説明

ハニカム構造体及びハニカム触媒体

【課題】触媒を担持することにより、排気ガス中の有害物質を効率的に浄化できるとともに、圧力損失の増加を有効に抑制することが可能なハニカム構造体を提供する。
【解決手段】隔壁1が、気孔率50〜80%、平均細孔径15〜70μmであり、ハニカム構造部5の流出側端面3のセル4に目封止部6が形成され、セル4の流入側端部は全て開放され、ハニカム構造部5の流出側端部の、隔壁1が交差する交差部に相当する部分8の少なくとも一部に切り欠き部9を有し、切り欠き部9の、セル4の流路方向長さをL1、隔壁1の切り欠き長さをt1、t2、目封止部6の長さをL2としたときの、式1:(L1−L2)×(t1+t2)/2で示される切り欠き大きさの、切り欠き部全体の合計をW2とし、流出側の端面3におけるセル面積の合計をP2としたときに、W2が、セル面積の合計P2の2〜50%であり、L1がL2より長いハニカム構造体100。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハニカム構造体及び触媒体に関する。更に詳しくは、触媒を担持することにより、自動車用、建設機械用、及び産業用定置エンジン、並びに燃焼機器等から排出される排気ガスに含まれる一酸化炭素(CO)、炭化水素(HC)、窒素酸化物(NO)の有害物質を効率的に浄化することが可能であるとともに、圧力損失の増加を有効に抑制することが可能なハニカム構造体、及びこのハニカム構造体に触媒が担持されたハニカム触媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、各種エンジン等から排出される排気ガスを浄化するために、ハニカム構造体に触媒を担持したハニカム触媒体が用いられている(例えば、特許文献1参照)。このようなハニカム触媒体は、流入側の端面から各セルに流体(排気ガス)を流入させ、排気ガスに含まれる一酸化炭素(CO)、炭化水素(HC)、窒素酸化物(NO)等の有害物質を触媒により浄化するものである。
【0003】
従来、このようなハニカム触媒体に使用されるハニカム構造体は、排気ガスの浄化性能を高めるために、セル密度を高め、触媒が担持される幾何学的面積を大きくし、排ガスと触媒との接触効率を高めるように作製されていた。
【0004】
【特許文献1】特開平07−00766号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来のハニカム構造体及びハニカム触媒体においては、浄化性能を向上させるためにハニカム構造体のセル密度を大きくすると、排気ガスがセル内を通過する際の圧力損失が増大してしまう。一方、ハニカム構造体の隔壁を薄壁化して圧力損失の増加を抑制しようとすると、排気ガスと触媒との接触効率が低下して、排気ガスの浄化性能が低下してしまう。
【0006】
このように、従来のハニカム構造体及びハニカム触媒体においては、浄化性能を向上させることと、圧力損失を低減させることとは、二律背反の関係にあり、両者を両立させることは極めて困難であるという問題があった。
【0007】
本発明は、このような従来技術の問題点に鑑みてなされたものであり、触媒を担持することにより、排気ガスに含まれる有害物質を効率的に浄化することが可能であるとともに、圧力損失の増加を有効に抑制することが可能なハニカム構造体、及びこのハニカム構造体に触媒が担持されたハニカム触媒体を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述の課題を解決するため、本発明は、以下のハニカム構造体及びハニカム触媒体を提供する。
【0009】
[1] 多孔質の隔壁を有し、前記隔壁によって流入側の端面から流出側の端面まで貫通する、流体の流路となる複数の四角形セルが区画形成された柱状のハニカム構造部を備え、前記隔壁は、気孔率が50〜80%であり、且つ平均細孔径が13〜70μmであり、前記複数のセルは、前記流入側の端面から前記流出側の端面にかけて前記セルの流路方向に垂直な断面の面積が一定の大きさに形成された第一のセルと、前記流出側の端面側の端部の開口部内に、その前記開口部の一部を塞ぐように目封止部材が配設された第二のセルとからなり、前記ハニカム構造部の流出側端部の、前記隔壁が交差する部分である交差部の配置される位置に相当する位置の中の少なくとも一部に、交差部が切り欠かれて取り除かれるように形成された切り欠き部を有し、前記切り欠き部の、セルの流路方向の長さをL1とし、セルの流路方向に直交する断面における一方の切り欠かれた隔壁の切り欠き長さをt1、他方の切り欠かれた隔壁の切り欠き長さをt2とし、前記目封止部のセルの流路方向の長さをL2としたときの、式1:(L1−L2)×(t1+t2)/2で示される切り欠き大きさをW1とし、ハニカム構造部の流出側の端面におけるセル面積の合計をP2としたときに、切り欠き大きさW1の切り欠き部全体の合計W2が、セル面積の合計P2の2〜50%であり、L1がL2より長いハニカム構造体。
【0010】
[2] 前記ハニカム構造部の流出側の端面における一のセルの面積をP1としたときに、前記切り欠き大きさW1が、セル面積P1の2〜50%である[1]に記載のハニカム構造体。
【0011】
[3] 前記切り欠き部の、セルの流路方向の長さL1から、前記目封止部のセルの流路方向の長さL2を差し引いた値の下限値が1mmであり、上限値が30mm又はハニカム構造部のセルの延びる方向の全長の1/2のいずれか短い方の長さである[1]又は[2]に記載のハニカム構造体。
【0012】
[4] 前記隔壁の切り欠き長さt1及びt2が、隔壁厚さTの100〜200%である[1]〜[3]のいずれかに記載のハニカム構造体。
【0013】
[5] [1]〜[4]のいずれかに記載のハニカム構造体と、前記ハニカム構造体の前記隔壁の細孔の内表面に担持されるとともに、隔壁表面に担持された触媒と、を備え、触媒担持量が100〜250g/Lであるハニカム触媒体。
【発明の効果】
