説明

ハニカム構造体とその製造方法

【課題】除湿、空気浄化に使用されるコルゲートハニカムフィルタにおいて、使用する際に機能的に必要がないハニカム構造体の外周部にハニカムに担持する材料を担持できないようにして材料ロスを減らし、かつ、ハニカムに外周強化紙を用いることなく外周を強化する製造方法を提供することを目的とする。
【解決手段】平面状の平面シート2と、波形に加工したシートを波形シート5の稜線部10で接着してできる片波成形体11を積層してできるハニカム構造体の外周に耐水性もしくは撥水性の外周シートを巻き、機能性材料の分散液に含浸し、乾燥したのち、外周に巻いたものを剥がし、無機鉱物と無機バインダの分散液をハニカム構造体のフィルム13等を剥がした部分に塗り、乾燥もしくは焼成することで、外周部に機能性材料が付かずに材料ロスが少なく、かつ、外周硬化紙を用いずに外周を硬化出来るハニカムフィルタを得られる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハニカム構造体に関する発明である。
【背景技術】
【0002】
従来、この種のハニカム構造体は、基材紙2枚1対のうち1枚を平らなままの平面シート、他方を波形に成形加工を施した波形シートとし、それらを波形シートの稜線部で接着剤等を用いて接合して片波成形体を形成し、それを円筒状あるいは角柱状に積層したものが知られている。
【0003】
以下、その円筒状あるいは角柱状に積層された片波成形体の成形方法について図7および8を参照しながら説明する。
【0004】
図7に示すように、片波成形体101は平面シート102と波形シート103からなり、接着剤104を波形シート103の稜線部105に塗布することにより平面シート102と接合されている。
【0005】
また、図8に示すように、前記、片波成形体101を円筒状に巻き取り積層し、隣り合う片波成形体101の接触部である陵線部105に接着剤104を塗布し接合することで、円筒状ハニカム構造体106を形成している。
【0006】
これに対して、例えば、特許文献特開平5−137937に示されるように、使用する接着剤104に吸着剤などの粒子を混入することで、吸着性能を向上させているものもある。
【特許文献1】特開平5−137937号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
このような従来のハニカム構造体では、積層体の基材紙が薄かったり脆かったりして強度が十分でなかったり、形状を保てなかったりする。また、その強度を確保するために基材紙とは異なる強度のある紙を別途はりつけて強度を確保しなくてはならず、強度ある紙をはりつけると、ハニカム構造体をある機能性材料の分散液に含浸して、ハニカム構造体に機能性材料を担持する場合、強度を確保するためにはりつけた紙にも担持してしまい、高価な機能性材料を使用している場合、大きな材料のロスとなりコストが高くなってしまう課題があり、外周には含浸時には材料を担持しないで、別途強度をハニカム構造体に与える手段が要求されている。
【0008】
本発明は、このような従来の課題を解決するものであり、積層体の外周強度を向上させることができ、また、含浸する場合には、外周部には含浸する液の材料を保持しないようにすることできるハニカム構造体を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のハニカム構造体は上記目的を達成するために、積層したハニカム構造体のセルの開口方向に平行である外周面を耐水性もしくは撥水性を持つシートで覆い、材料の液に含浸し、乾燥後、シートを取り外して、取り外した面に硬化剤をぬって外周強度を素子に与えるものである。
【0010】
この手段により、ハニカム構造体の外周強度を向上させることができ、かつ、ハニカム構造体の材料液への含浸工程を含む場合には外周部には含浸する液の材料をセルの内部に比べほとんど担持しないようにすることできるハニカム構造体が提供できる。
【0011】
また、本発明のハニカム構造体は、ハニカム構造体のセルの開口方向に平行である外周面を耐水性もしくは撥水性で可燃性のシートで覆い、材料の液に含浸し、乾燥後、ハニカム構造体を焼成して、そのシートを焼き飛ばすことにより、外周を覆っているシートを取り外す必要をなくすことができる。なお、焼き飛ばした後の外周面には硬化剤を塗ることで外周強度を与えることができる。
