説明

ノズル封止組成物及び方法

硬化性組成物を適用する方法。この方法は、約10〜約60重量%の1つ以上のエポキシ樹脂、約20〜約80重量%の、ポリエステル樹脂、エチルビニルアセテート樹脂、熱可塑性樹脂、及びアクリレート樹脂から選択される1つ以上の樹脂、最大約30重量%の1つ以上のヒドロキシル含有化合物、並びに光開始剤、熱反応開始剤、及びこれらの組み合わせから選択される、反応開始剤、を含む、硬化性組成物を提供することを含む。この方法は更に、硬化性組成物の硬化を開始することを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は一般的に、保持される物質の漏出又は汚染を防ぐための、開口部又はノズルを封止するために好適な接着剤に関する。好ましい実施形態では、接着剤は、開口部の目詰まり、又は汚れを防ぐために、きれいに取り除かれる。
【背景技術】
【0002】
開口部を封止し、固体、液体、又は気体の物質の漏出を制御するか、又は汚染物質が物質中に入り込むことを防ぐために、広範なアプローチが使用されてきた。例えば、ノズルを封止するために、物理的なキャップが使用され得る。キャップは典型的には、整合性材料、例えば、軟質フォーム又はエラストマー、及びノズルに対して整合性材料を押し付け、封止を生じる機械的構造を含む。感圧性接着剤(PSA)もまた、この用途において広く使用されてきた。熱可塑性材料がまた、封止材料の軟化点を超える温度で適用され、次に室温まで冷却されて開口部に隣接する領域に結合部を形成し、封止を形成してもよい。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、開口部を封止するためのこれらの方法は、1つ以上の不利点を有する。例えば、物理的キャップは振動、温度変化、及び湿度の変動の影響を受けやすく、これら全てが、ノズルとキャップとの間の封止を弱化させる場合がある。
【0004】
別の例として、開口部の封止を提供するために、適切な水準の接着性を有するPSAを設計することは、困難であることが証明された。例えば、柔軟かつ高度に粘着性のPSAが使用された場合、PSAは、開口部を十分に封止し得るが、柔軟かつ高度に粘着性のPSAは残留物を残す場合があり、これは、PSAが取り除かれたときに開口部を目詰まりさせる場合がある。対照的に、より硬度の高いPSAが使用される場合、開口部に残留物が殆ど、又は全く残されないことがあるが、PSAと開口部との間の十分な封止が形成されないことがある。加えて、封止が最初に十分であっても、PSAの硬度は、回復力がPSAを開口部又は開口部に隣接する区域との接触から引くにつれ、時間をかけて封止を弱化させる場合がある。
【0005】
熱可塑性物質の使用は、追加的な加工工程及び比較的高い加工温度を必要とすることがあり、これは、いくつかの適用において、特に開口部と隣接する区域がポリマー材料である場合において、望ましくない場合がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一態様では、本開示は、硬化性組成物を適用する方法を目的とする。本方法は、約10〜約60重量%の1つ以上のエポキシ樹脂、約20〜約80重量%の、ポリエステル樹脂、エチルビニルアセテート樹脂、熱可塑性樹脂、及びアクリレート樹脂から選択される1つ以上の樹脂、最大約30重量%の1つ以上のヒドロキシル含有化合物、並びに光開始剤、熱反応開始剤、及びこれらの組み合わせから選択される反応開始剤、を含む、硬化性組成物を提供する工程を含む。本方法は更に、硬化性組成物の硬化を開始する工程含む。本方法は次に、任意により、最大120分の第1滞留時間を提供し、ここで硬化性組成物は少なくとも部分的に硬化され、粘着性のままである。硬化性組成物が、開口部を有する少なくとも1つのノズルに適用され、最大7日間の第2滞留時間を提供され、ここで硬化性組成物は実質的に粘着性を有さない状態になる。
【0007】
いくつかの実施形態では、本方法は、化学線を使用した硬化を開始する工程を含み、いくつかの実施形態では、化学線は、約200nm〜約700nmの波長を含む。
【0008】
他の実施形態では、本方法は、フィルム裏材に硬化性組成物を提供する工程を含み、いくつかの好ましい実施形態では、フィルム裏材を通し、硬化性組成物に適用される放射線エネルギーによって硬化を開始する工程を含む。
【0009】
更に他の実施形態では、第1滞留時間は5分以下であり、又は更に1分以下である。いくつかの実施形態では、第2滞留時間は24時間以下である。
【0010】
更なる実施形態では、本方法は、硬化性組成物を、7mm以下の面積を有する開口部を有する少なくとも1つのノズルに適用する工程を含む。いくつかの好ましい実施形態では、ノズルは、インクジェットカートリッジの構成要素である。
【0011】
別の態様では、本開示は、硬化性組成物を提供する工程を含む、硬化性組成物の適用方法を目的とする。硬化性組成物は、約10〜約60重量%の1つ以上のエポキシ樹脂、約20〜約80重量%の、ポリエステル樹脂、エチルビニルアセテート樹脂、熱可塑性樹脂、及びアクリレート樹脂から選択される1つ以上の樹脂、最大約30重量%の、1つ以上のヒドロキシル含有化合物、並びに光開始剤、熱反応開始剤、及びこれらの組み合わせから選択される反応開始剤、を含み得る。本方法はまた、硬化性組成物を、開口部を有する少なくとも1つのノズルに適用する工程と、硬化性組成物の硬化を開始する工程とを含む。本方法は更に、最大7日間の滞留時間を提供する工程を含み、ここで硬化性組成物は実質的に粘着性を有さない状態になる。
【0012】
いくつかの実施形態では、本方法は、化学線を使用した硬化を開始する工程を含み、いくつかの実施形態では、化学線は、約200nm〜約700nmの波長を含む。
【0013】
他の実施形態では、本方法は、フィルム裏材に硬化性組成物を提供する工程を含み、いくつかの好ましい実施形態では、フィルム裏材を通し、硬化性組成物に適用される放射線エネルギーによって硬化を開始する工程を含む。
【0014】
更なる実施形態では、本方法は、硬化性組成物を、7mm以下の面積を有する開口部を有する少なくとも1つのノズルに適用する工程を含む。いくつかの好ましい実施形態では、ノズルは、インクジェットカートリッジの構成要素である。
【0015】
更に別の態様では、本開示は、インクジェットカートリッジを含む物品を目的とする。物品は更に硬化性組成物の層を含む。硬化性組成物の層は、第1表面及び第1表面と反対側の第2表面を含む。第1表面は、インクジェットカートリッジの表面に適用される。硬化性組成物は、約10〜約60重量%の1つ以上のエポキシ樹脂、約20〜約80重量%の、ポリエステル樹脂、エチルビニルアセテート樹脂、熱可塑性樹脂、及びアクリレート樹脂から選択される1つ以上の樹脂、並びに最大約30重量%の1つ以上のヒドロキシル含有化合物、を含む。
【0016】
いくつかの実施形態では、物品は更に、硬化性組成物の層の内部に埋め込まれた繊維強化剤を含む。他の実施形態では、物品は更に、硬化性組成物の層の第2表面に適用される裏材を含む。
【0017】
更に別の実施形態では、物品は更に、硬化性組成物に取り付けられる非粘着性タブを含み、いくつかの実施形態では、非粘着性タブは、硬化性組成物と一体である。
【0018】
いくつかの好ましい実施形態では、硬化性組成物は、約15〜約40重量%の1つ以上のエポキシ樹脂、約50〜80重量%の、ポリエステル樹脂、エチルビニルアセテート樹脂ポ、熱可塑性樹脂、及びアクリレート樹脂から選択される1つ以上の樹脂、並びに最大約10重量%の1つ以上のヒドロキシル含有化合物、を含む。
【0019】
他の好ましい実施形態では、硬化性組成物は、約20〜約35重量%の1つ以上のエポキシ樹脂、約60〜75重量%の、ポリエステル樹脂、エチルビニルアセテート樹脂、熱可塑性樹脂、及びアクリレート樹脂から選択される1つ以上の樹脂、並びに最大約10重量%の1つ以上のヒドロキシル含有化合物、を含む。
【0020】
開口部の封止が一層困難となりつつある1つの用途は、インクジェットカートリッジノズルの封止である。印刷速度及び解像度が増すに従って、個別のノズルの寸法は減少し、その一方で、より広い印刷幅を可能にするために、カートリッジのノズルの数は増加している。封止接着剤は、小さな機構を有効に封止し、大きな合計面積を被覆する。更に、封止接着剤は、ノズルから容易に取り除かれ、ノズル又はインクジェット印刷カートリッジの他の部分に、後にインクを汚染するか、ノズル開口部の汚れを生じ得る接着剤の残留物を実質的に残さないべきである。また、封止接着剤は、カートリッジに収容される液体インクなどの広範な物質への耐化学性を必要とすることがある、すなわち、好ましくは、カートリッジに収容されるインクと、封止物質との間に反応が存在しない。
【0021】
本発明の1つ以上の実施形態の詳細を、添付図及び以下の説明で明らかにする。本発明の他の特長、目的、及び利点は、説明及び図面、並びに特許請求の範囲から明らかとなるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】硬化性組成物及びインクジェットカートリッジを含む、テープを例示する概略図。
【図2】硬化性組成物をインクジェットカートリッジに適用する代表的な方法のフローチャート。
【図3】硬化性組成物を含むテープ、及び図1に示されるインクジェットカートリッジを例示する、一部を切り取った図。
【図4】硬化性組成物を含むテープを、インクジェットカートリッジに適用する、別の代表的な方法のフローチャート。
