説明

ハイブリッド車両の制御装置

【課題】長期間停止したエンジンが始動してもエンジンの耐久性に影響が生じるのを防ぐことを可能にするハイブリッド車両の制御装置を提供する。
【解決手段】ハイブリッド制御部62は、エンジン2の潤滑不足が生じている場合には、エンジン2の始動時にエンジン回転数の上昇率を制限する。たとえばハイブリッド車両の走行モードがEV走行モードからHV走行モードに切換わった時点において車速がある程度大きい場合、エンジン回転数が急上昇する可能性がある。エンジン始動後からある程度の期間にエンジン2にエンジンオイルを供給することにより、エンジン2の潤滑不足を解消することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハイブリッド車両の制御装置に関し、特に、長期間にわたり使用されていないエンジンの使用開始時に、エンジンの損傷を防ぐことを可能にするハイブリッド車両の制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
最近、環境に配慮した自動車としてハイブリッド自動車(Hybrid Vehicle)が注目されている。ハイブリッド自動車は、従来のエンジンに加え、直流電源とインバータとインバータによって駆動されるモータとを動力源とする自動車である。
【0003】
また、外部電源を用いて直流電源を充電することにより、モータの出力のみにより走行可能な距離を長くすることが可能なハイブリッド自動車が提案されている。このようなハイブリッド自動車を短距離だけ走行させることを繰返した場合には、モータのみ使用される頻度が高くなる。すなわちエンジンがほとんど使用されない可能性がある。
【0004】
一般的にエンジンの各構成部材の表面はエンジンオイルの膜により保護されている。しかしエンジンが停止したまま長期間が経過した場合には、構成部材の表面においてオイル膜で覆われていない部分が発生することがある。このような状態でエンジンを動作させると、エンジンの性能に影響が生じる可能性が高くなる。
【0005】
特開平5−270294号公報(特許文献1)は、内燃機関の未使用により発生する各構成部材の腐蝕や劣化を防止する技術を開示する。この文献には、内燃機関を有する電気自動車の制御装置が開示される。この電気自動車は、電気モータと電気モータ駆動用バッテリと内燃機関とを備え、電気モータあるいは内燃機関によって駆動輪を選択的に駆動する。制御装置は、内燃機関が所定期間使用されていないことを検出する内燃機関未使用検出手段と、内燃機関未使用検出手段の検出信号に基づいて内燃機関を駆動する内燃機関強制駆動手段とを備える。
【特許文献1】特開平5−270294号公報
【特許文献2】特開2004−100580号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
たとえばハイブリッド車両の走行状態がモータのみを用いて走行する状態から、エンジンとモータとを併用して走行する状態に変化した場合について考える。ハイブリッド車両の走行状態が切換わる時点において車速がある程度大きい場合、エンジン回転数が急上昇する可能性がある。
【0007】
エンジンが長期間使用されていない場合には、エンジンの潤滑状態が不十分な状態になっている確率が高い。エンジンの潤滑状態が不十分なままエンジンが動作した場合には、エンジンの構成部品間に摩擦が生じる可能性がある。これによりエンジンの耐久性が低下するおそれがある。しかしながら特開平5−270294号公報にはこのような問題点について特に示していない。
【0008】
本発明の目的は、長期間停止したエンジンが始動してもエンジンの耐久性に影響が生じるのを防ぐことを可能にするハイブリッド車両の制御装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は要約すれば、内燃機関と、モータと、内燃機関に潤滑油を供給する潤滑システムとを備えるハイブリッド車両の制御装置である。モータは、ハイブリッド車両を駆動する。内燃機関は、ハイブリッド車両の駆動およびモータへの動力供給の少なくとも一方を実行する。制御装置は、モード設定部と、制御部とを備える。モード設定部は、ハイブリッド車両の動作モードを、少なくとも内燃機関を動作させるHVモードと、内燃機関を停止させ、かつ、前記モータを動作させるEVモードとのいずれか一方に設定する。制御部は、モード設定部の設定結果に応じて内燃機関およびモータを制御する。制御部は、内燃機関の停止中に内燃機関の潤滑不足が生じた場合には、内燃機関の始動時に、内燃機関の回転数の上昇率を制限する。
【0010】
好ましくは、ハイブリッド車両は、モータに電力を供給する蓄電装置と、蓄電装置をハイブリッド車両の外部から充電するための接続部とをさらに備える。
【0011】
好ましくは、制御部は、内燃機関の停止期間が所定期間以上である場合には、内燃機関の潤滑不足が生じたと判定する。
【0012】
より好ましくは、ハイブリッド車両の外部には、現時点の日付情報を送信する日付情報送信部が設けられる。制御部は、内燃機関の停止時および内燃機関の始動時に日付情報送信部から日付情報を受信して、内燃機関の停止期間を算出する。
【0013】
好ましくは、制御部は、モード設定部が動作モードの設定をEVモードからHVモードに変更したことに応じて、内燃機関を始動させる。
【0014】
好ましくは、制御部は、モード設定部が設定した動作モードがEVモードであっても、内燃機関を始動させる。
【0015】
好ましくは、制御部は、内燃機関からの所望の動力の出力時には、内燃機関の回転数が所望の動力に対応する回転数となり、かつ、内燃機関の潤滑状態が所望の動力に対応した状態となるように、エンジンを予め始動する。
【0016】
より好ましくは、ハイブリッド車両は、ハイブリッド車両の現在位置の情報を取得するナビゲーションシステムをさらに備える。制御部は、ナビゲーションシステムから受けるハイブリッド車両の現在位置の情報に基づいて、内燃機関の始動タイミングを決定する。
【0017】
より好ましくは、ハイブリッド車両は、高速走行道路の入口の存在を検知する検知装置をさらに備える。制御部は、検知装置の検知結果を受けて、内燃機関を始動させる。
【0018】
さらに好ましくは、検知装置は、ETC車載器である。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、ハイブリッド車両に搭載されたエンジンが長期間停止後に始動してもエンジンの耐久性に影響が生じるのを防ぐことが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下において、本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰返さない。
【0021】
[実施の形態1]
