説明

ハンズフリー通話装置、指向性調整方法、指向性調整プログラム

【課題】周囲の騒音が大きい場合であっても明瞭な通話を簡単に行えるハンズフリー通話装置、指向性調整方法、指向性調整プログラムを提供する。また、少ない消費電力でも明瞭な通話を行えるハンズフリー通話装置、指向性調整方法、指向性調整プログラムを提供する。
【解決手段】撮影部10で撮影した画像データ中に含まれる顔を顔検出部20で検出し、その検出した顔の画像データ中での位置に基づいて通話者との相対的な位置を通話者位置検出部30で検出し、その検出した通話者との相対的な位置に基づいてマイク70及びスピーカ80の指向性を指向性調整部60が変化させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、携帯電話端末及び携帯電話端末を接続したクレードル装置等であって、装置を手で持たなくとも通話を行えるハンズフリー通話装置、指向性調整方法、指向性調整プログラムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のハンズフリー通話装置では、無指向性のマイク、スピーカが多く使われている。そのため、これらのハンズフリー通話装置を走行中の自動車内で使用する場合には、自分の声や相手の声が明瞭に聞き取れないことがある。
【0003】
また、遠隔者を交えて電話会議を行う電話会議装置では、話者を検出するとともに集音範囲を可変させるものが知られている(例えば、非特許文献1、非特許文献2)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】Polycom Japan、”SoundStation2”、[online]、2008年、Polycom Japan、[平成21年3月5日検索]、インターネット〈URL:http://www.polycom.co.jp/products/voice/soundstation2/〉
【非特許文献2】ヤマハ株式会社、”ヤマハテレカンファレンスシステム”プロジェクトフォン”「PJP-50R」”、[online]、2006年10月18日、ヤマハ株式会社、[平成21年3月5日検索]、インターネット〈URL:http://www.yamaha.co.jp/news/2006/06101802.html〉
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
非特許文献1及び非特許文献2の技術では、マイクで集音された音に基づいて指向性を変えている。したがって、走行中の自動車内等のように周囲環境の騒音が大きい場合には、誤った方向に指向性を変えてしまう場合があった。また、手動操作によって指向性を変えることもできるが、それでは操作が煩雑であるとともに、正しい方向に指向性を調整することが難しかった。さらに、通話相手の声を明瞭に聞き取るためには、スピーカの出力を上げる必要があり、電力消費が多かった。
【0006】
本発明の課題は、周囲の騒音が大きい場合であっても明瞭な通話を簡単に行えるハンズフリー通話装置、指向性調整方法、指向性調整プログラムを提供することである。また、本発明の第2の課題は、少ない消費電力でも明瞭な通話を行えるハンズフリー通話装置、指向性調整方法、指向性調整プログラムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記の課題を解決するために、以下の事項を提案している。なお、理解を容易にするために、本発明の実施形態に対応する符号を付して説明するが、これに限定されるものではない。
【0008】
(1)本発明は、撮影手段(10,310)と、前記撮影手段により得られた画像データ中に含まれる顔を検出する顔検出手段(20,320)と、前記顔検出手段が検出した顔の前記画像データ中での位置に基づいて通話者との相対的な位置を検出する通話者位置検出手段(30,330)と、マイク(70,470)と、スピーカ(80,480)と、前記通話者位置検出手段が検出した通話者との相対的な位置に基づいて前記マイク及び前記スピーカの少なくとも一方の指向性を変化させる指向性調整手段(60,460)とを備えるハンズフリー通話装置(100,200,500)を提案している。
【0009】
この発明によれば、顔検出手段は、撮影手段により得られた画像データ中に含まれる顔を検出する。通話者位置検出手段は、顔検出手段が検出した顔の画像データ中での位置に基づいて通話者との相対的な位置を検出する。指向性調整手段は、通話者位置検出手段が検出した通話者との相対的な位置に基づいてマイク及びスピーカの少なくとも一方の指向性を変化させる。したがって、走行中の自動車内等のように周囲の騒音が大きい場合であっても明瞭な通話を簡単に行える。また、スピーカの指向性を変化させることにより、スピーカの音量を大きくしなくとも通話相手の音声が聞き取りやすくなるので、少ない消費電力でも明瞭な通話を行える。