【図5】硬化性組成物を含むテープのロールを例示する、断面図。
【図6】繊維強化剤を含む硬化性組成物を例示する、概略図。
【図7】インクジェットカートリッジに適用される、硬化性組成物を含むテープを例示する、概略図。
【発明を実施するための形態】
【0023】
一態様では、本開示は、ノズル又は開口部に硬化性組成物を適用する方法を目的とする。硬化性組成物を開口部周囲の区域に適用する前、又は後に、硬化性組成物は、エネルギー源、例えば、熱エネルギー源、又は放射線源に曝露されてもよく、これは、硬化性組成物の硬化を開始して、部分的に硬化した組成物を形成する。部分的に硬化した組成物は、高度に粘着性であり、適合性がある場合があり、したがって、ノズル、開口部、又は隣接する区域と良好な封止を形成し得る。部分的に硬化した組成物が硬化し続けると、これは好ましくは粘着性が低減し、ノズル又は開口部への接着性を失う。一度組成物が完全に硬化した状態に達すると、好ましい実施形態では、組成物は、少なくとも実質的に粘着性を有さず、ノズル又は開口部から容易に除去可能となる。
【0024】
硬化性組成物は、それぞれが硬化性組成物の全体的特性に寄与する、1つ以上の構成成分を含有してもよい。
【0025】
I.エポキシ樹脂
硬化性組成物は、1つ以上のエポキシ樹脂を含んでもよい。有用なエポキシ樹脂は、開環反応によって重合可能な、少なくとも1つのオキシラン環を有する任意の有機化合物を含む。広くエポキシドと称されるこのような材料は、モノマー及びポリマーエポキシドの両方を含み、例えば、脂肪族、脂環式、複素環式、又は芳香族であってよく、更にこれらの組み合わせであってよい。好適なエポキシドは、好ましくは窒素原子を含まない。エポキシドは、液体若しくは固体、又はこれのブレンドであってよく、ブレンドは特に、粘着性の接着剤組成物の提供において有用である。これらの材料は一般的には、平均で、1分子当たり少なくとも2つのオキシラン環を有し、また「ポリエポキシド」と称されることもある。ポリマーエポキシドとしては、末端エポキシ基を有する線状ポリマー(例えば、ポリオキシアルキレングリコールのジグリシジルエーテル)、骨格オキシラン単位を有するポリマー(例えば、ポリブタジエンポリエポキシド)、及びペンダントエポキシ基を有するポリマー(例えば、グリシジルメタクリレートポリマー又はコポリマー)が挙げられるが、これらに限定されない。エポキシ樹脂の分子量は、約74〜約100,000又はそれ以上にわたって変化してもよい。様々なエポキシ樹脂の混合物がまた、硬化性組成物において使用され得る。
【0026】
好適なエポキシ樹脂としては、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロへキセンカルボキシレート、3,4−エポキシ−2−メチルシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシ−2−メチルシクロへキセンカルボキシレート、及びビス−(3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシルメチル)アジパートに代表されるエポキシシクロヘキセンカルボキシレートなどのシクロヘキセンオキシド基を含有するエポキシ樹脂が典型であるが挙げられるが、これらに限定されない。この特性の有用なエポキシドの、より詳細な一覧に関しては、米国特許第3,117,099号を参照することができる。
【0027】
他の特に好適なエポキシ樹脂としては、グリシジルエーテルモノマーが挙げられ、以下に示される構造を有する。
【0028】
【化1】

【0029】
式中R’は、脂肪族、例えばアルキル基、芳香族、例えばアリル基、又はこれらの組み合わせであり、nは約1〜約6の整数である。上記の式に示される構造を有するエポキシ樹脂の例としては、多価フェノールと、過剰なクロロヒドリン、例えば、エピクロロヒドリンを反応させることによって得られる多価フェノールのグリシジルエーテル、例えば、2,2−ビス−(4−ヒドロキシフェノール)プロパン(ビスフェノールA)のジグリシジルエーテルが挙げられるが、これらに限定されない。この種類のエポキシドの更なる例は、米国特許第3,018,262号に記載される。好ましいエポキシ樹脂としては、ビスフェノールAのジグリシジルエーテル、及び水素添加ビスフェノールA−エピクロロヒドリン系エポキシ樹脂が挙げられる。
【0030】
多くの市販のエポキシ樹脂がまた使用され得る。容易に利用可能なエポキシドとしては、オクタデシレンオキシド、エピクロロヒドリン、スチレンオキシド、ビニルシクロへキセンオキシド、グリシドール、グリシジルメタクリレート、ビスフェノールAのジグリシジルエーテル(例えば、Hexion Performance Products,Houston,TXから、EPON 828、EPON 1004、及びEPON 1001Fとして、並びに、Dow Chemical Co.,Midland,MIから、DER−332及びDER−334として入手可能なもの)、ビスフェノールFのジグリシジルエーテル(例えば、Huntsman Advanced Materials Americas Inc.,Los Angeles,CAから、ARALDITE GY281として、及びHexion Performance ProductsからEPON862として入手可能なもの)、ビニルシクロヘキセンジオキシド、ジペンテンジオキシド(例えば、Union Carbide Corp.から「ERL−4269」として入手可能なもの)、エポキシ化ポリブタジエン(例えば、FMC Corp.,Chicago,ILからOXIRON 2001として入手可能なもの)、エポキシシラン、例えば、Union Carbideから市販されている、β−3,4エポキシシクロヘキシルエチルトリメトキシシラン、及びγグリシドキシプロピルトリメトキシシラン、難燃剤(例えば、Dow Chemical Co.から入手可能な、DER−542臭素化ビスフェノール型エポキシ樹脂として入手可能なもの)、1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテル(例えば、Ciba Specialty Chemicalsから、ARALDITE RD−2として入手可能なもの)、水素化ビスフェノールA−エピクロロヒドリン系エポキシ樹脂(例えば、Resolution Performance Productsから、EPONEX 1510として入手可能なもの)、並びに、フェノールホルムアルデヒドノボラックのポリグリシジルエーテル(例えば、Dow Chemical Co.からDEN−431、及びDEN−438として入手可能なもの)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0031】
硬化性組成物は、好ましくは、約100〜1000のエポキシ当量を有する、1つ以上のエポキシ樹脂を含有する。エポキシ当量は、1グラム当量のエポキシを含有する、樹脂のグラムでの重量として定義される(Lee and Neville’s Handbook of Epoxy Resins,Chapter 4,Characterization of Uncured Epoxy Resins,pages 4〜14 and 4〜21(McGraw−Hill,Inc.,1967)を参照)。より好ましくは、硬化性組成物は、約175〜約550のエポキシ当量を有する、1つ以上のエポキシ樹脂を含有する。更により好ましくは、硬化性組成物は、2つ以上のエポキシ樹脂を含有し、少なくとも1つのエポキシ樹脂が約175〜約200のエポキシ当量を有し、少なくとも1つのエポキシ樹脂が、約500〜約550のエポキシ当量を有する。
【0032】
II.熱可塑性ポリエステル
硬化性組成物はまた、1つ以上の熱可塑性ポリエステルを含んでもよい。好適なポリエステル組成物としては、約10℃以下、及び好ましくは約5℃以下のガラス転位温度(T)を有する、非晶質及び分枝状ポリエステルが挙げられるが、これらに限定されない。非晶質及び分枝状ポリエステル構成成分は、非晶質及び分枝状ポリエステルが、8mg試料が−60℃〜200℃で毎分20℃の割合で示差走査熱量測定(DSC)走査に供された際に、測定可能な結晶溶融挙動を示さないという点において、結晶質ポリエステルとは差異化され得る。DSCの測定は、Perkin Elmer,Norwalk,CTからの、DSC7装置示差走査熱量計などの、市販のDSC装置を使用して便利に行うことができる。
【0033】
溶融挙動を示さないが、非晶質及び分枝状ポリエステルは、DSC走査に供された際に、ガラス転位温度(T)を示す。非晶質及び分枝状ポリエステルのTは、好ましくは約10℃未満、より好ましくは約−20℃〜約5℃、及び更により好ましくは、約−10℃〜約5℃の範囲である。Tは、典型的には、DSC走査からのガラス転位温度の中点として測定される。
【0034】
硬化性組成物に使用される非晶質ポリエステル構成成分としては、ヒドロキシル及びカルボキシル末端ポリエステルが挙げられるが、これらに限定されない。非晶質及び分枝状ポリエステルの軟化点は、好ましくは約50℃〜約150℃、より好ましくは約70℃〜約140℃、更により好ましくは約60℃〜約110℃である。好ましい非晶質及び分枝状ポリエステルはまた、ポリスチレン標品で較正された、クロロフォルムのGPC(ゲル透過クロマトグラフィー)で決定した際に、約5,000g/モル〜約200,000g/モル、及びより好ましくは約6,500g/モル〜約50,000g/モルの数平均分子量を有する。
【0035】
