説明

ハイブリッド車両制御装置

【課題】内燃機関の低中速運転時において車両の駆動力を確保しつつ吸気管の振動による異音の発生を的確に抑制することができる。
【解決手段】車両1は内燃機関10と第2のモータジェネレータMG2とを駆動源としている。内燃機関10は、吸気バルブの開閉タイミングを変更する吸気側バルブタイミング変更機構と、排気バルブの開閉タイミングを変更する排気側バルブタイミング変更機構とを備えており、これら変更機構は吸気バルブ及び排気バルブのバルブオーバーラップ期間VOLを変更する。電子制御装置50は、内燃機関10の低中速運転時において機関負荷率KLが所定値KL1以下のときにはバルブオーバーラップ期間VOLを増大する増大制御の実行を禁止するとともに第2のモータジェネレータMG2により車両1の駆動を補助するように構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸気バルブ及び排気バルブのバルブオーバーラップ期間を変更する変更機構を備える内燃機関とモータとを駆動源としたハイブリッド車両の制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車載内燃機関では、吸気バルブの開閉タイミングを変更する吸気側バルブタイミング変更機構及び排気バルブの開閉タイミングを変更する排気側バルブタイミング変更機構を備えているものがある。こうした内燃機関では、吸気バルブ及び排気バルブが共に開弁状態とされる期間であるバルブオーバーラップ期間を機関運転状態に応じて適宜設定することにより、燃費の節減や排気エミッションの改善を図るようにしている。
【0003】
また、内燃機関とモータとを駆動源としたハイブリッド車両が周知である(例えば特許文献1参照)。ここで、特許文献1に記載のハイブリッド車両の内燃機関は、吸気側バルブタイミング変更機構を備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006―257913号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、こうしたハイブリッド車両では、排気側バルブタイミング変更機構を更に備えることによりバルブオーバーラップ期間の更なる増大を可能とすることが考えられる。これにより、吸気の充填効率を高めて機関トルクの増大を図ることが考えられる。しかしながら、この場合、バルブオーバーラップ期間の増大によって吸気脈動が増大し、樹脂等により形成されて比較的剛性の低い吸気管、特に吸気マニホルドが振動するようになる。その結果、吸気管の振動により発生する異音が乗員に対して不快感を与えるといった問題が生じる。
【0006】
尚、こうした問題は、吸気側バルブタイミング変更機構及び排気側バルブタイミング変更機構の双方を備えるものに限られるものではない。吸気バルブ及び排気バルブのバルブオーバーラップ期間を変更する変更機構を備える内燃機関が駆動源とされるハイブリッド車の制御装置であれば、程度の差こそあれ概ね生じうるものである。
【0007】
本発明は、こうした実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、内燃機関の低中速運転時において車両の駆動力を確保しつつ吸気管の振動による異音の発生を的確に抑制することのできるハイブリッド車両制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
以下、上記課題を解決するための手段及びその作用効果について記載する。
請求項1に記載の発明は、吸気バルブ及び排気バルブのバルブオーバーラップ期間を変更する変更機構を備える内燃機関とモータとを駆動源としたハイブリッド車両の制御装置において、内燃機関の低中速運転時にはバルブオーバーラップ期間を増大する増大制御の実行を禁止するとともに前記モータにより車両の駆動を補助することをその要旨としている。
【0009】
同構成によれば、内燃機関の低中速運転時には上記増大制御が禁止されるため、バルブオーバーラップ期間に起因して吸気脈動が増大することが抑制されるようになる。このため、吸気脈動に起因した吸気管の振動を抑制することができる。このとき、バルブオーバーラップ期間の増大制御が行なわれないことにより機関トルクを確保することができず、車両の駆動力が不足するおそれがある。この点、上記構成によれば、モータにより車両の駆動が補助されることから車両の駆動力が不足することを抑制することができる。従って、内燃機関の低中速運転時において車両の駆動力を確保しつつ吸気管の振動による異音の発生を的確に抑制することができる。
