説明

ハイブリッドリレー

【課題】機械式接点スイッチの接点間にノイズ成分が含まれた場合に半導体スイッチ及び負荷の誤動作の発生を効果的に抑制する。
【解決手段】第1駆動部により接点が開閉される第1機械式接点スイッチと、別体の第2駆動部により接点が開閉される第2機械式接点スイッチと、第2機械式接点スイッチと直列接続される半導体スイッチとからなる。電源から負荷に供給する給電路上で、第2機械式接点スイッチ及び半導体スイッチによる直列回路と第1機械式接点スイッチとが並列接続される。第1機械式接点スイッチは、接点が開閉されるときに第1駆動部に電流が供給されるラッチング型で、第2機械式接点スイッチ及び半導体スイッチは、第1機械式接点スイッチの接点における開閉を切り換える前にはそれぞれが導通し、当該開閉を切り換えた後はそれぞれが非導通となる。第1機械式接点スイッチに対して、スナバ回路が並列接続されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、機械式接点スイッチと半導体スイッチとを備えたハイブリッドリレーに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、照明器具等といったインバータ制御を行うインバータ回路を備えた負荷への電力の供給と遮断とを切り換えるために、並列接続された機械式接点スイッチと半導体スイッチとを備えるハイブリッドリレーが使用されている。インバータ回路を備えた負荷は、交流電圧を直流電圧に変換するために大容量の平滑コンデンサが付設されている。交流電源から負荷への電源投入時には、この平滑コンデンサに大電流が流れ込むため、負荷には突入電流が流れ込むことになる。特に、電源電圧が高いような高負荷の状況下では、負荷に流れ込む突入電流が大きくなるため、負荷と交流電源との間に接続されるハイブリッドリレーにも、この突入電流に基づく大電流が流れることになる。
【0003】
このため、このようなハイブリッドリレーにおいては、機械式接点スイッチに突入電流に基づく大電流が流れて当該機械式接点スイッチの接点対の接点溶着を回避するために、まず、半導体スイッチが導通状態にされる。
【0004】
なお、以下の説明において、「半導体スイッチが導通状態とされる」こと、「機械式接点スイッチが閉じられた状態とされる」ことを、それぞれ「半導体スイッチがONされる」、「機械式接点スイッチがONされる」と記載する。
同様に、以下の説明において、「半導体スイッチが非導通状態とされる」こと、「機械式接点スイッチが開けられた状態とされる」ことを、それぞれ「半導体スイッチがOFFされる」、「機械式接点スイッチがOFFされる」と記載する。
【0005】
突入電流が半導体スイッチに流れた後、負荷に供給される電流が定常状態となったときに、機械式接点スイッチがONされる。このような動作により、ハイブリッドリレー内の機械式接点スイッチに大電流が流れることを抑制することができ、当該機械式接点スイッチの接点対の接触直前におけるアークの発生による接点溶着を回避することができる。
【0006】
このように、ハイブリッドリレーは、機械式接点スイッチにおける接点溶着を防止するために半導体スイッチを備え、半導体スイッチがONされた後に機械式接点スイッチがONされ、その後に半導体スイッチがOFFにされ、その後に負荷への電力供給を開始する。
【0007】
また、機械式接点スイッチがONされる前に、半導体スイッチがONされる前に当該機械式接点スイッチとは異なる他の機械式接点スイッチを当該半導体スイッチと直列接続するように追加した構成のハイブリッドリレーが提案されている(例えば、特許文献1参照)。このハイブリッドリレーの回路構成について図5を参照して説明する。図5は、従来のハイブリッドリレーの回路構成を示す概略回路図である。
【0008】
ハイブリッドリレー1は、直列接続された交流電源2及び負荷3のそれぞれの一端に接続されることで、交流電源2及び負荷3と閉回路を形成する。ハイブリッドリレー1は、負荷3の一端に一端が接続された交流電源2の他端と接続される端子10と、負荷3の他端に接続される端子11と、端子10,11に両端が接続される接点部S1を有する第1機械式接点スイッチ12と、端子10と接点部S1の一端との接続ノードに一端が接続された接点部S2を有する第2機械式接点スイッチ13と、接点部S2の他端にT1電極が接続されると共に端子11にT2電極が接続されたトライアックS3を含む半導体スイッチ14と、第1,第2機械式接点スイッチ12,13と半導体スイッチ14のそれぞれのON(閉)/OFF(開)制御を行う信号処理回路16と、を備える。
