説明

ハニカム構造体および排ガス処理装置

【課題】処理性能を一定とした状態で比較した場合、従来のハニカム構造体に比べて、ハニカム構造体に担持させる貴金属触媒量を低下させることが可能なハニカム構造体を提供する。
【解決手段】無機粒子と、無機バインダとを含み、長手方向に沿って、第1の端面から第2の端面まで延伸する複数のセルがセル壁によって区画されたハニカムユニットからなるハニカム構造体であって、前記セル壁には、貴金属触媒およびNOx吸蔵触媒が担持されており、前記第1の端面側に位置するセル壁と前記第2の端面側に位置するセル壁において、実質的に貴金属の触媒量が異なることを特徴とするハニカム構造体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハニカム構造体および排ガス処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、自動車の排ガス中に含まれるNOx等を処理するために使用される排ガス処理装置には、ハニカム構造体が使用されている(例えば、特許文献1)。
【0003】
ハニカム構造体のセル壁等の基本骨格部分は、例えばアルミナ等で構成され、セル壁には、白金等の貴金属触媒と、アルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩等からなるNOx吸蔵触媒とが担持される。一般に、貴金属触媒は、排気ガスの雰囲気が酸化性である場合(例えば、ディーゼルエンジンの通常運転時)、ハニカム構造体に流通された排気ガス中のNOおよびNO等のNOxをNOに酸化させる役割を有し、NOx吸蔵触媒は、この反応によって生じたNOを一時的に吸蔵する役割を有する。NOx吸蔵触媒に吸蔵されたNOは、排ガスの雰囲気が還元性になった際(例えば、ディーゼルエンジンのリッチスパイク時)に、貴金属触媒を介してNに還元され、系外に排出される。
【0004】
従って、このような構成のハニカム構造体中に、自動車の排ガスを流通させることにより、排ガス中に含まれるNOxを処理することができる。
【特許文献1】国際公開WO2005/063653パンフレット
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、従来のハニカム構造体において、上述したような酸化還元反応を活性化させる貴金属触媒は、各セル壁の表面から深さ方向に沿って、また各セルの延伸方向に沿って、実質的に均一にセル壁に担持される。また通常の場合、確実にNOx処理を行うため、必要以上の多量の貴金属触媒をハニカム構造体に担持させているのが現状である。
【0006】
しかしながら、ハニカム構造体に担持されたこれらの全ての貴金属触媒が、同等に排ガス中のNOxの処理反応に利用されるわけではない。すなわち、実際には、ハニカム構造体に排ガスが流通される際、ハニカム構造体の一方の端部(排ガスの流入側)からある程度排ガスの下流側に侵入した位置までのセル壁に担持された貴金属触媒が、排ガス中のNOxの処理反応の大部分を担っており、セル壁の他方の端部近傍(排ガスの排出側)に担持された貴金属触媒は、NOxの処理反応にはそれ程関与していない場合が多い。
【0007】
このことは、ハニカム構造体を用いた実際の排ガス処理の際に、ハニカム構造体に担持された貴金属触媒量から予想されるほど、十分なNOx処理が行われない可能性のあることを示唆している。また、実際に、貴金属触媒が担持されたハニカム構造体によるNOx処理の効率が、予想を下回る場合がしばしば確認されている。
【0008】
また、通常の場合、ハニカム構造体に担持される貴金属触媒には、白金のような高価な材料が使用されるため、このような貴金属触媒の非効率的な使用には、コスト的な面で大きな問題がある。
【0009】
本発明は、このような背景に鑑みなされたものであり、処理性能を一定とした状態で比較した場合、従来のハニカム構造体に比べて、ハニカム構造体に担持させる貴金属触媒量を低下させることが可能なハニカム構造体を提供することを目的とする。また、同等の貴金属触媒担持量で比較した場合、従来のハニカム構造体に比べて、高いNOx処理性能を有するハニカム構造体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明では、無機粒子と、無機バインダとを含み、長手方向に沿って、第1の端面から第2の端面まで延伸する複数のセルがセル壁によって区画されたハニカムユニットからなるハニカム構造体であって、
前記セル壁には、貴金属触媒およびNOx吸蔵触媒が担持され、
前記第1の端面側に位置するセル壁と前記第2の端面側に位置するセル壁において、実質的に貴金属の触媒量が異なることを特徴とするハニカム構造体が提供される。
【0011】
ここで、当該ハニカム構造体では、前記第1の端面側から前記第2の端面側に向かって、セル壁に担持された貴金属の触媒量が低下しても良い。
【0012】
特に、前記セル壁に担持された貴金属の触媒量は、直線的にまたはステップ状に低下しても良い。
【0013】
また、前記第1の端面から10mmの位置におけるセル壁の貴金属触媒の担持量は、前記第2の端面から10mmの位置におけるセル壁の貴金属触媒の担持量の2〜7倍であっても良い。
【0014】
また、前記貴金属触媒は、白金、パラジウムおよびロジウムからなる群から選定された少なくとも一つを含んでも良い。
【0015】
また、前記無機粒子は、アルミナ、セリア、ジルコニア、チタニア、シリカ、ムライトおよびゼオライトからなる群から選定された少なくとも一つを含んでも良い。
【0016】
