説明

ネットワークシステム、及び、通信ログ解析システム

【課題】 モバイル通信において,端末が通信利用した場所,あるいは,通信利用中の移動経路と,端末による接続先とを関連付ける手段を提供する。
【解決手段】 モバイルネットワークを構成するネットワーク装置が収集した通信ログを集約し,解析する,通信ログ解析システムにおいて,モバイル端末がネットワーク接続する際に,モバイル端末が無線接続する基地局が生成するログ情報,モバイル端末がハンドオーバする際に,モバイル端末が無線接続するハンドオーバ先となる基地局が生成するログ情報,ならびに,モバイル端末がネットワークから切断する際に,モバイル端末が無線接続を切断する基地局が生成するログ情報を用いて,該端末によるネットワーク接続中の移動経路を推定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,モバイルネットワークにおける通信装置が生成した通信ログ情報の解析を行う装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
モバイル通信では,第3世代と呼ばれる通信方式の導入により,通信速度の高速化が進み,従来の音声通信中心の利用からデータ通信中心への利用へと変遷している。現在技術開発が進められている第4世代と呼ばれる通信方式では,伝送速度を,光ファイバを用いる有線通信並みに,数百Mbit/sから数Gbit/sとすることを目標としている。
【0003】
一方,通信速度の向上と共に,モバイル通信で用いられる端末は高機能化してきた。従来,モバイル通信では,音声通信機能と簡易なインターネット接続機能のみを有する端末が主として利用されていたが,現在では,スマートフォンと呼ばれる高機能な情報処理機能を有する端末の利用比率が高くなってきている。
【0004】
高機能端末であるスマートフォンでは,多種多様なアプリケーションが扱われるようになり,従来の携帯電話端末と比較して,無線アクセスネットワークを流れる通信量が大幅に増加している。このため,無線アクセスネットワークの負荷を軽減することが課題となっている。
【0005】
無線アクセスネットワークの付加を軽減する手法の一つとして,トラヒックのオフロード技術がある。オフロード技術は,モバイル端末のトラヒックを、無線アクセスネットワークを回避させ,有線ネットワークを経由させることによって,無線アクセスネットワークの負荷を軽減しようとするものである。オフロードの実現には,無線LANを利用する方式,フェムトセルと呼ばれる,超小型の基地局を宅内に設置し,基地局からのトラヒックが光アクセスネットワークを経由してインターネットへ転送する方式や,映像配信などのコンテンツを,キャッシュ技術や,CDN(Contents Delivery Network)と呼ばれるコンテンツ配信専用のネットワークを,より端末に近い場所に設置することにより,無線アクセスネットワークに流入するトラヒックを軽減する方式などがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】WO2009/001400号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来のモバイル通信におけるビジネスモデルでは,ネットワークを運用する通信事業者がネットワーク上でのサービス仕様を決定し,それに基づいてネットワーク上のトラヒック量を予測した上で,ネットワーク設計,および構築を行ってきた。
【0008】
しかしながら,スマートフォンでは,ユーザが自由にアプリケーションを開発することが可能になり,さらには,ユーザが開発したアプリケーションをユーザ間で自由に共有して利用することが可能になる。これによって,サービス提供の主体が,通信事業者から,端末メーカーやサービスプロバイダへと移行している。このため,通信事業者は,従来と比較して,ネットワーク上のトラヒック量の予測が困難になってきている。
【0009】
トラヒックのオフロードを実現する上で,通信事業者は,ネットワークの利用状況を的確に把握することが必要である。
【0010】
端末の場所や移動経路と,その場所や経路上から利用した通信先を関連付けることは,オフロード用のキャッシュやCDNの配置,また,無線LANアクセスによる有線ネットワークにオフロードするネットワークの設計を行う上で有効である。
【0011】
