ヌクレオシドアナログ剤を用いて血液悪性疾患を治療する方法
本発明は、8−アミノ−アデノシン及びその変異体を用いて多剤耐性悪性疾患を含む血液悪性疾患を治療する方法を提供する。本発明には、血液悪性疾患と診断された患者のヌクレオシドアナログによる治療に対する応答を予測する方法と、血液悪性疾患を治療する有効性に関して候補薬剤をスクリーニングする方法も包含される。一実施形態において、8−アミノ−アデノシンは、骨髄腫関連症状、例えば、高カルシウム血症、骨粗鬆症、溶解性骨病変、骨痛、原因不明の骨折、貧血、腎損傷、アミロイドーシス、びまん性慢性感染、体重減少、悪心、食欲不振及び精神錯乱の改善又は予防のために、骨髄腫と診断された患者に投与される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願データ)
本出願は、2004年11月12日に申請された米国仮出願第60/626,862号の利益を主張するものであり、同仮出願は参照してその全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
(発明の分野)
本出願は、8−アミノ−アデノシンのようなヌクレオシドアナログ剤を用いて血液悪性疾患を治療するための方法に関する。
【背景技術】
【0003】
(発明の背景)
白血病、リンパ腫及び骨髄腫は血液関連癌としても周知の血液悪性疾患であり、米国において癌の中で総合的に発症率では第5位、死亡率では第2位となっている。治療の進歩にもかかわらず、重要な課題が残存する。例えば、現行の治療法では、続発性悪性疾患、臓器不全(心臓、肺及び内分泌)、持続する神経心理学的及び心理社会的問題並びに生活の質と関連する問題を含む有害事象を生じさせる頻度が高い。一部の患者では治療により長期的寛解及び治癒に至り得るが、多くの患者には血液悪性疾患は最終的に死をもたらす慢性疾患である。5年生存率は、例えば、ホジキン病では83%、非ホジキンリンパ腫では53%、白血病全体では45%、多発性骨髄腫では29%、急性骨髄性白血病では14%である(2003年5月15日の米国上院歳出委員会・防衛小委員会において白血病・リンパ腫学会を代表したGeorge Dahlman氏)。従って、これらの疾患に対する新規治療法が多大に必要とされている。
【0004】
多発性骨髄腫(MM)とも称される骨髄腫は、悪性形質細胞が骨髄に蓄積するB細胞リンパ増殖性疾患である。正常人において形質細胞は細胞に占める割合が5%未満である。しかし、多発性骨髄腫に罹患した患者では、形質細胞は存在する細胞の10%超を含み得る。大部分の形態の骨髄腫は骨髄及び周囲の骨における多部位に迅速に転移する。骨髄腫細胞と称される骨髄腫形質細胞は、血管新生を促進する血管内皮細胞増殖因子(VEGF)のような増殖因子を産生する。また、骨髄腫細胞は骨髄を標的とすることを可能にする特殊な接着分子をその表面に有し、骨髄にて間質細胞に付着し、インターロイキン6(IL−6)のようなサイトカイン、NF−κB活性化受容体(RANK)リガンド及び腫瘍壊死因子(TNF)を産生する。サイトカインは骨髄腫細胞の増殖を刺激し、アポトーシスを阻害し、骨髄腫細胞の増殖、また、最終的に骨破壊を生じさせる。
【0005】
同疾患に罹患した一患者内の骨髄腫細胞は同一であり、単一クローン性(M)蛋白質又はパラプロテインと称される同じ免疫グロブリン(IgG,IgA,IgD又はIgE)を大量に産生する。具体的なM蛋白質は患者により異なるが、任意の一患者においてはほぼ常に同じである。全症例の3分の2において、血清免疫グロブリンはIgGクラスに属するが、残りの3分の1は、通常、IgAである。稀な症例ではIgE又はIgD又はこの2つの混交が生じる。血清又は尿電気泳動を用いてM蛋白質を同定することができる。MMの別の重要な診断特性は尿中のベンス・ジョーンズ蛋白質と称される軽鎖の存在である。ベンス・ジョーンズ蛋白質はκ又はλ遊離軽鎖を含むが、その両方を含むことはない(Haen,1995,Principles of Hematology(血液学の原理))。
【0006】
MMは疼痛及び骨折を特徴とする体軸骨格の骨破壊を生じさせる。多発性骨髄腫と関連するアミロイドーシスは比較的一般的な所見である。腎不全、高カルシウム血症、貧血、細菌感染感受性の上昇及び正常な免疫グロブリン産生の障害も同疾患の一般的な臨床症状である。
【0007】
MMは癌全体の約1%及び全癌死の2%を示す。この血液癌に対する治療法はなく、従来の療法で診断後の生存期間中央値は3〜4年である。高用量化学療法及び幹細胞移植は寛解誘導において良好であるが、患者は最終的には再発し、且つ薬剤耐性疾患を発症する、もしくはその一方が起こる(非特許文献1;非特許文献2)。
【0008】
細胞傷害性プリン及びピロリジンヌクレオシド誘導体は、抗腫瘍療法に良好に導入された最初期の化学療法剤の1つであり、細胞傷害剤、抗ウイルス剤及び免疫抑制剤を含む薬理学的に多様なメンバーに属する。急性及び慢性血液悪性疾患の治療に一部のヌクレオシドアナログが現在用いられているが、これらのアナログはインビトロで十分な活性を示しておらず、或いは臨床試験においてMM治療の臨床評価を継続する根拠を示していない(非特許文献3;非特許文献4;非特許文献5;非特許文献6)。
【0009】
疾患過程に関与する分子を標的とする薬剤が必要である。MAPKはシグナル伝達分子であり、3段階のリン酸化カスケードを通して調節される。MAPKは細胞のホスファターゼによってトレオニン残基及びチロシン残基もしくはその一方において脱リン酸化されると、不活性化される(非特許文献7;非特許文献8)。リン酸化カスケードを通し、MAPKは多様な細胞外刺激を調整し、遺伝子発現の変化、増殖、分化、細胞周期停止及びアポトーシスを含む基本的な細胞過程を調節する。
【0010】
Aktキナーゼ経路は細胞の増殖及び生存の中心的役割を果たす別のシグナル伝達カスケードである。Akt基質は、蛋白質合成の調節、代謝、ホメオスタシス、細胞周期、細胞の生存及び増殖並びにアポトーシスを含む複数の細胞過程に関与する(非特許文献9;非特許文献10)。Aktキナーゼは、ホスファチジルイノシトール3−キナーゼ(PI3K)依存性及びホスファチジルイノシトール3−キナーゼ(PI3K)非依存性機構によって活性化され、Srcホモロジー2ドメイン含有イノシトールホスファターゼ(SHIP−1/2)及びPTENホスファターゼによって負に調節されるセリン/トレオニンキナーゼである。Aktは酵素活性又は細胞局在を変化させることによって下流の標的を負又は正に調節することができる。主に、Aktは二次メッセンジャーのリン脂質キナーゼPI3Kの活性化の結果として活性化されるが、Akt活性化のPI3K/PDKI非依存性機構も存在する。Aktは酵素活性又は細胞局在を変化させることにより、その下流の標的を調節する。Akt基質GSK3Pは代謝反応の上流にあり、増殖及び抗アポトーシス経路の調節に関与する。GSK3Pアイソフォームの酵素活性はAkt媒介リン酸化反応により阻害される(非特許文献11)。Foxo蛋白質ファミリーとしても周知のフォークヘッド転写因子ファミリーは、プログラム細胞死に役割を果たすことが詳細に報告されているAkt基質である。フォークヘッド蛋白質はAktによってリン酸化されると、14−3−3蛋白質によって細胞質内に隔離され、アポトーシス誘導転写因子としての機能を果たすことが阻止される(非特許文献9;非特許文献10)。IGF−1は、PI3K経路を活性化し、フォークヘッドファミリーメンバーFKHRLIのリン酸化及び不活性化を誘発することにより、細胞をグルココルチコイド誘発アポトーシスから防御する。FKHRLIの阻害は、細胞増殖を阻害し、アポトーシスを誘導する能力の喪失に至る(非特許文献12)。
【非特許文献1】Jemalら、CA Cancer J.Clin.(2004)54:8−29
【非特許文献2】Sirohiら、Lancet.(2004)363:875−87
【非特許文献3】Hjertnerら、Leukemia Research.(1996)20:155−60
【非特許文献4】Oken、Cancer(1992)70:946−8
【非特許文献5】Plunkettら、Cancer Chemother.Biol.Response Modif.(2001)19:21−45
【非特許文献6】Nagourneyら、Br.J.Cancer.(1993)67:10−14
【非特許文献7】Ono,Cell Signal.(2000)12:1−13
【非特許文献8】Changら、Nature.(2001)410:37−40
【非特許文献9】Frankeら、Oncogene.(2003)22:8983−98
【非特許文献10】Scheidら、FEBS Lett.(2003)546:108−12
【非特許文献11】JopeおよびJohnson、Trends Biochem.Sci.(2004)29:95−102
【非特許文献12】Qiangら、Blood.(2002)99:4138−46
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、8−アミノ−アデノシンが血液悪性疾患治療のための新規治療剤であることを示す。詳細には、本発明の発明者らは、8−アミノ−アデノシンが骨髄腫及び多発性骨髄腫の治療に使用され得ることを本明細書で示す。重要なことは、8−アミノ−アデノシンが多剤耐性骨髄腫細胞に対して細胞傷害性を示すことが見出されたことである。
【0012】
8−アミノ−アデノシンはp38 MAPキナーゼ、ERK1/2及びAkt経路のような主要経路に作用することも本明細書で示される。これらの経路における主要蛋白質のリン酸化の低下と骨髄腫細胞の細胞傷害との相関は、血液癌治療剤候補を同定するとともに、このような薬剤に効果的に反応する可能性がある患者を同定する新規の有用な方法の基礎となる。
【課題を解決するための手段】
【0013】
(発明の要旨)
本発明は、骨髄腫、リンパ腫又は白血病のような血液悪性疾患と診断された患者を治療有効量の8−アミノ−アデノシンで治療することを包含する。8−アミノ−アデノシンは、抗癌治療の有効性及び安全性を高めるため、他の治療剤と組み合わせて用いることができる。再発性血液悪性疾患及び多剤耐性悪性疾患もしくはその一方に罹患した患者を治療するため、8−アミノ−アデノシンを含有する医薬組成物を用いることもできる。
【0014】
8−アミノ−アデノシンは、骨髄腫、リンパ腫又は白血病と関連する症状又は病状を改善又は予防するために用いることもできる。一実施形態において、8−アミノ−アデノシンは、骨髄腫関連症状、例えば、高カルシウム血症、骨粗鬆症、溶解性骨病変、骨痛、原因不明の骨折、貧血、腎損傷、アミロイドーシス、びまん性慢性感染、体重減少、悪心、食欲不振及び精神錯乱の改善又は予防のために、骨髄腫と診断された患者に投与される。
【0015】
本発明は、1つ又はそれ以上のMKK3、MKK6、p38 MAPキナーゼ、ERK1、ERK2、Aktキナーゼ及びその下流シグナル伝達分子のリン酸化を実質的に低下させるのに十分な期間及び用量にてヌクレオシドアナログ剤を患者に投与することにより、骨髄腫、リンパ腫又は白血病と診断された患者を治療する方法も含む。一実施形態において、患者は再発性及び薬剤耐性型もしくはその一方の癌に罹患している。
【0016】
本発明の方法による8−アミノ−アデノシン又はヌクレオシドアナログ剤の投与は、癌の有効な治療と関連する臨床所見、例えば、骨髄腫に罹患した患者の血清中のM蛋白質又は尿中のベンス・ジョーンズ蛋白質の減少を含む臨床所見をもたらす。
【0017】
本発明の別の実施形態において、抗癌ヌクレオシドアナログの有効性は、血液癌に罹患した患者に対し、患者から細胞を単離し、ヌクレオシドアナログ剤を用いて細胞をインビトロで処理し、1つ又はそれ以上の蛋白質のMKK3、MKK6、p38 MAPキナーゼ、ERK1、ERK2及びAktキナーゼ並びにその下流シグナル伝達分子のリン酸化を測定することによって評価することができ、測定されたリン酸化の低下は患者が当該薬剤による治療に反応することを示す。
【0018】
本発明は、化合物を用いて細胞をインビトロで処理し、1つ又はそれ以上の蛋白質のリン酸化レベルを測定することにより、骨髄腫のような血液悪性疾患の治療の有効性に関して薬剤候補をスクリーニングするための方法も包含する。例えば、培養骨髄腫細胞を薬剤候補で処理し、細胞のリン酸化を測定し、当該薬剤が骨髄腫の治療に有効であるかを判定することができる。本実施形態において用いられる培養細胞は多剤耐性及びステロイド耐性もしくはその一方に対して選択され得る。
【0019】
本発明の方法は、薬剤候補の血液癌を治療する有効性を評価する付加工程、例えば、PP2Aホスファターゼ活性、アポトーシス、細胞増殖及びカスパーゼ活性化を測定する工程も含み得る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
(発明の詳細な説明)
本発明は、骨髄腫のような血液疾患を8−アミノ−アデノシン(8−NH2−Ado)を用いて治療する新規方法について述べる。本発明の発明者らは、多剤耐性及びステロイド耐性骨髄腫細胞を治療するために8−アミノ−アデノシンを用いることができ、当該薬剤は正常細胞と悪性細胞に対して異なる作用を発現し、血液悪性疾患に理想的な治療剤となることを見出した。
【0021】
本発明の発明者らは、8−アミノ−アデノシンはERK1/2,p38 MAPK及びAktキナーゼを含む複数の重要なシグナル伝達蛋白質の迅速且つ劇的なリン酸化の喪失を引き起こすが、他の既知のピリミジン及びプリンアナログ剤はリン酸化レベルを変化させないという驚くべき知見も得た。多くの細胞蛋白質が8−アミノ−アデノシンの作用を受けるが、JNK,PKC−8及びSTAT蛋白質を含む他の複数のシグナル伝達分子のリン酸化状態は8−アミノ−アデノシン処理による変化を受けず、これは8−アミノ−アデノシンによって引き起こされるリン酸化の低下が全体的な事象ではなく、むしろ特異的作用であることを示す。加えて、8−アミノ−アデノシンと無関係にATPを欠乏した細胞は重要な細胞蛋白質の同一のリン酸化低下を示さない。従って、8−アミノ−アデノシン処理によって引き起こされる内因性ATPプールの有意な変化は、リン酸化レベルの変化の原因とはなり得ない。
【0022】
本明細書で用いるように、「血液癌(blood cancer)」、「血液悪性疾患」、「血液癌(hematological cancer)」、「造血器悪性腫瘍」及び「造血器癌」は血液関連疾患を指し、白血病、リンパ腫及び骨髄腫並びにその特異的疾患型、例えば、多発性骨髄腫(MM)、ワルデンストローム・マクログロブリン血症、重鎖病、急性骨髄性白血病(AML)、急性リンパ性白血病(ALL)、慢性骨髄性白血病(CML)、慢性リンパ性白血病(CLL)、ヘアリー細胞白血病、前骨髄球性白血病、骨髄単球性白血病、単球性白血病、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫(小細胞型、大細胞型及び混合細胞型)及びバーキットリンパ腫を含むが、これらに限定されない。
【0023】
骨髄腫と多発性骨髄腫は本明細書で互換的に用いられる。当業者には理解できるように、本発明は骨髄腫とサブタイプの多発性骨髄腫に等しく適用される。骨髄腫は体内の一部位に、或いは体内の多部位に、即ち、多発性骨髄腫として存在し得る。
【0024】
本明細書で用いられるように、「ヌクレオシドアナログ剤」は化合物を含むヌクレオシドを指す。本発明のヌクレオシドアナログ剤は8−アミノ−アデノシンを含むが、これに限定されない。「薬剤」と「化合物」は本明細書で互換的に用いられ、8−アミノ−アデノシンのようなヌクレオシドアナログ剤を指す。
【0025】
本明細書で用いられるように、8−アミノ−アデノシン(8−NH2−Ado)は、アデニン塩基の8位にリボース糖及びアミン基を有するアデノシンアナログである。当業者であれば、骨髄腫のような血液疾患の治療のために、類似及び関連化合物もしくはその一方、例えば、類似の構造及び機能の化合物も本発明の方法とともに用いられ得ることを理解するであろう。従って、本発明は8−アミノ−アデノシンとその変異体を用いた方法に適用される。
【0026】
本明細書で用いられるように、「治療有効量(therapeutically effective dose)」及び「治療有効量(therapeutically effective amount)」は、血液悪性疾患の治療に効果的な用量を指す。治療有効量は、高カルシウム血症、骨粗鬆症、溶解性骨病変、骨痛、原因不明の骨折、貧血、腎損傷、アミロイドーシス、びまん性慢性感染、体重減少、悪心、食欲不振、感染、出血及び精神錯乱を含むがこれらに限定されない血液悪性疾患と関連する1つ又はそれ以上の症状又は臨床徴候の緩和、即ち、低減に十分な用量となり得る。
【0027】
治療有効量は、当業者であれば患者の全身症状の改善を推定するように、悪性疾患の臨床指標、即ち、検査所見を量的及び質的もしくはその一方に調整するのに十分な用量ともなり得る。本明細書で用いられるように、「調整」は測定された臨床指標の上昇又は低下のような変化を指す。このような量的性質の指標は、当該技術分野で理解されるように、統計的に有意な量により、好ましくは低下し、或いは上昇するであろう。臨床指標は、細胞数の実質的な増加又は減少、異常形態の細胞の存在、細胞内の異常染色体の存在(例えば、CMLにおけるフィラデルフィア染色体)、生化学的異常及び過形成骨髄を含むが、これらに限定されない。
【0028】
骨髄腫の臨床指標は、血清及び尿中M蛋白質の存在、尿中のベンス・ジョーンズ蛋白質の存在、異常形態の形質細胞、即ち、「骨髄腫細胞」及び形質細胞の全体的な増加を含む。本明細書で用いられるように、「M蛋白質」は当該技術分野で公知のように定義付けられ、患者における単一タイプの単一クローン性免疫グロブリンを指す。一実施形態において、骨髄腫の治療のための治療有効量の薬剤、例えば、8−アミノ−アデノシンは、被測定M蛋白質レベルの少なくとも約10%の低下、被測定M蛋白質レベルの少なくとも約20%の低下、被測定M蛋白質レベルの少なくとも約30%の低下、被測定M蛋白質レベルの少なくとも約40%の低下、被測定M蛋白質レベルの少なくとも約50%の低下、被測定M蛋白質レベルの少なくとも約60%の低下、被測定M蛋白質レベルの少なくとも約70%の低下、被測定M蛋白質レベルの少なくとも約80%の低下、被測定M蛋白質レベルの少なくとも約90%の低下、被測定M蛋白質レベルの少なくとも約95%の低下又は被測定M蛋白質レベルの少なくとも約99%の低下をもたらす。M蛋白質は、血清電気泳動及び免疫固定(immunofixation)を含むがこれらに限定されない、当該技術分野で公知の方法により測定することができる。血清電気泳動により測定されるM蛋白質は、電気泳動図のガンマグロブリン領域における鋭いピークの存在により同定することができる。
【0029】
別の実施形態において、骨髄腫の治療のための治療有効量の薬剤、例えば、8−アミノ−アデノシンは、被測定ベンス・ジョーンズ蛋白質の少なくとも約10%の減少、被測定ベンス・ジョーンズ蛋白質の少なくとも約20%の減少、被測定ベンス・ジョーンズ蛋白質の少なくとも約30%の減少、被測定ベンス・ジョーンズ蛋白質の少なくとも約40%の減少、被測定ベンス・ジョーンズ蛋白質の少なくとも約50%の減少、被測定ベンス・ジョーンズ蛋白質の少なくとも約60%の減少、被測定ベンス・ジョーンズ蛋白質の少なくとも約70%の減少、被測定ベンス・ジョーンズ蛋白質の少なくとも約80%の減少、被測定ベンス・ジョーンズ蛋白質の少なくとも約90%の減少、被測定ベンス・ジョーンズ蛋白質の少なくとも約95%の減少又は被測定ベンス・ジョーンズ蛋白質の少なくとも約99%の減少をもたらす。本明細書で用いられるようなベンス・ジョーンズ蛋白質は、当該技術分野で公知であり、免疫グロブリンの軽鎖断片を指す。ベンス・ジョーンズ蛋白質は、当該技術分野で公知の方法によって血清及び尿中で測定することができる。
【0030】
本発明は、治療有効量が患者の骨髄中の骨髄腫細胞(異常形質細胞)又は形質細胞数の統計的に有意な減少をもたらす、骨髄腫の治療のための治療有効量の薬剤、例えば、8−アミノ−アデノシンも含む。骨髄腫を有する被験体を指す場合、「骨髄腫細胞」及び「形質細胞」という用語は本明細書で互換的に用いられる。形質細胞が正常な被験体由来であると本明細書で述べない場合、「形質細胞」は骨髄腫細胞を指すものとして解釈する必要がある。
【0031】
形質細胞の形態及び数は当該技術分野で公知の生検の方法によって求めることができる。本発明の一実施形態において、治療有効量の薬剤、例えば、8−アミノ−アデノシンは、形質細胞数の少なくとも約5%の減少、形質細胞数の少なくとも約10%の減少、形質細胞数の少なくとも約20%の減少、形質細胞数の少なくとも約30%の減少、形質細胞数の少なくとも約40%の減少、形質細胞数の少なくとも約50%の減少、形質細胞数の少なくとも約60%の減少、形質細胞数の少なくとも約70%の減少、形質細胞数の少なくとも約80%の減少、形質細胞数の少なくとも約90%の減少、形質細胞数の少なくとも約95%の減少又は形質細胞数の少なくとも約99%の減少をもたらす。
【0032】
本明細書で用いられるように、「少なくとも約」は概算の最小量を指す。
【0033】
本明細書で用いられるように、「十分な期間及び用量」は、血液悪性疾患の1つ又はそれ以上の臨床症状の実質的な低減或いは1つ又はそれ以上の蛋白質MKK3、MKK6、p38 MAPキナーゼ、ERK1、ERK2、Aktキナーゼとその下流シグナル伝達分子のリン酸化の低下を実現するために必要な薬剤投与時期及び薬剤投与量を指す。期間及び用量は、例えば、1つ又はそれ以上の特定の蛋白質のリン酸化の実質的な低下をもたらさない場合、十分ではない。当業者であれば、特定の蛋白質のリン酸化の実質的な低下を実現するのに十分な期間及び用量は、病期、患者の健康状態、薬剤投与時期及び薬剤用量に基づいて変動することを理解するであろう。
【0034】
本明細書で用いられるように、リン酸化の「実質的な低下」は、血液悪性疾患の進行を遅延し、或いは停止するのに十分なリン酸化の低下である。一実施形態において、実質的な低下は統計的に有意な量のリン酸化の低下である。リン酸化の実質的な低下は、リン酸化の少なくとも約1%の低下、少なくとも約5%の低下、少なくとも約10%の低下、少なくとも約15%の低下、少なくとも約20%の低下、少なくとも約25%の低下、少なくとも約30%の低下、少なくとも約40%の低下、少なくとも約50%の低下、少なくとも約60%の低下、少なくとも約70%の低下、少なくとも約80%の低下、少なくとも約90%の低下、少なくとも約95%の低下又は少なくとも約99%の低下となり得る。
【0035】
本明細書で用いられるように、「患者」と「被験体」は互換的に用いられる。患者又は被験体は血液悪性疾患と診断された動物である。動物は哺乳動物でよく、ヒトが好ましい。本発明の動物はヒト、イヌ、ネコ、ウシ、霊長動物、マウス及びラットを含むが、これらに限定されない。
【0036】
“MKK3”,“MKK6”及びp38 MAPキナーゼはp38経路のメンバーである。本明細書で用いられるように、MKK3,MKK6及びp38 MAPKの「下流シグナル伝達分子」は、ATF−2、p36 MAPキナーゼ、CHOP、MEF2、Elk−1、Myc、Max、Stal1、MSK−1、MAPKAPK−2、MNK1、MNK2、PRAK及びヒストンH3を含むがこれらに限定されない、MKK3,MKK6及びp38 MAPキナーゼのリン酸化の低下の結果としてのリン酸化の変化を受ける分子である。p38 MAPキナーゼとp38は本明細書で互換的に用いられる。
【0037】
500〜2500mg/m2の範囲の量の8−アミノ−アデノシンの1日用量を、2ヶ月間に少なくとも2週間、1週あたり少なくとも1回及び最大5日、治療を必要とする癌患者に投与することができる。当該方法は様々な実施形態において実施することができ、一般的に、治療有効範囲内にて投与される用量が少ないほど、用量はより頻回に投与される。一実施形態において、2ヶ月間に少なくとも2週間、1週あたり少なくとも5日、1日用量500mg/m2が投与される。別の実施形態では高用量が用いられ、用量は低頻度で投与される。一実施形態において、2ヶ月間に少なくとも2週間、1週あたり1回、1日用量2500mg/m2が投与される。
【0038】
一実施形態において、8−アミノ−アデノシンが投与される週の後、8−アミノ−アデノシンが投与されない14〜28日間が続き、この期間後、更なる1週の8−アミノ−アデノシンによる処理が続くように、治療有効量の8−アミノ−アデノシンが投与される。1週間の処理後、2〜4週の8−アミノ−アデノシンによる処理を行わないことは「治療サイクル」と称される。一般的に、少なくとも2治療サイクルが施行される。別の実施形態では最大6又はそれ以上の治療サイクルが施行される。
【0039】
別の実施形態において、治療有効量の8−アミノ−アデノシンは、1週間、少なくとも2週連続、少なくとも3週連続、少なくとも4週連続、少なくとも5週連続又は少なくとも6週連続、1週あたり少なくとも1回及び5日を含む最大3日若しくはそれ以上の日数、投与される。本実施形態では、患者は用量制限毒性が発現するまで週連続期間、治療有効量を投与される。
【0040】
従って、一態様において、被験体に有効量の8−アミノ−アデノシンを投与する工程を含む、被験体における癌を治療するための方法を提供する。本明細書で提供する8−アミノ−アデノシンの投与は、8−アミノ−アデノシンの作用部位への送達を可能にする任意の方法によって達成され得る。一部の実施形態において、8−アミノ−アデノシンは血液循環を介して血液癌細胞又は腫瘍と接触する。8−アミノ−アデノシンを癌組織又は細胞と接触させるため、好適な投与法は、経口経路、十二指腸内経路、非経口注射(静脈内、皮下、筋肉内、血管内又は注入を含む)、局所及び腎経路を含む。治療する血液癌のタイプ及び投与経路に依存し、ある特定の投与経路、例えば、1〜8時間の範囲の時間、静注による投与が好ましい。
