説明

ネットワークファイル供給システム、ネットワークファイル供給方法、およびネットワークファイル供給プログラム

【課題】ネットワーク上でファイルを多重転送する場合に、ファイル転送時間を低減することができる、ネットワークファイル供給システム、ネットワークファイル供給方法、およびネットワークファイル供給プログラムを提供する。
【解決手段】ネットワークファイル供給システム1は、送出制御装置200とファイルサーバ100とを備える。送出制御装置200は、ネットワーク情報に基づき、許容時間を超えないための最低限の送出速度を計算し、最適多重数を決定する。そして、ファイルサーバ100は、決定した送出速度に基づき、多重数を所定数ごとに最適多重数まで引き上げて、ファイル転送を実行する。また、送出制御装置200は、パケット損失が発生していると判定した場合に、ネットワークの現在の使用帯域に基づき、最適多重数を再計算し、多重転送を実行させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ネットワークに接続された複数のネットワーク機器に対して、複数のファイルを多重転送する、ネットワークファイル供給システム、ネットワークファイル供給方法、およびネットワークファイル供給プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来技術として、ネットワークに接続された複数のネットワーク機器に対して、それらを動作させる基本ソフトウェア(OS:Operating System)や設定情報(コンフィグ情報)等をファイルとしてネットワークを経由して転送するファイル供給のシステムがある。このシステムにおいては、ファイル転送プロトコル(FTP:File Transfer Protocol)と呼ばれる転送プロトコルを用いて、同時に複数のファイルのFTP転送を実行している(非特許文献1参照)。
その際、経由するネットワーク上でトラヒック輻輳が発生する場合があり、その場合に備え、FTPには、輻輳によるパケット損失を回復するためのファイル再送機能が実装されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】“FILE TRANSFER PROTOCOL(FTP)”,[online],Oct. 1985,IETF,[平成23年5月30日検索],インターネット<http://www.potaroo.net/ietf/rfc/PDF/rfc959.pdf>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来のファイル供給のためのシステムにおいて、ネットワーク上でトラヒック輻輳が発生し、ファイル再送機能が実行された場合、その再送分の転送のためにネットワーク帯域が余計に使用されていた。そのため、利用可能なネットワーク帯域を最大限に利用できない上、ファイル転送において余計な時間を費やしていた。
【0005】
この問題を解決するため、ファイル再送機能を実行させないように、ファイル送出速度に制限を設けたり、ファイル転送の多重数を制限したりすることが考えられる。しかし、ネットワークのトラヒックは、このファイル供給のためのシステム以外の要因によっても動的に変化するため、ファイル再送を防止しつつ、全体のファイル転送時間を低減する最適な送出速度や多重数を事前に設計できないものであった。
【0006】
このような背景を鑑みて本発明がなされたのであり、本発明は、ネットワーク上でファイルを多重転送する場合に、ファイル転送時間を低減することができる、ネットワークファイル供給システム、ネットワークファイル供給方法、およびネットワークファイル供給プログラムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記した課題を解決するため、請求項1に記載の発明は、ネットワークを介して通信可能に接続された複数のネットワーク機器に対して、複数のファイルを多重転送するファイルサーバと、前記ファイルサーバが前記ファイルを多重転送する際の送出速度および多重数を決定する送出制御装置と、を備えるネットワークファイル供給システムであって、前記送出制御装置が、ネットワークの想定最大帯域(MaxBW)、転送させるファイル数(n)、1セッションの送出速度の想定最大値(MaxS)、許容できる1セッションに要する送出時間(pt)、および転送するファイルサイズ(fs)を含むネットワーク情報が記憶されている第1の記憶部と、前記許容できる1セッションに要する送出時間(pt)および前記転送するファイルサイズ(fs)を用いて、許容時間を超えないための最低限の送出速度(MinS)を、MinS=fs/pt により決定し、前記決定した送出速度をファイルサーバに送信する送出速度決定部と、前記ネットワークの想定最大帯域(MaxBW)および前記許容時間を超えないための最低限の送出速度(MinS)を用いて、前記多重数の最大値を示す最大多重(MMax)を、MMax=MaxBW/MinS により決定し、前記ネットワークの想定最大帯域(MaxBW)および前記1セッションの送出速度の想定最大値(MaxS)を用いて、前記多重数の最小値を示す最小多重(MMin)を、MMin=MaxBW/MaxS により決定し、前記多重数が前記最大多重(MMax)と前記最小多重(MMin)との間の値となるように、前記転送させるファイル数(n)の分割数を抽出し、前記抽出した分割数における多重数のうち、前記最大多重(MMax)と前記最小多重(MMin)との中間値により近い前記抽出した分割数における多重数を、最適多重数として決定する多重数決定部と、前記ファイルサーバからパケット損失が発生しているか否かを示す監視結果情報を取得し、前記ファイルの前記多重転送において前記パケット損失が発生しているか否かを判定する繰り返し処理判定部と、前記複数のネットワーク機器のトラヒック情報から得た前記ネットワークの現在の使用帯域を所定間隔で取得し、前記第1の記憶部に記憶する情報入力部と、を備え、前記ファイルサーバが、前記複数のファイルが記憶されている第2の記憶部と、前記送出速度決定部が決定した送出速度、および、前記多重数決定部が決定した前記多重数に基づき、前記第2の記憶部に記憶されている複数のファイルを、前記複数のネットワーク機器に対して前記多重転送するファイル送信部と、前記多重転送するファイルにおける前記パケット損失を監視し、前記繰り返し処理判定部に前記監視結果情報を送信するパケットロス監視部と、を備え、 前記送出制御装置の前記多重数決定部が、前記最適多重数より少ない多重数を初期値として、前記初期値から前記多重数を所定数ごと加算しながら、前記ファイル送信部からの前記多重転送を実行させ、前記繰り返し処理判定部が、前記パケット損失が発生していないと判定した場合に、前記多重数決定部は、前記多重数を前記最適多重数まで増加し、前記ファイル送信部からの前記多重転送を実行させ、前記繰り返し処理判定部が、前記パケット損失が発生していると判定した場合に、前記多重数決定部は、前記ネットワークの想定最大帯域(MaxBW)を、前記ネットワークの現在の使用帯域に置き換えて、前記最適多重数を再計算し、前記再計算した最適多重数まで前記多重数を増加し、前記ファイル送信部からの前記多重転送を実行させること、を特徴とするネットワークファイル供給システムとした。
