説明

ハニカム構造体

【課題】 圧損の上昇が抑えられたフィルタを得られるハニカム構造体を提供すること。
【解決手段】 本発明のハニカム構造体1は、多孔質のセラミックスよりなり軸方向に貫通する多数のセルを区画する隔壁部と、多数のセルのうち所定のセルの一方の端部を封止する封止材よりなる一端封止部と、残余のセルの他方の端部を封止する封止材よりなる他端封止部と、を有するハニカム構造体1であって、一端封止部30がもうけられたセル20が、他端封止部31がもうけられたセル21よりも多く形成され、一方の端部が排気ガスの流れ方向での下流側に位置することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハニカム構造体に関し、詳しくは、PM堆積時の圧力損失の上昇を抑え、かつ再生時のPM燃焼率に優れたフィルタを提供することができるハニカム構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
内燃機関、ボイラー、化学反応機器、燃料電池用改質器等の触媒作用を利用する触媒用担体、排気ガス中のスス等の粒子状物質(特にディーゼルエンジンからの排気ガス中の粒子状物質(PM))の捕集フィルタ(以下、DPFという)等には、セラミックス製のハニカム構造体が用いられている。
【0003】
セラミックス製のハニカム構造体は、一般に、多孔質のセラミックスよりなり、流体の流路となる複数のセルを隔壁で区画する隔壁部2と、端面が市松模様状を呈するように隣接するセルが互いに反対側となる端部を封止するセラミックスよりなる封止材よりなる封止部3と、を有している。このハニカム構造体の端面を図6に示した。
【0004】
セラミックス製のハニカム構造体よりなるDPFは、セルを区画する隔壁を排気ガスが通過するウォールフロー型のフィルタとして用いられている。ウォールフロー型のフィルタは、セル壁に形成された連続した細孔を排気ガスが通過するときに、細孔径より大きな粒子のPMをこの隔壁部で捕集する。
【0005】
DPFでは、PMを捕集すると、排気ガスが通過する細孔がPMにより閉塞あるいは開口が小さくなる。すなわち、排気ガスが通過しにくくなる。この結果、圧損が上昇する。圧損の上昇は、エンジンに負荷を与えることとなり、エンジンの燃焼効率の悪化を招く。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上記実情に鑑みてなされたものであり、圧損の上昇が抑えられたフィルタを得られるハニカム構造体を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために本発明者らはセラミックス製のハニカム構造体について検討を重ねた結果本発明をなすに至った。
【0008】
すなわち、本発明のハニカム構造体は、多孔質のセラミックスよりなり軸方向に貫通する多数のセルを区画する隔壁部と、多数のセルのうち所定のセルの一方の端部を封止する封止材よりなる一端封止部と、残余のセルの他方の端部を封止する封止材よりなる他端封止部と、を有するハニカム構造体であって、一端封止部がもうけられたセルが、他端封止部がもうけられたセルよりも多く形成され、一方の端部が排気ガスの流れ方向での下流側に位置することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明のハニカム構造体は、一端封止部が形成された端部が排気ガスの下流側に位置する状態で、一端封止部が他端封止部よりも多く形成されている。つまり、一端封止部の形成されたセルの開口した他方の端部からセル内に排気ガスが流れ込む構成となっている。そして、一端封止部の形成されたセルが多く形成されており、セル内に流れ込む排気ガスの流量が多くなる。つまり、本発明のハニカム構造体では、排気ガスの流れが阻害されなくなっている。この結果、本発明のハニカム構造体では、圧損の上昇が抑えられる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明のハニカム構造体は、多孔質のセラミックスよりなり軸方向に貫通する多数のセルを区画する隔壁部と、多数のセルのうち所定のセルの一方の端部を封止する封止材よりなる一端封止部と、残余のセルの他方の端部を封止する封止材よりなる他端封止部と、を有するハニカム構造体である。すなわち、本発明のハニカム構造体は、多数のセルのいずれかの端部が封止材で封止されたウォールフロー型のハニカム構造体である。このようなウォールフロー型のハニカム構造体は、隔壁部に形成された細孔を排気ガスが通過するフィルタ触媒に利用される。
