウイルス複製に続いて、ウイルス血症が発生してウイルスを全身に広げていることが現在の証拠により示唆される。血管は感染して血症が広く行き渡り、これが複数の臓器において血栓症、血管閉塞、虚血及び/又は微小梗塞を導き、中枢神経系(CNS)に最も深刻に影響した(Wongら Am J Pathol. 2002. 61:2153〜2167)。血管外実質組織、特にニューロンも感染を受けやすかった。CNS虚血及び/又は微小梗塞とニューロンの直接感染との組み合わせが、急性NiV感染においてみられる深刻な神経学的症状発現に貢献し得ることが仮定されている(Wongら Am J Pathol. 2002. 61:2153〜2167)。
【0072】
急性NiV感染の早期の病因をさらに理解するための試みは、動物モデルの欠如により阻害されていた。急性NiV感染の病理及び病因についての現在の知見は、研究がヒトの剖検に基づいていたため、疾患の後期に関する。現在までに研究されてきた、ブタ及びネコを含む自然感染及び実験的感染の動物は、血症を示すものの、ヒトNiV感染において見出される典型的な脳炎を示さないので、モデルとしては適切でないだろう(Hooperら 2001. Microbes Infect. 3:315〜322)。経験的な治療として感染患者に用いられ効果的であることが報告された抗ウイルスリバビリンは、動物実験においてまだ充分に評価されていない(Chongら, Ann Neurol. 2001. 49:810〜813)。同様に、他の抗ウイルス剤及び新規に開発されたワクチンは、よいモデルがないので、NiV感染におけるそれらの潜在的有用性について試験することができなかった。動物モデルにおける制御された伝染の研究を行なえば、ウイルス感染性及び感染経路の探求ができた。
【0073】
本研究において、急性NiV感染の潜在的なモデルとしていくつかの動物種を研究し、ゴールデンハムスター(Mesocricetus auratus)を適切なモデルとして同定した。鼻腔内及び腹腔内感染させたハムスターにおける病理学的病変は、種々のアプローチにより特徴づけられ、ヒト疾患において見出されるものと高い類似性を示した。また、種々の感染した器官におけるウイルスの単離及びウイルスゲノム検出を、そこで見出された病理の変化に関連づけることも試みた。
【0074】
材料及び方法
ウイルスストック及び滴定
患者の脳脊髄液から単離されたNiVを、フランス、リヨンのBSL-4 「ジャン・メリュー(Jean Merieux)」実験室のKB Chua博士及びSK Lam博士(University of Malaya, Kuala Lumpur, Malaysia)から、ベロ細胞中での2継代の後に受け取った。ウイルスストックは、物理的汚染レベル4で行なったベロ細胞での3継代の後に得た。
【0075】
感染の1〜2日後にベロ細胞が融合しシンシチウム形成を示したときに、ウイルスの上清を回収した。ウイルスストックを6ウェルプレートで、各ウェル中に上清の連続10倍希釈200μlを(ウェルあたり106ベロ細胞を含む)、37℃で1時間インキュベートすることにより滴定した。各ウェル中の細胞を、ダルベッコの最小必須培地(DMEM)で2回洗浄し、2%胎児ウシ血清を含有するDMEM中の1.6%カルボキシメチルセルロース2 mlを各ウェルに加えた。プレートを37℃で5日間インキュベートし、ウェルをリン酸バッファーpH 7.4 (PBS)で洗浄し、10%ホルマリンで20分間固定し、洗浄してメチレンブルーで染色した。0.01の感染多重度(MOI)での感染の24時間後の上清中のウイルス力価は、2×107プラーク形成単位(pfu)/mlであった。
【0076】
動物感染実験
全部で3つの一連の動物研究を行なった。第一の実験において、NiV感染に対する感受性の予備試験を、5匹のマウス、2匹のモルモット及び2匹のハムスターをそれぞれ含む2群の動物について行なった。4週齢の雌性Swissマウス(Charles River, L'Arbresle, France)、4月齢の雄性Hartleyモルモット(Charles River)及び2月齢の雄性ゴールデンハムスター(Janvier, Le Fenest St Isle, France)をこの実験において用い、各群は、鼻腔内(IN)又は腹腔内(IP)経路のいずれかで接種された。IN経路について、ウイルスストック(6×105 pfu) 30μlを各動物に与えたが、IP経路については0.5 ml (107 pfu)を接種した。動物を、感染の兆候について観察した。動物を、BSL-4ラボの動物室中のヘパフィルタを備えた換気収容室に収容した。動物の取り扱いはフランスの規則を遵守し、高度安全BSL-4収容室中での作業には厳格な手順を守った。
【0077】
第一の実験の結果に基づいて、IN及びIP接種経路を用いて成体ハムスター(7〜14週齢)に第二の実験を行い、動物の50%が死亡するのに必要な致死用量(LD50)を決定した。6匹のハムスターの群を10倍希釈のNiVストックで感染させ、4週にわたって一日に2回観察した。
【0078】
同じケージに収容された動物間の常時の再感染が死亡に寄与する可能性を研究するために、第三の研究を行なった。この研究においては、IP経路によりウイルス105 pfuを感染させた2匹のハムスターを、他の非感染の4匹のハムスターと同じケージに接種後3日間入れた。動物を観察し、血清学のために30日後に眼窩後洞血液(retroorbital sinus blood)試料を得た。
【0079】
血液、脳、肺、心臓、肝臓、脊髄、脾臓及び腎臓を含む、第一及び第二の研究からの適切な組織標本を、最近(≦12時間)死んだか又は瀕死の合計12匹のハムスターから採取した。瀕死のハムスターは、ケタミン及びキシラジンで麻酔をかけ、心臓穿刺により全血を採取し、剖検した。尿を可能なときにいつでも膀胱から採取した。12時間を超えてから死亡が発見された動物は、研究しなかった。
【0080】
ウイルス培養及び逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)のために組織を−80℃で凍結させた。組織病理学的研究のために、BSL-4実験室外でのルーチンの組織の処理及びパラフィン包埋の前に、組織を10%緩衝ホルマリン中で少なくとも15日間固定した。鼻通路(nasal passage)及び頸部リンパ節からの組織も、ルーチンの処理及びパラフィン包埋だけのために、ホルマリン固定された死体から切開した。電子顕微鏡法(EM)のために、新鮮な又はホルマリン固定した組織を、0.1 Mリン酸バッファーpH 7.4中の3%グルタルアルデヒドで数時間固定し、リン酸バッファーに移した。同様に、免疫電子顕微鏡法(IEM)のための組織を、2%パラホルムアルデヒド/0.05%グルタルアルデヒド中に固定し、バッファーに移した。さらに、最初はホルマリン固定しなかったEM及びIEM組織をガンマ線照射(2×106 rads)して、非感染性をさらに確実にした。
【0081】
血液試料を、剖検時の心臓穿刺により得るか、又は感染4週間後に第二実験で生存していた動物の眼窩洞から得た。ハムスターの50%の死亡を引き起こすNiV用量を、Reed及びMuenchの方法に基づいて算出した。
【0082】
ウイルス単離及び滴定
尿及びその他の組織における感染性ウイルス粒子の量を、ベロ細胞中でプラーク滴定により測定した。各器官の小片を、各30秒間で2回、滅菌ガラスビーズ0.5 ml及びDMEM 0.5 mlを含む2 mlのチューブ中で機械的に(Mini-beadbeater; Biospec, Bartlesville, USA)粉砕した。チューブを3000 rpmで4℃で5分間遠心分離し、200μlの上清の連続希釈を、ウイルス滴定のために、6ウェルプレートのベロ細胞上に積層した。
【0083】
ニパ抗体試験
感染したハムスターの血清を、NiV抗体の存在について酵素結合免疫吸着検査法(ELISA)により個別に試験した。NiV抗原の粗抽出物を、0.01 pfu/細胞のMOIで24時間感染させたベロ細胞から調製した。細胞をPBSで洗浄し、1% Triton X100含有PBSで、4℃で10分間溶解させた(107細胞/ml)。細胞溶解物を各30秒間で2回、完全な細胞破壊まで超音波破砕し、5000 rpmで4℃で10分間遠心分離した。上清を-80℃で凍結させた。非感染ベロ細胞を同様に処理して抗原コントロールを得た。ニパ抗原の交差滴定を、回復期のNiVに感染した患者からの血清を用いて行なって、最高のO.D.値を示す希釈に相当する抗原力価を測定した。
【0084】
逆転写ポリメラーゼ連鎖反応
全RNAを、20μlの血清及び尿から並びに機械破砕した新鮮凍結組織から、RNA抽出キット(QIAamp Viral RNA Mini Kit; Qiagen Inc., Valencia, California, USA)を用いて抽出した。抽出物約2μgをRT-PCRプロトコル(Titan One Tube RT-PCR System; Roche Diagnostics, Mannheim, Germany)で、NiV核タンパク質(N)遺伝子の存在を検出するのに用いた。特異的プライマは、以前に記載された(Chuaら Science. 2000. 288:1432〜1435)。