端末の位置情報を把握する手段として,携帯電話やスマートフォンに搭載されたGPS(Global Positioning System)機能を利用する方法がある。端末に搭載されたGPS機能を利用して,位置情報を解析する場合,端末のGPS機能を常時起動しておかなければならない。すなわち,端末は一定時間ごとに,GPS機能を用いて,その時刻における位置情報を測定すること,および,その位置情報を,位置情報を収集する事業者(多くの場合は,モバイルネットワークを運用する通信事業者)に提供しなければならない。このことは,端末の電力消費量の増加につながり,バッテリーの消耗を早める原因となる。さらに,GPS機能による位置情報の把握は,通信の利用状況との相関性がない。このため,位置情報を収集する事業者は,端末の通信利用有無に関わらず,常時,端末の位置情報を収集しなければならない。このことに伴い,次の課題が生じる。第一の課題は,システムが収集する情報量が増大することにある。第二の課題は,端末の位置情報を通信利用状況と関連付ける際,膨大な情報の中から,通信利用時のみの位置情報を通信利用状況と関連付ける必要があるため、当該関連付けの処理量が増大することである。
【0012】
特許文献1では,端末の移動経路や移動方向の推定を行う方式が示されている。しかしながら,特許文献1は,低消費電力化を目的としたものであり,トラヒック量の予測を行うために必要となる,端末の位置と,該端末による接続先を対応付ける方式については示されていない。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を達成するために,本発明におけるネットワークシステムは,複数の通信装置と、該複数の通信装置とネットワークを介して接続される通信ログ解析装置と、を含むネットワークシステムであって、前記複数の通信装置は、通信ログ情報を生成し、生成した通信ログ情報を前記通信ログ解析装置に送信し、前記通信ログ解析装置は、前記複数の通信装置より受信した通信ログ情報から、少なくとも二つの通信装置における所定の端末との通信ログ情報を抽出し、前記抽出した通信ログ情報を用いて前記所定の端末の移動方向を推定することを特徴とする。
【0014】
また、前記通信装置は前記端末が無線接続する基地局であって、前記通信ログ解析装置は、前記端末が基地局に接続したときに前記基地局が生成する通信ログ情報、及び/又は、前記端末が基地局との接続を切断したときに前記基地局が生成する通信ログ情報を抽出する。
【0015】
また、前記通信ログ解析装置は、前記抽出した通信ログ情報と各基地局間の距離が設定された基地局間距離情報とを用いて、前記端末が移動した移動距離を推定する。
【0016】
また、前記通信ログ解析装置は、前記抽出した通信ログ情報に設定された該通信ログ情報の生成時刻から、前記端末が前記基地局間を移動するのに要した移動時間を計算し、該移動時間と前記移動距離とを用いて前記端末の移動速度を推定する。
【0017】
また、前記通信ログ解析装置は、基地局毎に基地局の電波が届く範囲内に存在する経路の情報が設定された経路情報、前記移動速度、及び前記移動方向の少なくとも一以上を用いて前記端末の移動経路又は移動手段を推定する。
【0018】
また、前記通信装置は、前記端末が無線接続する基地局及び前記端末がWEBサーバに接続する際に接続するプロキシサーバであって、前記通信ログ解析装置は、前記プロキシサーバが生成した、前記端末の接続先であるWEBサーバの情報を含む通信ログ情報と、前記移動経路又は前記移動手段とを対応付ける。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば,端末の移動方向等の推定に,GPSの利用が不要となる。これによって,端末移動方向等を推定するために必要となる情報量を、GPSを利用する場合に比べ削減することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の実施形態のネットワークの構成例を示す図
【図2】本発明の実施の形態の通信ログ解析システムのハードウェア構成例を示すブロック図
【図3】本発明の実施の形態の通信ログ解析システム内における処理を説明するブロック図
【図4】本発明の実施の形態による移動経路推定の概念を説明する図
【図5】端末がネットワーク接続を行う際のシーケンスの例を説明する図
【図6】端末が移動し,異なる基地局に対してハンドオーバを行う際のシーケンスの例を説明する図
【図7】端末がネットワークから切断する際のシーケンスの例を説明する図
【図8】基地局情報データベースに設けられる経路情報テーブルの構成例を示す図
【図9】基地局情報データベースに設けられる距離テーブルの構成例を示す図
【図10】位置情報処理部に設けられる端末トレーステーブルの構成例を示す図
【図11】通信ログ解析システムによる,端末の移動速度を推定するための計算手順の例を説明するフローチャート
【図12】通信ログ解析システムによる,移動経路推定の手順例を説明するフローチャート
【図13】基地局が,端末が該基地局に対して接続,ハンドオーバ,または,切断した際に生成する通信ログ情報の例を示す図
【図14】AAAサーバが生成する通信ログ情報の例を示す図