非晶質及び分枝状ポリエステルは、ポリエステルの重合に好適な、周知の重合技術によって調製され得る。逐次メカニズムに従う重合、例えば、重縮合が、1つの好ましいアプローチである。非晶質及び分枝状ポリエステルは、例えば、ジオール、ジカルボン酸、又はジエステル等価物を反応させ、分枝した、3つ以上の官能基を有するポリオール、及び/又は3つ以上の官能基を有するポリカルボン酸を得ることによって調製され得る。3つ以上の官能基を有する、これらのポリオール及び/又はポリカルボン酸の存在下における縮合反応は、実質的なゲル形成が防止され、ポリエステルの望ましい分枝が得られるような、条件において、及び化学量論的比率を使用して、行われる。
【0036】
一実施形態では、ジカルボン酸は、脂肪族、脂環式、又は芳香族であってよい。好適な脂肪族ジカルボン酸の例としては、飽和脂肪族ジカルボン酸、例えば、コハク酸及びアジピン酸、並びに不飽和脂肪族ポリカルボン酸、例えばマレイン酸が挙げられるがこれらに限定されない。芳香族ジカルボン酸の例としては、フタル、イソフタル、及びテレフタル酸が挙げられるがこれらに限定されない。
【0037】
多官能性カルボン酸の例としては、芳香族多官能性カルボン酸、例えば、芳香族トリカルボン酸、又はテトラカルボン酸、例えば、トリメリット酸、トリメシン酸、ピロメリット酸、又はベンゾフェノンテトラカルボン酸、及び三量体化脂肪酸、又は二量体化及び三量体化脂肪酸の混合物(例えば、Unichema International,New Castle,DEからのPRIPOLとして市販されるものなど)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0038】
好適なジオールとしては、脂肪族及び脂環式ジオールが挙げられるがこれらに限定されない。好適な脂肪族ジオールの例としては、α、ω−アルキレンジオール、例えば、エチレングリコール、プロパン−1,3−ジオール、及びブタン−1,4−ジオールが挙げられるがこれらに限定されない。好適な多官能性アルコールの例としては、1,1,1−トリメチロールエタン、1,1,1−トリメチロールプロパン、グリセロール、及びペンタエリスリトールが挙げられるがこれらに限定されない。本発明での使用に好適な長鎖ジオールとしては、アルキレン基が、好ましくは約2〜約9個の炭素原子(より好ましくは約2〜4炭素原子)を含有する、ポリ(オキシアルキレン)グリコールが挙げられるが、これらに限定されない。
【0039】
例えば、上記のジカルボン酸(又はこれらのジエステル等価物)及びジオール、ポリカルボン酸及び/又はポリオールを反応させることで、非晶質及び/又は結晶質ポリエステルが生じる場合がある。非晶質ポリエステル化合物は、化合物を上記のDSC走査に供することによって容易に特定され得る。例えば、高度の立体不規則性を有する遊離体(結晶構造に効果的に詰め込むことができず、生じるポリマーに高度のエントロピーを付与する)を反応させることによって、結晶質ではなく非晶質ポリエステル化合物が得られる場合がある。非晶質ポリマーの調製の詳細は、例えば、Encyclopedia of Polymer Science and Engineering,New York,NY 1988,vol.12 pp.1〜312、及びここに引用される参考文献、並びにPolymeric Materials Encyclopedia,Boca Raton 1996,vol.8,pp.5887〜5909、及びここに引用される参考文献に見出され得る。
【0040】
III.エチレンビニルアセテートコポリマー
硬化性組成物はまた、1つ以上の熱可塑性エチレンビニルアセテートコポリマー樹脂を含んでもよい。好適な熱可塑性エチレンビニルアセテートコポリマー樹脂としては、少なくとも約28重量パーセントのビニルアセテートを含有する、熱可塑性エチレンビニルアセテートコポリマー樹脂が挙げられるが、これらに限定されない。一実施形態では、エチレンビニルアセテートコポリマーは、コポリマーの、少なくとも約28重量%のビニルアセテート、好ましくは少なくとも約40重量%のビニルアセテート、より好ましくは少なくとも50重量%のビニルアセテート、及び更により好ましくは少なくとも60重量%のビニルアセテートを含有する熱可塑性コポリマーを含む。更なる実施形態では、エチレンビニルアセテートコポリマーは、コポリマー中に、約28〜約99重量%のビニルアセテート、好ましくは約40〜90重量%のビニルアセテート、より好ましくは約50〜約90重量%のビニルアセテート、及び更により好ましくは約60〜約80重量%のビニルアセテートを含有する。
【0041】
本発明において使用され得る、市販されるエチレンビニルアセテートコポリマーの例としては、ELVAX 210、250、260、及び265(E.I.Du Pont de Nemours and Co.,Wilmington,Del.「DuPont」)、並びにAT Plastics 2820M EVA copolymer(AT Plastics,Inc.,Brampton,Ontario,Canada)(28重量%ビニルアセテート)、ELVAX 40W(DuPont),LEVAPREN 400(Bayer Corp.,Pittsburgh,Pa.)、及びAT Plastics 4030M(AT Plastics,Inc.,Brampton,Ontario,Canada)(40重量%ビニルアセテート)、LEVAPREN 600 HV(Bayer Corp.)(60重量%ビニルアセテート)、LEVAPREN KA 8479(Bayer Corp.)(80重量%ビニルアセテート)、として入手可能なものが挙げられるがこれらに限定されない。
【0042】
IV.(メタ)アクリレート
硬化性組成物はまた、1つ以上の熱可塑性(メタ)アクリレート樹脂を含有してもよい。(メタ)アクリレート樹脂は、バルク、溶液、懸濁液、エマルション、及び光重合反応を含む、様々な重合方法によって作製してもよい。(メタ)アクリレート樹脂は、好ましくは互いに、及び他の接着性構成成分と相溶性を有する。(メタ)アクリレート樹脂は、ポリ(メタ)アクリレート熱可塑性樹脂である。アルケンモノマーと重合させることによって、(メタ)アクリレート樹脂は、1つ以上のオレフィン繰り返し単位、例えば、エチレン、プロピレン、又はブチレンを含有してもよい。このようなオレフィン単位の、(メタ)アクリレート繰り返し単位に対するモル比は、典型的には約2未満、好ましくは約0.5〜約1.5の範囲である。
【0043】
硬化性組成物で使用される熱可塑性(メタ)アクリレート樹脂を作製するために好適な(メタ)アクリルモノマーとしては、以下の分類、
分類A−1〜約14個(好ましくは約4〜約14個)の炭素原子を含有するアルキルアルコール(好ましくは、非第三級アルコール)のアクリル酸エステル類(メチルアクリレート、エチルアクリレート、n−ブチルアクリレート、t−ブチルアクリレート、ヘキシルアクリレート、イソオクチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、イソノニルアクリレート、イソボルニルアクリレート、フェノキシエチルアクリレート、デシルアクリレート、及びドデシルアクリレートを含む)、
分類B−約1〜約14個(好ましくは約4〜約14個)の炭素原子を含有するアルキルアルコール(好ましくは、非第三級アルコール)のメタクリル酸エステル類(例えば、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、n−プロピルメタクリレート、n−ブチルメタクリレート、イソブチルメタクリレート、及びt−ブチルメタクリレートを含む)、
分類C−ポリヒドロキシアルキルアルコール、例えば、1,2−エタンジオール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、様々なブチルジオール類のいずれか、様々なヘキサンジオール類のいずれか、及びグリセロールの、(メタ)アクリル酸モノエステル類(生じたエステルは、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートと呼ばれる)、からのモノマーが挙げられるがこれらに限定されない。
【0044】
二官能性モノマーがまた、硬化性組成物での使用のために好適な(メタ)アクリレートを調製するために使用されてもよい。典型的には、ニ官能性モノマーは、1モノマー当たり、少なくとも1つのフリーラジカル、及び1つのカチオン反応性官能基を有する。このようなモノマーの例としては、グリシジル(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピルメタクリレート、及びヒドロキシブチルアクリレートが挙げられるがこれらに限定されない。
【0045】
市販の(メタ)アクリレート樹脂の例としては、共にZeon Chemicals Company,Inc.,Louisville,KYから入手可能であり、HYTEMP及びNIPOLとして販売される、硬化性アクリレート樹脂が挙げられるが、これらに限定されない。HYTEMP及びNIPOLシリーズのポリアクリレートとしては、HYTEMP 4051、及び4051EP、並びにNIPOL AR−31などのポリアクリレートが挙げられる。本発明での使用のために好適な、他の市販のアクリレート樹脂としては、VAMACシリーズのエチレン/アクリルエラストマー、例えばVAMAC G及びVAMAC D(DuPont Packaging and Industrial Polymers,Wilmington,DE)と、LOTADER及びLOTARYL(Atofina Chemicals Inc.,Philadelphia,PA)シリーズのアクリルエラストマー及びエチレンアクリルエステルコポリマー、例えば、LOTADER 4700並びにLOTARYL 35BA320、35MA03、及び35MA05と、EUROPRENEシリーズのアクリルゴム、例えば、EUROPRENE AR53 EP、AR 156 LTR、EUROPRENE C、L、及びR(EniChem America Inc.,Houston,TX)が挙げられるがこれらに限定されない。
