説明

ハンズフリー音声通話システム及びハンズフリー音声通話ユニット、ハンズフリー音声通話方法

【課題】マイク装置から出力される音声信号を増幅するための各種増幅装置の増幅レベルを、タイムラグ無く設定可能で、瞬間的な音割れを防止できるハンズフリー音声通話システムを提供すること。
【解決手段】このハンズフリー音声通話システムは、携帯電話機30と無線通信して受信した音声信号を、スピーカ用増幅装置23で増幅してスピーカ装置40へ出力し、スピーカ装置40の音声出力を含めて外部音を集音したマイク装置50から出力される音声信号をマイク用増幅装置37で増幅して音声信号処理部32に取り込み、音声信号処理部32で不要音を除去した音声信号を短距離無線通信部31から携帯電話機30へ無線通信し、スピーカ用増幅装置23のスピーカゲインが上がるのに連動させてマイク用増幅装置37のマイクゲインを下げ、スピーカゲインが下がるのに連動させてマイクゲインを上げる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、携帯電話機等の音声通話端末を直接操作すること無く通話を可能にするハンズフリー音声通話システム及びハンズフリー音声通話ユニット、ハンズフリー音声通話方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、携帯電話を用いたハンズフリー音声通話装置において、使用される環境等の適合するように送受信音声信号強度を自動調整するものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。図3に特許文献1に開示されたハンズフリー音声通話装置の機能ブロックが示されている。同図に示すハンズフリー音声通話装置1では、非通話時に基本信号発生回路13が基本信号をマイク4に向けて出力し、マイク4からの出力音がスピーカ5との間でハウリングを起こさない送受信音量レベルになるまで、制御部12によって第1増幅回路15、第2増幅回路16、第3増幅回路17、第4増幅回路18の各ゲイン量が繰り返し調整される。ゲイン量は記憶部19において携帯電話などの無線通信装置3ごとに記憶しておく。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−051142号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1記載のハンズフリー音声通話装置は、スピーカ5が出力した音をマイク4で集音し、マイク4の出力信号レベルをモニタしながら第1〜第4の増幅回路15〜18のゲイン量にフィードバックを掛ける方式であるので、第1〜第4の増幅回路15〜18のゲイン量が最適化されるまでのタイムラグが存在し、瞬間的な音割れが発生する可能性があった。
【0005】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、マイク装置から出力される音声信号を増幅するための各種増幅装置の増幅レベルを、タイムラグ無く設定可能で、瞬間的な音割れを防止できるハンズフリー音声通話システム及びハンズフリー音声通話ユニット、ハンズフリー音声通話方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のハンズフリー音声通話システムは、音声通話端末と無線通信して音声信号を送受信する無線通信部と、前記無線通信部が前記音声通話端末から受信した音声信号を増幅する第1の増幅装置と、前記第1の増幅装置から出力される音声信号を入力して音声出力するスピーカ装置と、前記スピーカ装置の音声出力を含めて外部音を集音するマイク装置と、前記マイク装置から出力される音声信号を増幅する第2の増幅装置と、前記第2の増幅装置から出力される音声信号から不要音を除去して前記無線通信部へ出力する音声信号処理部と、前記第1の増幅装置の増幅レベルを検知し、検知レベルに応じて前記第2の増幅装置の増幅レベルを制御する制御手段と、を具備したことを特徴とする。
【0007】