また、前記無機バインダは、アルミナゾル、シリカゾル、チタニアゾル、水ガラス、セピオライト、およびアタパルジャイトからなる群から選定された少なくとも一つを含んでも良い。
【0017】
また前記ハニカムユニットは、さらに無機繊維を含んでも良い。
【0018】
ここで、前記無機繊維は、アルミナ、シリカ、炭化珪素、シリカアルミナ、ガラス、チタン酸カリウムおよびホウ酸アルミニウムからなる群から選定された少なくとも一つを含んでも良い。
【0019】
また前記NOx吸蔵触媒は、アルカリ金属またはアルカリ土類金属を含んでも良く、例えば、カリウム、ナトリウム、バリウム、カルシウムおよびマグネシウムからなる群から選定された少なくとも一つを含んでも良い。
【0020】
また、当該ハニカム構造体は、複数の柱状のハニカムユニットと、該ハニカムユニット同士を接合する接着層とを有しても良い。
【0021】
また、本発明では、流通された排ガス中に含まれるNOxを処理することが可能な排ガス処理装置であって、
当該排ガス処理装置は、前述の特徴を有するハニカム構造体を備え、
前記ハニカム構造体は、貴金属触媒の担持量の多い端面側が流通される排ガスの上流側となるようにして、当該排ガス処理装置内に設置されることを特徴とする排ガス処理装置が提供される。
【発明の効果】
【0022】
本発明では、処理効率を一定とした状態で比較した場合、従来のハニカム構造体に比べて、ハニカム構造体に担持させる貴金属触媒量を低下させることが可能となる。また、同等の貴金属触媒担持量で比較した場合、従来のハニカム構造体および排ガス処理装置に比べて、高いNOx処理効率を有するハニカム構造体および排ガス処理装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、図面により本発明の形態を説明する。
【0024】
図1には、本発明によるハニカム構造体の一例を模式的に示す。また、図2には、図1に示すハニカム構造体の基本単位である、ハニカムユニットの一例を模式的に示す。
【0025】
図1に示すように、本発明によるハニカム構造体100は、2つの開口面(第1の端面110および第2の端面115)を有する。また、ハニカム構造体100の両端面を除く外周面には、コート層120が設置される。
【0026】
ハニカム構造体100は、例えば、図2に示す柱状のセラミック製ハニカムユニット130を、接着層150を介して複数個(図1の例では、縦横4列ずつ16個)接合させた後、外周側を所定の形状(図1の例では、円柱状)に切削加工することにより構成される。
【0027】
ハニカム構造体100は、例えば、図2に示す柱状のセラミック製ハニカムユニット130を、接着層150を介して複数個(図1の例では、縦横4列ずつ16個)接合させた後、外周側を所定の形状(図1の例では、円柱状)に切削加工することにより構成される。
【0028】
図2に示すように、ハニカムユニット130は、該ハニカムユニットの長手方向に沿って一端から他端まで延伸し、両端面で開口された複数のセル(貫通孔)121と、該セルを区画するセル壁123とを有する(ただし図の関係上、前記他端は、隠れており視認できない)。セル壁123には、例えば白金等の貴金属からなる触媒と、アルカリ金属および/またはアルカリ土類金属を含むNOx吸蔵材と(いずれも図示されていない)が担持される。
【0029】
このような構成のハニカムユニット130を組み合わせて構成されるハニカム構造体100を、例えばディーゼルエンジンの排ガスラインの途上に設置し、実際にハニカム構造体100に排ガスを流通させた場合、以下のような現象が生じる。
【0030】
まずリーン運転状態では(ディーゼルの通常運転時)、ハニカム構造体の一方の端面(例えば端面110)からハニカムユニット130の各セル121に流入した排ガスは、該セルを通過する際に、セル壁123に担持されている貴金属触媒と接触する。これにより、例えば、排気ガス中に含まれるNOガスは、貴金属触媒の働きにより、以下のように反応する:

2NO + O → 2NO (1)式

この反応により生じたNOは、以下の反応により、当該貴金属触媒の近傍にあるNOx吸蔵触媒に吸蔵される。

2NO + Ba + O →Ba(NO (2−1)式
2NO + 2K + O →2KNO (2−2)式

その後、NOxが処理された排ガスは、セル121の他方の端部に達し、ハニカム構造体100の他方の端面(例えば端面115)から排出される。
【0031】
一方、エンジンの運転がリッチスパイク状態に切り替わると、前述のリーン状態においてNOx吸蔵触媒に吸蔵されたNOxが以下の反応により、還元される。

4HC + 2CO + 6NO
3N + 6CO + 2HO (3)式

還元されたNは、その後、ハニカム構造体100の他方の端面(例えば端面115)から排出される。
【0032】
このように、ハニカム構造体では、該ハニカム構造体のセル壁に担持された貴金属触媒およびNOx吸蔵触媒の働きにより、排ガス中に含まれるNOxを処理することができる。
【0033】
ここで、従来のハニカム構造体では、貴金属触媒は、各セル壁の厚さ方向(図2のX方向およびY方向)およびセルの延伸方向(図2のZ方向)にわたって、実質的に均一に担持されている。
【0034】
図3には、従来のハニカムユニットの長手方向に対する貴金属触媒担持量の変化を模式的に示す。図3において、横軸Zは、ハニカムユニットの第1の端面からの位置を表しており、縦軸Mは、セル壁に担持されている貴金属触媒量を表している。Lは、ハニカムユニットの全長である。従って、Z=Lの位置は、ハニカムユニットの第2の端面に相当する。
