説明

ネットワーク機器の障害監視システム

【課題】複数のIPアドレスを持つネットワーク機器に対しても低負担で運用可能な障害監視システムを提供する。
【解決手段】障害監視システムにおいてネットワーク機器のIPアドレス変換テーブルを備え、フィルタリング処理前にIPアドレス変換を行うことにより、運用負担の増大を防ぐ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、IPアドレスにより識別可能なネットワーク機器における障害発生を監視するシステムに関し、特に、監視対象のネットワーク機器から発信される稼動情報を収集することにより障害監視を行うシステムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、社内ネットワーク基盤の発展に伴い、各種業務がオンラインで処理されることが主流となりつつある。このようなオンライン処理を行うためのインフラとして、業務サーバやネットワーク機器などを365日、24時間稼動させることが必要となる。これに伴い、業務サーバやネットワーク機器の障害監視も、365日、24時間実施することが求められる。
【0003】
サーバやネットワーク機器をIP層レベルで監視する技術としては、SNMP(Simple Network Management Protocol)が一般的に用いられている。
SNMPは、監視対象エージェントが発信する稼動情報(trap)をマネージャが収集して、障害の発生等を監視する仕組みとなっている。その詳細は、IETF(the Internet Engineering Task Force)が管理するRFC(Request For Comments)1157,1441等に規定されている。
【0004】
このようなネットワーク監視技術として、例えば、特許文献1には、ネットワーク上に存在するサーバ等が出力する運転状況メッセージを受信し、当該メッセージを予め設定してあるパターンと照合して、障害の発生を判定するシステムが提案されている。
また、特許文献2には、被監視装置と保守センタとの間に、被監視装置からの障害通知情報をフィルタリングし、必要な情報のみを保守センタに送信する障害通報装置を設置する技術が提案されている。この障害通報装置は、予め設定された通報定義に基づき条件に合致した障害情報のみを保守センタに通報するので、軽微な障害の発生等、わざわざ保守センタに通報する必要のない情報を遮断して、保守センタの障害対応負担を軽減することができる。
【特許文献1】特開2001−292143号公報
【特許文献2】特開2004−320267号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記の障害監視技術は、IP層レベルで運用されるSNMPをベースとして成立するものであり、監視対象機器はそのIPアドレスによって識別されるようになっている。
しかしながら、ネットワーク機器の中には複数のIPアドレスを設定されたものが存在する場合がある。例えば、冗長化のために複数のネットワークインタフェース(NIC)を搭載したサーバや、障害管理用のプロセッサボードを別個に搭載したネットワーク機器などである。
【0006】
このように複数のIPアドレスを持つ機器に対して障害監視を行う場合には、当該複数のIPアドレスそれぞれに対して当該機器に応じた障害監視条件の設定を行い、管理する必要がある。また、IPアドレスの変更が頻繁に行われる場合には、障害監視システムにおいても都度設定を変更しなければならない。このように、複数のIPアドレスを持つ機器を対象とする障害監視システムの運用負担は大きなものとなってしまう。
監視対象機器側でIPアドレスを変換して障害情報を送信するように設定することも可能であるが、物理的に離れた位置にある各機器を個別に設定することは負担が大きく、設定漏れなどが生じる可能性も増大してしまう。
【0007】
本発明は、このような問題点に鑑みてなされたものであって、複数のIPアドレスを持つネットワーク機器に対しても低負担で運用可能な障害監視システムを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題に鑑みて鋭意研究の結果、本発明者は、障害監視システムにおいてネットワーク機器のIPアドレス変換テーブルを備え、フィルタリング処理前にIPアドレス変換を行うことにより、運用負担の増大を防ぐことができることに想到し、本発明をなすに至った。
【0009】
すなわち、本発明は、自器の稼動情報を取得する手段と、当該取得した稼動情報を監視機器に送信する手段とを備えた1以上の監視対象機器と、前記障害監視対象機器から稼動情報を受信する手段と、当該受信した稼動情報における送信元アドレスを所定のアドレス対応表に基づき対応する送信元アドレスに変換する手段と、当該稼動情報に対して所定のフィルタリング条件を適用して通報されるべき障害情報を抽出する手段とを備えた監視機器とから構成される障害監視システムを提供するものである。
このように構成することにより、複数のIPアドレスを有するネットワーク機器に対しても余計な負担を要することなく障害監視を行うことができる障害監視システムを実現することができる。