この構成によれば、スピーカ装置の音量(音圧レベル)を決める第1の増幅装置の増幅レベルを検知し、マイク装置から出力される音声信号を増幅する第2の増幅装置の増幅レベルを上記検知レベルに応じて制御するので、スピーカ装置の音量を決める第1の増幅装置の増幅レベルの制御動作に連動してマイク装置から出力される音声信号を増幅する第2の増幅装置の増幅レベルを制御でき、フィードバック制御(学習)によってゲイン量を最適化する場合に発生するタイムラグを無くすことが可能で、瞬間的な音割れを防止することもできる。また、マイク装置から出力される音声信号の音質を改善することができる。
【0008】
また本発明は、上記ハンズフリー音声通話システムにおいて、前記音声信号処理部は、不要音の除去された音声信号を増幅する第3の増幅装置を有し、前記制御手段は、前記第1の増幅装置の増幅レベルの検知レベルに応じて、前記第3の増幅装置の増幅レベルを制御することを特徴とする。
【0009】
この構成により、不要音の除去された音声信号を増幅する第3の増幅装置の増幅レベルを、第1の増幅装置の増幅レベルの検知レベルに応じて制御するので、第1の増幅装置の増幅レベルの制御動作に連動して第2及び第3の増幅装置の増幅レベルを制御でき、フィードバック制御(学習)によってゲイン量を最適化する場合に発生するタイムラグを無くすことが可能で、瞬間的な音割れを防止することもできる。
【0010】
また本発明は、上記ハンズフリー音声通話システムにおいて、前記制御手段は、前記第1の増幅装置の増幅レベルが上がるのに連動させて前記第2の増幅装置の増幅レベルを下げ、前記第1の増幅装置の増幅レベルが下がるのに連動させて前記第2の増幅装置の増幅レベルを上げることを特徴とする。
【0011】
この構成により、前記第1の増幅装置の増幅レベルが下がるのに連動させて前記第2の増幅装置の増幅レベルを上げることができるので、マイク装置から取り込まれたユーザの音声を最大限に増幅でき、音質を改善することができる。
【0012】
また本発明は、上記ハンズフリー音声通話システムにおいて、前記制御手段は、前記第1の増幅装置の増幅レベルが上がるのに連動させて前記第3の増幅装置の増幅レベルを上げ、前記第1の増幅装置の増幅レベルが下がるのに連動させて前記第3の増幅装置の増幅レベルを下げることを特徴とする。
【0013】
この構成により、マイク装置から取り込まれたユーザの音声信号であって音声信号処理部で不要音を除去した後の音声信号が、第2の増幅装置の増幅レベルを増減させることで変動するが、常に第3の増幅装置によってターゲットレベルに維持することができる。
【0014】
また本発明のハンズフリー音声通話ユニットは、音声通話端末と無線通信して音声信号を送受信する無線通信部と、スピーカ装置へ増幅した音声信号を入力するための第1の増幅装置が接続され、前記無線通信部が前記音声通話端末から受信した音声信号を出力する出力端子と、外部音を集音するマイク装置が接続される入力端子と、前記マイク装置から前記入力端子に入力された音声信号を増幅する第2の増幅装置と、前記第2の増幅装置から出力される音声信号から不要音を除去して前記無線通信部へ出力する音声信号処理部と、を具備し、前記第1の増幅装置の増幅レベルを検知した検知レベルに応じて、前記第2の増幅装置の増幅レベルが制御されることを特徴とする。
【0015】
この構成によれば、スピーカ装置の音量(音圧レベル)を決める第1の増幅装置の増幅レベルを検知し、マイク装置から出力される音声信号を増幅する第2の増幅装置の増幅レベルを上記検知レベルに応じて制御するので、マイク装置から出力される音声信号の音質を改善することができる。また、スピーカ装置の音量を決める第1の増幅装置の増幅レベルの制御動作に連動してマイク装置から出力される音声信号を増幅する第2の増幅装置の増幅レベルを制御でき、フィードバック制御(学習)によってゲイン量を最適化する場合に発生するタイムラグを無くすことが可能で、瞬間的な音割れを防止することもできる。
【0016】
