説明

ノズル

【課題】ノズルの吐出口から噴射されるエアロゾルの噴射角度を変更することが可能なノズルを提供する。
【解決手段】ノズル4は、吐出口11の開口端において、一方の長辺側の側縁から全幅に渡って斜め外側方向に所定長さ延出されて、噴射方向に対して広がり方向に所定角度θ1だけ傾斜して、この吐出口11の開口端の長辺側の側縁から連続する傾斜面12を形成する角度変更部としての板状の壁部材13が設けられている。そして、このノズル4の吐出口11からエアロゾルを超音速で噴射した場合には、この吐出口11の開口端に設けられた壁部材13の傾斜面12側へ、吐出口11の開口端での噴射方向に対して、この傾斜面12の傾斜角θ1に対応する所定角度だけ偏向されて噴射される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、微粒子をガス中に分散させて発生させたエアロゾルを超音速で噴射するノズルに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、微粒子をガス中に分散させて発生させたエアロゾルを超音速で噴射するノズルが種々提案されている。
例えば、少なくとも一対のノズルブロックと、これら一対のノズルブロックの間に挟持され、かつ、互いに間隔を隔てて対向配置される少なくとも2枚のシムプレートとを構成要素として備え、これらのノズルブロックとシムプレートとにより形成されるエアロゾル噴射通路の形状をシムプレートの交換により変更し得るように構成したノズルがある(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開2003−275630号公報(段落(0010)〜(0032)、図1〜図9)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上述した特許文献1に記載される構成では、ノズルのエアロゾル噴射孔から噴射されるエアロゾルの噴射角度を変更するためには、ノズル内のエアロゾルが流れるエアロゾル噴射通路を噴射方向へ曲げる必要がある。この際、このエアロゾル噴射通路の曲げた部分で超微粒子の粉体が詰まったり、また、超微粒子の粉体の衝突によりエアロゾル噴射通路内面を摩耗し、破損させて、供給粉体に削れた摩耗粉が混入するという問題がある。
【0004】
そこで、本発明は、上述した問題点を解決するためになされたものであり、ノズル内のエアロゾルが流れる流路に噴射方向を変更するための曲げ部を設けることなく、ノズルの吐出口から噴射されるエアロゾルの噴射角度を変更することが可能なノズルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記目的を達成するため請求項1に係るノズルは、微粒子をガス中に分散させて発生させたエアロゾルを超音速で噴射するノズルにおいて、吐出口の開口端側縁から斜め外側方向に所定長さ延出されて噴射方向に対して広がり方向に所定角度傾斜した傾斜面を形成する角度変更部を備えたことを特徴とする。
【0006】
また、請求項2に係るノズルは、請求項1に記載のノズルにおいて、前記角度変更部は、板状の壁部材であることを特徴とする。
【0007】
また、請求項3に係るノズルは、微粒子をガス中に分散させて発生させたエアロゾルを超音速で噴射するノズルにおいて、吐出口の開口端側縁に一側端縁部が噴射方向に対して広がり方向に回動可能に取り付けられて、前記開口端側縁から広がり方向に所定角度傾斜した傾斜面を形成する角度変更部材と、前記角度変更部材を噴射方向に対して広がり方向へ所定角度回動させると共にこの所定角度回動した状態を保持する回動手段と、を備えたことを特徴とする。
【0008】
また、請求項4に係るノズルは、請求項3に記載のノズルにおいて、前記角度変更部材は、板状の壁部材であることを特徴とする。
【0009】
更に、請求項5に係るノズルは、請求項3又は請求項4に記載のノズルにおいて、前記角度変更部材は、噴射方向に対して直角な方向の両側縁部のうちの少なくとも一方の側縁部から外側方向に延出される延出部を有し、前記回動手段は、前記延出部を介して該角度変更部材を所定角度回動させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
請求項1に係るノズルでは、微粒子をガス中に分散させて発生させたエアロゾルを超音速で噴射する吐出口に、この吐出口の開口端側縁から斜め外側方向に所定長さ延出されて噴射方向に対して広がり方向に所定角度傾斜した傾斜面を形成する角度変更部が設けられている。
これにより、吐出口からエアロゾルを超音速で噴射した場合には、この吐出口から超音速で噴射されるエアロゾルの噴射角度は、角度変更部の基端部で発生する膨張波及び自由境界面で反射する圧縮波によって、該角度変更部によって形成される傾斜面側へ偏向される。このため、このノズル内のエアロゾルが流れる流路に噴射方向を変更するための曲げ部を設けることなく、ノズルの吐出口から噴射されるエアロゾルの噴射角度を変更することが可能となる。また、ノズル内のエアロゾルが流れる流路に噴射方向を変更するための曲げ部を設ける必要がないため、ノズル内の摩耗を防止して長寿命化を図ることが可能となると共に、エアロゾルに摩耗粉等の不純物が混入することを防止することが可能となる。
【0011】
また、請求項2に係るノズルでは、角度変更部は、板状の壁部材であるため、簡易な構成でノズルの吐出口から噴射されるエアロゾルの噴射角度を変更することが可能となり、低コスト化を図ることが可能となる。
【0012】
また、請求項3に係るノズルでは、微粒子をガス中に分散させて発生させたエアロゾルを超音速で噴射する吐出口に、この吐出口の開口端側縁に一側端縁部が噴射方向に対して広がり方向に回動可能に取り付けられて、この開口端側縁から広がり方向に所定角度傾斜した傾斜面を形成する角度変更部材が設けられている。また、この角度変更部材を噴射方向に対して広がり方向へ所定角度回動させると共にこの所定角度回動した状態を保持する回動手段が設けられている。
これにより、回動手段を介して、吐出口の開口端側縁に回動可能に取り付けられた角度変更部材を噴射方向に対して広がり方向へ所定角度回動させると共にこの所定角度回動した状態で保持することが可能となる。そして、この角度変更部材を噴射方向に対して広がり方向へ所定角度回動させた状態で、吐出口からエアロゾルを超音速で噴射した場合には、この吐出口から超音速で噴射されるエアロゾルの噴射角度は、角度変更部材の基端部で発生する膨張波及び自由境界面で反射する圧縮波によって、該角度変更部材によって形成される傾斜面側へ偏向される。このため、このノズル内のエアロゾルが流れる流路に噴射方向を変更するための曲げ部を設けることなく、ノズルの吐出口から噴射されるエアロゾルの噴射角度を変更することが可能となる。また、ノズル内のエアロゾルが流れる流路に噴射方向を変更するための曲げ部を設ける必要がないため、ノズル内の摩耗を防止して長寿命化を図ることが可能となると共に、エアロゾルに摩耗粉等の不純物が混入することを防止することが可能となる。更に、回動手段は、角度変更部材を噴射方向に対して所定角度回動させた状態で保持することが可能なため、該回動手段を介してエアロゾルの噴射角度を所定範囲内で任意に偏向することが可能となる。
