説明

ノンハロゲン難燃性ポリオレフィン系樹脂組成物およびそれを用いた難燃性絶縁電線・ケーブル

【課題】 ポリ塩化ビニル樹脂組成物との比重分別が可能であり、かつ微量のシロキサン化合物の揮散がなく、またリン化合物が存在しないノンハロゲンの難燃性ポリオレフィン系樹脂組成物を提供すること。また、それを導体上に被覆することによって、ISO/DIS6722に規定される45°傾斜燃焼試験に合格する難燃性を有し、特に半導体製造工場や極度に清浄度を求められる場所での使用が可能な難燃性絶縁電線・ケーブルを提供することにある。
【解決手段】 ポリオレフィン系樹脂100質量部に対して、金属水酸化物30〜50質量部、層間修飾粘土鉱物1〜10質量部を含有し、かつシロキサン化合物およびリン化合物を含まないポリオレフィン系樹脂組成物であって、比重が1.14以下であるノンハロゲン難燃性ポリオレフィン系樹脂組成物とすることによって、解決される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリ塩化ビニル樹脂組成物との比重分別が可能なノンハロゲン難燃性ポリオレフィン系樹脂組成物、並びにその樹脂組成物を用いた、微量のシロキサン化合物の揮発がなく、またリン化合物が存在しないノンハロゲンの難燃性絶縁電線・ケーブルに関する。
【背景技術】
【0002】
ポリ塩化ビニル樹脂組成物(以下PVC樹脂組成物)は難燃性と電気絶縁性に優れているが、燃焼時に腐食性の塩化水素ガスやダイオキシン等の有害ガスを発生することから焼却処分に問題があり、また廃棄処分においては、安定剤として添加する鉛系化合物が問題となる。このためポリオレフィン系樹脂組成物が注目されているが、この樹脂組成物に難燃性を付与するためには、難燃剤として大量の水酸化マグネシウムや水酸化アルミニウム等の金属水酸化物を添加する必要がある。このように金属水酸化物を大量に添加すると、得られた樹脂組成物の機械的特性の低下等が生じる。このため金属水酸化物の量を減らすことを目的に、難燃助剤を併用することが行われている。例えばノンハロゲンの難燃助剤として、シリコーン化合物やリン化合物が添加されている。しかしながら、電線・ケーブルの被覆材として使用される場合、シリコーン化合物はシロキサン化合物から合成されるため、微量の低分子量のシロキサン化合物が大気中に揮散する問題があり、特に半導体製造工場や極度に清浄度を要求される場所での使用が制限されていた。また赤燐等のリン化合物は、環境汚染の問題が懸念されている。
【0003】
さらに、前述の難燃性のポリオレフィン系樹脂組成物は、電線・ケーブルに使用された場合、その廃却処理にも問題があった。すなわち、難燃性を向上させるために難燃剤を大量に添加したポリオレフィン系樹脂組成物は、その比重が大きくなりPVC樹脂組成物と比重分別が難しくなり、材料のリサイクル化が困難となっていた。そして、このような問題点を解決する提案が、特許文献1に見られる。すなわち、ポリオレフィン系樹脂に添加する金属水酸化物の量を減らし、難燃助剤(特許文献1では密度が1.5g/cm未満の難燃補助剤と記載)を併用させることによって、所期の難燃性と低比重化を計るものである。この難燃性ポリオレフィン系樹脂組成物は比重が1.14以下で、PVC樹脂組成物との比重差による分別を可能にし、リサイクル性に優れている。しかしながら、前記の難燃性ポリオレフィン系樹脂組成物に、前記難燃助剤としてシリコーン化合物を用いた場合には、特に電線・ケーブルの被覆材料として使用した場合に、微量の低分子量シロキサン化合物が揮散する問題があり、半導体製造工場や極度に清浄度を求められる場所での使用が制限されることがあった。
【特許文献1】特開2000−248121号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