【0014】
本発明のハニカム構造体及びハニカム触媒体は、特定の気孔率及び平均細孔径の多孔質の隔壁を有するハニカム構造部を備えたハニカム構造体において、ハニカム構造部の流出側端部において、市松模様状に目封止部が形成されるとともに、隔壁の交差部が配置される位置に相当する位置に切り欠き部が形成されているため、目封止部の存在により、目封止部が形成されているセルに流入した流体の一部を隔壁を透過させて隣接する目封止部を有さないセルの内部に積極的に流出させて浄化効率を向上させることができ、更に、切り欠き部が形成されていることにより、目封止部が形成されたセルが、流出側の端部において完全に封止された状態ではなく、切り欠き部を通じて外部に流体を流出させることができるようになっているため、圧力損失の増大を有効に抑制し、又は圧力損失を低減することができる。このように、本発明のハニカム構造体及びハニカム触媒体によれば、目封止部及び切り欠き部を有するため、排気ガスに含まれる有害物質を効率的に浄化することができるとともに、圧力損失の増大を有効に抑制し、又は圧力損失を低減することができる。
【0015】
即ち、本発明のハニカム構造体及びハニカム触媒体は、排気ガスの浄化効率を向上と、圧力損失の増加の抑制という、従来の技術では両立困難であった問題を同時に解決することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明を実施するための最良の形態を具体的に説明するが、本発明は以下の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、当業者の通常の知識に基づいて、適宜設計の変更、改良等が加えられることが理解されるべきである。
【0017】
[1]ハニカム構造体:
図1〜図4に示すように、本実施形態のハニカム構造体100は、多孔質の隔壁1を有し、隔壁1によって流入側の端面2から流出側の端面3まで貫通する、流体の流路となる複数の四角形セル4が区画形成された柱状のハニカム構造部5を備え、隔壁1は、気孔率が50〜80%であり、且つ平均細孔径が13〜70μmであり、複数のセル4の流出側端部に、ハニカム構造部5の流出側端面3に市松模様を形成するように、交互に目封止部6が形成され、セル4の流入側端部は全て開放され、ハニカム構造部5の流出側端部の、隔壁1が交差する部分である交差部7の配置される位置に相当する位置の中の少なくとも一部に、交差部7が切り欠かれて取り除かれるように形成された切り欠き部9を有するものである。尚、複数のセルは、流入側の端面から流出側の端面にかけてセルの流路方向に垂直な断面の面積が一定の大きさに形成された第一のセルと、流出側の端面側の端部の開口部内に、その開口部の一部を塞ぐように目封止部材が配設された第2のセルとからなるものであればよい。そして、本実施形態のハニカム構造体100は、切り欠き部9の、セル4の流路方向の長さをL1とし、セル4の流路方向に直交する断面における一方の切り欠かれた隔壁1の切り欠き長さをt1、他方の切り欠かれた隔壁1の切り欠き長さをt2とし、目封止部6のセル4の流路方向の長さをL2としたときの、式1:(L1−L2)×(t1+t2)/2で示される切り欠き大きさをW1とし、ハニカム構造部5の流出側の端面3におけるセル面積の合計をP2としたときに、切り欠き大きさW1の切り欠き部9全体の合計W2が、セル面積の合計P2の2〜50%であり、L1がL2より長いものである。セル面積の合計P2は、セルの断面積の総和である。セルの断面積とは、セルの流路部分の断面積であり、隔壁部分は除かれる。前記複数のセルは、前記流入側の端面から前記流出側の端面にかけて前記セルの流路方向に垂直な断面の面積が一定の大きさに形成された第一のセルと、前記流出側の端面側の端部の開口部内に、その前記開口部の一部を塞ぐように目封じ材が配設された第二のセルとからなる。ここで、図1は、本発明のハニカム構造体の一の実施形態を模式的に示す斜視図であり、図2は、本発明のハニカム構造体の一の実施形態の、流出側端面の一部を模式的に示す平面図である。そして、図3は、図2のA−A’断面を示す模式図であり、図4は、図2のB−B’断面を示す模式図である。
【0018】
本実施形態のハニカム構造体100は、各種エンジン等から排出される排気ガスを浄化するためのハニカム触媒体の触媒担体として好適に用いることができる。より具体的には、例えば、上記隔壁の細孔の内表面、及び隔壁表面に触媒を担持してハニカム触媒体を製造し、得られたハニカム触媒体を排気ガスの排気系内部に配置し、その流入側の端面から各セルに流体(排気ガス)を流入させ、流入した排気ガスを、隔壁を透過させることによって、一酸化炭素(CO)、炭化水素(HC)、窒素酸化物(NO)等の有害物質を触媒により浄化するものである。
【0019】
本実施形態のハニカム構造体100は、隔壁1が、気孔率50〜80%、平均細孔径13〜70μmであり、従来のハニカム触媒体に使用されるハニカム構造体と比較して、気孔率が高く、且つ平均細孔径が大きな多孔質体によって隔壁1が形成されている。このため、ハニカム構造体に触媒を担持してハニカム触媒体として用いた場合に、圧力損失の増加を有効に抑制することができる。
【0020】
なお、本明細書において、「気孔率」とは、水銀ポロシメータ(水銀圧入法)によって測定した値のことをいう。また、「平均細孔径」とは、水銀ポロシメータ(水銀圧入法)によって測定されたもので、多孔質基材(即ち、隔壁)に圧入された水銀の累積容量が、多孔質基材の全細孔容積の50%となった際の圧力から算出された細孔径のことをいう。
【0021】