【0046】
V.熱可塑性樹脂
硬化性構成成分はまた、少なくとも1つの熱可塑性樹脂を含有してもよい。熱可塑性樹脂は、硬化の前又は後に、硬化性組成物の望ましい特性に応じた量で含まれてもよい。1つの代表的な熱可塑性物質としては、スチレン−エチレン−ブタジエン−スチレンブロックコポリマー、例えば、Kraton Polymers U.S.LLC,Houston,TXから、Kraton G1567として入手可能なブロックコポリマーが挙げられる。
【0047】
V.ヒドロキシル官能性、又はヒドロキシル含有物質
硬化性組成物はまた、少なくとも1つのヒドロキシル官能性、又はヒドロキシル含有物質を含有してもよい。本明細書において使用される際、用語「ヒドロキシル官能性物質」及び「ヒドロキシル含有物質」は、少なくとも1つの、及び好ましくは少なくとも2つのヒドロキシル基を有する化合物を表すために使用される。用語「ヒドロキシル官能性物質」及び「ヒドロキシル含有物質」は、互換可能に使用される。更に、用語「ヒドロキシル官能性物質」及び「ヒドロキシル含有物質」は、やはり1つ以上のヒドロキシル基を含有し得る、上記の非晶質及び分枝状ポリエステル樹脂は含まない。好ましくは、ヒドロキシル含有物質は、アミノ及びメルカプト部分などの基を含む、他の「活性水素」を実質的に含まない。更に、ヒドロキシル含有物質はまた、好ましくは、熱的に及び/又は光分解的に不安定であり得る基を実質的に含まず、それによって化合物は、化学線に曝露されたときに、揮発性成分を分解又は遊離させない。好ましくは、ヒドロキシル含有物質は、2個以上の一級又は二級の脂肪族ヒドロキシル基を含有する(すなわち、ヒドロキシル基が非芳香族炭素原子に直接結合している)。ヒドロキシル基は末端に位置し得るか、又はポリマー若しくはコポリマーのペンダントであり得る。ヒドロキシル含有物質の平均当量数は、好ましくは約31〜約2500、より好ましくは約80〜約1000、及び更により好ましくは約80〜350である。
【0048】
平均当量数は、以下の等式によって定義され得る。
【0049】
平均当量数=(m.w.)/f
式中、
f=官能基、すなわち、ヒドロキシル含有化合物の1分子当たりのヒドロキシル基の平均数であり、
m.w.=ヒドロキシル含有化合物の数平均分子量である。
【0050】
硬化性組成物での使用のために好適なヒドロキシル含有物質の例としては、モノマー及びポリマー化合物の両方が挙げられるがこれらに限定されない。好適なモノマーヒドロキシル含有物質としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,2−ジヒドロキシプロパン、1,3−ジヒドロキシプロパン、1,3−ジヒドロキシブタン、1,4−ジヒドロキシブタン、1,4−、1,5−、及び1,6−ジヒドロキシヘキサン、1,2−、1,3−、1,4−、1,6−、及び1,8−ジヒドロキシオクタン、1,10−ジヒドロキシデカン、1,1,1−トリメチロールエタン、1,1,1−トリメチロールプロパン、N,N−ビス(ヒドロキシエチル)ベンズアミド、ヒマシ油、ペンタエリスリトール、ポリカプロラクトン、キシリトール、アラビトール、ソルビトール、及びマニトールが挙げられるがこれらに限定されない。好適なポリマーヒドロキシル含有物質としては、ポリオキシアルキレンポリオール(例えば、ジオールについては約31〜約2500、トリオールについては約80〜約350の当量を有する、ポリオキシエチレン、及びポリオキシプロピレングリコール、並びにトリオール)、様々な分子量のポリテトラメチレンオキシドグリコール、並びにヒドロキシ末端ポリアセトンが挙げられるがこれらに限定されない。
【0051】
硬化性組成物での使用に好適な、市販のヒドロキシル含有物質としては、Penn Specialty Chemicals,Inc.,Memphis,TNからPOLYMEGとして入手可能なものが挙げられるが、これらに限定されない。好適な物質としては、ポリテトラメチレンオキシドグリコール、例えば、POLYMEG 650、1000、及び2000、加えて、E.I.duPont de Nemours and Company,Wilmington,DEからTERATHANEシリーズとして入手可能なもの、ポリテトラメチレンオキシドグリコール、例えば、TERATHANE 650、1000及び2000、BASF Corp.(Charlotte,NC)からのポリテトラメチレンオキシドグリコール、POLYTHF、ポリビニルアセタール樹脂のBUTVARシリーズ、例えば、BUTVAR B−72A、8−73、8−76、8−90、及び8−98、ポリカプロラクトンポリオールのTONEシリーズ(Union Carbide,Danbury,CTから入手可能)例えば、TONE0200、0210、0230、0240、及び0260、飽和ポリエステルポリオールのDESMOPHENシリーズ(Bayer Corporation,Pittsburg,PAから入手可能)、例えば、DESMOPHEN 631A 75、650A 65、651A 65、670A 80、680 70、800、1100、1150、1300 75、1300 75 BA、1652A、1700、1800、R 12A、R 221 75、A 160 SN、A 365、A 450 BA/X、550 U、1600 U、1900 U、1915 U、1920 U、NH 1220、NH 1420、及びNH 1521、Dow Chemical Company(Midland,MI)からのVORANOL 234−630(トリメチロールプロパン)、Dow Chemical CompanyからのVORANOL 230−238(グリセロールポリプロピレンオキシド付加物)、ポリオキシアルキル化ビスフェノールAのSYNFACシリーズ、例えば、SYNFAC 8009、773240、8024、8027、8026、及び8031、ポリオキシプロピレンポリオールのARCOLシリーズ(Arco Chemical Co.,Los Angeles,CAから)、例えば、ARCOL 425、1025、2025、42、112、168、及び240、並びに、ビスフェノール−A拡張ポリオール、例えば、Seppic(Paris,France)からのSIMULSOL BPHE、BPIE、BPJE、BPLE、BPNE、BPRE、BPHP、BPIP、BPRP、及びBPUPが挙げられる。他の有用な、市販のヒドロキシル含有物質としては、米国特許第5,436,063号に記載されるものが挙げられ、これは、参照により組み込まれる。
【0052】
特に有用な種類のヒドロキシル含有化合物は、ポリオキシアルキレンポリオールである。この種類のヒドロキシ含有化合物の例としては、ポリオキシエチレン、及びポリオキシプロピレングリコール、ポリオキシエチレン、及びポリオキシプロピレントリオール、ポリテトラメチレンオキシドグリコール、並びにポリオキシアルキレート化ビスフェノールAが挙げられるが、これらに限定されない。ポリオキシアルキレンポリオールは、硬化性組成物の硬化時間が増加し得るように、効果反応を遅延させるために特に好適である。本明細書において使用するとき、用語「硬化時間」は、硬化性組成物の硬化が開始されてから、硬化性組成物が実質的にその粘性の全てを失うまでの時間を意味するものとして使用される。硬化性組成物で使用するための、別の好ましい種類のヒドロキシ含有化合物は、ヒドロキシ含有フェノキシ樹脂である。特に好ましいフェノキシ樹脂は、ジグリシジルビスフェノール化合物の重合から誘導されるものである。典型的には、フェノキシ樹脂は、50,000未満、好ましくは約10,000〜約20,000の範囲の数平均分子量を有する。本発明での使用のために好適な、市販のフェノキシ樹脂としては、Phenoxy Associates(Rock Hill,SC)から、PAPHEN PKHP−200として入手可能であるものが挙げられるが、これに限定されない。フェノキシ樹脂の硬化性組成物への添加は、硬化性組成物の、動的重複剪断強度(dynamic overlap shear strength)を改善し、低温流を低減し、及び/又は耐衝撃性を改善し得ることが見出された。
【0053】
VI.硬化剤
用語「硬化剤」は、従来的にエポキシ樹脂の硬化剤として認識される物質のみではなく、また、エポキシ樹脂の硬化を触媒する物質、加えて硬化剤及び触媒の両方として作用し得る物質を含むものとして広範に使用される。エポキシ樹脂のための、好ましい硬化剤としては、室温硬化剤、熱活性化硬化剤、及び光分解硬化剤、並びにこれらの組み合わせが挙げられる。硬化剤は、好ましくは、ほぼ室温〜約150℃、より好ましくは、ほぼ室温〜約50℃の温度で反応する。光分解硬化剤、すなわち、光開始剤が最も好ましい。硬化性組成物での使用のための光開始剤は、好ましくは、光化学的手段、例えば、化学線(すなわち、紫外線、又は電磁スペクトルの可視部分の波長を有する放射線)によって活性化される。
【0054】