図1は、実施の形態1に係るハイブリッド車両の制御装置を備えるハイブリッド車両1の主たる構成を示す図である。以下に説明するように、ハイブリッド車両1は動力源としてエンジンとモータとを備える車両である。
【0022】
図1を参照して、ハイブリッド車両1は、前輪20R,20Lと、後輪22R,22Lと、エンジン2と、プラネタリギヤ16と、デファレンシャルギヤ18と、ギヤ4,6とを含む。
【0023】
ハイブリッド車両1は、さらに、バッテリBと、バッテリBの出力する直流電力を昇圧する昇圧ユニット32と、昇圧ユニット32との間で直流電力を授受するインバータ36と、プラネタリギヤ16を介してエンジン2と結合され主として発電を行なうモータジェネレータMG1と、回転軸がプラネタリギヤ16に接続されるモータジェネレータMG2とを含む。インバータ36はモータジェネレータMG1,MG2に接続され、交流電力と昇圧ユニット32からの直流電力との変換を行なう。
【0024】
プラネタリギヤ16は、第1〜第3の回転軸を有する。第1の回転軸はエンジン2に接続され第2の回転軸はモータジェネレータMG1に接続され第3の回転軸はモータジェネレータMG2に接続される。
【0025】
この第3の回転軸にはギヤ4が取付けられ、このギヤ4はギヤ6を駆動することによりデファレンシャルギヤ18に動力を伝達する。デファレンシャルギヤ18はギヤ6から受ける動力を前輪20R,20Lに伝達するとともに、ギヤ6,4を介して前輪20R,20Lの回転力をプラネタリギヤの第3の回転軸に伝達する。
【0026】
プラネタリギヤ16は、エンジン2,モータジェネレータMG1,MG2の間で動力を分割する役割を果たす。すなわちプラネタリギヤ16の3つの回転軸のうち2つの回転軸の回転が定まれば、残る1つの回転軸の回転は強制的に決定される。したがって、エンジン2を最も効率のよい領域で動作させつつ、モータジェネレータMG1の発電量を制御してモータジェネレータMG2を駆動させることにより車速の制御を行ない、全体としてエネルギ効率のよい自動車を実現している。
【0027】
なお、モータジェネレータMG2の回転を減速してプラネタリギヤ16に伝達する減速ギヤを設けても良く、その減速ギヤの減速比を変更可能にした変速ギヤを設けても良い。
【0028】
蓄電装置であるバッテリBは、たとえばニッケル水素またはリチウムイオンなどの二次電池を含み、直流電力を昇圧ユニット32に供給するとともに、昇圧ユニット32からの直流電力によって充電される。なおハイブリッド車両1に搭載される蓄電装置は、たとえば電気二重層キャパシタでもよい。
【0029】
昇圧ユニット32は、バッテリBから受ける直流電圧を昇圧してその昇圧された直流電圧をインバータ36に供給する。インバータ36は供給された直流電圧を交流電圧に変換してエンジン始動時にはモータジェネレータMG1を駆動制御する。また、エンジン始動後には、モータジェネレータMG1が発電した交流電力はインバータ36によって直流に変換され、昇圧ユニット32によってバッテリBの充電に適切な電圧に変換されてバッテリBが充電される。
【0030】
また、インバータ36はモータジェネレータMG2を駆動する。モータジェネレータMG2はエンジン2を補助して前輪20R,20Lを駆動する。制動時には、モータジェネレータは回生運転を行ない、車輪の回転エネルギを電気エネルギに変換する。得られた電気エネルギは、インバータ36および昇圧ユニット32を経由してバッテリBに戻される。バッテリBは組電池であり、直列に接続された複数の電池ユニットB0〜Bnを含む。昇圧ユニット32とバッテリBとの間にはシステムメインリレー28,30が設けられ、車両非運転時には高電圧が遮断される。
【0031】
ハイブリッド車両1は、さらに充電装置25と、コネクタ26とを備える。ケーブル43は、ハイブリッド車両1の外部にある交流電源41とコネクタ26とに接続される。交流電源41からの交流電圧(たとえばAC100V)はケーブル43およびコネクタ26を介して充電装置25に入力される。充電装置25は交流電源41からの交流電圧をバッテリBの充電に適切な直流電圧に変換し、その直流電圧をバッテリBに供給する。
【0032】
ケーブル43には交流電源41だけでなく端末装置40も接続される。端末装置40はネットワークNWを介してサーバ45から取得した情報をケーブル43に出力する。充電装置25はケーブル43を介して受けた情報(サーバ45が送信した情報)を制御装置14に出力する。この情報はたとえばハイブリッド車両1の充電開始時の日時を含む。
【0033】
ハイブリッド車両1は、さらに、制御装置14を含む。制御装置14は、運転者の指示および車両に取付けられた各種センサからの出力に応じて、エンジン2,インバータ36,昇圧ユニット32およびシステムメインリレー28,30の制御を行なう。
【0034】
図1に示すようにハイブリッド車両1は外部から充電可能なように構成される。具体的には、ハイブリッド車両1はモータジェネレータMG1,MG2に電力を供給するバッテリBと、バッテリBを車外から充電するためのコネクタ26とを備える。なお、上述したように充電装置25はハイブリッド車両1の内部に設けられるよう限定されるものではなく、ハイブリッド車両1の外部に設置されてもよい。
【0035】
図2は、図1の制御装置14の機能ブロックおよび制御装置14に関連する周辺装置を示した図である。なお、制御装置14はハードウエアでもソフトウエアでも実現可能である。
【0036】
図2を参照して、制御装置14は、ハイブリッド制御部62と、走行モード設定部64とを備える。ハイブリッド制御部62は、バッテリBの充電状態(SOC:State of charge)をバッテリBの充放電電流の積算などにより求める。ハイブリッド制御部62は、エンジン2のスロットル制御を行なうとともに、エンジン2のエンジン回転数を検出する。
【0037】
ハイブリッド制御部62は、タッチディスプレイを含む表示部48から乗員によって設定された目的地の情報を得る。ハイブリッド制御部62は、GPSアンテナ50およびジャイロセンサ52を用いて車両の現在位置を把握し、その現在位置を道路地図データに重ねて表示部48に表示する。ハイブリッド制御部62は、さらに現在位置から目的地までの走行経路を探索して表示するナビゲーション動作を行なう。なおGPSアンテナ50およびジャイロセンサ52はハイブリッド車両1の現在位置の情報を取得するナビゲーションシステムを構成する。
【0038】
ハイブリッド制御部62は、アクセルポジションセンサ42の出力信号Accと車速センサで検出された車速Vとに基づいて、運転者の要求する出力(要求パワー)を算出する。ハイブリッド制御部62は、この運転者の要求パワーに加え、バッテリBの充電状態SOCを考慮して必要な駆動力(トータルパワー)を算出し、エンジンに要求する回転数とエンジンに要求するパワーとをさらに算出する。ハイブリッド制御部62は、要求回転数と要求パワーとに基づいてエンジン2のスロットル制御を行なう。