よって本発明が解決しようとする課題は、ポリ塩化ビニル樹脂組成物との比重分別が可能であり、かつ微量のシロキサン化合物の揮散がなく、またリン化合物が存在しないノンハロゲンの難燃性ポリオレフィン系樹脂組成物を提供すること。また、前記ノンハロゲンの難燃性ポリオレフィン系樹脂組成物を導体上に被覆することによって、ISO/DIS6722に規定される45°傾斜燃焼試験に合格する難燃性を有し、特に半導体製造工場や極度に清浄度を求められる場所での使用が可能な難燃性絶縁電線・ケーブルを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記解決しようとする課題は、請求項1に記載されるように、ポリオレフィン系樹脂100質量部に対して、金属水酸化物30〜50質量部、層間修飾粘土鉱物1〜10質量部を含有し、かつシロキサン化合物およびリン化合物を含まないポリオレフィン系樹脂組成物であって、比重が1.14以下であるノンハロゲン難燃性ポリオレフィン系樹脂組成物とすることによって、解決される。
【0006】
また請求項2に記載されるように、前記層間修飾粘土鉱物は、層間を有機化合物で修飾した層間修飾粘土鉱物であり、かつ前記樹脂組成物中での平均厚さが50nm以下である請求項1に記載のノンハロゲン難燃性ポリオレフィン系樹脂組成物とすることによって、解決される。
【0007】
そして請求項3に記載されるように、請求項1または2に記載されるノンハロゲン難燃性ポリオレフィン系樹脂組成物が導体上に被覆された難燃性絶縁電線・ケーブルであって、ISO/DIS6722に規定される45°傾斜燃焼試験に合格する難燃性絶縁電線・ケーブルとすることによって、解決される。
【発明の効果】
【0008】
本発明は以上のように、ポリオレフィン系樹脂100質量部に対して、金属水酸化物30〜50質量部、層間修飾粘土鉱物1〜10質量部を含有し、かつシロキサン化合物およびリン化合物を含まないポリオレフィン系樹脂組成物であって、比重が1.14以下であるノンハロゲン難燃性ポリオレフィン系樹脂組成物としたので、ノンハロゲンで高度の難燃性を有し、また比重が1.14以下であるからポリ塩化ビニル樹脂組成物との比重分別が可能となり、材料のリサイクル化が容易となる。さらに、ハロゲン化合物を含まないので焼却処理が可能であり、またリン化合物による環境汚染の問題もない。そしてシリコーン化合物を含まないので、使用中に微量のシロキサン化合物の発生を嫌うような半導体製造工場等においても使用可能である。また前記層間修飾粘土鉱物を、層間を有機化合物で修飾した層間修飾粘土鉱物とし、かつ前記樹脂組成物中での平均厚さが50nm以下としたので、金属水酸化物の添加量を減らしても、目的とする難燃性を十分に維持させることができる。
【0009】
さらに、請求項1または2に記載されるノンハロゲン難燃性ポリオレフィン系樹脂組成物を導体上に被覆した難燃性絶縁電線・ケーブルとしたので、ISO/DIS6722に規定される45°傾斜燃焼試験に合格するノンハロゲンの難燃性を有し、またシリコーン化合物を含有しないので微量のシロキサン化合物が発生する問題がなく、特に半導体製造工場や極度の清浄度を求められる場所での使用が可能となる。さらには、リン化合物も含有しないので、難燃性絶縁電線・ケーブルの廃却処理による環境汚染の問題がない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下に本発明を詳細に説明する。請求項1に記載される発明は、ポリオレフィン系樹脂100質量部に対して、金属水酸化物30〜50質量部、層間修飾粘土鉱物1〜10質量部を含有し、かつシロキサン化合物およびリン化合物を含まないポリオレフィン系樹脂組成物であって、比重が1.14以下であるノンハロゲン難燃性ポリオレフィン系樹脂組成物である。そして、ベース樹脂となる前記ポリオレフィン系樹脂としては、直鎖状低密度ポリエチレン(以下LLDPE)、超低密度ポリエチレン(以下VLDPE)、低密度ポリエチレン(以下LDPE)、中密度ポリエチレン(以下MDPE)、高密度ポリエチレン(以下HDPE)やポリプロピレン(以下PP)等のオレフィン系単独重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体(以下EVA)、エチレン−エチルアクリレート共重合体(以下EEA)、エチレン−メチルアクリレート(以下EMA)、エチレン−ブチルアクリレート共重合体(以下EBA)やエチレン−プロピレン−ジエン共重合体(以下EPDM)等のエチレン系共重合体、無水マレイン酸等のカルボン酸をグラフトした酸変性ポリエチレン、酸変性ポリプロピレンや酸変性エチレン系共重合体、エチレン−プロピレンゴム(以下EPR)、アクリルゴム(以下ACR)やスチレン−エチレン−ブタジエン−スチレン共重合体等のエラストマーが単独で或いは混合物として使用される。特に難燃性を考慮する場合には、EVA、EEAやEMA等のエチレン系共重合体を樹脂分率で50質量%以上とすることが好ましい。具体的なEVAとしては、例えば三井・デュポンポリケミカル社の商品名であるエバフレックスV421、EEAとしては、例えば三井・デュポンポリケミカル社の商品名であるエバフレックスA−701が、またEMAとしては、例えば三井・デュポンポリケミカル社の商品名であるエルバロイAC1609などが挙げられる。
