説明

ハイブリッド車両におけるトルク伝達特性の検出方法

【課題】車両を発進させることなく、またクラッチにダメージを与えることもなく、比較的正確なトルク伝達特性を得る。
【解決手段】本発明のトルク伝達特性の検出方法は、内燃機関11にクラッチ12及び電動発電機13をこの順序に介して変速機14が連結されたハイブリッド車両10における方法である。変速機をニュートラルとしてクラッチを接続し内燃機関と電動発電機を同期して回転させる同期回転工程と、電動発電機により内燃機関の回転方向と逆方向に所定のトルクを発生させる所定トルク発生工程と、クラッチを切断方向に移動させて内燃機関と電動発電機の回転に差が生じた位置クラッチストロークを検出するストローク値検出工程とを順次繰り返してトルク伝達特性を得る。後における所定のトルクを、先の所定トルクより小さくすることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関にクラッチ及び電動発電機をこの順序に介して変速機が連結されたハイブリッド車両に関する。更に詳しくは、そのようなハイブリッド車両におけるクラッチの伝達トルクとクラッチストロークの関係から成るトルク伝達特性を検出するハイブリッド車両におけるトルク伝達特性の検出方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、内燃機関の出力軸にクラッチを介して電動発電機を結合し、この電動発電機の回転駆動力を駆動出力として変速機に伝達し、変速機の駆動出力をディファレンシャル・ギアから駆動車軸に伝達する構造のハイブリッド車両が知られている。このようなハイブリッド車両は、内燃機関又は電動発電機のいずれか一方又は双方の回転駆動力により走行するとともに、減速時には電動発電機が車両の運動エネルギーを電気エネルギーとして回収する発電機として作用する。従って、このようなハイブリッド車両は、内燃機関及び電動発電機がともに車両を駆動するパラレル走行モードと、蓄電手段を充電しながら走行する走行充電モードをとることができる他に、車両減速時にクラッチを切断することにより、その減速時における運動エネルギーが内燃機関を回転させることが無くなるので、その減速時における運動エネルギーの全てを電動発電機により電気エネルギーとして回収し得るとしている。
【0003】
一方、トラックやバス等の大型車両においては、発進操作や変速操作をシフトユニット(例えばモータ式、油圧式、空気圧式のもの)により機械的に行い得るようにした機械式自動変速機を採用したものがあり、この種の機械式自動変速機が採用された車両では、発進操作や変速操作に伴うクラッチの断接操作についても自動的に実行されるようになっている。
【0004】
即ち、トラックやバス等の大型車両は、自動クラッチ制御装置からの電気信号により制御されるクラッチアクチュエータと、そのクラッチアクチュエータにより制御される油圧に従って出没軸を出没させてクラッチレバーを揺動させるクラッチブースタを備える。クラッチアクチュエータに電気信号を発する自動クラッチ制御装置は、電子回路及びそれに実装されたソフトウエアにより構成された装置であり、入力されるアクセル開度の情報から目標伝達トルクを演算し、これを伝達トルクとクラッチストロークとの関係から成るトルク伝達特性に基づいて目標のクラッチストロークを得、その目標のクラッチストロークとなるような電気信号をクラッチアクチュエータに送出するように構成される。このため、伝達トルクとクラッチストロークとの関係から成るトルク伝達特性はクラッチの断接操作を自動的に実行するための重要なデータとなるけれども、従来は、このトルク伝達特性を計算により算出していた(例えば、特許文献1参照。)。
【0005】
即ち、従来におけるトルク伝達特性の検出方法は、パーキングブレーキ又はフットブレーキをかけて車両を停止させ、この状態でクラッチを切断して内燃機関の回転中に変速機におけるギアを入れ、クラッチを徐々に接続させてクラッチ側に内燃機関が発生するトルクを伝達させる。このとき、内燃機関の発生トルクから計算して、クラッチ伝達推定トルクの上昇を監視し、ある規定のトルクになったときの内燃機関の回転速度の変化分から、クラッチ伝達推定トルクにおけるクラッチストロークを算出している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−275036号公報(段落番号「0007」)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、従来におけるトルク伝達特性の検出方法では、パーキングブレーキ又はフットブレーキをかけて車両を停止させた状態で行われるので、パーキングブレーキ又はフットブレーキをかけ忘れると、クラッチを徐々に接続させたときにその車両が不意に発進してしまうおそれがある。また、車両を停止させた状態でクラッチを切断した状態から徐々に接続し、それによりクラッチディスクに滑りを生じさせるため、そのクラッチディスクにダメージが生じる不具合もある。更に、内燃機関の発生トルクから計算されたクラッチ伝達推定トルクという推定値から、あるクラッチストロークにおける伝達トルクを算出するので、その特性自体に誤差が含まれ、その精度を高められないという、未だ解決すべき課題も残存していた。