【0041】
本明細書で述べる用量範囲内にて投与される8−アミノ−アデノシンの量は、治療される被験体、癌のタイプ及び重症度、癌の局在性、投与速度、8−アミノ−アデノシンの性質(例えば、溶解性及び細胞毒性)並びに処方医師の裁量に依存する。ある場合には前述の範囲の下限未満の用量レベルが十分以上であり得るが、別の場合には有害な副作用を引き起こすことなく、より高用量が用いられ得て、特にこのような高用量が最初に1日中の投与のために数回の低用量に分割される場合、高用量が用いられ得る。
【0042】
(治療対象疾患)
治療を必要とするヒトや他の哺乳動物における癌の治療に概して有用な方法及び組成物を提供する。これらの方法は、治療有効量のヌクレオシドアナログ剤、例えば、8−アミノ−アデノシン又はその医薬的に許容可能な塩を単独或いは治療有効量の1つ又はそれ以上の付加抗癌化合物を併用して投与する工程を含む。当該方法及び組成物は血液悪性疾患を治療するために用いることができ、血液悪性疾患は、骨髄腫、多発性骨髄腫、ワルデンストローム・マクログロブリン血症、重鎖病、急性骨髄性白血病、急性リンパ性白血病、慢性骨髄性白血病、慢性リンパ性白血病、ヘアリー細胞白血病、前骨髄球性白血病、骨髄単球性白血病、単球性白血病、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫(小細胞型、大細胞型及び混合細胞型)及びバーキットリンパ腫を含むが、これらに限定されない。本発明の一実施形態では、骨髄腫及び多発性骨髄腫を治療するために8−アミノ−アデノシンが用いられる。
【0043】
当該方法及び組成物は、転移した血液悪性疾患を治療するために用いることもできる。例えば、骨の多部位に拡散した骨髄腫を治療するために8−アミノ−アデノシンを用いることができる。
【0044】
本発明の一実施形態において、多剤耐性である血液悪性疾患を治療するために8−アミノ−アデノシンのようなヌクレオシドアナログ剤が用いられる。例えば、骨髄腫及び非ホジキンリンパ腫は薬剤耐性となることが多い。骨髄腫はthalidomine(サリドマイド)及びボルテゾミブ(ベルケード)のようなプロテアソーム阻害剤を含むがこれらに限定されない現行の既知治療法に対して耐性となり得る。多剤耐性血液悪性疾患と診断された患者を治療するため、治療有効量にて単独で、或いは他の抗癌治療剤と組み合わせて用いられる本発明のヌクレオシドアナログ剤を用いることができる。
【0045】
8−アミノ−アデノシンは他の抗癌剤及び抗腫瘍剤と組み合わせて同時投与することができる。これらの薬剤の1つを併用する場合、付加薬剤の用量は当該薬剤に用いられる標準用量或いは当該薬剤が単独で用いられる場合、用いられるレベルから下方又は上方に修正される。従って、8−アミノ−アデノシンの投与は、既存の薬剤を用いるが、現在の使用より低い濃度又は用量で医師が癌を治療することを可能にする。或いは、8−アミノ−アデノシンの投与は、現在の使用より高い濃度又は用量で既存の薬剤を用いて医師が癌を治療することを可能にし得る。別の抗癌治療剤の用量を増減する能力は、高用量の抗癌剤が望ましくない副作用又は死亡をもたらし得る再発性血液悪性疾患の治療及び予防に重要である。当業者であれば、所定の患者に対する正確な用量の決定は、用いる薬剤の組合せ、治療する特定の疾患及び患者の病状と既往歴を含む多くの要因に依存し、異なることを理解するであろう。
【0046】
既知で承認済の抗腫瘍剤に対する特定の用量レジメンが、例えば、ニュージャージー州オラデル(Oradell)のMedical Economics Company,Inc.,Physician’s Desk Reference(医師用添付文書集)の現行版に見出される製品説明に示されている。ある特定の抗癌剤に対する例示的な用量レジメンも下記に示されている。当業者は本明細書で考察される多くの既知の抗癌剤が他の薬剤と組み合わせてルーチンに使用されていることを認識するであろう。本明細書で述べる方法に従って、8−アミノ−アデノシンは、使用薬剤に加え、或いは1つ又はそれ以上のこのような薬剤を置き換え、このような多剤治療レジメンにて同時投与することができる。
【0047】
FDAに認可された癌治療薬は、アルキル化剤、アントラサイクリン、抗生物質、アロマターゼ阻害剤、ビホスホネート、シクロオキシゲナーゼ阻害薬、エストロゲン受容体モジュレーター、葉酸拮抗剤、無機砒酸塩、微小管阻害剤、調整剤、ニトロソウレア、ヌクレオシドアナログ、破骨細胞抑制剤、白金含有化合物、プロテアソーム阻害剤、レチノイド、トポイソメラーゼ1阻害剤、トポイソメラーゼ2阻害剤及びチロシンキナーゼ阻害剤を含むが、これらに限定されない。8−アミノ−アデノシンのようなヌクレオシドアナログによる処理の前後、血液悪性疾患の治療のためのこれらの任意のクラス由来の抗癌剤及び他の抗癌剤を投与することができる。
【0048】
有用なアルキル化剤は、ブスルファン(マイレラン、ブスルフェックス)、クロラムブシル(リューケラン)、シクロホスファミド(シトキサン、Neosar)、メルファラン、L−PAM(アルケラン)、ダカルバジン(DTIC−Dome)及びテモゾロマイド(テモダール)を含むが、これらに限定されない。本明細書で述べる方法に従って、血液悪性疾患を治療するため、8−アミノ−アデノシンはアルキル化剤と同時投与される。一実施形態において、癌は慢性骨髄性白血病、多発性骨髄腫又は未分化星状細胞腫である。一例として、シクロホスファミドとしても一般的に周知の化合物、2−ビス[(2−クロロエチル)アミノ]テトラヒドロ−2H−1,3,2−オキサザホスホリン,2−オキシドは、病期III及びIVの悪性リンパ腫、多発性骨髄腫及び白血病の治療に用いられるアルキル化剤である。一般的に、シクロホスファミドは静脈内投与され、3〜5日間にわたり分割用量にて1500〜1800mg/m2の用量で導入療法のために投与される。維持療法ではシクロホスファミドは、7〜10日ごとに350〜550mg/m2又は週2回110〜185mg/m2の用量で投与される。8−アミノ−アデノシンのようなヌクレオシドアナログは、このような用量で投与されるシクロホスファミドと同時投与され得る。
【0049】
有用なアントラサイクリンは、ドキソルビシン(アドリアマイシン、ドキシル、ルベックス)、ミトキサントロン(ノバントロン)、イダルビシン(イダマイシン)、バルルビシン(バルスター)及びエピルビシン(エレンス)を含むが、これらに限定されない。8−アミノ−アデノシンのようなヌクレオシドアナログは、血液悪性疾患を治療するため、アントラサイクリンと同時投与され得る。例えば、ドキソルビシンとしてより一般的に周知の化合物、(8S,10S)−10−[(3−アミノ−2,3,6−トリデオキシ−α−L−リキソ−ヘキソピラノシル)オキシ]−8−グリコロイル−7,8,9,10−テトラヒドロ−6,8,11−トリヒドロキシ−1−メトキシ−5,12−ナフタセンジオンは、Streptomyces peucetius var.caesiusの培養液から単離された細胞傷害性アントラサイクリン系抗生物質である。ドキソルビシンは、播種性腫瘍疾患、例えば、急性リンパ芽球性白血病、急性骨髄芽球性白血病並びにホジキン及び非ホジキン型のリンパ腫において腫瘍状態の退縮を生じさせるのに良好に用いられている。通常、ドキソルビシンは、21日間隔で60〜75mg/m2の範囲の用量;毎週20mg/m2の用量;又は4週ごとに反復する各3連続日における30mg/m2の用量にて単独静注として投与される。8−アミノ−アデノシンのようなヌクレオシドアナログ剤は、このような用量で投与されるドキソルビシンと同時投与され得る。
【0050】
有用な抗生物質は、ダクチノマイシン、アクチノマイシンD(コスメゲン)、ブレオマイシン(ブレノキサン)及びダウノルビシン、ダウノマイシン(Cerubidine,DanuoXome)を含むが、これらに限定されない。8−アミノ−アデノシンのようなヌクレオシドアナログ剤は、血液癌を治療するため、抗生物質と同時投与され得る。
一実施形態では癌は急性リンパ性白血病や他の白血病である。
【0051】
有用なビホスホネート抑制剤はゾレドロネート(ゾメタ)を含むが、これに限定されない。本明細書で述べる方法に従って、8−アミノ−アデノシンのようなヌクレオシドアナログ剤は、血液癌を治療するため、ビホスホネート抑制剤と同時投与される。一実施形態では、癌は多発性骨髄腫、固形癌からの骨転移又は前立腺癌である。
【0052】
有用な葉酸拮抗剤はメトトレキサート及びtremetrexateを含むが、これらに限定されない。8−アミノ−アデノシンのようなヌクレオシドアナログ剤は、造血器癌を治療するため、葉酸拮抗剤と同時投与され得る。葉酸拮抗剤は30年以上にわたり癌化学療法において用いられている。一例として、一般にメトトレキサートとして周知の化合物、N−[4−[[(2,4−ジアミノ−6−プテリジニル)メチル メチルアミノ]ベンゾイル]−L−グルタミン酸は、進行期の悪性リンパ腫の治療において用いられている葉酸拮抗剤である。5−メチル−6−[[(3,4,5−トリメトキシフェニル)−アミノ]メチル]−2,4−キナゾリンジアミンは別の葉酸拮抗剤であり、トリメトレキサートとして一般に周知である。リンパ腫では30mg/m2の用量で週2回の筋注投与が行われる。8−アミノ−アデノシンのようなヌクレオシドアナログ剤は、このような用量で投与されるメトトレキサートと同時投与され得る。
【0053】
微小管の重合又は脱重合を阻害し得る有用な微小管「阻害剤」は、ビンクリスチン(オンコビン)、ビンブラスチン(Velban)、パクリタキセル(タキソール、Paxene)、ビノレルビン(ナベルビン)、ドセタキセル(タキソテール)、エポチロンB又はD又はいずれかの誘導体並びにディスコデルモライド又はその誘導体を含むが、これらに限定されない。8−アミノ−アデノシンのようなヌクレオシドアナログは、血液悪性疾患を治療するため、微小管阻害剤と同時投与され得る。一実施形態では血液悪性疾患は多発性骨髄腫である。一例として、一般にビンクリスチンとしても周知の化合物、22−オキソ−ビンカレウコブラスチンは、一般的なニチニチソウ(Vinca rosea,Linn.)から得られるアルカロイドであり、急性白血病の治療に有用である。ホジキン病の治療において他の腫瘍溶解剤と組み合わせて有用であることも示されている。ビンクリスチンは小児用では2mg/m2、成人用では1.4mg/m2を毎週静注される。8−アミノ−アデノシンのような本発明のヌクレオシドアナログ剤は、このような用量で投与されるビンクリスチンと同時投与され得る。
【0054】
8−アミノ−アデノシンのような本発明のヌクレオシドと組み合わせて用いることができる有用なヌクレオシドアナログは、メルカプトプリン、6−MP(Purinethol)、フルオロウラシル、5−FU(Adrucil)、チオグアニン、6−TG(チオグアニン)、シタラビン(Cytosar−U,DepoCyt)、フロクスウリジン(FUDR)、フルダラビン(フルダラ)、ペントスタチン(Nipent)、クラドリビン(ロイスタチン、2−CdA)、ゲムシタビン(ジェムザール)及びカペシタビン(ゼローダ)を含むが、これらに限定されない。一実施形態では血液悪性疾患は多発性骨髄腫又は骨髄腫である。
【0055】
別の実施形態では血液悪性疾患はリンパ腫又は白血病である。例えば、一般に6−チオグアニンとしても周知の化合物、2−アミノ−1,7−ジヒドロ−6H−プリン−6−チオンは、急性非リンパ性(non−pymphocytic)白血病の療法において有効なヌクレオシドアナログである。6−チオグアニンは1日あたり体重の約2mg/kgの用量で経口投与される。1日総用量は単回用量として投与され得る。このレベルでの4週投与後に改善が認められない場合、投与量は3mg/kg/日に増加し得る。8−アミノ−アデノシンのような本発明のヌクレオシドアナログ剤は、急性非リンパ性(non−pymphocytic)白血病及び他の血液悪性疾患の治療のため、このような用量で投与される6−TGと同時投与され得る。
【0056】
有用なレチノイドはトレチノイン、ATRA(ベサノイド)、アリトレチノイン(パンレチン)及びベキサロテン(ターグレチン(Targretin))を含むが、これらに限定されない。8−アミノ−アデノシンは血液癌を治療するため、レチノイドと同時投与され得る。一実施形態では癌は多発性骨髄腫である。別の実施形態では癌は急性前骨髄球性白血病(APL)又はT細胞リンパ腫である。
【0057】
有用なトポイソメラーゼ1阻害剤は、トポテカン(Hycamtin)及びイリノテカン(Camptostar)を含むが、これらに限定されない。8−アミノ−アデノシンのような本発明のヌクレオシドアナログは、癌を治療するため、トポイソメラーゼ1阻害剤と同時投与され得る。有用なトポイソメラーゼ2阻害剤は、エトポシド、VP−16(ベプシド)、テニポシド、VM−26(Vumon)及びエトポシドホスフェート(Etopophos)を含むが、これらに限定されない。8−アミノ−アデノシンは、多発性骨髄腫又は骨髄腫を治療するため、トポイソメラーゼ2阻害剤と同時投与され得る。別の実施形態において、8−アミノ−アデノシンは急性リンパ芽球性白血病(ALL)の治療のため、トポイソメラーゼ2と同時投与され得る。
【0058】
有用なチロシンキナーゼ阻害剤はイマチニブ(グリベック)を含むが、これに限定されない。8−アミノ−アデノシンは血液癌を治療するため、チロシンキナーゼ阻害剤と同時投与され得る。一実施形態では癌は多発性骨髄腫又は骨髄腫である。
【0059】
従って、8−アミノ−アデノシン又はその医薬的に許容可能な塩のような本発明のヌクレオシドアナログと、1つ又はそれ以上の付加抗癌剤が患者に投与される、血液癌を治療する方法を提供する。8−アミノ−アデノシンとの同時投与に好適なこのような他の抗癌剤の具体的な実施形態は、5−メチル−6−[[(3,4,5−トリメトキシフェニル)アミノ]−メチル]−2,4−キナゾリンジアミン−e又はその医薬的に許容可能な塩、(8S,10S)−10−(3−アミノ−2,3,−6−トリデオキシ−α−L−リキソ−ヘキソピラノシル)オキシ]−8−グリコロイル−7,8,9,10−テトラヒドロ−6,8,11−トリヒドロキシ−1−メトキシ−5,12−ナフタセンジオン又はその医薬的に許容可能な塩;5−フルオロ−2,4(1H,3H)−ピリミジンジオン又はその医薬的に許容可能な塩;2−アミノ−1,7−ジヒドロ−6H−プリン−6−チオン又はその医薬的に許容可能な塩;22−オキソ−ビンカレウコブラスチン又はその医薬的に許容可能な塩;2−ビス[(2−クロロエチル)アミノ]テトラヒドロ−2H−1,3,2−オキサザホスホリン,2−オキシド又はその医薬的に許容可能な塩;N−[4−[[(2,4−ジアミノ−6−プテリジニル)メチル]−メチルアミノ]ベンゾイル]−L−グルタミン酸又はその医薬的に許容可能な塩;或いはシス−ジアンミンジクロロ白金(II)を含むが、これらに限定されない。
【0060】
一実施形態において、他の抗癌剤は、本発明のヌクレオシドアナログが投与される複数の週の1週間に少なくとも1回投与される。一実施形態において、他の抗癌剤は、プリンアナログ、アルキル化剤及び抗生物質から成る群より選択される。プリンアナログはゲムシタビン、フルダラビン及びクラドリビンを含み、一部の実施形態では、これらは8−アミノ−アデノシンとともに過去にアルキル化剤で治療を受けた患者に投与される。
【0061】
別の実施形態において、本発明の8−アミノ−アデノシン又はヌクレオシドが投与される複数の週の1週間に少なくとも1回、GCSFが投与される。一実施形態において、約360〜480単位のGCSFが患者に毎日投与される。別の実施形態では、ニューラスタのような長時間作用型のGCSFが投与される。
【0062】
別の実施形態において、8−アミノ−アデノシンが投与される複数の週の1週間に少なくとも1回、エリスロポエチンが投与される。一実施形態において、約40,000単位のエリスロポエチンが投与される。好適な製剤はEpogen及びProQuist製剤を含み、別の好適な製剤は長時間作用型であって、Aranist製剤である。
【0063】
(製剤)
8−アミノ−アデノシン組成物は、例えば、錠剤カプセル、丸薬散剤、持続放出性製剤、液剤、懸濁剤として経口投与に、無菌液剤、懸濁剤又は乳液として非経口注射に、軟膏又はクリームとして局所投与に、或いは坐剤として直腸投与に好適な形態となり得る。8−アミノ−アデノシン組成物は、正確な用量の単回投与に好適な単位投与剤形でよく、通常、従来の医薬用担体又は賦形剤を含む。例示的な非経口投与形態は、無菌水溶液中の8−アミノ−アデノシンの液剤又は懸濁剤、例えば、水性プロピレングリコール又はデキストロース液剤を含む。このような剤形は所望とあれば好適に緩衝処理することができる。好適な医薬用担体は不活性希釈剤若しくは充填剤、水及び種々の有機溶媒を含む。医薬組成物は所望とあれば、香味剤、結合剤、賦形剤などのような付加成分を含み得る。従って、経口投与ではクエン酸のような種々の賦形剤を含む錠剤を、デンプン、アルギン酸及びある種の複合ケイ酸塩のような種々の崩壊剤と、また、スクロース、ゼラチン及びアラビアゴムのような結合剤とともに用い得る。加えて、ステアリン酸マグネシウム、ラウリル硫酸ナトリウム及びタルクのような滑沢剤が、錠剤化目的に有用な場合が多い。同種の固形組成物は軟質及び硬質充填ゼラチンカプセルにおいて用いることもできる。従って、好ましい材料はラクトース又は乳糖及び高分子量ポリエチレングリコールを含む。経口投与に水性懸濁剤又はエリキシル剤が望ましい場合、その中の8−アミノ−アデノシンは、種々の甘味剤又は着香剤、着色剤又は染色剤、所望であれば乳化剤又は懸濁化剤と、水、エタノール、プロピレングリコール、グリセリン又はその組合せのような希釈剤とともに、組み合わせることができる。8−アミノ−アデノシンの局所製剤を治療に用いることができる。このような製剤は油性−水性乳剤及びリポソームを用いて好都合に調製でき、任意で1つ又はそれ以上の付加抗癌剤を含み得る。
【0064】
特定量の活性剤を用いて種々の医薬組成物を調製する方法は、当業者には既知であり、或いは明らかであり、本開示内容に照らし、本発明の8−アミノ−アデノシン及びヌクレオシドアナログ剤に適用することができる。好適な製剤及び工程の例については、Remington’s Pharmaceutical Sciences(レミントンの製薬科学),Mack Publishing Company,Easter,ペンシルベニア州、第15版(1975)を参照されたい。
【0065】
一実施形態において、本発明のヌクレオシド誘導体剤は錠剤又は丸剤として製剤化される。製剤は結晶性でよい。医薬組成物は少なくとも約0.1mg、少なくとも約1mg、少なくとも約10mg、少なくとも約100mg、少なくとも約250mg、少なくとも約500mg、少なくとも約750mg、少なくとも約1g、少なくとも約3g、少なくとも約5g又は少なくとも約10gのヌクレオシド誘導体剤を含有し得る。同様に、医薬組成物は少なくとも約0.1mg、少なくとも約1mg、少なくとも約10mg、少なくとも約100mg、少なくとも約250mg、少なくとも約500mg、少なくとも約750mg、少なくとも約1g、少なくとも約3g、少なくとも約5g又は少なくとも約10gの8−アミノ−アデノシンを含有し得る。
【0066】
ヌクレオシドアナログ化合物の明らかな実際の利点は、当該化合物を経口、静脈内、筋肉内、局所又は皮下経路のように任意の好都合な態様で投与することができることである。従って、8−アミノ−アデノシンのようなヌクレオシドアナログ剤は、例えば、不活性希釈剤とともに経口投与することができ、或いは硬質又は軟質シェルゼラチンカプセルに封入することができ、或いは錠剤に圧縮することができ、或いはダイエット食品と直接混和することができる。経口治療投与では、8−アミノ−アデノシンのようなヌクレオシドアナログ剤は、賦形剤と併せて用いることができ、摂取可能な錠剤、バッカル剤、トローチ剤、カプセル剤、エリキシル剤、懸濁剤、シロップ剤、カシェ剤などの形態で投与することができる。このような組成物及び調製物は、上述の血液癌を有する患者を治療するため、治療有効量の活性剤を含有する。
【0067】
錠剤、トローチ剤、丸剤、カプセル剤などの形態の8−アミノ−アデノシンのようなヌクレオシド誘導体剤は、以下のものも含有し得る:トラガカントゴム、アラビアゴム、コーンスターチ若しくはゼラチンのような結合剤;リン酸二カルシウムのような賦形剤;コーンスターチ、ポテトスターチ、アルギン酸などのような崩壊剤;ステアリン酸マグネシウムのような滑沢剤;サッカリンのような甘味剤及びペパーミントもしくはその一方、冬緑油若しくはチェリー芳香剤のような着香剤。投与単位形態がカプセル剤である場合、上述の成分に加え、液状担体を含有し得る。コーティングとして、或いは投与単位の物理的形態を変形させるため、他の様々な成分が存在し得る。例えば、錠剤、丸剤又はカプセル剤にシェラックをコーティングすることができる。
【0068】
シロップ剤又はエリキシル剤は、活性化合物、甘味剤、防腐剤としてのメチル及びプロピルパラベン並びにチェリー又はオレンジ芳香剤のような着香剤を含有し得る。勿論、投与単位形態を調製する際に使用される材料は、医薬的に純粋であって用いる量において実質的に無毒性である必要がある。
【0069】
加えて、ヌクレオシド誘導体剤は当該技術分野で公知の持続放出性調製物及び製剤に組み入れることができる。
【0070】
8−アミノ−アデノシンのようなヌクレオシドアナログ剤は非経口又は腹腔内投与することもできる。遊離酸又は医薬的に許容可能な塩としてのヌクレオシドアナログ剤の溶液を、ヒドロキシプロピルセルロースを含むがこれに限定されない、当該技術分野で公知の界面活性剤と水中で好適に調製することができる。分散液も当該技術分野で公知の方法により調製することができ、これはグリセロール、液体ポリエチレングリコール及びその混合物並びに油性物の使用を含むが、これらに限定されない。
【0071】
通常の保存及び使用条件下では、本発明の8−アミノ−アデノシンのようなヌクレオシドアナログ剤の医薬調製物は、微生物の増殖を防ぐため、1つ又はそれ以上の防腐剤を含有し得る。
【0072】
注射使用に好適な8−アミノ−アデノシンのようなヌクレオシドアナログの医薬製剤は、無菌水溶液又は分散液並びに無菌注射液又は分散液の即時調製用の無菌粉末を含む。あらゆる場合において、その形態は無菌性でなければならず、最終形態では注射器を用いて容易に投与される程度に流体性でなければならない。これは製造及び保存の条件下で安定でなければならず、細菌及び菌類のような微生物の汚染作用に対して保存しなければならない。多くの場合、等張剤、例えば、塩化ナトリウムを含むことが好ましい。注射用組成物の吸収延長は、吸収遅延剤、例えば、モノステアリン酸アルミニウム及びゼラチンの組成物中での使用によってもたらされ得る。
【0073】
無菌注射液は、上記の他の様々な成分を任意で含む適切な溶媒中に本発明のヌクレオシドアナログ剤を混和し、次に濾過滅菌することによって調製される。一般的に、分散剤は、塩基性分散媒体及び上記から必要とする他の成分を含む無菌ビヒクル中に、種々の滅菌ヌクレオシドアナログ剤を混和することによって調製される。無菌注射液の調製用の無菌粉末の場合、調製法は真空乾燥及び凍結乾燥を含むが、これらに限定されない。これらの方法により、ヌクレオシドアナログ剤に加えて任意の所望の成分の粉末が、予め濾過滅菌されたその溶液から得られる。
【0074】
本明細書で用いられるように、「医薬的に許容可能な担体」はあらゆる溶媒、分散媒体、コーティング、抗菌剤及び抗真菌剤、等張剤、吸収遅延剤などを含む。医薬活性物質に対するこのような媒体及び作用剤の使用は当該技術分野で公知である。従来の媒体又は作用剤が活性成分と不適合な場合を除き、これを本発明の治療用組成物において用いることは検討される。補充的な活性成分を本発明の組成物に組み入れることができる。
【0075】
局所使用に好適である、8−アミノ−アデノシンを含む本発明のヌクレオシドアナログ剤の医薬製剤は、油性・水性乳剤及びリポソーム製剤並びに薬剤の局所投与に一般的に使用されるローション、クリーム及び軟膏を含む。担体は、例えば、水、エタノール、ポリオール、例えば、グリセロール、プロピレングリコール及び液体ポリエチレングリコールなど、その好適な混合物並びに植物油を含有する溶媒又は分散媒体となり得る。適正な流動性は、例えば、レシチンのようなコーティングの使用、分散の場合に必要な粒子サイズの維持及び界面活性剤の使用によって維持することができる。微生物の作用の予防は、種々の抗菌剤及び抗真菌剤、例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸、チメロサールなどによってもたらすことができる。
【0076】
投与の容易性及び用量の均等性のため、非経口及び他の組成物を投与単位形態にて製剤化することは本質的に有利である。本明細書で用いられる投与単位形態は、治療対象の哺乳動物に対する単位用量として適切な物理的に分離した単位を指し、各単位は、必要な医薬用担体と組み合わせて所望の治療効果を発揮するように計算された所定量のヌクレオシドアナログ剤を含有する。本発明の新規投与単位形態の仕様は、治療対象となる患者及び癌により決定され、また、それに直接依存し、患者及び癌によって異なり得るが、一般的に、投与単位形態は約0.1mg〜約10gの8−アミノ−アデノシンを含む。典型的な単位形態は約0.5〜約1gの8−アミノ−アデノシンを含み得る。一実施形態において、本発明の医薬組成物は、8−アミノ−アデノシン及び医薬的に許容可能な担体を含み、1〜8時間の範囲の時間での静注に好適な無菌液であり、8−アミノ−アデノシンは5mg/mL〜10mg/mLの範囲の濃度で存在する。一実施形態では、医薬的に許容可能な担体は米国薬局方5%デキストロース注射液である。
