説明

ネットワーク帯域制御方法

【課題】ネットワーク上に余分なパケットを送信することなく、該ネットワークに接続された情報通信端末の通信帯域の調整を可能するための構造を備えたネットワーク帯域制御方法を提供する。
【解決手段】ネットワークへの不要なトラフィック負荷を与えることなく、該ネットワークに接続された情報通信端末の通信帯域の調整を可能するための構造を備えたネットワーク帯域制御に関する。NW制御部110は、情報通信端末300から、自己の物理的な位置情報とネットワーク100上の識別情報の双方を取得し、情報通信端末300のデータ送受信を担う通信経路を推定し、情報通信端末300の通信帯域を推定し、推定された通信帯域に基づいた情報通信端末300に対する伝送制御を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自己の物理的な位置情報を検出する手段を有する情報通信端末が接続可能なネットワークにおいて、該情報通信端末の通信帯域をネットワーク資源への負荷を与えることなく調整可能にするネットワーク帯域制御方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
現在広く普及してきたインターネット、移動体通信ネットワーク等の公衆ネットワークでは、有線端末及び無線端末を用いて不特定多数のユーザが通信帯域等のネットワーク資源を共有し、同時にアクセス可能な構成となっている。そのため、ユーザの同時アクセスによるトラフィック負荷がネットワーク資源の処理能力を一時的に超え、ネットワーク全体に多大な通信パフォーマンス(通信品質、通信速度等)の著しい低下を引き起こすケースが散見されるようになった。
【0003】
一時的とは言え、上述のようなネットワーク全体の通信パフォーマンスの低下は、当該ネットワーク利用者全体へのサービス低下に繋がる。一方、ネットワーク資源のより効率的な活用を考えれば、一時的なトラフィック負荷の増大に対応したネットワーク資源の確保は、通信サービスを運用していく上で避けなければならない。
【0004】
そこで従来は、より効率的なネットワーク資源の活用を目的として、例えば、以下の特許文献1〜4に開示されたような伝送制御技術が提案されえている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−210671号公報
【特許文献2】特開2004−320274号公報
【特許文献3】特開2005−64922号公報
【特許文献4】特開2004−215116号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
発明者は、従来の伝送制御技術について検討した結果、以下のような課題を発見した。すなわち、無線、携帯電話等のネットワークは、外的要因により通信品質や通信状態が変動しやすい通信環境と言える。例えば、通信帯域を複数ユーザでシェアするベストエフォート方式のネットワークでは、接続された端末ごとに使用する通信帯域を一意に特定することはできない。また、従来の伝送制御技術では、一般に、ネットワークに接続された情報通信端末が相手先へ到達したパケットのロス率等に基づいて通信帯域を特定するフィードバック方式の伝送制御技術が採用されるのが一般的である。この場合、データネットワーク上へ流すことにより初めて自己の通信帯域を認識することができる。
【0007】
しかしながら、上記フィードバック型の伝送制御技術では、初めに多くのパケットをネットワーク上に送出することがあるため、ネットワークへのトラフィック負担が一時的にでも増大する可能性が大きい。このようなトラフィック負荷の増大は、他の既存トラフィックへの影響も無視することはできず、例えば、接続された情報通信端末それぞれの通信帯域を圧迫してしまう等の課題があった。
【0008】
また、IPアドレスに基づいて接続されているネットワークを特定し、通信帯域を推定する方法もあるが、IPアドレスが動的に割り振られるDHCPのような通信方式や、V−LANのように同一セグメントでも異なる場所に情報通信端末が存在する通信方式では、IPアドレス等の情報だけではネットワーク構成が変動する場合がある。このようなネットワーク環境下では、ネットワーク経路図がないと、ネットワークに接続された情報通信端末の特定が難しいという課題もあった。
【0009】
