説明

ノズルプレートの製造方法

【課題】ノズル内のメニスカス位置を精度よく制御することにより、インク液滴の吐出性能の向上を図るノズルプレートの製造方法を提供することである。
【解決手段】液体が吐出するノズルを有するノズルプレートにおいて、前記ノズルの内面は、前記液体が吐出する吐出口から順に、親液性を有する第1親液面、撥液性を有する撥液面、親液性を有する第2親液面が形成されていること、を特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はノズルプレートの製造方法に係り、特に、インクジェット方式の画像形成装置の印字ヘッドの吐出面などに用いられるノズルプレートの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェット方式の画像形成装置の印字ヘッドは、記録媒体と対向する吐出面を構成するノズルプレートに複数のノズルが形成されている。そして、ノズルプレートは、インク液滴の吐出方向の安定化や吐出性能の向上のため、記録媒体と対向する吐出面に撥液膜を形成している。
【0003】
ここで、記録媒体と対向する吐出面のみに撥液膜を形成する場合には、ノズル内のインクのメニスカスは、吐出面付近あるいはノズル内の不確定な部分に位置することになる。そして、ノズル内のインクのメニスカスが吐出面付近に位置する場合には、ノズルプレート外に存在する微細な屑や記録媒体上の紙粉繊維などがインクに付着しやすい。また、ノズル内のインクのメニスカスがノズル内の不確定な部分に位置する場合には、メニスカスの位置の制御が困難になり、全てのノズルにおいてメニスカスの位置を同じにすることが困難となる。そのため、ノズル毎にインク液滴の吐出状態が異なりインク液滴の吐出性能の低下を招くおそれがある。
【0004】
また、ノズルプレートおよびノズルプレートの製造方法が、特許文献1に開示されている。図13は、特許文献1のノズルプレートのノズル224近傍の拡大図である。図13に示すように、特許文献1のノズルプレートは、記録媒体と対向するノズルプレート基板230の吐出面230A側からノズル224の内部にかけて撥液膜227を形成している。
【0005】
図14は、特許文献1のノズルプレートの製造方法を示す図である。図14(a)に示すように、まず、ノズルプレート基板230の裏面230B(インク液滴の吐出面を表面230Aとする)から感光性樹脂フィルム228を圧接させる。
【0006】
次に、図14(b)に示すように、ノズルプレート基板230の表面230Aと裏面230Bの両面から紫外線を照射させて感光性樹脂フィルム228を硬化させた後、ノズルプレート基板230の表面230Aに共析メッキ225を施す。すると、図14(c)に示すように、共析メッキ225の一部がノズル224内に入り込むが、その入り込み量は先ほど硬化させた感光性樹脂フィルム228により規制される。次に、図14(d)に示すように、ノズルプレート基板230の裏面230Bとノズル224内に入り込む感光性樹脂フィルム228を溶剤により溶解除去し、その後ノズルプレートを加熱し、ノズルプレート基板230の表面230Aとノズル224内に撥インク性のメッキ膜を形成する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平7−125220号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1の発明には、次のような問題がある。
【0009】
特許文献1の発明では、撥液膜227をノズルプレート基板230の表面からノズル224内部にかけて形成している。そのため、印字ヘッド(不図示)へのインクの充填時などにノズル224内のインクに過大に圧力が加わりメニスカスが崩壊した場合には、ノズル224内の撥液膜227の境界部分の位置からノズルプレートの表面227Aへとインクが流れ出てしまい、インク液滴の吐出性能の低下を招くおそれがある。
【0010】
また、インク液滴の吐出が停滞してノズル224近傍のインクの増粘による目詰まり等の不具合を防止するためにメニスカスに微振動を与える場合、メニスカス位置を安定した状態で保持ができず、インク液滴の吐出性能の低下を招くおそれがある。
【0011】
また、感光性樹脂フィルム228をノズル224内部に入れ込ませて硬化させることにより、撥液膜227のノズル224内部への入れ込み量を制御している。しかし、ノズル224の開口部の精度誤差の影響やノズル224の内部の濡れ性の影響により感光性樹脂フィルム228のノズル224の内部への入れ込み量が異なり、撥液膜227のノズル224の内部への入れ込み量が異なってしまう。そのため、ノズル224の内部におけるメニスカスの保持位置を精度よく制御できず、インク液滴の吐出性能の低下を招くおそれがある。
【0012】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、ノズル内のメニスカス位置を精度よく制御することにより、インク液滴の吐出性能の向上を図ることができるノズルプレートの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
前記目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、液体が吐出するノズルを有するノズルプレートにおいて、前記ノズルの内面には、前記液体が吐出する吐出口の方向から順に、親液性を有する第1親液面、撥液性を有する撥液面、親液性を有する第2親液面が形成されていること、を特徴とする。
【0014】
本発明によれば、ノズル内の液体のメニスカスの位置は吐出口から第1親液面を隔てた撥液面の位置に制御される。そのため、ノズル内における液体のメニスカスの保持位置を精度よく制御でき、インク液滴の吐出性能の向上を図ることができる。
【0015】
前記目的を達成するために、請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のノズルプレートにおいて、支持層と活性層と前記支持層および前記活性層に挟まれる酸化膜層とを備えるSOI基板を使用し、前記第1親液面は前記活性層の部分に、前記撥液面は前記酸化膜層の部分に、前記第2親液面は前記支持層の部分に形成され、前記第1親液面の表面エネルギーをEs1、前記撥液面の表面エネルギーをEh、前記第2親液面の表面エネルギーをEs2、とするときに、Es2≧Es1>Ehの条件を満たすこと、を特徴とする。