【0008】
本発明の目的は、車両を発進させることなく、またクラッチにダメージを与えることもなく、比較的正確なトルク伝達特性を得るハイブリッド車両におけるトルク伝達特性の検出方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、内燃機関にクラッチ及び電動発電機をこの順序に介して変速機が連結されたハイブリッド車両におけるクラッチの伝達トルクとクラッチストロークの関係から成るトルク伝達特性を検出する方法である。
【0010】
その特徴ある点は、変速機をニュートラルとしてクラッチを接続し内燃機関と電動発電機を同期して回転させる同期回転工程と、 電動発電機により内燃機関の回転方向と逆方向に所定のトルクを発生させる所定トルク発生工程と、クラッチを切断方向に移動させて内燃機関と電動発電機の回転に差が生じた位置を所定のトルクを伝達し得るクラッチストロークとして検出するストローク値検出工程とを順次繰り返すところにある。
【0011】
このハイブリッド車両におけるトルク伝達特性の検出方法では、後における所定トルク発生工程において電動発電機により発生させる所定のトルクを、先の所定トルク発生工程において電動発電機により発生させた所定のトルクより小さくすることが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明のトルク伝達特性の検出方法では、変速機を動力が伝達されないニュートラルとするので、車両が不意に発進してしまうようなことはない。また、クラッチを接続した状態から切断方向に移動させ、クラッチに滑りが生じて内燃機関と電動発電機の回転に差が生じた時の位置をクラッチストロークとして検出するので、クラッチが滑る時間は極めて短い。このため、切断されたクラッチを接続方向に移動させてクラッチに比較的長い時間滑りを生じさせる従来に比較して、クラッチに与えるダメージを著しく小さくすることができる。更に、電動発電機は高精度に制御されることから、この電動発電機により発生するトルクは比較的正確な値となる。このため、その電動発電機が発生させる所定のトルクを伝達トルクとすると、クラッチに滑りが生じて内燃機関と電動発電機の回転に差が生じた段階のクラッチストロークはその伝達トルクを生じさせるクラッチストロークと一致する。このため、得られた伝達トルクとクラッチストロークとの関係から成るトルク伝達特性は実測値から成るものとなり、計算により得る従来に比較して、本発明では正確なトルク伝達特性を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明実施形態のハイブリッド車両のブロック構成図である。
【図2】その自動クラッチ制御装置のブロック化した構成図である。
【図3】その自動クラッチ制御装置に用いられるトルク伝達特性を示す図である。
【図4】その車両におけるトルク伝達特性を得る流れを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
次に、本発明を実施するための最良の形態を図面に基づいて説明する。
【0015】
図1に、本発明が適用されるハイブリッド車両10のブロック構成図を示す。このハイブリッド車両10では、内燃機関11の出力軸にクラッチ12及び電動発電機13をこの順序に介して変速機14が連結される。クラッチ12は、クラッチアクチュエータ16により制御される油圧に従って、クラッチブースタ17により機械的に制御される。クラッチアクチュエータ16は自動クラッチ制御装置18からの電気信号により制御される。運転者が操作するアクセルペダル19の操作量は、アクセルセンサ21により検出されて、エンジン制御装置22に取込まれる。電動発電機13には発電機制御装置24の制御出力が接続され、この発電機制御装置24とエンジン制御装置22と自動クラッチ制御装置18はこの明細書で説明しない他の制御装置と共に通信網23により相互に接続され、エンジン制御装置22からは内燃機関11における燃料噴射装置11aにその制御出力が接続される。
【0016】
クラッチ12は、図の左側にある内燃機関11の駆動出力軸に結合されて、その出力軸とともに回転するフライホイール12aと、そのフライホイール12aに対向配置されて電動発電機13の回転軸と一体的に回転するクラッチディスク12bを備える。そして、このクラッチ12には、上記フライホイール12aに対するクラッチディスク12bの圧着荷重が変化されることで、フライホイール12a及びクラッチディスク12b間の回転伝達を変化させるように構成され、このフライホイール12a及びクラッチディスク12b間で伝達可能なトルクが「伝達トルク」とされる。