【0077】
(キット)
キットは経口及び注射用剤形にて単位用量の8−アミノ−アデノシンを備える。単位用量(経口又は注射)を含む容器に加え、これらのキットは、血液悪性疾患、特に骨髄腫のような形質細胞腫瘍の治療用の8−アミノ−アデノシンの使用及び付随的利益を記載した説明添付文書を含み得る。
【0078】
(診断法及び予後判定法)
本発明は、血液癌と診断された患者が、1つ又はそれ以上のMKK3、MKK6、p38 MAPキナーゼ、ERK1/2及びAktキナーゼ並びにその下流分子を標的とする8−アミノ−アデノシン又は他のヌクレオシドアナログ剤による治療に反応する可能性があるかを判定するための方法を含む。本方法は、患者由来の細胞を本発明の8−アミノ−アデノシン又はヌクレオシドアナログ剤で処理する工程と、1つ又はそれ以上の蛋白質のMKK3、MKK6、p38 MAPキナーゼ、ERK1、ERK2及びAktキナーゼ並びにその下流シグナル伝達分子のリン酸化を測定する工程とを提供し、1つ又はそれ以上の蛋白質のリン酸化の低下は、当該薬剤が癌の治療に有効であることを示す。妥当な下流分子は、ATF−2、p36 MAPキナーゼ、CHOP、MEF2、Elk−1、Myc、Max、Stal1、MSK−1、MAPKAPK−2、MNK1、MNK2、PRAK及びヒストンH3を含むが、これらに限定されない。
【0079】
骨髄腫のような血液疾患に対する治療に患者が陽性に反応することを示すリン酸化の低下は、未処理細胞に比し、少なくとも約1%の低下、少なくとも約5%の低下、少なくとも約10%の低下、少なくとも約15%の低下、少なくとも約20%の低下、少なくとも約25%の低下、少なくとも約30%の低下、少なくとも約40%の低下、少なくとも約50%の低下、少なくとも約60%の低下、少なくとも約70%の低下、少なくとも約80%の低下、少なくとも約90%の低下、少なくとも約95%の低下又は少なくとも約99%の低下による、上記蛋白質の1つのリン酸化の低下により実証される。
【0080】
患者由来の骨髄細胞は当該技術分野で公知の方法を用いて生検によって抽出できる。骨髄細胞は形質細胞や他の細胞種を含む。任意で、対象とする免疫細胞が更に単離される。一実施形態では、免疫細胞は形質細胞(骨髄腫細胞)である。当該技術分野で公知の方法を用いて骨髄細胞の混合物から特定の細胞種を更に単離することができる。細胞に関する蛋白質のリン酸化レベルを判定するため、当該技術分野で公知のように、細胞を溶解し、且つ細胞から蛋白質を単離するもしくはその一方を行うことが必要となり得る。
【0081】
1つ又はそれ以上の上記蛋白質のリン酸化レベルは、当該技術分野で公知の任意の方法を用いて測定することができる。一実施形態では、リン酸化を測定する方法はウェスタンブロット分析である。ブロットは、リン酸化型のMKK3、MKK6、p38 MAPキナーゼ、ERK1、ERK2又はAktキナーゼ並びにその下流シグナル伝達分子に対する抗体でプローブすることができる。
【0082】
本発明の一実施形態において、当該方法は、骨髄腫又は多発性骨髄腫と診断された患者が治療に有効に反応し、或いは治療に反応しないかを判定するために用いられる。形質細胞が患者から単離され、1つ又はそれ以上のMKK3、MKK6、p38 MAPキナーゼ、ERK1、ERK2又はAktキナーゼ並びにその下流シグナル伝達分子のリン酸化レベルを低下させることが可能な8−アミノ−アデノシン又は他のヌクレオシドアナログ剤で処理される。
【0083】
本発明の別の実施形態において、8−アミノ−アデノシン又は他のヌクレオシドアナログで処理された患者由来の細胞は、患者由来の未処理細胞のような対照と比較される。8−アミノ−アデノシン又は他のヌクレオシドアナログで処理された患者由来の細胞は、当該技術分野で公知の対照細胞とも比較される。
【0084】
(化合物スクリーニング法)
本発明は、リンパ腫、白血病及び骨髄腫の治療の有効性に関して試験化合物をスクリーニングする方法を含む。一実施形態において、細胞が化合物で処理され、1つ又はそれ以上の蛋白質のMKK3、MKK6、p38 MAPキナーゼ、ERK1、ERK2及びAktキナーゼ並びに下流シグナル伝達分子のリン酸化が測定される。下流分子は、ATF−2、p36 MAPキナーゼ、CHOP、MEF2、Elk−1、Myc、Max、Stal1、MSK−1、MAPKAPK−2、MNK1、MNK2、PRAK及びヒストンH3を含むが、これらに限定されない。1つ又はそれ以上の被測定蛋白質のリン酸化の低下は、血液癌の有効な治療を示す。有効な治療を示すリン酸化の低下は、試験化合物で処理されない細胞に比し、少なくとも約10%のリン酸化の低下、少なくとも約20%のリン酸化の低下、少なくとも約30%のリン酸化の低下、少なくとも約40%のリン酸化の低下、少なくとも約50%のリン酸化の低下、少なくとも約60%のリン酸化の低下、少なくとも約70%のリン酸化の低下、少なくとも約80%のリン酸化の低下、少なくとも約90%のリン酸化の低下又は少なくとも約99%のリン酸化の低下である。一実施形態では、血液癌は骨髄腫である。
【0085】
本発明の細胞は当該技術分野で公知の培養免疫細胞でよい。一実施形態では、免疫細胞は骨髄腫細胞のような培養疾患細胞である。細胞は多剤耐性でよく、多剤耐性骨髄腫細胞を含むが、これに限定されない。本発明は、ステロイド耐性骨髄腫細胞のようなステロイド耐性細胞も含む。別の実施形態では、培養細胞は正常形質細胞のような正常免疫細胞である。
【0086】
本発明の細胞は、当該技術分野で公知の細胞採取及び生検方法により動物から採取される細胞でもよい。一実施形態では、動物はヒトである。別の実施形態では、動物はイヌ、ネコ、ラット、マウス、霊長動物又はウシである。細胞は骨髄腫細胞のような疾患細胞でよく、或いは正常細胞でよい。正常細胞は健常動物から得ることができる。或いは、正常細胞は、正常細胞が疾患細胞に隣接している疾患動物から得ることができる。
【0087】
本発明の一実施形態において、疾患細胞が試験化合物で処理され、上記のように結果として生じるリン酸化値が、同一化合物で処理された正常健常細胞のリン酸化値と比較される。別の実施形態では、疾患細胞は試験化合物で処理され、未処理疾患細胞と比較される。当業者であれば、骨髄腫のような血液癌を治療する試験化合物の性能を確認するため、陽性及び陰性対照を含む様々な対照を用いることができることを理解するであろう。例えば、試験化合物で処理された骨髄腫細胞のMKK3、MKK6、p38 MAPキナーゼ、ERK1、ERK2又はAktキナーゼ並びに下流シグナル伝達分子のリン酸化レベルを、1つ又はそれ以上の蛋白質のリン酸化レベルへの既知の作用を有する化合物で処理された骨髄腫細胞或いは未処理骨髄腫細胞のリン酸化レベルと比較することができる。
【0088】
本発明の別の実施形態において、当該技術分野で公知の方法を用いて、試験細胞のPP2Aのホスファターゼ活性が測定される。ホスファターゼ活性の上昇は、当該処理が骨髄腫のような血液悪性疾患に効果的であることを示す。当業者であれば、対照細胞、即ち、化合物で処理されない細胞又は既知のホスファターゼ活性を有する化合物で処理された細胞のホスファターゼ活性を、請求された本発明に対して用いることができることを理解するであろう。少なくとも約10%、少なくとも約20%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%又は少なくとも約95%のPP2Aのホスファターゼ活性の上昇は、効果的な処置を示す。
【0089】
加えて、本発明の方法は、前記骨髄腫細胞のアポトーシスを測定する工程を含むことができ、アポトーシスの増加が多発性骨髄腫に対する有効な治療を示す。アポトーシスは当該技術分野で公知のアッセイにより測定することができる。骨髄腫のような血液癌の有効な治療を示すアポトーシスのレベルは、少なくとも約10%のアポトーシスの増加、少なくとも約15%のアポトーシスの増加、少なくとも約20%のアポトーシスの増加、少なくとも約25%のアポトーシスの増加、少なくとも約30%のアポトーシスの増加、少なくとも約40%のアポトーシスの増加、少なくとも約45%のアポトーシスの増加、少なくとも約50%のアポトーシスの増加、少なくとも約60%のアポトーシスの増加、少なくとも約70%のアポトーシスの増加、少なくとも約80%のアポトーシスの増加、少なくとも約90%のアポトーシスの増加及び少なくとも約95%のアポトーシスの増加となり得る。
【0090】
本発明の別の実施形態において、試験細胞は更に細胞増殖に関して分析され、細胞増殖の低下は骨髄腫のような血液癌の有効な治療を示す。細胞は当該技術分野で公知の細胞増殖アッセイを用いて分析することができる。例えば、試験化合物で処理された骨髄腫細胞を細胞増殖に関して分析することができる。試験化合物で処理された細胞の1つ又はそれ以上の蛋白質のMKK3、MKK6、p38 MAPキナーゼ、ERK1、ERK2及びAktキナーゼ並びに下流シグナル伝達分子のリン酸化の低下と細胞増殖の低下は、当該薬剤が骨髄腫に対する治療として有効であることを示す。少なくとも約10%、少なくとも約20%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%又は少なくとも約95%の細胞増殖の低下は、良好な治療を示す。
【0091】
本発明は、試験化合物で処理された細胞のカスパーゼ活性化を検出する工程を任意で含み、カスパーゼ活性化が血液悪性疾患の有効な治療を示す。一実施形態では、血液悪性疾患は骨髄腫である。別の実施形態では、血液悪性疾患は白血病又はリンパ腫である。
【実施例】
【0092】
(材料及び方法)
(細胞培養)
MM.1S及びMM.1R細胞株は以前に開発された(Goldman−Leikin et al.,1980,J.Lab.Clin.Invest.113:335−45)。元の細胞株(MM.1)はステロイドベースの療法で処置されたMM患者の末梢血から樹立された。ステロイド感受性クローン(MM.1S)が単離され、続いて、グルココルチコイドへの長期曝露によってステロイド耐性変異体(MM.1R)が開発された。RPMI8226細胞及び多剤耐性誘導MDR1OV MM細胞をWilliam Dalton博士(H・リー・モフィットがんセンター(H.Lee Moffitt Cancer Center)、フロリダ州タンパ)から得た(Bellamy et al.,1991,Cancer Res.51:995−1002)。5%CO2を含む37℃のインキュベータ中、10%ウシ胎仔血清、2mMグルタミン、ペニシリン100単位/ml、ストレプトマイシン100μg/ml及びファンギゾン2.5μg/mlを添加したRPMI−1640培地(Invitrogen社、メリーランド州ボルチモア)中で細胞を増殖させた。
【0093】
(薬剤及び化学物質)
8−NH2−AdoをR.I.Chemicals,Inc.(カリフォルニア州オレンジ郡)から、また、8−アミノ−アデノシンをBio Log社(カリフォルニア州ラ・ホヤ(La Jolla))から購入した。シタラビンをSigma社(ミズーリ州セントルイス)から得た。インビトロ試験用に、ヌクレオシドF−ara−Aに脱リン酸化された無菌凍結乾燥粉末としてフルダラビンをBerlex Laboratories社(カリフォルニア州アラメダ郡(Alameda))から購入した。ゲムシタビンをEli Lilly and Co.(インディアナ州インディアナポリス)から得た。キナーゼ阻害剤SB202190及びSB203580をSigma社(ミズーリ州セントルイス)から購入し、PD98059,U0126及びLY294002をCalbiochem社(カリフォルニア州サンディエゴ)から得た。オカダ酸をAlexis Biochemicals社(カリフォルニア州サンディエゴ)から購入した。
【0094】
(実施例1)
(細胞増殖アッセイ)
過去に報告されているようにMTSアッセイを行った(Krett et al.,Clin Cancer Res.3:1781−1787)。簡単に述べると、MM細胞を1ウェルあたり25,000個の細胞濃度にて96ウェルディッシュ中に培養し、8−NH2−Adoとともに72時間インキュベーションした。MTS Cell Titer Aqueousアッセイ(Promega社、ウィスコンシン州マディソン)を用いて細胞増殖を測定し、これは、生細胞中のミトコンドリアのデヒドロゲナーゼ酵素によるテトラゾリウム化合物のホルマザンへの変換を測定した。490nmの吸光度量によって測定されるホルマザン産物量は、培養物中の生細胞の数に直接比例する。データは、同じアッセイにおける対照培地で処理した細胞によって産生されたホルマザンのパーセントとして表した。
【0095】
(実施例2)
(免疫ブロット分析)
指示された時間の間、5×106個の細胞を10μMの8−NH2−Adoで処理し、採取した。細胞ペレットを冷却リン酸緩衝生理食塩水(PBS;NaCl 8.1g,Na2HPO4 1.14g,KCI 0.22g及びKH2PO4 0.25g/L)で洗浄し、溶解緩衝液(HEPES 50mM,NaCl 150mM,MgCl2 1.5mM,1mM EDTA pH8.0,NaFI 100mM,ピロリン酸Na 10mM,PMSF 500μM,X−100 0.5%トリトン,グリセロール 10%)と共に4℃で1時間インキュベーションした。溶解物を9000xg,4℃で1分間遠心分離し、上澄みを採取し−20℃で保存した。Bio−Radプロテインアッセイ(BioRad Laboratories社、カリフォルニア州ハーキュリーズ(Hercules))により蛋白濃度を測定した。濃度が30jigの蛋白質をサンプル緩衝液(125mMトリス pH6.8,4%SDS,20%グリセロール,100mMジチオスレイトール(DTT)及び0.05%ブロモフェノールブルー)と混合し、トリス−グリシンプレキャストゲル(Invitrogen社/Novex、カリフォルニア州カールズバッド(Carlsbad))上で分画した。次に、蛋白質をポリビニリデンフルオリド(PVDF)膜(Immobilon−P、Millipore社、マサチューセッツ州ベッドフォード(Bedford))に転写した。蛋白質転写後、膜をPBS−T(0.1%Tweenを含むPBS)中の5%脱脂乳によりブロックし、4℃で一晩、一次抗体と共に、続いて西洋ワサビペルオキシダーゼに結合した二次抗体(Amersham社、イリノイ州アーリントンハイツ(Arlington Heights))と共にインキュベーションした。ECL Plusウェスタンブロッティング化学発光検出試薬(Amersham社、イリノイ州アーリントンハイツ)を用いてブロットを発色展開させ、X線フィルム(Hyperfilm、Amersham社、イリノイ州アーリントンハイツ)によりシグナルを可視化した。再プローブすることを目的に、Pierce Biotechnology社(イリノイ州ロックフォード(Rockford))製のレストア・ウェスタンブロット・ストリッピングバッファーを用いてブロットを剥離した。ホスホ−MKK3/6(Ser189/207)、ホスホ−p38(Thr180/Tyr182)、ホスホ−ATF−2(Thr69/71)、ホスホ−c−Raf(Ser259)、ホスホ−MEK1/2(Ser217/221)、総MEK1/2、ホスホ−ERK1/2(Thr202/Tyr2O4)、総ERK1/2、ホスホ−p90RSK(Ser380)、総RSK、ホスホ−PDK1(Ser241)、総PDKI、ホスホ−PTEN(Ser380)、総PTEN、ホスホ−Akt(Ser473)、総Akt、ホスホ−GSK−3p(Ser9)、総GSK−3p、ホスホ−FKHRLI(Thr32)/−FKHR(Thr24)、ホスホ−FKHR(Ser256)一次抗体を、Cell Signaling Technology社(マサチューセッツ州ベバリー(Beverly))から得た。総MKK3、総MKK6、総p38、総ATF−2、総c−Raf、総FKHR、総FKHRLI、ホスホ−JNK及び総JNKを、Santa Cruz Biotechnology社(カリフォルニア州サンタクルーズ(Santa Cruz))から購入した。カスパーゼ3、カスパーゼ9及びPARP抗体をPharmingen社(カリフォルニア州サンディエゴ)から、抗MKP1をUpstate社(ニューヨーク州レークプラシッド(Lake Placid))から得た。抗カスパーゼ8マウス血清はMarcus Peter博士(シカゴ大学)から寄贈された。
【0096】
(実施例3)
(フローサイトメトリー)
MM1細胞を10μMの8−NH2−アデノシンと共に0.5、1、2、4又は24時間インキュベーションした。細胞周期内の細胞分布を求めるため、I×106個のMM.IS細胞をペレット化し(500xg,4℃で5分間)、氷冷PBS中で2回洗浄し、氷冷70%エタノール中に固定し、分析するまで4℃で保存した。フローサイトメトリーによる分析前、固定した細胞をペレット化し、PBS中で洗浄し、氷冷流動緩衝液(0.5%Tween20、ヨウ化プロピジウム15μg/mL及びDNアーゼ非含有RNアーゼ5μg/mLを含むPBS)中に再懸濁した。Epics Profile I1フローサイトメーター(Coulter Electronics,Inc.、フロリダ州ハイアリーア(Hialeah))を用いて染色細胞を分析した。図2はこの試験の結果を示す。
【0097】
(実施例4)
(ATP欠乏アッセイ)
10%ウシ胎仔血清、2mMグルタミン、100単位/mlペニシリン、100μg/mlストレプトマイシン及び2.5μg/mlファンギゾンを添加した、デキストロース非含有RPMI−1640培地(Invitrogen社、メリーランド州ボルチモア)中でMM.IS細胞を増殖させた。種々の濃度のデキストロースを有し、或いは有さない、Sigma社(ミズーリ州セントルイス)製のアンチマイシン(2μM、ミトコンドリア阻害剤)又は2−デオキシ−D−グルコース(2−DOG、5mM、解糖阻害剤)を添加することにより、細胞内ATPレベルを操作した。異なる6種類の代謝状態を検討した:1)デキストロースを含まないアンチマイシン、2)アンチマイシン+0.25mMデキストロース、3)アンチマイシン+1mMデキストロース、4)アンチマイシン+10mMデキストロース、5)デキストロースを含まない2−DOG、6)2−DOG+10mMデキストロース。対照細胞はATP欠乏に曝さず、デキストロース非含有RMPI−1640に10mMデキストロースを加えた。Molecular Probes社(オレゴン州ユージーン(Eugene))製のATP測定キットを用いてルシフェラーゼベースのアッセイにおいて内在性ATPを測定し、各処理に対応するレベルを未処理対照に規準化した(20)。
【0098】
(実施例5)
(8−NH2−Adoは主要シグナル伝達分子のリン酸化の喪失を引き起こす)
MM.1S細胞を10μMの8−NH2−Adoに0、0.5、1、2、4及び6時間曝露し、その後、前述(実施例2)のように細胞を溶解した。蛋白質30μgをゲル電気泳動によって分離し、PVDF膜に転写し、MKK3/6,p38 MAPK,ATF−2,MEK1/2,ERK1/2,p90RSK,JNKl,PDKl,Akt,FKHRL1及びGSK−3βに対するリン酸化特異的抗体でプローブした。薬剤処理が総蛋白レベルに作用しないように、また、同等の処理量及び転写となるように、ブロットを剥離し、対応する総蛋白抗体で再プローブした。図1A,1B,1C及び1Dはこのブロットの結果を示す。
【0099】
(p38 MAPK経路)
p38 MAPKはその上流の活性化キナーゼMKK3及びMKK6もしくはその一方によって活性化される。免疫ブロット分析では、8−NH2−Ado処理が経時的にMKK3/6の脱リン酸化を誘発することが明らかにした。リン酸化したMKK3/6蛋白質レベルは2時間の8−NH2−Ado処理により有意に低下し、6時間処理により微量レベルとなる。p38のリン酸化レベルは1時間の薬剤処理により劇的に低下し、2時間後には顕著なリン酸化は認められない。p38基質のATF−2のリン酸化状態も損なわれ、リン酸化蛋白質レベルは2時間の処理により顕著に低下する(図IA)。このMAPKモジュールにおいて評価される全蛋白質に対する総蛋白質レベルには変化がない。
【0100】
(ERKI/2経路)
ERKI/2蛋白質は劇的な脱リン酸化を受けるが、ERK経路の他の化合物のリン酸化レベルは8−NH2−Ado処理によって同様には影響されない。上流ERKI/2活性化キナーゼMEK1/2のリン酸化レベルは、薬剤処理時に低下ではなく上昇するように思われるが、総MEK1/2蛋白質レベルは変化しない。しかし、ERKI/2キナーゼのリン酸化は30分間の8−NH2−Ado処理により有意に低下し、2時間では微量レベルに低下するが、総ERKI/2レベルは変化しない。総蛋白質レベルに影響はないが、8−NH2−Ado処理はERKI/2基質のp90RSKのリン酸化レベルを実際にわずかに低下させるように思われるが、この作用はErK1/2又はp38 MAPK経路の化合物に関して認められるほど劇的ではない(図1B)。
【0101】
(c−Jun N末端キナーゼ(JNK))
c Jun N末端又はストレス活性化キナーゼ(JNK/SAPK)は、MAPK群のセリン/トレオニン蛋白質キナーゼの一サブファミリーを成し、アポトーシスのような細胞プロセスに関与する。しかし、他のMAPK蛋白質p38及びERKと異なり、JNKのリン酸化は8−NH2−Ado処理に影響されない(図1Q)。
【0102】
(Aktキナーゼ経路)
Akt調節蛋白質PDK1の総レベル及びリン酸化レベルには変化はないが、Aktキナーゼは8−NH2−Ado処理時にリン酸化を大幅に喪失させる。ホスホ−Aktレベルは2時間の処理により有意に低下し、最終的には更に微量レベルに低下する。Aktの下流標的も同様に影響を受ける。フォークヘッド転写因子ファミリーのメンバーは大幅なリン酸化の喪失を受けるが、総蛋白質レベルは変化しない。FKHRLIのリン酸化は2時間の薬剤処理により大幅に低下し、4時間及び6時間において顕著なリン酸化は認められない。FKHRのリン酸化も同様に影響を受ける(データは示さず)。ホスホ−GSK−3pレベルは2時間の8−NH2−Ado処理により低下し、6時間では微量となる(図1D)。
【0103】
これらの主要シグナル伝達分子のリン酸化レベルの変化が細胞死の直接的な結果であるかを確認するため、細胞周期分析により細胞生存能に関して類似培養物を評価した。アポトーシスを受ける細胞はDNA小断片の切断及び欠損によってDNA含量が減少する。従って、アポトーシス細胞は細胞周期のG1サブフラクションにおける細胞として同定される。この分析では、Gサブフラクションの未処理細胞と最大4時間8−NH2−Adoで処理した細胞との間で差異は明らかにならず、これは、ウェスタンブロット法により認められたリン酸化の喪失は細胞生存能の付随的喪失が原因ではなかったことを示す(図2)。
【0104】
(実施例6)
(種々のMM細胞株における8−NH2−Adoのp38 NJAPKのリン酸化に対する作用)
薬剤誘発性の蛋白リン酸化の変化が複数の細胞株において生じるのか、或いはMM.1S骨髄腫細胞株に限定されるのかを判定するため、8−NH2−Adoのリン酸化レベルに対する作用を付加骨髄腫細胞株において評価した。RPMI−8226骨髄腫親細胞及び多剤耐性誘導MDR10V細胞並びにグルココルチコイド耐性MM.1R細胞はすべて、8−NH2−Adoの細胞傷害能の作用を受ける(12)。8−NH2−Adoに反応するp38のリン酸化レベルをこれらの細胞株において評価し、用量依存的に低下することが見出されたが、総p38レベルは変化しない。このデータは、8−NH2−Ado誘発性の蛋白リン酸化の喪失がMM.1S骨髄腫細胞株に限定されないことを示唆する(データは示さず)。
【0105】
(実施例7)
(他のヌクレオシドアナログのリン酸化レベルに対する作用)
10μMの8−クロロ−アデノシンで0、0.5、1、2、4又は6時間、或いは10μMシタラビン、フルダラビン、ゲムシタビン又は8−アミノ−アデノシンで4時間MM.IS細胞を処理した。細胞を前述のように溶解し、また、蛋白質30μgをゲル電気泳動によって分離し、PVDF膜に転写し、ホスホ−p38 MAPK(Thr180/Tyr182)抗体でプローブした。薬剤処理が総蛋白レベルに作用しないように、また、同等の処理量及び転写となるように、ブロットを剥離し、総p38 MAPK抗体で再プローブした。典型的な試験の結果を図3A及び3Bに示す。
【0106】
8−NH2−Adoは主要シグナル伝達分子のリン酸化レベルを有意に変化させることによって新規の細胞作用を誘発するだけではなく、その作用能において他のヌクレオシドアナログ、ピリミジン及びプリンの両方、の中で特異であるようにも思われる。8−NH2−Adoの同族体8−クロロ−Ado(8−CI−Ado)はMM細胞においてアポトーシスを誘導するが、MM.IS細胞における10μMの8−クロロ−アデノシン処理の時間経過は、p38(図3A),ERK1/2又はAktキナーゼのリン酸化状態への作用を示さない(データは示さず)。プリンアナログであるフルダラビン並びにピリミジンアナログであるシタラビン及びゲムシタビンもMM細胞に対して細胞傷害性であることが前記で示された。しかし、8−NH2−Adoがこれらのキナーゼのリン酸化の大幅な喪失を引き起こす時間及び濃度である、MM.1S細胞中の濃度10μMにて4時間使用した場合、これらはp38(図3B),ERK1/2又はAktのリン酸化の低下を引き起こさない(データは示さず)。