【0008】
また、請求項3に記載の発明は、ネットワークを介して通信可能に接続された複数のネットワーク機器に対して、複数のファイルを多重転送するファイルサーバと、前記ファイルサーバが前記ファイルを多重転送する際の送出速度および多重数を決定する送出制御装置と、を備えるネットワークファイル供給システムのネットワークファイル供給方法であって、前記送出制御装置が、ネットワークの想定最大帯域(MaxBW)、転送させるファイル数(n)、1セッションの送出速度の想定最大値(MaxS)、許容できる1セッションに要する送出時間(pt)、および転送するファイルサイズ(fs)を含むネットワーク情報が記憶されている第1の記憶部を備えており、前記許容できる1セッションに要する送出時間(pt)および前記転送するファイルサイズ(fs)を用いて、許容時間を超えないための最低限の送出速度(MinS)を、MinS=fs/pt により決定し、前記決定した送出速度をファイルサーバに送信するステップと、前記ネットワークの想定最大帯域(MaxBW)および前記許容時間を超えないための最低限の送出速度(MinS)を用いて、前記多重数の最大値を示す最大多重(MMax)を、MMax=MaxBW/MinS により決定し、前記ネットワークの想定最大帯域(MaxBW)および前記1セッションの送出速度の想定最大値(MaxS)を用いて、前記多重数の最小値を示す最小多重(MMin)を、MMin=MaxBW/MaxS により決定し、前記多重数が前記最大多重(MMax)と前記最小多重(MMin)との間の値となるように、前記転送させるファイル数(n)の分割数を抽出し、前記抽出した分割数における多重数のうち、前記最大多重(MMax)と前記最小多重(MMin)との中間値により近い前記抽出した分割数における多重数を、最適多重数として決定するステップと、前記ファイルサーバからパケット損失が発生しているか否かを示す監視結果情報を取得し、前記ファイルの前記多重転送において前記パケット損失が発生しているか否かを判定するステップと、前記複数のネットワーク機器のトラヒック情報から得た前記ネットワークの現在の使用帯域を所定間隔で取得し、前記第1の記憶部に記憶するステップと、を実行し、前記ファイルサーバが、前記複数のファイルが記憶されている第2の記憶部を備えており、前記送出制御装置が決定した前記送出速度および前記多重数に基づき、前記第2の記憶部に記憶されている複数のファイルを、前記複数のネットワーク機器に対して前記多重転送するステップと、前記多重転送するファイルにおける前記パケット損失を監視し、前記送出制御装置に前記監視結果情報を送信するステップと、を実行し、 前記送出制御装置が、前記最適多重数より少ない多重数を初期値として、前記初期値から前記多重数を所定数ごと加算しながら、前記ファイルサーバに前記多重転送を実行させるステップと、前記パケット損失が発生しているか否かを判定するステップにおいて、前記パケット損失が発生していないと判定した場合に、前記多重数を前記最適多重数まで増加し、前記ファイルサーバに前記多重転送を実行させるステップと、前記パケット損失が発生しているか否かを判定するステップにおいて、前記パケット損失が発生していると判定した場合に、前記ネットワークの想定最大帯域(MaxBW)を、前記ネットワークの現在の使用帯域に置き換えて、前記最適多重数を再計算し、前記再計算した最適多重数まで前記多重数を増加し、前記ファイルサーバに前記多重転送を実行させるステップと、を実行すること、を特徴とするネットワークファイル供給方法とした。
【0009】
このように、ネットワークファイル供給システムは、送出制御装置とファイルサーバとを備える。この送出制御装置が、ネットワーク情報に基づき、許容時間を超えないための最低限の送出速度を計算し、最適多重数を決定する。そして、ファイルサーバは、決定した送出速度に基づき、ファイルの多重転送をする。送出制御装置は、多重数を所定数ごと加算し、パケット損失が発生していないと判定した場合に、最適多重数まで増加し、ファイル転送を実行させる。一方、送出制御装置は、パケット損失が発生していると判定した場合に、ネットワークの現在の使用帯域に基づき、最適多重数を再計算し、再計算した最適多重数まで増加し、多重転送を実行させる。
【0010】
よって、本発明によれば、パケット損失が発生していない場合には、ネットワーク情報に基づく最適多重数でファイルの多重転送を実行し、パケット損失が発生した場合であっても、ネットワークの現在の使用帯域を考慮して再計算した最適多重数で、ファイルの多重転送を実行することができる。したがって、ファイルを最適多重数で多重転送することにより、ファイル転送時間を低減することができる。
【0011】
請求項2に記載の発明は、前記多重数決定部が、前記多重数を前記最適多重数または前記再計算した最適多重数まで増加させた以降において、前記ファイル送信部からの前記多重転送を実行させた場合に、前記繰り返し処理判定部が、前記ファイルサーバから前記監視結果情報を取得し、前記パケット損失が発生していないと判定したとき、前記送出速度決定部が、前記ファイルの送出速度を現在の送出速度に比べ増加させて、前記ファイル送信部からの前記多重転送を実行させ、前記繰り返し処理判定部が、前記ファイルサーバから前記監視結果情報を取得し、前記パケット損失が発生していると判定したとき、前記送出速度決定部が、前記ファイルの送出速度を現在の送出速度に比べ減少させて、前記ファイル送信部からの前記多重転送を実行させること、を特徴とする請求項1に記載のネットワークファイル供給システムとした。
【0012】
また、請求項4に記載の発明は、前記送出制御装置が、前記多重数を前記最適多重数または前記再計算した最適多重数まで増加させた以降において、前記ファイルサーバに前記多重転送を実行させた場合に、前記送出制御装置が、前記パケット損失が発生しているか否かを判定するステップにおいて、前記パケット損失が発生していないと判定したとき、前記ファイルの送出速度を現在の送出速度に比べ増加させて、前記ファイルサーバに前記多重転送を実行させるステップと、前記パケット損失が発生しているか否かを判定するステップにおいて、前記パケット損失が発生していると判定したとき、前記ファイルの送出速度を現在の送出速度に比べ減少させて、前記ファイルサーバに前記多重転送を実行させるステップと、を実行すること、を特徴とする請求項3に記載のネットワークファイル供給方法とした。
【0013】