【0012】
また硬化剤を塗った後に加熱もしくは焼成することで硬化剤をより硬くすることができ、より外周強度を上げることができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によればハニカム構造体のセルの開口方向に平行である外周面を強化し、また保形するためのはり紙が必要ないハニカム構造体の製造方法を提供できる。
【0014】
また、ハニカム構造体を材料の分散した液に含浸しても、ハニカム構造体のセルの開口方向に平行である外周面には材料をセルの内面と比べてほとんど担持せず、材料ロスの少ないハニカム構造体の製造方法を提供できる。
【0015】
また、上記の製造方法によって作成したハニカム構造体を提供できる。
【0016】
また、上記ハニカム構造体を用いて、ハニカム構造体内にゼオライトもしくはシリカゲルもしくはその両方を担持した空気中の水分を吸湿するハニカム状吸湿フィルタを提供できる。
【0017】
また、上記ハニカム構造体をもちいて、ハニカム構造体内にゼオライトもしくは活性炭もしくはその両方を担持した空気中のにおい成分を吸着するハニカム状脱臭フィルタを提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本発明の請求項1記載の発明は、1枚を平らなままの平面シート、他方を波形に成形加工を施した波形シートとし、それらを波形シートの稜線部で接合し片波成形体を形成した後、これを積層したハニカム構造体において、ハニカム構造体のセルの開口方向に平行である外周面を耐水性もしくは撥水性の外周シートで覆い、ゼオライトやシリカゲルや活性炭などの吸着剤や触媒材料とバインダ成分の分散した液に含浸し、それを引き上げて乾燥後、外周を覆っていた外周シートを取り外して作成することを特徴とするハニカム構造体である。これにより、ハニカム構造体フィルタとしての作用を有しない外周部に機能性の材料が付着するのを防ぎ、無駄な材料を使わないために、コストを低減することができる。
【0019】
なお、含浸液から引き上げたハニカム構造体は濡れて変形しやすいので、外周シートはハニカム構造体と密着しているのがのぞましい。また、そのために外周シートは、水を吸って膨潤しないものか、もしくは膨潤しても、ハニカムの膨張率よりも小さく、ハニカム構造体との間に隙間が発生しないものであることが望ましい。
【0020】
また本発明の請求項2は、1枚を平らなままの平面シート、他方を波形に成形加工を施した波形シートとし、それらを波形シートの稜線部で接合し、片波成形体を形成した後、これを積層したハニカム構造体のセルの開口方向に平行である外周面を、耐水性もしくは撥水性でかつ可燃性の外周シートで覆い、ゼオライトやシリカゲルなどの吸着剤や触媒材料とバインダ成分の分散した液に含浸し、乾燥後、ハニカム構造体を400度以上で焼成して、その外周シートを焼き飛ばすことでえられるハニカム構造体である。外周シート焼き飛ばすことによって、外周シートを剥がす必要が無くなり、また焼成によって硬化する材料をハニカム構造体の基材成分にあらかじめ入れておくことで、ハニカム構造体を硬化させることができ、強度を向上させることもできる。
【0021】
また、本発明の請求項3は上記のハニカム構造体の外周シートを取り外した面に硬化剤をぬって外周強度を素子に与えることを特徴としたハニカム構造体である。これによって、基材だけで構造体としての使用強度に耐えられないものであっても、ハニカム構造体の吸着や触媒作用といった機能を害することなく、ハニカム構造体の強度を向上させることが可能となる。また、ハニカム構造体において基材紙を薄くすると圧力損失が低減し、より空気との接触効率が向上するが、その一方で強度が弱くなってしまうという問題がある。本発明では、外周を強化する硬化剤を塗って構造体を保形するため、基材を薄くすることができ、より高機能性のハニカム構造体を提供できる。
【0022】
また本発明の請求項4は上記のハニカム構造体を加熱もしくは焼成することで、硬化剤をより硬くすることが可能である。なお、焼成後、硬化剤を塗ることで、さらに外周の強化をすることができ、構造体のハンドリング性を向上できる。