【図15】プロキシサーバが生成する通信ログ情報の例を示す図
【図16】P−GWが生成する通信ログ情報の例を示す図
【図17】S−GWが生成する通信ログ情報の例を示す図
【図18】HSSが生成する通信ログ情報の例を示す図
【図19】端末情報をマッピングするテーブルの構成例を示す図
【図20】端末の移動経路と端末によるネットワーク接続先とを対応付ける処理手順の例を示すフローチャート
【図21】無線LAN経由でのトラヒックオフロードの例を説明する図
【図22】コンテンツ配信ネットワークを用いたトラヒックオフロードの例を説明する図
【図23】端末トレーステーブルの生成手順例を説明するフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。
【0022】
図1は、本発明の実施形態のネットワークの構成例を示す図である。特に,図1においては,LTE(Long Term Evolution)のネットワークを例にしたものである。
【0023】
本発明の実施の形態のネットワークの構成例は,通信ログ解析システム1,端末31,基地局21,パケットの伝達制御を行うサービングゲートウェイ(S−GW)22,インターネット側の接続点となるパケットデータネットワークゲートウェイ(P−GW)23,端末の移動管理などの処理を行う移動管理エンティティ24,ユーザ契約情報等を管理するホーム加入者サーバ(HSS)25,課金などのポリシーを決定するポリシー・課金機能(PCRF)26,認証サーバ(AAA)27,無線ネットワーク30とインターネット(IP網)32との中継サーバとなるプロキシサーバ28,および,端末による接続先となるWebサーバ29から構成される。
【0024】
なお,本発明は,LTEのみならず,WiMAX(Worldwide Interoperability for Microwave Access),第3世代の移動体通信方式であるCDMA2000などの,他のモバイル通信方式にも適用することが可能である。
【0025】
図2は,本発明の実施の形態の通信ログ解析システム1のハードウェア構成例を示すブロック図である。
【0026】
通信ログ解析システム1の構成要素は,ネットワーク装置からのログ情報を収集するためのネットワークインタフェース11−1,解析結果を外部装置に出力するためのネットワークインタフェース11−2,解析等の演算処理を行うCPU12,メモリ13,解析結果等の蓄積機能を有する補助記憶装置14である。
【0027】
図3は,本発明の実施の形態の通信ログ解析システム1内における処理を説明するブロック図である。
【0028】
通信ログ解析システム1の処理ブロック14は,ログ情報収集部141,位置情報処理部143,データマッピング部146により,構成される。
【0029】
ログ情報収集部141では,基地局21などからログ情報を収集し,ログ情報収集部141に設けられるログ情報格納部1411に格納する。分析に必要な情報の具体的な例は,基地局21が収集する通信ログにおいては,通信を行う端末を識別する情報,端末が基地局に接続し,通信を開始した時刻,端末が基地局への接続を切断し,通信を終了した時刻,端末が無線接続した場所を識別するための,基地局を識別する情報である。また,基地局21以外の装置,例えば,S−GW22におけるログ情報の例としては,端末が通信を開始する際に,セッション設定要求信号を受信した時刻,あるいは,セッション切断応答をS−GW22が送信した時刻がある。
【0030】
基地局21から収集し,抽出された情報は,位置情報処理部143に送られる。位置情報処理部143には,移動経路推定部142,速度計算部147,端末トレーステーブル生成部148,端末トレーステーブル144,基地局情報データベース145,端末トレーステーブル144が含まれる。基地局情報データベース145には,経路情報テーブル1451と,距離テーブル1452が設けられる。位置情報処理部143に含まれる端末トレーステーブル生成部148は,ログ情報収集部141が収集した情報を用いて端末トレーステーブル144を生成する。速度計算部147は,端末トレーステーブル144,および,基地局情報データベース145の情報を用いて,端末の移動速度を計算する。さらに,移動経路推定部142は,速度計算部147が計算した端末の移動速度,および,基地局情報データベース145の情報を用いて,端末の移動経路を推定するための処理を行う。
【0031】
位置情報処理部143で分析された移動経路推定結果,および,S−GW22,P−GW23などの装置から収集したログ情報から抽出した情報は,データマッピング部146に送られる。データマッピング部146では,端末や時刻の照合を行うことにより,それぞれの装置が生成したログ情報に関して,同一端末による同一時間の通信情報に対応付け,1460で示される端末の識別情報マッピングを生成する。
