説明

ハニカム成形体の製造方法、ハニカムフィルタの製造方法、及びハニカムフィルタ

2種以上の骨材粒子原料の混合(第1の混合)をすることによって成形用配合物(乾粉)を得た後に、更に水を加えて混合(第2の混合)をすることによって成形用配合物(湿粉)を得る混合工程と、その成形用配合物(湿粉)を混練することによって坏土を得る混練工程と、を有するハニカム成形体の製造方法である。このハニカム成形体の製造方法は、工程の複雑化や作業の煩雑化を伴うことなく、簡便に内部欠陥の発生を防止し得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、集塵用・水処理用のフィルタの製造に好適に用いられるハニカム成形体の製造方法、及びハニカムフィルタの製造方法、並びにハニカムフィルタに関し、詳しくは、小孔、切れ、ささくれ等の内部欠陥の発生を有効に防止し、強度を向上させ得るハニカム成形体の製造方法、及びハニカムフィルタの製造方法、並びに濾過性能(捕集効率)に優れたハニカムフィルタに関する。
【背景技術】
【0002】
化学、電力、鉄鋼、産業廃棄物処理をはじめとする様々な分野において、公害防止等の環境対策、高温ガスからの製品回収等の用途で用いられる集塵用・水処理用のフィルタに、耐熱性、耐食性、機械的強度に優れるセラミックからなる多孔質ハニカム構造体が用いられている。例えば、ディーゼル機関から排出されるパティキュレート(スート)を捕集するディーゼルパティキュレートフィルタ(DPF)等の高温、腐食性ガス雰囲気下において使用される集塵用のフィルタに、セラミックからなる多孔質ハニカム構造体が用いられている。
【0003】
多孔質ハニカム構造体を用いたフィルタ(以下、「ハニカムフィルタ」と記す)の例としては、例えば、図1に示すハニカムフィルタ21のように、多孔質ハニカム構造体25の多数のセル23の入口側端面Bと出口側端面Cとを互い違いに目封止部22によって目封止した構造のものが挙げられる。このような構造のハニカムフィルタ21によれば、被処理ガスGを入口側端面Bからセル23に導入すると、パティキュレート等の夾雑物が隔壁24において捕捉される一方、多孔質の隔壁24を透過して隣接するセル23に流入した処理済ガスGが出口側端面Cから排出されるため、被処理ガスG中のパティキュレートが分離された処理済ガスGを得ることが出来る。
【0004】
上記のような多孔質ハニカム構造体は、例えば、セラミック等の骨材粒子原料と、水とを含む成形原料の混合をすることによって成形用配合物(湿粉)を得、成形用配合物(湿粉)を混練することによって坏土を得、坏土をハニカム形状に成形し、乾燥することによってハニカム成形体を得、ハニカム成形体を焼成する方法等により製造されるが、このような製造方法により得られた多孔質ハニカム構造体には、小孔、切れ、ささくれ等の内部欠陥が少なからず存在し、これを用いたフィルタの濾過性能(捕集効率)は必ずしも十分なものとは言えなかった。
【0005】
特に、近年においては、ガスが隔壁を透過する際の圧力損失を低減させ、フィルタの処理能力を向上させることを目的として、隔壁の薄壁化が急速に進行している。このような隔壁の薄い多孔質ハニカム構造体は、その構造上、製造時に小孔、切れ、ささくれ等の内部欠陥が発生し易いため、これらの内部欠陥によるフィルタの濾過性能(捕集効率)の低下が極めて深刻な問題となりつつある。
【0006】
上記内部欠陥の発生は、骨材粒子原料中の微粒子が凝集して形成される粗大な凝集塊の存在が原因であることが知られている。即ち、上記のような製造方法においては、成形方法として、隔壁と相補的な形状のスリットを有する口金を用いた押出成形を採用することが多いが、このスリットに粗大な凝集塊が詰まることによって、スリットの一部が閉塞され、その部分における坏土の供給が阻害されるため、ハニカム成形体(ひいては多孔質ハニカム構造体)に内部欠陥が発生してしまうのである。
【0007】
又、多孔質ハニカム構造体には、高強度化が要望されている。これは、高強度化を図ることで多孔質ハニカム構造体を用いたフィルタの透過性能を向上させ得るためである。一般に気孔率が透過性能に比例すると考えられているので、圧力損失を低減させフィルタの処理能力を向上させるための一手段として、多孔質ハニカム構造体の高気孔率化が試みられる場合がある。しかし、高気孔率化は強度低下を招来するため、上記DPF等の集塵用のフィルタとして適用することが難しかった。
【0008】
このような問題を解決するべく、本発明者は、骨材粒子原料を一旦スラリー化し、所定の目開きの篩を通過させて粗大な凝集塊を除去した後に再度粉末化し、その粉末を成形原料の調製に供するハニカムセラミックス構造体の製造方法を提案している(例えば、国際公開第01/058827号パンフレット(特許文献)参照)。
【発明の開示】
【0009】
しかしながら、上記のような製造方法は、粗大な凝集塊を除去し、多孔質ハニカム構造体の内部欠陥を防止し、強度の向上を図るという観点からは非常に有効な方法であるものの、骨材粒子原料を一旦スラリー化する必要があるために、工程が複雑になり、作業が繁雑になってしまうという問題があった。
【0010】
本発明は、上述のような従来技術の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、工程数の増加や作業の煩雑化を伴うことなく、簡便に内部欠陥の発生を防止し、強度を向上させ得るハニカム成形体の製造方法、及びハニカムフィルタの製造方法、並びに内部欠陥が少なく強度が高く濾過性能(捕集効率)に優れたハニカムフィルタを提供することにある。
【0011】
本発明者は、上述の課題を解決するべく鋭意研究した結果、骨材粒子原料と水とを含む成形原料を、混合し混練して坏土を得るまでの工程において、成形原料中に含まれる骨材粒子原料のうちの微粒子が凝集して形成される凝集塊のうち、少なくとも粗大なものが坏土に混入することを防止する手だてを講じることによって、上記目的を達成することが出来ることを見出し、本発明を完成させた。即ち、本発明は、以下のハニカム成形体の製造方法、及びハニカムフィルタの製造方法、並びにハニカムフィルタを提供するものである。
【0012】
[1]平均粒子径が10μm以下の微粒子を含む2種以上の骨材粒子原料と、水と、を含む成形原料を用いて、ハニカム成形体を得るハニカム成形体の製造方法であって、2種以上の骨材粒子原料の混合(第1の混合)をすることによって成形用配合物(乾粉)を得る混合工程と、その成形用配合物(乾粉)に水を加えて混練することによって坏土を得る混練工程と、を有し、得られた坏土を、隔壁によって多数のセルが区画・形成されたハニカム形状にする成形を行い、乾燥することによって、ハニカム成形体を得るハニカム成形体の製造方法(ハニカム成形体の第1の製造方法ともいう)。
【0013】
[2]平均粒子径が10μm以下の微粒子を含む2種以上の骨材粒子原料と、水と、を含む成形原料を用いて、ハニカム成形体を得るハニカム成形体の製造方法であって、2種以上の骨材粒子原料の混合(第1の混合)をすることによって成形用配合物(乾粉)を得た後に、更に水を加えて混合(第2の混合)をすることによって成形用配合物(湿粉)を得る混合工程と、その成形用配合物(湿粉)を混練することによって坏土を得る混練工程と、を有し、得られた坏土を、隔壁によって多数のセルが区画・形成されたハニカム形状にする成形を行い、乾燥することによって、ハニカム成形体を得るハニカム成形体の製造方法(ハニカム成形体の第2の製造方法ともいう)。
【0014】
[3]上記混練工程の後であり、上記ハニカム形状にする成形を行う前に、混練工程で得られた坏土を、所定の形状に成形する土練工程を有する上記[1]又は[2]に記載のハニカム成形体の製造方法。
【0015】
[4]混合工程の前に、予め、骨材粒子原料の表面に被覆を施す上記[1]〜[3]の何れかに記載のハニカム成形体の製造方法。
【0016】
[5]混合工程の前に、予め、骨材粒子原料を分級し、凝集塊を排除する上記[1]〜[4]の何れかに記載のハニカム成形体の製造方法。
【0017】
[6]混合工程において、成形用配合物(乾紛)の目開き500μmでの篩い上残渣(凝集塊)が1質量%以下になるように、第1の混合を行う上記[1]〜[5]の何れかに記載のハニカム成形体の製造方法。
【0018】
[7]水を加える際に、更に分散剤として界面活性剤を加える上記[1]〜[6]の何れかに記載のハニカム成形体の製造方法。
【0019】
[8]混合工程において、成形原料に加圧振動を加えながら混合を行う上記[1]〜[7]の何れかに記載のハニカム成形体の製造方法。
【0020】
[9]上記加圧振動を、超音波によって発生させる上記[8]に記載のハニカム成形体の製造方法。
【0021】
[10]上記加圧振動を、容器の中に成形原料と玉石とを収容し、容器を振動させることによって発生させる上記[8]に記載のハニカム成形体の製造方法。
【0022】
[11]混合工程が、撹拌羽根を有する混合機を用いて行われ、撹拌羽根の回転により、成形原料に対して剪断力を加えながら撹拌して混合を行う上記[1]〜[7]の何れかに記載のハニカム成形体の製造方法。
【0023】
[12]撹拌羽根を、500rpm以上で回転させる上記[11]に記載のハニカム成形体の製造方法。
【0024】
[13]撹拌羽根を、周速2m/秒以上で回転させる上記[11]に記載のハニカム成形体の製造方法。
【0025】
[14]混合工程が、冷却機能を有する混合機を用いて行われる上記[1]〜[13]の何れかに記載のハニカム成形体の製造方法。
【0026】