【0023】
なお、有機繊維と無機繊維の複合基材シートで作成したハニカム構造体の場合、400度以上で焼成することによって、外周に巻いた外周シートを焼き飛ばすと同時に、材料分散液および基材シート中の有機物を焼き飛ばすため、二つの工程を同時にできるため、特にこの製造方法が有効である。
【0024】
また、本発明の請求項5では外周に巻くシートに、耐水加工を施した耐水紙を使用することを特徴とするもので、ゼオライトやシリカゲルや活性炭などの吸着剤や触媒材料とバインダ成分の分散した液に含浸し、引き上げて乾燥する際に、外周に巻いた紙に液がつき難く材料ロスを減らすことができる。また、含浸時にも耐水性の紙であれば破れにくいので、工程を安定して進められる。なお、耐水紙はパラフィン・油脂・シリコン樹脂・渋などをしみこませたり塗ったりして製造する。
【0025】
また、本発明の請求項6では外周に巻く外周シートをフィルムとして、そのフィルムの原料をポリエステル、またはポリエチレンテレフタラート、またはポリスチレン、またはポリ塩化ビニリデン、またはポリプロピレン、またはポリエチレン、またはその他の有機樹脂のフィルムとすることで、ゼオライトやシリカゲルや活性炭などの吸着剤や触媒材料とバインダ成分の分散した液に含浸し、引き上げて乾燥する際に、外周に巻いたフィルムに液がつき難く材料ロスを減らすことができる。また、含浸時にも有機樹脂フィルムであれば破れにくいので、工程を安定して進められる。
【0026】
また、本発明の請求項7では外周シートが板状のもので、その板の材料を、金属類もしくは有機樹脂のいずれかにすることで、ゼオライトやシリカゲルや活性炭などの吸着剤や触媒材料やバインダ成分の分散した液に含浸し、引き上げて乾燥する際に、外周に巻いた板に液がつき難く材料ロスを減らすことができる。また、含浸時にも特に板状のものは硬く、ハニカム構造体が変形しにくいので、工程を安定して進められる。また、板は焼き飛ばさない限り、再利用しやすく、低コストで作業ができる。
【0027】
また、本発明の請求項8では硬化剤を無機鉱物と無機バインダで構成することで、無機バインダが無機鉱物とハニカム構造体の基材を結着し、硬化出来る。また焼成の際も無機バインダ無機鉱物の耐熱温度まで昇温できる。
【0028】
また、本発明の請求項9では硬化剤に少なくともシリコン材料を含むことで、ハニカム構造体の外周基材を保護し、硬く、耐磨耗性を持たせることができる。
【0029】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
【0030】
(実施の形態1)
図1および図2に示すように、基材シート1を平らなままの平面シート2と、メイン成形ロール3とアッパー成形ロール4にて波形に成形加工を施した波形シート5をコルゲーター6にて作成し、波形シート5に接着剤塗布部7にて接着剤8を塗布し、メイン成形ロール3とプレスロール9にて波形シート5の稜線部10で波形シート5と平面シート2を接合し片波成形体11を形成する。そして、前記片波成形体11を巻き取ることで積層した円筒状ハニカム構造体12を得る。そして図3に示すように、その円筒状ハニカム構造体12のセルの開口方向に平行である外周面を樹脂製のフィルム13で覆う。フィルム材としてはポリエステル製、またはポリエチレンテレフタラート製、またはポリスチレン製、またはポリプロピレン製、またはポリ塩化ビニリデン製、またはポリエチレン製のフィルムが、加工性が良く、好ましい。フィルムは、ハニカム構造体の外周を、一端に錘14をつけたベルトカバー15で圧力をかけながら円筒状ハニカム構造体12を回転させて、フィルムとの隙間ができないように覆い、図4のようにテープ16好ましくは耐水性のあるビニールテープもしくは糊好ましくは耐水性の糊にて接着する。ゼオライトやシリカゲルや活性炭などの吸着剤や触媒材料やバインダ成分の分散した液に含浸し、材料をハニカム構造体に担持し、それを引き上げて乾燥し、その後、外周を覆っていたフィルムを取り外す。これによって、機能的に影響のない外周部に、無駄な材料の担持を防ぐことができたハニカム構造体ができる。なお、希望する担持量によっては複数回の含浸と乾燥を繰り返す必要がある。
