説明

ハンド及びロボット

【課題】部品を把持するための腕(アーム)の姿勢変化を小さくすることが可能なハンド及びロボットを提供する。
【解決手段】ハンド35aは、1対の支持部42と、1対の支持部42の内側にそれぞれ支持され、部品を把持する1対の把持爪36と、1対の支持部42を各支持部42の長手方向と交差する揺動軸AXpに沿って開閉させる開閉機構400と、1対の把持爪36を揺動軸AXp回りに揺動させ、把持爪36の先端の向きを変更させる揺動機構500とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハンド及びロボットに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、モータによって駆動され、形状の異なる種々の把持対象物を確実かつ高速に把持するスライド式チャックが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−283268号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、部品を把持するための腕(アーム)の姿勢変化を小さくすることが可能なハンド及びロボットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記目的に沿う第1の発明に係るハンドは、1対の支持部と、
前記1対の支持部の内側にそれぞれ支持され、部品を把持する1対の把持爪と、
前記1対の支持部を該各支持部の長手方向と交差する揺動軸に沿って開閉させる開閉機構と、
前記1対の把持爪を前記揺動軸回りに揺動させ、該把持爪の先端の向きを変更させる揺動機構とを備える。
【0006】
第1の発明に係るハンドにおいて、前記開閉機構は、開閉用サーボモータと、
前記開閉用サーボモータによって回転し、互いに逆向きのねじが左右にそれぞれ形成された左右ねじシャフトと、
前記左右ねじシャフトの回転によって、それぞれ該左右ねじシャフトの回転軸に沿って互いに反対方向に移動する1対の移動部と、を有し、
前記1対の移動部に、前記1対の支持部がそれぞれ固定されることが好ましい。
【0007】
第1の発明に係るハンドにおいて、前記揺動機構は、揺動用サーボモータと、
前記揺動用サーボモータによって回転するスプラインシャフトと、
前記スプラインシャフトと共に該スプラインシャフトの回転軸回りに回転し、該スプラインシャフトの回転軸方向に沿って移動可能な1対の第1のスプラインナット部と、
前記1対の支持部にそれぞれ固定され、前記第1のスプラインナット部と共に前記スプラインシャフトの回転軸に沿ってそれぞれ移動し、前記第1のスプラインナット部の回転軸回りに該第1のスプラインナット部に対してそれぞれ相対回転可能な1対の第2のスプラインナット部と、を有し、
前記1対の把持爪は、前記1対の第1のスプラインナット部によってそれぞれ駆動され、揺動することが好ましい。
【0008】
第1の発明に係るハンドにおいて、前記1対の把持爪は、ベルトプーリ機構を介し、前記1対の第1のスプラインナット部によって駆動されることが好ましい。
【0009】
第1の発明に係るハンドにおいて、前記開閉用サーボモータ及び前記揺動用サーボモータは、互いに反対方向を向き、それぞれの長手方向が前記揺動軸と実質的に平行となるように配置され、該ハンドの基部に設けられることが好ましい。
【0010】
第1の発明に係るハンドにおいて、前記1対の支持部は、複数の部品をそれぞれ前記1対の把持爪にて把持するために該複数の部品の配置状態を整えるツールを把持するツール把持部を更に有することが好ましい。
【0011】
第1の発明に係るハンドにおいて、前記ツール把持部は、対向する1対の第1の連結部と、
対向する1対の第2の連結部とを有し、
前記第1の連結部及び第2の連結部は、それぞれ前記支持部の内側に向かうに従ってその厚みが薄くなり、該第1の連結部及び該第2の連結部の内側先端部分は、前記支持部の内側から見て互いに交差する方向に延びて形成されることが好ましい。
【0012】
前記目的に沿う第2の発明に係るロボットは、部品を把持するハンドを備え、
前記ハンドは、1対の支持部と、
前記1対の支持部の内側にそれぞれ支持され、部品を把持する1対の把持爪と、
前記1対の支持部を該各支持部の長手方向と交差する揺動軸に沿って開閉させる開閉機構と、
前記1対の把持爪を前記揺動軸回りに揺動させ、該把持爪の先端の向きを変更させる揺動機構とを有する。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係るハンド及びロボットにおいては、部品を把持するための腕の姿勢変化を小さくすることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の一実施の形態に係る双腕マニプレータによって構成される部品ピッキングシステムの平面図である。
【図2】同双腕マニプレータを備えた部品ピッキングシステムの正面図(図1に示す矢視A)である。
【図3】同双腕マニプレータを備えた部品ピッキングシステムの側面図(図1に示す矢視B)である。
【図4A】同双腕マニプレータの左ハンドの斜視図である。
【図4B】図4Aとは別の角度から見た同双腕マニプレータの左ハンドの斜視図である。
【図4C】同双腕マニプレータの左ハンドの正面図である。
【図4D】同双腕マニプレータの左ハンドの側面図である。
【図4E】同双腕マニプレータの左ハンドの底面図である。
【図4F】同双腕マニプレータの左ハンドの平面図である。
【図4G】同双腕マニプレータの左ハンドの把持爪が閉じた状態における内部構造を示す模式図である。
【図4H】同双腕マニプレータの左ハンドの把持爪が開いた状態における内部構造を示す模式図である。
【図4I】同双腕マニプレータの左ハンドの把持爪の揺動動作を示す説明図である。
【図5】同双腕マニプレータの右ハンドの斜視図である。
【図6】同双腕マニプレータが把持する部品箱の斜視図である。
【図7】同双腕マニプレータがボルトを掻き出す様子を示す説明図である。
【図8】(A)、(B)は、同双腕マニプレータがボルトを掻き出す際の部品箱と掻き出し具を示す説明図である。
【図9】同双腕マニプレータを有する部品ピッキングシステムのボルトピッキング方法(ステップS1〜S4)を示すフロー図である。
【図10】同双腕マニプレータを有する部品ピッキングシステムのボルトピッキング方法(ステップS1)の主要動作を示すフロー図である。
【図11】同双腕マニプレータを有する部品ピッキングシステムのボルトピッキング方法(ステップS2)の主要動作を示すフロー図である。
【図12】同双腕マニプレータを有する部品ピッキングシステムのボルトピッキング方法(ステップS3)の動作を示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