【0013】
また、請求項4に係るノズルでは、角度変更部材は、板状の壁部材である簡易な構成でノズルの吐出口から噴射されるエアロゾルの噴射角度を変更することが可能となり、低コスト化を図ることが可能となる。
【0014】
更に、請求項5に係るノズルでは、角度変更部材は、噴射方向に対して直角な方向の両側縁部のうちの少なくとも一方の側縁部に、外側方向に延出される延出部が設けられている。そして、回動手段は、この延出部を介して該角度変更部材を所定角度回動させるように構成されている。
これにより、回動手段は、角度変更部材の外側方向に延出される延出部を介して該角度変更部材を所定角度回動させるため、回動手段を角度変更部材に取り付ける構成の自由度が増すと共に、角度変更部材の小型化を図ることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明に係るノズルについて、本発明を具体化した実施例に基づき図面を参照しつつ詳細に説明する。
【実施例1】
【0016】
先ず、実施例1に係るノズルが装着される成膜装置1の概略構成について図1乃至図3に基づき説明する。図1は実施例1に係るノズルが装着される成膜装置1の概略構成を示す図である。図2はノズルの吐出口の構成を示す斜視図である。図3はノズルの吐出口から超音速で噴射されるエアロゾルの偏向角度を説明する図である。
図1に示すように、ノズル4が装着される成膜装置1は、金属、セラミックス等の所定粒径(例えば、粒径は約0.5μm〜100μmである。)の原料粉末をヘリウム、窒素、水素、空気等の搬送ガス中に分散させたエアロゾルを発生させるエアロゾル発生機構2と、内部が真空に設定される成膜室3と、この成膜室3内に固定されるノズル4と、一端がエアロゾル発生機構2に接続され他端がノズル4に接続されてエアロゾル発生機構2で発生したエアロゾルをノズル4に導入するエアロゾル導入管5とから構成されている。
【0017】
また、成膜室3内には、ノズル4から噴射されるエアロゾルによって皮膜が形成される基板6を保持する基板ホルダ7が配設されており、この基板ホルダ7は成膜室3に取り付けられた移動機構(X−Y−Z・θステージ)8によってX軸及びY軸方向(水平面方向)並びにZ方向(上下方向)に移動可能に、かつ、図外のピボット軸を中心にθ方向(回転方向)に回転し得るように構成されている。また、ノズル4は、吐出口11の開口端での噴射方向が、基板ホルダ7に保持される基板6の皮膜形成面に対してほぼ垂直になるように成膜室3内に固定されている。
【0018】
また、ノズル4は、図2に示すように、先端部にエアロゾルが噴射される微小な断面積を有する長方形状(例えば、横幅が約10mm〜15mmで、高さが約0.3〜0.5mmの長方形である。)の吐出口11が形成されている。また、この吐出口11の開口端には、一方の長辺側の側縁から全幅に渡って斜め外側方向(図2中、斜め下側方向である。)に所定長さ(例えば、約2mm乃至3mmである。)延出されて、噴射方向に対して広がり方向に所定角度θ1(例えば、約10度乃至45度の角度である。)だけ傾斜して、この吐出口11の開口端の長辺側の側縁から連続する傾斜面12を形成する角度変更部としての板状の壁部材13が設けられている。
【0019】
ここで、ノズル4の吐出口11からマッハ数Mが1より大きい超音速のエアロゾルを噴射した場合に、エアロゾルの噴射角が壁部材13の傾斜面12側へ偏向される角度について図3に基づいて説明する。尚、図3はノズル4の吐出口11から噴射されたエアロゾルの流れが「適正膨張」となる条件での流れを表している。
図3に示すように、ノズル4の吐出口11から超音速で噴射されるエアロゾルの流れ(矢印15方向である。)は、ノズル4の吐出口11での開口端と壁部材13の傾斜面12の基端部との角部で発生する膨張波16によって角度θ2(この場合は、角度θ2は、ほぼ角度θ1に等しい。)だけ傾斜面12側へ曲げられる。更に、各膨張波16は、自由境界面17で各圧縮波18として反射されるため、エアロゾルの流れ(矢印15方向である。)は、各圧縮波18によって角度θ3(この場合は、角度θ3は、ほぼ角度θ1に等しい。)だけ傾斜面12側へ更に曲げられる。従って、ノズル4の吐出口11から超音速で噴射されたエアロゾルは、吐出口11での噴射方向に対して角度(θ2+θ3)(この場合は、ほぼ角度θ1の2倍の角度である。)だけ傾斜面12側へ偏向されて噴射される。
【0020】
このように構成されたノズル4を用いた成膜装置1において基板6の表面上に皮膜を形成する方法について説明する。先ず、不図示の真空ポンプによって成膜室3内の内部を真空雰囲気に設定する。そして、エアロゾル発生機構2において、搬送ガス中に原料粉末の微粒子を分散させたエアロゾルを生成させる。次いで、この生成させたエアロゾルをエアロゾル導入管5によりノズル4内に導入すると、ノズル4の先端部に形成された断面長方形状の吐出口11から基板ホルダ7に保持された基板6に向けてエアロゾルが超音速で噴射される。また、吐出口11から超音速で噴射されるエアロゾルは、吐出口11の開口端と壁部材13の傾斜面12の基端部との角部で発生する膨張波16と、自由境界面17で反射される圧縮波18とによって、この壁部材13の傾斜面12側へ、吐出口11での噴射方向に対して、この傾斜面12の傾斜角θ1に対応する所定角度(例えば、傾斜角θ1の約2倍の角度である。)だけ偏向されて噴射される。これにより、ノズル4から噴射されたエアロゾル中の原料粉末の微粒子は、基板6の表面上に所定角度斜め下側から衝突して、その表面上に当該原料粉末の微粒子からなる皮膜が形成される。尚、この際、移動機構8により基板ホルダ7を基板6と一緒にX−Y−Z・θ方向に適宜に移動させることにより、皮膜の形成を行うことができる。
【0021】
以上説明した通り、実施例1に係るノズル4では、吐出口11の開口端において、斜め外側方向へ所定長さ延出された板状の壁部材13が設けられている。そして、このノズル4の吐出口11からエアロゾルを超音速で噴射した場合には、この吐出口11の開口端に設けられた壁部材13の傾斜面12側へ、吐出口11の開口端での噴射方向に対して、この傾斜面12の傾斜角θ1に対応する所定角度だけ偏向されて噴射される。
