説明

ノイズ検出装置、ノイズ低減装置及びノイズ検出方法

【課題】
時間的な定常性が高い定常ノイズ成分を、精度良く検出する。
【解決手段】
時間周波数変換部121が、入力信号INDに対して、フレーム期間ごとに時間周波数変換を施して、変換結果を、振幅スペクトル情報FQDとして、パワースペクトル算出部122へ送る。また、時間周波数変換部121は、最新フレーム期間における入力信号INDの各周波数成分の位相情報PHDを算出する。そして、パワースペクトル算出部122が、振幅スペクトル情報FQDに基づいて、パワースペクトル分布PSDを算出する。引き続き、推定部124が、周波数毎に、記憶部123に記憶された最近の所定期間で得られたパワースペクトル分布において最小値であったパワースペクトルを抽出し、抽出されたパワースペクトルに基づいて、定常ノイズ成分のパワースペクトル分布NSDを推定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ノイズ検出装置、ノイズ低減装置、ノイズ検出方法、ノイズ検出プログラム、及び、当該ノイズ検出プログラムが記録された記録媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、ラジオ受信機や電話機を代表とする受信信号から音声を再生する信号処理装置が広く普及している。こうした装置のうち、自動車等の車両に搭載されるものについては、送電周波数(日本においては、50Hz又は60Hz)の妨害波を定常的に受信することがあり、ピーク周波数及びピークパワーが音声信号と比べて定常的なノイズ(いわゆるハムノイズ)が信号に混入することがある。また、建物内の固定的な位置に配置されている装置についても、増幅器やDA(Digital to Analogue)変換器、AD(Analogue to Digital)変換器の回路の不具合により、ピーク周波数又はピークパワーが音声信号と比べて定常的なノイズの影響等を受けることがある。このため、こうした定常的なノイズを検出し、その検出結果に基づいてノイズを低減させて、音声品質を維持するための技術が提案されている。
【0003】
かかる提案技術の一つとして、周波数領域におけるピーク周波数の定常性及びパワーの定常性を有するノイズを検出し、その検出結果に基づいてノイズ低減を図る技術がある(特許文献1参照:以下、「従来例」と呼ぶ)。この従来例の技術では、入力信号を時間周波数変換してスペクトルを算出し、当該スペクトルから各周波数成分のパワーを算出する。引き続き、当該パワーのピーク周波数が定常的な周波数、又は、当該パワーの大きさが定常的な周波数を抽出し、当該抽出結果に基づいて、ノイズの有無を判定する。そして、当該判定結果に基づいて、定常的なノイズを除去するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−154092号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した従来例の技術では、ノイズのピーク周波数の定常性又はパワーの定常性を有するノイズを検出する。しかしながら、スピーチ等の音声信号における各周波数成分のパワーが大きく変化する場合には、当該音声信号成分が含まれる信号においては、定常的なノイズのピーク周波数の定常性やパワーの定常性が失われてしまうことがある。この結果、定常的なノイズが有する周波数を抽出できず、再生音声品質を維持することができなくなってしまう場合があった。
【0006】
このため、音声信号成分の周波数帯域における定常性を有するノイズ成分を検出し、当該ノイズ成分を低減することのできる技術が待望されている。かかる要請に応えることが、本発明が解決すべき課題の一つとして挙げられる。
【0007】
本発明は、上記の事情を鑑みてなされたものであり、信号成分の周波数帯域における周波数毎のパワーの時間的な定常性が高い定常ノイズ成分を検出することができる新たなノイズ検出装置及びノイズ検出方法を提供することを目的とする。また、本発明は、当該定常ノイズ成分を低減し、SN比の高い信号を得ることができる新たなノイズ低減装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に記載の発明は、信号成分よりも周波数毎のパワーの時間的な定常性が高い定常ノイズ成分を検出するノイズ検出装置であって、入力信号に対して、フレーム期間ごとに時間周波数変換を施す時間周波数変換部と;前記時間周波数変換部による変換結果に基づいて、前記入力信号の前記フレーム期間ごとのパワースペクトル分布を算出するパワースペクトル算出部と;前記信号成分のいずれの周波数成分も、前記信号成分に連続的には含まれることがない蓋然性が高い期間長を有する最近の期間における、前記パワースペクトル算出部により算出されたパワースペクトル分布を記憶する記憶部と;周波数毎に、前記記憶部に記憶されたパワースペクトル分布において最小値であったパワースペクトルを抽出し、前記抽出されたパワースペクトルに基づいて、前記定常ノイズ成分のパワースペクトル分布を推定する推定部と;を備えることを特徴とするノイズ検出装置である。
