説明

ノズル状態検出装置および画像形成装置

【課題】ノズルの状態をより適切に検出する。
【解決手段】原信号生成回路50とピエゾ素子48(電極48b)との継断を行なうトランスミッションゲートTGAを備えるマスク回路52に組み込まれたトランスミッションゲートTGBと、トランスミッションゲートTGBを介してピエゾ素子48の電極48bに接続された電圧波形検出回路54とを、各ピエゾ素子48毎に専用に設け、各ノズル41の吐出異常を検出する場合に、原信号生成回路50からノズルからインクが吐出されない程度の検査用駆動信号を生成させ、全てのトランスミッションゲートTGAを所定時間オンしてからオフすると共に全てのトランスミッションゲートTGBをオンし、各ピエゾ素子48毎に電圧波形検出回路54により検出される電圧波形の振動周期に基づいて対応するノズル41の吐出異常を判定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数のノズルと、該ノズルの数と同数の圧電素子とを備え、該圧電素子を駆動して対応するノズルから液体を吐出する吐出ヘッドにおける該ノズルの状態を検出するノズル状態検出装置および媒体に液体を吐出して画像を形成する画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種のノズル状態検出装置としては、静電アクチュエーターにより振動板を振動させることでキャビティ(インク室)の容積を収縮させ、キャビティに連通するノズルからインク滴を吐出するインクジェットヘッドを備えるインクジェットプリンターにおいて、静電アクチュエータを駆動した際の振動板の残留振動を検出することによりノズルの吐出異常(ドット抜け)を判定するものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。この装置では、ノズル付近のインクが乾燥により固着などして吐出異常が生じた場合には正常吐出時に比べて残留振動の周波数が低くなることから、残留振動の周期を検出し、検出した残留振動の周期と正常吐出時の残留振動の周期とを比較することにより、ノズルの吐出異常を精度良く検出することができるとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−306529号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このようにノズル状態の検出精度を高めたり、ノズル状態の検出を短時間で行なったりしてノズルの状態を適切に検出することは、画像を形成する際の品質を高めたり画像形成のスループットを高める上で、画像形成装置において重要な課題の一つとして考えることができる。
【0005】
本発明のノズル状態検出装置および画像形成装置は、ノズルの状態をより適切に検出することを主目的とする。
【0006】
本発明のノズル状態検出装置および画像形成装置は、上述の主目的を達成するために以下の手段を採った。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のノズル状態検出装置は、
複数のノズルと、該複数のノズルに対応する複数の圧電素子とを備え、該圧電素子を駆動して対応するノズルから液体を吐出する吐出ヘッドにおける該ノズルの状態を検出するノズル状態検出装置であって、
前記複数の圧電素子を駆動するための電圧信号を出力する電圧信号出力手段と、
前記複数の圧電素子と対応して複数設けられ、入力端子が前記電圧信号出力手段に接続されると共に出力端子が対応する圧電素子の電極に接続されて入出力端子間の接続と遮断とを行なう第1のスイッチと、
前記複数の圧電素子と対応して複数設けられ、入力端子が対応する圧電素子の電極に接続されて入出力端子間の接続と遮断とを行なう第2のスイッチと、
前記複数の圧電素子と対応して複数設けられ、前記第2のスイッチの出力端子に接続されて対応する圧電素子の電圧波形を該第2のスイッチを介して検出する電圧波形検出手段と、
前記ノズル状態を検出する場合、前記複数の第1のスイッチをオンからオフすると共に前記複数の第2のスイッチがオンするようスイッチ制御し、該スイッチ制御により前記電圧波形検出手段により検出された電圧波形に基づいて対応するノズルの状態を判定するノズル状態判定手段と、
を備えることを要旨とする。
【0008】