これにより、この壁部材13の傾斜面12の傾斜角θ1を設定することによって、このノズル4内のエアロゾルが流れる流路に噴射方向を変更するための曲げ部を設けることなく、ノズル4の吐出口11から噴射されるエアロゾルの噴射角度を所定角度だけ偏向させて、基板6の表面上に噴射することが可能となる。また、ノズル4内のエアロゾルが流れる流路に噴射方向を変更するための曲げ部を設ける必要がないため、ノズル4内の摩耗を防止して長寿命化を図ることが可能となると共に、エアロゾルに摩耗粉等の不純物が混入することを防止することが可能となる。また、板状の壁部材13を設けることによって、簡易な構成でノズル4の吐出口11から噴射されるエアロゾルの噴射角度を変更することが可能となり、低コスト化を図ることが可能となる。
【実施例2】
【0022】
次に、実施例2に係るノズル21について図4及び図5に基づいて説明する。図4は実施例2に係るノズル21の吐出口の構成を示す斜視図である。図5はノズル21の先端部の側断面図である。尚、上記実施例1に係る成膜装置1と同一符号は、上記実施例1に係る成膜装置1と同一あるいは相当部分を示すものである。
ここで、実施例2に係るノズル21は、上記実施例1に係るノズル4に替えて成膜室3内に固定されている。また、一端がエアロゾル発生機構2に接続されるエアロゾル導入管5の他端が、このノズル21に接続され、エアロゾル発生機構2で発生したエアロゾルがノズル21に導入されるように構成されている。また、ノズル21は、吐出口22の開口端での噴射方向が、基板ホルダ7に保持される基板6の皮膜形成面に対してほぼ垂直になるように成膜室3内に固定されている。
【0023】
また、図4及び図5に示すように、ノズル21は、先端部にエアロゾルが噴射される微小な断面積を有する長方形状(例えば、横幅が約10mm〜15mmで、高さが約0.3〜0.5mmの長方形である。)の吐出口22が形成されている。また、この吐出口22の開口端には、一方の長辺側の側縁に全幅に渡って、噴射方向の幅が所定長さ(例えば、約2mm乃至3mmである。)の角度変更部材としての板状の壁部材23が、その吐出口22側の端縁部を中心軸として斜め外側方向(図4中、斜め下側方向である。)に回動可能に取り付けられている。また、壁部材23の吐出口22側の表面部は、この吐出口22の開口端の長辺側の側縁から連続する表面部を形成している。
また、ノズル21の吐出口22側の端縁部には、壁部材23に対向する部分の全幅に渡って斜めに切り欠かれた切欠部24が形成されている。これにより、壁部材23が回動された際に、このノズル21の先端部との干渉を避けることができる。
【0024】
また、壁部材23の吐出口22に対して裏側には、電磁ソレノイド、エアーシリンダー、リニアステッピングモータ等で構成される回動手段としてのアクチュエータ25が配設されている。また、この壁部材23の吐出口22に対して裏側の表面部(図4中、下側の表面部である。)には、アクチュエータ25の軸方向に移動可能に設けられる可動軸26の一端側が固定されている。そして、このアクチュエータ25を駆動して可動軸26を軸方向に所定長さ移動させると共に、その状態を保持することによって、壁部材23が噴射方向に対して広がり方向へ回動された状態で保持される。
これにより、アクチュエータ25を駆動することによって、壁部材23の吐出口22側の表面部は、噴射方向に対して広がり方向に所定角度θ4(例えば、約0度乃至45度の角度である。)だけ傾斜した状態で保持されて、吐出口22の開口端の側縁から連続する傾斜面27が形成される。また、このアクチュエータ25を駆動することによって、傾斜面27の傾斜角θ4を所定角度範囲(例えば、約0度乃至45度の角度範囲である。)で任意に設定することができる。
【0025】
このように構成されたノズル21を用いた成膜装置1において基板6の表面上に皮膜を形成する方法について説明する。先ず、不図示の真空ポンプによって成膜室3内の内部を真空雰囲気に設定する。また、アクチュエータ25を駆動して、壁部材23を噴射方向に対して広がり方向へ回動された状態で保持し、吐出口22の開口端の側縁から連続する傾斜面27の傾斜角θ4を設定する。そして、エアロゾル発生機構2において、搬送ガス中に原料粉末の微粒子を分散させたエアロゾルが生成される。次いで、この生成されたエアロゾルをエアロゾル導入管5によりノズル21内に導入すると、ノズル21の先端部に形成された断面長方形状の吐出口22から基板ホルダ7に保持された基板6に向けてエアロゾルが超音速で噴射される。また、吐出口22から超音速で噴射されるエアロゾルは、吐出口22の開口端と壁部材23の傾斜面27の基端部との角部で発生する膨張波16と、自由境界面17で反射される圧縮波18とによって、この壁部材23の傾斜面27側へ、吐出口22の開口端での噴射方向に対して、この傾斜面27の傾斜角θ4に対応する所定角度(例えば、傾斜角θ4の約2倍の角度である。)だけ偏向されて噴射される。これにより、ノズル21から噴射されたエアロゾル中の原料粉末の微粒子は、基板6の表面上に所定角度斜め下側から衝突して、その表面上に当該原料粉末の微粒子からなる皮膜が形成される。尚、この際、移動機構8により基板ホルダ7を基板6と一緒にX−Y−Z・θ方向に適宜に移動させることにより、皮膜の形成を行うことができる。
【0026】
以上説明した通り、実施例2に係るノズル21では、吐出口22の開口端において、板状の壁部材23が、その吐出口22側の端縁部を中心軸として斜め外側方向に回動可能に取り付けられている。また、可動軸26を介して、この壁部材23を噴射方向に対して広がり方向へ回動した状態で保持するアクチュエータ25が、壁部材23の吐出口22に対して裏側に配設されている。そして、このアクチュエータ25を駆動することによって、壁部材23の吐出口22側の表面部は、噴射方向に対して広がり方向に所定角度θ4だけ傾斜した状態で保持されて、吐出口22の開口端の側縁から連続する傾斜面27が形成される。
そして、この吐出口22からエアロゾルを超音速で噴射した場合には、この吐出口22から超音速で噴射されるエアロゾルの噴射角度は、吐出口22の開口端と壁部材23の傾斜面27の基端部との角部で発生する膨張波16と、自由境界面17で反射される圧縮波18とによって、この壁部材23の傾斜面27側へ、吐出口22での噴射方向に対して、この傾斜面27の傾斜角θ4に対応する所定角度だけ偏向されて噴射される。
【0027】