【0010】
(2)本発明は、(1)のハンズフリー通話装置において、前記通話者までの距離を検出する距離検出手段(50,50B,350)を備え、前記指向性調整手段(60,460)は、前記通話者位置検出手段(30,330)が検出した通話者の相対的な位置とともに前記距離検出手段が検出した距離に基づいて前記マイク(70,470)及び前記スピーカ(80,480)の少なくとも一方の指向性を変化させることを特徴とするハンズフリー通話装置(100,200,500)を提案している。
【0011】
この発明によれば、距離検出手段は、通話者までの距離を検出する。指向性調整手段は、通話者位置検出手段が検出した通話者の相対的な位置とともに距離検出手段が検出した距離に基づいてマイク及びスピーカの少なくとも一方の指向性を変化させる。したがって、指向性の調整を高い精度で行うことができ、より明瞭に通話を行える。
【0012】
(3)本発明は、(2)のハンズフリー通話装置において、前記距離検出手段(50,350)は、赤外線を前記通話者位置検出手段が検出した通話者に対して照射し、反射して戻ってきた前記赤外線を受光することにより前記通話者までの距離を検出することを特徴とするハンズフリー通話装置(100,500)を提案している。
【0013】
この発明によれば、距離検出手段は、赤外線を通話者位置検出手段が検出した通話者に対して照射し、反射して戻ってきた赤外線を受光することにより通話者までの距離を検出する。したがって、赤外線通信用の赤外線投光部及び赤外線受光部を利用して、指向性の調整を高い精度で行うことができ、より明瞭に通話を行える。
【0014】
(4)本発明は、請求項2に記載のハンズフリー通話装置において、前記撮影手段(10)は、焦点調節動作により移動する撮影レンズ(11)を有し、前記顔検出手段(20)が検出した顔に対して焦点が合うように前記撮影レンズを焦点調節動作により移動させ、前記距離検出手段(50B)は、前記撮影レンズが焦点調節動作により移動した位置に基づいて前記通話者までの距離を検出することを特徴とするハンズフリー通話装置(200)を提案している。
【0015】
この発明によれば、撮影手段は、焦点調節動作により移動する撮影レンズを有し、顔検出手段が検出した顔に対して焦点が合うように撮影レンズを焦点調節動作により移動させる。距離検出手段は、撮影レンズが焦点調節動作により移動した位置に基づいて通話者までの距離を検出する。したがって、撮影手段が有するオートフォーカス機構を利用して、指向性の調整を高い精度で行うことができ、より明瞭に通話を行える。
【0016】
(5)本発明は、(1)から(4)までのいずれかのハンズフリー通話装置において、前記マイク(70,370,470)は、複数設けられており、前記指向性調整手段(60,460)は、使用するマイクを複数の中から選択して前記マイクの指向性を変化させることを特徴とするハンズフリー通話装置(100,500)を提案している。
【0017】
この発明によれば、マイクは、複数設けられている。指向性調整手段は、使用するマイクを複数の中から選択してマイクの指向性を変化させる。したがって、機械的な動作を行わずに指向性を変えることができ、信頼性を向上できる。
【0018】
(6)本発明は、(1)から(4)までのいずれかのハンズフリー通話装置において、前記マイクの向きを変化させるマイク駆動部を有し、前記指向性調整手段は、前記マイク駆動部を用いて前記マイクの指向性を変化させることを特徴とするハンズフリー通話装置を提案している。
【0019】
この発明によれば、マイク駆動部は、マイクの向きを変化させる。指向性調整手段は、マイク駆動部を用いてマイクの指向性を変化させる。したがって、1つのマイクで様々な方向に指向性を変えることができ、柔軟性の高い調整を行える。
【0020】
(7)本発明は、(1)から(6)までのいずれかのハンズフリー通話装置において、当該ハンズフリー通話装置は、無線通信端末(300)と、前記無線通信端末を着脱可能に支持するとともに前記無線通信端末と電気的に接続されるクレードル装置(400)とに分けて構成されていることを特徴とするハンズフリー通話装置(500)を提案している。
【0021】
この発明によれば、ハンズフリー通話装置は、無線通信端末と、無線通信端末を着脱可能に支持するとともに無線通信端末と電気的に接続されるクレードル装置とに分けて構成されている。したがって、指向性の調整のみに用いられる構成部分をクレードル装置に設けることができ、無線通信端末を小型かつ軽量にできる。
【0022】