続いて、添付した図面を参照しつつ、本発明を具体化した実施の形態につき説明し、本発明の理解に供する。なお、各図において、説明に関連しない部分は図示を省略する場合がある。
【0016】
図1に示すように、部品ピッキングシステム10は、本発明の一実施の形態に係る双腕マニプレータ(ロボットの一例)11、配膳台13、掻き出し具15、作業台17、2次元カメラ100、及び複数の部品棚20を備えている。部品ピッキングシステム10は、更に、ロボットコントローラ22、システムコントローラ24及び画像処理用コンピュータ26を備えている。
【0017】
そのうち、配膳台13、作業台17、及び部品棚20は、双腕マニプレータ11を中心として、時計回りに順に配置されている。特に各部品棚20は、双腕マニプレータ11の胴体11cの旋回軸(双腕マニプレータ11の設置面と交差する軸)AX1を中心とする、実質的に同一の円周上に配置されることが好ましい。このように配膳台13等が配置されることで、双腕マニプレータ11の動線が短くなり、双腕マニプレータ11が効率的に動作する。
【0018】
部品ピッキングシステム10は、双腕マニプレータ11を用いて、部品棚20から必要な種類のボルト(部品の一例)を必要な数だけ取り出し、搬送台車12上に積まれた配膳箱B1に収納することができる。
なお、部品ピッキングシステム10は、図1〜図3に示すように、出入口に引き扉30が設けられた防護壁31によって囲われている。
【0019】
双腕マニプレータ11は、旋回可能な胴体11cの左右にそれぞれ左腕11a及び右腕11bを有している。左腕11a及び右腕11bは、それぞれ例えば、7つの関節軸を有する多関節マニプレータである。
【0020】
左腕11aの先端の手首フランジ32aには、図4A、図4Bに示すように、左力覚センサ33aを介して左ハンド(ハンドの一例)35aが設けられている。この左ハンド35aは、ボルトをつまむ1対の把持爪36と、後述する掻き出し具(ツールの一例)15を把持する1対のツール把持部41とを有している。
把持爪36は、例えば回転軸AXtの方向に延びる1対の支持部42の内側先端部にて支持されている。把持爪36は、各支持部42の長手方向と交差する揺動軸AXp回りに揺動し、その先端の向きを変えることができる。
また、把持爪36は、支持部42が開閉することによって、揺動軸AXpに沿って開閉可能に構成されている。把持爪36の先端部は、左ハンド35aを正面視して、先端に向かうに従って厚みが薄くなっている(図4C参照)。また、把持爪36の先端部内側には、滑り止めのパッド43が設けられている。
ツール把持部41は、把持爪36の開閉に合わせて開閉するように、1対の支持部42にそれぞれ設けられている。
【0021】
一方、右腕11b先端の手首フランジ32bには、図5に示すように、右力覚センサ33bを介して右ハンド35bが設けられている。右ハンド35bは、ボルトが入った部品箱B2を把持することができる。
この右ハンド35bは、部品箱B2の背面を上下方向から挟んで把持する1対の把持爪44を有している。把持爪44は、手首フランジ32bの回転軸AXtbと交差する開閉軸AXq方向に開閉可能に構成されている。なお、図5は、把持爪44が閉じた状態を示している。
なお、左力覚センサ33a、右力覚センサ33bは、ロボットコントローラ22を介してシステムコントローラ24に接続されている。
【0022】
ここで、搬送台車12について説明する。搬送台車12は、双腕マニプレータ11によって把持されたボルトを収納するための配膳箱B1を搬送することができる。
搬送台車12は、台車フレーム50と、台車フレーム50に支持され、鉛直軸AX3回りに回転する回転テーブル51とを有している。
【0023】
台車フレーム50の下部には、キャスタ(不図示)が設けられている。また、台車フレーム50には、回転テーブル51の回転角度を割り出す割り出し手段(不図示)と、回転テーブル51の角度位置を固定する固定手段(不図示)が設けられている。
【0024】
回転テーブル51は、円形状の天板52を有している。天板52上には、天板52の外周に沿って、例えば5箇所に複数の配膳箱B1を収容することができる。配膳箱B1は、天板52から上方向に延びる複数のガイドポール54によって水平方向の位置決めがなされ、例えば10段積み上げられる。
ここで、配膳箱B1は、内部が複数の区画(配膳台13に載っている配膳箱B1に示したように例えば4区画)に仕切られ、左右両側面に取手56が設けられた容器である。配膳箱B1の上部には、背面に設けられたヒンジ57によって回転可能に支持され、上方向に開く蓋58が設けられている。蓋58には、前側に突出した取手59が設けられている。配膳箱B1は、例えば、樹脂製のパーツボックスである。配膳箱B1の各区画には、予め決められた種類のボルトが収容される。
配膳箱B1の背面には、その配膳箱B1の区画と、その区画に収納されるべきボルトの種類(例えば、径、長さ、及び材質)及びボルトの数とを対応付ける第1の対応情報が少なくとも格納された図示しない2次元バーコードが貼付されている。なお、2次元バーコードに代えて、1次元バーコードとしてもよい。従って、配膳箱B1に第1の対応情報が格納された2次元バーコードが直接貼付されているので、配膳箱B1とその配膳箱B1に収納されるべきボルトとの対応が明確となる。
【0025】
また、天板52には、上方向に延びるハンドルバー61が複数設けられている。双腕マニプレータ11は、このハンドルバー61を左ハンド35aの支持部42で掴んで、回転テーブル51を鉛直軸AX3回りに回転させることができる。
更に、搬送台車12には、バー63が設けられ、作業者はこのバー63を持って、搬送台車12を移動させることができる。配膳箱B1が載った搬送台車12は、作業者によって、引き扉30が設けられた出入口から搬入出される。搬送台車12は、所定位置に搬入されると、図示しないエアシリンダにより下方から持ち上げられる。その結果、キャスタが浮いた状態となって固定される。
【0026】
配膳台13は、双腕マニプレータ11によって搬送台車12から取り出された配膳箱B1が載せられる台である。双腕マニプレータ11によって部品棚20に格納された部品箱B2から取り出されたボルトは、この配膳台13に載った配膳箱B1に移載される。
配膳台13には、配膳箱B1が配膳台13に載せられたことを検出するための在荷センサ(不図示)、配膳台13に載っている配膳箱B1の蓋58の開閉状態を検知するための開閉検知センサ(不図示)、及び配膳箱B1に設けられた2次元バーコードを読み取るバーコードリーダ(不図示)が設けられている。在荷センサ、開閉検知センサ、及びバーコードリーダは、システムコントローラ24に接続されている。
また、配膳台13には、配膳箱B1の蓋58を支持する支持部材70が設けられている。
【0027】