【0011】
そして、本発明のハニカム構造体は、一端封止部がもうけられたセルが、他端封止部がもうけられたセルよりも多く形成され、一方の端部が排気ガスの流れ方向での下流側に位置する。つまり、排気ガスの下流側の端部が封止されたセルが多くなるように形成されている。排気ガスの下流側の端部が封止されたセルは、排気ガスの上流側の端部が開口している。この開口した部分からセルの内部に排気ガスが流入する。本発明においては、一端封止部の数が多くなるように形成されているため、排気ガスが流入できるセルが多くなっている。つまり、より多量の排気ガスがセル内に流れ込むこととなる。このことにより、本発明のハニカム構造体を通過する排気ガスの流量が増加する。この結果、本発明のハニカム構造体では、圧損の上昇が抑えられる。
【0012】
本発明のハニカム構造体において、一端封止部が形成されたセル(および他端封止部が形成されたセル)の(ハニカム構造体の軸方向に垂直な断面での)配置は、特に限定されるものではない。一端封止部が形成されたセルが、ハニカム構造体の断面に均一に配置してもよい。また、ハニカム構造体をフィルタ触媒などに使用したときにガス流量を制御することが要求される部位に、一端封止部が形成されたセルを偏在させてもよい。
【0013】
ハニカム構造体は、軸心部から径方向外方にかけて、一端封止部がもうけられたセルの割合が減少した状態で一端封止部がもうけられたセルが配置されていることが好ましい。一端封止部のもうけられたセルの割合は、ハニカム構造体の断面を複数部に分割し、各分割部での所定のセルの割合から求めることができる。一般的に、ハニカム構造体は、内部をガスが流れる管路中に組み付けられて使用される。そして、管路中を流れるガスの流速は、管の軸心部近傍が最も速く、径方向外方にかけて徐々に遅くなっている。つまり、管の軸心部は、外周部よりも多量のガスが流れる。そして、この管路中に組み付けられるフィルタ触媒では、軸心部が外周部よりも多量のPMを捕集することとなる。そして、軸心部から径方向外方にかけて一端封止部がもうけられたセルの割合が減少したハニカム構造体を用いると、軸心部で捕集するPM量と外周部で捕集するPM量との差が小さくなる。つまり、再生時にフィルタ触媒が部分的に過熱しなくなる。ここで、軸心部から径方向外方にかけて一端封止部がもうけられたセルの割合が減少したときに、一端封止部のもうけられたセルが、他端封止部のもうけられたセルの数以上であることが好ましい。
【0014】
一端封止部がもうけられたセル数と他端封止部のもうけられたセル数の差は、ハニカム構造体のセル数の50%以下であることが好ましい。セル数の差が50%を超えると、一端封止部がもうけられたセルの数が多くなりすぎ、ハニカム構造体を通過するガスの流量が大きく減少するとともに圧損が大きくなる。より好ましいセル数の差は、3〜50%である。
【0015】
本発明のハニカム構造体において、セルの形状(断面形状)は、特に限定されるものではなく、従来公知の断面形状とすることができる。従来公知のセル形状のうち、正方形状であることがより好ましい。
【0016】
本発明のハニカム構造体を形成する多孔質セラミックスは、その材質が特に限定されるものではなく、従来公知の多孔質セラミックスを用いることができる。多孔質セラミックスは、チタン酸アルミニウム、炭化珪素、窒化珪素、コーディエライトより選ばれる一種を主成分とすることが好ましい。これらのセラミックスのうち、チタン酸アルミニウムを主成分とするセラミックスよりなることがより好ましい。チタン酸アルミニウムよりなるセラミックスは、その内部にマイクロクラックをもつ。そして、このマイクロクラックをもつことで、ハニカム構造体が熱膨張を生じても、このマイクロクラックの開口が開閉することで熱膨張により生じる応力を緩和し、形状変化や損傷が生じなくなる。
【0017】
本発明のハニカム構造体は、従来公知のハニカム構造体のように、複数部の分体を接合材で接合した構成としてもよい。すなわち、ハニカム構造体は、複数のセラミックス分体が接着剤層を介して接合されてなることが好ましい。このような構成は、分体ごとにその特性を変化させることができ、ハニカム構造体全体に所望の性能を付与できる。ハニカム構造体が複数部の分体よりなるときに、それぞれの分体の材質や気孔率などの特性は同じであっても異なっていてもいずれでもよい。
【0018】
