説明

ハンドセット及び通信機器

【課題】ハンドセットの受話側の低域感度を確保し得る。
【解決手段】実施形態によれば、ハンドセットは、音声通話を行うための送話器及び受話器を備えるハンドセットを対象にし、第1の筐体と、第2の筐体と、連結部と、第1及び第2の穴とを備える。第1の筐体は、前記受話器を収容する。第2の筐体は、前記送話器を収容する。連結部は、前記第1及び第2の筐体の間を連結し、話者が手で持つ箇所を有する。第1及び第2の穴は、前記第1の筐体の前記受話器の音声出力側とは反対の背面側で、前記連結部の長手方向の一端側及び他端側の位置に貫通して形成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、音声通話を行うための送話器及び受話器を備えるハンドセットと、このハンドセットを備える通信機器に関する。
【背景技術】
【0002】
音声通話(送話と受話)を行う電話機は、ハンドセットで通話することが可能である。ところで、近年では、IP(Internet Protocol)電話システムが普及し始めている。このIP電話システムでは、例えばLAN(Local Area Network)やインターネットを含むIP網にIP電話機を接続すると共に、IP網上の呼制御サーバにおいてプロトコル変換及びデータのフォーマット変換等を行うことにより、IP電話機間及びIP電話機と一般電話網との間で音声通信を可能にしている。
【0003】
従来のアナログ電話システムでは音声コーデックを電話局の交換機に持ち、符号化方式にはITU−T・G.711が用いられてきたが、IP電話システムでは音声コーデックを電話端末側に実装するため音声コーデックを選択できるようになった。広帯域をカバーするコーデックを使用することにより、従来の電話機よりも高い音や低い音も再生できるようになり話し声も聞き取りやすくなるため、広帯域音声の要求が高まっている。
【0004】
なお、近年では、ハンドセットの受話器側に受話器から出力される音声をハンドセットケースの外部に逃すための穴を設けることで、音響調整の範囲を拡げて、人の耳に入る音質の向上を実現する技術が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平04−236546号公報
【特許文献2】特開平11−266489号公報
【特許文献3】実開平05−060001号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上記技術では、ハンドセットの持ち方によって、穴が塞がれてしまうことがある。すると、低域感度(150Hz〜250Hz)が悪くなってしまう。
【0007】
本発明の目的は、ハンドセットの受話側の低域感度を確保し得るハンドセット及び通信機器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
実施形態によれば、ハンドセットは、音声通話を行うための送話器及び受話器を備えるハンドセットを対象にし、第1の筐体と、第2の筐体と、連結部と、第1及び第2の穴とを備える。第1の筐体は、前記受話器を収容する。第2の筐体は、前記送話器を収容する。連結部は、前記第1及び第2の筐体の間を連結し、話者が手で持つ箇所を有する。第1及び第2の穴は、前記第1の筐体の前記受話器の音声出力側とは反対の背面側で、前記連結部の長手方向の一端側及び他端側の位置に貫通して形成される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】第1の実施形態における電話機の外観図。
【図2】上記図1に示した電話機本体の内部構成を示すブロック図。
【図3】第1の実施形態において、レシーバ及びマイクロホンをハンドセットに収容する手順及びその構造を示す分解斜視図。
【図4】第1の実施形態において、レシーバをハンドセットに収容した時の内部構成を示す断面図。
【図5】第1の実施形態において、レシーバ21の構造を示す平面図。
【図6】第1の実施形態において、音声の感度を示す特性図。
【図7】第1の実施形態において、ハンドセットを製造する際の金型構造とその動きを示す断面図。
【図8】第2の実施形態として、ハンドセットの第1の筐体側の内部構造を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、実施の形態について、図面を参照して説明する。
【0011】
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態における電話機の外観図である。
図1において、符号1は電話機本体で、前面パネル部の図中左側には、受話用のレシーバ、送話用のマイクロホンを備えたハンドセット2が配設されている。電話機本体1の前面パネル部には、LCD等を使用した表示部11が配置され、さらにこの表示部11の下方パネル部にはダイヤルキー、機能キー等からなるキーマトリクス12が配設されている。
【0012】
図2は、電話機本体1の内部構成を示すブロック図である。