これにより、アクチュエータ25を駆動して、この壁部材23の傾斜面27の傾斜角θ4を設定することによって、このノズル21内のエアロゾルが流れる流路に噴射方向を変更するための曲げ部を設けることなく、ノズル21の吐出口22から噴射されるエアロゾルの噴射角度を所定角度だけ偏向するように設定して、基板6の表面上に噴射することが可能となる。また、ノズル21内のエアロゾルが流れる流路に噴射方向を変更するための曲げ部を設ける必要がないため、ノズル21内の摩耗を防止して長寿命化を図ることが可能となると共に、エアロゾルに摩耗粉等の不純物が混入することを防止することが可能となる。また、アクチュエータ25を駆動することによって、板状の壁部材23を回動させる簡易な構成でノズル21の吐出口22から噴射されるエアロゾルの噴射角度を変更することが可能となり、噴射角度によるノズルの交換を必要としないので、低コスト化を図ることが可能となる。
【実施例3】
【0028】
次に、実施例3に係るノズル31について図6に基づいて説明する。図6は実施例3に係るノズル31の吐出口の構成を示す斜視図である。尚、上記実施例1に係る成膜装置1及び実施例2に係るノズル21と同一符号は、上記実施例1に係る成膜装置1及び実施例2に係るノズル21と同一あるいは相当部分を示すものである。
ここで、実施例3に係るノズル31は、上記実施例2に係るノズル21に替えて成膜室3内に固定されている。また、一端がエアロゾル発生機構2に接続されるエアロゾル導入管5の他端が、このノズル31に接続され、エアロゾル発生機構2で発生したエアロゾルがノズル31に導入されるように構成されている。また、ノズル31は、吐出口22の開口端での噴射方向が、基板ホルダ7に保持される基板6の皮膜形成面に対してほぼ垂直になるように成膜室3内に固定されている。
【0029】
図6に示すように、実施例3に係るノズル31は、実施例2に係るノズル21とほぼ同じ構成であるが、角度変更部材としての板状の壁部材23の長手方向両側縁部から外側方向に延出される各延出部32、33が形成されている点で異なっている。また、各延出部32、33の吐出口22に対して裏側には、それぞれアクチュエータ25が配設され、各延出部32、33の吐出口22に対して裏側の表面部(図6中、下側の表面部である。)には、各アクチュエータ25の軸方向に移動可能に設けられる可動軸26の一端側が固定されている点で異なっている。
【0030】
そして、各アクチュエータ25を駆動して可動軸26を軸方向に所定長さ移動させると共に、その状態を保持することによって、各延出部32、33を介して壁部材23が噴射方向に対して広がり方向へ回動された状態で保持される。
これにより、各アクチュエータ25を駆動することによって、各延出部32、33を介して壁部材23の吐出口22側の表面部は、噴射方向に対して広がり方向に所定角度θ4(例えば、約0度乃至45度の角度である。)だけ傾斜した状態で保持されて、吐出口22の開口端の側縁から連続する傾斜面27が形成される。また、各アクチュエータ25を駆動することによって、各延出部32、33を介して傾斜面27の傾斜角θ4を所定角度範囲(例えば、約0度乃至45度の角度範囲である。)で任意に設定することができる。
【0031】
このように構成されたノズル31を用いた成膜装置1において基板6の表面上に皮膜を形成する方法について説明する。先ず、不図示の真空ポンプによって成膜室3内の内部を真空雰囲気に設定する。また、各アクチュエータ25を駆動して、各延出部32、33を介して壁部材23を噴射方向に対して広がり方向へ回動された状態で保持し、吐出口22の開口端の側縁から連続する傾斜面27の傾斜角θ4を設定する。そして、エアロゾル発生機構2において、搬送ガス中に原料粉末の微粒子を分散させたエアロゾルが生成される。次いで、この生成されたエアロゾルをエアロゾル導入管5によりノズル31内に導入すると、ノズル31の先端部に形成された断面長方形状の吐出口22から基板ホルダ7に保持された基板6に向けてエアロゾルが超音速で噴射される。また、吐出口22から超音速で噴射されるエアロゾルは、吐出口22の開口端と壁部材23の傾斜面27の基端部との角部で発生する膨張波16と、自由境界面17で反射される圧縮波18とによって、この壁部材23の傾斜面27側へ、吐出口22の開口端での噴射方向に対して、この傾斜面27の傾斜角θ4に対応する所定角度(例えば、傾斜角θ4の約2倍の角度である。)だけ偏向されて噴射される。これにより、ノズル31から噴射されたエアロゾル中の原料粉末の微粒子は、基板6の表面上に所定角度斜め下側から衝突して、その表面上に当該原料粉末の微粒子からなる皮膜が形成される。尚、この際、移動機構8により基板ホルダ7を基板6と一緒にX−Y−Z・θ方向に適宜に移動させることにより、皮膜の形成を行うことができる。
【0032】
以上説明した通り、実施例3に係るノズル31では、吐出口22の開口端において、板状の壁部材23が、その吐出口22側の端縁部を中心軸として斜め外側方向に回動可能に取り付けられている。また、壁部材23の長手方向両側縁部から外側方向に延出される各延出部32、33が形成され、各延出部32、33の吐出口22に対して裏側には、それぞれアクチュエータ25が配設されている。また、各延出部32、33の吐出口22に対して裏側の表面部には、各アクチュエータ25の軸方向に移動可能に設けられる可動軸26の一端側が固定されている。そして、各アクチュエータ25を駆動することによって、各延出部32、33を介して壁部材23の吐出口22側の表面部は、噴射方向に対して広がり方向に所定角度θ4だけ傾斜した状態で保持されて、吐出口22の開口端の側縁から連続する傾斜面27が形成される。
そして、この吐出口22からエアロゾルを超音速で噴射した場合には、この吐出口22から超音速で噴射されるエアロゾルの噴射角度は、吐出口22の開口端と壁部材23の傾斜面27の基端部との角部で発生する膨張波16と、自由境界面17で反射される圧縮波18とによって、この壁部材23の傾斜面27側へ、吐出口22の開口端での噴射方向に対して、この傾斜面27の傾斜角θ4に対応する所定角度だけ偏向されて噴射される。
【0033】