(8)本発明は、撮影ステップ(S10)と、前記撮影ステップにより得られた画像データ中に含まれる顔を検出する顔検出ステップ(S20)と、前記顔検出ステップで検出した顔の前記画像データ中での位置に基づいて通話者との相対的な位置を検出する通話者位置検出ステップ(S30)と、前記通話者位置検出ステップで検出した通話者との相対的な位置に基づいてマイク及びスピーカの少なくとも一方の指向性を変化させる指向性調整ステップ(S50)とを備える指向性調整方法を提案している。
【0023】
この発明によれば、顔検出ステップでは、撮影ステップにより得られた画像データ中に含まれる顔を検出する。通話者位置検出ステップでは、顔検出ステップで検出した顔の画像データ中での位置に基づいて通話者との相対的な位置を検出する。指向性調整ステップでは、通話者位置検出ステップで検出した通話者との相対的な位置に基づいてマイク及びスピーカの少なくとも一方の指向性を変化させる。したがって、走行中の自動車内等のように周囲の騒音が大きい場合であっても明瞭な通話を簡単に行える。また、スピーカの指向性を変化させることにより、スピーカの音量を大きくしなくとも通話相手の音声が聞き取りやすくなるので、少ない消費電力でも明瞭な通話を行える。
【0024】
(9)本発明は、コンピュータに、撮影ステップ(S10)と、前記撮影ステップにより得られた画像データ中に含まれる顔を検出する顔検出ステップ(S20)と、前記顔検出ステップで検出した顔の前記画像データ中での位置に基づいて通話者との相対的な位置を検出する通話者位置検出ステップ(S30)と、前記通話者位置検出ステップで検出した通話者との相対的な位置に基づいてマイク及びスピーカの少なくとも一方の指向性を変化させる指向性調整ステップ(S50)とを実行させるための指向性調整プログラムを提案している。
【0025】
この発明によれば、顔検出ステップでは、撮影ステップにより得られた画像データ中に含まれる顔を検出する。通話者位置検出ステップでは、顔検出ステップで検出した顔の画像データ中での位置に基づいて通話者との相対的な位置を検出する。指向性調整ステップでは、通話者位置検出ステップで検出した通話者との相対的な位置に基づいてマイク及びスピーカの少なくとも一方の指向性を変化させる。したがって、走行中の自動車内等のように周囲の騒音が大きい場合であっても明瞭な通話を簡単に行える。また、スピーカの指向性を変化させることにより、スピーカの音量を大きくしなくとも通話相手の音声が聞き取りやすくなるので、少ない消費電力でも明瞭な通話を行える。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、走行中の自動車内等、周囲の騒音が大きい場合であっても、明瞭な通話を簡単に行える。また、スピーカの指向性を変更することにより、スピーカの音圧を上げることなく通話相手の声を明瞭に聞き取ることができ、消費電力を低く抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明によるハンズフリー通話装置としての携帯電話端末100の第1実施形態を示す外観図である。
【図2】第1実施形態の携帯電話端末100の構成を示すブロック図である。
【図3】携帯電話端末100を図1の上方から見た状態でマイク70及びスピーカ80の指向性を示す図である。
【図4】第1実施形態の携帯電話端末100の指向性調整方法を示すフローチャートである。
【図5】自動車の車内に携帯電話端末100を固定した状態を示す図である。
【図6】画像データの一例を示す図である。
【図7】第1実施形態においてマイク70及びスピーカ80の指向性を調整した状態を示す図である。
【図8】第2実施形態の携帯電話端末200の構成を示すブロック図である。
【図9】本発明によるハンズフリー通話装置500の第3実施形態を示す外観図である。
【図10】第3実施形態のハンズフリー通話装置500の構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、図面を用いて、本発明の実施形態について詳細に説明する。
なお、本実施形態における構成要素は適宜、既存の構成要素等との置き換えが可能であり、また、他の既存の構成要素との組み合わせを含む様々なバリエーションが可能である。したがって、本実施形態の記載をもって、特許請求の範囲に記載された発明の内容を限定するものではない。
【0029】
(第1実施形態)
図1は、本発明によるハンズフリー通話装置としての携帯電話端末100の第1実施形態を示す外観図である。
図2は、第1実施形態の携帯電話端末100の構成を示すブロック図である。
本実施携帯の携帯電話端末100は、電波を利用して無線通信を行う無線通信端末である。携帯電話端末100は、携帯電話サービスで利用され、通常の携帯電話端末装置として手で持って使うことができるとともに、本発明によるハンズフリー通話装置としても使うことができる。なお、ハンズフリー通話装置とは、装置を手で持たなくとも音声通信を行える装置を指すものであり、電話における通話に限るものではない。