【0035】
図3に示すように、従来のハニカム構造体の場合、貴金属触媒は、第1の端面側から第2の端面側まで、ハニカムユニットの全長Lにわたって、均一に担持されている。
【0036】
通常の場合(従来の貴金属触媒の量を多くした場合)、排ガスは、ハニカムユニットの第1の端面810から、各セル121を通って、ハニカム構造体内を長手方向に流通し、ハニカムユニットの第2の端面820から排出される。しかしながら、前述のような貴金属触媒の担持状態では、ハニカムユニットの全長に沿って、セル壁の各領域に担持された貴金属触媒を等しく有効に活用することは難しい。ハニカムユニットの第1の端面から流入された排ガス中に含まれるNOxは、その大部分が第1の端面側の領域において処理され、第2の端面側近傍では、排ガス中のNOx濃度は、既に有意に低くなっているからである。このことは、ハニカムユニットの第2の端面側の近傍では、排ガス中に含まれるNOx濃度に対して、必要以上の貴金属触媒が担持されていることを意味する。
【0037】
またこのことは、ハニカム構造体を用いた実際の排ガス処理の際に、ハニカム構造体に担持された貴金属触媒量から予想されるほど、十分なNOx処理が行われない可能性のあることをも示唆している。また、実際に、貴金属触媒が担持されたハニカム構造体によるNOx処理の効率が、予想を下回る場合がしばしばある。
【0038】
さらに、通常の場合、ハニカム構造体に担持される貴金属触媒には、白金のような高価な材料が使用されるため、このような貴金属触媒の非効率的な使用には、コスト的な面で大きな問題がある。
【0039】
これに対して、本発明によるハニカム構造体では、図4に示すように、貴金属触媒担持量は、ハニカムユニットの全長に沿って変化している。すなわち、第1の端面側の貴金属触媒量M1は、第2の端面側の貴金属触媒量M2よりも多くなっている。
【0040】
ハニカムユニットの全長に沿ったこのような貴金属触媒担持量の変化により、本発明によるハニカム構造体100は、NOxの処理に際し、従来のハニカム構造体に比べて、より有効に貴金属触媒を活用することができる。本発明では、従来あまり効果的に反応に使用されなかった第2の端面側に担持された貴金属触媒量を減らしているためである。すなわち、本発明では、ハニカムユニットの全長に沿って、ほぼ全ての貴金属触媒が同等に反応に活用されるように貴金属触媒量が調整されている。
【0041】
従って、本発明では、従来のハニカム構造体と同等(同量)の貴金属触媒量をハニカム構造体に担持した場合、NOxの処理効率を向上させることが可能となる。本発明では、処理効率を同等とした場合には、従来のハニカム構造体に比べて、担持する貴金属触媒の量を有意に抑制することができる。
【0042】
なお、前述の例(図4)では、貴金属触媒担持量Mは、ハニカムユニット第1の端面側での値(M1)から第2の端面側での値(M2)まで、連続的に(特に直線的に)減少するように変化している。しかしながら、本発明の態様は、これに限られない。
【0043】
図5および図6は、本発明に適用し得る、ハニカムユニットの全長に対する貴金属触媒担持量の変化の別の一例を示したものである。
【0044】
図5の変化挙動では、ハニカムユニットの第1の端面〜第1の端面から距離p1の位置までの領域では、貴金属触媒量がM1となっており、それ以外の領域では、貴金属触媒量がM3(M1>M3)となっている。
【0045】
また図6の変化挙動では、ハニカムユニットの第1の端面〜第1の端面から距離p2の位置までの領域において、貴金属触媒量がM1からM4まで徐々に低下し、それ以外の領域では、貴金属触媒量がM4(M1>M4)で一定となっている。
【0046】
貴金属触媒担持量をハニカムユニットの全長に対して、このように変化させた場合も、前述のような本発明の効果を発揮することができる。
【0047】
なお、図5および図6の場合、位置p1およびp2の値は、基本的に0<p1<L、0<p2<Lの範囲であればいかなる値であっても良い。
【0048】
また、図4において、直線の傾きS(すなわち、(M1−M2)/L)は、いかなる値であっても良い。
【0049】
図5および図6には示さないが、この他、貴金属触媒量は、第1の端面側から第2の端面側に向かって、複数のステップ状の変化で、低下しても良い。また、例えば図4および図6の0<Z<p2の領域に見られるような貴金属触媒量の連続的な変化は、必ずしも直線的である必要はなく、貴金属触媒量は、非直線的に減少しても良い。
【0050】
すなわち、本発明において重要なことは、ハニカムユニットの第1の端面側の貴金属触媒量が第2の端面側の貴金属触媒量よりも多くなるように、セル壁に貴金属触媒が担持されていることであり、これが満たされる限り、ハニカムユニットの長手方向における貴金属触媒量の変化は、いかなる態様であっても良い。
【0051】
特に、第1の端面から10mmの位置における貴金属触媒の担持量は、第2の端面から10mmの位置における貴金属触媒の担持量の2〜7倍であることが好ましい。この値が2倍未満の場合、従来と同様に多くの触媒が必要となる。またこの値が7倍を超えると、触媒量が不足して、処理が不十分となる。
【0052】
なお、貴金属触媒の担持量は、ICP発光分析装置(例えば、島津製作所ICPS−8100で元素分析すること)により、求めることができる。
【0053】
ここで、ハニカムユニット130は、無機粒子および無機バインダを含むが、さらに無機繊維を含んでいても良い。
【0054】