[15]混合工程と混練工程とが、それぞれ個別の装置で行われ、混合工程を行う混合機と、混練工程を行う混練機とが、直結されている上記[1]〜[14]の何れかに記載のハニカム成形体の製造方法。
【0027】
[16]骨材粒子原料として、平均粒子径が10μm以下のアルミナ(Al)微粒子及び/又は平均粒子径が10μm以下の水酸化アルミニウム(Al(OH))微粒子を含むコージェライト化原料を用いる上記[1]〜[15]の何れかに記載のハニカム成形体の製造方法。
【0028】
[17]成形原料として、骨材粒子原料、水の他、造孔材、及びバインダを含むものを用いる上記[1]〜[15]の何れかに記載のハニカム成形体の製造方法。
【0029】
[18]上記造孔材として、発泡樹脂からなるマイクロカプセルを用いる上記[17]に記載のハニカム成形体の製造方法。
【0030】
[19]上記水を加える際に、その水を、噴霧しながら、加えて混合をする上記[1]〜[18]の何れかに記載のハニカム成形体の製造方法。
【0031】
[20]成形が、隔壁と相補的な形状のスリットを有する口金を用いた押出成形である上記[1]〜[19]の何れかに記載のハニカム成形体の製造方法。
【0032】
[21]骨材粒子原料として、目開きが口金のスリット幅の4/5以下の篩を通過した粉体を含むものを用いる上記[20]に記載のハニカム成形体の製造方法。
【0033】
[22]押出成形が、スリットの全ての交点に裏孔が設けられた口金を用いて行われる上記[20]に記載のハニカム成形体の製造方法。
【0034】
[23]上記口金の、スリットを形成するセルブロックの角部の少なくとも一部に、Rが付けられている上記[20]〜[22]の何れかに記載のハニカム成形体の製造方法。
【0035】
[24]押出成形が、二軸連続成形機を用いて行われる上記[20]〜[23]の何れかに記載のハニカム成形体の製造方法。
【0036】
[25]押出成形を行う際に、坏土を、目開きが160〜278μmのスクリーンを通過させた後、口金から押し出す上記[20]〜[24]の何れかに記載のハニカム成形体の製造方法。
【0037】
[26]上記[1]〜[25]の何れかに記載の製造方法によりハニカム成形体を得、そのハニカム成形体を焼成することによって多孔質ハニカム構造体を得、その多孔質ハニカム構造体の多数のセルの一方の開口部と他方の開口部とを互い違いに目封止することによって目封止ハニカム構造体を得、その目封止ハニカム構造体を焼成することによって、一部のセルに導入された被処理流体が多孔質の隔壁を透過して隣接するセルに流入する際に、隔壁において夾雑物が捕捉されるように構成されたハニカムフィルタを得るハニカムフィルタの製造方法。
【0038】
[27]上記[1]〜[25]の何れかに記載の製造方法によりハニカム成形体を得、そのハニカム成形体の多数のセルの一方の開口部と他方の開口部とを互い違いに目封止することによって目封止ハニカム成形体を得、その目封止ハニカム成形体を焼成することによって、一部のセルに導入された被処理流体が多孔質の隔壁を透過して隣接するセルに流入する際に、隔壁において夾雑物が捕捉されるように構成されたハニカムフィルタを得るハニカムフィルタの製造方法。
【0039】
[28]多孔質の隔壁によって区画されることにより形成された多数のセルを有する多孔質ハニカム構造体と、多数のセルの一方の開口部と他方の開口部と互い違いに目封止する目封止部とを備え、一部のセルに導入された被処理流体が隔壁を透過して隣接するセルに流入する際に、隔壁において夾雑物が捕捉されるように構成されたハニカムフィルタであって、スートプリント試験により評価したスート漏洩セル比率が、1セル/1000セル以下であるハニカムフィルタ。
【0040】
[29]少なくとも多孔質ハニカム構造体が、コージェライトによって構成されている上記[28]に記載のハニカムフィルタ。
【0041】
本発明に係るハニカム成形体の製造方法及び本発明に係るハニカムフィルタの製造方法は、混合し混練して坏土を得るまでの工程において、混合工程と混練工程とを独立して行う手段により、成形原料中に含まれる骨材粒子原料のうちの微粒子の凝集により形成され得る凝集塊を、より生じ難くすることが出来る。従って、凝集塊の坏土への混入が抑制される。
【0042】
更に、本発明に係るハニカム成形体の製造方法及び本発明に係るハニカムフィルタの製造方法は、好ましい手段として、骨材粒子原料の表面に被覆を施す、骨材粒子原料を分級する、混合及び/又は混練に際し水の他に界面活性剤を加える、加圧振動を加えながら混合をする、撹拌羽根の回転による剪断力を加えながら混合をする、等の種々の手段により、凝集塊を成形用配合物(湿粉)から排除するか、乃至は、成形用配合物(湿粉)中に凝集塊の粉砕物を均一に分散させることが出来る。従って、凝集塊の坏土への混入が抑制され、少なくとも粗大な凝集塊の坏土への混入が防止される。
【0043】
そして、本発明に係るハニカム成形体の製造方法及び本発明に係るハニカムフィルタの製造方法によれば、これらの手だてを講じることによって、内部欠陥の原因となる凝集塊が粉砕され消失するので、骨材粒子原料を一旦スラリー化するという工程の複雑化や、作業の煩雑化を伴うことなく、簡便に内部欠陥の発生を防止し、強度の向上を図ることが出来る。又、本発明に係るハニカムフィルタは、内部欠陥が少なく強度が高く濾過性能(捕集効率)に優れる。尚、本明細書において、強度とは等方加圧に対する強度であるアイソスタティック強度を指す。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】多孔質ハニカム構造体を用いたハニカムフィルタの例を示す模式図である。
【図2】多孔質ハニカム構造体の例により、「ハニカム形状」を説明する模式図である。
【図3】スートプリント試験に用いる検査装置を説明する模式図である。
【図4】アイソスタティック強度試験の結果を示すグラフである。
【符号の説明】
【0045】
1,25…多孔質ハニカム構造体、3,23…セル、4,24…隔壁、22…目封止部、21…ハニカムフィルタ、31…検査装置、32…支持台、34…スートジェネレイタ、36…スクリーン、38…排気筒、40…給気管、42…切替弁、44…排気管、46…押さえメッシュ、B…入口側端面、C…出口側端面、G…被処理ガス、G…処理済ガス。
【発明を実施するための最良の形態】
【0046】
以下、本発明のハニカム成形体の製造方法、及びハニカムフィルタの製造方法、並びにハニカムフィルタを実施するための最良の形態について、具体的に説明するが、本発明はこれらの実施形態に限定されるものではない。本発明の要旨を損なわない範囲で、当業者の知識に基づいて、種々の変更、修正、改良、置換を加え得るものである。本発明を実施し又は検証する上では、本明細書中に記述されたものと同様の手段若しくは均等な手段が適用され得るが、好適な手段は、以下に記述される手段である。
【0047】
(1)ハニカム成形体の製造方法
本発明に係るハニカム成形体の製造方法は、ハニカム成形体の第1の製造方法とハニカム成形体の第2の製造方法とを提供する。それぞれのハニカム成形体の製造方法は、(i)混合工程と、(ii)混練工程と、を有し、更に、好ましくは、混練工程で得られた坏土を所定の形状に成形する(iii)土練工程を有し、坏土をハニカム形状にする(iv)の成形工程を行うことにより、ハニカム成形体を得る製造方法である。
【0048】
尚、本明細書において、単に本発明に係るハニカム成形体の製造方法というときには、ハニカム成形体の第1の製造方法とハニカム成形体の第2の製造方法の両方を指すものとする。ハニカム成形体の第1の製造方法においては、混合=第1の混合、であり、ハニカム成形体の第2の製造方法においては、混合=第1の混合及び/又は第2の混合、である。そして、ハニカム成形体の第2の製造方法において、単に混合というときには第1の混合及び第2の混合の両方を指すものとする。又、ハニカム成形体の第1の製造方法では、成形用配合物(湿粉)を得ることがないため、特にことわりなく成形用配合物(湿粉)について記載している場合には、ハニカム成形体の第2の製造方法にかかる記載であることを前提とする。更に、単に成形用配合物というときには、成形用配合物(乾粉)と成形用配合物(湿粉)の両方を指すものとする。
【0049】
(i)混合工程
混合工程では、平均粒子径が10μm以下の微粒子を含む2種以上の骨材粒子原料の混合(第1の混合)をすることによって成形用配合物(乾粉)を得る。その後、ハニカム成形体の第1の製造方法では混練工程に移るが、ハニカム成形体の第2の製造方法では、更に水を加えて混合(第2の混合)をすることによって成形用配合物(湿粉)を得る。尚、ハニカム成形体の第2の製造方法を考慮して、水、分散剤、添加剤等を加えることについては、混合工程の説明として記載するが、ハニカム成形体の第1の製造方法では、混練工程でそれらが加えられる。
【0050】
骨材粒子は、多孔質ハニカム構造体(焼結体)の主たる構成成分となる粒子であり、骨材粒子原料はその原料となる物質である。本発明における骨材粒子原料としては、例えば、コージェライト化原料、ムライト、アルミナ、アルミニウムチタネート、リチウムアルミニウムシリケート、炭化珪素、窒化珪素、又はこれらの混合物等が挙げられる。但し、骨材粒子原料はセラミックに限定されるものではなく、金属であってもよい。例えば、金属珪素(Si)−炭化珪素(SiC)焼結体の構成物質となる金属珪素は、本発明における骨材粒子原料となり得る。
【0051】