【0107】
(実施例8)
(MMAS細胞のATP欠乏)
8−NH2−Adoは内在性ATPプールの大幅な変化を引き起こすため、利用可能なATPの減少がキナーゼ又はホスファターゼに対する作用を有し、最終的に細胞内の重要なシグナル伝達経路のリン酸化に影響を及ぼし得る。ATP単独の減少が認められたリン酸化の低下を引き起こすのに十分であるかを試験するため、電子伝達系を阻害するアンチマイシンA又は解糖を阻害する2−デオキシグルコース(2−DOG)の添加により細胞内ATPレベルを操作し、デキストロースの濃度上昇を導入することにより、段階的なATP欠乏を達成した。MM.1S細胞をデキストロース非含有培地中で増殖させ、2μMのアンチマイシンA、5mMの2−DOG及び種々の濃度のデキストロースで90分間処理した。ルシフェラーゼベースのアッセイにおいて3組の試料を用いて細胞内ATPレベルを測定し、本明細書で未処理対照のパーセントとして表す。トリパンブルー排除及び細胞周期の内容によって細胞生存能を評価し、未処理対照のパーセントとして表す。処理後、細胞を前述のように溶解し、また、蛋白質30μgをゲル電気泳動によって分離し、PVDF膜に転写し、ホスホ−p38 MAPK(Thr180/Tyr182)抗体でプローブした。薬剤処理が総蛋白レベルに作用しないように、また、同等の処理量及び転写となるように、ブロットを剥離し、総p38 MAPK抗体で再プローブした。典型的な試験の結果を図4に示す。更なる2回の試験により同等の結果を得た。付加試験は、ホスホ−ERK1/2及びホスホ−Aktを用いて実施し(データは示さず)、これもリン酸化の低下を示さなかった。これらの結果は、キナーゼモジュールにおけるp38,ERK,Aktや他の蛋白質のリン酸化に対する8−NH2−Adoの作用が、単純に内在性ATPレベルの低下の結果ではないことを示す。
【0108】
(実施例9)
(8−NH2−Adoの細胞内ホスファターゼへの作用)
キナーゼ分子とその基質のリン酸化低下機序の1つの可能性は、これらを調節するホスファターゼの活性上昇である。この仮説を試験するため、P38 MAPKを脱リン酸化するように作用することができる二重特異性ホスファターゼMKPIのレベルを評価した。MM.1S細胞を10μMの8−NH2−Adoに、0、0.5、1、2、4及び6時間曝露し、その後、細胞を前述のように溶解した。蛋白質30μgをゲル電気泳動によって分離し、PVDF膜に転写し、MKP1に対する抗体でプローブした。図5Aに示す結果は、このホスファターゼが関与している可能性は低いことを示唆する。
【0109】
加えて、PI3K/Aktシグナル伝達経路の負の調節に関与する主要ホスファターゼをコードするPTENに対する8−NH2−Adoの作用を評価した(図5B)。MM.1S細胞を10μMの8−NH2−Adoに、0、0.5、1、2、4及び6時間曝露し、その後、細胞を溶解した。蛋白質30μgをゲル電気泳動によって分離し、PVDF膜に転写し、ホスホ−PTENに対する抗体でプローブした。ブロットを剥離し、総PTEN抗体で再プローブした。
【0110】
MKP1のように、総PTEN及びホスホ−PTENレベルは8−NH2−Ado処理によって変化しない。細胞内部位がPTEN機能の調節に主要な役割を果たすが、C末端ドメインのリン酸化もホスファターゼ活性を負に調節することが示されている(28,29)。従って、無変化ホスホ−PTENレベルは、このホスファターゼが蛋白リン酸化に対する薬剤媒介性作用に関与しないことを示す。
【0111】
細胞内ホスファターゼの関与を試験する並行的な手法において、セリン/トレオニンホスファターゼPP2A及びPPIが関与するかを評価するため、8−NH2−Adoと併せて種々の濃度のホスファターゼ阻害剤のオカダ酸でMM.1S細胞を4時間処理した。ホスホ−P38及び総P38抗体に対して免疫ブロットした細胞抽出物は、8−NH2−Adoの存在下、30nMオカダ酸濃度にてリン酸化の部分的回復があることを示した(図5C)。加えて、オカダ酸によるMM.1S細胞の処理は、8−NH2−Ado誘発性のP38のリン酸化の喪失を有意に遅延させる。10μMの8−NH2−Adoと30nMオカダ酸で処理したMM.1S細胞の時間経過は、8−NH2−Ado単独で処理したMM.1Sと対照的に、細胞オカダ酸の存在下、ホスホ−P38レベルの低下が遅延し、6時間時点でも存在することを示す(図5D)。細胞内の30nMオカダ酸濃度はPPIに対するPP2Aの選択的阻害を示し、PP2Aの活性化が8−NH2−Ado誘発性のP38のリン酸化の低下に役割を果たし得ることを示唆する。
【0112】
(実施例10)
(カスパーゼ活性及びPARP開裂に対する8−NH2−Adoの作用)
MM.1S細胞を10μMの8−NH2−Adoに、0、0.5、1、2、4又は6時間曝露し、その後、細胞を前述のように溶解した。蛋白質30μgをゲル電気泳動によって分離し、PVDF膜に転写し、図6に示すように抗体でプローブした。矢印はカスパーゼ8及びカスパーゼ9の開裂断片並びにPARP開裂断片を示す。同等の処理量及び転写となるように総蛋白質レベルも評価した(データは示さず)。典型的な試験の結果を示す。更なる2回の試験により同等の結果を得た。
【0113】
8−NH2−Ado処理はエフェクターカスパーゼであるカスパーゼ8及びカスパーゼ9を活性化する。図6は、開裂・活性化されたカスパーゼ8及びカスパーゼ9が10μMの8−NH2−Ado処理の2〜4時間の間に発現することを示す。ユニバーサルカスパーゼ基質であるポリ(ADP−リボース)ポリメラーゼ(PARD)も薬剤処理の2時間時点に始まり発現する。これらのアポトーシスマーカーはシグナル伝達キナーゼのリン酸化喪失に時間的に追従する。
【0114】
(実施例11)
(8−NH2−Ado媒介性細胞傷害に対するキナーゼ阻害剤の作用)
キナーゼ阻害剤が8−NH2−Adoの細胞生存能への作用を調節し得るかを検討するため、細胞増殖アッセイを行った。種々の用量のp38キナーゼ阻害剤SB202190及びS13203850、ERK1/2阻害剤PD98059及びU0126並びにPI3K阻害剤LY294002単独で、また、10μMの8−NH2−Adoと共にMM.1S細胞を処理した。細胞生存能アッセイにおいて、10μMの8−NH2−Adoとキナーゼ阻害剤の併用は、8−NH2−Adoの細胞傷害作用を増大させる相乗効果とはならず、また、キナーゼ阻害剤が8−NH2−Adoの細胞傷害作用を低下させることもない(データは示さず)。
【0115】
本出願において考察した刊行物、特許及び特許出願は、すべて参照して本明細書に組み込まれる。上記明細書において、本発明をその特定の実施形態に関連して説明し、例示目的として多くの詳細事項を示したが、本発明は更なる実施形態を許容し、また、本明細書で述べた特定の詳細事項は本発明の基本原理から逸脱することなく大幅に変更され得ることは当業者には明らかであろう。
【図面の簡単な説明】
【0116】
【図1A】Aは、8−アミノ−アデノシンで処理された骨髄腫細胞由来であって、リン酸化及び総(リン酸化及び非リン酸化)主要経路蛋白質に対する抗体を用いてプローブされた蛋白質を示すブロット図である。
【図1B】Bは、8−アミノ−アデノシンで処理された骨髄腫細胞由来であって、リン酸化及び総(リン酸化及び非リン酸化)主要経路蛋白質に対する抗体を用いてプローブされた蛋白質を示すブロット図である。
【図1C】Cは、8−アミノ−アデノシンで処理された骨髄腫細胞由来であって、リン酸化及び総(リン酸化及び非リン酸化)主要経路蛋白質に対する抗体を用いてプローブされた蛋白質を示すブロット図である。
【図1D】Dは、8−アミノ−アデノシンで処理された骨髄腫細胞由来であって、リン酸化及び総(リン酸化及び非リン酸化)主要経路蛋白質に対する抗体を用いてプローブされた蛋白質を示すブロット図である。
【図2】8−アミノ−アデノシンと共に0.5、1、2、4及び24時間インキュベーションされたMM.1S細胞に対する、フローサイトメトリーによる細胞周期を示すグラフ図である。
【図3】A及びBは、種々のヌクレオシドアナログと共にインキュベーションされたMM.1S骨髄腫細胞由来であって、リン酸化p38 MAPキナーゼに対する抗体を用いてプローブされた蛋白質を示すブロット図である。
【図4】MM.1S細胞中のp38 MAPKのリン酸化レベルに対するATP欠乏の作用を示すATPアッセイのブロット及び試験結果図である。
【図5A】Aは、MM.1S細胞中の8−アミノ−アデノシンのそれぞれMKP−1及びPTEN(リン酸化及び総PTEN)レベルに対する作用を示すブロット図である。
【図5B】Bは、MM.1S細胞中の8−アミノ−アデノシンのそれぞれMKP−1及びPTEN(リン酸化及び総PTEN)レベルに対する作用を示すブロット図である。
【図5C】Cは、MM.1S細胞中の8−アミノ−アデノシン及びオカダ酸処理のリン酸化p38 MAPK及び総p38 MAPKに対する作用を示すブロット図である。
【図5D】Dは、MM.1S細胞中の8−アミノ−アデノシン及びオカダ酸処理のリン酸化p38 MAPK及び総p38 MAPKに対する作用を示すブロット図である。
【図6】MM.1S細胞中の8−アミノ−アデノシンのカスパーゼ8及びカスパーゼ9に対する作用を示すブロット図である。
【技術分野】
【0001】
(関連出願データ)
本出願は、2004年11月12日に申請された米国仮出願第60/626,862号の利益を主張するものであり、同仮出願は参照してその全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
(発明の分野)
本出願は、8−アミノ−アデノシンのようなヌクレオシドアナログ剤を用いて血液悪性疾患を治療するための方法に関する。
【背景技術】
【0003】
(発明の背景)
白血病、リンパ腫及び骨髄腫は血液関連癌としても周知の血液悪性疾患であり、米国において癌の中で総合的に発症率では第5位、死亡率では第2位となっている。治療の進歩にもかかわらず、重要な課題が残存する。例えば、現行の治療法では、続発性悪性疾患、臓器不全(心臓、肺及び内分泌)、持続する神経心理学的及び心理社会的問題並びに生活の質と関連する問題を含む有害事象を生じさせる頻度が高い。一部の患者では治療により長期的寛解及び治癒に至り得るが、多くの患者には血液悪性疾患は最終的に死をもたらす慢性疾患である。5年生存率は、例えば、ホジキン病では83%、非ホジキンリンパ腫では53%、白血病全体では45%、多発性骨髄腫では29%、急性骨髄性白血病では14%である(2003年5月15日の米国上院歳出委員会・防衛小委員会において白血病・リンパ腫学会を代表したGeorge Dahlman氏)。従って、これらの疾患に対する新規治療法が多大に必要とされている。
【0004】
多発性骨髄腫(MM)とも称される骨髄腫は、悪性形質細胞が骨髄に蓄積するB細胞リンパ増殖性疾患である。正常人において形質細胞は細胞に占める割合が5%未満である。しかし、多発性骨髄腫に罹患した患者では、形質細胞は存在する細胞の10%超を含み得る。大部分の形態の骨髄腫は骨髄及び周囲の骨における多部位に迅速に転移する。骨髄腫細胞と称される骨髄腫形質細胞は、血管新生を促進する血管内皮細胞増殖因子(VEGF)のような増殖因子を産生する。また、骨髄腫細胞は骨髄を標的とすることを可能にする特殊な接着分子をその表面に有し、骨髄にて間質細胞に付着し、インターロイキン6(IL−6)のようなサイトカイン、NF−κB活性化受容体(RANK)リガンド及び腫瘍壊死因子(TNF)を産生する。サイトカインは骨髄腫細胞の増殖を刺激し、アポトーシスを阻害し、骨髄腫細胞の増殖、また、最終的に骨破壊を生じさせる。
【0005】
同疾患に罹患した一患者内の骨髄腫細胞は同一であり、単一クローン性(M)蛋白質又はパラプロテインと称される同じ免疫グロブリン(IgG,IgA,IgD又はIgE)を大量に産生する。具体的なM蛋白質は患者により異なるが、任意の一患者においてはほぼ常に同じである。全症例の3分の2において、血清免疫グロブリンはIgGクラスに属するが、残りの3分の1は、通常、IgAである。稀な症例ではIgE又はIgD又はこの2つの混交が生じる。血清又は尿電気泳動を用いてM蛋白質を同定することができる。MMの別の重要な診断特性は尿中のベンス・ジョーンズ蛋白質と称される軽鎖の存在である。ベンス・ジョーンズ蛋白質はκ又はλ遊離軽鎖を含むが、その両方を含むことはない(Haen,1995,Principles of Hematology(血液学の原理))。
【0006】
MMは疼痛及び骨折を特徴とする体軸骨格の骨破壊を生じさせる。多発性骨髄腫と関連するアミロイドーシスは比較的一般的な所見である。腎不全、高カルシウム血症、貧血、細菌感染感受性の上昇及び正常な免疫グロブリン産生の障害も同疾患の一般的な臨床症状である。
【0007】
MMは癌全体の約1%及び全癌死の2%を示す。この血液癌に対する治療法はなく、従来の療法で診断後の生存期間中央値は3〜4年である。高用量化学療法及び幹細胞移植は寛解誘導において良好であるが、患者は最終的には再発し、且つ薬剤耐性疾患を発症する、もしくはその一方が起こる(非特許文献1;非特許文献2)。
【0008】
細胞傷害性プリン及びピロリジンヌクレオシド誘導体は、抗腫瘍療法に良好に導入された最初期の化学療法剤の1つであり、細胞傷害剤、抗ウイルス剤及び免疫抑制剤を含む薬理学的に多様なメンバーに属する。急性及び慢性血液悪性疾患の治療に一部のヌクレオシドアナログが現在用いられているが、これらのアナログはインビトロで十分な活性を示しておらず、或いは臨床試験においてMM治療の臨床評価を継続する根拠を示していない(非特許文献3;非特許文献4;非特許文献5;非特許文献6)。
【0009】
疾患過程に関与する分子を標的とする薬剤が必要である。MAPKはシグナル伝達分子であり、3段階のリン酸化カスケードを通して調節される。MAPKは細胞のホスファターゼによってトレオニン残基及びチロシン残基もしくはその一方において脱リン酸化されると、不活性化される(非特許文献7;非特許文献8)。リン酸化カスケードを通し、MAPKは多様な細胞外刺激を調整し、遺伝子発現の変化、増殖、分化、細胞周期停止及びアポトーシスを含む基本的な細胞過程を調節する。
【0010】
Aktキナーゼ経路は細胞の増殖及び生存の中心的役割を果たす別のシグナル伝達カスケードである。Akt基質は、蛋白質合成の調節、代謝、ホメオスタシス、細胞周期、細胞の生存及び増殖並びにアポトーシスを含む複数の細胞過程に関与する(非特許文献9;非特許文献10)。Aktキナーゼは、ホスファチジルイノシトール3−キナーゼ(PI3K)依存性及びホスファチジルイノシトール3−キナーゼ(PI3K)非依存性機構によって活性化され、Srcホモロジー2ドメイン含有イノシトールホスファターゼ(SHIP−1/2)及びPTENホスファターゼによって負に調節されるセリン/トレオニンキナーゼである。Aktは酵素活性又は細胞局在を変化させることによって下流の標的を負又は正に調節することができる。主に、Aktは二次メッセンジャーのリン脂質キナーゼPI3Kの活性化の結果として活性化されるが、Akt活性化のPI3K/PDKI非依存性機構も存在する。Aktは酵素活性又は細胞局在を変化させることにより、その下流の標的を調節する。Akt基質GSK3Pは代謝反応の上流にあり、増殖及び抗アポトーシス経路の調節に関与する。GSK3Pアイソフォームの酵素活性はAkt媒介リン酸化反応により阻害される(非特許文献11)。Foxo蛋白質ファミリーとしても周知のフォークヘッド転写因子ファミリーは、プログラム細胞死に役割を果たすことが詳細に報告されているAkt基質である。フォークヘッド蛋白質はAktによってリン酸化されると、14−3−3蛋白質によって細胞質内に隔離され、アポトーシス誘導転写因子としての機能を果たすことが阻止される(非特許文献9;非特許文献10)。IGF−1は、PI3K経路を活性化し、フォークヘッドファミリーメンバーFKHRLIのリン酸化及び不活性化を誘発することにより、細胞をグルココルチコイド誘発アポトーシスから防御する。FKHRLIの阻害は、細胞増殖を阻害し、アポトーシスを誘導する能力の喪失に至る(非特許文献12)。
【非特許文献1】Jemalら、CA Cancer J.Clin.(2004)54:8−29
【非特許文献2】Sirohiら、Lancet.(2004)363:875−87
【非特許文献3】Hjertnerら、Leukemia Research.(1996)20:155−60
【非特許文献4】Oken、Cancer(1992)70:946−8
【非特許文献5】Plunkettら、Cancer Chemother.Biol.Response Modif.(2001)19:21−45
【非特許文献6】Nagourneyら、Br.J.Cancer.(1993)67:10−14
【非特許文献7】Ono,Cell Signal.(2000)12:1−13
【非特許文献8】Changら、Nature.(2001)410:37−40
【非特許文献9】Frankeら、Oncogene.(2003)22:8983−98
【非特許文献10】Scheidら、FEBS Lett.(2003)546:108−12
【非特許文献11】JopeおよびJohnson、Trends Biochem.Sci.(2004)29:95−102
【非特許文献12】Qiangら、Blood.(2002)99:4138−46
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、8−アミノ−アデノシンが血液悪性疾患治療のための新規治療剤であることを示す。詳細には、本発明の発明者らは、8−アミノ−アデノシンが骨髄腫及び多発性骨髄腫の治療に使用され得ることを本明細書で示す。重要なことは、8−アミノ−アデノシンが多剤耐性骨髄腫細胞に対して細胞傷害性を示すことが見出されたことである。
【0012】
8−アミノ−アデノシンはp38 MAPキナーゼ、ERK1/2及びAkt経路のような主要経路に作用することも本明細書で示される。これらの経路における主要蛋白質のリン酸化の低下と骨髄腫細胞の細胞傷害との相関は、血液癌治療剤候補を同定するとともに、このような薬剤に効果的に反応する可能性がある患者を同定する新規の有用な方法の基礎となる。
【課題を解決するための手段】
【0013】
(発明の要旨)
本発明は、骨髄腫、リンパ腫又は白血病のような血液悪性疾患と診断された患者を治療有効量の8−アミノ−アデノシンで治療することを包含する。8−アミノ−アデノシンは、抗癌治療の有効性及び安全性を高めるため、他の治療剤と組み合わせて用いることができる。再発性血液悪性疾患及び多剤耐性悪性疾患もしくはその一方に罹患した患者を治療するため、8−アミノ−アデノシンを含有する医薬組成物を用いることもできる。
【0014】
8−アミノ−アデノシンは、骨髄腫、リンパ腫又は白血病と関連する症状又は病状を改善又は予防するために用いることもできる。一実施形態において、8−アミノ−アデノシンは、骨髄腫関連症状、例えば、高カルシウム血症、骨粗鬆症、溶解性骨病変、骨痛、原因不明の骨折、貧血、腎損傷、アミロイドーシス、びまん性慢性感染、体重減少、悪心、食欲不振及び精神錯乱の改善又は予防のために、骨髄腫と診断された患者に投与される。
【0015】
本発明は、1つ又はそれ以上のMKK3、MKK6、p38 MAPキナーゼ、ERK1、ERK2、Aktキナーゼ及びその下流シグナル伝達分子のリン酸化を実質的に低下させるのに十分な期間及び用量にてヌクレオシドアナログ剤を患者に投与することにより、骨髄腫、リンパ腫又は白血病と診断された患者を治療する方法も含む。一実施形態において、患者は再発性及び薬剤耐性型もしくはその一方の癌に罹患している。
【0016】
本発明の方法による8−アミノ−アデノシン又はヌクレオシドアナログ剤の投与は、癌の有効な治療と関連する臨床所見、例えば、骨髄腫に罹患した患者の血清中のM蛋白質又は尿中のベンス・ジョーンズ蛋白質の減少を含む臨床所見をもたらす。
【0017】
本発明の別の実施形態において、抗癌ヌクレオシドアナログの有効性は、血液癌に罹患した患者に対し、患者から細胞を単離し、ヌクレオシドアナログ剤を用いて細胞をインビトロで処理し、1つ又はそれ以上の蛋白質のMKK3、MKK6、p38 MAPキナーゼ、ERK1、ERK2及びAktキナーゼ並びにその下流シグナル伝達分子のリン酸化を測定することによって評価することができ、測定されたリン酸化の低下は患者が当該薬剤による治療に反応することを示す。
【0018】
本発明は、化合物を用いて細胞をインビトロで処理し、1つ又はそれ以上の蛋白質のリン酸化レベルを測定することにより、骨髄腫のような血液悪性疾患の治療の有効性に関して薬剤候補をスクリーニングするための方法も包含する。例えば、培養骨髄腫細胞を薬剤候補で処理し、細胞のリン酸化を測定し、当該薬剤が骨髄腫の治療に有効であるかを判定することができる。本実施形態において用いられる培養細胞は多剤耐性及びステロイド耐性もしくはその一方に対して選択され得る。
【0019】
本発明の方法は、薬剤候補の血液癌を治療する有効性を評価する付加工程、例えば、PP2Aホスファターゼ活性、アポトーシス、細胞増殖及びカスパーゼ活性化を測定する工程も含み得る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
(発明の詳細な説明)
本発明は、骨髄腫のような血液疾患を8−アミノ−アデノシン(8−NH2−Ado)を用いて治療する新規方法について述べる。本発明の発明者らは、多剤耐性及びステロイド耐性骨髄腫細胞を治療するために8−アミノ−アデノシンを用いることができ、当該薬剤は正常細胞と悪性細胞に対して異なる作用を発現し、血液悪性疾患に理想的な治療剤となることを見出した。
【0021】
本発明の発明者らは、8−アミノ−アデノシンはERK1/2,p38 MAPK及びAktキナーゼを含む複数の重要なシグナル伝達蛋白質の迅速且つ劇的なリン酸化の喪失を引き起こすが、他の既知のピリミジン及びプリンアナログ剤はリン酸化レベルを変化させないという驚くべき知見も得た。多くの細胞蛋白質が8−アミノ−アデノシンの作用を受けるが、JNK,PKC−8及びSTAT蛋白質を含む他の複数のシグナル伝達分子のリン酸化状態は8−アミノ−アデノシン処理による変化を受けず、これは8−アミノ−アデノシンによって引き起こされるリン酸化の低下が全体的な事象ではなく、むしろ特異的作用であることを示す。加えて、8−アミノ−アデノシンと無関係にATPを欠乏した細胞は重要な細胞蛋白質の同一のリン酸化低下を示さない。従って、8−アミノ−アデノシン処理によって引き起こされる内因性ATPプールの有意な変化は、リン酸化レベルの変化の原因とはなり得ない。
【0022】
本明細書で用いるように、「血液癌(blood cancer)」、「血液悪性疾患」、「血液癌(hematological cancer)」、「造血器悪性腫瘍」及び「造血器癌」は血液関連疾患を指し、白血病、リンパ腫及び骨髄腫並びにその特異的疾患型、例えば、多発性骨髄腫(MM)、ワルデンストローム・マクログロブリン血症、重鎖病、急性骨髄性白血病(AML)、急性リンパ性白血病(ALL)、慢性骨髄性白血病(CML)、慢性リンパ性白血病(CLL)、ヘアリー細胞白血病、前骨髄球性白血病、骨髄単球性白血病、単球性白血病、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫(小細胞型、大細胞型及び混合細胞型)及びバーキットリンパ腫を含むが、これらに限定されない。
【0023】
骨髄腫と多発性骨髄腫は本明細書で互換的に用いられる。当業者には理解できるように、本発明は骨髄腫とサブタイプの多発性骨髄腫に等しく適用される。骨髄腫は体内の一部位に、或いは体内の多部位に、即ち、多発性骨髄腫として存在し得る。
【0024】
本明細書で用いられるように、「ヌクレオシドアナログ剤」は化合物を含むヌクレオシドを指す。本発明のヌクレオシドアナログ剤は8−アミノ−アデノシンを含むが、これに限定されない。「薬剤」と「化合物」は本明細書で互換的に用いられ、8−アミノ−アデノシンのようなヌクレオシドアナログ剤を指す。
【0025】
本明細書で用いられるように、8−アミノ−アデノシン(8−NH2−Ado)は、アデニン塩基の8位にリボース糖及びアミン基を有するアデノシンアナログである。当業者であれば、骨髄腫のような血液疾患の治療のために、類似及び関連化合物もしくはその一方、例えば、類似の構造及び機能の化合物も本発明の方法とともに用いられ得ることを理解するであろう。従って、本発明は8−アミノ−アデノシンとその変異体を用いた方法に適用される。
【0026】
本明細書で用いられるように、「治療有効量(therapeutically effective dose)」及び「治療有効量(therapeutically effective amount)」は、血液悪性疾患の治療に効果的な用量を指す。治療有効量は、高カルシウム血症、骨粗鬆症、溶解性骨病変、骨痛、原因不明の骨折、貧血、腎損傷、アミロイドーシス、びまん性慢性感染、体重減少、悪心、食欲不振、感染、出血及び精神錯乱を含むがこれらに限定されない血液悪性疾患と関連する1つ又はそれ以上の症状又は臨床徴候の緩和、即ち、低減に十分な用量となり得る。
【0027】
治療有効量は、当業者であれば患者の全身症状の改善を推定するように、悪性疾患の臨床指標、即ち、検査所見を量的及び質的もしくはその一方に調整するのに十分な用量ともなり得る。本明細書で用いられるように、「調整」は測定された臨床指標の上昇又は低下のような変化を指す。このような量的性質の指標は、当該技術分野で理解されるように、統計的に有意な量により、好ましくは低下し、或いは上昇するであろう。臨床指標は、細胞数の実質的な増加又は減少、異常形態の細胞の存在、細胞内の異常染色体の存在(例えば、CMLにおけるフィラデルフィア染色体)、生化学的異常及び過形成骨髄を含むが、これらに限定されない。
