説明

ハイブリッド自動車のエンジン始動制御方法

【課題】エンジンの始動時に発生する振動を極力抑えることによりスムースに始動することのできるハイブリッド自動車のエンジン始動制御方法を提供する。
【解決手段】自動車を運行するための駆動モーター及びエンジンを始動するための始動モーターを備えたハイブリッド自動車のエンジン始動制御方法において、停止後始動するエンジンの回転を加速させるステップと、エンジンの現在の速度が設定値よりも高いか否かを判断するステップと、エンジンの現在の速度が設定値よりも高ければ、エンジンの内部に燃料を噴射するステップと、エンジンの目標速度によって始動モーターのトルクを決めるステップと、決められた始動モーターのトルクによってエンジンの速度を制御するステップと、を含み、停止後始動するエンジンの回転を加速させるステップにおいて、始動モーターのトルクは、エンジン摩擦トルクによって決められることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はハイブリッド自動車のエンジン始動制御方法に係り、より詳しくは、エンジンの停止後にスムースに始動することのできるハイブリッド自動車のエンジン始動制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、ハイブリッド自動車は、始動モーターと、駆動モーターと、エンジンと、少なくとも1以上の遊星ギヤセットと、複数の摩擦部材と、を備える。
また、ハイブリッド自動車は、遊星ギヤセット及び摩擦部材の連結構造によって複数の変速モードが実現される。ここで、始動モーターとは、クランク軸を回転させてエンジンの始動を行うモーターをいい、駆動モーターとは、直接自動車の走行を行うモーターをいう。このような始動モーター及び駆動モーターは、バッテリーから電気を供給されて作動し、駆動モーター及びエンジンの選択的な作動によって駆動軸(drive shaft)を回転する。
【0003】
このようなパワートレーンを備えたハイブリッド自動車であって、変速機に動力切換装置がなく、エンジンと駆動軸とを切り離すことができない車両の場合、エンジンの停止時にエンジンの摩擦及び始動モーターのトルクによる振動が駆動軸に伝達される。また、エンジンの始動時に始動モーターのトルク値がエンジン摩擦よりも大き過ぎると、始動モーターの慣性トルクが駆動軸に伝達されて振動が発生する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11−117840号公報
【特許文献2】特開2000−238555号公報
【特許文献3】特開2010−095051号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は上記の問題を解決するためになされたものであって、その目的とするところは、エンジンの始動時に発生する振動を極力抑えることによりスムースに始動することのできるハイブリッド自動車のエンジン始動制御方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するためになされた本発明のハイブリッド自動車のエンジン始動制御方法は、自動車を運行するための駆動モーター及びエンジンを始動するための始動モーターを備えたハイブリッド自動車のエンジン始動制御方法において、停止後始動するエンジンの回転を加速させるステップと、エンジンの現在の速度が設定値よりも高いか否かを判断するステップと、エンジンの現在の速度が設定値よりも高ければ、エンジンの内部に燃料を噴射するステップと、エンジンの目標速度によって始動モーターのトルクを決めるステップと、決められた始動モーターのトルクによってエンジンの速度を制御するステップと、を含むことを特徴とする。
【0007】
停止後始動するエンジンの回転を加速させるステップにおいて、始動モーターのトルクは、エンジン摩擦トルクによって決められることが好ましい。
エンジン摩擦トルクは、冷却水の温度及びエンジンの回転速度によるエンジンの作動状態によって決められることが好ましい。
エンジンの目標速度による始動モーターのトルクは、始動モーターの目標速度と実際速度との誤差、及びエンジン摩擦トルクに基づいて決められることが好ましい。