【0009】
このハイブリッドリレー1を介した交流電源2から負荷3への電力供給は、信号処理回路16の指示に基づいて行われる。具体的には、信号処理回路16からの指示に基づいて、第2機械式接点スイッチ13及び半導体スイッチ14がそれぞれONされる。更に、信号処理回路16からの指示に基づいて、交流電源2から負荷3への電力供給後、直列接続された第2機械式接点スイッチ13及び半導体スイッチ14に対して並列接続された第1機械式接点スイッチ12がONされる。この後、信号処理回路16からの指示に基づいて、半導体スイッチ14及び第2機械式接点スイッチ13の順にOFFされる。このように、交流電源2から負荷3への電力供給は、半導体スイッチ14のトライアックS3がONされたタイミングで、第2機械式接点スイッチ12及び半導体スイッチ14により形成される給電路を介して行われる。更に、交流電源2から負荷3への電力供給は、当該第2機械式接点スイッチ13及び半導体スイッチ14が共にOFFされた後は第1機械式接点スイッチ12を含む給電路を介して行われる。
【0010】
次に、第1機械式接点スイッチ12がONされている状態で、ハイブリッドリレー1を介した交流電源2から負荷3への電力供給遮断は、信号処理回路16の指示に基づいて行われる。具体的には、信号処理回路16からの指示に基づいて、第2機械式接点スイッチ13及び半導体スイッチ14がそれぞれONされる。これにより、第2機械式接点スイッチ13及び半導体スイッチ14を介した給電路が確立され、負荷3へ流れる電流の一部が、第2機械式接点スイッチ13及び半導体スイッチ14に流れて、第1機械式接点スイッチ12に流れる電流を低減する。この後、信号処理回路16からの指示に基づいて、第1機械式接点スイッチ12がOFFされ、半導体スイッチ14及び第2機械式接点スイッチ13の順にOFFされる。なお、交流電源2から負荷3への電力供給遮断は、半導体スイッチ14のOFFに同期するようにして行われる。
【0011】
この特許文献1に開示されているハイブリッドリレー1は、負荷への給電路上に設置される機械式接点スイッチをラッチング型のものとし、この機械式接点スイッチを開閉するときのみ、他の機械式接点スイッチ及び半導体スイッチを動作させる。これにより、ハイブリッドリレー1の使用時における消費電力を低減することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2010−103099号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかしながら、上述した特許文献1におけるハイブリッドリレー1では、交流電源2から負荷3へ電力を供給する際、第2機械式接点スイッチ13の接点部S2をONさせてから半導体スイッチ14をONするまでの間にノイズが発生する可能性がある。このように、第2機械式接点スイッチ13の接点部S2の接点間電圧にノイズ成分が含まれると、図6に示すように、半導体スイッチ14を構成するトライアックS3が誤動作することになる。図6は、従来のハイブリッドリレーにおける動作タイミングの一例を説明するタイミングチャートである。
【0014】
従って、第2機械式接点スイッチ13をONした場合に当該第2機械式接点スイッチ13の接点部S2の接点間電圧にノイズ成分が含まれた場合には、当該トライアックS3の予期しないON又はOFFに同期して負荷3が誤動作する。このような場合には、結果的に、ハイブリッドリレー1の動作信頼性が安定しないという課題があった。
【0015】
