説明

ノズルヘッドの製造方法、液体吐出装置、及びノズルヘッド

【課題】ノズルヘッド内に適切にフィルタ部を設ける。
【解決手段】ノズルから液滴を吐出するノズルヘッド12の製造方法であって、圧電素子準備工程と、液滴を吐出するノズル302と、ノズル302へ供給する液体を外部から導入する導入口308とを有するチャンバ部102を準備するチャンバ部準備工程と、圧電素子206が発生する圧力を伝えるダイヤフラム202であって、チャンバ部102の導入口308の少なくとも一部を覆う位置に形成されるフィルタ部418とを有するダイヤフラム202を形成するダイヤフラム形成工程と、ダイヤフラム202を挟んでチャンバ部102と対向する位置に圧電素子206を設置し、かつ、ダイヤフラム202をチャンバ部102に固定する組立工程とを備え、ダイヤフラム形成工程は、エッチング加工によりフィルタ部418を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ノズルヘッドの製造方法、液体吐出装置、及びノズルヘッドに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、圧電素子の変位による圧力を利用してインク滴を吐出するインクジェットヘッドが知られている。このようなインクジェットヘッドにおいては、例えば、薄板状のダイヤフラムを用いて、圧電素子の変位による圧力を伝達する(例えば、特許文献1、2参照。)。
【特許文献1】特開2002−52709号公報
【特許文献2】特開2005−28737号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
インクジェットヘッドにおいては、ノズルへ至るインクの流路への異物の混入等により、インクの吐出性能が低下してしまう場合がある。そのため、例えば特許文献1に開示されている構成においては、ダイヤフラムの一部に、フィルタ部を設けている。
【0004】
しかし、通常、インクジェットヘッドに用いられるダイヤフラムは、非常に厚みが小さく、加工が難しい。そのため、例えば機械的な加工等によりダイヤフラムに直接フィルタ部を形成しようとすると、ダイヤフラムを破壊してしまうおそれがある。また、例えばダイヤフラムとは別にフィルタ部を形成し、後付けでノズルヘッドにフィルタ部を取り付けようとする場合、部品点数の増加により、コストの上昇を招くこととなる。
【0005】
そのため、従来、ノズルヘッド内に適切にフィルタ部を設けることは困難であった。そこで、本発明は、上記の課題を解決できるノズルヘッドの製造方法、液体吐出装置、及びノズルヘッドを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために、本発明は、以下の構成を有する。
(構成1)ノズルから液滴を吐出するノズルヘッドの製造方法であって、圧電素子を準備する圧電素子準備工程と、液滴を吐出するノズルと、ノズルへ供給する液体を外部から導入する導入口とを有するチャンバ部を準備するチャンバ部準備工程と、圧電素子が発生する圧力を伝えるダイヤフラムであって、チャンバ部の導入口の少なくとも一部を覆う位置に形成されるフィルタ部とを有するダイヤフラムを形成するダイヤフラム形成工程と、ダイヤフラムを挟んでチャンバ部と対向する位置に圧電素子を設置し、かつ、チャンバ部の導入口の少なくとも一部をダイヤフラムのフィルタが覆う状態で、ダイヤフラムをチャンバ部に固定する組立工程とを備え、ダイヤフラム形成工程は、エッチング加工によりフィルタ部を形成する。
【0007】
このようにした場合、ダイヤフラムに直接フィルタ部を形成できるため、部品点数を削減し、コストの上昇を抑えることができる。また、エッチング加工によりフィルタ部を形成することにより、例えば機械的な加工を行う場合等と比べ、ダイヤフラムに不必要な力が加わることをなくし、フィルタ部の加工時にダイヤフラムが破壊されることを防ぐことができる。
【0008】
(構成2)ダイヤフラムは、ネジを通す貫通孔を更に有し、当該貫通孔を通るネジによってチャンバ部に固定され、ダイヤフラム形成工程は、エッチング加工により、貫通孔とフィルタ部とを同時に形成する。