【0039】
ハイブリッド制御部62は、車両の走行状態に応じた運転者要求トルクを算出し、インバータ36にモータジェネレータMG2を駆動させるとともに、必要に応じてモータジェネレータMG1に発電を行なわせる。
【0040】
エンジン2の駆動力は、車輪を直接駆動する分とモータジェネレータMG1を駆動する分とに分配される。モータジェネレータMG2の駆動力とエンジンの直接駆動分との合計が車両の駆動力となる。
【0041】
運転者がEV優先スイッチ46を押すとエンジン2の動作が制限される。これにより車両の走行モードは、モータジェネレータMG2の駆動力のみで走行するEV走行モードに設定される。深夜、早朝の住宅密集地での低騒音化や屋内駐車場、車庫内での排気ガス低減化のために、EV走行モードは適している。なお、これに対して、エンジン2が作動状態にある通常の走行モードをHV走行モードと呼ぶことにする。
【0042】
EV走行モードは、1)EV優先スイッチ46をオフにする、2)バッテリの充電状態SOCが所定値よりも低下する、3)車速が所定値(たとえば55km/h)以上となる、4)アクセル開度が規定値以上となる、といういずれかの条件が成立すると自動的に解除される。
【0043】
走行モードがHV走行モードである場合には、エンジン2が作動する。ここで図1を参照して、エンジン2からの出力は、前輪20R,20Lの駆動力と、モータジェネレータMG1での発電用駆動力とに分割される。モータジェネレータMG1による発電電力は、モータジェネレータMG2の駆動に用いられる。したがって、通常走行時には、エンジン2による出力をモータジェネレータMG2からの出力でアシストして、前輪20R,20Lが駆動される。さらに、高加速時には、バッテリBから供給される電力がモータジェネレータMG1の駆動にさらに用いられて、前輪20R,20Lの駆動力がさらに増加する。
【0044】
走行モード設定部64は、アクセルポジションセンサ42からの出力信号Acc、車速センサ44が検出した車速V、およびEV優先スイッチ46から送られる、運転者がEV走行モードを選択したか否かを示す情報に基づいて、ハイブリッド車両1の走行モードをEV走行モードとHV走行モードとのいずれか一方に定める。走行モード設定部64は設定した走行モードの情報をハイブリッド制御部62に出力する。ハイブリッド制御部62は、走行モード設定部64から受ける情報に基づいて、エンジン2を制御するとともに、インバータ36を制御してモータジェネレータMG2の動作を制御する。
【0045】
ハイブリッド制御部62は、さらにETC(Electronic Toll Collection system)車載器54から情報を受ける。ETC車載器54は、クレジットカード会社などから発行されたETCカードを挿入して用いられる。このETCカードの所有者が、料金を支払う者、および料金を受取る者として認定される。ETC車載器54は、インフラとして配備されたアンテナとの間で料金に関する情報などを無線で交信する。
【0046】
多くの場合、ETC車載器54の交信対象となるアンテナは高速道路の入口に設けられている。ETC車載器54は、アンテナとの間で交信を行なったことを示す情報をハイブリッド制御部62に送信する。すなわちETC車載器54は、ハイブリッド車両1が走行する高速道路の入口(料金所)の存在を検知する検知装置である。ハイブリッド制御部62はETC車載器54から、高速道路の入口を検知したことを示す情報を受ける。
【0047】
図3は、エンジン2の周辺について説明するための概略図である。図3を参照して、エンジン2は、シリンダヘッドに吸気を導入するための吸気通路111と、シリンダヘッドから排気を行なうための排気通路113とを含む。
【0048】
吸気通路111の上流から順にエアクリーナ102、エアフローメータ104、吸気温センサ106、スロットル弁107が設けられる。スロットル弁107は、電子制御スロットル108によってその開度が制御される。吸気通路111の吸気弁の近くには燃料を噴射するインジェクタ110が設けられる。
【0049】
排気通路113には排気弁側から順に空燃比センサ145、触媒装置127、酸素センサ146が配置される。エンジン2は、さらに、シリンダブロックに設けられたシリンダを上下するピストン114と、ピストン114の上下に応じて回転するクランクシャフトの回転を検知するクランクポジションセンサ143と、シリンダブロックの振動を検知してノッキングの発生を検出するノックセンサ144と、シリンダブロックの冷却水路に取付けられている水温センサ148とを含む。
【0050】
ハイブリッド制御部62は、アクセルポジションセンサ42の出力に応じて電子制御スロットル108を制御して吸気量を変化させ、またクランクポジションセンサ143から得られるクランク角に応じてイグニッションコイル112に点火指示を出力し、インジェクタ110に燃料噴射時期を出力する。また吸気温センサ106、ノックセンサ144、空燃比センサ145、酸素センサ146の出力に応じて燃料噴射量や空気量および点火タイミングを補正する。
【0051】
ハイブリッド車両1は、さらに、燃料FLを蓄える燃料タンク180と、ポンプ186と、チャコールキャニスタ189と、キャニスタパージバキュームスイッチングバルブ191とを含む。ポンプ186によって通路185を介して吸上げられた燃料FLは加圧されて通路187に送出される。そして所定のタイミングでインジェクタ110が開かれると燃料FLは吸気通路111内に噴射される。
【0052】
また燃料タンク180内で蒸発した燃料蒸気は、通路188を経由してチャコールキャニスタ189の内部の活性炭に吸着される。そしてキャニスタパージVSV(バキュームスイッチングバルブ)191がハイブリッド制御部62によって開かれることにより吸着されていた燃料蒸気が通路190,192を経由して吸気通路111内に放出される。
【0053】
運転者が給油扉開閉スイッチ170を操作すると、リッド181が開く。燃料キャップ182が外されて、ガソリンスタンド等の燃料供給装置から燃料供給通路183に燃料FLが供給される。
【0054】
エンジン2の下部にはエンジンオイル150(潤滑油)を蓄えるオイルパン152が設けられる。エンジンオイル150はオイルポンプ154により汲み上げられる。オイルポンプ154により汲み上げられたエンジンオイル150は、その中に含まれる異物を吸着するためのオイルフィルタ156を通り、エンジン2の各構成部品へと供給される。
【0055】
なお、オイルポンプ154はエンジン2のクランク軸に機械的に結合され、かつ、エンジン2の駆動力を用いてオイル通路にオイルを吐出させる機械式オイルポンプでもよいし、別途設けられた電源によりエンジン2の作動とは独立して駆動される電動ポンプでもよい。エンジン2の各構成部品へと供給されたオイルはエンジン2内の隙間を落下したり、エンジン2の内壁に沿って流れ落ちたりしてオイルパン152に戻る。ただし図3ではエンジンオイル150の循環を模式的に示す。