【0010】
本発明の障害監視システムにおいて、前記監視対象機器は、自器に設定されたIPアドレスが変更されたことを前記監視機器に通知する手段を備え、前記監視機器は、前記通知された監視機器のIPアドレスの変更に基づき、前記アドレス対応表を更新する手段を備えることを特徴とする。
このように構成することにより、ネットワーク運用の変更により監視対象機器のIPアドレスが変更された場合であっても、監視機器(マネージャ)側では何らの作業を必要とすることなく、障害監視システムの運用を続行することが可能である。
【発明の効果】
【0011】
以上説明したように、本発明の障害監視システムによれば、複数のIPアドレスを持つ監視対象ネットワーク機器に対しても、単一の代表IPアドレスで管理することができるので、低負担で運用可能な障害監視システムを提供することが可能である。
また、監視対象ネットワーク機器にからマネージャに対して実IPアドレスの変更を自動的に行わせるよう設定しておくことにより、さらなる管理負担の低減が実現される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の障害監視システムについて、いくつかの具体的な実施形態を例に挙げて説明する。添付図面を参照しながら、各実施形態について説明するが、これらの図面において同一の参照符号を付したものは、同一の構成であり同一の作用効果を奏するものであると理解されたい。
【0013】
[第1実施形態]
図1は、本発明の第1実施形態に係る障害監視システムの全体構成を示す構成図である。
図1において、本実施形態の障害監視システムは、監視対象マシン1と、これを監視する監視システム稼動マシン4とから構成されている。両マシンは任意の回線により接続されているものとする。また、図示するように、監視対象マシン1には、IPアドレスA及びBが付されているものとする。
【0014】
監視対象マシン1は、SNMPをベースとした監視エージェントを有している。監視エージェントは、監視対象マシン1の稼動情報を収集する稼動情報収集部2と、収集した稼動情報を監視システム稼動マシン4に送信する稼動情報送信部3とを有している。この監視エージェントの動作は従来のSNMPエージェントと同様であるので、その説明は省略する。
【0015】
監視システム稼動マシン4は、SNMPをベースとした監視マネージャと、IPアドレス変換テーブル9と、及びフィルタ条件格納テーブル10とを有している。
監視マネージャは、監視対象マシン1から送信される稼動情報を受信する稼動情報受信部5と、受信した稼動情報に含まれるIPアドレスの変換処理を行うアドレス変換部6と、アドレス変換処理された稼動情報に対して障害監視のためのフィルタ条件を適用するフィルタ処理部7と、稼動情報に対するフィルタ処理の結果、保守センタに通報すべき情報を抽出し通報を行う通報処理部8とを有している。
【0016】
図2は、図1に示す監視システム稼動マシン4が有するIPアドレス変換テーブル9の構成例を示す図である。
図2に示すように、IPアドレス変換テーブル9では、監視対象機器ごとに、代表IPアドレス、変換対象IPアドレス1,2、及び機器名称を格納している。変換対象IPアドレスは、1,2,3,・・・と、当該機器が有するIPアドレス数全てを格納しているものとする。また、代表IPアドレスは、各機器に対して固定的に割り当てられたIPアドレスであり、必ずしもネットワーク内で到達可能なアドレスである必要はない。
【0017】
図1及び図2に示す例によれば、監視対象マシン1から受信される稼動情報の受信元がIPアドレスAであってもIPアドレスBであっても、この稼動情報を受信した監視システム稼動マシン4の監視マネージャのアドレス変換部6によって、当該受信元IPアドレスXに変換されて、後のフィルタ処理及び通報処理が行われることとなる。
また、アドレス変換部6により、監視対象マシン1のシンボル「Server_X001」も同時に認識されるため、通報処理部8では、監視対象マシンのシンボル名とともに障害情報を保守センタに通報することが可能である。
【0018】
図3は、図1に示す監視システム稼動マシン4のアドレス変換部6におけるIPアドレス変換処理の流れを示すフローチャートである。
図3において、アドレス変換部6は、まず、稼動情報受信部5から稼動情報を受信し(ステップST1)、その稼動情報から送信元IPアドレスを取得する(ステップST2)。
次に、IPアドレス変換テーブル9から格納データを1レコードずつ取得し(ステップST3)、当該送信元IPアドレスの変換対象である代表IPアドレスを検索し
(ステップST4)、変換対象である代表IPアドレスが見つかった場合には、当該送信元IPアドレスをその代表IPアドレスに変換する(ステップST5)。
【0019】
以上に説明したように、本実施形態の障害監視システムでは、監視システム稼動マシン4のIPアドレス変換テーブル9において監視対象ネットワーク機器に付された複数の実IPアドレスと代表IPアドレスとを対応付けて格納しておくことにより、運用者の負担を増大させることなく、監視対象ネットワーク機器に対する障害監視を確実に行うことが可能である。