無機粒子としては、アルミナ、シリカ、ジルコニア、チタニア、セリア、ムライト、ゼオライト等からなる粒子が望ましい。これらの粒子は、単独で用いてもよく、2種以上併用してもよい。また、これらの中では、アルミナ、セリアが特に望ましい。
【0055】
無機バインダとしては、無機ゾルや粘土系バインダ等を用いることができ、上記無機ゾルの具体例としては、例えば、アルミナゾル、シリカゾル、チタニアゾル、水ガラス等が挙げられる。また、粘土系バインダとしては、例えば、白土、カオリン、モンモリロナイト、セピオライト、アタパルジャイト等の複鎖構造型粘土等が挙げられる。これらは単独で用いても良く、2種以上を併用してもよい。
【0056】
これらのなかでは、アルミナゾル、シリカゾル、チタニアゾル、水ガラス、セピオライトおよびアタパルジャイトからなる群から選択された少なくとも1種が望ましい。
【0057】
また、ハニカムユニットに無機繊維を加える場合、無機繊維の材料としては、アルミナ、シリカ、炭化珪素、シリカアルミナ、ガラス、チタン酸カリウムまたはホウ酸アルミニウム等が望ましい。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。上記材料の中では、アルミナが望ましい。
【0058】
ハニカムユニットに含まれる無機粒子の量について、望ましい下限は30重量%であり、より望ましい下限は40重量%であり、さらに望ましい下限は50重量%である。一方、望ましい上限は90重量%であり、より望ましい上限は80重量%であり、さらに望ましい上限は75重量%である。無機粒子の含有量が30重量%未満では、浄化に寄与する無機粒子の量が相対的に少なくなる。一方、90重量%を超えると、ハニカムユニットの強度が低下する可能性がある。
【0059】
無機バインダは、固形分として、5重量%以上含まれることが好ましく、10重量%以上含まれることがより好ましく、15重量%以上含まれることがさらに好ましい。一方、無機バインダの含有量は、固形分として、50重量%以下であることが好ましく、40重量%以下であることがより好ましく、35重量%以下であることがさらに好ましい。無機バインダの量が固形分として5重量%未満では、製造したハニカムユニットの強度が低くなることがある。一方、無機バインダの量が固形分として50重量%を超えると、原料組成物の成型性が悪くなることがある。
【0060】
ハニカムユニットに無機繊維が含まれる場合、無機繊維の合計量について、望ましい下限は3重量%であり、より望ましい下限は5重量%であり、さらに望ましい下限は8重量%である。一方、望ましい上限は50重量%であり、より望ましい上限は40重量%であり、さらに望ましい上限は30重量%である。無機繊維の含有量が3重量%未満ではハニカムユニットの強度向上の寄与が小さくなり、50重量%を超えると浄化に寄与する無機粒子の量が相対的に少なくなる。
【0061】
前述のハニカムユニット130の長手方向に対して垂直な断面の形状は、特に限定されるものではなく、ハニカムユニットを接着層を介して接合することが可能であれば、いかなる形状であっても良い。ハニカムユニット130の形状は、正方形、長方形、六角形、扇形などであっても良い。
【0062】
また、ハニカムユニット130のセル121の長手方向に対して垂直な断面の形状は、特に限られず、正方形以外に、例えば三角形、多角形としても良い。
【0063】
ハニカムユニット130のセル密度は、15.5〜186個/cm(100〜1200cpsi)の範囲であることが好ましく、46.5〜170個/cm(300〜1100cpsi)の範囲であることがより好ましく、62.0〜155個/cm(400〜1000cpsi)の範囲であることがさらに好ましい。
【0064】
ハニカムユニット130のセル壁123の厚さは、特に限定されないが、強度の点から望ましい下限は、0.1mmであり、浄化性能の観点から望ましい上限は、0.4mmである。
【0065】
前述のように、このようなハニカムユニットのセル壁には、貴金属触媒およびNOx吸蔵触媒が担持されている。貴金属触媒としては、特に限られないが、例えば、白金、パラジウム、ロジウム等の貴金属が使用される。また、NOx吸蔵触媒は、カリウム、ナトリウムのようなアルカリ金属、およびバリウム、カルシウム、マグネシウムのようなアルカリ土類金属を含む。
【0066】
本発明のハニカム構造体100の形状は、いかなる形状であっても良い。例えば、ハニカム構造体100の形状は、図1に示すような円柱の他、楕円柱、四角柱、多角柱等であっても良い。
【0067】
ハニカム構造体100のコート層120は、無機粒子、無機バインダおよび無機繊維を含み、さらに有機バインダを含むペーストを原料として形成される。有機バインダには、例えば、ポリビニルアルコール、メチルセルロース、エチルセルロース、カルボキシルメチルセルロース等を使用することができ、これらは単独で使用しても、2種類以上のものを混合して使用しても良い。有機バインダの中では、カルボキシルメチルセルロースが望ましい。
【0068】
その後、コート層ペーストをハニカム構造体の外周面に塗布した後、乾燥固化することにより、コート層が形成される。原料となるペーストには、必要に応じて、酸化物系セラミックを成分とする微小中空球体であるバルーンや、球状アクリル粒子、グラファイト等の造孔剤を添加しても良い。コート層の厚さは、0.1mm〜2.0mmが好ましい。
【0069】
また、本発明のハニカム構造体100において、接着層150には、コート層120と同じ材料が使用される。ただし、接着層150は、コート層120と異なる材料であっても良い。
【0070】