硬化性組成物は、有効量の1つ以上の光開始剤を含んでよく、この量は、光源、及び曝露の度合いによって変化する。好ましくは、硬化性組成物は、組成物の総重量に基づき、最大約3重量%の1つ以上の光開始剤を含む。より好ましくは、硬化性組成物は、光開始剤が存在する場合、組成物の総重量に基づき、約0.5重量パーセント〜約2重量パーセントの量の1つ以上の光開始剤を含む。更により好ましくは、硬化性組成物は、光開始剤が存在する場合、組成物の総重量に基づき、約1重量パーセント〜約2重量パーセントの量の1つ以上の光開始剤を含む。
【0055】
本発明の組成物での使用のために好適な光開始剤としては、カチオン性光開始剤が挙げられる。有用なカチオン性光開始剤としては、エネルギー活性化可能な塩が挙げられ、そのカチオンは、化学線によって活性化された場合に、反応開始、硬化、又は触媒特性を有し得る。エネルギー活性化可能な塩は、光化学的に反応性のカチオン部分、及び非求核性アニオンを有し得る。米国特許第4,250,311号(Crivello)、同第3,708,296号(Schlesinger)、同第4,069,055号(Crivello)号、同第4,216,288号(Crivello)、同第5,084,586号(Farooq)、同第5,124,417号(Farooq)、同第4,985,340号(Palazzotto et al.)、及び同第5,089,536号(Palazzotto)に記載されるものを含む、広範な種類のカチオン性光開始剤が使用され得る。
【0056】
好適なカチオンとしては、有機オニウムカチオン、有機金属錯体カチオンなどが挙げられる。有用な有機オニウムカチオンとしては、例えば、米国特許第4,250,311号(Crivello)、同第3,708,296号(Schlesinger)、同第4,069,055号(Crivello)、同第4,216,288号(Crivello)、同第5,084,586号(Farooq)、及び同第5,124,417号(Farooq)に記載されるものが挙げられる。このようなカチオンとしては、脂肪族及び芳香族基IVA〜VIIA(CASバージョン)が中心にあるオニウム塩のものが挙げられる。
【0057】
I、S、P及びCが中心にあるオニウム塩(例えば、スルホキソオニウム、ジアリルヨードニウム、トリアリルスルホニウム、カルボニウム、及びホスホニウム)が好ましい。I及びSが中心にあるオニウム塩(例えば、ジアリルヨードニウム、及びトリアリルスルホニウム)が最も好ましい。このような塩のアリル基は、約4つまでの、別個に選択される置換基を有する、非置換、又は置換芳香族部分であり得る。置換基は、好ましくは、約30個未満の炭素原子、及び、N、S、非過酸化O、P、As、Si、Sn、B、Ge、Te、Seなどから選択される、最大10個のヘテロ原子を有する。
【0058】
有用な有機金属錯体カチオンとしては、米国特許第4,985,340号(Palazzotto et al.)に記載されるものが挙げられる。
【0059】
上記のカチオンへの対イオンとして使用するための好適なアニオンXとしては、式DQによって表されるものが挙げられ、式中、DはIB〜VIIB及びVIII族からの金属、又は元素周期表(CAS表記法)のIIIA〜VA族からの金属若しくは半金属であり、Qはハロゲン原子、ヒドロキシル基、置換若しくは非置換フェニル基、又は置換若しくは非置換アルキル基であり、rは1〜6の整数である。好ましくは、Dは、銅、亜鉛、チタニウム、バナジウム、クロム、アルミニウム、スズ、ガリウム、ジルコニウム、インジウム、マンガン、鉄、コバルト、及びニッケルなどの金属、又はホウ素、アンチモン、ヒ素、及びリンなどの半金属から選択される。好ましくは、Qは、ハロゲン原子(より好ましくは、クロリン又はフッ素)である。このようなアニオンの典型例としては、B(フェニル)、B(フェニル)(アルキル)(ここでアルキルは、エチル、プロピル、ブチル、ヘキシルなどであり得る)、BF、PF、AsF、SbF、FeCl、SnCl、SbFOH、AlCl、AlF、GaCl、InF、TiF、ZrF、B(C、及びB(C(CFが挙げられる。好ましいアニオンとしては、BF、PF、AsF、SbF、SbFOH、B(C、B(C(CF、及びB(フェニル)が挙げられる。
【0060】
好適な光開始剤において有用な、他のアニオンXとしては、CHSO、CFSO、CSO、p−トルエンスルホネート、p−クロロベンゼンスルホネートなどが挙げられる。好ましいアニオンとしては、BF、PF、SbF、SbFOH、AsF、SbCl、CFSO、C(SOCF、及びN(SOCFが挙げられ、C(SOCF、及びN(SOCFが最も好ましい。
【0061】
当該技術分野において既知の、様々な増感剤が硬化性組成物に添加されて、光開始剤が活性化する光スペクトル、すなわち、これらがエポキシ樹脂の硬化を開始する光の周波数を拡張、及び/又はシフトさせることができる。既知の促進剤がまた、組成物中における適切な光開始剤と組み合わされた場合に有用であり得る。
【0062】
好適な、市販の反応開始剤としては、FX−512(Minnesota Mining and Manufacturing Company,St.Paul,MN)として入手可能な芳香族スルホニウム酢酸塩、CD−1012及びCD−1010(Sartomer,Exton,PA)、UVOX UVI−6974、芳香族スルホニウム錯体塩(Union Carbide Corp.,Danbury,CT)、並びにIRGACURE 261、カチオン性半金属錯体塩(Ciba Specialty Chemicals,Basel,Switzerland)が挙げられるがこれらに限定されない。
【0063】
有用な熱硬化剤としては、三塩化アルミニウム、三臭化アルミニウム、三フッ化ホウ素、三塩化ホウ素、五フッ化アンチモン、三フッ化チタンを含むルイス酸及びルイス酸錯体、並びに、例えば、CVC Specialty Chemicals,Inc.,Maple Shade,NJからOMICURE BC−120として入手可能な、BF−ジエチルアミン、及びBCl−アミン錯体を含む三フッ化ホウ素及び三塩化ホウ素錯体からなる群から選択されるものが挙げられる。
【0064】
追加的な有用な熱硬化剤としては、例えば、ジメチルプロピルアミン、ピリジン、ジメチルアミノピリジン、及びジメチルベンジルアミンを含む、脂肪族及び芳香族アミン、例えば、2−エチルイミダゾール、及び2−エチル−4−メチルイミダゾール(Air Products,Allentown,PAからIMICURE EMI−2,4として入手可能)を含むイミダゾール、例えば、アミノジヒドラジドを含むヒドラジド、例えば、テトラメチルグラニジンを含むグラニジン、並びにジシアンジアミドが挙げられる。
【0065】
硬化性組成物に使用される熱硬化剤の量は、硬化剤が重合エポキシの一体部分となるかどうか、又はこれが重合のための触媒として機能するかどうかによることがある。重合の一体部分となる硬化剤は、典型的には、触媒であるものよりも高い濃度で使用される。この場合、硬化剤官能基のエポキシド環官能基に対するモル比は、好ましくは、1以下である。硬化剤官能基の、エポキシド環官能基に対するモル比の好ましい範囲は、約0.1〜1である。熱硬化剤が触媒として利用されている場合、硬化性組成物は、最大約10重量%の触媒、好ましくは最大約5重量%の触媒を含有し得る。好ましい触媒の量は、約0.5重量%〜約3重量%の範囲であり得る。
【0066】
VIII.他の添加剤
硬化性組成物は更に、最大約50重量パーセント、好ましくは、最大約10重量パーセントの様々な添加物、例えば、充填剤、安定剤、可塑剤、粘着付与剤、流動性改良剤、硬化速度抑制剤、接着促進剤(例えば、シラン及びチタン酸塩)、補助剤、耐衝撃性改良剤、膨張可能微小球、熱伝導性粒子、導電性粒子など、例えば、シリカ、ガラス、粘土、タルク、顔料、着色剤、ガラスビード又はガラスバブル、及び酸化防止剤を更に含み、組成物の重量及び/若しくは費用を削減し、粘度を調節し、並びに/又は生じる硬化した、又は部分的に硬化した組成物の1つ以上の物理的特性を向上させてもよい。
【0067】
一実施形態では、アクリルコア/シェル粒子の形態の添加物が、耐衝撃性改良剤として、硬化性組成物に添加される。アクリルコア/シェル粒子は、組成物の総重量に基づき、最大約20重量パーセントの量で添加されてよい。好ましくは、アクリルコア/シェル粒子は、組成物の総重量に基づき、最大約10重量パーセントの量で添加される。組成物での使用のために好適な、1つの市販の製品は、Zeon Chemicals Co.Incから、ZEON F−351として入手可能な、アクリルコア/シェル耐衝撃性改良剤である。
【0068】
組成物の代表的実施形態
一実施形態では、硬化性組成物は、(i)約10〜約60重量パーセントの、1つ以上のエポキシ樹脂、(ii)約20〜約80重量パーセントの、ポリエステル樹脂、エチルビニルアセテート樹脂、及び(メタ)アクリレート樹脂から選択される、1つ以上の樹脂、(iii)最大約30重量パーセントの、1つ以上のヒドロキシ含有化合物、(iv)最大10重量パーセントの、1つ以上の光開始剤、並びに、任意により(v)最大50重量パーセントの、1つ以上の添加物を含み、全ての重量パーセントは、組成物の総重量に基づく。
【0069】
別の実施形態では、硬化性組成物は、(i)約15〜約40重量パーセントの、1つ以上のエポキシ樹脂、(ii)約50〜約80重量パーセントの、ポリエステル樹脂、エチルビニルアセテート樹脂、及び(メタ)アクリレート樹脂から選択される、1つ以上の樹脂、(iii)最大約10重量パーセントの、1つ以上のヒドロキシ含有化合物、(iv)最大約5重量パーセントの、1つ以上の光開始剤、並びに、任意により(v)最大約10重量パーセントの、1つ以上の添加物を含み、全ての重量パーセントは、組成物の総重量に基づく。