【0009】
このようにすれば、ダイヤフラムをチャンバ部に適切に固定できる。この固定は、例えば、チャンバ部との間にダイヤフラムを挟むダイヤフラム押さえ部材等を用いて、ダイヤフラム押さえ部材等をチャンバ部にネジ止めすることにより行ってもよい。
【0010】
また、この場合、固定に必要な貫通孔と同時にフィルタ部を形成することにより、フィルタ部の形成のみのために新たな工程が増えることもない。そのため、このようにすれば、より適切にコストを抑えつつ、ダイヤフラムにフィルタ部を形成できる。
【0011】
尚、エッチング加工により同時に形成するとは、例えば、貫通孔及びフィルタ部にそれぞれ対応するパターンが形成されたエッチングマスクを用いた一回のエッチング加工により、貫通孔及びフィルタ部を形成することである。このエッチングマスクは、例えばフォトリソグラフィ技術で形成される。この場合、エッチングマスクに形成されるパターンが増加しても工程のコストは変わらないため、フィルタ部の形成に必要なコストを適切に抑えることができる。エッチングマスクは、例えば、ダイヤフラムの両面に形成される。
【0012】
(構成3)ダイヤフラムは、金属で形成されており、ダイヤフラムの厚さは、10〜50μmである。このようにすれば、圧力を伝えるというダイヤフラムに必要な機能と、エッチング加工による加工性とを適切に両立させることができる。
【0013】
また、このようにした場合、例えば樹脂等でダイヤフラムを形成する場合等と比べ、エッチング加工によりフィルタ部を形成しやすくなる。ダイヤフラムを構成する金属としては、例えばステンレス等を用いることができる。
【0014】
尚、ダイヤフラムの厚さが小さ過ぎる場合、エッチング加工の制御が難しくなるため、フィルタ部のような網目状の構成を適切に形成することは困難になる。また、エッチング加工によりフィルタ部を形成できたとしても、フィルタ部の網目が壊れやすくなり、必要な耐久性を得ることができない。更には、フィルタ部が壊れやすくなると、フィルタ部の破片が異物になって液体に混入してしまい、かえって液体の吐出性能を低下させるおそれもある。
【0015】
一方、ダイヤフラムの厚さが大き過ぎる場合、剛性が大きくなり過ぎ、圧電素子が発生する圧力を適切に伝えることができなくなるおそれがある。また、エッチング加工に必要な時間が大きくなり過ぎるおそれもある。これに対し、構成3のようにすれば、必要な強度の確保と加工しやすさを両立させて、ダイヤフラムにフィルタ部を適切に形成できる。
【0016】
(構成4)液滴を吐出する液体吐出装置であって、構成1から3のいずれかに記載のノズルヘッドの製造方法で製造されたノズルヘッドと、ノズルヘッドを制御する制御部とを備える。このように構成すれば、構成1から3と同様の効果を得ることができる。
【0017】
(構成5)ノズルから液滴を吐出するノズルヘッドであって、圧電素子と、液滴を吐出するノズルと、ノズルへ供給する液体を外部から導入する導入口とを有するチャンバ部と、圧電素子が発生する圧力を伝えるダイヤフラムであって、チャンバ部の導入口の少なくとも一部を覆う位置に形成されるフィルタ部とを有するダイヤフラムとを備え、ダイヤフラムは、金属で形成されており、ダイヤフラムの厚さは、10〜50μmである。このように構成すれば、ダイヤフラムの加工が容易になり、フィルタ部を適切に形成できる。そのため、ノズルヘッド内に適切にフィルタ部を設けることができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、例えば、ノズルヘッド内に適切にフィルタ部を設けることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明に係る実施形態を、図面を参照しながら説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る液体吐出装置10の構成の一例を示す。液体吐出装置10は、液滴の一例であるインク滴を被吐出部材50に吐出する印刷装置であり、ノズルヘッド12、テーブル14、及び制御部16を備える。