【0032】
図8は,位置情報処理部143における基地局情報データベース145に設けられる経路情報テーブル1451の構成例を示すものである。
【0033】
経路情報テーブル1451は,基地局21と,該基地局がカバーするセル内(基地局から電波の届く範囲内)に存在する路線情報とを対応付けるエントリが設けられる。
【0034】
図9は,位置情報処理部143における基地局情報データベース145に設けられる距離テーブル1452の構成例を示すものである。
【0035】
距離テーブル1452には,任意の2つの基地局21間の距離が設定される。
【0036】
図10は,位置情報処理部143に設けられる端末トレーステーブル144の構成例を示す図である。
【0037】
端末トレーステーブル144は,端末単位に分割されて構成される。端末トレーステーブル144には,通信ログが生成された時刻,および,該通信ログを生成した基地局の組合せによって構成されるテーブルエントリが設けられる。
【0038】
図4は,本発明の実施の形態による移動経路推定の概念を説明する図である。
【0039】
図4において,端末31は,最初にセル30−1をカバーする基地局21−1に対して無線接続する。このとき,基地局21−1は,端末31に関する通信ログを生成する。端末31は,通信しながら移動し,基地局21−2がカバーするセル30−2内に入る。端末21はセル間を移動する際,基地局21−1と21−2との間でハンドオーバの処理を行う。このとき,基地局21−2は,端末31に関する通信ログを生成する。次に端末31はセル30−3に移動する際,ハンドオーバの処理を行い,基地局21−3は,端末31に関する通信ログを生成する。端末31は,セル30−3内において,通信を終了する。このとき,基地局21−3は通信ログを生成する。
【0040】
通信ログ解析システム1は,これらの通信ログを用いて,図11に示す手順によって,端末31の移動経路と移動速度を推定する。
【0041】
通信ログ解析システム1は,さらに,図12に示す手順によって,推定した移動経路と移動速度と,地図情報とを照合することにより,端末の移動手段を推定することが可能である。
【0042】
推定した移動速度,移動経路,および,移動手段から,一定時間経過後の移動先を予測することが可能になる。例えば,図4の例では,図8で示した経路情報テーブルを用いることにより,将来の端末31の移動先が,基地局21−4がカバーするエリアであるセル30−4内であることを示している。
【0043】
なお,図4では,簡略化のため,一つの基地局21がカバーするエリアを一つのセル30として表している。しかしながら,実際のモバイル通信システムにおいては,一つのセル30をセクタと呼ばれる複数のエリアに分割し,一つの基地局が複数のエリアをカバーすることがある。
【0044】
図5から図7を用いて,基地局において通信ログが生成される契機について説明する。図5から図7では,例として,LTEにおけるネットワーク接続,ハンドオーバ,および,切断する際の基地局等の装置との間の処理シーケンスを示す。
【0045】
図5は,端末がネットワーク接続を行う際のシーケンスの例である。
【0046】
端末は,自端末の情報を設定した接続要求の信号SQ100を基地局21に送信する。このとき,基地局21は,端末31に関して,図13に示される,端末31を識別する情報として,端末ID,基地局を識別する情報として,セルを識別する情報,セクタを識別する情報,端末が基地局21に接続,または,ハンドオーバ,または,切断した時刻が設定された通信ログを生成する。信号SQ100は基地局21を経由してMME24へ送信される。
【0047】
SQ110においてMME24はHSS23との間で端末認証を行うための情報交換を行う。この過程において,MME24,および,HSS25はそれぞれ,図18に示される,端末31に関して,端末31を識別する情報,時刻が設定された通信ログを生成する。
【0048】
SQ120において,端末31はMME24との間で端末認証の処理を行う。
【0049】
SQ130において,MME24とHSS25との間で端末の位置登録処理を行う。
【0050】
MME24は,S−GW22に対して,セッションの設定要求信号SQ140を送信する。SQ150において,S−GW22は,S−GW22とP−GW23との間の経路設定を行うための情報をPCRF26から入手する。S−GW22は,P−GW23に対して経路設定要求の信号SQ160を送信する。SQ170において,P−GWはAAA27との間で,ユーザ認証の処理を行う。このとき,AAA27は端末31に割り当てるIPアドレスをP−GW23に通知するとともに,端末31に関して,図14に示される,端末31を識別する情報として,セッションIDやユーザID,端末に割り当てたIPアドレス,認証時刻が設定された通信ログを生成する。