【0010】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のハイブリッド車両制御装置において、内燃機関の低中速運転時において機関負荷率が所定値以下のときには前記増大制御の実行を禁止する一方、機関負荷率が前記所定値よりも大きいときには前記増大制御を実行することをその要旨としている。
【0011】
同構成によれば、内燃機関の低中速運転時において機関負荷率が所定値よりも大きいときにはバルブオーバーラップ期間の増大制御が実行されるため、吸気の充填効率が向上して機関トルクを増大させることができる。このため、内燃機関によって車両の駆動力を確保することができる。このとき、バルブオーバーラップ期間を増大することによって吸気脈動が増大し、これによって吸気管の振動が増大するようにはなる。しかしながら、機関負荷率が上記所定値よりも大きいときには機関運転に伴い生じるその他の騒音の音圧レベルが大きくなり、吸気管の振動による異音の音圧レベルが相対的に小さくなるため吸気管からの異音が問題となりにくい。ちなみに、この場合、上記所定値を以下のように設定することが望ましい。すなわち、バルブオーバーラップ期間の増大制御を実行するようにした場合に吸気管の振動による異音が問題とならなくなる機関負荷率の最小値に上記所定値を設定する。
【0012】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は請求項2に記載のハイブリッド車両制御装置において、前記変更機構は、吸気バルブの開閉タイミングを変更する吸気側バルブタイミング変更機構と、排気バルブの開閉タイミングを変更する排気側バルブタイミング変更機構とからなることをその要旨としている。
【0013】
同構成によれば、吸気側バルブタイミング変更機構及び排気側バルブタイミング変更機構の双方を備えているため、例えば吸気側バルブタイミング変更機構のみを備える構成に比べて、バルブオーバーラップ期間を大きくすることが可能となる。このため、内燃機関の高速運転時にバルブオーバーラップ期間を一層増大することができ、機関トルクを十分に確保することができる。
【0014】
請求項4に記載の発明は、請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載のハイブリッド車両制御装置において、内燃機関の低中速運転時にはバルブオーバーラップ期間を設定しないことをその要旨としている。
【0015】
同構成によれば、内燃機関の低中速運転時にはバルブオーバーラップ期間が設定されないため、バルブオーバーラップ期間が存在することに起因して吸気脈動が生じることがなくなる。このため、吸気管の振動を一層抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明に係るハイブリッド車両制御装置の一実施形態について車両の概略構成を示す概略図。
【図2】同実施形態の内燃機関の概略構造を示す概略図。
【図3】クランク角と吸気バルブ及び排気バルブのバルブリフト量との関係の一例を示すグラフ。
【図4】同実施形態における低中速時における機関負荷率とバルブオーバーラップ期間との関係を規定したマップ。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図1〜図4を参照して、本発明に係るハイブリッド車両制御装置を具体化した一実施形態について詳細に説明する。尚、本実施形態ではアトキンソンサイクルの内燃機関10を採用している。
【0018】
図1に示すように、車両1は、駆動輪5を回転する駆動源として直列4気筒ポート噴射式の内燃機関10及びモータジェネレータ(以下、第2のモータジェネレータMG2)を備えている。内燃機関10から出力される動力は、動力分割機構2、減速機3、及び車軸4を介して駆動輪5に伝達される。また、第2のモータジェネレータMG2から出力される動力は、モータリダクション機構6、減速機3、及び車軸4を介して駆動輪5に伝達される。尚、本実施形態の車両1は、前輪が駆動輪5とされ、後輪が従動輪とされている。
【0019】
具体的には、内燃機関10から出力された動力は、動力分割機構2により、駆動輪5に伝達される動力とモータジェネレータ(以下、第1のモータジェネレータMG1)に伝達される動力とに分割される。第1のモータジェネレータMG1は、内燃機関10から出力された動力によって発電するとともに、この発電された電力は電力変換部7を介してバッテリ8に供給されて充電される。尚、内燃機関10の始動時には、バッテリ8から供給される電力によって第1のモータジェネレータMG1が駆動されることによりクランキングが行なわれる。すなわち、第1のモータジェネレータMG1は内燃機関10の始動装置として機能する。