【0070】
別の実施形態では、硬化性組成物は、(i)約20〜約35重量パーセントの、1つ以上のエポキシ樹脂、(ii)約60〜約75重量パーセントの、ポリエステル樹脂、(iii)最大約5重量パーセントの、1つ以上のヒドロキシ含有化合物、(iv)約0.5重量パーセント〜約3重量パーセントの、1つ以上の光開始剤を含み、全ての重量パーセントは、組成物の総重量に基づく。
【0071】
硬化性組成物の、インクジェットカートリッジへの適用
先に簡潔に記載されたように、硬化性組成物は開口部を封止するために、開口部を含む広範な物品に適用され得る。一実施例として、続く説明は、硬化性組成物の、1つ以上のノズルを含む、少なくとも1つの開口部を含む、インクジェットカートリッジへの適用を目的とする。しかしながら、硬化性組成物は、インクジェットカートリッジへの適用に限定されず、1つ以上の開口部を含む任意の表面を封止するために適用され得ることが理解される。
【0072】
インクジェット印刷カートリッジは、典型的には、ノズル層に取り付けられる基材へと、流体的に連結されるインクリザーバを含む。ノズル層は、印刷中にインクがそこから放出される、1つ以上のノズルを含む。輸送及び保管中に、ノズルは、好ましくは封止されて、インクがノズルから蒸発又は漏出することを防ぎ、また塵やくずがノズルに入ることを防ぐ。また、続く実施例は、硬化性組成物及びテープの1つの可能な用途を例示することを意図されており、限定することを意図するものではない。
【0073】
図1を参照すると、インクジェットカートリッジ120の代表的な実施形態は、ノズル層126の裏に固定される基材(図示されない)に供給される、インクを収容するリザーバ128を含む。基材(図示されない)、ノズル層126、ノズル124、及びフレキシブル回路122が、一般的に、インクジェットカートリッジヘッドと称されるものを形成する。一体化されたノズル層及びフレキシブル回路を利用しない実施形態では、基材、ノズル層、及びノズルは、一般的にインクジェットカートリッジヘッドと称される。
【0074】
ノズル層126は、インクがそれを通じて放出される、1つ以上のノズル124を含む。各ノズルは小さくてよく、例えば、約7mm以下の面積を有する。ノズル層126は、金属、ポリマー、ガラス、又は別の好適な材料、例えば、セラミックスから形成されてもよい。好ましくは、ノズル層126は、ポリマー、例えば、ポリイミド、ポリエステル、ポリエチレンナフタレート(PEN)、エポキシ樹脂、又はポリカーボネートから形成される。市販のノズル層材料の例としては、DuPontからKaptonとして入手可能なポリイミドフィルム、Ube Industries,Ltd.(Japan)からUpilexとして入手可能なポリイミド材料、及びMicroChem Corp.からNANO SU−8として入手可能な感光性エポキシ樹脂が挙げられる。別の実施形態では、ノズル層126は、薄い金、パラジウム、タンタル、又はロジウム層でめっきされたニッケル基などの金属から形成される。
【0075】
代表的な実施形態のフレキシブル回路122は、ポリマーフィルムであり、電気接触部140に接続される電気配線142を含む。電気配線142は、電気接触部140から基材上の結合パッド(図示されず)まで延び、インクジェットカートリッジ120のための電気的接続を提供する。フレキシブル回路122及びノズル層126が、図1に示されるように一体化される場合、隆起した封入ビード144(典型的にはエポキシ)が、一体化されたフレキシブル回路122及びノズル層126の中に形成されるウィンドウ内に分配される。封入ビード144は、基材上の電気配線142及び結合パッドの電気的接続を、保護及び封入する。別の実施形態では、ノズル層126が、フレキシブル回路122に一体化されていない場合、封入ビード144は、ノズル層126の縁部、及び基材の縁部に沿って分配され、基材に、電気的接続のための保護機能を提供する。
【0076】
一度リザーバ128が流体で満たされると、ノズル124は、少なくとも部分的に封止されて、インクの漏出を防ぐか、及び/又は汚染を防ぐ。上記の硬化性組成物100が、次に、少なくとも1つのノズルに、ノズルを少なくとも部分的に封止するために、好ましくは全てのノズル124を完全に封止するために十分な量で適用される。
【0077】
一実施形態では、例えば、硬化性組成物100が裏材102上に配置されて、テープ104を形成する(図1)。他の実施形態では、硬化性組成物100は、裏材102上に必ずしも提供されなくてもよい。例えば、硬化性組成物100は、自己支持型フィルムであってもよく、又は組成物100を支持するためにの繊維強化剤を含んでもよい(図6に示されるように)。好ましい実施形態では、テープ104は最初にロール上に提供され、適切な長さに切断され、テープ104がカバーノズル124を完全に被覆するように、インクジェットカートリッジ120と位置合わせされる。テープ104はまた、通常プルタブと称される非粘着タブ130を提供されてもよく、テープ104の把持及び取り外しを容易にする。非粘着タブ130は、裏材102と一体であってもよく、裏材102及び硬化性組成物100と別個の構造であってもよく、又は硬化性組成物100と一体であってもよい。非粘着タブ130が硬化性組成物100と一体である実施形態では、組成物100は、望ましい形状を形成するようにダイカットされてもよい(例えば、プルタブを有するテープの形状)。テープ104が次に、矢印101の方向で、インクジェットカートリッジ120上に適用される。
【0078】
図2に例示される方法など、いくつかの実施形態では、テープ104をインクジェットカートリッジ120に適用する前に、硬化性組成物100が提供されて(202)、硬化性組成物の硬化を開始する(204)ために十分な放射線量の化学線に曝露される。硬化性組成物100の硬化は、硬化性組成物100を、化学線を放出する光源に曝露することによって開始され得る。硬化は、硬化性組成物100を、裏材102を通して化学線に曝露するか、又は硬化性組成物100の裏材102と反対側の側面を化学線に曝露することによって達成されてもよい。放射線の好適な供給源としては、水銀ランプ、キセノンランプ、カーボンアークランプ、タングステンフィラメントランプ、太陽光などが挙げられるが、これらに限定されない。本発明の焦点は、化学線による硬化の開始を目的としているが、電子ビーム及びガンマ線、熱反応開始などが挙げられるがこれらに限定されない反応開始の他の手段が本発明において使用され得ることに留意するべきである(しかしながら、化学線による反応開始が一般的に好ましい)。より好ましくは、硬化性組成物100の硬化は、硬化性組成物100を、約200nm〜約700nmの波長を有する放射線を放出する光源に曝露することによって開始される。更により好ましくは、硬化性組成物100の硬化は、硬化性フィルムを、約300nm〜約470nmの波長を有する放射線を放出する光源に曝露することによって開始される。更により好ましくは、硬化性組成物100の硬化は、硬化性フィルムを、約310nm〜約380nmの波長を有する放射線を放出する光源に曝露することによって開始される。本発明の一実施形態では、放射線供給源は、中圧水銀アークランプである。
【0079】
含まれる反応物質の量及び種類の両方、反応開始の種類(例えば、熱又は放射線)及び供給源、反応開始供給源からの距離、利用される放射線の種類(例えば、波長及び波長範囲)、及び硬化される硬化性組成物100の層の厚さに応じて、約0.05ジュール/平方センチメートル(J/cm)〜約4.0ジュール/平方センチメートル(J/cm)の合計エネルギー曝露を提供するためにの曝露時間は広く変化することがあり、いくつかの実施形態では、約1秒未満〜約10分に及び得る。所定の熱曝露、光曝露又は放射において、硬化開始速度は、反応開始剤の量の増加に伴って増加する傾向にある。硬化開始速度はまた、熱又は放射線強度の増加に伴って増加する。望ましくは、放射線によって反応開始する場合、約0.05.0J/cm〜約3.8J/cmの合計エネルギー曝露を提供するための曝露時間は約1秒未満〜約3秒である。より望ましくは、放射線によって反応開始する場合、約0.1J/cm〜約1.80J/cmの合計エネルギー曝露を提供するための曝露時間は約1秒未満である。硬化開始は、好ましくは、硬化性組成物100の部分的硬化へと繋がり、一方で以下に記載される滞留時間を提供する。
【0080】
硬化性組成物100が一度放射線供給源に曝露されると、硬化プロセスが開始され、硬化性組成物100は少なくとも部分的に硬化される。硬化性組成物100の硬化は、一般的に、滞留時間として知られる、2つの期間に分けられることがある。第1滞留時間においては、硬化性組成物100は、少なくとも部分的に硬化されるが、完全には硬化されず、粘着性のままである。第1滞留時間は、1分間以下、若しくは5分間以下持続してもよく、又は第1滞留時間は、はるかに長く、例えば、最大120分間持続してもよい。硬化性組成物100は、第1滞留時間中、いつインクジェットカートリッジ120に適用(206)されてもよく、又はいくつかの実施形態では、第1滞留時間は提供されなくてもよい。最終的に、硬化組成物100は、好ましくは少なくとも実質的に粘着性を有さない、すなわち、非粘着状態、より好ましくは完全に粘着性を有さない状態を達成する。放射線供給源の強度、放射線曝露時間、光開始剤の濃度、及び硬化性組成物100に含まれる特定の成分に応じて、実質的に粘着性を有さない状態は、周囲条件下で、約7日、又は最短24時間以下で達成され得る。加えて、硬化性組成物が実質的に粘着性を有さない状態に達するまでにかかる時間を低減させるために、硬化開始及びノズルへの取り付けの後に、硬化性組成物に後硬化が適用されてもよい。後硬化は、硬化性組成物の追加的な熱及び/又は化学線への曝露を含んでもよい。