これにより、各アクチュエータ25を駆動して、各延出部32、33を介して壁部材23の傾斜面27の傾斜角θ4を設定することによって、このノズル31内のエアロゾルが流れる流路に噴射方向を変更するための曲げ部を設けることなく、ノズル31の吐出口22から噴射されるエアロゾルの噴射角度を所定角度だけ偏向するように設定して、基板6の表面上に噴射することが可能となる。また、ノズル31内のエアロゾルが流れる流路に噴射方向を変更するための曲げ部を設ける必要がないため、ノズル31内の摩耗を防止して長寿命化を図ることが可能となると共に、エアロゾルに摩耗粉等の不純物が混入することを防止することが可能となる。また、各アクチュエータ25を各延出部32、33の裏側に配設して、各可動軸26の一端を各延出部32、33の裏側面に固定する構成にすることによって、各アクチュエータ25を壁部材23に取り付ける構成の自由度が増すと共に、この壁部材23の小型化を図ることが可能となる。また、各アクチュエータ25を駆動することによって、各延出部32、33を介して壁部材23を回動させる簡易な構成でノズル31の吐出口22から噴射されるエアロゾルの噴射角度を変更することが可能となり、噴射角によるノズルの交換を必要としないので、低コスト化を図ることが可能となる。
【0034】
尚、上記実施例3では、壁部材23の長手方向両側縁部に各延出部32、33を設けたが、壁部材23の長手方向の一方の側縁部に延出部32又は延出部33を設けるようにしてもよい。また、この一方だけ設けられた延出部32又は延出部33の裏側にアクチュエータ25を配設して、このアクチュエータ25の可動軸26の一端を、この延出部32又は延出部33の裏側に固定するようにしてもよい。これにより、アクチュエータ25を1個にすることができ、製造コストの削減化を図ることができる。
【実施例4】
【0035】
次に、実施例4に係るノズル41について図7に基づいて説明する。図7は実施例4に係るノズル41の吐出口の構成を示す斜視図である。尚、上記実施例1に係る成膜装置1と同一符号は、上記実施例1に係る成膜装置1と同一あるいは相当部分を示すものである。
ここで、実施例4に係るノズル41は、上記実施例1に係るノズル4に替えて成膜室3内に固定されている。また、一端がエアロゾル発生機構2に接続されるエアロゾル導入管5の他端が、このノズル41に接続され、エアロゾル発生機構2で発生したエアロゾルがノズル41に導入されるように構成されている。また、ノズル41は、吐出口42の開口端での噴射方向が、基板ホルダ7に保持される基板6の皮膜形成面に対してほぼ垂直になるように成膜室3内に固定されている。
【0036】
図7に示すように、実施例4に係るノズル41は、実施例1に係るノズル4とほぼ同じ構成であるが、先端部にエアロゾルが噴射される微小な断面積を有する円形状の吐出口42が形成されている。また、この吐出口42の開口端には、この開口端の円周部の約1/6以上の範囲に対応する周縁部(図7中では、約1/3の周縁部である。)から断面円弧状の壁部材43が、斜め外側方向(図7中、斜め下側方向である。)に所定長さ(例えば、約2mm乃至3mmである。)延出されている。また、この角度変更部としての壁部材43は、噴射方向に対して広がり方向に所定角度θ1(例えば、約10度乃至45度の角度である。)だけ傾斜して、この吐出口42の開口端の周縁から連続する傾斜面44を形成している。
尚、断面円弧状の壁部材43を周方向の複数箇所で分割して吐出口42の開口端の複数箇所に設ける場合には、この断面円弧状の各壁部材43の周方向の円弧の長さの和が、この開口端の円周部の約1/6以上になるように設ければよい。
【0037】
このように構成されたノズル41を用いた成膜装置1において基板6の表面上に皮膜を形成する方法について説明する。先ず、不図示の真空ポンプによって成膜室3内の内部を真空雰囲気に設定する。そして、エアロゾル発生機構2において、搬送ガス中に原料粉末の微粒子を分散させたエアロゾルが生成される。次いで、この生成されたエアロゾルをエアロゾル導入管5によりノズル41内に導入すると、ノズル41の先端部に形成された断面円形状の吐出口42から基板ホルダ7に保持された基板6に向けてエアロゾルが超音速で噴射される。また、吐出口42から超音速で噴射されるエアロゾルは、吐出口42の開口端と壁部材43の傾斜面44の基端部との角部で発生する膨張波16と、自由境界面17で反射される圧縮波18とによって、この壁部材43の傾斜面44側へ、吐出口42の開口端での噴射方向に対して、この傾斜面44の傾斜角θ1に対応する所定角度(例えば、傾斜角θ1の約2倍の角度である。)だけ偏向されて噴射される。これにより、ノズル41から噴射されたエアロゾル中の原料粉末の微粒子は、基板6の表面上に所定角度斜め下側から衝突して、その表面上に当該原料粉末の微粒子からなる皮膜が形成される。尚、この際、移動機構8により基板ホルダ7を基板6と一緒にX−Y−Z・θ方向に適宜に移動させることにより、皮膜の形成を行うことができる。
【0038】
以上説明した通り、実施例4に係るノズル41では、吐出口42の開口端において、斜め外側方向へ所定長さ延出された断面円弧状の壁部材43が設けられている。そして、このノズル41の吐出口42からエアロゾルを超音速で噴射した場合には、この吐出口42の開口端に設けられた壁部材43の傾斜面44側へ、吐出口42の開口端での噴射方向に対して、この傾斜面44の傾斜角θ1に対応する所定角度だけ偏向されて噴射される。このため、この壁部材43の傾斜面44の傾斜角θ1を設定することによって、このノズル41内のエアロゾルが流れる流路に噴射方向を変更するための曲げ部を設けることなく、ノズル41の吐出口42から噴射されるエアロゾルの噴射角度を所定角度だけ偏向させて、基板6の表面上に噴射することが可能となる。また、ノズル41内のエアロゾルが流れる流路に噴射方向を変更するための曲げ部を設ける必要がないため、ノズル41内の摩耗を防止して長寿命化を図ることが可能となると共に、エアロゾルに摩耗粉等の不純物が混入することを防止することが可能となる。また、断面円弧状の壁部材43を設けることによって、簡易な構成でノズル41の吐出口42から噴射されるエアロゾルの噴射角度を変更することが可能となり、低コスト化を図ることが可能となる。
【実施例5】
【0039】
次に、実施例5に係るノズル51について図8に基づいて説明する。図8は実施例5に係るノズル51の吐出口の構成を示す正面図である。尚、上記実施例1に係る成膜装置1と同一符号は、上記実施例1に係る成膜装置1と同一あるいは相当部分を示すものである。
ここで、実施例5に係るノズル51は、上記実施例1に係るノズル4に替えて成膜室3内に固定されている。また、一端がエアロゾル発生機構2に接続されるエアロゾル導入管5の他端が、このノズル51に接続され、エアロゾル発生機構2で発生したエアロゾルがノズル51に導入されるように構成されている。また、ノズル51は、吐出口52の開口端での噴射方向が、基板ホルダ7に保持される基板6の皮膜形成面に対してほぼ垂直になるように成膜室3内に固定されている。
【0040】