【0020】
第2のモータジェネレータMG2は、バッテリ8から供給される電力によって駆動されることで動力を出力する。また、第2のモータジェネレータMG2は、車両1の減速時や制動時等に駆動輪5の回転力によって発電するとともに、この発電された電力は電力変換部7を介してバッテリ8に供給されて充電される。
【0021】
ここで、電力変換部7はインバータ及びコンバータ等を備えて構成されており、各モータジェネレータMG1,MG2から供給される交流電力を直流電力に変換するとともにその電圧をバッテリ8の電圧レベルに変換してバッテリ8に供給する。また、電力変換部7は、バッテリ8から供給される直流電力を交流電力に変換するとともに昇圧して各モータジェネレータMG1,MG2に供給する。
【0022】
内燃機関10の制御、各モータジェネレータMG1、MG2の制御を含む車両の制御は、電子制御装置50により行なわれる。
図2に示すように、内燃機関10の気筒11には、ピストン12が摺動可能に収容されている。ピストン12はコネクティングロッドを介してクランクシャフト13に連結されている。
【0023】
内燃機関10の燃焼室14の上部には、ピストン12と対向するように点火プラグ15が設けられている。また、シリンダーヘッドには、燃焼室14と連通する吸気ポート21及び排気ポート31が形成されている。シリンダヘッドには、燃焼室14に燃料を直接噴射する燃料噴射弁16が設けられている。
【0024】
吸気ポート21は吸気管22と接続されて吸気通路20の一部を形成している。また、排気ポート31は排気管32と接続されて排気通路30の一部を形成している。
吸気通路20には、モータ23aによって駆動されて燃焼室14に導入される空気の量である吸入空気量GAを調量するスロットルバルブ23が設けられている。
【0025】
シリンダーヘッドには、吸気通路20と燃焼室14とを連通・遮断する吸気バルブ24が設けられるとともに、排気通路30と燃焼室14とを連通・遮断する排気バルブ34が設けられている。各バルブ24,34はバルブスプリングの付勢力によって閉弁方向に常に付勢されている。また、シリンダーヘッドには吸気バルブ24を駆動する吸気カムシャフト25と、排気バルブ34を駆動する排気カムシャフト35とがそれぞれ回動自在に支持されている。
【0026】
これらカムシャフト25,35は、図示しないタイミングチェーンを介してクランクシャフト13と連結されており、クランクシャフト13が2回転すると、それに伴ってこれらカムシャフト25,35がそれぞれ1回転するようになっている。これにより、機関運転に伴ってクランクシャフト13が回転すると、吸気カムシャフト25及び排気カムシャフト35が回転し、吸気カムシャフト25に形成されたカム山の作用により吸気バルブ24が開弁方向にリフトされ、排気カムシャフト35に形成されたカム山の作用により排気バルブ34が開弁方向にリフトされるようになっている。
【0027】
また、図1に二点鎖線で示されるように内燃機関10には、吸気側バルブタイミング変更機構26と、排気側バルブタイミング変更機構36とが設けられている。吸気側バルブタイミング変更機構26は、吸気カムシャフト25とタイミングチェーンとが連結されている部分に設けられており、クランクシャフト13の回転位相に対する吸気カムシャフト25の回転位相を変更することにより、吸気バルブ24の開閉タイミングを変更するものである。一方、排気側バルブタイミング変更機構36は、排気カムシャフト35とタイミングチェーンとが連結されている部分に設けられており、クランクシャフト13の回転位相に対する排気カムシャフト35の回転位相を変更することにより、排気バルブ34の開閉タイミングを変更するものである。
【0028】
尚、これらバルブタイミング変更機構26,36はクランクシャフト13に連結された図示しないオイルポンプによって圧送される作動油の油圧を利用して各カムシャフト25,35の回転位相を変更する。
【0029】
内燃機関10には、内燃機関10の各部の状態を検出する各種のセンサが設けられている。クランクシャフト13の近傍に設けられたクランク角センサ72はクランクシャフト13の回転位相を検出し、電子制御装置50はこの回転位相に基づいて単位時間当りのクランクシャフト13の回転数を示す機関回転速度NEを算出する。吸気通路20に設けられた吸入空気量センサ73は吸入空気量GAを検出する。スロットル開度センサ74はスロットルバルブ23の開度であるスロットル開度TAを検出する。吸気カムシャフト25の近傍に設けられた吸気側カム角センサ75は吸気カムシャフト25の回転位相に対応した信号を出力する。排気カムシャフト35の近傍に設けられた排気側カム角センサ76は排気カムシャフト35の回転位相に対応した信号を出力する。水温センサ60はウォータージャケット内を循環している機関冷却水の温度である機関冷却水温THWを検出する。