この本発明のノズル状態検出装置では、複数の圧電素子を駆動するための電圧信号を出力する電圧信号出力手段を設けると共に、入力端子が電圧信号出力手段に接続されると共に出力端子が対応する圧電素子の電極に接続された第1のスイッチと、入力端子が対応する圧電素子の電極に接続された第2のスイッチと、圧電素子の電圧波形を第2のスイッチを介して検出する電圧波形検出手段とを複数の圧電素子に対応して複数設け、ノズル状態を検出する場合、複数の第1のスイッチをオンからオフすると共に複数の第2のスイッチがオンするようスイッチ制御し、スイッチ制御により電圧波形検出手段により検出された電圧波形に基づいて対応するノズルの状態を判定する。これにより、複数のノズルに対して同時にノズル状態を検出することができるから、ノズル状態の検出を短時間で完了させることができ、ノズル状態に応じた対処を早期に実行することが可能となる。また、複数の圧電素子毎に専用の第2のスイッチと電圧波形検出手段とを設けているから、複数の圧電素子に対して一つの第2のスイッチと電圧波形検出手段を設けて駆動する圧電素子を切り替えながらその電圧波形を検出するものに比して、作動に伴う発熱を抑制することができる。これらの結果、ノズルの状態をより適切に検出することができる。
【0009】
こうした本発明のノズル状態検出装置において、前記ノズル状態を検出する場合、前記ノズルから液体が吐出されない範囲内で電圧信号を生成する手段であるものとすることもできる。
【0010】
本発明の画像形成装置は、
媒体に液体を吐出して画像を形成する画像形成装置であって、
複数のノズルと、該ノズルの数と同数の圧電素子とを有し、該圧電素子を駆動して対応するノズルから液体を吐出する吐出ヘッドと、
本発明のノズル状態検出装置と、
を備えることを要旨とする。
【0011】
この本発明の画像形成装置では、本発明のノズル状態検出装置を備えるから、本発明のノズル状態検出装置が奏する効果、例えば、複数のノズルに対して同時にノズル状態を検出することができるから、ノズル状態の検出を短時間で完了させることができる効果や、複数の圧電素子に対して一つの第2のスイッチと電圧波形検出手段を設けて駆動する圧電素子を切り替えながらその電圧波形を検出するものに比して、作動に伴う発熱を抑制することができる効果などを奏することができる。
【0012】
こうした本発明の画像形成装置において、主走査方向に前記吐出ヘッドを搭載するキャリッジと、該キャリッジを移動させる移動手段とを備え、前記電圧波形検出手段は、前記キャリッジに搭載されてなるものとすることもできる。静電容量の変化を検出するタイプのノズル状態検出装置では、電圧波形が微小でノイズの影響を受けやすいが、電圧波形検出手段をキャリッジに搭載することにより、ノイズの影響を最小限に抑えることができ、検出精度を良好なものとすることができる。
【0013】
また、本発明の画像形成装置において、待機時に前記吐出ヘッドを密閉するキャッピング装置を備え、前記吐出ヘッドが密閉されている最中に前記ノズルの状態を検出するものとすることもできる。こうすれば、待機時間を有効に利用してノズル状態を検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の一実施形態であるインクジェットプリンター20の概略構成図。
【図2】印刷ヘッド40の概略構成図。
【図3】印刷ヘッド40を駆動する駆動回路の概略構成図。
【図4】マスク回路52の概略構成図。
【図5】ノズル状態検査ルーチンの一例を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0015】
次に、本発明の実施の形態を図面を用いて説明する。図1は、本発明の一実施形態であるインクジェットプリンター20の構成の概略を示す構成図であり、図2は、印刷ヘッド40の構成の概略を示す構成図であり、図3は、印刷ヘッド40を駆動する駆動回路の構成の概略を示す構成図であり、図4は、マスク回路52の構成の概略を示す構成図である。
【0016】
本実施形態のインクジェットプリンター20は、図1に示すように、用紙Pを副走査方向(図中奥から手前の方向)に搬送する紙送り機構60と、紙送り機構60によりプラテン22上に搬送された用紙Pに対して主走査方向(図中左右の方向)の移動を伴って印刷ヘッド40に形成されたノズルからインク滴を吐出して印刷を行なうプリンター機構30と、装置全体をコントロールするコントローラー70と、を備える。プラテン22の主走査方向一端(図1中の右端)には、印刷ヘッド40のノズル面を封止するキャッピング装置68が設置されており、プラテン22の主走査方向他端(図1中の左端)には、ノズルの目詰まりを防止するために定期的に印刷ヘッド40のノズルからインク滴を吐出するフラッシングを行なうためのフラッシングエリア24が設けられている。