本発明は、上述のような課題を解決するためになされたものであり、ネットワーク上に余分なパケットを送信することなく(ネットワークへの不要なトラフィック負荷を与えることなく)、該ネットワークに接続された情報通信端末の通信帯域の調整を可能するための構造を備えたネットワーク帯域制御方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係るネットワーク帯域制御方法は、GPS(Global Positioning System)やGNSS(Global Navigation Satellite System)などの位置情報システムの衛星測位機能、構内位置情報システムの二次元又は三次元測位機能等、種々の位置情報システムの測位機能を利用して自己の物理的な位置情報を検出する手段を有する情報通信端末が接続可能なネットワークにおける帯域制御を行うための伝送制御方法であって、上述の課題を解決するため、管理対象となるネットワークに接続された上記手段を有する情報通信端末の通信帯域をネットワークへのトラフィック負荷を増大させることなく調節するための構造を備える。
【0011】
具体的に本発明に係るネットワーク帯域制御方法は、ネットワークに接続された制御手段において実行され、当該ネットワーク帯域制御方法は、上記特殊構造を有する情報通信端末からの情報取得と、上記情報通信端末のデータ送受信を担う通信経路の推定と、上記情報通信端末の通信帯域の推定と、推定された通信帯域に基づいた上記情報通信端末に対する伝送制御と、を備える。
【0012】
なお、当該ネットワーク帯域制御方法を実行する上記制御手段は、ネットワーク上に構築される情報処理システムとして、ネットワークに接続された1又はそれ以上の制御装置(コンピュータ)により構成可能である。例えば、上記制御手段は、ネットワーク全体の資源管理を含む伝送制御を行う制御装置(NCUなど)により実現可能である。また、ネットワークの伝送制御と帯域推定は、NCUなどの制御装置とは別の制御装置で実現可能であり、この場合、上記制御手段の構成は、NCUなどの装置とデータ授受が可能な装置であれば、該NCUなどの制御装置には限定されない。一例として、ネットワーク上のNCUとは異なる装置であって、ネットワークに接続された、パーソナルコンピュータなどの演算機能を有する装置も、NCUとは別の制御装置として、当該制御手段の一部を構成し得る。このように、当該制御手段は、ネットワーク伝送制御を実行する制御装置とともに、帯域推定を実行する別の制御装置により構成されてもよい。特に、複数の制御装置で構築されるネットワーク上の情報処理システムは、既存のネットワークを利用する場合など、既存のネットワーク資源の処理負荷の増加を抑制する構成として有効である。
【0013】
情報通信端末から上記制御手段が取得する情報としては、少なくとも、上記情報通信端末の物理的な位置情報とネットワーク上の識別情報の双方が含まれる。そして、情報通信端末から取得した情報に基づいて、情報通信端末のデータ送受信に寄与しているネットワーク内の通信経路が、上記制御手段により推定される。また、上記制御手段は、推定された通信経路の使用状況(例えば、トラフィック良など)に基づいて、上記制御手段が情報通信端末の使用可能な通信帯域を推定する。そして、上記制御手段は、情報通信端末のデータ送受信を、推定された通信帯域内で制御する。
【0014】
また、本発明に係るネットワーク帯域制御方法では、推定された通信経路を構成するノードそれぞれのトラフィック負荷に基づいて、情報通信端末の使用可能な通信帯域が推定される。
【0015】
本発明に係るネットワーク帯域制御方法では、推定精度をより向上させるため、情報通信端末の通信履歴として、当該情報通信端末の使用状況を所定の記録手段、例えば推論D/Bなどに逐次記録していくのが好ましい。加えて、この記録手段に蓄積された通信履歴から、情報通信端末から取得した情報に類似する情報を検出し、検出された類似情報に基づいて、当該情報通信端末の使用可能な通信帯域を推定することも可能である。推定された通信経路を構成するノードごとの、少なくともトラフィック負荷を含む通信状況を、所定の記録手段に順次蓄積していくことも可能である。
【0016】