【0016】
本発明によれば、支持層と酸化膜層と活性層が精度よく形成されるSOI基板を使用するので、それぞれの層に対応する第1親液面と撥液面と第2親液面が精度よく形成される。また、第1親液面や第2親液面に比べて撥液面の撥液性は高い。そのため、ノズル内の液体のメニスカスの位置は、吐出口から第1親液面を隔てた撥液面の第2親液面との境界位置に精度よく制御される。
【0017】
前記目的を達成するために、請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載のノズルプレートにおいて、前記液体の吐出面に撥液膜が形成されていること、を特徴とする。
【0018】
本発明によれば、ノズルから液体が吐出する吐出面に撥液膜が形成されている。そのため、ノズル内でメニスカスが崩壊し液体が帯撥液面で規定されるメニスカス位置を超えた場合であっても、吐出面に撥液膜が形成されているので、吐出面に液体が濡れ広がることがない。したがって、インク液滴の吐出性能の向上を図ることができる。
【0019】
前記目的を達成するために、請求項4に記載の発明は、請求項3に記載のノズルプレートにおいて、前記吐出面に形成される撥液膜の表面エネルギーをEoとするときに、Es2≧Es1>Eh≧Eoの条件を満たすこと、を特徴とする。
【0020】
本発明によれば、吐出面に形成される撥液膜の表面エネルギーEoは、ノズル内面に形成される撥液面の表面エネルギーEhと同等かそれよりも低い。そのため、ノズル内でメニスカスが崩壊し液体が撥液面で規定されるメニスカス位置を超えた場合であっても、吐出面に液体が濡れ広がり難い。したがって、インク液滴の吐出性能の向上を図ることができる。
【0021】
前記目的を達成するために、請求項5に記載の発明は、請求項1乃至4のいずれか1つに記載のノズルプレートにおいて、前記撥液面が複数存在し、前記吐出面に最も近い前記撥液面の表面エネルギーが最も低いこと、を特徴とするノズルプレート。
【0022】
本発明によれば、撥液面が複数存在し、吐出面に最も近い帯状の撥液膜の表面エネルギーが最も低い。そのため、ノズル内の圧力の条件によりメニスカスの位置を複数の帯状の撥液膜で挟まれた範囲内に収めることができる。したがって、メニスカスに微振動を与えた場合であっても、また、ノズル内における液体を負圧状態にした場合であっても、ノズル内における液体のメニスカスの保持位置を精度よく制御でき、インク液滴の吐出性能の向上を図ることができる。
【0023】
前記目的を達成するために、請求項6に記載の発明は、画像形成装置において、前記請求項1乃至5のいずれか1つに記載のノズルプレートを有すること、を特徴とする。
【0024】
前記目的を達成するために、請求項7に記載の発明は、液体が吐出するノズルを有し、支持層と活性層と前記支持層および前記活性層に挟まれる酸化膜層とを備えるSOI基板を用いるノズルプレートの製造方法において、前記SOI基板に前記液体が吐出する吐出口を前記活性層側に設けるノズルを形成するノズル形成工程と、前記ノズルが形成された前記SOI基板の全面に撥液膜を形成する撥液膜形成工程と、前記酸化膜層に形成する前記撥液膜を残留しつつ、前記支持層と前記活性層に形成する前記撥液膜を除去する撥液膜除去工程と、を有することを特徴とする。
【0025】
本発明の製造方法により製造されるノズルプレートによれば、ノズル内の液体のメニスカスの位置は吐出口から活性層を隔てた酸化膜層に残留する撥液膜の位置に制御される。そのため、ノズル内における液体のメニスカスの保持位置を精度よく制御でき、インク液滴の吐出性能の向上を図ることができる。
【0026】
前記目的を達成するために、請求項8に記載の発明は、請求項7に記載のノズルプレートの製造方法において、前記撥液膜除去工程では、全面に撥液膜を形成する前記SOI基板を、前記酸化膜層に形成される前記撥液膜を残しつつ前記支持層と前記活性層に形成される前記撥液膜を除去する条件下で洗浄すること、を特徴とする。
【0027】
本発明によれば、全面に撥液膜を形成するSOI基板を洗浄するだけで、酸化膜層と撥液膜との結合力により、酸化膜層に形成される前記撥液膜が残るので、ノズルプレートの製造が容易である。
【0028】
前記目的を達成するために、請求項9に記載の発明は、液体が吐出するノズルを有し、第1活性層と第2活性層と支持層と前記第1活性層および第2活性層に挟まれる第1酸化膜層と前記第2活性層および前記支持層に挟まれる第2酸化膜層とを備えるSOI基板を用いるノズルプレートの製造方法において、前記第1活性層と前記第1酸化膜層と前記第2活性層をエッチングし第1開口部を形成する第1開口部形成工程と、前記第1開口部と前記第1活性層の表面に撥液膜を形成する第1開口部側撥液膜形成工程と、前記支持層および前記第2酸化膜層をエッチングし前記第1開口部と貫通する第2開口部を形成して前記ノズルを形成する第2開口部形成工程と、前記第2開口部と前記支持層の表面に撥液膜を形成する第2開口部側撥液膜形成工程と、前記第1開口部側撥液膜形成工程により前記第1開口部に形成される撥液膜のうち前記第1酸化膜層の部分に形成される第1撥液膜および前記第2開口部側撥液膜形成工程により前記第2開口部に形成される撥液膜のうち前記第2酸化膜層の部分に形成される第2撥液膜が残留するように前記第1撥液膜の部分および前記第2撥液膜の部分以外の撥液膜を除去する撥液膜除去工程とを有し、前記第1撥液膜の表面エネルギーは前記第2撥液膜の表面エネルギーよりも低いこと、を特徴とする。
【0029】
本発明の製造方法により製造されるノズルプレートによれば、ノズル内の圧力の条件によりメニスカスの位置を第1撥液膜と第2撥液膜で挟まれた範囲内に収めることができる。そのため、ノズル内における液体のメニスカスの保持位置を精度よく制御でき、インク液滴の吐出性能の向上を図ることができる。
【発明の効果】
【0030】
本発明によれば、ノズル内のメニスカス位置を精度よく制御することにより、インク液滴の吐出性能の向上を図ることができるノズルプレートおよびノズルプレートの製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】第1実施形態のノズルプレートのノズル近傍の拡大図である。
【図2】第1実施形態のノズルプレートの製造方法を示す図である。