このような従来の問題に鑑みて、本発明は、機械式接点スイッチの接点部の接点間にノイズが発生した場合に、半導体スイッチ及び負荷の誤動作の発生を効果的に抑制するハイブリッドリレーを提案することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記目的を達成するために、本発明のハイブリッドリレーは、第1駆動部により接点が開閉される第1機械式接点スイッチと、第1駆動部とは別体の第2駆動部により接点が開閉される第2機械式接点スイッチと、第2機械式接点スイッチと直列接続される半導体スイッチとを備え、電源から負荷に供給する給電路上で、第2機械式接点スイッチ及び半導体スイッチによる直列回路と第1機械式接点スイッチとが並列接続され、第1機械式接点スイッチが、当該第1機械式接点スイッチの接点が開閉されるときに第1駆動部に電流が供給されるラッチング型の機械式接点スイッチであり、第2機械式接点スイッチ及び半導体スイッチは、第1機械式接点スイッチの接点における開閉を切り換える前にはそれぞれが導通し、第1機械式接点スイッチの接点における開閉を切り換えた後はそれぞれが非導通となり、第1機械式接点スイッチに対して、スナバ回路が並列接続されていることを特徴とする。
【0017】
また、このハイブリッドリレーにおいて、スナバ回路は、半導体スイッチを構成する抵抗と、半導体スイッチを構成するフォトトライアックに対して並列接続するように設けられたコンデンサとが直列接続することで形成されることが好ましい。
【0018】
また、このハイブリッドリレーにおいて、スナバ回路は、半導体スイッチに対して並列接続された抵抗とコンデンサとが直列接続することで形成されることが好ましい。
【0019】
また、このハイブリッドリレーにおいて、スナバ回路を構成する抵抗は、耐サージ抵抗であることが好ましい。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、機械式接点スイッチの接点部の接点間にノイズが発生した場合に、半導体スイッチ及び負荷の誤動作の発生を効果的に抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】第1の実施形態のハイブリッドリレーの回路構成を示す概略回路図
【図2】負荷をONする場合における第1の実施形態のハイブリッドリレーの動作タイミングの一例を説明するタイミングチャート
【図3】負荷をOFFする場合における第1の実施形態のハイブリッドリレーの動作タイミングの一例を説明するタイミングチャート
【図4】第1の実施形態の変形例のハイブリッドリレーの回路構成を示す概略回路図
【図5】従来のハイブリッドリレーの回路構成を示す概略回路図
【図6】従来のハイブリッドリレーにおける動作タイミングの一例を説明するタイミングチャート
【発明を実施するための形態】
【0022】
<第1の実施形態>
本発明の第1の実施形態のハイブリッドリレーについて、図面を参照して説明する。図1は、第1の実施形態のハイブリッドリレー1の回路構成を示す概略回路図である。
【0023】
また、以下の説明において、「半導体スイッチが導通状態とされる」こと、「機械式接点スイッチが閉じられた状態とされる」ことを、それぞれ「半導体スイッチがONされる」、「機械式接点スイッチがONされる」と記載する。
同様に、「半導体スイッチが非導通状態とされる」こと、「機械式接点スイッチが開けられた状態とされる」ことを、それぞれ「半導体スイッチがOFFされる」、「機械式接点スイッチがOFFされる」と記載する。
【0024】
1.ハイブリッドリレー1の構成
図1に示すように、第1の実施形態のハイブリッドリレー1は、直列接続された交流電源2及び負荷3のそれぞれの一端に接続されることにより、交流電源2及び負荷3と閉回路を形成する。即ち、交流電源2から負荷3への電力供給及び電力供給遮断が、ハイブリッドリレー1がON状態及びOFF状態によって行われる。交流電源2は、例えば100[V]の商用電源等である。負荷3は、例えば蛍光灯や白熱球を含む照明器具または換気扇等とされる。
【0025】
ハイブリッドリレー1は、負荷3の一端に一端が接続された交流電源2の他端と接続された端子10と、負荷3の他端に接続された端子11と、端子10に一端が接続された接点部S1を含む第1機械式接点スイッチ12と、端子10と接点部S1の一端との接続ノードに一端が接続された接点部S2を含む第2機械式接点スイッチ13と、接点部S2の他端にT1電極が接続され且つ端子11にT2電極が接続されたトライアックS3を含む半導体スイッチ14と、第1,第2機械式接点スイッチ12,13と半導体スイッチ14とがそれぞれON状態又はOFF状態にする制御を行う信号処理回路16とを備える。
【0026】
このハイブリッドリレー1の回路構成を詳細に説明する。ハイブリッドリレー1では、第2機械式接点スイッチ13の接点部S2と半導体スイッチ14のトライアックS3とによって構成される直列回路と、第1機械式接点スイッチ12とが、端子10,11間で並列接続されている。