【0020】
ノズルヘッド12は、制御部16の指示に応じて、被吐出部材50へインク滴を吐出する。テーブル14は、被吐出部材50を上面に保持しており、制御部16の指示に応じて移動することにより、ノズルヘッド12と被吐出部材50との相対位置関係を変化させる。制御部16は、ノズルヘッド12の吐出タイミング、及びテーブル14の位置を制御する。本例によれば、例えば、予め設定された吐出パターンに応じて、被吐出部材50へインク滴を適切に吐出できる。また、これにより、被吐出部材50へ適切に印刷を行うことができる。
【0021】
尚、液体吐出装置10は、印刷装置以外の液体吐出装置であってもよい。例えば、液体吐出装置10は、液晶カラーフィルタや、有機EL発光層等の材料を液滴として吐出してもよい。また、液体吐出装置10は、例えば接着剤や絶縁樹脂等、又は各種薬液等の液滴を吐出してもよい。
【0022】
また、被吐出部材50は、例えば紙やフィルム等の平坦な媒体に限らず、立体的形状を有する製品等であってもよい。例えば、被吐出部材50は、ICが実装された基板等であってよい。この場合、液体吐出装置10は、例えば、実装されたICの端子に絶縁樹脂を吐出する。また、被吐出部材50は、薬品の反応容器等であってもよい。この場合、液体吐出装置10は、例えば、反応容器内に薬液を吐出する。
【0023】
また、被吐出部材50が立体的な形状を有する場合、液体吐出装置10は、例えば平坦な媒体に液体を吐出する場合と比べてより吐出距離の大きなノズルヘッド12を備えることが好ましい。このように構成すれば、例えば、ノズルヘッド12と被吐出部材50との間の距離を大きく保つことにより、被吐出部材50の表面に凹凸がある場合にも、適切に液体を目標位置へ吐出できる。この場合、ノズルヘッド12と被吐出部材50との間の距離は、10mm以上、例えば10〜30mmとすることが好ましい。また、ノズルヘッド12と被吐出部材50との間の距離をこのように大きくする場合、ノズルヘッド12の一回あたりの液滴の吐出量を、平坦な媒体に液体を吐出する場合と比べて大きくすることが好ましい。例えば、一回あたりの液滴の吐出量は、100pリットル以上、例えば100〜2000pリットルとすることが好ましい。
【0024】
図2は、ノズルヘッド12の詳細な構成の第1の例を示す分解斜視図である。本例において、ノズルヘッド12は、チャンバ部102、駆動部104、及び複数のネジ106を備える。また、ノズルヘッド12は、ノズル302の吐出方向が下向きになる状態で、液体吐出装置10(図1参照)に取り付けられる。ノズルヘッド12は、チャンバ部102、駆動部104、及び複数のネジ106を組み合わせた構成を、複数組備えてもよい。この場合、これらの構成は、例えば、並べて配置されて、それぞれのチャンバ部102のノズルから液体を吐出する。
【0025】
チャンバ部102には、液滴を吐出する1個のノズル302と、ノズル302へ液体を供給するための流路304とが形成されている。チャンバ部102には、複数のノズル302が形成されていてもよい。
【0026】
ノズル302は、チャンバ部102において駆動部104と対向する面と垂直な側面にエッチング等により形成された孔である。これにより、チャンバ部102は、ノズル302から、側面方向へ液滴を吐出する。
【0027】
流路304は、外部から供給される液体を、ノズル302まで導くための溝であり、その一部に、導入口308及び液室306を有する。導入口308は、ノズル302へ供給する液体を外部から導入する開口部であり、駆動部104と対向する面に開口している。液室306は、ノズル302の前段において液体を貯えるために幅広になっている領域であり、導入口308と並んで、駆動部104と対向する面に開口している。流路304において、導入口308と液室306との間は、液室306のノズル302側の出口と同程度、又はこれよりも狭い溝で結ばれる。そして、導入口308及びこの溝を介して、液室306には、ノズル302に供給される液体が注入される。
【0028】