【0017】
プリンター機構30は、図1に示すように、キャリッジガイド34によりガイドされながら主走査方向に往復動可能なキャリッジ31と、キャリッジガイド34の一端側と他端側にそれぞれ設置されたキャリッジモーター35および従動ローラー36と、キャリッジモーター35と従動ローラー36とに掛け渡されると共にキャリッジ31に取り付けられたキャリッジベルト38と、キャリッジ31に搭載されシアン(C),マゼンタ(M),イエロー(Y),ブラック(K)の各色のインクを貯留するインクカートリッジ32と、インクカートリッジ32からそれぞれ供給された各インクに加圧してインク滴を吐出する複数のノズルが形成された印刷ヘッド40と、を備える。キャリッジ31は、キャリッジモーター35によりキャリッジベルト38を駆動することにより、主走査方向に往復動されるようになっている。なお、キャリッジ31の背面側には、キャリッジ31の主走査方向における位置を検出するキャリッジポジションセンサー39が取り付けられている。このキャリッジポジションセンサー39は、フレーム26にキャリッジガイド34に沿って配置されたリニア式の光学スケール39aと、光学スケール39aに対向するようキャリッジ31の背面に取り付けられ光学スケール39aを光学的に読み取る光学センサー39bとにより構成されている。
【0018】
印刷ヘッド40は、図2または図3に示すように、シアン(C),マゼンタ(M),イエロー(Y),ブラック(K)のノズル41C,41M,41Y,41Kが各色毎に複数個(本実施形態では、180個)ずつ列をなすよう配置された4列のノズル列42C,42M,42Y,42Kが形成されたノズルプレート44と、ノズル41に連通するインク室46を形成する側壁をなすキャビティープレート47と、電極48aがグランドに接地され圧電体が2枚の電極48a,48bに挟まれて構成されたピエゾ素子(圧電素子)48と、ピエゾ素子48の電極48aとしてインク室46の上壁をなし弾性変形が可能な振動板49と、ピエゾ素子48の電極48bに駆動信号(電圧)を印加する駆動回路としてのマスク回路52と、を備える。この印刷ヘッド40は、マスク回路52からピエゾ素子48にパルス状の電圧を印加してインク室46の上壁(振動板49)を振動させることにより、インク室46内の容積変化を生じさせ、インク室46の容積が収縮する際の収縮圧力によりインクを加圧してインク室46に連通するノズル41からインク滴として吐出する。なお、ピエゾ素子48は、圧電体が2枚の電極48a,48bにより挟まれて構成されていることから、コンデンサーとして考えることができる。ここで、ノズル41C,41M,41Y,41Kのすべてをノズル41と総称し、ノズル列42C,42M,42Y,42Kのすべてをノズル列42と総称する。以下、印刷ヘッド40の駆動についてブラック(K)用のノズル41Kを用いて説明する。
【0019】
マスク回路52は、図3に示すように、キャリッジ31に搭載されており、原信号生成回路50により生成された原信号ODRVと印刷信号PRTnとを入力すると共に入力した原信号ODRVと印刷信号PRTnとに基づいて駆動信号DRVnを生成して対応するピエゾ素子48に出力する。なお、印刷信号PRTnの末尾のnや駆動信号DRVnの末尾のnは、ノズル列に含まれるノズルを特定するための番号であり、本実施形態では、ノズル列は180個のノズルにより構成したから、nは1から180のいずれかの整数値となる。原信号生成回路50は、原信号ODRVとして1画素分の区間内(キャリッジ31が1画素の区間を横切る時間内)において第1のパルスP1と第2のパルスP2と第3のパルスP3の3つのパルスを繰り返し単位とした信号をマスク回路52に出力し、原信号ODRVを入力したマスク回路52は、別途入力した印刷信号PRTnに基づいて原信号ODRVに含まれる3つのパルスのうち不要なパルスをマスクすることにより必要なパルスのみを駆動信号DRVnとしてノズル41Kのピエゾ素子48に出力する。このとき、駆動信号DRVnとして第1パルスP1のみがピエゾ素子48に出力されると、ノズル41Kから1ショットのインク滴が吐出されて記録紙Pには小さいサイズのドット(小ドット)が形成され、第1パルスP1と第2パルスP2とがピエゾ素子48に出力されると、ノズル41Kから2ショットのインク滴が吐出されて記録紙Pには中サイズのドット(中ドット)が形成され、第1パルスP1と第2パルスP2と第3パルスP3とがピエゾ素子48に出力されると、ノズル41Kから3ショットのインク滴が吐出されて記録紙Pには大きいサイズのドット(大ドット)が形成される。このように、インクジェットプリンター20では、一画素区間において吐出されるインク量を調整することにより3種類のサイズのドットを形成することができる。なお、ブラック(K)以外の他の色のノズル41C,41M,41Yやノズル列42C,42M,42Yについても上記ノズル41Kやノズル列42Kと同様である。