【0031】
(実施の形態2)
実施の形態1のフィルムの代わりに、耐水性の樹脂を混抄して作った耐水紙をもちいてもよい(図省略)。
【0032】
(実施の形態3)
実施の形態1および2で得られる円筒状ハニカム構造体の外周シートを剥がしたあとの外周に、さらに無機鉱物、好ましくはセピオライト、ゼオライト、モンモリロナイト、酸化アルミナ、シリカ、タルクのいずれか一つもしくは複数と無機バインダの分散液、もしくは無機バインダのみを塗り、乾燥させることで、外周を硬化することができ、ハニカム構造体の強度およびハンドリング性を向上させられる。無機バインダとしてはコロイダルシリカやリチウムシリケート、珪酸ソーダがあげられ、これを用途によって水で希釈して使用してもよい。
【0033】
(実施の形態4)
実施の形態3で得られるハニカム構造体の基材シートが焼成でも成形を保持する、ガラス繊維、セラミック繊維、無機鉱物繊維のいずれか一つもしくは複数を含んでいるような基材シートの場合、焼成によって構造体中の有機物を焼き飛ばして無機質のみのハニカム構造体が得られ、かつ、前記実施の形態3で示した硬化液をさらに熱によって固めることができるため、かつハニカム構造体の強度およびハンドリング性を向上させられる。ここで、さらに構造的な強度を向上させたい場合は、担持液に再度含浸し、乾燥工程を繰り返すことにより、強度の向上を図ることができる。
【0034】
(実施の形態5)
実施の形態1のフィルム、実施の形態2の耐水性の紙の代わりに、図5に示すように板17、好ましくは金属製であるならばステンレス板、またはアルミニウム板、またはニッケル板、または鉄板を用いてもよく、樹脂製であるならばポリプロピレン製、または塩化ビニル製のものが望ましい、を使用しても良い。また、板はある程度、丸みがつくように加工したものがより望ましい。
【0035】
この際には、実施の形態1および2のようにテープで外周板の接着を行なっても良いが、板を丸めた際に、留め具18好ましくはハニカム構造体の多少の径の誤差に対応できるようにばねなどを用いた留め具18で固定するようにすれば、より再利用がしやすくなり、コストを抑えられ、かつ環境負荷を抑えられる。
【0036】
(実施の形態6)
実施の形態3で外周に塗った無機鉱物と無機バインダの混合液の代わりに、シリコンをぬってもよい。この場合、外周面の膜が保護膜となり、割れたり欠けたりしにくくなる効果が得られる。
【0037】
(実施の形態7)
実施の形態1および2および5では、ゼオライトやシリカゲルや活性炭などの吸着剤や触媒材料やバインダ成分の分散した液に含浸し、材料をハニカム構造体上に担持したが、分散液のほうを、ハニカム構造体にかけ流し、余剰液を吹き飛ばすなどしてから乾燥する工程を用いても良く、含浸式に比べ、連続的に材料担持ハニカム構造体を作成するのに適している。
【0038】
(実施の形態8)
実施の形態1や4に示すように材料の液に含浸し、乾燥後、シートを剥がさずに焼成して外周シートを焼き飛ばし、その後実施の形態3および6に示すような外周硬化液を塗っても良い。外周シートとしては実施の形態1や2のフィルムシート、紙シートは焼成によって十分焼失するものである。また、実施の形態5の金属類の板のように焼失しないものであっても、その留め具部分にゴムなどの焼失する冶具を用いることで、自然と外周シートをハニカム構造体から剥がすことが可能である。
【実施例】
【0039】
(実施例1)
少なくともガラス繊維とパルプが含有した製紙を使用して、平らなままの平面シートと波形に成形加工を施した波形シートから片波成形体を形成した。基材紙の紙厚は約0.15mm、片波の形状は、波形状の山の頂点と頂点の距離であるピッチが2.6mm、高さは基材紙の厚みを含め1.5mmとした。片波成形体を巻き取り機に供給し回転して積層し、円筒状ハニカム構造体を得た。
【0040】
円筒状ハニカム構造体の外周面に1乃至2周程度の長さで表1に示すようなフィルムもしくは紙もしくはステンレス製の板を巻きつけた。この際、ハニカム構造体とフィルムの接着は行なわず、実施の形態1に示すようにフィルムもしくは紙を抑えつけながらハニカム構造体と隙間の無いように巻き、フィルムの端部を図4に示すようにビニールテープで貼り付けた。また、ステンレス板は隙間の無いようにハニカム構造体に巻きつけたのち、広がらないように図5に示すように固定した。