【0027】
第1機械式接点スイッチ12は、ラッチング型の機械式接点スイッチであり、接点部S1をON状態に切り換えるための電磁力を発生する磁気コイルL1と、接点部S1をOFF状態に切り換えるための電磁力を発生する磁気コイルL2とを備える。即ち、磁気コイルL1,L2が第1機械式接点スイッチ12の第1駆動部を構成する。
【0028】
第2機械式接点スイッチ13は、常時励磁型の機械式接点スイッチであり、接点部S2をON状態に保持するための電磁力を発生する磁気コイルL3を備える。即ち、磁気コイルL3が第2機械式接点スイッチ13の第2駆動部を構成する。
【0029】
第1機械式接点スイッチ12において、磁気コイルL1の一端が、アノード電極が信号処理回路16に接続されたダイオードD3のカソード電極に接続される一方で、磁気コイルL2の一端が、アノード電極が信号処理回路16に接続されたダイオードD4のカソード電極に接続される。これら磁気コイルL1,L2の他端同士は接続される。更に、これら磁気コイルL1,L2の接続ノードは、接地されると共に、ダイオードD1,D2それぞれのアノード電極に接続される。なお、以下の説明における「接地」とは、ハイブリッドリレー1内における基準電圧に接続することを意味する。
【0030】
また、ダイオードD1,D2それぞれのカソード電極は、ダイオードD3,D4それぞれのカソード電極に接続される。このように、第1機械式接点スイッチ12は、直列接続された磁気コイルL1,L2と、アノード電極同士が接続されるダイオードD1,D2と、アノード電極が信号処理回路16に接続されたダイオードD3,D4とによって構成される。
【0031】
第2機械式接点スイッチ13は、1つの磁気コイルL3と、磁気コイルL3と並列接続されたダイオードD5とによって構成される。磁気コイルL3の一端とダイオードD5のアノード電極とによる接続ノードが接地され、磁気コイルL3の他端とダイオードD5のカソード電極とによる接続ノードが信号処理回路16に接続される。
【0032】
半導体スイッチ14は、トライアックS3と、トライアックS3のT2電極とゲート電極との間に並列接続されたコンデンサC1、抵抗R1及びコンデンサC2と、トライアックS3のT1電極に一端が接続された抵抗R2と、抵抗R2の他端にT1電極が接続されたフォトトライアックS4を含むフォトトライアックカプラ15とによって構成される。
【0033】
なお、第2機械式接点スイッチ13の接点部S2がONされた場合には半導体スイッチ14にも突入電流に基づく大電流が流れるため、抵抗R2は耐サージ抵抗であることが好ましい。
【0034】
更に、コンデンサC2は、フォトトライアックS4と並列接続されると共に、抵抗R2と直列接続されている。抵抗R2とコンデンサC2とが直列接続されることで、半導体スイッチ14内にスナバ回路が形成されている。図1に示すように、このスナバ回路は、第1機械式接点スイッチ12に対して、並列接続するように設けられている。
【0035】
フォトトライアックカプラ15は、信号処理回路16に対して抵抗R3を介してアノード電極が接続されると共にカソード電極が接地された発光ダイオードLDを更に備える。また、フォトトライアックカプラ15は、T2電極がトライアックS3のゲート電極に接続されたフォトトライアックS4に、発光ダイオードLDからの光信号が入光される。更に、フォトトライアックS4は、ゼロクロス点孤機能を備えた半導体スイッチング素子であり、発光ダイオードLDからの光信号が入光されたとき、当該フォトトライアックS4のT2電極側に交流電源2による交流電圧の中心電圧(基準電圧)を検出して初めて導通される。
【0036】
2.ハイブリッドリレー1による電力供給
ハイブリッドリレー1における交流電源2から負荷3への電源投入時等で電力供給を行うときの動作について、図2のタイミングチャートを参照して説明する。図2は、第1の実施形態のハイブリッドリレー1を介して、負荷3をONする場合、即ち、負荷3に電力を供給して動作させる場合における当該ハイブリッドリレー1の動作タイミングの一例を示すタイミングチャートである。
【0037】