更に、本実施形態のハニカム構造体100は、複数のセル4の流出側端部に、ハニカム構造部5の流出側端面3に市松模様を形成するように、交互に目封止部6が形成され、セル4の流入側端部は全て開放され、ハニカム構造部5の流出側端部の、隔壁1が交差する部分である交差部7が配置される位置に相当する位置8の少なくとも一部に、交差する2つの隔壁1,1が切り欠かれて交差部7が取り除かれるように形成された切り欠き部9を有するものであり、切り欠き部が上記所定の大きさであるため、目封止部の存在により、目封止部が形成されているセルに流入した流体の一部を隔壁を透過させて隣接する目封止部を有さないセルの内部に積極的に流出させて浄化効率を向上させることができ、更に、切り欠き部が形成されていることにより、目封止部が形成されたセルが、流出側の端部において完全に封止された状態ではなく、切り欠き部を通じて外部に流体を流出させることができるようになっているため、圧力損失の増大を有効に抑制し、又は圧力損失を低減することができる。
【0022】
本実施形態のハニカム構造体100は、多孔質の隔壁1を有し、この隔壁1によって流入側の端面2から流出側の端面3まで貫通する、流体の流路となる複数のセル4が区画形成された柱状のハニカム構造部5を備えている。なお、本実施形態のハニカム構造体100を構成するハニカム構造部5は、セル4を区画形成する隔壁1の外周を囲むように配設された外周壁10を有している。
【0023】
上述したように、この隔壁は、気孔率が50〜80%であり、且つ平均細孔径が13〜70μmであるが、隔壁の気孔率の下限は60%以上であることが好ましく、65%以上であることが更に好ましく、また、上限は80%以下であることが好ましく、75%以下であることが更に好ましい。このように構成することによって、排気ガスの浄化効率を良好に向上させることができるとともに、圧力損失の増加を有効に抑制し、更には圧力損失を低減することも可能となる。
【0024】
なお、隔壁の気孔率が50%未満であると、隔壁の気孔率が低すぎて、隔壁の細孔表面積が減少してしまい、浄化効率を向上する効果と、圧力損失の増加を抑制する効果との両立が不可能となる。特に、排気ガスの浄化効率が著しく低下してしまう。一方、隔壁の気孔率が80%を超えると、隔壁を透過する排気ガスの量(流量)が増大し排気ガスの浄化効率は向上するものの、ハニカム構造体の機械的強度が著しく低下することにより、破損等が生じ易く、触媒担体として使用することが困難になる。
【0025】
なお、従来、触媒担体として使用するハニカム構造体においては、機械的強度が著しく低下した場合に、貴金属を含む触媒を大量(過剰)に担持して、ハニカム触媒体の機械的強度を高めることが行われる場合があるが、上述した触媒に含まれる貴金属は、比較的高価なものが多く、触媒の使用量の増加に伴い、ハニカム触媒体の製造コストが増大してしまうという問題があった。本実施形態のハニカム構造体は、必要十分な触媒の担持量において、触媒担体としての使用に耐え得る機械的強度を有するものである。
【0026】
また、ハニカム構造体を構成するハニカム構造部の隔壁の平均細孔径は、13〜60μmであり、15〜50μmであることが好ましく、18〜40μmであることが更に好ましい。このように構成することによって、排気ガスの浄化効率を良好に向上させることができるとともに、圧力損失の増加を有効に抑制し、更には圧力損失を低減することも可能となる。
【0027】
隔壁の平均細孔径が13μm未満であると、隔壁の細孔の内表面に触媒を担持してハニカム触媒体として使用した場合に、上記細孔が閉塞し、細孔の内表面による排気ガスの浄化が行われなくなり、浄化効率が著しく低下してしまう。一方、隔壁の平均細孔径が70μmを超えると、隔壁の細孔の内表面総面積が低下し、排気ガスの浄化効率が低下してしまう。
【0028】
本実施形態のハニカム構造体のセル密度は、16〜93セル/cm(100〜600cpsi)であることが好ましく、42〜62セル/cm(300〜400psi)であることが更に好ましい。セル密度が16セル/cm未満であると、排気ガスとの接触効率が低下し、浄化効率が低下することがあり、セル密度が93セル/cm超であると、圧力損失が増大することがある。なお、「cpsi」は「cells per square inch」の略であり、1平方インチ当りのセル数を表す単位である。
【0029】
また、隔壁の厚さは、80〜450μmであることが好ましく、230〜330μmであることが更に好ましい。隔壁の厚さが、80μm未満であると、強度が不足して耐熱衝撃性が低下することがあり、450μmを超えると、圧力損失が増大することがある。セル形状は、本願発明を実現できる限り特に制限されず、三角形、四角形、六角形、八角形―四角形の組み合わせ等、任意に選択し得るが、四角形が好ましい。
【0030】
本実施形態のハニカム構造体の、中心軸に垂直な断面の形状は、即ち、隔壁を囲うように配置された外周壁の形状は、特に限定されないが、例えば、円、楕円、長円、台形、三角形、四角形、六角形、その他の多角形、又は左右非対称な異形形状を挙げることができる。なかでも、円、楕円、長円が好ましい。
【0031】
本実施形態のハニカム構造体の隔壁を構成する材料としては、セラミックスを主成分とする材料を好適例として挙げることができる。セラミックスとしては、炭化珪素、コージェライト、チタン酸アルミニウム、サイアロン、ムライト、窒化珪素、リン酸ジルコニウム、ジルコニア、チタニア、アルミナ、若しくはシリカ、又はこれらを組み合わせたものを好適例として挙げることができる。特に、炭化珪素、コージェライト、ムライト、窒化珪素、アルミナ等のセラミックスが、耐アルカリ特性の観点から好適である。中でも、酸化物系のセラミックスは、コストが安い点でも好ましい。
【0032】
なお、隔壁を囲うように配置された外周壁については、ハニカム構造部の成形時に、ハニカム構造部と一体的に形成させる成形一体壁であってもよいし、その外周に壁を有するハニカム構造部を成形した後、このハニカム構造部の外周の壁を研削して所定形状とし、セメント等で外周壁を形成するセメントコート壁であってもよい。このような外周壁は、例えば、上述した隔壁を構成する材料と同様の材料を用いて形成することができる。
【0033】