【0085】
光学顕微鏡
ホルマリン固定したパラフィン包埋組織を3μmの厚さにミクロトームで切断し、ガラススライド上におき、ヘマリン(hemalin)-フロキシン-サフラニン染料で光学顕微鏡用に染色した。
【0086】
免疫組織化学(IHC)
厚さ3μmの組織切片を、シラン処理したスライド上におき、キシレンと傾斜エタノール洗浄により脱ろうした。抗原は、pH 6.0のクエン酸バッファー中に96〜98℃で40分間の熱処理により回収した。室温(20℃)に冷却後、切片を、次のように連続して全工程にわたって20℃でインキュベートし、工程の間にはPBSでの洗浄を行なった:(a) PBS中の4%ウシ血清アルブミン/10%ヤギ血清(GS)、15分;(b) ウサギで生成したポリクローナル抗-NiV抗体、1:500、1時間;(c) ビオチン化ヤギ抗ウサギ二次抗体、30分 (Dako, Trappes, France);(d) PBS中の0.09% H2O2;(e) 製造業者のプロトコルに従ってセイヨウワサビペルオキシダーゼ結合ストレプトアビジン及びジアミノベンジジン基質 (Dako, Trappes, France)。スライドをヘマトキシリン中で対比染色し、水性媒体中にマウントした(Aquamount, Merck Eurolab, Strasbourg, France)。
【0087】
In situハイブリダイゼーション(ISH)
ISHのために、ジゴキシゲニン(DIG)標識リボプローブを、ニパウイルス特異的プライマを用いて228 bpのRT-PCR産物から作製した(Chuaら Science. 2000. 288:1432〜1435)。この断片をpdriveクローニングベクター(Qiagen PCRクローニングキット, Qiagen Inc., Valencia, California, USA)に、製造業者のプロトコルに従ってクローニングした。両方向で正しい挿入断片を含むプラスミドを、DIG RNAラベリングキット(Roche Diagnostics, Mannheim, Germany)を用いて、制限エンドヌクレアーゼHind IIIで直線化し、転写させてセンス及びアンチセンスのリボプローブを作製した。リボプローブをDNアーゼで処理し(15分、37℃)、次いで使用前にエタノール沈殿により精製した。
【0088】
脱ろうした組織切片を、0.2 N HCl (20分、20℃)、その後100 mM Tris /50mM EDTA, pH 8.0バッファー中の0.1mg/mlプロテイナーゼK (15分、37℃)で予備処理した。2回のPBS洗浄後、スライドを、湿式チャンバ(Hybaid Omnislide)中に45℃で一晩、45% ホルムアミド、6×SSC (1×SSC =0.15 M塩化ナトリウム、0.015 Mクエン酸ナトリウム, pH 7.0)、5×デンハルト溶液、100μg/ml 変性サケ精子、100μg/ml 酵母tRNA及び10%デキストランサルフェートを含有するろ過済みハイブリダイゼーション溶液中のリボプローブの1:50〜1:100希釈とインキュベートした。
【0089】
ハイブリダイゼーション後の連続する工程は、(a) 6×SSC (3×20分、45℃);(b) 2×SSC (10分、20℃);(c) 100 mM Tris, pH 7.5/ 150 mM NaClバッファー(1分、20℃);(d) 2% GS及び0.1% Tritonを含有する同じTris/NaClバッファー(30分、20℃)を含んでいた。次いで、スライドを、Tris/NaCl/GS/Tritonバッファー中に1:1000希釈されたアルカリホスファターゼコンジュゲート抗-DIG Fab断片(Roche diagnostics, Mannheim, Germany)と、湿式チャンバ中でインキュベートした(一晩、20℃)。反応をTris/NaCl (pH 7.5)バッファー(3×10分)及び100 mM Tris, pH 9.0/150 mM NaCl/50 mM MgCl2バッファー(1分)での洗浄により停止し、その後、NBT/BCIP溶液(Roche Diagnostics, Mannheim, Germany)を含むTris/NaCl/MgCl2バッファー中で製造業者のプロトコルに従ってインキュベーションした。発色反応は、10 mM Tris, pH 8.0バッファーを約45分後に用いて停止した。スライドをヘマトキシリンで対比染色し、水性媒体中にカバーグラスで覆った。
【0090】
動物感染実験:生存及びLD50
第一の実験において、IN又はIP経路のいずれかで接種されたいずれのSwissマウスも、いずれの臨床徴候を生じなかった。IP経路で感染させ、よって107の感染性ウイルス粒子を受けたHartleyモルモットだけが一過性の発熱及び体重の減少を5〜7日後に示したが、回復した。両方の経路により感染させたゴールデンハムスターは、運動及び平衡に困難を示し、感染の5〜8日後に迅速に死亡した。
【0091】
図1は、第二の実験において、ウイルスの連続希釈、すなわちIP経路により1〜104 pfu及びIN経路により10〜106 pfuを接種されたハムスターの用量-生存グラフを示す。感染と臨床徴候の発現と死亡との間の時間間隔は、IP感染ハムスターでより短かった。IP感染ハムスターは、感染の5〜9日後、震え及び四肢麻痺の発現の後<24時間で死亡した。逆に、IN接種された動物の過半数が、平衡異常、四肢麻痺、昏睡、単収縮及び呼吸困難を最終段階で示す進行性衰退を示した。動物の過半数が9〜15日の間に死亡した。しかし、6匹の動物は、その後、第18日に1匹、第21日に2匹及び第29日に3匹死亡した。IP及びIN経路による動物のLD50は、各動物あたりそれぞれ270 pfu及び47,000 pfuであった。
【0092】
感染後30日を超えて生存し、より低いウイルス用量を接種された(IP経路について1及び10 pfu/動物;IN経路について10及び102 pfu/動物)動物において、血清変換はなかった(データ示さず)。実際に、これらの動物はいずれも死亡せず、いずれの疾患の徴候も示さなかった。これに対して、より高いウイルス用量で感染させ、同じ用量を与えられて死亡した動物と同じケージで維持された生存動物は、高レベルの抗体を有していた(データ示さず)。にもかかわらず、これらの生存動物は、疾患の臨床徴候を示さなかった。
【0093】
非感染動物を感染した動物と一緒に飼育した伝染の研究(第三の研究)において、非感染動物のいずれも疾患又は血清交換の証拠を示さなかった(データ示さず)。
【0094】
ウイルス単離及びウイルスゲノム検出
一般に、剖検で採取された種々の動物の標本のRT-PCRは、ほとんどの組織及び尿でNiVウイルスゲノムが検出可能であることを示した(表2)。血清は顕著な例外であり、ウイルスゲノムについては一様に陰性であった。このため、ウイルス培養は血清については試みなかった。これらの2つの試験を行なった場合、ウイルス培養について陽性である組織の範囲はRT-PCRとよく一致し、陽性(positivity)のパーセンテージは特に鼻腔内感染させたハムスターにおけるウイルス培養について、より低かった。
【0095】
病理学的特徴
血管
血管の病理は、脳、肺、肝臓、腎臓及び心臓を含む多数の器官で見出された。大血管において、より病勢盛んな変化は、周囲炎症を有する巣状の経壁フィブリノイド壊死を特徴とする(図2A)。しかし、血管炎は、より少ない炎症性細胞を有し(図2E、3A)、まさに病巣の核濃縮及び核崩壊(図2E)を有して、よりとらえにくい。内皮から生じた多核シンシチウムは、1匹のハムスターで生じ、これは腹腔内接種の8日後に死亡した(図2C)。血栓症は、いくつかの血管のルーメンで見出すことができた(図4B)。IHC及びISHにより証明されるようなウイルス抗原及びゲノムは、内皮細胞及びシンシチウムにそれぞれ局在し、血管の中膜の平滑筋の基礎をなす(図2D、F)。ウイルスのヌクレオキャプシドは、血管壁で検出された。
【0096】
中枢神経系
脳は、他の器官に比べて、血管性及び実質性の病変という点で最も深刻に影響を受けた。血管炎の他に、最も顕著な特徴は、血管炎の近傍で通常見出されるニューロンにおいてであった。影響を受けたニューロンは、細胞質中で非常に多くの好酸性封入体を示した(図3C)。これらの封入体とともに、明らかな封入体を有さないニューロン細胞質、及びニューロン突起は、ウイルス抗原及びRNAの両方についてしばしば陽性であった(図3D〜F)。超微細構造としては、これらの封入体は、典型的にはパラミクソウイルスと関連するファジィタイプの線維状のヌクレオキャプシドの区画された塊からなっていた(図5A)。これらの封入体をNiV特異的抗体により免疫標識した(図5B)。核内封入体はみられなかったが、核IHC陽性の証拠があった(図3D、挿入)。
【0097】