以上の記載では、図1のような、接着層150を介して複数のハニカムユニット130を接合することにより構成されるハニカム構造体を例に説明した。
【0071】
図7に、本発明のハニカム構造体の別の例を示す。なお、ハニカム構造体200は、複数のセル122がセル壁124を隔てて、長手方向に並設された単一のハニカムユニットから構成されること以外、ハニカム構造体100と同様である。なお、ハニカム構造体200の外周面には、コート層を設置しても、設置しなくても良い。
【0072】
このようなハニカム構造体100、200は、例えば、ディーゼルエンジン等から排出される排気ガスの処理装置に適用することができる。この場合、ハニカム構造体は、セル壁の触媒担持量の多い端面側が排気ガスの導入側となるようにして、使用される。
(ハニカム構造体の作製方法)
次に、本発明のハニカム構造体の製造方法を説明する。なお、ここでは、前述の複数のハニカムユニットからなるハニカム構造体100の製造方法を例に説明する。
【0073】
まず、無機粒子、無機バインダを主成分とし、さらに必要に応じて無機繊維を添加した原料ペーストを用いて押出成形等を行い、ハニカムユニット成形体を作製する。
【0074】
原料ペーストには、これらの他に有機バインダ、分散媒および成形助剤を成形性にあわせて適宜加えてもよい。有機バインダとしては、特に限定されるものではないが、例えば、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ポリエチレングリコール、フェノール樹脂およびエポキシ樹脂等から選ばれる1種以上の有機バインダが挙げられる。有機バインダの配合量は、無機粒子、無機バインダおよび無機繊維の合計100重量部に対して、1〜10重量部が好ましい。
【0075】
分散媒としては、特に限定されるものではないが、例えば、水、有機溶媒(ベンゼンなど)およびアルコール(メタノールなど)などを挙げることができる。成形助剤としては、特に限定されるものではないが、例えば、エチレングリコール、デキストリン、脂肪酸、脂肪酸石鹸およびポリアルコール等を挙げることができる。
【0076】
原料ペーストは、特に限定されるものではないが、混合・混練することが好ましく、例えば、ミキサーやアトライタなどを用いて混合してもよく、ニーダーなどで十分に混練してもよい。原料ペーストを成形する方法は、特に限定されるものではないが、例えば、押出成形などによってセルを有する形状に成形することが好ましい。
【0077】
次に、得られた成形体は、乾燥することが好ましい。乾燥に用いる乾燥機は、特に限定されるものではないが、マイクロ波乾燥機、熱風乾燥機、誘電乾燥機、減圧乾燥機、真空乾燥機および凍結乾燥機などが挙げられる。また、得られた成形体は、脱脂することが好ましい。脱脂する条件は、特に限定されず、成形体に含まれる有機物の種類や量によって適宜選択するが、おおよそ400℃、2時間が好ましい。更に、得られた成形体は、焼成することが好ましい。焼成条件としては、特に限定されるものではないが、600〜1200℃が好ましく、600〜1000℃がより好ましい。この理由は、焼成温度が600℃未満では、焼結が進行せずハニカムユニットとしての強度が低くなり、1200℃を超えると、焼結が過剰に進行し、ハニカムユニットの単位体積あたりの比表面積が小さくなるためである。
【0078】
次に、得られたハニカムユニットのセル壁に、貴金属触媒が担持される。貴金属触媒は、ハニカムユニットを貴金属を含む含浸溶液に浸漬させる方法、いわゆる「含浸法」によりセル壁に担持されることが好ましい。本発明では、前述のように、セル壁の第1の端面側の貴金属触媒量が、第2の端面側の貴金属触媒量よりも多くなるように、セル壁に貴金属触媒を担持させる必要がある。「含浸法」では、以下の手順により、そのような態様で、貴金属触媒をセル壁に設置することが比較的に容易に行えるからである。図8(a)〜(d)では、円柱状のハニカムユニット(評価用サンプル)の例を示しているが、四角柱状のハニカムユニット等であっても同様である。
(手順1)まず、図8(a)に示すように、ハニカムユニットの第1の端部810から第2の端部820までの全部分を、第1の白金濃度の含浸溶液を含む浴槽300Aに所定の時間浸漬して、全ての領域に白金を担持させる。
(手順2)次に、図8(b)に示すように、ハニカムユニットの第2の端部820から、長手方向に沿って所定の距離Aまでの部分を除き、ハニカムユニットを第2の白金濃度の含浸溶液を含む浴槽300Bに所定の時間浸漬して、浸漬領域にさらに白金を担持させる。これにより、白金担持量の異なる2つの領域、すなわち第1の領域R(第2の端部〜位置A)および第2の領域R〜R(位置A〜第1の端部の間の領域)が得られる。
(手順3)次に、図8(c)に示すように、ハニカムユニット130の第2の端部820から、長手方向に沿って所定の位置Bまでの部分を除き、ハニカムユニットを第3の白金濃度の含浸溶液を含む浴槽300Cに所定の時間浸漬して、浸漬領域にさらに白金を担持させる。これにより、白金担持量の異なる3つの領域、すなわち第1の領域R(第2の端部〜位置A)と、第2の領域R(位置A〜位置Bの間の領域)と、第3の領域R〜R(位置B〜第1の端部の間の領域)とが得られる。
(手順4)以下、同様の手順により、それぞれが所定の白金担持量を有する複数の領域、すなわち第1の領域R(第2の端部〜Aまでの部分)、第2の領域R(A〜Bの部分)、第3の領域R(B〜Cの部分)、第4の領域R(C〜Dの部分)…第nの領域Rを得ることができる。また、これにより、最終的に、ハニカムユニットの第1の端部810から第2の端部820に向かって、セル壁に担持された白金担持量が変化するハニカムユニットを容易に製作することができる(図8(d))。