【0008】
始動モーターの目標速度は、エンジンの目標速度によって決められることが好ましい。
エンジンの目標速度は、自動車の走行状況とは無関係に、予め設定された速度プロファイルを適用して決めることが好ましい。
エンジンの始動が完了した後、所定時間の間にエンジンの速度が一定に加速されるように制御され、エンジンを加速させる始動モーターのトルクは、予め設定された速度プロファイルが適用されるエンジンの目標速度によって決められることが好ましい。
【0009】
上記目的を達成するためになされた本発明の他の態様によるハイブリッド自動車のエンジン始動制御方法は、第1のサンギヤ、第1の遊星キャリア及び第1のリングギヤを有する第1の遊星ギヤセットと、第2のサンギヤ、第1のリングギヤ、出力軸と固定的に連結される第2の遊星キャリア及び第2のリングギヤを有する第2の遊星ギヤセットと、第1の遊星キャリアと固定的に連結され、第2のサンギヤと選択的に連結されるエンジンと、第1のサンギヤと固定的に連結される第1のモーター/ゼネレータと、第2のサンギヤと固定的に連結される第2のモーターゼネレータと、第1の遊星キャリア及び第2のリングギヤを選択的に連結する第1のクラッチと、エンジン及び第1のサンギヤを選択的に連結する第2のクラッチと、第1のサンギヤを変速機ハウジングに選択的に連結する第1のブレーキと、第2のリングギヤを変速機ハウジングに選択的に連結する第2のブレーキと、を備え、第1のモーターゼネレータは始動モーターとして作動し、第2のモーターゼネレータは駆動モーターとして作動するハイブリッド自動車のエンジン始動制御方法において、
停止後始動するエンジンの回転を加速させるステップと、エンジンの現在の速度が設定値よりも高いか否かを判断するステップと、エンジンの現在の速度が設定値よりも高ければ、エンジンの内部に燃料を噴射するステップと、エンジンの目標速度によって始動モーターのトルクを決めるステップと、決められた始動モーターのトルクによってエンジンの速度を制御するステップと、を含むことを特徴とする。
【0010】
停止後始動するエンジンの回転を加速させるステップにおいて、始動モーターのトルクは、エンジン摩擦トルクによって決められることが好ましい。
エンジン摩擦トルクは、冷却水の温度及びエンジンの回転速度によるエンジンの作動状態によって決められることが好ましい。
エンジンの目標速度による始動モーターのトルクは、始動モーターの目標速度と実際速度との誤差、及びエンジン摩擦トルクに基づいて決められることが好ましい。
【0011】
始動モーターの目標速度は、エンジンの目標速度によって決められることが好ましい。
エンジンの目標速度は、自動車の走行状況とは無関係に、予め設定された速度プロファイルを適用して決めることが好ましい。
エンジンの始動が完了した後、所定時間の間にエンジンの速度が一定に加速されるように制御され、エンジンを加速させる始動モーターのトルクは、予め設定された速度プロファイルが適用されるエンジンの目標速度によって決められることが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明の実施形態によれば、エンジンの始動時に自動車の走行状態によって始動モーターの始動トルクを制御することにより、駆動軸及び車体に伝達される振動を極力抑えてスムースに始動することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施形態によるハイブリッド自動車のパワートレーン構成図である。
【図2】図1のパワートレーンにおける部位別の速度及びトルクの方向を示すレバー線図である。
【図3】本発明の実施形態による制御ユニットと構成要素との間の関係を示したブロック図である。
【図4】本発明の実施形態によるエンジン実際速度及びエンジン目標速度をステップ別に示すグラフである。
【図5】本発明の実施形態によるハイブリッド自動車のエンジン始動制御方法のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、添付した図面に基づき、本発明の好適な実施形態について詳述する。