その他の実質性変化は、虚血/梗塞及び浮腫の証拠を有する病巣領域に含まれた(図3B)。実質性及び髄膜の炎症は、一般に穏やかであり、場合によっては血管周囲のカフィング及び神経細胞侵食が観察された。まれに、IHC陽性が上衣細胞のライニング(図3E)、並びに髄膜及び脈絡叢(choroid plexus)に見出される単核細胞にみられた。脈絡叢ライニング上皮(choroid plexus lining epithelium)は、しかし、ウイルス抗原及びゲノムについては陰性であった。IHC及びISH陽性は、白質では観察されなかった。
【0098】
その他の器官
肺において、血管炎の血管としばしば結合した実質性炎症の小さい別々の小結節又はより集密的な領域がときどき観察できた(図4A、B)。炎症性細胞は、マクロファージ、好中球及びリンパ球の種々の混合物から主になる。IHC及びISHによりNiVに陽性な多核巨大細胞及び炎症性細胞は、まれであった。肺の実質のフィブリノイド壊死は、明白でない。気管支炎、多核シンシチウム又は肺の上皮のNiV感染のその他の証拠は見出されなかった。
【0099】
腎臓での糸球の病変はまれであったが、最も病勢盛んな病変は、糸球体毛細血管に血栓、周縁(peripheral)多核シンシチウム及び周囲炎症を有した(図4C)。ウイルス抗原は、不定期な(occasional)糸球体及び細管でのみ検出された(図4D)。いくつかの動物の腎臓では、腎杯に突き出す腎乳頭の被覆上皮は、ウイルス抗原の存在を一貫して示した(図4E)が、ISHは、同じ上皮において陰性であった。
【0100】
壊死のまれな病巣(rare focus)が脾臓において見られたが、血管炎または多核巨大細胞は観察されなかった。IHC及びISHは、細動脈周囲リンパ系細胞(periarteriolar lymphoid cells)において場合によっては陽性であった(図4F)。特異的な肝臓実質性病変は、ないようであった。心臓において、梗塞と関連した心筋炎はほとんど観察されなかった(図2B)。炎症又はウイルス抗原は、リンパ節又は鼻腔上皮で見出されなかった。
【0101】
NiVを接種された3種の動物、すなわちマウス、モルモット及びハムスターのうち、ハムスターが最も影響を受けやすいようであった。経路及び用量に応じて、感染させたほとんどのハムスターが深刻な疾患を発生した。感染させたハムスターから得られた組織の研究は、これが、ヒト急性NiV感染で見出される特徴のほとんどを示す、急性NiV感染について適切な動物モデルであることを示唆した。
【0102】
ハムスターは、IP又はIN経路のいずれによっても感染させることができたが、IPによる感染は、IN経路より動物を早く死亡させるようである。さらに、IP及びIN感染させた動物の間での広く共通性のないLD50用量により示されるように、非常に低いIP用量しか、同じ数の動物を死亡させるのに必要でなかった。このことは、IN感染させたNiVは感染が起こる前にガス消化管(aero-digestive tract)の粘膜バリアをおそらく透過しなければならないが、IP感染させたNiVは全身循環に直接、理論的には入ることができることから、驚くことではないだろう。
【0103】
感染したハムスター組織の組織病理学的研究は、血管、特にCNSにあるものが、壊死及び壁内の炎症を特徴とする血管炎を発生したことを示した。内皮及び平滑筋を含む血管壁の直接のウイルス感染の証明は、内皮多核シンシチウム形成の存在、並びにウイルスヌクレオキャプシド、抗原及びゲノムの血管壁での検出により提供された。血管炎の結果とほぼ同様に、血栓症及び血管閉塞が、脳及び心臓で、遠位の(distal)虚血及び微小梗塞を生じて発生した。肺及び腎臓の血管も、より少ない程度ではあるが血管炎に含まれ、梗塞は明らかではなかった。これらの知見は、ヒト感染について見出されるものと類似である(Wong et al; Am J Path. 2002. 161:2153-2167)。ヒト感染で報告されていない肝臓における血管炎が注目すべき例外であろう。
【0104】
虚血及び梗塞に加えて、CNSニューロンも、感染の証拠を、ニューロンでのウイルス封入体、抗原及びゲノムの存在により示した。ウイルス封入体は細胞質で主に見出され、典型的なパラミクソウイルス型のヌクレオキャプシドからなった。CNSの血管、実質及びニューロンでの発見により、CNSが急性NiV感染の主要な標的となり、このことは、病気の動物が顕著なCNS徴候、例えば麻痺、歩行及び平衡の異常を有したという事実により支えられる。ヒト感染の場合、CNS症状及び徴候は、非常に顕著であり、CNSは最も深刻に影響を受ける器官であった(Goohら N Engl J Med. 2000. 342:1229〜1235; Wongら; Am J Path. 2002. 161:2153〜2167)。
【0105】
ハムスターの腎臓において、血管炎及び糸球体の病変は、ヒトにおいて報告されたものと似ていた(Chuaら Lancet 1999. 354:1257〜1259; Wongら; Am J Path. 2002. 161:2153〜2167)。腎乳頭の被覆上皮におけるウイルス抗原の一貫した存在、しかしウイルスゲノムの不在は、尿中にもれたIHC検出可能なウイルスタンパク質の再吸収の可能性を示唆する。Williamsonらは、ヘンドラウイルス感染モルモットの膀胱での尿路感染の証拠を示したが、腎臓での上皮感染の情報はない。ウイルス抗原及びゲノムの脾臓の細動脈周囲リンパ系細胞での存在は、そこでウイルスの活性な複製が起こっていることを示唆する。ハムスターの心臓において、まれな梗塞は、ヒトの場合と同様に血管炎に関係すると考えられる(Wongら; Am J Path. 2002. 161:2153〜2167)。
【0106】
自然に(field)感染したか又は実験的に感染させたブタ及びネコ、自然に感染したイヌ及びウマについての知見を含むNiV感染させた動物についての限られた出版されたデータは、これら全ての動物において、全身性血管炎が共通の特徴であることを示した(Hooperら Microbes Infect. 2001. 3:315〜322)。しかし、これらの動物のいずれも、我々の研究のハムスターで説得力を持って示されるような、脳炎及びニューロン感染はなかったことがわかる。ブタ及びネコの場合、髄膜炎の証拠はあったが、明らかな脳炎の証拠はなく、ニューロン感染の明確な直接の証拠はなかった。イヌ及びウマにおいて、髄膜炎とは別に、巣状脳実質希薄化(focal brain parenchyma rarefaction)がみられたが、もし存在していたとしても、脳炎又はニューロンへの直接感染の存在についてのデータはない。よって、これらの動物は、顕著な血管炎、脳炎及びニューロンへの直接感染が特徴である急性ヒト疾患について重要なモデルではないようである。
【0107】
IHC及びISHによるウイルスの組織局在化は、試験した全ての実質器官において、ウイルス単離及び/又はRT-PCRにより確認された。概して、IN及びIP感染させた動物の両方におけるNiV感染の確認試験としては、RT-PCRがウイルス単離よりもより感度が高かった。IP感染させた動物に比べてIN感染させた動物からのウイルス単離のより低い割合は、IN感染させた動物のより長い生存に関係し得、これはおそらく、実質器官からのウイルスの効果的な免疫クリアランスに恵まれている。しかし、RT-PCRは、生存期間に関わらず、試験した全ての7匹の動物の血清において陰性であり、免疫系が循環からウイルスを浄化するのにより効果的であること又はウイルス血症が感染の早期に起こったことを示唆した。あるいは、ウイルス粒子は、感染した血液の白血球の内部に移送され得る。ハムスターでのさらなる研究が、このことを明確にするために必要であろう。
【0108】
以前のヒトでの研究において、多臓器及び散在性の血管の同時の関与、並びに血管炎、血栓症及び梗塞のような血管の病変が血管外の実質の病変よりも前に発生するとの知見に基づいて、ウイルス血症は早期に起こっていることも仮定されていた。(Wongら; Am J Path. 2002. 161:2153〜2167)。これらの発見は、同時の広範囲の器官の関与を示す我々のデータによっても裏付けられたことがわかる。
【0109】
RT-PCR及びウイルス単離により確認されたような尿でのウイルスの存在は、腎糸球体損傷とも深く関連している。ヒトの尿へのウイルスの排出は患者から報告されており、保健職員へのウイルス伝染の起こりうる手段であると仮定されていた。感染した分泌物の経口接種及び/又はエアロゾル吸入は、ブタからヒトへのウイルス伝染の原因であると考えられている(Parasharら J Infect Dis 2000. 181: 1755〜1759)。IN経路によるハムスターの感染が成功したことは、このことを支持するようである。
【0110】
急性NiV感染についての動物モデルの樹立は、特に早期の事象に関連するその病因をより理解するために道を開くはずである。なぜなら、NiVについての現在の知見は、主に、後期段階の疾患についてのものだからである。潜在的な抗NiV薬物及びワクチンは、該モデルにおいて有効性を試験することもできるだろう。免疫応答をより理解することにより、NiVが、麻疹感染において公知の現象である免疫抑制を引き起こし得るかについて探求することを可能にする。再発NiV脳炎についての動物モデルは未だ獲得しにくいが、ついに回復した多数の感染ハムスターを長期間追跡することにより、再発脳炎のいくつかの場合を生み出すことができるだろう。なぜなら、ヒトの再発脳炎の罹患率は低いからである(Tanら Ann Neurol. 2002. 51:703〜708)。