【0079】
このような方法では、A〜Dの各位置の間隔を短くすることにより、白金担持量がより連続的に変化するハニカムユニットを作製することができることは明らかであろう。
【0080】
なお、上記手順では、白金濃度の異なる複数の含浸溶液を予め調製しておき、それぞれの含浸溶液に対して、ハニカムユニットの浸漬深さを変化させることにより、セル壁の第1の端部810から第2の端部820まで、白金触媒量の異なるハニカムユニットを製作する方法について説明した。また、単一の含浸溶液を使用して、これに浸漬させるハニカムユニットの深さを徐々に変化させることにより、セル壁の第1の端部810から第2の端部820まで、白金触媒量の異なるハニカムユニットを製作しても良い。
【0081】
なお、貴金属触媒の担持は、本段階ではなく、ハニカムユニット状態の段階、複数のハニカムユニットを接合した段階、外周部を切削加工した段階等のうち、いずれの段階で実施しても良い。
【0082】
次に、ハニカムユニットのセル壁に、NOx吸蔵触媒が担持される。NOx吸蔵触媒は、例えば、炭酸バリウムの酢酸水溶液中に、ハニカムユニットを含浸させることにより、各セル壁に担持することができる。
【0083】
次に、以上の工程で得られたハニカムユニットの側面に、後に接着層となる接着層用ペーストを均一な厚さで塗布した後、この接着層用ペーストを介して、順次他のハニカムユニットを積層する。この工程を繰り返し、所望の寸法の(例えば、ハニカムユニットが縦横4個ずつ配列された)ハニカム構造体を製作する。なお前記接着層用ペーストには、前述の原料ペーストを使用しても良い。
【0084】
接着層用ペーストとしては、特に限定されるものではないが、例えば、無機バインダと無機粒子を混ぜたものや、無機バインダと無機繊維を混ぜたものや、無機バインダと無機粒子と無機繊維を混ぜたものなどを用いることができる。また、これらにさらに有機バインダを加えてもよい。有機バインダとしては、特に限定されるものではないが、例えば、ポリビニルアルコール、メチルセルロース、エチルセルロースおよびカルボキシメチルセルロースなどから選ばれる1種以上が挙げられる。
【0085】
ハニカムユニットを接合させる接着層の厚さは、0.3〜2mmが好ましい。接着層の厚さが0.3mm未満では十分な接合強度が得られないおそれがあるためである。また接着層の厚さが2mmを超えると、圧力損失が大きくなることがある。なお、接合させるハニカムユニットの数は、ハニカム構造体の大きさに合わせて適宜選定される。
【0086】
次にこのハニカム構造体を加熱して、接着層用ペーストを乾燥、固化させて、接着層を形成させるとともに、ハニカムユニット同士を固着させる。
【0087】
次にダイヤモンドカッター等を用いて、ハニカム構造体を、例えば円柱状に切断加工し、必要な外周形状のハニカム構造体を作製する。
【0088】
次に、ハニカム構造体の外周面(側面)にコート層用ペーストを塗布後、これを乾燥、固化させて、コート層を形成する。コート層用ペーストは、特に限定されないが、接着層用のペーストと同じものであっても異なるものであっても良い。また、コート層用ペーストは、接着層用のペーストと同じ配合比としてもよく、異なる配合比としても良い。コート層の厚みは、特に限定されるものではない。
【0089】
複数のハニカムユニットを接着層によって接合させた後(ただし、コート層を設けた場合は、コート層を形成させた後)に、このハニカム構造体を脱脂することが好ましい。この処理により、接着層用のペーストおよびコート層用ペーストに有機バインダが含まれている場合、これらの有機バインダを脱脂除去することができる。脱脂条件は、含まれる有機物の種類や量によって適宜選定されるが、通常の場合、700℃、2時間程度である。
【0090】
以上の工程により、図1に示すハニカム構造体を作製することができる。
(排ガス処理装置)
次に、本発明の排ガス処理装置について説明する。
【0091】
本発明の排ガス処理装置は、上述したハニカム構造体を金属容器(シェル)に収容した排ガスの流通経路に配置されるものである。
【0092】
具体的には、ハニカム構造体の側面を覆うように、ハニカム構造体と金属容器の間に、保持シール材が配置され、ハニカム構造体が金属容器に収容される。保持シール材は、主として、無機繊維から構成されている。
【0093】
本発明の排ガス処理装置は、上述したハニカム構造体を備え、ハニカム構造体は、貴金属の担持量の多い端面側が流通される排ガスの上流側となるようにして、排ガス処理装置内に設置されている。
【0094】
上述のように、本発明のハニカム構造体が排ガス処理装置に配置されているので、処理効率を一定とした状態で比較した場合、従来のハニカム構造体に比べて、ハニカム構造体に担持される貴金属触媒量を低下させることが可能となり、同等の貴金属触媒で比較した場合、従来の排ガス処理装置に比べて、高いNOx処理効率を得ることができる。
【実施例】
【0095】
次に、本発明の実施例について説明する。
【0096】
(実施例1)
まず、γアルミナ粒子(平均粒径2μm)2250重量部、アルミナファイバ(平均繊維径6μm、平均繊維長100μm)680重量部、アルミナゾル2600重量部(固形分30重量%)を混合し、得られた混合物に対して、有機バインダとしてメチルセルロース320重量部、可塑剤、界面活性剤および潤滑剤を少量加え、さらに、混合、混練して混合組成物を得た。次に、この混合組成物を用いて、押出成形機により押出成形を行い、生の成形体を得た。