【0041】
また、比較用に一般に市販されている、画用紙(厚さ0.3mm)とプロッター用紙(厚さ0.15mm)を用いたハニカム構造体も作成し、同様の工程で試験した。
【0042】
【表1】

【0043】
表1は、本発明の実施例1の円筒状ハニカム構造体に巻く外周シートを示した表および含浸結果をあらわす表である。
【0044】
上記の工程で製造した円筒状ハニカム構造体を、無機バインダ成分とゼオライトの分散液に含浸させた後、ハニカム基材に水分の濡れがなくなるまで常温あるいは加熱してハニカム構造体のセル内を通風して乾燥させた。乾燥後、外周シートを剥がした。このとき、全てのシートで、ゼオライトと無機バインダの液が外周シートとハニカム構造体の基材紙を接着して剥がれないという状況は起きなかった。
【0045】
比較用に行なった画用紙は、含浸後、水を吸って膨張し、ハニカム構造体との間に隙間ができてしまい、ハニカム構造体は通風乾燥時に変形した。また、プロッター用紙では含浸後、通風して乾燥する際に破れてしまった。これはハニカム構造体が水を吸ってやや膨張し、かつプロッター用紙がぬれて弱ったために破れてしまったものと考えられる。
【0046】
また、そのフィルム、耐水紙、ステンレス板でも同様にハニカム構造体は膨張したが、画用紙を巻いたものと比べるとその膨張率は半分以下であり、十分に形状を保持しているといえるものであった。これは耐水紙やフィルムやステンレス板の膨潤がゼロであったか、もしくは棒潤してもハニカム構造体ほど大きく膨らまなかったため、外周シートがハニカム構造体に密着し、その結果、通風乾燥などの際にも保形されたことをあらわしている。
【0047】
次に、表1の含浸前後の直径変化率が0.5%未満であり、形状を保持したままで得られたハニカム構造体の外周に表2に示すような硬化剤を塗りつけ、乾燥後、400度以上で5時間、基材中のパルプ分を焼き飛ばせる温度で焼成し、ハニカム構造体を得た。このようにして得られたハニカム構造体を、外観、押込み強度で評価した。外観は、割れ、かけの点から目視でその有無を確認した。強度に関しては、図6に示すようにハニカム構造体外周エッジ面19に対して直径5mmの円形押込み面20をもつ圧縮強度測定機21でハニカム面に直径5mmの円形がちょうど半分重なるように、つまりは9.8mm2で垂直方向に圧縮し、そのときの破壊強度を測定し、外周圧縮強度22とした。また、外周面に同じく10mmの円形の押込み面をもつ圧縮強度測定機21で押込み、そのときの破壊強度を測定し、外周押込み強度23とした。また、一部焼成後にも外周硬化剤を塗り、その効果についても評価した。
【0048】
【表2】

【0049】
表2は、本発明の実施例1の円筒状ハニカム構造体の外周に塗る液の組成とその結果である。
【0050】
この結果、円筒状ハニカム構造体の外周を剥がした後、ゼオライトもしくは酸化アルミナと無機バインダ、この場合はリチウムシリケートとコロイダルシリカの混合物の分散液を塗ることでハニカム構造体の外周圧縮強度が向上することがわかった。しかしながら、コロイダルシリカのみの液では、圧縮強度、押込み強度は向上するものの、ガラス状の破片ができ、基材が欠けてしまうという欠点があり、無機バインダに適量の無機鉱物を混合して外周に塗るのが有効であることがわかった。
【0051】
これは、基材に対して無機バインダが一定量浸透することによりハニカムの平面、波形シートともに硬化するが、無機バインダ分が過剰であると、乾燥により無機バインダ分がガラス膜化して脆くなり、かつ収縮率の違いから基材のひび割れが起こりやすくなると考えられる。一方で無機鉱物が一定量はいることで、収縮率が基材に近くなりひび割れが少なくなり、また、無機バインダと無機鉱物の結合が多くなることによるガラス膜化が防がれることによると考えられる。
【0052】
