説明

ハナビラタケ超微細粉末

【課題】 ハナビラタケ由来の超微細化粉末及びそれを含有する組成物を提供する。
【解決手段】 ハナビラタケの子実体又は菌糸体からなるハナビラタケ超微細粉末、ハナビラタケの子実体又は菌糸体から得られた抽出物からなるハナビラタケ超微細粉末であって、超微細粉末化するには、好ましくは物理的粉砕機により行うものであり、また、前記の超微細粉末は、好ましくはその粒径が、0.1〜20μmであるハナビラタケ超微細粉末である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハナビラタケ超微細粉末及びそれからなる健康食品、医薬品、健康食品飲料に関するものである。
【背景技術】
【0002】
きのこ類の一種であるハナビラタケは、カラマツに生えるきのこであって、非常に僅少なきのこである。歯ごたえがよく、その純白の色合いと葉牡丹のような形態が特徴である食用きのこである。これまで、このハナビラタケは成長が遅く人工栽培は非常に困難であるとされてきたが、最近になって、比較的短期間で栽培可能な新しい栽培法が確立され、商業規模での供給が可能となってきている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
近年、ハナビラタケには大量のβグルカンが含まれていることが明らかとなった。さらに抗腫瘍効果(例えば、非特許文献1、2参照)、抗菌(感染症)効果(例えば、特許文献3参照)、免疫賦活効果(例えば、非特許文献2、特許文献2参照)、美白効果(例えば、特許文献4参照)、血糖調節効果、抗高脂血症効果、抗アレルギー効果、抗高血圧効果(例えば、特許文献5参照)などが知られており、健康食品としても広く利用されるようになってきた。
【0004】
ところで、従来のハナビラタケの粉末は、口当たりが悪く、摂取する際に問題となっていた。そのため、粉末を顆粒状や錠剤などに加工したり、カプセルに封入するなどして摂取しやすくすることが行われていた。
【特許文献1】特開平11−56098号公報
【非特許文献1】N. Ohno, N. N. Miura, M. Nakajima and T. Yadomae, Biol. Pharm. Bull., 23(7), 866-872(2000)
【非特許文献2】宿前俊郎、βグルカンの魅力、東洋医学者(東京)、2000
【特許文献2】特開2000−217543号公報
【特許文献3】特願2003−329918号公報
【特許文献4】特願2004−98852号公報
【特許文献5】特願2003−90994号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし顆粒に加工した場合も、口の中でザラザラ感を感じたり、口の中で張り付き感を感じたり、さっと溶けず飲み込みにくいと感じたりする場合のあることが問題となっていた。特に、病気で体力の落ちた人にとって食感は重要であり、口の中で張り付かず、さっと溶け簡単に飲み込めることが必要である。また、ハナビラタケの成分は水難溶性のものが多く、摂取しても吸収率が低いという問題点があった。このため、口当たりや吸収率を改善する方法が求められていた。
【0006】
本発明は、ハナビラタケを摂取する際の口当たりの良さや、成分吸収率を改善することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記の課題を解決するために鋭意検討した結果、ハナビラタケを超微細粉末化することにより、口当たりおよび吸収率が改善することを発見し、本発明に到達した。
【0008】
すなわち、本発明は、ハナビラタケの子実体又は菌糸体からなるハナビラタケ超微細粉末を要旨とするものである。また、本発明は、ハナビラタケの子実体又は菌糸体から得られた抽出物からなるハナビラタケ超微細粉末を要旨とするものである。これらの発明において、超微細粉末化するには、好ましくは物理的粉砕機により行うものであり、また、前記の超微細粉末は、好ましくはその粒径が、0.1〜20μmであるハナビラタケ超微細粉末である。
【0009】