【0097】
次に、マイクロ波乾燥機および熱風乾燥機を用いて、生の成形体を十分乾燥させた後、400℃で2時間保持し、脱脂を行った。その後、700℃で2時間保持して焼成を行い、四角柱状の多孔質ハニカムユニット(寸法:縦35mm×横35mm×長さ150mm)を得た。この多孔質ハニカムユニットのセル密度は、93個/cmであり、セル壁厚は、0.2mmであった。
【0098】
次に、ダイヤモンドカッターを用いて、多孔質ハニカムユニットを長さ50mmのところで切断した。さらに、ダイヤモンドカッターを用いて、切断後の多孔質ハニカムユニットを軸方向に沿って切削加工し、円柱状のハニカムユニット(寸法:直径30mm×長さ50mm)の評価用サンプルを得た。
【0099】
次に、図8を参照して示したような含浸処理により、円柱状ハニカムユニット(評価用サンプル)のセル壁に白金を担持した。含浸溶液には、白金濃度の異なる3種類の含浸溶液(ジニトロジアミン白金硝酸溶液)を使用した。ハニカムユニットは、最終的に図8(d)に示すような、R〜Rの3種類の担持領域(R、R=R、R=R)を有した。それぞれの領域における白金担持量を表1に示す。
【0100】
【表1】

次に、得られた円柱状ハニカムユニット(評価用サンプル)全体を炭酸バリウムと炭酸カリウムの酢酸水溶液に含浸させた後、このハニカムユニットを600℃で1時間保持した。この処理により、各セル壁に、炭酸バリウムと炭酸カリウムの混合物(等モル比)からなるNOx吸蔵触媒を担持させた。円柱状ハニカムユニット(評価用サンプル)の単位体積当たりのNOx吸蔵触媒の重量は、0.2モル/Lとした。
(実施例2)
次に、実施例1と同様の方法により、実施例2に係るハニカムユニット(評価用サンプル)を作製した。ただし、実施例2では、実施例1とは白金濃度の異なる4種類の含浸溶液を使用することにより、実施例1とは白金担持量の異なる4つの担持領域(R=R、R、R、R)を有するハニカムユニットを作製した。4つの領域における白金担持量を表1に示す。その他の作製条件は、実施例1と同様である。
(実施例3)
次に、実施例1と同様の方法により、実施例3に係るハニカムユニット(評価用サンプル)を作製した。ただし、実施例3では、実施例1とは白金濃度の異なる5種類の含浸溶液を使用することにより、実施例1とは白金担持量の異なる5つの担持領域を有するハニカムユニットを作製した。5つの領域における白金担持量を表1に示す。その他の作製条件は、実施例1と同様である。
(実施例4)
次に、実施例1と同様の方法により、実施例4に係るハニカムユニット(評価用サンプル)を作製した。ただし、実施例4では、実施例1とは白金濃度の異なる5種類の含浸溶液を使用することにより、実施例1とは白金担持量の異なる5つの担持領域を有するハニカムユニットを作製した。5つの領域における白金担持量を表1に示す。その他の作製条件は、実施例1と同様である。
(実施例5)
次に、実施例1と同様の方法により、実施例5に係るハニカムユニット(評価用サンプル)を作製した。ただし、実施例5では、実施例1とは白金濃度の異なる5種類の含浸溶液を使用することにより、実施例1とは白金担持量の異なる5つの担持領域を有するハニカムユニットを作製した。5つの領域における白金担持量を表1に示す。その他の作製条件は、実施例1と同様である。
【0101】
なお、実施例1〜5において、白金担持量は、3.0g/Lである。
(比較例1)
次に、実施例1と同様の方法により、比較例1に係るハニカムユニット(評価用サンプル)を製作した。ただし、比較例1においては、単一の含浸溶液を使用し、ハニカムユニット全体を同時に含浸溶液に浸漬させた。これにより、ハニカムユニットの長手方向に沿って、セル壁に担持された白金担持量が実質的に等しい(R=R=R=R=R)ハニカムユニットが得られた(白金担持量3.0g/L)。
(NOx処理性能の評価)
上記方法で作製した実施例1〜実施例5および比較例1に係るハニカムユニット(評価用サンプル)を用いて、NOx処理性能の評価を行った。NOx処理性能の評価は、車両用ディーゼルエンジンのリーンとリッチスパイクのそれぞれの運転条件を模擬した混合ガス(模擬ガス)をハニカムユニット(評価用サンプル)に流通させ、NOx処理を行い、ハニカムユニットから排出された模擬ガス中に含まれるNO(一酸化窒素)量を測定することにより実施した。なお測定の際には、ハニカムユニット(評価用サンプル)の第1の端面側(すなわちRの領域)を排気ガスの導入側とした。
【0102】
表2には、リーン運転時のガスとリッチスパイク時のガスのそれぞれの組成を示す。試験の際には、最初にハニカムユニット(評価用サンプル)にリーンガスを110秒間導入し、次にリッチガスを10秒間導入するサイクルを、排出ガス中に含まれるNO濃度がほとんど変化しなくなるまで繰り返した。SV値で50000/hrとした。
【0103】
【表2】

NO濃度の測定には、HORIBA製の装置(MEXA−7100D)を使用した。この装置のNOの検出限界は、0.1ppmである。
【0104】
試験温度(ハニカムユニット(評価用サンプル)およびガス温度)は、200℃、300℃または400℃のいずれかとし、試験期間中一定とした。
【0105】
NOx処理性能の評価には、NOx浄化率Nを用いた。ここでNOx浄化率Nは、

N(%)={(ハニカムユニットに導入する前の混合ガス中のNO濃度−
ハニカムユニットから排出された排出ガス中のNO濃度)}/
(ハニカムユニットに導入する前の混合ガス中のNO濃度)×100 (4)