図8に示すように、実施例5に係るノズル51は、実施例1に係るノズル4とほぼ同じ構成であるが、先端部にエアロゾルが噴射される微小な断面積を有する横長六角形状(例えば、横幅が約10mm〜15mmで、高さが約0.3〜0.5mmの横長六角形である。)の吐出口52が形成されている。また、この吐出口52の開口端には、一方の長辺側の側縁(図8中、下側の長辺の側縁)から、この長辺の全幅又は1/3以上の幅(図8では、長辺の約4/5の幅である。)に渡って、斜め外側方向(図8中、下側方向である。)に所定長さ(例えば、約2mm乃至3mmである。)延出されて噴射方向に対して広がり方向に所定角度θ1(例えば、約10度乃至45度の角度である。)だけ傾斜して、この吐出口52の開口端の長辺側の側縁から連続する傾斜面54を形成する角度変更部としての板状の壁部材53が設けられている。
【0041】
このように構成されたノズル51を用いた成膜装置1において基板6の表面上に皮膜を形成する方法について説明する。先ず、不図示の真空ポンプによって成膜室3内の内部を真空雰囲気に設定する。そして、エアロゾル発生機構2において、搬送ガス中に原料粉末の微粒子を分散させたエアロゾルが生成される。次いで、この生成されたエアロゾルをエアロゾル導入管5によりノズル51内に導入すると、ノズル51の先端部に形成された断面横長六角形状の吐出口52から基板ホルダ7に保持された基板6に向けてエアロゾルが超音速で噴射される。また、吐出口52から超音速で噴射されるエアロゾルは、吐出口52の開口端と壁部材53の傾斜面54の基端部との角部で発生する膨張波16と、自由境界面17で反射される圧縮波18とによって、この壁部材53の傾斜面54側へ、吐出口52の開口端での噴射方向に対して、この傾斜面54の傾斜角θ1に対応する所定角度(例えば、傾斜角θ1の約2倍の角度である。)だけ偏向されて噴射される。これにより、ノズル51から噴射されたエアロゾル中の原料粉末の微粒子は、基板6の表面上に所定角度斜め下側から衝突して、その表面上に当該原料粉末の微粒子からなる皮膜が形成される。尚、この際、移動機構8により基板ホルダ7を基板6と一緒にX−Y−Z・θ方向に適宜に移動させることにより、皮膜の形成を行うことができる。
【0042】
以上説明した通り、実施例5に係るノズル51では、吐出口52の開口端において、斜め外側方向へ所定長さ延出された板状の壁部材53が設けられている。そして、このノズル51の吐出口52からエアロゾルを超音速で噴射した場合には、この吐出口52の開口端に設けられた壁部材53の傾斜面54側へ、吐出口52の開口端での噴射方向に対して、この傾斜面54の傾斜角θ1に対応する所定角度だけ偏向されて噴射される。
これにより、この壁部材53の傾斜面54の傾斜角θ1を設定することによって、このノズル51内のエアロゾルが流れる流路に噴射方向を変更するための曲げ部を設けることなく、ノズル51の吐出口52から噴射されるエアロゾルの噴射角度を所定角度だけ偏向させて、基板6の表面上に噴射することが可能となる。また、ノズル51内のエアロゾルが流れる流路に噴射方向を変更するための曲げ部を設ける必要がないため、ノズル51内の摩耗を防止して長寿命化を図ることが可能となると共に、エアロゾルに摩耗粉等の不純物が混入することを防止することが可能となる。また、板状の壁部材53を設けることによって、簡易な構成でノズル51の吐出口52から噴射されるエアロゾルの噴射角度を変更することが可能となり、低コスト化を図ることが可能となる。
また、上記実施例1のように、吐出口52の開口端の一方の長辺側に、全幅に渡って壁部材53が設けられていない場合でも、この長辺の1/3以上の幅(図8では、長辺の約4/5の幅である。)に渡って壁部材53が設けられている場合には、この壁部材53の幅方向両端部分においては、傾斜面54に影響されて傾斜角θ1から傾斜角θ1の約2倍より少ない角度だけ偏向されて噴射される。
【0043】
尚、ノズル51の吐出口52の開口端に、壁部材53が設けられた長辺の両側の辺にも、各辺の側縁から延出される各壁部材を設けるようにしてもよい。
例えば、図9に示すように、ノズル51の壁部材53が設けられた長辺の両側の辺の側縁から、この各辺の全幅又は1/3以上の幅(図9では、各辺の約1/2の幅である。)に渡って、斜め外側方向(図9中、左右斜め外側方向である。)に所定長さ(例えば、約2mm乃至3mmである。)延出されて噴射方向に対して広がり方向に所定角度θ1(例えば、約10度乃至45度の角度である。)だけ傾斜して、この吐出口52の開口端の各辺の側縁から連続する各傾斜面56、57を形成する角度変更部としての板状の各壁部材58、59を設けるようにしてもよい。
【実施例6】
【0044】
次に、実施例6に係るノズル61について図10に基づいて説明する。図10は実施例6に係るノズル61の吐出口の構成を示す正面図である。尚、上記実施例1に係る成膜装置1と同一符号は、上記実施例1に係る成膜装置1と同一あるいは相当部分を示すものである。
ここで、実施例6に係るノズル61は、上記実施例1に係るノズル4に替えて成膜室3内に固定されている。また、一端がエアロゾル発生機構2に接続されるエアロゾル導入管5の他端が、このノズル61に接続され、エアロゾル発生機構2で発生したエアロゾルがノズル61に導入されるように構成されている。また、ノズル61は、吐出口62の開口端での噴射方向が、基板ホルダ7に保持される基板6の皮膜形成面に対してほぼ垂直になるように成膜室3内に固定されている。
【0045】
図10に示すように、実施例6に係るノズル61は、実施例1に係るノズル4とほぼ同じ構成であるが、先端部にエアロゾルが噴射される微小な断面積を有する楕円形状の吐出口62が形成されている。また、この吐出口62の開口端には、この開口端の全周部の約1/6以上の範囲に対応する周縁部(図10中では、約1/3の周縁部である。)から外側方向(図10中、下側方向)に湾曲した板状の壁部材63が、斜め外側方向(図10中、斜め下側方向である。)に所定長さ(例えば、約2mm乃至3mmである。)延出されている。また、この角度変更部としての壁部材63は、噴射方向に対して広がり方向に所定角度θ1(例えば、約10度乃至45度の角度である。)だけ傾斜して、この吐出口62の開口端の周縁から連続する傾斜面64を形成している。
尚、湾曲した板状の壁部材63を周方向の複数箇所で分割して吐出口62の開口端の複数箇所に設ける場合には、この湾曲した板状の各壁部材63の周方向の円弧の長さの和が、この開口端の全周部の約1/6以上になるように設ければよい。
【0046】