電話機本体1は、伝送部13、通話処理部14、主制御部15を有している。伝送部13は、ネットワークNWを介して外部の機器との間で伝送により種々のデータの授受を行なう。また、伝送部13は、外部の機器から送られてきた例えばIPパケット中から通話信号や制御信号を抽出し、通話信号を通話処理部14へ、制御信号を主制御部15へとそれぞれ与える。さらに伝送部13は、通話処理部14や主制御部15から与えられるシリアルデータ信号を時分割多重して伝送用のIPパケットを生成し、ネットワークNW側へ送信する。
【0013】
通話処理部14は、伝送部13から与えられる通話信号に含まれる通話データを取り出して、この通話データからアナログの受話音声信号を再生する。そして、通話処理部14は、この再生した受話音声信号によりハンドセット2のレシーバ21を駆動し、受話音声の出力を行なわせる。また、通話処理部14には、ハンドセット2のマイクロホン22で生成されたアナログの送話音声信号が入力される。通話処理部14は、この送話音声信号を所定形態の通話信号に変換して、伝送部13へと与える。
【0014】
主制御部15は、CPU、ROM、RAMなどを有して構成され、ソフトウェア処理により本電話機の各部の制御を行なう。
【0015】
表示部11には、主制御部15から出力された自機器の動作状態を表す種々情報、電話帳なども表示される。
【0016】
ところで、上記ハンドセット2へのレシーバ21及びマイクロホン22の収容は、次のように行われる。図3は、その接続手順と接続構造を示すハンドセット2の分解斜視図である。
【0017】
図3において、110はハンドセットベースで、開口部にハンドセットカバー200が装着される。ハンドセットベース110は、第1の筐体111と、第2の筐体112と、これら第1の筐体111及び第2の筐体112を連結する連結部113とを一体的に形成したものである。第1の筐体111にはレシーバ21の音声出力部21aがスポンジ120を介して収容される。第2の筐体112には、マイクロホン22が支持部130を介して収容される。連結部113は、中央部に話者が手でハンドセット2を握る箇所を有する。
【0018】
レシーバ21及びマイクロホン22は、配線23,24を介してコネクタ25に接続される。コネクタ25は、第2の筐体112に収容され、実装時に配線を介して電話機本体1側のコネクタに接続される。
【0019】
レシーバ21が第1の筐体111に収容され、マイクロホン22及びコネクタ25が第2の筐体112に収容されると、レシーバ21の音声出力部21aの反対側となる背面部21b及び支持部130には、コ字型のハンドセットおもり140が当接されることになる。このハンドセットおもり140は、ネジ151,152によりハンドセットベース110に取り付けられる。
【0020】
ハンドセットおもり140の取り付け終了後に、ハンドセットベース110の開口部に対しハンドセットカバー200が装着される。そして、ハンドセットカバー200は、ネジ170によりハンドセットベース110に固定される。このため、レシーバ21は、図4に示すように、その音声出力部21aがスポンジ120を介して第1の筐体111の円状のリブ111a,111bに支持される。また、レシーバ21の背面部21bとハンドセットカバー200との間には、後気室180が形成される。
【0021】
図5は、上記レシーバ21の構造を示すもので、(a)は側面図、(b)は背面部21bの正面図をそれぞれ示している。このレシーバ21は、その背面部21bに、レシーバ21の内部の空気を後気室180に送る空気穴21cが設けられている。
【0022】
ところで、後気室180において、容積が十分でない場合、図6の点線に示すように、低域感度(150Hz〜250Hz)が悪化してしまうことになる。この低域感度が悪化してしまうと、通話相手からの音声がこもったような小さな音になる。特に、電話機全体の小型化を図ると、ハンドセット2自体も小型化することになり、後気室180の容積が十分に確保できない場合がある。
【0023】
そこで、本第1の実施形態では、レシーバ21の背面部21b側、つまり後気室180の面した所に、ハンドセット2の連結部113の長手方向に沿って2箇所の穴310,320を貫通して形成するようにしている。これら穴310,320により、後気室180とハンドセット2外部とがつながって空気が自由に行き来できるようになるため、図6の実線で示すように、低域感度が改善する。
【0024】
従って、このように構成された電話機においては、ハンドセット2が小型化されたとしても、話者の手により穴310,320が塞がれることが防止され、これによりハンドセット2の受話側において安定した低域感度を確保でき、人の耳に入る音質の向上を実現できる。
【0025】
また、上記穴310,320は、連結部113の長手方向に沿って互いに対向する位置に形成されるため、通常の金型技術で穴をあけることができる。図7は、その金型構造とその動きを示す断面図である。
【0026】
まず、図7(a)に示すように、穴310は金属部410と一体的に形成され、穴320はX軸方向にスライド可能なスライドコマ420と一体的に形成されている。そして、穴320を形成する場合、図7(a)に示す状態から図7(b)に示す状態へ、スライドコマ420を図中X1方向へ移動させる。これにより、穴320が形成される。