このように、多重数を最適多重数または再計算した最適多重数まで増加させた以降において、ファイルサーバに多重転送を実行させた場合に、送出制御装置が、ファイルサーバから監視結果情報を取得し、パケット損失が発生していないと判定したとき、ファイルの送出速度を現在の送出速度に比べ増加させて、多重転送を実行させる。また、送出制御装置が、パケット損失が発生していると判定したとき、ファイルの送出速度を現在の送出速度に比べ減少させて、多重転送を実行させる。
よって、パケット損失を検出したか否かによって、ファイルの送出速度を調整し、多重転送を実行させることができる。したがって、調整した送出速度でファイルを多重転送することにより、さらにファイル転送時間を低減することができる。
【0014】
請求項5に記載の発明は、請求項3または請求項4に記載のネットワークファイル供給方法を、コンピュータである前記ネットワークファイル供給システムの各装置に実行させるためのネットワークファイル供給プログラムとした。
【0015】
このようなネットワークファイル供給プログラムによれば、請求項3または請求項4に記載のネットワークファイル供給方法を、一般的なコンピュータである前記ネットワークファイル供給システムの各装置(送出制御装置およびファイルサーバ)で実現することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、ネットワーク上でファイルを多重転送する場合に、ファイル転送時間を低減することができる、ネットワークファイル供給システム、ネットワークファイル供給方法、およびネットワークファイル供給プログラムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本実施形態に係るネットワークファイル供給システムの構成例を示すブロック図である。
【図2】本実施形態に係るネットワークファイル供給システムが行うファイル同時多重転送処理の流れを示すフローチャートである。
【図3】本実施形態に係る多重数決定部が行う、最適多重数の決定処理を説明するための図である。
【図4】本実施形態に係るネットワークファイル供給システムの効果を説明するための図である。
【図5】比較例である従来のファイル供給のためのシステムの構成例を示すブロック図である。
【図6】比較例である従来のファイル供給のためのシステムにおけるファイル多重転送処理の流れを示すフローチャートである。
【図7】比較例である従来のファイル供給のためのシステムにおけるファイル多重転送処理の結果を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
次に、本発明を実施するための形態(以下、「実施形態」という)について、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。
【0019】
(比較例)
まず、比較例である、従来のファイル供給のためのシステムについて、図5〜図7を参照して説明する。
図5は、比較例である従来のファイル供給のためのシステムの構成例を示すブロック図である。図6は、比較例である従来のファイル供給のためのシステムにおけるファイル多重転送処理の流れを示すフローチャートである。図7は、比較例である従来のファイル供給のためのシステムにおけるファイル多重転送処理の結果を説明するための図である。
【0020】
図5に示すように、従来のファイル供給のためのシステムは、OSや設定情報等のファイルが格納され、その格納されたファイルを、FTPを用いて多重転送するファイルサーバ10と、複数のネットワーク機器30とが、ネットワーク20を介して接続され構成される。
【0021】
そして、ファイルサーバ10は、その内部構成として、ファイルシステム11と、FTP部12と、TCP/IP部13と、情報入力部14とを含んで構成される。
【0022】
ファイルシステム11は、OSや設定情報等のファイルが格納される。
情報入力部14は、不図示のネットワーク管理装置等からの送信や、ネットワーク管理者によるキーボート等の入力装置(不図示)による入力により、ファイル送出の多重数の情報等が入力される。そして、情報入力部14は、取得した多重数の情報を、FTP部12に引き渡す。
【0023】
FTP部12は、取得したファイルの多重数に基づき、FTP(ファイル転送プロトコル)を用いて、複数のネットワーク機器30に、ファイルを多重転送する制御を行う。このFTP部12は、ファイル読み込み部12aとファイル送信部12bとを備える。ファイル読み込み部12aは、送信すべきファイルをファイルシステム11から取得して、ファイル送信部12bに引き渡す。ファイル送信部12bは、情報入力部14から取得した多重数に基づき、TCP/IP部13を介して、ファイルの転送処理を行う。
【0024】
TCP/IP部13は、FTP部12(ファイル送信部12b)の制御により多重転送されるファイルについて、その確認応答と再送制御とを行う。このTCP/IP部13は、上位レイヤ入出力部13aとパケット送受信部13bとを備える。上位レイヤ入出力部13aは、FTP部12との間の情報の入出力を行う。パケット送受信部13bは、多重転送するファイルに関する確認応答や、パケット損失の場合の再送制御を行う。
【0025】
そして、ファイルサーバ10は、図5に示した構成により、図6に示すファイル多重転送処理を行う。
【0026】
まず、ファイルサーバ10の情報入力部14が、不図示のネットワーク管理装置等から、転送するファイルの多重数を取得する。そして、その取得した多重数に基づき、FTP部12のファイル送信部12bが、多重数を決定する(ステップS101)。
【0027】
次に、ファイル送信部12bは、ファイル読み込み部12aがファイルシステム11から取得したファイルを受け取り、TCP/IP部13を介して、決定した多重数でのファイルの送出を行う(ステップS102)。ここで、TCP/IP部13のパケット送受信部13bは、パケット損失を監視し、パケット損失が発生した場合は、ファイルの再送処理を行う。
【0028】
FTP部12のファイル送信部12bは、全ファイルの送出が完了したか否かを判定する(ステップS103)。そして、全ファイルの送出が完了していない場合には(ステップS103→No)、ファイル送信部12bは、決定した多重数でファイルの送出を続ける。一方、全ファイルの送出が完了した場合には(ステップS103→Yes)、ファイル送信部12bは、処理を終了する。
【0029】
この比較例のファイル供給のためのシステムにおけるファイル多重転送処理の結果の一例を図7に示す。
図7に示すように、比較例のファイルサーバ10によるファイル転送制御では、実測のネットワーク帯域(実測帯域)が、実線Cの矢印に示すように、当初想定より狭くなる場合があり、このとき、多数のパケット損失が発生する。パケット損失が発生すると、ファイルサーバ10が、パケットの再送を行うため、各FTPセッションの送出速度に差が発生し、転送完了時間にばらつきが生じてしまう。その結果、多重数が徐々に下がるため、図7の実線Cに示す利用可能な帯域幅である実測帯域と比較して、実際のファイル転送に要する帯域幅は、実線Dに示すように時間とともに低下する。つまり、実際のファイル転送に要する帯域幅は、再送信を繰り返すほど徐々に小さくなるため、ネットワーク帯域の実測帯域である実線Cの帯域幅を有効に使いきれない上、結果として全体のファイル転送時間が増加してしまう。