また、本実施形態のハニカム構造体は、単独で使用してもよいし、例えば、複数の四角柱状のハニカム構造部をそれぞれの側面同士を貼り付けることにより接合して、接合型のハニカム構造体として使用してもよい。
【0034】
本実施形態のハニカム構造体においては、多孔質の隔壁によって、流入側の端面から流出側の端面まで貫通する複数のセルが区画形成されている。このセルは、流体、即ち、排気ガスの流路となり、流入側の端面から流入した排気ガスの一部を、そのセルを区画する隔壁を透過させて、隣接するセル内に流出させ、その際に、隔壁の細孔の内表面、及び隔壁表面に担持された触媒によって有害物質を浄化し、得られた浄化ガスを流出側の端面から排出することができるように構成されている。
【0035】
本実施形態のハニカム構造体は、図1〜図4に示すように、複数のセル4の流出側端部に、ハニカム構造部5の流出側端面3に市松模様を形成するように、交互に目封止部6が形成され、セル4の流入側端部は全て開放されたものである。
【0036】
目封止部は、気孔率が20〜80%の多孔質体からなることが好ましい。このように構成することによって、排ガスが目封止部を透過することができるため、目封止部によっても排ガスを浄化することができる。なお、気孔率が20%未満では、第一のセルに排気ガスが流れなくなり、実質半分程度のセルしか浄化に利用されず、有害成分排出量が大幅に増加することがあり、一方、気孔率が80%を超えると、隔壁を透過する排ガスの量(流量)が増大し排ガスの浄化性能は向上するものの、ハニカム構造体の機械強度が低下することにより、破損等が生じ易くなることがあり、触媒担体として使用することが困難になることがある。
【0037】
目封止部は、流出側開口部における端面(流出側端面)から、セルの流路方向における反対側の端面までの長さ、即ち、目封止部の配設深さが、0.3〜10mmであることが好ましく、0.5〜5mmであることが更に好ましい。例えば、上記配設深さが0.3mm未満であると、目封止部の機械的強度が低下し、また、目封止部と隔壁との接合力が十分に得られず、排気ガスの圧力や外部から振動等によって目封止部が破損し易くなることがある。一方、10mmを越えると、排気ガスが透過するための隔壁の有効な面積が減少してしまい、十分な浄化効率が得られないことがある。
【0038】
目封止部を構成する材料としては、ハニカム構造部を構成する隔壁の材料として挙げたものを好適に使用することができ、隔壁の材料と同じであることが更に好ましい。
【0039】
本実施の形態のハニカム構造体100は、図1〜図4に示すように、ハニカム構造部5の流出側端部の、隔壁1が交差する部分である交差部7の配置される位置に相当する位置8の中の少なくとも一部に、交差する2つの隔壁1,1が切り欠かれて交差部が取り除かれるように形成された切り欠き部9を有するものである。そして、本実施形態のハニカム構造体100は、切り欠き部9の、セル4の流路方向の長さをL1とし、セル4の流路方向に直交する断面における一方の切り欠かれた隔壁1の切り欠き長さをt1、他方の切り欠かれた隔壁1の切り欠き長さをt2とし、目封止部6のセル4の流路方向の長さをL2としたときの、式1:(L1−L2)×(t1+t2)/2で示される切り欠き大きさをW1とし、ハニカム構造部5の流出側の端面3におけるセル面積の合計をP2としたときに、切り欠き大きさW1の切り欠き部9全体の合計W2が、セル面積の合計P2の2〜50%であり、L1がL2より長いものである。ここで、セル面積の合計P2とは、ハニカム構造部の流出側の端面における全てのセルの面積の合計である。従って、目封止部を有するセルの、ハニカム構造部の流出側の端面における面積の合計と、目封止部を有さないセルの、ハニカム構造部の流出側の端面における面積の合計とを、足し合わせた値である。セル面積の合計P2は、ハニカム構造体の大きさによって異なるが、10〜50000mm程度が好ましい。
【0040】
本実施の形態のハニカム構造体100は、流出側端部に目封止部が形成されたセルの、流入側の開口部から流入した排ガス等の流体が、流出側端部付近で目封止部の存在により若干の加圧状態となるため、隔壁を透過して隣接するセル内に流入し、当該隣接するセルの流出側の開口部から外部に流出する。このとき、ハニカム構造部の流出側端部には切り欠き部が形成されているため、図3及び図4に示すように、目封止部が形成されたセルに流入した流体の一部は、切り欠き部を通じて外部に流出し、目封止部が形成されたセル内の圧力が上昇し過ぎることが防止される。このように、本実施形態のハニカム構造体によれば、目封止部の存在により目封止部を有するセルを流れる流体が隔壁を透過して隔壁内の触媒と効果的に接触することができ、更に、切り欠き部を通じて目封止部を有するセルを流れる流体の一部が外部に流出することにより圧力損失の増大を抑制することができるため、排気ガス等の流体に含まれる有害物質を効率的に浄化することができるとともに、圧力損失の増大を有効に抑制し、又は圧力損失を低減することができる。ここで、図3及び図4において、矢印Fは、目封止部が形成されたセルに流入した流体が、切り欠き部を通じて外部に流出する、流体の流れを示す。
【0041】
本実施の形態のハニカム構造体においては、切り欠き大きさW1の切り欠き部9全体の合計W2は、セル面積の合計P2の2〜50%であり、25〜100%であることが好ましく、30〜90%であることが更に好ましい。2%より小さいと、切り欠き部の大きさが小さく、圧力損失が増大するため好ましくなく、50%より大きいと、切り欠き部を通過して外部に流出する排ガスが多くなり、浄化効率が低下するため好ましくない。
【0042】