【0056】
このように、オイルパン152、オイルポンプ154、およびオイルフィルタ156はエンジン2の動作に応じてエンジン2にエンジンオイル150を供給する潤滑システムを構成する。
【0057】
図1に示すハイブリッド車両1においてはバッテリBの容量を大きくすることにより電気自動車走行の領域を広げることができる。しかし、たとえばハイブリッド車両1を短距離だけ走行させることを繰返した場合には、モータジェネレータMG2のみが車両の駆動に用いられる可能性が高くなる。すなわちエンジン2の停止期間が長くなる可能性がある。
【0058】
エンジン2の停止期間が長くなると、エンジン2の各構成部品に供給されたエンジンオイル150がたとえば重力により落下する。このため、構成部品の表面の一部(あるいは全部)にエンジンオイルの膜が形成されなくなることが起こり得る。このような状態(エンジン2の潤滑不足)のまま、エンジン2を高回転で運転すると構成部品間に摩擦が生じることにより、構成部品の表面に傷がついたり、構成部品が磨耗したりするおそれが生じる。これによりエンジン2の耐久性が低下する可能性が高くなる。
【0059】
実施の形態1では、ハイブリッド制御部62はエンジン2の潤滑不足が生じている場合には、エンジン2の始動時にエンジン回転数の上昇率を制限する。エンジン始動後からある程度の期間にエンジン2にエンジンオイル150を供給することにより、エンジン2の潤滑不足を解消することができる。これにより、エンジン2の耐久性の低下を防ぐことが可能になる。
【0060】
図4は、ハイブリッド制御部62によるエンジン始動時の回転数の制限処理を説明する図である。図4および図2を参照して、時刻taにおいて、ハイブリッド車両1の走行モードがEV走行モードからHV走行モードに切換わる。ハイブリッド制御部62はエンジン回転数を0から上昇させる。このときにハイブリッド制御部62は、エンジン回転数の上昇率を上昇率aに設定する。上昇率aは後述する上昇率bよりも小さい。
【0061】
時刻tbにおいてエンジン回転数はNe1に達する。エンジン回転数が所定値Ne1に達すると、ハイブリッド制御部62はエンジン回転数の上昇率を上昇率bに設定する。なお、エンジン回転数が所定値Ne1に達した後には上昇率の制限はなくてもよい。
【0062】
図5は、図2のハイブリッド制御部62によるエンジン回転数の制限処理を示すフローチャートである。図5および図2を参照して、処理が開始されるとハイブリッド制御部62は走行モード設定部64からの情報に基づいて、ハイブリッド車両1の走行モードがEV走行モードからHV走行モードに切換わったか否かを判定する(ステップS1)。ハイブリッド車両1の走行モードがEV走行モードのままである場合(ステップS1においてNO)、全体の処理が終了する。ハイブリッド車両1の走行モードがEV走行モードからHV走行モードに切換わった場合(ステップS1においてYES)、処理はステップS2に進む。
【0063】
ステップS2において、ハイブリッド制御部62はエンジン停止期間が所定期間以上であるか否かを判定する。この「所定期間」は、たとえば実験や設計により求められる。エンジン停止期間が所定期間以上である場合(ステップS2においてYES)、ハイブリッド制御部62はエンジン回転数の上昇率を制限しながらエンジンを始動させる(ステップS3)。
【0064】
なお、ステップS3においてハイブリッド制御部62は、エンジン2のモータリングを行なってもよい。エンジン2をモータリングする場合には、モータジェネレータMG1がエンジン2のクランク軸を回転させるものの、燃料の噴射は行なわれない。エンジン2のモータリングを行なうことにより燃料の消費量を抑えることが可能になる。
【0065】
エンジン停止期間が所定期間未満である場合(ステップS2においてNO)、ハイブリッド制御部62はエンジン回転数の上昇率を制限せずにエンジンを始動させる(ステップS4)。ステップS3またはステップS4の処理が終了すると全体が終了する。
【0066】
図6は、図2のハイブリッド制御部62がエンジン停止期間を算出する方法を説明する図である。図6を参照して、時刻t1において、エンジンが停止する。ハイブリッド制御部62は、時刻t1においてエンジン停止期間の計測を開始する。なお時刻t1においてハイブリッド車両1の走行モードはHV走行モードからEV走行モードに切換わる。
【0067】
ハイブリッド車両1の動作中は、ハイブリッド制御部62はバッテリBの電力により動作する。ここで一般的にバッテリBの電圧はハイブリッド制御部62の動作電圧よりも高い。図1には示さないが、たとえばハイブリッド車両1はバッテリBの電圧をハイブリッド制御部62の動作電圧に変換するDC/DCコンバータを備える。よってハイブリッド制御部62はバッテリBの電力により動作する。
【0068】
時刻t2においてハイブリッド車両1が停止する。次に時刻t3において、図1に示されるように、充電装置25がコネクタ26およびケーブル43を介して交流電源41に接続される。これによりバッテリBへの充電が開始される。時刻t4においてバッテリBの充電が終了する。
【0069】
時刻t1から時刻t3までの期間には、ハイブリッド制御部62はバッテリBの電力を受けて動作する。一方、時刻t3から時刻t4までの期間(すなわちハイブリッド車両の充電期間)には、ハイブリッド制御部62は外部電源(交流電源41)からの電力により動作する。
【0070】
時刻t4以後、ハイブリッド制御部62は再びバッテリBの電力により動作する。時刻t5においてハイブリッド車両1の動作が開始する。時刻taにおいてエンジンが始動するので、ハイブリッド制御部62はエンジン停止期間の計測を終了する。図6に示す時刻taは図4に示す時刻taに対応する。
【0071】
多くの場合、ハイブリッド車両に搭載される制御装置は、ハイブリッド車両の停止時にはバッテリの電力消費を抑制するために動作を停止する(あるいは待機状態になる)。一方、本実施の形態では、時刻t3から時刻t4までの期間、すなわち外部電源(交流電源41)によりバッテリBが充電される期間にも、外部電源からの電源によりハイブリッド制御部62を動作させる。これによりハイブリッド制御部62が計測するエンジン停止期間にバッテリBの充電期間を含めることができるので、正確なエンジン停止期間を求めることができる。
【0072】
図7は、図2のハイブリッド制御部62が実行するエンジン停止期間の計測処理を説明するフローチャートである。図7および図2を参照して、処理の開始時にはハイブリッド制御部62の電源はバッテリBである。ここでは、ハイブリッド制御部62の動作のための電力をハイブリッド制御部62に供給する装置を「電源」と称する。
【0073】