図1は、本発明の実施形態によるハイブリッド自動車のパワートレーン構成図である。
図1に示したとおり、本発明の実施形態によるハイブリッド自動車のパワートレーンは、エンジン10と、始動モーター(MG1)20と、駆動モーター(MG2)30と、第1及び第2の入力軸IS1、IS2と、出力軸OSと、第1及び第2の遊星ギヤセットPG1、PG2と、を備える。
【0015】
エンジン10は、第1の入力軸IS1に動力を伝達する。
始動モーター20は、エンジン10に動力を伝達してエンジン10を始動する。
駆動モーター30は、第2の入力軸IS2に動力を伝達する。
始動モーター20及び駆動モーター30は、バッテリー40から電気を供給されて作動し、動力を生成する。
ここで、始動モーター20及び駆動モーター30は、それぞれ第1及び第2のモーターゼネレータに求められる作動状態によって、モーターまたはゼネレータとして作動する。本発明の実施形態によるハイブリッド自動車のエンジン始動制御方法において、第1のモーターゼネレータ(MG1)20は、エンジン10を始動する役割を担うため、以下では始動モーター20と呼び、第2のモーターゼネレータ(MG2)30は、第2の入力軸IS2に動力を伝達する役割を担うため、駆動モーター30と呼ぶ。しかしながら、第1及び第2のモーターゼネレータ20、30は、車両の駆動状態によって、エンジンの速度制御、出力トルクの制御などの機能もすることはいうまでもない。
【0016】
第1の入力軸IS1は、エンジン10の選択的な作動によって生成された動力を第1の遊星ギヤセットPG1に伝達する。
第2の入力軸IS2は、駆動モーター30の選択的な作動によって生成された動力を第2のサンギヤS2に伝達する。
出力軸OSは、パワートレーンから第2の遊星ギヤセットPG2の動力が伝達されて出力する。
第1の遊星ギヤセットPG1は、第1のサンギヤS1と、第1の遊星キャリアPC1及び第1のリングギヤR1を作動部材として有するシングルピニオン型の遊星ギヤセットである。
【0017】
第2の遊星ギヤセットPG2は、第2のサンギヤS2と、第2の遊星キャリアPC2及び第2のリングギヤR2を作動部材として有するシングルピニオン型の遊星ギヤセットである。
第1の遊星ギヤセットPG1及び第2の遊星ギヤセットPG2は、同一軸線上に配置されることが好ましい。
第1のサンギヤS1は、始動モーター20に固定的に連結され、変速機ハウジング50に選択的に連結される。
第1の遊星キャリアPC1は、エンジン10に固定的に連結され、第2のリングギヤR2に選択的に連結される。
第1のリングギヤR1は、第2の遊星キャリアPC2に固定的に連結される。
第2のサンギヤS2は、駆動モーター30に固定的に連結され、エンジン10に選択的に連結される。
【0018】
第2の遊星キャリアPC2は、出力軸OSに固定的に連結される。
第2のリングギヤR2は、変速機ハウジング50に選択的に連結される。
また、本発明の実施形態によるハイブリッド自動車のパワートレーンは、第1及び第2の遊星ギヤセットPG1、PG2の各作動部材を選択的に互いに連結するか、あるいは、変速機ハウジング50に連結する複数の摩擦部材CL1、CL2、BK1、BK2を備える。
第1のクラッチCL1は、第1の遊星キャリアPC1を第2のリングギヤR2に選択的に連結し、第2のクラッチCL2は、第2のサンギヤS2をエンジン10に選択的に連結する。
第1のブレーキBK1は、第1のサンギヤS1を変速機ハウジング50に選択的に連結し、第2のブレーキBK2は、第2のリングギヤR2を変速機ハウジング50に選択的に連結する。
【0019】
図2は、図1のパワートレーンにおける部位別の速度及びトルクの方向を示すレバー線図である。
図2に示したとおり、始動モーター20、エンジン10及び出力軸OSの回転速度は、それぞれ第1のサンギヤS1、第1の遊星キャリアPC1及び第1のリングギヤR1の回転速度と同速である。ここで、図1に示したとおり、始動モーター20、エンジン10及び出力軸OSは、それぞれ第1のサンギヤS1、第1の遊星キャリアPC1及び第2の遊星キャリアPC2と固定的に連結されており、第2の遊星キャリアPC2は、第1のリングギヤR1と固定的に連結されている。すなわち、図2のレバー線図は、第1の遊星ギヤセットPG1の作動部材のレバー線図であり、このレバー線図は、駆動モーター30だけで走行中の自動車において始動モーター20を用いてエンジン10を始動させるときの状態を示している。