上記ハンズフリー音声通話ユニットにおいて、前記音声信号処理部は、不要音の除去された音声信号を増幅する第3の増幅装置を有する構成とする。この場合、前記第1の増幅装置の増幅レベルを検知した検知レベルに応じて、前記第3の増幅装置の増幅レベルが制御されることが望ましい。
【0017】
上記ハンズフリー音声通話ユニットにおいて、前記第1の増幅装置の増幅レベルが上がるのに連動して前記第2の増幅装置の増幅レベルが下げられ、前記第1の増幅装置の増幅レベルが下がるのに連動して前記第2の増幅装置の増幅レベルが上げられるように制御されても良い。
【0018】
上記ハンズフリー音声通話ユニットにおいて、前記第1の増幅装置の増幅レベルが上がるのに連動して前記第3の増幅装置の増幅レベルが上げられ、前記第1の増幅装置の増幅レベルが下がるのに連動して前記第3の増幅装置の増幅レベルが下げられるように制御されても良い。
【0019】
また本発明のハンズフリー音声通話方法は、音声通話端末と無線通信して受信した音声信号を、第1の増幅装置で増幅してスピーカ装置へ出力し、前記スピーカ装置の音声出力を含めて外部音を集音したマイク装置から出力される音声信号を第2の増幅装置で増幅して音声信号処理部に取り込み、前記音声信号処理部で不要音を除去した音声信号を前記無線通信部から前記音声通話端末へ無線通信し、前記第1の増幅装置の増幅レベルが上がるのに連動させて前記第2の増幅装置の増幅レベルを下げ、前記第1の増幅装置の増幅レベルが下がるのに連動させて前記第2の増幅装置の増幅レベルを上げることを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、マイク装置から出力される音声信号を増幅するための各種増幅装置の増幅レベルを、タイムラグ無く設定可能で、瞬間的な音割れを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の一実施の形態に係るハンズフリー音声通話システムの全体構成図
【図2】(a)スピーカ装置を通常音量に調整して走行した場合の音声信号の増幅状況を示す図、(b)スピーカ装置を大音量に調整して走行した場合の音声信号の増幅状況を示す図
【図3】従来のハンズフリー音声通話装置の機能ブロック図
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施の形態について添付図面を参照して詳細に説明する。
本実施の形態として、カーオーディオシステムにハンズフリー音声通話システムを適用した例を説明するが、本発明はカーオーディオシステム以外にも適用可能である。
【0023】
図1は本発明の一実施の形態に係るハンズフリー音声通話システムの全体構成図である。本実施の形態のハンズフリー音声通話システム20は、音声通話端末である携帯電話機30との間で短距離無線通信し、携帯電話機30から受信した音声信号をスピーカ装置40から音声出力する一方、マイク装置50から取り込んだ外部音を携帯電話機30へ送信することで、ハンズフリーによる双方向通話を実現している。
【0024】
ハンズフリー音声通話システム20は、短距離無線通信モジュール21と、カーオーディオシステムのホストを兼ねるホスト22とを有する。短距離無線通信モジュール21は、携帯電話機30との間で所定通信方式の短距離無線通信を行う短距離無線通信部31と、音声信号を処理する音声信号処理部32とを備える。短距離無線通信部31は、車内に持ち込まれた携帯電話機30との間で短距離無線通信方式の一つであるブルートゥース(登録商標)を用いて通信する。短距離無線通信方式はブルートゥース(登録商標)に限定されない。
【0025】
携帯電話機30は、セルラーシステムを構成する基地局BSとの間で契約キャリアに対応した無線通信方式(例えば、CDMA/GSM)を用いて音声データ/通信データを送受信し、キャリア通信網を経由して相手端末TAとの間で音声データ/通信データを送受信する。
【0026】