なお、焼成後に再度外周硬化剤を塗るのも、圧縮強度の点で特に効果があることが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明で得られたハニカム構造体でつくる、ゼオライトや活性炭の吸着剤を担持した吸着フィルタや触媒を担持した酸化分解フィルタなどにおいて、比較的機能をもたらさない外周部に高価な吸着剤や触媒を担持せずに材料ロスを防いで安くでき、かつ、外周に硬化剤を塗ることで、ハンドリング性と強度が高めたハニカムフィルタを提供でき、除湿や空気浄化フィルタとして適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本発明の実施の形態1の片波成形体作成方法を示す図
【図2】本発明の実施の形態1の円筒状ハニカム構造体作成方法を示す図
【図3】本発明の実施の形態1の円筒状ハニカム構造体にフィルムを巻きつける方法を示す図
【図4】本発明の実施の形態1の円筒状ハニカム構造体にフィルムを巻きつけてとめた図
【図5】本発明の実施の形態5の円筒状ハニカム構造体に板を巻きつけてとめた図
【図6】本発明実施例1の外周圧縮押込み強度測定の測定箇所をしめす図
【図7】従来の片波成形体をあらわす図
【図8】従来の円筒状ハニカム構造体をあらわす図
【符号の説明】
【0055】
1 基材シート
2 平面シート
3 メイン成形ロール
4 アッパー成形ロール
5 波形シート
6 コルゲーター
7 接着剤塗布部
8 接着剤
9 プレスロール
10 稜線部
11 片波成形体
12 円筒状ハニカム構造体
13 フィルム
14 錘
15 ベルトカバー
16 テープ
17 板
18 留め具
19 ハニカム構造体外周エッジ面
20 円形押込み面
21 圧縮強度測定機
22 外周圧縮強度
23 外周押込み強度
101 片波成形体
102 平面シート
103 波形シート
104 接着剤
105 陵線部
106 円筒状ハニカム成形体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1枚を平らなままの平面シート、他方を波形に成形加工した波形シートとし、それらを波形シートの稜線部で接合し片波成形体を形成した後、前記片波成形体を積層したハニカム構造体のセルの開口方向に平行である外周面を耐水性もしくは撥水性である外周シートで覆い、材料の液に含浸し、乾燥後、その外周シートを取り外して作成することを特徴とするハニカム構造体の製造方法。
【請求項2】
外周シートが400度以上で焼失することを特徴とし、ハニカム構造体を焼成して、外周シートを焼き飛ばすことでとりはずすことを特徴とした請求項1記載のハニカム構造体の製造方法。
【請求項3】
外周シートを取り外した面に硬化剤をぬることを特徴とした請求項1または2に記載のハニカム構造体の製造方法。
【請求項4】
外周シートを取り外した面に硬化剤を塗ってさらに焼成することを特徴とした請求項1または2に記載のハニカム構造体の製造方法。
【請求項5】
外周シートが耐水加工を施した紙である請求項1乃至4のいずれかに記載のハニカム構造体の製造方法。
【請求項6】
外周シートがフィルムで、その材料がポリエステル、またはポリエチレンテレフタラート、またはポリスチレン、またはポリ塩化ビニリデン、またはポリプロピレン、またはポリエチレン、またはその他の有機樹脂からなることを特徴とした請求項1乃至4のいずれかに記載のハニカム構造体の製造方法。
【請求項7】
外周シートが金属板もしくは樹脂板のいずれかであることを特徴とした請求項1乃至4のいずれかに記載のハニカム構造体の製造方法。
【請求項8】
硬化剤が少なくとも無機鉱物と無機バインダで構成される請求項1乃至7のいずれかに記載のハニカム構造体の製造方法。
【請求項9】
硬化剤が少なくともシリコン材料を含むことを特徴とする請求項1乃至7のいずれかに記載のハニカム構造体の製造方法。
【請求項10】
請求項1乃至9のいずれかに記載のハニカム構造体の製造方法により製造されたハニカム構造体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−218632(P2006−218632A)
【公開日】平成18年8月24日(2006.8.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−31397(P2005−31397)
【出願日】平成17年2月8日(2005.2.8)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】