このように構成されたノズル61を用いた成膜装置1において基板6の表面上に皮膜を形成する方法について説明する。先ず、不図示の真空ポンプによって成膜室3内の内部を真空雰囲気に設定する。そして、エアロゾル発生機構2において、搬送ガス中に原料粉末の微粒子を分散させたエアロゾルが生成される。次いで、この生成されたエアロゾルをエアロゾル導入管5によりノズル61内に導入すると、ノズル61の先端部に形成された断面楕円形状の吐出口62から基板ホルダ7に保持された基板6に向けてエアロゾルが超音速で噴射される。また、吐出口62から超音速で噴射されるエアロゾルは、吐出口62の開口端と壁部材63の傾斜面64の基端部との角部で発生する膨張波16と、自由境界面17で反射される圧縮波18とによって、この壁部材63の傾斜面64側へ、吐出口62の開口端での噴射方向に対して、この傾斜面64の傾斜角θ1に対応する所定角度(例えば、傾斜角θ1の約2倍の角度である。)だけ偏向されて噴射される。これにより、ノズル61から噴射されたエアロゾル中の原料粉末の微粒子は、基板6の表面上に所定角度斜め下側から衝突して、その表面上に当該原料粉末の微粒子からなる皮膜が形成される。尚、この際、移動機構8により基板ホルダ7を基板6と一緒にX−Y−Z・θ方向に適宜に移動させることにより、皮膜の形成を行うことができる。
【0047】
以上説明した通り、実施例6に係るノズル61では、吐出口62の開口端において、斜め外側方向へ所定長さ延出された湾曲した板状の壁部材63が設けられている。そして、このノズル61の吐出口62からエアロゾルを超音速で噴射した場合には、この吐出口62の開口端に設けられた壁部材63の傾斜面64側へ、吐出口62の開口端での噴射方向に対して、この傾斜面64の傾斜角θ1に対応する所定角度だけ偏向されて噴射される。このため、この壁部材63の傾斜面64の傾斜角θ1を設定することによって、このノズル61内のエアロゾルが流れる流路に噴射方向を変更するための曲げ部を設けることなく、ノズル61の吐出口62から噴射されるエアロゾルの噴射角度を所定角度だけ偏向させて、基板6の表面上に噴射することが可能となる。また、ノズル61内のエアロゾルが流れる流路に噴射方向を変更するための曲げ部を設ける必要がないため、ノズル61内の摩耗を防止して長寿命化を図ることが可能となると共に、エアロゾルに摩耗粉等の不純物が混入することを防止することが可能となる。また、湾曲した板状の壁部材63を設けることによって、簡易な構成でノズル61の吐出口62から噴射されるエアロゾルの噴射角度を変更することが可能となり、低コスト化を図ることが可能となる。
また、上記実施例1のように、吐出口62の開口端の長径に対して相対向する半周部分の一方の全円弧部分に渡って壁部材63が設けられていない場合でも、この半周部分の1/3以上の周縁部分(図10では、この半周部分の約2/3の周縁部分である。)に渡って壁部材63が設けられている場合には、この壁部材63の幅方向両端部分においては、傾斜面64に影響されて傾斜角θ1から傾斜角θ1の約2倍より少ない角度だけ偏向されて噴射される。
【0048】
尚、本発明は前記実施例1乃至実施例6に限定されることはなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々の改良、変形が可能であることは勿論である。例えば、以下のようにしてもよい。
【0049】
(A)前記実施例1では、ノズル4は、長方形状の吐出口11の一方の長辺側の側縁から全幅に渡って斜め外側方向に延出される板状の壁部材13が設けられていたが、この壁部材13の幅は、吐出口11の長辺側の幅の約1/3以上の幅であればよい。
例えば、図11に示すように、長辺側の幅の約2/3の幅の板状の壁部材71を設けるようにしてもよい。この壁部材71は、吐出口11の一方の長辺側から斜め外側方向(図11中、斜め下側方向である。)に所定長さ(例えば、約2mm乃至3mmである。)延出されて噴射方向に対して広がり方向に所定角度θ1(例えば、約10度乃至45度の角度である。)だけ傾斜して、この吐出口11の開口端の長辺側の側縁から連続する傾斜面72を形成している。これにより、この吐出口11の壁部材71に対向する部分では、傾斜面72の傾斜角θ1に対応する所定角度(例えば、傾斜角θ1の約2倍の角度である。)だけ偏向されて噴射される。また、吐出口11の壁部材71の幅方向両端部分においては、傾斜面72に影響されて傾斜角θ1から傾斜角θ1の約2倍より少ない角度だけ偏向されて噴射される。
【0050】
(B)前記実施例1では、ノズル4は、長方形状の吐出口11の一方の長辺側の側縁から全幅に渡って斜め外側方向に延出される板状の壁部材13が設けられていたが、幅の狭い板状の壁部材をこの長辺側の側縁に複数個配置するようにしてもよい。この場合には、複数個の幅寸法の合計が、吐出口11の長辺側の幅の約1/3以上の幅寸法であることが好ましい。
例えば、図12に示すように、吐出口11の長辺側の幅寸法の約1/4の幅寸法の板状の各壁部材81〜83をこの長辺側の側縁に配置するようにしてもよい。各壁部材81〜82は、吐出口11の一方の長辺側から斜め外側方向(図12中、斜め下側方向である。)に所定長さ(例えば、約2mm乃至3mmである。)延出されて噴射方向に対して広がり方向に所定角度θ1(例えば、約10度乃至45度の角度である。)だけ傾斜して、この吐出口11の開口端の長辺側の側縁から連続する各傾斜面85〜87を形成している。これにより、この吐出口11の各壁部材81〜83に対向する部分では、各傾斜面85〜87の傾斜角θ1に対応する所定角度(例えば、傾斜角θ1の約2倍の角度である。)だけ偏向されて噴射される。また、吐出口11の各壁部材81、82間、及び各壁部材82、83間においては、各傾斜面85〜87に影響されて傾斜角θ1から傾斜角θ1の約2倍より少ない角度だけ偏向されて噴射される。
【0051】
(C)前記実施例1では、ノズル4は、長方形状の吐出口11が形成されていたが、この吐出口11の開口端の一方の長辺側が、図13乃至図15に示すように、正面視連続する三角溝状、正面視連続する円弧の溝状、正面視連続する四角溝状の場合には、各吐出口の全周長さの約1/6以上の幅の板状の壁部材を一方の長辺側に設けるようにしてもよい。
例えば、図13に示すように、ノズル91の先端部にエアロゾルが噴射される微小な断面積を有する長方形状(例えば、横幅が約10mm〜15mmで、高さが約0.3〜0.5mmの長方形である。)の吐出口92が形成されている。そして、吐出口92の開口端の一方の長辺側が正面視連続する三角溝状の場合には、長辺方向の幅の約2/3の幅の板状の壁部材93を設けるようにしてもよい。この壁部材93は、吐出口92の正面視連続する三角溝状の長辺側から斜め外側方向(図13中、斜め下側方向である。)に所定長さ(例えば、約2mm乃至3mmである。)延出されて噴射方向に対して広がり方向に所定角度θ1(例えば、約10度乃至45度の角度である。)だけ傾斜して、この吐出口92の開口端の正面視連続する三角溝状の長辺側の側縁から連続する傾斜面94を形成している。これにより、この吐出口92の壁部材93に対向する部分では、傾斜面94の傾斜角θ1に対応する所定角度(例えば、傾斜角θ1の約2倍の角度である。)だけ偏向されて噴射される。また、吐出口92の壁部材93の幅方向両端部分においては、傾斜面94に影響されて傾斜角θ1から傾斜角θ1の約2倍より少ない角度だけ偏向されて噴射される。