また、本例において、チャンバ部102には、駆動部104をチャンバ部102にネジ止めするための複数のネジ孔420が、駆動部104と対向する面に更に形成されている。各ネジ孔420は、チャンバ部102を貫通しない止め孔であり、各ネジ106を締結可能なように、雌ネジ加工されている。尚、チャンバ部102は、例えばチタン又はステンレス等の金属で形成される。このように構成すれば、例えば、ネジ孔420の雌ネジ加工が容易になる。また、チャンバ部102の厚さは、1mm以上、例えば1〜5mm、望ましくは2〜3mmであることが好ましい。このように構成すれば、ネジ孔420の雌ネジ加工をより適切に行うことができる。
【0029】
ここで、本例の構成において、ネジ106は、駆動部104側からチャンバ部102に向かって挿入されることとなる。液体吐出装置10にノズルヘッド12が取り付けられた状態において、駆動部104側は、チャンバ部102側と比べ、空間的な余裕が大きい場合が多い。そのため、このような方向にネジ106を挿入する場合、液体吐出装置10にノズルヘッド12を取り付けたままの状態で、ネジ106を操作しやすくなる。そのため、この点においても、本例によれば、ノズルヘッド12のメンテナンス性を高めることができる。
【0030】
駆動部104は、ダイヤフラム202、ダイヤフラム押さえ部材(ドライブホルダ)204、コマ210、圧電素子206、及び固定部材208を有する。ダイヤフラム202は、チャンバ部102における液室306の開口部を少なくとも覆う隔膜であり、圧電素子206の発生する圧力を液室306に伝達する。本例において、ダイヤフラム202は、チャンバ部102の液室306と重なる領域416においてコマ210と接触しており、コマ210を介して圧電素子206の圧力を受け取る。そして、領域416に受ける圧力を、液室306に伝達する。
【0031】
また、ダイヤフラム202には、フィルタ部418及び複数の貫通孔414が形成されており、これらが形成されている以外の領域において、チャンバ部102における駆動部104と対向する面の全体を覆う。
【0032】
フィルタ部418は、チャンバ部102の導入口308の少なくとも一部を覆う位置に形成されており、導入口308に供給される液体から異物を除去する。複数の貫通孔414は、ネジ106を通すための孔である。貫通孔414は、雌ネジ加工されていない孔であり、貫通孔414の直径は、ネジ106の直径よりも大きい。ダイヤフラム202は、貫通孔414を通るネジ106によって、ダイヤフラム押さえ部材204と共にチャンバ部102に固定される。
【0033】
ダイヤフラム押さえ部材204は、金属又はセラミック等で形成されており、チャンバ部102と対向する面にダイヤフラム202を接合させて、ダイヤフラム202を押さえる。本例において、ダイヤフラム押さえ部材204は、接着剤により、ダイヤフラム202と貼り合わされている。
【0034】
また、ダイヤフラム押さえ部材204には、ダイヤフラム202との接合面と垂直な方向へダイヤフラム押さえ部材204をそれぞれ貫通する貫通孔406、導入孔408、及び複数の貫通孔410が形成されている。貫通孔406は、ダイヤフラム202を挟んでチャンバ部102の液室306の開口部と対向する位置に形成されており、コマ210及び圧電素子206を内部に収容する。
【0035】
導入孔408は、ダイヤフラム202のフィルタ部418を介してチャンバ部102の導入口308とつながる孔であり、チャンバ部102へ液体を導入するための開口部となる。複数の貫通孔410は、ネジ106を通過させるための孔である。貫通孔410は、雌ネジ加工されていない孔であり、貫通孔410の直径は、ネジ106の直径よりも大きい。
【0036】
コマ210は、圧電素子206側の面がダイヤフラム202側の面よりも狭くなっているメサ形状の部材であり、一方の面でダイヤフラム202と接触し、他方の面で圧電素子206と接触するように、貫通孔406内に保持される。これにより、コマ210は、圧電素子206との接触面よりも広い面積で、ダイヤフラム202と接触して、圧電素子206が発生する圧力を、ダイヤフラム202に伝達する。
【0037】