本明細書にいう「コージェライト化原料」とは、焼成によりコージェライトに変換される物質を意味し、例えば、タルク、カオリン、アルミナ、水酸化アルミニウム、シリカ等を、焼成後の組成がコージェライトの理論組成(2MgO・2Al・5SiO)となるように混合したもの等が挙げられる。
【0052】
本発明における骨材粒子原料は平均粒子径が10μm以下の微粒子を含むものである。このような骨材粒子原料は、その中に含まれる微粒子が凝集してハニカム成形体(ひいては多孔質ハニカム構造体)の内部欠陥の原因となる凝集塊を形成し易いが、本発明に係るハニカム成形体の製造方法によれば、このような骨材粒子原料を用いた場合でも、内部欠陥が少ないハニカム成形体(ひいては多孔質ハニカム構造体)を得ることが出来る。
【0053】
平均粒子径が10μm以下の微粒子としては、例えば、コージェライト化原料中のアルミナ(Al)微粒子(平均粒子径1〜10μm程度)や水酸化アルミニウム(Al(OH))微粒子(平均粒子径0.2〜10μm程度)等が挙げられる。即ち、本発明に係るハニカム成形体の製造方法は、骨材粒子原料として、平均粒子径が10μm以下のアルミナ(Al)微粒子及び/又は平均粒子径が10μm以下の水酸化アルミニウム(Al(OH))微粒子を含むコージェライト化原料を用いる際に好適に用いることが出来る。尚、本明細書において「平均粒子径」というときは、ストークスの液相沈降法を測定原理とし、X線透過法により検出を行う、X線透過式粒度分布測定装置(例えば、商品名:セディグラフ5000−02型、(株)島津製作所製等)により測定した50%粒子径の値を意味するものとする。
【0054】
本発明における成形原料は、少なくとも、2種以上の上記骨材粒子原料と、その分散媒となる水を含むものであるが、必要に応じて、この他の添加剤(例えば、造孔材、バインダ、分散剤等)を含有させてもよい。
【0055】
造孔材は、ハニカム成形体を焼成する際に焼失して気孔を形成させることによって、気孔率を増大させ、高気孔率の多孔質ハニカム構造体を得るための添加剤である。従って、造孔材としては、ハニカム成形体を焼成する際に焼失する可燃物、例えば、グラファイト、小麦粉、澱粉、フェノール樹脂、ポリメタクリル酸メチル、ポリエチレン、又はポリエチレンテレフタレート等が挙げられるが、中でも、発泡樹脂からなるマイクロカプセル(アクリル樹脂系マイクロカプセル等)を特に好適に用いることが出来る。発泡樹脂からなるマイクロカプセルは、中空であることから少量の樹脂の添加で高気孔率の多孔質ハニカム構造体を得られることに加え、焼成時の発熱が少なく、熱応力によるクラックの発生を低減することが出来るという利点がある。
【0056】
バインダは、ハニカム成形時に坏土に流動性を付与し、焼成前のハニカム成形体(ハニカム乾燥体)の機械的強度を維持する補強剤としての機能を果たす添加剤である。バインダとしては、例えば、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシルメチルセルロース、又はポリビニルアルコール等を好適に用いることが出来る。
【0057】
分散剤(界面活性剤)は、骨材粒子原料等の水への分散を促進し、均質な成形用配合物を得るための添加剤である。従って、分散剤としては、界面活性効果を有する物質、例えば、エチレングリコール、デキストリン、脂肪酸石鹸、ポリアルコール等を好適に用いることが出来る。分散剤(界面活性剤)の添加量は、含有率として1.5質量%未満にすることが好ましい。より好ましくは、0.01〜1質量%である。好ましい分散効果が得られるからである。
【0058】
本発明に係るハニカム成形体の製造方法においては、混合工程を、後の混練工程とは別に独立して行うところに特徴がある。混合工程において、水を加えない乾燥段階で十分に骨材粒子原料の混合(第1の混合)をすることにより、(後の第2の混合又は混練工程で)水を加えた後に成形原料の各成分、即ち少なくとも2種以上の骨材粒子原料及び水が均一に分散されるので、骨材粒子原料のうちの微粒子が凝集することで形成され得る凝集塊が、後に混練して得られる坏土に混入し難くなる。又、使用する混合機により、生じてしまった凝集塊も粉砕されるので、尚更に、凝集塊の坏土への混入を抑制出来る。
【0059】
本発明に係るハニカム成形体の製造方法は、混合を行う前に、予め、骨材粒子原料の表面に被覆を施しておく手段を好適に採用出来る。こうすると、骨材粒子原料の微粒子の凝集が抑制されるとともに、生じた凝集塊を粉砕し易くなる。表面に被覆が施された骨材粒子原料は市販されているが、水酸化アルミニウムであればステアリン酸を用いて表面処理し分散性を改良したものが挙げられる。
【0060】
又、混合を行う前に、予め、骨材粒子原料を分級し、混在していた凝集塊を排除することによって、凝集塊の坏土への混入を抑制することが可能である。尚、分級は、サイクロン(遠心力を利用して分離・分級する装置)等により行うことが出来る。
【0061】
本発明に係るハニカム成形体の第2の製造方法では、骨材粒子原料の混合(第1の混合)により得られた成形用配合物(乾粉)に、更に水を加えて混合(第2の混合)をして成形用配合物(湿粉)を得るが、このとき分散媒である水は、成形用配合物(乾粉)と一時に混合しようとすると均一に分散させることが困難である場合が多い。従って、本発明に係るハニカム成形体の第2の製造方法において、第2の混合は、成形用配合物(2種以上の骨材粒子原料が混合された乾粉)に水を噴霧しながら行うことが好ましい。こうすることにより、成形用配合物(ひいては坏土、ハニカム成形体)の含水率が、部位によってばらつく現象を回避出来るので、部位による気孔率のばらつきがない多孔質ハニカム構造体を得ることが可能となる。尚、成形用配合物(湿粉)を得ることなく、混練工程において水を加える本発明に係るハニカム成形体の第1の製造方法においても、同様に、水を噴霧しながら混練を行うことが好ましい。
【0062】
本発明に係るハニカム成形体の製造方法において、混合にかかる具体的手段は限定されるものではないが、所定の混合機を使用して、成形原料に加圧振動を加えながら行うと、凝集塊が粉砕され、凝集塊の坏土への混入を抑制することが出来る。このような混合を実現する混合機として、超音波により加圧振動を実現する超音波分散機、容器の中に成形原料と玉石とを収容し、その容器を振動させて加圧振動を実現するポットミル等が例示される。特に、ポットミルによる混合は、成形原料の構成成分を均一に分散させるという効果を得るために優れた手段である。
【0063】
混合に使用する混合機は、上記のもの以外にも使用出来、粉砕すべき凝集塊に合わせて選ぶことが可能である。混合機は、間接混合方式、直接混合方式の何れでも用いることが可能である。間接混合方式としては、上記した超音波による分散機の他に、気泡による混合(空気混合・エアーレーション)を行う混合機(例えば、株式会社アコー製フラッシュブレンダ)等がある。直接混合方式は、更に、外殻運動方式、内部運動方式、又は、外殻運動方式と内部運動方式を組み合わせた混合機に区分される。外殻運動方式混合機として、具体的には、ダブルコーン型混合機、V型混合機、コンクリートミキサ、ロッキングミキサ等が挙げられ、内部運動方式として、具体的に、リボン型混合機、スクリュ型混合機、ワーナ型混合機、ニーダ型混合機、万能混合撹拌機、ナウタミキサ(例えばホソカワミクロン株式会社製のもの)等が挙げられる。外殻運動方式と内部運動方式を組み合わせた混合機として、具体的に、パン回転型強制ミキサ、オムニミキサ(拡散混合、例えば千代田技研工業株式会社製のもの)等が挙げられる。
【0064】
更に、本発明に係るハニカム成形体の製造方法において、所定の混合機を使用して、成形原料に対して剪断力を加えながら撹拌して混合を行うと、成形原料中に含まれる骨材粒子原料のうちの微粒子が凝集して形成される凝集塊を、粉砕することが出来、凝集塊の坏土への混入を抑制することが可能である。特に、本発明に係るハニカム成形体の第2の製造方法では、混練工程の直前の混合において、即ち、骨材粒子原料の混合(第1の混合)をして得た成形用配合物(乾粉)に水を加えて行う混合(第2の混合)において、剪断力を加えながら撹拌して混合を行うと、凝集塊の坏土への混入抑制の効果が大きい。
【0065】
成形原料に対して剪断力を加えながら撹拌するためには、従来、粉体の混合に汎用されてきた、撹拌羽根を20〜200rpm程度の低速で回転させる混合機(例えば、シグマニーダ、リボンミキサ等)では撹拌力・分散力が不十分であり、撹拌羽根を、より高速で回転させることが出来る、撹拌力・分散力に優れた混合機を用いることが望ましい。
【0066】
そのような撹拌力・分散力に優れた混合機として、例えば、千代田技研興業株式会社製超高速剪断オムニミキサ、株式会社パウレック製バーチカル・グラニュレータ、ドルトン(DALTON)製混練・高速撹拌造粒機・SPGシリーズ、杉山重工業株式会社製アキシャルミキサ、太平洋機工株式会社製ハイスピーダ、ホソカワミクロン株式会社製タービュライザ、株式会社カワタ製スーパーミキサ、日本アイリッヒ株式会社製R型アイリッヒミキサ等を挙げることが出来る。
【0067】
更に、成形原料に対して剪断力を加えながら撹拌するのに好ましい混合機として、横型の円筒状ドラム内に、鋤状ないしはシャベル状の撹拌羽根(プローシェア)と、十字ナイフ状の撹拌羽根(チョッパ)とを備え、プローシェアが水平方向に配置された駆動軸を中心に低速で回転し、チョッパが鉛直方向に配置された駆動軸を中心に高速で回転するタイプの混合機であるプローシェアミキサ(例えば、商品名:プローシェアミキサ、太平洋機工(株)製、商品名:WA、ワムジャパン(株)製、商品名:WA−75、ヤマト機販(株)製等)を挙げることが出来る。上記のプローシェアミキサによれば、プローシェアによる浮遊拡散作用と、チョッパによる高速剪断作用とが相俟って、成形原料中に含まれる微粒子が凝集して形成される凝集塊を粉砕し、凝集塊の粉砕物が均一に分散された成形用配合物を得ることが出来る。