【0030】
(本実施形態)
次に、本実施形態に係るネットワークファイル供給システム1について説明する。
図1は、本実施形態に係るネットワークファイル供給システム1の構成例を示すブロック図である。本実施形態に係るネットワークファイル供給システム1は、図5に示した比較例のシステムと同様に、ネットワーク20を介して複数のネットワーク機器30と接続している。そして、ネットワークファイル供給システム1から、FTPを用いて、ファイルを各ネットワーク機器30に多重転送する。
【0031】
また、本実施形態に係るネットワークファイル供給システム1は、図1に示すように、ファイルサーバ100と送出制御装置200とを含んで構成される。
【0032】
このネットワークファイル供給システム1は、送出制御装置200が、不図示のネットワーク管理装置等から、ネットワーク情報として、(1)利用可能なネットワークの想定最大帯域、(2)転送させるファイル数、(3)FTPの1セッションの送出速度の想定最大値、(4)許容できる1セッションに要する送出時間、(5)転送するファイルサイズ、を取得する。そして、送出制御装置200は、ネットワークの許容使用帯域(実測帯域)を使いきるように、多重転送の最適多重数と、許容時間を超えないための最低限の送出速度とをネットワーク情報を参照して決定し、ファイルサーバ100が同時多重転送処理を開始する。ファイルサーバ100は、送出制御装置200の制御により、段階的に多重数を最適多重数まで引き上げる。そして、送出制御装置200は、多重数が最適多重数に達すると、パケット損失が発生したか否かを判定し、パケット損失を検知しない場合にはファイルの送出速度を引き上げ、パケット損失を検知した場合にはファイルの送出速度を引き下げることで、動的なトラヒック変動に対して、最適な送出速度を決定する。
【0033】
<各装置の構成>
次に、本実施形態に係るネットワークファイル供給システム1を構成する、送出制御装置200およびファイルサーバ100について、図1を参照して、具体的に説明する。
【0034】
≪送出制御装置≫
本実施形態に係る送出制御装置200は、不図示の入出力部、制御部および記憶部(第1の記憶部)を備えるコンピュータにより実現され、図1に示すように、制御部内には、情報入力部210と、送出速度決定部220と、多重数決定部230と、繰り返し処理判定部240とが備えられ、記憶部内には、ネットワーク情報記憶部250が備えられて構成される。なお、この制御部は、例えば、送出制御装置200の記憶部(第1の記憶部)に格納されたプログラム(ネットワークファイル供給プログラム)をCPU(Central Processing Unit)がRAM(Random Access Memory)等のメモリに展開し実行することで実現される。
【0035】
また、不図示の入出力部は、通信ネットワーク等を介して情報の送受信を行う通信インタフェースと、不図示のキーボード等の入力装置やモニタ等の出力装置等との間で入出力を行う入出力インタフェースとから構成され、ネットワーク管理装置(不図示)や入力装置等から入力されたネットワーク情報を受信し、情報入力部210に引き渡す処理を行ったり、ファイルサーバ100との間で情報の送受信を行う。
不図示の記憶部(第1の記憶部)は、ハードディスクやフラッシュメモリ等の記憶装置からなり、ネットワーク情報等が記憶されるネットワーク情報記憶部250等を備えている。
以下、送出制御装置200の各構成について、具体的に説明する。
【0036】
情報入力部210は、不図示のネットワーク管理装置等から、ネットワーク情報を、入出力部を介して取得し、ネットワーク情報記憶部250に記憶する。このネットワーク情報の内容は、以下に示す情報である。
【0037】
[ネットワーク情報]
・ネットワークの想定最大帯域:MaxBW
・転送させるファイル数:n
・FTPの1セッションの送出速度の想定最大値:MaxS
・許容できる1セッションに要する送出時間:pt
・転送するファイルサイズ:fs
【0038】
このネットワーク情報は、ネットワークファイル供給システム1がネットワーク20を介して接続される複数のネットワーク機器30にファイル多重転送する場合の初期設定のためのパラメータとして、ネットワーク管理装置(不図示)等から事前に取得され、情報入力部210を介して、ネットワーク情報記憶部250に記憶されている。
【0039】
送出速度決定部220は、ネットワーク情報記憶部250に記憶されたネットワーク情報を参照し、ファイルサーバ100がファイルを送出する際の送出速度を決定する。
まず、送出速度決定部220は、ファイルサーバ100が送出を開始するときの送出速度の初期値として、「許容時間を超えないための最低限の送出速度(以下、「最低限の送出速度」とよぶことがある)」を以下の(式1)を用いて計算し決定する。
【0040】
・許容時間を超えないための最低限の送出速度:MinS=fs/pt …(式1)
【0041】
送出速度決定部220は、(式1)を用いて計算した最低限の送出速度(MinS)を、送出開始のときの送出速度の初期値として、ファイルサーバ100の後記する送出速度制限部122へ送信する。また、送出速度決定部220は、計算した最低限の送出速度(MinS)を、ネットワーク情報記憶部250に記憶する。
【0042】
そして、送出速度決定部220は、多重数が、多重数決定部230が決定した最適多重数に達した場合に、繰り返し処理判定部240がパケット損失の検知の有無を判断した結果を受け取る。送出速度決定部220は、パケット損失が検知されないという結果を受け取った場合には、ファイルサーバ100の送出速度制限部122に対して、全FTPセッションの送出速度を増加させる指示を出す。一方、送出速度決定部220は、パケット損失が検知されたという結果を受け取った場合には、ファイルサーバ100の送出速度制限部122に対して、全FTPセッションの送出速度を減少させる指示を出す。
【0043】
多重数決定部230は、ネットワーク情報記憶部250に記憶されたネットワーク情報を参照し、以下に示す処理を行い、最適多重数を決定する。
多重数決定部230は、最適多重数を決定するために、まず次に示す「最大多重」および「最小多重」の値を計算する。
【0044】
・最大多重:MMax=MaxBW/MinS …(式2)
・最小多重:MMin=MaxBW/MaxS …(式3)
【0045】
そして、多重数決定部230は、多重数が最大多重(MMax)と最小多重(MMin)との間になるような、転送させるファイル数(n)の分割数を抽出し、その抽出した分割数における多重数のうち、最大多重(MMax)と最小多重(MMin)との中間値により近い多重数を最適多重数として決定する。そして、多重数決定部230は、決定した最適多重数を、ネットワーク情報記憶部250に記憶する。