【0020】
マスク回路52は、図4に示すように、二つのトランスミッションゲートTGA,TGBにより構成されている。トランスミッションゲートTGAは、制御端子がコントローラー70の出力ポートに、入力端子が原信号生成回路50の出力端子に、出力端子がピエゾ素子48の電極48bにそれぞれ接続されている。このトランスミッションゲートTGAは、コントローラー70から制御端子にオン信号が入力されると、入出力端子間を導通して原信号生成回路50からピエゾ素子48の電極48bへ駆動信号を伝達し、コントローラー70から制御端子にオフ信号が入力されると、入出力端子間の導通を遮断して原信号生成回路50からピエゾ素子48への駆動信号の伝達を遮断する。また、トランスミッションゲートTGBは、制御端子がコントローラー70の出力ポートに接続され、入力端子がピエゾ素子48の電極48bに接続され、出力端子が電圧波形検出回路54の入力端子に接続されている。このトランスミッションゲートTGBは、コントローラー70から制御端子にオン信号が入力されると、入出力端子間を導通してピエゾ素子48の電極48bから電圧波形検出回路54へ電圧信号を伝達し、コントローラー70から制御端子にオフ信号が入力されると、入出力端子間の導通を遮断してピエゾ素子48の電極48bから電圧波形検出回路54への電圧信号の伝達を遮断する。
【0021】
ピエゾ素子48(振動板49)とマスク回路52と電圧波形検出回路54は、図2および図3に示すように、各ノズル41毎に個別に設けられており、マスク回路52でピエゾ素子48(振動板49)を駆動することにより、対応するノズル41からインク滴を吐出し、電圧波形検出回路54により対応するピエゾ素子48の電極48bに作用している電圧波形を検出する。
【0022】
電圧波形検出回路54は、ピエゾ素子48(電極48b)の電圧波形を検出することで振動板49の残留振動を検出するためのものであり、図示しないが、例えば、ピエゾ素子48(コンデンサー)の静電容量をC成分として用いたRC発振回路やLC発振回路などの発振回路や、発振回路からの発振信号のパルスをカウントするカウンタなどにより構成することができる。ピエゾ素子48を駆動すると、振動板49は振動を開始し、その振動は減衰を伴って持続する(残留振動)。この際、ノズル41付近のインクが乾燥して固着したり増粘したりしていると、振動板49の減衰が速くなり(過減衰)、残留振動の周期は短くなる。したがって、振動板49の残留振動の周期を検出することによりノズル41の吐出異常を判定することができる。電圧波形検出回路54は、本実施形態では、マスク回路52と共にキャリッジ31に搭載している。これは、回路内の他のピエゾ素子48からの寄生容量により検出しようとするピエゾ素子48(電極48b)の電圧レベルが小さくなったり、他のピエゾ素子48の減衰振動の伝達を受けてノイズが重畳したりし、ノイズの影響を受けやすいことに基づいている。
【0023】
紙送り機構60は、図1に示すように、用紙Pをプラテン22上に搬送させる搬送ローラー42と、搬送ローラー42を回転駆動する搬送モーター44と、を備える。搬送モーター44は、その回転軸に回転量を検出するロータリーエンコーダー66が取り付けられており、ロータリーエンコーダー66からの回転量に基づいて駆動制御されている。なお、ロータリーエンコーダー66は、図示しないが、所定回転角間隔で目盛りが付されたロータリースケールと、ロータリースケールの目盛りを読み取るためのロータリースケールセンサーとにより構成されている。
【0024】
キャッピング装置68は、印刷ヘッド40をキャッピング装置68に対向する位置(いわゆるホームポジション)に移動させた状態でノズル面を封止することによりノズル内のインクの乾燥を防止したり、ノズル面を封止した状態でノズル内のインクを吸引することにより印刷ヘッド40をクリーニングしたりする。キャッピング装置68は、印刷ヘッド40のノズル面を密閉するために上方が開口された略直方体のキャップ69の他に、キャップ69の底部に接続されたチューブ(図示せず)や、チューブに取り付けられた吸引ポンプ(図示せず)などを備えている。このキャッピング装置68は、印刷ヘッド40をクリーニングする場合には、キャップ69により印刷ヘッド40のノズル面を封止した状態で吸引ポンプを駆動することにより、印刷ヘッド40のノズル面とキャップ69とにより形成される内部空間を負圧とし、ノズル内のインクを強制的に吸引する。