切り欠き部は、ハニカム構造部の流出側の端部において、交差する2つの隔壁を、その交差部を含む位置で削り取った(切り欠いた)状態になっている。切り欠き部9は、一部の交差部に設けられていても効果を有するが、図2,3に示すように、交差部に相当する部分が全て切り欠かれて無くなっているものであることが好ましい。そして、セルの流路方向に直交する断面において、切り欠かれた2つの隔壁の中の一方の隔壁の切り欠かれた部分の長さ(セルの流路方向に直交する断面において、隔壁の延びる方向における長さ)がt1であり、切り欠かれた2つの隔壁の中の他方の隔壁の切り欠かれた部分の長さがt2である。隔壁が斜め(セルの流路方向に直交する断面において、隔壁の延びる方向に対して斜め)に切り欠かれている場合は、平均長さをt2とする。切り欠き長さt1と、切り欠き長さt2とは、同じ長さであってもよいし、異なる長さであってもよい。切り欠き長さt1と、切り欠き長さt2は、隔壁厚さTの130〜170%であることが好ましい。130%より小さいと、圧力損失が低減され難くなることがあり、200%より大きいと、排ガスの浄化効率が低減することがある。また、切り欠き部は、その切り欠き部に隣接する、2つの「目封止部を有するセル」の中の少なくとも一方に繋がり(連通し)、排ガスが、切り欠き部と繋がった「目封止部を有するセル」から、切り欠き部に流出できるように形成されている。そして、切り欠き部は、図2に示すように、その切り欠き部に隣接する、2つの「目封止部を有するセル」の両方に繋がっていることが好ましい。
【0043】
また、切り欠き部の、セルの流通方向の長さL1から、目封止部の、セルの流路方向長さL2を差し引いた値(L1−L2)の下限値が1mmであり、上限値が30mm又はハニカム構造部のセルの延びる方向の全長の1/2のいずれか短い方の長さであることが好ましく、下限値が2.0mmであり、上限値が15mm又はハニカム構造部のセルの延びる方向の全長の1/4の何れか短い方の長さであることが更に好ましい。L1−L2が、1.0mmより短いと、圧力損失が低減され難くなることがある。L1−L2が、30mm又はハニカム構造部のセルの延びる方向の全長の1/2のいずれか短い方の長さより長いと、排ガスの浄化効率が低減することがある。
【0044】
本実施形態のハニカム構造体においては、ハニカム構造部の流出側の端面における一のセルの面積をP1としたときに、前記切り欠き大きさW1が、セル面積P1の2〜50%であることが好ましく、10〜30%であることが更に好ましい。2%より小さいと、切り欠き部の大きさが小さく、圧力損失が増大することがあり、50%より大きいと、切り欠き部を通過して外部に流出する排ガスが多くなり、浄化効率が低下することがある。
【0045】
切り欠き部の数は、ハニカム構造部の流出側の端面において、切り欠き部が形成されていないときの交差部全体の数の、30%以上であることが好ましく、80%以上であることが更に好ましく、100%であることが特に好ましい。50%より少ないと、切り欠き部が少なく、圧力損失が増大することがある。
【0046】
[2]ハニカム構造体の製造方法:
次に、本実施形態のハニカム構造体の製造方法について具体的に説明する。
【0047】
本実施形態のハニカム構造体の製造方法は、セラミック成形原料を成形して、流体の流路となる複数のセルを区画形成する隔壁を有する柱状のハニカム成形体を得る工程(1)と、得られたハニカム成形体の一方の端面(流出側の端面)側の所定のセルの開口部に目封止スラリーを充填して、当該所定のセルの開口部を目封止した目封止ハニカム成形体を得る工程(2)と、目封止ハニカム成形体の流出側端部の、交差部を含む交差部周辺を、所定の大きさで切り欠いて(削り取って)切り欠き部を形成して切り欠き部形成ハニカム成形体を得る工程(3)と、得られた切り欠き部形成ハニカム成形体を焼成してハニカム構造体を得る工程(4)と、を備えたハニカム構造体の製造方法である。
【0048】
以下、本実施形態のハニカム構造体の製造方法を、各工程毎に更に詳細に説明する。
【0049】
[2−1]工程(1):
工程(1)は、セラミック原料を含有するセラミック成形原料を成形して、流体の流路となる複数のセルを区画形成する隔壁を有する柱状のハニカム成形体を得る工程である。この工程(1)は、従来公知のハニカム構造体の製造方法に準じて行うことができる。
【0050】
[2−2]工程(2):
工程(2)は、に示すように、得られたハニカム成形体の一方の端面(流出側の端面)側の所定のセルの開口部に目封止スラリーを充填して、所定のセルの開口部に目封止部を形成した目封止ハニカム成形体を得る工程である。
【0051】
本実施形態のハニカム構造体の製造方法においては、目封止部を形成しない残余のセルの流出側の端部をマスクで覆い、所定のセルのみに目封止スラリーを充填する。
【0052】
なお、残余のセルにマスクを配設する方法については特に制限はないが、例えば、ハニカム成形体の一方の端面(流出側の端面)全体に粘着性フィルムを貼着し、その粘着性フィルムの、「マスクを施さない所定のセル」の開口部に対応する位置に孔を開ける方法等を挙げることができる。より具体的には、ハニカム成形体の一方の端面全体に粘着性フィルムを貼着した後に、当該粘着性フィルムの、目封止部を形成しようとするセル(所定のセル)に相当する部分のみを、レーザーにより孔開けする方法等を好適に用いることができる。粘着性フィルムとしては、ポリエステル、ポリエチレン、熱硬化性樹脂等の樹脂からなるフィルムの一方の表面に粘着剤が塗布されたもの等を好適に用いることができる。
【0053】
また、工程(1)において、その中心軸方向(セルの流路方向)に垂直な断面における隔壁が格子状に形成され、セルの流路方向に垂直な断面の形状が四角形になるようにハニカム成形体を形成する。そして、所定のセルと残余のセルとが隔壁を隔てて交互に、即ち、所定のセルと残余のセルとが千鳥状に配置されるように、上記粘着性フィルムに孔を開ける。
【0054】
目封止部を形成するための目封止スラリーとしては、例えば、上記のセラミック原料と添加剤を配合したスラリーを挙げることができる。添加剤として、水やバインダ、造孔材、界面活性剤等を混合して、粘度200〜400dPa・sに調整することが好ましい。
【0055】
また、このように目封止スラリーによって目封止部を形成した後、得られた目封止ハニカム成形体を更に乾燥してもよい。