【0030】
そして、これらの各種センサは、内燃機関10を統括的に制御する電子制御装置50に電気的に接続されている。また、電子制御装置50には、アクセルペダル61に取り付けられてアクセル操作量ACCPを検出するアクセル操作量センサ71が接続されている。また、車両の走行速度である車速Vを検出する車速センサ78が接続されている。
【0031】
電子制御装置50は、機関制御にかかる各種演算処理を実施する中央演算処理装置(CPU)、機関制御用のプログラムやデータが記憶された読み出し専用メモリ(ROM)、演算処理の結果等を一時的に記憶するランダムアクセスメモリ(RAM)等を備えて構成されている。そして、電子制御装置50は、上記各種センサ71〜78の検出信号を読み込み、各種演算処理を実行し、その結果に基づいて内燃機関10を統括的に制御する。
【0032】
具体的には、電子制御装置50は、機関回転速度NE及びアクセル操作量ACCPに基づいてモータ23aを制御することにより、スロットル開度を変更して吸入空気量GAを調量する。また、これと併せて燃焼室14に導入される混合気の空燃比を理論空燃比に近づけように目標燃料噴射量を設定し、燃料噴射弁16を駆動して燃料噴射量を調量するとともに、排気通路30に設けられた空燃比センサ及び酸素センサの出力値に基づいて燃料噴射量をフィードバック制御する空燃比フィードバック制御を実行する。
【0033】
また、電子制御装置50は、機関回転速度NEと機関負荷率KLとに基づいて吸気側バルブタイミング変更機構26や排気側バルブタイミング変更機構36を駆動して吸気バルブ24及び排気バルブ34の開閉タイミングを変更する。ここで、機関負荷率KLとは、内燃機関10の最大負荷に対する現在の負荷の比率を示すもので、機関回転速度NEと吸入空気量GAとに基づいて算出される。
【0034】
また、電子制御装置50は、アクセル操作量ACCP等に基づいて車両1の要求駆動力を算出し、この要求駆動力や車速Vに基づいて車両の走行制御を行なう。すなわち、車両1の発進時や低速走行時においては内燃機関10が停止状態とされ、第2のモータジェネレータMG2から出力される動力のみによる車両走行、所謂EV走行を行なう。また、車両の加速時や高速走行時には、内燃機関10の運転を行い、第2のモータジェネレータMG2から出力される動力に加えて、或いは同動力に代えて、内燃機関10から出力される動力によって車両走行を行なう。
【0035】
ところで、図3に示すように、吸気側バルブタイミング変更機構26及び排気側バルブタイミング変更機構36により吸気バルブ24及び排気バルブ34が共に開弁している期間であるバルブオーバーラップ期間VOLを増大することで、吸気の充填効率を高めて機関トルクの増大を図ることが考えられる。しかしながら、この場合、バルブオーバーラップ期間VOLの増大によって吸気脈動が増大し、樹脂により形成されて比較的剛性の低い吸気管22(特に吸気マニホルド)が大きく振動するようになる。その結果、吸気管22の振動により発生する異音が乗員に対して不快感を与えるといった問題が生じる。
【0036】
そこで、本実施形態では、図4に示すように、内燃機関10の低中速運転時(例えば1000rpm≦NE≦2500rpm)において機関負荷率KLが所定値KL1(例えば60%)以下のときにはバルブオーバーラップ期間VOLを略ゼロよりも増大する増大制御の実行を禁止するようにしている。具体的には、バルブオーバーラップ期間VOLを略ゼロ又はゼロよりも小さいマイナスの値にしている。ここで、本実施形態では、上記所定値KL1が、バルブオーバーラップ期間VOLを略ゼロよりも大きくした場合に吸気管22の振動による異音が問題とならなくなる機関負荷率KLの最小値に設定されている。尚、吸気管22の振動により発生する異音の音圧レベルは内燃機関10の排気量や吸気管22の形状に大きく依存する。このため、上記所定値KL1を実験等により予め適切な値に設定されている。また、参考までに、図4において、従来の通常のガソリンエンジン(アトキンソンエンジンではない)における機関負荷率KLとバルブオーバーラップ期間VOLとの関係を一点鎖線で示している。
【0037】
またこのとき、車両1の要求駆動力を満たすように第2のモータジェネレータMG2から出力される動力を設定することにより車両1の駆動を補助するようにしている。