【図3】吐出面に撥液膜を形成したノズルプレートのノズル近傍の拡大図である。
【図4】予め活性層に重ねて酸化膜のマスク層を形成したノズルプレートのノズル近傍の拡大図である。
【図5】第2実施形態のノズルプレートのノズル近傍の拡大図である。
【図6】第2実施形態のノズルプレートの製造方法を示す図である。
【図7】印字ヘッドの構造例を示す平面透視図である。
【図8】図7中8−8線に沿う断面図である。
【図9】図7に示した印字ヘッドの一部を拡大した詳細図である。
【図10】本発明に係る画像形成装置としてのインクジェット記録装置の一実施形態の概略を示す全体構成図である。
【図11】図10に示したインクジェット記録装置の印字部周辺の要部平面図である。
【図12】本実施形態に係るインクジェット記録装置のシステム構成を示す要部ブロック図である。
【図13】特許文献1のノズルプレートの要部の拡大図である。
【図14】特許文献1のノズルプレートの製造方法を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、添付図面に従って本発明の好ましい実施の形態について詳説する。
【0033】
<第1実施形態>
図1は、第1実施形態のノズルプレート11のノズル近傍の拡大図である。図1に示すように、第1実施形態のノズルプレート11は、支持層21、Box層22(酸化膜層)、活性層23からなるSOI基板について、活性層23側に吐出口を設けたノズル24が形成されるものである。そして、本発明の特徴点として、ノズル24内のBox層22の部分に内面24Aの一周に亘って帯状の撥液膜26が形成されている。これにより、ノズル24の内面は、吐出口から順に親液性を有する活性層23の面(第1親液面)、撥液性を有する帯状の撥液膜26の面(撥液面)、親液性を有する支持層21の面(第2親液面)により形成されている。
【0034】
なお、より親液性を得るため、ノズル24の内面における活性層23の面や支持層21の面に親液処理を行うことにより、第1親液面と第2親液面を作成してもよい。
【0035】
このような第1実施形態のノズルプレート11によれば、図1に示すように、ノズル24の吐出口から活性層23を隔てた帯状の撥液膜26の位置(詳細には支持層21との境界位置)に、インクのメニスカスの保持位置を精度よく制御でき、インク液滴の吐出性能の向上を図ることができる。
【0036】
ここで、第1実施形態のノズルプレート11の製造方法について、図2を用いて説明する。まず、図2(a)に示すような支持層21、Box層22、活性層23からなるSOI基板20を用意する。
【0037】
次に、図2(b)に示すように、SOI基板20に対してエッチングを行いノズル24を作成する(ノズル形成工程)。具体的には、活性層23の表面に感光性樹脂を塗布した後に、プリベーク、露光、現像処理、ポストベークを行い、レジストをパターニングする(不図示)。そして、パターニングされたレジストを用いて活性層23のシリコン、Box層22、支持層21のシリコンのドライエッチングを行う。次に、レジストを剥離液で除去する。なお、必要に応じてポリマー除去を行ってもよい。
【0038】
次に、ノズルプレートの撥液処理を行う(撥液膜形成工程)。具体的には、図2(c)に示すように、ノズル24が形成されるSOI基板20の全面に撥液膜25を形成する。撥液膜25の形成にあたっては、ディップコート、スピンコート、ベーパー処理(蒸気)、蒸着、CVDなどの方法を用いる。撥液膜25としてはフッ素基を含有する単分子膜であることが望ましい。具体例として、フルオロアルキルシランなどが考えられる。
【0039】
次に、アセトンなどで洗浄する(撥液膜除去工程)。これにより、図2(d)に示すように、Box層22に付着している撥液膜25は密着性が高いので除去されず、Box層22以外に付着している撥液膜25のみが除去され、Box層22の部分に帯状の撥液膜26が形成される。なお、撥液膜25を蒸着やCVDなどで成膜して全体的にSOI基板20との密着性が高くアセトンなどで洗浄しても除去できない場合には、撥液膜25が不要な部分にレーザーやUV光、真空紫外光を照射して除去してもよい。
【0040】
以上のように、第1実施形態のノズルプレート11が製造される。なお、ノズルプレート11は支持層21とBox層22と活性層23が精度よく形成されるSOI基板を使用するので、帯状の撥液膜26の位置が精度よく形成される。また、ノズル24内面における撥液性は支持層21の面や活性層23の面に比べて帯状の撥液膜26の面が高い。そのため、ノズル24内のインクのメニスカスの位置は、吐出口から活性層23を隔てた帯状の撥液膜26の位置(詳細には支持層21との境界位置)に精度よく制御される。
【0041】
なお、ノズル24の内面において、支持層21の面の表面エネルギーをEs2、帯状の撥液膜26の面の表面エネルギーをEh、活性層23の面の表面エネルギーをEs1、とするときに、Es2≧Es1>Ehの条件を満たすことが望ましい。この条件を満たすことにより、ノズル24内のインクのメニスカスの位置をBox層22の部分に付着している帯状の撥液膜26の位置とすることができる。そのため、ノズル24内におけるインクのメニスカスの保持位置を精度よく制御でき、インク液滴の吐出性能の向上を図ることができる。
【0042】
通常、SOI基板においては支持層21と活性層23は同じ材料(シリコン)で形成され、(支持層21の面の表面エネルギーEs2)=(活性層23の面の表面エネルギーEs1)となるが、例えば、支持層21の表面に親液処理を行うことにより、(支持層21の面の表面エネルギーEs2)>(活性層23の面の表面エネルギーEs1)としてもよい。
【0043】
また、図3に示すノズルプレート12や図4に示すノズルプレート13のように、さらに、インクの吐出面(12A、13A)に撥液膜27を形成してもよい。図3に示すノズルプレート12の製造方法としては、前記のノズルプレート11の製造方法の後、さらにノズル24内を塞いだ状態でインクの吐出面12A側のみに撥液処理を行う方法やノズル形成後、吐出面12A側のみに酸化膜層を形成し、撥液膜26と同時に撥液膜27を形成する方法が考えられる。
【0044】