【0017】
また、クラッチ12には、上記フライホイール12aに対するクラッチディスク12bの圧着荷重を変化させるためのクラッチレバー12cが設けられ、このクラッチレバー12cをクラッチブースタ17が傾動可能に構成される。即ち、クラッチブースタ17はクラッチアクチュエータ16からの指令によりそのロッド17aを前方又は後方に移動(進退)させてクラッチレバー12cを動かすように構成される。図では、ロッド17aが前方に移動(進行)されてそのロッド17aによりクラッチレバー12cが図1の左側に押されると、上記フライホイール12aに対するクラッチディスク12bの圧着荷重は低減されるように構成され、逆に、ロッド17aが後方に移動(退行)されクラッチレバー12cが戻されると、上記フライホイール12aに対するクラッチディスク12bの圧着荷重は増加されるように構成される場合を例示する。
【0018】
ここで、ロッド17aの移動位置とクラッチ12による伝達トルクとの関係について説明する。ロッド17aを前方に移動(進行)させていくと、最終的には上記フライホイール12aに対するクラッチディスク12bの圧着荷重が略皆無となる。このとき、上記フライホイール12a及びクラッチディスク12bは切り離されて、これらフライホイール12a及びクラッチディスク12b間の回転伝達はなくなる。この回転伝達がなくなる状態をクラッチ12の切断状態という。そして、このときのロッド17aの位置をスタンバイ位置という。なお、ロッド17aの位置に対応したそのロッド17aの移動量が制御量としての「クラッチストローク」とされる。
【0019】
一方、スタンバイ位置からロッド17aを後方に移動(退行)させていくと、上記フライホイール12aに対するクラッチディスク12bの圧着荷重はその移動量に応じて増加する。このとき、上記圧着荷重に応じた回転数差(スリップ量)を有して上記フライホイール12a及びクラッチディスク12b間の回転伝達がなされる。特に、このようなロッド17aの移動(退行)による圧着荷重の増加により、上記回転数差(スリップ量)が略皆無となると、フライホイール12a及びクラッチディスク12bは同期回転する。この同期回転する状態をクラッチ12の接続状態という。そして、このときのロッド17aの位置を接続位置という。従って、上記スタンバイ位置から同期時の接続位置までの間でロッド17aの移動量(クラッチストローク)をクラッチアクチュエータ16により制御することで、上記フライホイール12a及びクラッチディスク12b間のスリップ量が制御される。
【0020】
なお、ロッド17aの移動量(クラッチストローク)がスタンバイ位置から接続位置までの範囲にあり、フライホイール12a及びクラッチディスク12b間がスリップする状態を半クラッチ状態とされる。そして、内燃機関11には、内燃機関11の回転数を検出する内燃機関回転センサ26が設けられ、内燃機関回転センサ26の検出出力はエンジン制御装置22に接続される。また、変速制御を実行するにあたって必要となるクラッチディスク12bの回転数を検出するクラッチ回転センサ27が設けられ、このクラッチ回転センサ27の検出出力は発電機制御装置24に接続される。そして、クラッチブースタ17には、ロッド17aの移動位置であるクラッチストロークを検出するストロークセンサ28が設けられ、このストロークセンサ28の検出出力は自動クラッチ制御装置18に接続される。そして、このクラッチストロークは、摩擦クラッチ12による回転伝達の状態判断等に供される。
【0021】
図2に、クラッチアクチュエータ16に制御信号を発する自動クラッチ制御装置18について詳しい構成を示す。この自動クラッチ制御装置18は、電子回路及びそれに実装されたソフトウエアにより構成された装置であり、この自動クラッチ制御装置18は、通信網23を介して入力されるアクセル開度の情報から目標伝達トルクを演算し、これを伝達トルクとクラッチストロークとの関係から成るトルク伝達特性29を利用して目標とするクラッチストトークに変換する。そして、この目標とするクラッチストロークにクラッチブースタ17のロッド17aの移動量を物理的に一致させるような制御信号をクラッチアクチュエータ16に送出する。
【0022】