以下、交流電源2から負荷3へ電力供給することが信号処理回路16に指示された際の、ハイブリッドリレー1内の各部の動作について説明する。図2に示すように、信号処理回路16は、時刻t0に、磁気コイルL3に対して駆動電流を供給するための信号を出力する。この信号に応じて供給された駆動電流に基づいて、磁気コイルL3に電磁吸引力が発生し、この磁気コイルL3を含む第2機械式接点スイッチ13の接点部S2が時刻t1にON状態となる。なお、磁気コイルL3と並列接続されたダイオードD5は、磁気コイルL3を流れる電流が逆流することを防止するための逆流防止ダイオードとして機能する。時刻t1に第2機械式接点スイッチ13の接点部S2がON状態になるため、当該接点部S2の接点間電圧が図2に示すように下がることになる。
【0038】
更に、図1に示したように、半導体スイッチ14内には、半導体スイッチ14を構成する抵抗R2と、フォトトライアックS4と並列接続するように設けられたコンデンサC2とにより、スナバ回路が形成されている。このスナバ回路は、交流電源2から負荷3への電力供給の際に、時刻t1で第2機械式接点スイッチ13の接点部S2がON状態になったときに発生するノイズ(図6参照)の発生を抑制し、結果的にトライアックS3の誤動作の発生を抑制することができる。即ち、当該スナバ回路により、第1の実施形態のハイブリッドリレー1は、トライアックS3の誤動作を発生させずに、交流電源2から負荷3への電力供給を適切なタイミングで行うことができる。
【0039】
時刻t1に第2機械式接点スイッチ13の接点部S2がON状態になった後、信号処理回路16は、時刻t2に、発光ダイオードLDに対して駆動電流を与える。これにより、フォトトライアックカプラ15では、発光ダイオードLDが発光し、当該発光による光信号をフォトトライアックS4が受光する。フォトトライアックS4はゼロクロス点孤機能を備え、図2に示すように、交流電源2からの交流電圧が基準電圧である中心電圧となったことを検出したとき(時刻t3)に、フォトトライアックS4がON状態となる。
【0040】
フォトトライアックS4のON状態により、抵抗R1及びコンデンサC1による並列回路に対して、交流電源2からの交流電流が、抵抗R2及びフォトトライアックS4を介して流れる。これにより、抵抗R1及びコンデンサC1による並列回路が動作し、トライアックS3のゲート電極に電流が供給され、トライアックS3のT1電極―T2電極に電圧が発生し、当該電極間がON状態、即ちトライアックS3がON状態となる(時刻t3)。これにより、負荷3が、ハイブリッドリレー1の第2機械式接点スイッチ13及び半導体スイッチ14を介して、交流電源2と電気的に接続されるため、負荷3には交流電源2による電力が供給される。
【0041】
このとき、交流電源2から負荷3に対して突入電流が流れ込むため、ONされた状態のトライアックS3及びフォトトライアックS4のそれぞれにも、この突入電流に基づく大電流が流れる。この突入電流は、フォトトライアックS4がゼロクロス点呼機能を備えることにより、フォトトライアックS4がON状態になるタイミングが、交流電源2からの交流電圧の周期に対してバラツキがなくなるため、その電流量におけるバラツキを抑制することができる。
【0042】
時刻t3にトライアックS3がON状態になった後、信号処理回路16は、時刻t4に、駆動電流となるパルス電流を、ダイオードD3を介して磁気コイルL1に与える。このとき、第1機械式接点スイッチ12では、ダイオードD1が磁気コイルL1へ流れる電流が逆流することを防ぐ逆流防止ダイオードとして機能し、磁気コイルL2へ電流が流れることをダイオードD4が防止する。
これにより、磁気コイルL1にパルス電流が流れて、一時的に電磁吸引力が働き、第1機械式接点スイッチ12の接点部S1がON状態となる(時刻t5)。なお、第1機械式接点スイッチ12はラッチング型であるため、磁気コイルL1への電流供給がなくなった後でも、接点部S1はONされた状態で保持される。
【0043】
更に、時刻t5で第1機械式接点スイッチ12の接点部S1がON状態になることで、交流電源2からの電流が接点部S1に流れ、トライアックS3に当該電流が流れなくなる。従って、第1機械式接点スイッチ12の接点部S1のON状態とほぼ同期するように、時刻t5に、トライアックS3のT1電極−T2電極間がOFF状態、即ち、トライアックS3がOFF状態となる。なお、時刻t5以降でも、第1機械式接点スイッチ12の接点部S1はON状態であるため、交流電源2から負荷3への電力は継続的に供給されている。