【0068】
又、縦型の円筒状ドラム内に、エンペラ状の下段撹拌羽根とリング状の上段撹拌羽根とからなる多段羽根を備え、この多段羽根が鉛直方向に配置された駆動軸を中心に高速で回転するタイプの混合機であるヘンシェルミキサ(例えば、商品名:三井ヘンシェルミキサ、三井鉱山(株)製等)を好適に用いることが出来る。上記のヘンシェルミキサによれば、下段撹拌羽根による成形原料の上方への巻き上げ作用と、上段撹拌羽根による強力な剪断作用とが相俟って、成形原料中に含まれる微粒子が凝集して形成される凝集塊を粉砕し、凝集塊の粉砕物が均一に分散された成形用配合物を得ることが出来る。
【0069】
但し、撹拌羽根による混合においては、撹拌羽根の存在により容積効率が低く、撹拌羽根自体や、容器と撹拌羽根との間に、成形原料が付着して、原料回収率の点で劣る。又、撹拌羽根が摩耗する結果、成形原料の汚染のおそれに配慮が必要である。更には、撹拌羽根の根元と外周の周速の差が生じるため容積内での均一な分散が困難である。従って、これらの点が問題になる場合には、既述の、骨材粒子原料の表面に被覆を施す手段、骨材粒子原料を分級する手段、超音波やポットミル等により加圧振動を加えながら混合させる手段、等を採用することが好ましい。
【0070】
回転する撹拌羽根を有する混合機において、撹拌羽根の時間あたりの回転数は、概ね200rpmより高速であれば限定されるものではないが、好ましい回転数は500rpm以上、より好ましくは1000〜5000rpmである。撹拌羽根の周速については、限定されるものではないが、好ましい周速は2m/秒以上、より好ましくは3〜100m/秒である。回転数が500rpm未満、又は、周速は2m/秒未満になると、好ましい条件に比べて、凝集塊の粉砕が不十分になるおそれが高まるからである。それぞれの上限は、撹拌羽根が安定して連続駆動し得る限りにおいて定められるものではないが、羽根の磨耗の進行、羽根の破損等の発生の可能性を考慮すれば、回転数は5000rpm以下、周速は100m/秒以下であることが好ましい。尚、撹拌羽根の周速とは、撹拌羽根の先端の移動速度を意味する。
【0071】
撹拌時間については特に制限はないが、例えば、撹拌羽根を500rpmで回転させた場合には5〜30分、1000rpmで回転させた場合には3〜20分とすることが好ましい。撹拌時間が上記範囲未満であると、凝集塊の粉砕が不十分になり易く、ハニカム成形体(ひいては多孔質ハニカム構造体)の内部欠陥の発生を防止することが出来なくなるおそれがある点において好ましくなく、上記範囲を超えると、混合機の磨耗が進行し易く、その耐用時間が短縮されるおそれがある点において好ましくない。
【0072】
尚、混合工程で使用される全ての混合機は、冷却機能を有するものを使用することが望ましい。長期安定稼動が実現され、発熱による成形原料への悪影響が排除される等の理由による。
【0073】
本発明において「凝集塊の粉砕物」というときは、凝集塊が完全に粉砕され、一次粒子である微粒子の状態に戻ったものの他、凝集塊が完全には粉砕されないまでも、その粒子径が小さくなったものをも含むものとする。この際、凝集塊の粉砕物の平均粒子径は200μm以下とすることが好ましく、100μm以下とすることが更に好ましく、50μm以下とすることが特に好ましい。
【0074】
本発明に係るハニカム成形体の製造方法において、原料の混合状態(混合機等による凝集塊の粉砕状況あるいは粉砕の良好性)は、第1の混合で得られる成形用配合物(乾紛)を、目開き500μmの篩いで篩い、篩い上の残渣(凝集塊)の質量を測定することにより、評価することが出来る。本発明に係るハニカム成形体の製造方法では、篩い上の凝集塊が1質量%以下になるまで、混合をすることが好ましい。より好ましくは0.2質量%以下になるまで混合を行う。又、用いる成形原料によって、短時間でそのような良好な混合状態が得られる混合機を選定することが望ましい。
【0075】
又、原料の混合状態は、熱重量天秤により、評価することが出来る。具体的には、混合物である成形用配合物(乾紛)又は成形用配合物(湿粉)を所定量(例えば20mg)サンプリングし、熱重量天秤(TG)にてバインダ、原料の結晶水等の質量減を測定する。これを所定回数(例えば10回)繰り返し測定し、TGの質量減少率のばらつきを評価する。例えば、凝集し易い水酸化アルミニウムを用いた場合、混合が十分でないと、水酸化アルミニウムが偏析し、TGの質量減少率のばらつきが大きくなる。本発明に係るハニカム成形体の製造方法では、質量減少率の標準偏差を質量減少率の平均値で除した値(本明細書においてTG混合度とよぶ)が、0.2以下になるまで、混合をすることが好ましい。より好ましくは0.1以下になるまで混合をする。本発明に係るハニカム成形体の製造方法とは異なり、混練工程の前に、独立した混合工程を行わない場合には、TG混合度は0.5程度になり、TG混合度を0.2以下にすることは困難である。尚、坏土、成形体の乾燥物を用いても、TG混合度による評価が出来ることはいうまでもない。
【0076】
更に、原料の混合状態は、X線CTを用いて評価することが出来る。ハニカム成形体の密度分布をX線CTで測定する。密度分布が均一であれば、原料が均一に混合出来ているという判断が出来る。X線CTでの密度測定値の標準偏差をX線CTでの密度測定値の平均値で除した値(本明細書においてX線CT混合度とよぶ)が、0.2以下になるまで、混合をすることが好ましい。より好ましくは0.1以下になるまで混合をする。尚、ハニカム成形体ではなく、真空土練機等を用いて一定の形状に成形した坏土を用いても、X線CT混合度による評価が出来ることはいうまでもない。
【0077】
本発明に係るハニカム成形体の製造方法は、既述のように、成形原料の構成成分を均一に分散させるという効果、及び微粒子が凝集して形成される凝集塊を粉砕するという効果、を有している。例えば、造孔材として好適に用いられる発泡樹脂からなるマイクロカプセル等はその比重が小さいが故に、従来、成形原料中において均一に分散させることが困難であったが、本発明に係るハニカム成形体の製造方法によれば、このような比重の小さい構成成分も均一に分散させることが出来る。
【0078】
従って、本発明に係るハニカム成形体の製造方法は、成形原料中に、造孔材として発泡樹脂からなるマイクロカプセルを含むものを用いる際に好適に用いることが出来る。このような製造方法では、成形用配合物(ひいては坏土、ハニカム成形体)の造孔材含有率が部位によってばらつく現象を回避出来るので、部位による気孔率のばらつきがない多孔質ハニカム構造体を得ることが出来る点において好ましい。
【0079】
坏土の成形方法として、坏土を隔壁と相補的な形状のスリットを有する口金を用いて押出成形する方法を採る場合には、骨材粒子原料として、目開きが口金のスリット幅の4/5以下の篩を通過した粉体を含むものを用いることが好ましい。より好ましくは、目開きが口金のスリット幅の1/2以下の篩を通過した粉体を含むものを用いる。予め、骨材粒子原料中の粗粒分を除去しておくことにより、ハニカム成形体(ひいては多孔質ハニカム構造体)の内部欠陥の発生をより効果的に防止することが出来る。
【0080】
尚、篩を通過した粉体を「含むもの」を用いることとしたのは、粗粒分を有する骨材粒子原料のみについて篩を通過させればよく、粗粒分を有しない微粒子状の原料(アルミナや水酸化アルミニウム等)については、必ずしも篩を通過させる必要がないことを意味するものである。
【0081】
(ii)混練工程
混練工程は、本発明に係るハニカム成形体の第2の製造方法では、混合工程で得られた成形用配合物(湿粉)を混練することによって坏土を得る工程であり、本発明に係るハニカム成形体の第1の製造方法では、混合工程で得られた成形用配合物(乾粉)に水を加えて混練することによって坏土を得る工程である。尚、ハニカム成形体の第1の製造方法では、水の他に、分散剤、添加剤等も、この混練工程で加えることが出来るが、それらの内容は、(ハニカム成形体の第2の製造方法を考慮して)既に混合工程において説明した内容に準じる(記載を省略する)。
【0082】
混練は、従来公知の混練機、例えば、シグマニーダ、バンバリーミキサ、スクリュー式の押出混練機等により行うことが出来る。
【0083】
本発明に係るハニカム成形体の製造方法においては、限定されるものではないが、既述の混合工程と、この混練工程とが、それぞれ個別の装置で行われ、混合工程を行う混合機と、混練工程を行う混練機とが、直結されていることが好ましい。移送に伴い再び微粒子が凝集して凝集塊が形成されるおそれを小さく出来るからである。
【0084】
(iii)土練工程
土練工程は、上記のようにして得られた坏土を、所定の形状に成形する工程である。坏土の形状は限定されるものではないが、好ましい形状は円筒状である。
【0085】
土練は、従来公知の土練機、例えば、スクリュー式の押出土練機により行うことが出来る。特に、成形用配合物(ひいては坏土)中に含まれるエアを脱気させるための真空減圧装置(例えば、真空ポンプ等)を備えた土練機(いわゆる真空土練機)を用いると、欠陥が少なく、成形性の良好な坏土を得ることが出来る点において好ましい。
【0086】
(iv)の成形工程
成形工程は、上記のようにして得られた坏土を、隔壁によって多数のセルが区画・形成されたハニカム形状に成形し、乾燥することによってハニカム成形体を得る工程である。