また、本発明は、上記のハナビラタケ超微細粉末を含むことを特徴とする健康食品、医薬品又は健康食品飲料を要旨とするものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、経口摂取する際に口当たりが良くなり、さらに体内での吸収率が向上するため、結果的にハナビラタケが有している機能が効果的に発現させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0012】
ハナビラタケは、標高1千メートル以上のカラマツ等の針葉樹に特異的に発生するキノコで、発見することが難しいために「幻のきのこ」と言われてきた。これまで、その栽培は難しく、一般にはあまり知られていなかったが、近年、人工栽培方法を確立し、量産するに至った。
【0013】
本発明で用いられるハナビラタケ子実体は、天然のものでも人工栽培されたものでもよい。人工栽培の方法としては、既に公知の人工栽培用の菌床を作成することにより行うことができる(詳細は、例えば特開平11−56098号公報、特開2002−369621号公報、特許第3509736号公報参照)。
【0014】
また、本発明においては、ハナビラタケの菌糸体も用いることができる。菌糸体は液体培養法によって得ることができる。培地に使用する炭素源としては、グルコースなどの単糖の他、デキストリン、グリセロールなど通常用いられる炭素源が使用できる。また、窒素源としては無機または有機窒素源が使用できるが、生育速度の観点からは有機窒素源を用いるほうが好ましい。また、必要に応じて微量元素やビタミン等の生育因子を添加することは通常の培養と何ら変わりはない。培養温度は15℃〜30℃、好ましくは18℃〜28℃、20℃〜25℃が最も好ましい。pHは2.5〜8.0、好ましくは3.0〜7.0であり、3.5〜5.0が最も好ましい。培地成分には不溶成分を添加することが均一に生育させることができるため好ましい。培養期間は菌株により、数日から数週間程度に設定されうる。
【0015】
このようにして得られたハナビラタケの子実体又は菌糸体は、そのままで超微細粉末化してもよいし、ハナビラタケの子実体又は菌糸体から抽出物を得て、その抽出物を超微細粉末化してもよい。
【0016】
ハナビラタケの子実体又は菌糸体から抽出物を得る方法としては、どのような方法を用いてもよい。例えば熱水、アルカリ水溶液、有機溶媒などによる溶媒抽出方法や超音波を用いた抽出方法などが採用できる(詳細は、N. Ohno, N. N. Miura, M. Nakajima and T. Yadomae, Biol. Pharm. Bull., 23(7), 866-872(2000)、宿前俊郎、βグルカンの魅力、東洋医学者(東京)、2000等を参照)。
本発明においては、上記のようにして得られたハナビラタケの子実体若しくは菌糸体又はこれらの抽出物を超微細粉末化する。この超微細粉末化にはどのような方法を用いてもよいが、効率性の点から物理的粉砕法が好ましい。物理的粉砕方法としてはジェットミル型粉砕機、石臼型粉砕機、超音波破砕器、凍結粉砕器などを用いた方法が挙げられる。
【0017】
本発明において超微細粉末の粒径としては、0.1〜20μmが好ましく、5〜15μmがさらに好ましい。20μmを超えると口当たりが悪く、吸収率も低くなる傾向が見られる。また、0.1μm未満では製造効率が低下するため好ましくない。ここでいう、粒径とは、レーザー回折・散乱式粒度分布測定器、SKレーザーマイクロンサイザー LMS-300((株)セイシン企業)を用い、湿式測定法により測定された値をいう。
【0018】
以上のようにして得られた本発明のハナビラタケ超微細粉末は、さまざまな用途に用いることができる。それにより、抗腫瘍作用、抗感染症作用、抗ウイルス作用、抗アレルギー作用、美白作用、血圧降下作用、免疫賦活作用、免疫調整作用などを奏することができる。
【0019】
本発明の健康食品、医薬品及び健康食品飲料は、上記した本発明のハナビラタケ超微細粉末を含むものである。本発明の健康食品、医薬品及び健康食品飲料を製造するには、ハナビラタケ超微細粉末を含ませる以外はそれぞれ常法によることができる。
【実施例】
【0020】
次に、実施例により、本発明を具体的に説明する。
【0021】
なお、実施例中での口当たり(食感)及び成分吸収率は以下に示す方法で行った。粉末の粒径は上記した方法により行った。
〔口当たり(食感)の測定方法〕
