説明

ハンガーレール清掃装置

【課題】ハンガーレールの清掃作業及び給油作業を行なうことを可能とするハンガーレールの清掃装置を提供することである。
【解決手段】乗降用扉6の上部に設けられるハンガーローラ4を介して乗降用扉6をスライド可能に吊るすハンガーレール3を清掃するためのハンガーレール清掃装置10であって、一方側にハンガーレール3上に溜まった異物を除去するための清掃部30と、他方側にハンガーレール3上に油を塗布するための塗布部40と、が設けられる本体部20を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハンガーレール清掃装置に係り、特に、乗降用扉をスライド可能に吊るすハンガーレールを清掃するためのハンガーレール清掃装置に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、商業施設等の様々な場所において、エレベータが設置されている。エレベータの乗りかごに乗り降りするために、乗りかご扉と乗場扉とが設けられているが、これらの乗降用扉の上部にはハンガーローラが取り付けられている。そして、当該ハンガーローラを介して上記乗降用扉をスライド可能に吊るすためにハンガーレールが設置されている。
【0003】
本発明に関連する技術として、例えば、特許文献1には、敷居溝に設けられた敷居レールと、この敷居レール上を転動する敷居ローラと、この敷居ローラが下部に設けられているとともに敷居ローラの転動により左右方向に開閉可能な乗場戸と、この乗場戸を吊下する吊り手を備えるエレベータの出入口装置が開示されている。さらに、当該エレベータの出入口装置は、この吊り手に回転自在に設けられたハンガーローラと、前記敷居レールと平行に設けられているとともに上面を前記ハンガーローラが転動するハンガーレールとを備えていることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平9−295783号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、エレベータを長期間使用していると、ハンガーレールの上には塵等が溜まってしまい、乗降用扉が十分に開閉できない場合が生じ得る。このため、保守作業員は、定期的な保守作業を行う際に、床面に立った状態で、先端部分が曲げられた清掃用の棒部材を用いて上記塵等を掻き落として清掃している。また、上記清掃作業とは別にハンガーレールの保守作業として潤滑油を塗布する給油作業を行なう必要があり、この場合、乗りかご等の上に登った状態で作業を行なう必要があるため、床面に立った状態で、清掃作業及び給油作業を両方行なえると便利である。
【0006】
本発明は、ハンガーレールの清掃作業及び給油作業を行なうことを可能とするハンガーレールの清掃装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係るハンガーレール清掃装置は、乗降用扉の上部に設けられるハンガーローラを介して前記乗降用扉をスライド可能に吊るすハンガーレールを清掃するためのハンガーレール清掃装置であって、一方側に前記ハンガーレール上に溜まった異物を除去するための清掃部と、他方側に前記ハンガーレール上に油を塗布するための塗布部と、が設けられる本体部を備えることを特徴とする。
【0008】
また、本発明に係るハンガーレール清掃装置において、前記本体部は、前記ハンガーレールのうちの清掃対象の位置に応じて長さを調節するための伸縮部を有することが好ましい。
【0009】
また、本発明に係るハンガーレール清掃装置において、前記清掃部と前記塗布部の少なくとも1つは、前記本体部の長手方向に対する角度を変更可能な角度調整部を有することが好ましい。
【0010】
また、本発明に係るハンガーレール清掃装置において、前記清掃部と前記塗布部の少なくとも1つの形状は、前記ハンガーレールの外形に沿った形状であることが好ましい。
【0011】
また、本発明に係るハンガーレール清掃装置において、前記ハンガーレールの外形に沿った形状は、略J字形状であることが好ましい。
【0012】
また、本発明に係るハンガーレール清掃装置において、前記清掃部と前記塗布部の少なくとも1つは、前記本体部に対して着脱可能であることが好ましい。
【0013】
また、本発明に係るハンガーレール清掃装置において、前記塗布部は、前記ハンガーレールに塗布するための潤滑油が含浸される含浸部を有することが好ましい。