さらに、本発明に係るネットワーク帯域制御方法は、上述のような情報通信端末の通信帯域の推定プロセスに加え、情報通信端末から取得した情報と、推定された通信経路情報に基づいて、該情報通信端末の移動予測を行うなど、各端末の管理プロセスを行うことも可能である。特に、情報通信端末の移動予測は、移動体通信システムなど、無線通信を主とするネットワークのトラフィック管理に有効である。また、構内LANのようにネットワークが物理回線により構成されている場合には、情報通信端末の設置位置を物理回線の布設状態との関係から特定することも可能であり、これにより、当該情報通信端末の所有者の入退室管理や企業内トラフィック管理が可能になる。ここで、「入退室管理」は、移動予測と物理回線への接続のどちらか一方のみでも可能であるが、両者の組合せによって、より容易かつ高精度な管理が可能になる。また、上記物理回線には、無線LAN等も含まれる。
【0017】
なお、この発明に係る各実施形態は、以下の詳細な説明及び添付図面によりさらに十分に理解可能となる。これら実施例は単に例示のために示されるものであって、この発明を限定するものと考えるべきではない。
【0018】
また、この発明のさらなる応用範囲は、以下の詳細な説明から明らかになる。しかしながら、詳細な説明及び特定の事例はこの発明の好適な実施形態を示すものではあるが、例示のためにのみ示されているものであって、この発明の範囲における様々な変形および改良はこの詳細な説明から当業者には自明であることは明らかである。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、ネットワークへの不要なトラフィック負荷を与えることなく、該ネットワークに接続された情報通信端末の通信帯域の調整を可能する。その結果、ネットワーク全体におけるトラフィック負荷が低減され得る。さらに、一時的な高トラフィック負荷によるアプリケーションの品質(映像、音声等)の劣化を効果的に抑えることができ、安定した通信環境の提供が可能になる。特に、携帯電話等の無線ネットワーク環境等の、各情報通信端末の通信帯域を特定し難い環境下でも安定した通信品質の提供が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本実施形態に係るネットワーク帯域制御方法が適用可能なネットワーク構成の一例を示す図である。
【図2】図1に示されたNW制御部の概略構成を示すブロック図である。
【図3】図2に示された制御部の概略構成を示すブロック図である。
【図4】情報通信端末の概略構成を示すブロック図である。
【図5】本実施形態に係るネットワーク帯域制御方法の動作を説明するためのフローチャートである。
【図6】推論D/Bの論理構成の一例を説明するための図である。
【図7】本実施形態に係るネットワーク帯域制御方法の第1適用例を説明するための図である。
【図8】本実施形態に係るネットワーク帯域制御方法の第2適用例を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明に係るネットワーク帯域制御方法の各実施形態を、図1〜図8を用いて詳細に説明する。なお、図面の説明において同一の要素には同一符号を付して重複する説明を省略する。
【0022】
図1は、本実施形態に係るネットワーク帯域制御方法が適用可能なネットワーク構成の一例を示す図である。図1に示されたネットワークの一例は、移動体通信システムであり、当該移動体通信システムは、ネットワーク100と、情報通信端末300と、ネットワーク100に接続された情報変換装置400と、コンテンツサーバ群500とを少なくとも備える。情報通信端末300の構成としては、通信端末に接続された情報端末から構成される分離型の情報通信端末のほか、これらが一体となって構成される一体型の情報通信端末とが含まれる。
【0023】
ネットワーク100は、NW制御部110と、通信インタフェース(I/F)部120と、サーバI/F部130と、ゲートウェイ部140とを含み、情報通信端末300、情報変換装置400、コンテンツサーバ群500間を相互に接続するとともに、移動体通信システムにおける回線交換やパケット交換を行う。ネットワーク100は、例えば、インターネット、イントラネット、LAN(有線/無線の双方を含む)、公衆電話網(アナログ/デジタルの双方を含む)、PDC/PDC―P方式等の携帯回線交換網/携帯パケット交換網、無線呼出網、PHS網、衛星通信網等のネットワークのうちいずれかを含んでもよい。また、ネットワーク100には、複数のルータが接続され、それらをパケットがルーティングされながら伝送されるようなネットワークも含まれる。
【0024】