掻き出し具15は、双腕マニプレータ11が部品箱B2に収容されたボルトを作業台17上に掻き出すためのツールである。掻き出し具15は、柄72と、柄72の先に設けられた掻き爪73を有している。掻き爪73は、根元から先端にかけて湾曲した複数の金属棒により形成されている(図7参照)。柄72には、左ハンド35aのツール把持部41が連結されるアダプタ(不図示)が取り付けられている。
掻き出し具15は、スタンド75に載せられる。
【0028】
作業台17は、双腕マニプレータ11の可動範囲内に配置され、双腕マニプレータ11が、部品箱B2から掻き出したボルトをつまむための台である。
作業台17は、掻き出されたボルトが載せられる傾動天板80及び部品箱B2を仮置きするための部品箱スタンド90を有している。この傾動天板80は、例えば、矩形状の板材である。傾動天板80は、傾動天板80の長手方向と交差し、傾動天板80の一端側に設けられた略水平の回転軸AX4回りに回転することができる。
部品箱スタンド90は、傾動天板80の回転軸AX4が設けられている側の横に設けられている。
従って、双腕マニプレータ11が、傾動天板80の他端側を持ち上げると、傾動天板80は回転軸AX4を支点にして傾き、その上に載っていたボルトが、部品箱スタンド90に仮置きされた部品箱B2に戻るように構成されている。
なお、この部品箱スタンド90には、部品箱B2が載せられたことを検出するための在荷センサ(不図示)が設けられている。
【0029】
2次元カメラ100は、傾動天板80の上方に設けられ、作業台17に載せられたボルトの2次元画像を撮像することができる。2次元カメラ100は、例えば、画素数400万画素の2次元モノクロカメラである。
2次元カメラ100は、スタンド105によって、上下方向位置が調整可能に支持される。
なお、スタンド105には、2次元カメラ100の撮像照度を確保するための照明装置101が設けられている。
2次元カメラ100は、画像処理用コンピュータ26に接続されている。2次元カメラ100が撮像した画像は、画像処理用コンピュータ26に送信される。また、2次元カメラ100はシステムコントローラ24とも接続されており、システムコントローラ24により撮像動作等が制御されるようになっている。
【0030】
部品棚20は、部品箱B2が複数格納される棚である。この部品棚20は、上下左右方向に複数の区画に仕切られ、前後方向に開口している。従って、双腕マニプレータ11が、部品棚20の前側から部品箱B2を引き出すことも、作業者が、部品棚20の後側から部品箱B2を引き出すこともできる。
【0031】
ここで、部品箱B2は、図6に示すように、左右の側面板120a、120b及び背面板120cが矩形状の底面板121の左右及び後ろの縁からそれぞれ上方へと延びて形成されている。前面板120dは、前方に傾斜し、底面板121の縁からその先端までの長さが、左右の側面板120a、120b及び背面板120cよりも短い。即ち、部品箱B2は、上面と、前面の上側が開口している。なお、詳細は後述するが、双腕マニプレータ11により、この前面側からボルトが掻き出される。
【0032】
各部品棚20は、例えば左右2列5段の区画に仕切られ、各区画に異なる種類のボルトが入った部品箱B2が格納される。従って、各部品棚20が2列5段の区画に仕切られている場合、図1に示す部品ピッキングシステム10全体としては、部品棚20は、合計60種類のボルトを格納することができる。
【0033】
部品箱B2は、背面側が双腕マニプレータ11の方向を向くように(部品箱B2の前面側が部品ピッキングシステム10の外側を向くように)格納される。どの区画にどの種類のボルトが入った部品箱B2が格納されているかを示す第2の対応情報は、予めシステムコントローラ24に記憶されている。
【0034】
ここで、システムコントローラ24に第2の対応情報を記憶させる手順について、詳細に説明する。
この第2の対応情報を記憶させる際のジョブとして、各区画の位置を含む双腕マニプレータ11の動作教示データがロボットコントローラ22に記憶されている。
一方、部品棚20に格納された各部品箱B2には、収納されるボルトの種類の情報を含むバーコード(又は二次元バーコードでもよい)が貼付されている。双腕マニプレータ11は、前述の配膳台13に設けられたバーコードリーダに各部品箱B2のバーコードを読み取らせる。その後、双腕マニプレータ11は、部品箱B2を動作教示データに従って、各区画に部品箱B2を収納する。この際に、部品箱B2に付与されたバーコードの情報(少なくともボルトの種類の情報を含む情報)と各区画の位置とが対応づけられ、第2の対応情報としてシステムコントローラ24に記憶される。
【0035】
部品棚20の後側の各区画の横には、部品箱B2内のボルトが予め決められた量よりも少なくなったことを示すランプ(不図示)が設けられている。作業者は、このランプが点灯している場合には、該当する部品箱B2を部品棚20の後側から引き出し、ボルトを補充することができる。
【0036】
ロボットコントローラ22は、双腕マニプレータ11に接続され、双腕マニプレータ11の動作を制御することができる。
【0037】
システムコントローラ24は、ロボットコントローラ22に接続され、部品ピッキングシステム10の全体の制御を行うことができる。特に、システムコントローラ24は、前述のランプの点灯を制御することができる。
また、作業者は、タッチパネル110(図3参照)を介してシステムコントローラ24を操作することができる。システムコントローラ24は、例えば、プログラマブルロジックコントローラを備えている。
【0038】
画像処理用コンピュータ26は、2次元カメラ100及びシステムコントローラ24に接続され、主として、2次元カメラ100によって撮像された画像を処理することができる。
【0039】
次に、図4A〜図4Iを参照し、左ハンド35aについて詳細に説明する。
前述のように、左ハンド35aの把持爪36は揺動軸AXp方向に開閉し、ボルトをつまむことができる。また、把持爪36は、揺動軸AXp回りに揺動し、その先端の向きを変えることができる。前者の把持爪36(支持部42)が開閉する動作は、開閉機構400によって実現され、後者の把持爪36の向きが変わる動作は、揺動機構500により実現される。
【0040】
開閉機構400は、図4Gに示すように、開閉用サーボモータ410と、開閉用サーボモータ410によって回転する左右ねじシャフト420と、左右ねじシャフト420の回転によって、互いに反対方向に移動する1対の移動部440とを有している。
【0041】