本実施携帯の携帯電話端末100は、撮影部10、顔検出部20、通話者位置検出部30、赤外線投光部41、赤外線受光部42、距離検出部50、指向性調整部60、マイク70、スピーカ80、表示部91、操作キー92を備えている。
【0030】
撮影部10は、電子的に静止画及び動画の撮影を行うデジタルカメラ部分である。
撮影部10は、撮影レンズ11、位置エンコーダ12、撮像素子13、撮影制御部14を備えている。
撮影レンズ11は、後述する撮影部10の一部であって、携帯電話端末100の正面上部に設けられている。なお、以下の説明において、上、下、左、右とは、図1上における向きを指すものとする。本実施形態の撮影レンズ11は、ズーム動作及び焦点調節動作(オートフォーカス動作)を行うことができる。撮影レンズ11は、複数のレンズ群を有し、その光軸方向に沿って位置を移動することができるように支持されている。撮影レンズ11は、撮影制御部14からのズーム動作及び焦点調節動作の指示にしたがい移動する。
【0031】
位置エンコーダ12は、撮影レンズ11の複数のレンズ群の位置を検出するエンコーダである。位置エンコーダ12が検出した撮影レンズ11の複数のレンズ群の位置は、撮影制御部14へ送られる。
【0032】
撮像素子13は、CCD(Charge Coupled Device)イメージセンサやCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)イメージセンサ等により構成されており、撮影レンズ11により得られた被写体像を撮像して画像データを取得する。
【0033】
撮影制御部14は、位置エンコーダ12及び顔検出部20からの情報を用いて撮影レンズ11及び撮像素子13を制御して、撮影部10の動作を統括制御する。撮影制御部14は、顔検出部20からの情報に基づいて、検出された顔に焦点が合う(ピントが合う)ように位置エンコーダ12から撮影レンズ11の位置情報を取得しながら撮影レンズ11を駆動する。
【0034】
顔検出部20は、撮影部10により得られた画像データ中に含まれる顔を検出する。検出された顔の情報は、撮影部10のオートフォーカス動作や露出制御動作に利用するために撮影制御部14へ送られる。また、本実施形態では、顔検出部20は、検出された顔の情報をマイク70及びスピーカ80の指向性調整に利用するために、通話者位置検出部30へ送る。
【0035】
通話者位置検出部30は、顔検出部20が検出した顔の画像データ中での位置に基づいて通話者との相対的な位置を検出する。通話者位置検出部30は、検出した通話者との相対的な位置の情報を赤外線投光部41と指向性調整部60とに送る。
【0036】
赤外線投光部41は、赤外線LED(Light Emitting Diode)を内蔵しており、赤外光を携帯電話端末100の正面方向に照射する。本実施形態の赤外線投光部41は、携帯電話端末100の正面上部であって撮影レンズ11の左側に設けられている。
【0037】
赤外線受光部42は、赤外線投光部41が投光して対象物で反射して戻ってきた赤外光を受光する。本実施形態の赤外線投光部41は、携帯電話端末100の正面上部であって撮影レンズ11の右側に設けられている。
【0038】
赤外線投光部41及び赤外線受光部42は、他の携帯電話端末等との間で赤外線通信を行うときに用いられる。また、本実施形態では、通話者までの距離を測定するためにも用いられる。そのため、本実施形態の赤外線投光部41は、撮影部10による撮影範囲内の複数箇所に赤外光を投光できるように、複数の赤外線LEDを内蔵している。また、本実施形態の赤外線受光部42は、PSD(Position Sensitive Detector)を内蔵しており、受光した赤外光のPSD上の位置から、通話者までの距離を測定できるようになっている。
【0039】
距離検出部50は、通話者位置検出部30が検出した通話者までの距離を、赤外線投光部41及び赤外線受光部42を用いて検出する。
指向性調整部60は、通話者位置検出部30が検出した通話者との相対的な位置に基づいて、マイク70及びスピーカ80の指向性を変化させる。
【0040】
マイク70は、通話者の声を集音するマイクであり、携帯電話端末100の正面下部に設けられている。マイク70は、左側から第1マイク71、第2マイク72、第3マイク73を有している。なお、本実施形態において、通話者とは、携帯電話端末100を使って通話を行う者を指すものとする。
【0041】
スピーカ80は、通話相手方の音声を発生するスピーカであり、携帯電話端末100の正面上部かつ撮影レンズ11の下方に設けられている。スピーカ80は、左側から第1スピーカ81、第2スピーカ82、第3スピーカ83を有している。
【0042】