【0051】
P−GW23は経路設定応答の信号SQ180をS−GW22に対して送信する。
【0052】
MME24は,MME24と基地局21との間の区間設定要求信号SQ200を基地局21に送信し,さらに,AAA27が発行した端末31に割り当てるIPアドレスなどの情報を設定した接続完了通知の信号SQ210を端末31に送信する。
【0053】
基地局21は,SQ200の応答として,設定完了応答220をMME24に送信する。
【0054】
端末31は,SQ210の応答として,接続完了応答230をMME24に送信する。
【0055】
図6は,端末が移動し,異なる基地局に対してハンドオーバを行う際のシーケンスの例である。
【0056】
端末31は,接続中の基地局21−1との間で,無線品質の報告を行う(SQ300)。端末31の移動に伴い,より無線品質のよい基地局21−2が存在する場合には,基地局21−1は基地局21−2に対してハンドオーバ要求を行う(SQ310)。基地局21−2は,ハンドオーバ要求応答を行う(SQ320)。基地局21−1は端末31に対して切替指示を行う(SQ330)。端末31は,新しい接続先となる基地局21−2に対して,切替完了通知を行う。このとき,基地局21−2は,図13に示される端末31に関するログ情報を生成する。
【0057】
図7は,端末がネットワークから切断する際のシーケンスの例である。
【0058】
端末31は,基地局21を経由してMME24に対して切断要求信号SQ400を送信する。
【0059】
MME24はS−GW22に対して,セッション切断要求信号SQ410を送信する。
【0060】
S−GW22は,PCRF26との間でセッション解除の処理を行い(SQ420),さらに,S−GW22は,SQ430,によって,P−GW23との間のセッションを切断する。この過程において,S−GW22,P−GW23は,端末31に関するログ情報を生成する。
【0061】
S−GW22は,SQ410に対する応答として,セッション切断応答信号SQ470をMME24に対して送信する。
【0062】
MME24は,基地局21に対して,MME24と基地局21との間の区間解放指示信号SQ480を送信する。基地局21は,端末31に対して,無線区間解放の信号SQ490を送信する。このとき,基地局21は,図13に示される端末31に関するログ情報を生成する。
【0063】
基地局21は,SQ480に対する応答として,区間解放完了通知信号SQ500をMME24に対して送信する。
【0064】
図11は,通信ログ解析システムによる,端末の移動速度を推定するための計算手順の例を説明するフローチャートである。
【0065】
移動速度を推定する端末に関する端末トレーステーブルを参照する(FL110)。端末トレーステーブルにおける,時間的に隣接する2つのエントリを抽出することによって,端末が移動した際に接続した2つの基地局を抽出する(FL120)。抽出した2つの基地局間の距離を,距離テーブルを用いて,把握する(FL130)。
【0066】
セル間距離を2つのエントリが生成された時刻の差で除算する。この値が,端末の移動速度の推定値となる(FL140)。
【0067】
図12は,通信ログ解析システムによる,移動経路推定の手順例を説明するフローチャートである。
【0068】
端末トレーステーブルを参照することによって,端末が経由したセルを抽出し,経路情報テーブルを参照することによって,該セルに関するエントリを参照し,該セルのエリア内に存在する路線情報を検索する(FL210)。
【0069】
FL210と同様にして,端末が次に経由したセルに関して,該セルのエリア内に存在する路線情報を検索する(FL220)。
【0070】
最初のセルと,2番目のセルに共通する路線の有無を確認する(FL230)。
【0071】
共通する路線が存在しない場合には,該当路線が存在しないと判定し(FL290),処理を終了する(FL300)。
【0072】
共通する路線が存在する場合には,共通する路線が複数存在するか,あるいは単一であるかを判定する(FL240)。
【0073】
共通する路線が複数存在する場合には,推定した端末の移動速度より,路線を特定することが可能であるかを判定する(FL250)。
【0074】
推定した端末の移動速度から,路線を特定することが可能であれば,その路線を移動中と判定し,処理を終了する(FL260)。
【0075】
推定した端末の移動速度から,路線を特定することが不可能であれば,経路情報テーブルにおける次の基地局に関するエントリを検索する(FL270)。
【0076】