【0087】
本明細書にいう「ハニカム形状」とは、例えば、図2に示す多孔質ハニカム構造体1のように、隔壁4によって多数のセル3が区画・形成された形状を意味する。ハニカム成形体の全体形状については特に限定されるものではなく、例えば、図2に示すような円筒状の他、四角柱状、三角柱状等の形状を挙げることが出来る。又、ハニカム成形体のセル形状(セルの形成方向に対して垂直な断面におけるセル形状)についても特に限定はされず、例えば、図2に示すような四角形セルの他、六角形セル、三角形セル等の形状を挙げることが出来る。
【0088】
成形の方法についても特に制限はなく、押出成形、射出成形、プレス成形等の従来公知の成形法を用いることが出来るが、中でも、上記のようにして得られた坏土を隔壁と相補的な形状のスリットを有する口金を用いて押出成形することが好ましい。このような方法により、所望のセル形状、隔壁厚さ、セル密度を有するハニカム成形体を簡便に得ることが出来る。
【0089】
又、上記スリットを有する口金を用いる場合に、そのスリットに坏土を導入する裏孔の態様は限定されない。例えば、スリットの交点1つおきに裏孔が設けられた口金を用いてもよく、スリットの全ての交点に裏孔が設けられた口金を用いて押出成形を行ってもよい。より好ましい口金はスリットの全ての交点に裏孔が設けられたものである。1つおきの口金の場合は、坏土の圧着点がセルの交点になり、4方向から坏土が集まり圧着するため、流動性が悪い場合にバランスよく圧着し難くなり、圧着のバランスが悪いと交点に欠陥が発生し易く、その欠陥により、アイソスタティック強度が低下する。スリットの全ての交点に裏孔が設けられた口金を用いると、交点で坏土の圧着が行われないため、仮に欠陥が発生しても、アイソスタティック強度の低下が起き難い。
【0090】
更に、限定されるものではないが、スリットを形成するセルブロックの角部の少なくとも一部に、Rが付けられている(曲面が設けられている)口金を用いることが好ましい。セルブロックの角部の全てにRが付けられている態様の口金を用いれば、より好ましい。口金のセルブロックの角部にRを付けることにより、口金の交点部の面積が広くなり、坏土の流れがよくなるため、ハニカム成形体に、切れ、ササクレ等の内部欠陥を形成し難くなる。又、ハニカム成形体の交点部が補強されるため、ハニカム成形体の強度が向上し、ひいてはアイソスタティック強度を高くすることが出来る。
【0091】
口金において、スリットの全ての交点に裏孔が設けられていると、裏孔からスリット出口までの距離が短くなり、又、スリットを形成するセルブロックの角部にRが付けられていると、坏土の流れがより滑らかになるものになる。そのため、仮に、凝集塊が口金内に入り込んだ場合でも、その凝集塊を含む坏土の流れが良好に保持され、凝集塊が口金内で留まり難い。凝集塊が口金内で一時的にでも留まっていると、そこでの坏土の流れが低下して、坏土の圧着性低下を招き、成形時の隔壁のキレ、乾燥や焼成時における隔壁のキレを発生させてしまう。スリットの全ての交点に裏孔が設けられ、スリットを形成するセルブロックの角部にRが付けられている口金によれば、これらの問題発生を抑制出来る。
【0092】
押出成形を行う装置については特に限定されず、従来公知の押出成形機(例えば、ラム式押出成形機等)により行うことが出来るが、中でも、二軸連続成形機を用いることが好ましい。二軸連続成形機は、他の押出成形機と比較して、均一な成形体を得ることが出来る点において好ましい。
【0093】
又、既述の混練工程と、この成形工程とが、一体連続的に行われることも好ましい。混練工程と成形工程が一体で行うことが出来、生産性に優れているからである。このような工程を実現する混練成形機として、二軸連続混錬押出成形機が挙げられる。
【0094】
尚、押出成形を行う際には、坏土を、目開きが160〜278μmのスクリーンを通過させた後に口金から押し出すことが好ましい。こうすることにより、万が一、上記の混合工程において凝集塊を粉砕出来なかった場合でも、その凝集塊を除去することが出来るため、より確実にハニカム成形体(ひいては多孔質ハニカム構造体)の内部欠陥の発生を防止することが出来る。スクリーンの目開きが上記範囲未満であると、スクリーンが破損し易い点において好ましくなく、上記範囲を超えると、凝集塊を除去することが困難となり、ハニカム成形体(ひいては多孔質ハニカム構造体)の内部欠陥の発生を防止することが出来なくなるおそれがある点において好ましくない。
【0095】
乾燥の方法にも特に限定はなく、熱風乾燥、マイクロ波乾燥、誘電乾燥、減圧乾燥、真空乾燥、凍結乾燥等の従来公知の乾燥法を用いることが出来る。但し、ハニカム成形体全体を迅速かつ均一に乾燥することが出来る点において熱風乾燥とマイクロ波乾燥又は誘電乾燥とを組み合わせた乾燥方法が好ましい。
【0096】
(2)ハニカムフィルタの製造方法
本発明に係るハニカムフィルタの製造方法は、上記のハニカム成形体の製造方法によりハニカム成形体を得、ハニカム成形体を焼成することによって多孔質ハニカム構造体を得、多孔質ハニカム構造体の多数のセルの一方の開口部と他方の開口部とを互い違いに目封止することによって目封止ハニカム構造体を得、目封止ハニカム構造体を焼成することによって、一部のセルに導入された被処理流体が多孔質の隔壁を透過して隣接するセルに流入する際に、隔壁において夾雑物が捕捉されるように構成されたハニカムフィルタを得るものである。このような製造方法は、内部欠陥が少なく強度が高いハニカム成形体を使用しているので、濾過性能(捕集効率)に優れたハニカムフィルタを製造することが可能である。
【0097】
多孔質ハニカム構造体の多数のセルの一方の開口部と他方の開口部とを互い違いに目封止する方法は特に限定されないが、例えば、多孔質ハニカム構造体の一方の端面に、粘着シートを貼着し、画像処理を利用したレーザ加工等によりその粘着シートの目封止すべきセルに対応する部分のみに孔開けをしてマスクとし、そのマスクが貼着された多孔質ハニカム構造体の端面をセラミックスラリー中に浸漬し、多孔質ハニカム構造体の目封止すべきセルにセラミックスラリーを充填して目封止部を形成し、これと同様の工程を多孔質ハニカム構造体の他方の端面についても行った後、目封止部を乾燥し、焼成する方法が挙げられる。
【0098】
セラミックスラリーは、少なくとも骨材粒子原料と分散媒(例えば、水等)の混合をすることにより調製することが出来る。更に、必要により、バインダ、分散剤等の添加剤を加えてもよい。骨材粒子原料の種類は特に限定されないが、ハニカム成形体の原料として用いた骨材粒子原料と同一のものを好適に用いることが出来る。バインダとしては、ポリビニルアルコール、メチルセルロース等の樹脂、分散剤としては、特殊カルボン酸型高分子界面活性剤を用いることが好ましい。
【0099】
セラミックスラリーの粘度は5〜50Pa・sの範囲内に調整することが好ましく、10〜30Pa・sの範囲に調整することがより好ましい。セラミックスラリーの粘度が低すぎると、ヒケ欠陥が発生し易くなる傾向がある。スラリーの粘度は、例えば、骨材粒子原料と分散媒(例えば、水等)との比率、あるいは分散剤の量等によって調整することが出来る。
【0100】
焼成とは、骨材粒子原料を焼結させて緻密化し、所定の強度を確保するための操作を意味する。焼成条件(温度・時間)は、ハニカム成形体の焼成、目封止部の焼成とも、これらを構成する骨材粒子原料の種類により異なるため、使用する骨材粒子原料の種類に応じて適当な条件を選択すればよい。例えば、コージェライト化原料を骨材粒子原料として用いる場合には、1410〜1440℃の温度で、3〜7時間焼成することが好ましい。焼成条件(温度・時間)が上記範囲未満であると、骨材粒子原料の焼結が不十分となるおそれがある点において好ましくなく、上記範囲を超えると、生成したコージェライトが溶融するおそれがある点において好ましくない。
【0101】
尚、焼成の前、あるいは焼成の昇温過程において、ハニカム成形体や目封止部中の有機物(バインダ、造孔材、分散剤等)を燃焼させて除去する操作(仮焼)を行うと、有機物の除去をより促進させることが出来る点において好ましい。バインダの燃焼温度は200℃程度、造孔材の燃焼温度は300℃程度であるので、仮焼温度は200〜1000℃程度とすればよい。仮焼時間は特に限定されないが、通常は、10〜100時間程度である。
【0102】
又、本発明に係るハニカムフィルタは、上記のハニカム成形体の製造方法によりハニカム成形体を得、ハニカム成形体の多数のセルの一方の開口部と他方の開口部とを互い違いに目封止することによって目封止ハニカム成形体を得、目封止ハニカム成形体を焼成することによって、一部のセルに導入された被処理流体が多孔質の隔壁を透過して隣接するセルに流入する際に、隔壁において夾雑物が捕捉されるように構成されたハニカムフィルタを得る方法によっても製造することが出来る。
【0103】
上記のような製造方法は、先の製造方法と同様に、内部欠陥が少なく強度が高いハニカム成形体を使用しているので、濾過性能(捕集効率)に優れたハニカムフィルタを製造することが可能であることに加え、ハニカム成形体の焼成と目封止部の焼成を一時に行うことが出来るので、焼成操作を少なくすることが出来、より簡便にハニカムフィルタを得ることが出来るという利点がある。尚、この製造方法における目封止、焼成は、先の方法と全く同様に行うことが出来る。
【0104】
(3)ハニカムフィルタ