【0011】
また、難燃剤として添加する金属水酸化物としては、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、ホウ酸亜鉛等が使用される。そしてその添加量は、ポリオレフィン系樹脂100質量部に対して30〜50質量部とする。これは、金属水酸化物の添加量が30質量部未満では、層間修飾粘土鉱物と併用しても目的とする難燃性が得られないためであり、また50質量部を超えて添加すると、得られたノンハロゲン難燃性オレフィン系樹脂組成物の比重が1.15以上となって、PVC樹脂組成物との比重分別が困難となるためである。
【0012】
そして、前記金属水酸化物の中でも特に好ましい水酸化マグネシウムについて述べると、水酸化マグネシウムは、高温に曝されると水を放出してその気化熱により自消性を発現し、しかもこの難燃剤はノンハロゲンであるから、燃焼時に有害なハロゲンガスを生じることがない。また水酸化マグネシウムは、ポリオレフィン系樹脂との混練する際の分散性を良好にするために、表面処理を施すのが好ましい。すなわち、ステアリン酸、シランカップリング剤等である。このような処理が施された具体的な商品としては、協和化学工業社のキスマ5A、キスマ5L、キスマ5Pや神島化学社のマグシーズS3などが挙げられる。
【0013】
さらに、難燃助剤として添加される層間修飾粘土鉱物は、前記金属水酸化物と併用することによって、金属水酸化物の添加量を低減させても目的とする難燃性を低下させないために添加される。その添加量は、ポリオレフィン系樹脂100質量部に対して、1〜10質量部とする。添加量が1質量未満であると目的とする難燃性が得られず、また10質量部を超えて添加すると、難燃性は得られるが機械的特性が低下するので好ましくない。
【0014】
前記層間修飾粘土鉱物は、請求項2に記載されるように、層間を有機化合物で修飾した層間修飾粘土鉱物であって、かつ前記樹脂組成物中での平均厚さが50nm以下とするのが好ましい。このように粘土鉱物を薄肉化することにより、シリケート層の表面積が増大し燃焼阻害効果のあるチャー(炭素殻)の形成が促進され、難燃性を発現する。具体的には、ポリオレフィン系樹脂組成物中での平均厚さが50nm以下とされることによって、前述の効果をより発現する。また、層間を有機化合物で修飾した層間修飾粘土鉱物は、粘土鉱物を構成するシリケート層とシリケート層の間隔(一般にクリアランススペースと呼ばれる)が1.5nm以上の有機化合物によって修飾されたものがよい。前記有機化合物としては、例えばアルキルアンモニウム塩やフェニルアルキルアンモニウム塩から得られる有機カチオンが使用される。また粘土鉱物としては有機カチオンを層間にインターカレーション可能なものならよく、層電荷がプラスのものが用いられる。粘土鉱物としては、スメクタイト族(層電荷が0.2〜0.6)、バーミキュライト族(層電荷が0.6〜0.9)、雲母族(層電荷が0.6〜1.0)や脆雲母族(層電荷が1.8〜2.0)等が挙げられる。具体的な層間修飾粘土鉱物の例としては、モンモリロナイトに塩化ジメチルジステアリルアンモニウムをインターカレーションした層間修飾クレイである、ズードケミー触媒社製のナノフィル948等がある。
【0015】
以上のノンハロゲン難燃性ポリオレフィン系樹脂組成物は、各種難燃性絶縁電線・ケーブルやそれらの付属品、各種シート類、各種ホース類、建築内装材、家具材料、玩具材料等として使用できる。そして、シリコーン化合物やリン化合物等の難燃助剤を併用しなくても十分に目的とする難燃性が得られるため、ノンハロゲンの難燃性を有すると共に、シロキサン化合物等が発生することを嫌う環境用として使用できる。またこれを廃却してもリン化合物による環境汚染の問題や、また焼却してもハロゲンガス等の有害ガスを発生することがない。さらにその比重は1.14以下であるから、PVC樹脂組成物との比重分別を行なうことができ、材料のリサイクル化が可能となる。なお、このノンハロゲン難燃性ポリオレフィン系樹脂組成物には、酸化防止剤、紫外線吸収剤、銅害防止剤、成形性向上のための滑剤や着色剤を必要量添加してもよい。