【0020】
駆動モーター30による自動車の走行は、第2のブレーキBK2が作動し、駆動モーター30が第2のサンギヤS2を回転させて、出力軸OSと固定的に連結された第2の遊星キャリアPC2がそれに相応する速度で回転することにより行われる。また、エンジン10の始動は、始動モーター20が第1のサンギヤS1を回転させ、第1のリングギヤR1が第2の遊星キャリアPC2と同速にて回転して、エンジン10と固定的に連結された第1の遊星キャリアPC1がそれに相応する速度で回転することにより行われる。このとき、第2のブレーキBK2は作動し、第1のクラッチCL1と、第2のクラッチCL2及び第1のブレーキBK1は作動していない状態である。
エンジン10の始動は、出力軸OSが、回転トルク及びそれに相応する摩擦トルクによって比較的一定の速度にて回転するときに、始動モーター20のトルクがエンジン10を回転させることにより行われる。このとき、始動モーター20のトルクを始動トルクという。なお、エンジン10の回転に対する摩擦トルクが発生し、これをエンジン摩擦トルクという。
【0021】
図2では、出力軸OSの回転トルクと、摩擦トルクと、始動トルク、及びエンジン摩擦トルクの方向を矢印で示している。出力軸OSにおいて、上方の矢印が回転トルクを示し、下方の矢印が摩擦トルクを示す。出力軸OSの回転トルク及び摩擦トルクは、同一又は近似の値であることが好ましい。これにより、出力軸OSは、比較的一定の速度で回転する。
始動トルクがエンジン摩擦トルクよりも大き過ぎると、エンジンの始動時に始動モーターの慣性トルクによって振動が発生することがある。このため、始動トルクを制御することにより、振動の発生を防止したり極力抑えることができる。
【0022】
図3は、本発明の実施形態による制御ユニットと構成要素との間の関係を示すブロック図である。
図3に示したとおり、制御ユニット60によって、エンジン10と、変速機55及び第1、第2のモーターゼネレータ20、30が制御される。また、制御ユニット60は、各構成要素の作動状態信号を受信して、各構成要素の制御を行う。ここで、変速機55は、図1の第1及び第2の遊星ギヤセットPG1、PG2及び摩擦部材CL1、CL2、BK1、BK2からなる変速機である。
【0023】
図4は、本発明の実施形態によるエンジン実際速度及びエンジン目標速度をステップ別に示したグラフである。
以下、図4に基づいて、始動トルクの制御値を決める方法について詳述する。始動トルクの制御は、制御ユニット60によって行われる。
図4に示したとおり、本発明の実施形態によるエンジン始動は、燃料噴射及び始動完了を基準として、ステップ1、2、3に分けられる。
ステップ1は、始動モーター20を駆動してエンジン10を加速させる区間である。このとき、始動トルクは、エンジン摩擦トルクに相当するトルクであって、エンジン10の摩擦力が静止摩擦力から運動摩擦力へと切り換わる区間において、高過ぎる始動トルクによる衝撃の発生を防止する。また、エンジン摩擦トルクに相当する始動トルクは、エンジン摩擦トルクのテーブル(table)を用いて決める。テーブルは、冷却水の温度及びエンジン10の回転速度によるエンジン10の摩擦力を試験的に得たデータである。すなわち、予測されたエンジン10のエンジン摩擦トルクを適用して始動モーター20のトルクを演算するフィードフォワードが行われる。
【0024】
一方、始動モーター20の速度の目標値と実際値との間の誤差(error)が僅かであるステップ1においては、フィードフォワードだけが使用されていたが、ステップ1の後に、始動トルクを決めるときには、エンジン摩擦トルクを予測して始動モーターのトルクを決めるフィードフォワードと、始動モーター速度の目標値と実際値との間の誤差を用いて始動モーターのトルクを決めるフィードバックとが混用される。すなわち、「始動トルク=フィードフォワード+フィードバック」により演算され、フィードフォワード及びフィードバックの演算は、下記式によって行われる。