本発明に係るハニカムフィルタは、多孔質の隔壁によって区画されることにより形成された多数のセルを有する多孔質ハニカム構造体と、多数のセルの一方の開口部と他方の開口部と互い違いに目封止する目封止部とを備え、一部のセルに導入された被処理流体が隔壁を透過して隣接するセルに流入する際に、隔壁において夾雑物が捕捉されるように構成されたものであり、スートプリント試験により評価したスート漏洩セル比率が、1セル/1000セル以下である点に特徴がある。
【0105】
本発明にいう「スートプリント試験」とは、ハニカムフィルタの一方の端面側からセル内に粒子を流し込み、他方の端面側に密着させた通気性のあるスクリーンに捕集された粒子の像によりハニカムフィルタの内部欠陥を検査する方法である(例えば、特公平5−658号公報参照)。
【0106】
スートプリント試験は、図3に示すような、ハニカムフィルタ21をその周縁部を気密的に封止した状態で支承する支持台32と、支持台32に連結された、黒鉛粒子を含むガスを供給するスートジェネレイタ34と、黒鉛粒子を捕集するスクリーン36と、スクリーン36を透過したガスを回収する排気筒38とからなる検査装置31を用いて行うことが出来る。尚、符号40は給気管、符号42は切替弁、符号44は排気管、符号46は押さえメッシュを示す。
【0107】
即ち、支持台32上にハニカムフィルタを載置し、ハニカムフィルタの上端面にスクリーン36を密着させた後、そのスクリーン36の上から排気筒38をセットし、ハニカムフィルタ及びスクリーン36を支持台32と排気筒38の間に挟持した状態で固定する。この状態でスートジェネレータ34から供給される黒鉛粒子を含むガスをハニカムフィルタ21の一方の端面側からセル23内に流し込み、他方の端面側に密着させた通気性のあるスクリーン36に捕集された黒鉛粒子の像を観察する。
【0108】
ハニカムフィルタ21の隔壁24等に内部欠陥が全くない場合には、黒鉛粒子はハニカムフィルタ21の隔壁24において捕捉されるため、スクリーン36に黒鉛粒子の像が形成されることはない。一方、ハニカムフィルタ21の隔壁24等に内部欠陥が存在する場合には、黒鉛粒子はハニカムフィルタ21の隔壁24を通過して隣接するセル23に流入し、スクリーン36に捕集されるため、スクリーン36に黒鉛粒子の像が形成される。
【0109】
上記のような検査を行った後、スクリーンに形成された黒鉛粒子の像が形成されたセル数を1000セルあたりのセル数に換算したものがスート漏洩セル比率である。本発明に係るハニカムフィルタは、従来のハニカムフィルタでは2〜20セル/1000セル程度であったスート漏洩セル比率を1セル/1000セル以下というレベルにまで向上させたものである。このようなハニカムフィルタは、内部欠陥が少なく、濾過性能(捕集効率)に優れる。
【0110】
尚、本発明に係るハニカムフィルタは、少なくとも多孔質ハニカム構造体(即ち、目封止部以外の部分)が、コージェライトによって構成されているものであることが好ましい。コージェライトは熱膨張係数が小さいため、耐熱衝撃性に優れ、熱応力によるクラックの発生を効果的に防止することが出来る点において好ましい。
【0111】
(実施例)以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって何ら限定されるものではない。尚、以下に示す実施例、及び比較例に記載された平均粒子径については、ストークスの液相沈降法を測定原理とし、X線透過法により検出を行う、X線透過式粒度分布測定装置(例えば、商品名:セディグラフ5000−02型、(株)島津製作所製等)により測定した50%粒子径の値を使用した。
【実施例1】
【0112】
[ハニカム成形体の製造]
(成形原料)骨材粒子原料として、タルク(平均粒子径21μm)40質量%、カオリン(平均粒子径11μm)18.5質量%、アルミナ(平均粒子径7μm)14.0質量%、水酸化アルミニウム(平均粒子径2μm)15質量%、シリカ(平均粒子径25μm)12.5質量%の比率で混合されたコージェライト化原料を用意した。又、上記の骨材粒子原料100質量部に対して、第1の造孔材としてカーボン(コークス:平均粒子径27μm)25.0質量部、第2の造孔材としてポリエチレンテレフタレート樹脂(平均粒子径37μm)10.0質量部、バインダとしてヒドロキシプロピルメチルセルロース8.0質量部を用意した。更に、分散剤(界面活性剤)として脂肪酸石鹸(ラウリン酸カリウム)0.01質量部、分散媒として水35質量部を用意した。
【0113】
(混合工程:第1の混合)混合機としてポットミルを用い、上記の骨材粒子原料に、第1の造孔材及び第2の造孔材を添加し、これを10分間混合し、成形用配合物(乾粉)を得た。尚、ポットミルの回転数は40rpmとした。
【0114】
(篩い上の凝集塊による評価)得られた成形用配合物(乾粉)を、ポットミルから取り出し、100gを目開き500μmの篩いで篩い、篩い上の残渣(凝集塊)の質量を測定し、篩い上の残渣の割合(質量%)を求め、その混合状態を評価した。結果を表1に示す。
【0115】
【表1】

【0116】
(混合工程:第2の混合)次に、上記した分散剤と分散媒との混合溶液を、上記ポットミル(混合機)内に噴霧・添加し、同様にして2分間混合することにより、成形用配合物(湿粉)を得た。
【0117】
(TG混合度による評価)得られた成形用配合物(湿粉)をポットミルから20mg取り出し、熱重量天秤(TG)にてバインダ、原料の結晶水等の質量減を、10回測定した。10回の測定においてそれぞれ元の質量に対する減った質量の割合を質量減少率として求め、この質量減少率の標準偏差を質量減少率の平均値で除した値(TG混合度)を求め、その混合状態を評価した。結果を表1に示す。
【0118】
(混練工程、土練工程)次に、得られた成形用配合物(湿粉)に対し、シグマニーダにより混練を行い、更に、真空減圧装置を備えたスクリュー式の押出混練機(真空土練機)による土練を行って、円筒状(外径300mmφ)に押し出された坏土を得た。
【0119】
(X線CT混合度による評価)得られた円筒状の坏土の密度を、X線CTを用いて10個所測定し、その10個所の密度測定値の標準偏差を、X線CTによる密度測定値の平均値で除した値(X線CT混合度)を求め、原料の混合状態を評価した。結果を表1に示す。尚、X線CT測定の測定単位(領域)は、1mm×1mm×2mmである。
【0120】
(成形工程)次に、口金として、ハニカム成形体の隔壁と相補的な形状のスリットを有し、スリットの全交点部に裏穴を備え、セルを構成するセルブロックの角部にR加工が施された(Rが付けられた)ものを用い、成形機として、ラム式押出成形機を使用して、押出成形を行い、得られた坏土から、隔壁によって多数のセルが区画・形成された成形物を得た。この際、ラム式押出成形機の内部に目開きが233μmのスクリーンを配置し、坏土を、このスクリーンを通過させた後に口金から押し出した。この成形物を誘電乾燥し、熱風乾燥することによって完全に乾燥し、ハニカム成形体を得た。このハニカム成形体は、所定の寸法となるように両端面を切断した。
【0121】
得られたハニカム成形体は、端面(セル開口面)形状が、外径229mmφの円形、長さが254mmであり、セル形状は1.16mm×1.16mmの正方形セル、隔壁の厚さが300μm、セル密度が約300セル/平方インチ(46.5セル/cm)、総セル数が19085セルのものであった。
【0122】
[ハニカムフィルタの製造]
上記のようにして得られたハニカム成形体の多数のセルの一方の開口部と他方の開口部とを、互い違いに目封止することによって、目封止ハニカム成形体を得た。目封止の方法としては、ハニカム成形体の一方の端面に、粘着シートを貼着し、画像処理を利用したレーザ加工によりその粘着シートの目封止すべきセルに対応する部分のみに孔開けをしてマスクとし、そのマスクが貼着されたハニカム成形体の端面をセラミックスラリー中に浸漬し、ハニカム成形体の目封止すべきセルにセラミックスラリーを充填して目封止部を形成する方法を採用した。
【0123】
セラミックスラリーとしては、骨材粒子原料としてハニカム成形体と同じ骨材粒子原料を使用し、骨材粒子原料100質量部に対し、バインダとしてメチルセルロース0.5質量部、分散剤として特殊カルボン酸型高分子界面活性剤(商品名:ポイズ530、花王(株)製)0.3質量部、分散媒として水50質量部を加えて30分間混合することにより調製したものを用いた。その粘度は25Pa・sとした。
【0124】
上記のようにして得られた目封止ハニカム成形体を熱風乾燥することによって完全に乾燥した後、この目封止ハニカム成形体を1420℃の温度で7時間焼成することによって、一部のセルに導入された被処理流体が多孔質の隔壁を透過して隣接するセルに流入する際に、隔壁において夾雑物が捕捉されるように構成されたハニカムフィルタを得た。
【0125】
(スートプリント試験による評価)得られたハニカムフィルタについて、スートプリント試験によりスート漏洩セル比率を算出し、ハニカムフィルタの内部欠陥の程度、即ち、フィルタの濾過性能(捕集効率)について評価した。
【0126】
スートプリント試験は、特公平5−658号公報に記載の方法に準じて、図3に示すような、ハニカムフィルタ21をその周縁部を気密的に封止した状態で支承する支持台32と、支持台32に連結された、黒鉛粒子を含むガスを供給するスートジェネレータ34と、黒鉛粒子を捕集するスクリーン36(白い布を使用した)と、スクリーン36を透過したガスを回収する排気筒38とからなる検査装置を用いて行った。
【0127】