口当たりの評価には、差が出やすい顆粒状に加工したもので行った。具体的には、ハナビラタケの粉末に還元麦芽糖水飴を重量比で20%加え、両者をよく混合し、粒子径が12〜40メッシュを通過するサイズに調整し、ハナビラタケ顆粒を製造し、それを用いて口当たりを評価した。 得られたハナビラタケ顆粒の口当たりについては、ボランティア15名による試飲評価試験を行った。下記基準に基づき評価し、15名の評価値の平均をとった。
〔口溶け感〕
3:良好、2:普通、1:悪い
〔口の中での張り付き感〕
3:張り付き感なく良好、2:普通、1:張り付き感あり悪い
〔ハナビラタケ風味〕
3:ハナビラタケ風味あり、1:ハナビラタケ風味なし(風味が損なわれている)
【0022】
〔成分吸収率の測定方法〕
吸収率は、胃液模擬液および小腸模擬液を用いて、抽出される成分を測定、比較することにより検討した。試料10gを400mlの胃液模擬液(pH1.2)に37℃で振とう(100rpm)しながら2時間浸漬して、遠心分離し(9500rpm、10分)、上澄み液と残渣に分離した。残渣には、さらに400mlの小腸模擬液(pH6.8)中に浸漬して振とうしながら24時間、経過を観察した。この際、胃液模擬液および小腸模擬液を適宜回収し、模擬液中に溶出されたたんぱく質、糖類およびβグルカン含有量を測定した。
胃液模擬液・・・塩化ナトリウム2gおよび塩酸7mlに水を加えて1Lとした。
小腸模擬液・・・0.2mol/Lのリン酸二水素カリウム水溶液250mlおよび0.2mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液118mlの混合液に水を加え1Lとした。
【0023】
本実施例中における全糖量測定にはフェノール硫酸法をタンパク質含有量測定にはBradford法を用いた。
【0024】
本実施例中におけるβグルカン量は、以下の方法により測定した。
〔前処理〕
試料0.25gを100ml三角フラスコに入れ、次に0.08Mリン酸緩衝液(pH6.0)を加えて全量25mlにする。熱耐性αアミラーゼ(シグマ社製)を1000Unit添加し、沸騰水中で、30分間インキュベートする。水酸化ナトリウムを用いてpH7.5とした。さら50mg/mlプロテアーゼ(シグマ社製)溶液を50μl添加し、さらに60℃、30分間インキュベートする。つぎに塩酸でpH4.3に調整し、アミログルコシダーゼ(シグマ社製)溶液を50μl加え、再び60℃、30分間インキュベートする。次に95%エタノールを4倍量添加し、室温で1時間以上静置する。生成した沈殿をガラス繊維ろ紙(Advantec社製、品番GA-100)を用い、ろ過し、回収する。80%エタノールで沈殿を洗浄し、さらにアセトンで洗浄する。
〔硫酸分解〕
回収した沈殿を72%硫酸5mlで懸濁する。4時間静置する。水70ml添加し、沸騰水中で2時間、加水分解を行う。その後、氷水で冷却し中和する。ろ紙(Advantec社製、品番GA-100)によりろ過し、ろ液をサンプルとした。
〔グルコース量の測定〕
以上の処理により得られたサンプルをグルコースCIIテストワコー(和光純薬工業社製
)によりグルコース量を測定し、βグルカンが0.9gあたり、グルコース1gに変換されたものとしてハナビラタケのβグルカン量に換算した。
〔水分率の測定と補正〕
測定に供したハナビラタケを105℃で3時間絶乾して水分率を測定し、前記のグルコース量から求めたβグルカン量より絶乾での子実体100gあたりのβグルカン重量に補正して、本実施例のβグルカン量とした。
〔抗腫瘍効果の測定方法〕
ICRマウス(♀、6週齢)の左腋窩に腫瘍細胞Sarcoma180を1.0×106個移植し、6日後から3群に分け、試料(ハナビラタケ粉末10μm(実施例1)、66μm(比較例1)および添加なし)を水に懸濁し、30mg/kg・日を投与し、各群の腫瘍体積の変化、生存数の変化を観察した。
【0025】
実施例1
人工栽培により収穫されたハナビラタケ5kg(ユニチカ株式会社製)を熱風乾燥した後、石臼型粉砕機を用いて5回挽きし、超微細粉末化した。平均粒径を測定したところ、10μmであった。
【0026】
調製した超微細粉末について食感、成分吸収率、抗腫瘍効果の測定を行った。
【0027】
比較例1