NW制御部110は、通信I/F部120、サーバI/F部130及びゲートウェイ部140に接続され、ネットワーク100の伝送制御プログラム、各種の通信処理手順等が規定されたプログラム、及び所要データを格納するためのストレージを備え、当該ネットワーク100を統括的に伝送制御する。通信I/F部120は、複数のノード121が有線又は無線により相互に接続された構成を有し、最上位層に位置するノード121がNW制御部110に接続される一方、最下層に位置するノード122a、122bは、それぞれ情報通信端末300の無線通信を管理する無線基地局として機能している。より具体的には、最下層に位置するノード122aは、管轄する通信セル内に存在する移動体端末(情報通信端末300a、300b)の無線通信を中継し、ノード122bは、管轄する通信セル内に存在する移動体端末(情報通信端末300c)の無線通信を中継する。サーバI/F部130は、NW制御部110に接続され、情報変換装置400及びコンテンツサーバ群500とのインタフェース機能を有する。ゲートウェイ部140は、NW制御部110に接続され、他のネットワーク200とのゲートウェイ機能を有する。
【0025】
なお、図2は、図1に示されたNW制御部110の概略構成を示すブロック図である。また、図1では、ネットワーク100内の1カ所に集中してNW制御部110が存在するよう示されている。しかしながら、ネットワーク100の伝送制御は複数箇所に分散して行われてもよい(ネットワーク100内に複数のNW制御部が設けられてもよい)。例えば、複数のルータ及びそれらを接続する伝送路等で当該ネットワーク100が形成されている場合、NW制御部110は該複数のルータによって構成されてもよい。
【0026】
NW制御部102は、図2に示されたように、少なくとも、制御部111と、リソース管理部112と、回線切替部113と、コンテンツ管理部114と、そして情報変換管理部115とを備える。制御部111は、NW制御部110全体を統括的に制御する。また、制御部111は、接続されている複数の機能ブロックの相互情報交換を制御する。さらに、制御部111はリソース管理部112に対し、制御対象となる情報通信端末、呼、フローあるいはセッションに割り当てられたり使用されている各種リソースの割当量の変更、割当て中止を必要に応じて指示する。加えて、制御部111はリソース管理部112に対し、新規に通信が開始される際、リソースの割り当てを新たに指示する。一方、制御部111は回線切替部113に対し、制御対象となる情報通信端末、呼、フローあるいはセッションに関して、ネットワーク100内で情報伝送するための回線切替の指示や、パケットネットワークの場合にはパケットのルーティングを切替るような回線切替/ルーティング制御の指示を、必要に応じて行う。また、制御部111は、必要に応じて他のネットワークからの情報信号のルーティング制御の指示を行う。制御部111はコンテンツ管理部114に対し、端末、呼、フローあるいはセッションごとに通信されたり、また通信されようとしている情報のメディア、符号化方式、符号化速度等に関する指示を必要に応じて行う。制御対象となる情報通信端末、呼、フローあるいはセッションにおける情報変換が必要な場合、制御部111は情報変換管理部115に対し、変換元及び変換後の情報のメディア、符号化方式、符号化速度等を指示する。
【0027】
制御部111のより具体的な構成を図3に示す。制御部111は、演算ユニット1112は、上述のような制御部111の制御動作を行う一方、推論エンジン1113を備えている。具体的には、図3に示されたように、制御部111は、通信I/F1111と、メモリ1116、上述する情報通信端末300の通信帯域を推定するための推論エンジン1113(図5参照)を備えた演算ユニット1112と、ネットワーク100上において送受信されるデータ(パケット)を一時的に格納するデータバッファ1114と、推論エンジン1113による推論に利用される、例えば上述する図6に示されたような論理構造を有する推論データベース(D/B)1115を備える。演算ユニット1112では、推論エンジン1113が推論D/B1115に格納された推論用データを利用して導いた推論結果(情報通信端末の使用可能な通信帯域)に一致するよう、該制御対象である情報通信端末300が受信すべきデータ(通信I/F1111を介して当該盛業111に取り込まれたデータ)を一端データバッファ1114に格納し、制御対象である情報端末300に対して推定された通信帯域でのデータ送信を通信I/F1111を介して行っている。