なお、この最適多重数の決定方法については、後記において具体例を用いて説明する。
【0046】
次に、多重数決定部230は、最適多重数より少ない多重数(例えば、多重数「1」)を初期値として設定し、その設定情報を、ファイルサーバ100の後記するファイル送信部123に引き渡す。また、多重数決定部230は、繰り返し処理判定部240から、現在の多重数が最適多重数でないと判定した情報を受け取ると、多重数を所定数(例えば、「1」)ごと増加させる。このようにして、多重数決定部230は、段階的に、送出ファイルの多重数が最適多重数に達するように制御する。
【0047】
また、多重数決定部230は、繰り返し処理判定部240がパケット損失を検出し、ネットワーク情報記憶部250に記憶されているネットワーク帯域を、現在のネットワークの使用帯域の値に書き換えた場合に、再度、最適多重数を計算する。
【0048】
繰り返し処理判定部240は、ファイルサーバ100の後記するパケットロス監視部133からパケット損失の情報を取得する。そして、繰り返し処理判定部240は、パケット損失を検出すると、ネットワーク情報記憶部250に記憶されているネットワーク帯域を、現在のネットワークの使用帯域に書き換える。
また、繰り返し処理判定部240は、現在の多重数がネットワーク情報記憶部250に記憶された最適多重数であるか否かを判定する。そして、繰り返し処理判定部240は、現在の多重数が最適多重数でないと判定した場合に、その情報を、多重数決定部230に引き渡す。
【0049】
ネットワーク情報記憶部250には、情報入力部210が取得した前記したネットワーク情報が記憶される。また、送出速度決定部220が計算した最低限の送出速度(MinS)や、多重数決定部230が決定した最適多重数等が、ネットワーク情報記憶部250に記憶される。
【0050】
≪ファイルサーバ≫
次に、本実施形態に係るファイルサーバ100について説明する。ファイルサーバ100は、送出制御装置200が決定した送出速度および多重数で、複数のネットワーク機器30に向けて、ファイルを同時多重転送する。
【0051】
このファイルサーバ100は、不図示の入出力部、制御部および記憶部(第2の記憶部)を備えるコンピュータにより実現され、図1に示すように、制御部内には、FTP部120とTCP/IP部130とが備えられ、記憶部内には、ファイルシステム110が備えられて構成される。なお、この制御部は、例えば、ファイルサーバ100の記憶部(第2の記憶部)に格納されたプログラム(ネットワークファイル供給プログラム)をCPUがRAM等のメモリに展開し実行することで実現される。
【0052】
また、不図示の入出力部は、通信ネットワーク等を介して情報の送受信を行う通信インタフェースと、不図示のキーボード等の入力装置やモニタ等の出力装置等との間で入出力を行う入出力インタフェースとから構成され、送出制御装置200との間で情報の送受信を行ったり、ネットワーク20を介して複数のネットワーク機器30にファイルを多重転送したりする。
不図示の記憶部(第2の記憶部)は、ハードディスクやフラッシュメモリ等の記憶装置からなり、OSや設定情報(コンフィグ情報)等をファイルとして記憶するファイルシステム110等を備えている。
以下、ファイルサーバ100の各構成について、具体的に説明する。
【0053】
ファイルサーバ100は、ファイルシステム110と、FTP部120と、TCP/IP部130とを含んで構成される。
ファイルシステム110は、ネットワーク20を介して複数のネットワーク機器30に送信するためのOSや設定情報(コンフィグ情報)等を記憶している。
【0054】
FTP部120は、送出制御装置200が設定した送出速度および多重数に基づき、ファイルシステム110内のファイルを、FTP(ファイル転送プロトコル)を用いて、複数のネットワーク機器30に向けての同時多重転送を行う。そして、このFTP部120は、ファイル読み込み部121と、送出速度制限部122と、ファイル送信部123とを含んで構成される。
【0055】
ファイル読み込み部121は、送信すべきファイルをファイルシステム110から取得して、ファイル送信部123に引き渡す。
【0056】
送出速度制限部122は、送出制御装置200の送出速度決定部220が決定した送出速度の情報を受け取り、ファイル送信部123に引き渡す。そして、送出速度制限部122は、ファイル送信部123がファイルを複数のネットワーク機器30に多重転送する際に、全FTPセッションについて送出速度が決定された値で維持される(制限される)ように制御する、つまり、同時に多重転送(同時多重転送)されるように制御する。
【0057】
ファイル送信部123は、送出制御装置200から取得した送出速度および多重数に基づいて、ファイルシステム110からファイル読み込み部121が取得したファイルを、TCP/IP部130を介して、同時多重転送する処理を行う。
【0058】
TCP/IP部130は、FTP部120(ファイル送信部123)の制御により同時多重転送されるファイルについて、その確認応答と再送制御とを行う。このTCP/IP部130は、上位レイヤ入出力部131と、パケット送受信部132と、パケットロス監視部133とを備える。
【0059】
上位レイヤ入出力部131は、FTP部120との間の情報の入出力を行う。
パケット送受信部132は、同時多重転送するファイルに関する確認応答や、パケット損失の場合の再送制御を行う。
パケットロス監視部133は、パケット送受信部132におけるパケット損失を監視し、パケット損失の監視結果を、監視結果情報として、送出制御装置200の繰り返し処理判定部240に送信する。
【0060】
<ネットワークファイル供給システムの動作>
次に、本実施形態に係るネットワークファイル供給システム1が行うファイル同時多重転送処理について、図2を参照して詳細に説明する(適宜図1参照)。
図2は、本実施形態に係るネットワークファイル供給システム1が行うファイル同時多重転送処理の流れを示すフローチャートである。
【0061】
まず、送出制御装置200の情報入力部210は、不図示のネットワーク管理装置等からネットワーク情報を取得し(ステップS1)、ネットワーク情報記憶部250に記憶する。
【0062】
このとき、ネットワーク情報記憶部250に記憶されるネットワーク情報は、例えば、以下に示す値であるとして説明する。
【0063】
・ネットワークの想定最大帯域:MaxBW=20MB/s
・転送させるファイル数:n=150
・FTPの1セッションの送出速度の想定最大値:MaxS=1MB/s
・許容できる1セッションに要する送出時間:pt=500s
・転送するファイルサイズ:fs=100MB
【0064】
次に、初期値として、送出速度決定部220が、許容時間を超えないための最低限の送出速度(MinS)を決定し、多重数決定部230が、最適多重数を決定する(ステップS2)。
【0065】