【0028】
骨髄腫の臨床指標は、血清及び尿中M蛋白質の存在、尿中のベンス・ジョーンズ蛋白質の存在、異常形態の形質細胞、即ち、「骨髄腫細胞」及び形質細胞の全体的な増加を含む。本明細書で用いられるように、「M蛋白質」は当該技術分野で公知のように定義付けられ、患者における単一タイプの単一クローン性免疫グロブリンを指す。一実施形態において、骨髄腫の治療のための治療有効量の薬剤、例えば、8−アミノ−アデノシンは、被測定M蛋白質レベルの少なくとも約10%の低下、被測定M蛋白質レベルの少なくとも約20%の低下、被測定M蛋白質レベルの少なくとも約30%の低下、被測定M蛋白質レベルの少なくとも約40%の低下、被測定M蛋白質レベルの少なくとも約50%の低下、被測定M蛋白質レベルの少なくとも約60%の低下、被測定M蛋白質レベルの少なくとも約70%の低下、被測定M蛋白質レベルの少なくとも約80%の低下、被測定M蛋白質レベルの少なくとも約90%の低下、被測定M蛋白質レベルの少なくとも約95%の低下又は被測定M蛋白質レベルの少なくとも約99%の低下をもたらす。M蛋白質は、血清電気泳動及び免疫固定(immunofixation)を含むがこれらに限定されない、当該技術分野で公知の方法により測定することができる。血清電気泳動により測定されるM蛋白質は、電気泳動図のガンマグロブリン領域における鋭いピークの存在により同定することができる。
【0029】
別の実施形態において、骨髄腫の治療のための治療有効量の薬剤、例えば、8−アミノ−アデノシンは、被測定ベンス・ジョーンズ蛋白質の少なくとも約10%の減少、被測定ベンス・ジョーンズ蛋白質の少なくとも約20%の減少、被測定ベンス・ジョーンズ蛋白質の少なくとも約30%の減少、被測定ベンス・ジョーンズ蛋白質の少なくとも約40%の減少、被測定ベンス・ジョーンズ蛋白質の少なくとも約50%の減少、被測定ベンス・ジョーンズ蛋白質の少なくとも約60%の減少、被測定ベンス・ジョーンズ蛋白質の少なくとも約70%の減少、被測定ベンス・ジョーンズ蛋白質の少なくとも約80%の減少、被測定ベンス・ジョーンズ蛋白質の少なくとも約90%の減少、被測定ベンス・ジョーンズ蛋白質の少なくとも約95%の減少又は被測定ベンス・ジョーンズ蛋白質の少なくとも約99%の減少をもたらす。本明細書で用いられるようなベンス・ジョーンズ蛋白質は、当該技術分野で公知であり、免疫グロブリンの軽鎖断片を指す。ベンス・ジョーンズ蛋白質は、当該技術分野で公知の方法によって血清及び尿中で測定することができる。
【0030】
本発明は、治療有効量が患者の骨髄中の骨髄腫細胞(異常形質細胞)又は形質細胞数の統計的に有意な減少をもたらす、骨髄腫の治療のための治療有効量の薬剤、例えば、8−アミノ−アデノシンも含む。骨髄腫を有する被験体を指す場合、「骨髄腫細胞」及び「形質細胞」という用語は本明細書で互換的に用いられる。形質細胞が正常な被験体由来であると本明細書で述べない場合、「形質細胞」は骨髄腫細胞を指すものとして解釈する必要がある。
【0031】
形質細胞の形態及び数は当該技術分野で公知の生検の方法によって求めることができる。本発明の一実施形態において、治療有効量の薬剤、例えば、8−アミノ−アデノシンは、形質細胞数の少なくとも約5%の減少、形質細胞数の少なくとも約10%の減少、形質細胞数の少なくとも約20%の減少、形質細胞数の少なくとも約30%の減少、形質細胞数の少なくとも約40%の減少、形質細胞数の少なくとも約50%の減少、形質細胞数の少なくとも約60%の減少、形質細胞数の少なくとも約70%の減少、形質細胞数の少なくとも約80%の減少、形質細胞数の少なくとも約90%の減少、形質細胞数の少なくとも約95%の減少又は形質細胞数の少なくとも約99%の減少をもたらす。
【0032】
本明細書で用いられるように、「少なくとも約」は概算の最小量を指す。
【0033】
本明細書で用いられるように、「十分な期間及び用量」は、血液悪性疾患の1つ又はそれ以上の臨床症状の実質的な低減或いは1つ又はそれ以上の蛋白質MKK3、MKK6、p38 MAPキナーゼ、ERK1、ERK2、Aktキナーゼとその下流シグナル伝達分子のリン酸化の低下を実現するために必要な薬剤投与時期及び薬剤投与量を指す。期間及び用量は、例えば、1つ又はそれ以上の特定の蛋白質のリン酸化の実質的な低下をもたらさない場合、十分ではない。当業者であれば、特定の蛋白質のリン酸化の実質的な低下を実現するのに十分な期間及び用量は、病期、患者の健康状態、薬剤投与時期及び薬剤用量に基づいて変動することを理解するであろう。
【0034】
本明細書で用いられるように、リン酸化の「実質的な低下」は、血液悪性疾患の進行を遅延し、或いは停止するのに十分なリン酸化の低下である。一実施形態において、実質的な低下は統計的に有意な量のリン酸化の低下である。リン酸化の実質的な低下は、リン酸化の少なくとも約1%の低下、少なくとも約5%の低下、少なくとも約10%の低下、少なくとも約15%の低下、少なくとも約20%の低下、少なくとも約25%の低下、少なくとも約30%の低下、少なくとも約40%の低下、少なくとも約50%の低下、少なくとも約60%の低下、少なくとも約70%の低下、少なくとも約80%の低下、少なくとも約90%の低下、少なくとも約95%の低下又は少なくとも約99%の低下となり得る。
【0035】
本明細書で用いられるように、「患者」と「被験体」は互換的に用いられる。患者又は被験体は血液悪性疾患と診断された動物である。動物は哺乳動物でよく、ヒトが好ましい。本発明の動物はヒト、イヌ、ネコ、ウシ、霊長動物、マウス及びラットを含むが、これらに限定されない。
【0036】
“MKK3”,“MKK6”及びp38 MAPキナーゼはp38経路のメンバーである。本明細書で用いられるように、MKK3,MKK6及びp38 MAPKの「下流シグナル伝達分子」は、ATF−2、p36 MAPキナーゼ、CHOP、MEF2、Elk−1、Myc、Max、Stal1、MSK−1、MAPKAPK−2、MNK1、MNK2、PRAK及びヒストンH3を含むがこれらに限定されない、MKK3,MKK6及びp38 MAPキナーゼのリン酸化の低下の結果としてのリン酸化の変化を受ける分子である。p38 MAPキナーゼとp38は本明細書で互換的に用いられる。
【0037】
500〜2500mg/m2の範囲の量の8−アミノ−アデノシンの1日用量を、2ヶ月間に少なくとも2週間、1週あたり少なくとも1回及び最大5日、治療を必要とする癌患者に投与することができる。当該方法は様々な実施形態において実施することができ、一般的に、治療有効範囲内にて投与される用量が少ないほど、用量はより頻回に投与される。一実施形態において、2ヶ月間に少なくとも2週間、1週あたり少なくとも5日、1日用量500mg/m2が投与される。別の実施形態では高用量が用いられ、用量は低頻度で投与される。一実施形態において、2ヶ月間に少なくとも2週間、1週あたり1回、1日用量2500mg/m2が投与される。
【0038】
一実施形態において、8−アミノ−アデノシンが投与される週の後、8−アミノ−アデノシンが投与されない14〜28日間が続き、この期間後、更なる1週の8−アミノ−アデノシンによる処理が続くように、治療有効量の8−アミノ−アデノシンが投与される。1週間の処理後、2〜4週の8−アミノ−アデノシンによる処理を行わないことは「治療サイクル」と称される。一般的に、少なくとも2治療サイクルが施行される。別の実施形態では最大6又はそれ以上の治療サイクルが施行される。
【0039】
別の実施形態において、治療有効量の8−アミノ−アデノシンは、1週間、少なくとも2週連続、少なくとも3週連続、少なくとも4週連続、少なくとも5週連続又は少なくとも6週連続、1週あたり少なくとも1回及び5日を含む最大3日若しくはそれ以上の日数、投与される。本実施形態では、患者は用量制限毒性が発現するまで週連続期間、治療有効量を投与される。
【0040】
従って、一態様において、被験体に有効量の8−アミノ−アデノシンを投与する工程を含む、被験体における癌を治療するための方法を提供する。本明細書で提供する8−アミノ−アデノシンの投与は、8−アミノ−アデノシンの作用部位への送達を可能にする任意の方法によって達成され得る。一部の実施形態において、8−アミノ−アデノシンは血液循環を介して血液癌細胞又は腫瘍と接触する。8−アミノ−アデノシンを癌組織又は細胞と接触させるため、好適な投与法は、経口経路、十二指腸内経路、非経口注射(静脈内、皮下、筋肉内、血管内又は注入を含む)、局所及び腎経路を含む。治療する血液癌のタイプ及び投与経路に依存し、ある特定の投与経路、例えば、1〜8時間の範囲の時間、静注による投与が好ましい。
【0041】
本明細書で述べる用量範囲内にて投与される8−アミノ−アデノシンの量は、治療される被験体、癌のタイプ及び重症度、癌の局在性、投与速度、8−アミノ−アデノシンの性質(例えば、溶解性及び細胞毒性)並びに処方医師の裁量に依存する。ある場合には前述の範囲の下限未満の用量レベルが十分以上であり得るが、別の場合には有害な副作用を引き起こすことなく、より高用量が用いられ得て、特にこのような高用量が最初に1日中の投与のために数回の低用量に分割される場合、高用量が用いられ得る。
【0042】
(治療対象疾患)
治療を必要とするヒトや他の哺乳動物における癌の治療に概して有用な方法及び組成物を提供する。これらの方法は、治療有効量のヌクレオシドアナログ剤、例えば、8−アミノ−アデノシン又はその医薬的に許容可能な塩を単独或いは治療有効量の1つ又はそれ以上の付加抗癌化合物を併用して投与する工程を含む。当該方法及び組成物は血液悪性疾患を治療するために用いることができ、血液悪性疾患は、骨髄腫、多発性骨髄腫、ワルデンストローム・マクログロブリン血症、重鎖病、急性骨髄性白血病、急性リンパ性白血病、慢性骨髄性白血病、慢性リンパ性白血病、ヘアリー細胞白血病、前骨髄球性白血病、骨髄単球性白血病、単球性白血病、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫(小細胞型、大細胞型及び混合細胞型)及びバーキットリンパ腫を含むが、これらに限定されない。本発明の一実施形態では、骨髄腫及び多発性骨髄腫を治療するために8−アミノ−アデノシンが用いられる。
【0043】
当該方法及び組成物は、転移した血液悪性疾患を治療するために用いることもできる。例えば、骨の多部位に拡散した骨髄腫を治療するために8−アミノ−アデノシンを用いることができる。
【0044】
本発明の一実施形態において、多剤耐性である血液悪性疾患を治療するために8−アミノ−アデノシンのようなヌクレオシドアナログ剤が用いられる。例えば、骨髄腫及び非ホジキンリンパ腫は薬剤耐性となることが多い。骨髄腫はthalidomine(サリドマイド)及びボルテゾミブ(ベルケード)のようなプロテアソーム阻害剤を含むがこれらに限定されない現行の既知治療法に対して耐性となり得る。多剤耐性血液悪性疾患と診断された患者を治療するため、治療有効量にて単独で、或いは他の抗癌治療剤と組み合わせて用いられる本発明のヌクレオシドアナログ剤を用いることができる。
【0045】
8−アミノ−アデノシンは他の抗癌剤及び抗腫瘍剤と組み合わせて同時投与することができる。これらの薬剤の1つを併用する場合、付加薬剤の用量は当該薬剤に用いられる標準用量或いは当該薬剤が単独で用いられる場合、用いられるレベルから下方又は上方に修正される。従って、8−アミノ−アデノシンの投与は、既存の薬剤を用いるが、現在の使用より低い濃度又は用量で医師が癌を治療することを可能にする。或いは、8−アミノ−アデノシンの投与は、現在の使用より高い濃度又は用量で既存の薬剤を用いて医師が癌を治療することを可能にし得る。別の抗癌治療剤の用量を増減する能力は、高用量の抗癌剤が望ましくない副作用又は死亡をもたらし得る再発性血液悪性疾患の治療及び予防に重要である。当業者であれば、所定の患者に対する正確な用量の決定は、用いる薬剤の組合せ、治療する特定の疾患及び患者の病状と既往歴を含む多くの要因に依存し、異なることを理解するであろう。
【0046】
既知で承認済の抗腫瘍剤に対する特定の用量レジメンが、例えば、ニュージャージー州オラデル(Oradell)のMedical Economics Company,Inc.,Physician’s Desk Reference(医師用添付文書集)の現行版に見出される製品説明に示されている。ある特定の抗癌剤に対する例示的な用量レジメンも下記に示されている。当業者は本明細書で考察される多くの既知の抗癌剤が他の薬剤と組み合わせてルーチンに使用されていることを認識するであろう。本明細書で述べる方法に従って、8−アミノ−アデノシンは、使用薬剤に加え、或いは1つ又はそれ以上のこのような薬剤を置き換え、このような多剤治療レジメンにて同時投与することができる。
【0047】
FDAに認可された癌治療薬は、アルキル化剤、アントラサイクリン、抗生物質、アロマターゼ阻害剤、ビホスホネート、シクロオキシゲナーゼ阻害薬、エストロゲン受容体モジュレーター、葉酸拮抗剤、無機砒酸塩、微小管阻害剤、調整剤、ニトロソウレア、ヌクレオシドアナログ、破骨細胞抑制剤、白金含有化合物、プロテアソーム阻害剤、レチノイド、トポイソメラーゼ1阻害剤、トポイソメラーゼ2阻害剤及びチロシンキナーゼ阻害剤を含むが、これらに限定されない。8−アミノ−アデノシンのようなヌクレオシドアナログによる処理の前後、血液悪性疾患の治療のためのこれらの任意のクラス由来の抗癌剤及び他の抗癌剤を投与することができる。
【0048】
有用なアルキル化剤は、ブスルファン(マイレラン、ブスルフェックス)、クロラムブシル(リューケラン)、シクロホスファミド(シトキサン、Neosar)、メルファラン、L−PAM(アルケラン)、ダカルバジン(DTIC−Dome)及びテモゾロマイド(テモダール)を含むが、これらに限定されない。本明細書で述べる方法に従って、血液悪性疾患を治療するため、8−アミノ−アデノシンはアルキル化剤と同時投与される。一実施形態において、癌は慢性骨髄性白血病、多発性骨髄腫又は未分化星状細胞腫である。一例として、シクロホスファミドとしても一般的に周知の化合物、2−ビス[(2−クロロエチル)アミノ]テトラヒドロ−2H−1,3,2−オキサザホスホリン,2−オキシドは、病期III及びIVの悪性リンパ腫、多発性骨髄腫及び白血病の治療に用いられるアルキル化剤である。一般的に、シクロホスファミドは静脈内投与され、3〜5日間にわたり分割用量にて1500〜1800mg/m2の用量で導入療法のために投与される。維持療法ではシクロホスファミドは、7〜10日ごとに350〜550mg/m2又は週2回110〜185mg/m2の用量で投与される。8−アミノ−アデノシンのようなヌクレオシドアナログは、このような用量で投与されるシクロホスファミドと同時投与され得る。
【0049】
有用なアントラサイクリンは、ドキソルビシン(アドリアマイシン、ドキシル、ルベックス)、ミトキサントロン(ノバントロン)、イダルビシン(イダマイシン)、バルルビシン(バルスター)及びエピルビシン(エレンス)を含むが、これらに限定されない。8−アミノ−アデノシンのようなヌクレオシドアナログは、血液悪性疾患を治療するため、アントラサイクリンと同時投与され得る。例えば、ドキソルビシンとしてより一般的に周知の化合物、(8S,10S)−10−[(3−アミノ−2,3,6−トリデオキシ−α−L−リキソ−ヘキソピラノシル)オキシ]−8−グリコロイル−7,8,9,10−テトラヒドロ−6,8,11−トリヒドロキシ−1−メトキシ−5,12−ナフタセンジオンは、Streptomyces peucetius var.caesiusの培養液から単離された細胞傷害性アントラサイクリン系抗生物質である。ドキソルビシンは、播種性腫瘍疾患、例えば、急性リンパ芽球性白血病、急性骨髄芽球性白血病並びにホジキン及び非ホジキン型のリンパ腫において腫瘍状態の退縮を生じさせるのに良好に用いられている。通常、ドキソルビシンは、21日間隔で60〜75mg/m2の範囲の用量;毎週20mg/m2の用量;又は4週ごとに反復する各3連続日における30mg/m2の用量にて単独静注として投与される。8−アミノ−アデノシンのようなヌクレオシドアナログ剤は、このような用量で投与されるドキソルビシンと同時投与され得る。
【0050】
有用な抗生物質は、ダクチノマイシン、アクチノマイシンD(コスメゲン)、ブレオマイシン(ブレノキサン)及びダウノルビシン、ダウノマイシン(Cerubidine,DanuoXome)を含むが、これらに限定されない。8−アミノ−アデノシンのようなヌクレオシドアナログ剤は、血液癌を治療するため、抗生物質と同時投与され得る。
一実施形態では癌は急性リンパ性白血病や他の白血病である。
【0051】
有用なビホスホネート抑制剤はゾレドロネート(ゾメタ)を含むが、これに限定されない。本明細書で述べる方法に従って、8−アミノ−アデノシンのようなヌクレオシドアナログ剤は、血液癌を治療するため、ビホスホネート抑制剤と同時投与される。一実施形態では、癌は多発性骨髄腫、固形癌からの骨転移又は前立腺癌である。
【0052】
有用な葉酸拮抗剤はメトトレキサート及びtremetrexateを含むが、これらに限定されない。8−アミノ−アデノシンのようなヌクレオシドアナログ剤は、造血器癌を治療するため、葉酸拮抗剤と同時投与され得る。葉酸拮抗剤は30年以上にわたり癌化学療法において用いられている。一例として、一般にメトトレキサートとして周知の化合物、N−[4−[[(2,4−ジアミノ−6−プテリジニル)メチル メチルアミノ]ベンゾイル]−L−グルタミン酸は、進行期の悪性リンパ腫の治療において用いられている葉酸拮抗剤である。5−メチル−6−[[(3,4,5−トリメトキシフェニル)−アミノ]メチル]−2,4−キナゾリンジアミンは別の葉酸拮抗剤であり、トリメトレキサートとして一般に周知である。リンパ腫では30mg/m2の用量で週2回の筋注投与が行われる。8−アミノ−アデノシンのようなヌクレオシドアナログ剤は、このような用量で投与されるメトトレキサートと同時投与され得る。
【0053】
微小管の重合又は脱重合を阻害し得る有用な微小管「阻害剤」は、ビンクリスチン(オンコビン)、ビンブラスチン(Velban)、パクリタキセル(タキソール、Paxene)、ビノレルビン(ナベルビン)、ドセタキセル(タキソテール)、エポチロンB又はD又はいずれかの誘導体並びにディスコデルモライド又はその誘導体を含むが、これらに限定されない。8−アミノ−アデノシンのようなヌクレオシドアナログは、血液悪性疾患を治療するため、微小管阻害剤と同時投与され得る。一実施形態では血液悪性疾患は多発性骨髄腫である。一例として、一般にビンクリスチンとしても周知の化合物、22−オキソ−ビンカレウコブラスチンは、一般的なニチニチソウ(Vinca rosea,Linn.)から得られるアルカロイドであり、急性白血病の治療に有用である。ホジキン病の治療において他の腫瘍溶解剤と組み合わせて有用であることも示されている。ビンクリスチンは小児用では2mg/m2、成人用では1.4mg/m2を毎週静注される。8−アミノ−アデノシンのような本発明のヌクレオシドアナログ剤は、このような用量で投与されるビンクリスチンと同時投与され得る。
【0054】
8−アミノ−アデノシンのような本発明のヌクレオシドと組み合わせて用いることができる有用なヌクレオシドアナログは、メルカプトプリン、6−MP(Purinethol)、フルオロウラシル、5−FU(Adrucil)、チオグアニン、6−TG(チオグアニン)、シタラビン(Cytosar−U,DepoCyt)、フロクスウリジン(FUDR)、フルダラビン(フルダラ)、ペントスタチン(Nipent)、クラドリビン(ロイスタチン、2−CdA)、ゲムシタビン(ジェムザール)及びカペシタビン(ゼローダ)を含むが、これらに限定されない。一実施形態では血液悪性疾患は多発性骨髄腫又は骨髄腫である。
【0055】
別の実施形態では血液悪性疾患はリンパ腫又は白血病である。例えば、一般に6−チオグアニンとしても周知の化合物、2−アミノ−1,7−ジヒドロ−6H−プリン−6−チオンは、急性非リンパ性(non−pymphocytic)白血病の療法において有効なヌクレオシドアナログである。6−チオグアニンは1日あたり体重の約2mg/kgの用量で経口投与される。1日総用量は単回用量として投与され得る。このレベルでの4週投与後に改善が認められない場合、投与量は3mg/kg/日に増加し得る。8−アミノ−アデノシンのような本発明のヌクレオシドアナログ剤は、急性非リンパ性(non−pymphocytic)白血病及び他の血液悪性疾患の治療のため、このような用量で投与される6−TGと同時投与され得る。
【0056】
有用なレチノイドはトレチノイン、ATRA(ベサノイド)、アリトレチノイン(パンレチン)及びベキサロテン(ターグレチン(Targretin))を含むが、これらに限定されない。8−アミノ−アデノシンは血液癌を治療するため、レチノイドと同時投与され得る。一実施形態では癌は多発性骨髄腫である。別の実施形態では癌は急性前骨髄球性白血病(APL)又はT細胞リンパ腫である。
【0057】
有用なトポイソメラーゼ1阻害剤は、トポテカン(Hycamtin)及びイリノテカン(Camptostar)を含むが、これらに限定されない。8−アミノ−アデノシンのような本発明のヌクレオシドアナログは、癌を治療するため、トポイソメラーゼ1阻害剤と同時投与され得る。有用なトポイソメラーゼ2阻害剤は、エトポシド、VP−16(ベプシド)、テニポシド、VM−26(Vumon)及びエトポシドホスフェート(Etopophos)を含むが、これらに限定されない。8−アミノ−アデノシンは、多発性骨髄腫又は骨髄腫を治療するため、トポイソメラーゼ2阻害剤と同時投与され得る。別の実施形態において、8−アミノ−アデノシンは急性リンパ芽球性白血病(ALL)の治療のため、トポイソメラーゼ2と同時投与され得る。
【0058】
有用なチロシンキナーゼ阻害剤はイマチニブ(グリベック)を含むが、これに限定されない。8−アミノ−アデノシンは血液癌を治療するため、チロシンキナーゼ阻害剤と同時投与され得る。一実施形態では癌は多発性骨髄腫又は骨髄腫である。
【0059】
従って、8−アミノ−アデノシン又はその医薬的に許容可能な塩のような本発明のヌクレオシドアナログと、1つ又はそれ以上の付加抗癌剤が患者に投与される、血液癌を治療する方法を提供する。8−アミノ−アデノシンとの同時投与に好適なこのような他の抗癌剤の具体的な実施形態は、5−メチル−6−[[(3,4,5−トリメトキシフェニル)アミノ]−メチル]−2,4−キナゾリンジアミン−e又はその医薬的に許容可能な塩、(8S,10S)−10−(3−アミノ−2,3,−6−トリデオキシ−α−L−リキソ−ヘキソピラノシル)オキシ]−8−グリコロイル−7,8,9,10−テトラヒドロ−6,8,11−トリヒドロキシ−1−メトキシ−5,12−ナフタセンジオン又はその医薬的に許容可能な塩;5−フルオロ−2,4(1H,3H)−ピリミジンジオン又はその医薬的に許容可能な塩;2−アミノ−1,7−ジヒドロ−6H−プリン−6−チオン又はその医薬的に許容可能な塩;22−オキソ−ビンカレウコブラスチン又はその医薬的に許容可能な塩;2−ビス[(2−クロロエチル)アミノ]テトラヒドロ−2H−1,3,2−オキサザホスホリン,2−オキシド又はその医薬的に許容可能な塩;N−[4−[[(2,4−ジアミノ−6−プテリジニル)メチル]−メチルアミノ]ベンゾイル]−L−グルタミン酸又はその医薬的に許容可能な塩;或いはシス−ジアンミンジクロロ白金(II)を含むが、これらに限定されない。
【0060】
一実施形態において、他の抗癌剤は、本発明のヌクレオシドアナログが投与される複数の週の1週間に少なくとも1回投与される。一実施形態において、他の抗癌剤は、プリンアナログ、アルキル化剤及び抗生物質から成る群より選択される。プリンアナログはゲムシタビン、フルダラビン及びクラドリビンを含み、一部の実施形態では、これらは8−アミノ−アデノシンとともに過去にアルキル化剤で治療を受けた患者に投与される。
【0061】
別の実施形態において、本発明の8−アミノ−アデノシン又はヌクレオシドが投与される複数の週の1週間に少なくとも1回、GCSFが投与される。一実施形態において、約360〜480単位のGCSFが患者に毎日投与される。別の実施形態では、ニューラスタのような長時間作用型のGCSFが投与される。
【0062】
別の実施形態において、8−アミノ−アデノシンが投与される複数の週の1週間に少なくとも1回、エリスロポエチンが投与される。一実施形態において、約40,000単位のエリスロポエチンが投与される。好適な製剤はEpogen及びProQuist製剤を含み、別の好適な製剤は長時間作用型であって、Aranist製剤である。
【0063】
(製剤)
8−アミノ−アデノシン組成物は、例えば、錠剤カプセル、丸薬散剤、持続放出性製剤、液剤、懸濁剤として経口投与に、無菌液剤、懸濁剤又は乳液として非経口注射に、軟膏又はクリームとして局所投与に、或いは坐剤として直腸投与に好適な形態となり得る。8−アミノ−アデノシン組成物は、正確な用量の単回投与に好適な単位投与剤形でよく、通常、従来の医薬用担体又は賦形剤を含む。例示的な非経口投与形態は、無菌水溶液中の8−アミノ−アデノシンの液剤又は懸濁剤、例えば、水性プロピレングリコール又はデキストロース液剤を含む。このような剤形は所望とあれば好適に緩衝処理することができる。好適な医薬用担体は不活性希釈剤若しくは充填剤、水及び種々の有機溶媒を含む。医薬組成物は所望とあれば、香味剤、結合剤、賦形剤などのような付加成分を含み得る。従って、経口投与ではクエン酸のような種々の賦形剤を含む錠剤を、デンプン、アルギン酸及びある種の複合ケイ酸塩のような種々の崩壊剤と、また、スクロース、ゼラチン及びアラビアゴムのような結合剤とともに用い得る。加えて、ステアリン酸マグネシウム、ラウリル硫酸ナトリウム及びタルクのような滑沢剤が、錠剤化目的に有用な場合が多い。同種の固形組成物は軟質及び硬質充填ゼラチンカプセルにおいて用いることもできる。従って、好ましい材料はラクトース又は乳糖及び高分子量ポリエチレングリコールを含む。経口投与に水性懸濁剤又はエリキシル剤が望ましい場合、その中の8−アミノ−アデノシンは、種々の甘味剤又は着香剤、着色剤又は染色剤、所望であれば乳化剤又は懸濁化剤と、水、エタノール、プロピレングリコール、グリセリン又はその組合せのような希釈剤とともに、組み合わせることができる。8−アミノ−アデノシンの局所製剤を治療に用いることができる。このような製剤は油性−水性乳剤及びリポソームを用いて好都合に調製でき、任意で1つ又はそれ以上の付加抗癌剤を含み得る。