【0081】
いくつかの場合においては、硬化性組成物100の硬化速度を遅らせることが有利であり得る。例えば、ポリエーテルポリオールを含有する硬化性組成物100は、典型的にはより遅い硬化速度を有する。より遅い硬化速度は、硬化性組成物100がより長い時間、粘着性であり続けることを可能にする場合があり、これは、インクジェットノズル124の封止を改善し得る。
【0082】
一度、硬化性組成物100が放射線供給源に曝露され、部分的に硬化したフィルムを形成すると(例えば、第1滞留時間の終わり、又はその間に)、これは、インクジェットカートリッジ120に適用(208)されてよい。部分的に硬化したフィルムは、好ましくは、化学線に曝露された直後にインクジェットカートリッジ120に適用される。硬化反応の速度には限界があり、硬化性組成物100全体が瞬時に硬化することはない。低い硬化水準では、硬化性組成物100は、高度に粘着性かつ柔軟なままであり、したがって、インクジェットカートリッジヘッドにしっかりと接着して、インクジェットノズル124にわたって緊密に適合する封止を形成することができる場合がある。
【0083】
硬化性組成物100が部分的に硬化した状態であるときにテープ104がインクジェットカートリッジ120に適用されるため、テープ104は、図3に示されるように、テープ104がインクジェットノズル124の中へと少なくとも僅かな距離にわたって変形することを可能にするために、十分に可撓性であってよい。図3では、硬化性組成物100は、インクジェット印刷カートリッジのノズル層126の上へと押し付けられている。陥没部308が、テープ104のノズル124と対応する位置において形成されてもよい。加えて、硬化性組成物100は、好ましくは、裏材102への十分な凝集強度、及び接着強度を有し、硬化性組成物100が陥没部308が形成される場所で破断することを防ぐ。したがって、これは、テープ104が取り除かれた際の硬化性組成物100の残留物によってノズル124が汚染されることを防ぐ。
【0084】
硬化性組成物100がインクジェットカートリッジ120に適用されると、第2滞留時間がもたらされ(210)、その間に硬化性組成物100は硬化して実質的に粘着性が低減することがある。これは、テープ104が容易に取り除かれることを可能にし得る。加えて、硬化性組成物100は、これがインクジェットカートリッジから取り除かれる際に、少なくとも実質的に粘着性を有さないため、好ましい実施形態では、硬化性組成物100は、ノズル層126上、又はノズル124中に、いかなる不必要な残留物をも後に残さないはずである。
【0085】
裏材102は、硬化の前、間、及び後に硬化性組成物100を支持するように機能することができる。硬化性組成物100は、好ましくは、これが、その配置される基材に接着するよりも強く、裏材102に接着する。裏材102と硬化性組成物100との間の接着は、表面処理、例えばコロナ処理などによって、強化されてもよい。裏材102は、ポリマー及びポリマーの混合物(例えば、PET、ポリエチレンなど)、紙などが挙げられるがこれらに限定されない任意の好適な材料であってよい。
【0086】
裏材102はまた、テープ104上への画像又は文章の印刷を容易にし得る。印刷される画像又は文章としては、例えば、ロゴ、図形、取り扱い説明などが挙げられる。印刷される画像は、製造業者によって、又はユーザーによって印刷されてよい。
【0087】
図4は、硬化性組成物100をインクジェットカートリッジ120に適用するための別の方法を示す。まず、硬化性組成物100が提供される(402)。硬化性組成物100は、自己支持型フィルムとして提供されてもよく、又は裏材と共にロール形態で提供されてもよい。加えて、硬化性組成物100は、図6に関して記載されるような、繊維強化剤を含む形態で提供されてもよい。
【0088】
硬化性組成物100は、次に、硬化の開始の前にインクジェットカートリッジ120に適用される(404)。
【0089】
硬化性組成物100のインクジェットカートリッジ120への適用に続き、硬化性組成物100の硬化が開始される(406)。先でより詳細に記載されたが、硬化は、熱エネルギー、電子ビーム、ガンマ線、又は化学線を使用して開始することができ、化学線が好ましい。この実施形態では、裏材が存在する場合には、硬化は典型的にはテープ104の裏材を通して開始される。しかしながら、硬化開始の任意の有用な方法が利用されてよい。
【0090】
一度硬化が開始されると、滞留時間が再びもたらされ(408)、この間に硬化性組成物100の硬化が進行する。滞留時間の間、硬化性組成物100は硬化し続け、粘着性フィルムから、実質的に、好ましくは完全に、非粘着性のフィルムへと変化する。滞留時間が終わったときに、硬化性組成物100は、実質的に比粘着性であり得、テープ104は、ノズル124を汚染し得る残留物、又はフィルムを残すことなく、インクジェットカートリッジから容易に取り除かれる。残留時間はまた、最短24時間以下〜最長7日の範囲であり得る。加えて、硬化性組成物が実質的に非粘着性の状態に達するまでにかかる時間を低減させるために、ノズルへの取り付け及び硬化開始の後に、硬化性組成物に後硬化が適用されてもよい。後硬化は、硬化性組成物の追加的な熱及び/又は化学線への曝露を含んでもよい。
【0091】
図5は、コア510上のテープ104のロール502の断面図を示す。テープ104のロール502は、テープ104を保管又は分配するための便利な方法であり得る。裏材102の表面508は、好ましくは、硬化性組成物100の表面504に接着しない。裏材102と硬化性組成物100との間の境界面506における接着を促進するために、表面処理、例えば、コロナ処理が必要である実施形態では、硬化性組成物100の表面504は、当然、裏材の表面508に接着しないことがある。しかしながら、裏材102と硬化性組成物100との間の境界面506における接着が、表面処理なくして十分に強固である実施形態では、裏材102の表面508において、接着をより弱くするための表面処理が必要である場合がある。好適な表面処理は、裏材102の組成物及び硬化性組成物100によって変化し得るが、例えば、抗接着特性を有する材料の薄いフィルムを、裏材102の表面508上に適用することが挙げられる。
【0092】
図6は、繊維強化剤を有する硬化性層600を含む、テープ604の別の実施形態を示す。硬化性層600は、上記の放射線硬化性組成物のいずれかを含んでもよい。これらの組成物のいくつかでは、例えば、硬化性層600が室温において流れ得る(低温流)ような、室温における十分に低い粘度を有することがあり、又は、低い融解強度のために、容易に製造されないことがある。硬化性層600内部に埋め込まれる繊維強化剤の追加は、低温流を防ぐことがある。繊維強化剤は、織布、又は不織布であってよく、及び、例えば、ポリエステル並びにポリオレフィンなどのポリマー、綿などの有機材料、又はガラス、炭素、並びにセラミックなどの無機材料を含んでもよい。繊維強化剤は、好ましくは、化学線への曝露の際の、硬化性層600の硬化性に影響しないように選択される。加えて、繊維強化剤の厚さは、好ましくは、硬化性組成物が繊維補強剤を完全に封入するように選択される。
【0093】
図7を参照すると、テープ104を適用されたインクジェットカートリッジ120が図示されている。テープ104は、任意の非粘着タブ130を含み、これは、最終消費者が、テープ104をインクジェットカートリッジ128から取り除く際に、テープ104をより良く把持することを可能にする。テープ104は、ノズル層(図7には図示されない)、及びフレキシブル回路(図7には図示されない)の上に押し付けられる。
【実施例】
【0094】
実施例1〜5の調製
【0095】
【表1】

【0096】
表2に掲載された接着剤組成物は、個別の構成成分(表1)を攪拌して、共に混合することによって調製された。接着剤溶液は、ナイフコーターで、シリコーン処理されたPETフィルム(剥離ライナー)の上に広げられ、コーティングは、強制空気炉において80℃で10分間加熱されて、40μm厚さの接着剤層を形成した。これらの接着剤コーティングは、更なる試験のために、50μm厚さのポリプロピレンフィルム、又は25μm厚さのPETフィルムのいずれかに積層された。
【0097】
【表2】

【0098】
(実施例1〜5)
積層された接着剤は、紫外線により、0.2J/cmの合計吸収放射線量で照射され、出力波長は約350nmに集中させた。紫外線照射による硬化開始の後、照射された接着剤からの発熱エネルギーが、示差走査熱量測定(DSC)によって測定された。紫外線照射の後、約30分間は、測定された、照射された接着剤からの発熱エネルギーの量における感知され得る低下はなかったが、室温において24時間後に、発熱エネルギーは大幅に低減した。実施例1及び3における、測定された発熱エネルギーが、表3に掲載される。紫外線照射されたテープは、ペンカートリッジに積層されて、インクノズルを封止した。60℃における24時間のエージングの後に、表2に示される試料から作製された全てのテープが、カートリッジから容易かつきれいに取り除かれ、ノズル内、又はカートリッジの他のいずれの場所も汚染されていなかった。また、ノズルからのインク漏出の痕跡も存在しなかった。
