説明

ハート通信システム

【課題】伝送路に重畳するハート信号よりバーストフレームを抽出し、バーストフレームに設定されたハートスレーブの情報を有効に利用することができるハート通信システムを実現する。
【解決手段】ハートマスターとハートスレーブが伝送路を介して通常フレームで通信しているハート通信システムにおいて、
前記ハートスレーブが発信するバーストフレームを取得し、前記ハートマスターとの通信対象となっていない前記ハートスレーブが持つ情報を利用する、ハートロガーを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、HART通信(以下、ハート通信)規格に準拠する、HART Master(以下、ハートマスター)とHART-Slave(以下、ハートスレーブ)とが、アナログ信号の伝送路に重畳させたディジタル信号の通常フレームにより通信しているハート通信システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
図5は、ハート通信システムの基本的構成を示す機能ブロック図である。フィールド機器で実現されるハートスレーブ1は、上位装置であるハートマスター2に2線式の伝送路3を介してプロセスの物理量測定値を示す4〜20mADCのアナログ信号を伝送している。
【0003】
伝送路3に重畳させたハート信号Hによりハートスレーブ1とハートマスター2はハート通信を行う。ハート通信規格に準拠するハート通信の通信フレームには、ハートマスター2からの通信要求でハートスレーブが応答する通常フレームと、ハートマスター2からの要求なしに、ハートスレーブ1が設定した情報を伝送路3に出力する、バーストフレームの2種類がある。
【0004】
ハートマスター2は、ハートスレーブ1からの通常フレームのみを処理し、ハートスレーブ1からバーストフレームを受信しても処理せず、これを無視する。従って、通常のハート通信では、バーストフレームの情報はハートマスター2で利用することができない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−205243号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来のハート通信システム装置では次のような問題がある。
(1)フィールド機器で実現されるハートスレーブ1には、ハートマスター2との通信対象である主たるプロセス情報の他に、このプロセス情報に付随する関連情報を保有している場合が多いが、通常フレームによるハートマスターとの通信では、この情報を取得して利用することができない。
【0007】
(2)ハンディターミナルの様な端末を伝送路3に接続することでハートスレーブ1と通信を行なうことができるが、あくまでハートマスターの代わりを行なうだけであり、バーストフレームの情報を取得することができない。
【0008】
(3)ハートマスターは、分散制御システムのような大規模なものが多く、通常フレームによるハート通信の設定を簡単に変えることはできない。
【0009】
本発明の目的は、伝送路に重畳するハート信号よりバーストフレームを抽出し、バーストフレームに設定されたハートスレーブの情報を有効に利用することができるハート通信システムを実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
このような課題を達成するために、本発明は次の通りの構成になっている。
(1)ハートマスターとハートスレーブが伝送路を介して通常フレームで通信しているハート通信システムにおいて、
前記ハートスレーブが発信するバーストフレームを取得し、前記ハートマスターとの通信対象となっていない前記ハートスレーブが持つ情報を利用する、ハートロガーを備える
ことを特徴とするハート通信システム。
【0011】
(2)前記ハートロガーは、
前記伝送路に接続されるハート信号読み取り手段と、
読み取られたハート信号よりバーストフレーム識別するバーストフレーム抽出手段と、 抽出されたバーストフレームを処理して所望の情報に加工するバーストフレーム処理手段と、
処理情報を内部または外部に出力する出力インターフェース手段と、
を備えることを特徴とする請求項1に記載のハート通信システム。
【0012】
(3)前記ハートスレーブはプロセス制御システムにおけるフィールド機器であり、前記バーストフレームには、前記ハートマスターとの通信対象であるプロセス情報に付随する関連情報が設定されていることを特徴とする請求項1または2に記載のハート通信システム。
【0013】
(4)前記ハートロガーは、複数チャンネルのハート信号を入力し、夫々よりバーストフレームを抽出して処理することを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載のハート通信システム。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、次のような効果を期待することができる。
(1)ハートロガー100は、バーストモードのハート信号(バーストフレーム)を扱うので、ハートスレーブ1とハートマスター2間のハート通信からは影響を受けない。また、ハートマスター2からハートスレーブ1への読み出し等の処理は、バーストフレームではないため、ハートロガー100には影響を与えない。
【0015】
(2)ハートマスターの設定を変更する等、既存の計装におけるハート通信環境を変更させることなく、ハート信号に重畳するバーストフレームの情報を抽出して利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明を適用したハート通信システムの一実施例を示す機能ブロック図である。
【図2】本発明を適用したハート通信システムの他の一実施例を示す機能ブロック図である。
【図3】フィールド機器が扱うパラメータを例示する表である。
【図4】フィールド機器で実行されるデータ変換処理を例示した表である。