【0111】
実施例2:リアルタイムPCRを用いたヘニパウイルスRNAの特異的及び感度の高い定量アッセイ
ニパウイルスはクラス4作用因子に分類されており、全ての試験は、リヨンのバイオセーフティーレベル(BSL) 4 ジャン・メリュー実験室で行なった。バイオセーフティー手順に従って、RNA抽出物だけがBSL4実験室の外で試験された。
【0112】
細胞及びウイルス
ニパウイルス(患者の脳脊髄液から単離)は、Kaw Bing Chua博士及びSai Kit Lam博士(Kuala Lumpur, Malaysia)からの寛大な寄贈品であった。ウイルスストックは、BSL-4実験室内で、ベロ-E6細胞を0.01プラーク形成単位(pfu)/細胞の感染多重度(MOI)で感染させ、ウイルスを感染後24時間で回収することにより調製した。ウイルス力価は2×107 pfu/mlであった。
【0113】
ウイルス産生の時間経過は、0.01のMOIでニパウイルスを感染させたベロ細胞について監視した。Lab-tek培養プレート(Nalge Nunc International)中の亜集密細胞のウェルに、ニパウイルス又は模擬感染で感染させた。37℃で1時間のインキュベーションの後、ダルベッコの最小必須培地(DMEM)で細胞を3回洗浄し、各ウェルに2%胎児ウシ血清(FCS)含有DMEM 0.5 mlを加えた。各ウェルの上清を、4日間の間毎日回収し、エッペンドルフチューブに移し入れ、2000 rpmで5分間遠心分離し、次いで2つの新しいチューブに一定量で入れた。感染させたか又は模擬感染させた細胞の上清を含む一連のチューブをRNAの抽出及び定量のために処理し、他をウイルス滴定のために用いた。
【0114】
各ウェル中の細胞単層を、10%ホルマリン中で20分間、及び0.1% Triton X100中で5分間固定した。細胞をPBSでリンスし、抗ニパ抗体を含有するヒト回復期血清の希釈物と37℃で30分間インキュベートした。次いで、細胞をリンスし、0.1‰ヨウ化プロピジウムの溶液を含むフルオレセイン結合抗ヒトIgG抗体とインキュベートした。最後のリンスの後に細胞をUV顕微鏡(Leica)下に観察した。
【0115】
動物
5匹の7〜14週齢のゴールデンハムスター(Janvier, Le Fenest St Isles, France)を、5×104 pfu (約100×LD50)で腹腔内感染させた(Wongら 2003. Am. J. Pathol.)。血液試料を、感染後第5日に各動物から眼穿刺により採取し、血清を使用時まで-80℃で凍結させた。動物の取り扱いのフランスでの規則及びBSL4封鎖での作業に課された手順を遵守した。
【0116】
ウイルス滴定
ウイルスは、ベロ細胞でのプラークアッセイにより滴定した。簡単に、亜集密のベロ細胞を含む6ウェルプレートを、5% CO2インキュベータ中に、1:10を出発希釈として用いる(ハムスター血清について1:100)ウイルスストックの連続希釈物1 mlと、37℃で1時間インキュベートした。FCSを含まないDMEMで細胞を2回洗浄し、5% FCS含有DMEM中の1.6%カルボキシメチルセルロース2 mlで覆った。37℃で5日間インキュベートした後、細胞を10%ホルマリンで固定し、メチレンブルーで染色して水でリンスした。プラークを計数し、力価をpfu/mlで表した。
【0117】
RNA抽出
ウイルスRNAを、ニパウイルス感染させたベロ細胞の上清140μl又はハムスター血清20μlから、RNA抽出キット(QIAamp Viral RNA Mini Kit, Qiagen Inc., Valencia CA, USA)を製造業者の使用説明書に従って用いて抽出した。抽出物をバッファーAVE 60μlに再懸濁し、一定量に分けて、RT-PCR増幅を行う前に-80℃で貯蔵した。
【0118】
陽性ニパウイルスコントロールの調製
ニパNP全遺伝子を、T7プロモータを有するPCR TAクローニングベクターpDrive (Qiagen)にクローニングした。挿入断片の配列及び方向をDNA配列決定(Big Dye Terminator, Applied Biosystems, USA)により確認した。プラスミドpDrive-NP-NiVを、NP遺伝子の端で直線化し、次いでGeneclean (登録商標) IIキット(Q-Biogene)を用いて精製し、その後T7 RNAポリメラーゼ(Invitrogen)を用いてインビトロ転写した。RNA転写産物は、RNase-フリーDNase I (Roche diagnostics)で処理してDNA鋳型を除き、次いでRNA NOW (Ozyme)で抽出してエタノール沈殿させた。RNAを水に再懸濁し、-80℃で貯蔵した。鋳型DNAが除去されたことを確実にするために、定量PCRアッセイをTaqMan (商標) PCRシステム(TaqMan (商標)ユニバーサル PCR Master Mix 200RXN, Applied Biosystems)を用いてRNaseフリーDNase Iでの処理の前後に行なった。RNAの量を分光光度計で測定し、測定した値を用いてリアルタイムRNA定量の標準曲線を得た。
【0119】
プライマ及びTaqMan (商標)プローブ
ニパNP遺伝子のプライマ及びプローブは、Primer Express (商標)プログラム(Perkin-Elmer, Applied Biosystems, USA)を、推奨される条件に従って用いて設計した。フォワードプライマ(Ni-NP1209 5'GCAAGAGAGTAATGTTCAGGCTAGAG 3'-配列番号1)及びリバースプライマ(Ni-NP1314 5' CTGTTCTATAGGTTCTTCCCCTTCAT 3'-配列番号2) は、105 bpの断片を増幅する。蛍光プローブ(Ni-NP1248Fam 5' TGCAGGAGGTGTGCTCATTGGAGG 3'-配列番号3)は、PCRプライマの内部の配列にアニールするように設計した。蛍光レポーター色素6-カルボキシ-フルオレセント(fluorescent) (FAM)をプローブの5'末端に配置し、クエンチャー6-カルボキシ-テトラメチル-ローダミン(TAMRA)を3'末端に配置した。
【0120】
RT-PCR TaqMan (商標)反応
定量RT-PCRアッセイを、ABI PRISM 7700 TaqMan (商標)シーケンスディテクターを用いて行なった。ワンステップRT-PCRシステム(TaqMan (商標) ワンステップPCRマスターMix試薬キット, Applied Biosystems)を、連続サーマルサイクルのために用いた。マスターミックス反応物を調製して、薄壁microAmp光学チューブ(ABI PRISM (商標), Applied Biosystems)に、20μlの一定量又は22.5μlの一定量で分配した。次いで、ハムスター血清からのRNA抽出物5μl又はストックウイルス若しくは感染させた細胞の上清のいずれかからの2.5μl、又はRNA転写産物2.5μlを各チューブに加えた。最終反応混合物は、900 nMの各プライマ及びプローブ200 nMを含んでいた。増幅の前に、RNAを50℃で30分間逆転写させた。これに続いて、94℃で5分間の変性1サイクルを行った。次に、PCR増幅を94℃で15秒及び60℃で1分間を45サイクル行なった。この第二の工程の最後に蛍光を読み取ることにより、RNA量の連続モニタリングが可能であった。閾値サイクル(Ct)は、放射された蛍光が「検出閾値」(Dt)とよばれる固定された限界を通過する前のサイクル数である。Dtの決定は、ウイルスRNAが検出される最低レベルに基づき、標準曲線の直線性の範囲内に残った。よって、最初に存在する標的数のlog10は、Ct値に比例し、標準曲線を用いて測定できる。
【0121】
その質が確認されている麻疹ウイルスCR68株からのRNAを、ネガティブコントロールとして用いた。
これらの実験は、汎用性があり、再現性が高くかつ時間が経過しても安定なニパウイルスRNAの検出及び定量アッセイを示す。これを達成するために、ニパウイルスTaqMan (商標) RT-PCRアッセイを開発した。
【0122】
アッセイの感度及び特異性
ニパウイルス検出アッセイの感度及び特異性を、ニパウイルスストックから抽出したRNAの希釈物を含む一連の試料を用いて評価した。チューブ当たり1.2×105 pfuから0.12 pfu (容量2.5μl中に)を含む10倍の一連のウイルス希釈物を試験した。閾値サイクル(Ct)値を、この一連の希釈物の増幅プロットから算出した(図5)。図6は、検出が実行当たり1.2×105 pfuから1.2 pfuまで直線であったことを示す。このことは、広い範囲のウイルス力価について増幅試験が実行できること及びその感度の両方を示す。試験を3回繰り返したときに同様のデータが得られ、このアッセイの再現性を強調している(データ示さず)。アッセイの特異性は、ニパプライマ及びプローブとともに麻疹ウイルスRNAを用いて増幅しなかったことにより証明された(データ示さず)。