フィードフォワード=−{b/(a+b)}×エンジン摩擦トルク
フィードバック=誤差×Pgain+Igain×∫(誤差)dt
誤差=目標MG1速度−実際のMG1速度
目標MG1速度={(a+b)×エンジン速度プロファイル−MG2速度}/b
【0025】
上記のとおり、フィードバックの演算は、比例積分制御(PI control)を用いて行う。また、演算式において、a及びbは、図2に示したレバー線図の長さ比であり、第1のサンギヤS1の歯数及び第1のリングギヤR1の歯数によって決められる。このため、始動モーター20、エンジン10及び出力軸OSの速度が変化しても、a及びbの比は変化しない。さらに、Pgain及びIgainは、始動モーター速度の目標値と実際値との間の誤差の絶対量及び符号による関数である。ここで、設定されるPgain及びIgainは、当該技術分野における通常の知識を持つ者にとって自明である。
ステップ2は、エンジン10の始動完了前におけるエンジン速度追従制御区間である。ステップ1において、エンジン10の速度が設定値よりも高い速度まで加速されると、燃料噴射が行われ、エンジン速度追従制御が開始される。ここで、設定値は、エンジン10の摩擦力が静止摩擦力から運動摩擦力へと切り換わる時点のエンジン速度である。
【0026】
エンジン速度追従制御とは、エンジン10のエンジン速度プロファイルによって始動モーター20速度の目標値を決め、始動モーター20速度の目標値と実際値との間の誤差を演算した後、比例積分制御によってフィードバックを演算する過程をいう。すなわち、ステップ2においては、「始動トルク=フィードフォワード+フィードバック」により始動トルクが決められる。ここで、エンジン速度プロファイルは、エンジン10の目標速度であり、走行状況とは無関係に、予め設定された同じエンジン速度プロファイルを適用することにより、スムースな始動が実現される。
ステップ3は、エンジン10の始動完了後におけるエンジン速度安定化区間である。ステップ1及びステップ2を経てエンジン10の始動が完了すると、所定時間の間に所定の勾配を有するようにエンジン10の速度を上昇させてスムースな運転性を確保する。なお、ステップ3においても、エンジン10を加速させる始動モーター20のトルクが、「始動トルク=フィードフォワード+フィードバック」によって決められる。
【0027】
図5は、本発明の実施形態によるハイブリッド自動車のエンジン始動制御方法のフローチャートである。
図5に示したとおり、駆動モーター30の動力を用いた自動車の運行中に、エンジン10の動力が必要であると判断されると、エンジン10の始動が行われる。また、エンジン10の始動は、始動モーター20の駆動によってエンジン10の速度が上昇することにより開始される(S110)。エンジン10の速度を上昇させる始動モーター20の始動トルクは、エンジン摩擦トルクを代入して得られるフィードフォワード演算式によって決められる。また、エンジン摩擦トルクは、冷却水温度及びエンジン10の回転速度によって試験的に得たテーブルによる。
エンジン10の始動が開始され、エンジン10の速度が上昇すると、制御ユニット60は、エンジン10の現在の速度が設定値よりも高いか否かを判断する(S120)。ここで、設定値は、エンジン10の摩擦力が静止摩擦力から運動摩擦力へと切り換わる時点のエンジン10の速度である。
もし、エンジン10の現在の速度が設定値よりも高くないと判断されると、エンジン10の速度を上昇させ続ける(S110)。
もし、エンジン10の速度が設定値よりも高いと判断されると、エンジン10への燃料の噴射が開始される(S130)。
【0028】
燃料の噴射が開始されると、始動モーター20の始動トルクは、エンジン速度の追従制御によって決められる(S140)。エンジン速度の追従制御とは、始動モーター20の速度の実際値とエンジン速度プロファイルによって決められた始動モーター20の速度の目標値との間の誤差を演算した後、比例積分制御によってフィードバックを演算する過程をいう。ここで、始動トルクは、「始動トルク=フィードフォワード+フィードバック」によって決められる。