【0014】
また、本発明に係るハンガーレール清掃装置において、前記含浸部は、高い吸油性を有することが好ましい。
【発明の効果】
【0015】
上記構成によれば、清掃部を用いてハンガーレール上の異物を除去できるとともに、塗布部を用いてハンガーレール上に潤滑油を塗布することができる。これにより、1つの清掃装置を用いて、ハンガーレールの清掃作業及び給油作業を行なうことができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明に係る実施の形態において、エレベータの乗場扉の周辺の縦断面図である。
【図2】本発明に係る実施の形態において、ハンガーレールを清掃する際に用いるハンガーレール清掃装置である。
【図3】本発明に係る実施の形態において、保守作業員がハンガーレールに対して清掃作業及び給油作業を行う様子を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に図面を用いて、本発明に係る実施の形態を詳細に説明する。また、以下では、ハンガーレールは乗場扉を吊り下げるものとして説明するが、乗場扉以外の扉であってもよく、例えば、乗りかご扉を吊り下げるためのハンガーレールであってもよい。
【0018】
また、以下では、全ての図面において、同様の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。また、本文中の説明においては、必要に応じそれ以前に述べた符号を用いるものとする。
【0019】
図1は、エレベータ1の乗場扉6の周辺の縦断面図である。エレベータ1は、ハンガーケース2と、ハンガーレール3と、ハンガーローラ4と、ハンガープレート5と、乗場扉6と、ドアシュー7と、乗場敷居8と、アップスラストローラ11と、ストッパー12とを備える。
【0020】
ハンガーケース2は、エレベータ1の乗場出入口9の上方部の昇降路壁内面13に固着されたケースである。ハンガーレール3は、ハンガーケース2内において床面16に対して水平方向に敷設されたレールであり、ハンガーケース2の一部を折り曲げることにより一体成形されている。また、ハンガーレール3の上部は、図1に示されるように略凸型形状を有する。
【0021】
ハンガーローラ4は、ハンガーレール3の上の略凸部に載置されて水平方向に転動する複数個のローラである。また、ハンガープレート5は、ハンガーローラ4を垂直部上部の前面側(乗場側)に複数個取り付けたL字状のプレートであり、乗場扉6の上部に取り付けられている。このように、ハンガーローラ4は、乗場扉6の上部に取り付けられている。
【0022】
乗場扉6は、ハンガープレート5の下端水平部にボルト14により固着されたドアで、乗場出入口9を開閉する。ドアシュー7は、乗場扉6の下端部に取り付けられたドアシューである。乗場敷居8は、ドアシュー7を案内する敷居である。
【0023】
アップスラストローラ11は、ハンガープレート5の前面側(乗場側)に固定され、ハンガーレール3の下面に接触させたローラであり、乗場扉6の振れ止めとして機能している。
【0024】
ストッパー12は、ハンガープレート5の垂直部上端部をハンガーケース2の天井部付近まで延長し、この延長された垂直部上端部の前面側(乗場側)に取り付けられたストッパーであり、乗場扉6の傾き阻止として機能している。
【0025】
図2は、ハンガーレール3を清掃する際に用いるハンガーレール清掃装置10である。ハンガーレール清掃装置10は、清掃部30と、本体部20と、塗布部40とを有する。
【0026】
本体部20は、同形で大きさの異なる筒部材を順に組み入れるように作った入れ子構造を有し、各筒部材を出し入れすることで伸縮することができる。本体部20は、清掃部側コネクタ部201と、塗布部側コネクタ部202とを有する。清掃部側コネクタ部201は、清掃部30の取り付け部34のコネクタ部341と着脱可能に嵌合するコネクタ部材である。塗布部側コネクタ部202は、塗布部40の取り付け部44のコネクタ部442と着脱可能に嵌合するコネクタ部材である。
【0027】
清掃部30は、ハンガーレール3上に溜まった塵等を取り除くための部材である。清掃部30は、掻き取り部32と、取り付け部34と、掻き取り部32と取り付け部34とを連通する連通ピン36と、取り付け部34に対し、連通ピン36を回動軸とする掻き取り部32の回動動作を停止させるための固定部37とを含む。