開閉用サーボモータ410は、その長手方向が、揺動軸AXpと平行となるように、左ハンド35aの基部にてフレーム417に取り付けられている。なお、ここに言う「平行」とは、厳密な意味での平行ではない。即ち、「平行」とは、設計上、製造上の誤差が許容され、「実質的に平行」という意味である(以下、同様)。また、開閉用サーボモータ410は、その負荷側が、左ハンド35aの外側を向くように配置される。なお、開閉用サーボモータ410に設けられたエンコーダ(不図示)は、絶対値エンコーダとすることができる。絶対値エンコーダのバックアップ用バッテリ419は、フレーム417に取り付けられている。
【0042】
左右ねじシャフト420は、ガイド部422を介してフレーム417に設けられた軸受423によって回転可能に支持されている。左右ねじシャフト420は、開閉用サーボモータ410よりも左ハンド35aの先端側にて、開閉用サーボモータ410の長手方向と平行に設けられている。左右ねじシャフト420の一方側と他方側には、それぞれ逆向きのねじ(左右ねじ)が形成されている。左右ねじシャフト420は、タイミングベルト430及びプーリ431によって少なくとも構成された第1のベルトプーリ部433を介して開閉用サーボモータ410によって駆動される。
【0043】
1対の移動部440は、それぞれ左右ねじシャフト420に逆向きに形成されたねじによって移動する。即ち、1対の移動部440は、それぞれ、左右ねじシャフト420の回転に伴い、左右ねじシャフト420の軸方向に沿って互いに反対方向に移動する。移動部440には、それぞれ1対の支持部42の基端部が固定されている。なお、移動部440は、ガイド部422によって案内される。
【0044】
揺動機構500は、揺動用サーボモータ510と、揺動用サーボモータ510の駆動力を伝達するスプラインシャフト520及び1対のスプラインナット522とを有している。
揺動用サーボモータ510は、その長手方向が、揺動軸AXpと平行となるように、左ハンド35aの基部にてフレーム417に取り付けられている。また、揺動用サーボモータ510は、開閉用サーボモータ410とは反対向きに配置される。更に、揺動用サーボモータ510は、左ハンド35aを側面視して(揺動用サーボモータ510又は開閉用サーボモータ410の負荷側から見て)開閉用サーボモータ410と並んで配置される。従って、このように揺動用サーボモータ510及び開閉用サーボモータ410を配置しない場合に比べ、左ハンド35aを小型化することが可能となる。
なお、揺動用サーボモータ510に設けられたエンコーダ(不図示)は、絶対値エンコーダとすることができる。絶対値エンコーダのバックアップ用バッテリ519は、フレーム417に取り付けられている。
【0045】
スプラインシャフト520は、左右ねじシャフト420よりも左ハンド35aの先端側の位置にて、フレーム417に設けられた軸受523によって回転可能に支持されている。また、スプラインシャフト520は、揺動用サーボモータ510よりも左ハンド35aの先端側の位置にて、揺動用サーボモータ510の長手方向と平行に設けられている。スプラインシャフト520は、タイミングベルト530及びプーリ531によって少なくとも構成された第2のベルトプーリ部533を介して揺動用サーボモータ510によって駆動される。
【0046】
1対のスプラインナット522は、それぞれ内周側に位置する第1のスプラインナット部541と、外周側に位置する第2のスプラインナット部542によって、少なくとも構成されている。
第1のスプラインナット部541は、スプラインシャフト520と共に回転し、スプラインシャフト520の軸方向に移動することができる。第1のスプラインナット部541は、例えば、ボールスプラインインナーである。
第2のスプラインナット部542は、第1のスプラインナット部541と共にスプラインシャフト520の回転軸に沿って移動でき、第1のスプラインナット部541の回転軸回りに第1のスプラインナット部541に対して相対回転することができる。第2のスプラインナット部542は、支持部42の基端部の内側にて固定されている。第2のスプラインナット部542は、例えば、ボールスプラインアウターである。
【0047】
ここで、支持部42の内部には、第3のベルトプーリ部550が設けられている。第3のベルトプーリ部550は、支持部42の基端側の内部に設けられたプーリ551、支持部42の先端側の内部に設けられたプーリ552、及びプーリ551及びプーリ552に掛けられるタイミングベルト553によって少なくとも構成されている。
プーリ551は、第1のスプラインナット部541の外側の側部に設けられている。プーリ551の回転中心部には中空部が形成されている。プーリ551は、この中空部を貫通するスプラインシャフト520と略同軸となるように配置されている。
プーリ552は、支持部42の長手方向と交差する揺動軸AXp回りに回転する。プーリ552の回転中心部には、揺動軸AXpを回転中心とするシャフト555の一端が固定されている。このシャフト555の他端には、支持部42の内側にて、把持爪36の基端部が固定される。
【0048】
ところで、前述のように支持部42には、1対のツール把持部41が設けられている(図4A〜図4F参照)。各ツール把持部41は、板状の第1及び第2の連結部611、612を有している。
各支持部42に設けられた第1の連結部611の互いに対向する側は、支持部42の内側に向かうに従って徐々にその厚みが薄くなっている。各支持部42に設けられた第2の連結部612の互いに対向する側も支持部42の内側に向かうに従って徐々にその厚みが薄くなっている。
第1及び第2の連結部611、612は、図4Cに示すように、支持部42の正面に設けられている。第1の連結部611及び第2の連結部612の内側先端部分は、支持部42の内側から見て互いに交差する方向に延びて形成される。なお、ツール把持部41の小型化の観点から、第2の連結部612は、第1の連結部611に隣接して配置されることが好ましい。
一方、掻き出し具15に設けられたアダプタには、それぞれ向きが異なる、断面V字状の第1及び第2の溝が形成されている。第1及び第2の溝には、ツール把持部41の第1及び第2の連結部611、612が噛み合う。
【0049】
アダプタが固定される掻き出し具15は、第1の溝と第1の連結部611とが噛み合うことによって、第1の溝が形成された方向(第1の連結部611の先端部分が延びる方向)と実質的に直交する方向に位置決めされる。また、第2の溝と第2の連結部612とが噛み合うことによって、第2の溝が形成された方向(第2の連結部612の先端部分が延びる方向)と実質的に直交する方向に位置決めされる。
このように、断面V字状の溝に第1及び第2の連結部611、612が噛みあうので、左ハンド35aが掻き出し具15を把持する際、位置ずれが溝の幅の半分よりも小さい範囲内であれば、この位置ずれは吸収され、掻き出し具15は左ハンド35aによって把持される。
【0050】
次に、左ハンド35aの動作(把持爪36の開閉動作及び揺動動作)について説明する。
【0051】
(開閉動作)