具体的には、送出速度決定部220は、ネットワーク情報記憶部250に記憶されたネットワーク情報を参照し、許容時間を超えないための最低限の送出速度(MinS)を前記した(式1)に基づき決定する。ここでは、送出速度決定部220は、具体例として、以下のように決定する。
・最低限の送出速度:MinS=fs/pt=0.2MB/s
そして、送出速度決定部220は、この決定した最低限の送出速度(MinS)を、ファイルサーバ100の送出速度制限部122に送信し、ネットワーク情報記憶部250に記憶する。
【0066】
また、多重数決定部230は、ネットワーク情報記憶部250に記憶されたネットワーク情報を参照し、最大多重(MMax)および最小多重(MMin)を計算した上で、最適多重数を決定する。
【0067】
具体的には、多重数決定部230は、前記した(式2)を用いて最大多重(MMax)を計算し、(式3)を用いて最小多重(MMin)を計算する。
・最大多重:MMax=MaxBW/MinS=100
・最小多重:MMin=MaxBW/MaxS=20
【0068】
そして、多重数決定部230は、最大多重(MMax=100)と最小多重(MMin=20)との中間値を計算する。ここでは、多重数決定部230は、中間値「60」を算出する。
続いて、多重数決定部230は、多重数が最大多重(MMax=100)と最小多重(MMin=20)との間になるように、転送させるファイル数(n)の分割数を抽出し、その分割数で転送させるファイル数(n)を分割した場合の多重数のうち、中間値により近い多重数を最適多重数に決定する。
【0069】
図3を用いて具体的に説明する。多重数決定部230は、多重数が最大多重(MMax=100)と最小多重(MMin=20)との間になるように、転送させるファイル数(n)の分割数を抽出する。ここでは、転送させるファイル数(n)=150であるため、多重数が「100」と「20」との間になるように、例えば、ファイル数「150」を2分割すると、多重数は「75」となる。また、ファイル数「150」を3分割すると、多重数は「50」となる。ここで多重数決定部230は、中間値「60」により近い、多重数「50」を最適多重数として決定する。
そして、多重数決定部230は、図3に示すように、多重数「50」を3回繰り返すスケジューリングを決定し、決定した最適多重数「50」を含むスケジューリングをファイルサーバ100のファイル送信部123へ送信し、ネットワーク情報記憶部250に記憶する。
【0070】
図2に戻り、ステップS2の次に、多重数決定部230は、ファイル送出の多重数の初期値として、最適多重数より少ない多重数(ここでは、多重数「1」とする)を設定し、ファイルサーバ100のファイル送信部123に送信する。そして、ファイル送信部123は、設定された多重数(多重数「1」)と、送出速度決定部220が決定した最低限の送出速度(MinS=0.2MB/s)とに基づき、ファイル送出を実行する(ステップS3)。このとき、ファイルサーバ100の送出速度制限部122は、全FTPセッションの送出速度が所定の速度(ここでは、最低限の送出速度(MinS))となるように制御する。
【0071】
ファイル送出が実行されると、ファイルサーバ100のパケットロス監視部133は、パケット損失を監視し(ステップS4)、その監視結果情報を、送出制御装置200の繰り返し処理判定部240に送信する。
【0072】
そして、繰り返し処理判定部240は、受信した監視結果情報に基づき、パケット損失が検知されたか否かを判定する(ステップS5)。
【0073】
ここで、繰り返し処理判定部240が、パケット損失を検知しなかった場合には(ステップS5→No)、次に、繰り返し処理判定部240が、現在の多重数(ここでは、多重数「1」)が、最適多重数(ここでは、最適多重数「50」)に達しているか否かを判定する(ステップS6)。そして、繰り返し処理判定部240が、最適多重数に達していないと判定した場合には(ステップS6→No)、多重数決定部230が、現在の多重数に所定数(ここでは「1」)を加えて(ステップS7)、ステップS3に戻り、ファイル送出を続ける。
【0074】
ネットワークファイル供給システム1は、このステップS3〜S7の処理を繰り返し、段階的に多重数を上げてファイル送出を行う。
【0075】
そして、このステップS3〜S7の処理の繰り返し中に、ステップS5において、繰り返し処理判定部240が、受信した監視結果情報に基づき、パケット損失を検知した場合には(ステップS5→Yes)、繰り返し処理判定部240は、ネットワーク情報記憶部250に記憶されているネットワーク帯域(ネットワークの想定最大帯域)を現在のネットワークの使用帯域に書き換える(ステップS8)。
具体的には、繰り返し処理判定部240は、ネットワーク帯域として、ネットワークの想定最大帯域(MaxBW)がネットワーク情報記憶部250に記憶されていた場合には、ネットワークの想定最大帯域(MaxBW)、ここでは「20MB/s」を、現在のネットワークの使用帯域に書き換える。また、繰り返し処理判定部240は、ステップS8の処理が、ステップS2〜S8のループにより、2回目以降である場合は、ネットワーク情報記憶部250に記憶されているネットワークの使用帯域を、その時点(現在)のネットワークの使用帯域に書き換える、つまり、最新のネットワークの使用帯域に更新する。
【0076】
なお、この現在のネットワークの使用帯域は、このネットワークファイル供給システム1のファイルサーバ100内に、ネットワーク20のトラヒック情報を収集する機能を備えさせ、各ネットワーク機器30から収集したトラヒック情報に基づきネットワークの使用帯域を計算し、送出制御装置200に送信するようにしてもよい。また、不図示のネットワーク管理装置等が、ネットワーク20のトラヒック情報を収集する機能を備えており、そのネットワーク管理装置等から、現在のネットワークの使用帯域の情報を、送出制御装置200が取得するようにしてもよい。
【0077】
そして、ステップS2に戻り、現在のネットワークの使用帯域を用いて、再度、多重数決定部230が、最適多重数を決定する。ここで、多重数決定部は、(式2)および(式3)において、ネットワークの想定最大帯域(MaxBW)を、現在のネットワークの使用帯域に置き換えて、最大多重(MMax)と最小多重(MMin)とを計算することにより、最適多重数を決定する。なお、最低限の送出速度(MinS)は、(式1)に基づき変更しない。
また、このとき、多重数決定部230は、ファイル送出の多重数を、再度決定した最適多重数より少ない多重数に設定し、ファイルサーバ100のファイル送信部123に送信して、ステップS3以降の処理を続ける。
【0078】
次に、ネットワークファイル供給システム1は、ステップS5において、繰り返し処理判定部240が、パケット損失を検知せず(ステップS5→No)、さらに、最適多重数に達したと判定した場合には(ステップS6→Yes)、ステップS9以降の送出速度の調整処理を実行する。
【0079】