FL240において,共通する路線が単一と判断された場合は,検索で得られた路線を移動中と推定し(FL280),処理を終了する(FL300)。
【0077】
図13は基地局が,端末が該基地局に対して接続,ハンドオーバ,または,切断した際に生成する通信ログ情報2100の例を示す図である。基地局が生成するログ情報には,該基地局を識別する情報,端末のハードウェアに設定されている端末ID,前記端末が接続,ハンドオーバ,または,切断したセルを識別する情報,前記端末が接続,ハンドオーバ,または,切断したセクタを識別する情報,端末が前記基地局に接続した時刻,端末が前記基地局にハンドオーバした時刻,端末が前記基地局から切断した時刻が設定されている。ここで,基地局が生成する通信ログ情報における端末識別情報の例としては,端末に固有に割り当てられているハードウェアの識別情報がある。基地局が生成する通信ログ情報2100の生成契機は,図5から図7を用いて説明したとおりである。
【0078】
図10に示す端末トレーステーブル144の生成手順を説明する。図3に示す通信ログ解析システム1の処理ブロック14における端末トレーステーブル生成部148は,ログ情報格納部1411から図13に示す基地局21が生成する通信ログ2100を取り出し,該通信ログ2100に設定された,端末ID情報を抽出する(FL510)。該通信ログ2100が生成された時刻,すなわち,該通信ログ2100に設定された接続時刻,あるいは,ハンドオーバ時刻,あるいは,切断時刻のいずれかを,抽出し,端末トレーステーブル144に設定する(FL520)。さらに,図13に設定されたセル情報,および,セクタ情報を,端末トレーステーブル144に設定する(FL530)。
【0079】
図14はAAAサーバが生成する通信ログ情報2700の例である。AAAサーバが生成する通信ログ情報2700には,ログを生成するAAAサーバを識別する情報,セッションID,ユーザID,端末に割り当てるIPアドレス,および,ユーザ認証を行った時刻が設定される。
【0080】
図16はP−GWが生成する通信ログ情報2300の例である。P−GWが生成するログ情報には,ログを生成するP−GWを識別する情報,S−GWとP−GWとの間に設定されるトンネルを識別する情報であるGREキー,セッションを識別するセッションID,および,ログの生成時刻が設定される。
【0081】
図17はS−GWが生成する通信ログ情報2200の例である。S−GWが生成する通信ログ情報2200には,S−GWを識別する情報,端末ID,S−GWとP−GWとの間に設定されるトンネルを識別する情報であるGREキー,ログの生成時刻が設定される。
【0082】
図18はHSSが生成する通信ログ情報2500の例である。HSSが生成するログ情報2500には,HSSを識別する情報,端末ID,ログの生成時刻が設定される。
【0083】
図19は,図5で説明した,端末31によるネットワーク接続手順において,メッセージの送受信を行う各装置における識別情報をマッピングする端末識別情報マッピングテーブル1460の構成例を示す図である。図19においては,図13で示した,基地局21が生成するログ情報2100に設定されている端末ID,図17で示した,S−GW22が生成するログ情報2200に設定されている端末IDとGREキー,P−GW23が生成するログ情報2300が生成するGREキーと端末IPアドレスから,端末に設定されているハードウェア識別情報である端末IDと,AAA27が端末に対して割り当てるIPアドレスをマッピングする例を示している。これらのマッピングされた情報によって,基地局21,S−GW22,および,P−GW23がそれぞれ生成するログ情報について,同一端末に関するものを関連づけることが可能となる。
【0084】
図15はプロキシサーバが生成する通信ログ情報2800の例である。プロキシサーバが生成する通信ログ情報2800は,端末31がWebサーバ29に接続する際,端末31とWebサーバ29との間のHTTPセッションの受付時,および,HTTPセッション終了時に生成されるものである。プロキシサーバが生成する通信ログ情報には,ログを生成するプロキシサーバを識別する情報,端末識別情報,接続先情報,HTTPセッションの受付時刻,終了時刻が設定される。ここで,端末識別情報に設定される情報の例として,端末からWebサーバ宛に送信されるパケットに設定されている送信元IPアドレスがある。また,接続先情報の例として,URL(Uniform Resource Locator)がある。
【0085】
図20は端末の移動経路と端末によるネットワーク接続先とを対応付ける処理手順の例を示すフローチャートである。
【0086】