【0064】
特定量の活性剤を用いて種々の医薬組成物を調製する方法は、当業者には既知であり、或いは明らかであり、本開示内容に照らし、本発明の8−アミノ−アデノシン及びヌクレオシドアナログ剤に適用することができる。好適な製剤及び工程の例については、Remington’s Pharmaceutical Sciences(レミントンの製薬科学),Mack Publishing Company,Easter,ペンシルベニア州、第15版(1975)を参照されたい。
【0065】
一実施形態において、本発明のヌクレオシド誘導体剤は錠剤又は丸剤として製剤化される。製剤は結晶性でよい。医薬組成物は少なくとも約0.1mg、少なくとも約1mg、少なくとも約10mg、少なくとも約100mg、少なくとも約250mg、少なくとも約500mg、少なくとも約750mg、少なくとも約1g、少なくとも約3g、少なくとも約5g又は少なくとも約10gのヌクレオシド誘導体剤を含有し得る。同様に、医薬組成物は少なくとも約0.1mg、少なくとも約1mg、少なくとも約10mg、少なくとも約100mg、少なくとも約250mg、少なくとも約500mg、少なくとも約750mg、少なくとも約1g、少なくとも約3g、少なくとも約5g又は少なくとも約10gの8−アミノ−アデノシンを含有し得る。
【0066】
ヌクレオシドアナログ化合物の明らかな実際の利点は、当該化合物を経口、静脈内、筋肉内、局所又は皮下経路のように任意の好都合な態様で投与することができることである。従って、8−アミノ−アデノシンのようなヌクレオシドアナログ剤は、例えば、不活性希釈剤とともに経口投与することができ、或いは硬質又は軟質シェルゼラチンカプセルに封入することができ、或いは錠剤に圧縮することができ、或いはダイエット食品と直接混和することができる。経口治療投与では、8−アミノ−アデノシンのようなヌクレオシドアナログ剤は、賦形剤と併せて用いることができ、摂取可能な錠剤、バッカル剤、トローチ剤、カプセル剤、エリキシル剤、懸濁剤、シロップ剤、カシェ剤などの形態で投与することができる。このような組成物及び調製物は、上述の血液癌を有する患者を治療するため、治療有効量の活性剤を含有する。
【0067】
錠剤、トローチ剤、丸剤、カプセル剤などの形態の8−アミノ−アデノシンのようなヌクレオシド誘導体剤は、以下のものも含有し得る:トラガカントゴム、アラビアゴム、コーンスターチ若しくはゼラチンのような結合剤;リン酸二カルシウムのような賦形剤;コーンスターチ、ポテトスターチ、アルギン酸などのような崩壊剤;ステアリン酸マグネシウムのような滑沢剤;サッカリンのような甘味剤及びペパーミントもしくはその一方、冬緑油若しくはチェリー芳香剤のような着香剤。投与単位形態がカプセル剤である場合、上述の成分に加え、液状担体を含有し得る。コーティングとして、或いは投与単位の物理的形態を変形させるため、他の様々な成分が存在し得る。例えば、錠剤、丸剤又はカプセル剤にシェラックをコーティングすることができる。
【0068】
シロップ剤又はエリキシル剤は、活性化合物、甘味剤、防腐剤としてのメチル及びプロピルパラベン並びにチェリー又はオレンジ芳香剤のような着香剤を含有し得る。勿論、投与単位形態を調製する際に使用される材料は、医薬的に純粋であって用いる量において実質的に無毒性である必要がある。
【0069】
加えて、ヌクレオシド誘導体剤は当該技術分野で公知の持続放出性調製物及び製剤に組み入れることができる。
【0070】
8−アミノ−アデノシンのようなヌクレオシドアナログ剤は非経口又は腹腔内投与することもできる。遊離酸又は医薬的に許容可能な塩としてのヌクレオシドアナログ剤の溶液を、ヒドロキシプロピルセルロースを含むがこれに限定されない、当該技術分野で公知の界面活性剤と水中で好適に調製することができる。分散液も当該技術分野で公知の方法により調製することができ、これはグリセロール、液体ポリエチレングリコール及びその混合物並びに油性物の使用を含むが、これらに限定されない。
【0071】
通常の保存及び使用条件下では、本発明の8−アミノ−アデノシンのようなヌクレオシドアナログ剤の医薬調製物は、微生物の増殖を防ぐため、1つ又はそれ以上の防腐剤を含有し得る。
【0072】
注射使用に好適な8−アミノ−アデノシンのようなヌクレオシドアナログの医薬製剤は、無菌水溶液又は分散液並びに無菌注射液又は分散液の即時調製用の無菌粉末を含む。あらゆる場合において、その形態は無菌性でなければならず、最終形態では注射器を用いて容易に投与される程度に流体性でなければならない。これは製造及び保存の条件下で安定でなければならず、細菌及び菌類のような微生物の汚染作用に対して保存しなければならない。多くの場合、等張剤、例えば、塩化ナトリウムを含むことが好ましい。注射用組成物の吸収延長は、吸収遅延剤、例えば、モノステアリン酸アルミニウム及びゼラチンの組成物中での使用によってもたらされ得る。
【0073】
無菌注射液は、上記の他の様々な成分を任意で含む適切な溶媒中に本発明のヌクレオシドアナログ剤を混和し、次に濾過滅菌することによって調製される。一般的に、分散剤は、塩基性分散媒体及び上記から必要とする他の成分を含む無菌ビヒクル中に、種々の滅菌ヌクレオシドアナログ剤を混和することによって調製される。無菌注射液の調製用の無菌粉末の場合、調製法は真空乾燥及び凍結乾燥を含むが、これらに限定されない。これらの方法により、ヌクレオシドアナログ剤に加えて任意の所望の成分の粉末が、予め濾過滅菌されたその溶液から得られる。
【0074】
本明細書で用いられるように、「医薬的に許容可能な担体」はあらゆる溶媒、分散媒体、コーティング、抗菌剤及び抗真菌剤、等張剤、吸収遅延剤などを含む。医薬活性物質に対するこのような媒体及び作用剤の使用は当該技術分野で公知である。従来の媒体又は作用剤が活性成分と不適合な場合を除き、これを本発明の治療用組成物において用いることは検討される。補充的な活性成分を本発明の組成物に組み入れることができる。
【0075】
局所使用に好適である、8−アミノ−アデノシンを含む本発明のヌクレオシドアナログ剤の医薬製剤は、油性・水性乳剤及びリポソーム製剤並びに薬剤の局所投与に一般的に使用されるローション、クリーム及び軟膏を含む。担体は、例えば、水、エタノール、ポリオール、例えば、グリセロール、プロピレングリコール及び液体ポリエチレングリコールなど、その好適な混合物並びに植物油を含有する溶媒又は分散媒体となり得る。適正な流動性は、例えば、レシチンのようなコーティングの使用、分散の場合に必要な粒子サイズの維持及び界面活性剤の使用によって維持することができる。微生物の作用の予防は、種々の抗菌剤及び抗真菌剤、例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸、チメロサールなどによってもたらすことができる。
【0076】
投与の容易性及び用量の均等性のため、非経口及び他の組成物を投与単位形態にて製剤化することは本質的に有利である。本明細書で用いられる投与単位形態は、治療対象の哺乳動物に対する単位用量として適切な物理的に分離した単位を指し、各単位は、必要な医薬用担体と組み合わせて所望の治療効果を発揮するように計算された所定量のヌクレオシドアナログ剤を含有する。本発明の新規投与単位形態の仕様は、治療対象となる患者及び癌により決定され、また、それに直接依存し、患者及び癌によって異なり得るが、一般的に、投与単位形態は約0.1mg〜約10gの8−アミノ−アデノシンを含む。典型的な単位形態は約0.5〜約1gの8−アミノ−アデノシンを含み得る。一実施形態において、本発明の医薬組成物は、8−アミノ−アデノシン及び医薬的に許容可能な担体を含み、1〜8時間の範囲の時間での静注に好適な無菌液であり、8−アミノ−アデノシンは5mg/mL〜10mg/mLの範囲の濃度で存在する。一実施形態では、医薬的に許容可能な担体は米国薬局方5%デキストロース注射液である。
【0077】
(キット)
キットは経口及び注射用剤形にて単位用量の8−アミノ−アデノシンを備える。単位用量(経口又は注射)を含む容器に加え、これらのキットは、血液悪性疾患、特に骨髄腫のような形質細胞腫瘍の治療用の8−アミノ−アデノシンの使用及び付随的利益を記載した説明添付文書を含み得る。
【0078】
(診断法及び予後判定法)
本発明は、血液癌と診断された患者が、1つ又はそれ以上のMKK3、MKK6、p38 MAPキナーゼ、ERK1/2及びAktキナーゼ並びにその下流分子を標的とする8−アミノ−アデノシン又は他のヌクレオシドアナログ剤による治療に反応する可能性があるかを判定するための方法を含む。本方法は、患者由来の細胞を本発明の8−アミノ−アデノシン又はヌクレオシドアナログ剤で処理する工程と、1つ又はそれ以上の蛋白質のMKK3、MKK6、p38 MAPキナーゼ、ERK1、ERK2及びAktキナーゼ並びにその下流シグナル伝達分子のリン酸化を測定する工程とを提供し、1つ又はそれ以上の蛋白質のリン酸化の低下は、当該薬剤が癌の治療に有効であることを示す。妥当な下流分子は、ATF−2、p36 MAPキナーゼ、CHOP、MEF2、Elk−1、Myc、Max、Stal1、MSK−1、MAPKAPK−2、MNK1、MNK2、PRAK及びヒストンH3を含むが、これらに限定されない。
【0079】
骨髄腫のような血液疾患に対する治療に患者が陽性に反応することを示すリン酸化の低下は、未処理細胞に比し、少なくとも約1%の低下、少なくとも約5%の低下、少なくとも約10%の低下、少なくとも約15%の低下、少なくとも約20%の低下、少なくとも約25%の低下、少なくとも約30%の低下、少なくとも約40%の低下、少なくとも約50%の低下、少なくとも約60%の低下、少なくとも約70%の低下、少なくとも約80%の低下、少なくとも約90%の低下、少なくとも約95%の低下又は少なくとも約99%の低下による、上記蛋白質の1つのリン酸化の低下により実証される。
【0080】
患者由来の骨髄細胞は当該技術分野で公知の方法を用いて生検によって抽出できる。骨髄細胞は形質細胞や他の細胞種を含む。任意で、対象とする免疫細胞が更に単離される。一実施形態では、免疫細胞は形質細胞(骨髄腫細胞)である。当該技術分野で公知の方法を用いて骨髄細胞の混合物から特定の細胞種を更に単離することができる。細胞に関する蛋白質のリン酸化レベルを判定するため、当該技術分野で公知のように、細胞を溶解し、且つ細胞から蛋白質を単離するもしくはその一方を行うことが必要となり得る。
【0081】
1つ又はそれ以上の上記蛋白質のリン酸化レベルは、当該技術分野で公知の任意の方法を用いて測定することができる。一実施形態では、リン酸化を測定する方法はウェスタンブロット分析である。ブロットは、リン酸化型のMKK3、MKK6、p38 MAPキナーゼ、ERK1、ERK2又はAktキナーゼ並びにその下流シグナル伝達分子に対する抗体でプローブすることができる。
【0082】
本発明の一実施形態において、当該方法は、骨髄腫又は多発性骨髄腫と診断された患者が治療に有効に反応し、或いは治療に反応しないかを判定するために用いられる。形質細胞が患者から単離され、1つ又はそれ以上のMKK3、MKK6、p38 MAPキナーゼ、ERK1、ERK2又はAktキナーゼ並びにその下流シグナル伝達分子のリン酸化レベルを低下させることが可能な8−アミノ−アデノシン又は他のヌクレオシドアナログ剤で処理される。
【0083】
本発明の別の実施形態において、8−アミノ−アデノシン又は他のヌクレオシドアナログで処理された患者由来の細胞は、患者由来の未処理細胞のような対照と比較される。8−アミノ−アデノシン又は他のヌクレオシドアナログで処理された患者由来の細胞は、当該技術分野で公知の対照細胞とも比較される。
【0084】
(化合物スクリーニング法)
本発明は、リンパ腫、白血病及び骨髄腫の治療の有効性に関して試験化合物をスクリーニングする方法を含む。一実施形態において、細胞が化合物で処理され、1つ又はそれ以上の蛋白質のMKK3、MKK6、p38 MAPキナーゼ、ERK1、ERK2及びAktキナーゼ並びに下流シグナル伝達分子のリン酸化が測定される。下流分子は、ATF−2、p36 MAPキナーゼ、CHOP、MEF2、Elk−1、Myc、Max、Stal1、MSK−1、MAPKAPK−2、MNK1、MNK2、PRAK及びヒストンH3を含むが、これらに限定されない。1つ又はそれ以上の被測定蛋白質のリン酸化の低下は、血液癌の有効な治療を示す。有効な治療を示すリン酸化の低下は、試験化合物で処理されない細胞に比し、少なくとも約10%のリン酸化の低下、少なくとも約20%のリン酸化の低下、少なくとも約30%のリン酸化の低下、少なくとも約40%のリン酸化の低下、少なくとも約50%のリン酸化の低下、少なくとも約60%のリン酸化の低下、少なくとも約70%のリン酸化の低下、少なくとも約80%のリン酸化の低下、少なくとも約90%のリン酸化の低下又は少なくとも約99%のリン酸化の低下である。一実施形態では、血液癌は骨髄腫である。
【0085】
本発明の細胞は当該技術分野で公知の培養免疫細胞でよい。一実施形態では、免疫細胞は骨髄腫細胞のような培養疾患細胞である。細胞は多剤耐性でよく、多剤耐性骨髄腫細胞を含むが、これに限定されない。本発明は、ステロイド耐性骨髄腫細胞のようなステロイド耐性細胞も含む。別の実施形態では、培養細胞は正常形質細胞のような正常免疫細胞である。
【0086】
本発明の細胞は、当該技術分野で公知の細胞採取及び生検方法により動物から採取される細胞でもよい。一実施形態では、動物はヒトである。別の実施形態では、動物はイヌ、ネコ、ラット、マウス、霊長動物又はウシである。細胞は骨髄腫細胞のような疾患細胞でよく、或いは正常細胞でよい。正常細胞は健常動物から得ることができる。或いは、正常細胞は、正常細胞が疾患細胞に隣接している疾患動物から得ることができる。
【0087】
本発明の一実施形態において、疾患細胞が試験化合物で処理され、上記のように結果として生じるリン酸化値が、同一化合物で処理された正常健常細胞のリン酸化値と比較される。別の実施形態では、疾患細胞は試験化合物で処理され、未処理疾患細胞と比較される。当業者であれば、骨髄腫のような血液癌を治療する試験化合物の性能を確認するため、陽性及び陰性対照を含む様々な対照を用いることができることを理解するであろう。例えば、試験化合物で処理された骨髄腫細胞のMKK3、MKK6、p38 MAPキナーゼ、ERK1、ERK2又はAktキナーゼ並びに下流シグナル伝達分子のリン酸化レベルを、1つ又はそれ以上の蛋白質のリン酸化レベルへの既知の作用を有する化合物で処理された骨髄腫細胞或いは未処理骨髄腫細胞のリン酸化レベルと比較することができる。
【0088】
本発明の別の実施形態において、当該技術分野で公知の方法を用いて、試験細胞のPP2Aのホスファターゼ活性が測定される。ホスファターゼ活性の上昇は、当該処理が骨髄腫のような血液悪性疾患に効果的であることを示す。当業者であれば、対照細胞、即ち、化合物で処理されない細胞又は既知のホスファターゼ活性を有する化合物で処理された細胞のホスファターゼ活性を、請求された本発明に対して用いることができることを理解するであろう。少なくとも約10%、少なくとも約20%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%又は少なくとも約95%のPP2Aのホスファターゼ活性の上昇は、効果的な処置を示す。
【0089】
加えて、本発明の方法は、前記骨髄腫細胞のアポトーシスを測定する工程を含むことができ、アポトーシスの増加が多発性骨髄腫に対する有効な治療を示す。アポトーシスは当該技術分野で公知のアッセイにより測定することができる。骨髄腫のような血液癌の有効な治療を示すアポトーシスのレベルは、少なくとも約10%のアポトーシスの増加、少なくとも約15%のアポトーシスの増加、少なくとも約20%のアポトーシスの増加、少なくとも約25%のアポトーシスの増加、少なくとも約30%のアポトーシスの増加、少なくとも約40%のアポトーシスの増加、少なくとも約45%のアポトーシスの増加、少なくとも約50%のアポトーシスの増加、少なくとも約60%のアポトーシスの増加、少なくとも約70%のアポトーシスの増加、少なくとも約80%のアポトーシスの増加、少なくとも約90%のアポトーシスの増加及び少なくとも約95%のアポトーシスの増加となり得る。
【0090】
本発明の別の実施形態において、試験細胞は更に細胞増殖に関して分析され、細胞増殖の低下は骨髄腫のような血液癌の有効な治療を示す。細胞は当該技術分野で公知の細胞増殖アッセイを用いて分析することができる。例えば、試験化合物で処理された骨髄腫細胞を細胞増殖に関して分析することができる。試験化合物で処理された細胞の1つ又はそれ以上の蛋白質のMKK3、MKK6、p38 MAPキナーゼ、ERK1、ERK2及びAktキナーゼ並びに下流シグナル伝達分子のリン酸化の低下と細胞増殖の低下は、当該薬剤が骨髄腫に対する治療として有効であることを示す。少なくとも約10%、少なくとも約20%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%又は少なくとも約95%の細胞増殖の低下は、良好な治療を示す。
【0091】
本発明は、試験化合物で処理された細胞のカスパーゼ活性化を検出する工程を任意で含み、カスパーゼ活性化が血液悪性疾患の有効な治療を示す。一実施形態では、血液悪性疾患は骨髄腫である。別の実施形態では、血液悪性疾患は白血病又はリンパ腫である。
【実施例】
【0092】
(材料及び方法)
(細胞培養)
MM.1S及びMM.1R細胞株は以前に開発された(Goldman−Leikin et al.,1980,J.Lab.Clin.Invest.113:335−45)。元の細胞株(MM.1)はステロイドベースの療法で処置されたMM患者の末梢血から樹立された。ステロイド感受性クローン(MM.1S)が単離され、続いて、グルココルチコイドへの長期曝露によってステロイド耐性変異体(MM.1R)が開発された。RPMI8226細胞及び多剤耐性誘導MDR1OV MM細胞をWilliam Dalton博士(H・リー・モフィットがんセンター(H.Lee Moffitt Cancer Center)、フロリダ州タンパ)から得た(Bellamy et al.,1991,Cancer Res.51:995−1002)。5%CO2を含む37℃のインキュベータ中、10%ウシ胎仔血清、2mMグルタミン、ペニシリン100単位/ml、ストレプトマイシン100μg/ml及びファンギゾン2.5μg/mlを添加したRPMI−1640培地(Invitrogen社、メリーランド州ボルチモア)中で細胞を増殖させた。
【0093】
(薬剤及び化学物質)
8−NH2−AdoをR.I.Chemicals,Inc.(カリフォルニア州オレンジ郡)から、また、8−アミノ−アデノシンをBio Log社(カリフォルニア州ラ・ホヤ(La Jolla))から購入した。シタラビンをSigma社(ミズーリ州セントルイス)から得た。インビトロ試験用に、ヌクレオシドF−ara−Aに脱リン酸化された無菌凍結乾燥粉末としてフルダラビンをBerlex Laboratories社(カリフォルニア州アラメダ郡(Alameda))から購入した。ゲムシタビンをEli Lilly and Co.(インディアナ州インディアナポリス)から得た。キナーゼ阻害剤SB202190及びSB203580をSigma社(ミズーリ州セントルイス)から購入し、PD98059,U0126及びLY294002をCalbiochem社(カリフォルニア州サンディエゴ)から得た。オカダ酸をAlexis Biochemicals社(カリフォルニア州サンディエゴ)から購入した。
【0094】
(実施例1)
(細胞増殖アッセイ)
過去に報告されているようにMTSアッセイを行った(Krett et al.,Clin Cancer Res.3:1781−1787)。簡単に述べると、MM細胞を1ウェルあたり25,000個の細胞濃度にて96ウェルディッシュ中に培養し、8−NH2−Adoとともに72時間インキュベーションした。MTS Cell Titer Aqueousアッセイ(Promega社、ウィスコンシン州マディソン)を用いて細胞増殖を測定し、これは、生細胞中のミトコンドリアのデヒドロゲナーゼ酵素によるテトラゾリウム化合物のホルマザンへの変換を測定した。490nmの吸光度量によって測定されるホルマザン産物量は、培養物中の生細胞の数に直接比例する。データは、同じアッセイにおける対照培地で処理した細胞によって産生されたホルマザンのパーセントとして表した。
【0095】
(実施例2)
(免疫ブロット分析)
指示された時間の間、5×106個の細胞を10μMの8−NH2−Adoで処理し、採取した。細胞ペレットを冷却リン酸緩衝生理食塩水(PBS;NaCl 8.1g,Na2HPO4 1.14g,KCI 0.22g及びKH2PO4 0.25g/L)で洗浄し、溶解緩衝液(HEPES 50mM,NaCl 150mM,MgCl2 1.5mM,1mM EDTA pH8.0,NaFI 100mM,ピロリン酸Na 10mM,PMSF 500μM,X−100 0.5%トリトン,グリセロール 10%)と共に4℃で1時間インキュベーションした。溶解物を9000xg,4℃で1分間遠心分離し、上澄みを採取し−20℃で保存した。Bio−Radプロテインアッセイ(BioRad Laboratories社、カリフォルニア州ハーキュリーズ(Hercules))により蛋白濃度を測定した。濃度が30jigの蛋白質をサンプル緩衝液(125mMトリス pH6.8,4%SDS,20%グリセロール,100mMジチオスレイトール(DTT)及び0.05%ブロモフェノールブルー)と混合し、トリス−グリシンプレキャストゲル(Invitrogen社/Novex、カリフォルニア州カールズバッド(Carlsbad))上で分画した。次に、蛋白質をポリビニリデンフルオリド(PVDF)膜(Immobilon−P、Millipore社、マサチューセッツ州ベッドフォード(Bedford))に転写した。蛋白質転写後、膜をPBS−T(0.1%Tweenを含むPBS)中の5%脱脂乳によりブロックし、4℃で一晩、一次抗体と共に、続いて西洋ワサビペルオキシダーゼに結合した二次抗体(Amersham社、イリノイ州アーリントンハイツ(Arlington Heights))と共にインキュベーションした。ECL Plusウェスタンブロッティング化学発光検出試薬(Amersham社、イリノイ州アーリントンハイツ)を用いてブロットを発色展開させ、X線フィルム(Hyperfilm、Amersham社、イリノイ州アーリントンハイツ)によりシグナルを可視化した。再プローブすることを目的に、Pierce Biotechnology社(イリノイ州ロックフォード(Rockford))製のレストア・ウェスタンブロット・ストリッピングバッファーを用いてブロットを剥離した。ホスホ−MKK3/6(Ser189/207)、ホスホ−p38(Thr180/Tyr182)、ホスホ−ATF−2(Thr69/71)、ホスホ−c−Raf(Ser259)、ホスホ−MEK1/2(Ser217/221)、総MEK1/2、ホスホ−ERK1/2(Thr202/Tyr2O4)、総ERK1/2、ホスホ−p90RSK(Ser380)、総RSK、ホスホ−PDK1(Ser241)、総PDKI、ホスホ−PTEN(Ser380)、総PTEN、ホスホ−Akt(Ser473)、総Akt、ホスホ−GSK−3p(Ser9)、総GSK−3p、ホスホ−FKHRLI(Thr32)/−FKHR(Thr24)、ホスホ−FKHR(Ser256)一次抗体を、Cell Signaling Technology社(マサチューセッツ州ベバリー(Beverly))から得た。総MKK3、総MKK6、総p38、総ATF−2、総c−Raf、総FKHR、総FKHRLI、ホスホ−JNK及び総JNKを、Santa Cruz Biotechnology社(カリフォルニア州サンタクルーズ(Santa Cruz))から購入した。カスパーゼ3、カスパーゼ9及びPARP抗体をPharmingen社(カリフォルニア州サンディエゴ)から、抗MKP1をUpstate社(ニューヨーク州レークプラシッド(Lake Placid))から得た。抗カスパーゼ8マウス血清はMarcus Peter博士(シカゴ大学)から寄贈された。
【0096】
(実施例3)
(フローサイトメトリー)
MM1細胞を10μMの8−NH2−アデノシンと共に0.5、1、2、4又は24時間インキュベーションした。細胞周期内の細胞分布を求めるため、I×106個のMM.IS細胞をペレット化し(500xg,4℃で5分間)、氷冷PBS中で2回洗浄し、氷冷70%エタノール中に固定し、分析するまで4℃で保存した。フローサイトメトリーによる分析前、固定した細胞をペレット化し、PBS中で洗浄し、氷冷流動緩衝液(0.5%Tween20、ヨウ化プロピジウム15μg/mL及びDNアーゼ非含有RNアーゼ5μg/mLを含むPBS)中に再懸濁した。Epics Profile I1フローサイトメーター(Coulter Electronics,Inc.、フロリダ州ハイアリーア(Hialeah))を用いて染色細胞を分析した。図2はこの試験の結果を示す。