【0056】
[2−3]工程(3):
工程(3)は、目封止ハニカム成形体の流出側端部の、交差部を含む交差部周辺を、所定の大きさで切り欠いて(削り取って)切り欠き部を形成して切り欠き部形成ハニカム成形体を得る工程である。切り欠き部の構造(セルの流路方向の長さL1、切り欠き長さt1,t2等)、形成数等については、上記本実施形態のハニカム構造体において説明した切り欠き部の構造、形成数等になるようにすることが好ましい。
【0057】
切り欠き部は、リューターを用いて、目封止ハニカム成形体の流出側の端面から隔壁を切り欠くようにして形成してもよいし、複数の針状部材が基板に保持された剣山状の治具を用いて、当該治具を隔壁の交差部に突き刺すようにして形成してもよいし、隔壁の交差部に高圧水をかけることにより隔壁の交差部を除去して(切り欠いて)形成してもよい。
【0058】
尚、工程(3)の切り欠き部の形成は、工程(4)の焼成を行った後に行ってもよい。
【0059】
[2−4]工程(4):
工程(4)は、得られた切り欠き部形成ハニカム成形体を焼成してハニカム構造体を得る工程である。このようにして、本実施形態のハニカム構造体を簡便且つ低コストに製造することができる。この工程(4)は、従来公知のハニカム構造体の製造方法に準じて行うことができる。
【0060】
[3]ハニカム触媒体:
次に、本発明のハニカム触媒体の一の実施形態について具体的に説明する。本実施形態のハニカム触媒体は、これまでに説明した本発明のハニカム構造体(図1〜図4に示すハニカム構造体100)と、このハニカム構造体の隔壁の細孔の内表面に担持されるとともに、隔壁表面に担持された触媒と、を備えたハニカム触媒体である。
【0061】
このようなハニカム触媒体は、自動車用、建設機械用、及び産業用定置エンジン、並びに燃焼機器等から排出される排気ガスを、流入側の端面から各セルに流入させ、流入した排気ガスを、隔壁を透過させて、一酸化炭素(CO)、炭化水素(HC)、窒素酸化物(NO)等の有害物質を触媒により浄化するものである。このようにして隔壁を透過した透過流体(浄化ガス)は、隣接するセルの流出側の端面の開口部から流出される。
【0062】
本実施形態のハニカム触媒体は、上記本発明のハニカム構造体に触媒を担持したものであるため、目封止部及び切り欠き部を有し、そのため、排気ガスに含まれる有害物質を効率的に浄化することができるとともに、圧力損失の増大を有効に抑制し、又は圧力損失を低減することができる。
【0063】
また、本実施形態のハニカム触媒体は、隔壁の気孔率及び平均細孔径が特定の範囲であるため、排気ガスの浄化効率を向上させたとしても、圧力損失の増加を有効に抑制、又は圧力損失を低減することができる。
【0064】
即ち、本実施形態のハニカム触媒体は、排気ガスの浄化効率を向上と、圧力損失の増加の抑制という、従来の技術では両立困難であった問題を同時に解決することができる。
【0065】
本実施形態のハニカム触媒体に用いられる触媒は、排気ガスに含まれる有害物質を浄化することができるものであれば、特に制限はないが、例えば、貴金属として白金(Pt)及びロジウム(Rh)を含有し、活性アルミナ、及び酸素吸蔵剤としてのセリアを更に含有するもの等が好ましい。このような触媒は、一酸化炭素(CO)、炭化水素(HC)、窒素酸化物(NO)等の有害物質の浄化に特に有効である。
【0066】
触媒の担持量については、触媒の種類、触媒担体として使用するハニカム構造体の大きさやセル構造、及び浄化する排気ガスの種類や処理量等によっても異なるが、例えば、ハニカム構造体の容積1L当りに、100〜250gの触媒が担持されていることが好ましい。このように構成することによって、排気ガスの浄化効率を向上させることができ、且つ、圧力損失の増加を有効に抑制することができる。なお、触媒の担持量は、ハニカム構造体の容積1L当りに、150〜200gであることが更に好ましく、160〜180gであることが特に好ましい。
【0067】
隔壁の細孔の内表面に担持された触媒は、隔壁表面に担持される触媒の量に対し同量以上であることが好ましい。隔壁の細孔の内表面に担持された触媒が、隔壁表面に担持された触媒の量に対し同量以上でないと、細孔内表面積を有効に使えず浄化率が悪化することがある。
【0068】
[3−1]ハニカム触媒体の製造方法:
次に、本実施形態のハニカム触媒体を製造する方法の一例について説明する。なお、本実施形態のハニカム触媒体を製造する方法については、以下の方法に限定されることはない。
【0069】
まず、本実施形態のハニカム触媒体の触媒担体を構成するハニカム構造体を作製する。本実施形態のハニカム触媒体においては、これまでに説明した本発明のハニカム構造体が使用されるため、上述した本実施形態のハニカム構造体の製造方法の一の実施形態に準じてハニカム構造体を製造することができる。
【0070】
次に、得られたハニカム構造体の隔壁表面と、隔壁の細孔の内表面とに触媒を担持する。触媒の担持方法については特に制限はなく、従来公知のハニカム触媒体の製造方法において用いられる方法に準じて触媒を担持することができる。例えば、ハニカム構造体に対して、触媒成分を含む触媒液をウォッシュコートした後、高温で熱処理して焼き付ける方法を挙げることができる。
【実施例】
【0071】
以下、本発明を実施例に基づいて具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。また、各物性の測定は、下記の方法により行った。
【0072】
[平均細孔径(μm)]:細孔径は、水銀ポロシメータ(水銀圧入法)によって測定されたもので、多孔質基材に圧入された水銀の累積容量が、多孔質基材の全細孔容積の50%となった際の圧力から算出された細孔径を意味するものとする。水銀ポロシメータとしては、Micromeritics社製、商品名:Auto Pore III 型式9405を用いた。
【0073】
[気孔率(%)]:細孔径同様に、水銀ポロシメータを用いた。