通信ログ解析システム1の処理ブロック14におけるデータマッピング部146は,図19に示される端末識別情報マッピングテーブル1460により,関係付けの対象となる端末のハードウェアIDを選択し(FL410),該ハードウェアIDに対応する端末に割り当てられたIPアドレスを,図13から図18に示したログ情報の対応付けにより検索する(FL420)。例えば,図19に示した端末識別情報マッピングテーブル1460では,図13に示される基地局21が生成する通信ログ2100における端末識別情報としてハードウェアID,図17に示されるS−GW22が生成する通信ログ2200における端末識別情報としてGREキー,図16に示されるP−GW23が生成する通信ログ2300における端末識別情報として割当IPアドレスが設定されている。
【0087】
データマッピング部146は,図10に示される端末トレーステーブル144より,該端末が基地局21に接続していた時間帯を選択する(FL430)。
【0088】
データマッピング部146は,図15に示されるプロキシのログ情報2800より,ステップFL420において,該端末のハードウェアIDに対応付けられているIPアドレスが,通信接続していた時間帯に合致するHTTPセッション受付時刻とHTTPセッション終了時刻が含まれるログ情報を抽出することにより,その時間帯の接続先情報を抽出する(FL440)。
【0089】
これまでの説明において,端末の接続場所,あるいは,移動経路と,端末によるネットワーク接続先を対応付ける手順の実施の形態について説明した。
【0090】
端末の接続場所,あるいは,移動経路と,端末によるネットワーク接続先を対応付ける効果としてトラヒックオフロードを実現する例について説明する。
【0091】
図21は,無線LAN経由でのトラヒックオフロードの例を説明する図である。
【0092】
図21の例において,端末31からWebサーバ29への通常の接続経路はRT100に示すものである。ここで,本発明の実施の形態による方法によって,基地局21からWebサーバ29への接続数やトラヒック量が多いと判断される場合,トラヒックを迂回する経路として,端末31が無線LANのアクセスポイント40に接続した上で,有線ネットワーク44を経由して,インターネット32からWebサーバ29に接続する経路RT200を設定する。
【0093】
図22は,コンテンツ配信ネットワークを用いたトラヒックオフロードの例を説明する図である。
【0094】
端末31と映像配信サーバ51−1との間の通常接続経路はRT100に示すものである。ここで,本発明の実施の形態による方法によって,基地局21から映像配信サーバ51−1への接続数やトラヒック量が多いと判断される場合,コンテンツ配信網50を設けることによって,無線ネットワーク32とのトラヒック量を軽減することが可能となる。
【0095】
本発明によれば,端末の移動経路と,該端末による接続先とを関連付けることが可能になるため、無線アクセスネットワークの負荷を軽減するトラヒックオフロードを行うための,ネットワーク設計に必要となる情報収集を行うことが可能になる。
【0096】
さらに,通信利用するユーザの移動先に応じた,適切な接続先をユーザに推奨することにも活用することが可能になる。例えば,列車内での無線LAN接続サービスを提供する場合,通信ログ解析システムによる解析結果として,過去に該当路線に繰り返し乗車し,ネットワーク接続を行っていることが判明しているユーザに対しては,無線アクセスネットワーク経由によるネットワークではなく,列車内無線LAN接続サービスを利用に推奨することが可能である。
【0097】
通信を利用するユーザの属性(例えば,年齢,性別)と,そのユーザが通信を行った場所や移動経路とを結びつけることによって得られる情報は,場所に応じたサービスを提供するために活用できる。
【符号の説明】
【0098】
1 通信ログ解析システム
11 ネットワークインタフェース
12 CPU
13 メモリ
21 基地局
22 サービングゲートウェイ
23 パケットデータネットワークゲートウェイ
24 移動管理エンティティ
25 ホーム加入者サーバ
26 ポリシー・課金機能
27 認証サーバ
28 プロキシサーバ
29 Webサーバ
30 セル
31 無線ネットワーク
32 IPネットワーク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の通信装置と、該複数の通信装置とネットワークを介して接続される通信ログ解析装置と、を含むネットワークシステムであって、
前記複数の通信装置は、通信ログ情報を生成し、生成した通信ログ情報を前記通信ログ解析装置に送信し、
前記通信ログ解析装置は、前記複数の通信装置より受信した通信ログ情報から、少なくとも二つの通信装置における所定の端末との通信ログ情報を抽出し、
前記抽出した通信ログ情報を用いて前記所定の端末の移動方向を推定することを特徴とするネットワークシステム。
【請求項2】