【0009】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載のノイズ検出装置と;前記ノイズ検出装置により検出された定常ノイズ成分のパワースペクトル分布を利用して、前記ノイズ検出装置への入力信号から前記定常ノイズ成分を除去するノイズ低減部と;を備えることを特徴とするノイズ低減装置である。
【0010】
請求項6に記載の発明は、信号成分よりも周波数毎のパワーの時間的な定常性が高い定常ノイズ成分を検出するノイズ検出装置において使用されるノイズ検出方法であって、入力信号に対して、フレーム期間ごとに時間周波数変換を施す時間周波数変換工程と;前記時間周波数変換工程における変換結果に基づいて、前記フレーム期間ごとの前記入力信号のパワースペクトル分布を算出するパワースペクトル算出工程と;前記信号成分のいずれの周波数成分も、前記信号成分に連続的には含まれることがない蓋然性が高い期間長を有する最近の期間における、前記パワースペクトル算出工程において算出されたパワースペクトル分布を記憶部に記憶させる記憶工程と;周波数毎に、前記記憶部に記憶されたパワースペクトル分布において最小値であったパワースペクトルを抽出し、前記抽出されたパワースペクトルに基づいて、前記定常ノイズ成分のパワースペクトル分布を推定する推定工程と;を備えることを特徴とするノイズ検出方法である。
【0011】
請求項7に記載の発明は、請求項6に記載のノイズ検出方法を演算手段に実行させる、ことを特徴とするノイズ検出プログラムである。
【0012】
請求項8に記載の発明は、請求項7に記載のノイズ検出プログラムが、演算手段により読み取り可能に記録されている、ことを特徴とする記録媒体である。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の一実施形態に係るノイズ低減装置の構成を概略的に示すブロック図である。
【図2】図1の装置によるノイズ検出処理及びノイズ低減処理を説明するためのフローチャートである。
【図3】記憶部内に記憶される入力信号のパワースペクトル分布の例を示す図である。
【図4】定常ノイズ成分のパワースペクトル分布の例を示す図である。
【図5】推定された定常ノイズ成分のパワースペクトル分布に不連続がある場合に、連続化処理を施したパワースペクトル分布の例を説明するための図である。
【図6】ノイズ低減部によるノイズ低減処理を説明するためのパワースペクトル分布の例を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の一実施形態を、図1〜図6を参照して説明する。なお、以下の説明及び図面においては、同一又は同等の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0015】
[構成]
図1には、一実施形態に係るノイズ低減装置100の概略的な構成がブロック図にて示されている。このノイズ低減装置100は、外部からの受信信号RCDを、入力端子191を介して受信し、ノイズ検出処理及びノイズ検出結果に基づくノイズ低減処理を施して、出力端子192からノイズ低減信号NRDを出力する装置である。
【0016】
ここで、ノイズ低減装置100を備える装置がラジオ受信機である場合には、外部からの受信信号RCDは、ラジオ放送波である。
【0017】
図1に示されるように、ノイズ低減装置100は、生成部110と接続されている。そして、生成部110は、ノイズ低減装置100に入力信号INDを供給するようになっている。
【0018】
ここで、ノイズ低減装置100を備える装置がラジオ受信機である場合には、生成部110には、例えば、アンテナ部、選局部(チューナ部)及び検波部が含まれる。そして、検波部による検波結果である検波信号が、入力信号INDとして、ノイズ低減装置100に供給される。
【0019】
ノイズ低減装置100は、ノイズ検出装置120と、ノイズ低減部130とを備えている。
【0020】
上記のノイズ検出装置120は、生成部110から送られた入力信号INDを受ける。そして、ノイズ検出装置120は、入力信号INDから、信号成分よりも周波数毎のパワーの時間的な定常性が高い定常ノイズ成分を検出する。かかる機能を有するノイズ検出装置120は、時間周波数変換部121と、パワースペクトル算出部122と、記憶部123と、推定部124とを備えている。