ステップS9において、ファイルサーバ100のファイル送信部123は、引き続きファイル送出を継続する。そして、パケットロス監視部133は、パケット損失を監視し(ステップS10)、その監視結果情報を、送出制御装置200の繰り返し処理判定部240に送信する。
【0080】
そして、繰り返し処理判定部240は、受信した監視結果情報に基づき、パケット損失が検知されたか否かを判定する(ステップS11)。
【0081】
ここで、繰り返し処理判定部240が、パケット損失を検知しなかった場合には(ステップS11→No)、送出速度決定部220は、多重転送する全FTPセッションの送出速度を増加させる新たな送出速度を決定する(ステップS12)。そして、送出速度決定部220は、ファイルサーバ100の送出速度制限部122を介して、増加させた新たな送出速度でファイル送信部123がファイル送出するように制御する。
【0082】
一方、繰り返し処理判定部240が、パケット損失を検知した場合には(ステップS11→Yes)、送出速度決定部220は、多重転送する全FTPセッションの送出速度を減少させる新たな送出速度を決定する(ステップS13)。そして、送出速度決定部220は、ファイルサーバ100の送出速度制限部122を介して、減少させた新たな送出速度でファイル送信部123がファイル送出するように制御する。
【0083】
なお、このステップS12およびステップS13における、送出速度決定部220による、送出速度の増加および減少の値の決定は、予め決定しておいた所定の増加量、減少量の値に基づき、現在の送出速度から増加または減少させた新たな送出速度を決定してもよいし、その時点(現在)のネットワークの使用帯域と、ネットワーク情報記憶部250に記憶されているネットワーク帯域とを比較し、その差の増減に応じて、送出速度の増加量および減少量を決定するようにしてもよい。その場合、送出速度決定部220は、ネットワーク情報記憶部250内のネットワーク帯域を、その時点(現在)のネットワーク帯域に更新する処理を行う。
【0084】
次に、ファイルサーバ100のファイル送信部123は、全ファイルの転送が完了しているか否かを判定する(ステップS14)。そして、ファイル送信部123が、転送していないファイルがあると判定した場合には(ステップS14→No)、ステップS9に戻り処理を続ける。一方、ファイル送信部123が、全ファイルの処理が完了していると判定した場合には(ステップS14→Yes)、ネットワークファイル供給システム1の処理を終了する。
【0085】
<本発明の効果>
以上説明したような、本実施形態に係るネットワークファイル供給システム1が行うファイル同時多重転送処理により得られる効果を、図4を参照して説明する。
【0086】
図4においては、縦軸方向にネットワークのネットワーク帯域(MB/s)が示されており、横軸方向は経過時間を表している。また、ネットワークの実測帯域が実線Aで示されており、本ネットワークファイル供給システム1が使用するファイル転送のための帯域が実線Bで示されている。本実施形態によれば、実測帯域(実線A)を常時監視し、ネットワークへ転送する多重数を段階的に増加させる。この段階的な増加が進み、多重数決定部230が決定した最適多重数に達したときに、まだネットワーク帯域に余裕がある場合(パケット損失が検出されない場合)には、全FTPセッションの送出速度を増加させる。一方、実測帯域(実践A)が低下するなどして、繰り返し処理判定部240がパケット損失を検出した場合には、全FTPセッションの送出速度を減少させる。
【0087】
このように、本実施形態に係るネットワークファイル供給システム1によれば、実測のネットワーク帯域に合わせて、送出速度の増加や減少を、全FTPセッションについて等しく調整するため、多重数にばらつきが生じることがなく、各FTPセッションの送出完了時間が一致する。よって、図4に示すようにネットワーク帯域を使い切り、全体のファイル転送時間を低減することができる。
【符号の説明】
【0088】
1 ネットワークファイル供給システム
20 ネットワーク
30 ネットワーク機器
100 ファイルサーバ
110 ファイルシステム
120 FTP部
121 ファイル読み込み部
122 送出速度制限部
123 ファイル送信部
130 TCP/IP部
131 上位レイヤ入出力部
132 パケット送受信部
133 パケットロス監視部
200 送出制御装置
210 情報入力部
220 送出速度決定部
230 多重数決定部
240 繰り返し処理判定部
250 ネットワーク情報記憶部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ネットワークを介して通信可能に接続された複数のネットワーク機器に対して、複数のファイルを多重転送するファイルサーバと、前記ファイルサーバが前記ファイルを多重転送する際の送出速度および多重数を決定する送出制御装置と、を備えるネットワークファイル供給システムであって、
前記送出制御装置は、
ネットワークの想定最大帯域(MaxBW)、転送させるファイル数(n)、1セッションの送出速度の想定最大値(MaxS)、許容できる1セッションに要する送出時間(pt)、および転送するファイルサイズ(fs)を含むネットワーク情報が記憶されている第1の記憶部と、
前記許容できる1セッションに要する送出時間(pt)および前記転送するファイルサイズ(fs)を用いて、許容時間を超えないための最低限の送出速度(MinS)を、MinS=fs/pt により決定し、前記決定した送出速度をファイルサーバに送信する送出速度決定部と、
前記ネットワークの想定最大帯域(MaxBW)および前記許容時間を超えないための最低限の送出速度(MinS)を用いて、前記多重数の最大値を示す最大多重(MMax)を、MMax=MaxBW/MinS により決定し、前記ネットワークの想定最大帯域(MaxBW)および前記1セッションの送出速度の想定最大値(MaxS)を用いて、前記多重数の最小値を示す最小多重(MMin)を、MMin=MaxBW/MaxS により決定し、前記多重数が前記最大多重(MMax)と前記最小多重(MMin)との間の値となるように、前記転送させるファイル数(n)の分割数を抽出し、前記抽出した分割数における多重数のうち、前記最大多重(MMax)と前記最小多重(MMin)との中間値により近い前記抽出した分割数における多重数を、最適多重数として決定する多重数決定部と、
前記ファイルサーバからパケット損失が発生しているか否かを示す監視結果情報を取得し、前記ファイルの前記多重転送において前記パケット損失が発生しているか否かを判定する繰り返し処理判定部と、
前記複数のネットワーク機器のトラヒック情報から得た前記ネットワークの現在の使用帯域を所定間隔で取得し、前記第1の記憶部に記憶する情報入力部と、を備え、
前記ファイルサーバは、
前記複数のファイルが記憶されている第2の記憶部と、
前記送出速度決定部が決定した送出速度、および、前記多重数決定部が決定した前記多重数に基づき、前記第2の記憶部に記憶されている複数のファイルを、前記複数のネットワーク機器に対して前記多重転送するファイル送信部と、