【0123】
アッセイを標準化するために、プラスミドpDrive-NP-NiVからインビトロで転写させた既知量のRNAの連続希釈を、RT-PCR TaqMan (商標)により試験した。異なる日に調製した転写産物RNAを用いる3つのアッセイを用いて、標準曲線を描いた(図7)。曲線の直線性により、反応当たり109〜103分子のRNAの定量を可能にした。さらに、低い偏差(R2 = 0.9834)は、アッセイの再現性が高いことを示す(図7)。2つのRNA転写産物について得られたCt値の比較により算出されたアッセイ間の変動係数は、0.3〜2.2%の間で変動することがわかった。
【0124】
感染させた細胞上清中のウイルス負荷の定量
ニパウイルスRNAの定量のための我々のTaqMan (商標) RT-PCR法の精度を決定するために、プラークアッセイにより得られた感染性ウイルス力価を、RNA転写産物標準曲線を用いてTaqMan (商標) RT-PCRにより算出されたゲノム等価物の量と比較した。ベロ細胞を、0.01 pfu/細胞の感染多重度でニパウイルスに感染させ、感染後1、2、3及び4日に採取した細胞上清を分析した。穏やかなウイルス誘導細胞変性効果は感染後1日で既に観察され、細胞融合の数及び強度は、感染後4日で完全な細胞破壊が完了するまで毎日増加した(図8)。培地中の感染性ウイルス及びウイルスRNAの量は、各感染について第3日まで増加し、ついで減少した(図9)。さらに、感染性粒子の数及びRNAゲノムの数の間のRNA/pfu比は一定でなく、感染の時間とともに増加した(表1)。
【0125】
【表1】

【0126】
試料中のウイルスRNA分子の数の精度を確かめるために、感染後第3日に抽出したRNAの10倍希釈物をTaqMan (商標)により分析し、pfuの理論値と比較した(表2)。第3日を選択したのは、この日がRNA及び感染性ウイルス産生のピークに相当したからである。感染後第3日での希釈試料中で得られたRNA/pfu比は、ウイルスRNAの量とは逆に増加した。
【0127】
【表2】

【0128】
ニパウイルスに感染させたハムスターの血清中のウイルスRNAの検出
我々のニパTaqMan (商標)アッセイが生体試料中のウイルスRNAの検出及び定量を許容するかを評価するために、ニパウイルスに感染させた5匹のハムスターの血清を、プラーク滴定及びリアルタイムRT-PCRにより分析した。以前の研究では、ハムスターでのウイルス血症は感染後5日で検出可能であることが示されている。結果(表3)は、ウイルスRNAが3匹の動物で、感染性ウイルスが2匹の動物で検出されたことを示す。ウイルスゲノム分子の数は、生ウイルスの数より約3 log高かった。
【0129】
【表3】

【0130】
ハムスターは、動物の50%を死亡させるのに必要な用量の100倍で腹腔内感染させた。増幅プロットの定量は、RNA転写産物を用いる曲線により算出した。
【0131】
開発されたアッセイは、ニパウイルス感染の迅速で正確で定量的な診断を提供する。この試験は、臨床又は自然(field)の標本中のニパウイルスの病因を迅速に確認することが必要な実験室にとって有用なツールであり得る。ニパウイルスは人にとって病原性が高く、感染した個体の40%より多くが死亡している(Gohら 2000, New Engl J Med. 342:1229〜35; Chongら 2002, Can J Neurol Sci. 29:83〜7; Leeら 1999, Ann Neurol. 46:428〜32)。ブタにおいては死亡率は低いが、感染率が100%に近づくので、ニパウイルスの蔓延をとめるために、100万頭を超えるブタが1999年にマレーシアで屠殺され、このことは国の養豚産業に壊滅的な衝撃を与えた(Mohd Norら 2000, Rev Sci Tech Off Int Epiz. 19(1):160〜5; Chua, 2000, Science. 288:1432〜5)。前回のマレーシア及びシンガポールでの流行の後にヒト又はブタの症例は同定されていないが、2001年にカンボジアで抗ニパ抗体を保持するプテロイドコウモリが存在していたことは、東南アジアでウイルスがいつでも再出現し得ることを示している。ニパ様疾患は、2001年にバングラデシュ及び北インドで報告されたが、病因物質の性質に関する正確なデータはまだ入手可能になっていない(ProMed 2002 Nipah-like virus - Bangladesh (2001) : Archive number 20020830.5187; ProMed 2003 Nipah-like virus - India (North Bengal) :2001 Archive number 20030106.005027)。このウイルスの陽性の検出は、適切な管理処置を実行するのに必要である。しかし、この作用因子に対する療法又はウイルスがないので、ウイルス単離及び検出のための細胞培養でのウイルスの増殖、血清中和並びにELISAのための抗原の調製を、バイオセーフティーレベルBSL-4実験室で行うことが義務付けられている。このような制限は、ヒトでの脳炎の研究並びに野生動物及び家畜の生体標本でのウイルス検出の両方を制限するであろう。実験者の安全を確保するために、ニパウイルスの診断的リアルタイムPCRアッセイの使用が標本の予備検出のために不可欠な安全なアプローチであり、標本は次いで増殖のためにBSL-4実験室で取り扱うことができる。
【0132】
TaqMan (商標)アッセイは、水痘-帯状疱疹ウイルス、ヒトパピローマウイルス、C型肝炎ウイルス、デングウイルス、エプスタイン-バーウイルス又はインフルエンザウイルスのような広範囲のウイルスを診断するのに開発され(Hawramiら 1999, J Virol Methods. 79:33〜40; Josefssonら 1999, J Clin Microbiol. 37:490〜496; Morrisら 1996, J Clin Microbiol. 34:2933〜2936; Laueら 1999, J Clin Microbiol. 37:2543〜2547; Leungら 2002, J Immu Methods. 270:259〜267; Schweigerら 2000, J Clin Microbiol. 38: 1552〜1558)、この技術は、いくつかの生命を脅かす蚊媒介の動物地方病及び出血性ウイルス疾患の診断を補助するのに用いられている(Lanciottiら 2000, J Clin Microbiol. 38:4066〜4071; Garin, 2001, Microbes Infect. 3:739〜745; Garciaら 2001, J Clin Microbiol. 39:4456〜4461 ; Houngら 2000, J Virol. 86:1〜11)。リアルタイムRT-PCRは、プラークアッセイ及びRT-PCRに対して、迅速で定量的で特異的な結果を提供する点において利点を有する。
【0133】
ニパウイルス用に開発されたTaqMan (商標)アッセイは、反応当たり1.2×105 pfuから1.2 pfuまで(200 pfu/mlの閾値に相当)のウイルス濃度の広い範囲を検出した。異なるウイルスについての他の研究は、類似の検出閾値を示している(Houngら 2000, J Virol. 86:1〜11; Lanciottiら 2000, J Clin Microbiol. 38:4066〜4071)。ニパTaqMan (商標)アッセイの感度は、RT-PCRで得られたものと類似であることがわかった(表2)。
【0134】
種々の時間に異なるRNA調製物を用いて行なったいくつかのアッセイからの結果においてわずかな変動しか観察されなかったので、TaqMan (商標)アッセイの再現性は高かった(図7及び表2を参照)。よって、試験の信頼性は、RNAの調製に主に依存するであろう。ニパウイルスTaqMan (商標)アッセイの特異性は、ニパウイルス特異的プライマ及びプローブを用いたときに麻疹ウイルスRNA増幅がなかったことにより証明された。麻疹ウイルスは麻疹ウイルス属(morbilivirus)であり、これはヘニパウイルスに最も近い属である。TaqMan (商標)アッセイは、最近、ニパウイルスとN遺伝子において78.4%のヌクレオチド相同性を示すヘニパウイルスであるヘンドラウイルスについて開発された(Smithら 2001, J Virol Methods. 98:33〜40; Wangら 2001, Microbes and Infection 3, 279〜287)。Primer Expressプログラムによるニパウイルスプローブ並びにヘンドラウイルスN遺伝子のフォワードプライマ及びリバースプライマの親和性の解析は、この試験がニパウイルスについても特異的であるはずであることを示唆している(Harcourtら 2000, Virology. 271:334〜349)。ヘニパウイルス属でのニパウイルスTaqManアッセイの特異性は、ヘンドラウイルスを用いて証明した。ニパウイルス特異的プライマ及びプローブを用いてヘンドラウイルスRNAが増幅されなかったことは、ニパウイルスについての試験の特異性を確認している。