【0097】
(実施例4)
(ATP欠乏アッセイ)
10%ウシ胎仔血清、2mMグルタミン、100単位/mlペニシリン、100μg/mlストレプトマイシン及び2.5μg/mlファンギゾンを添加した、デキストロース非含有RPMI−1640培地(Invitrogen社、メリーランド州ボルチモア)中でMM.IS細胞を増殖させた。種々の濃度のデキストロースを有し、或いは有さない、Sigma社(ミズーリ州セントルイス)製のアンチマイシン(2μM、ミトコンドリア阻害剤)又は2−デオキシ−D−グルコース(2−DOG、5mM、解糖阻害剤)を添加することにより、細胞内ATPレベルを操作した。異なる6種類の代謝状態を検討した:1)デキストロースを含まないアンチマイシン、2)アンチマイシン+0.25mMデキストロース、3)アンチマイシン+1mMデキストロース、4)アンチマイシン+10mMデキストロース、5)デキストロースを含まない2−DOG、6)2−DOG+10mMデキストロース。対照細胞はATP欠乏に曝さず、デキストロース非含有RMPI−1640に10mMデキストロースを加えた。Molecular Probes社(オレゴン州ユージーン(Eugene))製のATP測定キットを用いてルシフェラーゼベースのアッセイにおいて内在性ATPを測定し、各処理に対応するレベルを未処理対照に規準化した(20)。
【0098】
(実施例5)
(8−NH2−Adoは主要シグナル伝達分子のリン酸化の喪失を引き起こす)
MM.1S細胞を10μMの8−NH2−Adoに0、0.5、1、2、4及び6時間曝露し、その後、前述(実施例2)のように細胞を溶解した。蛋白質30μgをゲル電気泳動によって分離し、PVDF膜に転写し、MKK3/6,p38 MAPK,ATF−2,MEK1/2,ERK1/2,p90RSK,JNKl,PDKl,Akt,FKHRL1及びGSK−3βに対するリン酸化特異的抗体でプローブした。薬剤処理が総蛋白レベルに作用しないように、また、同等の処理量及び転写となるように、ブロットを剥離し、対応する総蛋白抗体で再プローブした。図1A,1B,1C及び1Dはこのブロットの結果を示す。
【0099】
(p38 MAPK経路)
p38 MAPKはその上流の活性化キナーゼMKK3及びMKK6もしくはその一方によって活性化される。免疫ブロット分析では、8−NH2−Ado処理が経時的にMKK3/6の脱リン酸化を誘発することが明らかにした。リン酸化したMKK3/6蛋白質レベルは2時間の8−NH2−Ado処理により有意に低下し、6時間処理により微量レベルとなる。p38のリン酸化レベルは1時間の薬剤処理により劇的に低下し、2時間後には顕著なリン酸化は認められない。p38基質のATF−2のリン酸化状態も損なわれ、リン酸化蛋白質レベルは2時間の処理により顕著に低下する(図IA)。このMAPKモジュールにおいて評価される全蛋白質に対する総蛋白質レベルには変化がない。
【0100】
(ERKI/2経路)
ERKI/2蛋白質は劇的な脱リン酸化を受けるが、ERK経路の他の化合物のリン酸化レベルは8−NH2−Ado処理によって同様には影響されない。上流ERKI/2活性化キナーゼMEK1/2のリン酸化レベルは、薬剤処理時に低下ではなく上昇するように思われるが、総MEK1/2蛋白質レベルは変化しない。しかし、ERKI/2キナーゼのリン酸化は30分間の8−NH2−Ado処理により有意に低下し、2時間では微量レベルに低下するが、総ERKI/2レベルは変化しない。総蛋白質レベルに影響はないが、8−NH2−Ado処理はERKI/2基質のp90RSKのリン酸化レベルを実際にわずかに低下させるように思われるが、この作用はErK1/2又はp38 MAPK経路の化合物に関して認められるほど劇的ではない(図1B)。
【0101】
(c−Jun N末端キナーゼ(JNK))
c Jun N末端又はストレス活性化キナーゼ(JNK/SAPK)は、MAPK群のセリン/トレオニン蛋白質キナーゼの一サブファミリーを成し、アポトーシスのような細胞プロセスに関与する。しかし、他のMAPK蛋白質p38及びERKと異なり、JNKのリン酸化は8−NH2−Ado処理に影響されない(図1Q)。
【0102】
(Aktキナーゼ経路)
Akt調節蛋白質PDK1の総レベル及びリン酸化レベルには変化はないが、Aktキナーゼは8−NH2−Ado処理時にリン酸化を大幅に喪失させる。ホスホ−Aktレベルは2時間の処理により有意に低下し、最終的には更に微量レベルに低下する。Aktの下流標的も同様に影響を受ける。フォークヘッド転写因子ファミリーのメンバーは大幅なリン酸化の喪失を受けるが、総蛋白質レベルは変化しない。FKHRLIのリン酸化は2時間の薬剤処理により大幅に低下し、4時間及び6時間において顕著なリン酸化は認められない。FKHRのリン酸化も同様に影響を受ける(データは示さず)。ホスホ−GSK−3pレベルは2時間の8−NH2−Ado処理により低下し、6時間では微量となる(図1D)。
【0103】
これらの主要シグナル伝達分子のリン酸化レベルの変化が細胞死の直接的な結果であるかを確認するため、細胞周期分析により細胞生存能に関して類似培養物を評価した。アポトーシスを受ける細胞はDNA小断片の切断及び欠損によってDNA含量が減少する。従って、アポトーシス細胞は細胞周期のG1サブフラクションにおける細胞として同定される。この分析では、Gサブフラクションの未処理細胞と最大4時間8−NH2−Adoで処理した細胞との間で差異は明らかにならず、これは、ウェスタンブロット法により認められたリン酸化の喪失は細胞生存能の付随的喪失が原因ではなかったことを示す(図2)。
【0104】
(実施例6)
(種々のMM細胞株における8−NH2−Adoのp38 NJAPKのリン酸化に対する作用)
薬剤誘発性の蛋白リン酸化の変化が複数の細胞株において生じるのか、或いはMM.1S骨髄腫細胞株に限定されるのかを判定するため、8−NH2−Adoのリン酸化レベルに対する作用を付加骨髄腫細胞株において評価した。RPMI−8226骨髄腫親細胞及び多剤耐性誘導MDR10V細胞並びにグルココルチコイド耐性MM.1R細胞はすべて、8−NH2−Adoの細胞傷害能の作用を受ける(12)。8−NH2−Adoに反応するp38のリン酸化レベルをこれらの細胞株において評価し、用量依存的に低下することが見出されたが、総p38レベルは変化しない。このデータは、8−NH2−Ado誘発性の蛋白リン酸化の喪失がMM.1S骨髄腫細胞株に限定されないことを示唆する(データは示さず)。
【0105】
(実施例7)
(他のヌクレオシドアナログのリン酸化レベルに対する作用)
10μMの8−クロロ−アデノシンで0、0.5、1、2、4又は6時間、或いは10μMシタラビン、フルダラビン、ゲムシタビン又は8−アミノ−アデノシンで4時間MM.IS細胞を処理した。細胞を前述のように溶解し、また、蛋白質30μgをゲル電気泳動によって分離し、PVDF膜に転写し、ホスホ−p38 MAPK(Thr180/Tyr182)抗体でプローブした。薬剤処理が総蛋白レベルに作用しないように、また、同等の処理量及び転写となるように、ブロットを剥離し、総p38 MAPK抗体で再プローブした。典型的な試験の結果を図3A及び3Bに示す。
【0106】
8−NH2−Adoは主要シグナル伝達分子のリン酸化レベルを有意に変化させることによって新規の細胞作用を誘発するだけではなく、その作用能において他のヌクレオシドアナログ、ピリミジン及びプリンの両方、の中で特異であるようにも思われる。8−NH2−Adoの同族体8−クロロ−Ado(8−CI−Ado)はMM細胞においてアポトーシスを誘導するが、MM.IS細胞における10μMの8−クロロ−アデノシン処理の時間経過は、p38(図3A),ERK1/2又はAktキナーゼのリン酸化状態への作用を示さない(データは示さず)。プリンアナログであるフルダラビン並びにピリミジンアナログであるシタラビン及びゲムシタビンもMM細胞に対して細胞傷害性であることが前記で示された。しかし、8−NH2−Adoがこれらのキナーゼのリン酸化の大幅な喪失を引き起こす時間及び濃度である、MM.1S細胞中の濃度10μMにて4時間使用した場合、これらはp38(図3B),ERK1/2又はAktのリン酸化の低下を引き起こさない(データは示さず)。
【0107】
(実施例8)
(MMAS細胞のATP欠乏)
8−NH2−Adoは内在性ATPプールの大幅な変化を引き起こすため、利用可能なATPの減少がキナーゼ又はホスファターゼに対する作用を有し、最終的に細胞内の重要なシグナル伝達経路のリン酸化に影響を及ぼし得る。ATP単独の減少が認められたリン酸化の低下を引き起こすのに十分であるかを試験するため、電子伝達系を阻害するアンチマイシンA又は解糖を阻害する2−デオキシグルコース(2−DOG)の添加により細胞内ATPレベルを操作し、デキストロースの濃度上昇を導入することにより、段階的なATP欠乏を達成した。MM.1S細胞をデキストロース非含有培地中で増殖させ、2μMのアンチマイシンA、5mMの2−DOG及び種々の濃度のデキストロースで90分間処理した。ルシフェラーゼベースのアッセイにおいて3組の試料を用いて細胞内ATPレベルを測定し、本明細書で未処理対照のパーセントとして表す。トリパンブルー排除及び細胞周期の内容によって細胞生存能を評価し、未処理対照のパーセントとして表す。処理後、細胞を前述のように溶解し、また、蛋白質30μgをゲル電気泳動によって分離し、PVDF膜に転写し、ホスホ−p38 MAPK(Thr180/Tyr182)抗体でプローブした。薬剤処理が総蛋白レベルに作用しないように、また、同等の処理量及び転写となるように、ブロットを剥離し、総p38 MAPK抗体で再プローブした。典型的な試験の結果を図4に示す。更なる2回の試験により同等の結果を得た。付加試験は、ホスホ−ERK1/2及びホスホ−Aktを用いて実施し(データは示さず)、これもリン酸化の低下を示さなかった。これらの結果は、キナーゼモジュールにおけるp38,ERK,Aktや他の蛋白質のリン酸化に対する8−NH2−Adoの作用が、単純に内在性ATPレベルの低下の結果ではないことを示す。
【0108】
(実施例9)
(8−NH2−Adoの細胞内ホスファターゼへの作用)
キナーゼ分子とその基質のリン酸化低下機序の1つの可能性は、これらを調節するホスファターゼの活性上昇である。この仮説を試験するため、P38 MAPKを脱リン酸化するように作用することができる二重特異性ホスファターゼMKPIのレベルを評価した。MM.1S細胞を10μMの8−NH2−Adoに、0、0.5、1、2、4及び6時間曝露し、その後、細胞を前述のように溶解した。蛋白質30μgをゲル電気泳動によって分離し、PVDF膜に転写し、MKP1に対する抗体でプローブした。図5Aに示す結果は、このホスファターゼが関与している可能性は低いことを示唆する。
【0109】
加えて、PI3K/Aktシグナル伝達経路の負の調節に関与する主要ホスファターゼをコードするPTENに対する8−NH2−Adoの作用を評価した(図5B)。MM.1S細胞を10μMの8−NH2−Adoに、0、0.5、1、2、4及び6時間曝露し、その後、細胞を溶解した。蛋白質30μgをゲル電気泳動によって分離し、PVDF膜に転写し、ホスホ−PTENに対する抗体でプローブした。ブロットを剥離し、総PTEN抗体で再プローブした。
【0110】
MKP1のように、総PTEN及びホスホ−PTENレベルは8−NH2−Ado処理によって変化しない。細胞内部位がPTEN機能の調節に主要な役割を果たすが、C末端ドメインのリン酸化もホスファターゼ活性を負に調節することが示されている(28,29)。従って、無変化ホスホ−PTENレベルは、このホスファターゼが蛋白リン酸化に対する薬剤媒介性作用に関与しないことを示す。
【0111】
細胞内ホスファターゼの関与を試験する並行的な手法において、セリン/トレオニンホスファターゼPP2A及びPPIが関与するかを評価するため、8−NH2−Adoと併せて種々の濃度のホスファターゼ阻害剤のオカダ酸でMM.1S細胞を4時間処理した。ホスホ−P38及び総P38抗体に対して免疫ブロットした細胞抽出物は、8−NH2−Adoの存在下、30nMオカダ酸濃度にてリン酸化の部分的回復があることを示した(図5C)。加えて、オカダ酸によるMM.1S細胞の処理は、8−NH2−Ado誘発性のP38のリン酸化の喪失を有意に遅延させる。10μMの8−NH2−Adoと30nMオカダ酸で処理したMM.1S細胞の時間経過は、8−NH2−Ado単独で処理したMM.1Sと対照的に、細胞オカダ酸の存在下、ホスホ−P38レベルの低下が遅延し、6時間時点でも存在することを示す(図5D)。細胞内の30nMオカダ酸濃度はPPIに対するPP2Aの選択的阻害を示し、PP2Aの活性化が8−NH2−Ado誘発性のP38のリン酸化の低下に役割を果たし得ることを示唆する。
【0112】
(実施例10)
(カスパーゼ活性及びPARP開裂に対する8−NH2−Adoの作用)
MM.1S細胞を10μMの8−NH2−Adoに、0、0.5、1、2、4又は6時間曝露し、その後、細胞を前述のように溶解した。蛋白質30μgをゲル電気泳動によって分離し、PVDF膜に転写し、図6に示すように抗体でプローブした。矢印はカスパーゼ8及びカスパーゼ9の開裂断片並びにPARP開裂断片を示す。同等の処理量及び転写となるように総蛋白質レベルも評価した(データは示さず)。典型的な試験の結果を示す。更なる2回の試験により同等の結果を得た。
【0113】
8−NH2−Ado処理はエフェクターカスパーゼであるカスパーゼ8及びカスパーゼ9を活性化する。図6は、開裂・活性化されたカスパーゼ8及びカスパーゼ9が10μMの8−NH2−Ado処理の2〜4時間の間に発現することを示す。ユニバーサルカスパーゼ基質であるポリ(ADP−リボース)ポリメラーゼ(PARD)も薬剤処理の2時間時点に始まり発現する。これらのアポトーシスマーカーはシグナル伝達キナーゼのリン酸化喪失に時間的に追従する。
【0114】
(実施例11)
(8−NH2−Ado媒介性細胞傷害に対するキナーゼ阻害剤の作用)
キナーゼ阻害剤が8−NH2−Adoの細胞生存能への作用を調節し得るかを検討するため、細胞増殖アッセイを行った。種々の用量のp38キナーゼ阻害剤SB202190及びS13203850、ERK1/2阻害剤PD98059及びU0126並びにPI3K阻害剤LY294002単独で、また、10μMの8−NH2−Adoと共にMM.1S細胞を処理した。細胞生存能アッセイにおいて、10μMの8−NH2−Adoとキナーゼ阻害剤の併用は、8−NH2−Adoの細胞傷害作用を増大させる相乗効果とはならず、また、キナーゼ阻害剤が8−NH2−Adoの細胞傷害作用を低下させることもない(データは示さず)。
【0115】
本出願において考察した刊行物、特許及び特許出願は、すべて参照して本明細書に組み込まれる。上記明細書において、本発明をその特定の実施形態に関連して説明し、例示目的として多くの詳細事項を示したが、本発明は更なる実施形態を許容し、また、本明細書で述べた特定の詳細事項は本発明の基本原理から逸脱することなく大幅に変更され得ることは当業者には明らかであろう。
【図面の簡単な説明】
【0116】
【図1A】Aは、8−アミノ−アデノシンで処理された骨髄腫細胞由来であって、リン酸化及び総(リン酸化及び非リン酸化)主要経路蛋白質に対する抗体を用いてプローブされた蛋白質を示すブロット図である。
【図1B】Bは、8−アミノ−アデノシンで処理された骨髄腫細胞由来であって、リン酸化及び総(リン酸化及び非リン酸化)主要経路蛋白質に対する抗体を用いてプローブされた蛋白質を示すブロット図である。
【図1C】Cは、8−アミノ−アデノシンで処理された骨髄腫細胞由来であって、リン酸化及び総(リン酸化及び非リン酸化)主要経路蛋白質に対する抗体を用いてプローブされた蛋白質を示すブロット図である。
【図1D】Dは、8−アミノ−アデノシンで処理された骨髄腫細胞由来であって、リン酸化及び総(リン酸化及び非リン酸化)主要経路蛋白質に対する抗体を用いてプローブされた蛋白質を示すブロット図である。
【図2】8−アミノ−アデノシンと共に0.5、1、2、4及び24時間インキュベーションされたMM.1S細胞に対する、フローサイトメトリーによる細胞周期を示すグラフ図である。
【図3】A及びBは、種々のヌクレオシドアナログと共にインキュベーションされたMM.1S骨髄腫細胞由来であって、リン酸化p38 MAPキナーゼに対する抗体を用いてプローブされた蛋白質を示すブロット図である。
【図4】MM.1S細胞中のp38 MAPKのリン酸化レベルに対するATP欠乏の作用を示すATPアッセイのブロット及び試験結果図である。
【図5A】Aは、MM.1S細胞中の8−アミノ−アデノシンのそれぞれMKP−1及びPTEN(リン酸化及び総PTEN)レベルに対する作用を示すブロット図である。
【図5B】Bは、MM.1S細胞中の8−アミノ−アデノシンのそれぞれMKP−1及びPTEN(リン酸化及び総PTEN)レベルに対する作用を示すブロット図である。
【図5C】Cは、MM.1S細胞中の8−アミノ−アデノシン及びオカダ酸処理のリン酸化p38 MAPK及び総p38 MAPKに対する作用を示すブロット図である。
【図5D】Dは、MM.1S細胞中の8−アミノ−アデノシン及びオカダ酸処理のリン酸化p38 MAPK及び総p38 MAPKに対する作用を示すブロット図である。
【図6】MM.1S細胞中の8−アミノ−アデノシンのカスパーゼ8及びカスパーゼ9に対する作用を示すブロット図である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
1つ又はそれ以上のMKK3、MKK6、p38 MAPキナーゼ、ERK1、ERK2、Aktキナーゼ及びその下流シグナル伝達分子のリン酸化の実質的な低下を達成するのに十分な期間及び用量にてヌクレオシドアナログ剤を投与する工程を含む、血液悪性疾患と診断された被験体を治療する方法。
【請求項2】
前記ヌクレオシドアナログ剤が8−アミノ−アデノシンである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記血液悪性疾患が、白血病、リンパ腫又は骨髄腫である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記被験体が、前記血液悪性疾患からの寛解期にあって再発した、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記血液悪性疾患が骨髄腫である、請求項3に記載の方法。
【請求項6】
前記骨髄腫が、前記被験体の骨髄中の形質細胞数の増加をもたらす、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記形質細胞が骨髄腫細胞である、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記骨髄腫細胞が多剤耐性である、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記被験体の尿中のベンス・ジョーンズ蛋白質を分析する工程を更に含み、ベンス・ジョーンズ蛋白質の減少又は欠如が前記骨髄腫の有効な治療であることを示す、請求項5に記載の方法。
【請求項10】
前記ベンス・ジョーンズ蛋白質の減少が、被測定ベンス・ジョーンズ蛋白質の少なくとも約10%の減少、被測定ベンス・ジョーンズ蛋白質の少なくとも約20%の減少、被測定ベンス・ジョーンズ蛋白質の少なくとも約30%の減少、被測定ベンス・ジョーンズ蛋白質の少なくとも約40%の減少、被測定ベンス・ジョーンズ蛋白質の少なくとも約50%の減少、被測定ベンス・ジョーンズ蛋白質の少なくとも約60%の減少、被測定ベンス・ジョーンズ蛋白質の少なくとも約70%の減少、被測定ベンス・ジョーンズ蛋白質の少なくとも約80%の減少、被測定ベンス・ジョーンズ蛋白質の少なくとも約90%の減少、被測定ベンス・ジョーンズ蛋白質の少なくとも約95%の減少又は被測定ベンス・ジョーンズ蛋白質の少なくとも約99%の減少である、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記被験体の血清蛋白をM蛋白質に関して分析する工程を更に含み、M蛋白質の減少又は欠如が骨髄腫の有効な治療であることを示す、請求項5に記載の方法。
【請求項12】
前記M蛋白質の減少が、被測定M蛋白質レベルの少なくとも約10%の低下、被測定M蛋白質レベルの少なくとも約20%の低下、被測定M蛋白質レベルの少なくとも約30%の低下、被測定M蛋白質レベルの少なくとも約40%の低下、被測定M蛋白質レベルの少なくとも約50%の低下、被測定M蛋白質レベルの少なくとも約60%の低下、被測定M蛋白質レベルの少なくとも約70%の低下、被測定M蛋白質レベルの少なくとも約80%の低下、被測定M蛋白質レベルの少なくとも約90%の低下、被測定M蛋白質レベルの少なくとも約95%の低下又は被測定M蛋白質レベルの少なくとも約99%の低下である、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記M蛋白質の欠如が免疫固定によって判定される、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
前記血清蛋白が血清電気泳動によって分析される、請求項11に記載の方法。
【請求項15】
骨髄腫の有効な治療を示す形質細胞数の減少を確認するため、前記被験体の骨髄に対して生検を実施する工程を更に含む、請求項6に記載の方法。
【請求項16】
前記生検が、形質細胞数の少なくとも約5%の減少、形質細胞数の少なくとも約10%の減少、形質細胞数の少なくとも約20%の減少、形質細胞数の少なくとも約30%の減少、形質細胞数の少なくとも約40%の減少、形質細胞数の少なくとも約50%の減少、形質細胞数の少なくとも約60%の減少、形質細胞数の少なくとも約70%の減少、形質細胞数の少なくとも約80%の減少、形質細胞数の少なくとも約90%の減少、形質細胞数の少なくとも約95%の減少又は形質細胞数の少なくとも約99%の減少を示す、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記期間が、2ヶ月間で少なくとも1週間、1週あたり少なくとも1回である、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
前記期間が、2ヶ月間で少なくとも2週間、1週あたり少なくとも1回である、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記期間が、2ヶ月間で少なくとも1週間、1週あたり少なくとも5日である、請求項17に記載の方法。
【請求項20】
前記用量が少なくとも約500〜2500mg/m2である、請求項1に記載の方法。
【請求項21】
前記ヌクレオシドアナログ剤が静脈内投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項22】
前記ヌクレオシドアナログ剤が経口投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項23】
前記ヌクレオシドアナログ剤の投与が、骨髄腫に関連する症状又は病状を改善又は予防する、請求項5に記載の方法。
【請求項24】
前記症状又は病状が、高カルシウム血症、骨粗鬆症、溶解性骨病変、骨痛、原因不明の骨折、貧血、腎損傷、アミロイドーシス、びまん性慢性感染、体重減少、悪心、食欲不振及び精神錯乱から成る群より選択される、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記被験体が哺乳動物である、請求項1から24に記載の方法。
【請求項26】
前記哺乳動物がヒトである、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
血液悪性疾患に罹患した患者におけるヌクレオシドアナログ剤の有効性を治療前に予測する方法であって、
a)該患者から細胞を単離する工程と、
b)単離した細胞を該ヌクレオシドアナログ剤で処理する工程と、
c)1つ又はそれ以上の蛋白質であるMKK3、MKK6、p38 MAPキナーゼ、ERK1、ERK2及びAktキナーゼ並びにその下流シグナル伝達分子のリン酸化を測定する工程と
を含み、リン酸化の低下が該ヌクレオシドアナログ剤に対する良好な臨床反応を示す、方法。
【請求項28】
前記細胞が骨髄から単離された形質細胞である、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記ヌクレオシドアナログ剤が8−アミノ−アデノシンである、請求項27に記載の方法。
【請求項30】
前記形質細胞の細胞増殖速度を測定する工程を更に含み、該形質細胞の細胞増殖速度の安定化又は低下は、前記患者が前記ヌクレオシドアナログ剤に良好に反応することを示す、請求項28に記載の方法。
【請求項31】
前記形質細胞の細胞増殖速度を骨髄から単離した正常細胞の細胞増殖速度と比較する工程を更に含み、該正常細胞と比較した形質細胞の細胞増殖の低下は、前記患者が前記ヌクレオシドアナログ剤に良好に反応することを示す、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