セラミックス分体を接合する接合材についても、従来公知の接合材を用いることができる。この接合材としては、例えば、SiC系接合材を用いることができる。セラミックス分体を接合材で接合したときにセラミックス分体の間に形成される接合材層は、0.5〜5.0mmの厚さで形成することが好ましい。
【0019】
ここで、本発明のハニカム構造体が複数部の分体が接合されてなるときに、ハニカム構造体の隔壁の厚さ方向における接合材層の厚さが非常に小さい場合には、接合材層の影響を無視してもよい。
【0020】
さらに、ハニカム構造体が複数のセラミックス分体が接着剤層を介して接合されてなるときに、それぞれのセラミックス分体に形成されたセルの大きさ(セル形状)は、同じであっても、異なっていても、いずれでもよい。それぞれのセラミックス分体のセルの大きさ(セル形状)は、同じであることが好ましい。
【0021】
本発明のハニカム構造体は、周方向の外周面上に、0.5mm以上の厚さの外周材層を有することが好ましい。外周材層をもつことで、ハニカム構造体をDPFなどに使用したときに生じる形状変化が抑えられる。具体的には、ハニカム構造体をDPFなどの用途に使用したときに、ハニカム構造体は高熱にさらされる。そして、ハニカム構造体は、熱膨張を生じる。外周材層をもつことでこの熱膨張を抑えることができる。外周材層を構成する材質は、従来公知の材質を用いることができる。たとえば、SiC、シリカ系化合物、チタン酸アルミニウムなどのアルミナ系化合物などを用いることができる。
【0022】
また、外周材層は、ハニカム構造体の形状により異なるため、その厚さが一概に決定できるものではないが、たとえば、0.5mm以上の厚さで形成することが好ましい。さらに好ましくは、0.5〜5.0mmである。
【0023】
本発明のハニカム構造体は、DPFに用いることが好ましい。本発明のハニカム構造体は、セルを区画する隔壁を排気ガス(ガス)が通過するウォールフロー型のフィルタ触媒として用いることができ、このようなフィルタ触媒のうち特に、DPFとして用いることが好ましい。
【0024】
本発明のハニカム構造体をDPFとして用いるときに、少なくとも隔壁部の細孔表面に、アルミナ等よりなる多孔質酸化物、Pt,Pd,Rh等の触媒金属の少なくともひとつを担持したことが好ましい。
【0025】
本発明のハニカム構造体は、その外周形状が特に限定されるものではなく、従来公知の形状とすることができる。好ましくは、断面が一定の柱状であり、たとえば、断面が真円や楕円の略円柱状、断面が方形や多角形の角柱状とすることができ、好ましくは円柱形状である。
【実施例】
【0026】
以下、実施例を用いて本発明を説明する。
【0027】
本発明の実施例として、DPF用ハニカム構造体を製造した。
【0028】
(実施例1)
本実施例のハニカム構造体1は、多孔質のセラミックスよりなるハニカム体2と、ハニカム体2のセルを封止する封止部3と、ハニカム体2の外周に配置された外周材層4と、からなる、円柱状の外形をなしたハニカム構造体である。本実施例のハニカム構造体1を、図1〜2に示した。図1には本実施例のハニカム構造体1の一方の端部側の端面を、図2には軸方向での断面を示した。なお、一方の端部は、DPFとして用いたときに、排気ガスの流れ方向の下流側に配置される端部である。
【0029】
ハニカム体2は、多孔質のSiCセラミックスよりなり、ハニカム体2の軸方向に貫通してのびる多数のセル20,21がセル壁22に区画されるとともに略円柱状の外周形状を有している。多数のセル20,21は、それぞれ正方形状の断面形状をなすようにセル壁22により区画されている。ハニカム体2を構成する多孔質セラミックスは、その細孔分布が均一となっている。
【0030】
ハニカム体2には、多数のセル20,21の軸方向の端部のいずれかに、各セル20,21を封止する封止材30,31よりなる封止部3が形成されている。封止材30は、ハニカム構造体1の一方の端部側でセル20を封止し、封止材31は他方の端部側でセル21を封止する。封止材30,31は、セル20,21内での長さが一定となるようにもうけられている。
【0031】
封止材30,31は、端面が略市松模様をなすようにセル20,21を封止している。封止材30は、断面正方形状のセルの対角線方向に並んだセル21のうち、二つごとのセルに封止材30が形成されている。封止材30,31は、ハニカム構造体1の端面において、均一に分散した状態で形成されている。
【0032】
本実施例のハニカム構造体1において、封止材30が封止したセル20の数が2564セルであり、封止材31が封止したセル21の数が2084セルであった。つまり、セル20とセル21のセル数の差は480セルであり、全セル数を100%としたときに、10.3%に相当する。