【0021】
上記の時間周波数変換部121は、生成部110から送られた入力信号INDを受ける。そして、時間周波数変換部121は、入力信号INDに対して、所定時間長を有するフレーム期間ごとに時間周波数変換を施す。フレーム期間ごとの入力信号INDに対する時間周波変換結果は、各周波数成分の振幅スペクトル情報FQDとして、パワースペクトル算出部122へ送られる。また、時間周波数変換部121は、入力信号INDの時間周波数変換に対応して得られるフレーム期間における各周波数成分の位相情報PHDを、記憶部123へ送る。
【0022】
上記のパワースペクトル算出部122は、時間周波数変換部121から送られた各周波数成分の振幅スペクトル情報FQDを受ける。そして、パワースペクトル算出部122は、当該振幅スペクトル情報FQDに基づいて、入力信号INDのパワースペクトル分布(以下、「入力信号スペクトル分布」とも記す)PSDを算出する。こうして算出された入力信号スペクトル分布PSDは、記憶部123へ送られるとともに、ノイズ低減部130へ送られる。
【0023】
上記の記憶部123は、メモリ素子を備えて構成され、パワースペクトル算出部122から送られた入力信号INDのパワースペクトル分布PSDが、最近の所定期間分、記憶される。かかるパワースペクトル分布PSDの記憶領域は、いわゆるリングバッファ構成とされており、当該最近の所定期間分に含まれるM個のフレーム期間ごとのパワースペクトル分布PSDが記憶されるようになっている。また、記憶部123には、最新フレーム期間における各周波数成分の位相情報PHDが記憶される。この記憶部123には、時間周波数変換部121、パワースペクトル算出部122及び推定部124がアクセスできるようになっている。
【0024】
ここで、「所定期間」は、スピーチ等の音声は一定時間内に有音と無音を繰り返すという特徴に着目して、信号成分のいずれの周波数成分も、信号成分に連続的には含まれることがない蓋然性が高い期間長を有している。また、記憶部123は、最近の所定期間分の入力信号INDのパワースペクトル分布として、パワースペクトル分布PSD1,PSD2,…,PSDMを記憶しているものとする。
【0025】
上記の推定部124は、記憶部123にアクセスし、記憶部123に記憶されているパワースペクトル分布PSD1,PSD2,…,PSDMを、スペクトル分布データSDDとして読み取る。そして、推定部124は、スペクトル分布データSDDに基づいて、周波数毎に、パワースペクトル分布PSD1,PSD2,…,PSDMにおいて最小値であったパワースペクトルを抽出する。引き続き、推定部124は、抽出された周波数毎のパワースペクトルに基づいて、定常ノイズ成分のパワースペクトル分布(以下、「ノイズスペクトル分布」とも記す)NSDを推定する。こうして推定されたノイズスペクトル分布NSDは、ノイズ低減部130へ送られる。
【0026】
上記のノイズ低減部130は、パワースペクトル算出部122から送られた入力信号INDのパワースペクトル分布PSDを受けるとともに、推定部124から送られた定常ノイズ成分のパワースペクトル分布NSDを受ける。また、ノイズ低減部130は、記憶部123にアクセスし、記憶部123に記憶されている最新フレーム期間における各周波数成分の位相情報PHDを、最新位相情報PHIとして読み取る。そして、ノイズ低減部130は、入力信号スペクトル分布PSD、ノイズスペクトル分布NSD、及び、最新位相情報PHIに基づいて、最新のフレーム期間における入力信号INDから定常ノイズ成分を除去するノイズ低減処理を施す。ノイズ低減部130による処理結果は、ノイズ低減信号NRDとして、出力端子192を介して、外部(ノイズ低減装置100を備える装置がラジオ受信機である場合には、例えば、復調部)へ出力される。ノイズ低減部130によるノイズ低減処理については、後述する。
【0027】
[動作]
以上のようにして構成されたノイズ低減装置100の動作について、ノイズ検出処理、及び、当該ノイズ検出処理結果に基づくノイズ低減処理に主に着目して説明する。
【0028】
受信信号RCDが、入力端子191を介して生成部110で受信されると、生成部110は、ノイズ低減装置100で処理可能な形態の入力信号INDを生成する。そして、生成部110は、生成された入力信号INDを、ノイズ検出装置120の時間周波数変換部121へ送る(図1参照)。
【0029】
なお、記憶部123には、最近の所定期間における入力信号スペクトル分布が記憶されているものとする。
【0030】