図4Gに示すように、開閉用サーボモータ410が一方向に回転すると、その回転が第1のベルトプーリ部433を介して伝達され、左右ねじシャフト420が回転する。左右ねじシャフト420には、左右ねじが形成されているので、移動部440は、それぞれ左右ねじシャフト420に沿って、内側に移動する。移動部440の移動に伴い、移動部440にそれぞれ固定された支持部42の間隔は狭まり、把持爪36が閉じる。
なお、支持部42は揺動機構500のスプラインナット522(より詳しくは、第2のスプラインナット部542)に固定されているが、スプラインナット522(より詳しくは、第1のスプラインナット部541)はスプラインシャフト520に沿って自在に移動できる。従って、把持爪36が揺動機構500のスプラインナット522に固定されていることは、把持爪36の開閉動作を妨げるものではない。
一方、開閉用サーボモータ410が反対方向に回転すると、図4Hに示すように把持爪36が開くことは明らかであるので、その説明は省略する。
【0052】
(揺動動作)
図4Gに示すように、揺動用サーボモータ510が一方向に回転すると、その回転が第2のベルトプーリ部533を介して伝達され、スプラインシャフト520が回転する。スプラインシャフト520の回転は、スプラインナット522の第1のスプラインナット部541に伝達され、第1のスプラインナット部541が回転する。その際、第2のスプラインナット部542は第1のスプラインナット部541(スプラインシャフト520)の回転とは無関係に、スプラインシャフト520の軸回りに回転することができるので、第1のスプラインナット部541の回転が、支持部42に伝達されることはない。
第1のスプラインナット部541が回転すると、第3のベルトプーリ部550のプーリ551が回転する(図4I参照)。プーリ551が回転するとタイミングベルト553を介してプーリ552及びシャフト555が揺動軸AXp回りに揺動する。その結果、把持爪36は、揺動軸AXp回りに揺動することができる。
【0053】
なお、開閉機構400及び揺動機構500はそれぞれ独立して動作するので、把持爪36の開閉動作と揺動動作を、それぞれ独立して行うことができる。
【0054】
次に、部品ピッキングシステム10によるボルトピッキング方法について説明する。このボルトピッキング方法は、図9に示すように、大きくステップS1〜S4に分かれている。ステップS1は、双腕マニプレータ11が配膳箱B1を搬送台車12から配膳台13に移動させるステップである。ステップS2は、双腕マニプレータ11が、部品棚20のボルトを配膳箱B1に移載するステップである。ステップS3は、双腕マニプレータ11が、ボルトが移載された配膳箱B1を返却するステップである。ステップS4は、動作を停止するか否かを判断するステップである。
以下、各ステップS1〜S4について順に説明する。
(事前準備)
作業者が、空の配膳箱B1が載せられた搬送台車12を出入口から搬入する。前述のように、この搬送台車12の天板52には、外周に沿って、例えば5列に配膳箱B1を積むことができる。ただし、図1に示すように、そのうち少なくとも1箇所は、ボルトが収納された配膳箱B1を戻すために空けられている。搬入後、搬送台車12はエアシリンダ(不図示)により持ち上げられ、固定される。作業者は、タッチパネル110(図3参照)を操作して、部品ピッキングシステム10全体を起動する。
【0055】
(ステップS1)
まず、図10に示す、双腕マニプレータ11が配膳箱B1を配膳台13に移動させるステップS1について説明する。なお、図10は、主要動作のみを示している。
(ステップS1−1)
システム起動後、双腕マニプレータ11は、搬送台車12上の配膳箱B1の認識動作を行う。
まず、双腕マニプレータ11が左ハンド35aの支持部42を使って搬送台車12のハンドルバー61を掴む。双腕マニプレータ11は、天板52を回転させて、ボルトを収納する空の配膳箱B1を予め決められた位置まで移動させる。
次に、双腕マニプレータ11は、右腕11bの右ハンド35bを搬送台車12に積まれた配膳箱B1の上方に移動させて停止し、その位置から右ハンド35bを下方へ下ろす。右ハンド35bが配膳箱B1と接触すると、右力覚センサ33bの出力信号が変化するので、この変化した位置が最上段の配膳箱B1の位置であると認識することができる。なお、配膳箱B1の大きさ及び天板52の高さ位置は、予め分かっているので、最上段の配膳箱B1の位置が分かれば、積まれた配膳箱B1の数を知ることができる。
以上の認識動作を各列について繰り返し、システムコントローラ24は、配膳箱B1の合計数及び回転テーブル51上の各列の配膳箱B1の小計をロボットコントローラ22を介して認識する。
このように、配膳箱B1は、専用のセンサを用いることなく、その位置と数が認識される。
【0056】
(ステップS1−2)
双腕マニプレータ11が、左右のハンド35a、35bを使って配膳箱B1の取手56を把持し、ガイドポール54に沿って、配膳箱B1をガイドポール54の先端よりも高く持ち上げる。
次に、双腕マニプレータ11は、胴体11cを旋回させると共に配膳箱B1を下方に移動させ、配膳箱B1を配膳台13の上に載せる。
【0057】
(ステップS1−3)
配膳台13に設けられた在荷センサが配膳箱B1を検出した場合には、システムコントローラ24は、配膳箱B1が配膳台13の上に正常に載せられたものと判断し、次のステップを実行する。
一方、在荷センサが配膳箱B1を検出しなかった場合には、システムコントローラ24は、異常が発生したものと判断し、予め決められたアラーム処理(例えば、一時停止処理)を実行する。
【0058】
(ステップS1−4)
双腕マニプレータ11が左ハンド35aの把持爪36を蓋58の取手59の下面に当て、上方へ移動させることにより、蓋58を開ける。蓋58は、蓋58が閉じた状態から、例えば100〜140度の角度開いた状態で支持部材70により支持される。
【0059】
(ステップS1−5)
配膳台13に設けられた開閉検知センサが蓋58が開いたことを検知した場合には、システムコントローラ24は、蓋58が正常に開けられたものと判断し、次のステップを実行する。
一方、開閉検知センサが蓋58が開いたことを検知しなかった場合には、システムコントローラ24は、異常が発生したものと判断し、予め決められたアラーム処理を実行する。
【0060】
(ステップS1−6)
バーコードリーダが配膳箱B1に貼付された2次元バーコードを読み取る。読み取られた情報(前述の第1の対応情報)は、システムコントローラ24に送られる。
第1の対応情報を受け取らなかった場合、システムコントローラ24は、異常が発生したものと判断し、予め決められたアラーム処理を実行する。
【0061】
(ステップS2)
次に、図11に示す、双腕マニプレータ11が、部品棚20のボルトを配膳台13上の配膳箱B1に移載するステップS2について説明する。なお、図11は、主要動作のみを示している。