図3は、携帯電話端末100を図1の上方から見た状態でマイク70及びスピーカ80の指向性を示す図である。
第2マイク72は、携帯電話端末100の正面方向で略30度の範囲72aで音声の集音効率が高くなっている。第1マイク71は、範囲72aよりも左側の方向で略30度の範囲71aで音声の集音効率が高くなっている。第3マイク73は、範囲72aよりも右側の方向で略30度の範囲73aで音声の集音効率が高くなっている。
第2スピーカ82は、携帯電話端末100の正面方向で略30度の範囲82aで音声の集音効率が高くなっている。第1スピーカ81は、範囲82aよりも左側の方向で略30度の範囲81aで音声の集音効率が高くなっている。第3スピーカ83は、範囲82aよりも右側の方向で略30度の範囲83aで音声の集音効率が高くなっている。
なお、マイク及びスピーカの指向性の範囲は、一例であって、角度や数等は、これらに限るものではない。
【0043】
表示部91は、文字や画像等の各種情報を表示するディスプレイ装置である。
操作キー92は、ユーザが各種入力を行う操作部材である。
表示部91及び操作キー92は、携帯電話端末100の正面、かつ、マイク70とスピーカ80とに挟まれる位置に配置されている。
【0044】
図4は、第1実施形態の携帯電話端末100の指向性調整方法を示すフローチャートである。
図4に示す指向性調整は、自動車の車内において、ハンズフリーで通話するために行う場合を想定している。また、この動作は、携帯電話端末100を自動車の車内に固定するときに、ユーザの操作によりハンズフリー通話を行うプログラムを実行することにより開始される。
【0045】
ステップ(以下、Sとする)10では、撮影部10が、運転席に着座している通話者を含む画像を撮影する(撮影ステップ)。
図5は、自動車の車内に携帯電話端末100を固定した状態を示す図である。図5において、ハッチングを付して示した領域Aは、撮影部10が撮影可能な範囲、すなわち、撮影レンズ11の画角内を示している。
S10の撮影を行うときには、携帯電話端末100は、自動車の車内に固定され、かつ、撮影レンズ11の画角内には、通話者が入っていることが必要である。なお、本実施形態では、携帯電話端末100の固定方法は、自動車の運転で位置が動かない程度でよく、例えば、カップホルダーに置くような形態であってもよい。
【0046】
図4に戻って、S20では、顔検出部20が、撮影部10により撮影された画像データ中に含まれる人物の顔を検出する(顔検出ステップ)。
図6は、画像データの一例を示す図である。図6の例では、左上方にある顔Fを検出する。
なお、S20で人物の顔が複数検出された場合には、予め登録しておいた通話者の顔と適合する顔を通話者として選択してもよい。
【0047】
図4に戻って、S30では、顔検出部20が検出した顔の前記画像データ中での位置に基づいて、通話者位置検出部30が通話者の携帯電話端末100に対する相対的な方向を特定する(通話者位置検出ステップ)。
【0048】
S40では、距離検出部50が携帯電話端末100から通話者までの距離を検出する。本実施形態では、距離検出部50は、通話者位置検出部30が検出した通話者の方向に赤外線投光部41により赤外線を投光する。そして、距離検出部50は、反射して戻ってきた赤外線を赤外線受光部42により受光して通話者までの距離を検出する(距離検出ステップ)。
【0049】
S50では、S40で検出した通話者との相対的な位置(方向及び距離)に基づいて、指向性調整部60が、マイク70及びスピーカ80の指向性を調整する(指向性調整ステップ)。
ここで、指向性の調整は、通話者との相対的な方向のみに基づいても調整を行うことができる。しかし、指向性を有する範囲は、図3にも示したように、携帯電話端末100からの距離が離れるにしたがい、扇状又は円錐状に広がっていく。したがって、通話者との相対的な距離についても考慮した方がより精度の高い指向性の調整を行える。そこで、本実施形態では、距離検出部50により距離を検出し、通話者との相対的な方向及び距離に基づいた指向性の調整を行っている。
図7は、第1実施形態においてマイク70及びスピーカ80の指向性を調整した状態を示す図である。
本実施形態では、マイク70は、第3マイク73が選択されて範囲73aの音を集音するように指向性が調整される。また、スピーカ80は、第3スピーカ83が選択されて範囲83aに音を発するように指向性が調整される。
【0050】
以上説明したように、本実施形態によれば、携帯電話端末100が自動で撮影者の方向にマイク70及びスピーカ80の指向性を調整するので、周囲の騒音が大きい場合であっても明瞭な通話を簡単に行える。また、スピーカ80の指向性を調整するので、スピーカ80の音量を大きくする必要が無く、少ない消費電力でも明瞭な通話を行える。
【0051】
(第2実施形態)