【0099】
(実施例6)
放射線硬化性転写テープ(3M Company,St.Paul,MNから入手可能な、UViSBT 9284、254μm(10ミル)厚さ)、実施例6が、様々な曝露時間を使用して、紫外線ブラックライト(Eclipse Electric Co.,Minneapolis,MNからの118ボルト、60サイクルAC)の下で照射された。転写テープは次に、手で、空のインクジェットカートリッジの、インクジェットノズル領域を覆うように適用され、裏材がフィルムから離れるように取り除かれた。フィルムは、ダイ、フレックス、及びペン本体の材料に接触していた。試料は、室温で24時間保存され、接着レベルが、手でフィルムを取り除くことによって定性的に決定された。表4は、この評価の結果を示している。照射されたフィルムは、インクジェットカートリッジから取り除かれた際に、柔軟で、非粘着性で、自己支持的であった。
【0100】
フィルムのエージング及び除去の後、インクノズルは、残留接着剤汚染に関して点検された。顕微鏡での目視検査では、可視の汚染は認められなかった。
【0101】
【表3】

【0102】
【表4】

【0103】
接着−5=高い、1=低い
本発明の様々な実施形態について説明してきた。これら及び他の実施形態は、下記の特許請求の範囲の範疇にある。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
硬化性組成物を適用する方法であって、
a)硬化性組成物を提供することであって、
(i)約10〜約60重量%の1つ以上のエポキシ樹脂、
(ii)約20〜約80重量%の、ポリエステル樹脂、エチルビニルアセテート樹脂、熱可塑性樹脂、及びアクリレート樹脂から選択される1つ以上の樹脂、
(iii)最大約30重量%の、1つ以上のヒドロキシル含有化合物、並びに
(iv)光開始剤、熱反応開始剤、及びこれらの組み合わせから選択される反応開始剤、を含む、硬化性組成物を提供することと、
b)前記硬化性組成物の硬化を開始することと、
c)任意により、最大120分の第1滞留時間を提供し、前記硬化性組成物が少なくとも部分的に硬化し、粘着性のままであることと、
d)前記硬化性組成物を、開口部を有する少なくとも1つのノズルに適用することと、
e)最大7日間の第2滞留時間を提供し、前記硬化性組成物が実質的に粘着性を有さない状態になることと、を含む、方法。
【請求項2】
硬化を開始することが、化学線を使用して硬化を開始することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記化学線が、約200nm〜700nmの波長を含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
硬化性組成物を提供することが、フィルム裏材上に硬化性組成物を提供することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
硬化を開始することが、前記フィルム裏材を通し、前記硬化性組成物に適用される放射線エネルギーによって硬化を開始することを含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
第1滞留時間を提供することが、5分以下の第1滞留時間を提供することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
第1滞留時間を提供することが、1分以下の第1滞留時間を提供することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
第2滞留時間を提供することが、24時間以下の第2滞留時間を提供する工程を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記硬化性組成物を、開口部を有する少なくとも1つのノズルに適用することが、前記硬化性組成物を、開口部を有する少なくとも1つのノズルに適用することを含み、前記開口部の面積が約7mm以下である、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記硬化性組成物を、開口部を有する少なくとも1つのノズルに適用することが、前記硬化性組成物を、開口部を有する少なくとも1つのノズルに適用することを含み、前記ノズルがインクジェットカートリッジの構成要素である、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
硬化性組成物を適用する方法であって、
a)硬化性組成物を提供することであって、
(i)約10〜約60重量%の1つ以上のエポキシ樹脂、
(ii)約20〜約80重量%の、ポリエステル樹脂、エチルビニルアセテート樹脂、熱可塑性樹脂、及びアクリレート樹脂から選択される1つ以上の樹脂、
(iii)最大約30重量%の、1つ以上のヒドロキシル含有化合物、並びに
(iv)光開始剤、熱反応開始剤、及びこれらの組み合わせから選択される反応開始剤、を含む、硬化性組成物を提供することと、
b)前記硬化性組成物を、開口部を有する少なくとも1つのノズルに適用することと、
c)前記硬化性組成物の硬化を開始することと、
d)最大7日間の第2滞留時間を提供し、前記硬化性組成物が実質的に粘着性を有さない状態になることと、を含む、方法。
【請求項12】
硬化を開始することが、化学線を使用して硬化を開始することを含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記化学線が、約200nm〜約700nmの波長を含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
硬化性組成物を提供することが、フィルム裏材上に硬化性組成物を提供することを含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
硬化を開始することが、前記フィルム裏材を通し、前記硬化性組成物に適用される放射線エネルギーによって硬化を開始することを含む、請求項11に記載の方法。
【請求項16】
滞留時間を提供することが、24時間以内の滞留時間を提供することを含む、請求項11に記載の方法。
【請求項17】
前記硬化性組成物を、開口部を有する少なくとも1つのノズルに適用する工程が、前記硬化性組成物を、開口部を有する少なくとも1つのノズルに適用することを含み、前記開口部の面積が約7mm以下である、請求項11に記載の方法。
【請求項18】
前記硬化性組成物を、開口部を有する少なくとも1つのノズルに適用することが、前記硬化性組成物を、開口部を有する少なくとも1つのノズルに適用することを含み、前記ノズルがインクジェットカートリッジの構成要素である、請求項11に記載の方法。
【請求項19】
物品であって、インクジェットカートリッジと、
第1表面及び前記第1表面と反対側の第2表面を含む硬化性組成物の層であって、前記第1表面が前記インクジェットカートリッジの表面に適用される層と、を含む物品であって、前記放射線硬化性組成物が、
(i)約10〜約60重量%の1つ以上のエポキシ樹脂、
(ii)約20〜約80重量%の、ポリエステル樹脂、エチルビニルアセテート樹脂、及びアクリレート樹脂から選択される、1つ以上の樹脂、並びに
(iii)最大約30重量%の、1つ以上のヒドロキシル含有化合物、を含む、物品。
【請求項20】
前記硬化性組成物の前記層の内部に埋め込まれる繊維補強剤を更に含む、請求項19に記載の物品。
【請求項21】
前記硬化性組成物の前記層の前記第2表面に適用される裏材を更に含む、請求項19に記載の物品。
【請求項22】
前記硬化性組成物に取り付けられる非粘着タブを更に含む、請求項19に記載の物品。
【請求項23】
前記非粘着タブが、前記硬化性組成物と一体である、請求項22に記載の物品。
【請求項24】
前記硬化性組成物が、
(i)約15〜約40重量%の1つ以上のエポキシ樹脂、
(ii)約50〜約80重量%の、ポリエステル樹脂、エチルビニルアセテート樹脂、熱可塑性樹脂、及びアクリレート樹脂から選択される、1つ以上の樹脂、並びに
(iii)最大約10重量%の、1つ以上のヒドロキシル含有化合物、を含む、請求項19に記載の物品。
【請求項25】
前記硬化性組成物が、
(i)約20〜約35重量%の1つ以上のエポキシ樹脂、
(ii)約60〜約75重量%の、ポリエステル樹脂、エチルビニルアセテート樹脂、熱可塑性樹脂、及びアクリレート樹脂から選択される、1つ以上の樹脂、並びに
(iii)最大約10重量%の、1つ以上のヒドロキシル含有化合物、を含む、請求項19に記載の物品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2011−506674(P2011−506674A)
【公表日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−538012(P2010−538012)
【出願日】平成20年11月7日(2008.11.7)
【国際出願番号】PCT/US2008/082711
【国際公開番号】WO2009/075971
【国際公開日】平成21年6月18日(2009.6.18)
【出願人】(505005049)スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー (2,080)
【Fターム(参考)】