(ステップS2−1)
システムコントローラ24は、受け取った第1の対応情報に基づいて、配膳台13に置かれている配膳箱B1の各区画に収納すべきボルトの種類及び数の情報を把握する。
【0062】
(ステップS2−2)
システムコントローラ24は、ロボットコントローラ22に対し、該当する種類のボルトが入った部品箱B2を取りに行くよう、指令を出す。
ロボットコントローラ22は、この指令に基づいて双腕マニプレータ11を制御する。双腕マニプレータ11は、ロボットコントローラ22からの指令に従い、胴体11cを旋回させて、部品棚20の予め決められた区画に格納された該当する部品箱B2を取りに行く。具体的には、双腕マニプレータ11は、右ハンド35bの把持爪44により、部品箱B2の背面板120cを上下方向から把持し、手前側に引き出して取り出す。
その後、右力覚センサ33bを用いて、部品箱B2内のボルトの重量が測定される。部品ピッキングシステム10が起動されてから最初に双腕マニプレータ11が把持した部品箱B2の重量は初期重量として、システムコントローラ24に記憶される。
【0063】
(ステップS2−3)
双腕マニプレータ11は、胴体11cを旋回させ、作業台17に正対する。把持している部品箱B2の前面側を下げ、部品箱B2を作業台17の傾動天板80の上方で傾けた状態で保持する。
【0064】
(ステップS2−4)
双腕マニプレータ11は、左ハンド35aのツール把持部41を連結して、スタンド75上に置かれた掻き出し具15(詳細には、アダプタ)を把持する。
【0065】
(ステップS2−5)
双腕マニプレータ11は、掻き出し具15を用いて、部品箱B2内のボルトを傾動天板80の上に掻き出す掻き出し動作(図7参照)を行う。ここで、この掻き出し動作について詳細に説明する。なお、図7は、双腕マニプレータ11がボルトを掻き出す様子を模式化して示し、掻き出し具15を把持する左ハンド35a及び部品箱B2を把持する右ハンド35bは、省略されている。
【0066】
まず、双腕マニプレータ11が最初の掻き出し動作を行う際は、ボルトが部品箱B2の底面からどの程度の高さまで入っているか、正確には把握されていない。そこで、左力覚センサ33aの出力値を監視しながら部品箱B2に掻き出し具15を入れ、左力覚センサ33aの出力値が変化した位置、即ち、掻き出し具15がボルトに接触した位置を、部品箱B2の底面からの基準高さh0とする(図8(A)参照)。双腕マニプレータ11は、この基準高さh0から予め決められた深さ(例えば、0〜5mm)だけ更に掻き出し具15を挿し入れて、部品箱B2の前面側へ動かしてボルトを掻き出す。掻き出すための力加減は、左腕11aに設けられた左力覚センサ33aの計測値に基づいて調整される。傾動天板80上のボルトは、後述するように2次元カメラ100によって撮像され、画像処理される。
【0067】
そのため、ボルトが互いに重なると、2次元画像中のボルトの位置及び姿勢の検出が困難又は不可能となる。従って、掻き出されたボルトは、傾動天板80上で互いに重ならない程度に散らばっていることが好ましい。本実施の形態においては、2次元画像から位置及び姿勢を最適に検出できる程度のボルトの分量を予め実験等により求めて設定しておき、この予め設定されたボルトの分量だけ、左力覚センサ33aの出力値に基づいて掻き出し具15を用いて掻き出すので、ボルトが傾動天板80上で重なる可能性を抑制して、2次元画像からより多くのボルトの位置及び姿勢を検出することができる。
なお、掻き出し具15は、傾動天板上80のボルトの配置状態を整えるためのツールとも言える。このツールは、ボルトを把持爪36にて把持するためにボルトが傾動天板80上で重なる可能性を抑制できるのであれば、掻き出し具15に限られるものではない。
【0068】
(ステップS2−6)
1回目の掻き出し動作を行った後、掻き出されたボルトが予め決められた量となったものと判断された場合は、ステップS2−9が実行される。なお、この予め決められた量は、右力覚センサ33bの出力に基づいて求められる。従って、例えば重量計のような専用のセンサを設けることなく、予め決められたボルトの量を測定することができる。
一方、掻き出されたボルトが予め決められた量となっていないものと判断された場合は、2回目の掻き出し動作を行う。
2回目の掻き出し動作を行う際には、1回目に掻き出した際の位置よりもより深く(例えば、3〜10mm)掻き出し具15を挿し入れ、高さh1の位置で掻き出す(図8(B)参照)。
【0069】
(ステップS2−7)
2回目の掻き出し動作を行った後、掻き出されたボルトが予め決められた量となったものと判断された場合は、ステップS2−9が実行される。
一方、掻き出されたボルトが予め決められた量となっていないものと判断された場合は、3回目の掻き出し動作を行う。
3回目の掻き出し動作を行う際には、2回目に掻き出した際の位置よりもより深く(例えば、3〜10mm)掻き出し具15を挿し入れて掻き出す。
【0070】
(ステップS2−8)
3回目の掻き出し動作を行った後、掻き出されたボルトが予め決められた量となったものと判断された場合は、ステップS2−9が実行される。
一方、掻き出されたボルトが予め決められた量となっていないものと判断された場合は、4回目の掻き出し動作を行う。
4回目の掻き出し動作を行う際には、3回目に掻き出した際の位置よりもより深く(例えば、3〜10mm)掻き出し具15を挿し入れて掻き出す。
4回目の掻き出し動作を行った後は、掻き出されたボルトが予め決められた量となったか否かに関わらず、次のステップS2−9が実行される。なお、本実施の形態においては、掻き出し動作は4回を上限としているが、任意の回数に設定することができる。
(ステップS2−9)
双腕マニプレータ11は、左ハンド35aで把持した掻き出し具15をスタンド75に返却する。
【0071】
(ステップS2−10)
傾動天板80上に掻き出された同一種類のボルトは、システムコントローラ24が制御する2次元カメラ100によって撮像される。撮像されたボルトの2次元画像は、画像処理用コンピュータ26によって、例えばエッジ検出され、予め記憶されたボルトのテンプレートと照合することによって、傾動天板80上に散っている各ボルトの位置及び姿勢が求められる。
ロボットコントローラ22は、システムコントローラ24を介して、求められた各ボルトの位置及び姿勢を受け取る。
【0072】
(ステップS2−11)
ロボットコントローラ22は、各ボルトの位置及び姿勢に基づいて、双腕マニプレータ11を動作させる。双腕マニプレータ11は、左ハンド35aを把持対象とするボルトの近くへと移動させる。次に、双腕マニプレータ11は、左ハンド35a全体を回転軸AXta回りに回転させ、続いて把持爪36を揺動軸AXp回りに揺動させ、適宜ボルトをつまみ易い向きに変更した後、把持爪36を閉じて、傾動天板80上のボルトをつまむ。なお、ボルトをつまむ力は、開閉用サーボモータ410によって制御される。