【0025】
コントローラー70は、CPU71を中心とするマイクロプロセッサーとして構成されており、処理プログラムを記憶したROM72と、一時的にデータを記憶するRAM73と、書き換え可能で電源を切ってもデータは保持されるフラッシュメモリー74と、インターフェース(I/F)75と、を備える。このコントローラー70には、キャリッジポジションセンサー39からのキャリッジ31の位置や、ロータリーエンコーダー66からの搬送ローラー62の回転量などがI/F75を介して入力されており、コントローラー70からは印刷ヘッド40への駆動信号や搬送モーター64への駆動信号,キャリッジモーター35への駆動信号,吸引ポンプへの駆動信号などがI/F75を介して出力されている。また、コントローラー70は、図示しないユーザーコンピューター(PC)からの印刷指示や印刷データをI/F75を介して受け付けたりする。なお、RAM73には、印刷バッファー領域が設けられており、ユーザーPCから印刷データが受け付けられると、受け付けた印刷データは印刷バッファー領域に記憶される。
【0026】
次に、こうして構成された本実施形態のインクジェットプリンター20の動作、特に、ノズル41の吐出異常を検出する際の動作について説明する。図5は、コントローラー70により実行されるノズル状態検査ルーチンの一例を示すフローチャートである。このルーチンは、例えば、電源オンされてキャッピング装置68により印刷ヘッド40が封止されている最中に実行される。
【0027】
ノズル状態検査ルーチンが実行されると、コントローラー70のCPU71は、まず、原信号発生回路50に対して検査用の駆動信号を生成するよう指示する(ステップS100)。ここで、検査用の駆動信号は、本実施形態では、ノズル41からインク滴が吐出されない範囲内でできる限り高い一定の電圧を駆動信号として生成するものとした。続いて、全てのマスク回路52のトランスミッションゲートTGAをオンして所定時間が経過するまで待機し(ステップS110,S120)、所定時間が経過すると、全てのマスク回路52のトランスミッションゲートTGAをオフすると共に(ステップS130)、全てのマスク回路52のトランスミッションゲートTGBをオンする(ステップS140)。このトランスミッションゲートTGAのオンオフにより、ピエゾ素子48には立ち下がりが急峻なパルス電圧が作用し、振動板49は減衰を伴って振動する。このとき、トランスミッションゲートTGBをオンしているから、振動板49の振動に伴ってピエゾ素子48(コンデンサ)の電極48bに生じる電圧の振動周期Fnが各ピエゾ素子48毎に対応する電圧波形検出回路54により検出される。続いて、ノズル番号nを値0に初期化し(ステップS150)、ノズル番号nのノズル41に対応するピエゾ素子48(電極48b)に作用している電圧の振動周期Fnを対応する電圧波形検出回路54から入力し(ステップS160)、入力した振動周期Fnと閾値Frefとを比較する(ステップS170)。ここで、閾値Frefは、ノズル41から正常にインク滴が吐出されているか否かを判定するための閾値であり、予め実験などにより定めることができる。振動周期Fnが閾値Fref以上の場合には、n番ノズルに吐出異常は生じていないと判定し、振動周期Fnが閾値Fref未満の場合には、n番ノズルに吐出異常が生じていると判定する(ステップS180)。そして、全ノズルについて異常の判定が完了したか否か(本実施形態では各色毎に180個ずつのノズル41を備えるため、nが180か否か)を判定し(ステップS190)、全ノズルについて異常の判定が完了していない場合には、ノズル番号nを値1だけインクリメントして(ステップS200)、ステップS160に戻って次のノズル41について吐出異常を判定するステップS150〜S200の処理を繰り返し、全ノズルについて異常の判定が完了した場合には、全色について異常の判定が完了したか否かを判定する(ステップS210)。全色について異常の判定が完了していない場合には、ステップS150に戻って次の色についてノズル41の吐出異常を判定するステップS150〜S190の処理を繰り返し、全色について異常の判定が完了した場合には、これで本ルーチンを終了する。本実施形態では、マスク回路52内のトランスミッションゲートTGBと電圧波形検出回路54とをノズル41(ピエゾ素子48)の数だけ設けているから、全ノズル41の検査を同時に行なうことができ、ノズル検査を短時間で完了させることができる。