音声信号処理部32は、マイク装置50から取り込まれる外部音の音声信号を携帯電話機30へ送信するための送信信号経路に、エコーキャンセラー回路33、ノイズ抑制回路34及び第3の増幅装置であるデジタル増幅装置35を備える。エコーキャンセラー回路33は、マイク装置50から取り込まれる音声信号に含まれるエコー信号を除去する。エコー信号はスピーカ装置40から音声出力されてマイク装置50に回り込んだエコー信号を除去するために受信信号経路からエコーキャンセル用の音声信号を取り込んでいる。ノイズ抑制回路34は、車両から発生する主にエンジン音、タイヤ摩擦音からなるノイズ音を抑制する。デジタル増幅装置35は、ユーザの音声信号がターゲットレベルとなるように、音声信号を増幅する際の増幅レベル(以下、デジタルゲインという)をホスト22から制御される。
【0027】
音声信号処理部32は、携帯電話機30から受信した音声信号を、受信信号経路を経由してスピーカ装置40側へ伝送する。上記した通り、この受信信号経路からエコーキャンセル用の音声信号を取り出してエコーキャンセラー回路33へ出力する。音声信号処理部32における受信信号経路の終端に出力端子T1が設けられている。出力端子T1に対してデジタルアナログ変換装置36が接続されている。デジタルアナログ変換装置36でアナログ信号に変換された音声信号は短距離無線通信モジュール21の出力端子T2からモジュール外へ出力される。短距離無線通信モジュール21の出力端子T2に対して第1の増幅装置であるスピーカ用増幅装置23が接続されている。スピーカ用増幅装置23は、ホスト22から音声信号を増幅する増幅レベル(以下、スピーカゲインという)が制御される。スピーカ用増幅装置23の出力端子にスピーカ装置40が接続されている。スピーカ装置40は、スピーカ用増幅装置23で増幅された音声信号を信号レベルに応じたパワーで音声出力する。
【0028】
短距離無線通信モジュール21のマイク側の入力端子T3に対してマイク装置50の出力端子が接続されている。入力端子T3には第2の増幅装置であるマイク用増幅装置37が接続されている。マイク用増幅装置37は、入力端子T3から入力する音声信号の増幅レベル(以下、マイクゲインという)を、ホスト22から制御される。マイク用増幅装置37の出力端子は、アナログデジタル増幅装置38の入力端子に接続されている。アナログデジタル増幅装置38は、マイク用増幅装置37から出力される音声信号をデジタル信号に変換する。アナログデジタル増幅装置38から出力されるデジタル信号からなる音声信号は短距離無線通信モジュール21のエコーキャンセラー回路33へ入力される。
【0029】
ホスト22は、音声出力制御信号に基づいてスピーカ用増幅装置23のスピーカゲインを制御すると共に、スピーカ用増幅装置23のスピーカゲインに連動してマイク用増幅装置37及びデジタル増幅装置35のマイクゲイン、デジタルゲインを制御する。ホスト22に与えられる音声出力制御信号は、ユーザが図示しないユーザインタフェース(ボリューム等)を介して操作入力する場合と、オーディオシステムが自動制御する場合とを含むことができる。
【0030】
ここで、ホスト22が、スピーカ用増幅装置23、マイク用増幅装置37及びデジタル増幅装置35のゲインをどのように決定するかについて説明する。
マイク装置50で取り込まれる外部音は、マイク装置50に向けてユーザ(運転者)が発した音声(以下、ユーザ音声信号という)と、スピーカ装置40から音声出力されてマイク装置50に入るいわゆるエコー音声(以下、エコー信号という)と、エコー信号を除いた周囲音(以下、ノイズ信号という)とを主な信号成分として含んでいる。
【0031】
本実施の形態では、ユーザ音声信号、エコー信号、ノイズ信号のいずれもが後段に配置されたアナログデジタル変換装置38のダイナミックレンジを越えず、かつ、ユーザ音声信号が最大になるようなマイクゲインを、マイク用増幅装置37に設定する。ユーザ音声信号をアナログデジタル変換装置38のダイナミックレンジに対してどこまで拡大できるかによって音声信号の情報量(音質)が決まる。
【0032】