【0028】
リソース管理部112は、制御部111に接続され、通信I/F部120、不図示のネットワーク内の有線伝送路をはじめとする、ネットワーク100内の無線/有線の情報伝送路、伝送のための装置等、各種リソースの割当て及び割当てリソース量の変更指示(ネットワーク資源の管理)を、端末、呼、フローあるいはセッションごとに行う。回線切替部113は、制御部111に接続され、ゲートウェイ部140の動作を制御する。また、回線切替部113は、他のネットワーク200からの情報信号のルーティングを制御するとともに、ネットワーク100内で情報伝送を行うための回線切替を行ったり、パケットネットワークにおいては、パケットのルーティングの切替制御(回線切替/ルーティング制御)を、端末、呼、フローあるいはセッションごとに行う。
【0029】
一方、コンテンツ管理部114は、制御部111に接続されている。このコンテンツ管理部114は、端末、呼、フローあるいはセッションごとに、提供されるコンテンツや情報メディア、符号化方式、符号化速度等を管理し、必要に応じて、サーバI/F部130を介してサービスサーバ群500や情報変換装置400との間で、通信されている情報のメディア、符号化方式、符号化速度等について指示を与えたり、情報交換を行う。
【0030】
情報変換管理部115は、制御部111に接続されている。この情報変換管理部115は、端末、呼、フローあるいはセッションについて情報変換が必要か否かを判断し、情報変換が必要であると判断した場合に、変換元及び変換後の情報のメディア、符号化方式、符号化速度等を管理する。また、情報変換管理部115は、必要に応じて、サーバI/F部130を介してコンテンツサーバ群500や情報変換装置400との間で、通信されている情報のメディア、符号化方式、符号化速度等について指示を与えたり、情報交換を行う。
【0031】
図1に示された情報通信端末300は、通信I/F部120に含まれる最下層のノード(無線基地局)122a、122bのいずれかの間で無線通信を行う。ここで、情報通信端末300は、無線呼出端末、PHS端末、携帯端末(IMT−2000対応の携帯端末も含む)、通信機能を備えた携帯情報端末(PDA)等のうちいずれかであってもよく、特に、携帯端末は、電子メール機能やインターネットへのアクセス機能を有する端末であってもよい。このような無線ネットワーク構成において、情報通信端末300は、ネットワーク100を介して、コンテンツサーバ群500からコンテンツを閲覧する。また、情報通信端末300は、自身が存在する環境(GPS機能等を利用して取得する自己の物理的な位置情報)を検出するための構造を備える。例えば情報通信端末300は、既知のパーソナルコンピュータ、ワークステーション、PDA等の情報処理端末を含む情報処理装置に各種のセンサやプリンタやディスプレイやイメージスキャナ等の周辺装置が接続され、該情報処理装置にこの発明に係る移動通信システムの情報提供サービスを実現させるソフトウェア(プログラム、データ等を含む)が実装されることにより実現可能である。
【0032】
図4は、上述の情報通信端末300の概略構成を示すブロック図である。図4に示されたように、情報通信端末300は、制御部302と、操作I/F306と、通信I/F301、記録手段として、更には作業領域として機能するメモリ303、モニタ305、モニタ305に表示されるデータを生成するための描画部304、そして、環境検出機能として、自己の物理的な位置情報を取得するための手段であるGPS受信部307を備える。制御部302は、当該情報通信端末300全体を統括的に制御する。制御部302は、OS(Operating System)等の制御プログラム、各種の処理手順等が規定されたプログラム、及び所要データを格納するための内部メモリを有し、これらのプログラム等により、種々の情報処理を行う。操作I/F306は、制御部302に接続され、操作入出力を可能にする。なお、操作I/F306は、例えば、ユーザが操作するマウス等の各種ポインティングデバイス、キーボード、イメージスキャナ、デジタイザ等を含む。通信I/F31は、制御部302に接続され、当該ネットワーク100における通信I/F部120との間のインタフェース機能を有する。メモリ303は、RAM、ROM等のメモリ装置、ハードディスク等の固定ディスク装置、フレキシブルディスク、光ディスク等の記録手段であり、各種処理に用いる各種のテーブルやファイルやデータベース等を格納する。