決められた始動トルクによってエンジン10の速度が制御されることにより、エンジン10の始動が完了する(S150)。これにより、エンジン10の速度は、エンジン10の目標速度により制御される。エンジン10の始動が完了すると、エンジン10の速度を所定時間の間に一定に加速させる(S160)。同様に、加速に用いられる始動モーター20のトルクも「始動トルク=フィードフォワード+フィードバック」によって決められる。すなわち、ステップS150及びステップS160は、ステップS140において決められた始動モーター20のトルクによってエンジン10の速度を制御するステップである。
【0029】
以上のとおり、本発明の実施形態によれば、エンジン10の始動時に始動モーター20の始動トルクをフィードフォワード及びフィードバックの演算によって決めることにより、始動トルクが自動車の走行状態によって制御可能となる。これにより、駆動軸及び車体に伝達される振動を極力抑えてスムースに始動することができる。
本発明の実施形態によるエンジン始動制御方法を説明するために、図1のハイブリッド車両のパワートレーンについて説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、始動モーター及び駆動モーターを備えてエンジンを始動するあらゆるハイブリッド車両に本発明の実施形態によるエンジン始動制御方法が適用可能である。
【0030】
以上、本発明に関する好ましい実施例を説明したが、本発明の範囲は特定の実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって解釈されなければならない。また、この技術分野で通常の知識を有する者なら、本発明の技術的範囲内で多くの修正と変形ができることはいうまでもない。
【符号の説明】
【0031】
10:エンジン
20,MG1:始動モーター、第1のモーターゼネレータ
30,MG2:駆動モーター、第1のモーターゼネレータ
40:バッテリー
50:変速機ハウジング
55:変速機
60:制御ユニット
BK1:第1のブレーキ
BK2:第2のブレーキ
CL1:第1のクラッチ
CL2:第2のクラッチ
IS1:第1の入力軸
IS2:第2の入力軸
OS:出力軸
PC1:第1の遊星キャリア
PC2:第2の遊星キャリア
PG1:第1の遊星ギヤセット
PG2:第2の遊星ギヤセット
R1:第1のリングギヤ
R2:第2のリングギヤ
S1:第1のサンギヤ
S2:第2のサンギヤ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車を運行するための駆動モーター及びエンジンを始動するための始動モーターを備えたハイブリッド自動車のエンジン始動制御方法において、
停止後始動する前記エンジンの回転を加速させるステップと、
前記エンジンの現在の速度が設定値よりも高いか否かを判断するステップと、
前記エンジンの現在の速度が設定値よりも高ければ、前記エンジンの内部に燃料を噴射するステップと、
前記エンジンの目標速度によって前記始動モーターのトルクを決めるステップと、
決められた前記始動モーターのトルクによって前記エンジンの速度を制御するステップと、
を含むことを特徴とするハイブリッド自動車のエンジン始動制御方法。
【請求項2】
前記停止後始動するエンジンの回転を加速させるステップにおいて、前記始動モーターのトルクは、エンジン摩擦トルクによって決められることを特徴とする請求項1に記載のハイブリッド自動車のエンジン始動制御方法。
【請求項3】
前記エンジン摩擦トルクは、冷却水の温度及び前記エンジンの回転速度による前記エンジンの作動状態によって決められることを特徴とする請求項2に記載のハイブリッド自動車のエンジン始動制御方法。
【請求項4】
前記エンジンの目標速度による前記始動モーターのトルクは、前記始動モーターの目標速度と実際速度との誤差、及びエンジン摩擦トルクに基づいて決められることを特徴とする請求項1に記載のハイブリッド自動車のエンジン始動制御方法。
【請求項5】
前記始動モーターの目標速度は、前記エンジンの目標速度によって決められることを特徴とする請求項4に記載のハイブリッド自動車のエンジン始動制御方法。
【請求項6】
前記エンジンの目標速度は、自動車の走行状況とは無関係に、予め設定された速度プロファイルを適用して決めることを特徴とする請求項5に記載のハイブリッド自動車のエンジン始動制御方法。