このように、双腕マニプレータ11は、左腕11aを大きく移動させることなく、主として左ハンド35aを回転させ、把持爪36の向きを変更することによって、ボルトをつまむことができる。即ち、双腕マニプレータ11は、把持爪36が揺動軸AXp回りに揺動しない場合に比べ、ボルトをつまむために左腕11aについて姿勢を大きく変える必要がない。従って、把持爪36が揺動軸AXp回りに揺動しない場合に比べ、ボルトをつまむための左腕11aの姿勢変化が小さく、移載に要する時間を短縮することができる。また、双腕マニプレータ11がボルトをつまむことのできる範囲を広くとることができる。
【0073】
続いて、双腕マニプレータ11は、2次元バーコードから読み取られた第1の対応情報に基づいて、つまんだボルトを配膳箱B1内部の予め決められた区画(第1の対応情報によって対応付けられた区画)に移載する。
本ステップは、第1の対応情報に含まれるボルトの数分繰り返され、同一種類のボルトが、予め決められた区画に収められる。
また、左ハンド35aによってボルトを移載している間、右ハンド35bによって把持されていた部品箱B2は、作業台17の部品箱スタンド90に仮置きされる。
なお、部品箱スタンド90の在荷センサによって、部品箱B2が置かれていないと判断された場合には、双腕マニプレータ11は、動作を一時停止する。
【0074】
本ステップは、移載動作停止条件を満たすまで繰り返される。この移載動作停止条件は、1)2次元バーコードによって指示された数のボルトが配膳箱B1に収納されること、又は2)途中で傾動天板80上のボルトが不足すること、である。
【0075】
(ステップS2−12)
移載動作停止条件を満たした場合、双腕マニプレータ11は、左ハンド35aの支持部42を使って傾動天板80を掴み、回転軸AX4回りに傾動天板80を回転させて傾ける。これにより、傾動天板80上のボルトが部品箱スタンド90上の部品箱B2に戻される。その際、双腕マニプレータ11は、部品箱B2が動かないように、右ハンド35bにて部品箱B2を押さえる。
このように、双腕マニプレータ11が傾動天板80を傾けてボルトを部品箱B2に戻すので、ボルトを部品箱B2に戻すための専用の機構を設ける必要がない。
【0076】
(ステップS2−13)
2次元バーコードによって指示された数のボルトが配膳箱B1に収納されて停止した場合(移載動作停止条件1)を満たした場合には、次のステップS2−14が実行される。
一方、途中で傾動天板80上のボルトが不足した場合(移載動作停止条件2)を満たした場合)には、ステップS2−5以降が、ボルトの数量が第1の対応情報に含まれるボルトの数量に達するまで繰り返し実行される。
【0077】
(ステップS2−14)
双腕マニプレータ11は、右ハンド35bにて部品箱B2を把持し、この部品箱B2を元の部品棚20に返却する。最後のボルトを配膳箱B1に移載後、部品箱B2を元の部品棚20に格納する前に、システムコントローラ24は、右腕11bの右力覚センサ33bの出力信号に基づいて、その部品箱B2に残っているボルトの重量を測定する。従って、例えば重量計のような専用のセンサを設けることなく、部品箱B2に残っているボルトの重量を測定することができる。
残ったボルトの重量が、予め決められた値よりも小さいと判断した場合には、システムコントローラ24は、部品棚20の該当するランプを点灯させる。例えば、ステップS2−2において記憶した初期重量の80%以下となった場合に、システムコントローラ24は、該当するランプを点灯させる。これにより、作業者は、部品箱B2内のボルトを補充する時期を確認することができる。
【0078】
(ステップS2−15)
システムコントローラ24は、配膳箱B1の各区画に全ての種類のボルトが移載されたか否かを判断する。
配膳箱B1の各区画に全ての種類のボルトが移載された場合には、次のステップS3が実行される。
配膳箱B1の各区画に全ての種類のボルトが移載されていない場合には、双腕マニプレータ11は、別の種類のボルトを配膳箱B1へ移載するため、ステップS2−2〜ステップS2−14を繰り返す。
ただし、双腕マニプレータ11の左ハンド35aは、開閉可能な把持爪36を有しているので、別の種類のボルト(径が異なるボルト)を同じ左ハンド35aにて把持することができる。即ち、径が異なるボルトをそれぞれ把持するためのハンドを準備する必要がなく、全てのボルトを共通のハンドにて把持することができる。
【0079】
(ステップS3)
次に、図12に示す、双腕マニプレータ11が、ボルトが移載された配膳箱B1を返却するステップS3について説明する。
(ステップS3−1)
双腕マニプレータ11は、左ハンド35aの把持爪36を下向きに曲げる。双腕マニプレータ11は、この把持爪36を支持部材70に支持された蓋58の取手59に当て、手前側へ移動させることにより、蓋58を閉める。
【0080】
(ステップS3−2)
搬送台車12の空きスペースに配膳箱B1を置くため、双腕マニプレータ11は左ハンド35aを使ってハンドルバー61を掴み、回転テーブル51の天板52を回転させて、予め決められた位置まで移動させる。
双腕マニプレータ11が、左右のハンド35a、35bを使って配膳箱B1の取手56を把持し、配膳箱B1を持ち上げながら搬送台車12の方向に胴体11cを旋回させる。双腕マニプレータ11は、ガイドポール54に沿って、配膳箱B1を降ろし、回転テーブル51の天板52に置く。
【0081】
(ステップS4)
ステップS3−2が完了後、部品ピッキングシステム10は、搬送台車12に載せられた全ての配膳箱B1についてステップS1−2〜ステップS3−2を繰り返す(図9参照)。
【0082】
このように、ステップS1〜S4を経て、部品ピッキングシステム10は、2次元カメラ100と双腕マニプレータ11を用いて、部品棚20から必要な種類のボルトを必要な数だけ取り出し、搬送台車12上に載せられた配膳箱B1に収納することができる。なお、前述の一連の動作は、順次行わずに、可能な場合には並行して行ってもよい。
ボルトが収納された配膳箱B1が載せられた搬送台車12は、出入口から搬出される。
【0083】
なお、本発明は、前述の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲での変更は可能である。例えば、前述の実施の形態や変形例の一部又は全部を組み合わせて発明を構成する場合も本発明の技術的範囲に含まれる。
【0084】
配膳箱B1は、搬送台車12によって搬送されているが、コンベヤによって搬送されてもよい。
情報記憶手段は、2次元バーコードに限られるものではない。情報記憶手段の他の例として、ICタグが挙げられ、バーコードリーダに代えて、ICタグリーダとすることができる。