【0027】
続いて、穴310を形成する場合、図7(b)に示す状態から図7(c)に示す状態へ、金属部410を図中Y1方向へ移動させ、金属部430を図中Y2方向へ移動させる。これにより、ハンドセットベース110及び穴310が形成される。
【0028】
以上のように上記第1の実施形態では、ハンドセット2の第1の筐体111に穴310,320を、レシーバ21の背面部21b側で、ハンドセット2の連結部113の長手方向、つまり人の手の握りを軸とする軸上の上下の位置に形成するようにしている。従って、話者のハンドセット2の持ち方に関係なく、穴310,320が塞がれることはなくなり、これによりハンドセット2の受話側において安定した低域感度を確保でき、人の耳に入る音質の向上を実現できる。
【0029】
また、穴310,320は、第1の筐体111の互いに対向する位置に貫通して形成される。これにより、通常の金型技術で穴をあけることができ、製造性が良くなる。
【0030】
(第2の実施形態)
図8は、第2の実施形態として、ハンドセット2の第1の筐体111側の内部構造を示す断面図である。図8において、上記図4と同一部分には同一符号を付して詳細な説明を省略する。
【0031】
本第2の実施形態では、第1の筐体111において、ハンドセット2の連結部113の長手方向に沿っているが、穴310と対向しない位置に穴330を貫通して形成するようにしている。
【0032】
上記第2の実施形態にあっても、先の第1の実施形態と同様に、話者のハンドセット2の持ち方に関係なく、穴310,330が塞がれることはなくなり、これによりハンドセット2の受話側において安定した低域感度を確保でき、人の耳に入る音質の向上を実現できる。
【0033】
(その他の実施形態)
上記各実施形態に限定されるものではない。電話機以外の通信機器や、ハンドセットの構造等についても、この発明の要旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施できる。
【0034】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0035】
1…電話機本体、2…ハンドセット、11…表示部、12…キーマトリクス、13…伝送部、14…通話処理部、15…主制御部、21…レシーバ、21a…音声出力部、21b…背面部、21c…空気穴、22…マイクロホン、23、24…配線、25…コネクタ、110…ハンドセットベース、111…第1の筐体、112…第2の筐体、113…連結部、120…スポンジ、130…支持部、140…ハンドセットおもり、151,152…ネジ、180…後気室、200…ハンドセットカバー、310,320,330…穴、410,430…金属部、420…スライドコマ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
音声通話を行うための送話器及び受話器を備えるハンドセットにおいて、
前記受話器を収容する第1の筐体と、
前記送話器を収容する第2の筐体と、
前記第1及び第2の筐体の間を連結し、話者が手で持つ箇所を有する連結部と、
前記第1の筐体の前記受話器の音声出力側とは反対の背面側で、前記連結部の長手方向の一端側及び他端側の位置に貫通して形成される第1及び第2の穴とを具備するハンドセット。
【請求項2】
前記第1及び第2の穴は、前記第1の筐体の互いに対向する位置に形成される請求項1記載のハンドセット。
【請求項3】
前記受話器の背面側には、前記受話器内部の空気を当該背面側に送る空気穴を設ける請求項1記載のハンドセット。
【請求項4】
音声通話を行うための送話器及び受話器を備えるハンドセットと、
前記ハンドセットを接続し、ネットワークとの間で所定の音声通話処理を実行する本体部とを具備し、
前記ハンドセットは、
前記受話器を収容する第1の筐体と、
前記送話器を収容する第2の筐体と、
前記第1及び第2の筐体の間を連結し、話者が手で持つ箇所を有する連結部と、
前記第1の筐体の前記受話器の音声出力側とは反対の背面側で、前記連結部の長手方向の一端側及び他端側の位置に貫通して形成される第1及び第2の穴とを備える通信機器。
【請求項5】
前記第1及び第2の穴は、前記第1の筐体の互いに対向する位置に形成される請求項4記載の通信機器。
【請求項6】
前記受話器の背面側には、前記受話器内部の空気を当該背面側に送る空気穴を設ける請求項4記載の通信機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−115742(P2013−115742A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−262529(P2011−262529)
【出願日】平成23年11月30日(2011.11.30)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】