人工栽培により収穫されたハナビラタケ5kg(ユニチカ株式会社製)を熱風乾燥した後、石臼式粉砕機を用いて1回挽きし、微細粉末化した。平均粒径を測定したところ、66μmであった。
【0028】
調製した微細化粉末について食感、成分吸収率、抗腫瘍効果の測定を行った。
【0029】
実施例および比較例における測定結果を表1および図1、図2に示した。
【0030】
【表1】

表1の結果から明らかなように、ハナビラタケを超微細粉末化することで口溶け感、口の中での張り付き感の解消といった口当たりが著しく向上していることが分かる。なお、ハナビラタケを超微細粒子化することで風味が悪化することもなかった。
【0031】
また、図1〜図3は、それぞれ模擬液中のタンパク質量、模擬液中の全糖量及び模擬液中のβグルカン量を示しており、これらの図から明らかなように胃液模擬液および小腸模擬液中へのハナビラタケ成分の溶出率が微細粒子(66μm、比較例1)に比べて超微細粒子(10μm、実施例1)の方が、全ての測定項目において高いことが確認された。なお、図1〜図3の横軸における符号は、1;胃液模擬液、2;小腸模擬液(2時間)、3;小腸模擬液(5時間)、4;小腸模擬液(10時間)、5;小腸模擬液(24時間)を表している。
【0032】
さらに、図4(図中、A;比較例1 B;実施例1 C;添加物なし、を示している)から明らかなようにハナビラタケを添加した場合、添加なしと比較して生存数が著しく向上していることがわかる。ハナビラタケの粒径で比較した場合、微細粒子(66μm、比較例1)投与群に比べて超微細粉末(10μm、実施例1)投与群の方が生存率が高いことが確認された。また、腫瘍体積も添加なしおよび微細粒子(66μm、比較例1)投与群に比べて超微細粉末(10μm、実施例1)投与群で小さかった。したがって、抗腫瘍効果においても超微細粉末(実施例1)の方が、微細化粒子(比較例1)よりも効果が高いことがわかった。これは超微細粉末化することによって、ハナビラタケ中の抗腫瘍効果を有する成分の消化器内での溶出率が高く、したがって吸収率が向上したためであると考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】実施例1および比較例1で得られたハナビラタケ粉末を用いたタンパク質吸収試験の結果を示す図である。
【図2】実施例1および比較例1で得られたハナビラタケ粉末を用いた全糖吸収試験の結果を示す図である。
【図3】実施例1および比較例1で得られたハナビラタケ粉末を用いたβグルカン吸収試験の結果を示す図である。
【図4】実施例1および比較例1で得られたハナビラタケ粉末を用いた抗腫瘍効果試験の結果を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハナビラタケの子実体又は菌糸体からなるハナビラタケ超微細粉末。
【請求項2】
ハナビラタケの子実体又は菌糸体から得られた抽出物からなるハナビラタケ超微細粉末。
【請求項3】
ハナビラタケの子実体若しくは菌糸体又はそれらから得られた抽出物を物理的粉砕機により超微細粉末化したことを特徴とする請求項1又は2記載のハナビラタケ超微細粉末。
【請求項4】
超微細粉末の粒径が、0.1〜20μmである請求項1〜3のいずれかに記載のハナビラタケ超微細粉末。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載のハナビラタケ超微細粉末を含むことを特徴とする健康食品。
【請求項6】
請求項1〜4のいずれかに記載のハナビラタケ超微細粉末を有効成分とすることを特徴とする医薬品。
【請求項7】
請求項1〜4のいずれかに記載のハナビラタケ超微細粉末を含むことを特徴とする健康食品飲料。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−124316(P2006−124316A)
【公開日】平成18年5月18日(2006.5.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−314207(P2004−314207)
【出願日】平成16年10月28日(2004.10.28)
【出願人】(000004503)ユニチカ株式会社 (1,214)
【Fターム(参考)】