次に、ハイブリッド制御部62はたとえばエンジン回転数に基づいて、エンジン2が停止したか否かを判定する(ステップS12)。エンジン回転数が0でなければハイブリッド制御部62はエンジン2が停止していないと判定する。この場合(ステップS12においてNO)、全体の処理が終了する。一方、エンジン回転数が0の場合には、ハイブリッド制御部62はエンジンが停止したと判定する。この場合(ステップS12においてYES)、ハイブリッド制御部62はカウント処理を開始する(ステップS13)。たとえばハイブリッド制御部62は、1秒ごとにカウント値を+1だけ増やす。
【0074】
続いて、ハイブリッド制御部62は、交流電源41からバッテリBへの充電が開始されたか否かを判定する(ステップS14)。図1を参照して、ケーブル43がコネクタ26に接続されたときに、端末装置40はネットワークNWを介してサーバ45から取得した情報(日時の情報)をケーブル43に出力する。充電装置25はケーブル43を介して受けた日時の情報を制御装置14に出力する。
【0075】
図7および図2を再び参照して、ハイブリッド制御部62は、この情報を受けたときに、バッテリBの充電が開始されたと判定する。バッテリBの充電が開始された場合(ステップS14においてYES)、ハイブリッド制御部62の電源は外部電源(交流電源41)に切換わる(ステップS15)。
【0076】
次にハイブリッド制御部62は、バッテリBの充電が終了したか否かを判定する(ステップS16)。端末装置40は、一定の時間間隔で、サーバ45から取得した日時の情報をハイブリッド制御部62に送信する。ハイブリッド制御部62は、予め定められた期間(たとえば1分間)、日時の情報を受けていない場合には、バッテリBの充電が終了したと判定する。この場合(ステップS16においてYES)、電源はバッテリBに切換わる(ステップS17)。バッテリBの充電が終了していない場合(ステップS16においてNO)、ハイブリッド制御部62はステップS16の処理を繰り返す。
【0077】
ハイブリッド車両1の電源が外部電源からバッテリに切換わることは、ハイブリッド車両1が始動可能になることを意味する。ハイブリッド車両1が始動すると、ハイブリッド制御部62は、走行モード設定部64が設定した走行モードの情報に基づいて、エンジンの始動が必要か否かを判定する(ステップS18)。
【0078】
走行モードがHV走行モードに設定された場合、ハイブリッド制御部62はエンジンの始動が必要であると判定する。この場合(ステップS18においてYES)、ハイブリッド制御部62はカウント動作を終了する(ステップS19)。一方、走行モードがEV走行モードに設定されている場合には、ハイブリッド制御部62は、エンジンの始動が必要ないと判定する。この場合(ステップS18においてNO)、ハイブリッド制御部62はステップS18の処理を繰り返す。
【0079】
なお、ステップS14での判定処理において、バッテリBの充電が開始していないとハイブリッド制御部62が判定した場合(ステップS14においてNO)、ハイブリッド制御部62の電源はバッテリBのままである(ステップS20)。このような場合にもハイブリッド制御部62はエンジンの始動が必要か否かを判定する(ステップS21)。
【0080】
走行モードがHV走行モードに設定された場合、ハイブリッド制御部62はエンジンの始動が必要であると判定する。この場合(ステップS21においてYES)、ハイブリッド制御部62はカウント動作を終了する(ステップS19)。一方、走行モードがEV走行モードに設定されている場合には、ハイブリッド制御部62は、エンジンの始動が必要ないと判定する。この場合(ステップS21においてNO)、処理はステップS14に戻る。つまり、ステップS20、S21、S14の順に行なわれる処理は、バッテリBの充電が開始されるまでハイブリッド制御部62がバッテリBからの電力によりカウント動作を行なうことを表わす。
【0081】
ステップS19においてカウント動作が終了すると、エンジン停止期間の計測処理が終了する。
【0082】
このように本実施の形態によれば、制御装置14は、走行モード設定部64と、ハイブリッド制御部62とを備える。走行モード設定部64は、アクセル開度や車速に基づいて、ハイブリッド車両1の走行モードを、少なくともエンジン2を作動状態にすることによりハイブリッド車両1を走行させるHV走行モードと、エンジン2を停止させ、かつ、モータジェネレータMG2を動作させることによりハイブリッド車両1を走行させるEV走行モードとのいずれか一方に設定する。ハイブリッド制御部62は、走行モード設定部64の設定結果に応じてエンジン2およびモータジェネレータMG2を制御する。なおハイブリッド制御部62はモータジェネレータMG2を駆動するインバータ36を制御することによりモータジェネレータMG2を制御する。
【0083】
ハイブリッド制御部62は、エンジン2の潤滑不足が生じている場合には、エンジン2の始動時にエンジン回転数の上昇率を制限する。これにより、本実施の形態によれば長期間停止したエンジンが始動してもエンジンの耐久性に影響が生じるのを防ぐことができる。
【0084】
たとえばハイブリッド車両の走行モードがEV走行モードからHV走行モードに切換わった時点において車速がある程度大きい場合、エンジン回転数が急上昇する可能性がある。しかしながら実施の形態1によれば、このような場合にも、たとえばエンジンの構成部品への影響を防ぐことが可能になる。
【0085】
特に、図1に示すハイブリッド車両(外部から充電可能に構成されることによりEV走行モードで比較的長い距離を走行できる車両)の走行時には、EV走行モードが選択される機会が多くなることが予想される。すなわちエンジンを長期間停止する可能性が高くなることが予想される。本実施の形態のハイブリッド車両の制御装置をこのようなハイブリッド車両に搭載することにより、エンジン始動の際にエンジンの潤滑状態を適切にすることが可能になる。
【0086】
[実施の形態2]
実施の形態2に係るハイブリッド車両の制御装置の構成は図3に示す制御装置14の構成と同様である。また、その制御装置を備えるハイブリッド車両の構成は図1に示すハイブリッド車両1の構成と同様である。
【0087】
実施の形態2では、ハイブリッド制御部62はエンジンの高負荷運転を予測した場合には、エンジンを高負荷運転させる時に所望のエンジン回転数と潤滑状態とが得られるようにエンジン2を予め始動させる。
【0088】
ここで「高負荷運転」とは、ハイブリッド車両1の走行のためにエンジンに所望の動力を出力させることを意味する。具体的な高負荷運転の例としては、たとえばハイブリッド車両1が高速道路を走行するときのエンジンの動作がある。
【0089】
図2を参照して、ハイブリッド制御部62は、たとえばGPSアンテナ50およびジャイロセンサ52からの情報に基づいて、エンジンの高負荷運転を予測する。具体的には、ハイブリッド制御部62は、ハイブリッド車両1が高速道路の入口に向かっていると判定した場合には、ハイブリッド車両1の走行モードの条件がEV走行モードを満たす条件であってもエンジン2を始動させる。