伝達トルクとクラッチストロークとの関係から成るトルク伝達特性29は、ロッド17aの移動量であるクラッチストロークに対する伝達トルクを示すものであるので、クラッチ12の断接操作を自動的に実行するための重要なデータとなる。そして、本発明は、この伝達トルクとクラッチストロークとの関係から成るトルク伝達特性29を得るための方法であって、このトルク伝達特性29は、一般的にクラッチストロークが増加すると、伝達トルクも増加するような関係を有する。即ち、図3に示すように、ストロークS0では伝達トルクは零であり、内燃機関11はアイドル状態にあっても回転を続けている。ストロークS1でクラッチ12を介してトルクt1が伝達され、ストロークS2では更に大きいトルクt2が伝達され、ストロークS3では更に大きいトルクt3が伝達されるような関係を示すものである。
【0023】
本発明におけるトルク伝達特性の検出方法は、変速機14をニュートラルとしてクラッチ12を接続し内燃機関11と電動発電機13を同期して回転させる同期回転工程と、電動発電機13により内燃機関11の回転方向と逆方向に所定のトルクを発生させる所定トルク発生工程と、クラッチ12を切断方向に移動させて内燃機関11と電動発電機13の回転に差が生じた位置を所定のトルクを伝達し得るクラッチストロークとして検出するストローク値検出工程とを順次繰り返すことを特徴とする。このトルク伝達特性を得る流れを図4に示し、以下に各工程を詳説する。
【0024】
同期回転工程にあっては、変速機14をニュートラルとしてクラッチ12を接続し内燃機関11と電動発電機13を同期して回転させる。変速機14をニュートラルにするのは、ニュートラルにある変速機14は、ギアを噛み合わせずに動力が伝達されない状態となるので、動力が伝達されて車両が不意に発進してしまうようなことを回避するためである。また、クラッチ12の接続は自動クラッチ制御装置18により行われ、クラッチブースタ17のロッド17aを後方に移動(退行)させて接続位置に成るようにクラッチアクチュエータ16を自動クラッチ制御装置18が制御することにより行われる。そして、内燃機関11を駆動して、その内燃機関11における駆動出力軸を回転させ、その駆動出力軸にクラッチ12を介して接続された電動発電機13の回転軸を、その駆動出力軸と一体的に同期して回転させる。このときの電動発電機13は、それ自体からトルクを生じさせないものとする。
【0025】
次の所定トルク発生工程では、発電機制御装置24により電動発電機13を制御して、その電動発電機13により内燃機関11の回転方向と逆方向に所定のトルクを発生させる。即ち、発電機制御装置24により電動発電機13に負荷を与えて発電させ、それにより電動発電機13の回転軸を内燃機関11における駆動出力軸の回転方向と逆方向に所定のトルクを発生させる。
【0026】
次のストローク値検出工程では、クラッチ12を切断方向に移動させて内燃機関11と電動発電機13の回転に差が生じた位置を電動発電機22により発生させた所定のトルクを伝達し得るクラッチストロークとして検出する。クラッチ12を切断方向に移動させるのは、自動クラッチ制御装置18により行われ、クラッチブースタ17におけるロッド17aを前方に移動(進行)させるようにクラッチアクチュエータ16に制御信号を発信し、フライホイール12aに対するクラッチディスク12bの圧着荷重を徐々に低減させる。すると、フライホイール12a及びクラッチディスク12bは徐々に離されて、あるロッド17aの移動量、即ちあるクラッチストロークにおいてフライホイール12aとクラッチディスク12bの間で滑りが生じ、内燃機関11における駆動出力軸の回転と電動発電機13の回転軸との回転の間に差が生じる。内燃機関11における回転は内燃機関回転センサ27により検出され、クラッチディスク12bの回転数はクラッチ回転センサ27により検出される。そして、アクチュエータ23のロッド17aの移動位置であるクラッチストロークはストロークセンサ28により検出され、内燃機関11と電動発電機13の回転に差が生じたクラッチストロークを所定のトルクを伝達するクラッチストロークとして自動クラッチ制御装置18が記憶する。
【0027】
本発明では、上記同期回転工程と、所定トルク発生工程と、ストローク値検出工程とを順次繰り返してクラッチストロークと電動発電機13が発生させた所定のトルクとのトルク伝達特性29を得る。即ち、ある所定のトルクに対するクラッチストロークが得られた後は、再び上記同期回転工程に戻り、内燃機関11と電動発電機13を再び同期して回転させ、電動発電機13により先の所定のトルクより異なる所定のトルクを内燃機関11の回転方向と逆方向に発生させる。そして、再びクラッチ12を切断方向に移動させて内燃機関11と電動発電機13の回転に差が生じたストロークを、今回新たに電動発電機13が発生させた所定のトルクにおけるクラッチストロークとして記憶する。
【0028】