ハンズフリーシステムにおけるスピーカ音量と周囲音との相関関係は、次のように把握することができる。一般に、ユーザは、周囲音(車内でのエンジン音、タイヤの摩擦音等)が低い場合、スピーカ装置40の音量を下げる方向で調整して通話する。逆に、周囲音が高い場合は、スピーカ装置40の音量を上げる方向で調整して通話する。
【0033】
スピーカ装置40の音量を下げている場合、すなわちスピーカ用増幅装置23のスピーカゲインが低い値に制御される場合は、エコー信号とノイズ信号が低いレベルであると考えられる。エコー信号及びノイズ信号が低いレベルであれば、ユーザ音声信号をアナログデジタル変換装置38のダイナミックレンジの最大値付近まで増幅できるので、マイク用増幅装置37に設定する増幅レベルを上げることができる。
【0034】
逆に、スピーカ装置40の音量を上げている場合、すなわちスピーカ用増幅装置23のスピーカゲインが高い値に制御される場合は、エコー信号とノイズ信号が高いレベルであると考えられる。エコー信号及びノイズ信号が高いレベルであれば、マイク用増幅装置37のマイクゲインをそれほど上げなくても、エコー信号又はノイズ信号がアナログデジタル変換装置38のダイナミックレンジの最大値まで増幅される。そのため、エコー信号及びノイズ信号と同じマイクゲインで増幅されるユーザ音声信号はアナログデジタル変換装置38のダイナミックレンジに対して十分増幅されない状況となる。
【0035】
ホスト22は、周囲音等に応じて調整される音声出力制御信号にしたがってスピーカ用増幅装置23のスピーカゲインを制御する。ホスト22は、スピーカ用増幅装置23のスピーカゲインに連動してマイク用増幅装置37及びデジタル増幅装置35のマイクゲイン及びデジタルゲインを制御する。スピーカ用増幅装置23のスピーカゲインが低い場合は、マイク用増幅装置37のマイクゲインを上げると共に、デジタル増幅装置35のデジタルゲインを下げるように制御する。また、スピーカ用増幅装置23のスピーカゲインが高い場合は、マイク用増幅装置37のマイクゲインを下げると共に、デジタル増幅装置35のデジタルゲインを上げるように制御する。
【0036】
次に、本実施の形態におけるスピーカ用増幅装置23、マイク用増幅装置37及びデジタル増幅装置35の各ゲインの増減動作について、具体的に説明する。
図2(a)はスピーカ装置40を通常音量に調整して走行した場合の音声信号の増幅状況を示す図である。具体的には、ホスト22は、スピーカ装置40を通常音量に調整する音声出力制御信号を受けて、スピーカ用増幅装置23のスピーカゲインを+0dBに制御している。この結果、ユーザが発してマイク装置50に入力するユーザ音声の音圧レベルは70dB SPL(Sound Pressure Level)となり、スピーカ装置40から音声出力されてマイク装置50に回り込むエコー信号の音圧レベルも70dB SPLとなっている。ノイズ信号はエコー信号とほぼ同じ音圧レベルである。
【0037】
ホスト22は、スピーカ用増幅装置23のスピーカゲインを+0dBに制御する場合、同時にマイク用増幅装置37のマイクゲイン及びデジタル増幅装置35のデジタルゲインの制御量を決定し、スピーカ用増幅装置23のスピーカゲインの制御に連動してマイク用増幅装置37及びデジタル増幅装置35のゲインを制御する。
【0038】
図2(a)に示すように、スピーカ用増幅装置23のスピーカゲインを+0dBに制御する場合、ユーザ音声信号、エコー信号及びノイズ信号は共に信号レベルが低いので、小さなユーザ音声信号がアナログデジタル変換装置38のダイナミックレンジの最大値(120dB)に近づくような大きなマイクゲインに制御する。図2(a)では、ユーザ音声信号、エコー信号、ノイズ信号のいずれも110dBまで増幅されている。エコーキャンセラー回路33において音声信号に含まれたエコー信号が除去され、さらにノイズ抑制回路34においてノイズ信号が除去される。その結果、ユーザ音声信号は110dBのままであるが、エコー信号は30dBまで減衰された。
【0039】