前記リン酸化の低下が、ヌクレオシドアナログ剤で処理されなかった同一蛋白質のリン酸化より少なくとも約10%少なく、ヌクレオシドアナログ剤で処理されなかった同一蛋白質のリン酸化より少なくとも約20%少なく、ヌクレオシドアナログ剤で処理されなかった同一蛋白質のリン酸化より少なくとも約30%少なく、ヌクレオシドアナログ剤で処理されなかった同一蛋白質のリン酸化より少なくとも約40%少なく、ヌクレオシドアナログ剤で処理されなかった同一蛋白質のリン酸化より少なくとも約50%少なく、ヌクレオシドアナログ剤で処理されなかった同一蛋白質のリン酸化より少なくとも60%少なく、ヌクレオシドアナログ剤で処理されなかった同一蛋白質のリン酸化より少なくとも70%少なく、ヌクレオシドアナログ剤で処理されなかった同一蛋白質のリン酸化より少なくとも80%少なく、ヌクレオシドアナログ剤で処理されなかった同一蛋白質のリン酸化より少なくとも90%少なく、或いはヌクレオシドアナログ剤で処理されなかった同一蛋白質のリン酸化より少なくとも100%少ない、請求項27に記載の方法。
【請求項33】
前記リン酸化の低下が内在性ATPレベルの喪失に起因しない、請求項27に記載の方法。
【請求項34】
前記蛋白質が蛋白質レベルの変化を受けない、請求項27に記載の方法。
【請求項35】
PP2Aのホスファターゼ活性を測定する工程を更に含み、PP2Aのホスファターゼ活性の上昇は、前記患者が前記ヌクレオシドアナログ剤に良好に反応することを示す、請求項27に記載の方法。
【請求項36】
前記形質細胞のアポトーシスを測定する工程を更に含み、アポトーシスの増加は、前記患者が前記ヌクレオシドアナログ剤に良好に反応することを示す、請求項27に記載の方法。
【請求項37】
カスパーゼの活性化を検出する工程を更に含み、カスパーゼの活性化は、前記患者が前記ヌクレオシドアナログ剤に良好に反応することを示す、請求項26に記載の方法。
【請求項38】
多発性骨髄腫を治療する有効性に関して化合物をスクリーニングする方法であって、
a)該化合物で骨髄腫細胞を処理する工程と、
b)1つ又はそれ以上の蛋白質であるMKK3、MKK6、p38 MAPキナーゼ、ERK1、ERK2及びAktキナーゼ並びにその下流シグナル伝達分子のリン酸化を測定する工程と
を含み、該1つ又はそれ以上の蛋白質のリン酸化の低下が多発性骨髄腫に対する有効な治療であることを示す方法。
【請求項39】
PP2Aのホスファターゼ活性を測定する工程を更に含み、ホスファターゼ活性の上昇が多発性骨髄腫に対する有効な治療であることを示す、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
前記骨髄腫細胞のアポトーシスを測定する工程を更に含み、アポトーシスの増加が多発性骨髄腫に対する有効な治療であることを示す、請求項38に記載の方法。
【請求項41】
前記骨髄腫細胞の細胞増殖を測定する工程を更に含み、細胞増殖の低下が多発性骨髄腫に対する有効な治療であることを示す、請求項38に記載の方法。
【請求項42】
カスパーゼの活性化を検出する工程を更に含み、カスパーゼの活性化が多発性骨髄腫の有効な治療であることを示す、請求項38に記載の方法。
【請求項43】
前記骨髄腫細胞が多剤耐性骨髄腫細胞である、請求項38に記載の方法。
【請求項44】
前記骨髄腫細胞がステロイド耐性骨髄腫細胞である、請求項38に記載の方法。
【請求項45】
治療有効量の8−アミノ−アデノシンを投与する工程を含む、血液悪性疾患と診断された被験体を治療する方法。
【請求項46】
前記血液悪性疾患が骨髄腫である、請求項45に記載の方法。
【請求項47】
前記被験体が、前記骨髄腫からの寛解期にあって再発した、請求項46に記載の方法。
【請求項48】
前記骨髄腫が多剤耐性である、請求項46に記載の方法。
【請求項49】
前記被験体の尿中のベンス・ジョーンズ蛋白質を分析する工程を更に含み、ベンス・ジョーンズ蛋白質の減少又は欠如が前記骨髄腫の有効な治療であることを示す、請求項46に記載の方法。
【請求項50】
前記ベンス・ジョーンズ蛋白質の減少が、被測定ベンス・ジョーンズ蛋白質の少なくとも約10%の減少、被測定ベンス・ジョーンズ蛋白質の少なくとも約20%の減少、被測定ベンス・ジョーンズ蛋白質の少なくとも約30%の減少、被測定ベンス・ジョーンズ蛋白質の少なくとも約40%の減少、被測定ベンス・ジョーンズ蛋白質の少なくとも約50%の減少、被測定ベンス・ジョーンズ蛋白質の少なくとも約60%の減少、被測定ベンス・ジョーンズ蛋白質の少なくとも約70%の減少、被測定ベンス・ジョーンズ蛋白質の少なくとも約80%の減少、被測定ベンス・ジョーンズ蛋白質の少なくとも約90%の減少、被測定ベンス・ジョーンズ蛋白質の少なくとも約95%の減少又は被測定ベンス・ジョーンズ蛋白質の少なくとも約99%の減少である、請求項49に記載の方法。
【請求項51】
前記被験体の血清蛋白をM蛋白質に関して分析する工程を更に含み、M蛋白質の減少又は欠如が骨髄腫の有効な治療であることを示す、請求項46に記載の方法。
【請求項52】
前記M蛋白質の減少が、被測定M蛋白質レベルの少なくとも約10%の低下、被測定M蛋白質レベルの少なくとも約20%の低下、被測定M蛋白質レベルの少なくとも約30%の低下、被測定M蛋白質レベルの少なくとも約40%の低下、被測定M蛋白質レベルの少なくとも約50%の低下、被測定M蛋白質レベルの少なくとも約60%の低下、被測定M蛋白質レベルの少なくとも約70%の低下、被測定M蛋白質レベルの少なくとも約80%の低下、被測定M蛋白質レベルの少なくとも約90%の低下、被測定M蛋白質レベルの少なくとも約95%の低下又は被測定M蛋白質レベルの少なくとも約99%の低下である、請求項51に記載の方法。
【請求項53】
前記M蛋白質の欠如が免疫固定によって判定される、請求項51に記載の方法。
【請求項54】
前記血清蛋白が血清電気泳動によって分析される、請求項51に記載の方法。
【請求項55】
骨髄腫の有効な治療を示す形質細胞数の減少を確認するため、前記被験体の骨髄に対して生検を実施する工程を更に含む、請求項46に記載の方法。
【請求項56】
前記生検が、形質細胞数の少なくとも約5%の減少、形質細胞数の少なくとも約10%の減少、形質細胞数の少なくとも約20%の減少、形質細胞数の少なくとも約30%の減少、形質細胞数の少なくとも約40%の減少、形質細胞数の少なくとも約50%の減少、形質細胞数の少なくとも約60%の減少、形質細胞数の少なくとも約70%の減少、形質細胞数の少なくとも約80%の減少、形質細胞数の少なくとも約90%の減少、形質細胞数の少なくとも約95%の減少又は形質細胞数の少なくとも約99%の減少を示す、請求項55に記載の方法。
【請求項57】
前記8−アミノ−アデノシンが、2ヶ月間で少なくとも1週間、1週あたり少なくとも1回、前記被験体に投与される、請求項45に記載の方法。
【請求項58】
前記8−アミノ−アデノシンが、2ヶ月間で少なくとも2週間、1週あたり少なくとも1回、前記被験体に投与される、請求項45に記載の方法。
【請求項59】
前記8−アミノ−アデノシンが、2ヶ月間で少なくとも1週間、1週あたり少なくとも5日、前記被験体に投与される、請求項45に記載の方法。
【請求項60】
前記被験体に投与される前記8−アミノ−アデノシンの用量が、少なくとも約500〜2500mg/m2である、請求項45に記載の方法。
【請求項61】
前記ヌクレオシドアナログ剤が静脈内投与される、請求項45に記載の方法。
【請求項62】
前記ヌクレオシドアナログ剤が経口投与される、請求項45に記載の方法。
【請求項63】
前記8−アミノ−アデノシンの投与が、骨髄腫に関連する症状又は病状を改善又は予防する、請求項46に記載の方法。
【請求項64】
前記症状又は病状が、高カルシウム血症、骨粗鬆症、溶解性骨病変、骨痛、原因不明の骨折、貧血、腎損傷、アミロイドーシス、びまん性慢性感染、体重減少、悪心、食欲不振及び精神錯乱から成る群より選択される、請求項63に記載の方法。
【請求項65】
前記被験体が哺乳動物である、請求項45〜64に記載の方法。
【請求項66】
前記哺乳動物がヒトである、請求項65に記載の方法。
【請求項1】
1つ又はそれ以上のMKK3、MKK6、p38 MAPキナーゼ、ERK1、ERK2、Aktキナーゼ及びその下流シグナル伝達分子のリン酸化の実質的な低下を達成するのに十分な期間及び用量にてヌクレオシドアナログ剤を投与する工程を含む、血液悪性疾患と診断された被験体を治療する方法。
【請求項2】
前記ヌクレオシドアナログ剤が8−アミノ−アデノシンである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記血液悪性疾患が、白血病、リンパ腫又は骨髄腫である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記被験体が、前記血液悪性疾患からの寛解期にあって再発した、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記血液悪性疾患が骨髄腫である、請求項3に記載の方法。
【請求項6】
前記骨髄腫が、前記被験体の骨髄中の形質細胞数の増加をもたらす、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記形質細胞が骨髄腫細胞である、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記骨髄腫細胞が多剤耐性である、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記被験体の尿中のベンス・ジョーンズ蛋白質を分析する工程を更に含み、ベンス・ジョーンズ蛋白質の減少又は欠如が前記骨髄腫の有効な治療であることを示す、請求項5に記載の方法。
【請求項10】
前記ベンス・ジョーンズ蛋白質の減少が、被測定ベンス・ジョーンズ蛋白質の少なくとも約10%の減少、被測定ベンス・ジョーンズ蛋白質の少なくとも約20%の減少、被測定ベンス・ジョーンズ蛋白質の少なくとも約30%の減少、被測定ベンス・ジョーンズ蛋白質の少なくとも約40%の減少、被測定ベンス・ジョーンズ蛋白質の少なくとも約50%の減少、被測定ベンス・ジョーンズ蛋白質の少なくとも約60%の減少、被測定ベンス・ジョーンズ蛋白質の少なくとも約70%の減少、被測定ベンス・ジョーンズ蛋白質の少なくとも約80%の減少、被測定ベンス・ジョーンズ蛋白質の少なくとも約90%の減少、被測定ベンス・ジョーンズ蛋白質の少なくとも約95%の減少又は被測定ベンス・ジョーンズ蛋白質の少なくとも約99%の減少である、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記被験体の血清蛋白をM蛋白質に関して分析する工程を更に含み、M蛋白質の減少又は欠如が骨髄腫の有効な治療であることを示す、請求項5に記載の方法。
【請求項12】
前記M蛋白質の減少が、被測定M蛋白質レベルの少なくとも約10%の低下、被測定M蛋白質レベルの少なくとも約20%の低下、被測定M蛋白質レベルの少なくとも約30%の低下、被測定M蛋白質レベルの少なくとも約40%の低下、被測定M蛋白質レベルの少なくとも約50%の低下、被測定M蛋白質レベルの少なくとも約60%の低下、被測定M蛋白質レベルの少なくとも約70%の低下、被測定M蛋白質レベルの少なくとも約80%の低下、被測定M蛋白質レベルの少なくとも約90%の低下、被測定M蛋白質レベルの少なくとも約95%の低下又は被測定M蛋白質レベルの少なくとも約99%の低下である、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記M蛋白質の欠如が免疫固定によって判定される、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
前記血清蛋白が血清電気泳動によって分析される、請求項11に記載の方法。
【請求項15】
骨髄腫の有効な治療を示す形質細胞数の減少を確認するため、前記被験体の骨髄に対して生検を実施する工程を更に含む、請求項6に記載の方法。
【請求項16】
前記生検が、形質細胞数の少なくとも約5%の減少、形質細胞数の少なくとも約10%の減少、形質細胞数の少なくとも約20%の減少、形質細胞数の少なくとも約30%の減少、形質細胞数の少なくとも約40%の減少、形質細胞数の少なくとも約50%の減少、形質細胞数の少なくとも約60%の減少、形質細胞数の少なくとも約70%の減少、形質細胞数の少なくとも約80%の減少、形質細胞数の少なくとも約90%の減少、形質細胞数の少なくとも約95%の減少又は形質細胞数の少なくとも約99%の減少を示す、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記期間が、2ヶ月間で少なくとも1週間、1週あたり少なくとも1回である、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
前記期間が、2ヶ月間で少なくとも2週間、1週あたり少なくとも1回である、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記期間が、2ヶ月間で少なくとも1週間、1週あたり少なくとも5日である、請求項17に記載の方法。
【請求項20】
前記用量が少なくとも約500〜2500mg/m2である、請求項1に記載の方法。
【請求項21】
前記ヌクレオシドアナログ剤が静脈内投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項22】
前記ヌクレオシドアナログ剤が経口投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項23】
前記ヌクレオシドアナログ剤の投与が、骨髄腫に関連する症状又は病状を改善又は予防する、請求項5に記載の方法。
【請求項24】
前記症状又は病状が、高カルシウム血症、骨粗鬆症、溶解性骨病変、骨痛、原因不明の骨折、貧血、腎損傷、アミロイドーシス、びまん性慢性感染、体重減少、悪心、食欲不振及び精神錯乱から成る群より選択される、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記被験体が哺乳動物である、請求項1から24に記載の方法。
【請求項26】
前記哺乳動物がヒトである、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
血液悪性疾患に罹患した患者におけるヌクレオシドアナログ剤の有効性を治療前に予測する方法であって、
a)該患者から細胞を単離する工程と、
b)単離した細胞を該ヌクレオシドアナログ剤で処理する工程と、
c)1つ又はそれ以上の蛋白質であるMKK3、MKK6、p38 MAPキナーゼ、ERK1、ERK2及びAktキナーゼ並びにその下流シグナル伝達分子のリン酸化を測定する工程と
を含み、リン酸化の低下が該ヌクレオシドアナログ剤に対する良好な臨床反応を示す、方法。
【請求項28】
前記細胞が骨髄から単離された形質細胞である、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記ヌクレオシドアナログ剤が8−アミノ−アデノシンである、請求項27に記載の方法。
【請求項30】
前記形質細胞の細胞増殖速度を測定する工程を更に含み、該形質細胞の細胞増殖速度の安定化又は低下は、前記患者が前記ヌクレオシドアナログ剤に良好に反応することを示す、請求項28に記載の方法。
【請求項31】
前記形質細胞の細胞増殖速度を骨髄から単離した正常細胞の細胞増殖速度と比較する工程を更に含み、該正常細胞と比較した形質細胞の細胞増殖の低下は、前記患者が前記ヌクレオシドアナログ剤に良好に反応することを示す、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
前記リン酸化の低下が、ヌクレオシドアナログ剤で処理されなかった同一蛋白質のリン酸化より少なくとも約10%少なく、ヌクレオシドアナログ剤で処理されなかった同一蛋白質のリン酸化より少なくとも約20%少なく、ヌクレオシドアナログ剤で処理されなかった同一蛋白質のリン酸化より少なくとも約30%少なく、ヌクレオシドアナログ剤で処理されなかった同一蛋白質のリン酸化より少なくとも約40%少なく、ヌクレオシドアナログ剤で処理されなかった同一蛋白質のリン酸化より少なくとも約50%少なく、ヌクレオシドアナログ剤で処理されなかった同一蛋白質のリン酸化より少なくとも60%少なく、ヌクレオシドアナログ剤で処理されなかった同一蛋白質のリン酸化より少なくとも70%少なく、ヌクレオシドアナログ剤で処理されなかった同一蛋白質のリン酸化より少なくとも80%少なく、ヌクレオシドアナログ剤で処理されなかった同一蛋白質のリン酸化より少なくとも90%少なく、或いはヌクレオシドアナログ剤で処理されなかった同一蛋白質のリン酸化より少なくとも100%少ない、請求項27に記載の方法。
【請求項33】
前記リン酸化の低下が内在性ATPレベルの喪失に起因しない、請求項27に記載の方法。
【請求項34】
前記蛋白質が蛋白質レベルの変化を受けない、請求項27に記載の方法。
【請求項35】
PP2Aのホスファターゼ活性を測定する工程を更に含み、PP2Aのホスファターゼ活性の上昇は、前記患者が前記ヌクレオシドアナログ剤に良好に反応することを示す、請求項27に記載の方法。
【請求項36】
前記形質細胞のアポトーシスを測定する工程を更に含み、アポトーシスの増加は、前記患者が前記ヌクレオシドアナログ剤に良好に反応することを示す、請求項27に記載の方法。
【請求項37】
カスパーゼの活性化を検出する工程を更に含み、カスパーゼの活性化は、前記患者が前記ヌクレオシドアナログ剤に良好に反応することを示す、請求項26に記載の方法。
【請求項38】
多発性骨髄腫を治療する有効性に関して化合物をスクリーニングする方法であって、
a)該化合物で骨髄腫細胞を処理する工程と、
b)1つ又はそれ以上の蛋白質であるMKK3、MKK6、p38 MAPキナーゼ、ERK1、ERK2及びAktキナーゼ並びにその下流シグナル伝達分子のリン酸化を測定する工程と
を含み、該1つ又はそれ以上の蛋白質のリン酸化の低下が多発性骨髄腫に対する有効な治療であることを示す方法。
【請求項39】
PP2Aのホスファターゼ活性を測定する工程を更に含み、ホスファターゼ活性の上昇が多発性骨髄腫に対する有効な治療であることを示す、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
前記骨髄腫細胞のアポトーシスを測定する工程を更に含み、アポトーシスの増加が多発性骨髄腫に対する有効な治療であることを示す、請求項38に記載の方法。
【請求項41】
前記骨髄腫細胞の細胞増殖を測定する工程を更に含み、細胞増殖の低下が多発性骨髄腫に対する有効な治療であることを示す、請求項38に記載の方法。
【請求項42】
カスパーゼの活性化を検出する工程を更に含み、カスパーゼの活性化が多発性骨髄腫の有効な治療であることを示す、請求項38に記載の方法。
【請求項43】
前記骨髄腫細胞が多剤耐性骨髄腫細胞である、請求項38に記載の方法。
【請求項44】
前記骨髄腫細胞がステロイド耐性骨髄腫細胞である、請求項38に記載の方法。
【請求項45】
治療有効量の8−アミノ−アデノシンを投与する工程を含む、血液悪性疾患と診断された被験体を治療する方法。
【請求項46】
前記血液悪性疾患が骨髄腫である、請求項45に記載の方法。
【請求項47】
前記被験体が、前記骨髄腫からの寛解期にあって再発した、請求項46に記載の方法。
【請求項48】
前記骨髄腫が多剤耐性である、請求項46に記載の方法。
【請求項49】
前記被験体の尿中のベンス・ジョーンズ蛋白質を分析する工程を更に含み、ベンス・ジョーンズ蛋白質の減少又は欠如が前記骨髄腫の有効な治療であることを示す、請求項46に記載の方法。
【請求項50】
前記ベンス・ジョーンズ蛋白質の減少が、被測定ベンス・ジョーンズ蛋白質の少なくとも約10%の減少、被測定ベンス・ジョーンズ蛋白質の少なくとも約20%の減少、被測定ベンス・ジョーンズ蛋白質の少なくとも約30%の減少、被測定ベンス・ジョーンズ蛋白質の少なくとも約40%の減少、被測定ベンス・ジョーンズ蛋白質の少なくとも約50%の減少、被測定ベンス・ジョーンズ蛋白質の少なくとも約60%の減少、被測定ベンス・ジョーンズ蛋白質の少なくとも約70%の減少、被測定ベンス・ジョーンズ蛋白質の少なくとも約80%の減少、被測定ベンス・ジョーンズ蛋白質の少なくとも約90%の減少、被測定ベンス・ジョーンズ蛋白質の少なくとも約95%の減少又は被測定ベンス・ジョーンズ蛋白質の少なくとも約99%の減少である、請求項49に記載の方法。
【請求項51】
前記被験体の血清蛋白をM蛋白質に関して分析する工程を更に含み、M蛋白質の減少又は欠如が骨髄腫の有効な治療であることを示す、請求項46に記載の方法。
【請求項52】
前記M蛋白質の減少が、被測定M蛋白質レベルの少なくとも約10%の低下、被測定M蛋白質レベルの少なくとも約20%の低下、被測定M蛋白質レベルの少なくとも約30%の低下、被測定M蛋白質レベルの少なくとも約40%の低下、被測定M蛋白質レベルの少なくとも約50%の低下、被測定M蛋白質レベルの少なくとも約60%の低下、被測定M蛋白質レベルの少なくとも約70%の低下、被測定M蛋白質レベルの少なくとも約80%の低下、被測定M蛋白質レベルの少なくとも約90%の低下、被測定M蛋白質レベルの少なくとも約95%の低下又は被測定M蛋白質レベルの少なくとも約99%の低下である、請求項51に記載の方法。
【請求項53】
前記M蛋白質の欠如が免疫固定によって判定される、請求項51に記載の方法。
【請求項54】
前記血清蛋白が血清電気泳動によって分析される、請求項51に記載の方法。
【請求項55】
骨髄腫の有効な治療を示す形質細胞数の減少を確認するため、前記被験体の骨髄に対して生検を実施する工程を更に含む、請求項46に記載の方法。
【請求項56】
前記生検が、形質細胞数の少なくとも約5%の減少、形質細胞数の少なくとも約10%の減少、形質細胞数の少なくとも約20%の減少、形質細胞数の少なくとも約30%の減少、形質細胞数の少なくとも約40%の減少、形質細胞数の少なくとも約50%の減少、形質細胞数の少なくとも約60%の減少、形質細胞数の少なくとも約70%の減少、形質細胞数の少なくとも約80%の減少、形質細胞数の少なくとも約90%の減少、形質細胞数の少なくとも約95%の減少又は形質細胞数の少なくとも約99%の減少を示す、請求項55に記載の方法。
【請求項57】
前記8−アミノ−アデノシンが、2ヶ月間で少なくとも1週間、1週あたり少なくとも1回、前記被験体に投与される、請求項45に記載の方法。
【請求項58】
前記8−アミノ−アデノシンが、2ヶ月間で少なくとも2週間、1週あたり少なくとも1回、前記被験体に投与される、請求項45に記載の方法。
【請求項59】
前記8−アミノ−アデノシンが、2ヶ月間で少なくとも1週間、1週あたり少なくとも5日、前記被験体に投与される、請求項45に記載の方法。
【請求項60】
前記被験体に投与される前記8−アミノ−アデノシンの用量が、少なくとも約500〜2500mg/m2である、請求項45に記載の方法。
【請求項61】
前記ヌクレオシドアナログ剤が静脈内投与される、請求項45に記載の方法。
【請求項62】
前記ヌクレオシドアナログ剤が経口投与される、請求項45に記載の方法。
【請求項63】
前記8−アミノ−アデノシンの投与が、骨髄腫に関連する症状又は病状を改善又は予防する、請求項46に記載の方法。
【請求項64】
前記症状又は病状が、高カルシウム血症、骨粗鬆症、溶解性骨病変、骨痛、原因不明の骨折、貧血、腎損傷、アミロイドーシス、びまん性慢性感染、体重減少、悪心、食欲不振及び精神錯乱から成る群より選択される、請求項63に記載の方法。
【請求項65】
前記被験体が哺乳動物である、請求項45〜64に記載の方法。
【請求項66】
前記哺乳動物がヒトである、請求項65に記載の方法。
【図1A】
【図1B】
【図1C】
【図1D】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5A】
【図5B】
【図5C】
【図5D】
【図6】
【図1B】
【図1C】
【図1D】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5A】
【図5B】
【図5C】
【図5D】
【図6】
【公表番号】特表2008−519854(P2008−519854A)
【公表日】平成20年6月12日(2008.6.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−541376(P2007−541376)
【出願日】平成17年11月14日(2005.11.14)
【国際出願番号】PCT/US2005/041037
【国際公開番号】WO2006/053252
【国際公開日】平成18年5月18日(2006.5.18)
【出願人】(500041019)ノースウェスタン ユニバーシティ (24)
【出願人】(501100582)ザ ボード オブ リージェンツ オブ ザ ユニバーシティ オブ テキサス システム (19)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成20年6月12日(2008.6.12)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年11月14日(2005.11.14)
【国際出願番号】PCT/US2005/041037
【国際公開番号】WO2006/053252
【国際公開日】平成18年5月18日(2006.5.18)
【出願人】(500041019)ノースウェスタン ユニバーシティ (24)
【出願人】(501100582)ザ ボード オブ リージェンツ オブ ザ ユニバーシティ オブ テキサス システム (19)
【Fターム(参考)】
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