【0033】
なお、当該情報通信端末300は、音声入出力機能、画像入出力機能などを実現する構成を更に備えてもよい。例えば、音声入出力機能を実現する攻勢には、マイク、スピーカ等が含まれる。画像入出力機能を実現する構成としては、上記モニタの他、ビデオカメラ、デジタルカメラ等が含まれる。上記環境検出機能を実現する構成としては、上述のGPS受信部307の他、電波環境等を検出する装置、Bluetooth等の局所無線手段等により外部から通知される周辺環境情報(例えば、電車やバスの車中、劇場や病院等の中等)を検出するための装置、外界の明るさを検出する装置、温度検出装置等を含む。ここで、被検査対象が存在する環境の変化を検出するための検出手段は、通信端末200等の他の装置に設けられてもよい。
【0034】
以上のような構成を備えた実施形態において、情報通信端末300は、通信I/F部120を介してネットワーク100と無線通信を行い、コンテンツサーバ群500が提供するコンテンツに関するデータや、相手側情報通信端末からのデータを受信する。
【0035】
図5は、本実施形態に係るネットワーク帯域制御方法の動作を説明するためのフローチャートである。なお、本実施形態に係るネットワーク帯域制御方法は、図2及び図3に示されたNW制御部110により実行される。
【0036】
すなわち、ネットワーク100への情報通信端末300の接続や、回線切り替えなどの割り込みが発生するまで(ステップST20)、NW制御部110では、推論D/B1115の更新が逐次行われている(ステップST10)。図6には、この推論D/B1115の論理構造が示されており、例えば、推論D/B1115には、図6(a)に示されたように、当該ネットワーク100に接続された情報通信端末の履歴情報(過去の接続時における通信環境等の、各応報通信端末に固有の環境パラメータ)が逐次記録されている。また、推論D/B1115には、図6(b)に示されたように、ネットワーク100の資源管理情報として、当該ネットワーク100を構成するノード121ごとの、現在の使用状況が逐次記録される。
【0037】
割込みが発生すると(ステップST20)、NW制御部110は、割り込み発生原因となった情報通信端末(推論対象となる譲歩通信端末)から、該情報通信端末に関する端末情報として、GPS信号と、ネットワーク100上の論理アドレス(IPアドレスなど)を取得する(ステップST30)。推論対象となる情報通信端末からの情報取得が完了すると、NW制御部110は、推論プロセスSAと管理プロセスSBを並行して行う。
【0038】
推論プロセスSAは、現実には。当該NW制御部110の制御部111で実行される。より具体的には、演算ユニット1112により実現される推論エンジン1113は、上述のように更新メンテナンスされた推論D/B1115を参照しながら推論対象となる情報通信端末の通信帯域を推定していく(ステップST40)。そして、NW制御部110は、推定された通信帯域に基づいて推論対象となる情報通信端末の通信帯域を調整する(ステップST50)。
【0039】
例えば、携帯電話事業者等のキャリアが特定されている場合、同一ネットワークに接続されている端末のうち、同一通信セル内に存在する携帯電話等の端末数から推論対象となる情報通信端末に割り当てられている通信帯域が推定される。具体的には、図7に示されたように、当該ネットワーク100が移動体通信システムの一部を構成する場合、通信I/F部120の最下層ノードが無線基地局122c〜122eとなり、無線基地局122C〜122eそれぞれが通信セルAR1〜AR3内に存在する情報通信端末300の無線中継を担っている。なお、図7は、本実施形態に係るネットワーク帯域制御方法の第1適用例を説明するための図である。
【0040】