ホスト22は、スピーカ用増幅装置23のスピーカゲインを+0dBに制御する動作に連動して、デジタル増幅装置35を、ユーザ音声信号がターゲットレベルまで増幅されるようなデジタルゲインに制御する。図2(a)に示すように、スピーカゲインが0dBのときは、マイク用増幅装置37が大きなマイクゲインに制御されているので、デジタル増幅装置35に入力する段階で、既にユーザ音声信号は音声ターゲットレベルとなる110dBまで増幅されている。そこで、ユーザ音声信号がターゲットレベルを超えないように、デジタル増幅装置35は0dBのデジタルゲインに制御される。
【0040】
図2(b)はスピーカ装置40を大音量に調整して走行した場合の音声信号の増幅状況を示す図である。同図では、ホスト22は、相対的に大きな音量に調整する音声出力制御信号を受けて、スピーカ用増幅装置23のスピーカゲインを+20dBに制御している。マイク装置50に入力するユーザ音声は、通常音量時と同じ70dB SPLとしている。スピーカ装置40から音声出力されてマイク装置50に回り込むエコー信号は、スピーカゲインを+20dBに制御していることから、通常音量時よりも高い90dB SPLとなっている。
【0041】
ホスト22は、エコー信号が90dB SPLと高いので、通常音量時よりも低いマイクゲインを、スピーカゲインの制御動作に連動して、マイク用増幅装置37に設定する。これにより、ユーザ音声信号は100dB、エコー信号は120dBに増幅される。エコーキャンセラー回路33においてエコー信号が削除されて40dBまで小さくなる。マイク用増幅装置37で100dBまで増幅されたユーザ音声信号を、デジタル増幅装置35でターゲットレベルまで増幅する。デジタル増幅装置35におけるデジタルゲインの制御も、スピーカ用増幅装置23のスピーカゲインの制御動作に連動させる。
【0042】
図2(a)(b)には、スピーカ用増幅装置23のスピーカゲインを+0dBに制御する場合(同図(a))と、スピーカゲインを+20dBに制御する場合(同図(b))の2つを例示しているが、スピーカゲインの大きさに対応してマイク用増幅装置37及びデジタル増幅装置35の各ゲインを増減させる。
【0043】
以上のようにして、エコー信号及びノイズ信号を削除し、ターゲットレベルまで増幅したユーザ音声信号が、短距離無線通信部31から携帯電話機30へ無線通信される。
【0044】
このように、スピーカ用増幅装置23のスピーカゲインが小さい場合には、マイク用増幅装置37が大きなマイクゲインとなるように制御され、アナログデジタル変換装置38のダイナミックレンジを十分に活用できる信号レベルまでユーザ音声信号を増幅でき、音質の改善を図ることができる。
【0045】
また、ホスト22がスピーカ用増幅装置23のスピーカゲインの制御に連動して、マイク用増幅装置37のマイクゲイン及びデジタル増幅装置35のデジタルゲインを制御するので、従来のようなフィードバック制御(学習)によるタイムラグがなくなり、瞬間的な音割れを防止することができる。
【符号の説明】
【0046】
20 ハンズフリー音声通話システム
21 短距離無線通信モジュール
22 ホスト
23 スピーカ用増幅装置
30 携帯電話機
31 短距離無線通信部
32 音声信号処理部
33 エコーキャンセラー回路
34 ノイズ抑制回路
35 デジタル増幅装置
36 デジタルアナログ変換装置
37 マイク用増幅装置
38 アナログデジタル増幅装置
40 スピーカ装置
50 マイク装置



【特許請求の範囲】
【請求項1】
音声通話端末と無線通信して音声信号を送受信する無線通信部と、
前記無線通信部が前記音声通話端末から受信した音声信号を増幅する第1の増幅装置と、
前記第1の増幅装置から出力される音声信号を入力して音声出力するスピーカ装置と、
前記スピーカ装置の音声出力を含めて外部音を集音するマイク装置と、
前記マイク装置から出力される音声信号を増幅する第2の増幅装置と、
前記第2の増幅装置から出力される音声信号から不要音を除去して前記無線通信部へ出力する音声信号処理部と、
前記第1の増幅装置の増幅レベルを検知し、検知レベルに応じて前記第2の増幅装置の増幅レベルを制御する制御手段と、