このような状況のもとで、本実施形態のノイズ検出及びノイズ低減処理は、図2に示されるように、まず、ステップS11において、時間周波数変換部121が、高速フーリエ変換等の手法を用いて、入力信号INDに対して、時間周波数変換を施す。そして、時間周波数変換部121は、変換結果として得られた最新フレーム期間における各周波数成分の振幅スペクトル情報FQDをパワースペクトル算出部122へ送る。
【0031】
また、時間周波数変換部121は、入力信号INDの時間周波数変換に対応して得られる最新フレーム期間における各周波数成分の位相情報PHDを算出する。そして、時間周波数変換部121は、位相情報PHDを記憶部123へ送る。この結果、記憶部123に記憶される位相情報PHIが、当該新たに算出された最新フレーム期間における各周波数成分の位相情報に更新される。
【0032】
次に、ステップS12において、パワースペクトル算出部122が、最新フレーム期間における各周波数成分の振幅スペクトル情報FQDに基づいて、入力信号スペクトル分布PSDを算出する。そして、パワースペクトル算出部122は、新たに算出された入力信号スペクトル分布PSDを記憶部123へ送る。この結果、記憶部123に記憶されるパワースペクトル分布PSD1,PSD2,…,PSDMが、当該新たに算出された入力信号スペクトル分布PSDを含む最近の所定期間におけるM個のスペクトル分布に更新される。
【0033】
なお、記憶部123内に記憶されたパワースペクトル分布PSD1,PSD2,…,PSDMの例が、図3に示されている。
【0034】
また、パワースペクトル算出部122は、新たに算出された入力信号スペクトル分布PSDを、ノイズ低減部130へ送る。
【0035】
次いで、ステップS13において、推定部124が、記憶部123にアクセスして、記憶部123に記憶されているパワースペクトル分布PSD1,PSD2,…,PSDMを、スペクトル分布データSDDとして読み取る。そして、推定部124は、周波数毎に、パワースペクトル分布PSD1,PSD2,…,PSDMにおいて最小値であったパワースペクトルを抽出し、抽出された周波数毎のパワースペクトルに基づいて、定常ノイズ成分のパワースペクトル分布NSDを推定する。
【0036】
図4には、図3に示されるパワースペクトル分布PSD1,PSD2,…,PSDMに基づいて推定された定常ノイズ成分のパワースペクトル分布NSDの例が示されている。引き続き、推定部124は、ノイズスペクトル分布NSDをノイズ低減部130へ送る。この後、処理はステップS14へ進む。
【0037】
なお、推定部124は、推定された定常ノイズ成分のパワースペクトル分布が、図5(A)に示されるように、周波数の変化に応じて不連続に変化している場合には、周波数の変化に応じて滑らかな変化とする連続化処理を施す。そして、推定部124は、図5(B)に示されるように、当該連続化処理を施したものを、定常ノイズ成分のパワースペクトル分布NSDとして推定する。ここで、記憶部123に記憶されているパワースペクトル分布PSD1,PSD2,…,PSDMが得られた最近の所定期間は、上述したように、信号成分のいずれの周波数成分も、信号成分に連続的には含まれることがない蓋然性が高い期間長を有している。このため、推定部124による推定結果は、定常ノイズ成分のパワースペクトル分布の精度良い推定結果となっている。
【0038】
ステップS14では、ノイズ低減部130が、まず、最新フレーム期間における入力信号INDのパワースペクトル分布PSDから定常ノイズ成分のパワースペクトル分布NSDを差し引く。図6(A)には、最新フレーム期間における入力信号INDのパワースペクトル分布の例が示され、図6(B)には、定常ノイズ成分のパワースペクトル分布NSDの例が示されている。そして、図6(C)には、入力信号INDのパワースペクトル分布PSDから定常ノイズ成分のパワースペクトル分布NSDを差し引いたパワースペクトル分布の例が示されている。
【0039】
そして、ノイズ低減部130は、記憶部124にアクセスして、最新フレーム期間における入力信号INDの最新位相情報PHIを読み出し、当該差し引いたパワースペクトル分布と読み出した入力信号INDの最新位相情報PHIとに基づいて、逆高速フーリエ変換等の手法を用いて、周波数時間変換を行う。この結果、最新フレーム期間における入力信号INDから定常ノイズ成分を除去したノイズ低減信号NSDが生成されて、出力端子192を介して、外部へ出力される。
【0040】
この後、処理はステップS11へ戻る。以後、ステップS11〜S14の処理が繰り返され、入力信号INDに対するノイズ検出処理及びノイズ低減処理が行われる。
【0041】