圧電素子206は、例えばピエゾアクチュエータであり、貫通孔406に収容されることにより、コマ210及びダイヤフラム202を挟んでチャンバ部102の液室306の開口部と対向して保持される。そして、圧電素子206は外部から受け取る電圧に応じて圧力を発生させ、コマ210及びダイヤフラム202を介して液室306に圧力を加える。これにより、圧電素子206は、液室306の液体をノズル302へ押しだし、ノズル302から液滴を吐出させる。
【0038】
固定部材208は、貫通孔406を塞ぐ蓋状部材(ピエゾ固定板)であり、貫通孔406におけるダイヤフラム202と反対側の開口部から圧電素子206を押さえることにより、貫通孔406内にダイヤフラム202及びコマ210を固定する。複数のネジ106は、例えば十字穴付きのなべ型の小ネジであり、ダイヤフラム押さえ部材204からチャンバ部102に向かって、ダイヤフラム押さえ部材204の貫通孔410、及びダイヤフラム202の貫通孔414を介してチャンバ部102のネジ孔420に挿入され、締結される。これにより、チャンバ部102は、駆動部104に対して、取り外し可能に取り付けられる。
【0039】
ここで、ノズルヘッド12の製造方法について更に詳しく説明する。本例におけるノズルヘッド12の製造方法は、ダイヤフラム以外の部材を準備する部材準備工程、ダイヤフラムを形成するダイヤフラム形成工程、及びこれらを組み立てる組立工程とを備える。部材準備工程は、各部材毎に対応して、圧電素子準備工程やチャンバ部準備工程等を有する。
【0040】
ダイヤフラム形成工程は、例えば、所定の形状に外形が加工された板状部材をエッチング加工することにより、ダイヤフラム202を形成する。また、このエッチング加工は、例えば、フォトリソグラフィ技術によりパターニングされたエッチングマスクを用いて、フィルタ部418及び複数の貫通孔414を同時に形成する。このようにすれば、低いコストで、フィルタ部418を適切に形成できる。尚、このエッチング加工は、例えばウェットエッチング法により行うことができる。ウェットエッチング法を用いることにより、より低いコストでフィルタ部を形成できる。
【0041】
更には、このようにした場合、例えば既製品のフィルタを別途取り付けてフィルタ部を形成する場合等と比べ、フィルタ部418の形状等の設計の自由度を高めることができる。これにより、例えば想定される異物の大きさに合わせて、網目の開口部の開口面積や形状を自由に設計できる。
【0042】
また、フィルタ部418の網目の形状は、図2に示した格子状に限らず、他の形状にしてもよい。例えば、フィルタ部418の網目の形状は、多数の丸孔を設けた網目状であってもよい。また、フィルタ部418の網目は、例えば六角形の開口部を有する形状とし、開口径を揃えつつ、開口比を上げることもできる。
【0043】
ここで、ダイヤフラム202は、例えばステンレス等の金属で形成されることが好ましい。また、ダイヤフラム202の厚さは、例えば10〜50μm、望ましくは10〜30μm、更に望ましくは15〜25μmとすることが好ましい。このようにすれば、圧力を伝えるというダイヤフラム押さえ部材204に必要な機能と、エッチング加工による加工性とを適切に両立させることができる。
【0044】
尚、このようなダイヤフラム202は、例えば、強い圧力を発生する圧電素子206と共に用いることができる。そのため、例えば、ノズルヘッド12と被吐出部材50との間の距離を10mm以上とするノズルヘッド12において好適に用いることができる。また、例えば接着剤や絶縁樹脂等の、インクと比べて比重や粘度の大きな液体を吐出する場合に、好適に用いることができる。
【0045】
組立工程は、駆動部104の各部材を組み立てることによりダイヤフラム202を挟んでチャンバ部102と対向する位置に圧電素子206を設置し、更に、チャンバ部102の導入口308の少なくとも一部をダイヤフラム202が覆う状態で駆動部104をチャンバ部102にネジ止めする。これにより、ダイヤフラム202がチャンバ部102に固定され、ノズルヘッド12の製造が終了する。
【0046】