【図5】ハート通信システムの基本的構成を示す機能ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下本発明を、図面を用いて詳細に説明する。図1は、本発明を適用したハート通信システムの一実施例を示す機能ブロック図である。図5で説明した従来構成と同一要素には同一符号を付して説明を省略する。
【0018】
図5に示した基本構成に追加される本発明の特徴部は、伝送路3に接続されたハートロガー100の構成にある。ハートロガー100は、ハート信号読み取り手段101、バーストフレーム抽出手段102、バーストフレーム処理手段」103、設定手段104、出力インターフェース105、表示・記録手段106を備えている。
【0019】
ハートロガー100の使用開始に当たって、ハートスレーブ1はバーストモードBにセットされ、抽出して利用したい情報をバーストフレームに設定する。ハートスレーブ1は、バーストモードのため、設定された入力値を一定周期でハート信号出力する。
【0020】
ハート信号読み取り手段101は、伝送路3に接続されてハート信号Hを取り込む。ハート信号Hは、ハートマスター2と通信するするための通常フレームとバーストフレームが混在する。ハート信号読み取り手段101は、取り込んだハート信号Hをバーストフレーム抽出手段102に渡す。
【0021】
バーストフレーム抽出手段102は、渡されたハート信号Hのフレーム更新を実行した後、バーストフレームを識別するコードをチェックし、通常フレームであればフレーム更新に戻し、バーストフレームであればそのバーストフレームを抽出してバーストフレーム処理手段103に渡す。
【0022】
バーストフレーム処理処断103は、設定手段104より設定される仕様に基づいて、バーストフレームから利用目的の情報を取り出し、解析し、加工処理してディジタル値またはアナログ値の出力情報を出力インターフェース105に渡す。
【0023】
出力インターフェース105は、加工処理された出力情報を更新し、内部の表示・記録手段106に渡して表示または記録し、必要に応じて外部インターフェースを介して外部機器に出力情報を発信する。
【0024】
図2は、本発明を適用したハート通信システムの他の一実施例を示す機能ブロック図である。この実施例では、ハートロガー100は、ハートスレーブ1a、ハートマスター2a、伝送路3aよりなるハート通信システムのハート信号Haと、ハートスレーブ1b、ハートマスター2b、伝送路3bよりなるハート通信システムのハート信号Hbを取り込み、2チャンネル入力を時分割処理する。この実施例を敷衍すれば、3チャンネル以上の多チャンネルのハート信号を入力して処理するシステムを容易に構築することが可能である。
【0025】
次に、バーストフレームに設定して利用可能な情報の例を説明する。図3は、フィールド機器が扱うパラメータを例示する表である。フィールド機器がpH計等の分析計であればpH値の他にガラス膜抵抗値、濃度換算値が付随的な関連情報として利用可能である。
【0026】
フィールド機器が温度伝送器であれば、温度値の他に%値、伝送出力値が関連情報として利用可能である。フィールド機器が差圧・圧力伝送器であれば、差圧・圧力値の他に%値、伝送出力値、静圧値が関連情報として利用可能である。
【0027】
フィールド機器が流量計であれば、流量値の他に%値、伝送出力値、流量積算値、電極付着診断値が関連情報として利用可能である。フィールド機器がバルブ・ポジショナであれば、電流入力値の他に%値、伝送出力値が関連情報として利用可能である。
【0028】
図4は、フィールド機器で実行されるデータ変換処理を例示した表である。表示機能では、単位変換、%読み値のRun/Stop表示による視認性向上と読解牲がある。記録機能では、単位変換、任意スケーリングによるトレンドの可視化がある。
【0029】
警報機能では、警報点任意設定、多点警報出力による警報出力の多点利用がある。アナログ出力機能では、1−5VDC変換、その他の信号変換による任意電圧の有効利用がある。
【符号の説明】
【0030】
1 ハートスレーブ
2 ハートマスター
3 伝送路
100 ハートロガー
101 ハート信号読み取り手段
102 バーストフレーム抽出手段
103 バーストフレーム処理手段
104 設定手段
105 出力インターフェース
106 表示・記録手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハートマスターとハートスレーブが伝送路を介して通常フレームで通信しているハート通信システムにおいて、
前記ハートスレーブが発信するバーストフレームを取得し、前記ハートマスターとの通信対象となっていない前記ハートスレーブが持つ情報を利用する、ハートロガーを備える
ことを特徴とするハート通信システム。
【請求項2】
前記ハートロガーは、
前記伝送路に接続されるハート信号読み取り手段と、
読み取られたハート信号よりバーストフレーム識別するバーストフレーム抽出手段と、 抽出されたバーストフレームを処理して所望の情報に加工するバーストフレーム処理手段と、
処理情報を内部または外部に出力する出力インターフェース手段と、
を備えることを特徴とする請求項1に記載のハート通信システム。
【請求項3】
前記ハートスレーブはプロセス制御システムにおけるフィールド機器であり、前記バーストフレームには、前記ハートマスターとの通信対象であるプロセス情報に付随する関連情報が設定されていることを特徴とする請求項1または2に記載のハート通信システム。
【請求項4】
前記ハートロガーは、複数チャンネルのハート信号を入力し、夫々よりバーストフレームを抽出して処理することを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載のハート通信システム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2012−103899(P2012−103899A)
【公開日】平成24年5月31日(2012.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−251792(P2010−251792)
【出願日】平成22年11月10日(2010.11.10)
【出願人】(000006507)横河電機株式会社 (4,443)
【Fターム(参考)】