図8は、第2実施形態の携帯電話端末200の構成を示すブロック図である。
本実施携帯の携帯電話端末200は、第1実施形態の距離検出部50とは動作が異なる距離検出部50Bを有し、さらに、伴い第1実施形態における赤外線投光部41及び赤外線受光部42を持たない点が第1実施形態と異なる形態である。よって、前述した第1実施形態と同様の機能を果たす部分には、同一の符号を付して、重複する説明を適宜省略する。
【0052】
距離検出部50Bは、通話者位置検出部30が検出した通話者までの距離を検出する点は、第1実施形態の距離検出部50と同じである。ただし、第2実施形態は、その検出方法が第1実施形態と異なっている。本実施形態の距離検出部50Bは、撮影部10で通話者の顔に焦点が合うように撮影レンズ11を移動したときの位置エンコーダ12からの情報を用いて、通話者までの距離を検出する。撮影レンズ11の位置は、通話者の顔に焦点が合っているときには、通話者までの距離に対応した位置にある。よって、距離検出部50Bは、撮影レンズ11の位置から通話者までの距離を求めることができる。
【0053】
第2実施形態によれば、赤外線投光部41及び赤外線受光部42を有していない携帯電話端末200であっても、指向性の調整を精度よく行える。
【0054】
(第3実施形態)
図9は、本発明によるハンズフリー通話装置500の第3実施形態を示す外観図である。
図10は、第3実施形態のハンズフリー通話装置500の構成を示すブロック図である。
第3実施形態のハンズフリー通話装置500は、携帯電話端末300とクレードル装置400とを組み合わせることにより構成されている。
携帯電話端末300は、撮影部310、顔検出部320、通話者位置検出部330、赤外線投光部341、赤外線受光部342、距離検出部350、マイク370、スピーカ380、接点部390を備えている。
【0055】
撮影部310は、撮影レンズ311、位置エンコーダ312、撮像素子313、撮影制御部314を備え、第1実施形態の撮影部10と同様の機能を持っている。また、顔検出部320と、赤外線投光部341と、赤外線受光部342とは、それぞれ第1実施形態の顔検出部20と、赤外線投光部41と、赤外線受光部42と同様の機能を持っている。
【0056】
通話者位置検出部330は、顔検出部320が検出した顔の画像データ中での位置に基づいて通話者との相対的な位置を検出する。通話者位置検出部330は、検出した通話者との相対的な位置の情報を赤外線投光部341へ送る。また、通話者位置検出部330は、検出した通話者との相対的な位置の情報を接点部390,490を介して指向性調整部460に送る。
【0057】
距離検出部350は、顔検出部320が検出した顔の画像データ中での位置に基づいて通話者との相対的な位置を検出する。通話者位置検出部330は、検出した通話者との相対的な位置の情報を赤外線投光部341に送る。また、通話者位置検出部330は、検出した通話者との相対的な位置の情報を接点部390,490を介して指向性調整部460に送る。
【0058】
マイク370は、携帯電話端末300を手で持って使用するときに通話者の声を集音するマイクであり、携帯電話端末300の正面下部に設けられている。
スピーカ380、携帯電話端末300を手で持って使用するときに通話相手方の声を発生するスピーカであり、携帯電話端末300の正面上部かつ撮影レンズ311の下方に設けられている。
接点部390は、クレードル装置400の接点部490と電気的に接触して情報伝達、電力供給等を行う。
【0059】
クレードル装置400は、携帯電話端末300が着脱可能な支持台であり、例えば自動車のダッシュボード上に置いたり固定したりして設置される。
クレードル装置400は、指向性調整部460、マイク470、スピーカ480、表示部491、操作キー492を備えている。
【0060】
指向性調整部460は、通話者位置検出部330が検出した通話者との相対的な位置に基づいて、マイク470及びスピーカ480の指向性を変化させる。
【0061】
マイク470は、通話者の声を集音するマイクであり、クレードル装置400の正面下部に設けられている。マイク70は、左側から第1マイク471、第2マイク472、第3マイク473、第4マイク474、第5マイク475を有している。これら第1マイク471から第5マイク475は、それぞれが異なる方向に指向性を有している。
【0062】
スピーカ480は、通話相手方の音声を発生するスピーカであり、クレードル装置400の正面上部に設けられている。スピーカ480は、左側から第1スピーカ481、第2スピーカ482、第3スピーカ483、第4スピーカ484、第5スピーカ485を有している。これら第1スピーカ481から第5スピーカ485は、それぞれが異なる方向に指向性を有している。
【0063】