一方、内燃機関10の低中速運転時において機関負荷率KLが上記所定値KL1よりも大きくなると、バルブオーバーラップ期間VOLの増大制御を実行するようにしている。
【0038】
次に、本実施形態の作用を説明する。
内燃機関10の低中速運転時において機関負荷率KLが所定値KL1以下のときにはバルブオーバーラップ期間VOLの増大制御が禁止される。このため、バルブオーバーラップ期間VOLに起因して吸気脈動が増大することが抑制され、吸気脈動に起因した吸気管22の振動が抑制されるようになる。このとき、バルブオーバーラップ期間VOLの増大制御が行なわれないことにより機関トルクを確保することができず、車両1の駆動力が不足するおそれがある。この点、第2のモータジェネレータMG2により車両1の駆動が補助されることから車両1の駆動力が不足することはない。
【0039】
尚、吸気側バルブタイミング変更機構26及び排気側バルブタイミング変更機構36が本発明に係る変更機構に相当する。
以上説明した本実施形態に係るハイブリッド車両制御装置によれば、以下に示す作用効果が得られるようになる。
【0040】
(1)車両1は内燃機関10と第2のモータジェネレータMG2とを駆動源としている。内燃機関10は、吸気バルブ24の開閉タイミングを変更する吸気側バルブタイミング変更機構26と、排気バルブ34の開閉タイミングを変更する排気側バルブタイミング変更機構36とを備えており、これら変更機構26、36は吸気バルブ24及び排気バルブ34のバルブオーバーラップ期間VOLを変更する。電子制御装置50は、内燃機関10の低中速運転時において機関負荷率KLが所定値KL1以下のときにはバルブオーバーラップ期間VOLを増大する増大制御の実行を禁止するとともに第2のモータジェネレータMG2により車両1の駆動を補助するように構成されている。こうした構成によれば、内燃機関の低中速運転時において車両1の駆動力を確保しつつ吸気管22の振動による異音の発生を的確に抑制することができる。
【0041】
(2)内燃機関の低中速運転時において機関負荷率KLが上記所定値KL1よりも大きいときにはバルブオーバーラップ期間の増大制御を実行するように構成されている。
こうした構成によれば、内燃機関10の低中速運転時において機関負荷率KLが上記所定値KL1よりも大きいときにはバルブオーバーラップ期間VOLの増大制御が実行される。しかも、吸気側バルブタイミング変更機構26及び排気側バルブタイミング変更機構36の双方を備えているため、例えば吸気側バルブタイミング変更機構26のみを備える構成に比べて、バルブオーバーラップ期間VOLを大きくすることが可能となる。このため、吸気の充填効率を向上させて機関トルクを十分に増大させることができ、内燃機関10によって車両1の駆動力を確保することができる。このとき、バルブオーバーラップ期間VOLを増大することによって吸気脈動が増大し、これによって吸気管22の振動が増大するようにはなる。しかしながら、機関負荷率KLが上記所定値KL1よりも大きいときには機関運転に伴い生じるその他の騒音の音圧レベルが大きくなり、吸気管22の振動による異音の音圧レベルが相対的に小さくなるため、吸気管22からの異音が問題となることはない。
【0042】
(3)内燃機関10の低中速運転時にはバルブオーバーラップ期間VOLを略ゼロ以下の値とするように構成されている。こうした構成によれば、バルブオーバーラップ期間VOLが存在することに起因して吸気脈動が生じることがほとんどなくなる。このため、吸気管22の振動を好適に抑制することができる。
【0043】
尚、本発明に係るハイブリッド車両制御装置は、上記実施形態にて例示した構成に限定されるものではなく、これを適宜変更した例えば次のような形態として実施することもできる。
【0044】
・上記実施形態では、直列4気筒式の内燃機関10について例示したが、本発明の内燃機関はこれに限られるものではなく、他に例えばV型6気筒式の内燃機関に対して本発明を適用することもできる。また、燃焼室14に燃料を直接噴射する燃料噴射弁16を備える内燃機関10について例示したが、本発明の内燃機関は直噴式のものに限られるものではなく、吸気ポート21から燃料を噴射する燃料噴射弁を備えるポート噴射式の内燃機関に対して本発明を適用することもできる。
【0045】
・上記実施形態では、所謂スプリット方式(動力分割方式)のハイブリッド車両について例示したが、本発明に係るハイブリッド車両はこれに限定されるものではなく、他の方式のハイブリッド車両、例えばパラレル方式のハイブリッド車両に対して本発明を適用することもできる。
【0046】