以上説明したように、本実施形態では、受信信号RCDを受けた生成部110が、ノイズ低減装置100で処理可能な形態の入力信号INDを生成し、ノイズ検出装置120の時間周波数変換部121へ送る。そして、時間周波数変換部121が、フレーム期間における入力信号INDに対して、時間周波数変換を施して得られた、最新フレーム期間における各周波数成分の振幅スペクトル情報FQDをパワースペクトル算出部122へ送る。また、時間周波数変換部121は、入力信号INDの時間周波数変換に対応して得られる最新フレーム期間における各周波数成分の位相情報PHDを算出し、記憶部123に記憶させる。そして、パワースペクトル算出部122が、各周波数成分の振幅スペクトル情報FQDに基づいて、入力信号INDのパワースペクトル分布PSDを算出し、新たに算出された入力信号INDのパワースペクトル分布PSDを含む最近の所定期間における各フレーム期間で得られたM個のパワースペクトル分布PSDを記憶部123に記憶させる。
【0042】
引き続き、推定部124が、記憶部123に記憶されているパワースペクトル分布PSD1,PSD2,…,PSDMを読み取り、周波数毎に、最小値であったパワースペクトルを抽出し、抽出された周波数毎のパワースペクトルに基づいて、定常ノイズ成分のパワースペクトル分布NSDを推定する。そして、ノイズ低減部130が、まず、最新フレーム期間における入力信号INDのパワースペクトル分布PSDから定常ノイズ成分のパワースペクトル分布NSDを差し引く。引き続き、ノイズ低減部130は、当該差し引いたパワースペクトル分布と、最新フレーム期間における入力信号INDの最新位相情報PHIとに基づいて、周波数時間変換を行い、最新フレーム期間における入力信号INDから定常ノイズ成分を除去したノイズ低減信号NSDを生成する。
【0043】
したがって、本実施形態によれば、周波数毎のパワーの時間的な定常性が高い定常ノイズ成分を検出、低減することができ、出力信号のSN比を向上させることができる。
【0044】
[実施形態の変形]
本発明は、上記の実施形態に限定されるものではなく、様々な変形が可能である。
【0045】
例えば、上記の実施形態では、最新フレーム期間における入力信号のパワースペクトル分布から定常ノイズ成分のパワースペクトル分布を差し引いてノイズ低減信号を生成するというスペクトルサブトラクション法を用いてノイズ低減処理を行った。これに対して、ノイズ低減手法として、例えば、定常ノイズ成分のパワースペクトルに基づいて時間領域の定常ノイズ信号を生成し、当該定常ノイズ信号の位相を反転させた信号を、入力信号に加算して、ノイズ低減信号を生成するようにしてもよい。
【0046】
また、上記の実施形態では、常に、入力信号のパワースペクトル分布から定常ノイズ成分のパワースペクトル分布を差し引いてノイズ低減信号を生成した。これに対して、定常ノイズ成分のスペクトル分布が、所定周波数付近にピークを有するスペクトル分布であることが予測されるときに、定常ノイズ成分のパワースペクトル分布が、当該所定周波数付近に有意なピークを有していない場合には、ノイズ低減処理を実行しないようにしてもよい。
【0047】
なお、定常ノイズ成分のスペクトル分布が、所定周波数付近にピークを有するスペクトル分布であることが予測されるときに、定常ノイズ成分のパワースペクトル分布が、当該所定周波数付近に有意なピークを有している場合には、当該所定周波数付近のみのノイズ成分を除去するノイズ低減処理を行うようにしてもよいし、又、全周波数範囲においてノイズ成分を除去するノイズ低減処理を行うようにしてもよい。
【0048】
また、上記の実施形態では、ラジオ受信機に本発明を適用したが、固定電話機や携帯電話機等の音声通信装置に本発明を適用してもよい。
【0049】
なお、上記の実施形態におけるノイズ低減装置100の一部又は全部を中央処理装置(CPU:Central Processing Unit)、読出専用メモリ(ROM:Read Only Memory)、ランダムアクセスメモリ(RAM:Random Access Memory)等を備えた演算手段としてのコンピュータとして構成し、予め用意されたプログラムを当該コンピュータで実行することにより、上記の実施形態における処理の一部又は全部を実行するようにしてもよい。また、このプログラムは、CD−ROM、DVD等の可搬型記録媒体に記録された形態で取得されるようにしてもよいし、インターネットなどのネットワークを介した配信の形態で取得されるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0050】
100 … ノイズ低減装置
120 … ノイズ検出装置
121 … 時間周波数変換部
122 … パワースペクトル算出部
123 … 記憶部
124 … 推定部
130 … ノイズ低減部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