【0135】
RNA転写産物は、定量アッセイ用に安定な再現性のある信頼性が高い標準物質として開発された。ニパウイルスRNA定量の直線の範囲は、少なくとも109〜103であった。類似の結果がヘンドラウイルスから得られた。直線性は、未希釈のヘンドラウイルスRNAから1/107まで観察された(Smithら 2001, J Virol Methods. 98:33〜40)。この直線性の範囲は、広範囲のウイルス力価の検出を許容し、臨床標本中及び細胞培養物中のニパウイルスを、試料を希釈する必要なく定量的に検出するはずである。驚くべきことに、RNA分子 / pfuの比は、ウイルスが試験管中で希釈されたときに増加し(表2)、多量のRNA分子がDNA増幅効率に影響し得ることを示唆した。このことは、多量のRNA鋳型を含む試料中で利用できる試薬がないことにより説明できるだろう。
【0136】
TaqMan (商標)アッセイにより算出されたウイルスゲノム分子の数は、プラーク滴定により測定された感染性ウイルス粒子の対応する数よりも約3 log高いことがわかった。デングウイルスについて、各感染性pfuが少なくとも100又はそれより多いゲノム等価物を含むことも見出され、リフトバレー熱又はプウマラ(Puumala)ウイルスについては2〜3 logの違いが見られた(Houngら 2000, J Virol. 86:1〜11; Garciaら 2001, J Clin Microbiol. 39:4456〜4461; Garin, 2001, Microbes Infect. 3:739〜745)。この比は、欠陥、未成熟又は非活化粒子のいずれかの非感染性ウイルスの存在、あるいは損傷をうけた感染細胞から放出されたヌクレオ粒子としてキャプシドに包まれたRNAによる。実際に、感染後に種々の時間で算出されたRNA/pfu比は、感染の時間とともに増加し、最高の比は第4日に観察され、細胞変性効果を反映した(図8)。
【0137】
これらのデータは、ニパTaqMan (商標) RT-PCRアッセイが、感染したハムスターからの血清試料中のニパウイルスをモニターするのにも適正であることを示す。血清は感染後第5日に採取されたが、これは、この日が動物でウイルスが検出された唯一の日であったからである(V. Guillaumeら, J. Virol. 2004. 78: 834〜840)。しかしながら、リアルタイムPCR及びプラーク滴定はともに、5匹のハムスターのうち2匹でニパウイルスを証明することができず、これらの動物が短期又は検出不能なウイルス血症のいずれかに罹患していたであろうことを証明している。ハムスターH3において、ウイルスRNAは検出されたがウイルスは検出されなかった。しかし、ハムスター血清中のウイルス力価は、むしろ低く、両方の方法の検出限界に近かった(リアルタイムRT-PCR及びプラーク滴定についてそれぞれ200 pfu/ml及び100 pfu/ml)。
【0138】
実施例3:ヘニパウイルスに対するワクチン接種及び受動防御
以下において、ワクシニアウイルス組換え体において2つのNiV糖タンパク質(G及びF)を発現させて、防御へのそれらの貢献度を評価する。これを行うために、ニパウイルス感染の後に急性脳炎で死亡した動物のハムスター動物モデルを用い、実施例1のようにして示した(Wongら Am. J. Patol. 2003. 163:2127〜2137)。このモデルを用いて、2つのニパウイルス糖タンパク質のいずれかを発現するワクシニア組換え体でのワクチン接種が、致命的な感染から動物を保護する。さらに、免疫化された動物からナイーブ動物への抗体の受動的移動が、致命的なニパウイルス攻撃からナイーブ動物を保護する。
【0139】
細胞及びウイルス
ベロE6、RK13及びBHK 21細胞を、10%胎児ウシ血清含有DMEM培地(Gibco)で維持した。患者の脳脊髄液から単離したニパウイルスを、フランス、リヨンのジャン・メリューBSL-4実験室のKB Chua博士及びSK Lam博士(University of Malaya, Kuala Lumpur, Malaysia)から、ベロ細胞での2継代の後に受領した。ベロ細胞での第3継代の後にウイルスストックを作製した(P4条件下に)。上清を、感染の2日後に、ベロ細胞が融合及びシンシチウム形成を示したときに回収した。6ウェルプレートの各ウェルにおいて上清の10倍の連続希釈200μl (ウェル当たり106のベロ細胞を含む)を37℃で1時間インキュベートすることにより、ウイルスストックを滴定した。各ウェル中の細胞を、DMEMで2回洗浄し、2%胎児ウシ血清含有DMEM中の1.6%カルボキシメチルセルロース2 mlを各ウェルに加えた。プレートを37℃で5日間インキュベートし、ウェルをリン酸バッファーpH 7.4 (PBS)で洗浄し、10%ホルマリンで20分間固定し、洗浄してメチレンブルーで染色した。0.01 pfu/細胞の感染多重度(m.o.i.)でベロ細胞を感染させた後、ウイルス力価は2×107 pfu/mlに達した。
【0140】
ワクシニアウイルス及び組換えウイルスのストックを、BHK 21細胞で増殖させた。細胞を0.01 pfu/細胞で感染させ、細胞を3日後に回収し、超音波破砕して-80℃で貯蔵した。ウイルスをベロ細胞において滴定した。
【0141】
NiV糖タンパク質遺伝子のクローニング及びワクシニア組換え体の構築
2つのウイルス糖タンパク質をコードするNiV遺伝子をクローニングするために、NiVで感染させたベロE6細胞を、製造業者の使用説明に従ってRNA Nowを用いて抽出し、RT-PCRに付した。Gタンパク質のために用いた5'及び3'のプライマは、それぞれ5'-CGCGGATCCAGTCATAACAATTCAAG-3' (配列番号4)及び5'-CGCGGATCCGAGGTTGATTTTTATG-3' (配列番号5)であった。Fタンパク質用のプライマは、5'-CGCAGGATCGAAGCTCTTGCCTCG-3'(配列番号6)及び5'-CATCAATCTGGATCCACTATGTCCC-3' (配列番号7)であった。得られたcDNAをClontech Advantage PCRクローニングキットを製造業者の使用説明に従って用いてpT-Adv プラスミドにクローニングした。核酸配列分析により、NiVについての出版された核酸配列分析(Chanら 2001. J Gen Virol. 82:2151〜5)に比べると、NiV.G遺伝子の位置683に1ヌクレオチドの違い(AからG)があることが明らかになったが、この変化は、一次配列に関する限りはサイレントである。VV組換え体は、Perkusら(Perkusら 1989. J. Virol. 63:3829〜3836)により記載された宿主域選択系を用いて作製した。簡単に、発現されるべき遺伝子を、pT-AdvプラスミドからBam HIを用いて挿入断片を切り出すことによりサブクローニングし、KILワクシニア遺伝子も含むpCOPAK H6プラスミド(Perkusら 1989. J. Virol. 63:3829〜3836)のBam HI部位にクローニングした。ベロ細胞を、VVのNYVAC株(Tartagliaら 1992. Virology. 188:217〜232)で感染させ、pCOPAKプラスミドでトランスフェクションさせた。VV組換え体をRK13細胞で選択した。
【0142】
抗体決定
ハムスターからの血清を、酵素結合免疫吸着検査法(ELISA)により、NiV抗体の存在について個別に調べた。NiV抗原の粗抽出物を、0.01 pfu/細胞のm.o.i.で24時間感染させたベロ細胞から調製した。細胞をPBSで洗浄し、1 % Triton X100を含むPBS (107細胞/ml)中で、4℃で10分間溶解させた。細胞溶解物を各回30秒間、2回超音波破砕して細胞を完全に破壊し、5000 rpmで4℃で10分間遠心分離した。上清を-80℃で凍結させた。非感染ベロ細胞を同様に処理してコントロール抗原を得た。ニパ抗原の交差滴定を、回復期のニパ感染患者からの血清を用いて行ない、最高のO.D.の読みを示す希釈に相当する抗原力価を決定した。
【0143】
中和抗体力価は、ベロ細胞において決定した。1/20から始まるPBSでの血清希釈物を、96ウェルプレートで50 pfuのNiVと混合し、37℃で1時間インキュベートし、次いで20,000ベロ細胞を加えた。プレートを5日後に読み、ウイルス力価の50%を減少させる血清の希釈を記録した。
【0144】
プライマ及びTaqMan (商標)プローブ