前記多重転送するファイルにおける前記パケット損失を監視し、前記繰り返し処理判定部に前記監視結果情報を送信するパケットロス監視部と、を備え、
前記送出制御装置の前記多重数決定部は、前記最適多重数より少ない多重数を初期値として、前記初期値から前記多重数を所定数ごと加算しながら、前記ファイル送信部からの前記多重転送を実行させ、
前記繰り返し処理判定部が、前記パケット損失が発生していないと判定した場合に、前記多重数決定部は、前記多重数を前記最適多重数まで増加し、前記ファイル送信部からの前記多重転送を実行させ、
前記繰り返し処理判定部が、前記パケット損失が発生していると判定した場合に、前記多重数決定部は、前記ネットワークの想定最大帯域(MaxBW)を、前記ネットワークの現在の使用帯域に置き換えて、前記最適多重数を再計算し、前記再計算した最適多重数まで前記多重数を増加し、前記ファイル送信部からの前記多重転送を実行させること、
を特徴とするネットワークファイル供給システム。
【請求項2】
前記多重数決定部が、前記多重数を前記最適多重数または前記再計算した最適多重数まで増加させた以降において、前記ファイル送信部からの前記多重転送を実行させた場合に、
前記繰り返し処理判定部が、前記ファイルサーバから前記監視結果情報を取得し、前記パケット損失が発生していないと判定したとき、前記送出速度決定部が、前記ファイルの送出速度を現在の送出速度に比べ増加させて、前記ファイル送信部からの前記多重転送を実行させ、
前記繰り返し処理判定部が、前記ファイルサーバから前記監視結果情報を取得し、前記パケット損失が発生していると判定したとき、前記送出速度決定部が、前記ファイルの送出速度を現在の送出速度に比べ減少させて、前記ファイル送信部からの前記多重転送を実行させること、
を特徴とする請求項1に記載のネットワークファイル供給システム。
【請求項3】
ネットワークを介して通信可能に接続された複数のネットワーク機器に対して、複数のファイルを多重転送するファイルサーバと、前記ファイルサーバが前記ファイルを多重転送する際の送出速度および多重数を決定する送出制御装置と、を備えるネットワークファイル供給システムのネットワークファイル供給方法であって、
前記送出制御装置は、
ネットワークの想定最大帯域(MaxBW)、転送させるファイル数(n)、1セッションの送出速度の想定最大値(MaxS)、許容できる1セッションに要する送出時間(pt)、および転送するファイルサイズ(fs)を含むネットワーク情報が記憶されている第1の記憶部を備えており、
前記許容できる1セッションに要する送出時間(pt)および前記転送するファイルサイズ(fs)を用いて、許容時間を超えないための最低限の送出速度(MinS)を、MinS=fs/pt により決定し、前記決定した送出速度をファイルサーバに送信するステップと、
前記ネットワークの想定最大帯域(MaxBW)および前記許容時間を超えないための最低限の送出速度(MinS)を用いて、前記多重数の最大値を示す最大多重(MMax)を、MMax=MaxBW/MinS により決定し、前記ネットワークの想定最大帯域(MaxBW)および前記1セッションの送出速度の想定最大値(MaxS)を用いて、前記多重数の最小値を示す最小多重(MMin)を、MMin=MaxBW/MaxS により決定し、前記多重数が前記最大多重(MMax)と前記最小多重(MMin)との間の値となるように、前記転送させるファイル数(n)の分割数を抽出し、前記抽出した分割数における多重数のうち、前記最大多重(MMax)と前記最小多重(MMin)との中間値により近い前記抽出した分割数における多重数を、最適多重数として決定するステップと、
前記ファイルサーバからパケット損失が発生しているか否かを示す監視結果情報を取得し、前記ファイルの前記多重転送において前記パケット損失が発生しているか否かを判定するステップと、
前記複数のネットワーク機器のトラヒック情報から得た前記ネットワークの現在の使用帯域を所定間隔で取得し、前記第1の記憶部に記憶するステップと、を実行し、
前記ファイルサーバは、
前記複数のファイルが記憶されている第2の記憶部を備えており、
前記送出制御装置が決定した前記送出速度および前記多重数に基づき、前記第2の記憶部に記憶されている複数のファイルを、前記複数のネットワーク機器に対して前記多重転送するステップと、
前記多重転送するファイルにおける前記パケット損失を監視し、前記送出制御装置に前記監視結果情報を送信するステップと、を実行し、
前記送出制御装置は、
前記最適多重数より少ない多重数を初期値として、前記初期値から前記多重数を所定数ごと加算しながら、前記ファイルサーバに前記多重転送を実行させるステップと、
前記パケット損失が発生しているか否かを判定するステップにおいて、前記パケット損失が発生していないと判定した場合に、前記多重数を前記最適多重数まで増加し、前記ファイルサーバに前記多重転送を実行させるステップと、
前記パケット損失が発生しているか否かを判定するステップにおいて、前記パケット損失が発生していると判定した場合に、前記ネットワークの想定最大帯域(MaxBW)を、前記ネットワークの現在の使用帯域に置き換えて、前記最適多重数を再計算し、前記再計算した最適多重数まで前記多重数を増加し、前記ファイルサーバに前記多重転送を実行させるステップと、を実行すること、
を特徴とするネットワークファイル供給方法。
【請求項4】
前記送出制御装置が、前記多重数を前記最適多重数または前記再計算した最適多重数まで増加させた以降において、前記ファイルサーバに前記多重転送を実行させた場合に、
前記送出制御装置は、
前記パケット損失が発生しているか否かを判定するステップにおいて、前記パケット損失が発生していないと判定したとき、前記ファイルの送出速度を現在の送出速度に比べ増加させて、前記ファイルサーバに前記多重転送を実行させるステップと、
前記パケット損失が発生しているか否かを判定するステップにおいて、前記パケット損失が発生していると判定したとき、前記ファイルの送出速度を現在の送出速度に比べ減少させて、前記ファイルサーバに前記多重転送を実行させるステップと、を実行すること、
を特徴とする請求項3に記載のネットワークファイル供給方法。
【請求項5】
請求項3または請求項4に記載のネットワークファイル供給方法を、コンピュータである前記ネットワークファイル供給システムの各装置に実行させるためのネットワークファイル供給プログラム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2013−5030(P2013−5030A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−131269(P2011−131269)
【出願日】平成23年6月13日(2011.6.13)
【出願人】(000004226)日本電信電話株式会社 (13,992)
【Fターム(参考)】