【0074】
[触媒担持量(g/L)]:触媒担体としてのハニカム構造体の容積1L当りの、触媒の担持量(g/L)を算出した。
【0075】
[白金族金属担持量(g/L)]:触媒担体としてのハニカム構造体の容積1L当りの、触媒に含まれる白金族金属の担持量(g/L)を算出した。白金族金属は、白金(Pt)とロジウム(Rh)との割合(Pt:Rh)が、5:1となるように構成されている。
【0076】
[切り欠き部の開口率]:切り欠き部の、セルの流路方向の長さL1をノギスを用いて測定し、セルの流路方向に直交する断面おける切り欠き長さt1及びt2を光学顕微鏡の方法で測定する。また、目封止部の、セルの流路方向の長さL2をノギスを用いて測定する。また、ハニカム構造部の流出側端面におけるセル面積の合計P2を画像処理の方法で測定する。そして、切り欠き大きさW1((L1−L2)×(t1+t2)/2)を算出する。切り欠き大きさW1を全ての切り欠き部について合計して、切り欠き大きさW1の切り欠き部全体の合計W2を算出する。そして、切り欠き部の開口率(100×W2/P2)を算出する。
【0077】
[圧力損失(kPa)]:ハニカム触媒体に、25℃、1atmの測定用ガス(空気)を一定流速で通気して、流入側の端面と流出側の端面との圧力をそれぞれ測定し、その圧力差を圧力損失(kPa)とした。上記圧力の測定は、測定用ガスの流量を、0.92Nm/分から9.91Nm/分まで、流量を約1Nm/分ずつ増加させて、合計10回の測定を行った。
【0078】
[有害成分排出量(g/mile)]:有害成分排出量の測定は、排気量2リッターのガソリンエンジン車両の排気系に、各実施例又は比較例のハニカム触媒体を配設し、このガソリンエンジン車両を用いてFTP(米国連邦規制の、LA−4)運転モードで運転し、走行距離1mile(マイル)あたりに排出される排出ガスに含まれる有害成分の排出量(g)を測定した。有害成分としては、排出ガス中の炭化水素(HC)と窒素酸化物(NO)との量(g)をそれぞれ測定した(HC排出量、NO排出量)。なお、有害成分排出量の測定は、白金族金属担持量が1g/Lの場合と、白金族金属担持量が2g/Lの場合との場合とで測定を行った。
【0079】
(実施例1)
タルク、カオリン、仮焼カオリン、アルミナ、水酸化アルミニウム、及びシリカのうちから複数を組み合わせて、その化学組成が、SiO42〜56質量%、Al0〜45質量%、及びMgO12〜16質量%となるように所定の割合で調合されたコージェライト化原料100質量部に対して、造孔材としてグラファイトを10〜20質量部添加した。更に、メチルセルロース、及び界面活性剤をそれぞれ適当量添加した後、調製した杯土を真空脱気した後、押出成形することにより円筒形のハニカム成形体を得た。このハニカム成形体の隔壁厚さは、200μm(8mil)であり、セル密度は62セル/cm(400cpsi)である。なお、「1(mil)」は1000分の1インチであり、「cpsi」は「セル/平方インチ」のことである。
【0080】
次に、得られたハニカム成形体の、流出側の端面に相当する一方の端面側の所定のセルの開口部に、その流出側の端面が市松模様状(即ち、千鳥状)を呈するように、目封止部を形成し、目封止ハニカム成形体を得た。目封止部を形成する目封止スラリーとしては、上記コージェライト化原料と添加物を配合したスラリーを用いた。目封止部の、セルの流路方向の長さL2を2mmとした。目封止部を形成する目封止スラリーとしては、上記ハニカム成形体成形用の坏土に用いられたコージェライト化原料と同様の割合で調合されたコージェライト化原料とバインダーとを配合し、増粘剤にて粘度を180〜350dPa・sに調整したものを用いた。
【0081】
次に、得られた目封止ハニカム成形体の目封止部が形成された側の端部(流出側の端部)の隔壁の交差部を、図5に示すような突起11を備えた治具12を用いて、以下の大きさで切り欠き、切り欠き部を形成して、切り欠き部形成ハニカム成形体を得た。治具12は、基板13に複数の針状部材11が配設され、針状部材11の先端でハニカム構造体100の隔壁1(交差部)を切り欠くものである。図5は、本発明のハニカム構造体を製造する工程のなかの、切り欠き部を形成する工程を示す模式図である。切り欠き部は、ハニカム成形体の流出側の端部の全ての交差部に相当する部分に形成した。切り欠き部の大きさとしては、セルの流路方向の長さL1を10mmとし、セルの流路方向に直交する断面おける切り欠き長さt1及びt2をいずれも1mmとし、ハニカム成形体の流出側端面におけるセル面積の合計P2を50000mmとした。
【0082】
次に、得られた切り欠き部形成ハニカム成形体を焼成してハニカム構造体を製造した。表1に、ハニカム構造体の、隔壁厚さ(μm)、セル密度(セル/cm)、平均細孔径(μm)、及び気孔率(%)を示す。
【0083】
次に、得られたハニカム構造体に、白金(Pt)とロジウム(Rh)との割合(Pt:Rh)が、5:1となるように調製された白金族金属を含む触媒を、触媒担持量が160g/Lとなるように担持し、ハニカム触媒体を製造した(実施例1)。なお、担持した触媒の助触媒としては、セリウム(Ce)の酸化物(CeO)とジルコニウム(Zr)の酸化物(ZrO)を用いた。また、白金族金属担持量は2g/Lである。触媒担持量(WC量)と白金族金属担持量を表1に示す。
【0084】
実施例1のハニカム触媒体について、上記、切り欠き部の開口率を測定し、圧力損失及び有害成分排出量の測定を行った。切り欠き部の開口率の測定結果を表1に示し、圧力損失の測定結果を表2に示し、有害成分排出量の測定結果を表3に示す。
【0085】
【表1】

【0086】
【表2】

【0087】
【表3】

【0088】
(実施例2〜7)
平均細孔径、気孔率、及び切り欠き部の開口率を表1に示すように変化させた以外は、実施例1と同様に構成されたハニカム構造体を製造し、得られたハニカム構造体に、実施例1と同様の方法によって触媒を担持し、ハニカム触媒体を製造した(実施例2〜7)。実施例2〜5のそれぞれのハニカム触媒体について、圧力損失の測定、及び有害成分排出量の測定を行った。結果を表2、3に示す。