【請求項7】
前記エンジンの始動が完了した後、所定時間の間に前記エンジンの速度が一定に加速されるように制御され、
前記エンジンを加速させる前記始動モーターのトルクは、予め設定された速度プロファイルが適用される前記エンジンの目標速度によって決められることを特徴とする請求項6に記載のハイブリッド自動車のエンジン始動制御方法。
【請求項8】
第1のサンギヤ、第1の遊星キャリア及び第1のリングギヤを有する第1の遊星ギヤセットと、
第2のサンギヤ、前記第1のリングギヤ、出力軸と固定的に連結される第2の遊星キャリア及び第2のリングギヤを有する第2の遊星ギヤセットと、
前記第1の遊星キャリアと固定的に連結され、前記第2のサンギヤと選択的に連結されるエンジンと、
前記第1のサンギヤと固定的に連結される第1のモーターゼネレータと、
前記第2のサンギヤと固定的に連結される第2のモーターゼネレータと、
前記第1の遊星キャリア及び前記第2のリングギヤを選択的に連結する第1のクラッチと、
前記エンジン及び前記第1のサンギヤを選択的に連結する第2のクラッチと、
前記第1のサンギヤを変速機ハウジングに選択的に連結する第1のブレーキと、
前記第2のリングギヤを前記変速機ハウジングに選択的に連結する第2のブレーキと、を備え、
前記第1のモーターゼネレータは始動モーターとして作動し、前記第2のモーターゼネレータは駆動モーターとして作動するハイブリッド自動車のエンジン始動制御方法において、
停止後始動する前記エンジンの回転を加速させるステップと、
前記エンジンの現在の速度が設定値よりも高いか否かを判断するステップと、
前記エンジンの現在の速度が設定値よりも高ければ、前記エンジンの内部に燃料を噴射するステップと、
前記エンジンの目標速度によって前記始動モーターのトルクを決めるステップと、
決められた前記始動モーターのトルクによって前記エンジンの速度を制御するステップと、
を含むことを特徴とするハイブリッド自動車のエンジン始動制御方法。
【請求項9】
前記停止後始動するエンジンの回転を加速させるステップにおいて、前記始動モーターのトルクは、前記エンジン摩擦トルクによって決められることを特徴とする請求項8に記載のハイブリッド自動車のエンジン始動制御方法。
【請求項10】
前記エンジン摩擦トルクは、冷却水の温度及び前記エンジンの回転速度による前記エンジンの作動状態によって決められることを特徴とする請求項9に記載のハイブリッド自動車のエンジン始動制御方法。
【請求項11】
前記エンジンの目標速度による前記始動モーターのトルクは、前記始動モーターの目標速度と実際速度との誤差、及び前記エンジン摩擦トルクに基づいて決められることを特徴とする請求項8に記載のハイブリッド自動車のエンジン始動制御方法。
【請求項12】
前記始動モーターの目標速度は、前記エンジンの目標速度によって決められることを特徴とする請求項11に記載のハイブリッド自動車のエンジン始動制御方法。
【請求項13】
前記エンジンの目標速度は、自動車の走行状況とは無関係に、予め設定された速度プロファイルを適用して決めることを特徴とする請求項12に記載のハイブリッド自動車のエンジン始動制御方法。
【請求項14】
前記エンジンの始動が完了した後、所定時間の間に前記エンジンの速度が一定に加速されるように制御され、
前記エンジンを加速させる前記始動モーターのトルクは、予め設定された速度プロファイルが適用される前記エンジンの目標速度によって決められることを特徴とする請求項13に記載のハイブリッド自動車のエンジン始動制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−39909(P2013−39909A)
【公開日】平成25年2月28日(2013.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−138745(P2012−138745)
【出願日】平成24年6月20日(2012.6.20)
【出願人】(591251636)現代自動車株式会社 (1,064)
【出願人】(500518050)起亞自動車株式会社 (449)
【Fターム(参考)】