【0052】
また、図14に示すように、ノズル101の先端部にエアロゾルが噴射される微小な断面積を有する長方形状(例えば、横幅が約10mm〜15mmで、高さが約0.3〜0.5mmの長方形である。)の吐出口102が形成されている。そして、吐出口102の開口端の一方の長辺側が正面視連続する円弧の溝状の場合には、長辺方向の幅の約2/3の幅の板状の壁部材103を設けるようにしてもよい。この壁部材103は、吐出口102の正面視連続する円弧の溝状の長辺側から斜め外側方向(図14中、斜め下側方向である。)に所定長さ(例えば、約2mm乃至3mmである。)延出されて噴射方向に対して広がり方向に所定角度θ1(例えば、約10度乃至45度の角度である。)だけ傾斜して、この吐出口102の開口端の正面視連続する円弧の溝状の長辺側の側縁から連続する傾斜面104を形成している。これにより、この吐出口102の壁部材103に対向する部分では、傾斜面104の傾斜角θ1に対応する所定角度(例えば、傾斜角θ1の約2倍の角度である。)だけ偏向されて噴射される。また、吐出口102の壁部材103の幅方向両端部分においては、傾斜面104に影響されて傾斜角θ1から傾斜角θ1の約2倍より少ない角度だけ偏向されて噴射される。
【0053】
また、図15に示すように、ノズル111の先端部にエアロゾルが噴射される微小な断面積を有する長方形状(例えば、横幅が約10mm〜15mmで、高さが約0.3〜0.5mmの長方形である。)の吐出口112が形成されている。そして、吐出口112の開口端の一方の長辺側が正面視連続する四角溝状の場合には、長辺方向の幅の約2/3の幅の板状の壁部材113を設けるようにしてもよい。この壁部材113は、吐出口112の正面視連続する四角溝状の長辺側から斜め外側方向(図13中、斜め下側方向である。)に所定長さ(例えば、約2mm乃至3mmである。)延出されて噴射方向に対して広がり方向に所定角度θ1(例えば、約10度乃至45度の角度である。)だけ傾斜して、この吐出口112の開口端の正面視連続する四角溝状の長辺側の側縁から連続する傾斜面114を形成している。これにより、この吐出口112の壁部材113に対向する部分では、傾斜面114の傾斜角θ1に対応する所定角度(例えば、傾斜角θ1の約2倍の角度である。)だけ偏向されて噴射される。また、吐出口112の壁部材113の幅方向両端部分においては、傾斜面114に影響されて傾斜角θ1から傾斜角θ1の約2倍より少ない角度だけ偏向されて噴射される。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】実施例1に係るノズルが装着される成膜装置の概略構成を示す図である。
【図2】ノズルの吐出口の構成を示す斜視図である。
【図3】ノズルの吐出口から超音速で噴射されるエアロゾルの偏向角度を説明する図である。
【図4】実施例2に係るノズルの吐出口の構成を示す斜視図である。
【図5】ノズルの先端部の側断面図である。
【図6】実施例3に係るノズルの吐出口の構成を示す斜視図である。
【図7】実施例4に係るノズルの吐出口の構成を示す斜視図である。
【図8】実施例5に係るノズルの吐出口の構成を示す正面図である。
【図9】実施例5に係るノズルの吐出口の他の構成を示す正面図である。
【図10】実施例6に係るノズルの吐出口の構成を示す正面図である。
【図11】実施例1に係るノズルの吐出口の他の構成を示す正面図である。
【図12】実施例1に係るノズルの吐出口の他の構成を示す正面図である。
【図13】実施例1に係るノズルの吐出口の他の構成を示す正面図である。
【図14】実施例1に係るノズルの吐出口の他の構成を示す正面図である。
【図15】実施例1に係るノズルの吐出口の他の構成を示す正面図である。
【符号の説明】
【0055】
1 成膜装置
2 エアロゾル発生機構
3 成膜室
4、21、31、41、51、61、91、101、111 ノズル
5 エアロゾル導入管
6 基板
7 基板ホルダ
8 移動機構
11、22、42、52、62、92、102、112 吐出口
12、27、44、54、64、72、85〜87、94、104、114 傾斜面
13、23、43、53、63、71、81〜83、93、103、113 壁部材
25 アクチュエータ
26 可動軸
32、33 延出部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
微粒子をガス中に分散させて発生させたエアロゾルを超音速で噴射するノズルにおいて、
吐出口の開口端側縁から斜め外側方向に所定長さ延出されて噴射方向に対して広がり方向に所定角度傾斜した傾斜面を形成する角度変更部を備えたことを特徴とするノズル。
【請求項2】
前記角度変更部は、板状の壁部材であることを特徴とする請求項1に記載のノズル。
【請求項3】
微粒子をガス中に分散させて発生させたエアロゾルを超音速で噴射するノズルにおいて、
吐出口の開口端側縁に一側端縁部が噴射方向に対して広がり方向に回動可能に取り付けられて、前記開口端側縁から広がり方向に所定角度傾斜した傾斜面を形成する角度変更部材と、
前記角度変更部材を噴射方向に対して広がり方向へ所定角度回動させると共にこの所定角度回動した状態を保持する回動手段と、
を備えたことを特徴とするノズル。
【請求項4】
前記角度変更部材は、板状の壁部材であることを特徴とする請求項3に記載のノズル。
【請求項5】
前記角度変更部材は、噴射方向に対して直角な方向の両側縁部のうちの少なくとも一方の側縁部から外側方向に延出される延出部を有し、
前記回動手段は、前記延出部を介して該角度変更部材を所定角度回動させることを特徴とする請求項3又は請求項4に記載のノズル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2008−173540(P2008−173540A)
【公開日】平成20年7月31日(2008.7.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−7213(P2007−7213)
【出願日】平成19年1月16日(2007.1.16)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】