【0089】
(比較例1)
ハニカム構造体の、隔壁厚さ(μm)、セル密度(セル/cm)、平均細孔径(μm)、気孔率(%)が表1に示すような値であり、切り欠き部を有さないハニカム構造体を製造し、得られたハニカム構造体に、表1に示すように、触媒担持量が200g/Lとなるように触媒を担持し、ハニカム触媒体を製造した(比較例1)。尚、白金族金属担持量は2.5g/Lであった。比較例1のハニカム触媒体について、有害成分排出量の測定を行った。結果を表2及び表3に示す。
【0090】
表1、3より、切り欠き部が形成された実施例1〜5のハニカム触媒体は、切り欠き部が形成されていない比較例1のハニカム触媒体より、HC排出量もNO排出量も少ないことがわかる。また、表1〜3より、切り欠き部の開口率5〜50%において、良好な圧力損失、HC排出量及びNO排出量を示していることがわかる。また、表1、2より、切り欠き部の開口率が大きいほど圧力損失が低減されることがわかる(実施例1〜3)。また、表1〜3より、平均細孔径15〜70μmにおいて、良好な圧力損失、HC排出量及びNO排出量を示していることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0091】
本発明のハニカム構造体は、触媒を担持することにより、自動車用、建設機械用、及び産業用定置エンジン、並びに燃焼機器等から排出される排気ガスに含まれる一酸化炭素(CO)、炭化水素(HC)、窒素酸化物(NO)を効率的に浄化することが可能であるとともに、圧力損失の増加を有効に抑制することができ、ハニカム触媒体の触媒担体として好適に利用することができる。
【0092】
また、本実施例のハニカム触媒体は、自動車用、建設機械用、及び産業用定置エンジン、並びに燃焼機器等から排出される排気ガスに含まれる一酸化炭素(CO)、炭化水素(HC)、窒素酸化物(NO)等の有害成分を浄化するために好適に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0093】
【図1】本発明のハニカム構造体の一の実施形態を模式的に示す斜視図である。
【図2】本発明のハニカム構造体の一の実施形態の、流出側端面の一部を模式的に示す平面図である。
【図3】図2のA−A’断面を示す模式図である。
【図4】図2のB−B’断面を示す模式図である。
【図5】本発明のハニカム構造体を製造する工程のなかの、切り欠き部を形成する工程を示す模式図である。
【符号の説明】
【0094】
1:隔壁、2:流入側の端面、3:流出側の端面、4:セル、5:ハニカム構造部、6:目封止部、7:交差部、8:交差部の配置される位置に相当する位置、9:切り欠き部、10:外周壁、11:針状部材、12:治具、100:ハニカム構造体、F:矢印。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
多孔質の隔壁を有し、前記隔壁によって流入側の端面から流出側の端面まで貫通する、流体の流路となる複数の四角形セルが区画形成された柱状のハニカム構造部を備え、
前記隔壁は、気孔率が50〜80%であり、且つ平均細孔径が13〜70μmであり、
前記複数のセルは、前記流入側の端面から前記流出側の端面にかけて前記セルの流路方向に垂直な断面の面積が一定の大きさに形成された第一のセルと、前記流出側の端面側の端部の開口部内に、その前記開口部の一部を塞ぐように目封止部材が配設された第二のセルとからなり、
前記ハニカム構造部の流出側端部の、前記隔壁が交差する部分である交差部の配置される位置に相当する位置の中の少なくとも一部に、交差部が切り欠かれて取り除かれるように形成された切り欠き部を有し、
前記切り欠き部の、セルの流路方向の長さをL1とし、セルの流路方向に直交する断面における一方の切り欠かれた隔壁の切り欠き長さをt1、他方の切り欠かれた隔壁の切り欠き長さをt2とし、前記目封止部のセルの流路方向の長さをL2としたときの、式1:(L1−L2)×(t1+t2)/2で示される切り欠き大きさをW1とし、
ハニカム構造部の流出側の端面におけるセル面積の合計をP2としたときに、
切り欠き大きさW1の切り欠き部全体の合計W2が、セル面積の合計P2の2〜50%であり、L1がL2より長いハニカム構造体。
【請求項2】
前記ハニカム構造部の流出側の端面における一のセルの面積をP1としたときに、前記切り欠き大きさW1が、セル面積P1の2〜50%である請求項1に記載のハニカム構造体。
【請求項3】
前記切り欠き部の、セルの流路方向の長さL1から、前記目封止部のセルの流路方向の長さL2を差し引いた値の下限値が1mmであり、上限値が30mm又はハニカム構造部のセルの延びる方向の全長の1/2のいずれか短い方の長さである請求項1又は2に記載のハニカム構造体。
【請求項4】
前記隔壁の切り欠き長さt1及びt2が、隔壁厚さTの100〜200%である請求項1〜3のいずれかに記載のハニカム構造体。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載のハニカム構造体と、前記ハニカム構造体の前記隔壁の細孔の内表面に担持されるとともに、隔壁表面に担持された触媒と、を備え、
触媒担持量が100〜250g/Lであるハニカム触媒体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−104954(P2010−104954A)
【公開日】平成22年5月13日(2010.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−281695(P2008−281695)
【出願日】平成20年10月31日(2008.10.31)
【出願人】(000004064)日本碍子株式会社 (2,325)
【Fターム(参考)】