尚、ノズルヘッド12が、チャンバ部102、駆動部104、及び複数のネジ106を組み合わせた構成を、複数組備える場合、組立工程は、更に、これらの複数組の構成のそれぞれを並べて固定する。これにより、複数のノズル302を有するノズルヘッド12が製造される。この場合、ノズル302間の間隔は、例えば0.5〜3mm、望ましくは1〜2mmとすることが好ましい。このようにすれば、本例のようなダイヤフラム202を好適に用いることができる。
【0047】
以上のように、本例によれば、エッチング加工により、フィルタ部418を適切かつ低コストで形成できる。そのため、ノズルヘッド12内に適切にフィルタ部418を設けることができる。
【0048】
図3は、ノズルヘッド12の構成の第2の例を示す。尚、以下に説明する点、及び図から違いがわかる特徴等を除き、図3において、図2と同じ符号を付した構成は、図2における構成と同一又は同様のものである。
【0049】
本例において、チャンバ部102には、複数のノズル302が形成されている。また、複数のノズル302は、例えば0.5〜3mm、望ましくは1〜2mmの間隔で並べて形成されており、チャンバ部102の下面から液滴を吐出する。また、複数のノズル302に対応して複数の液室306が形成されている。液体の導入口308は、複数のノズル302に対して共通に、チャンバ部102の長手方向へ延伸するように形成されており、それぞれのノズル302に対応する液室306に液体を供給する。
【0050】
ダイヤフラム202には、チャンバ部102の導入口308の一部をそれぞれ覆う複数のフィルタ部418が形成されている。また、ダイヤフラム202は、複数の液室306のそれぞれとそれぞれ対向する複数の領域416において、圧電素子206の圧力を受ける。
【0051】
ダイヤフラム押さえ部材204は、複数のノズル302に対応して、貫通孔406に、複数のコマ210及び複数の圧電素子206を収容する。また、ダイヤフラム202に形成される複数のフィルタ部418に対応して、ダイヤフラム押さえ部材204には、複数のフィルタ部418に対応して、複数の導入孔408が形成されている。
【0052】
また、本例において、駆動部104は、複数のバックピース212を更に有する。バックピース212は、圧電素子206を安定に保持するための治具であり、各圧電素子206と固定部材208との間に挟まれる。
【0053】
本例のような構成においても、図2を用いて説明した場合と同様に、エッチング加工により、フィルタ部418を適切かつ低コストで形成できる。そのため、ノズルヘッド12内に適切にフィルタ部418を設けることができる。
【0054】
また、本例のチャンバ102において、駆動部104から遠い側の面は、ノズルヘッド12の使用時に下方を向く下面となる。そして、チャンバ部102の下面には、ノズル302から吐出される液体が付着しやすい。そのため、ネジ孔420が止め孔ではなく、貫通孔であると、下面における孔の箇所に液体が強固に付着してしまうおそれがある。この場合、下面の汚れを除去しにくくなるため、ノズルヘッド12を清浄に保つことが困難になるおそれもある。これに対し、ネジ孔420を止め孔にした場合、チャンバ部102の下面を平滑面にできるため、液体が付着しにくくなる。また、平滑面であれば、拭き取り等が容易になる。そのため、本例によれば、ノズルヘッド12のメンテナンス性をより適切に高めることができる。
【0055】
また、本例においては、液体吐出装置10(図1参照)にノズルヘッド12が取り付けられた状態において、ネジ106の頭は、上方を向く。この場合、作業者はノズルヘッド12の上側からノズルヘッド12にアクセスしてネジ106を回せばよいため、作業がしやすくなる。そのため、この点においても、本例によれば、ノズルヘッド12のメンテナンス性を高めることができる。
【0056】
以上、本発明を実施形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施形態に記載の範囲には限定されない。上記実施形態に、多様な変更又は改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。その様な変更又は改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【産業上の利用可能性】