【0020】
[第2実施形態]
続いて、本発明の第2実施形態について説明する。本実施形態では、監視対象機器の実IPアドレスが変更された場合であっても、第1実施形態同様、適切な障害監視動作を行うことができる障害監視システムとなっている。その詳細について、以下に説明する。
【0021】
図4は、本実施形態の障害監視システムの全体構成を示す構成図である。
図4において、本実施形態の障害監視システムでは、第1実施形態と比べて、監視対象マシン1の監視エージェントがIPアドレス確認部15を有し、監視対象マシン1において自マシンIPアドレス情報16を備え、監視システム稼動マシン4の監視マネージャがIPアドレス変更受信部17を有している点において異なっている。
尚、自マシンIPアドレス情報16は、当該機器のOS等により管理されている情報を参照することとしてもよい。
【0022】
本実施形態の障害監視システムにおいて、IPアドレス確認部15では、稼動情報収集部2により収集した稼動情報を稼動情報送信部3により送信する前に、自マシンのIPアドレス情報が変更されていないかどうかを確認し、変更されている場合には、その情報を監視システム稼動マシン4のIPアドレス変更受信部17に送信する。
監視システム稼動マシン4のIPアドレス変更受信部17では、このように受信した情報に基づいて、IPアドレス変換テーブル9及びフィルタ条件格納テーブル10における格納情報を変更する。
【0023】
本実施形態の障害監視システムでは、このような仕組みにより、監視対象マシンのIPアドレスが手動又自動で突然変更された場合であっても、問題なく障害監視処理を続行することが可能である。
【0024】
以上、本発明の障害監視システムに付いて、具体的な実施形態を挙げて説明したが、本発明はこれらの実施形態に限定されるものではない。当業者であれば本発明の目的及び趣旨を逸脱しない範囲で、上記各実施形態について様々な改良や設計変更を加えることが可能であろうが、それらは本発明の範囲に含まれるものである。
【産業上の利用可能性】
【0025】
本発明の障害監視システムは、ネットワーク機器やサーバ装置等の監視対象機器と、これらの機器の障害監視を行うコンピュータとが協働するコンピュータシステムとして実現されるものであり、これらの機器間で送受信される稼動情報に基づく障害監視及びこれに必要なアドレス変換、フィルタリング等の情報処理が監視対象機器あるいはコンピュータといったハードウェア上で実行されるものであるので、自然法則を利用した産業上利用できる発明に該当するものである。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の第1実施形態に係る障害監視システムの全体構成を示す構成図である。
【図2】図1に示す監視システム稼動マシン4が有するIPアドレス変換テーブル9の構成例を示す図である。
【図3】図1に示す監視システム稼動マシン4のアドレス変換部6におけるIPアドレス変換処理の流れを示すフローチャートである。
【図4】本発明の第2実施形態に係る障害監視システムの全体構成を示す構成図である。
【符号の説明】
【0027】
1 監視対象マシン
2 稼動情報収集部
3 稼動情報送信部
4 監視システム稼動マシン
5 稼動情報受信部
6 IPアドレス変換部
7 フィルタ処理部
8 通報処理部
9 IPアドレス変換テーブル
10 フィルタ条件格納テーブル
15 IPアドレス確認部
16 自マシンIPアドレス情報
17 IPアドレス変更受信部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自器の稼動情報を取得する手段と、当該取得した稼動情報を監視機器に送信する手段とを備えた1以上の監視対象機器と、
前記障害監視対象機器から稼動情報を受信する手段と、当該受信した稼動情報における送信元アドレスを所定のアドレス対応表に基づき対応する送信元アドレスに変換する手段と、当該稼動情報に対して所定のフィルタリング条件を適用して通報されるべき障害情報を抽出する手段とを備えた監視機器と
から構成される障害監視システム。
【請求項2】
前記監視対象機器は、自器に設定されたIPアドレスが変更されたことを前記監視機器に通知する手段を備え、
前記監視機器は、前記通知された監視機器のIPアドレスの変更に基づき、前記アドレス対応表を更新する手段を備えることを特徴とする請求項1に記載の障害監視システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−306537(P2008−306537A)
【公開日】平成20年12月18日(2008.12.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−152551(P2007−152551)
【出願日】平成19年6月8日(2007.6.8)
【出願人】(000152985)株式会社日立情報システムズ (409)
【Fターム(参考)】