を具備したことを特徴とするハンズフリー音声通話システム。
【請求項2】
前記音声信号処理部は、不要音の除去された音声信号を増幅する第3の増幅装置を有し、
前記制御手段は、前記第1の増幅装置の増幅レベルの検知レベルに応じて、前記第3の増幅装置の増幅レベルを制御する、
ことを特徴とする請求項1記載のハンズフリー音声通話システム。
【請求項3】
前記制御手段は、前記第1の増幅装置の増幅レベルが上がるのに連動させて前記第2の増幅装置の増幅レベルを下げ、前記第1の増幅装置の増幅レベルが下がるのに連動させて前記第2の増幅装置の増幅レベルを上げることを特徴とする請求項1又は請求項2記載のハンズフリー音声通話システム。
【請求項4】
前記制御手段は、前記第1の増幅装置の増幅レベルが上がるのに連動させて前記第3の増幅装置の増幅レベルを上げ、前記第1の増幅装置の増幅レベルが下がるのに連動させて前記第3の増幅装置の増幅レベルを下げることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載のハンズフリー音声通話システム。
【請求項5】
音声通話端末と無線通信して音声信号を送受信する無線通信部と、
スピーカ装置へ増幅した音声信号を入力するための第1の増幅装置が接続され、前記無線通信部が前記音声通話端末から受信した音声信号を出力する出力端子と、
外部音を集音するマイク装置が接続される入力端子と、
前記マイク装置から前記入力端子に入力された音声信号を増幅する第2の増幅装置と、
前記第2の増幅装置から出力される音声信号から不要音を除去して前記無線通信部へ出力する音声信号処理部と、を具備し、
前記第1の増幅装置の増幅レベルを検知した検知レベルに応じて、前記第2の増幅装置の増幅レベルが制御されることを特徴とするハンズフリー音声通話ユニット。
【請求項6】
前記音声信号処理部は、不要音の除去された音声信号を増幅する第3の増幅装置を有し、
前記第1の増幅装置の増幅レベルを検知した検知レベルに応じて、前記第3の増幅装置の増幅レベルが制御される、
ことを特徴とする請求項5記載のハンズフリー音声通話ユニット。
【請求項7】
前記第1の増幅装置の増幅レベルが上がるのに連動して前記第2の増幅装置の増幅レベルが下げられ、前記第1の増幅装置の増幅レベルが下がるのに連動して前記第2の増幅装置の増幅レベルが上げられることを特徴とする請求項5記載のハンズフリー音声通話ユニット。
【請求項8】
前記第1の増幅装置の増幅レベルが上がるのに連動して前記第3の増幅装置の増幅レベルが上げられ、前記第1の増幅装置の増幅レベルが下がるのに連動して前記第3の増幅装置の増幅レベルが下げられることを特徴とする請求項6記載のハンズフリー音声通話ユニット。
【請求項9】
音声通話端末と無線通信して受信した音声信号を、第1の増幅装置で増幅してスピーカ装置へ出力し、
前記スピーカ装置の音声出力を含めて外部音を集音したマイク装置から出力される音声信号を第2の増幅装置で増幅して音声信号処理部に取り込み、
前記音声信号処理部で不要音を除去した音声信号を前記音声通話端末へ無線通信し、
前記第1の増幅装置の増幅レベルが上がるのに連動させて前記第2の増幅装置の増幅レベルを下げ、前記第1の増幅装置の増幅レベルが下がるのに連動させて前記第2の増幅装置の増幅レベルを上げる、
ことを特徴とするハンズフリー音声通話方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−61344(P2011−61344A)
【公開日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−206689(P2009−206689)
【出願日】平成21年9月8日(2009.9.8)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.GSM
【出願人】(000010098)アルプス電気株式会社 (4,263)
【Fターム(参考)】