請求項1に記載のネットワークシステムであって、
前記通信装置は前記端末が無線接続する基地局であって、
前記通信ログ解析装置は、前記端末が基地局に接続したときに前記基地局が生成する通信ログ情報、及び/又は、前記端末が基地局との接続を切断したときに前記基地局が生成する通信ログ情報を抽出することを特徴とするネットワークシステム。
【請求項3】
請求項2に記載のネットワークシステムであって、
前記通信ログ解析装置は、前記抽出した通信ログ情報と各基地局間の距離が設定された基地局間距離情報とを用いて、前記端末が移動した移動距離を推定することを特徴とするネットワークシステム。
【請求項4】
請求項3に記載のネットワークシステムであって、
前記通信ログ解析装置は、前記抽出した通信ログ情報に設定された該通信ログ情報の生成時刻から、前記端末が前記基地局間を移動するのに要した移動時間を計算し、該移動時間と前記移動距離とを用いて前記端末の移動速度を推定することを特徴とするネットワークシステム。
【請求項5】
請求項4に記載のネットワークシステムであって、
前記通信ログ解析装置は、基地局毎に基地局の電波が届く範囲内に存在する経路の情報が設定された経路情報、前記移動速度、及び前記移動方向の少なくとも一以上を用いて前記端末の移動経路又は移動手段を推定することを特徴とするネットワークシステム。
【請求項6】
請求項5に記載のネットワークシステムであって、
前記通信装置は、前記端末が無線接続する基地局及び前記端末がWEBサーバに接続する際に接続するプロキシサーバであって、
前記通信ログ解析装置は、前記プロキシサーバが生成した、前記端末の接続先であるWEBサーバの情報を含む通信ログ情報と、前記移動経路又は前記移動手段とを対応付けることを特徴とするネットワークシステム。
【請求項7】
ネットワークを構成する通信装置の通信ログ情報を解析する通信ログ解析システムであって、
前記通信装置から受信する通信ログ情報を収集する通信ログ収集部と、
前記収集した通信ログ情報から、少なくとも二つの通信装置における所定の端末との通信ログ情報を抽出する通信ログ抽出部と、
前記抽出した通信ログ情報を用いて前記所定の端末の移動方向を推定する位置情報処置部と、を有することを特徴とする通信ログ解析システム。
【請求項8】
請求項7に記載の通信ログ解析システムであって、
前記通信装置は前記端末が無線接続する基地局であって、
前記通信ログ抽出部は、前記端末が基地局に接続したときに前記基地局が生成する通信ログ情報、及び/又は、前記端末が基地局との接続を切断したときに前記基地局が生成する通信ログ情報を抽出することを特徴とする通信ログ解析システム。
【請求項9】
請求項8に記載の通信ログ解析システムであって、
各基地局間の距離が設定された基地局間距離情報を格納する格納部を有し、
前記位置情報処理部は、前記抽出した通信ログ情報と前記基地局間距離情報とを用いて、前記端末が移動した移動距離を推定することを特徴とする通信ログ解析システム。
【請求項10】
請求項9に記載の通信ログ解析システムであって、
前記位置情報処理部は、前記抽出した通信ログ情報に設定された該通信ログ情報の生成時刻から、前記端末が前記基地局間を移動するのに要した移動時間を計算し、該移動時間と前記移動距離とを用いて前記端末の移動速度を推定することを特徴とする通信ログ解析システム。
【請求項11】
請求項10に記載の通信ログ解析システムであって、
前記格納部は、基地局毎に基地局の電波が届く範囲内に存在する経路の情報が設定された経路情報を格納し
前記位置情報処理部は、前記経路情報、前記移動速度、及び前記移動方向の少なくとも一以上を用いて前記端末の移動経路又は移動手段を推定することを特徴とする通信ログ解析システム。
【請求項12】
請求項11に記載の通信ログ解析システムであって、
前記通信装置は、前記端末が無線接続する基地局及び前記端末がWEBサーバに接続する際に接続するプロキシサーバであって、
前記通信ログ抽出部は、前記プロキシサーバが生成した、前記端末の接続先であるWEBサーバの情報を含む通信ログ情報を抽出し、
前記位置情報処理部は、前記プロキシサーバから抽出した通信ログ情報と、前記移動経路又は前記移動手段とを対応付けることを特徴とする通信ログ解析システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【公開番号】特開2012−217061(P2012−217061A)
【公開日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−81386(P2011−81386)
【出願日】平成23年4月1日(2011.4.1)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】