信号成分よりも周波数毎のパワーの時間的な定常性が高い定常ノイズ成分を検出するノイズ検出装置であって、
入力信号に対して、フレーム期間ごとに時間周波数変換を施す時間周波数変換部と;
前記時間周波数変換部による変換結果に基づいて、前記入力信号の前記フレーム期間ごとのパワースペクトル分布を算出するパワースペクトル算出部と;
前記信号成分のいずれの周波数成分も、前記信号成分に連続的には含まれることがない蓋然性が高い期間長を有する最近の期間における、前記パワースペクトル算出部により算出されたパワースペクトル分布を記憶する記憶部と;
周波数毎に、前記記憶部に記憶されたパワースペクトル分布において最小値であったパワースペクトルを抽出し、前記抽出されたパワースペクトルに基づいて、前記定常ノイズ成分のパワースペクトル分布を推定する推定部と;
を備えることを特徴とするノイズ検出装置。
【請求項2】
前記推定部は、
前記抽出されたパワースペクトルが形成する分布が、周波数の変化に応じて連続な変化をしている場合には、前記抽出されたパワースペクトルが形成する分布を、前記定常ノイズ成分のパワースペクトル分布として推定し、
前記抽出されたパワースペクトルが形成する分布が、周波数の変化に応じて不連続な変化をしている場合には、前記抽出されたパワースペクトルが形成する分布を、周波数の変化に応じて滑らかな変化とする連続化処理を施したものを、前記定常ノイズ成分のパワースペクトル分布として推定する、
ことを特徴とする請求項1に記載のノイズ検出装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のノイズ検出装置と;
前記ノイズ検出装置により検出された定常ノイズ成分のパワースペクトル分布を利用して、前記ノイズ検出装置への入力信号から前記定常ノイズ成分を除去するノイズ低減部と;
を備えることを特徴とするノイズ低減装置。
【請求項4】
前記記憶部は、最新フレーム期間における前記入力信号の時間周波数変換に対応して得られる前記最新フレーム期間における各周波数成分の位相情報を更に記憶し、
前記ノイズ低減部は、前記最新フレーム期間における前記入力信号のパワースペクトル分布から前記検出された定常ノイズ成分のパワースペクトル分布を差し引き、前記差し引いたパワースペクトル分布と、前記位相情報とに基づいて、前記最新フレーム期間における前記入力信号から前記検出された定常ノイズ成分を除去するノイズ低減処理を施した信号を生成する、ことを特徴とする請求項3に記載のノイズ低減装置。
【請求項5】
前記定常ノイズ成分のスペクトル分布は、所定周波数付近にピークを有するスペクトル分布であることが予測され、
前記ノイズ低減部は、前記検出された定常ノイズ成分のパワースペクトル分布が、前記所定周波数付近に有意なピークを有していない場合には、前記ノイズ低減処理を実行しない、
ことを特徴とする請求項3又は4に記載のノイズ低減装置。
【請求項6】
信号成分よりも周波数毎のパワーの時間的な定常性が高い定常ノイズ成分を検出するノイズ検出装置において使用されるノイズ検出方法であって、
入力信号に対して、フレーム期間ごとに時間周波数変換を施す時間周波数変換工程と;
前記時間周波数変換工程における変換結果に基づいて、前記フレーム期間ごとの前記入力信号のパワースペクトル分布を算出するパワースペクトル算出工程と;
前記信号成分のいずれの周波数成分も、前記信号成分に連続的には含まれることがない蓋然性が高い期間長を有する最近の期間における、前記パワースペクトル算出工程において算出されたパワースペクトル分布を記憶部に記憶させる記憶工程と;
周波数毎に、前記記憶部に記憶されたパワースペクトル分布において最小値であったパワースペクトルを抽出し、前記抽出されたパワースペクトルに基づいて、前記定常ノイズ成分のパワースペクトル分布を推定する推定工程と;
を備えることを特徴とするノイズ検出方法。
【請求項7】
請求項6に記載のノイズ検出方法を演算手段に実行させる、ことを特徴とするノイズ検出プログラム。
【請求項8】
請求項7に記載のノイズ検出プログラムが、演算手段により読み取り可能に記録されている、ことを特徴とする記録媒体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−177828(P2012−177828A)
【公開日】平成24年9月13日(2012.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−41333(P2011−41333)
【出願日】平成23年2月28日(2011.2.28)
【出願人】(000005016)パイオニア株式会社 (3,620)
【Fターム(参考)】