【0033】
外周材層4は、ハニカム体2の外周面に均一な厚さで形成されたSiCセラミックス層である。
【0034】
(製造方法)
本実施例のハニカム構造体の製造方法を以下に示す。
【0035】
まず、平均粒径12μmのSiC粉末75重量部、平均粒径10μmのSi粉末20重量部、平均粒径15μmのC粉末5重量部を秤量し、有機バインダーとしてメチルセルロースを加えたものに水を加えて適度の粘性にしたものに界面活性剤を加えて混合、混練した。得られた粘土を所定の形状の開口部を備えた型を用いて押出成形法で成形し、乾燥した。この成形体は、押出方向である軸方向に垂直な断面の形状が、一定となっている。
【0036】
乾燥後、成形体の製造に用いた粘土で、成形体のそれぞれの端部で所定のセルを目封止をした後に、2300℃で焼成して焼成体を得た。ここで、セルの封止は、セルの一方または他方の端部が封止され、成形体の端面でセグメント部において封止されたセルと封止されていないセルが略市松模様をなす状態である。なお、一方の端部でセルを目封止する封止材30の数が他方の端部でセルを目封止する封止材31よりも多くなるようにセルが封止される。
【0037】
その後、円筒研削機を用いて全体の形状を円筒形状に成形した。
【0038】
その後、平均粒径20μmのSiC粉末50重量部、平均粒径1μmの球状シリカ粉末19重量部、バインダーとして1.26wt%のCMC溶液25重量部、及び分散剤としてアニオン系分散剤1重量部、結合剤としてコロイダルシリ力5重量部、を十分に混合して外周材スラリーを調製する。研削後の焼成体に調製された外周材スラリーを塗布した後に850℃で熱処理して本実施例のハニカム構造体1が製造された。
【0039】
(実施例2)
本実施例のハニカム構造体は、封止材30で封止されたセル20の配置が異なる以外は実施例1と同様なハニカム構造体1である。本実施例のハニカム構造体1の一方の端部の端面を、図3に示した。
【0040】
封止材30は、ハニカム構造体の端面において、中心部(軸心部)から径方向外方に向かって、封止材30が封止したセルの数(存在割合)が減少するように形成されている。より具体的には、中心部近傍は、ほとんどが封止材30が封止したセル20が位置している。そして、外周部近傍では、封止材30が封止したセル20と封止材31が封止したセル21とが同数となっている。また、中心部と外周部の間の径方向の中間部では、封止材30が封止したセル20が封止材31が封止したセル21よりも多くなるように形成されている。
【0041】
本実施例のハニカム構造体1において、封止材30が封止したセル20の数が2260セルであり、封止材31が封止したセル21の数が2436セルであった。つまり、セル20とセル21のセル数の差は176セルであり、全セル数を100%としたときに、3.7%に相当する。
【0042】
(実施例3)
本実施例は、ハニカム体2が複数のハニカム分体5を接合材で接合してなること以外は、実施例1のハニカム構造体1と同様なハニカム構造体1である。本実施例のハニカム構造体1の端面を図4に示した。
【0043】
本実施例のハニカム構造体1は、まず、断面の外形が正方形状のハニカム分体5を実施例1のハニカム体の製造方法で製造する。このハニカム分体5は、実施例1の時と同様に、封止材30,31がもうけられたセル20,21が形成されている。つまり、封止材30,31は、端面が略市松模様をなすようにセル20,21を封止している。さらに、封止材30は、断面正方形状のセルの対角線方向に並んだセル21のうち、二つごとのセルに封止材30が形成されている。
【0044】
つづいて、実施例1において外周材スラリーとして用いた接合材スラリーをハニカム分体5の外周に塗布し、別のハニカム分体5をこの面にすりあわせて接合した。この接合を繰り返して、断面が正方形をなすように16個のハニカム分体5を接合し、80℃で乾燥した。
【0045】
そして、この接合体を電動ノコギリを用いて切削して外周形状を成形した。電動ノコギリによる切削は、両端部に封止材が形成されたセルが外周面を形成する略円柱状をなすようになされた。この切削時に、封止材のセルからの剥離がみられなかった。
【0046】
そして、実施例1の時と同様なスラリーを調製し、成形体の外周面に0.5mmの厚さで塗布し、80℃で乾燥した後に850℃で加熱して接合材およびスラリーを固化させた。これにより、外周面上に外周材層4が形成できた。