用いた条件は、上記の実施例2に記載されたものである。簡単に、プライマ及びプローブを、プログラムPrimer Express (商標) (Perkin-Elmer, Applied Biosystems, USA)を推奨される条件に従って用いて設計した。NP遺伝子中の標的領域を選択したフォワードプライマ(NiV.NP1209 5'-GCAAGAGAGTAATGTTCAGGCTAGAG-3' (配列番号1))及びリバースプライマ(NiV.NP1314 5'-CTGTTCTATAGGTTCTTCCCCTTCAT-3' (配列番号2))は、105pbのNiV.NP遺伝子を増幅する。蛍光プローブ(NiV.NP124SFam 5'-TGCAGGAGGTGTGCTCATTGGAGG-3' (配列番号3))を設計してPCRプライマの内側の配列にアニールするように設計した。蛍光レポーター色素である6-カルボキシ-フルオレセイン (FAM)を、プローブの5'末端に置き、6-カルボキシ-テトラメチル-ローダミン(TAMRA)を3' 末端に置いた。
【0145】
定量RT-PCRアッセイを、ABI PRISM 7700 TagManシーケンスディテクターを用いて行なった。ワンステップRT-PCRシステム(TagManワンステップPCRマスターMix試薬キット, Applied Biosystems)を、連続サーマルサイクルのために用いた。マスターミックス反応物を調製し、薄壁microAmp光学チューブ(ABI PRRSM (商標), Applied Biosystems)中に201の一定量又は22.5μlの一定量に分配して、RNA量の連続モニタリングを可能にした。次いで、血清からの5μlのRNA抽出物又は2.5μlのRNA転写産物を各チューブに加えた。最終反応混合物は、900 nMの各プライマ及び200 nMのプローブを含んでいた。増幅の前に、RNAを50℃で30分間逆転写させた。これに続いて、94℃で5分間の変性サイクルを1回行なった。PCR増幅は、94℃で15秒及び60℃で1分を45サイクル行なった。
【0146】
ハムスターの免疫化
防御研究のために、近交系ゴールデンハムスター(Janvier, Le Fenest St. Isles, France)に、2回(1ヶ月離す)、G又はF NiV糖タンパク質のいずれかを発現するVV組換え体107 pfu又は共免疫化(co-immunization)に用いられる場合は各組換え体5×106でワクチン接種した。最後の免疫化の3ヶ月後に動物を攻撃感染させた。
【0147】
F及びG糖タンパク質に対するポリクローナル単一特異性血清を得るために、ハムスターを第0日及び第14日にVV組換え体107 pfuで、続いて第28日に、超音波破砕したVV組換え体感染BHK 21細胞(+フロイント完全アジュバント)で、及び第42日に同じ抗原(+フロイント不完全アジュバント)で免疫化した。最後の免疫の14日後に動物から採血し、抗体をELISA及び中和により測定した。
【0148】
ワクシニアでのNiV糖タンパク質の発現
ワクシニアウイルスから発現されたNiV G又はFタンパク質を、インビトロで、生物活性タンパク質の発現について試験した。VV-NiV.G 又はFのいずれかで感染させたHeLa細胞を、原形質膜でのNiVタンパク質の発現についてFACScan分析により調べた。両方のウイルス糖タンパク質は、細胞表面で発現された(図10)。HeLa細胞を両方のワクシニア組換え体で感染させたとき、細胞融合(シンシチウム形成)が誘導された(図11)。
【0149】
G又はFを発現するVV組換え体でのハムスターの免疫化は、致命的な感染に対して防御する。
ハムスターを107 pfuのVV-NiV.G若しくはFのいずれか又は2つの併用(各組換え体5×106 pfu)で皮下免疫化した。1ヶ月後、動物を同じ用量のワクシニア組換え体で追加免疫した。NiVについて我々が開発した動物モデルにおいて、ハムスターへの我々のNiV単離体の腹腔内接種は、7〜10日後に致死脳炎を誘導する(実施例1及び図1を参照)。VV-NiV.G, -F又はG+Fでワクチン接種された動物を、最後の免疫化の3ヶ月後にNiVで攻撃したとき、死亡に対して完全な防御があった(図12)。攻撃の後に、ELISAで測定された中和及び抗体のレベルはともに、全てのワクチン接種された動物において増加した(図13)。ハムスターからの血清についてのさらなる研究は、コントロールの非免疫化動物において、ウイルスの存在が感染の後期(第5〜6日)でしか検出できなかったことを示した。ワクチン接種した動物ではウイルスが検出されなかった(表4)。
【0150】
【表4】

【0151】
VV-NiV.G及び-F組換え体で免疫化したハムスターからの血清は、ナイーブハムスターを致死NiV攻撃から受動防御する。
防御における体液性免疫応答の重要性を詳細に分析するために、ハムスターをワクシニア組換え体で過剰免疫し(材料及び方法を参照)、NiVに対する最高レベルの中和抗体を含む血清を持つ動物をプールした(160中和単位/ml)。ハムスターに、G若しくはF NiV糖タンパク質又は2つの混合物のいずれかに指向された抗血清0.2 mlを腹腔内注射により与えた。1時間後に動物をウイルスで攻撃し、24時間後に血清0.2mlを受動伝達した。2ヶ月間、臨床徴候についてハムスターを観察した。抗血清(単一特異性ポリクローナルG又はF)又はこれら2つの混合物のいずれかを受けた動物は、致死NiV感染から防御された(図14)。感染後、ELISAでのNiVに対する血清抗体レベルは強く誘導された(図15)。
上記のことは、NiV感染に対する防御で役割を演じ得る免疫学的パラメータを示す。
【0152】
VV.G又はFのいずれかでワクチン接種されたハムスターは、致死感染から完全に防御された。このプロセスにおいて体液性応答が寄与することを確認するように、攻撃の前に受動伝達された過剰免疫血清により、ナイーブ動物も防御されることが示された。よって、動物モデルを用いて、上記のことは、致死NiV感染に対して能動的及び受動的の両方で保護することが可能であることを示す。しかし、能動及び受動の両方の免疫において、NiVに対する抗体応答は強く刺激され、ウイルスがワクチン接種された動物で複製されたことを示唆する。しかし、血清中のウイルスを検出する試みは成功しなかった。コントロールの非免疫化マウスにおいて、ウイルスは、瀕死の動物の血清でのみ検出可能であった。他のいくつかのパラミクソウイルス感染において観察されるように、ウイルスが主に細胞内(cell-associated)であることが考えられる。
【0153】
ヒトにおいて、感染の再発及び遅発発症の症例はともに観察されている(Limら 2003. J. Neurol. Neurosurg. Psychiatry. 74:131〜133; Tanら 2002. Ann Neurol. 51:703〜708; Wongら 2001. J Neurol Neurosurg Psychiatry. 71:552〜554)。これらの状況において、感染の免疫生物学はわかっていない。これらの遅発の病理は、我々の攻撃された免疫動物では、攻撃後5ヶ月まで観察されていない。同様に、受動的に防御された動物において、遅発の疾患は観察されなかった。しかし、インビボでの抗体防御の下限又は感染が一旦開始された動物の受動免疫の効果は測定されていない。
【0154】
明らかに、本発明の種々の変形及び変更が、上記の教示に鑑みれば可能である。よって、添付の請求項の意図する範囲内で、本発明は、本明細書に具体的に記載されたより他であっても行うことができることが理解される。
【0155】
実施例4:ニパウイルスに対するモノクローナル抗体の産生及び反応性
ニパウイルス感染の病理を研究するために、我々はハムスターモデルを樹立した(請求項の一部分)。ニパウイルスでの感染に続いて、動物は、ヒトにおいて見られるのと類似の病理を示しながら脳炎で死亡した。さらに、これらの動物が、糖タンパク質(G又はF)のいずれかを用いるワクチン接種か又はこれらの抗原の一つに指向された抗血清を受動的に用いるかのいずれかにより防御され得ることを示した(請求項の一部分)。ヘニパウイルスに対して利用できる治療がまだないことから、我々は、ヘニパウイルスに感染した個体の予防を開発する免疫治療的アプローチを開発する。
【0156】
我々は、インビトロでニパウイルスの感染性を中和する、NiV G及びF糖タンパク質に対するモノクローナル抗体(mAb)のバンクを開発した。さらに、ある特定の抗NiVF mAbは、ヘンドラウイルスを中和する。
【0157】
現在の状況及び入手可能な材料
我々は、G又はFを発現するニパウイルスタンパク質に対して得られたバンクから、30のmAbの特徴づけを行なった。そのうち17がNiFに対するもので、13がNiGに対するものである。ウイルス中和に基づいて、あるものを本研究に選択した。抗NiGはいずれもヘンドラウイルスを中和しなかったが、抗NiFはHeVを中和したことが記載される。これらのNiV mAbにより認識されるエピトープを、競合ELISA及びエスケープ変異株の配列決定により研究した。最初の研究のために選択したmAbの特性は、次に示すとおりである。
【0158】
【表5】

【0159】
NiV感染後の免疫応答の分析のために、ワクシニアウイルス中でG、F及びNP NiVタンパク質を発現させた。感染させた細胞溶解物から得られたこれらの抗原を、ELISA試験で用いて抗原特異的応答を測定した。