そのため、推論エンジン1113は、推論対象となる情報通信端末の物理的な位置情報と、NW制御部110で管理しているネットワーク資源情報や推論D/B1115に記録されている資源管理情報(図6(b))等から、推論対象となる情報通信端末の通信経路を推定し、係る通信経路を構成する各ノードの通信状況(接続された端末数など)に基づいて、当該推論対象となる情報通信端末の使用可能な通信帯域(推定利用可能帯域)を推定する。具体的には一例として、類似のIPアドレス(同一の通信事業者に割り当てられたIPアドレス等)を持った情報通信端末がいずれかのエリアに接近してきた場合(当該エリア内には、接近してきた情報通信端末と同じ通信事業者の情報通信端末が10台以下存在する状況、11台〜20台存在する状況、21台〜30台存在する状況等、種々の状況が想定される)、例えば、過去の履歴情報から、接近してきた情報通信端末と同じ通信事業者のエリア内情報通信端末の平均通信帯域を特定し、特定された通信帯域を推定利用可能帯域として、接近してきた情報通信端末に通知する。また、時間帯を基に、過去の履歴情報から同一曜日、同一時間帯の当該エリアでの平均通信帯域を特定し、接近してきた情報通信端末に通知する。なお、通信帯域の推定(ステップST40)では、アプリケーションの利用状態を加味し、また、ネットワークに対する当該アプリケーションの使用する通信量、必要とする通信帯域を加味し、ネットワーク100上で割り振られる通信帯域を推定することも可能である。
【0041】
また、推論対象となる情報通信端末に関する通信帯域の推定(ステップST40)は、推論D/B1115に蓄積された履歴情報(図6(a))を、類似情報として利用することも可能である。この場合、推論対象となる情報通信端末から得られた物理的な位置情報(GPS信号情報)及び当該情報通信端末のネットワーク100上の論理アドレス情報に基づいて、推論D/B1115から類似の場所、類似のIPアドレス(セグメント等)、曜日、時間帯等の取得された端末情報に類似する履歴情報が選定される。この選定情報(類似情報)に基づいて、推論エンジン1113が通信経路の推定及び通信帯域の推定を行う。ここで、「類似情報」とは、例えば、類似する履歴情報であって、同一曜日や同一時間帯での平均通信帯域、同一エリア内における情報通信端末の数が同程度存在していた場合の平均通信帯域等である。なお、類似情報には、情報通信端末がエリア内に存在するだけでなく、アプリケーションの利用状況が加味されてもよい。
【0042】
さらに、図8に示されたように、当該ネットワーク100が特定の構造物内に布設された物理回線である場合にも、本実施形態に係るネットワーク帯域制御方法は適用可能である。なお、図8は、本実施形態に係るネットワーク帯域制御方法の第2適用例を説明するための図である。
【0043】
図8に示された例では、構造物600内にNW制御部110aは設置され、ゲートウェイ部140aを介して外部のネットワーク200aに接続されている。NW制御部110aは、構造物600の各フロアには、ノード121(IPルータなど)を介して物理回線601が布設されており、情報通信端末300は、自己の通信I/F301(図4)を介して物理回線601(構内ネットワーク)に接続できる。このようなネットワーク構成において、情報通信端末300がいずれかのコネクタ602を介してネットワーク601に接続されると、NW制御部110aは、端末情報として、該接続された情報通信端末300から物理的な位置情報(空間情報)とIPアドレスを取得する。ネットワーク601がこのような物理回線の場合、構造物の内部構造と布設位置とが明確となっているため、推論エンジン1113による情報通信端末300の正確な設置場所の推定が容易になる。また、推論D/B1115には、ネットワーク601を構成するノード121の通信状況から容易に情報通信端末300の使用可能な通信帯域を推定することが可能になる。
【0044】
一方、NW制御部110は、推論プロセスSAと並行して端末管理プロセスSBを実行することができる。このように端末管理プロセスSBを行う理由は、本実施形態に係るネットワーク帯域制御方法により推論対象となる情報通信端末の設置位置(存在場所)が正確に推定できることからである。すなわち、係る位置情報を利用した種々の応用が可能になるため、本実施形態に係るネットワーク帯域制御方法では、NW制御部110が種々の端末管理を行っている(ステップST60)。
【0045】
例えば、図7に示された移動体通信システムにおいて、NW制御部110は、ステップST60の端末管理として、情報通信端末300から取得したGPS情報と、推定された通信経路情報に基づいて、該情報通信端末300の移動予測を行う。特に、図7のような無線通信を主とする移動体通信システムでは、情報通信端末300の移動予測は、当該ネットワーク100におけるトラフィック管理に有効である。また、図8に示されたような物理回線601により構内LAN(ネットワーク100に相当)が構成されている場合、ステップST60の端末管理として、情報通信端末300の設置位置を物理回線601の布設状態との関係から特定できるため、当該情報通信端末300の所有者の入退室管理や企業内トラフィック管理が可能になる。