接点部490は、携帯電話端末300の接点部390と電気的に接触して情報伝達、電力供給等を行う。
表示部491及び操作キー492は、第1実施形態の表示部91及び操作キー92と同様である。
【0064】
携帯電話端末300は、クレードル装置400に対して着脱自在に構成されている。携帯電話端末300は、クレードル装置400に装着されると、自動的にハンズフリー通話における指向性の調整プログラムが起動する。
本実施形態における指向性の調整動作については、マイク及びスピーカの数が多い他は、第1実施形態と同様である。
【0065】
以上説明したように、第3実施形態によれば、携帯電話端末300とクレードル装置400とを組み合わせてハンズフリー通話装置500として機能するようにした。これにより、第3実施形態では、携帯電話端末300に多数のマイクやスピーカ等を設けなくともハンズフリーで通話するときに指向性の調整を行える。また、第3実施形態では、クレードル装置400により多くのマイクやスピーカを設けることができ、より細かく指向性の調整を行える。よって、より明瞭にハンズフリーの通話を行える。
【0066】
ハンズフリー通話装置の処理をコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録し、この記録媒体に記録されたプログラムをハンズフリー通話装置に読み込ませ、実行することによって本発明のハンズフリー通話装置、指向性調整方法を実現することができる。ここでいうコンピュータシステムとは、OSや周辺装置等のハードウェアを含む。
【0067】
また、「コンピュータシステム」は、WWW(World Wide Web)システムを利用している場合であれば、ホームページ提供環境(あるいは表示環境)も含むものとする。また、上記プログラムは、このプログラムを記憶装置等に格納したコンピュータシステムから、伝送媒体を介して、あるいは、伝送媒体中の伝送波により他のコンピュータシステムに伝送されてもよい。ここで、プログラムを伝送する「伝送媒体」は、インターネット等のネットワーク(通信網)や電話回線等の通信回線(通信線)のように情報を伝送する機能を有する媒体のことをいう。
【0068】
また、上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであってもよい。さらに、前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合せで実現できるもの、いわゆる差分ファイル(差分プログラム)であってもよい。
【0069】
以上、この発明の実施形態につき、図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計等も含まれる。
【0070】
(変形形態)
(1)各実施形態において、携帯電話サービスに用いるハンズフリー通話装置の例を挙げて説明した。しかし、これに限らず、ハンズフリー通話装置は、例えば、携帯電話サービスに用いない無線通信端末であってもよい。
【0071】
(2)第1実施形態において、撮影レンズ11は、ズーム動作及び焦点調節動作を行うことができる例を示した。しかし、これに限らず、例えば、撮影レンズは、ズーム動作を行わない単焦点の撮影レンズであってもよいし、焦点調節動作を行わない固定焦点(パンフォーカス)の撮影レンズであってもよい。
【0072】
(3)第1実施形態において、マイク70及びスピーカ80は、左右方向についてのみ指向性を持つ例を示した。しかし、これに限らず、例えば、マイク及びスピーカは、それらの数を増やして上下方向にも指向性を持つものでもよい。その場合、指向性制御部は、上下方向での指向性制御を行うことができる。
【0073】
(4)第2実施形態において、距離検出部50Bは、位置エンコーダ12からの情報を用いて、通話者までの距離を検出する例を示した。しかし、これに限らず、例えば、距離検出部は、撮影部10により撮影された画像データ中における顔の大きさから通話者までの距離を推定してもよい。
【0074】
(5)各実施形態において、マイク及びスピーカは、それぞれ複数設けられておりそれらを選択的に使用することにより、指向性を変化させる例を示した。しかし、これに限らず、例えば、マイクの方向が変わるようにマイクを駆動するマイク駆動部を設けて指向性を変えてもよい。また、超音波を利用して変調を行い、スピーカの指向性を変えるようにしてもよい。
【0075】
(6)各実施形態において、マイク及びスピーカは、それぞれ複数設けられておりそれらから1つずつを選択的に使用することにより、指向性を変化させる例を示した。しかし、これに限らず、例えば、複数のマイクやスピーカを選択して使用してもよい。
【0076】
なお、第1実施形態から第3実施形態及び変形形態は、適宜組み合わせて用いることもできるが、詳細な説明は省略する。
【符号の説明】