図4に示すノズルプレート13の製造方法としては、マスク層28を使用した状態で撥液処理を行う方法が考えられる。具体的には、図4(a)に示すようにSOI基板20を用意し、図4(b)に示すように予め活性層23に重ねて酸化膜であるマスク層28を形成し、図4(c)に示すようにSOI基板20に対してエッチングを行いノズル24を作成し、図4(d)に示すようにSOI基板20の全面に撥液膜25を形成した後に、アセトンなどで洗浄することにより、図4(e)に示すようにノズルプレート13にはノズル24内のBox層22に相当する部分に帯状の撥液膜26が形成されるとともに、インクの吐出面13Aおよびノズル24内のマスク層28に相当する部分に撥液膜27が形成されることになる。
【0045】
ノズル24の内面において、撥液膜27の面の表面エネルギーをEoとすると、(支持層21の面の表面エネルギーEs2)≧(活性層23の面の表面エネルギーEs1)>(帯状の撥液膜26の面の表面エネルギーEh)≧(撥液膜27の面の表面エネルギーEo)、の条件を満たすことが望ましい。この条件を満たすことにより、支持層21の面や活性層23の面よりも帯状の撥液膜26の面のほうが撥液性は高い。そのため、ノズル24内のインクのメニスカスの位置は帯状の撥液膜26部分となる。また、帯状の撥液膜26面よりも吐出面(12A、13A)の撥液膜27の面のほうが撥液性が高い。そのため、ノズル24内でメニスカスが崩壊しインクが帯状の撥液膜26で規定されるメニスカス位置を超えた場合であっても、吐出面(12A、13A)にインクが濡れ広がり難い。したがって、インク液滴の吐出性能の向上を図ることができる。
【0046】
<第2実施形態>
図5は、第2実施形態のノズルプレート14のノズル近傍の拡大図である。図5に示すように、第2実施形態のノズルプレート14は、ノズル24内において内面24Aの一周に亘って帯状の撥液膜(26A、26B)が2つ形成されている点が、第1実施形態のノズルプレート11と異なる。そして、2つの帯状の撥液膜(26A、26B)の面の表面エネルギーはそれぞれ異なり、インクの吐出面14Aから遠い帯状の第2撥液膜26Bに対してインクの吐出面14Aから近い帯状の第1撥液膜26Aの表面エネルギーは低い。
【0047】
以上のような第2実施形態のノズルプレート14により、ノズル24内の圧力を調整して一旦ノズル24内のインクのメニスカスの位置を2つの帯状の撥液膜(26A、26B)の間に制御すれば、ノズル24近傍のインクの増粘による目詰まり等の不具合を防止するためにメニスカスを微振動させた場合でも、メニスカスの位置を2つの帯状の撥液膜(26A、26B)の間に維持することができる。また、同様にして、不吐出時にノズル24からインクが漏出することを防止するために後述する液体負圧装置によりノズル24内のインクに負圧を与えた場合でも、メニスカスの位置を2つの帯状の撥液膜(26A、26B)の間に維持することができる。
【0048】
なお、ノズル24内のインクのメニスカスの位置を2つの帯状の撥液膜(26A、26B)の間に制御するために、第2撥液膜26Bの面は、後述する圧力室からインクの供給圧を与えた場合にはインクが濡れ広がるのに対して、メニスカスを微振動させた場合や後述する液体負圧装置によりノズル24内のインクに負圧を与えた場合にはインク濡れ広がらない程度の撥液性を実現する表面エネルギーの高さであることが望ましい。
【0049】
さらに、フルライン型のヘッドにおけるノズルプレートとして使用する際に複数あるノズル24間で圧力差が生じる場合であっても、メニスカスの位置を2つの帯状の撥液膜(26A、26B)の間に制御することができる。
【0050】
第2実施形態のノズルプレート14の製造方法について、図6を用いて説明する。まず、図6(a)に示すような第1活性層23A、第1Box層22A(第1酸化膜層)、第2活性層23B、第2Box層22B(第2酸化膜層)、支持層21からなるSOI基板30を用意する。そして、図6(b)に示すように、シリコンからなる第1活性層23Aに対しドライエッチングを施し、図6(c)に示すように第1Box層22Aに対しドライエッチングを施し、図6(d)に示すように第2活性層23Bに対しドライエッチングを施すことにより、第1開口部31Aを作成する(第1開口部形成工程)。
【0051】
次に、図6(e)に示すように、SOI基板30について第1開口部31Aの開口側の面に、撥液膜25Aを形成する。具体的には、第1開口部31Aおよび第1活性層23Aの表面に撥液膜25Aを形成する(第1開口部側撥液膜形成工程)。次に、図6(f)に示すように支持層21に対しドライエッチングを施し、第2開口部31Bを作成し、さらに、図6(g)に示すように第2Box層22Bに対しドライエッチングを施し、第1開口部31Aと第2開口部31Bを貫通させてノズル24を形成する(第2開口部形成工程)。
【0052】
次に、図6(h)に示すように、SOI基板30について撥液膜25Aが形成されていない面に、撥液膜25Bを形成する(第2開口部側撥液膜形成工程)。なお、第1開口部31A側の撥液膜25Aには、第2開口部31B側の撥液膜25Bより表面エネルギーが低い材料を使用する。例えば、第1開口部31A側の撥液膜25Aおよび第2開口部31B側の撥液膜25Bについて、共に材料としてフルオロアルキルシランを使用する場合には、第1開口部31A側の撥液膜25Aではフッ素基の数が多く表面エネルギーが低い(表面張力の小さい)フルオロアルキルシランを使用し、第2開口部31B側の撥液膜25Bではフッ素基の数が少なく表面エネルギーが高い(表面張力の大きい)フルオロアルキルシランを使用することが考えられる。
【0053】
次に、図6(i)に示すように、アセトンなどで洗浄することにより撥液膜(25A、25B)の不要部分を除去することにより、ノズル24内の第1Box層22Aの部分に帯状の第1撥液膜26Aを形成し、第2Box層22Bの部分に帯状の第2撥液膜26Bを形成する(撥液膜除去工程)。なお、第1実施形態のノズルプレート(12、13)と同様に、さらに、インクの吐出面14Aに撥液膜を形成してもよい。
【0054】
以上のような製造方法により、第2実施形態のノズルプレート14が形成される。
【0055】
〔ヘッドの構造〕
次に、本発明のノズルプレートを有するヘッドの構造について説明する。色別の各ヘッドの構造は共通しているので、以下、これらを代表して符号50によってヘッドを示すものとする。
【0056】
図7(a)はヘッド50の構造例を示す平面透視図であり、図7(b) はその一部の拡大図である。また、図7(c) はヘッド50の他の構造例を示す平面透視図、図8は1つの液滴吐出素子(1つのノズル24に対応したインク室ユニット)の立体的構成を示す断面図(図7(a) 中の8−8線に沿う断面図)である。