【0044】
時刻t5でトライアックS3がOFF状態となった後、信号処理回路16は、時刻t6で、第2機械式接点スイッチ13の磁気コイルL3への駆動電流の供給を停止する。即ち、磁気コイルL3への電流供給が停止されるため、常時励磁型の第2機械式接点スイッチ13は、磁気コイルL3による電磁吸引力がなくなって、当該第2機械式接点スイッチ13の接点部S2がOFF状態になる。
【0045】
これにより、トライアックS3がOFF状態になった後に第2機械式接点スイッチ13がOFFされた状態となるため、第2機械式接点スイッチ13及び半導体スイッチ14により構成される給電路上に電流が流れていない状態で接点部S2の接点がOFFされる。よって、第2機械式接点スイッチ13がOFFされた状態とするときに、接点部S2の接点間におけるアークの発生が防止できるため、第2機械式接点スイッチ13における接点溶着を防止することができる。
【0046】
3.ハイブリッドリレー1による電力供給遮断
次に、ハイブリッドリレー1における交流電源2から負荷3への電源遮断等で電力供給を遮断するときの動作について、図3のタイミングチャートを参照して説明する。図3は、第1の実施形態のハイブリッドリレー1を介して、負荷3をOFFする場合、即ち、負荷3への電力供給を遮断する場合における当該ハイブリッドリレー1の動作タイミングの一例を示すタイミングチャートである。
【0047】
なお、図3において時刻t7の直前では、負荷3には交流電源2から電力が供給されており、第1機械式接点スイッチ12の接点部S1はON状態、第2機械式接点スイッチ13の接点部S2はOFF状態、トライアックS3を含む半導体スイッチ14はOFF状態であるとする。
【0048】
以下、交流電源2から負荷3へ電力供給遮断することが信号処理回路16に指示された際の、ハイブリッドリレー1内の各部の動作について説明する。図3に示すように、信号処理回路16は、交流電源2より負荷3へ電力供給がなされているときに、時刻t7に、磁気コイルL3に対して駆動電流を供給するための信号を出力する。この信号に応じて供給された駆動電流に基づいて、磁気コイルL3に電磁吸引力が発生し、この磁気コイルL3を含む第2機械式接点スイッチ13の接点部S2が時刻t8にON状態となる。時刻t8に第2機械式接点スイッチ13の接点部S2がON状態になるため、当該接点部S2の接点間電圧が図3に示すように下がることになる。
【0049】
更に、上記したように、半導体スイッチ14内には、半導体スイッチ14を構成する抵抗R2と、フォトトライアックS4と並列接続するように設けられたコンデンサC2とにより、スナバ回路が形成されている。このスナバ回路は、交流電源2から負荷3への電力供給遮断の際に、時刻t8で第2機械式接点スイッチ13の接点部S2がON状態になったときに発生するノイズ(図6参照)の発生を抑制し、結果的にトライアックS3の誤動作の発生を抑制することができる。即ち、当該スナバ回路により、第1の実施形態のハイブリッドリレー1は、トライアックS3の誤動作を発生させずに、交流電源2から負荷3への電力供給遮断を適切なタイミングで行うことができる。
【0050】
時刻t8に第2機械式接点スイッチ13の接点部S2がON状態になった後、信号処理回路16は、時刻t9に、駆動電流となるパルス電流を、ダイオードD4を介して磁気コイルL2に与える。このとき、第1機械式接点スイッチ12では、ダイオードD2が磁気コイルL2へ流れる電流が逆流することを防ぐ逆流防止ダイオードとして機能し、磁気コイルL1へ電流が流れることをダイオードD3が防止する。これにより、磁気コイルL2にパルス電流が流れて、一時的に電磁吸引力が働き、第1機械式接点スイッチ12の接点部S1がOFF状態となる(時刻t10)。
【0051】
更に、時刻t10で第1機械式接点スイッチ12の接点部S1がOFFすることで、交流電源2からの電流が第2機械式接点スイッチ13の接点部S2に流れ、トライアックS3を含む半導体スイッチ14に当該電流が流れるようになる。更に、フォトトライアックS4のT1電極−T2電極間には微小の電圧が時刻t9以前にかかっている。従って、第1機械式接点スイッチ12の接点部S1のOFFとほぼ同期するように、時刻t10にトライアックS3のT1電極−T2電極間がON状態になる。