【0047】
以上により、本実施例のハニカム構造体1を製造することができた。
【0048】
本実施例のハニカム構造体1は、実施例1と同様に、封止材30,31が、ハニカム構造体1の端面において、部分的な偏りは存在するが、端面の全面では均一に分散した状態で形成されている。
【0049】
(実施例4)
本実施例は、ハニカム体が複数のハニカム分体を接合材で接合してなること以外は、実施例2のハニカム構造体と同様なハニカム構造体である。
【0050】
本実施例のハニカム構造体は、まず、断面の外形が正方形状のハニカム分体5Aを実施例1の方法で製造する。このハニカム分体5Aは、実施例1のハニカム体と同様に封止材30,31がもうけられたセル20,21が形成されている。
【0051】
また、同様にして、断面の外形が正方形状のハニカム分体であって、封止材30,31が同数でもうけられたセル20,21が形成されたハニカム分体5Bを実施例1のハニカム体を製造するときに用いた方法と同様の方法で製造する。このハニカム分体5Bは、端面が市松模様をなすように、封止材30,31が配置されている。
【0052】
つづいて、実施例1において外周材スラリーとして用いた接合材スラリーをハニカム分体5Aの外周に塗布し、別のハニカム分体5Aをこの面にすりあわせて接合した。この接合を繰り返して、4個のハニカム分体5Aが外形が正方形をなす状態に接合された接合体を製造した。つづいて、接合体の外周面に接合材スラリーを塗布し、別のハニカム分体5Bをこの面にすりあわせて接合した。この接合を繰り返して、断面が正方形をなすように16個のハニカム分体を接合し、80℃で乾燥した。このとき、セル20,21の数が異なるハニカム分体5Aを4個を内周部に、その外周をセル20,21の数が同じとなっているハニカム分体5Bで覆うように12個を配置した。
【0053】
そして、この接合体を電動ノコギリを用いて切削して外周形状を成形した。電動ノコギリによる切削は、両端部に封止材が形成されたセルが外周面を形成する略円柱状をなすようになされた。この切削時に、封止材のセルからの剥離がみられなかった。
【0054】
そして、実施例1の時と同様なスラリーを調製し、成形体の外周面に0.5mmの厚さで塗布し、80℃で乾燥した後に850℃で加熱して接合材およびスラリーを固化させた。これにより、外周面上に外周材層4が形成できた。
【0055】
以上により、本実施例のハニカム構造体1を製造することができた。本実施例のハニカム構造体をその端面で図5に示した。なお、本実施例を示した図5においては、封止材30で封止されたセル20の配置がわかるように、セル21の対角線方向で一つおきのセルがセル20となっている。
【0056】
本実施例のハニカム構造体1は、複数のハニカム分体5が接合材層6で接合された構成を有している。また、本実施例のハニカム構造体1は、軸心部側には、封止材30が形成されたセル20が多く配置されたハニカム分体5Aが配置され、その外周部には封止材30と封止材31とが同数で形成されている。すなわち、軸心部から径方向外方に進むにつれて封止材30が封止したセルの割合が減少している。
【0057】
(比較例)
本比較例は、全てのハニカム分体が、封止材30,31が同数でもうけられたセル20,21が形成された分体であること以外は、実施例3と同様なハニカム構造体である。
【0058】
本比較例は、セル20とセル21とが同数で形成されている。本比較例のハニカム構造体1の端面を図6に示した。
【0059】
(評価)
実施例3〜4および比較例のハニカム構造体の評価として、ハニカム構造体にスス(PM)を堆積させた状態で再生試験を行い、PMの燃焼率と燃焼時のハニカム構造体の最高温度を測定した。また、PMの堆積時の圧損も測定した。具体的な試験方法を以下に示す。
【0060】
まず、試験されるハニカム構造体の重量を測定し、その後、ハニカム構造体にPMを堆積させた。PMの堆積は、ディーゼルエンジンの排気系にハニカム構造体を組み付けて行われた。ハニカム構造体の一方の端部側が排気ガスの流れ方向の下流側に位置する状態で組み付けられた。PMの堆積時には、排気系のハニカム構造体1の前後での圧力を測定し、圧損とした。PMの堆積量と圧損の測定結果を図7に示した。なお、PMの堆積量は、PMが堆積した状態のハニカム構造体の重量を測定し、PMが堆積していないハニカム構造体の重量との差から求めた。
【0061】
そして、ハニカム構造体1を電気炉にセットし、ハニカム構造体のセル内に700℃に加熱した窒素ガスを流通させて、ハニカム構造体を昇温した。このとき、炉内は、PMに対して不活性な雰囲気となった。