先ず、支持台32上に、上記実施例1、及び比較例1のハニカムフィルタ21を載置し、ハニカムフィルタ21の上端面に排気筒38をセットし、ハニカムフィルタ21を支持台32と排気筒38の間に挟持した状態で固定した。この状態でスートジェネレータ34から約70g/時間の量で供給される黒鉛粒子を含むガスをハニカムフィルタ21の一方の端面側からセル内に流し込み、ハニカムフィルタ21にスートを5g/リットルの量だけ堆積させた。
【0128】
次いで、ハニカムフィルタ21の上端面にスクリーン36を密着させた後、そのスクリーン36の上から再度排気筒38をセットし、ハニカムフィルタ21及びスクリーン36を支持台32と排気筒38の間に挟持した状態で固定した。この状態でスートジェネレータ34から約70g/時間の量で供給される黒鉛粒子を含むガスをハニカムフィルタ21の一方の端面側からセル23内に流し込み、他方の端面側に密着させた通気性のあるスクリーン36に捕集された黒鉛粒子の像(即ち、黒点)を観察し、その数をカウントした。
【0129】
(アイソスタティック強度試験による評価)得られたハニカムフィルタについて、社団法人自動車技術会発行の自動車規格JASO規格M505−87に準拠してアイソスタティック強度の試験を施した。この試験は、ゴムの筒状容器に試料(ハニカムフィルタ)を入れ、アルミ製板で蓋をして水中で等方加圧圧縮を行う試験であり、コンバーターの缶体にハニカムフィルタが外周面把持される場合の圧縮負荷加重を模擬した試験である。試験結果はそれぞれのハニカムフィルタが破壊したときの加圧圧力値として示される。結果を表1に示す。
【0130】
(実施例2,3)
成形原料における界面活性剤の比率を、0.1質量部(実施例2)、1質量部(実施例3)とした以外は、実施例1と同様にして、ハニカム成形体を製造し、得られたハニカム成形体よりハニカムフィルタを製造し、これらの過程の中で各評価を行った。結果を表1に示す。
【実施例4】
【0131】
成形原料の水酸化アルミニウムとしてステアリン酸で表面改質したものを用い、成形原料における界面活性剤の比率を0.1質量部とした以外は、実施例1と同様にして、ハニカム成形体を製造し、得られたハニカム成形体よりハニカムフィルタを製造し、これらの過程の中で各評価を行った。結果を表1に示す。
【実施例5】
【0132】
成形原料のうち水酸化アルミニウムとして予め自由渦型遠心分級機にて分級し凝集塊を除去したものを用い、成形原料における界面活性剤の比率を、0.1質量部とした以外は、実施例1と同様にして、ハニカム成形体を製造し、得られたハニカム成形体よりハニカムフィルタを製造し、これらの過程の中で各評価を行った。結果を表1に示す。
【実施例6】
【0133】
混合工程(第1の混合)において、混合機としてポットミルを用い、水酸化アルミニウムを除いた骨材粒子原料に、第1の造孔材及び第2の造孔材を添加し、これを5分間混合し、成形用配合物(乾粉)を得て、混合工程(第2の混合)において、成形原料における界面活性剤(分散剤)の比率を、0.1質量部とした上で、分散剤と分散媒との混合溶液の中に水酸化アルミニウムを添加し、これを超音波で分散したものを、上記ポットミル内に添加し、5分間混合することにより、成形用配合物(湿粉)を得たこと以外は、実施例1と同様にして、ハニカム成形体を製造し、得られたハニカム成形体よりハニカムフィルタを製造し、これらの過程の中で各評価を行った。結果を表1に示す。
【実施例7】
【0134】
成形原料における界面活性剤(分散剤)の比率を、1質量部とし、更に、混練工程及び成形工程において、二軸連続混錬押出成形機を使用して、混練・成形を一体連続的に行ったこと以外は、実施例1と同様にして、ハニカム成形体を製造し、得られたハニカム成形体よりハニカムフィルタを製造し、これらの過程の中で各評価を行った。結果を表1に示す。
【0135】
(実施例8〜13)
混合工程における混合機を変更した以外は、実施例1と同様にして、ハニカム成形体を製造し、得られたハニカム成形体よりハニカムフィルタを製造し、これらの過程の中で各評価を行った。結果を表1に示す。尚、実施例8では、スーパーミキサ(株式会社カワタ製)を用いて、撹拌羽根の回転数を500rpm、周速を2m/秒として混合した。実施例9では、ハイスピーダ(太平洋機工株式会社製)を用いて、撹拌羽根の回転数を700rpm、周速を6m/秒として混合した。実施例10では、超高速剪断オムニミキサ(千代田技研興業株式会社製)を用いて、撹拌羽根の回転数を4000rpm、周速を10m/秒として混合した。実施例11では、混練・高速撹拌造粒機(ドルトン製)を用いて、撹拌羽根の回転数を1000rpm、周速を7m/秒として混合した。実施例12では、バーチカル・グラニュレータ(株式会社パウレック製)を用いて、撹拌羽根の回転数を5000rpm、周速を9m/秒として混合した。実施例13では、ヘンシェルミキサ(商品名:三井ヘンシェルミキサ、三井鉱山(株)製)を用いて、撹拌羽根の回転数を600rpm、周速を4.5m/秒として混合した。
【実施例14】
【0136】
成形原料のうち、第1の造孔材(カーボン)の量を骨材粒子原料100質量部に対して5.0質量部とし、第2の造孔材としてアクリル樹脂系マイクロカプセル(平均粒子径50μm)を用いこの量を骨材粒子原料100質量部に対して2.2質量部とし、成形原料の分散剤(界面活性剤)の量を0.1質量部とした。又、混合機として、プローシェアミキサ(商品名:プローシェアミキサ、太平洋機工(株)製)を用い、混合工程において、骨材粒子原料に第1の造孔材(カーボン)及びバインダを添加し3分間混合した後に、更に、第2の造孔材を加えて3分間混合するようにした。尚、プローシェアミキサの撹拌条件は、プローシェア駆動軸の回転数を100rpm、チョッパ駆動軸の回転数を3000rpmとし、チョッパ駆動軸の周速を40m/秒とした。上記した各条件以外は、実施例1と同様にして、ハニカム成形体を製造し、得られたハニカム成形体よりハニカムフィルタを製造し、これらの過程の中で各評価を行った。結果を表1に示す。
【実施例15】
【0137】
混合工程における混合機を変更し、更に、成形工程において、口金として、ハニカム成形体の隔壁と相補的な形状のスリットを有し、スリットの交点1つおきに裏穴を備え、セルを構成するセルブロックの角部にR加工が施されていないものを用いた以外は、実施例1と同様にして、ハニカム成形体を製造し、得られたハニカム成形体よりハニカムフィルタを製造し、これらの過程の中で各評価を行った。結果を表1に示す。尚、用いた混合機はハイスピーダ(太平洋機工株式会社製)であり、撹拌羽根の回転数を700rpm、周速を20m/秒として混合した。
【0138】
(比較例1)
成形原料の分散剤(界面活性剤)の量を0.1質量部とし、混合機としてシグマニーダを用いて60分間混合したことを除いては、実施例1と同様にして、ハニカム成形体を製造し、得られたハニカム成形体よりハニカムフィルタを製造し、これらの過程の中で各評価を行った。結果を表1に示す。
【0139】
(比較例2)
成形原料における界面活性剤の比率を、2質量部とした以外は、実施例1と同様にして、ハニカム成形体を製造し、得られたハニカム成形体よりハニカムフィルタを製造し、これらの過程の中で各評価を行おうとした。ところが、ポットミル内で湿粉が凝集状態となり、取り出しが不可能となり、成形に至らず、フィルタを得ることが出来なかった。
【0140】
(比較例3,4)
混合工程における混合機を変更した以外は、実施例1と同様にして、ハニカム成形体を製造し、得られたハニカム成形体よりハニカムフィルタを製造し、これらの過程の中で各評価を行った。結果を表1に示す。尚、比較例3では、ナウタミキサ(ホソカワミクロン株式会社製)を用いて、撹拌羽根の回転数を300rpm、周速を1.5m/秒として混合した。比較例4では、リボンミキサ(ダルトン社製)を用いて、撹拌羽根の回転数を100rpm、周速を0.5m/秒として混合した。
【実施例16】
【0141】
口金として、坏土をスリットに導入する裏孔が、スリットの交点1つおきに設けられたものを用い、実施例1のハニカム成形体の製造手順に準じて、端面(セル開口面)形状が外径129mmφの円形、長さが152.4mmのハニカム成形体を、セル構造の狙い値を隔壁の厚さが306μm(12mil)、セル密度が約200セル/平方インチ(cpsi)として、10体作製した。その後、実施例1のハニカムフィルタの製造手順に準じて、それぞれに目封止、乾燥、焼成を施して10体(試料No.1〜10)のハニカムフィルタを得た。ハニカムフィルタのセル構造は、実測したところ、平均で、隔壁の厚さが313.65μm(12.3mil)、セル密度が約197セル/平方インチ(cpsi)であった。
【0142】
(アイソスタティック強度試験による評価)得られた10体の試料について、それぞれ社団法人自動車技術会発行の自動車規格JA SO規格M505−87に準拠してアイソスタティック強度の試験を施した。実施例2の結果を表2に示し、そのうち10体の試料の平均値を図4に表す。
【実施例17】
【0143】
口金として、坏土をスリットに導入する裏孔がスリットの全ての交点に設けられたものを用いた以外は、実施例16と同様にしてハニカムフィルタを10体(試料No.1〜10)作製し、それぞれにアイソスタティック強度の試験を施した。尚、セル構造は、実測したところ、平均で、隔壁の厚さが311.1μm(12.2mil)、セル密度が約191セル/平方インチ(cpsi)であった。アイソスタティック強度の試験の実施例3の結果を表2に示し、そのうち10体の試料の平均値を図4に表す。
【0144】
【表2】

【0145】
(考察)