【0046】
なお、上述の実施形態では、当該ネットワーク帯域制御方法として、ネットワーク伝送制御と帯域推論をNW制御部110(1台の制御装置によりネットワーク上の制御手段が構成される例)が行っているが、少なくとも帯域推論については、ネットワーク100に接続可能な制御装置、例えば、ゲートウェイ部140、コンテンツサーバ群500、情報変換装置400の他、パーソナルコンピュータなどの演算機能を有する情報処理装置で実行されてもよい。
【0047】
以上の本発明の説明から、本発明を様々に変形しうることは明らかである。そのような変形は、本発明の思想および範囲から逸脱するものとは認めることはできず、すべての当業者にとって自明である改良は、以下の請求の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0048】
100…ネットワーク、110…NW制御部、120…通信I/F部、130…サーバI/F部、140…ゲートウェイ部、121、122a〜122e…ノード(無線基地局)、300、300a〜c…情報通信端末、307…GPS受信部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自己の物理的な位置情報を検出する手段を有する情報通信端末が接続可能なネットワークにおける帯域制御を行うためのネットワーク帯域制御方法であって、
前記ネットワークに接続された1又はそれ以上の制御装置により構成された制御手段において、
前記情報通信端末の物理的な位置情報と前記ネットワーク上の識別情報の双方を、前記情報通信端末から取得し、
前記情報通信端末から取得した情報に基づいて、前記情報通信端末のデータ送受信に寄与している前記ネットワーク内の通信経路を推定し、
前記推定された通信経路の使用状況に基づいて、前記情報通信端末の使用可能な通信帯域を推定し、
前記情報通信端末のデータ送受信を、前記推定された通信帯域内で制御するネットワーク帯域制御方法。
【請求項2】
前記推定された通信経路を構成するノードそれぞれのトラフィック負荷に基づいて、前記情報通信端末の使用可能な通信帯域を推定することを特徴とする請求項1記載のネットワーク帯域制御方法。
【請求項3】
前記情報通信端末の通信履歴として、前記情報通信端末の使用状況を、所定の記録手段に逐次記録していくことを特徴とする請求項1又は2記載のネットワーク帯域制御方法。
【請求項4】
前記記録手段に蓄積された通信履歴から、前記情報通信端末から取得した情報に類似する情報を検出し、検出された類似情報に基づいて、前記情報通信端末の使用可能な通信帯域を推定することを特徴とする請求項3記載のネットワーク帯域制御方法。
【請求項5】
前記推定された通信経路を構成するノードごとの、少なくともトラフィック負荷を含む通信状況を、所定の記録手段に順次蓄積していくことを特徴とする請求項2記載のネットワーク帯域制御方法。
【請求項6】
前記情報通信端末から取得した情報と、前記推定された通信経路に関する情報に基づいて、前記情報通信端末の移動予測を行うこと特徴とする請求項1〜5のいずれか一項記載のネットワーク帯域制御方法。
【請求項7】
前記ネットワークは、物理回線により構成されており、前記情報通信端末の設置位置を、前記物理回線の布設状態との関係から特定することを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項記載のネットワーク帯域制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−244492(P2012−244492A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−113889(P2011−113889)
【出願日】平成23年5月20日(2011.5.20)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.Bluetooth
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】