【0028】
なお、印刷ヘッド40に形成されたノズル41のいずれかが吐出異常と判定されると、本実施形態では、印刷ヘッド40のノズル面がフラッシングエリア24に対向する位置まで印刷ヘッド40が移動するようキャリッジモーター35を駆動制御し、フラッシングエリア24に向けて吐出異常と判定されたノズル41からインク滴を吐出するフラッシングが行なわれる。フラッシングが行なわれると、再度、図5のノズル41の吐出異常の検査が行なわれる。この再検査の結果、ノズル41が正常な状態に回復した場合には、これで検査を終了し、ノズル41が正常な状態に回復しなかった場合には、印刷ヘッド40をキャッピング装置68で密閉し、図示しないポンプを駆動し密閉内部を負圧としてノズル41のインクを強制的に吸引するクリーニング処理が行なわれる。
【0029】
ここで、本実施形態の構成要素と本発明の構成要素との対応関係を明らかにする。本実施形態の印刷ヘッド40が「吐出ヘッド」に相当し、ピエゾ素子48が「圧電素子」に相当し、原信号発生回路50が「電圧信号出力手段」に相当し、トランスミッションゲートTGAが「第1のスイッチ」に相当し、トランスミッションゲートTGBが「第2のスイッチ」に相当し、電圧波形検出回路54が「電圧波形検出手段」に相当し、コントローラー70が「ノズル状態判定手段」に相当する。また、キャリッジ31が「キャリッジ」に相当し、キャリッジガイド34やキャリッジモーター35,従動ローラー36,キャリッジベルト38が「移動手段」に相当する。
【0030】
以上説明した本実施形態のインクジェットプリンター20によれば、原信号生成回路50からピエゾ素子48(電極48b)への電圧信号の伝達と遮断とを行なうトランスミッションゲートTGAを備えるマスク回路52に組み込まれたトランスミッションゲートTGBと、トランスミッションゲートTGBを介してピエゾ素子48の電極48bに接続された電圧波形検出回路54とを、各ピエゾ素子48毎に専用に設け、各ノズル41の吐出異常を検出する場合に、原信号生成回路50から検査用の駆動信号を生成させ、全てのトランスミッションゲートTGAを所定時間オンしてからオフすると共に全てのトランスミッションゲートTGBをオンすることにより、振動板49の減衰振動(残留振動)によって生じる電圧波形の周期を電圧波形検出回路54により検出して対応するノズル41の吐出異常を判定するから、全ノズル41に対して同時に吐出異常の検出を行なうことができ、短時間で検査を完了させることができる。したがって、フラッシングやクリーニングなどの吐出異常に対する処理を迅速に行なうことができる。しかも、ノズル41の吐出異常の検査を、印刷ヘッド40がキャッピング装置68により封止されている最中に行なうから、待機時間を有効に利用することができ、印刷中に検査を行なうものに比して、印刷スループットを向上させることができる。また、各ピエゾ素子48毎に専用のトランスミッションゲートTGBと電圧波形検出回路54とを設けているから、全ピエゾ素子48に対して一つだけトランスミッションゲートと電圧波形検出回路とを設けて駆動するピエゾ素子を切り替えながらその電圧波形を電圧波形検出回路で検出するものに比して、素子のサイズを小さくでき、発熱を抑制することができる。
【0031】
また、本実施形態のインクジェットプリンター20によれば、電圧波形検出回路54を、マスク回路52と共にキャリッジ31に搭載しているから、振動板49の減衰振動(残留振動)によって生じる電圧波形が微弱でノイズの影響を受けやすい場合でも、精度良く検出することができる。
【0032】
本実施形態のインクジェットプリンター20では、電圧波形検出回路54をキャリッジ31に搭載するものとしたが、ノイズの影響を受けやすくなるものの、キャリッジ31に搭載せずにフレーム26側に取り付けるものとしても差し支えない。
【0033】
本実施形態のインクジェットプリンター20では、ノズル41の吐出異常の検査を、電源オンされたときに印刷ヘッド40がキャッピング装置68で封止されている最中に実行するものとしたが、これに限られず、印刷指令を受け付けたときにノズル41の吐出異常を検査してから印刷を開始するものとしてもよいし、印刷中にノズル41の吐出異常を検査するものとしてもよい。後者の場合、印刷信号PRTnに基づいてパルス信号(駆動信号DRV)がピエゾ素子48に印加されてからそのピエゾ素子48に次のパルス信号が印加されるまでの間に亘ってトランスミッションゲートTGBをオンとし、その間の振動板49の残留振動を電圧波形検出回路54で検出するものとすればよい。