【0028】
掻き取り部32は、ハンガーレール3の上部の外形(略凸型形状)に沿ったJの字形状を有する部材である。ここで、固定部37を緩めると、掻き取り部32が連通ピン36を回動軸として回動可能となる。そして、掻き取り部32を回動させることで、掻き取り部32について、取り付け部34の長手方向(本体部20の長手方向)に対する角度を自由に調整することができる。そして、所望の位置で固定部37を締め付けると、掻き取り部32が連通ピン36を回動軸として回動できない状態となり、これにより、掻き取り部32について、取り付け部34の長手方向(本体部20の長手方向)に対する角度を固定することができる。
【0029】
取り付け部34は、本体部20の清掃部側コネクタ部201と嵌合するコネクタ部341を含み、本体部20に取り付けられた際に、その長手方向が延伸方向(換言すれば、本体部20の長手方向)に沿った状態で固定される。
【0030】
塗布部40は、ハンガーレール3上に潤滑油を塗布するための部材である。塗布部40は、含浸部42と、取り付け部44と、含浸部42と取り付け部44とを連通する連通ピン46と、取り付け部44に対し、連通ピン46を回動軸とする含浸部42の回動動作を停止させるための固定部47とを含む。
【0031】
含浸部42は、ハンガーレール3の上部の外形(略凸型形状)に沿ったJの字形状を有する部位である。また、含浸部42は、十分な量の潤滑油が含浸された柔軟部材を有する。含浸部42は、十分に高い吸油性を有する柔軟部材を有し、例えば、フェルト等の不織布部材を用いて構成することができる。ここで、固定部47を緩めると、含浸部42が連通ピン46を回動軸として回動可能となる。そして、含浸部42を回動させることで、含浸部42について、取り付け部44の長手方向(本体部20の長手方向)に対する角度を自由に調整することができる。そして、所望の位置で固定部47を締め付けると、含浸部42が連通ピン46を回動軸として回動できない状態となり、これにより、含浸部42について、取り付け部44の長手方向(本体部20の長手方向)に対する角度を固定することができる。
【0032】
取り付け部44は、本体部20の塗布部側コネクタ部202と嵌合するコネクタ部442を含み、本体部20に取り付けられた際に、その長手方向が延伸方向(換言すれば、本体部20の長手方向)に沿った状態で固定される。
【0033】
上記構成のハンガーレール清掃装置10の作用について説明する。図3は、保守作業員15がハンガーレール3に対して清掃作業及び給油作業を行う様子を示す図である。エレベータ1を長期間使用するにあたって、定期的に保守作業員15による保守作業が行われる。保守作業の中には、ハンガーレール3の上に溜まった塵等を清掃する清掃作業と、ハンガーローラ4がハンガーレール3上を滑らかに転動するためにハンガーレール3の上に潤滑油を塗布する給油作業とがある。
【0034】
保守作業員15は、まずハンガーレール3の清掃作業を行う場合には、掻き取り部32がハンガーレール3を向くような状態で本体部20を掴み、ハンガーレール3のうち清掃対象の位置までの距離に応じて各筒部材を必要な分だけ引き出して本体部20の長さを調整し、また、固定部37を緩めて掻き取り部32の角度(掻き取り部32について本体部20の長手方向に対する角度)を調整し、ハンガーレール3のうち清掃対象の位置に対して清掃しやすい角度となったときに固定部37を締め付けて固定する。
【0035】
そして、保守作業員15は、床面16に立った状態でハンガーレール3の清掃対象の位置に掻き取り部32を位置させて、塵等を掻き取ることで清掃作業を無理のない姿勢で行うことができる。
【0036】
続いて、保守作業員15は、掻き取り部32の反対側に位置する含浸部42がハンガーレール3を向くような状態となるように本体部20を持ち替えて、ハンガーレール3のうち清掃対象の位置までの距離に応じて本体部20の長さを調整し、また、固定部47を緩めて含浸部42の角度(含浸部42について本体部20の長手方向に対する角度)を調整し、ハンガーレール3のうち給油対象の位置に対して給油しやすい角度となったときに固定部47を締め付けて固定する。
【0037】
そして、保守作業員15は、引き続き床面16に立った状態でハンガーレール3の給油対象の位置に含浸部42を持っていき、含浸部42に含まれた潤滑油を塗布することで給油作業を無理のない姿勢で行うことができる。