【0052】
なお、第1機械式接点スイッチ12の接点部S1は時刻t10でOFFするが、第2機械式接点スイッチ13の接点部S2及び半導体スイッチ14は共にON状態であるため、時刻t10の時点において負荷3には引き続き交流電源2から電力が供給されている。
【0053】
時刻t10以降、信号処理回路16は、時刻t11に、発光ダイオードLDへの駆動電流の供給を停止する。これにより、フォトトライアックS4に対する発光ダイオードLDからの光信号の照射がなくなるため、交流電源2からの交流電圧が中心電圧となったとき(時刻t12)に、フォトトライアックS4がOFF状態となる。このフォトトライアックS4のOFF状態に連動して、トライアックS3がOFF状態となるため、半導体スイッチ14が全体的にOFF状態となる。よって、交流電源2から負荷3への給電路が遮断されるため、交流電源2による負荷3への電力供給が停止される。
【0054】
また、信号処理回路16は、発光ダイオードLDへの駆動電流の供給を停止した後、時刻t13に磁気コイルL3への駆動電流の供給を停止する。即ち、半導体スイッチ14が全体的にOFF状態となった後に、磁気コイルL3による励磁が停止されて第2機械式接点スイッチ13の接点部S2の接点がOFF状態になる。このとき、既に半導体スイッチ14が全体的にOFF状態となり、第2機械式接点スイッチ13に電流が流れることがないため、接点部S2の接点がOFF状態になった場合でもアークの発生がないため、当該第2機械式接点スイッチ13の接点消耗を防止することができる。
【0055】
このように、第1の実施形態のハイブリッドリレー1では、半導体スイッチ14を構成する抵抗R2と、フォトトライアックS4と並列接続するように設けられたコンデンサC2との直列回路からなるスナバ回路を第1機械式接点スイッチ12に対して並列接続されている。
これにより、第1の実施形態のハイブリッドリレー1では、コンデンサC2だけを新たに設けることにより、部品点数を必要以上に増加させることなく効果的に、第2機械式接点スイッチ13のON状態に応じて当該第2機械式接点スイッチ13の接点間にノイズ成分が含まれた場合でも、半導体スイッチ14及び負荷3の誤動作の発生を効果的に抑制することができる。
【0056】
<第1の実施形態の変形例1>
第1の実施形態のハイブリッドリレー1におけるスナバ回路は、図1に示すように、半導体スイッチ14を構成する抵抗R2と、フォトトライアックS4と並列接続するように設けられたコンデンサC2との直列回路により形成されている。ハイブリッドリレー1における部品点数を削減するためには、第1の実施形態のハイブリッドリレー1の回路構成が望ましい。
しかしながら、本発明のハイブリッドリレーにおいて、上記したスナバ回路を、抵抗R2とコンデンサC2とから形成する例には限定されない。第1の実施形態の変形例1では、当該スナバ回路の他の形成例について図4を参照して説明する。
【0057】
図4は、第1の実施形態の変形例1のハイブリッドリレー1aの回路構成を示す概略回路図である。図4に示すハイブリッドリレー1aにおいて、図1に示したハイブリッドリレー1の回路構成と同様な箇所については同様の参照符号が付されている。同様の参照符号が付されている各部の動作は第1の実施形態のハイブリッドリレー1の各部の動作と同様であるため、当該動作の説明は省略する。
【0058】
第1の実施形態の変形例1のハイブリッドリレー1aでは、半導体スイッチ14aと並列接続されるように設けられた抵抗R4とコンデンサC4とが直列接続されたスナバ回路が形成されている。即ち、第1の実施形態の変形例1のハイブリッドリレー1aでは、第1の実施形態のハイブリッドリレー1と比べて、抵抗R4及びコンデンサC4と部品点数が多いが、同様に、第2機械式接点スイッチ13のON状態に応じて当該第2機械式接点スイッチ13の接点間にノイズ成分が含まれた場合でも、半導体スイッチ14a及び負荷3の誤動作の発生を効果的に抑制することができる。
【0059】
具体的には、抵抗R4とコンデンサC4とにより形成されるスナバ回路は、交流電源2から負荷3への電力供給の際に、時刻t1で第2機械式接点スイッチ13の接点部S2がON状態になったときに発生するノイズ(図6参照)の発生を抑制し、結果的にトライアックS3の誤動作の発生を抑制することができる。同様に、同スナバ回路は、交流電源2から負荷3への電力供給遮断の際に、時刻t8で第2機械式接点スイッチ13の接点部S2がON状態になったときに発生するノイズ(図6参照)の発生を抑制し、結果的にトライアックS3の誤動作の発生を抑制することができる。