【0057】
記録紙上に印字されるドットピッチを高密度化するためには、ヘッド50におけるノズルピッチを高密度化する必要がある。本例のヘッド50は、図7(a),(b) に示したように、インク吐出口であるノズル24と、各ノズル24に対応する圧力室52等からなる複数のインク室ユニット(液滴吐出素子)53を千鳥でマトリクス状に(2次元的に)配置させた構造を有し、これにより、ヘッド長手方向(紙送り方向と直交する方向)に沿って並ぶように投影される実質的なノズル間隔(投影ノズルピッチ)の高密度化を達成している。
【0058】
記録紙の送り方向と略直交する方向に記録紙の全幅に対応する長さにわたり1列以上のノズル列を構成する形態は本例に限定されない。例えば、図7(a) の構成に代えて、図7(c) に示すように、複数のノズル24が2次元に配列された短尺のヘッドモジュール50’を千鳥状に配列して繋ぎ合わせることで記録紙の全幅に対応する長さのノズル列を有するラインヘッドを構成してもよい。
【0059】
各ノズル24に対応して設けられている圧力室52は、その平面形状が概略正方形となっており(図7(a),(b) 参照)、対角線上の両隅部の一方にノズル24への流出口が設けられ、他方に供給インクの流入口(供給口)54が設けられている。なお、圧力室52の形状は、本例に限定されず、平面形状が四角形(菱形、長方形など)、五角形、六角形その他の多角形、円形、楕円形など、多様な形態があり得る。
【0060】
図8に示したように、ヘッド50はノズルプレート(11,12、13、14)と流路基板59とから形成されている。そして、流路基板59には圧力室52、供給口54、共通流路55などが形成されている。各圧力室52は供給口54を介して共通流路55と連通されている。共通流路55はインク供給源たるインクタンク(不図示)と連通しており、インクタンクから供給されるインクは共通流路55を介して各圧力室52に分配供給される。
【0061】
圧力室52の一部の面(図8において天面)を構成している加圧板(共通電極と兼用される振動板)56には個別電極57を備えたアクチュエータ58が接合されている。個別電極57と共通電極間に駆動電圧を印加することによってアクチュエータ58が変形して圧力室52の容積が変化し、これに伴う圧力変化によりノズル24からインクが吐出される。なお、アクチュエータ58には、チタン酸ジルコン酸鉛やチタン酸バリウムなどの圧電体を用いた圧電素子が好適に用いられる。インク吐出後、アクチュエータ58の変位が元に戻る際に、共通流路55から供給口54を通って新しいインクが圧力室52に再充填される。
【0062】
上述した構造を有するインク室ユニット53を図9に示す如く主走査方向に沿う行方向及び主走査方向に対して直交しない一定の角度θを有する斜めの列方向とに沿って一定の配列パターンで格子状に多数配列させることにより、本例の高密度ノズルヘッドが実現されている。
【0063】
すなわち、主走査方向に対してある角度θの方向に沿ってインク室ユニット53を一定のピッチdで複数配列する構造により、主走査方向に並ぶように投影されたノズルのピッチPはd× cosθとなり、主走査方向については、各ノズル24が一定のピッチPで直線状に配列されたものと等価的に取り扱うことができる。このような構成により、主走査方向に並ぶように投影されるノズル列が1インチ当たり2400個(2400ノズル/インチ)におよぶ高密度のノズル構成を実現することが可能になる。
【0064】
なお、印字可能幅の全幅に対応した長さのノズル列を有するフルラインヘッドで、ノズルを駆動する時には、(1)全ノズルを同時に駆動する、(2)ノズルを片方から他方に向かって順次駆動する、(3)ノズルをブロックに分割して、ブロックごとに片方から他方に向かって順次駆動する等が行われ、用紙の幅方向(用紙の搬送方向と直交する方向)に1ライン(1列のドットによるライン又は複数列のドットから成るライン)を印字するようなノズルの駆動を主走査と定義する。
【0065】
特に、図9に示すようなマトリクス状に配置されたノズル24を駆動する場合は、上記(3)のような主走査が好ましい。すなわち、ノズル24-11 、24-12 、24-13 、24-14 、24-15 、24-16 を1つのブロックとし(他にはノズル24-21 、…、24-26 を1つのブロック、ノズル24-31 、…、24-36 を1つのブロック、…として)、記録紙の搬送速度に応じてノズル24-11 、24-12 、…、24-16 を順次駆動することで記録紙の幅方向に1ラインを印字する。
【0066】
一方、上述したフルラインヘッドと用紙とを相対移動することによって、上述した主走査で形成された1ライン(1列のドットによるライン又は複数列のドットから成るライン)の印字を繰り返し行うことを副走査と定義する。
【0067】
そして、上述の主走査によって記録される1ライン(或いは帯状領域の長手方向)の示す方向を主走査方向といい、上述の副走査を行う方向を副走査方向という。すなわち、本実施形態では、記録紙の搬送方向が副走査方向であり、それに直交する方向が主走査方向ということになる。
【0068】
本発明の実施に際してノズルの配置構造は図示の例に限定されない。また、本実施形態では、ピエゾ素子(圧電素子)に代表されるアクチュエータ58の変形によってインク滴を飛ばす方式が採用されているが、本発明の実施に際して、インクを吐出させる方式は特に限定されず、ピエゾジェット方式に代えて、ヒータなどの発熱体によってインクを加熱して気泡を発生させ、その圧力でインク滴を飛ばすサーマルジェット方式など、各種方式を適用できる。
【0069】
〔インクジェット記録装置の構成〕
次に、上述したヘッドを備えた画像記録装置の具体的な適用例としてのインクジェット記録装置について説明する。
【0070】
図10は、本発明に係る画像記録装置の一実施形態を示すインクジェット記録装置の全体構成図である。同図に示すように、このインクジェット記録装置110は、黒(K),シアン(C),マゼンタ(M),イエロー(Y)の各インクに対応して設けられた複数のインクジェット記録ヘッド(以下、ヘッドという。)112K,112C,112M,112Yを有する印字部112と、各ヘッド112K,112C,112M,112Yに供給するインクを貯蔵しておくインク貯蔵/装填部114と、被記録媒体たる記録紙116を供給する給紙部118と、記録紙116のカールを除去するデカール処理部120と、前記印字部112のノズル面(インク吐出面)に対向して配置され、記録紙116の平面性を保持しながら記録紙116を搬送するベルト搬送部122と、印字部112による印字結果を読み取る印字検出部124と、記録済みの記録紙(プリント物)を外部に排紙する排紙部126とを備えている。