【0160】
Balb/cマウスを、ニパウイルスG又はFタンパク質のcDNAを含む発現プラスミドVIJで免疫した。これは、遺伝子銃(BioRad)技術を用いて行なった。マウスを、ニパウイルスG又はFタンパク質をコードするワクシニア組換え体で追加免疫し、この追加免疫の3〜4ヶ月後に、マウスに、照射を受けたニパウイルスを感染させたベロ細胞を融合の3日前に注射(i.p.)した。ハイブリドーマを、ニパウイルスに感染させたベロ細胞及び非感染のベロ細胞でIgGを分泌するハイブリドーマについてスクリーニングした。
【0161】
我々は、中和により全てのNiV mAbを、そして競合ELISA及びエスケープ変異株の配列決定によりいくつかのNiV mAbを特徴付けた。概して、我々の研究は、今までのところ、F又はGタンパク質には、認識される単一の主要エピトープがおそらく存在することを示し、エスケープ変異株からのデータは異なるmAbが種々の程度の領域をオーバーラップすることを示唆している。
【図面の簡単な説明】
【0162】
【図1】2つの経路を介してニパウイルスに感染させた7〜14週齢のハムスターの生存グラフ。
【図2】急性ニパ感染における血管及び実質性の疾患。
【図3】急性ニパ感染における大脳病理。
【図4】A及びB:血管炎に関係する肺の実質の炎症及び血栓症の血管。C:腎糸球体の周辺での血栓、炎症及びシンシチウム形成を特徴とする腎炎。D:ウイルス抗原が、糸球体の細管において検出された。E:腎臓の乳頭突起を覆う上皮で見出されたウイルス抗原。F:脾臓の白脾髄のリンパ系細胞において示されたウイルス抗原。
【図5】TaqMan (商標)リアルタイムRT-PCRによるニパウイルスRNAの検出。
【0163】
【図6】ニパウイルスRNAの10倍の連続希釈を用いて得られた標準曲線。
【図7】ニパウイルスRNA転写産物の標準曲線。
【図8】ベロ細胞のニパウイルス感染及びシンシチウム形成。
【図9】感染後1、2、3及び4日でのプラークアッセイ及びリアルタイムRT-PCRアッセイにより感染細胞上清において検出された感染ニパウイルスの数及びニパウイルスRNAの変化。
【図10】NiVのG又はF糖タンパク質のいずれかを発現するワクシニアウイルス(VV)組換え体を感染させたHeLa細胞のFACScan分析。
【0164】
【図11】ニパウイルスG及びF糖タンパク質の共発現による融合の誘導。
【図12】ニパウイルスG及び/又はF糖タンパク質を発現するVV組換え体でのワクチン接種による、ニパウイルスの致死攻撃からのハムスターの保護。
【図13】VV組換え体でのワクチン接種の後及びニパウイルスでの攻撃後の抗体応答。
【図14】致死ニパウイルス感染に対する、ハムスターの受動防御。
【図15】受動的に投与されたポリクローナル単一特異性抗ニパウイルス血清の存在下で、ニパウイルスで攻撃されたハムスターの免疫応答。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヘニパウイルスに感染しているヘニパウイルス感染ゴールデンハムスター動物モデル。
【請求項2】
ニパウイルスの少なくとも1つのRNA分子のDNAコピーを該RNA分子に特異的な少なくとも1つのプライマを用いて作製し;
ニパウイルスRNA分子の前記DNAコピーに特異的な少なくとも1対のオリゴヌクレオチドプライマを用いて該DNAコピーを増幅し;そして
試料中のニパウイルスの存在を示唆する、ニパウイルスに対応する増幅DNAの存在を検出する
ことを含む、試料中のニパウイルスを検出する方法。
【請求項3】
作製されかつ増幅される前記DNAコピーが、ニパウイルスヌクレオキャプシドコーディング領域である請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記オリゴヌクレオチドプライマ対の少なくとも1つが、検出可能部分を含む請求項2に記載の方法。
【請求項5】
前記検出が、前記検出可能部分を視覚化することを含む請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記試料がブタから得られる請求項2に記載の方法。
【請求項7】
前記試料が野生動物又は家畜から得られる請求項2に記載の方法。
【請求項8】
前記試料がヒトから得られる請求項2に記載の方法。
【請求項9】
前記RNA分子に特異的な少なくとも1つのプライマが、配列番号16、配列番号23、配列番号31及び配列番号32からなる群より選択されるアミノ酸配列を含むポリペプチドをコードするポリヌクレオチドに相補的な少なくとも15連続するヌクレオチドを含む請求項2に記載の方法。
【請求項10】
前記RNA分子に特異的な少なくとも1つのプライマが、前記ポリヌクレオチドの少なくとも20連続するヌクレオチドを含む請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記RNA分子に特異的な少なくとも1つのプライマが、前記ポリヌクレオチドの少なくとも25連続するヌクレオチドを含む請求項9に記載の方法。
【請求項12】
免疫応答を誘導するに充分な量の少なくとも1つの単離ヘニパウイルスG及びF糖タンパク質の、ヘニパウイルス感染から個体又は哺乳動物を保護するための医薬を製造するための使用。
【請求項13】
前記ヘニパウイルスがニパウイルス又はヘンドラウイルスである請求項12に記載の使用。
【請求項14】
前記ヘニパウイルスG及びF糖タンパク質がアジュバントと結合している請求項12に記載の使用。
【請求項15】
免疫応答を誘導するに充分な量で少なくとも1つの単離ヘニパウイルスG及びF糖タンパク質を発現する発現ベクターの、ヘニパウイルス感染に対して個体又は哺乳動物を予防又は保護するための医薬を製造するための使用。
【請求項16】
前記発現ベクターが、ヘニパウイルスの少なくともF及びG糖タンパク質を発現する請求項15に記載の使用。
【請求項17】
前記発現ベクターがウイルスベクターである請求項16に記載の使用。
【請求項18】
前記ウイルスベクターが組換えポックスウイルスベクターである請求項17に記載の使用。
【請求項19】
前記発現ベクターが少なくとも1つのアジュバントと結合している請求項15に記載の使用。
【請求項20】
ヘニパウイルスG又はFタンパク質の一方又は両方に対する抗体を産生する組換えハイブリドーマ。
【請求項21】
ヘニパウイルスG又はFタンパク質の一方又は両方を発現する組換えポックスウイルスベクター。
【請求項22】
2003年9月16日に番号I-3086としてCNCMに寄託された、ニパGタンパク質を発現する組換えワクシニアウイルス。
【請求項23】
2003年9月16日に番号I-3085としてCNCMに寄託された、ニパFタンパク質を発現する組換えワクシニアウイルス。
【請求項24】
2004年9月9日に番号I-3293としてCNCMに寄託された、ニパウイルスに対する中和活性を有するハイブリドーマN°1.7抗ニパウイルスGタンパク質。
【請求項25】
2004年9月9日に番号I-3296としてCNCMに寄託された、ニパウイルスに対する中和活性を有するハイブリドーマN°3.B10抗ニパウイルスGタンパク質。
【請求項26】
2004年9月9日に番号I-3295としてCNCMに寄託された、ニパウイルス及びヘンドラウイルスに対する中和活性を有するハイブリドーマN°35抗ニパウイルスFタンパク質。
【請求項27】
2004年9月9日に番号I-3294としてCNCMに寄託された、ニパウイルス及びヘンドラウイルスに対する中和活性を有するハイブリドーマN°3抗ニパウイルスFタンパク質。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公表番号】特表2007−505618(P2007−505618A)
【公表日】平成19年3月15日(2007.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−526735(P2006−526735)
【出願日】平成16年9月22日(2004.9.22)
【国際出願番号】PCT/IB2004/003326
【国際公開番号】WO2005/028673
【国際公開日】平成17年3月31日(2005.3.31)
【出願人】(501474748)インスティティ・パスツール (27)
【氏名又は名称原語表記】INSTITUT PASTEUR
【住所又は居所原語表記】28,rue du Docteur Roux,F−75724 Paris Cedex 15 FRANCE
【出願人】(500488225)アンスティテュ ナシオナル ド ラ サント エ ド ラ ルシュルシェ メディカル(アンセルム) (26)
【氏名又は名称原語表記】INSTITUT NATIONAL DE LA SANTE ET DE LA RECHERCHE MEDICALE(INSERM)
【住所又は居所原語表記】101,rue de Tolbiac,F−75654 Paris Cedex 13 France
【Fターム(参考)】