【0060】
以上、添付図面を参照しながら各種の実施形態について説明したが、本発明のハイブリッドリレー1,1aはかかる例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然にこの発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0061】
例えば、前述した実施形態の第1機械式接点スイッチ12はラッチング型のスイッチである旨を説明したが、常時励磁型のスイッチでも良い。この場合には、第1機械式接点スイッチ12の磁気コイルには、負荷3への電力供給がなされている間継続して信号処理回路16から所定の電流が供給される必要があるため、ハイブリッドリレー1における駆動電流量の総量は増加するが、ハイブリッドリレー1の構造を全体的に小型化することができる。
【符号の説明】
【0062】
1,1a ハイブリッドリレー
2 交流電源
3 負荷
10,11 端子
12 第1機械式接点スイッチ
13 第2機械式接点スイッチ
14,14a 半導体スイッチ
15 フォトトライアックカプラ
16 信号処理回路
C1、C2、C4 コンデンサ
D1〜D5 ダイオード
L1〜L3 磁気コイル
LD 発光ダイオード
R1〜R4 抵抗
S1、S2 接点部
S3 トライアック
S4 フォトトライアック

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1駆動部により接点が開閉される第1機械式接点スイッチと、
前記第1駆動部とは別体の第2駆動部により接点が開閉される第2機械式接点スイッチと、
前記第2機械式接点スイッチと直列接続される半導体スイッチと、を備え、
電源から負荷に供給する給電路上で、前記第2機械式接点スイッチ及び前記半導体スイッチによる直列回路と前記第1機械式接点スイッチとが並列接続され、
前記第2機械式接点スイッチ及び前記半導体スイッチは、前記第1機械式接点スイッチの接点が閉じられる前にはそれぞれが導通し、
前記第1機械式接点スイッチに対して、スナバ回路が並列接続されていることを特徴とするハイブリッドリレー。
【請求項2】
請求項1に記載のハイブリッドリレーであって、
前記スナバ回路は、前記半導体スイッチを構成する抵抗と、前記半導体スイッチを構成するフォトトライアックに対して並列接続するように設けられたコンデンサとが直列接続することで形成されることを特徴とするハイブリッドリレー。
【請求項3】
請求項1に記載のハイブリッドリレーであって、
前記スナバ回路は、前記半導体スイッチに対して並列接続された抵抗とコンデンサとが直列接続することで形成されることを特徴とするハイブリッドリレー。
【請求項4】
請求項2に記載のハイブリッドリレーであって、
前記スナバ回路を構成する抵抗は、耐サージ抵抗であることを特徴とするハイブリッドリレー。
【請求項5】
請求項1〜4のうちいずれか一項に記載のハイブリッドリレーであって、
前記第2機械式接点スイッチ及び前記半導体スイッチは、前記第1機械式接点スイッチの接点における開閉を切り換える前にはそれぞれが導通し、前記第1機械式接点スイッチの接点を切り換えた後はそれぞれが非導通となることを特徴とするハイブリッドリレー。
【請求項6】
請求項1〜5のうちいずれか一項に記載のハイブリッドリレーであって、
前記第1機械式接点スイッチは、当該第1機械式接点スイッチの接点が開閉されるときに前記第1駆動部に電流が供給されるラッチング型の機械式接点スイッチであることを特徴とするハイブリッドリレー。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2012−59679(P2012−59679A)
【公開日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−204788(P2010−204788)
【出願日】平成22年9月13日(2010.9.13)
【出願人】(000005832)パナソニック電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】