【0071】
インク貯蔵/装填部114は、各ヘッド112K,112C,112M,112Yに対応する色のインクを貯蔵するインクタンクを有し、各タンクは所要の管路を介してヘッド112K,112C,112M,112Yと連通されている。
【0072】
なお、不吐出時に各ヘッド112K,112C,112M,112Yに備わるノズル24からインクが漏出することを防止するために、ノズル24内部のインクに負圧を与える液体負圧装置を設けてもよい。この液体負圧装置では、負圧を与えるにあたって、ノズル24と連通するインク貯蔵/装填部114(例えば、インクカートリッジやインクタンク、サブタンクなど)において、ポンプ(不図示)により空気の供給排出による圧力調整を行い負圧を発生させる負圧発生室が設けられている。
【0073】
給紙部118から送り出される記録紙116はマガジンに装填されていたことによる巻きクセが残り、カールする。このカールを除去するために、デカール処理部120においてマガジンの巻きクセ方向と逆方向に加熱ドラム130で記録紙116に熱を与える。このとき、多少印字面が外側に弱いカールとなるように加熱温度を制御するとより好ましい。
【0074】
ロール紙を使用する装置構成の場合、図10ように、裁断用のカッター(第1のカッター)128が設けられており、該カッター128によってロール紙は所望のサイズにカットされる。
【0075】
デカール処理後、カットされた記録紙116は、ベルト搬送部122へと送られる。ベルト搬送部122は、ローラ131、132間に無端状のベルト133が巻き掛けられた構造を有し、少なくとも印字部112のノズル面及び印字検出部124のセンサ面に対向する部分が水平面(フラット面)をなすように構成されている。
【0076】
ベルト133は、記録紙116の幅よりも広い幅寸法を有しており、ベルト面には多数の吸引穴(不図示)が形成されている。図11に示したとおり、ローラ131、132間に掛け渡されたベルト133の内側において印字部112のノズル面及び印字検出部124のセンサ面に対向する位置には吸着チャンバ134が設けられており、この吸着チャンバ134をファン135で吸引して負圧にすることによって記録紙116がベルト133上に吸着保持される。
【0077】
ベルト133が巻かれているローラ131、132の少なくとも一方にモータ(図12中符号88)の動力が伝達されることにより、ベルト133は図10上の時計回り方向に駆動され、ベルト133上に保持された記録紙116は図10の左から右へと搬送される。
【0078】
縁無しプリント等を印字するとベルト133上にもインクが付着するので、ベルト133の外側の所定位置(印字領域以外の適当な位置)にベルト清掃部136が設けられている。
【0079】
ベルト搬送部122により形成される用紙搬送路上において印字部112の上流側には、加熱ファン140が設けられている。加熱ファン140は、印字前の記録紙116に加熱空気を吹き付け、記録紙116を加熱する。印字直前に記録紙116を加熱しておくことにより、インクが着弾後乾き易くなる。
【0080】
印字部112の各ヘッド112K,112C,112M,112Yは、当該インクジェット記録装置110が対象とする記録紙116の最大紙幅に対応する長さを有し、そのノズル面には最大サイズの被記録媒体の少なくとも一辺を超える長さ(描画可能範囲の全幅)にわたりインク吐出用のノズルが複数配列されたフルライン型のヘッドとなっている(図11参照)。
【0081】
ヘッド112K,112C,112M,112Yは、記録紙116の送り方向に沿って上流側から黒(K)、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)の色順に配置され、それぞれのヘッド112K,112C,112M,112Yが記録紙116の搬送方向と略直交する方向に沿って延在するように固定設置される。
【0082】
ベルト搬送部122により記録紙116を搬送しつつ各ヘッド112K,112C,112M,112Yからそれぞれ異色のインクを吐出することにより記録紙116上にカラー画像を形成し得る。
【0083】
このように、紙幅の全域をカバーするノズル列を有するフルライン型のヘッド112K,112C,112M,112Yを色別に設ける構成によれば、紙送り方向(副走査方向)について記録紙116と印字部112を相対的に移動させる動作を1回行うだけで(すなわち1回の副走査で)、記録紙116の全面に画像を記録することができる。これにより、記録ヘッドが紙搬送方向と直交する方向に往復動作するシャトル型ヘッドに比べて高速印字が可能であり、生産性を向上させることができる。
【0084】
本例では、KCMYの標準色(4色)の構成を例示したが、インク色や色数の組合せについては本実施形態に限定されず、必要に応じて淡インク、濃インク、特別色インクを追加してもよい。また、各色ヘッドの配置順序も特に限定はない。
【0085】
図10に示した印字検出部124は、印字部112の打滴結果を撮像するためのイメージセンサ(ラインセンサ又はエリアセンサ)を含み、該イメージセンサによって読み取った打滴画像からノズルの目詰まりや着弾位置誤差などの吐出特性をチェックする手段として機能する。
【0086】
本例の印字検出部124には、受光面に複数の受光素子(光電変換素子)が2次元配列されてなるCCDエリアセンサを好適に用いることができる。エリアセンサは、少なくとも各ヘッド112K,112C,112M,112Yによるインク吐出幅(画像記録幅)の全域を撮像できる撮像範囲を有しているものとする。
【0087】
印字検出部124の後段には後乾燥部142が設けられている。後乾燥部142は、印字された画像面を乾燥させる手段であり、例えば、加熱ファンが用いられる。
【0088】
後乾燥部142の後段には、加熱・加圧部144が設けられている。加熱・加圧部144は、画像表面の光沢度を制御するための手段であり、画像面を加熱しながら所定の表面凹凸形状を有する加圧ローラ145で加圧し、画像面に凹凸形状を転写する。