【0016】
そして請求項3に記載されるように、前記ノンハロゲン難燃性ポリオレフィン系樹脂組成物を導体上に被覆した難燃性絶縁電線・ケーブルは、ISO/DIS6722に規定される45°傾斜燃焼試験に合格する難燃性が得られる。例えば、0.3〜100mm程度の銅導体上に、厚さ0.2〜8mm程度に押出し被覆した難燃性絶縁電線・ケーブルは、使用中に低分子量シロキサン化合物を揮散することがないので、半導体製造工場や極度に清浄度を要求される場所で使用する難燃性絶縁電線・ケーブルとしても好ましい。また、ISO/DIS6722に規定される45°傾斜燃焼試験に合格するノンハロゲンの難燃性絶縁電線は、自動車用低圧電線をはじめとして各種の絶縁電線・ケーブルとして使用できる。さらに機械的特性も、引張強度が10MPa以上、伸びが150%以上と優れたものである。また、この難燃性絶縁電線・ケーブルは比重が1.14以下であるから、廃却後にはPVC樹脂組成物との比重分別が可能であり、リサイクル化し易く、また焼却した場合にも有害なハロゲンガスやダイオキシン等を発生することがない。さらに埋設等の廃却処分しても、リン化合物による環境汚染の問題も生じることがない。
【実施例】
【0017】
表1並びに表2に記載する実施例、比較例によって、本発明の効果を確認した。表1および2に記載するポリオレフィン系樹脂組成物を、30mmΦ、L/D=45の2軸押出機を用いて混練してコンパウンドを作製した。また導体サイズが2mmの銅導体上に0.8mm厚さ被覆して難燃性絶縁電線とした。これ等を試料とした。なお、ポリオレフィン系樹脂組成物の各成分は、EVAとしてエバフレックスV421(三井・デュポンポリケミカル社、VA量28%)、無水マレイン酸変性EVAとしてVR−103(三井・デュポンポリケミカル社)、EMAとして三井・デュポンポリケミカル社のエルバロイAC1609、また層間修飾粘土鉱物として、モンモリロナイトに塩化ジメチルジステアリルアンモニウムをインターカレーションした層間修飾クレイであるナノフィル948(ズードケミー触媒社)、水酸化マグネシウムとして、高級飽和脂肪酸で表面処理されたキスマ5A(協和化学工業社)、シリコーンパウダーとしてDC4−7081(東レ・ダウコーニング・シリコーン社)、赤燐(燐化学工業社)および酸化防止剤としてイルガノックス1010(チバ・スペシャリティケミカルズ社)を用いた。
【0018】
前記の試料について、以下の特性試験を行なった。引張強度については、10MPa以上を合格として○印で、10MPa未満を×印で表記した。また伸びについては、150%以上を合格として○印で、150%未満を×印で表記した。さらに比重を測定し、1.14以下を合格として○印で、1.15以上を×印で表記した。これ等の試験はいずれもJIS規格K7113に準拠して行った。また前記難燃性絶縁電線について、ISO/DIS6722(Road vehicies−60V and 600V single core cables−Dimensions、test and requirement)の45°傾斜燃焼試験を行ない、合格したものを○印で、不合格のものを×印で示した。さらにシロキサン化合物およびリン化合物について定量分析を行ない、検出量が1ppm未満を合格として○印で、1ppm以上の場合を不合格として×印で表記した。また、前記コンパウンドをTダイによって、厚さ100μmのフィルムを作製した。このフィルムについて、任意の中央部分の断面における層間修飾粘土鉱物の分散状態を透過型電子顕微鏡を用いて観察し、ノンハロゲン難燃性ポリオレフィン系樹脂組成物中の層間修飾粘土鉱物の厚さ(nm)として測定した。実施例の結果を表1に、比較例の結果を表2に記載した。
【0019】
【表1】

【0020】
【表2】

【0021】