【0057】
本発明は、例えばノズルヘッドに好適に利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】本発明の一実施形態に係る液体吐出装置10の構成の一例を示す図である。
【図2】ノズルヘッド12の詳細な構成の第1の例を示す分解斜視図である。
【図3】ノズルヘッド12の構成の第2の例を示す図である。
【符号の説明】
【0059】
10・・・液体吐出装置、12・・・ノズルヘッド、14・・・テーブル、16・・・制御部、50・・・被吐出部材、102・・・チャンバ部、104・・・駆動部、106・・・ネジ、202・・・ダイヤフラム、204・・・ダイヤフラム押さえ部材、206・・・圧電素子、208・・・固定部材、210・・・コマ、212・・・バックピース、302・・・ノズル、304・・・流路、306・・・液室、308・・・導入口、406・・・貫通孔、408・・・導入孔、410・・・貫通孔、412・・・貫通孔、414・・・貫通孔、416・・・領域、418・・・フィルタ部、420・・・ネジ孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ノズルから液滴を吐出するノズルヘッドの製造方法であって、
圧電素子を準備する圧電素子準備工程と、
液滴を吐出する前記ノズルと、前記ノズルへ供給する液体を外部から導入する導入口とを有するチャンバ部を準備するチャンバ部準備工程と、
前記圧電素子が発生する圧力を伝えるダイヤフラムであって、前記チャンバ部の前記導入口の少なくとも一部を覆う位置に形成されるフィルタ部とを有するダイヤフラムを形成するダイヤフラム形成工程と、
前記ダイヤフラムを挟んで前記チャンバ部と対向する位置に前記圧電素子を設置し、かつ、前記チャンバ部の前記導入口の少なくとも一部を前記ダイヤフラムの前記フィルタが覆う状態で、前記ダイヤフラムを前記チャンバ部に固定する組立工程と
を備え、
前記ダイヤフラム形成工程は、エッチング加工により前記フィルタ部を形成することを特徴とするノズルヘッドの製造方法。
【請求項2】
前記ダイヤフラムは、ネジを通す貫通孔を更に有し、当該貫通孔を通るネジによって前記チャンバ部に固定され、
前記ダイヤフラム形成工程は、エッチング加工により、前記貫通孔と前記フィルタ部とを同時に形成することを特徴とする請求項1に記載のノズルヘッドの製造方法。
【請求項3】
前記ダイヤフラムは、金属で形成されており、前記ダイヤフラムの厚さは、10〜50μmであることを特徴とする請求項1又は2に記載のノズルヘッドの製造方法。
【請求項4】
液滴を吐出する液体吐出装置であって、
請求項1から3のいずれかに記載のノズルヘッドの製造方法で製造されたノズルヘッドと、
前記ノズルヘッドを制御する制御部と
を備えることを特徴とする液体吐出装置。
【請求項5】
ノズルから液滴を吐出するノズルヘッドであって、
圧電素子と、
液滴を吐出する前記ノズルと、前記ノズルへ供給する液体を外部から導入する導入口とを有するチャンバ部と、
前記圧電素子が発生する圧力を伝えるダイヤフラムであって、前記チャンバ部の前記導入口の少なくとも一部を覆う位置に形成されるフィルタ部とを有するダイヤフラムと
を備え、
前記ダイヤフラムは、金属で形成されており、前記ダイヤフラムの厚さは、10〜50μmであることを特徴とするノズルヘッド。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−168583(P2008−168583A)
【公開日】平成20年7月24日(2008.7.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−5985(P2007−5985)
【出願日】平成19年1月15日(2007.1.15)
【出願人】(000137823)株式会社ミマキエンジニアリング (437)
【Fターム(参考)】