【0089】
こうして生成されたプリント物は排紙部126から排出される。本来プリントすべき本画像(目的の画像を印刷したもの)とテスト印字とは分けて排出することが好ましい。このインクジェット記録装置110では、本画像のプリント物と、テスト印字のプリント物とを選別してそれぞれの排出部126A、126Bへと送るために排紙経路を切り換える不図示の選別手段が設けられている。なお、大きめの用紙に本画像とテスト印字とを同時に並列に形成する場合は、カッター(第2のカッター)148によってテスト印字の部分を切り離す。
【0090】
〔制御系の説明〕
図12は、インクジェット記録装置110のシステム構成を示すブロック図である。同図に示したように、インクジェット記録装置110は、通信インターフェース70、システムコントローラ72、画像メモリ74、モータドライバ76、ヒータドライバ78、プリント制御部80、画像バッファメモリ82、ヘッドドライバ84等を備えている。
【0091】
通信インターフェース70は、ホストコンピュータ86から送られてくる画像データを受信する画像入力手段として機能するインターフェース部(画像入力部)である。通信インターフェース70にはUSB(Universal Serial Bus)、IEEE1394、イーサネット(登録商標)、無線ネットワークなどのシリアルインターフェースやセントロニクスなどのパラレルインターフェースを適用することができる。
【0092】
ホストコンピュータ86から送出された画像データは通信インターフェース70を介してインクジェット記録装置110に取り込まれ、一旦画像メモリ74に記憶される。画像メモリ74は、通信インターフェース70を介して入力された画像を格納する記憶手段であり、システムコントローラ72を通じてデータの読み書きが行われる。画像メモリ74は、半導体素子からなるメモリに限らず、ハードディスクなど磁気媒体を用いてもよい。
【0093】
システムコントローラ72は、中央演算処理装置(CPU)及びその周辺回路等から構成され、所定のプログラムに従ってインクジェット記録装置110の全体を制御する制御装置として機能するとともに、各種演算を行う演算装置として機能する。すなわち、システムコントローラ72は、通信インターフェース70、画像メモリ74、モータドライバ76、ヒータドライバ78等の各部を制御し、ホストコンピュータ86との間の通信制御、画像メモリ74の読み書き制御等を行うとともに、搬送系のモータ88やヒータ89を制御する制御信号を生成する。
【0094】
画像メモリ74は、画像データの一時記憶領域として利用されるとともに、プログラムの展開領域及びCPUの演算作業領域としても利用される。
【0095】
モータドライバ76は、システムコントローラ72からの指示に従って搬送系のモータ88を駆動するドライバ(駆動回路)である。ヒータドライバ78は、システムコントローラ72からの指示に従って後乾燥部42等のヒータ89を駆動するドライバである。
【0096】
プリント制御部80は、システムコントローラ72の制御に従い、画像メモリ74内の画像データ(多値の入力画像のデータ) から打滴制御用の信号を生成するための各種加工、補正などの処理を行う信号処理手段として機能するとともに、生成したインク吐出データをヘッドドライバ84に供給してヘッド50の吐出駆動を制御する駆動制御手段として機能する。
【0097】
プリント制御部80には画像バッファメモリ82が備えられており、プリント制御部80における画像データ処理時に画像データやパラメータなどのデータが画像バッファメモリ82に一時的に格納される。なお、図12において画像バッファメモリ82はプリント制御部80に付随する態様で示されているが、画像メモリ74と兼用することも可能である。また、プリント制御部80とシステムコントローラ72とを統合して1つのプロセッサで構成する態様も可能である。
【0098】
画像入力から印字出力までの処理の流れを概説すると、印刷すべき画像のデータは、通信インターフェース70を介して外部から入力され、画像メモリ74に蓄えられる。この段階では、例えば、RGBの多値の画像データが画像メモリ74に記憶される。
【0099】
ヘッドドライバ84は、プリント制御部80から与えられるインク吐出データ及び駆動波形の信号に基づき、印字内容に応じてヘッド50の各ノズル24に対応するアクチュエータ58を駆動するための駆動信号を出力する。ヘッドドライバ84にはヘッドの駆動条件を一定に保つためのフィードバック制御系を含んでいてもよい。
【0100】
こうして、ヘッドドライバ84から出力された駆動信号がヘッド50に加えられることによって、該当するノズル24からインクが吐出される。記録紙116の搬送速度に同期してヘッド50からのインク吐出を制御することにより、記録紙116上に画像が形成される。
【0101】
上記のように、プリント制御部80における所要の信号処理を経て生成されたインク吐出データ及び駆動信号波形に基づき、ヘッドドライバ84を介して各ノズルからのインク液滴の吐出量や吐出タイミングの制御が行われる。これにより、所望のドットサイズやドット配置が実現される。
【0102】
印字検出部124は、図10で説明したように、イメージセンサを含むブロックであり、記録紙116に印字された画像を読み取り、所要の信号処理などを行って印字状況(吐出の有無、打滴のばらつき、光学濃度など)を検出し、その検出結果をプリント制御部180及びシステムコントローラ72に提供する。
【0103】
プリント制御部80は、必要に応じて印字検出部124から得られる情報に基づいてヘッド50に対する各種補正を行うとともに、必要に応じて予備吐出や吸引、ワイピング等のクリーニング動作(ノズル回復動作)を実施する制御を行う。
【0104】
以上、本発明のノズルプレートおよびノズルプレートの製造方法、及び画像形成装置について詳細に説明したが、本発明は、以上の例には限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、各種の改良や変形を行ってもよいのはもちろんである。
【0105】
例えば、本発明のノズルプレートは、画像形成装置に限らない液体吐出装置にも使用することができる。
【符号の説明】
【0106】