部品は、ボルトに限られるものではないことは明らかである。他の部品の一例として、電子部品が挙げられる。
左腕11a及び右腕11bは、7軸の多関節マニプレータに限定されるものではなく、7軸以上の多関節マニプレータであればよい。
更に、部品を移載する作業に限って言えば、ロボットは、左ハンド35aを備えた直動型のロボットであってもよい。
また、第1のベルトプーリ部433に代えて、平歯車等の歯車によって少なくとも構成された回転伝達部とすることもできる。開閉用サーボモータ410又は揺動用サーボモータ510は、電磁モータに限定されるものではなく、空圧駆動のモータとすることもできる。
【符号の説明】
【0085】
10:部品ピッキングシステム、11:双腕マニプレータ、11a:左腕、11b:右腕、11c:胴体、12:搬送台車、13:配膳台、15:掻き出し具、17:作業台、20:部品棚、22:ロボットコントローラ、24:システムコントローラ、26:画像処理用コンピュータ、30:引き扉、31:防護壁、32a:手首フランジ、32b:手首フランジ、33a:左力覚センサ、33b:右力覚センサ、35a:左ハンド、35b:右ハンド、36:把持爪、41:ツール把持部、42:支持部、43:パッド、44:把持爪、50:台車フレーム、51:回転テーブル、52:天板、54:ガイドポール、56:取手、57:ヒンジ、58:蓋、59:取手、61:ハンドルバー、63:バー、70:支持部材、72:柄、73:掻き爪、75:スタンド、80:傾動天板、90:部品箱スタンド、100:2次元カメラ、101:照明装置、105:スタンド、110:タッチパネル、120a:側面板、120b:側面板、120c:背面板、120d:前面板、121:底面板、400:開閉機構、410:開閉用サーボモータ、417:フレーム、419:バックアップ用バッテリ、420:左右ねじシャフト、422:ガイド部、423:軸受、430:タイミングベルト、431:プーリ、433:第1のベルトプーリ部、440:移動部、500:揺動機構、510:揺動用サーボモータ、519:バックアップ用バッテリ、520:スプラインシャフト、522:スプラインナット、523:軸受、530:タイミングベルト、531:プーリ、533:第2のベルトプーリ部、541:第1のスプラインナット部、542:第2のスプラインナット部、550:第3のベルトプーリ部、551:プーリ、552:プーリ、553:タイミングベルト、555:シャフト、611:第1の連結部、612:第2の連結部、B1:配膳箱、B2:部品箱



【特許請求の範囲】
【請求項1】
1対の支持部と、
前記1対の支持部の内側にそれぞれ支持され、部品を把持する1対の把持爪と、
前記1対の支持部を該各支持部の長手方向と交差する揺動軸に沿って開閉させる開閉機構と、
前記1対の把持爪を前記揺動軸回りに揺動させ、該把持爪の先端の向きを変更させる揺動機構とを備えたハンド。
【請求項2】
請求項1記載のハンドにおいて、前記開閉機構は、開閉用サーボモータと、
前記開閉用サーボモータによって回転し、互いに逆向きのねじが左右にそれぞれ形成された左右ねじシャフトと、
前記左右ねじシャフトの回転によって、それぞれ該左右ねじシャフトの回転軸に沿って互いに反対方向に移動する1対の移動部と、を有し、
前記1対の移動部に、前記1対の支持部がそれぞれ固定されたハンド。
【請求項3】
請求項1又は2記載のハンドにおいて、前記揺動機構は、揺動用サーボモータと、
前記揺動用サーボモータによって回転するスプラインシャフトと、
前記スプラインシャフトと共に該スプラインシャフトの回転軸回りに回転し、該スプラインシャフトの回転軸方向に沿って移動可能な1対の第1のスプラインナット部と、
前記1対の支持部にそれぞれ固定され、前記第1のスプラインナット部と共に前記スプラインシャフトの回転軸に沿ってそれぞれ移動し、前記第1のスプラインナット部の回転軸回りに該第1のスプラインナット部に対してそれぞれ相対回転可能な1対の第2のスプラインナット部と、を有し、
前記1対の把持爪は、前記1対の第1のスプラインナット部によってそれぞれ駆動され、揺動するハンド。
【請求項4】
請求項3記載のハンドにおいて、前記1対の把持爪は、ベルトプーリ機構を介し、前記1対の第1のスプラインナット部によって駆動されるハンド。
【請求項5】
請求項4記載のハンドにおいて、前記開閉用サーボモータ及び前記揺動用サーボモータは、互いに反対方向を向き、それぞれの長手方向が前記揺動軸と実質的に平行となるように配置され、該ハンドの基部に設けられるハンド。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載のハンドにおいて、前記1対の支持部は、複数の部品をそれぞれ前記1対の把持爪にて把持するために該複数の部品の配置状態を整えるツールを把持するツール把持部を更に有するハンド。
【請求項7】
請求項6記載のハンドにおいて、前記ツール把持部は、対向する1対の第1の連結部と、
対向する1対の第2の連結部とを有し、
前記第1の連結部及び第2の連結部は、それぞれ前記支持部の内側に向かうに従ってその厚みが薄くなり、該第1の連結部及び該第2の連結部の内側先端部分は、前記支持部の内側から見て互いに交差する方向に延びて形成されるハンド。
【請求項8】
部品を把持するハンドを備え、
前記ハンドは、1対の支持部と、
前記1対の支持部の内側にそれぞれ支持され、部品を把持する1対の把持爪と、
前記1対の支持部を該各支持部の長手方向と交差する揺動軸に沿って開閉させる開閉機構と、
前記1対の把持爪を前記揺動軸回りに揺動させ、該把持爪の先端の向きを変更させる揺動機構とを有するロボット。




【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【図4C】
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【図4D】
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【図4E】
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【図4F】
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【図4G】
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【図4H】
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【図4I】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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