表1の結果より、実施例1〜15のハニカムフィルタは、スート漏洩セル比率が1.0セル/1000セル以下であり、内部欠陥が少なく、濾過性能(捕集効率)に優れるものであった。一方、比較例1〜4のハニカムフィルタは、1.5セル/1000セル以上であり、内部欠陥が少なからず存在し、濾過性能(捕集効率)が不十分なものであった。
【0146】
尚、実施例1及び比較例1のハニカムフィルタについて、それぞれのスート漏れを起こした部分を切断し観察したところ、実施例1のハニカムフィルタについては孔径0.5mm程度の小孔が若干観察された程度であり、内部欠陥の程度としては許容出来るレベルであったが、比較例1のハニカムフィルタについては長さ10〜100mm程度のささくれや切れ等が少なからず観察され、内部欠陥の程度としては許容出来るレベルを超えるものであった。
【0147】
表2及び図4に示される結果より、実施例17の最低値は実施例16の最高値を下回らず、実施例17の平均値は実施例16に比較して約57%向上していることがわかる。スリットの全ての交点に裏孔が設けられた口金を使用すると、裏孔がスリットの交点1つおきに設けられた口金を用いる場合に比較して、ハニカムフィルタのアイソスタティック強度の向上が図れることが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0148】
本発明に係るハニカム成形体の製造方法は、内部欠陥が少なく強度が高く濾過性能(捕集効率)に優れたハニカムフィルタの製造に好適に用いることが出来る。又、本発明に係るハニカムフィルタは、公害防止等の環境対策、高温ガスからの製品回収等の用途で用いられる集塵用・水処理用のフィルタ、特にディーゼル機関から排出されるパティキュレートを捕集するディーゼルパティキュレートフィルタとして好適に用いることが出来る。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
平均粒子径が10μm以下の微粒子を含む2種以上の骨材粒子原料と、水と、を含む成形原料を用いて、ハニカム成形体を得るハニカム成形体の製造方法であって、
前記2種以上の骨材粒子原料の混合(第1の混合)をすることによって成形用配合物(乾粉)を得る混合工程と、
前記成形用配合物(乾粉)に水を加えて混練することによって坏土を得る混練工程と、
を有し、得られた前記坏土を、隔壁によって多数のセルが区画・形成されたハニカム形状にする成形を行い、乾燥することによって、前記ハニカム成形体を得るハニカム成形体の製造方法。
【請求項2】
平均粒子径が10μm以下の微粒子を含む2種以上の骨材粒子原料と、水と、を含む成形原料を用いて、ハニカム成形体を得るハニカム成形体の製造方法であって、
前記2種以上の骨材粒子原料の混合(第1の混合)をすることによって成形用配合物(乾粉)を得た後に、更に水を加えて混合(第2の混合)をすることによって成形用配合物(湿粉)を得る混合工程と、
前記成形用配合物(湿粉)を混練することによって坏土を得る混練工程と、
を有し、得られた前記坏土を、隔壁によって多数のセルが区画・形成されたハニカム形状にする成形を行い、乾燥することによって、前記ハニカム成形体を得るハニカム成形体の製造方法。
【請求項3】
前記混練工程の後であり、前記ハニカム形状にする成形を行う前に、混練工程で得られた坏土を、所定の形状に成形する土練工程を有する請求項1又は2に記載のハニカム成形体の製造方法。
【請求項4】
前記混合工程の前に、予め、前記骨材粒子原料の表面に被覆を施す請求項1〜3の何れか一項に記載のハニカム成形体の製造方法。
【請求項5】
前記混合工程の前に、予め、前記骨材粒子原料を分級し、凝集塊を排除する請求項1〜4の何れか一項に記載のハニカム成形体の製造方法。
【請求項6】
前記混合工程において、前記成形用配合物(乾紛)の目開き500μmでの篩い上残渣(凝集塊)が1質量%以下になるように、前記第1の混合を行う請求項1〜5の何れか一項に記載のハニカム成形体の製造方法。
【請求項7】
前記水を加える際に、更に分散剤として界面活性剤を加える請求項1〜6の何れか一項に記載のハニカム成形体の製造方法。
【請求項8】
前記混合工程において、成形原料に加圧振動を加えながら混合を行う請求項1〜7の何れか一項に記載のハニカム成形体の製造方法。
【請求項9】
前記加圧振動を、超音波によって発生させる請求項8に記載のハニカム成形体の製造方法。
【請求項10】
前記加圧振動を、容器の中に成形原料と玉石とを収容し、前記容器を振動させることによって発生させる請求項8に記載のハニカム成形体の製造方法。
【請求項11】
前記混合工程が、撹拌羽根を有する混合機を用いて行われ、
前記撹拌羽根の回転により、成形原料に対して剪断力を加えながら撹拌して混合を行う請求項1〜7の何れか一項に記載のハニカム成形体の製造方法。
【請求項12】
前記撹拌羽根を、500rpm以上で回転させる請求項11に記載のハニカム成形体の製造方法。
【請求項13】
前記撹拌羽根を、周速2m/秒以上で回転させる請求項11に記載のハニカム成形体の製造方法。
【請求項14】
前記混合工程が、冷却機能を有する混合機を用いて行われる請求項1〜13の何れか一項に記載のハニカム成形体の製造方法。
【請求項15】
前記混合工程と混練工程とが、それぞれ個別の装置で行われ、
前記混合工程を行う混合機と、前記混練工程を行う混練機とが、直結されている請求項1〜14の何れか一項に記載のハニカム成形体の製造方法。
【請求項16】
前記骨材粒子原料として、平均粒子径が10μm以下のアルミナ(Al)微粒子及び/又は平均粒子径が10μm以下の水酸化アルミニウム(Al(OH))微粒子を含むコージェライト化原料を用いる請求項1〜15の何れか一項に記載のハニカム成形体の製造方法。
【請求項17】
前記成形原料として、前記骨材粒子原料、前記水の他、造孔材、及びバインダを含むものを用いる請求項1〜16の何れか一項に記載のハニカム成形体の製造方法。
【請求項18】
前記造孔材として、発泡樹脂からなるマイクロカプセルを用いる請求項17に記載のハニカム成形体の製造方法。
【請求項19】
前記水を加える際に、その水を、噴霧しながら、加える請求項1〜18の何れか一項に記載のハニカム成形体の製造方法。
【請求項20】
前記成形が、前記隔壁と相補的な形状のスリットを有する口金を用いた押出成形である請求項1〜19の何れか一項に記載のハニカム成形体の製造方法。
【請求項21】
前記骨材粒子原料として、目開きが前記口金のスリット幅の4/5以下の篩を通過した粉体を含むものを用いる請求項20に記載のハニカム成形体の製造方法。
【請求項22】
前記押出成形が、前記スリットの全ての交点に裏孔が設けられた口金を用いて行われる請求項20に記載のハニカム成形体の製造方法。
【請求項23】
前記口金の、前記スリットを形成するセルブロックの角部の少なくとも一部に、Rが付けられている請求項20〜22の何れか一項に記載のハニカム成形体の製造方法。
【請求項24】
前記押出成形が、二軸連続成形機を用いて行われる請求項20〜23の何れか一項に記載のハニカム成形体の製造方法。
【請求項25】
前記押出成形を行う際に、前記坏土を、目開きが160〜278μmのスクリーンを通過させた後、前記口金から押し出す請求項20〜24の何れか一項に記載のハニカム成形体の製造方法。
【請求項26】
請求項1〜25の何れか一項に記載の製造方法によりハニカム成形体を得、前記ハニカム成形体を焼成することによって多孔質ハニカム構造体を得、前記多孔質ハニカム構造体の多数のセルの一方の開口部と他方の開口部とを互い違いに目封止することによって目封止ハニカム構造体を得、前記目封止ハニカム構造体を焼成することによって、一部のセルに導入された被処理流体が多孔質の隔壁を透過して隣接するセルに流入する際に、前記隔壁において夾雑物が捕捉されるように構成されたハニカムフィルタを得るハニカムフィルタの製造方法。
【請求項27】
請求項1〜25の何れか一項に記載の製造方法によりハニカム成形体を得、前記ハニカム成形体の多数のセルの一方の開口部と他方の開口部とを互い違いに目封止することによって目封止ハニカム成形体を得、前記目封止ハニカム成形体を焼成することによって、一部のセルに導入された被処理流体が多孔質の隔壁を透過して隣接するセルに流入する際に、前記隔壁において夾雑物が捕捉されるように構成されたハニカムフィルタを得るハニカムフィルタの製造方法。
【請求項28】
多孔質の隔壁によって区画されることにより形成された多数のセルを有する多孔質ハニカム構造体と、前記多数のセルの一方の開口部と他方の開口部と互い違いに目封止する目封止部とを備え、一部のセルに導入された被処理流体が前記隔壁を透過して隣接するセルに流入する際に、前記隔壁において夾雑物が捕捉されるように構成されたハニカムフィルタであって、
スートプリント試験により評価したスート漏洩セル比率が、1セル/1000セル以下であるハニカムフィルタ。
【請求項29】
少なくとも前記多孔質ハニカム構造体が、コージェライトによって構成されている請求項28に記載のハニカムフィルタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【国際公開番号】WO2005/018893
【国際公開日】平成17年3月3日(2005.3.3)
【発行日】平成19年11月1日(2007.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−513277(P2005−513277)
【国際出願番号】PCT/JP2004/011759
【国際出願日】平成16年8月17日(2004.8.17)
【出願人】(000004064)日本碍子株式会社 (2,325)
【Fターム(参考)】