【0034】
本実施形態では、本発明の画像形成装置をインクジェットプリンター20に適用するものとしたが、プリンターの他にスキャナーなども搭載するマルチファンクションプリンターに適用したり、FAX装置に適用するなど、画像を媒体に形成できるものであれば、如何なる画像形成装置に適用するものとしてもよいし。また、ノズルの状態を検出するノズル状態検出装置の形態とするものとしてもよい。
【0035】
なお、本発明は上述した実施形態に何ら限定されることはなく、本発明の技術的範囲に属する限り種々の態様で実施し得ることはいうまでもない。
【符号の説明】
【0036】
20 インクジェットプリンター、22 プラテン、24 フラッシングエリア、26フレーム、30 プリンター機構、31 キャリッジ、32 インクカートリッジ、34 キャリッジガイド、35 キャリッジモーター、36 従動ローラー、38 キャリッジベルト、39 キャリッジポジションセンサー、39a 光学スケール、39b 光学センサー、40 印刷ヘッド、41,41K,41C,41M,41Y ノズル、42,42K,42C,42M,42Y ノズル列、44 ノズルプレート、46 インク室、47 キャビティープレート、48 ピエゾ素子、49 振動板、50 原信号発生回路、52 マスク回路、54 電圧波形検出回路、60 紙送り機構、62 搬送ローラー、64 搬送モーター、66 ロータリーエンコーダー、68 キャッピング装置、69 キャップ、70 コントローラー、71 CPU、72 ROM、73 RAM、74 フラッシュメモリー、75 インターフェース(I/F)、TGA,TGB トランスミッションゲート、P 用紙。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のノズルと、該複数のノズルに対応する複数の圧電素子とを備え、該圧電素子を駆動して対応するノズルから液体を吐出する吐出ヘッドにおける該ノズルの状態を検出するノズル状態検出装置であって、
前記複数の圧電素子を駆動するための電圧信号を出力する電圧信号出力手段と、
前記複数の圧電素子と対応して複数設けられ、入力端子が前記電圧信号出力手段に接続されると共に出力端子が対応する圧電素子の電極に接続されて入出力端子間の接続と遮断とを行なう第1のスイッチと、
前記複数の圧電素子と対応して複数設けられ、入力端子が対応する圧電素子の電極に接続されて入出力端子間の接続と遮断とを行なう第2のスイッチと、
前記複数の圧電素子と対応して複数設けられ、前記第2のスイッチの出力端子に接続されて対応する圧電素子の電圧波形を該第2のスイッチを介して検出する電圧波形検出手段と、
前記ノズル状態を検出する場合、前記複数の第1のスイッチをオンからオフすると共に前記複数の第2のスイッチがオンするようスイッチ制御し、該スイッチ制御により前記電圧波形検出手段により検出された電圧波形に基づいて対応するノズルの状態を判定するノズル状態判定手段と、
を備えるノズル状態検出装置。
【請求項2】
前記電圧信号出力手段は、前記ノズル状態を検出する場合、前記ノズルから液体が吐出されない範囲内で電圧信号を生成する手段である請求項1記載のノズル状態検出装置。
【請求項3】
媒体に液体を吐出して画像を形成する画像形成装置であって、
複数のノズルと、該複数のノズルに対応する複数の圧電素子とを有し、該圧電素子を駆動して対応するノズルから液体を吐出する吐出ヘッドと、
請求項1または2記載のノズル状態検出装置と、
を備える画像形成装置。
【請求項4】
請求項3記載の画像形成装置であって、
主走査方向に前記吐出ヘッドを搭載するキャリッジと、
該キャリッジを移動させる移動手段と
を備え、
前記第2のスイッチと前記電圧波形検出手段は、前記キャリッジに搭載されてなる
ことを特徴とする画像形成装置。
【請求項5】
請求項3または4記載の画像形成装置であって、
待機時に前記吐出ヘッドを密閉するキャッピング装置を備え、
前記吐出ヘッドが密閉されている最中に前記ノズルの状態を検出する
ことを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−171209(P2012−171209A)
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−35405(P2011−35405)
【出願日】平成23年2月22日(2011.2.22)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】