【0090】
なお、ハイブリッド制御部62はETC車載器54が高速道路の入口(料金所)に設けられたアンテナから電波を受信した場合にエンジンを始動させてもよい。この場合、ETC車載器54はハイブリッド制御部62に、電波を受信したことを示す情報を送信する。ハイブリッド制御部62はこの情報を受けてエンジン2を始動させる。これによりハイブリッド制御部62が高速道路を走行する際にエンジン回転数が高くなってもエンジンの潤滑状態が良好となるために、エンジンの耐久性に影響が生じるのを防ぐことができる。
【0091】
図8は、実施の形態2に係るエンジン回転数の制限処理を示すフローチャートである。図8および図2を参照して、処理が開始されるとハイブリッド制御部62は走行モード設定部64からの情報に基づいてハイブリッド車両1の走行モードがEV走行モードであるか否かを判定する(ステップS31)。ハイブリッド車両1の走行モードがEV走行モードでない場合、すなわちハイブリッド車両1の走行モードがHV走行モードである場合(ステップS31においてNO)、全体の処理が終了する。ハイブリッド車両1の走行モードがEV走行モードである場合(ステップS31においてYES)、処理はステップS32に進む。
【0092】
ステップS32において、ハイブリッド制御部62は現時点から一定時間内(たとえば現時点から数秒後までの間でもよいし、現時点から数分後までの間でもよい)にエンジンの高負荷運転が生じるか否かを判定する。たとえばナビゲーションシステム(あるいはETC車載器54)からの情報に基づいて、ハイブリッド制御部62はハイブリッド車両1が高速道路の入口に向かっていると判定する。この場合には、ハイブリッド制御部62は現時点から一定の時間の後にエンジンの高負荷運転が生じると判定する。ハイブリッド制御部62は、エンジン2の高負荷運転が生じると判定した場合(ステップS32においてYES)、エンジン2の潤滑状態が良好であるか否かを判定する(ステップS33)。実施の形態1と同様に、ハイブリッド制御部62は、図6および図7に示す処理を行なって、エンジン2の停止期間を求める。ハイブリッド制御部62は、エンジン2の停止期間が所定期間以上である場合には、エンジン2の潤滑状態が良好でないと判定する。
【0093】
エンジン2の潤滑状態が良好でない場合(ステップS33においてNO)、ハイブリッド制御部62は、エンジン回転数の上昇率を制限しながらエンジンを始動させる(ステップS34)。この場合の上昇率は、エンジンから所望の動力を出力させるタイミングに応じて定められる。このように上昇率を設定することにより、エンジンから所望の動力を出力させる時点において、エンジン回転数が所望の動力に対応した回転数となるとともに、エンジンの潤滑状態が所望の動力に対応した状態となる。ステップS34の処理が終了すると全体の処理が終了する。
【0094】
一方、ハイブリッド制御部62は、エンジンの停止期間が所定期間未満である場合には、エンジンの潤滑状態が良好であると判定する。この場合(ステップS33においてYES)、全体の処理は終了する。
【0095】
なお、ステップS32においてNOの場合、すなわち、ハイブリッド制御部62が、現時点から一定の時間後にエンジンを高負荷運転させる状況が生じないと判定した場合には、全体の処理は終了する。
【0096】
このように実施の形態2では、ハイブリッド制御部62は走行モード設定部64が設定した走行モードがEV走行モードであっても、エンジン2を始動させる。これにより、エンジン2が長期間停止していてもエンジン2の動力を用いてハイブリッド車両1を走行させる時には、エンジン2の潤滑状態を良好な状態にすることができる。
【0097】
また、実施の形態2では、ハイブリッド制御部62は、エンジン2からの所望の動力の出力時には、エンジン2の回転数が所望の動力に対応する回転数となり、かつ、エンジン2の潤滑状態が所望の動力に対応した状態となるように、エンジン2を予め始動する。これにより、長期間停止していたエンジンから所望のトルクを適切なタイミングで出力させることが可能になる。
【0098】
また実施の形態2では、実施の形態1と同様に長期間停止したエンジンを始動する際にエンジンの回転数の上昇率を制限する。これにより、エンジンの潤滑不足が生じたままエンジン回線数が急上昇することによるエンジンの耐久性への影響を防ぐことができる。
【0099】
なお、実施の形態2におけるハイブリッド制御部62の制御処理は、高速道路での走行に備えてエンジン2を始動させるよう限定されるものではない。たとえば、ハイブリッド制御部62は、ナビゲーションシステム(GPSアンテナ50およびジャイロセンサ52)の情報から、ハイブリッド車両1が山道に向かって進んでいることを検知した場合にエンジンを始動させてもよい。ハイブリッド車両1が山道を登る場合にはエンジンが高負荷運転を行なう可能性がある。実施の形態2によれば、ハイブリッド車両1が山道を登るときに、エンジンの回転数をエンジンの要求動力に対応した回転数とし、かつ、エンジンの潤滑状態をエンジンの要求動力に対応した状態にすることができる。
【0100】
[実施の形態3]
実施の形態1,2では、充電装置25を介して取得した充電開始日時の情報に基づいてエンジン停止期間が算出される。実施の形態3では、実施の形態1,2と異なる方法によりエンジン停止期間を算出する。
【0101】
図9は、実施の形態3に係るハイブリッド車両の制御装置を備えるハイブリッド車両1Aの主たる構成を示す図である。図9を参照して、ハイブリッド車両1Aの内部にコネクタ26が設けられ、ハイブリッド車両1の外部に充電装置25が設けられる。充電装置25からの直流電圧はバッテリBに直接入力される。この点でハイブリッド車両1Aは図1のハイブリッド車両1と異なる。
【0102】
さらに、ハイブリッド車両1Aは制御装置14に代えて制御装置14Aを備える点で図1のハイブリッド車両1と異なる。制御装置14Aは、日付情報送信部45Aから送信される日付情報(現時刻を示す情報)を受ける。なお日付情報の送信方法、および送信形態は特に限定されるものではない。たとえば日付情報送信部45Aは、ラジオ放送の電波あるいはテレビ放送の電波を送信する放送局(または送信アンテナ)である。制御装置14はラジオ放送の電波あるいはテレビ放送の電波を受信することにより、現時点の日付の情報を取得する。別の例では日付情報送信部45Aは、電波時計が受信する電波(時刻情報を含む電波信号)を送信する送信局である。制御装置14Aは、その送信局からの電波を受信することにより日付情報を取得してもよい。
【0103】
なおハイブリッド車両1Aの他の部分の構成はハイブリッド車両1の対応する部分の構成と同様であるので以後の説明は繰返さない。
【0104】