・上記実施形態では、機関負荷率KLが40%から60%までの領域においてバルブオーバーラップ期間VOLが略ゼロ、具体的にはゼロよりも僅かに大きく設定されている(図4参照)。これに代えて、上記領域においてバルブオーバーラップ期間VOLをゼロ以下の値に設定する、すなわちバルブオーバーラップ期間VOLを設定しないようにしてもよい。
【0047】
・上記実施形態によるように吸気側バルブタイミング変更機構26及び排気側バルブタイミング変更機構36の双方を備えるようにすることが、バルブオーバーラップ期間VOLを一層大きくして機関負荷率KLが所定値KL1よりも大きいときに機関トルクの好適な増大を図る上では望ましい。しかしながら、本発明はこれに限られるものではなく、吸気側バルブタイミング変更機構のみを備える構成に対しても本発明を適用することはできる。この場合であっても、バルブオーバーラップ期間に起因して吸気脈動が増大することが抑制されるようになり、吸気脈動に起因した吸気管の振動が抑制されるようになる。
【0048】
・吸気バルブ及び排気バルブのバルブオーバーラップ期間を変更する変更機構は上記実施形態及びその変形例において例示したバルブタイミング変更機構26、36に限定されるものではない。要するに、吸気バルブ及び排気バルブのバルブオーバーラップ期間を変更するものであればよく、吸気バルブ及び排気バルブを電磁弁により構成するとともに、これらの電磁弁によって変更機構を具現化するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0049】
1…車両、2…動力分割機構、3…減速機、4…車軸、5…駆動輪、6…モータリダクション機構、7…電力変換部、8…バッテリ、10…内燃機関、11…気筒、12…ピストン、13…クランクシャフト、14…燃焼室、15…点火プラグ、16…燃料噴射弁、20…吸気通路、21…吸気ポート、22…吸気管、23…スロットルバルブ、23a…モータ、24…吸気バルブ、25…吸気カムシャフト、26…吸気側バルブタイミング変更機構、30…排気通路、31…排気ポート、32…排気管、34…排気バルブ、35…排気カムシャフト、36…排気側バルブタイミング変更機構、50…電子制御装置、61…アクセルペダル、71…アクセル操作量センサ、72…クランク角センサ、73…吸入空気量センサ、74…スロットル開度センサ、75…吸気側カム角センサ、76…排気側カム角センサ、77…水温センサ、78…車速センサ、MG1…第1のモータジェネレータ、MG2…第2のモータジェネレータ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸気バルブ及び排気バルブのバルブオーバーラップ期間を変更する変更機構を備える内燃機関とモータとを駆動源としたハイブリッド車両の制御装置において、
内燃機関の低中速運転時にはバルブオーバーラップ期間を増大する増大制御の実行を禁止するとともに前記モータにより車両の駆動を補助する
ことを特徴とするハイブリッド車両制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載のハイブリッド車両制御装置において、
内燃機関の低中速運転時において機関負荷率が所定値以下のときには前記増大制御の実行を禁止する一方、機関負荷率が前記所定値よりも大きいときには前記増大制御を実行する
ことを特徴とするハイブリッド車両制御装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載のハイブリッド車両制御装置において、
前記変更機構は、吸気バルブの開閉タイミングを変更する吸気側バルブタイミング変更機構と、排気バルブの開閉タイミングを変更する排気側バルブタイミング変更機構とからなる
ことを特徴とするハイブリッド車両制御装置。
【請求項4】
請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載のハイブリッド車両制御装置において、
内燃機関の低中速運転時にはバルブオーバーラップ期間を設定しない
ことを特徴とするハイブリッド車両制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−228959(P2012−228959A)
【公開日】平成24年11月22日(2012.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−98485(P2011−98485)
【出願日】平成23年4月26日(2011.4.26)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】