11、12、13…ノズルプレート(第1実施形態)、14…ノズルプレート(第2実施形態)、12A、13A、14A…吐出面、20…SOI基板、21…支持層、22…Box層、23…活性層、24…ノズル、26…帯状の撥液膜、26A…第1撥液膜、26B…第2撥液膜、27…撥液膜、28…マスク層、30…SOI基板、31A…第1開口部、31B…第2開口部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体が吐出するノズルを有し、支持層と活性層と前記支持層および前記活性層に挟まれる酸化膜層とを備えるSOI基板を用いるノズルプレートの製造方法において、
前記SOI基板に前記液体が吐出する吐出口を前記活性層側に設けるノズルを形成するノズル形成工程と、
前記ノズルが形成された前記SOI基板の全面に撥液膜を形成する撥液膜形成工程と、
前記酸化膜層に形成する前記撥液膜を残留しつつ、前記支持層と前記活性層に形成する前記撥液膜を除去する撥液膜除去工程と、
を有することを特徴とするノズルプレートの製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載のノズルプレートの製造方法において、
前記撥液膜除去工程では、全面に撥液膜を形成する前記SOI基板を、前記酸化膜層に形成される前記撥液膜を残しつつ前記支持層と前記活性層に形成される前記撥液膜を除去する条件下で洗浄すること、
を特徴とするノズルプレートの製造方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のノズルプレートの製造方法において、
前記活性層の面の表面エネルギーをEs1、前記支持層の面の表面エネルギーをEs2、前記酸化膜層に形成する撥液膜の面の表面エネルギーをEhとするときに、Es2≧Es1>Ehの条件を満たすこと、
を特徴とするノズルプレートの製造方法。
【請求項4】
請求項3に記載のノズルプレートの製造方法において、
前記支持層の表面に親液処理を行うことにより、Es2>Es1とすることを特徴とするノズルプレートの製造方法。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか1つに記載のノズルプレートの製造方法において、
前記液体の吐出面に撥液膜を形成する工程を更に有することを特徴とするノズルプレートの製造方法。
【請求項6】
請求項5に記載のノズルプレートの製造方法において、
前記液体の吐出面に撥液膜を形成する工程は、前記ノズル内を塞いだ状態で前記液体の吐出面側のみに撥液処理を行って、前記液体の吐出面に撥液膜を形成することを特徴とするノズルプレートの製造方法。
【請求項7】
請求項5又は6に記載のノズルプレートの製造方法において、
前記液体の吐出面に形成する撥液膜の面の表面エネルギーをEoとするとき、Es2≧Es1>Eh≧Eoの条件を満たすことを特徴とするノズルプレートの製造方法。
【請求項8】
液体が吐出するノズルを有し、第1活性層と第2活性層と支持層と前記第1活性層および第2活性層に挟まれる第1酸化膜層と前記第2活性層および前記支持層に挟まれる第2酸化膜層とを備えるSOI基板を用いるノズルプレートの製造方法において、
前記第1活性層と前記第1酸化膜層と前記第2活性層をエッチングし第1開口部を形成する第1開口部形成工程と、
前記第1開口部と前記第1活性層の表面に撥液膜を形成する第1開口部側撥液膜形成工程と、
前記支持層および前記第2酸化膜層をエッチングし前記第1開口部と貫通する第2開口部を形成して前記ノズルを形成する第2開口部形成工程と、
前記第2開口部と前記支持層の表面に撥液膜を形成する第2開口部側撥液膜形成工程と、
前記第1開口部側撥液膜形成工程により前記第1開口部に形成される撥液膜のうち前記第1酸化膜層の部分に形成される第1撥液膜、および、前記第2開口部側撥液膜形成工程により前記第2開口部に形成される撥液膜のうち前記第2酸化膜層の部分に形成される第2撥液膜が残留するように前記第1撥液膜の部分および前記第2撥液膜の部分以外の撥液膜を除去する撥液膜除去工程と、を有し、
前記第1撥液膜の表面エネルギーは前記第2撥液膜の表面エネルギーよりも低いこと、を特徴とするノズルプレートの製造方法。
【請求項9】
請求項8に記載のノズルプレートの製造方法において、
前記液体の吐出面に撥液膜を形成する工程を更に有することを特徴とするノズルプレートの製造方法。
【請求項10】
請求項9に記載のノズルプレートの製造方法において、
前記液体の吐出面に撥液膜を形成する工程は、前記ノズル内を塞いだ状態で前記液体の吐出面側のみに撥液処理を行って、前記液体の吐出面に撥液膜を形成することを特徴とするノズルプレートの製造方法。
【請求項11】
液体が吐出するノズルを有し、支持層と活性層と前記支持層および前記活性層に挟まれる酸化膜層とを備えるSOI基板を用いるノズルプレートの製造方法において、
前記SOI基板に前記液体が吐出する吐出口を前記活性層側に設けるノズルを形成するノズル形成工程と、
前記液体の吐出面に酸化膜層を形成する工程と、
前記ノズルが形成されるとともに、前記液体の吐出面に酸化膜層が形成された前記SOI基板の全面に撥液膜を形成する撥液膜形成工程と、
前記ノズル内の酸化膜層と前記液体の吐出面に形成される酸化膜層とに形成する前記撥液膜を残留しつつ、前記支持層と前記活性層に形成する前記撥液膜を除去する撥液膜除去工程と、
を有することを特徴とするノズルプレートの製造方法。
【請求項12】
請求項11に記載のノズルプレートの製造方法において、
前記活性層の面の表面エネルギーをEs1、前記支持層の面の表面エネルギーをEs2、前記ノズル内の酸化膜層に形成する撥液膜の面の表面エネルギーをEh、前記液体の吐出面に形成する撥液膜の面の表面エネルギーをEoとするとき、Es2≧Es1>Eh≧Eoの条件を満たすことを特徴とするノズルプレートの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2011−218820(P2011−218820A)
【公開日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−174190(P2011−174190)
【出願日】平成23年8月9日(2011.8.9)
【分割の表示】特願2007−24684(P2007−24684)の分割
【原出願日】平成19年2月2日(2007.2.2)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】