図10は、図9に示す制御装置14Aの機能ブロック図である。図10および図2を参照して、制御装置14Aは記憶部66をさらに含む点で制御装置14と異なる。図10に示されるように、ハイブリッド制御部62は日付情報送信部45Aから日付情報を受ける。ハイブリッド制御部62はこの日付情報を記憶部66に記憶させる。
【0105】
ハイブリッド車両1に対して停止指示が与えられた場合にも、記憶部66は日付情報を保持する。たとえば記憶部66は不揮発性記憶装置(たとえばフラッシュメモリ)を含んで構成される。また、たとえば記憶部66は、図示しないバックアップ電源により電源が供給される揮発性の半導体メモリであってもよい。なお制御装置14Aの他の部分の構成は制御装置14Aの対応する部分の構成と同様であるので以後の説明は繰返さない。
【0106】
ハイブリッド制御部62は、エンジンの停止時に日付情報送信部45Aから送られる日付情報を受信する。そしてハイブリッド制御部62は、ハイブリッド車両1の停止時に取得した日付情報を記憶部66に保存する。よって、ハイブリッド車両1の走行モードがHV走行モードからEV走行モードに切換わった後にハイブリッド車両1が停止しても、エンジンが停止したときの日付情報は記憶部66に保存される。
【0107】
次に、ハイブリッド制御部62はエンジン始動時に日付情報送信部45Aから送られる日付情報を受信する。ハイブリッド制御部62はエンジン始動時に取得した日付情報と記憶部66に記憶される日付情報とに基づいて、エンジン停止期間を算出する。エンジンが停止したときの日時を示す日付情報が記憶部66に記憶されることで、エンジン停止期間を正確に算出することが可能になる。
【0108】
図11は、図10のハイブリッド制御部62が実行するエンジン停止期間の算出処理を説明するフローチャートである。図11を参照して処理が開始されると、ハイブリッド制御部62はたとえばエンジン回転数に基づいてエンジン2が停止したか否かを判定する(ステップS41)。エンジン回転数が0でなければハイブリッド制御部62はエンジン2が停止していないと判定する。この場合(ステップS41においてNO)、全体の処理が終了する。一方、エンジン回転数が0の場合には、ハイブリッド制御部62はエンジンが停止したと判定する。この場合(ステップS41においてYES)、ハイブリッド制御部62は、日付情報送信部45Aから送信される日付情報を取得する(ステップS42)。なお、この情報は後述するステップS44の処理が実行されるまでハイブリッド制御部62の内部に保持される。
【0109】
次にハイブリッド制御部62は、ハイブリッド車両1の停止が運転者により指示されたか否かを判定する(ステップS43)。車両の停止が運転者により指示された場合(ステップS43においてYES)、ハイブリッド制御部62は、ステップS42において取得したエンジン停止日時を示す日付情報を記憶部66に保存する(ステップS44)。ステップS44の処理が終了するとハイブリッド車両1が停止する。その後、ハイブリッド車両1に搭載されたバッテリBが充電される。
【0110】
ステップS44に続くステップS45では、ハイブリッド制御部62はハイブリッド車両1の起動が運転者により指示されたか否かを判定する(ステップS45)。ハイブリッド車両1の起動が運転者により指示された場合(ステップS45においてYES)、ハイブリッド制御部62は、記憶部66からエンジン停止日時を示す日付情報を読み出す(ステップS46)。
【0111】
続いて、ハイブリッド制御部62は、エンジン2の始動が必要かを判定する(ステップS47)。実施の形態1と同様に、ハイブリッド制御部62は、走行モード設定部64が走行モードの設定をEV走行モードからHV走行モードに切換えたときにエンジン2の始動が必要であると判定してもよい。また、実施の形態2と同様に、ハイブリッド制御部62は、走行モードがEV走行モードであってもエンジン2の高負荷運転が予測される場合にエンジン2の始動が必要であると判定してもよい。
【0112】
エンジン2の始動が必要ない場合(ステップS47においてNO)、ステップS46の処理が繰返される。一方、エンジン2の始動が必要である場合(ステップS47においてYES)、ハイブリッド制御部62は現時点の日付情報を日付情報送信部45Aから取得する(ステップS49)。ハイブリッド制御部62はエンジン始動時に取得した日付情報と記憶部66に記憶される日付情報とに基づいて、エンジン停止期間を算出する(ステップS50)。ステップS50の処理が終了すると全体の処理が終了する。
【0113】
なお、ステップS43において、車両の停止が指示されていない場合(ステップS43においてNO)、ハイブリッド制御部62はエンジン2の始動が必要かを判定する(ステップS48)。エンジン2の始動が必要ない場合(ステップS48においてNO)、ステップS43の処理が繰返される。一方、エンジン2の始動が必要である場合(ステップS47においてYES)、ステップS49,S50の処理が実行されてエンジン停止期間が算出される。ステップS49,S50の処理が行なわれる場合にはハイブリッド制御部62は内部に記憶するエンジン停止日時の情報と、日付情報送信部45Aから取得したエンジン始動日時の情報とに基づいてエンジン停止期間を算出する。
【0114】
このように実施の形態3によれば、制御装置14Aはエンジン停止時とエンジン始動時とに外部から日付情報を取得して、エンジン停止期間を算出する。実施の形態3によればエンジン停止期間の算出処理を簡単にすることができる。また、実施の形態3によればハイブリッド制御部がエンジン停止期間を計測しなくてもよくなるので、バッテリの電力の消費を抑えることが可能になる。
【0115】
なお、本実施の形態では動力分割機構によりエンジンの動力を車軸と発電機とに分割して伝達可能なシリーズ/パラレル型ハイブリッドシステムに適用した例を示した。しかし本発明は、発電機を駆動するためにのみエンジンを用い、発電機により発電された電力を使うモータでのみ車軸の駆動力を発生させるシリーズ型ハイブリッド自動車に適用することができる。シリーズ型ハイブリッド自動車においては、駆動要求に応じてモータを駆動させる場合に、バッテリだけではモータに供給する電力が十分でないことがある。この場合にはエンジンを始動させることにより発電機を発電させるとともに、バッテリの電力と発電機からの電力との合計をモータに供給する。また、バッテリのSOC(State of Charge)が低下した場合にもエンジンが始動する。
【0116】
さらに、本発明は、エンジンとモータとで車輪を直接駆動するパラレル型ハイブリッド自動車にも適用することができる。パラレル型ハイブリッド自動車では、モータはエンジンの動力のアシストを行なうとともに、バッテリを充電する発電機としても機能する。パラレル型ハイブリッド自動車は、発電機によりバッテリを充電しつつ走行することができる。
【0117】
シリーズ型ハイブリッド自動車およびパラレル型ハイブリッド自動車のいずれも、エンジンを作動状態にする動作モード、および、エンジンを停止させ、かつ、モータを作動状態にする動作モードを有する。よってこれらの自動車に対しても本発明が適用可能である。