【0062】
ハニカム構造体の温度が安定したら、窒素ガスから空気に切り替えた。空気は0.4m/sで流された。ハニカム構造体が十分に加熱された状態で、ハニカム構造体に流されるガスを窒素ガスから空気に切り替えたことにより、空気中の酸素とPMとが反応してハニカム構造体に堆積したPMが燃焼し、ハニカム構造体1を再生した。
【0063】
ハニカム構造体の再生の終了後、重量を測定し、試験の前後の重量からPMの燃焼率を算出し、結果を表1に示した。
【0064】
図7に示したように、実施例3及び4のハニカム構造体は、比較例のハニカム構造体よりも圧損が小さくなっている。すなわち、排気ガスの流れ方向の下流側が閉塞したセル20の割合が多くなることで、DPFとして用いたときの圧損を低下することができる。
【0065】
この圧損の低下は、各実施例のハニカム構造体1では、排気ガスの上流側に位置する他方の端部の端面において、セル21の開口部の数が多く形成されたことによる。つまり、セル21の開口部の数が多く形成されたことで、セル21内に流れ込む排気ガスの流量が多くなる。つまり、各実施例のハニカム構造体1では、より多くの排気ガスが流れ込むことで、排気ガスの流れが阻害されなくなっている。この結果、圧損の上昇が抑えられる。
【0066】
【表1】

【0067】
また、表1に示したように、実施例3及び4のハニカム構造体は、比較例のハニカム構造体と同等以上のPMの燃焼率を有している。すなわち、排気ガスの流れ方向の下流側が閉塞したセル20の割合が多くなっても、従来の(比較例の)ハニカム構造体と同等以上のPMの燃焼率を得られることができる。
【0068】
上記したように、各実施例のハニカム構造体1は、従来の(比較例の)ハニカム構造体と同等以上のPMの燃焼率を保持しながら、圧損の上昇が抑えられたものとなっている。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】実施例1のハニカム構造体の端面を示した図である。
【図2】実施例1のハニカム構造体の断面を示した図である。
【図3】実施例2のハニカム構造体の断面を示した図である。
【図4】実施例3のハニカム構造体の端面を示した図である。
【図5】実施例4のハニカム構造体の断面を示した図である。
【図6】比較例のハニカム構造体の端面を示した図である。
【図7】実施例および比較例のハニカム構造体の圧損の測定結果である。
【図8】従来のハニカム構造体の端面を示した図である。
【符号の説明】
【0070】
1:ハニカム構造体
2:ハニカム体
3:封止部
4:外周材層
5:ハニカム分体
6:接合材層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
多孔質のセラミックスよりなり軸方向に貫通する多数のセルを区画する隔壁部と、
多数の該セルのうち所定のセルの一方の端部を封止する封止材よりなる一端封止部と、
残余の該セルの他方の端部を封止する封止材よりなる他端封止部と、
を有するハニカム構造体であって、
該一端封止部がもうけられたセルが、該他端封止部がもうけられたセルよりも多く形成され、該一方の端部が排気ガスの流れ方向での下流側に位置することを特徴とするハニカム構造体。
【請求項2】
前記ハニカム構造体は、軸心部から径方向外方にかけて、前記一端封止部がもうけられたセルの割合が減少した状態で該一端封止部がもうけられたセルが配置されている請求項1記載のハニカム構造体。
【請求項3】
前記一端封止部がもうけられたセル数と前記他端封止部のもうけられたセル数の差は、前記ハニカム構造体の前記セル数の50%以下である請求項1〜2のいずれかに記載のハニカム構造体。
【請求項4】
前記セラミックスは、チタン酸アルミニウム、炭化珪素、窒化珪素、コーディエライト、ムライトより選ばれる一種を主成分とする請求項1〜3のいずれかに記載のハニカム構造体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−236028(P2009−236028A)
【公開日】平成21年10月15日(2009.10.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−83868(P2008−83868)
【出願日】平成20年3月27日(2008.3.27)
【出願人】(000220767)東京窯業株式会社 (211)
【Fターム(参考)】