表1から明らかなとおり、実施例1〜11に記載される本発明のノンハロゲン難燃性ポリオレフィン系樹脂組成物並びにそれを用いた難燃性絶縁電線は、いずれの試験項目にも合格するものであった。すなわち、ポリオレフィン系樹脂100質量部に対して、金属水酸化物30〜50質量部、層間修飾粘土鉱物1〜10質量部を含有し、かつシロキサン化合物およびリン化合物を含まないポリオレフィン系樹脂組成物であって、比重が1.14以下であるノンハロゲン難燃性ポリオレフィン系樹脂組成物は、PVC樹脂組成物と比重分別が可能であり、引張強度が10MPa以上で伸びも150%以上と機械的特性にも優れたものである。また、このようなノンハロゲン難燃性ポリオレフィン系樹脂組成物を導体上に被覆した難燃性絶縁電線は、ISO/DIS6722の45°傾斜燃焼試験に合格するものであった。さらに層間修飾粘土鉱物は、ポリオレフィン系樹脂組成物中での平均厚さが50nm以下であった。そして、シロキサン化合物並びにリン化合物の含有量は、いずれも1ppm未満であった。
【0022】
これに対して、本発明の範囲を外れる比較例1〜12は、試験項目のいずれかが不合格となった。すなわち、比較例1のように層間修飾粘土鉱物の添加量が本発明の下限値未満であると、難燃性がISO/DIS6722の45°傾斜燃焼試験に合格しない。また、比較例2のように層間修飾粘土鉱物の添加量が本発明の上限値を超えると、特に機械的特性のうち伸びが目的の値を満足しなくなる。さらに、比較例3および4のように、水酸化マグネシウムの添加量が本発明の下限値未満となると、層間修飾粘土鉱物が本発明の範囲であっても、難燃性がISO/DIS6722の45°傾斜燃焼試験に合格しない。さらに比較例5のように、水酸化マグネシウムの添加量が本発明の範囲であっても層間修飾粘土鉱物を添加しないと、比較例3、4と同様に難燃性が不合格となる。また比較例6および7のように、水酸化マグネシウムの添加量が本発明の上限値を超えると、比重が1.15以上となってPVC樹脂組成物との比重分別が不可となり好ましくない。さらに、比較例10および11のようにポリオレフィン系樹脂を、EVAと酸変性EVAとの混合物とした場合も、水酸化マグネシウムの添加量が本発明の下限値未満であると、ISO/DIS6722の45°傾斜燃焼試験に合格しない。また比較例12のように、ポリオレフィン系樹脂がEMAの場合にも、水酸化マグネシウムの添加量が本発明の下限値未満であると、ISO/DIS6722の45°傾斜燃焼試験に合格しなかった。さらに比較例8および9のように、シロキサン化合物または赤燐を添加したものは、1ppm以上のシロキサン化合物またはリン化合物が検出された。
【産業上の利用可能性】
【0023】
本発明のノンハロゲン難燃性ポリオレフィン系樹脂組成物を用いることによって、PVC樹脂組成物との比重分別が可能となり、また微量のシロキサン化合物の発生を嫌うような半導体製造工場等での使用も可能となり有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリオレフィン系樹脂100質量部に対して、金属水酸化物30〜50質量部、層間修飾粘土鉱物1〜10質量部を含有し、かつシロキサン化合物およびリン化合物を含まないポリオレフィン系樹脂組成物であって、比重が1.14以下であることを特徴とするノンハロゲン難燃性ポリオレフィン系樹脂組成物。
【請求項2】
前記層間修飾粘土鉱物は、層間を有機物で修飾した層間修飾粘土鉱物であり、かつ前記樹脂組成物中での平均厚さが50nm以下であることを特徴する請求項1に記載のノンハロゲン難燃性ポリオレフィン系樹脂組成物。
【請求項3】
請求項1または2に記載されるノンハロゲン難燃性ポリオレフィン系樹脂組成物が導体上に被覆された難燃性絶縁電線・ケーブルであって、ISO/DIS6722に規定される45°傾斜燃焼試験に合格することを特徴とする難燃性絶縁電線・ケーブル。

【公開番号】特開2006−28420(P2006−28420A)
【公開日】平成18年2月2日(2006.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−211933(P2004−211933)
【出願日】平成16年7月20日(2004.7.20)
【出願人】(000005186)株式会社フジクラ (4,463)
【Fターム(参考)】