【0038】
このように、ハンガーレール清掃装置10は、本体部20の一方側には清掃作業を行うための清掃部30が設けられ、本体部20の他方側には給油作業を行うための塗布部40が設けられている。これにより、保守作業員15は、1つのハンガレール清掃装置10によってハンガーレール3の清掃作業を行うとともに給油作業を行うことができるため、保守作業の効率を図ることができる。
【0039】
また、上記のように、ハンガーレール清掃装置10によれば、清掃対象または給油対象の位置に応じて本体部20の長さを調整したり、掻き取り部32または含浸部42の角度を調整することができる。これにより、保守作業員15は、床面16に立った状態のまま、無理のない姿勢で清掃作業及び給油作業を行うことができる。
【0040】
また、ハンガーレール清掃装置10によれば、本体部20の清掃部側コネクタ部201と、清掃部30の取り付け部34のコネクタ部341との嵌合を外すことができる。そして、ハンガーレール清掃装置10によれば、本体部20の塗布部側コネクタ部202と、塗布部40の取り付け部44のコネクタ部442との嵌合を外すことができる。これにより、清掃部30及び塗布部40をアタッチメントとして使用することができる。
【符号の説明】
【0041】
1 エレベータ、2 ハンガーケース、3 ハンガーレール、4 ハンガーローラ、5ハンガープレート、6 乗場扉、7 ドアシュー、8 乗場敷居、9 乗場出入口、10ハンガーレール清掃装置、11 アップスラストローラ、12 ストッパー、13 昇降路壁内面、14 ボルト、15 保守作業員、20 本体部、30 清掃部、32 掻き取り部、34 取り付け部、36 連通ピン、37 固定部、40 塗布部、42 含浸部、44 取り付け部、46 連通ピン、47 固定部、201 清掃部側コネクタ部、202 塗布部側コネクタ部、341 コネクタ部、442 コネクタ部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
乗降用扉の上部に設けられるハンガーローラを介して前記乗降用扉をスライド可能に吊るすハンガーレールを清掃するためのハンガーレール清掃装置であって、
一方側に前記ハンガーレール上に溜まった異物を除去するための清掃部と、他方側に前記ハンガーレール上に油を塗布するための塗布部と、が設けられる本体部を備えることを特徴とするハンガーレール清掃装置。
【請求項2】
請求項1に記載のハンガーレール清掃装置において、
前記本体部は、
前記ハンガーレールのうちの清掃対象の位置に応じて長さを調節するための伸縮部を有することを特徴とするハンガーレール清掃装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載のハンガーレール清掃装置において、
前記清掃部と前記塗布部の少なくとも1つは、前記本体部の長手方向に対する角度を変更可能な角度調整部を有することを特徴とするハンガーレール清掃装置。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか1に記載のハンガーレール清掃装置において、
前記清掃部と前記塗布部の少なくとも1つの形状は、前記ハンガーレールの外形に沿った形状であることを特徴とするハンガーレール清掃装置。
【請求項5】
請求項4に記載のハンガーレール清掃装置において、
前記ハンガーレールの外形に沿った形状は、略J字形状であることを特徴とするハンガーレール清掃装置。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれか1に記載のハンガーレール清掃装置において、
前記清掃部と前記塗布部の少なくとも1つは、前記本体部に対して着脱可能であることを特徴とするハンガーレール清掃装置。
【請求項7】
請求項1から請求項6のいずれか1に記載のハンガーレール清掃装置において、
前記塗布部は、前記ハンガーレールに塗布するための潤滑油が含浸される含浸部を有することを特徴とするハンガーレール清掃装置。
【請求項8】
請求項7に記載のハンガーレール清掃装置において、
前記含浸部は、高い吸油性を有することを特徴とするハンガーレール清掃装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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