【0118】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【図面の簡単な説明】
【0119】
【図1】実施の形態1に係るハイブリッド車両の制御装置を備えるハイブリッド車両1の主たる構成を示す図である。
【図2】図1の制御装置14の機能ブロックおよび制御装置14に関連する周辺装置を示した図である。
【図3】エンジン2の周辺について説明するための概略図である。
【図4】ハイブリッド制御部62によるエンジン始動時の回転数の制限処理を説明する図である。
【図5】図2のハイブリッド制御部62によるエンジン回転数の制限処理を示すフローチャートである。
【図6】図2のハイブリッド制御部62がエンジン停止期間を算出する方法を説明する図である。
【図7】図2のハイブリッド制御部62が実行するエンジン停止期間の計測処理を説明するフローチャートである。
【図8】実施の形態2に係るエンジン回転数の制限処理を示すフローチャートである。
【図9】実施の形態3に係るハイブリッド車両の制御装置を備えるハイブリッド車両1Aの主たる構成を示す図である。
【図10】図9に示す制御装置14Aの機能ブロック図である。
【図11】図10のハイブリッド制御部62が実行するエンジン停止期間の算出処理を説明するフローチャートである。
【符号の説明】
【0120】
1,1A ハイブリッド車両、2 エンジン、4,6 ギヤ、14,14A 制御装置、16 プラネタリギヤ、18 デファレンシャルギヤ、20R,20L 前輪、22R,22L 後輪、25 充電装置、26 コネクタ、28,30 システムメインリレー、32 昇圧ユニット、36 インバータ、40 端末装置、41 交流電源、42 アクセルポジションセンサ、43 ケーブル、44 車速センサ、45 サーバ、45A 日付情報送信部、46 EV優先スイッチ、48 表示部、50 GPSアンテナ、52 ジャイロセンサ、54 ETC車載器、62 ハイブリッド制御部、64 走行モード設定部、66 記憶部、102 エアクリーナ、104 エアフローメータ、106 吸気温センサ、107 スロットル弁、108 電子制御スロットル、110 インジェクタ、111 吸気通路、112 イグニッションコイル、113 排気通路、114 ピストン、127 触媒装置、143 クランクポジションセンサ、144 ノックセンサ、145 空燃比センサ、146 酸素センサ、148 水温センサ、150 エンジンオイル、152 オイルパン、154 オイルポンプ、156 オイルフィルタ、170 給油扉開閉スイッチ、180 燃料タンク、181 リッド、182 燃料キャップ、183 燃料供給通路、185,187,188,190,192 通路、186 ポンプ、189 チャコールキャニスタ、191 キャニスタパージバキュームスイッチングバルブ、B バッテリ、B0〜Bn 電池ユニット、FL 燃料、MG1,MG2 モータジェネレータ、NW ネットワーク。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関と、モータと、前記内燃機関に潤滑油を供給する潤滑システムとを備えるハイブリッド車両の制御装置であって、
前記モータは、前記ハイブリッド車両を駆動し、前記内燃機関は、前記ハイブリッド車両の駆動および前記モータへの動力供給の少なくとも一方を実行し、
前記制御装置は、
前記ハイブリッド車両の動作モードを、少なくとも前記内燃機関を動作させるHVモードと、前記内燃機関を停止させ、かつ、前記モータを動作させるEVモードとのいずれか一方に設定するモード設定部と、
前記モード設定部の設定結果に応じて前記内燃機関および前記モータを制御する制御部とを備え、
前記制御部は、前記内燃機関の停止中に前記内燃機関の潤滑不足が生じた場合には、前記内燃機関の始動時に、前記内燃機関の回転数の上昇率を制限する、ハイブリッド車両の制御装置。
【請求項2】
前記ハイブリッド車両は、
前記モータに電力を供給する蓄電装置と、
前記蓄電装置を前記ハイブリッド車両の外部から充電するための接続部とをさらに備える、請求項1に記載のハイブリッド車両の制御装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記内燃機関の停止期間が所定期間以上である場合には、前記内燃機関の潤滑不足が生じたと判定する、請求項1に記載のハイブリッド車両の制御装置。
【請求項4】
前記ハイブリッド車両の外部には、現時点の日付情報を送信する日付情報送信部が設けられ、
前記制御部は、前記内燃機関の停止時および前記内燃機関の始動時に前記日付情報送信部から前記日付情報を受信して、前記内燃機関の停止期間を算出する、請求項3に記載のハイブリッド車両の制御装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記モード設定部が前記動作モードの設定を前記EVモードから前記HVモードに変更したことに応じて、前記内燃機関を始動させる、請求項1に記載のハイブリッド車両の制御装置。
【請求項6】
前記制御部は、前記モード設定部が設定した前記動作モードが前記EVモードであっても、前記内燃機関を始動させる、請求項1に記載のハイブリッド車両の制御装置。
【請求項7】
前記制御部は、前記内燃機関からの所望の動力の出力時には、前記内燃機関の回転数が前記所望の動力に対応する回転数となり、かつ、前記内燃機関の潤滑状態が前記所望の動力に対応した状態となるように、前記エンジンを予め始動する、請求項1に記載のハイブリッド車両の制御装置。
【請求項8】
前記ハイブリッド車両は、前記ハイブリッド車両の現在位置の情報を取得するナビゲーションシステムをさらに備え、
前記制御部は、前記ナビゲーションシステムから受ける前記ハイブリッド車両の現在位置の情報に基づいて、前記内燃機関の始動タイミングを決定する、請求項7に記載のハイブリッド車両の制御装置。
【請求項9】
前記ハイブリッド車両は、
高速走行道路の入口の存在を検知する検知装置をさらに備え、
前記制御部は、前記検知装置の検知結果を受けて、前記内燃機関を始動させる、請求項7に記載のハイブリッド車両の制御装置。
【請求項10】
前記検知装置は、ETC車載器である、請求項9に記載のハイブリッド車両の制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2008−285008(P2008−285008A)
【公開日】平成20年11月27日(2008.11.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−131916(P2007−131916)
【出願日】平成19年5月17日(2007.5.17)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】