により算出した。
【0106】
NOx処理性能の評価結果を前述の表1の右端の欄に示す。これらの結果から、本発明によるハニカム構造体(実施例1〜5)は、いずれの温度においても、従来のハニカム構造体(比較例1)に比べて、高いNOx浄化率を示すことが明らかとなった。
【図面の簡単な説明】
【0107】
【図1】本発明のハニカム構造体の一例を模式的に示した斜視図である。
【図2】図1のハニカム構造体を構成するハニカムユニットの一例を模式的に示した斜視図である。
【図3】従来のハニカム構造体の第1の端面側からの距離と触媒担持量の関係を模式的に示した図である。
【図4】本発明のハニカム構造体の第1の端面側からの距離と触媒担持量の間の関係を模式的に示した図である。
【図5】本発明のハニカム構造体の第1の端面側からの距離と触媒担持量の間の別の関係を模式的に示した図である。
【図6】本発明のハニカム構造体の第1の端面側からの距離と触媒担持量の間のさらに別の関係を模式的に示した図である。
【図7】本発明のハニカム構造体の別の例を模式的に示した斜視図である。
【図8】セル壁に担持される貴金属触媒量が長手方向に沿って変化するハニカムユニットを製作する方法の一例を模式的に示した図である。
【符号の説明】
【0108】
100、200 ハニカム構造体
110 第1の端面
115 第2の端面
120 コート層
121、122 セル
123、124 セル壁
130 ハニカムユニット
150 接着層
200 ハニカム構造体
300A〜300C 含浸処理用の浴槽
810 ハニカムユニットの第1の端面側
820 ハニカムユニットの第1の端面側

【特許請求の範囲】
【請求項1】
無機粒子と、無機バインダとを含み、長手方向に沿って、第1の端面から第2の端面まで延伸する複数のセルがセル壁によって区画されたハニカムユニットからなるハニカム構造体であって、
前記セル壁には、貴金属触媒およびNOx吸蔵触媒が担持されており、
前記第1の端面側に位置するセル壁と前記第2の端面側に位置するセル壁において、実質的に貴金属の触媒量が異なることを特徴とするハニカム構造体。
【請求項2】
前記第1の端面側から前記第2の端面側に向かって、セル壁に担持された貴金属の触媒量が低下することを特徴とする請求項1に記載のハニカム構造体。
【請求項3】
前記セル壁に担持された貴金属の触媒量は、直線的にまたはステップ状に低下することを特徴とする請求項2に記載のハニカム構造体。
【請求項4】
前記第1の端面から10mmの位置における貴金属触媒の担持量は、前記第2の端面から10mmの位置における貴金属触媒の担持量の2〜7倍であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一つに記載のハニカム構造体。
【請求項5】
前記貴金属触媒は、白金、パラジウムおよびロジウムからなる群から選定された少なくとも一つの材料を含むことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一つに記載のハニカム構造体。
【請求項6】
前記無機粒子は、アルミナ、セリア、ジルコニア、チタニア、シリカ、ムライトおよびゼオライトからなる群から選定された少なくとも一つを含むことを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一つに記載のハニカム構造体。
【請求項7】
前記無機バインダは、アルミナゾル、シリカゾル、チタニアゾル、水ガラス、セピオライト、およびアタパルジャイトからなる群から選定された少なくとも一つを含むことを特徴とする請求項1乃至6のいずれか一つに記載のハニカム構造体。
【請求項8】
前記ハニカムユニットは、さらに無機繊維を含むことを特徴とする請求項1乃至7のいずれか一つに記載のハニカム構造体。
【請求項9】
前記無機繊維は、アルミナ、シリカ、炭化珪素、シリカアルミナ、ガラス、チタン酸カリウムおよびホウ酸アルミニウムからなる群から選定された少なくとも一つであることを特徴とする請求項8に記載のハニカム構造体。
【請求項10】
前記NOx吸蔵触媒は、アルカリ金属またはアルカリ土類金属を含むことを特徴とする請求項1乃至9のいずれか一つに記載のハニカム構造体。
【請求項11】
前記NOx吸蔵触媒は、カリウム、ナトリウム、バリウム、カルシウムおよびマグネシウムからなる群から選定された少なくとも一つを含むことを特徴とする請求項10に記載のハニカム構造体。
【請求項12】
複数の柱状のハニカムユニットと、該ハニカムユニット同士を接合する接着層とを有することを特徴とする請求項1乃至11のいずれか一つに記載のハニカム構造体。
【請求項13】
排ガス中に含まれるNOxを処理することが可能な排ガス処理装置であって、
当該排ガス処理装置は、請求項1乃至12のいずれか一つに記載のハニカム構造体を備え、
前記ハニカム構造体は、貴金属触媒の担持量の多い端面側が流通される排ガスの上流側となるようにして、当該排ガス処理装置内に設置されることを特徴とする排ガス処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−255033(P2009−255033A)
【公開日】平成21年11月5日(2009.11.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−272399(P2008−272399)
【出願日】平成20年10月22日(2008.10.22)
【出願人】(000000158)イビデン株式会社 (856)
【Fターム(参考)】