ここで、各工程が繰り返される際に、後における所定トルク発生工程において電動発電機13により発生させる所定のトルクを、先の所定トルク発生工程において電動発電機13により発生させた所定のトルクより小さくすることが好ましい。このように、後における所定トルク発生工程において電動発電機13により発生させる所定のトルクを小さくすることにより、先のストローク値検出工程において検出されたクラッチストロークであっても、電動発電機13により発生させた所定のトルクを小さくした段階で内燃機関11と電動発電機13は再び同期して回転することになる。このため、後の所定トルク発生工程において、内燃機関11と電動発電機13を再び同期して回転させる為にクラッチ12を接続方向に移動させることを必要とせずに、そのような手間を省ける点で、好ましい。このようにして複数の所定のトルクに対する各クラッチストロークを得て、それらの関係から成る図3に示すようなトルク伝達特性29をメモリに記憶し、このトルク伝達特性29を自動クラッチ制御装置18の制御に供する(図2)。
【0029】
また、電動発電機13は発電機制御装置24により高精度に制御されており、その電動発電機13が発生するトルクは比較的正確な値となる。このため、その電動発電機13が発生するトルクを伝達トルクとすると、クラッチ12に滑りが生じて内燃機関11と電動発電機13の回転に差が生じた段階のクラッチストロークはその伝達トルクを生じさせるクラッチストロークと一致することになる。このため、得られた伝達トルクとクラッチストロークとの関係から成るトルク伝達特性29は実測値から成るものとなり、計算により求める従来のものに比較して、著しく正確なトルク伝達特性29を得ることができる。そして、このような実測値に基づくトルク伝達特性29に基づいてクラッチアクチュエータ16によりクラッチ12が制御されることで、より正確な、例えば円滑な車両の発進性や的確な車両の加速性を得ることができる。
【0030】
また、本発明にあっては、クラッチ12を接続した状態から切断方向に移動させ、クラッチ12に滑りが生じて内燃機関11と電動発電機13の回転に差が生じた段階のクラッチストロークを検出するので、クラッチ12におけるクラッチディスク12が滑る時間は極めて短い。このため、切断されたクラッチを接続方向に移動させてクラッチに比較的長い時間滑りを生じさせる従来に比較して、クラッチ12に与えるダメージを著しく小さくすることができる。
【0031】
一方、一つのクラッチ12についてその断接が繰り返されると、クラッチディスク12bが摩耗し、それによりクラッチストロークは少しずつ変化する。即ち、図3の実線で示す出荷時の特性がクラッチディスク12bの磨耗等の径年変化により、破線で示すように徐々に変化していく。従って本発明の検出方法を所定時間経過毎に行って、自動クラッチ制御装置18に記憶された伝達トルクとクラッチストロークとの関係から成るトルク伝達特性29を随時書き換えることにより、常に正確な制御が成されることになる。
【0032】
なお、上述した実施の形態では、クラッチブースタ17を備えて油圧によりクラッチ12を制御する場合を説明したけれども、クラッチブースタ17を用いることなく、空気圧やモータを用いてクラッチ12の断接制御を行うようにしても良い。
【符号の説明】
【0033】
10 ハイブリッド車両
11 内燃機関
12 クラッチ
13 電動発電機
14 変速機
29 トルク伝達特性

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関(11)にクラッチ(12)及び電動発電機(13)をこの順序に介して変速機(14)が連結されたハイブリッド車両(10)における前記クラッチ(12)の伝達トルクとクラッチストロークの関係から成るトルク伝達特性を検出する方法において、
前記変速機(14)をニュートラルとして前記クラッチ(12)を接続し前記内燃機関(11)と前記電動発電機(13)を同期して回転させる同期回転工程と、
前記電動発電機(13)により前記内燃機関(11)の回転方向と逆方向に所定のトルクを発生させる所定トルク発生工程と、
前記クラッチ(12)を切断方向に移動させて前記内燃機関(11)と前記電動発電機(13)の回転に差が生じた位置を前記所定のトルクを伝達し得るクラッチストロークとして検出するストローク値検出工程と
を順次繰り返す
ことを特徴とするハイブリッド車両におけるトルク伝達特性の検出方法。
【請求項2】
後における所定トルク発生工程において電動発電機(13)により発生させる所定のトルクを、先の所定トルク発生工程において前記電動発電機(13)により発生させた所定のトルクより小さくする請求項1記載のハイブリッド車両におけるトルク伝達特性の検出方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−95165(P2013−95165A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−236583(P2011−236583)
【出願日】平成23年10月28日(2011.10.28)
【出願人】(000005463)日野自動車株式会社 (1,484)
【Fターム(参考)】