【0077】
10,310 撮影部
11,311 撮影レンズ
12,312 位置エンコーダ
13,313 撮像素子
14,314 撮影制御部
20,320 顔検出部
30,330 通話者位置検出部
41,341 赤外線投光部
42,342 赤外線受光部
50,50B,350 距離検出部
60,460 指向性調整部
70,370,470 マイク
80,380,480 スピーカ
91,491 表示部
92,492 操作キー
100,200 携帯電話端末
300 携帯電話端末
390 接点部
400 クレードル装置
500 ハンズフリー通話装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
撮影手段と、
前記撮影手段により得られた画像データ中に含まれる顔を検出する顔検出手段と、
前記顔検出手段が検出した顔の前記画像データ中での位置に基づいて通話者との相対的な位置を検出する通話者位置検出手段と、
マイクと、
スピーカと、
前記通話者位置検出手段が検出した通話者との相対的な位置に基づいて前記マイク及び前記スピーカの少なくとも一方の指向性を変化させる指向性調整手段と、
を備えるハンズフリー通話装置。
【請求項2】
請求項1に記載のハンズフリー通話装置において、
前記通話者までの距離を検出する距離検出手段を備え、
前記指向性調整手段は、前記通話者位置検出手段が検出した通話者の相対的な位置とともに前記距離検出手段が検出した距離に基づいて前記マイク及び前記スピーカの少なくとも一方の指向性を変化させること、
を特徴とするハンズフリー通話装置。
【請求項3】
請求項2に記載のハンズフリー通話装置において、
前記距離検出手段は、赤外線を前記通話者位置検出手段が検出した通話者に対して照射し、反射して戻ってきた前記赤外線を受光することにより前記通話者までの距離を検出すること、
を特徴とするハンズフリー通話装置。
【請求項4】
請求項2に記載のハンズフリー通話装置において、
前記撮影手段は、焦点調節動作により移動する撮影レンズを有し、前記顔検出手段が検出した顔に対して焦点が合うように前記撮影レンズを焦点調節動作により移動させ、
前記距離検出手段は、前記撮影レンズが焦点調節動作により移動した位置に基づいて前記通話者までの距離を検出すること、
を特徴とするハンズフリー通話装置。
【請求項5】
請求項1から請求項4までのいずれか1項に記載のハンズフリー通話装置において、
前記マイクは、複数設けられており、
前記指向性調整手段は、使用するマイクを複数の中から選択して前記マイクの指向性を変化させること、
を特徴とするハンズフリー通話装置。
【請求項6】
請求項1から請求項4までのいずれか1項に記載のハンズフリー通話装置において、
前記マイクの向きを変化させるマイク駆動部を有し、
前記指向性調整手段は、前記マイク駆動部を用いて前記マイクの指向性を変化させること、
を特徴とするハンズフリー通話装置。
【請求項7】
請求項1から請求項6までのいずれか1項に記載のハンズフリー通話装置において、
当該ハンズフリー通話装置は、
無線通信端末と、
前記無線通信端末を着脱可能に支持するとともに前記無線通信端末と電気的に接続されるクレードル装置と、
に分けて構成されていること、
を特徴とするハンズフリー通話装置。
【請求項8】
撮影ステップと、
前記撮影ステップにより得られた画像データ中に含まれる顔を検出する顔検出ステップと、
前記顔検出ステップで検出した顔の前記画像データ中での位置に基づいて通話者との相対的な位置を検出する通話者位置検出ステップと、
前記通話者位置検出ステップで検出した通話者との相対的な位置に基づいてマイク及びスピーカの少なくとも一方の指向性を変化させる指向性調整ステップと、
を備える指向性調整方法。
【請求項9】
コンピュータに、
撮影ステップと、
前記撮影ステップにより得られた画像データ中に含まれる顔を検出する顔検出ステップと、
前記顔検出ステップで検出した顔の前記画像データ中での位置に基づいて通話者との相対的な位置を検出する通話者位置検出ステップと、
前記通話者位置検出ステップで検出した通話者との相対的な位置に基づいてマイク及びスピーカの少なくとも一方の指向性を変化させる指向性調整ステップと、
を実行させるための指向性調整プログラム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate


【公開番号】特開2010−232755(P2010−232755A)
【公開日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−75481(P2009−75481)
【出願日】平成21年3月26日(2009.3.26)
【出願人】(000208891)KDDI株式会社 (2,700)
【Fターム(参考)】